説明

ポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法

【課題】高発泡倍率で、厚みが厚く、大きな断面積を有するポリスチレン系樹脂押出発泡体を、製造時の安全性を確保しながら容易に製造する方法を提供することにある。
【解決手段】溶融されたポリスチレン系樹脂に物理発泡剤が混合されてなる発泡性溶融混合物を、厚みが少なくとも10mmとなるように、かつ断面積が少なくとも50cm2となるように押出発泡させてポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造する方法において、該物理発泡剤が発泡剤全量に対して、(a)10〜70重量%の炭素数3〜5の飽和炭化水素、(b)10〜60重量%の炭素数1〜4の脂肪族アルコール、(c)10〜65重量%のエーテル類、および(d)10〜50重量%の二酸化炭素からなる混合発泡剤を使用することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建築物の壁、床、屋根等の断熱材や畳芯材等に使用される板状のポリスチレン系樹脂押出発泡体、特に厚みが厚く、断面積の大きい板状押出発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリスチレン系樹脂押出発泡体は優れた断熱性及び好適な機械的強度を有することから一定幅の板状に成形されたものが断熱材として広く利用されてきている。このような発泡板の製造方法として、ポリスチレン系樹脂に気泡調整剤を加え、加熱溶融混練後、物理発泡剤を添加し、これらの混合物を高圧域から低圧域に押出し、さらに所望に応じて押出機のダイ出口に賦形装置を連結して発泡体を製造する方法が知られている(特許文献1、2、3)。
【0003】
このような発泡体を製造するに際しては、発泡剤としては、優れた断熱性を得るためにポリスチレン系樹脂に対して難透過性ガスである塩化フッ化炭化水素(以下、CFCという)、水素原子含有塩化フッ化炭化水素(以下、HCFCという)や分子中に塩素原子を持たないフッ化炭化水素(以下、HFCという)等のフロン類を使用し、また発泡体の寸法安定性や生産安定性を得るため、ポリスチレン系樹脂に対して易透過性ガスである塩化メチルなどのハロゲン化炭化水素が広く使用されてきた。
【0004】
これらの発泡剤において、CFCやHCFCはオゾン層を破壊する虞が大きく、また、HFCはオゾン破壊係数が0(ゼロ)であるものの地球温暖化係数が大きいため、地球環境の保護という点ではその使用は好ましくない。塩化メチルは発泡体からのガスの透過速度が速い可燃性ガスであるために、静電気着火した際、火災の事故を招く虞があるなど発泡体製造時の危険性が高い。さらに塩化メチルは腐食性を有するガスで押出機の老朽化を促進する虞があり、使用を避けるか、もしくは極力使用量を低減することが好ましい。このような背景から、環境に優しく、危険性の少ない発泡剤を使用してポリスチレン系樹脂発泡体を製造することが望まれている。
【0005】
一方、発泡剤として使用される飽和炭化水素の一つであるイソブタンは、オゾン破壊係数が0(ゼロ)であり、地球温暖化係数も小さく、地球環境に優しいという観点からは優れた発泡剤である。
また、ポリスチレンに対する透過速度が空気より極めて遅いことから、イソブタンを使用した発泡断熱板は寸法変化(収縮)が小さく、長期にわたって製造時の断熱性を維持することが可能である。
【0006】
また、近年、ジメチルエーテル等のエーテル類の発泡剤を使用することも試みられている。かかるエーテル類の発泡剤は塩化メチルほどではないが、ポリスチレン系樹脂との相溶性がよいため、安定して発泡体を製造することができ、かつ軽量性に優れたポリスチレン系樹脂発泡体が得られ易い。
発泡剤として飽和炭化水素とエーテル類の混合発泡剤を用いて、フロン類やハロゲン化炭化水素を使用せず、かかるポリスチレン系樹脂発泡体を製造する方法が知られている(特許文献4)。
この方法は、飽和炭化水素とジメチルエーテルを発泡剤として用いることによって、前記の環境問題に対する対策を行いながら、かつ軽量で断熱性に優れる発泡体を得ることができる。しかしながら、ジメチルエーテルは非常に可燃性が高く、また発泡体から早期に逸散するガスであるため、製造時に静電気着火を起した場合、火災を惹き起こす危険性があり、安全性の面で課題を残すものであった。
【0007】
また、二酸化炭素はオゾン破壊係数が0(ゼロ)であり、地球温暖化係数もフロン類と比較して非常に小さいため、環境に対する負荷が少ない優れた発泡剤である。また、二酸化炭素は不燃性のガスで、ポリスチレンに対する透過速度が極めて速いことから、発泡体製造時の着火を未然に防止し、安全性を高めることができる。さらに、腐食性もない無機ガスであるため押出機等の装置への負担も少なくすることができる。
【0008】
また、発泡体の取り扱い時における安全性を確保する目的から、発泡剤としてイソブタン、二酸化炭素、エーテル類の混合発泡剤を使用し、二酸化炭素の吸着機能を有したゼオライトなどの多孔質無機物質と、発泡体気泡径を拡大させる機能を有した流動パラフィンなどの気泡径調整剤を添加して発泡体を製造する技術が開示されている(特許文献5)。
しかしながら、上記の場合、気泡径調整剤として使用される流動パラフィンの融点が低いために、該気泡径調整剤がポリスチレン系樹脂に添加されて得られた発泡体は、圧縮強度や曲げ強度といった機械的物性が損なわれたり、また発泡体自体の耐熱性が低下してしまう問題点がある。
【0009】
【特許文献1】特開2003−292664号公報
【特許文献2】特開2004−59595号公報
【特許文献3】特開2004−196907号公報
【特許文献4】特開平11−158317号公報
【特許文献5】特開2003−261706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法において、オゾン破壊係数が0(ゼロ)で、地球温暖化係数も小さい発泡剤を用いた発泡体であって、優れた断熱性能および建材用途等に要求される機械的物性、難燃性を有し、さらには製造時の安全性を考慮した軽量なポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、多角的な観点から鋭意検討を重ねた結果、飽和炭化水素、エーテル類、二酸化炭素の混合発泡剤に、脂肪族アルコールを添加することにより、二酸化炭素の溶解性を改善し、押出発泡させた場合、製造時の安全性を確保して、機械的物性を損なうことなく高発泡倍率で大きな断面積を有し、かつ厚みの厚いポリスチレン系樹脂押出発泡体が容易に得られることを見出し本発明を為した。
【0012】
すなわち、本発明は、(1)溶融されたポリスチレン系樹脂に物理発泡剤が混合されてなる発泡性溶融混合物を、厚みが少なくとも10mmとなるように、かつ断面積が少なくとも50cm2となるように押出発泡させてポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造する方法において、該物理発泡剤が発泡剤全量に対して、(a)10〜70重量%の炭素数3〜5の飽和炭化水素、(b)10〜60重量%の炭素数1〜4の脂肪族アルコール、(c)10〜65重量%のエーテル類、及び(d)10〜50重量%の二酸化炭素とからなる物理発泡剤(ただし、(a)、(b)、(c)及び(d)の総和が100重量%)を使用することを特徴とするポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法に関し、好ましくは(2)物理発泡剤が発泡剤全量に対して、(a)10〜50重量%の炭素数3〜5の飽和炭化水素、(b)10〜45重量%の炭素数1〜4の脂肪族アルコール、(c)10〜45重量%のエーテル類、及び(d)10〜40重量%の二酸化炭素とからなる物理発泡剤(ただし、(a)、(b)、(c)及び(d)の総和が100重量%)を使用することを特徴とする上記(1)記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法、(3)エーテル類がジメチルエーテルであることを特徴とする上記(1)または(2)記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法、(4)炭素数1〜4の脂肪族アルコールがエタノールであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法、(5)得られるポリスチレン系樹脂押出発泡体の見かけ密度が20〜60kg/m3であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法、を要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、オゾン破壊係数が0(ゼロ)で、地球温暖化係数も小さい発泡剤を用いた発泡体であって、優れた断熱性能および建材用途等に要求される機械的物性、難燃性を有し、さらには製造時の安全性を考慮した軽量なポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡体(以下、単に押出発泡体という)の製造方法は、従来のポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造する方法と同様に、溶融されたポリスチレン系樹脂に物理発泡剤が混合されてなる発泡性溶融混合物を押出発泡させる方法である。該発泡性溶融混合物は、押出機からフラットダイを通して低圧域に押出して発泡させ、該ダイの下流側に配置された成形型、例えば、平行あるいは入り口から出口方向に向かって緩やかに拡大するように設置された上下二枚のポリテトラフルオロエチレン樹脂(テフロン(登録商標))等のフッ素系樹脂からなる板で構成されるもの(以下、ガイダーと称する)や、成形ロールなどの成形具を通過させることにより板状に成形する方法が好ましく採用される。上記発泡性溶融混合物は、押出機内にポリスチレン系樹脂を供給して溶融混練し、発泡剤を、必要に応じてその他の添加剤を添加して、混練して調製され、該発泡性溶融混合物は冷却し発泡に適した溶融粘度に調整した後、押出機からダイリップを通して低圧域に押出し発泡させる。上記の冷却は使用されるポリスチレン系樹脂の種類、流動性向上剤の添加の有無、流動性向上剤の種類や量、さらには混合発泡剤の添加量や発泡剤の成分によっても異なるが、通常のポリスチレン系樹脂の場合には、一般的には110〜130℃に冷却される。
【0015】
本発明において押出機に供給されるポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン単独重合体やスチレンを主成分とするスチレン系共重合体が挙げられる。スチレン共重合体としては、例えば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ポリフェニレンエーテル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−メチルスチレン共重合体、スチレン−ジメチルスチレン共重合体、スチレン−エチルスチレン共重合体、スチレン−ジエチルスチレン共重合体等が挙げられる。上記スチレン系共重合体におけるスチレンに由来する構造単位の含有量は50モル%以上であり、好ましくは80モル%以上である。
【0016】
また、上記ポリスチレン系樹脂に対しては、本発明の目的、および効果が達成される範囲内において、その他の重合体を混合したものであってもよい。その他の重合体としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、スチレン―ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体水添物、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体水添物、スチレン−エチレン共重合体などが挙げられる。このようなその他の重合体の使用量は、上記スチレン系樹脂100重量部に対して100重量部未満であり、60重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましい。
【0017】
本発明の製造方法により得られる押出発泡体は、厚みが厚く、大きな断面積を有し高発泡倍率を有する主として、建築物の壁、床、屋根等の断熱材や畳芯材等、また軽量盛土工法の軽量埋込材に使用される板状のポリスチレン系樹脂押出発泡体であり、厚みが少なくとも10mm以上を有するものであるが、通常、上限は250mmであり、好ましくは20〜200mmである。押出発泡体の厚みが10mm未満の場合は、断熱材として使用する場合に断熱性能が不十分であり、また、軽量盛土工法の軽量埋込材として使用する場合には施工効率が大きく低下する。
【0018】
本発明の製造方法により得られる押出発泡体の断面積(押出方向と直交する垂直断面の断面積(幅方向垂直断面積))は少なくとも50cm2以上であり、好ましくは60cm2以上であり、さらに好ましくは100cm2以上である。通常その断面積の上限は3000cm2であるが、2500cm2以下の物が一般的である。また、押出機の押出能力が大きいほど大断面積の発泡体を得ることが容易となる。断面積が50cm2未満では、断熱工事や軽量埋込材の敷設工事に際して使用される場合には施工効率が大きく低下してしまう。
【0019】
本発明の製造方法においては、物理発泡剤は、(a)炭素数3〜5の飽和炭化水素、(b)脂肪族アルコール、(c)エーテル類、および(d)二酸化炭素を特定の比率で配合した混合発泡剤が使用される。すなわち、本発明においては、発泡剤全量に対して、(a)10重量%以上70重量%以下の炭素数3〜5の飽和炭化水素、(b)10重量%以上60重量%以下の炭素数1〜4の脂肪族アルコール、(c)10重量%以上65重量%以下のエーテル類、および(d)10重量%以上50重量%以下の二酸化炭素とからなる混合発泡剤が使用される。
【0020】
上記混合発泡剤において、炭素数3〜5の飽和炭化水素が10重量%未満の場合は、製造後の発泡体の収縮が大きくなり易い。一方、70重量%を超える場合は、飽和炭化水素自体可燃性のガスであるから発泡体の難燃性が著しく低下する虞がある。
【0021】
炭素数3〜5の飽和炭化水素としては、例えば、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、シクロペンタン、ノルマルペンタンなどが例示される。これらは単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。なお、ポリスチレン系樹脂への相溶性、取り扱い性、得られた発泡体の断熱性の点からイソブタンが用いられることが好ましく、さらにはイソブタン単独で使用することが好適である。
【0022】
また、炭素数1〜4の脂肪族アルコールが10重量%未満の場合は、二酸化炭素の相溶性を高める効果が低く、ダイリップからガスが噴出したり、製造の安全性が低下するなど、安定して良好な発泡体を製造することが難しくなる。一方、60重量%を超える場合は、製造の安全性が低下したり、押出発泡体の寸法安定性が不十分なものとなる虞がある。該脂肪族アルコールは二酸化炭素のポリスチレン系樹脂への相溶性を高める効果を有するため、気泡径を拡大させる気泡調整剤や二酸化炭素吸着機能を有する多孔質物質などの無機物質を添加することなく安定した発泡体の製造が可能である。また、該脂肪族アルコールは発泡体製造後、最終的には(常温常圧下で1〜2ヶ月ほどで)ほぼ全量が大気中に逸散されて発泡体中にほとんど残存しないため、発泡体の機械的強度などの物性を損なう虞もない。
【0023】
このような脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコールなどが例示される。これらは単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。これらのなかでも、本発明においてはポリスチレン系樹脂への溶解性やポリスチレン系樹脂への二酸化炭素の相溶性を向上させる効果が大きい点から、炭素数1〜4の脂肪族アルコール、更にはエタノール単独で使用されるのが好適である。
【0024】
エーテル類が10重量%未満の場合、軽量な(高発泡の)発泡体を得ることが難しくなる。一方、65重量%を超える場合は、発泡体の製造時に飛散するガスが多くなるため製造時の安全性を十分に確保することが困難となる虞がある。エーテル類としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルビニルエーテル等が例示される。これらは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。なお、本発明においてはポリスチレン系樹脂への相溶性、軽量化、取り扱い性などの点からジメチルエーテルが好適に使用される。
【0025】
さらに本発明の混合発泡剤を構成する二酸化炭素が10重量%未満の場合は、製造時の着火防止等の安全性を向上させる効果を十分に確保することが期待できない。一方、50重量%を超える場合はポリスチレン系樹脂へのガスの溶解が許容範囲を超えダイリップからガスが噴出し、安定して良好な発泡体を製造することが困難となる。
【0026】
本発明の方法において、発泡剤としてその他に窒素、空気などの無機ガスや水、あるいはケトン類などを必要に応じて使用することは差し支えないが、これら他の発泡剤は、上記(a)、(b)、(c)及び(d)の総和を100重量部とした時に、通常は多くとも20重量部であり、好ましくは多くとも10重量部であり、より好ましくは0〜5重量部である。
【0027】
本発明において、上記物理発泡剤の添加量は、発泡剤の種類、目的とする押出発泡体の見かけ密度、ポリスチレン系樹脂の種類などにより増減されるものであり、一概に特定することは難しいが、物理発泡剤の場合は、ポリスチレン系樹脂1kgに対して、混合発泡剤の各種発泡剤の合計として通常0.8〜3.0モル、好ましくは0.9〜2.7モル、より好ましくは1.0〜2.2モルの範囲で添加される。また化学発泡剤(所謂分解型発泡剤)は併用しない方が好ましいが、化学発泡剤を併用する場合は少量使用され、化学発泡剤はポリスチレン系樹脂100重量部に対して通常0.05〜5重量部の範囲で添加されるが、0.1〜3重量部の範囲が好ましく、0.1〜2重量部の範囲がより好ましい。
【0028】
ポリスチレン系樹脂を押出機内で溶融混練する際にポリスチレン系樹脂の熱分解を抑制するために熱安定剤を添加することが好ましい。
【0029】
熱安定剤の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジ−メチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン等があげられる。なお、これらの熱安定剤は、ポリスチレン系樹脂そのものの分解を抑制したり、また、後述する難燃剤の熱分解を抑制する効果も有するため、安定して良好な発泡体を得るうえで好適に用いられる。なお、該熱安定剤は単独でまたは2種以上を混合して使用することも差し支えない。
【0030】
本発明の方法により製造される押出発泡体の見かけ密度は20〜60kg/cm3であることが好ましい。見かけ密度が20kg/cm3未満の場合、そのような見かけ密度の板状押出発泡体を製造すること自体が困難であるが、仮にそのような見かけ密度の押出し発泡体が得られたとしても、独立気泡率が大きく低下し、機械的物性が大きく低下してしまうと予想される。一方、見かけ密度が60kg/cm3を超える場合は、厚みを必要以上に厚くしない限り十分な断熱効果が発揮されず、また軽量性の点においても不十分なものとなる虞がある。
【0031】
本発明によって得られる押出発泡体に難燃性を付与するために、ポリスチレン系樹脂に難燃剤を混練することができる。ポリスチレン系樹脂に混練される難燃剤としては、臭素系難燃剤が好ましく使用される。臭素系難燃剤としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリブロモフェノール、デカブロモジフェニルオキサイド、臭素化ビスフェノールエーテル誘導体などが挙げられる。これらの臭素系難燃剤は、押出機内でポリスチレン系樹脂と溶融混練されることによって、極微量ではあるが熱劣化によってその一部が分解し、発生したラジカルによってポリスチレン系樹脂の分子鎖を切断し、分子量低下を招くことがある。ポリスチレン系樹脂の分子量低下が大きいとリップ付近内部で発泡が生じ良好な発泡体が得られなくなったり、仮に発泡体が得られた場合でも、厚みが厚く、断面積の大きい発泡体を得ることは非常に困難となる。本発明においてはこのような臭素系難燃剤が添加された場合には、上記した熱安定剤を使用することが好ましい。
【0032】
本発明の製造方法においては、必要に応じて、本発明の目的、効果を阻害しない範囲で気泡調整剤、着色剤、酸化防止剤、流動性向上剤、充填剤などのポリスチレン系樹脂発泡体に使用される各種の添加剤を添加することができる。
【0033】
本発明の製造方法によって得られる板状の押出発泡体(以下、発泡板あるいは押出発泡板と称することがある)は、厚み方向の平均気泡径が通常、0.1〜2.0mmのものであり、好ましくは0.12〜1.5mm、更に好ましくは0.15〜1.3mmのものである。平均気泡径が上記範囲内にあることにより、高い断熱性を有する発泡板とすることができる。平均気泡径が0.1mm未満のものでは、厚みが厚くかつ見かけ密度の小さな発泡板を得ること自体が難しくなる。一方、2.0mmを超える場合には、断熱性能の低い発泡板となってしまう。尚、JIS A9511(1995)記載の押出ポリスチレンフォーム保温板3種の熱伝導率が0.028W/mK以下を示すような高度の断熱性を示す発泡板を得る場合には、上記平均気泡径が0.1〜0.5mmであると共に、発泡板中に熱伝導率が低く、ポリスチレン系樹脂に対するガス透過度が小さい発泡剤、例えば、イソブタン、がある程度含有されるようにすることが重要である。ただし、イソブタンの含有量が多過ぎると発泡板の難燃性が低下するので注意することが必要である。
【0034】
本発明において、押出発泡体の平均気泡径を調整するため気泡調整剤を添加することができる。気泡調整剤としては、例えば、タルク、カオリン、マイカ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、クレー、酸化アルミニウム、ベントナイト、ケイソウ土等の無機粉末が例示される。
【0035】
本発明において、平均気泡径の測定方法は次のとおりである。押出発泡体として得られる発泡板の厚み方向の平均気泡径(DT:mm)および発泡板の幅方向の平均気泡径(DW:mm)は、発泡板の幅方向垂直断面(発泡板の押出方向と直交する垂直断面)を、顕微鏡等を用いてスクリーンまたはモニター等に拡大投影し、投影画像上において測定しようとする方向に直線を引き、その直線と交叉する気泡の数を計数し直線の長さ(ただし、この長さは拡大投影した投影画像上の直線の長さではなく、投影画像の拡大率を考慮した真の直線の長さを指す)を、計数された気泡の数で除して各々求められる。
【0036】
また、発泡板押出方向の平均気泡径(DL:mm)は、発泡板の押出方向垂直断面(発泡板を幅方向に二等分し、かつ発泡板の幅方向と直交する垂直断面)を、顕微鏡を用いてスクリーンまたはモニター等に拡大投影し、上記DT、DWの場合と同様にして求められる。 ただし、厚み方向の平均気泡径(DT:mm)の測定については、幅方向垂直断面の中央部および両端部の計3箇所に厚み方向に全厚みに亘る直線を引き各々の直線の長さと該直線と交叉する気泡の数から各直線上に存在する気泡の平均径(直線の長さ/該直線と交叉する気泡の数)を求め、求められた3個所の平均径の算術平均値を厚み方向の平均気泡径(DT:mm)とする。
【0037】
幅方向の平均気泡径(DW:mm)は、幅方向垂直断面の中央部および両端部の計3箇所に厚み方向に二等分する位置に、長さ3000μmの直線を幅方向に引き、長さ3000μmの直線と(該直線と交叉する気泡の数−1)から各直線上に存在する気泡の平均径(3000μm/(該直線と交叉する気泡の数−1))を求め、求められた3個所の平均径の算術平均値を幅方向の平均気泡径(DW:mm)とする。
押出方向の平均気泡径(DL:mm)は、押出方向垂直断面の中央部および両端部の計3箇所に厚み方向に二等分する位置に、長さ3000μmの直線を長手方向に引き、長さ3000μmの直線と(該直線と交叉する気泡の数−1)から各直線上に存在する気泡の平均径(3000μm/(該直線と交叉する気泡の数−1))を求め、求められた3個所の平均径の算術平均値を長手方向の平均気泡径(DL:mm)とする。また、発泡板の水平方向の平均気泡径(DH:mm)は、DWとDLの相加平均値である。
【0038】
また、本発明の製造方法により得られる発泡板は、気泡変形率が0.7〜2.0であることが好ましい。気泡変形率とは、上記測定法により求められたDTをDHで除すことにより算出された値(DT/DH)をいい、該気泡変形率が1よりも小さいほど気泡は偏平であり、1よりも大きいほど縦長である。気泡変形率が0.7未満の場合、気泡が偏平なので圧縮強度が低下する虞があり、偏平な気泡は円形に戻ろうとする傾向が強いので、押出発泡板の寸法安定性も低下する虞がある。気泡変形率が2.0を超えると、厚み方向の気泡数が少なくなるので、目的とする高い断熱性が得られなくなる虞がある。そのような観点から、上記気泡変形率は0.8〜1.5であることが好ましく、0.8〜1.2であることがより好ましい。気泡変形率が上記範囲内にあることにより、高い断熱性を有する発泡板を得ることができる。
【0039】
本発明の製造方法により得られる発泡板は、主に断熱板として使用されるためにはJIS A9511(1995)記載の押出しポリスチレンフォーム保温板を対象とする燃焼性規格を満足するものであることが特に好ましい。すなわち、JIS A9511(1995)に記載されている4.13.1「測定方法A」の燃焼性の測定を行った場合、炎が3秒以内に消え、残塵がなく、燃焼限界指示線を超えて燃焼することがないものであることが好ましい。そのような押出発泡板は、着火した場合であっても、火が燃え広がる可能性が小さいので建材用の押出ポリスチレンフォーム保温板として要求される安全性を備えるものである。
【0040】
本発明の製造方法により得られる押出発泡体は前述の通り断熱性向上の点、更に機械的強度向上の点から、独立気泡率が90%以上であることが好ましく、93%以上であることがより好ましい。独立気泡率が高いほど断熱性能が高く、長期間維持できる。
本明細書において押出発泡体の独立気泡率は、ASTM−D2856−70の手段Cに従って、東芝ベックマン株式会社の比重計930型を使用して測定された押出発泡体(カットサンプル)の真の体積Vxを用い、下記(1)式により独立気泡率S(%)を算出し、任意の異なる3種類のサンプルからの3つの測定値に基づく3つの計算結果の平均値を採用する。
尚、本測定は、押出発泡体から25mm×25mm×20mmのサイズに切断された成形表皮を持たないカットサンプルをサンプルカップ内に収容して測定する。ただし、厚みが薄く、厚み方向に20mmのカットサンプルが切り出せない場合には、例えば、25mm×25mm×10mmのサイズのカットサンプルを2枚同時にサンプルカップ内に収容して測定する。
【0041】
(数1)
S(%)=(Vx−W/P)×100/(VA−W/P) (1)
Vx:上記方法で測定されたカットサンプルの真の体積(cm3)であり、押出発泡体のカットサンプルを構成する樹脂の容積と、カットサンプル内の独立気泡部分の気泡全容積との和に相当する。
VA:測定に使用されたカットサンプルの外寸から計算されたカットサンプルの見かけ上の体積(cm3)。
W:測定に使用されたカットサンプル全重量(g)。
P:押出発泡体を校正する樹脂の密度(g/cm3)。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
【0043】
[押出発泡体の製造装置と製造条件(実施例1乃至9、比較例1乃至10)]
押出発泡板の製造装置としては、次の装置を使用した。
押出機としては、シリンダー径65mmの押出機(以下、第一押出機という)と、シリンダー径90mmの押出機(以下、第二押出機という)と、シリンダー径150mmの押出機(以下、第三押出機という)とを直列に連結した押出機を使用した。また、第三押出機に連結されたフラットダイは、ダイリップの先端が幅65mm、間隙2mm(長方形横断面)の樹脂排出口を備えた押出機を使用し、一時間当たりの吐出量を50kgとした。フラットダイの樹脂排出口には成形装置が付設されている。
【0044】
[押出発泡体の製造装置と製造条件(実施例10、11、比較例11、12)]
押出発泡板の製造装置としては、次の装置を使用した。
押出機としては、シリンダー径150mmの第一押出機とシリンダー径200mmの第二押出機とを直列に連結したものを使用した。また、第二押出機に連結されたフラットダイは、ダイリップの先端が幅440mm、間隙3mm(長方形横断面)の樹脂排出口を備えたものを使用し、1時間当たりの押出量を1300kgとした。フラットダイの樹脂排出口には成形装置が付設されている。
【0045】
実施例および比較例における製造条件は以下の条件を採用した。
上記製造装置を用いてポリスチレン系樹脂等の原料を第一押出機に供給し、220℃まで加熱して溶融混練し、第一押出機の中程で混合発泡剤を圧入して発泡性溶融混合物とし、続く第二押出機で(実施例1乃至9、比較例1乃至10では第三押出機で)樹脂温度を発泡適正温度(表中では発泡温度と表記。この発泡温度は押出機とダイの接合部の位置で測定された発泡性溶融混合物の温度である)に調整した後、発泡性溶融混合物をダイリップから大気中に押出した。
ダイリップから押出された発泡性溶融混合物を、発泡させながら前記ガイダーを通過させることにより、発泡させながら圧縮し、次に成形装置に充満させながら板状に形成し押出発泡体を製造した。
【0046】
実施例1
原料は、ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名:PSJ−ポリスチレンGPPS HH32)100重量部に対して、気泡調整剤として、タルクマスターバッチ[ポリスチレン35部重量%とタルク(松村産業株式会社製ハイフィラー#12)60重量%と、分散剤5重量%からなるマスターバッチ]3.3重量部、難燃剤マスターバッチ(ポリスチレン50重量%とヘキサブロモシクロドデカン48.5重量%と熱安定剤1.5重量%からなるマスターバッチ)7.0重量部とを、表1に示す割合で配合し、発泡剤としてイソブタン、ジメチルエーテル、エタノール、および二酸化炭素を表1に示す配合比率で混合したものを用いた。
得られた押出発泡体の見かけ密度、厚み、幅方向垂直断面積、厚み方向平均気泡径、気泡変形率、独立気泡率、5%圧縮強度、発泡体外観、燃焼性の評価を表1に示す。
【0047】
実施例2
発泡剤を表1に示す通り配合比率を変更し、タルクマスターバッチの使用量を3.3重量部から1.7重量部に、難燃剤マスターバッチの使用量を7.0重量部から6.0重量部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして押出発泡体を製造した。結果を表1に示す。
【0048】
実施例3
発泡剤を表1に示す通り配合比率を変更し、タルクマスターバッチの使用量を3.3重量部から0.8重量部に、難燃剤マスターバッチの使用量を7.0重量部から6.0重量部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして押出発泡体を製造した。結果を表1に示す。
【0049】
実施例4〜9
発泡剤を表1に示す通り各々配合比率を変更し、タルクマスターバッチの使用量を3.3重量部から0.17重量部に、難燃剤マスターバッチの使用量を7.0重量部から4.0重量部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして押出発泡体を製造した。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
比較例1
発泡剤を表2に示す通りイソブタンとジメチルエーテルの混合発泡剤に変更し、タルクマスターバッチの使用量を3.3重量部から4.2重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして押出発泡体を製造した。結果を表2に示す。
【0052】
比較例2
発泡剤を表2に示す通りイソブタンとジメチルエーテルと二酸化炭素の混合発泡剤に変更し、添加剤としてゼオライト(ユニオン昭和株式会社製 モレキュラーシーブ5A)1重量部と流動パラフィン(中央化成株式会社製 流動パラフィン150S)3重量部を添加し、タルクマスターバッチの使用量を3.3重量部から2.5重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして押出発泡体を製造した。結果を表2に示す。
【0053】
比較例3
発泡剤を表2に示す通りイソブタンとジメチルエーテルの混合発泡剤に変更し、タルクマスターバッチの使用量を3.3重量部から0.8重量部に、難燃剤マスターバッチの使用量を7.0重量部から4.0重量部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして押出発泡体を製造した。結果を表2に示す。
【0054】
比較例4
発泡剤を表2に示す通りイソブタンとジメチルエーテルと二酸化炭素の混合発泡剤に変更し、タルクマスターバッチの使用量を3.3重量部から0.17重量部に、難燃剤マスターバッチの使用量を7.0重量部から4.0重量部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして押出発泡体を製造した。結果を表2に示す。
【0055】
比較例5及び6
発泡剤を表2に示す通りイソブタンとジメチルエーテルと二酸化炭素の混合発泡剤の配合比率を変更し、添加剤としてゼオライト(ユニオン昭和株式会社製 モレキュラーシーブ5A)1重量部と流動パラフィン(中央化成株式会社製 流動パラフィン150S)3重量部を添加し、タルクマスターバッチの使用量を3.3重量部から0.17重量部に、難燃剤マスターバッチの使用量を7.0重量部から4.0重量部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして押出発泡体を製造した。結果を表2に示す。
【0056】
比較例7〜10
発泡剤を表2に示す通り各々配合比率を変更し、タルクマスターバッチの使用量を3.3重量部から0.17重量部に、難燃剤マスターバッチの使用量を7.0重量部から4.0重量部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして押出発泡体を製造した。結果を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
実施例10
表3に示す通り発泡剤の配合比率、タルクマスターバッチ、難燃剤マスターバッチの使用量を実施例1と同一にした。押出発泡体の厚みを50mmから80mmに、断面積を100cm2から800cm2にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして押出発泡体を製造した。結果を表3に示す。
【0059】
実施例11
発泡剤を表3に示す通り配合比率を変更し、タルクマスターバッチの使用量を3.3重量部から0.17重量部に、難燃剤マスターバッチの使用量を7.0重量部から4.0重量部にそれぞれ変更し、押出発泡体の厚みを50mmから80mmに、断面積を100cm2から800cm2にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして押出発泡体を製造した。結果を表3に示す。
【0060】
比較例11
発泡剤を表3に示す通りイソブタンとジメチルエーテルの混合発泡剤に変更し、タルクマスターバッチの使用量を3.3重量部から4.2重量部にそれぞれ変更し、押出発泡体の厚みを50mmから80mmに、断面積を100cm2から800cm2にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして押出発泡体を製造した。結果を表3に示す。
【0061】
比較例12
発泡剤を表3に示す通り二酸化炭素の配合量を減少し、配合比率を変更し、タルクマスターバッチの使用量を3.3重量部から0.17重量部に、難燃剤マスターバッチの使用量を7.0重量部から4.0重量部にそれぞれ変更し、押出発泡体の厚みを50mmから80mmに、断面積を100cm2から800cm2にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして押出発泡体を製造した。結果を表3に示す。
【0062】
【表3】

【0063】
(1)表1〜3の見かけ密度は、JIS K7222(1985)に基づいて測定された値である。
(2)表1〜3の厚みは、幅方向を4等分する位置の3箇所で測定し、それらの相加平均値である。
(3)表1〜3の厚み方向の平均気泡径は及び気泡変形率、独立気泡率は、前記方法で測定した値である。
(4)表1〜3の5%圧縮強度は、JIS A9511(1995) 押出ポリスチレンフォーム保温板に準じて測定した。測定は製造後2週間経過した発泡体について行った。
【0064】
表1〜3における発泡体の外観は、下記の評価基準で評価した。
○:表面に亀裂の発生が認められない。
×:表面に亀裂の発生が認められる。
【0065】
表1〜3における燃焼性は、製造後1時間経過後および製造2週間経過後の押出発泡体から切り出した試験片を、前記方法で測定した。なお、該測定は1つの押出発泡体に対して試験片を5個切り出して下記評価基準で評価した。また、製造直後1時間経過後の試験片については、製造直後の燃焼性を評価するために試験片切り出してから15分以内に測定した。また、製造2週間経過後の試験片については、製造2週間後の発泡体から試験片を切り出し、気温23℃、相対湿度50%の部屋で16時間放置してから測定した。
◎:全ての試験片において3秒以内で炎が消え、かつ、5個の試験片の平均燃焼時間が2秒以内である。
○:全ての試験片において3秒以内で炎が消え、かつ、5個の試験片の平均燃焼時間が2秒を超え、3秒以内である。
△:5個の試験片の平均燃焼時間が3秒以内であるが、1個以上の試験片において3秒以内に炎が消えないものがある。
×:5個の試験片の平均燃焼時間が3秒を超える。
【0066】
実施例1〜11の結果は、本発明の方法に基づいてポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造すると、高厚み、大断面積かつ高発泡倍率で機械的物性にも優れたポリスチレン系樹脂押出発泡体が安全で容易に製造できることを示している。発泡剤として脂肪族アルコールを添加することにより、ポリスチレン樹脂に対して溶解性の悪い二酸化炭素を使用した場合においても、その溶解性が改善されたことによって、外観、機械的物性、耐燃焼性に優れた押出発泡体が得られた。
【0067】
一方、比較例1は実施例1と対比されるものであって、発泡剤としてエタノール、二酸化炭素を使用していない例を示す。比較例1では二酸化炭素が使用されていないため、可燃性の高いイソブタンやジメチルエーテルの影響により、製造1時間後の燃焼性はJIS A9511(1995)に記載される基準を満足するものではなかった。これは、製造時の着火の危険性が高いことを意味する。
【0068】
また、比較例2は実施例1と対比されるものであって、発泡剤としてエタノールを使用せず、添加剤としてゼオライトと流動パラフィンを添加した例を示す。比較例2では二酸化炭素のポリスチレンに対する溶解性を改善するため、エタノールを使用するかわりに流動パラフィンが添加されているが、得られた発泡体の5%圧縮強度は低下していまい、機械的物性に劣るものとなってしまった。
【0069】
比較例3は実施例6〜9と対比されるものであって、発泡剤としてエタノールと二酸化炭素を使用していない例を示す。比較例3では二酸化炭素が使用されていないため、可燃性のジメチルエーテルの影響により、製造1時間後の燃焼性はJIS A9511(1995)に記載される基準を満足するものではなかった。
【0070】
比較例4は実施例4と対比されるものであって、発泡剤としてエタノールを使用していない例を示す。比較例4では発泡剤の注入量が多い条件にてエタノールが使用されていないため、二酸化炭素のポリスチレン樹脂に対する溶解性が乏しくなり、結果として押出機内のリップ付近で内部発泡が起こってしまい、得られた発泡体の表面に亀裂が発生し、外観不良となってしまった。
【0071】
比較例5及び6は実施例6〜9と対比されるものであって、発泡剤としてエタノールを使用せず、添加剤としてゼオライトと流動パラフィンを添加した例を示す。比較例5及び6では二酸化炭素のポリスチレンに対する溶解性を改善するため、エタノールを使用するかわりに流動パラフィンが添加されているが、得られた発泡体の5%圧縮強度は低下していまい、機械的物性に劣るものとなってしまった。
【0072】
比較例7は実施例6〜9と対比されるものであって、二酸化炭素の配合比率を増やした例を示す。比較例7では二酸化炭素の配合比率が多いため、二酸化炭素のポリスチレン樹脂に対する溶解性が乏しくなり、結果として押出機内のリップ付近で内部発泡が起こってしまい、得られた発泡体の表面に亀裂が発生し、外観不良となってしまった。
【0073】
比較例8は実施例6〜9と対比されるものであって、二酸化炭素の配合比率を減らした例を示す。比較例8では二酸化炭素の配合比率が少ないため、可燃性のジメチルエーテルの影響により、製造1時間後の燃焼性はJIS A9511(1995)に記載される基準を満足するものではなかった。
【0074】
比較例9は実施例6〜9と対比されるものであって、エタノールの配合比率を減らした例を示す。比較例9ではエタノールの配合比率が少ないため、二酸化炭素のポリスチレン樹脂に対する溶解性が乏しくなり、結果として押出機内のリップ付近で内部発泡が起こってしまい、得られた発泡体の表面に亀裂が発生し、外観不良となってしまった。
【0075】
比較例10は実施例6〜9と対比されるものであって、エタノールの配合比率を増やした例を示す。比較例10ではエタノールの配合比率が多いため、エタノールの影響により、製造1時間後の燃焼性はJIS A9511(1995)に記載される基準を満足するものではなかった。
【0076】
比較例11は実施例10と対比されるものであって、発泡剤としてエタノール、二酸化炭素を使用していない例を示す。比較例11では、二酸化炭素が使用されていないため、可燃性の高いイソブタンやジメチルエーテルの影響により、製造1時間後の燃焼性はJIS A9511(1995)に記載される基準を満足するものではなかった。これは、製造時の着火の危険性が高いことを意味する。
【0077】
比較例12は実施例11と対比されるものであって、二酸化炭素の配合比率を減らした例を示す。比較例12では二酸化炭素の配合比率が少ないため、可燃性のジメチルエーテルの影響により、製造1時間後の燃焼性はJIS A9511(1995)に記載される基準を満足するものではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融されたポリスチレン系樹脂に物理発泡剤が混合されてなる発泡性溶融混合物を、厚みが少なくとも10mmとなるように、かつ断面積が少なくとも50cm2となるように押出発泡させてポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造する方法において、該物理発泡剤が発泡剤全量に対して、(a)10〜70重量%の炭素数3〜5の飽和炭化水素、(b)10〜60重量%の炭素数1〜4の脂肪族アルコール、(c)10〜65重量%のエーテル類、及び(d)10〜50重量%の二酸化炭素とからなる物理発泡剤(ただし、(a)、(b)、(c)及び(d)の総和が100重量%)を使用することを特徴とするポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【請求項2】
物理発泡剤が発泡剤全量に対して、(a)10〜50重量%の炭素数3〜5の飽和炭化水素、(b)10〜45重量%の炭素数1〜4の脂肪族アルコール、(c)10〜45重量%のエーテル類、及び(d)10〜40重量%の二酸化炭素とからなる物理発泡剤(ただし、(a)、(b)、(c)及び(d)の総和が100重量%)を使用することを特徴とする請求項1記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【請求項3】
エーテル類がジメチルエーテルであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【請求項4】
炭素数1〜4の脂肪族アルコールがエタノールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【請求項5】
得られるポリスチレン系樹脂押出発泡体の見かけ密度が20〜60kg/m3であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。

【公開番号】特開2006−188654(P2006−188654A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307316(P2005−307316)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【Fターム(参考)】