説明

ポリスルホン、ポリスルホン混合物、ポリスルホンの架橋体、電解質膜、及び燃料電池

【課題】酸保液能に優れたポリスルホン、これを利用した電解質膜及びこれを採用した燃料電池を提供する。
【解決手段】本発明は、酸と結合しやすい窒素含有官能基が導入されたポリスルホン、これを利用した電解質膜及びこれを備えた燃料電池である。特に、ポリスルホンは、リン酸のような酸と結合しやすい窒素含有官能基が導入された構造を有して酸保液能に優れている。このようなポリスルホンと酸を含有して製造された電解質膜は、酸の保液量調節が可能であるので、イオン伝導度が改善され、機械的強度が優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスルホン、これを利用した電解質膜及びこれを採用した燃料電池に係り、さらに詳細には、酸の保液能に優れたポリスルホン、これを含むポリスルホン混合物及びこれを利用したポリスルホンの架橋体と、これを利用してイオン伝導度及び機械的強度に優れた電解質膜とこれを含んで効率、エネルギー密度などが改善された燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、最も多く使われる燃料電池用メンブレンは、高フッ化高分子(perfluorinated polymer)として熱的化学的安定性に優れ、イオン伝導度も高い。しかし、100℃以上の作動温度では、メンブレン内の水分が乾燥されながらイオン伝導度が急激に低くなる問題点がある。100℃以上の高温で作動する燃料電池は、低温作動に比べてCOによる触媒の被毒作用を緩和させ、かつ触媒の活性度を高めてさらに高い出力が得られる。また、低温作動に比べて水の管理が容易であり、装置の小型化も可能であるという長所がある。高フッ化高分子膜は、熱的、化学的安定性が高く、機械的特性も優れるために広く使われているが、水を媒介体として水素イオンを伝達しているため、100℃以上の高温では水が揮発して、イオン伝導度が急激に低下する短所があって、使用温度が100℃以下に制限された。このような問題点を改善するための方案として、ヘテロポリ酸を添加するか、SiO等の無機物を使用してコンポジット化を試みている。
【0003】
しかし、ヘテロポリ酸も使用温度を多少高めることは可能であるが、水によって溶解されて使用が困難であり、コンポジット化も130℃以上の温度では保液能が良くないため、イオン伝導度が低下するという問題がある。
【0004】
これに対して、例えば特許文献1では、水素伝達媒介体として水ではないリン酸、硫酸などの強酸をポリベンズイミダゾールに含浸させて使用することで、高温でも作動の可能なメンブレンを提示している。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,525,436号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、強酸を含浸したゲル型の電解質膜は、強酸保液量が増加するほど水素のイオン伝導度が改善されるが、まだ満足できるほどのレベルではないため、改善の余地が多い。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、酸保液能に優れたポリスルホン、その混合物、その架橋体、及びこれを含んでイオン伝導度特性が改善され、かつ機械的強度に優れた電解質膜を提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、前記の電解質膜を含んで燃料の効率、エネルギー密度などが向上した燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、下記化学式1で表示される反復単位を含むポリスルホンが提供される。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
Xは、単一結合または−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−C(CCl−、−C(=O)−または−O−であり、Rは、互いに同一であるか、または異なって選択された一置換または多置換の置換基を示し、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、C4−C30のアルキルヘテロアリールピリジニウム塩基、C4−C30のアリールヘテロアリールピリジニウム塩基またはC4−C30アラルキルヘテロアリールピリジニウム塩基であり、Rは、水素、C1−C20のアルキル基、C6−C20のアリール基、C1−C20のアルコキシ基、C6−C20のアリールオキシ基からなる群から選択された一つ以上である。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の他の観点によれば、前記のポリスルホン及び熱可塑性樹脂を含むポリスルホン混合物が提供される。
【0014】
前記熱可塑性樹脂は、ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリピリジン、ポリピリミジンからなる群から選択された一つ以上であり、前記熱可塑性樹脂の含有量が、前記ポリスルホン100質量部を基準として10〜80質量部であることが望ましい。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明のさらに他の観点によれば、前記のポリスルホン及び前記のポリスルホンと熱可塑性樹脂との混合物から選択された一つの高分子Qと、架橋剤の架橋反応結果物であることを特徴とするポリスルホンの架橋体が提供される。
【0016】
前記架橋剤は、エポキシまたはイソシアネート官能基を有する化合物であり、前記架橋剤の含有量が、高分子Q100質量部を基準として0.1〜20質量部であることが望ましい。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明のさらに他の観点によれば、前記ポリスルホンと酸を含有する電解質膜が提供される。
【0018】
ここで、前記酸の含有量は、酸を含浸した電解質膜の総重量100質量部に対して300〜1000質量部であり、酸としては、リン酸、硫酸、またはその誘導体からなる群から選択された一つ以上を使用する。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明のさらに他の観点によれば、前記のポリスルホンと熱可塑性樹脂との混合物を含むポリスルホン混合物と酸とを含有する電解質膜が提供される。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明のさらに他の観点によれば、前記のポリスルホンと架橋剤との架橋反応結果物、または前記のポリスルホンと熱可塑性樹脂と架橋剤との架橋反応結果物であるポリスルホンの架橋体と酸とを含有する電解質膜が提供される。
【0021】
上記課題を解決するために、本発明のさらに他の観点によれば、カソード、アノード及びこれらの間に介在された前記の電解質膜を備える燃料電池が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によるポリスルホンは、リン酸のような酸と結合しやすい窒素含有官能基が導入された構造を持っていて、酸保液能に優れている。このようなポリスルホンと酸を含有して製造された電解質膜は、酸の保液量調節が可能であるので、イオン伝導度が改善されながら機械的強度に優れている。
【0023】
また、本発明のポリスルホンと熱可塑性樹脂とを含むポリスルホン混合物は、ポリスルホンがリン酸に一部溶解される短所を補完して、耐久性が改善される利点がある。そして、本発明のポリスルホンと架橋剤との架橋反応結果物、及び本発明のポリスルホン、熱可塑性樹脂及び架橋剤の架橋反応結果物は、耐リン酸性に優れて燃料電池寿命を改善させる特性を示す。
【0024】
前述の電解質膜は、燃料電池用、特に高温燃料電池用の電解質膜として有用である。このような電解質膜を採用した燃料電池は、酸の保液能に優れ、燃料電池作動中に酸損失を抑制して耐久性を増大させることが可能であるので、電池製作がさらに容易であるだけでなく、イオン伝導度特性に優れ、効率などの特性も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0026】
本発明は、リン酸のような酸と結合しやすい窒素含有官能基が導入された反復単位を含むポリスルホンを提供する。前記反復単位は、下記化学式1で表示される。ここで、「酸と結合しやすい」とは、酸と錯体(complex)を形成して酸と結合しやすい、ということを意味する。
【0027】
【化3】

【0028】
【化4】

【0029】
Xは、単一結合または−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−C(CCl−、−C(=O)−または−O−であり、Rは、互いに同一であるか、または異なって選択された一置換または多置換の置換基を示し、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、C4−C30のアルキルヘテロアリールピリジニウム塩基、C4−C30のアリールヘテロアリールピリジニウム塩基またはC4−C30アラルキルヘテロアリールピリジニウム塩基であり、Rは、水素、C1−C20のアルキル基、C6−C20のアリール基、C1−C20のアルコキシ基、C6−C20のアリールオキシ基からなる群から選択された一つ以上である。
【0030】
前記化学式1で表示されるポリスルホンの重合度は、20〜5000であることが望ましい。ポリスルホンの重合度が20未満の場合、フィルム形成が難しく、5000を超過すると、ポリスルホンの有機溶媒に対する溶解度が低下して加工性が低下するため望ましくない。
【0031】
前記化学式1でRは、酸と結合しやすい官能基であり、例えば、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、C4−C30のアルキルヘテロアリールピリジニウム塩基、C4−C30のアリールヘテロアリールピリジニウム塩基、またはC4−C30アラルキルヘテロアリールピリジニウム塩基を使用する。
【0032】
前記化学式1でRの説明中、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基は、窒素が結合されている炭素原子の種類と関係なく、窒素原子と結合されている置換基の数のみで区別してそれぞれのアンモニア残基を示し、例えば、−NHは、1級アミノ基であり、−NH(CH)は、2級アミノ基であり、−N(CHは、3級アミノ基を示す。前記4級アンモニウム塩は、アンモニウム塩基−N、−N(CHなどのトリアルキルアンモニウム塩基を示し、窒素を含有したヘテロ芳香族化合物から派生した4級アンモニウム塩基含有基も含む。前記トリアルキルにおけるアルキルは、C1−C20のアルキル基を示す。
【0033】
前記C4−C30のアルキルヘテロアリールピリジニウム塩基は、下記構造式のようなグループでR’がアルキル基を示し、Bがヘテロアリーレン基を示す。
【0034】
【化5】

【0035】
前記C4−C30のアリールヘテロアリールピリジニウム塩基は、下記構造式のようなグループでR’がアリール基を示し、Bがヘテロアリール基を示す。
【0036】
【化6】

【0037】
前記C4−C30アラルキルヘテロアリールピリジニウム塩基は、下記構造式で表示されるグループのようなピリジニウム塩基にベンジル基のようなアラルキル基が結合されており、ピリジニウム塩基がピリジル基のようなヘテロアリール基と連結されている基、4,4−ジピリジル誘導体から派生したグループを示す。
【0038】
【化7】

【0039】
前記Rの具体的な例として、下記化学式で表示されるグループがある。
【0040】
【化8】


である。
【0041】
本発明はまた、前述の化学式1の反復単位と下記化学式2で表示される反復単位とを含む共重合体を提供する。
【0042】
【化9】

【0043】
【化10】

【0044】
Xは、単一結合または−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−C(CCl−、−C(=O)−または−O−であり、Rは、水素、C1−C20のアルキル基、C6−C20のアリール基、C1−C20のアルコキシ基、C6−C20のアリールオキシ基からなる群から選択された一つ以上である。
【0045】
前記共重合体で化学式1の反復単位は、酸と結合しやすいためにイオン伝導度を改善する役割を行い、化学式2の反復単位は、化学式1の反復単位に比べて柔軟性を有するので、機械的物性及び溶解度特性をさらに良好に維持することができる。
【0046】
前記ポリスルホン共重合体で重合度は、20〜5000であることが望ましい。ポリスルホンの重合度が20未満の場合、フィルム形成が難しく、5000を超過すると、ポリスルホンの有機溶媒に対する溶解度が低下して加工性が低下するため望ましくない。
【0047】
前記共重合体で化学式1の反復単位は、0.01〜0.99モル、特に0.4〜0.99モルであり、化学式2の反復単位は、0.01〜0.99モル、特に0.01〜0.6モルである。化学式1の反復単位及び化学式2の反復単位が前記混合比である場合、ポリスルホンの酸に対する保液能に優れ、溶解度特性及び機械的物性が良好である。
【0048】
前記共重合体の具体的な例として、下記化学式で表示される化合物がある。
【0049】
【化11】

【0050】
前記式中、R、R’、R’’、R’’’は、互いに独立して下記構造式で表示されるグループから選択された一つである。
【0051】
【化12】

【0052】
但し、R、R’、R’’、R’’’がいずれも水素である場合は除外され、aは、0.01〜0.6であり、bは、0.4〜0.99である。
【0053】
前記化学式4aで表示される化合物の具体的な例として、下記化学式4で表示される化合物が挙げられる。
【0054】
【化13】

【0055】
前記式中、Rは、下記構造式で表示されるグループから選択される一つである。
【0056】
【化14】

【0057】
aは、0.01〜0.6であり、bは、0.4〜0.99である。
【0058】
前記化学式4aまたは化学式4で表示されるポリスルホンの重合度は、20〜5000であることが望ましい。ポリスルホンの重合度が20未満の場合、フィルム形成が難しく、5000を超過すると、ポリスルホンの有機溶媒に対する溶解度が低下して加工性が低下するため望ましくない。
【0059】
前記化学式4のポリスルホンは、特に下記化学式5で表示される化合物であることが望ましい。
【0060】
【化15】

【0061】
前記式中、aは、0.01〜0.6であり、特に0.1〜0.5であり、bは、0.4〜0.99であり、特に0.5〜0.9であることが望ましい。
【0062】
前記化学式5で表示されるポリスルホンの重合度は、20〜5000であることが望ましい。ポリスルホンの重合度が20未満の場合、フィルム形成が難しく、5000を超過すると、ポリスルホンの有機溶媒に対する溶解度が低下して加工性が低下するため望ましくない。
【0063】
本発明はまた、前述の化学式1の反復単位と化学式2の反復単位と下記化学式3で表示される反復単位とを含むターポリマーを提供する。
【0064】
【化16】

【0065】
【化17】

【0066】
Xは、単一結合または−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−C(CCl−、−C(=O)−または−O−であり、Rは、C1−C20のアルキル基、C1−C20のアルコキシ基、C6−C20のアリール基、C6−C20のアリールオキシ基、C7−C20のアリールアルキル基、及び−CHO(CHCHO)CH(nは、1〜20の整数である)からなる群から選択され、Rは、水素、C1−C20のアルキル基、C6−C20のアリール基、C1−C20のアルコキシ基、C6−C20のアリールオキシ基からなる群から選択される。
【0067】
前記化学式3で表示される反復単位で、特にRは、鎖の柔軟性を付与する部分を有して、ポリスルホンの機械的物性がさらに向上し、有機溶媒に対する溶解度特性を向上させる。
【0068】
前記ターポリマーで化学式1の反復単位は、0.6〜0.9モルであり、化学式2の反復単位は、0.1〜0.3モルであり、化学式3の反復単位は、0.05〜0.3モルである。
【0069】
前記ポリスルホンターポリマーの重合度は、20〜5000であることが望ましい。
前記ターポリマーの具体的な例として、下記化学式6aで表示される反復単位を有する化合物がある。
【0070】
【化18】

【0071】
前記式中、R、R’、R’’、R’’’は、互いに独立して下記構造式で表示されるグループから選択された一つである。
【0072】
【化19】

【0073】
但し、R、R’、R’’、R’’’が何れも水素である場合は除外され、aは、0.1〜0.3であり、bは、0.6〜0.9であり、cは、0.05〜0.3であり、R、R’、R’’、R’’’は、互いに独立して水素または−CHO(CHCHO)CH(n=1〜20の整数である)であり、但し、R、R’、R’’、R’’’がいずれも水素である場合は除外される。
【0074】
前記化学式6aで表示される化合物の例として、下記化学式6で表示される反復単位を有する化合物がある。
【0075】
【化20】

【0076】
前記式中、Rは、下記構造式で表示されるグループから選択された一つである。
【0077】
【化21】

【0078】
aは、0.1〜0.3であり、bは、0.6〜0.9であり、cは、0.05〜0.3であり、Rは、−CHO(CHCHO)CH(n=1〜20の整数である)である。
【0079】
前記化学式6で表示されるポリスルホンで重合度は、20〜5000であることが望ましい。ポリスルホンの重合度が20未満の場合、フィルム形成が難しく、5000を超過すると、ポリスルホンの有機溶媒に対する溶解度が低下して加工性が低下するため望ましくない。
【0080】
前記化学式6で表示される化合物の具体的な例として、下記化学式7で表示される反復単位を有するターポリマーがある。
【0081】
【化22】

【0082】
前記式中、aは、0.1〜0.3であり、bは、0.6〜0.9であり、cは、0.05〜0.3であり、nは、1〜20の整数である。
【0083】
前記化学式6a、化学式6及び7でポリスルホンの重合度は、20〜5000であることが望ましい。ポリスルホンの重合度が20未満の場合、フィルム形成が難しく、5000を超過すると、ポリスルホンの有機溶媒に対する溶解度が低下して加工性が低下するため望ましくない。
【0084】
本発明によるポリスルホンにおいて、化学式1の反復単位でRの導入量が増加するほど、リン酸のような強酸と錯体を形成できる官能基が多くなるので、強酸保液量が増加するが、その導入量は、ポリスルホンの反復単位当たり0.1〜2、特に0.4〜1.5個が望ましい。もしRが1.5個を超えて導入されれば、酸保液量が多過ぎてポリスルホンの機械的強度が低下して望ましくなく、0.4個未満であれば、酸と錯体を形成できるサイト数が減少してイオン伝導度改善の効果が微小であるため望ましくない。
【0085】
化学式3の反復単位でRの導入量は、ポリスルホン単位当たり0.01〜0.3であることが望ましい。もしRの導入量が0.3個を超えれば、酸と結合可能なサイト数が減少してイオン伝導度が低下し、0.01個未満であれば、電解質膜の柔軟性が多少低下して望ましくない。
【0086】
本発明による化学式1の反復単位を含むポリスルホン、化学式1の反復単位と化学式2の反復単位とを含むポリスルホン、化学式1の反復単位と化学式2の反復単位と化学式3の反復単位とを含むポリスルホンの重量平均分子量は、10,000〜500,000であることが望ましく、特に20,000〜300,000であることがさらに望ましい。もしポリスルホンの重量平均分子量が10,000未満であれば、ポリスルホンの機械的強度が良くなく、500,000を超えれば、ポリスルホンの溶媒に対する溶解度が減少して適用し難いため望ましくない。
【0087】
以下、本発明によるポリスルホンの製造方法を説明するが、代表的な例として化学式1で表示される反復単位を含むポリスルホンの合成方法を説明する。
【0088】
下記化学式2で表示される反復単位を含むポリスルホンのクロロメチル化反応を実施して、クロロメチル化化合物(A)を得る。クロロメチル化反応は、その反応条件が特別に制限されないが、SnCl/(CHSiCl、パラホルムアルデヒドの存在下で30〜60℃の反応温度で実施する。この反応で反応時間、反応温度などの条件を調節して、−CHClグループの導入量、すなわちRの導入量を適正範囲内に制御できる。
【0089】
前記クロロメチル化化合物(A)のアミノ化反応を実施して、化学式1で表示される反復単位を有するポリスルホンを得ることができる。ここで、アミノ化反応は、クロロメチル化化合物(A)とエチレンジアミンなどのアミン化合物との反応を通じて実施される。前記アミノ化反応の温度は、クロロメチル化化合物(A)の種類、アミン化合物の種類などによって可変的であるが、50〜150℃の反応温度で実施する。
【0090】
【化23】

【0091】
【化24】

【0092】
前記反応式1で化合物(A)は、核磁気共鳴(NMR)分析法を通じて構造確認が可能である。そして、化学式1の反復単位を有するポリスルホンは、有機溶媒に対する溶解度特性が不良であるためNMRを通じた構造確認は困難であり、化合物(A)と化学式1で表示される反復単位を有するポリスルホンのリン酸含浸程度を調べて、その存在を確認することが可能であり、IR分析を通じて−NH基の存在を確認してその構造を確認することができる。これをさらに説明すれば、化合物(A)は、その構造的特徴によってリン酸に含浸させても、リン酸がほとんど含浸されない。一方、化学式1で表示される反復単位を有するポリスルホンは、リン酸のような酸と結合しやすいアミノ基Rの存在によって、リン酸含浸能に優れ、かかるリン酸含浸能の変化測定により化学式1で表示される反復単位を有するポリスルホンの構造を間接的に確認でき、IR分析スペクトルを通じて−NH基の存在を確認することができる。
【0093】
下記化学式3で表示される反復単位を有するポリスルホンは、下記反応式2によって合成可能である。
【0094】
下記化学式2で表示される反復単位を含むポリスルホンのクロロメチル化反応を実施して、クロロメチル化化合物(A)を得る。クロロメチル化反応は、その反応条件が特別に制限されないが、SnCl/(CHSiCl、パラホルムアルデヒドの存在下で30〜60℃の反応温度で実施する。この反応で反応時間、反応温度などの条件を調節して−CHClグループの導入量、すなわちRの導入量を適正範囲内に制御できる。
【0095】
前記クロロメチル化化合物(A)のフレキシブル鎖グラフト反応を実施して、化学式3で表示される反復単位を有するポリスルホンを得ることができる。ここで、フレキシブル鎖グラフト反応は、クロロメチル化化合物(A)とメトキシポリプロピレングリコールのようなアルコール化合物との反応を通じて実施される。
【0096】
前記フレキシブル(折れ曲がり)鎖グラフト反応の温度は、クロロメチル化化合物(A)の種類、アルコール化合物の種類などによって可変的であるが、20〜40℃、特に常温(20〜25℃)で実施する。
【0097】
【化25】

【0098】
一方、本発明による化学式4a及び化学式6aで表示されるポリスルホンは、前述の製造方法と類似した方法によって製造可能である。
【0099】
一方、本発明は、前述した本発明のポリスルホンと熱可塑性樹脂とを含有するポリスルホン混合物を提供する。
【0100】
前記熱可塑性樹脂としては、ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリピリジン、ポリピリミジンなどの塩基性官能基を有する塩基性高分子、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアリールエーテル、ポリアリールケトンなどを使用して、このような熱可塑性樹脂を前述の酸と結合しやすい官能基を有するポリスルホンと混合すれば、前記ポリスルホンだけを利用する場合、高粘度溶液の製造時に発生する困難さを未然に予防できる利点がある。
【0101】
前記熱可塑性樹脂の含有量は、ポリスルホン100質量部を基準として10〜80質量部であることが望ましい。もし熱可塑性樹脂の含有量が10質量部未満であれば、添加効果が微小であり、80質量部を超えれば、電解質膜のイオン伝導度が低いため望ましくない。
【0102】
本発明は、また前述した本発明のポリスルホンを利用して作ったポリスルホンの架橋体を提供する。
【0103】
前記ポリスルホンの架橋体は、ポリスルホンと架橋剤との2成分の架橋反応またはポリスルホンと熱可塑性樹脂と架橋剤との3成分の架橋反応を通じて形成されうる。
【0104】
前記ポリスルホンと架橋剤との架橋反応は、ポリスルホン、架橋剤及び溶媒を混合し、これを60〜150℃で加熱して行われ、ポリスルホンと架橋剤と熱可塑性樹脂との架橋反応は、ポリスルホン、架橋剤、熱可塑性樹脂及び溶媒を混合し、これを60〜150℃で加熱して行われる。
【0105】
前記架橋反応時に使われる溶媒としては、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)などを使用し、その含有量は、ポリスルホン100質量部を基準として5〜30質量部であることが望ましい。
【0106】
前記架橋剤は、分子内にエポキシ基またはイソシアネート基を有する化合物であればいずれも使用可能である。このような架橋剤の具体的な化合物の例としては、下記化学式で表示されるN,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、メチレンジフェニルジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0107】
【化26】

【0108】
ポリスルホンと架橋剤の2成分架橋反応である場合、前記架橋剤の含有量がポリスルホン100質量部を基準として0.1〜20質量部であることが望ましく、ポリスルホンと熱可塑性樹脂と架橋剤との3成分の架橋反応の場合、架橋剤の含有量は、ポリスルホンと熱可塑性樹脂との総重量100質量部を基準として0.1〜20質量部であることが望ましい。
【0109】
もし架橋剤の含有量が0.1質量部未満であれば、架橋効果が微小であり、20質量部を超えれば、リン酸含浸能が大きく減少して望ましくない。
【0110】
本発明によるポリスルホン混合物及びポリスルホンの架橋体において、ポリスルホンは、下記化学式4で表示される化合物が挙げられる。
【0111】
【化27】

【0112】
前記式中、Rは、下記構造式で表示されるグループから選択される一つである。
【0113】
【化28】

【0114】
aは、0.01〜0.6であり、bは、0.4〜0.99である。
【0115】
本発明によるポリスルホンを利用して電解質膜の製造過程を説明すれば、次の通りである。
【0116】
まず、本発明によるポリスルホンを溶媒に溶解して電解質膜形成用組成物を得た後、これを別途の支持体にコーティング及び乾燥し、前記支持体から膜を分離して電解質膜を形成する。ここで、溶媒としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを使用し、溶媒の含有量は、ポリスルホン100質量部を基準として300〜3000質量部であることが望ましい。溶媒の含有量が前記範囲から離れた場合には、電解質膜の成膜性などが低下して望ましくない。
【0117】
前記支持体としては、電解質膜を支持する役割を果たすことができるものならば、いずれも使用可能であり、支持体の例として、ガラス基板、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルムなどを使用する。
【0118】
前記乾燥は60〜180℃の範囲で行われることが望ましい。
【0119】
前述の電解質膜の製造方法以外に、前記電解質膜形成用組成物を電極上部に直接コーティング及び乾燥して電解質膜を形成することも可能である。
【0120】
次に、前記過程によって得た電解質膜は、酸に含浸する過程を経る。ここで、酸としては、リン酸、硫酸、またはその誘導体からなる群から選択された一つ以上を使用し、前記リン酸誘導体としては、エチルホスホン酸、メチルホスホン酸などのアルキルホスホン酸、リン酸エチル、リン酸メチルなどのリン酸アルキルがある。酸の含有量は、酸を含浸した電解質膜の総重量100質量部に対して、300〜1000質量部で使われる。
【0121】
前述の酸含浸過程を経ると、ポリスルホンに導入された窒素含有官能基がプロトン化されて、正電荷を帯びるようになり、酸の陰イオンがここに錯体を形成して、その流動性が抑制されて酸の保液能が改善される。これは、燃料電池の稼動中に酸の損失を抑制して、電解質膜のイオン伝導度が長時間維持されるので、結局電池の耐久性を増加させる。
【0122】
本発明で使用する酸の濃度は、特別に制限されないが、リン酸を使用する場合、85質量%のリン酸水溶液を使用し、リン酸含浸時間は、80℃で1分〜2時間、特に80℃で10分〜60分の時間範囲である。
【0123】
本発明によるポリスルホン混合物を利用した電解質膜は、前記製造過程でポリスルホンの代わりにポリスルホンと熱可塑性樹脂との混合物を利用したことを除いては、前記のポリスルホンを利用した電解質膜の製造過程と同一に実施して製造できる。
【0124】
本発明によるポリスルホンの架橋体を利用した電解質膜は、電解質膜形成用組成物の組成が異なり、ポリスルホンと架橋剤との架橋反応のための熱処理過程がさらに実施されることを除いては、前記のポリスルホンを利用した電解質膜の製造過程と同一に実施して製造できる。
【0125】
すなわち、ポリスルホンと架橋剤とを溶媒に溶解して電解質膜形成用組成物を得た後、これを別途の支持体にコーティング及び乾燥し、これを熱処理してポリスルホンの架橋体を形成し、前記支持体から膜を分離して製造可能である。
【0126】
また、前記ポリスルホンと架橋剤の以外に熱可塑性樹脂をさらに付加することを除いては、前述の製造過程によって実施してポリスルホンと熱可塑性樹脂と架橋剤との架橋反応結果物で構成された電解質膜を得ることができる。
【0127】
前記電解質膜は、前述の製造過程と同様に酸含浸過程を経る。
【0128】
前記過程によって得た本発明の電解質膜の厚さは、10〜300μmであることが望ましい。
【0129】
前記電解質膜は、燃料電池の水素イオン伝導膜として使われることができる。これを利用して燃料電池用の膜−電極アセンブリを製造する過程を説明すれば、次の通りである。本発明で使用する用語である“膜−電極アセンブリ(MEA:Membrane and Electrode Assembly)”は、電解質膜を中心としてその両面に触媒層と電極とが順次に積層されている構造を言う。
【0130】
本発明のMEAは、触媒層を備えている電極を前記過程によって得た電解質膜の両面に位置させた後、高温及び高圧で接合して形成するか、または電気化学的の触媒反応が起こる触媒金属を高分子膜上にコーティングした後、ここに燃料拡散層を接合して形成できる。この時、前記接合のための加熱温度及び圧力は、水素イオン伝導膜が軟化する温度(ナフィオンの場合、約125℃)まで加熱した状態で、0.1〜3ton/cm、特に、約1ton/cmの圧力で加圧して実行する。
【0131】
その後、前記膜−電極アセンブリにそれぞれバイポーラプレートを装着して、燃料電池を完成する。ここで、バイポーラプレートは、燃料供給用溝を有し、集電体の機能を持っている。
【0132】
前記電極膜アセンブリの製造時、触媒としては、白金(Pt)単独または金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデニウムからなる群から選択された一種以上の金属と白金との合金あるいは混合物を使用する。
【0133】
本発明の燃料電池は、特別にその用途が限定されるものではないが、望ましい一面によれば、高分子電解質膜(PEM)燃料電池として使われる。
【0134】
本発明による電解質膜は、特に高温燃料電池用電解質膜として有用である。このような電解質膜を採用した燃料電池は、酸の保液能に優れ、燃料電池作動中に酸損失を抑制して耐久性を増大させることができる。また、電解質膜を構成するポリスルホンが窒素含有官能基を有するので、酸の保液量の調節が可能であり、イオン伝導度に優れ、かつ機械的強度に優れて、さらに容易にMEAを製造できて量産が可能である。
【実施例】
【0135】
以下、本発明を下記製造例及び実施例を挙げて説明するが、本発明が下記製造例及び実施例に限定されるものではない。
【0136】
(合成例1:ポリスルホン−エチレンジアミン−1(PSF−ED−1)の合成)
【0137】
まず、下記化学式で示されるポリスルホン−エチレンジアミン−1(PSF−ED−1)を合成した。
【0138】
【化29】

【0139】
【化30】

【0140】
前記反応式3に示すように、1000mlの丸底フラスコに750mlのクロロホルムと14.88gのポリスルホン(B)を付加し、常温で撹拌して完全に溶解させた。この反応結果物にパラホルムアルデヒド10g、SnCl 0.8ml、クロロメチルシラン(CH3)SiCl 42.5mlを入れた後、50℃で20時間反応させた。
【0141】
反応が終わった溶液をメタノールに入れて沈殿した後、ろ過した。ろ過して得る粉末は、常温で真空乾燥して、クロロメチル化ポリスルホン(C)を製造した。前記クロロメチル化ポリスルホンで反復単位当たりクロロメチル基の置換率(degree of substitution:以下“DS”という)は、0.55であった。
【0142】
250mlの丸底フラスコにジメチルアセトアミド70g、クロロメチル化ポリスルホン(DS=0.55)5gを投入した後、常温で撹拌して完全に溶解させて混合物1を製造した。
【0143】
100mlの丸底フラスコにジメチルアセトアミド40g、エチレンジアミン13g、トリエチルアミン26gを入れて撹拌して完全に混合した後、これを前記混合物1に付加した後、これを窒素雰囲気下で、80℃、24時間反応させた後にメタノールに沈殿した。沈殿溶液をろ過した後、常温で真空乾燥した。
【0144】
【化31】

【0145】
(合成例2:PSF−ED−2の合成)
DSが0.73であるクロロメチル化ポリスルホンを使用し、50℃で23時間反応することを除いては、合成例1と同じ方法によって実施した。
【0146】
(合成例3:PSF−ED−3の合成)
DSが0.9であるクロロメチル化ポリスルホンを使用し、50℃で26時間反応することを除いては、合成例1と同じ方法によって実施した。
【0147】
(合成例4:ポリスルホン−(1−(3−アミノプロピル)イミダゾール−1(PSF−API−1)の合成)
【0148】
次に、下記化学式で示されるポリスルホン−(1−(3−アミノプロピル)イミダゾール−1(PSF−API−1)を合成した。
【0149】
【化32】

【0150】
前記式中、nは8である。
【0151】
1)クロロメチル化ポリスルホンの(C)合成
前記反応式3に示すように、1000mlの丸底フラスコに750mlのクロロホルムと14.88gのポリスルホン(B)を付加し、常温で撹拌して完全に溶解させた。パラホルムアルデヒド10g、SnCl0.8ml、クロロメチルシラン(CHSiCl 42.5mlを入れた後、50℃で24時間反応させた。
反応が終わった溶液をメタノールに入れて沈殿した後、ろ過した。ろ過して得た粉末は、常温で真空乾燥してクロロメチル化ポリスルホン(C)を製造した。クロロメチル化ポリスルホンでDSは、0.82であった。
【0152】
前記化合物のNMR分析を実施し、その結果は、図1に示す通りである。これを参照してクロロメチル化ポリスルホンの構造を確認できた。
【0153】
2)ポリスルホン−graf−PEGの合成
【化33】

【0154】
前記式中、nは8であり、kは、重合度であって140であり、重量平均分子量が約63000であった。
【0155】
前記反応式4に示すように、250mlの丸底フラスコにテトラヒドロフラン75ml、クロロメチル化ポリスルホン(C)3gを投入した後、常温で撹拌して完全に溶解させて混合物2を得た。
【0156】
これと別途に10mlのフラスコに2.52mlのTHF、0.02gのNaHを入れて撹拌させながら、メトキシポリプロピレングリコール(Mn 350g/モル)(PEG−OH)溶液(メトキシポリプロピレングリコール 0.38g、THF 1.13ml)を滴加漏斗を使用してゆっくり滴下した。窒素をパージしながら常温で3時間反応させて、濃褐色の溶液が得られた。この褐色溶液を前記過程に得たクロロメチル化ポリスルホン溶液に入れ、72時間常温で反応させた後、これを1:3体積比のエタノールと石油系エーテルの混合溶媒を利用して沈殿物を形成した。
【0157】
前記結果溶液をろ過した後、得られた固体を常温で真空乾燥して、下記化学式で表示されるポリスルホン−graf−PEGを得た。ここで、ポリスルホン反復単位当たりPEO[−CHO(CHCHO)CH]の置換率は、0.1である。
【0158】
【化34】

【0159】
前記式中、cは0.1であり、aは0.9であり、nは8であった。
【0160】
前記ポリスルホン−graf−PEGの構造は、核磁気共鳴分析法を通じて確認し、その結果は、図2Bに示す通りである。
【0161】
(ポリスルホン−(1−(3−アミノプロピル)イミダゾール−1(PSF−API−1)の合成)
100mlの丸底フラスコにジメチルアセトアミド20g、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール15.71ml、トリエチルアミン12.7mlを入れて常温で撹拌した後、前記過程によって得たポリスルホン−graft−PEG溶液に付加し、これを80℃で24時間反応させた後、これをメタノールを利用して沈殿物を形成した。このように形成された沈殿溶液をろ過した後、得られた固体を常温で真空乾燥した。
【0162】
(合成例5:PSF−API−2の合成)
クロロメチル基置換率が0.9であるポリスルホンを使用したことを除いては、合成例1と同じ方法によって実施した。
【0163】
前記PSF−API−2のIR分析を実施し、IR分析スペクトルを図2Aに示す。その結果、−NH官能基の存在を確認できた。
【0164】
(合成例6:PSF−API−3の合成)
クロロメチル基置換率が0.95であるポリスルホンを使用したことを除いては、合成例1と同じ方法によって実施した。
【0165】
前記過程によって得たPSF−ED−1ないしPSF−ED−3及びPSF−API−1ないしPSF−API−3において、反復単位当たりアミノ基導入量及びPEO{−CH0(CHCHO)CH基}の導入量を調べて下記表1に示した。
【0166】
【表1】

【0167】
(合成例7:ポリスルホン混合物の製造)
前記合成例1によって得たポリスルホンPSF−ED−10.7gとポリベンズイミダゾール0.3gとを混合してポリスルホン混合物を得た。
【0168】
(合成例8:ポリスルホン混合物の製造)
前記合成例1によって得たポリスルホンPSF−ED−10.5gとポリベンズイミダゾール0.5gとを混合して、ポリスルホン混合物を得た。
【0169】
(合成例9:ポリスルホン混合物の製造)
前記合成例1によって得たポリスルホンPSF−ED−10.3gとポリベンズイミダゾール0.7gとを混合して、ポリスルホン混合物を得た。
【0170】
(合成例10:ポリスルホンの架橋体の製造(ポリスルホンとポリベンズイミダゾールの総重量100質量部に対して架橋剤が1質量部で使われた場合))
前記合成例1によって得たポリスルホンPSF−ED−10.5gとポリベンズイミダゾール0.5gと架橋剤であるN,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン0.01gとをジメチルアセトアミド(DMAc)9gに入れ、撹拌して均一の溶液を製造した後、80℃、3時間、110℃、1時間加熱してポリスルホンの架橋剤を製造した。
【0171】
(合成例11:ポリスルホンの架橋体の製造(ポリスルホンとポリベンズイミダゾールの総重量100質量部に対して架橋剤が2質量部で使われた場合))
得られたポリスルホンPSF−ED−10.5gとポリベンズイミダゾール0.5gと架橋剤であるN,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン0.02gとが使われたことを除いては、合成例10と同じ方法によって実施してポリスルホンの架橋体を製造した。
【0172】
(合成例12:ポリスルホンの架橋体の製造(ポリスルホンとポリベンズイミダゾールの総重量100質量部に対して架橋剤が3質量部で使われた場合))
得られたポリスルホンPSF−ED−10.5gとポリベンズイミダゾール0.5gと架橋剤であるN,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン0.03gとが使われたことを除いては、合成例10と同じ方法によって実施してポリスルホンの架橋体を製造した。
【0173】
(合成例13:ポリスルホンの架橋体の製造(ポリスルホンとポリベンズイミダゾールの総重量100質量部に対して架橋剤が4質量部で使われた場合))
得られたポリスルホンPSF−ED−10.5gとポリベンズイミダゾール0.5gと架橋剤であるN,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン0.04gとが使われたことを除いては、合成例10と同じ方法によって実施してポリスルホンの架橋体を製造した。
【0174】
(実施例1:電解質膜の製造)
前記過程によって製造されたPSF−ED−10.5gをジメチルアセトアミド(DMAc)10gに入れ、60℃で撹拌しながら溶解させた後にろ過した。ろ過した溶液をペトリ皿に入れ、80℃で3時間乾燥して電解質膜を得た。この時、電解質膜の厚さは、100μmであった。製造された電解質膜を85質量%のリン酸に浸し、80℃、1時間加熱した後、取り出して表面のリン酸を除去した後に使用した。
【0175】
(実施例2)
PSF−ED−1の代わりにPSF−ED−2を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施して電解質膜を製造した。
【0176】
(実施例3)
PSF−ED−1の代わりにPSF−ED−3を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施して電解質膜を製造した。
【0177】
(実施例4:電解質膜の製造)
20mlのバイアルにジメチルアセトアミド4.5g、PSF−API−10.5gを投入した後、常温で撹拌して完全に溶解させた。
【0178】
ペトリ皿にポリスルホン−graf−PEG−API溶液を滴下した後、80℃のコンべクションオーブンで3時間加熱して、電解質膜を製造した。この時、電解質膜の厚さは、100μmであった。製造された電解質膜を85質量%のリン酸に浸し、80℃、1時間加熱した後、取り出して表面のリン酸を除去した後に使用した。
【0179】
(実施例5)
PSF−API−1の代わりにPSF−API−2を使用したことを除いては、実施例4と同じ方法によって実施して電解質膜を製造した。
【0180】
(実施例6)
PSF−API−1の代わりにPSF−API−3を使用したことを除いては、実施例4と同じ方法によって実施して電解質膜を製造した。
【0181】
(実施例7)
前記合成例7によって得たポリスルホン混合物0.1g、溶媒であるジメチルアセトアミド(DMAc)0.9gを混合し、これを常温で撹拌して完全に溶解させた。これを80℃、3時間加熱して電解質膜を製造した。この時、電解質膜の厚さは、100μmであった。
【0182】
(実施例8〜9)
合成例7によって得たポリスルホン混合物の代わりに合成例8及び9によって得たポリスルホン混合物をそれぞれ使用したことを除いては、実施例7と同じ方法によって実施して電解質膜を製造した。
【0183】
(実施例10)
合成例7のポリスルホン混合物の代わりに合成例10のポリスルホン架橋体を使用したことを除いては、実施例7と同じ過程によって実施して電解質膜を製造した。
【0184】
(実施例11〜13)
合成例10のポリスルホン架橋体代わりに合成例11、12、13のポリスルホンの架橋体をそれぞれ使用したことを除いては、実施例10と同じ方法によって実施して電解質膜を製造した。
【0185】
(比較例1)
20mlのバイアルにジメチルアセトアミド9g、ポリベンズイミダゾール1gを投入した後、常温で撹拌して完全に溶解させた。
【0186】
ペトリ皿にポリベンズイミダゾール溶液を滴下した後、80℃のコンべクションオーブンで3時間加熱して、電解質膜を製造した。この時、電解質膜の厚さは、100μmであった。
【0187】
前記実施例1〜6及び比較例1によって得た電解質膜を一定サイズに切って重量を測定した後、85%のリン酸溶液に浸し、80℃、1時間加熱したリン酸の含浸量を調べ、その結果を下記表2に示した。ここで、リン酸の含浸量は、下記式によって計算した。
【0188】
(リン酸の含浸後重量−リン酸の含浸前電解質膜の重量)/(リン酸の含浸前電解質膜の重量)×100
【0189】
また、前記実施例1及び2によって得た電解質膜の150℃でイオン伝導度を測定し、下記表2に示した。ここで、イオン伝導度の測定は、インピーダンス分析器を使用した。
【0190】
【表2】

【0191】
前記実施例1、実施例7〜9によって得た電解質膜を一定サイズに切って重量を測定した後、85%のリン酸溶液に浸し、80℃、1時間加熱したリン酸含浸量を調べ、その結果を下記表3に示した。ここで、リン酸含浸量は、前記式1によって計算した。
【0192】
【表3】

【0193】
前記表3から、熱可塑性樹脂であるポリベンズイミダゾールの含有量が増加するほど、ポリスルホン混合物を利用して得られた電解質膜のリン酸含浸量が増加し、かつイオン伝導度も向上するということが分かった。
【0194】
前記実施例10−13によって得た電解質膜を一定サイズに切って重量を測定した後、85%のリン酸溶液に浸し、80℃、1時間加熱したリン酸含浸量を調べ、その結果を下記表4に示した。ここで、リン酸含浸量は、前記式1によって計算した。
【0195】
【表3】

【0196】
前記表4から架橋剤含有量が増加するほど、リン酸含浸量とイオン伝導度とが減少することが分かった。
【0197】
(実施例14:燃料電池の製作)
アノードは、PtRu−black(JM600)1.34mg/cmを利用して製造し、カソードは、前記Pt/Co触媒を利用して2.53mg/cm(Pt基準)でアノード及びカソード拡散層上にスプレーして製造し、電解質膜として前記実施例5によって得た電解質膜を使用した。このように得たアノード、カソード及び電解質膜を125℃の温度で2ton/cmの圧力で3分間接合させて、電極膜アセンブリ(MEA)を製造した。MEAは、水素イオン伝導性高分子膜を中心としてその両面に触媒層と電極とが順次に積層されている構造を言う。
【0198】
前記アノードとカソードにそれぞれ水素ガス分離板と空気供給用の分離板とを付着させて、燃料電池を製造した。ここで、水素ガスは、約100ccmの流速で供給し、酸素は、約250ccmの流速で供給した。
【0199】
(実施例15:燃料電池の製造)
アノードは、PtRu−black(JM600)1.23mg/cmを利用して製造し、カソードは、前記Pt/Co触媒を利用して2.35mg/cm(Pt基準)でアノード及びカソード拡散層上にスプレーして製造し、電解質膜として前記実施例11によって得た電解質膜を使用した。
【0200】
このように得たアノード、カソード及び電解質膜を、125℃の温度で2ton/cmの圧力で3分間接合させて、電極膜アセンブリ(MEA)を製造した。MEAは、水素イオン伝導性高分子膜を中心としてその両面に触媒層と電極とが順次に積層されている構造を言う。
【0201】
前記アノードとカソードにそれぞれ水素ガス分離板と空気供給用の分離板を付着させて、燃料電池を製造した。ここで、水素ガスは、約100ccmの流速で供給し、酸素は、約250ccmの流速で供給した。
【0202】
前記実施例14及び実施例15によって製造された単位電池の性能を測定した。作動条件は、燃料として、アノードにはHを100ccmで供給し、カソードには空気を250ccmで供給し、作動温度150+273K、無加湿条件で維持して測定した。
実施例14のセル性能テスト結果は、図3に示す通りであり、実施例15のセル性能テストは、図4に示す通りである。
【0203】
図3を参照して、実施例14の燃料電池が優れた単位電池性能を示すことが分かった。
また。図4を参照して図3と比較した時、ポリスルホン混合物膜がポリスルホン膜を利用した場合に比べてさらに高い燃料電池性能を示すことが分かった。
【0204】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0205】
本発明は、燃料電池関連の技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1】本発明の合成例4によって得たクロロメチル化ポリスルホン(C)の核磁気共鳴(NMR)スペクトルを示す図である。
【図2A】本発明の合成例5によって得たPSF−API−2のIR分析スペクトルを示す図である。
【図2B】本発明の合成例4によって得たポリスルホン−graf−PEGのNMRスペクトルを示す図である。
【図3】本発明の実施例14によって製造された単位電池の性能を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例15によって製造された単位電池の性能を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表示される反復単位を含むポリスルホン。
【化1】


【化2】

Xは、単一結合または−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−C(CCl−、−C(=O)−または−O−であり、
は、互いに同一であるか、または異なって選択された一置換または多置換の置換基を示し、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、C4−C30のアルキルヘテロアリールピリジニウム塩基、C4−C30のアリールヘテロアリールピリジニウム塩基またはC4−C30アラルキルヘテロアリールピリジニウム塩基であり、
Rは、水素、C1−C20のアルキル基、C6−C20のアリール基、C1−C20のアルコキシ基、C6−C20のアリールオキシ基からなる群から選択された一つ以上である。
【請求項2】
前記Rは、互いに独立して下記構造式で表示されるグループから選択された一つであることを特徴とする、請求項1に記載のポリスルホン。
【化3】

【請求項3】
下記化学式2で表示される反復単位をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリスルホン。
【化4】

【化5】

Xは、単一結合または−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−C(CCl−、−C(=O)−または−O−であり、
Rは、水素、C1−C20のアルキル基、C6−C20のアリール基、C1−C20のアルコキシ基、C6−C20のアリールオキシ基からなる群から選択された一つ以上である。
【請求項4】
前記化学式1の反復単位は、0.01〜0.99モルであり、化学式2の反復単位は、0.01〜0.99モルであり、重合度は、20〜5000であることを特徴とする、請求項3に記載のポリスルホン。
【請求項5】
前記スルホンが、下記化学式4で表示される反復単位を有する化合物であることを特徴とする、請求項3に記載のポリスルホン。
【化6】

前記式中、Rは、下記構造式で表示されるグループから選択される一つであり、
【化7】

aは、0.01〜0.6であり、bは、0.4〜0.99である。
【請求項6】
前記ポリスルホンが、下記化学式5で表示される反復単位を有する化合物であることを特徴とする、請求項5に記載のポリスルホン。
【化8】

前記式中、aは、0.01〜0.6で、bは、0.4〜0.99である。
【請求項7】
下記化学式3で表示される反復単位をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリスルホン。
【化9】

【化10】

Xは、単一結合または−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−C(CCl−、−C(=O)−または−O−であり、
は、C1−C20のアルキル基、C1−C20のアルコキシ基、C6−C20のアリール基、C6−C20のアリールオキシ基、C7−C20のアリールアルキル基、及び−CHO(CHCHO)CH(nは、1〜20の整数である)からなる群から選択され、
Rは、水素、C1−C20のアルキル基、C6−C20のアリール基、C1−C20のアルコキシ基、C6−C20のアリールオキシ基からなる群から選択された一つ以上である。
【請求項8】
前記化学式1の反復単位は、0.6〜0.9モルであり、前記化学式3の反復単位は、0.05〜0.3モルであり、重合度は、20〜1000であることを特徴とする、請求項7に記載のポリスルホン。
【請求項9】
下記化学式3で表示される反復単位をさらに含むことを特徴とする、請求項3に記載のポリスルホン。
【化11】

【化12】

は、C1−C20のアルキル基、C1−C20のアルコキシ基、C6−C20のアリール基、C6−C20のアリールオキシ基、C7−C20のアリールアルキル基、及び−CHO(CHCHO)CH(nは、1〜20の整数である)からなる群から選択され、
Rは、水素、C1−C20のアルキル基、C6−C20のアリール基、C1−C20のアルコキシ基、C6−C20のアリールオキシ基からなる群から選択される。
【請求項10】
前記化学式1の反復単位は、0.6〜0.9モルであり、化学式2の反復単位は、0.1〜0.3モルであり、化学式3の反復単位は、0.05〜0.3モルであり、重合度は、20〜1000であることを特徴とする、請求項9に記載のポリスルホン。
【請求項11】
前記ポリスルホンが、下記化学式6で表示される反復単位を有する化合物であることを特徴とする、請求項9に記載のポリスルホン。
【化13】

前記式中、Rは、下記構造式で表示されるグループから選択された一つであり、
【化14】

aは、0.1〜0.3であり、bは、0.6〜0.9であり、cは、0.05〜0.3であり、
は、−CHO(CHCHO)CH(n=1〜20の整数である)である。
【請求項12】
前記スルホンが、下記化学式7で表示されるターポリマーであることを特徴とする、請求項11に記載のポリスルホン。
【化7】

前記式中、aは、0.1〜0.3であり、bは、0.6〜0.9であり、cは、0.05〜0.3であり、nは、1〜20の整数である。
【請求項13】
請求項1から請求項12のうちいずれか一項に記載のポリスルホン及び熱可塑性樹脂を含む、ポリスルホン混合物。
【請求項14】
前記熱可塑性樹脂が、ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリピリジン、ポリピリミジンからなる群から選択された一つ以上であり、
前記熱可塑性樹脂の含有量が、前記ポリスルホン100質量部を基準として10〜80質量部であることを特徴とする、請求項13に記載のポリスルホン混合物。
【請求項15】
請求項1から請求項12のうちいずれか一項に記載のポリスルホン、及び、請求項1から請求項16のうちいずれか一項に記載のポリスルホンと熱可塑性樹脂との混合物から選択された一つの高分子Qと、
架橋剤と、
の架橋反応結果物であることを特徴とする、ポリスルホンの架橋体。
【請求項16】
前記架橋剤が、エポキシまたはイソシアネート官能基を有する化合物であり、
前記架橋剤の含有量が、高分子Q100質量部を基準として0.1〜20質量部であることを特徴とする、請求項15に記載のポリスルホンの架橋体。
【請求項17】
前記熱可塑性樹脂が、ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリピリジン、ポリピリミジンからなる群から選択された一つ以上であり、
前記熱可塑性樹脂の含有量が、前記ポリスルホン100質量部を基準として10〜80質量部であることを特徴とする、請求項15に記載のポリスルホンの架橋体。
【請求項18】
請求項1から請求項12のうちいずれか一項に記載のポリスルホン及び酸を含有する電解質膜。
【請求項19】
請求項13に記載のポリスルホン混合物及び酸を含む電解質膜。
【請求項20】
請求項15に記載のポリスルホンの架橋体及び酸を含む電解質膜。
【請求項21】
カソード、アノード及びこれらの間に介在された請求項18に記載の電解質膜を備える燃料電池。
【請求項22】
カソード、アノード及びこれらの間に介在された請求項19に記載の電解質膜を備える燃料電池。
【請求項23】
カソード、アノード及びこれらの間に介在された請求項20に記載の電解質膜を備える燃料電池。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−115389(P2008−115389A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282099(P2007−282099)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】