説明

ポリシロキサン熱可塑物

【課題】既存の無機ガラスに比べ低温で成型可能であり、既存の有機高分子材料に比べ耐熱性が高く、成型性に優れるポリシロキサン熱可塑物を提供することを課題とする。
【解決手段】芳香族環を含まない炭化水素基、芳香族環を含む炭化水素基から選ばれる置換基を有する三官能シロキサンである成分を1種以上含み、かつ、芳香族環を含まない炭化水素基、芳香族環を含む炭化水素基から選ばれる置換基を有する二官能シロキサンである成分を1種以上含み、300〜350℃の軟化温度を有することを特徴とするポリシロキサン熱可塑物とすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱により成型されるレンズや光学部品などに用いられる材料や、加熱することにより接着や封止に用いられる材料に関するものであって、特に300〜350℃の軟化温度を有し、優れた耐熱性を有するポリシロキサン熱可塑物に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱により成型されるレンズや光学部品などに用いられる材料として、無機ガラスや有機高分子材料が使用されてきた。無機ガラスは耐熱性に優れる半面、成型のために高温で加熱する必要があった。
【0003】
そこで、無機ガラスの軟化温度を低くする検討がなされてきた。例えば、特開平8−41200号公報では、軟化温度が低く、軽量であり、耐水性に優れ、かつ安定した操業が可能な、精密プレス成型に適した光学ガラスとして、(a)P2O5、(b)Li2Oを少なくとも含むアルカリ金属酸化物R2O、(c)ZnOおよび/またはアルカリ土類金属酸化物R′Oおよび(d)TiO2を必須成分として含有し、各成分の含有量がモル%でP2O525〜40%、Li2O 10〜50%、Na2O 0〜20%、K2O 0〜30%、R2O 35〜50%、ZnO 0〜17%、MgO 0〜20%、CaO 0〜20%、ZnOおよびアルカリ土類金属酸化物R′Oの合量 15〜30%、TiO22〜12%であることを特徴とする光学ガラスが開示されている。このガラスの屈伏点は400℃程度であった。
【0004】
一方、有機高分子材料は無機ガラスに比べ低温で成型できる反面、耐熱性は無機ガラスには及ばないため、有機高分子材料の耐熱性を高める検討がなされてきた。例えば、再表2005−070978号公報では、α‐メチルスチレン単位10〜65重量%、メタクリル酸メチル単位10〜40重量%及びスチレン単位10〜80重量%の割合で構成された共重合体からなる光学プリズム又はレンズ用の樹脂材料が開示されている。この樹脂材料のビカット軟化温度は105〜135℃程度であり、200℃でメルトマスフローレートを測定していることから、百数十℃で変形し200℃程度で流動するものであり、該温度より高温での形状保持性はなかった。
【0005】
また、例えば、特開2009−063976号公報では、ホモまたは共重合ポリカーボネート樹脂より成型された光学素子成型品が開示されている。この樹脂の成型品の5%重量減少温度は350℃程度であり高温での優れた分解耐性を示すが、220〜240℃程度で樹脂を軟化させ射出成型していることから、該温度より高温での形状保持性はなかった。
【特許文献1】特開平9−301735号公報
【特許文献2】再表2005−070978号公報
【特許文献3】特開2009−063976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既存の無機ガラスに比べ低温で成型可能であり、既存の有機高分子材料に比べ耐熱性が高く、成型性に優れるポリシロキサン熱可塑物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、芳香族環を含まない炭化水素基、芳香族環を含む炭化水素基から選ばれる置換基を有する三官能シロキサンである成分を1種以上含み、かつ、芳香族環を含まない炭化水素基、芳香族環を含む炭化水素基から選ばれる置換基を有する二官能シロキサンである成分を1種以上含み、300〜350℃の軟化温度を有することを特徴とするポリシロキサン熱可塑物である。
【0008】
軟化温度が300〜350℃であり、既存の無機ガラスの軟化温度よりも低いことから、既存の無機ガラスに比べ低温で成型が可能である。また、300℃未満で形状を保持できることから、既存の熱可塑性樹脂に比べより高温で使用することができる。
【0009】
前記のような三官能シロキサンである成分および二官能シロキサンである成分を含有することで、得られるポリシロキサン熱可塑物の耐熱性を高いものとすることができる。本発明において耐熱性とは、300℃未満で形状保持可能であること、および、5%重量減少温度が300℃以上であることを意味する。
【0010】
また、前記のような三官能シロキサンである成分および二官能シロキサンである成分を適宜組み合わせることで、得られるポリシロキサン熱可塑物の軟化温度を300〜350℃の範囲で制御することができる。
【0011】
また、前記ポリシロキサン熱可塑物は前駆体を加熱することにより得られるものであることが好ましい。
【0012】
また、該前駆体は、少なくとも以下の、A成分及びB成分を含有する中間体Iと、
SiO3/2 [A]
SiO2/2 [B]
(ここでR、R、Rは芳香族環を含まない炭化水素基または芳香族環を含む炭化水素基であり、それぞれ異なっていても良いし同一でも良く、R、R、Rのうち少なくとも1つ以上が芳香族環を含まない炭化水素基である。)
C成分及びD成分を含有する中間体IIを混合して得られるものが好ましい。
SiO3/2 [C]
SiO2/2 [D]
(ここでR、R、Rは芳香族環を含まない炭化水素基または芳香族環を含む炭化水素基であり、それぞれ異なっていても良いし同一でも良く、R、R、Rのうち少なくとも1つ以上が芳香族環を含む炭化水素基である。)
【0013】
該前駆体は室温で液体または固体状態である。該前駆体が室温で液体状態の場合、金属、金属酸化物、金属ハロゲン化物、錯体等の金属化合物、色素、顔料、セラミックスなどの固形成分を混合し分散させることができる。また、前記中間体Iと中間体IIの混合時に巻き込まれた気泡が、ポリシロキサン熱可塑物を得る最終熱処理までに消失しやすい。また、該前駆体が室温で固体状態であっても、30〜300℃程度の加熱で溶融状態となるため、加熱した状態で、前記金属、金属酸化物、金属ハロゲン化物、錯体等の金属化合物、色素、顔料、セラミックスなどの固形成分の分散や気泡の消失が可能である。
【0014】
前記金属、金属酸化物、金属ハロゲン化物、錯体等の金属化合物、色素、顔料、セラミックスなどの固形成分の分散性と脱泡性を考慮すると、前記前駆体は加熱時に50000mPa・s以下の粘度となることが好ましい。前駆体から最終生成物であるポリシロキサン熱可塑物への構造変化に伴って、加熱時の粘度が変化する場合も、いずれかの加熱時点で前記の粘度範囲の粘度となることが好ましい。
【0015】
また、前記前駆体をモールドなどの型の中で最終熱処理までの加熱を行うことで、ポリシロキサン熱可塑物をモールド成型体として得ることも可能である。
【0016】
前記中間体Iにおいて、A成分とB成分のモル比(A/B)が0.1〜9.0であることが好ましい。A/Bが0.1未満の場合、300℃未満で形状保持できない傾向があるため好ましくない。A/Bが9.0を超える場合、5%重量減少温度が300℃未満となる傾向がある、または、軟化温度を持たないすなわち熱硬化物となる傾向がある、または得られたものが脆くなる傾向があるため好ましくない。より好ましくはA/Bが0.3〜4.0であり、さらに好ましくは0.7〜1.5である。
【0017】
前記中間体IIにおいて、C成分とD成分のモル比(C/D)が0.1〜9.0であることが好ましい。C/Dが0.1未満の場合、300℃未満で形状保持できない傾向があるため好ましくない。C/Dが9.0を超える場合、軟化温度を持たないすなわち熱硬化物となる傾向があるため好ましくない。より好ましくはC/Dが0.1〜4.0であり、さらに好ましくは0.3〜2.3である。
【0018】
また、前記中間体Iと前記中間体IIの質量比(I/II)が0.7〜19.0であることが好ましい。I/IIが0.7未満の場合、300℃未満で形状保持できない傾向があるため好ましくない。I/IIが19.0を超える場合、5%重量減少温度が300℃未満となる傾向がある、または、軟化温度を持たないすなわち熱硬化物となる傾向がある、または得られたものが脆くなる傾向があるため好ましくない。より好ましくはI/IIが1.0〜9.0であり、さらに好ましくは1.5〜5.7である。
【0019】
また、前記中間体IのA成分として炭素数6〜30の芳香族環を含む三官能シロキサンを含有し、B成分として、芳香族環を含まず炭素数1〜10の炭化水素基を含む二官能シロキサンを含有する前記中間体Iと、前記中間体IIのC成分として炭素数6〜30の芳香族環を含む三官能シロキサンを含有し、D成分として炭素数6〜30の芳香族環を含む二官能シロキサンを含有する前記中間体IIを混合した前駆体を加熱することにより得られるポリシロキサン熱可塑物であることが好ましい。上記のような組み合わせの中間体を混合して得られた前駆体を加熱することで、300〜350℃の軟化温度を有し、300℃未満で形状保持可能であり、5%重量減少温度が300℃以上であるポリシロキサン熱可塑物が得られるためである。
【0020】
また、前記中間体IのA成分として炭素数6〜30の芳香族環を含む三官能シロキサンを含有し、B成分として、芳香族環を含まず炭素数1〜10の炭化水素基を含む二官能シロキサンを含有する前記中間体Iと、前記中間体IIのC成分として炭素数6〜30の芳香族環を含む三官能シロキサンを含有し、D成分として炭素数6〜30の芳香族環を含む二官能シロキサンを含有する前記中間体IIを混合することにより得られる前駆体であることが好ましい。上記のような組み合わせの中間体を混合して得られた前駆体とすることで、金属、金属酸化物、金属ハロゲン化物、錯体等の金属化合物、色素、顔料、セラミックスなどの固形成分の分散や気泡の消失が可能であるためである。
【発明の効果】
【0021】
本発明のポリシロキサン熱可塑物は、300〜350℃の軟化温度を有することから、既存の無機ガラスに比べて低温で成型加工し易く、省エネルギーに寄与するものである。また、既存の有機高分子材料に比べ高温での耐熱性に優れるため、従来、無機材料が使用されていた耐熱性を要求される分野においても使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
芳香族環を含まない炭化水素基、芳香族環を含む炭化水素基から選ばれる置換基を有する三官能シロキサンである成分を1種以上含み、かつ、芳香族環を含まない炭化水素基、芳香族環を含む炭化水素基から選ばれる置換基を有する二官能シロキサンである成分を1種以上含み、300〜350℃の軟化温度を有する本発明のポリシロキサン熱可塑物は、前駆体を加熱することにより得られるものであることが好ましい。
【0023】
前記芳香族環を含む炭化水素基を有する三官能シロキサンの芳香族環を含む置換基は、炭素数6〜30の芳香族環を含むものが好ましく、特にフェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基あるいはそれらが置換基で置換されたものから選ばれる1種以上の基であることが好ましい。
【0024】
前記芳香族環を含まない炭化水素基を有する二官能シロキサンの芳香族環を含まない置換基は、1〜10の炭化水素基を含むものが好ましく、特にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基から選ばれる1種以上の基であることが好ましい。
【0025】
前記芳香族環を含まない炭化水素基を有する三官能シロキサンの芳香族環を含まない置換基は、1〜10の炭化水素基を含むものが好ましく、特にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基から選ばれる1種以上の基であることが好ましい。
【0026】
前記芳香族環を含む炭化水素基を有する二官能シロキサンの芳香族環を含む置換基は、炭素数6〜30の芳香族環を含むものが好ましく、特にフェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基あるいはそれらが置換基で置換されたものから選ばれる1種以上の基であることが好ましい。
【0027】
前記ポリシロキサン熱可塑物を得るための前駆体の加熱は、大気圧下、加圧下、減圧下、不活性雰囲気下で行うことができる。特に減圧状態での加熱を最終熱処理までの加熱に含めることで、前駆体中の気泡を消失し易くなるため好ましい。
【0028】
前記最終熱処理の温度は230〜400℃が好ましい。230℃未満では前記ポリシロキサン熱可塑物を得るまでの時間が長くなる、あるいは、充分な耐熱性を示すものが得られない傾向がある。また、最終熱処理の温度が400℃を超えると前記ポリシロキサン熱可塑物が熱分解を起こす傾向がある。より好ましくは230〜350℃であり、特に好ましくは230〜300℃である。
【0029】
前記前駆体は、少なくとも以下の、A成分及びB成分を含有する中間体Iと、
SiO3/2 [A]
SiO2/2 [B]
(ここでR、R、Rは芳香族環を含まない炭化水素基または芳香族環を含む炭化水素基であり、それぞれ異なっていても良いし同一でも良く、R、R、Rのうち少なくとも1つ以上が芳香族環を含まない炭化水素基である。)
C成分及びD成分を含有する中間体IIを混合して得られるものが好ましい。
SiO3/2 [C]
SiO2/2 [D]
(ここでR、R、Rは芳香族環を含まない炭化水素基または芳香族環を含む炭化水素基であり、それぞれ異なっていても良いし同一でも良く、R、R、Rのうち少なくとも1つ以上が芳香族環を含む炭化水素基である。)
【0030】
前記中間体IのA成分およびB成分の置換基であるR、R、Rは炭素数1〜10の炭化水素基を含むもの、特にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の芳香族環を含まない炭化水素基、または、炭素数6〜30の芳香族環を含むもの、特にフェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基あるいはそれらが置換基で置換されたもの等の芳香族環を含む炭化水素基から選ばれることが好ましく、R、R、Rのうち少なくとも1つ以上が前記の芳香族環を含まない炭化水素基である。R、Rがともに前記の芳香族環を含まない炭化水素基であることが特に好ましい。
【0031】
前記中間体IIのC成分およびD成分の置換基であるR、R、Rは炭素数1〜10の炭化水素基を含むもの、特にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の芳香族環を含まない炭化水素基、または、炭素数6〜30の芳香族環を含むもの、特にフェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基あるいはそれらが置換基で置換されたもの等の芳香族環を含む炭化水素基から選ばれることが好ましく、R、R、Rのうち少なくとも1つ以上が前記の芳香族環を含む炭化水素基である。
【0032】
前記中間体IのA成分およびB成分は、それぞれ、RSiX3、RSiX2で表されるシラン化合物を加水分解、重縮合することにより得られる。ここでXは加水分解性基であり、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基、クロロ基、ブロモ基などのハロゲン基、アミノ基、アジド基、アセトアミド基、イミダゾール基、シラザンなどのSi−N結合、アルキルスルホネート基、パーフルオルアルキルスルホネート基などのSi−O−S結合、あるいはニトリル基などが挙げられる。
【0033】
前記中間体IはRSiX3、RSiX2を同時に加水分解、重縮合することにより得られるものでも良いし、それぞれのシラン化合物を別々に加水分解、重縮合したものを混合して得られるものでも良い。
【0034】
前記中間体Iは、重量平均分子量(以下Mwと表記する)が1000〜40000であることが好ましい。1000未満では、泡が残り易いため成型性が悪くなる傾向がある。また、40000を超える場合、前駆体の粘度が高くなり過ぎるため成型性が悪くなる傾向がある。より好ましくはMwが1000〜30000であり、さらに好ましくは3000〜20000である。
【0035】
前記中間体Iは、反応進行度が50〜90%であることが好ましい。50%未満では泡が残り易いため成型性が悪くなる傾向がある。また、90%を超える場合、前駆体の粘度が高くなり過ぎるため成型性が悪くなる傾向がある。より好ましい反応進行度は55〜85%である。なお、該反応進行度は、赤外吸収スペクトルの3400cm−1のシラノール基の吸光度のピーク強度aと1700cm−1のフェニル基の吸光度のピーク強度bの強度比(a/b)を用いて算出した。
【0036】
前記中間体IIのC成分およびD成分は、それぞれ、RSiX3、RSiX2で表されるシラン化合物を加水分解、重縮合することにより得られる。ここでXは加水分解性基であり、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基、クロロ基、ブロモ基などのハロゲン基、アミノ基、アジド基、アセトアミド基、イミダゾール基、シラザンなどのSi−N結合、アルキルスルホネート基、パーフルオルアルキルスルホネート基などのSi−O−S結合、あるいはニトリル基などが挙げられる。
【0037】
前記中間体IはRSiX3、RSiX2を同時に加水分解、重縮合することにより得られるものでも良いし、それぞれのシラン化合物を別々に加水分解、重縮合したものを混合して得られるものでも良い。
【0038】
前記中間体IIは、Mwが700〜10000であることが好ましい。700未満では最終的に得られる前記ポリシロキサン熱可塑物が脆くなる傾向がある。また、10000を超える場合、最終的に得られるものが軟化温度を持たない、すなわち熱硬化体となる傾向がある。より好ましくはMwが1000〜4000であり、さらに好ましくは1200〜3000である。
【0039】
前記中間体IIは、反応進行度が80〜99%であることが好ましい。80%未満では泡が残り易いため成型性が悪くなる傾向がある。また、99%を超える場合、前記中間体Iとの相溶性が悪くなる傾向がある。より好ましい反応進行度は85〜99%であり、さらに好ましくは90〜99%である。
【0040】
前記中間体IおよびIIを混合し前記前駆体を得る際の、該混合は手作業で行っても良いし、ホモジナイザー、混練機等を用いて機械的に行ってもよく、粉砕機で粉砕した後に混合してもよい。
【0041】
また、該前駆体に金属、金属酸化物、金属ハロゲン化物、錯体等の金属化合物、色素、顔料、セラミックスなどの固形成分を混合し分散させてもよい。分散させる固形成分として、例えば紫外線、可視光、赤外線を遮断する遮光性部材中に分散される微粒子材料を前記固形成分として用いることができ、紫外線遮断微粒子として酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどが、可視光遮断微粒子としてカーボン、遷移金属複合酸化物などが、赤外線遮断微粒子としてインジウム錫酸化物(ITO)、錫アンチモン酸化物(ATO)、タングステン酸化物、窒化チタン(TiN)、導電性酸化亜鉛、無水アンチモン酸亜鉛、六ホウ化化合物などが挙げられる。六ホウ化化合物としては六ホウ化ランタン(LaB6)、六ホウ化セリウム(CeB6)、六ホウ化プラセオジム(PrB6)、六ホウ化ネオジム(NdB6)、六ホウ化ガドリニウム(GdB6)あるいはこれらの混合物がある。
【0042】
また、導電性部材中に分散される導電性の微粒子を前記固形成分として用いることができ、該微粒子として、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、インジウムチタン酸化物(ITiO)、インジウムジルコニウム酸化物、錫アンチモン酸化物(ATO)、フッ素錫酸化物(FTO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム亜鉛酸化物(GZO)等の酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛を主成分とする微粒子が挙げられる。
【0043】
また、防汚・抗菌性部材中に分散された抗菌性の微粒子を前記固形成分として用いることができ、該微粒子として、酸化チタン(TiO2)、酸化マンガン(MnO2)、白金微粒子等が挙げられる。
【0044】
その他、溶融シリカ、ヒュームドシリカ、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸、含水珪酸カルシウム、含水珪酸アルミニウム、ガラスビーズ、石英粉末、雲母、タルク、マイカ、クレー、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、チタン酸カリウム、珪藻土、ガラス繊維、フッ素化ダイヤモンド、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、金属酸化物などの無機充填剤などを前記固形成分として用いることができる。
【0045】
また、前記無機充填材は単独または2種以上を併用することができる。また、公知の表面処理剤で処理されたものやコロイド状の溶液でも良い。
【0046】
また、前記固形成分は、前記中間体IまたはIIに混合しても良いし、前記中間体IとIIの混合時に混合しても良いし、前記中間体IまたはIIの原料に混合しても良い。
【0047】
本発明のポリシロキサン熱可塑物は、300〜350℃の軟化温度を有し、300℃未満で形状保持可能であり、5%重量減少温度が300℃以上であることから、既存の無機ガラスに比べて低温で成型加工でき、かつ、既存の有機高分子材料に比べて高温での耐熱性があるため、優れた耐熱性の要求される、レンズや光学部品の材料、封止材、接着剤、シート、フィルムの材料として用いることができる。
【実施例】
【0048】
〔中間体I、中間体II、およびポリシロキサン熱可塑物の前駆体の評価方法〕
(Mwの測定)
ゲル浸透クロマトグラフィー「HLC−8020」(東ソー株式会社製)を用いて、溶出溶媒をTHFとし、ポリスチレン換算の重量平均分子量を測定した。
【0049】
(反応進行度)
FT−IRスペクトルメーター「PARAGON1000」(PERKIN ELMER製)を用いた錠剤法による透過測定により、測定した赤外吸収スペクトルの3400cm−1のシラノール基の吸光度のピーク強度aと1700cm−1のフェニル基の吸光度のピーク強度bの強度比(a/b)を用いて反応進行度を算出した。
【0050】
〔ポリシロキサン熱可塑物の評価方法〕
(5%重量減少温度測定)
熱重量・示差熱分析「TG8120」(株式会社リガク製)を用いて、空気70ml/分の気流下でポリシロキサン熱可塑物10mgを昇温速度5℃/分で30℃から600℃まで昇温し、測定前の重量を基準(100%)として総重量の5%が減少した時点の温度を求めた。
【0051】
(軟化温度)
理学製熱膨張測定器TMA8310を用いて、1g加重でのたわみ温度を測定した。
【0052】
実施例1
(中間体Iの合成)
室温でフェニルトリメトキシシラン50g、ジメチルジメトキシシラン30gを120gのイソプロピルアルコールに溶解させた後、水180g、氷酢酸30mgを加えて混合した。混合溶液を100℃で4時間加熱攪拌し無色透明な粘性液体を得た。これをジイソプロピルエーテルに溶解し、純水で酢酸を抽出した。ジイソプロピルエーテルを留去し、大気圧下150℃で12時間加熱し、中間体Iを得た。この中間体IはMwが6000、反応進行度70%のものであった。
【0053】
(中間体IIの合成)
室温でフェニルトリメトキシシラン12g、ジフェニルジメトキシシラン34gを80gのエチルアルコールに溶解させた後、水180g、氷酢酸1.2gを加えて混合した。混合溶液を60℃で3時間加熱することにより加水分解させた後、150℃5時間、減圧下で245℃1時間加熱し、中間体IIを得た。この中間体IIはMwが1500、反応進行度98%のものであった。
【0054】
(ポリシロキサン熱可塑物の合成および成型)
前記中間体Iを0.4g、前記中間体IIを0.1g秤量し、乳鉢で粉砕、混合し、ポリシロキサン熱可塑物の前駆体を得た。この前駆体を、減圧下150℃1時間脱泡し、ホットディスペンサーにて150℃で所定のモールドへ注入。その後200℃2時間、265℃1時間、250℃5時間加熱することにより、ポリシロキサン熱可塑物を得た。該熱可塑物の軟化温度は325℃であった。諸物性を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
実施例2
(中間体Iの合成)
室温でフェニルトリメトキシシラン50g、ジメチルジメトキシシラン30gを120gのイソプロピルアルコールに溶解させた後、水180g、氷酢酸30mgを加えて混合した。混合溶液を100℃で4時間加熱攪拌し無色透明な粘性液体を得た。これをジイソプロピルエーテルに溶解し、純水で酢酸を抽出した。ジイソプロピルエーテルを留去し、大気圧下150℃で12時間加熱し、中間体Iを得た。この中間体IはMwが6000、反応進行度70%のものであった。
【0057】
(中間体IIの合成)
室温でフェニルトリメトキシシラン18g、ジフェニルジメトキシシラン15gをエチルアルコール80gに溶解させた後、水180g、氷酢酸1.2gを加えて混合した。混合溶液を60℃で3時間加熱することにより加水分解させた後、150℃5時間、減圧下で245℃1時間加熱し、中間体IIを得た。この中間体IIはMwが1400、反応進行度98%のものであった。
【0058】
(ポリシロキサン熱可塑物の合成および成型)
前記中間体Iを0.4g、前記中間体IIを0.1g秤量し、乳鉢で粉砕、混合し、ポリシロキサン熱可塑物の前駆体を得た。この前駆体を、減圧下150℃1時間脱泡し、ホットディスペンサーにて150℃で所定のモールドへ注入。その後200℃2時間、265℃1時間、250℃5時間加熱することにより、ポリシロキサン熱可塑物を得た。該熱可塑物の軟化温度は341℃であった。諸物性を表1に示す。
【0059】
比較例1
(中間体Iの合成)
室温でフェニルトリメトキシシラン50g、ジメチルジメトキシシラン30gを120gのイソプロピルアルコールに溶解させた後、水180g、氷酢酸30mgを加えて混合した。混合溶液を100℃で4時間加熱攪拌し無色透明な粘性液体を得た。これをジイソプロピルエーテルに溶解し、純水で酢酸を抽出した。ジイソプロピルエーテルを留去し、大気圧下150℃で12時間加熱し、中間体Iを得た。この中間体IはMwが6000、反応進行度70%のものであった。
【0060】
(ポリシロキサン熱可塑物の合成および成型)
前記中間体Iを0.5g秤量し乳鉢で粉砕し前駆体を得た。すなわち該前駆体は前記中間体IIを含有しない前駆体である。この前駆体を、減圧下150℃1時間脱泡し、ホットディスペンサーにて150℃で所定のモールドへ注入。その後200℃2時間、265℃1時間、250℃5時間加熱すると、熱可塑性を示さない硬化物が得られた。諸物性を表1に示す。
【0061】
比較例2
(中間体IIの合成)
室温でフェニルトリメトキシシラン18g、ジフェニルジメトキシシラン15gをエチルアルコール80gに溶解させた後、水180g、氷酢酸1.2gを加えて混合した。混合溶液を60℃で3時間加熱することにより加水分解させた後、150℃5時間、減圧下で245℃1時間加熱し、中間体IIを得た。この中間体IIはMwが1400、反応進行度98%のものであった。
【0062】
(ポリシロキサン熱可塑物の合成および成型)
前記中間体IIを0.5g秤量し乳鉢で粉砕し前駆体を得た。すなわち該前駆体は前記中間体Iを含有しない前駆体である。この前駆体を、減圧下150℃1時間脱泡し、ホットディスペンサーにて150℃で所定のモールドへ注入。その後200℃2時間、265℃1時間、250℃5時間加熱することにより、ポリシロキサン熱可塑物を得た。該熱可塑物の軟化温度は80℃であった。諸物性を表1に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族環を含まない炭化水素基、芳香族環を含む炭化水素基から選ばれる置換基を有する三官能シロキサンである成分を1種以上含み、かつ、芳香族環を含まない炭化水素基、芳香族環を含む炭化水素基から選ばれる置換基を有する二官能シロキサンである成分を1種以上含み、300〜350℃の軟化温度を有することを特徴とするポリシロキサン熱可塑物。
【請求項2】
最終熱処理によって得られる300〜350℃の軟化温度を有するポリシロキサン熱可塑物の前駆体であり、少なくとも以下の、A成分及びB成分を含有する中間体Iと、
SiO3/2 [A]
SiO2/2 [B]
(ここでR、R、Rは芳香族環を含まない炭化水素基または芳香族環を含む炭化水素基であり、それぞれ異なっていても良いし同一でも良く、R、R、Rのうち少なくとも1つ以上が芳香族環を含まない炭化水素基である。)
C成分及びD成分を含有する中間体IIを混合して得られることを特徴とする請求項1に記載のポリシロキサン熱可塑物の前駆体。
SiO3/2 [C]
SiO2/2 [D]
(ここでR、R、Rは芳香族環を含まない炭化水素基または芳香族環を含む炭化水素基であり、それぞれ異なっていても良いし同一でも良く、R、R、Rのうち少なくとも1つ以上が芳香族環を含む炭化水素基である。)
【請求項3】
前記中間体Iにおいて、A成分とB成分のモル比(A/B)が0.1〜9.0であり、前記中間体IIにおいて、C成分とD成分のモル比(C/D)が0.1〜9.0であることを特徴とする請求項2に記載のポリシロキサン熱可塑物の前駆体。
【請求項4】
前記中間体Iと前記中間体IIの質量比(I/II)が0.7〜19.0であることを特徴とする請求項2または3に記載のポリシロキサン熱可塑物の前駆体。
【請求項5】
前記中間体IのA成分として炭素数6〜30の芳香族環を含む三官能シロキサンを含有し、B成分として、芳香族環を含まず炭素数1〜10の炭化水素基を含む二官能シロキサンを含有する前記中間体Iと、前記中間体IIのC成分として炭素数6〜30の芳香族環を含む三官能シロキサンを含有し、D成分として炭素数6〜30の芳香族環を含む二官能シロキサンを含有する前記中間体IIを混合した前駆体を加熱することにより得られる請求項1乃至4のいずれかに記載のポリシロキサン熱可塑物。
【請求項6】
前記中間体IのA成分として炭素数6〜30の芳香族環を含む三官能シロキサンを含有し、B成分として、芳香族環を含まず炭素数1〜10の炭化水素基を含む二官能シロキサンを含有する前記中間体Iと、前記中間体IIのC成分として炭素数6〜30の芳香族環を含む三官能シロキサンを含有し、D成分として炭素数6〜30の芳香族環を含む二官能シロキサンを含有する前記中間体IIを混合した請求項1乃至4のいずれかに記載のポリシロキサン熱可塑物の前駆体。

【公開番号】特開2011−132314(P2011−132314A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291445(P2009−291445)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】