説明

ポリシクロヘキシルベンゼンのトランスアルキル化

ポリシクロヘキシルベンゼンのトランスアルキル化方法において、少なくとも一種のポリシクロヘキシルベンゼンを含む供給原料がトランスアルキル化条件下で10を越えるシリカ/アルミナモル比を有するゼオライトUSYを含む触媒を用いてベンゼンと接触させられて前記ポリシクロヘキシルベンゼンの少なくとも一部をシクロヘキシルベンゼンに変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は2009年5月26日に出願された先の米国仮特許出願第61/181133号(これが参考として本明細書にそのまま含まれる)の利益を主張する。
本発明はモノシクロヘキシルベンゼンへのポリシクロヘキシルベンゼンのトランスアルキル化方法並びにフェノール及びシクロヘキサノンの製造における得られるモノシクロヘキシルベンゼンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノールは化学工業における重要な製品であり、例えば、フェノール樹脂、ビスフェノールA、ε-カプロラクタム、アジピン酸、及び可塑剤の製造に有益である。
現在、フェノールの製造のための最も普通の経路はホック方法である。これは最初の工程がクメンを製造するためのプロピレンによるベンゼンのアルキル化を伴ない、続いて相当するヒドロペルオキシドへのクメンの酸化次いで等モル量のフェノール及びアセトンを製造するためのそのヒドロペルオキシドの開裂を伴なう3工程方法である。しかしながら、フェノールについての世界の需要はアセトンについての需要よりも迅速に増大しつつある。加えて、プロピレンのコストが、プロピレンの発展する不足のために、おそらく増大する。
こうして、供給原料としてプロピレンに代えて高級アルケンを使用し、アセトンではなく、シクロヘキサノンの如き高級ケトンを同時製造する方法が、フェノールの製造の魅力的な別の経路であるかもしれない。例えば、シクロヘキサノンについて増大する市場があり、これは工業用溶媒として、酸化反応における活性化剤として、またアジピン酸、シクロヘキサノン樹脂、シクロヘキサノンオキシム、カプロラクタム及びナイロン6の製造に使用される。
米国特許第5,053,571号から、シクロヘキシルベンゼンがベンゼンをゼオライトベータで担持されたルテニウム及びニッケルを含む触媒の存在下で水素と接触させることにより製造し得ること及び得られるシクロヘキシルベンゼンが2工程でシクロヘキサノン及びフェノールに加工し得ることが知られている。同様に、米国特許第6,037,513号はシクロヘキシルベンゼンがベンゼンをMCM-22ファミリーのモレキュラーシーブとパラジウム、ルテニウム、ニッケル、コバルト及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも一種の水素化金属とを含む2機能性触媒の存在下で水素と接触させることにより製造し得ることを開示している。また、その'513号特許は得られるシクロヘキシルベンゼンが相当するヒドロペルオキシドに酸化でき、そのペルオキシドが所望のフェノール及びシクロヘキサノンに分解し得ることを開示している。
【0003】
シクロヘキシルベンゼンのこれらの製造方法の商業的開発に直面する一つの問題はそのヒドロアルキル化方法の生成物の概して約20質量%がジ-シクロヘキシルベンゼン及びトリ-シクロヘキシルベンゼンであることである。それ故、全体の方法が経済的に実施可能であるためには、これらのポリシクロヘキシルベンゼンを付加的な有益なモノシクロヘキシルベンゼン生成物に変換することが必要である。
この問題の一つの可能な解決策はポリシクロヘキシルベンゼンを付加的なベンゼンでトランスアルキル化することであり、その解決策がその'513号特許でトランスアルキル化をヒドロアルキル化触媒中に使用されたのと同じモレキュラーシーブを含む触媒、即ち、MCM-22ファミリー触媒の存在下で、しかしそのヒドロアルキル化触媒の金属成分の不在下かつ水素共供給原料の不在下で行なうことにより取り組まれている。
加えて、米国特許第6,489,529号はジシクロヘキシルベンゼンがそのジシクロヘキシルベンゼンをVIB族金属酸化物のオキシアニオンで変性されたIVB族金属酸化物を含む酸性固体、TEA-モルデナイト、及びゼオライトベータからなる群から選ばれた触媒の存在下でベンゼンと接触させることによりモノアルキル化誘導体に変換し得ることを開示している。
【0004】
本発明者らの共同未決PCT出願PCT/EP2008/006072号において、本発明者らはジシクロヘキシルベンゼン副生物がトランスアルキル化反応器(通常ヒドロアルキル化反応器とは別の)中で、好適なトランスアルキル化触媒、例えば、MCM-22ファミリーのモレキュラーシーブ、ゼオライトベータ、MCM-68(米国特許第6,014,018号を参照のこと)、ゼオライトX、ゼオライトY、ゼオライトUSY、及びモルデナイト上で、付加的なベンゼンでトランスアルキル化されるシクロヘキシルベンゼンの製造方法を記載していた。
所定のゼオライトのシリカ/アルミナモル比はしばしば可変である。例えば、或る種のフォージャサイトゼオライトは1.5:1から3:1までのシリカ/アルミナモル比で合成し得るゼオライトXのように変化するシリカ/アルミナ比を有することができ、一方、ゼオライトY中のその比は3:1から6:1までである。超安定なYゼオライト(ゼオライトUSY)(これはゼオライトYを脱アルミニウム化することによりつくられる)では、シリカ/アルミナ比がゼオライトYに典型的な6:1の値を超えるようにし得る。脱アルミニウム化という用語は、その物質の全体の組成が変化されず、又はほんのわずかに変化される場合(何とならば、フレームワークから除去されるアルミニウムが溝及びキャビティに残存するからである)でさえも、ゼオライトフレームワークからのアルミニウムの除去を意味すると一般に理解される。
触媒がポリシクロヘキシルベンゼンの商業規模のトランスアルキル化に使用可能であるためには、その触媒がポリアルキル化種の変換に有意な活性を示す必要があるだけでなく、望ましくない副生物よりも所望のモノシクロヘキシルベンゼン生成物を選択的に生成する必要がある。特に、メチルシクロペンチルベンゼンの生成を最小にすることが重要である。何とならば、後者が所望のモノシクロヘキシルベンゼン生成物を分離するのに困難であり、その後の酸化段階でヘビーアルコール及びケトンを生成するからである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、ゼオライトUSYの或る形態がポリシクロヘキシルベンゼンの変換についての高活性と所望のモノシクロヘキシルベンゼン生成物についての高選択率及び望ましくないメチルシクロペンチルベンゼン不純物についての低選択率の特異な組み合わせを示すことが今わかった。
一局面において、本発明はポリシクロヘキシルベンゼンのトランスアルキル化方法にあり、その方法が少なくとも一種のポリシクロヘキシルベンゼンを含む供給原料をトランスアルキル化条件下で10を越えるシリカ/アルミナモル比を有するゼオライトUSYを含む触媒を用いてベンゼンと接触させて前記ポリシクロヘキシルベンゼンの少なくとも一部をシクロヘキシルベンゼンに変換することを含む。
都合良くは、ゼオライトUSYが25を超えるシリカ/アルミナモル比を有する。
都合良くは、ゼオライトUSYが50を超えるシリカ/アルミナモル比を有し、典型的には24.50以下の単位セルサイズを有する。
都合良くは、前記トランスアルキル化条件が約100℃〜約300℃の温度、約350kPa〜約4200kPaの圧力、及び約1:1〜約50:1のベンゼン/ポリシクロヘキシルベンゼンモル比を含む。
一実施態様において、供給原料がベンゼン及び水素をヒドロアルキル化条件下で水素化金属並びにゼオライトベータ、ゼオライトX、ゼオライトY、モルデナイト、及びMCM-22ファミリーのモレキュラーシーブから選ばれたモレキュラーシーブを含む触媒と接触させることを含む方法により製造された流出物の少なくとも一部を含む。
更なる局面において、本発明はシクロヘキシルベンゼンの製造方法にあり、その方法が
(a) ベンゼン及び水素をヒドロアルキル化条件下で第一の触媒と接触させてシクロヘキシルベンゼン及びポリシクロヘキシルベンゼンを含む流出物を生成し、
(b) シクロヘキシルベンゼンを前記流出物から分離し、そして
(c) 前記流出物からのポリシクロヘキシルベンゼンの少なくとも一部をトランスアルキル化条件下で10を越えるシリカ/アルミナモル比を有するゼオライトUSYを含む第二の触媒を用いてベンゼンと反応させて前記ポリシクロヘキシルベンゼンの少なくとも一部をシクロヘキシルベンゼンに変換することを含む。
【0006】
更に別の局面において、本発明はフェノール及びシクロヘキサノンの製造方法にあり、その方法が
(a) ベンゼン及び水素をヒドロアルキル化条件下で第一の触媒と接触させてシクロヘキシルベンゼン及びポリシクロヘキシルベンゼンを含む流出物を生成し、
(b) シクロヘキシルベンゼンを前記流出物から分離し、
(c) 前記流出物からのポリシクロヘキシルベンゼンの少なくとも一部をトランスアルキル化条件下で10を越えるシリカ/アルミナモル比を有するゼオライトUSYを含む第二の触媒を用いてベンゼンと反応させて前記ポリシクロヘキシルベンゼンの少なくとも一部をシクロヘキシルベンゼンに変換し、
(d) (b) 及び(c) からのシクロヘキシルベンゼンの少なくとも一部を酸化してシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドを生成し、そして
(e) シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの少なくとも一部を開裂してフェノール及びシクロヘキサノンを生成することを含む。
都合良くは、第一の触媒が水素化金属並びにゼオライトベータ、ゼオライトX、ゼオライトY、モルデナイト及びMCM-22ファミリーのモレキュラーシーブから選ばれたモレキュラーシーブを含む。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ポリシクロヘキシルベンゼンのトランスアルキル化方法が本明細書に記載され、特に、しかし専らではなく、ポリシクロヘキシルベンゼンがベンゼンの接触ヒドロアルキル化の副生物として生成した。こうして、ベンゼンの接触ヒドロアルキル化がシクロヘキシルベンゼンの製造に有益な経路であり、これが順にフェノール及びシクロヘキサノンの製造における前駆体として使用し得る。しかしながら、以下に説明されるように、ベンゼンの接触ヒドロアルキル化のための現在の方法はヒドロアルキル化生成物の約20質量%のジ-シクロヘキシルベンゼン及びトリ-シクロヘキシルベンゼンを生成する。こうして、商業上実行できるためには、ベンゼンの接触ヒドロアルキル化を経由してのフェノール及びシクロヘキサノンの製造方法は付加的なモノシクロヘキシルベンゼン生成物へのポリシクロヘキシルベンゼンのトランスアルキル化に有効な方法を必要とする。
ポリシクロヘキシルベンゼンはジ-シクロヘキシルベンゼン及びトリ-シクロヘキシルベンゼンを含む。
ベンゼンヒドロアルキル化
ベンゼンの接触ヒドロアルキル化はベンゼンをヒドロアルキル化条件下で好適なヒドロアルキル化触媒の存在下で水素と接触させることを伴ない、それによりベンゼンが下記の反応を受ける。
【0008】
【化1】

【0009】
競争反応はシクロヘキサン(CHB)を生成するためのベンゼンの完全飽和、ジシクロヘキシルベンゼンを生成するためのポリアルキル化及び不純物、例えば、メチルシクロペンチルベンゼンを生成するための再編成/アルキル化反応を含む。主たる競争反応はポリアルキル化である。何とならば、最も選択的な触媒、例えば、本明細書に開示されたMCM-22ファミリーゼオライトを用いてさえも、その反応流出物が変換された生成物の20質量%以上のジシクロヘキシルベンゼン及びトリシクロヘキシルベンゼンを含むからである。
あらゆる市販のベンゼン供給原料がヒドロアルキル化工程で使用し得るが、ベンゼンが少なくとも99質量%の純度レベルを有することが好ましい。同様に、水素の源が重要ではないが、水素が少なくとも99質量%の純度であることが一般に望ましい。
都合良くは、ヒドロアルキル化工程への全供給原料は1000ppm未満、例えば、500ppm未満の水を含む。加えて、全供給原料は典型的には100ppm未満、例えば、30ppm未満、例えば、3ppm未満の硫黄及び10ppm未満、例えば、1ppm未満、例えば、0.1ppm未満の窒素を含む。
ヒドロアルキル化反応は固定床、スラリー反応器、及び/又は接触蒸留塔を含む広範囲の反応器配置で行ない得る。好適な反応温度は約100℃〜約400℃、例えば、約125℃〜約250℃であり、一方、好適な反応圧力は約100kPaa〜約7,000kPaa、例えば、約500kPaa〜約5,000kPaaである。水素/ベンゼンのモル比に適した値は約0.15:1〜約15:1、例えば、約0.4:1〜約4:1である。
【0010】
ヒドロアルキル化反応に使用される触媒はモレキュラーシーブ、モレキュラーシーブとは異なる無機酸化物及び水素化金属の複合材料であってもよく、好ましくは水素化金属の少なくとも50質量%がモレキュラーシーブではなく無機酸化物で担持される。特に、水素化金属を無機酸化物で担持することにより、触媒の活性並びにシクロヘキシルベンゼン及びジシクロヘキシルベンゼンへのその選択率が均等触媒(その水素化金属がモレキュラーシーブで担持される)と較べて増大されることがわかる。
一般に、ヒドロアルキル化方法に使用されるモレキュラーシーブは四面体配位原子の12員環により形成される少なくとも一つの溝を含む孔系を有する。このようなモレキュラーシーブの例として、ゼオライトベータ、ゼオライトX、ゼオライトY、モルデナイト及びMCM-68が挙げられる。
また、ヒドロアルキル化触媒はMCM-22ファミリーの少なくとも一種のモレキュラーシーブを含む。本明細書に使用される“MCM-22 ファミリー物質”(又は“MCM-22 ファミリーの物質”もしくは“MCM-22 ファミリーのモレキュラーシーブ”)という用語は、
・普通の第一級(first degree)結晶性ビルディングブロック単位セル(その単位セルはMWWフレームワークトポロジーを有する)からつくられたモレキュラーシーブ(単位セルは原子の空間配置であり、これは三次元空間中でタイルにされた場合に結晶構造を記載する。このような結晶構造が“ゼオライトフレームワーク型のアトラス”, 第五編, 2001(その全内容が参考として含まれる)に説明されている);
・一つの単位セル厚さ、好ましくは一つのc-単位セル厚さの単層を形成する、このようなMWWフレームワークトポロジー単位セルの2次元のタイリングである、普通の第二級(second degree)ビルディングブロックからつくられたモレキュラーシーブ;
・一つ以上の単位セル厚さの層である、普通の第二級ビルディングブロックからつくられたモレキュラーシーブ(一つより多い単位セル厚さの層が一単位セル厚さの少なくとも二つの単層を積み重ね、充填し、又は結合することからつくられる。このような第二級ビルディングブロックの積み重ねは規則的な様式、不規則な様式、ランダム様式、又はこれらのあらゆる組み合わせであってもよい);及び
・MWWフレームワークトポロジーを有する単位セルのあらゆる規則的又はランダムな2次元又は3次元の組み合わせによりつくられたモレキュラーシーブ
の一つ以上を含む。
【0011】
MCM-22ファミリーのモレキュラーシーブは一般に12.4±0.25、6.9±0.15、3.57±0.07及び3.42±0.07 Åにd-間隔最大を含むX線回折パターンを有する。その物質(b)を特性決定するのに使用されるX線回折データは通常の技術により、入射放射線としての銅のK-α二重線並びに収集システムとしてのシンチレーションカウンター及び関連コンピュータを備えたディフラクトメーターを使用して得られる。MCM-22ファミリーのモレキュラーシーブとして、MCM-22 (米国特許第4,954,325号に記載されている)、PSH-3 (米国特許第4,439,409号に記載されている)、SSZ-25 (米国特許第4,826,667号に記載されている)、ERB-1 (欧州特許第0293032号に記載されている)、ITQ-1 (米国特許第6,077,498号に記載されている), ITQ-2 (国際特許公開WO97/17290に記載されている)、MCM-36 (米国特許第5,250,277号に記載されている)、MCM-49 (米国特許第5,236,575号に記載されている)、MCM-56 (米国特許第5,362,697号に記載されている)、UZM-8 (米国特許第6,756,030号に記載されている)、及びこれらの混合物が挙げられる。モレキュラーシーブは(a) MCM-49、(b) MCM-56及び(c)MCM-49及びMCM-56のイソタイプ、例えば、ITQ-2から選ばれることが好ましい。
ヒドロアルキル化触媒中に使用される無機酸化物は狭く特定されないが、それがヒドロアルキル化反応の条件下で安定かつ不活性であることを条件とする。好適な無機酸化物として、元素の周期律表の2族、4族、13族及び14族の酸化物、例えば、アルミナ、チタニア、及び/又はジルコニアが挙げられる。本明細書に使用される、周期律表の族のナンバリングスキームはChemical and Engineering News, 63(5), 27 (1985)に開示されるとおりである、
同様に、あらゆる既知の水素化金属がヒドロアルキル化触媒複合材料中に使用し得るが、好適な金属として、パラジウム、ルテニウム、ニッケル、亜鉛、スズ、及びコバルトが挙げられ、パラジウムが特に有利である。一般に、触媒中に存在する水素化金属の量は触媒の約0.05質量%〜約10質量%、例えば、約0.1質量%〜約5質量%である。一実施態様において、モレキュラーシーブがアルミノシリケートである場合、存在する水素化金属の量はモレキュラーシーブ中のアルミニウム/水素化金属のモル比が約1.5から約1500まで、例えば、約75から約750まで、例えば、約100から約300までであるような量である。
【0012】
水素化金属は、水素化金属の少なくとも50質量%、例えば、少なくとも75質量%、一般に実質的に全てが無機酸化物で担持されるように複合材料触媒中に存在する。これは金属含有無機酸化物が前記モレキュラーシーブと複合される前に、水素化金属の少なくとも一部を、例えば、初期の湿式含浸により無機酸化物に付着することにより都合良く達成される。必要により、付加的な水素化金属が得られる触媒複合材料にその後に付着し得る。典型的には、触媒複合材料は同時ペレット化により生成され、その場合、モレキュラーシーブ及び無機酸化物の混合物が高圧(一般に約350kPa〜約350,000kPa)で、又は同時押出(この場合、モレキュラーシーブ及び無機酸化物のスラリーが、必要により別のバインダーと一緒に、ダイに押しやられる)によりペレットに成形される。
好適なバインダー材料として、合成物質又は天然産物質だけでなく、無機物質、例えば、クレー、シリカ及び/又は金属酸化物が挙げられる。後者は天然産であってもよく、又はシリカ及び金属酸化物の混合物を含むゼラチン質の沈殿又はゲルの形態であってもよい。バインダーとして使用し得る天然産クレーとして、モンモリロナイトファミリー及びカオリンファミリーのクレー(これらのファミリーはサブベントナイトを含む)並びにディキシイクレー、マックナミイクレー、ジョージアクレー及びフロリダクレーとして普通知られているカオリン又はその他(その場合、主鉱物成分がハロイサイト、カオリナイト、ジッカイト、ナクライト又はアナウキサイトである)が挙げられる。このようなクレーは初期に微粉砕され、又は最初に焼成、酸処理もしくは化学変性にかけられた生の状態で使用し得る。好適な金属酸化物バインダーとして、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニアだけでなく、3成分組成物、例えば、シリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシア及びシリカ-マグネシア-ジルコニアが挙げられる。
【0013】
ポリシクロヘキシルベンゼンのトランスアルキル化
ヒドロアルキル化反応からの流出物の主成分は所望のシクロヘキシルベンゼン生成物、未反応のベンゼン並びにジシクロヘキシルベンゼン及びトリシクロヘキシルベンゼンである。未反応のベンゼンは通常蒸留により回収され、ヒドロアルキル化反応器に循環される。ベンゼン蒸留からのボトムは更に蒸留されてモノシクロヘキシルベンゼン生成物をポリシクロヘキシルベンゼン及びその他のヘビーから分離する。次いでポリシクロヘキシルベンゼンが追加のベンゼンでトランスアルキル化されて所望のモノアルキル化種の生成を最大にする必要がある。本方法はこのトランスアルキル化を行なう新規かつ有利な方法を提供する。
特に、本トランスアルキル化方法はポリシクロヘキシルベンゼンを、10を越えるシリカ/アルミナモル比、典型的には25を越えるシリカ/アルミナモル比、典型的には50を越えるシリカ/アルミナモル比を有する脱アルミニウム化ゼオライトY(即ち、ゼオライトUSY)を含む触媒の存在下で、追加のベンゼン(新しいベンゼン又はヒドロアルキル化工程からの未反応のベンゼン)と反応させることを伴なう。都合良くは、その触媒が25を越えるシリカ/アルミナモル比及び24.50以下、典型的には24.26以下の単位セルサイズを有するゼオライトUSYを含む。
別の実施態様において、トランスアルキル化触媒が10から1,000まで、もしくは10から500まで、又は10から100まで、或いは25から1,000まで、もしくは25から500まで、又は25から100まで、或いは50から1,000まで、もしくは50から500まで、又は50から100までのシリカ/アルミナモル比を有する。別の実施態様において、シリカ/アルミナ下限が10、15、20、25、30、35、40、45、50であってもよく、またシリカ/アルミナ上限が75、125、150、175、200、250、300、400、500、600、700、800、900、1,000、2,000、3,000、4,000、及び5,000であってもよく、あらゆる下限からあらゆる上限までの範囲が意図されている。
【0014】
一実施態様において、トランスアルキル化触媒が100未満、例えば、75未満、典型的には50未満のアルファ値を有する。これに関して、アルファ値は標準触媒と比較しての物質の接触クラッキング活性のおよその指標である。それは1のアルファとされた標準シリカ-アルミナクラッキング触媒の活性(速度定数=0.016sec-1)と較べてのヘキサンクラッキングについての物質の相対的速度定数(単位時間当たりの触媒の体積当りのノルマルヘキサン転化率)を示す。アルファ試験が米国特許第3,354,078号、Journal of Catalysis, 4, 527 (1965); 6, 278 (1966);及び61, 395 (1980)に記載されており、夫々がその記載についての参考として本明細書に含まれる。本明細書に使用されるその試験の実験条件は538℃の一定温度及びJournal of Catalysis, 61, 395 (1980)に詳しく記載された可変流量を含む。
一実施態様において、トランスアルキル化触媒が500m2/gより大きく、典型的には600m2/gより大きいBET表面積及び0.5cc/gより大きく、典型的には0.7cc/gより大きい孔体積を有する。
トランスアルキル化触媒はバインダー、例えば、ヒドロアルキル化触媒について上記されたものを含んでもよく、又はバインダーを含まなくてもよい。トランスアルキル化触媒は一般に水素化金属を含まない。
【0015】
トランスアルキル化方法は典型的にはヒドロアルキル化反応器とは別の、トランスアルキル化反応器中で、少なくとも部分液相条件下で行なわれ、その条件は好適には約100℃〜約300℃の温度、約350kPa〜約4200kPaの圧力、全トランスアルキル化供給原料につき約0.5hr-1〜約50hr-1の毎時質量空間速度、及び約1:10〜約50:1のベンゼン/ポリシクロヘキシルベンゼンモル比を含む。一実施態様において、条件が約150℃〜約250℃の温度、約700kPa〜約3500kPaの圧力、全トランスアルキル化供給原料につき約1hr-1〜約30hr-1の毎時質量空間速度、及び約1:1〜約15:1のベンゼン/ポリシクロヘキシルベンゼンモル比を含む。更に別の実施態様において、条件が約150℃〜約200℃の温度、約1500kPa〜約3000kPaの圧力、及び約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1.5:2.5、約1.5:3.5、及び約1.5:4.5のベンゼン/ポリシクロヘキシルベンゼンモル比を含む。
トランスアルキル化工程でモノアルキル化生成物へのポリシクロヘキシルベンゼンの有意な変換を得ると同時に、メチルシクロペンチルベンゼン(MCPB)及びヘビー(C18+)の生成を最小にすることが重要である。生成物中のMCPBの存在はMCPBの或る異性体がまた酸化され、開裂されてメチルシクロペンタノン(これはシクロヘキサノンから分離されるべきである)の生成をもたらし得るという点でその方法の更に下流の工程に問題を生じ得る。更に、1-メチル-1-フェニルシクロペンタン異性体は蒸留によりCHBから分離し得ず、酸化工程で酸化されず、それにより循環流中で濃度を増大する。ヘビー生成物(C18+)はそれらの高沸点のために最後にはフェノールタールになり、物質損失をもたらすであろう。
加えて、トランスアルキル化触媒は主としてコークスの蓄積のために徐々に活性を失うので、触媒のエージング速度ができるだけ低いことが重要である(それにより再生間の長いサイクル時間を可能にする)。加えて、コークスを除去するための触媒再生はex-situ又はin-situで空気の存在下でコークスの燃焼を通常伴なうので、触媒ができるだけ少ない活性の損失で直ぐに再生し得ることがまた重要である。
触媒として高シリカゼオライトUSYを用いて、本トランスアルキル化方法を使用して、90質量%より大きいモノシクロヘキシルベンゼンへの選択率及び1.5質量%より小さいメチルシクロペンチルベンゼンへの選択率とともに50%を超えるポリシクロヘキシルベンゼン転化率を得ることが可能であるとわかる。対照的に、下記の実施例に示されるように、その他のゼオライトトランスアルキル化触媒を使用すると、転化率値及び選択率値の少なくとも一つが悪影響されることがわかる。加えて、本トランスアルキル化方法に使用される高シリカゼオライトUSYは遅い触媒エージング及び良好な再生安定性を示すことが明らかである。
【0016】
シクロヘキシルベンゼン酸化
トランスアルキル化反応からの流出物の主成分は所望のシクロヘキシルベンゼン生成物、未反応のベンゼン並びにジシクロヘキシルベンゼン及びトリシクロヘキシルベンゼンである。未反応のベンゼンは典型的にはヒドロアルキル化流出物中の未反応のベンゼンを分離するのに使用されるのと同じユニット中で、蒸留により通常回収される。ベンゼン蒸留からのボトムが更に蒸留されてモノシクロヘキシルベンゼン生成物を未反応のポリシクロヘキシルベンゼン及びその他のヘビーから分離する。次いで未反応のポリシクロヘキシルベンゼンがトランスアルキル化に循環でき、一方、モノシクロヘキシルベンゼンがヒドロアルキル化工程から回収されたCHBと合わされる。次いで合わされたCHB生成物が化学商品として市場に出されるが、更に一般にはフェノール及びシクロヘキサノンに直接変換される。
シクロヘキシルベンゼンをフェノール及びシクロヘキサノンに変換するために、シクロヘキシルベンゼンが最初に相当するヒドロペルオキシドに酸化される。これは空気の如き酸素含有ガスをシクロヘキシルベンゼンを含む液相に導入することにより達成される。クメンと違って、触媒の不在下のシクロヘキシルベンゼンの大気の空気酸化は非常に遅く、それ故、その酸化は通常触媒の存在下で行なわれる。
シクロヘキシルベンゼン酸化工程に適した触媒は米国特許第6,720,462号(本明細書に参考として含まれる)に記載されたN-ヒドロキシ置換環状イミド、例えば、N-ヒドロキシフタルイミド、4-アミノ-N-ヒドロキシフタルイミド、3-アミノ-N-ヒドロキシフタルイミド、テトラブロモ-N-ヒドロキシフタルイミド、テトラクロロ-N-ヒドロキシフタルイミド、N-ヒドロキシヘトイミド、N-ヒドロキシヒムイミド、N-ヒドロキシトリメリットイミド、N-ヒドロキシベンゼン-1,2,4-トリカルボキシミド、N,N'-ジヒドロキシ(ピロメリットジイミド)、N,N'-ジヒドロキシ(ベンゾフェノン-3,3',4,4'-テトラカルボキシルジイミド)、N-ヒドロキシマレイミド、ピリジン-2,3-ジカルボキシミド、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-ヒドロキシ(酒石酸イミド)、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシミド、エキソ-N-ヒドロキシ-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシミド、N-ヒドロキシ-シス-シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシミド、N-ヒドロキシ-シス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシミド、N-ヒドロキシナフタルイミドナトリウム塩又はN-ヒドロキシ-o-ベンゼンジスルホンイミドである。触媒がN-ヒドロキシフタルイミドであることが好ましい。別の好適な触媒はN,N',N”-トリヒドロキシイソシアヌル酸である。
これらの物質は単独で、又は遊離基開始剤の存在下で使用でき、液相、均一触媒として使用でき、又は不均一触媒を用意するために固体担体で担持し得る。典型的には、N-ヒドロキシ置換環状イミド又はN,N',N”-トリヒドロキシイソシアヌル酸がシクロヘキシルベンゼンの0.0001質量%〜15質量%、例えば、0.001質量%〜5質量%の量で使用される。
酸化工程に適した条件は約70℃〜約200℃、例えば、約90℃〜約130℃の温度、及び約50kPa〜10,000kPaの圧力を含む。あらゆる酸素含有ガス、好ましくは空気が酸化媒体として使用し得る。その反応は回分式反応器又は連続流反応器中で行ない得る。塩基性緩衝剤が酸化中に生成し得る酸性副生物と反応するために添加されてもよい。加えて、水相が導入されてもよく、これが炭酸ナトリウムの如き塩基性化合物を溶解することを助け得る。
【0017】
ヒドロペルオキシド開裂
フェノール及びシクロヘキサノンへのシクロヘキシルベンゼンの変換における最後の反応工程はシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの開裂を伴ない、これは都合良くはそのヒドロペルオキシドを液相中で約20℃〜約150℃、例えば、約40℃〜約120℃の温度、約50kPa〜約2,500kPa、例えば、約100kPa〜約1000kPaの圧力で触媒と接触させることにより行なわれる。シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドはその開裂反応に不活性な有機溶媒、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、フェノール又はシクロヘキシルベンゼン中で希釈されて、熱除去を助けることが好ましい。その開裂反応は都合良くはCSTR反応器又は接触蒸留ユニット中で行ない得る。
開裂工程で使用される触媒は均一触媒又は不均一触媒であってもよい。
好適な均一開裂触媒として、硫酸、過塩素酸、リン酸、塩酸及びp-トルエンスルホン酸が挙げられる。塩化第二鉄、三フッ化ホウ素、二酸化硫黄及び三酸化硫黄がまた有効な均一開裂触媒である。好ましい均一開裂触媒は硫酸であり、その好ましい濃度は0.05質量%〜0.5質量%の範囲である。均一酸触媒について、中和工程がその開裂工程に続くことが好ましい。このような中和工程は典型的には塩基性成分との接触を伴なう。使用し得る典型的な塩基性成分はアルカリ金属炭酸塩、重炭酸塩、水酸化物、又はフェノキシドだけでなく、アンモニア又は有機アミンである。塩基性成分の水溶液が中和に使用される場合、塩に富む水相が続いて有機相から分離される。
【0018】
シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの開裂における使用に適した不均一触媒として、スメクタイトクレー、例えば、米国特許第4,870,217号(その全開示が参考として本明細書に含まれる)に記載されたような、酸性モンモリロナイトシリカ-アルミナクレーが挙げられる。
開裂工程からの粗シクロヘキサノン及び粗フェノールは精製シクロヘキサノン及び精製フェノールを生成するために更なる精製にかけられてもよい。好適な精製プロセスとして、シクロヘキサノン及びフェノールをその他の種から分離するための一連の蒸留塔が挙げられるが、それに限定されない。
【実施例1】
【0019】
本発明が今、下記の非限定実施例を参照して更に特別に記載される。
実施例において、下記のスクリーニング操作に従ってベンゼンによるジシクロヘキシルベンゼンのトランスアルキル化について触媒を試験した。20-40メッシュサイズ範囲の触媒1gを砂で3ccの容積に希釈し、0.375インチ(0.95cm)の外径を有する固定床反応器に仕込んだ。触媒を反応器中で125℃及び1気圧で2時間にわたって100cc/分で流れるN2で乾燥させた。窒素を止め、反応器圧力を300psig(2170kPa)に設定した。
市販のベンゼンを使用の前にアルミナのカラムにパーコレーションして痕跡の水、酸素化物、及びその他の痕跡のN又はS含有不純物を除去した。次いで75%質量の前処理ベンゼン及び25質量%のp-ジシクロヘキシルベンゼン(DCHB)を含む供給原料をISCOポンプにより60cc/hで1時間にわたって反応器に導入し、その間反応器を所望の温度に加熱した。供給速度を4.5cc/h(WHSV=4)に低下し、試験を開始した。液体生成物を冷却トラップ中に集め、ガスクロマトグラフィーオフラインにより分析した。
例1:WOx/ZrO2によるDCHB/ベンゼントランスアルキル化(比較例)
上記操作後のDCHB/ベンゼントランスアルキル化を試験する際に混合金属酸化物WOx/ZrO21gを使用した。生成物サンプルを運転中26時間後に採取し、結果を表1に示す。
例2:アルミナ結合ゼオライトモルデナイトによるDCHB/ベンゼントランスアルキル化(比較例)
上記操作後のDCHB/ベンゼントランスアルキル化を試験する際にアルミナ結合ゼオライトモルデナイト1gを使用した。生成物サンプリングを運転中43時間後に開始し、結果を表1に示す。
例3:アルミナ結合MCM-22によるDCHB/ベンゼントランスアルキル化(比較例)
例1で上記操作後のDCHB/ベンゼントランスアルキル化を試験する際にアルミナ結合ゼオライトMCM-22 1gを使用した。生成物サンプルを運転中67時間後に採取し、結果を表1に示す。
【0020】
例4:アルミナ結合ゼオライトベータによるDCHB/ベンゼントランスアルキル化(比較例)
上記操作後のDCHB/ベンゼントランスアルキル化を試験する際にアルミナ結合ゼオライトベータ1gを使用した。生成物サンプルを運転中67時間後に採取し、結果を表1に示す。
例5:アルミナ結合YによるDCHB/ベンゼントランスアルキル化(比較例)
上記操作後のDCHB/ベンゼントランスアルキル化を試験する際にアルミナ結合ゼオライトY(Si/Al2=5.1;24.52Åの単位セルサイズ)1gを使用した。生成物サンプルを運転中18時間後に採取し、結果を表1に示す。
例6:アルミナ結合高Si/AlゼオライトUSYによるDCHB/ベンゼントランスアルキル化
上記操作後のDCHB/ベンゼントランスアルキル化を試験する際にアルミナ結合高シリカ/アルミナモル比のゼオライトUSY(Si/Al2=60;24.26Åの単位セルサイズ)1gを使用した。生成物サンプルを運転中576時間後に採取し、結果を表1に示す。
例7:アルミナ結合高Si/ALゼオライトUSYによるDCHB/ベンゼントランスアルキル化
ベンゼン/DCHBの質量比が6/1であり、供給原料流量が全供給原料について4のWHSVを得るために4.6cc/hであった以外は、上記操作後のDCHB/ベンゼントランスアルキル化を試験する際にアルミナ結合高シリカ/アルミナモル比のゼオライトUSY(Si/Al2=60;24.26Åの単位セルサイズ)1gを使用した。生成物サンプルを運転中576時間後に採取し、結果を表1に示す。
表1中の結果は高シリカ/アルミナモル比及び低単位セルを有するゼオライトUSYが試験したその他のゼオライト触媒よりも有意な利点を有することを明らかに示す。DCHB転化率及びシクロヘキシルベンゼン(CHB)選択率が高く、一方、MCPB選択率及びC18+選択率が低い。供給原料中のベンゼン/DCHB質量比を3から6に増大すると、CHBへの選択率を更に増大する(例7)。3のベンゼン/DCHBの質量比は約1のモル比にほぼ等しい。6のベンゼン/DCHBの質量比は約2のモル比にほぼ等しい。
【0021】
表1

【0022】
本発明が特別な実施態様を参照して記載され、説明されたが、当業者は本発明が本明細書に必ずしも説明されていない変化に適合することを認めるであろう。この理由のため、本発明の真の範囲を決める目的のために特許請求の範囲のみが参考にされるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシクロヘキシルベンゼンのトランスアルキル化方法であって、少なくとも一種のポリシクロヘキシルベンゼンを含む供給原料をトランスアルキル化条件下で10を越えるシリカ/アルミナモル比を有するゼオライトUSYを含むトランスアルキル化触媒を用いてベンゼンと接触させて前記ポリシクロヘキシルベンゼンの少なくとも一部をシクロヘキシルベンゼンに変換することを特徴とする前記トランスアルキル化方法。
【請求項2】
供給原料がベンゼン及び水素をヒドロアルキル化条件下で水素化金属並びにゼオライトベータ、ゼオライトX、ゼオライトY、モルデナイト、MCM-68及びMCM-22ファミリーのモレキュラーシーブから選ばれたモレキュラーシーブを含むヒドロアルキル化触媒と接触させることを含む方法により製造された流出物の少なくとも一部を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
シクロヘキシルベンゼンの製造方法であって、
(a) ベンゼン及び水素をヒドロアルキル化条件下でヒドロアルキル化触媒と接触させてシクロヘキシルベンゼン及びポリシクロヘキシルベンゼンを含む流出物を生成し、
(b) シクロヘキシルベンゼンを前記流出物から分離し、そして
(c) 前記流出物からのポリシクロヘキシルベンゼンの少なくとも一部をトランスアルキル化条件下で10を越えるシリカ/アルミナモル比を有するゼオライトUSYを含むトランスアルキル化触媒を用いてベンゼンと反応させて前記ポリシクロヘキシルベンゼンの少なくとも一部をシクロヘキシルベンゼンに変換することを特徴とするシクロヘキシルの製造方法。
【請求項4】
ヒドロアルキル化触媒が水素化金属並びにゼオライトベータ、ゼオライトX、ゼオライトY、モルデナイト、MCM-68及びMCM-22ファミリーのモレキュラーシーブから選ばれたモレキュラーシーブを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
フェノール及びシクロヘキサノンの製造方法であって、
(a) シクロヘキシルベンゼンを請求項3記載の方法により製造し、
(b) シクロヘキシルベンゼンの少なくとも一部を酸化してシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドを製造し、そして
(c) シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの少なくとも一部を開裂してフェノール及びシクロヘキサノンを製造することを特徴とする、フェノール及びシクロヘキサノンの製造方法。
【請求項6】
トランスアルキル化触媒のゼオライトUSYが25を超えるシリカ/アルミナモル比を有する、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
トランスアルキル化触媒のゼオライトUSYが50を超えるシリカ/アルミナモル比を有する、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
トランスアルキル化触媒のゼオライトUSYが24.50以下、好ましくは24.26以下の単位セルサイズを有する、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
トランスアルキル化触媒が100未満のアルファ値を有する、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
トランスアルキル化触媒がアルミナバインダーを含む、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記トランスアルキル化条件が100℃〜300℃の温度、350kPa〜4200kPaの圧力、1:1〜50:1のベンゼン/ポリシクロヘキシルベンゼンモル比を含む、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
少なくとも一種のポリシクロヘキシルベンゼンがジ-シクロヘキシルベンゼンを含む、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
少なくとも一種のポリシクロヘキシルベンゼンがトリ-シクロヘキシルベンゼンを含む、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
シリカ/アルミナモル比が10から1,000までである、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
シリカ/アルミナモル比が25から1,000までである、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2012−526114(P2012−526114A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509826(P2012−509826)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/031029
【国際公開番号】WO2010/138248
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(501357658)エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】