説明

ポリビニルアセタール積層体およびその用途

【課題】
ポリビニルアセタールを含む層とポリオレフィンを含む層との積層体であって、これら層間の接着性に優れる積層体を提供する。
【解決手段】
本発明は、ポリビニルアセタールを含む組成物AからなるA層と、ポリオレフィン、および/または、接着性官能基含有オレフィン系重合体を含有する組成物BからなるB層とを積層してなり、(ポリオレフィン)/(接着性官能基含有オレフィン系重合体)の質量比が、0/100〜99.95/0.05である積層体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアセタール積層体およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルブチラールに代表されるポリビニルアセタールは、さまざまな有機・無機基材に対する接着性や相溶性、有機溶剤への溶解性に優れており、種々の接着剤やセラミック用バインダー、各種インク、塗料等や、安全ガラス中間膜として広範に利用されている。
【0003】
これら用途のうち、合わせガラス中間膜用途において、合わせガラス中間膜に高い遮音性能を付与する目的で可塑化ポリビニルアセタールシートと、高い遮音性能を有するスチレン−ジエンブロック共重合体シートを積層した遮音合わせガラス中間膜(特許文献1〜3参照)、あるいはそのような合わせガラスを用いた遮音性の高いパチンコ機用全面板(特許文献4参照)の検討が行われている。ところが、このような可塑化ポリビニルアセタールとスチレン−ジエンブロック共重合体の積層体においては、可塑化ポリビニルアセタールとスチレン−ジエンブロック共重合体の接着性が非常に弱く、吸湿や外部からの衝撃、あるいは可塑化ポリビニルアセタールとスチレン−ジエンブロック共重合体との熱膨張率の違いにより生じる応力などによって界面で容易に剥離を起こし、合わせガラスとして機能が低下したり、あるいは外観を損なう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−091491号公報
【特許文献2】特開2005−306326号公報
【特許文献3】特表2001−506198号公報
【特許文献4】特開2007−136057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題を解決するものであり、合わせガラス中間膜その他用途に好適に使用される、ポリビニルアセタールを含む層とポリオレフィン(炭化水素系重合体)を含む層との積層体であって、これら層間の接着性に優れる積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると上記目的は、ポリビニルアセタールを含む組成物AからなるA層と、
ポリオレフィン、および/または、接着性官能基含有オレフィン系重合体を含有する組成物BからなるB層とを積層してなり、(ポリオレフィン)/(接着性官能基含有オレフィン系重合体)の質量比が、0/100〜99.95/0.05である積層体を提供することで達成される。
【0007】
特に、ポリビニルアセタールを含む組成物AからなるA層と、ポリオレフィン、並びに/または、ホウ素および/若しくはケイ素を含む有機金属官能基を含有する接着性官能基含有オレフィン系重合体(以下、有機金属官能基含有オレフィン系重合体という)を含有し、(ポリオレフィン)/(有機金属官能基含有オレフィン系重合体)=0/100〜99.95/0.05の質量比である組成物BからなるB層とを積層してなる積層体、ポリオレフィンを含む組成物CからなるC層とA層がB層を介して積層してなる積層体を提供することで達成される。
【0008】
また、特に、ポリビニルアセタールを含む組成物AからなるA層と、ポリオレフィン、並びに/または、カルボキシル基、カルボキシル基の誘導体基、および、エポキシ基から選ばれる1種類以上の反応性官能基を含有する接着性官能基含有オレフィン系重合体(以下、反応性官能基含有オレフィン系重合体という)を含有し、(ポリオレフィン)/(反応性官能基含有オレフィン系重合体)=0/100〜99.9/0.1の質量比である組成物BからなるB層とを積層してなる積層体、ポリオレフィンを含む組成物CからなるC層とA層がB層を介して積層してなる積層体を提供することで達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層体は、組成物Bが接着性官能基含有オレフィン系重合体を必須成分として含むものである。接着性官能基含有オレフィン系重合体としては特に限定されないが、有機金属官能基含有オレフィン系重合体または反応性官能基含有オレフィン系重合体が好適である。
【0010】
本発明で有機金属官能基含有オレフィン系重合体を使用する場合、有機金属官能基含有オレフィン系重合体中のケイ素、ホウ素が、ポリビニルアセタールが有する水酸基と反応し共有結合を形成するか、もしくはポリビニルアセタールが有する水酸基と強力な水素結合を形成することができる。また、有機金属官能基含有オレフィン系重合体は、それを構成する多くの部分が炭化水素系モノマーの重合体からなるため、分子極性が比較的近いポリオレフィンとも相溶、接着可能である。そのため、本発明の組成物AからなるA層と組成物BからなるB層とを積層してなる構成を含む積層体、あるいはA層と組成物CからなるC層を、組成物Bを含むB層を介して積層されてなる構成を含む積層体はA層とB層、あるいはA層とC層の層間接着性に優れ、特にこれら積層体を合わせガラス中間膜に使用する場合に好適である。
【0011】
また、本発明で反応性官能基含有オレフィン系重合体を使用する場合、反応性官能基含有オレフィン系重合体中のカルボキシル基、カルボキシル基の誘導体基、および、エポキシ基から選ばれる1種類以上の基が、ポリビニルアセタールが有する水酸基と反応し共有結合を形成することができ、また、反応性官能基含有オレフィン系重合体は、それを構成する多くの部分がポリオレフィン系モノマーの重合体からなるため、分子極性が比較的近いポリオレフィンとも相溶、接着可能である。そのため、本発明の組成物AからなるA層と組成物BからなるB層とを積層してなる構成を含む積層体、あるいはA層と組成物CからなるC層を、組成物Bを含むB層を介して積層されてなる構成を含む積層体はA層とB層、あるいはA層とC層の層間接着性に優れ、特にこれら積層体を合わせガラス中間膜に使用する場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の積層体および結晶タイプの太陽電池セルを使用した、太陽電池モジュールの一例を表す概略図である。
【図2】本発明の積層体および薄膜タイプの太陽電池セルを使用した、太陽電池モジュールの一例を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明で使用する組成物Bについて説明する。本発明で使用する組成物Bは、ポリオレフィンと接着性官能基含有オレフィン系重合体を、(ポリオレフィン)/(接着性官能基含有オレフィン系重合体)=0/100〜99.95/0.05の質量比で含んでいれば特に限定されない。本発明の組成物Bでは、ポリオレフィンは必須成分でない。すなわち(ポリオレフィン)/(接着性官能基含有オレフィン系重合体)=0/100であるとは、組成物Bがポリオレフィンを含んでいないことを表す。接着性官能基含有オレフィン系重合体としては特に限定されないが、有機金属官能基含有オレフィン系重合体または反応性官能基含有オレフィン系重合体が好適である。
【0014】
本発明の組成物Bで使用する接着性官能基含有オレフィン系重合体が、有機金属官能基含有オレフィン系重合体である場合、組成物Bに含まれるポリオレフィンと有機金属官能基含有オレフィン系重合体が、(ポリオレフィン)/(有機金属官能基含有オレフィン系重合体)=0/100〜99.95/0.05の質量比で含有されていれば、特に限定されない。(ポリオレフィン)/(有機金属官能基含有オレフィン系重合体)=0/100〜99.9/0.1の質量比であることがより好ましく、50/50〜99.5/0.5の質量比であることが、さらに好ましい。組成物B中の有機金属官能基含有オレフィン系重合体の含有量が、ポリオレフィンと有機金属官能基含有オレフィン系重合体の合計量に対し、質量比で0.05より小さくなると、層間接着性が低下するため、好ましくない。
【0015】
組成物Bに含まれるポリオレフィンおよび有機金属官能基含有オレフィン系重合体の合計含有量は、本発明の主旨に反しない限り特に限定されないが、組成物Bの質量に対して30質量%以上、より好ましくは80質量%以上、最適には90質量%以上であることが好ましい。ポリオレフィンおよび有機金属官能基含有オレフィン系重合体の合計含有量が組成物Bの質量に対して30質量%より低くなると、層間接着性が低下したり、ポリオレフィンまたは有機金属官能基含有オレフィン系重合体が本来有する低吸水性や種々の力学特性、また後述するブロック共重合体が有する遮音性などの特性が低下する傾向がある。
【0016】
また、本発明の組成物Bで使用する接着性官能基含有オレフィン系重合体が、反応性官能基含有オレフィン系重合体である場合、組成物Bに含まれるポリオレフィンと反応性官能基含有オレフィン系重合体が、(ポリオレフィン)/(反応性官能基含有オレフィン系重合体)=0/100〜99.95/0.05の質量比で含有していれば、特に限定されない。(ポリオレフィン)/(反応性官能基含有オレフィン系重合体)=0/100〜99.9/0.1の質量比であることがより好ましく、50/50〜99.5/0.5の質量比であることが、さらに好ましい。組成物B中の反応性官能基含有オレフィン系重合体の含有量が、ポリオレフィンと反応性官能基含有オレフィン系重合体の合計量に対し、質量比で0.05より小さくなると、層間接着性が低下するため、好ましくない。
【0017】
組成物Bに含まれるポリオレフィンおよび反応性官能基含有オレフィン系重合体の合計含有量は、本発明の主旨に反しない限り特に限定されないが、組成物Bの重量に対して30質量%以上、より好ましくは80質量%以上、最適には90質量%以上であることが好ましい。ポリオレフィンおよび反応性官能基含有オレフィン系重合体の合計含有量が組成物Bの質量に対して30質量%より低くなると、層間接着性が低下したり、ポリオレフィンまたは反応性官能基含有オレフィン系重合体が本来有する低吸水性や種々の力学特性、また後述するブロック共重合体が有する遮音性などの特性が低下する傾向がある。
【0018】
次に、本発明の組成物Bまたは組成物Cで使用するポリオレフィンについて説明する。本発明で使用するポリオレフィンは炭化水素成分を主成分とする重合体であれば特に限定されず、目的に応じて適宜選択可能であるが、特に炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、および、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物から選ばれる1種類以上の化合物の重合体またはそれらの水添物であることが、層間接着性や種々の力学特性に優れ、また入手が容易である点で好ましい。ここで、炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、および炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物から選ばれる1種類以上の化合物の重合体またはそれらの水添物は、重合体に含まれる全単量体単位に占める炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物および炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物の合計量の割合が、80質量%以上、好ましくは95質量%以上、最適には98質量%以上である重合体またはそれらの水添物であることが好ましい。重合体に含まれる全単量体単位に占める炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物および炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物の合計量の割合が80質量%より低くなると、ポリオレフィンが本来有する低吸水性や種々の力学特性、また後述するブロック共重合体が有する遮音性などの特性が低下する傾向がある。
【0019】
炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物を具体的に例示すると、エチレン、プロピレン、ブチレン、2−ブチレン、イソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、シクロヘキセン、シクロオクテンなどの脂肪族モノエン化合物、ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3,5−ヘキサトリエン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,3−シクロオクタジエンなどの脂肪族共役ポリエン化合物、また、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエンなどの脂肪族非共役ポリエン化合物などが挙げられる。また、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物を具体的に例示すると、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−ブチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、(1−ナフチル)エチレン、(2−ナフチル)エチレンなどの芳香族モノエン化合物、1−フェニルブタジエン、2−フェニルブタジエンなどの芳香族共役ポリエン化合物、1−フェニル−1,4−ペンタジエン、1−フェニル−1,3−シクロヘキサジエンなどの芳香族非共役ポリエン化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
組成物Bで使用するポリオレフィンは、接着性官能基含有オレフィン系重合体と混合するという観点から、上記に例示した化合物のみを単量体単位として含有する。一方、組成物Cで使用するポリオレフィンは、上記に例示した化合物の他、本発明の効果を阻害しない範囲において、以下の化合物を共重合していてもかまわない。例えば、アクリル酸またはその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体などのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、N−メチロールメタクリルアミドまたはその誘導体などのメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸およびその塩またはそのエステルまたはその無水物;酢酸イソプロペニルがあげられる。
【0021】
炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、および炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物から選ばれる1種類以上の化合物の重合体またはその水添物を具体的に例示すると、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン共重合体、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレンの他、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、および、それらの水添物などのブロック共重合体が挙げられる。また、これらの重合方法は特に限定されず、例えば、従来公知の方法で重合したものを使用することが可能である。特に本発明の積層体を遮音性合わせガラス中間膜として使用する場合、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−イソプレン共重合体およびそれらの水添物などの、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物の重合体からなるブロック(X)と、炭素数2〜12の脂肪族共役ポリエン化合物の重合体からなるブロック(Y)とのブロック共重合体およびその水添物(これ以降、これらをまとめて単にブロック共重合体と呼ぶ)が制振性、遮音性に優れるため、好適に使用される。以下、これについて説明する。
【0022】
本発明で使用されるブロック共重合体は、ブロック(X)部分とブロック(Y)部分を有していれば特に限定されず、例えば[(X)−(Y)]、[(X)−(Y)]−(X)、(Y)−[(X)−(Y)]などのブロック共重合体が使用可能である。ここでk、m、nは任意の自然数である。これらの中でも、ブロック(X)を2つ以上と、ブロック(Y)を1つ以上有するブロック共重合体が好適であり、(X)−(Y)−(X)からなるトリブロック共重合体が特に好適である。また、本発明で使用するブロック共重合体が、ブロック(X)を2つ以上含む場合、または、ブロック(Y)を2つ以上含む場合、ブロック(X)、ブロック(Y)はそれぞれ同一であっても良いし、異なっていても良い。
【0023】
ブロック共重合体に占めるブロック(X)およびブロック(Y)の含有量は、本発明の目的に反しない限り特に限定されないが、制振性や遮音性の観点から、ブロック共重合体の全質量に対するブロック(X)の含有量が5〜95質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましい。ブロック(X)の含有量がこの範囲である場合、ブロック共重合体が本来有する制振性、遮音性などの特性が発現し好適である。
【0024】
ブロック共重合体におけるブロック(X)およびブロック(Y)の重量平均分子量は特に限定されないが、ブロック(X)1つあたりの重量平均分子量が2,500〜75,000であることが好ましく、また、ブロック(Y)1つあたりの重量平均分子量が1,000〜100,000であることが好ましい。また、ブロック共重合体の重量平均分子量としては、10,000〜1,000,000であることが好ましく、15,000〜200,000であることがより好ましい。ブロック(X)、ブロック(Y)の重量平均分子量が小さすぎるとブロック共重合体としての性能が発現しないことがある。また、ブロック共重合体の重量平均分子量が小さすぎると、積層体にしたときの力学強度が低くなりすぎることがあり、ブロック共重合体の重量平均分子量が大きすぎると、成形時の取り扱い性が悪くなる。また、ブロック共重合体のガラス転移温度、融点などは目的に応じて適宜選択可能である。
【0025】
本発明で使用するブロック共重合体のガラス転移温度は特に限定されず、目的に応じて適宜選択可能であるが、−50〜50℃であるものが好ましく、−45〜30℃であるものがより好ましく、−40〜20℃であるものがさらに好ましい。ブロック共重合体のガラス転移温度が上記範囲を満たすことで、本発明の積層体の力学物性や種々の特性が好ましいものとなる。
【0026】
本発明で使用するブロック共重合体のtanδのピーク温度は特に限定されず、目的に応じて適宜選択可能であるが、−40〜30℃であることが好ましく、−35〜25℃であることがより好ましく、−30〜20℃であることがさらに好ましい。
【0027】
本発明で使用するブロック共重合体の力学強度は特に限定されず、目的に応じて適宜選択可能であるが、例えば引っ張り破断強度を指標として表すのであれば、0.1MPa以上であることが好ましく、0.5MPa以上であることがより好ましく、1.0MPa以上であることがさらに好ましい。
【0028】
本発明で使用するブロック共重合体のMFR値は特に限定されず、目的に応じて適宜選択可能であるが、例えば、ASTM D1238に従い、荷重2.16kg、温度190℃で測定した場合のMFR値が0.1〜100g/10分であることが好ましく、0.1〜70g/10分であることがより好ましく、0.1〜50g/10分であることがさらに好ましい。
【0029】
本発明で使用するブロック共重合体は、そのブロック(Y)部分が水添されていても、水添されていなくてもかまわないが、耐候性の観点から水添されていることが好ましく、その水添率が好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であると良い。
【0030】
このようなブロック共重合体は、従来公知の方法で製造可能であるが、例えば有機リチウム試薬などを開始剤とし、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物および炭素数2〜12の脂肪族共役ポリエン化合物を順次添加して反応させる方法が挙げられるが、これに限定されない。
【0031】
つぎに、本発明で使用する有機金属官能基含有オレフィン系重合体について説明する。本発明で使用される有機金属官能基含有オレフィン系重合体は、炭化水素成分を主成分とし、ホウ素、ケイ素から選ばれる1種類以上の元素を含む基(以下、有機金属官能基という)を含有するオレフィン系重合体であれば特に限定されないが、炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、および、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物から選ばれる1種類以上の化合物の重合体またはそれらの水添物であって、その分子鎖の末端または側鎖に有機金属官能基を有する重合体またはそれらの水添物であることが、層間接着性に優れ、種々の力学特性、また対応する重合体の入手が容易であるである点で好ましい。ここで、炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、および、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物から選ばれる1種類以上の化合物の重合体またはそれらの水添物であって、その分子鎖の末端または側鎖に有機金属官能基を有する重合体またはそれらの水添物は、重合体に含まれる全単量体単位に占める炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物および炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物の合計量の割合が、30質量%以上、好ましくは80質量%以上、最適には90質量%以上である重合体またはそれらの水添物であって、その分子鎖の末端または側鎖に有機金属官能基を有する重合体またはそれらの水添物を指す。重合体に含まれる全単量体単位に占める炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物および炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物の合計量の割合が30質量%より低くなると、有機金属官能基含有ポリオレフィンが本来有する低吸水性や種々の力学特性、また後述するブロック共重合体が有する遮音性などの特性が低下する傾向がある。
【0032】
炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物としては、具体的には、上で述べた、ポリオレフィンを構成する炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物の具体例として例示した化合物と同じものが挙げられる。また、炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、および、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物から選ばれる1種類以上の化合物の重合体またはその水添物であって、その分子鎖の末端または側鎖に有機金属官能基を有する重合体とは、具体的には、上で述べた、炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、および、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物から選ばれる1種類以上の化合物の重合体として例示した化合物と同じ重合体またはその水添物であって、その分子鎖の末端または側鎖に有機金属官能基を有する重合体を指す。
【0033】
特に本発明の積層体を遮音性合わせガラス中間膜として使用する場合、これらの中でも、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−イソプレン共重合体、およびそれらの水添物などの、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物の重合体からなるブロック(X’)と、炭素数2〜12の脂肪族共役ポリエン化合物の重合体からなるブロック(Y’)とのブロック共重合体またはその水添物であって、その分子鎖の末端または側鎖に有機金属官能基を有する重合体(以下、これらをまとめて有機金属官能基含有ブロック共重合体と呼ぶ)が制振性、遮音性に優れ、また、本発明の積層体にポリオレフィンとしてブロック共重合体を使用した場合、それらとの相溶性、接着性にも優れるため好適である。ここで、ブロック(X’)および/またはブロック(Y’)には、そのブロック中に有機金属官能基を含む部分を有していてもかまわない。
【0034】
本発明で使用される有機金属官能基含有ブロック共重合体は、ブロック(X’)部分とブロック(Y’)部分を有していれば特に限定されず、例えば、[(X’)−(Y’)]k’、[(X’)−(Y’)]m’−(X’)、(Y’)−[(X’)−(Y’)]n’などが可能である。ここでk’、m’、n’は任意の自然数である。これらの中でも、ブロック(X’)を2つ以上と、ブロック(Y’)を1つ以上有する有機金属官能基含有ブロック共重合体が好適であり、(X’)−(Y’)−(X’)からなるトリブロック体が特に好適である。また、本発明で使用する有機金属官能基含有ブロック共重合体がブロック(X’)を2つ以上含む場合、また、ブロック(Y’)を2つ以上含む場合、ブロック(X’)、ブロック(Y’)はそれぞれ同一であっても良いし、異なっていても良い。
【0035】
有機金属官能基含有ブロック共重合体に占めるブロック(X’)およびブロック(Y’)の含有量は、本発明の目的に反しない限り特に限定されないが、有機金属官能基含有ブロック共重合体の全質量に対するブロック(X’)の含有量が5〜95質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましい。ブロック(X’)の含有量がこの範囲である場合、ブロック共重合体が本来有する制振性、遮音性などの特性が発現する。
【0036】
有機金属官能基含有ブロック共重合体におけるブロック(X’)およびブロック(Y’)の数平均分子量は特に限定されないが、ブロック(X’)1つあたりの数平均分子量が2,500〜75,000であることが好ましく、また、ブロック(Y’)1つあたりの数平均分子量が1,000〜100,000であることが好ましい。また、有機金属官能基含有ブロック共重合体の数平均分子量としては、10,000〜1,000,000であることが好ましく、15,000〜200,000であることがより好ましい。ブロック(X’)、ブロック(Y’)の重量平均分子量が小さすぎると、ブロック共重合体としての性能が発現しないことがある。また、有機金属官能基含有ブロック共重合体の重量平均分子量が小さすぎると、積層体にしたときの力学強度が低くなりすぎることがあり、有機金属官能基含有ブロック共重合体の重量平均分子量が大きすぎると、成形時の取り扱い性が悪くなる。また、有機金属官能基含有ブロック共重合体のガラス転移温度、融点などは目的に応じて適宜選択可能である。
【0037】
本発明で使用する有機金属官能基含有ブロック共重合体のガラス転移温度は特に限定されず、目的に応じて適宜選択可能であるが、−100〜50℃であるものが好ましく、−50〜30℃であるものがより好ましく、−40〜20℃であるものがさらに好ましい。有機金属官能基含有ブロック共重合体のガラス転移温度が上記範囲を満たすことで、本発明の積層体の力学物性や種々の特性が好ましいものとなる。
【0038】
本発明で使用する有機金属官能基含有ブロック共重合体のtanδのピーク温度は特に限定されず、目的に応じて適宜選択可能であるが、−40〜30℃であることが好ましく、−35〜25℃であることがより好ましく、−30〜20℃であることがさらに好ましい。
【0039】
本発明で使用する有機金属官能基含有ブロック共重合体の力学強度は特に限定されず、目的に応じて適宜選択可能であるが、例えば引っ張り破断強度を指標として表すのであれば、0.1MPa以上であることが好ましく、0.5MPa以上であることがより好ましく、1.0MPa以上であることがさらに好ましい。
【0040】
本発明で使用する有機金属官能基ブロック共重合体のMFR値は特に限定されず、目的に応じて適宜選択可能であるが、例えばASTM D1238に従い、荷重2.16kg、温度190℃で測定した場合のMFR値が0.1〜100g/10分であることが好ましく、0.1〜70g/10分であることがより好ましく、0.1〜50g/10分であることがさらに好ましい。
【0041】
本発明の有機金属官能基含有ブロック共重合体は、そのブロック(Y’)部分が水添されていても、水添されていなくてもかまわないが、耐候性の観点から水添されていることが好ましく、その水添率が好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好適には90モル%以上であると良い。
【0042】
本発明で使用する有機金属官能基含有オレフィン系重合体に含まれる有機金属官能基は特に限定されないが、好ましくは有機金属官能基がボロン酸基およびボロン酸の誘導体基、ボリン酸基およびボリン酸の誘導体基から選ばれる1種類以上の基(ホウ素官能基)であるオレフィン系重合体(ホウ素官能基含有オレフィン系重合体)、またはアルコキシシリル基およびアルコキシシリル基の誘導体基から選ばれる1種類以上の基(ケイ素官能基)であるオレフィン系重合体(ケイ素官能基含有オレフィン系重合体)であることが、好適な層間接着性を得ることができるため、好ましい。特にホウ素官能基含有オレフィン系重合体は、それ自身が重合反応をおこさないか、またはほとんど起こさないため取り扱い性に優れ、またケイ素官能基含有オレフィン系重合体は、原料化合物の入手が比較的容易なことから好適である。以下、これらを順に説明する。
【0043】
まず、ホウ素官能基含有オレフィン系重合体について説明する。本発明で使用するホウ素官能基含有オレフィン系重合体は、ボロン酸基およびその誘導体基、ボリン酸基およびその誘導体基から選ばれる1種類以上の基(ホウ素官能基)を有するオレフィン系重合体であれば特に限定されない。ここでボロン酸基とは、式(1):
【0044】
【化1】

に示す構造を有する基を表す。また、ボロン酸基の誘導体基とは、加水分解によってボロン酸基に変換し得る官能基を指し、具体的には、式(2):
【0045】
【化2】

(式中、RおよびRは、水素原子および炭素数1〜20の1価有機基(例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状または分岐状のアルキル基、若しくはアルケニル基など)、脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基など)、芳香族炭化水素基(フェニル基、ビフェニル基など))から選ばれる基であり、RおよびRは同じか、又は異なっていても良く、R、Rのうちの少なくとも1つは水素原子でないものとし、Rは炭素数1〜30の2価有機基である)で表されるボロン酸エステル基、式(3):
【0046】
【化3】

で表される無水ボロン酸基、および式(4):
【0047】
【化4】

(式中、R、RおよびRは、水素原子および炭素数1〜20の1価有機基(例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状または分岐状のアルキル基、若しくはアルケニル基など)、脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基など)、芳香族炭化水素基(フェニル基、ビフェニル基など))から選ばれる基であり、R、RおよびRは同じか、または異なっていても良く、Mは1価の陽イオンである)で表されるボロン酸塩基が挙げられる。また、本発明においてボリン酸基とは、式(5):
【0048】
【化5】

に示す構造を有する基のうち、ボロン酸基でないものを表す。ボリン酸の誘導体基とは加水分解によってボリン酸基に変換し得る官能基を指し、具体的には、式(6):
【0049】
【化6】

(式中、Rは炭素数1〜20の1価有機基(例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状または分岐状のアルキル基、若しくはアルケニル基など)、脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基など)、芳香族炭化水素基(フェニル基、ビフェニル基など))である)で表されるボリン酸エステル基、式(7):
【0050】
【化7】

で表される無水ボリン酸基および、式(8):
【0051】
【化8】

(式中、RおよびRは、水素原子および炭素数1〜20の1価有機基(例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状または分岐状のアルキル基、若しくはアルケニル基など)、脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基など)、芳香族炭化水素基(フェニル基、ビフェニル基など))から選ばれる基であり、RおよびRは同じか、または異なっていても良く、Mは1価の陽イオンである)で表されるボリン酸塩基が挙げられる。式(2)、(3)、(4)で表されるボロン酸の誘導体基の具体例としては、ボロン酸ジメチルエステル基、ボロン酸ジエチルエステル基、ボロン酸ジプロピルエステル基、ボロン酸ジイソプロピルエステル基、ボロン酸ジブチルエステル基、ボロン酸ジヘキシルエステル基、ボロン酸ジシクロヘキシル基、ボロン酸エチレングリコールエステル基、ボロン酸プロピレングリコールエステル基(ボロン酸1,2−プロパンジオールエステル基、ボロン酸1,3−プロパンジオールエステル基)、ボロン酸(1,3−ブタンジオール)エステル基、ボロン酸トリメチレングリコールエステル基、ボロン酸ネオペンチルグリコールエステル基、ボロン酸カテコールエステル基、ボロン酸グリセリンエステル基、ボロン酸トリメチロールエタンエステル基等のボロン酸エステル基;ボロン酸無水物基;ボロン酸のアルカリ金属塩基、ボロン酸のアルカリ土類金属塩基等が挙げられる。式(6)、(7)、(8)で表されるボリン酸の誘導体基の具体例としてはメチルボリン酸基、メチルボリン酸メチルエステル基、エチルボリン酸メチルエステル基、メチルボリン酸エチルエステル基、ブチルボリン酸メチルエステル基、3−メチル−2ブチルボリン酸メチルエステル基が挙げられる。これらの中でも、ボロン酸基、ボロン酸(1,3−ブタンジオール)エステル基、ボロン酸(プロピレングリコール)エステル基が、得られる積層体の層間接着性の点で好ましい。
【0052】
式(2)、式(4)、式(6)および式(8)における、R、R、R〜Rがとりうる炭素数1〜20の一価有機基を具体的に例示すると、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2−ナフチル基、3−ナフチル基、ベンジル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−ブトキシエチル基、2−エトキシブチル基、4−エトキシブチル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、アセチル基などが挙げられるがこれらに限定されない。また、式(2)における、Rを具体的に例示すると、1,2−エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、2,3−ブチレン基、1,3−ブチレン基、2,3−ジメチル−2,3−ブチレン基(Rがこの基であるボロン酸エステルは、一般にボロン酸ピナコールエステルと呼ばれる)、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン、N−フェニル−3−アザ−1,5−ペンチル基、1,2−フェニレン基(Rがこの基であるボロン酸エステルは、一般にボロン酸カテコールエステルと呼ばれる)、4,5−ジメチル−1,2−フェニレン基などが挙げられるが、これらに限定されない。また、式(4)、(8)における、Mを具体的に例示すると、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオンなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0053】
本発明で使用するホウ素官能基含有オレフィン系重合体は、従来公知の方法で製造したものを使用することができる。例えば、炭素炭素二重結合を有するオレフィン系重合体に、ボラン類、ボラン錯体、ホウ素−水素結合を有するボロン酸エステル化合物などを、必要に応じてホウ酸アルキルエステルの存在下で反応させ、必要に応じて水またはアルコール類を反応させることによって得られる。この場合、炭素炭素二重結合が主鎖中、あるいは側鎖にあればホウ素官能基は側鎖に導入され、また、炭素炭素二重結合が末端にあればホウ素官能基は末端に導入される。
【0054】
上記反応に使用するボラン類、ボラン錯体、ホウ素−水素結合を有する化合物は特に限定されないが、ジボラン、テトラボラン、ペンタボラン、ヘキサボラン、デカボランなどのボラン類、ボラン−テトラヒドラフラン錯体、ボラン−トリエチルアミン錯体、ボラン−トリメチルアミン錯体、ボラン−ピリジン錯体、ボラン−t−ブチルアミン錯体、ボラン−N,N−ジイソプロピルエチルアミン錯体、ボラン−ジメチルアミン錯体、ボラン−N,N−ジエチルアニリン錯体、ボラン−4−メチルモルフォリン錯体、ボラン−メチルスルフィド錯体、ボラン−1,4−チオキサン錯体、ボラン−トリブチルフォスフィン錯体などのボラン錯体、テキシルボラン、カテコールボラン、9−ボラビシクロ[3,3,1]ノナン、ジイソアミルボラン、ジシクロヘキシルボラン等のホウ素−水素結合を有する化合物が挙げられ、このうち化学的安定性の点からボラントリエチルアミン錯体、ボラン−メチルスルフィド錯体などが好ましい。また、反応に使用するこれら化合物の量は特に限定されないが、炭素炭素二重結合の量に対して0.1〜10当量程度であることが好ましい。
【0055】
また、ホウ酸アルキルエステルを使用する場合、例えば、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸エチレングリコールエステル、ホウ酸プロピレングリコールエステル、ホウ酸トリメチレングリコールエステル、ホウ酸1,3−ブタンジオールエステル、ホウ酸ネオペンチルグリコールエステルなどが好ましく用いられ、これらのなかで特に、ホウ酸トリメチレングリコールエステル、ホウ酸プロピレングリコールエステル、ホウ酸1,3−ブタンジオールエステル、ホウ酸ネオペンチルグリコールエステル等のエステルが好ましい。これらのホウ酸アルキルエステルを添加することにより、ボラン類、ボラン錯体、ホウ素−水素結合を有する化合物の添加時にしばしば起こる架橋を防ぐと同時に、化学的に安定なボロン酸エステル基という形でホウ素含有基を導入できる。また、上記反応で用いるアルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオールなどが例示される。
【0056】
炭素炭素二重結合を有するオレフィン系重合体とボラン錯体およびホウ酸アルキルエステルとの反応は、好ましくは室温〜400℃、より好ましくは100〜350℃の温度で、1分〜10時間、好ましくは5分〜5時間行うと良い。また、その際、任意の有機溶剤を用いて反応を行ってもかまわない。
【0057】
この反応に使用する炭素炭素二重結合を有するオレフィン系重合体を具体的に例示すると、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン共重合体、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレンの他、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−イソプレン共重合体などのブロック共重合体であって、炭素炭素二重結合を有する重合体が挙げられる。これらは従来公知の方法で入手でき、例えば炭素炭素二重結合を有さないオレフィン系重合体を高温、好ましくは200℃以上で熱分解し、末端に炭素炭素二重結合を有するオレフィン系重合体とする方法、また、ポリブタジエンやスチレン−ブタジエンブロック共重合体などの共役ポリエン化合物の重合体であって、水添率が100%でないものも炭素炭素二重結合を有するオレフィン系重合体として使用でき、特に後者は炭素炭素二重結合を主鎖、または側鎖に複数個含有させたものを容易に入手可能であるため、ホウ素官能基量の多いホウ素官能基含有オレフィン系重合体を入手する場合にはより好適である。
【0058】
上記反応によって製造されたホウ素官能基含有オレフィン系重合体は、導入されたホウ素官能基を従来公知の方法によって変換することが可能である。例えば、ボロン酸エステル基は従来公知の方法によって加水分解することによりボロン酸基に変換することができ、また、任意のアルコールと反応を行うことによってエステル交換反応を行うこともできるし、さらにボロン酸基同士を脱水縮合させることで、無水ボロン酸基に変換することも可能である。
【0059】
その他のホウ素官能基含有オレフィン系重合体の合成方法として、例えばメルカプト基とホウ素官能基を有する化合物の存在下で不飽和炭化水素をラジカル重合する方法が挙げられる。この方法では、メルカプト基とホウ素官能基を有する化合物が、不飽和炭化水素化合物重合の連鎖移動剤として作用するため、末端にホウ素官能基を有するホウ素官能基含有オレフィン系重合体が得られる。ここで使用するメルカプト基とホウ素官能基を有する化合物としては、例えば、3−メルカプトプロピルボロン酸ピナコールエステル、4−メルカプトフェニルボロン酸ピナコールエステルなどが挙げられるが、これに限定されない。また、重合条件も特に限定されず、本発明の主旨に反しない限り従来公知の方法(メルカプト化合物を連鎖移動剤とするポリオレフィンの重合方法)で重合することができる。
【0060】
また、別の方法として炭素炭素二重結合とホウ素官能基を有する化合物であって、不飽和炭化水素化合物と共重合可能な化合物と不飽和炭化水素化合物を共重合する方法が挙げられる。この方法では、主鎖および/または側鎖にホウ素官能基を有するホウ素官能基オレフィン系重合体が得られる。ここで使用する炭素炭素二重結合とホウ素官能基を有する化合物としては、例えばビニルボロン酸ピナコールエステル、ビニルボロン酸カテコールエステル、アリルボロン酸ピナコールエステルなどが挙げられるが、これに限定されない。また、重合方法も特に限定されず、本発明の主旨に反しない限り従来公知の重合方法で重合することができる。
【0061】
次にケイ素官能基含有オレフィン系重合体について説明する。本発明で使用するケイ素官能基含有オレフィン系重合体は、アルコキシシリル基およびその誘導体基から選ばれる1種類以上の基(ケイ素官能基)を有するオレフィン系重合体であれば特に限定されない。ここでアルコキシシリル基とは、式(9):
【0062】
【化9】

(式中、R10、R11、R12、R13、R14およびR15は炭素数1〜20の1価有機基(例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状または分岐状のアルキル基、若しくはアルケニル基など)、脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基など)、芳香族炭化水素基(フェニル基、ビフェニル基など))であり、R10、R11およびR12は同じか、または異なっていても良く、R13およびR14は同じか、または異なっていても良い)に示す構造を有する基を表す。また、アルコキシシリル基の誘導体基とは、式(10):
【0063】
【化10】

(式中、R16、R17、R18、R19およびR20は水素原子および炭素数1〜20の一価有機基(例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状または分岐状のアルキル基、若しくはアルケニル基など)、脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基など)、芳香族炭化水素基(フェニル基、ビフェニル基など))から選ばれる基であり、R16、R17、R18のうちの少なくとも1つは水素原子であり、R16、R17およびR18は同じか、または異なっていても良く、また、R19、R20のうちの少なくとも1つは水素原子であり、R19およびR20は同じか、または異なっていても良い)で表されるシラノール基、および、式(11):
【0064】
【化11】

で表される、シラノール基が有するSi−OHと別のシラノール基が有するSi−OHの間で脱水縮合して生成するSi−O−Si結合を有する無水ケイ酸基を表す。なかでもアルコキシシリル基が、得られる積層体の層間接着性の点で好ましい。
【0065】
10〜R15、また、R16〜R20がとりうる一価有機基を具体的に例示すると、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2−ナフチル基、3−ナフチル基、ベンジル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−ブトキシエチル基、2−エトキシブチル基、4−エトキシブチル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、アセチル基などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0066】
本発明で使用するケイ素官能基含有オレフィン系重合体は、従来公知の方法で製造したものを使用することができる。例えば、有機リチウム試薬存在下でスチレン、ブタジエン、イソプレンなどを重合(あるいは共重合)し、その後、メチルトリメトキシシラン、メチルトリフェノキシシランなどのアルコキシシリル基を有する化合物と反応を行うことで、分子鎖の末端にケイ素官能基を有するオレフィン系重合体が得られる。
【0067】
また、炭素炭素二重結合を有するオレフィン系重合体に、Si−H部分とケイ素官能基を有する化合物、好ましくは水素原子とケイ素官能基が直接結合した化合物、あるいはメルカプト基とケイ素官能基を有する化合物を反応させることによってケイ素官能基含有オレフィン系重合体が得られる。この場合、炭素炭素二重結合が主鎖中、あるいは側鎖にあればケイ素官能基は側鎖に導入され、また、炭素炭素二重結合が末端にあればケイ素官能基は末端に導入される。
【0068】
上記反応に使用するSi−H部分とケイ素官能基を有する化合物は特に限定されないが、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジエトキシシラン、メチルジエトキシシランなどが挙げられる。また、メルカプト基とケイ素官能基を有する化合物は特に限定されないが、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。また、反応に使用するSi−H部分とケイ素官能基を有する化合物、また、メルカプト基とケイ素官能基を有する化合物の量は特に限定されないが、炭素炭素二重結合の量に対して0.1〜10当量程度であることが好ましい。
【0069】
これらの反応に使用する炭素炭素二重結合を有するオレフィン系重合体としては、例えば、上で述べた、ボラン錯体およびホウ酸アルキルエステルとの反応に用いられる炭素炭素二重結合を有するオレフィン系重合体について例示した重合体と同じものが挙げられるがこれに限定されない。これらの中でも特に共役ポリエン化合物の重合体であって、水添率が100%でないものは、炭素炭素二重結合を主鎖、または側鎖に複数個含有させたものを容易に入手可能であるため、ケイ素官能基含有量の多いケイ素官能基含有オレフィン系重合体を入手する場合にはより好適である。
【0070】
炭素炭素二重結合を有するオレフィン系重合体とSi−H部分とケイ素官能基を有する化合物との反応は、好ましくは室温〜300℃、より好ましくは100〜250℃の温度で、1分〜10時間、好ましくは5分〜5時間行うと良い。また、その際、任意の有機溶剤を用いて反応を行ってもかまわない。
【0071】
その他のケイ素官能基含有オレフィン系重合体の合成方法として、例えばメルカプト基とケイ素官能基を有する化合物の存在下で不飽和炭化水素をラジカル重合する方法が挙げられる。この方法ではメルカプト基とケイ素官能基を有する化合物が、不飽和炭化水素化合物重合の連鎖移動剤として作用するため、末端にケイ素官能基を有するケイ素官能基含有オレフィン系重合体が得られる。ここで使用するメルカプト基とケイ素官能基を有する化合物としては、例えば3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、4−メルカプトフェニルトリメトキシシランなどが挙げられるが、これに限定されない。また、重合方法も特に限定されず、本発明の主旨に反しない限り従来公知の重合方法で重合することができる。
【0072】
さらに別の方法として炭素炭素二重結合とケイ素官能基を有する化合物であって、不飽和炭化水素化合物と共重合可能な化合物と不飽和炭化水素化合物を共重合する方法が挙げられる。この方法では、主鎖および/または側鎖にケイ素官能基を有するケイ素官能基オレフィン系重合体が得られる。ここで使用する炭素炭素二重結合とケイ素官能基を有する化合物としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられるが、これに限定されない。また、重合方法も特に限定されず、本発明の主旨に反しない限り従来公知の方法重合で重合することができる。
【0073】
つぎに、本発明で使用する反応性官能含有オレフィン系重合体について説明する。本発明で使用される反応性官能基含有オレフィン系重合体は、炭化水素成分を主成分とし、カルボキシル基、カルボキシル基の誘導体基、および、エポキシ基から選ばれる1種類以上の基(以下、反応性官能基という)を含有するオレフィン系重合体であれば特に限定されないが、炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、および、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物から選ばれる1種類以上の化合物の重合体またはそれらの水添物であって、その分子鎖の末端または側鎖に反応性官能基を有する重合体であることが、層間接着性に優れ、種々の力学特性、また対応する重合体の入手が容易である点で好ましい。ここで、炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、および、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物から選ばれる1種類以上の化合物の重合体またはそれらの水添物であって、その分子鎖の末端または側鎖に反応性官能基を有する重合体またはそれらの水添物は、重合体に含まれる全単量体単位に占める炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物および炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物の合計量の割合が、80質量%以上、好ましくは95質量%以上、最適には98質量%以上である重合体またはそれらの水添物であって、その分子鎖の末端または側鎖に反応性官能基を有する重合体またはそれらの水添物を指す。重合体に含まれる全単量体単位に占める炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物および炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物の合計量の割合が80質量%より低くなると、反応性官能基含有オレフィン系重合体が本来有する低吸水性や種々の力学特性、また後述するブロック共重合体が有する遮音性などの特性が低下する傾向がある。
【0074】
また、カルボキシル基およびカルボキシル基の誘導体基とは、カルボキシル基、カルボキシレート基、カルボン酸エステル基、カルボン酸無水物基を指す。ここで、カルボキシレート基とは、カルボキシル基の水素を陽イオン(M)に置き換えた基、すなわち、−COOM基を表し、Mとしてはリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アンモニウム、トリエチルアンモニウム、ピリジニウムなどの陽イオンがあげられる。また、カルボン酸エステル基とはカルボキシル基の水素を炭素数1〜20の有機基に置き換えた基を表し、炭素数1〜20の有機基を具体的に例示すると、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2−ナフチル基、3−ナフチル基、ベンジル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−ブトキシエチル基、2−エトキシブチル基、4−エトキシブチル基などが挙げられる。
【0075】
炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物としては、具体的には、上で述べた、ポリオレフィンを構成する炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物の具体例として例示した化合物と同じものが挙げられる。また、炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、および炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物から選ばれる1種類以上の化合物の重合体またはその水添物であって、その分子鎖の末端または側鎖に反応性官能基を有する重合体とは、具体的には、上で述べた、炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、および、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物から選ばれる1種類以上の化合物の重合体として例示した化合物と同じ重合体またはその水添物であって、その分子鎖の末端または側鎖に反応性官能基を有する重合体を指す。
【0076】
特に本発明の積層体を遮音性合わせガラス中間膜として使用する場合、これらの中でも、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−イソプレン共重合体、およびそれらの水添物などの、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物の重合体からなるブロック(X’’)と、炭素数2〜12の脂肪族共役ポリエン化合物の重合体からなるブロック(Y’’)とのブロック共重合体またはその水添物であって、その分子鎖の末端または側鎖に反応性官能基を有する重合体(以下、これらをまとめて反応性官能基含有ブロック共重合体と呼ぶ)が制振性、遮音性に優れ、また、本発明の積層体にポリオレフィンとしてブロック共重合体を使用した場合、それらとの相溶性、接着性にも優れるため好適である。ここで、ブロック(X’’)および/またはブロック(Y’’)は、そのブロック中に反応性官能基を含む部分を有していてもかまわない。
【0077】
本発明で使用される反応性官能基含有ブロック共重合体は、ブロック(X’’)部分とブロック(Y’’)部分を有していれば特に限定されず、例えば[(X’’)−(Y’’)]k’、[(X’’)−(Y’’)]m’−(X’’)、(Y’’)−[(X’’)−(Y’’)]n’などが可能である。ここでk’、m’、n’は任意の自然数である。これらの中でもブロック(X’’)を2つ以上と、ブロック(Y’’)を1つ以上有する反応性官能基含有ブロック共重合体が好適であり、(X’’)−(Y’’)−(X’’)からなるトリブロック体が特に好適である。また、本発明で使用する反応性官能基含有ブロック共重合体がブロック(X’’)を2つ以上含む場合、また、ブロック(Y’’)を2つ以上含む場合、ブロック(X’’)、ブロック(Y’’)はそれぞれ同一であっても良いし、異なっていても良い。
【0078】
反応性官能基含有ブロック共重合体に占めるブロック(X’’)およびブロック(Y’’)の含有量は、本発明の目的に反しない限り特に限定されないが、反応性官能基含有ブロック共重合体の全質量に対するブロック(X’’)の含有量が5〜95質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましい。ブロック(X’’)の含有量がこの範囲である場合、ブロック共重合体が本来有する制振性、遮音性などの特性が発現され好適である。
【0079】
反応性官能基含有ブロック共重合体におけるブロック(X’’)およびブロック(Y’’)の数平均分子量は特に限定されないが、ブロック(X’’)1つあたりの数平均分子量が2,500〜75,000であることが好ましく、また、ブロック(Y’’)1つあたりの数平均分子量が1,000〜100,000であることが好ましい。また、反応性官能基含有ブロック共重合体の数平均分子量としては、10,000〜1,000,000であることが好ましく、15,000〜200,000であることがより好ましい。ブロック(X’’)、ブロック(Y’’)の重量平均分子量が小さすぎると、ブロック共重合体としての性能が発現しないことがある。また、反応性官能基含有ブロック共重合体の重量平均分子量が小さすぎると、積層体にしたときの力学強度が低くなりすぎることがあり、反応性官能基含有ブロック共重合体の重量平均分子量が大きすぎると、成形時の取り扱い性が悪くなる。また、反応性官能基含有ブロック共重合体のガラス転移温度、融点などは目的に応じて適宜選択可能である。
【0080】
本発明で使用する反応性官能基含有ブロック共重合体のガラス転移温度は特に限定されず、目的に応じて適宜選択可能であるが、−100〜50℃であるものが好ましく、−50〜30℃であるものがより好ましく、−40〜20℃であるものがさらに好ましい。有機金属官能基含有ブロック共重合体のガラス転移温度が上記範囲を満たすことで、本発明の積層体の力学物性や種々の特性が好ましいものとなる。
【0081】
本発明で使用する反応性官能基含有ブロック共重合体のtanδのピーク温度は特に限定されず、目的に応じて適宜選択可能であるが、−40〜30℃であることが好ましく、−35〜25℃であることがより好ましく、−30〜20℃であることがさらに好ましい。
【0082】
本発明で使用する反応性官能基含有ブロック共重合体の力学強度は特に限定されず、目的に応じて適宜選択可能であるが、例えば引っ張り破断強度を指標として表すのであれば、0.1MPa以上であることが好ましく、0.5MPa以上であることがより好ましく、1.0MPa以上であることがさらに好ましい。
【0083】
本発明で使用する反応性官能基ブロック共重合体のMFR値は特に限定されず、目的に応じて適宜選択可能であるが、例えばASTM D1238に従い、荷重2.16kg、温度190℃で測定した場合のMFR値が0.1〜100g/10分であることが好ましく、0.1〜70g/10分であることがより好ましく、0.1〜50g/10分であることがさらに好ましい。
【0084】
本発明の反応性官能基含有ブロック共重合体は、そのブロック(Y’’)部分が水添されていても、水添されていなくてもかまわないが、耐候性の観点から水添されていることが好ましく、その水添率が好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好適には90モル%以上であると良い。
【0085】
本発明で使用する反応性官能基含有オレフィン系重合体は、反応性官能基がカルボキシル基およびカルボキシル基の誘導体基から選ばれる1種類以上の基(以下、カルボキシル類基という)であるオレフィン系重合体(以下、カルボキシル類基含有オレフィン系重合体という)、反応性官能基がエポキシ基であるオレフィン系重合体(以下、エポキシ基含有オレフィン系重合体という)であることが、好適な層間接着性を得ることができるため好ましい。以下、これらを順に説明する。
【0086】
まず、カルボキシル類基含有オレフィン系重合体について説明する。本発明で使用するカルボキシル類基含有オレフィン系重合体は、カルボキシル基類を有するオレフィン系重合体であれば特に限定されないが、特に炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、および、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物から選ばれる1種類以上の化合物の重合体、またはその水添物であって、分子鎖の末端または側鎖にカルボキシル類基を有する重合体であることが好ましい。
【0087】
本発明で使用するカルボキシル類基含有オレフィン系重合体は、従来公知の方法で製造したものを使用することができるが、例えば、炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、および、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物から選ばれる1種類以上の化合物と、カルボキシル類基と炭素炭素二重結合を有する化合物とを共重合、あるいはポリオレフィン、好ましくは炭素炭素二重結合を有するポリオレフィンに、カルボキシル類基と炭素炭素二重結合を有する化合物をグラフト重合する方法が挙げられる。カルボキシル類基と炭素炭素二重結合を有する化合物として、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水テトラヒドロフタル酸等の不飽和カルボン酸およびその無水物;(メタ)アクリル酸リチウム、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸マグネシウム、マレイン酸ナトリウム等の不飽和カルボン酸塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、マレイン酸ジメチル等の不飽和カルボン酸エステルなどの化合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0088】
また、その他の製造方法として、例えば、炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、および、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物から選ばれる1種類以上の化合物を、メルカプト基とカルボキシル基を有する化合物の存在下でラジカル重合する方法が挙げられる。この方法では、メルカプト基とカルボキシル基を有する化合物がラジカル重合の連鎖移動剤として作用し、分子鎖の末端にカルボキシル基を有するオレフィン系重合体が得られる。
【0089】
次に、エポキシ基含有オレフィン系重合体について説明する。本発明で使用するエポキシ基含有オレフィン系重合体は、エポキシ基を有するオレフィン系重合体であれば特に限定されないが、特に炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、および、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物から選ばれる1種類以上の化合物の重合体、またはその水添物であって、分子鎖の末端または側鎖にエポキシ基を有する重合体、またはその水添物であることが好ましい。
【0090】
本発明で使用するエポキシ基含有オレフィン系重合体は、従来公知の方法で製造したものを使用することができるが、例えば炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、および炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物から選ばれる1種類以上の化合物と、エポキシ基と炭素炭素二重結合を有する化合物とを共重合、あるいはポリオレフィン、好ましくは炭素炭素二重結合を有するポリオレフィンに、エポキシ基と炭素炭素二重結合を有する化合物をグラフト重合する方法が挙げられる。
【0091】
また、その他の製造方法として、例えば、炭素炭素二重結合を有するオレフィン系重合体を、過酸化水素、クメンパーオキサイド、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、メタクロロ過安息香酸などの適当な酸化剤によってエポキシ化する方法が挙げられる。このような反応に使用する炭素炭素二重結合を有するオレフィン系重合体を具体的に例示すると、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン共重合体、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレンの他、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−イソプレン共重合体などのブロック共重合体であって、炭素炭素二重結合を有する重合体が挙げられる。これらは従来公知の方法で入手でき、例えば、炭素炭素二重結合を有さないオレフィン系重合体を高温、好ましくは200℃以上で熱分解し、末端に炭素炭素二重結合を有するオレフィン系重合体とする方法、また、ポリブタジエンやスチレン−ブタジエンブロック共重合体などの共役ポリエン化合物の重合体であって、水添率が100%でないものも炭素炭素二重結合を有するオレフィン系重合体として使用でき、特に後者は炭素炭素二重結合を主鎖、または側鎖に複数個含有させたものを容易に入手可能であるため、エポキシ基量の多いエポキシ基含有オレフィン系重合体を入手する場合にはより好適である。
【0092】
本発明で使用する組成物Bには、酸化防止剤、紫外線吸収剤、その他従来公知の添加剤を添加しても良い。以下にそれを説明する。
【0093】
本発明で使用する組成物Bに酸化防止剤を添加する場合、その種類は特に限定されないが、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
【0094】
フェノール系酸化防止剤の例としては、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどのアクリレート系化合物、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−)ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物などがある。
【0095】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンなどのモノホスファイト系化合物、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(ジフェニルモノアルキル(C12〜C15)ホスファイト)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスファイトなどのジホスファイト系化合物などがある。これらの中でもモノホスファイト系化合物が好ましい。
【0096】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどがある。
【0097】
これらの酸化防止剤は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化防止剤の添加量は、組成物Bの質量に対して0.001〜5質量%、好ましくは0.01〜1質量%の範囲であるとよい。酸化防止剤の添加量が0.001重量%より少ないと十分な効果が得られないことがあり、また5重量%より多くしても格段の効果は望めない。
【0098】
本発明で使用する組成物Bに紫外線吸収剤を添加する場合、その種類は特に限定されない。使用される紫外線吸収剤としては、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α’ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、4−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)−1−(2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのヒンダードアミン系紫外線吸収剤、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート系紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの紫外線吸収剤の添加量は、組成物Bの質量に対して質量基準で0.001〜5質量%であることが好ましく、0.01〜1質量%の範囲であることがより好ましい。紫外線吸収剤の添加量が0.001重量%より少ないと十分な効果が得られないことがあり、また5重量%より多くしても格段の効果は望めない。これら紫外線吸収剤は2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0099】
本発明の組成物Bは、ポリオレフィン、有機金属官能基含有オレフィン系重合体、反応性官能基含有オレフィン系重合体と、必要に応じて添加剤を従来公知の方法で混合することにより得ることができる。混合方法を具体的に例示するとミキシングロール、プラストミル、押し出し機などを用いた溶融混錬、あるいは組成物Bの成分を適当な有機溶剤に溶解した後、溶剤を留去する方法などが挙げられるが、本発明の主旨に反しない限り特に限定されない。
【0100】
続いて本発明の積層体に含まれる、組成物Aについて説明する。本発明で使用する組成物Aは、ポリビニルアセタールを含有していれば特に限定されないが、その含有量は組成物Aの質量に対して45質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上であるとよい。組成物Aのポリビニルアセタールの含有量が、45質量%より低くなると、ポリビニルアセタールが本来有する物性が発現しないことがある。
【0101】
次に、本発明に使用するポリビニルアセタールについて説明する。ポリビニルアセタールは、通常、ビニルアルコール系重合体を原料として製造される。上記ビニルアルコール系重合体は、従来公知の手法、すなわちビニルエステル系単量体を重合し、得られた重合体をけん化することによって得ることができる。ビニルエステル系単量体を重合する方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法など、従来公知の方法を適用することができる。重合開始剤としては、重合方法に応じて、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤などが適宜選ばれる。けん化反応は、従来公知のアルカリ触媒または酸触媒を用いる加アルコール分解、加水分解などが適用でき、この中でもメタノールを溶剤とし苛性ソーダ(NaOH)触媒を用いるけん化反応が簡便であり最も好ましい。
【0102】
ビニルエステル系単量体としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられるが、とりわけ酢酸ビニルが好ましい。
【0103】
また、前記ビニルエステル系単量体を重合する場合、本発明の主旨に反しない限り他の単量体と共重合させることもできる。他の単量体の例としては、組成物Bまたは組成物Cで使用するポリオレフィンの重合に用いられる、前記炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物、あるいは、組成物Cで使用するポリオレフィンの重合に用いられる、炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、および炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物と、本発明の効果を阻害しない範囲で共重合が可能な化合物(例えば、アクリル酸またはその塩、アクリル酸エステル類、メタクリル酸およびその塩、メタクリル酸エステル類等)として例示された化合物と同じもの、さらには、前記カルボキシル類基と炭素炭素二重結合を有する化合物として例示された化合物と同じものが挙げられるが、これに限定されない。これらの単量体は通常、ビニルエステル系単量体に対して10モル%未満の割合で用いられる。
【0104】
本発明に用いられるポリビニルアセタールの原料となるビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度は用途に応じて適宜選択されるが、150〜3,000のものが好ましく、200〜2,000のものがより好ましい。ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度が150より小さいと、A層の強度が不足する傾向があり、3,000より大きいと、A層成形時の取り扱い性が悪くなる傾向にある。
【0105】
本発明に用いられるポリビニルアセタールは、たとえば、次のような方法によって得ることができる。まず、濃度3〜30質量%のビニルアルコール系重合体の水溶液を、80〜100℃の温度範囲に調整し、その温度を10〜60分かけて徐々に冷却する。温度が−10〜30℃まで低下したところで、アルデヒドおよび酸触媒を添加し、温度を一定に保ちながら、30〜300分間アセタール化反応を行う。その後、反応液を30〜200分かけて、30〜80℃の温度まで昇温し、その温度を1〜6時間保持する。次に反応液を、好適には室温まで冷却し水洗した後、必要に応じてアルカリなどの中和剤を添加中和後、水洗、乾燥することにより、本発明で用いるポリビニルアセタールが得られる。
【0106】
アセタール化反応に用いる酸触媒としては特に限定されず、有機酸および無機酸のいずれでも使用可能であり、例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。これらの中でも塩酸、硫酸、硝酸が好ましく用いられ、とりわけ塩酸が好ましく用いられる。
【0107】
本発明のアセタール化反応に用いるアルデヒドは特に限定されないが、炭素数1〜8のアルデヒドでアセタール化されたポリビニルアセタールを用いることが好ましい。炭素数1〜8のアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、二種以上が併用されてもよい。これらの中でも炭素数4〜6のアルデヒド、特にn−ブチルアルデヒドが好ましく用いられる。すなわち、ポリビニルアセタールとしては、ポリビニルブチラールが特に好ましい。
【0108】
ポリビニルアセタールの平均アセタール化度は、40〜85モル%であることが好ましく、好適には48〜82モル%、さらに好適には55〜81モル%である。アセタール化度がこの範囲にあるポリビニルアセタールを使用することで、優れた透明性を得ることができる。また、本発明の目的をより好適に達成するためには、ポリビニルアセタールのビニルエステル単位含有量(通常は、酢酸ビニル単位含有量)は0.01〜30モル%、好適には0.05〜15モル%、より好適には0.1〜5モル%であることがよい。また、ビニルアルコール単位含有量は10〜50モル%、好適には12〜40モル%、最適には15〜35モル%であると良い。なお、上記アセタール化度、ビニルエステル単位含有量、ビニルアルコール単位含有量の値は、アセタール化度(ビニルアセタール単位含有量)、ビニルエステル単位含有量、ビニルアルコール単位含有量の合計量に対する値である。
【0109】
本発明で使用する組成物Aには、酸化防止剤、紫外線吸収剤、その他従来公知の添加剤を添加しても良い。酸化防止剤としては、たとえば、上で述べた、組成物Bに添加できる酸化防止剤(フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤など)について例示した化合物と同じものが挙げられ、紫外線吸収剤としては、上で述べた、組成物Bに添加できる紫外線吸収剤について例示した化合物と同じものが挙げられるが、これらに限定されない。また、その添加量は、酸化防止剤、紫外線吸収剤それぞれの添加量が、組成物Aの質量に対して0.001〜5質量%、好ましくは0.01〜1質量%であると良い。
【0110】
また、本発明で使用する組成物Aには、本発明の主旨に反しない限り可塑剤が含まれていてもかまわない。可塑剤としては一価カルボン酸エステル系、多価カルボン酸エステル系などのカルボン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、有機亜リン酸エステル系可塑剤などのほか、カルボン酸ポリエステル系、炭酸ポリエステル系、また、ポリアルキレングリコール系などの高分子可塑剤や、ひまし油などのヒドロキシカルボン酸と多価アルコールのエステル化合物も使用することができる。これらは目的に応じて適宜選択可能であるが、一般に積層体にしたときにA層からB層、C層に移行する可塑剤は、積層体の物性(B層、C層の強度や層間接着性、あるいは透明性など)を損なうことがあり、好ましくない場合が多い。
【0111】
一価カルボン酸エステル系可塑剤としては、ブタン酸、イソブタン酸、へキサン酸、2−エチルへキサン酸、へプタン酸、オクチル酸、2−エチルヘキサン酸、ラウリル酸などの一価カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールとの縮合反応により得られる化合物であり、具体的な化合物を例示すると、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジイソブタノエート、トリエチレングリコールジ2−ヘキサノエート、トリエチレングリコールジ2−エチルブタノエート、トリエチレングリコールジラウレート、エチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、ジエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、PEG#400ジ2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールモノ2−エチルヘキサノエート、グリセリントリ2−エチルヘキサノエートなどが挙げられる。ここでPEG#400とは、平均分子量が350〜450であるポリエチレングリコールを表す。
【0112】
多価カルボン酸エステル系可塑剤としては、アジピン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメット酸などの多価カルボン酸と、メタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサノール、2−エチルブタノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、ブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、ベンジルアルコールなどの炭素数1〜12のアルコールとの縮合反応により得られる化合物が挙げられる。具体的な化合物を例示すると、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジヘプチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ(ブトキシエチル)、アジピン酸ジ(ブトキシエトキシエチル)、アジピン酸モノ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ(2−エチルブチル)、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ベンジルブチル、フタル酸ジドデシルなどが挙げられる。
【0113】
リン酸系可塑剤、また、亜リン酸系可塑剤としては、リン酸または亜リン酸とメタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサノール、2−エチルブタノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、ブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、ベンジルアルコールなどの炭素数1〜12のアルコールとの縮合反応により得られる化合物が挙げられる。具体的な化合物を例示すると、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(2−エチルヘキシル)、リン酸トリ(ブトキシエチル)、亜リン酸トリ(2−エチルヘキシル)などが挙げられる。
【0114】
カルボン酸ポリエステル系可塑剤としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの多価カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンなどの多価アルコールを交互共重合して得られるカルボン酸ポリエステルや、ε−カプロラクトンなどのラクトン化合物を開環重合して得られるカルボン酸ポリエステルでも良い。これらカルボン酸ポリエステルの末端構造は特に限定されず、水酸基やカルボキシル基でも良いし、また、末端水酸基や末端カルボキシル基を1価カルボン酸あるいは1価アルコールと反応させてエステル結合としたものでも良い。
【0115】
炭酸ポリエステル系可塑剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンなどの多価アルコールと、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルなどの炭酸エステルをエステル交換反応により交互共重合して得られる炭酸ポリエステルが挙げられる。これら炭酸ポリエステル化合物の末端構造は特に限定されないが、炭酸エステル基、または水酸基などであるとよい。
【0116】
ポリアルキレングリコール系可塑剤としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレンオキシドを、一価アルコール、多価アルコール、1価カルボン酸および多価カルボン酸を開始剤として開環重合させて得られる重合体が挙げられる。
【0117】
本発明において、これら可塑剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。その使用量は特に限定されないが、組成物Aに含まれるポリビニルアセタール100質量部に対して1〜100質量部、好適には5〜70質量部、最適には10〜50質量部使用することが好ましい。組成物Aに含まれるポリビニルアセタール100質量部に対して、可塑剤の使用量が1質量部より少ないと、十分な可塑化効果が得られないことがあり、100質量部より多くしても、格段の可塑化効果は得られない。
【0118】
また、本発明の積層体を特に合わせガラス中間膜、太陽電池モジュールなど、ガラスとの接着性を適切に調節する必要がある用途に使用する場合、本発明で使用する組成物Aには接着性改良剤が添加されていることが好ましい。接着性改良剤としては、例えば、国際公開第03/033583号に開示されているものを使用することができ、有機酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩を添加することが好ましく、特に酢酸カリウムおよび/または酢酸マグネシウムが好ましい。添加量は、組成物Aの質量に対して1〜10,000ppmであることが好ましく、5〜1,000ppmがより好ましく、10〜300ppmが更に好ましい。接着性改良剤の最適な添加量は使用する添加剤、あるいは目的により異なるが、ガラスとの接着性を適切に調節するという観点からは、本発明の積層体であって、ガラスと接する面がA層である積層体とガラスを接着した積層体をパンメル試験(Pummel test;国際公開第03/033583号等に記載)で評価した場合、一般には3〜10に調整することが好ましく、特に高い耐貫通性を必要とする場合は3〜6、高いガラス飛散防止性を必要とする場合は7〜10に調整することが好ましい。高いガラス飛散防止性が求められる場合は、接着性改良剤を添加しないことも有用な方法である。
【0119】
本発明の組成物Aは、ポリビニルアセタールと、必要に応じて添加剤や可塑剤を従来公知の方法で混合することにより得ることができる。混合方法を具体的に例示するとミキシングロール、プラストミル、押し出し機などを用いた溶融混錬、あるいは組成物Aの成分を適当な有機溶剤に溶解した後、溶剤を留去する方法などが挙げられるが、本発明の主旨に反しない限り特に限定されない。
【0120】
次に、本発明で使用する組成物Cについて説明する。本発明で使用する組成物Cは、ポリオレフィンを含んでいれば特に限定されないが、その含有量は好ましくは組成物Cの質量に対して30質量%以上、より好ましくは80質量%以上、最適には90質量%以上であると良い。組成物Cのポリオレフィンの含有量が30質量%より少ないと、ポリオレフィンが本来有する低吸水性や種々の力学特性、またブロック共重合体が有する遮音性などの特性が低下することがある。
【0121】
また、本発明で使用する組成物Cには、酸化防止剤、紫外線吸収剤、その他従来公知の添加剤を添加しても良い。酸化防止剤としては、たとえば、上で述べた、組成物Bに添加できる酸化防止剤(フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤など)について例示した化合物と同じものが挙げられ、紫外線吸収剤としては、上で述べた、組成物Bに添加できる紫外線吸収剤について例示した化合物と同じものが挙げられるが、これに限定されない。また、その添加量は、酸化防止剤、紫外線吸収剤それぞれの添加量が、組成物Cの質量に対して0.001〜5質量%、好ましくは0.01〜1質量%であると良い。
【0122】
本発明の組成物Cは、ポリオレフィンと、必要に応じて添加剤を従来公知の方法で混合することにより得ることができる。混合方法を具体的に例示するとミキシングロール、プラストミル、押し出し機などを用いた溶融混錬、あるいは組成物Cの成分を適当な有機溶剤に溶解した後、溶剤を留去する方法などが挙げられるが、本発明の主旨に反しない限り特に限定されない。
【0123】
本発明の積層体は、A層とB層が積層してなる構成を含んでいるか、あるいはA層とC層がB層を介して積層してなる構成を含んでいれば、A層、B層、C層が2つ以上含まれていてもかまわず、また、2つ以上含まれている場合にはそれらは同一であっても異なっていても良い。また、本発明の積層体には上記以外の層(D層とする)を含んでいても構わない。D層を具体的に例示すると、ポリエステル層、ポリアミド層、ポリイミド層、ポリカーボネート層などが挙げられるがこれに限定されない。本発明の積層体の層構成を具体的に例示すると、A層/B層、A層/B層/A層、A層/B層/A層/B層/A層、B層/A層/B層、A層/B層/B層/A層、A層/B層/C層/B層/A層、A層/B層/D層/B層/A層、または、A層/B層/C層、A層/B層/C層/D層/C層/B層/A層などが挙げられるが、これに限定されない。
【0124】
本発明の積層体は、A層とB層が積層してなる構成を含んでいるか、あるいはA層とC層がB層を介して積層してなる構成を含んでいれば、各層の厚さは特に限定されないが、A層、B層、C層については0.001〜5mm、好ましくは0.01〜3mm、最適には0.1〜1.6mmであると良い。本発明の積層体にこれらの層を2つ以上含む場合、それらの厚さは同一であっても異なっていてもかまわない。また、B層が接着剤層として働く場合の厚さも特に限定されないが0.001〜1μm、好ましくは0.005〜0.7μm、最適には0.01〜0.5μmであると良い。本発明の積層体に接着剤層としてのB層を2つ以上含む場合にはそれらの厚さは同一であっても異なっていても良い。また、これら各層の厚さは均一であっても良いし、不均一であっても良いが、均一であることが好ましい。
【0125】
本発明の積層体において、B層に含まれる有機金属官能基の量は特に限定されず、有機金属官能基含有オレフィン系重合体に含まれる有機金属官能基がホウ素官能基である場合にも、B層におけるホウ素官能基の量(ホウ素原子数に基づく)は特に限定されないが、原子換算で、0.1〜1500μeq/gであることが好ましく、より好ましくは0.5〜700μeq/gであり、最適には1〜500μeq/gであると良い。ホウ素官能基の量が0.1μeq/gより少ない場合にはA層とB層の接着性が不十分になる可能性がある。また、ホウ素官能基の量を1500μeq/gより多くしてもA層とB層の接着性にさほど大きな向上は見られず、さらにホウ素官能基含有オレフィン系重合体の製造価格の上昇、あるいはホウ素官能基含有オレフィン系重合体とポリオレフィンの相溶性、接着性の低下を招く場合がある。
【0126】
また、有機金属官能基含有オレフィン系重合体に含まれる有機金属官能基がケイ素官能基である場合、B層におけるケイ素官能基の量(ケイ素原子数に基づく)は特に限定されないが、原子換算で、0.1〜1,500μeq/gであることが好ましく、より好ましくは0.5〜700μeq/gであり、最適には1〜500μeq/gであると良い。ケイ素官能基の量が0.1μeq/gより少ない場合にはA層とB層の接着性が不十分になる可能性がある。また、ケイ素官能基の量を1,500μeq/gより多くしてもA層とB層の接着性にさほど大きな向上は見られず、さらにケイ素官能基含有オレフィン系重合体の製造価格の上昇、あるいはケイ素官能基含有オレフィン系重合体とポリオレフィンの相溶性、接着性の低下を招く場合がある。
【0127】
本発明の積層体において、B層に含まれる反応性官能基の量は特に限定されず、反応性官能基含有オレフィン系重合体に含まれる反応性官能基がカルボキシル類基である場合にも、B層におけるカルボキシル類基の量は特に限定されないが、1〜1500μeq/gであることが好ましく、より好ましくは2〜700μeq/gであり、最適には3〜500μeq/gであると良い。ここで、本発明におけるカルボキシル類基の量は、カルボキシル類基に含まれるカルボニル基の量に基づいて計算した値である。カルボキシル類基の量が1μeq/gより少ない場合にはA層とB層の接着性が不十分になる可能性がある。また、カルボキシル類基の量を1500μeq/gより多くしてもA層とB層の接着性にさほど大きな向上は見られず、さらにカルボキシル類基含有オレフィン系重合体の製造価格の上昇、あるいはカルボキシル類基含有オレフィン系重合体とポリオレフィンの相溶性、接着性の低下を招く場合がある。
【0128】
また、反応性官能基含有オレフィン系重合体に含まれる反応性官能基がエポキシ基である場合、B層におけるエポキシ基の量は特に限定されないが、1〜1500μeq/gであることが好ましく、より好ましくは2〜700μeq/gであり、最適には3〜500μeq/gであると良い。エポキシ基の量が1μeq/gより少ない場合にはA層とB層の接着性が不十分になる可能性がある。また、エポキシ基の量を1500μeq/gより多くしてもA層とB層の接着性にさほど大きな向上は見られず、さらにエポキシ基含有オレフィン系重合体の製造価格の上昇、あるいはエポキシ基含有オレフィン系重合体とポリオレフィンの相溶性、接着性の低下を招く場合がある。
【0129】
本発明の積層体の製造方法は特に限定されず、共押し出し成形、多層射出成形、ドライラミネーションなど、従来公知の方法で製造可能である。例えば、A層とB層が積層してなる構成を含む積層体である場合には共押し出し成形することが好ましく、その方法はダイ内で各層成分を接触させるダイ内ラミネーションでも良いし、ダイ外で接触させるダイ外ラミネーションでも良い。また、押し出し温度は適宜選択されるが、150〜300℃、好ましくは180〜250℃であると良い。また、A層とC層を、B層を介して積層してなる構成を含む積層体である場合には、A層および/またはC層をあらかじめ押し出し成形などの方法により作製し、A層および/またはC層の表面にキャスト法などの方法によりB層を形成した後、それらをドライラミネーションする方法などで製造可能である。
【0130】
本発明の積層体で使用する組成物Bは、(ポリオレフィン)/(有機金属官能基含有オレフィン系重合体)=0/100〜99.95/0.05の質量比で含んでおり、その比率はポリオレフィンや有機金属官能基含有オレフィン系重合体の種類、また得られる積層体に要求される種々の物性によって適宜選択されるが、後述する実施例のように、組成物Bに含まれる有機金属官能基含有オレフィン系重合体の添加量が非常に少ない場合であっても、高い接着性が発現する。そのため、一般にポリオレフィンよりも高価であり、かつB層の透明性を低下させる可能性がある、有機金属官能基含有オレフィン系重合体の使用量を少なくすることができ、好適である。また、本発明の積層体で使用する組成物Bは、(ポリオレフィン)/(反応性官能基含有オレフィン系重合体)=0/100〜99.9/0.1の質量比で含んでおり、その比率はポリオレフィンや反応性官能基含有オレフィン系重合体の種類、また得られる積層体に要求される種々の物性によって適宜選択されるが、後述する実施例のように、組成物Bに含まれる反応性官能基含有オレフィン系重合体の添加量が非常に少ない場合であっても、高い接着性が発現する。
【0131】
本発明の積層体の透明性は特に限定されないが、その透明性を、本発明の積層体を2枚のガラスに挟んで作製した合わせガラスのヘイズを指標にして表すのであれば、その値が5%以下であるものが好ましく、好適には3%以下、さらに最適には1%以下であると良い。
【0132】
本発明の積層体は合わせガラス中間膜用途に好適に使用される。以下に、それを説明する。本発明の積層体を合わせガラス中間膜として使用する場合、その際に使用するガラスは特に限定されず、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、熱線吸収板ガラスなどの無機ガラスのほか、従来公知の有機ガラス等が使用でき、これらは無色、有色、あるいは透明、非透明のいずれであってもよい。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、ガラスの厚みは特に限定されないが、100mm以下であることが好ましい。
【0133】
本発明の積層体を合わせガラス中間膜として使用する場合、積層体の構成は本発明の主旨に反しない限り特に限定されないが、本発明の積層体の最表層にガラスとの接着性が適切な層があることが好ましく、特にガラスとして無機ガラスを使用する場合には、最表層はガラスとの接着性に優れるA層であることが好ましい。最表層がA層である本発明の積層体を具体的に例示すると、A層/B層/A層、A層/B層/C層/B層/A層などが挙げられる。
【0134】
本発明の積層体を合わせガラス中間膜として使用する場合、積層体の最表面の形状は特に限定されないが、ガラスとラミネートする際の取り扱い性(泡抜け性)を考慮すると、積層体の最表面にメルトフラクチャー、エンボスなど、従来公知の方法で凹凸構造を形成したものが好ましい。
【0135】
さらに、本発明の積層体は太陽電池モジュールの充填材として使用することで、制振性が求められる分野、特にBIPVなどの建築一体型太陽電池などに好適に使用される。以下、これを説明する。
【0136】
本発明の太陽電池モジュールに使用される太陽電池セルのタイプとしては特に限定されず、特に制限はないが単結晶シリコン、多結晶シリコン等の結晶タイプ、アモルファスシリコンおよびそれと多結晶薄膜等との積層物等の薄膜シリコンタイプ、CIS、CIGS、CdTe、GaAsなどを使用した化合物半導体タイプといった薄膜タイプおよび有機太陽電池タイプなどが例示される。
【0137】
本発明の太陽電池モジュールに使用される太陽電池セルが結晶タイプの場合、例えば、図1(a)に示すように結晶タイプの太陽電池セル3と充填材2およびガラス、バックシートなど(以下、ガラス等という)1を重ねた後、ラミネートして得られる、図1(b)のような構成が挙げられる。この場合に使用する充填材2は少なくとも1つが本発明の積層体であれば、それ以外の充填材、例えば、従来公知の架橋性エチレン−酢酸ビニル共重合体組成物や、可塑化ポリビニルアセタールからなる組成物からなる充填材を併用することも可能である。
【0138】
また、本発明の太陽電池モジュールに使用される太陽電池セルが薄膜タイプの場合、例えば、図2(a)に示すように太陽電池セル4が蒸着された表面ガラス(ITO、ATO、FTOなどを含む透明電極層を含んでいても良い)と、充填材2およびガラス等1を重ねた後、ラミネートして得られる、図2(b)のような構成が挙げられる。この場合にも、充填材2として、必要に応じて架橋性エチレン−酢酸ビニル共重合体組成物や、可塑化ポリビニルアセタールからなる組成物からなる充填材を併用して構わない。
【0139】
本発明に使用されるガラスは特に制限されず、例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、熱線吸収板ガラスなどの無機ガラスのほか、従来公知の有機ガラスなどを用いることができる。また、バックシートも特に制限はないが、耐候性に優れ、透湿度の低いものが好ましく使用され、ポリエステル系フィルム,フッ素系樹脂フィルム、および、それらの積層物、および、それらに無機化合物が積層されたものなどが使用できる。
【0140】
その他、本発明の太陽電池モジュールには、公知のフレームやジャンクションボックス、シーリング剤、取り付け治具および架台、反射防止膜、太陽熱を利用した各種設備、雨樋構造などと組み合わせることが可能である。
【0141】
本発明の合わせガラス、および、太陽電池モジュールは従来公知の方法で製造することが可能であり、例えば、真空ラミネーター装置を用いる方法、真空バッグを用いる方法、真空リングを用いる方法、ニップロールを用いる方法等が挙げられる。また、仮圧着後に、オートクレーブ工程に投入する方法も付加的に行なうことができる。
【0142】
真空ラミネーター装置を用いる場合、例えば、太陽電池の製造に用いられる公知の装置を使用し、1〜30000Paの減圧下、100〜200℃、特に130〜160℃の温度でラミネートされる。真空バッグまたは真空リングを用いる方法は、例えば、欧州特許第1235683号明細書に記載されており、例えば約20000Paの圧力下、130〜145℃でラミネートされる。
【0143】
ニップロールを用いる場合、例えば、可塑化ポリビニルアセタール樹脂の流動開始温度以下の温度で1回目の仮圧着した後、さらに流動開始温度に近い条件で仮圧着する方法が挙げられる。具体的には、例えば、赤外線ヒーターなどで30〜70℃に加熱した後、ロールで脱気し、さらに50〜120℃に加熱した後ロールで圧着して接着または仮接着させる方法が挙げられる。
【0144】
仮圧着後に付加的に行なわれるオートクレーブ工程は、モジュールや合わせガラスの厚さや構成にもよるが、例えば、約1〜1.5MPaの圧力下、130〜145℃の温度で0.5〜2時間実施される。
【0145】
[実施例]
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、以下の実施例において「%」および「部」は特に断りのない限り、「質量%」および「質量部」を意味する。
【0146】
(ポリオレフィン、有機金属官能基含有オレフィン系重合体、及び反応性官能基含有オレフィン系重合体のNMRによる分析)
ポリオレフィン−1,2,4,8,9、有機金属官能基含有オレフィン系重合体−1,2,4、および、反応性官能基含有オレフィン系重合体−1,3は、重クロロホルムを溶媒とするH−NMR測定により、また、ポリオレフィン−3、有機金属官能基含有オレフィン系重合体−3、および、反応性官能基含有オレフィン系重合体−2,4は、重パラキシレンを溶媒とするH−NMR測定により得られたスペクトルから、それぞれポリオレフィンは炭素炭素二重結合の量を、有機金属官能基含有オレフィン系重合体は有機金属官能基量を、また、反応性官能基含有オレフィン系重合体は反応性官能基量をそれぞれ算出した。
【0147】
(重量平均分子量)
ポリオレフィン−1,2,4,8,9、有機金属官能基含有オレフィン系重合体−1,2,4、および、反応性官能基含有オレフィン系重合体−1,3は、テトラヒドロフランを溶媒とするGPC測定により、また、ポリオレフィン−3、有機金属官能基含有オレフィン系重合体−3、および、反応性官能基含有オレフィン系重合体−2,4はオルトジクロロベンゼンを溶媒とするGPC測定により得られたポリスチレンを標準とする重量平均分子量を測定した。以下に、GPC測定条件を示す。
装置 :SYSTEM11(昭和電工株式会社製)
カラム :MIXED−C 2本(ポリマーラボラトリー社製)
移動相 :テトラヒドロフランまたはオルトジクロロベンゼン
流量 :1.0mL/分
温度 :40℃
濃度 :0.1%
注入量 :100μL
検出器 :RI
標品 :ポリスチレン(ポリマーラボラトリー社製)
【0148】
合成例1
(炭素炭素二重結合を有するブロック共重合体の合成)
乾燥窒素で置換された200Lの耐圧容器にシクロヘキサン60kg、重合開始剤としてsec−ブチルリチウム35gを添加し、次いで、スチレン2.9kgを添加し、50〜52℃で重合した後、THF0.17kgを加え、次いで、ブタジエン26.2kgおよびスチレン2.9kgを順次添加し、重合させてスチレン−ブタジエン−スチレン型のブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体を、シクロヘキサン中、Pd/C(パラジウム・カーボン)を触媒として、水素圧力2MPa、反応温度100℃で水素添加を行い、炭素炭素二重結合を有するブロック共重合体(ポリオレフィン−1)を得た。得られたポリオレフィン−1の重量平均分子量は100,400、スチレン含有量は18質量%、水添率は97モル%(炭素炭素二重結合の含有量450μeq/g)であった。結果を表1に示す。
【0149】
合成例2
(炭素炭素二重結合を有するブロック共重合体の合成)
乾燥窒素で置換された200Lの耐圧容器にシクロヘキサン60kg、重合開始剤としてsec−ブチルリチウム16.6gを添加し、次いでスチレン1.45kgを添加し、50〜52℃で重合した後、THF0.48kgを加え、次いでイソプレン13.8kgおよびスチレン1.45kgを順次添加し、重合させてスチレン−イソプレン−スチレン型のブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体を、シクロヘキサン中、Pd/Cを触媒として、水素圧力2MPa、反応温度100℃で水素添加を行い、炭素炭素二重結合を有するブロック共重合体(ポリオレフィン−2)を得た。得られたポリオレフィン−2の重量平均分子量は83,000、スチレン含有量は16質量%、水添率は92モル%(炭素炭素二重結合の含有量1,000μeq/g)であった。結果を表1に示す。
【0150】
合成例3
(炭素炭素二重結合を末端に有する超低密度ポリエチレンの合成)
セパラブルフラスコに重量平均分子量230,000の超低密度ポリエチレン200gを仕込み、真空下、250℃で30分加熱後、さらに340℃に昇温し2時間加熱を行なうことにより、炭素炭素二重結合を有する超低密度ポリエチレン(ポリオレフィン−3)を得た。ポリオレフィン−3の重量平均分子量は80,000、炭素炭素二重結合の含有量は60μeq/gであった。結果を表1に示す。
【0151】
合成例4
(炭素炭素二重結合を有するブロック共重合体の合成)
水素添加時の反応時間を延長し、水添率を99モル%(炭素炭素二重結合の含有量150μeq/g)とした以外は合成例1と同様の方法により、炭素炭素二重結合を有するブロック共重合体(ポリオレフィン−4)を得た。結果を表1に示す。
【0152】
【表1】

【0153】
合成例5
(有機金属官能基含有オレフィン系重合体−1の合成)
合成例1で合成したポリオレフィン−1を、投入口を窒素で置換しながら7kg/時の速度で二軸押出機に供給した。次に、液体フィーダー1よりボラン−トリエチルアミン錯体とホウ酸1,3−ブタンジオールエステルの29/71(質量比)混合液0.6kg/時の速度で、液体フィーダー2より1,3−ブタンジオールを0.4kg/時の速度で供給し、連続的に混練した。混練の間、ベント1およびベント2のゲージが約20mmHgを示すように圧力を調節した。その結果、吐出口から7kg/時の速度で、有機金属官能基含有オレフィン系重合体−1(有機金属官能基:ボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基)が得られた。結果を表2に示す。
【0154】
なお、反応に使用した二軸押出機の構成、運転条件は下記のとおりである。
同方向二軸押出機TEM−35B(東芝機械株式会社製)
スクリュー径 :37mmφ
L/D :52(15ブロック)
液体フィーダー :C3(液体フィーダー1)、C11(液体フィーダー2)
ベント位置 :C6、C14
スクリュー構成 :C5〜C6間,C10〜C11間およびC12の位置にシールリングを使用
温度設定 :C1 水冷
C2〜C3 200℃
C4〜C15 250℃
ダイ 250℃
スクリュー回転数:400rpm
【0155】
合成例6
(有機金属官能基含有オレフィン系重合体−2の合成)
合成例2で合成したポリオレフィン−2を、投入口を窒素で置換しながら6kg/時の速度で二軸押出機に供給した。次に、液体フィーダー1よりボラン−トリエチルアミン錯体とホウ酸1,3−ブタンジオールエステルの29/71(質量比)混合液1.2kg/時の速度で、液体フィーダー2よりプロピレングリコールを0.6kg/時の速度で供給し、連続的に混練した。混練の間、ベント1およびベント2のゲージが約20mmHgを示すように圧力を調節した。その結果、吐出口から6kg/時の速度で、有機金属官能基含有オレフィン系重合体−2(有機金属官能基:ボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基およびボロン酸プロピレングリコールエステル基の混合物)が得られた。結果を表2に示す。なお、反応に使用した二軸押出機の構成、運転条件は合成例5と同じである。
【0156】
合成例7
(有機金属官能基含有オレフィン系重合体−3の合成)
冷却器付きのセパラブルフラスコに合成例3で得られたポリオレフィン−3を30g、ボラン−ピリジン錯体300mg、ホウ酸トリブチル2.25g、デカリン50gを仕込み、窒素置換後、190℃で3時間反応を行なった。その後室温に冷却し、得られたゲル状ポリエチレンをメタノ−ル:アセトン=1:1の混合溶媒で良く洗浄後、さらに、アセトン:水=1:1の混合溶媒により洗浄、乾燥することにより、有機金属官能基含有オレフィン系重合体−3(有機金属官能基:ボロン酸基)が得られた。結果を表2に示す。
【0157】
合成例8
(有機金属官能基含有オレフィン系重合体−4の合成)
乾燥窒素を導入した200リットルの反応容器に、シクロヘキサン60kg、スチレン3kgおよびsec−ブチルリチウム9gを加え、50℃にて反応後、温度を70℃として1,3−ブタジエン5.9kgを添加し、30分後、スチレン3kgを添加して反応を行った。反応完結後、1,3−ブタジエン0.12kgを添加してさらに反応を行った後、この系内にメチルトリフェノキシシラン41gを加え、30分反応させた。反応後、反応液を常温とし反応容器より抜き出し、水中に撹拌投入して溶媒を水蒸気蒸留除去することによって有機金属官能基含有オレフィン系重合体−4(有機金属官能基:メチルジフェノキシシリル基)が得られた。結果を表2に示す。
【0158】
【表2】

【0159】
(ポリビニルアセタールの調製)
還流冷却器、温度計、イカリ型攪拌翼を備えた10L(リットル)のガラス製容器に、イオン交換水8100g、ポリビニルアルコール(PVA−1)(粘度平均重合度1700、けん化度99モル%)660gを仕込み(PVA濃度7.5%)、内容物を95℃に昇温して完全に溶解させた。次に、120rpmで攪拌下、5℃まで約30分かけて徐々に冷却後、ブチルアルデヒド384gと20%の塩酸540mLを添加し、ブチラール化反応を150分間行った。その後、60分かけて50℃まで昇温し、50℃にて120分間保持した後、室温まで冷却した。析出した樹脂をイオン交換水で洗浄後、過剰量の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、再洗浄し、乾燥してポリビニルブチラール(PVB−1)を得た。得られたPVB−1のブチラール化度(平均アセタール化度)は69モル%、酢酸ビニル基の含有量は1モル%であり、ビニルアルコール基の含有量は30モル%であった。PVB−1のブチラール化度、残存する酢酸ビニル基の含有量はJIS K6728にしたがって測定した。
【0160】
(組成物A−1の調製)
40gのPVB−1と、16gのポリエステルジオール(アジピン酸とアジピン酸に対して過剰量の3−メチル−1,5−ペンタンジオールとの共重合体、水酸基価に基づく数平均分子量=500)、0.12gの2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、0.04gの酢酸カリウムおよび0.05gの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールをラボプラストミル(150℃、60rpm、5分)で溶融混錬し、組成物A−1を得た。結果を表3に示す。
【0161】
(組成物A−2の調製)
40gのPVB−1と、0.05gの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールをラボプラストミル(180℃、60rpm、5分)で溶融混錬し、組成物A−2を得た。結果を表3に示す。
【0162】
(組成物A−3の調製)
上記の組成物A−1の調整において、ポリエステルジオールに代えてトリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエートを使用した以外は同様にして、組成物A−3を得た。結果を表3に示す。
【0163】
【表3】

【0164】
(組成物B−1の調製)
40gのポリオレフィン−4と0.4gの有機金属官能基含有オレフィン系重合体−1、および0.05gの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールをラボプラストミル(200℃、60rpm、5分)で溶融混錬し、組成物B−1を得た。組成物B−1における有機金属官能基量は、ホウ素原子換算で2.1μeq/gであった。結果を表4に示す。
【0165】
(組成物B−2の調製)
上記の組成物B−1の調整において、使用する有機金属官能基含有オレフィン系重合体−1の量を1.2gとした以外は同様にして、組成物B−2を得た。組成物B−2における有機金属官能基量は、ホウ素原子換算で6.1μeq/gであった。結果を表4に示す。
【0166】
(組成物B−3の調製)
上記の組成物B−1の調整において、使用する有機金属官能基含有オレフィン系重合体−1の量を4gとした以外は同様にして、組成物B−3を得た。組成物B−3における有機金属官能基量は、ホウ素原子換算で19μeq/gであった。結果を表4に示す。
【0167】
(組成物B−4の調製)
上記の組成物B−1の調整において、使用する有機金属官能基含有オレフィン系重合体−1の量を0.04gとした以外は同様にして、組成物B−4を得た。組成物B−4における有機金属官能基量は、ホウ素原子換算で0.21μeq/gであった。結果を表4に示す。
【0168】
(組成物B−5の調製)
上記の組成物B−1の調整において、有機金属官能基含有オレフィン系重合体−1に代えて有機金属官能基含有オレフィン系重合体−2を使用した以外は同様にして、組成物B−5を得た。組成物B−5における有機金属官能基量は、ホウ素原子換算で6.2μeq/gであった。結果を表4に示す。
【0169】
(組成物B−6の調製)
上記の組成物B−5の調整において、使用する有機金属官能基含有オレフィン系重合体−2の量を1.2gとした以外は同様にして、組成物B−6を得た。組成物B−6における有機金属官能基量は、ホウ素原子換算で18μeq/gであった。結果を表4に示す。
【0170】
(組成物B−7の調製)
上記の組成物B−5の調整において、使用する有機金属官能基含有オレフィン系重合体−2の量を4gとした以外は同様にして、組成物B−7を得た。組成物B−7における有機金属官能基量は、ホウ素原子換算で57μeq/gであった。結果を表4に示す。
【0171】
(組成物B−8の調製)
上記の組成物B−6の調整において、ポリオレフィン−4に代えてポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、ノバテックPP)を使用した以外は同様にして、組成物B−8を得た。組成物B−8における有機金属官能基量は、ホウ素原子換算で18μeq/gであった。結果を表4に示す。
【0172】
(組成物B−9の調製)
上記の組成物B−2の調整において、有機金属官能基含有オレフィン系重合体−1に代えて有機金属官能基含有オレフィン系重合体−3を使用した以外は同様にして、組成物B−9を得た。組成物B−9における有機金属官能基量は、ホウ素原子換算で1.0μeq/gであった。結果を表4に示す。
【0173】
(組成物B−10の調製)
上記の組成物B−9の調整において、ポリオレフィン−4に代えてポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、ノバテックPP)を使用した以外は同様にして、組成物B−10を得た。組成物B−10における有機金属官能基量は、ホウ素原子換算で1.0μeq/gであった。結果を表4に示す。
【0174】
(組成物B−11の調製)
上記の組成物B−3の調整において、有機金属官能基含有オレフィン系重合体−1に代えて有機金属官能基含有オレフィン系重合体−4を使用した以外は同様にして、組成物B−11を得た。組成物B−11における有機金属官能基量は、ケイ素原子換算で1.5μeq/gであった。結果を表4に示す。
【0175】
(組成物B−12の調製)
40gの有機金属官能基含有オレフィン系重合体−2および0.05gの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールをラボプラストミル(200℃、60rpm、5分)で溶融混錬し、組成物B−12を得た。組成物B−12における有機金属官能基量は、ホウ素原子換算で630μeq/gであった。結果を表4に示す。
【0176】
(組成物B−13の調製)
上記の組成物B−1の調整において、使用する有機金属官能基含有オレフィン系重合体−1の量を0.004gとした以外は同様にして、組成物B−13を得た。組成物B−13における有機金属官能基量は、ホウ素原子換算で0.021μeq/gであった。結果を表4に示す。
【0177】
(組成物B−14の調製)
40gのポリオレフィン−5(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体(ポリイソプレン部分は完全水添)、ポリスチレン部分の合計含有量=12%、ガラス転移温度=−32℃、tanδのピーク温度=−17℃、MFR値(ASTM D1238、荷重2.16kg)が190℃で0.5g/10分、−20℃でのtanδ=1.0、0℃でのtanδ=0.8、20℃でのtanδ=0.3)と0.4gの有機金属官能基含有オレフィン系重合体−1、および0.05gの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールをラボプラストミル(200℃、60rpm、5分)で溶融混錬し、組成物B−14を得た。組成物B−14における有機金属官能基量は、ホウ素原子換算で2.1μeq/gであった。結果を表4に示す。
【0178】
(組成物B−15の調製)
40gのポリオレフィン−6(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体(ポリイソプレン部分は完全水添)、ポリスチレン部分の含有量=22%、ガラス転移温度=−12℃、tanδのピーク温度=−5℃、MFR値(ASTM D1238、荷重2.16kg)が190℃で0.7g/10分、−20℃でのtanδ=0.15、0℃でのtanδ=1.05、20℃でのtanδ=0.4)と0.4gの有機金属官能基含有オレフィン系重合体−1、および0.05gの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールをラボプラストミル(200℃、60rpm、5分)で溶融混錬し、組成物B−15を得た。組成物B−15における有機金属官能基量は、ホウ素原子換算で2.1μeq/gであった。結果を表4に示す。
【0179】
(組成物B−16の調製)
40gのポリオレフィン−7(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体(ポリイソプレン部分は未水添)、ポリスチレン部分の含有量=20%、ガラス転移温度−12℃、tanδのピーク温度=−1℃、MFR値(ASTM D1238、荷重2.16kg)が190℃で3.8g/10分、−20℃でのtanδ=0.08、0℃でのtanδ=1.05、20℃でのtanδ=0.9)と0.4gの有機金属官能基含有オレフィン系重合体−1、および0.05gの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールをラボプラストミル(200℃、60rpm、5分)で溶融混錬し、組成物B−16を得た。組成物B−16における有機金属官能基量は、ホウ素原子換算で2.1μeq/gであった。結果を表4に示す。
【0180】
【表4】

【0181】
(組成物Cの調製)
40gのポリオレフィン−4および0.05gの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールをラボプラストミル(200℃、60rpm、5分)で溶融混錬し、組成物C−1を得た。
【0182】
[実施例1]
組成物A−1を10cm×10cm×1mmの型枠内で熱プレス(150℃、12kg/cm、30分)して得たフィルム(フィルムA−1)と、組成物B−1を10cm×10cm×1mmの型枠内で熱プレス(200℃、12kg/cm、5分)して得たフィルムを重ね、12kg/cmの圧力下、135℃で30分熱処理し、積層体−1(A層/B層)を得た。
【0183】
(接着性の評価)
積層体−1を1cm×10cmの短冊状に切り、23℃、50%RHで一晩調湿した。短冊の長辺方向を端から2cm程度、A層とB層の間で剥離し、オートグラフ(株式会社島津製オートグラフAG−IS)を使用して、100mm/分で180°剥離試験を5回行い、層間接着力の5回の平均値を求めた。評価結果を表5に示す。
【0184】
[実施例2〜12]
組成物B−1に代えて、それぞれ組成物B−2〜12を用いた以外は実施例1と同様の方法により積層体を作製し、同様の評価をした。評価結果を表5に示す。
【0185】
[実施例13、14]
組成物A−1に代えて、それぞれ組成物A−2または3を用いた以外は実施例1と同様の方法により積層体を作製し、同様の評価をした。評価結果を表5に示す。
【0186】
[実施例15]
組成物A−1を10cm×10cm×1mmの型枠内で熱プレス(150℃、12kg/cm、30分)して得たフィルム(フィルムA−1)の片面に、組成物B−1のトルエン溶液(1wt%)をアプリケーターで塗布したもの(溶液の塗布厚さ10μm)と、組成物C−1を10cm×10cm×1mmの型枠内で熱プレス(200℃、12kg/cm、5分)して得たフィルム(フィルムC−1)を、組成物B−1の塗布面がフィルムC−1と接するように重ね、12kg/cmの圧力下、135℃で30分熱処理し、積層体−15(A層/B層/C層)を得た。
【0187】
(接着性の評価)
積層体−15を1cm×10cmの短冊状に切り、23℃、50%RHで一晩調湿した。短冊の長辺方向を端から2cm程度、A層とC層の間で剥離し、オートグラフ(株式会社島津製オートグラフAG−IS)を使用して、100mm/分で180°剥離試験を5回行い、層間接着力の5回の平均値を求めた。評価結果を表5に示す。
【0188】
[実施例16]
組成物A−1を10cm×10cm×0.4mmの型枠内で熱プレス(150℃、12kg/cm、30分)して得たフィルム(フィルムA−1’)2枚と、組成物B−1を10cm×10cm×0.2mmの型枠内で熱プレス(200℃、12kg/cm、5分)して得たフィルム(フィルムB−1’)1枚を、A−1’/B−1’/A−1’の順に重ね、12kg/cmの圧力下、135℃で30分熱処理し、積層体−16(A層/B層/A層)を得た。
【0189】
積層体−16とフロート板ガラス(10cm×10cm×2mm)2枚を、フロート板ガラス/積層体−16/フロート板ガラスの順に重ね、50℃下、ニップロールで脱気後、オートクレーブで本接着し(140℃、12bar、2時間)、合わせガラス−16を得た。スガ試験機株式会社製 ヘイズメーターにより合わせガラスのヘイズを評価した。評価結果を表5に示す。
【0190】
[実施例17]
組成物A−1を10cm×10cm×0.4mmの型枠内で熱プレス(150℃、12kg/cm、30分)して得たフィルム(フィルムA−1’)の片面に組成物B−1のトルエン溶液(1wt%)をアプリケーターで塗布したもの(溶液の塗布厚さ10μm)2枚と、組成物C−1を10cm×10cm×0.2mmの型枠内で熱プレス(200℃、12kg/cm、5分)して得たフィルム(フィルムC−1)1枚を、A−1’/C−1/A−1’の順に、また、各組成物B−1の塗布面がC−1に接する向きに重ね、12kg/cmの圧力下、135℃で30分熱処理し、積層体−17(A層/B層/C層/B層/A層)を得た。
【0191】
積層体−16に代えて、積層体−17を使用した以外は実施例16と同様にしてあわせガラスを得て、ヘイズを評価した。評価結果を表5に示す。
【0192】
[実施例18〜20]
組成物B−1に代えて、それぞれ組成物B−14〜16を用いた以外は実施例1と同様の方法により積層体を作製し、同様の評価をした。評価結果を表5に示す。
【0193】
[比較例1]
組成物B−1に代えて、組成物C−1を使用した以外は実施例1と同様の方法により積層体を作製し、評価した。評価結果を表5に示す。
【0194】
[比較例2]
組成物B−1に代えて、組成物B−13を使用した以外は実施例1と同様の方法により積層体を作製し、評価した。評価結果を表5に示す。
【0195】
【表5】

【0196】
合成例9
(炭素炭素二重結合を有するブロック共重合体の合成)
乾燥窒素で置換された200Lの耐圧容器にシクロヘキサン60kg、重合開始剤としてsec−ブチルリチウム15.6gを添加し、次いで、スチレン1.45kgを添加し、50〜52℃で重合した後、THF0.48kgを加え、次いで、イソプレン13.8kgおよびスチレン1.45kgを順次添加し、重合させてスチレン−イソプレン−スチレン型のブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体を、シクロヘキサン中、Pd/Cを触媒として、水素圧力2MPa、反応温度100℃で水素添加を行い、炭素炭素二重結合を有するブロック共重合体(ポリオレフィン−8)を得た。得られたポリオレフィン−8の重量平均分子量は87,000、スチレン含有量は16質量%、水添率は98モル%(炭素炭素二重結合の含有量250μeq/g)であった。結果を表6に示す。
【0197】
合成例10
(炭素炭素二重結合を有するブロック共重合体の合成)
水素添加時の反応時間を延長し、水添率を99%(炭素炭素二重結合の含有量125μeq/g)とした以外は合成例9と同様の方法により、ポリオレフィン−9を得た。結果を表6に示す。
【0198】
【表6】

【0199】
合成例11
(反応性官能基含有オレフィン系重合体−1の合成)
セパラブルフラスコに合成例9で得られたポリオレフィン−8を200g、無水マレイン酸20g、キシレン1000g、およびジクミルパーオキサイド0.5gを仕込み、窒素置換を行なった後、130℃で2時間反応を行なった。その後、アセトンにより十分に洗浄して未反応の無水マレイン酸および副生成物を取り除き、乾燥することによってカルボン酸無水物基の量が200μeq/gの反応性官能基含有オレフィン系重合体−1を得た。結果を表7に示す。
【0200】
合成例12
(反応性官能基含有オレフィン系重合体−2の合成)
合成例11において、ポリオレフィン−8の代わりにポリオレフィン−3を使用して反応を行い、カルボン酸無水物基の量が50μeq/gの反応性官能基含有オレフィン系重合体−2を得た。結果を表7に示す。
【0201】
合成例13
(反応性官能基含有オレフィン系重合体−3の合成)
セパラブルフラスコに合成例9で得られたポリオレフィン−8を20g、1%m−クロロ過安息香酸の塩化メチレン溶液を100g入れ、室温で1日反応を行った。その後、アセトンにより十分に洗浄して、乾燥することによってエポキシ基の量が80μeq/gの反応性官能基含有オレフィン系重合体−3を得た。結果を表7に示す。
【0202】
合成例14
(反応性官能基含有オレフィン系重合体−4の合成)
合成例13において、ポリオレフィン−8の代わりにポリオレフィン−3を使用して反応を行い、エポキシ基の量が37μeq/gの反応性官能基含有オレフィン系重合体−4を得た。結果を表7に示す。
【0203】
【表7】

【0204】
(組成物B−17の調製)
40gのポリオレフィン−9と0.8gの反応性官能基含有オレフィン系重合体−1、および0.05gの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールをラボプラストミル(200℃、60rpm、5分)で溶融混錬し、組成物B−17を得た。結果を表8に示す。
【0205】
(組成物B−18および19の調製)
上記の組成物B−17の調整において、使用する反応性官能基含有オレフィン系重合体−1の量を、それぞれ2gおよび4gとした以外は同様にして、組成物B−18および組成物B−19を得た。結果を表8に示す。
【0206】
(組成物B−20の調製)
上記の組成物B−18の調整において、反応性官能基含有オレフィン系重合体−1に代えて反応性官能基含有オレフィン系重合体−2を使用した以外は同様にして、組成物B−20を得た。結果を表8に示す。
【0207】
(組成物B−21の調製)
上記の組成物B−20の調整において、ポリオレフィン−9に代えてポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、ノバテックPP)を使用した以外は同様にして、組成物B−21を得た。結果を表8に示す。
【0208】
(組成物B−22の調製)
上記の組成物B−17の調整において、反応性官能基含有オレフィン系重合体−1に代えて反応性官能基含有オレフィン系重合体−3を使用した以外は同様にして、組成物B−22を得た。結果を表8に示す。
【0209】
(組成物B−23および24の調製)
上記の組成物B−22の調整において、使用する反応性官能基含有オレフィン系重合体−3の量を、それぞれ2gおよび4gとした以外は同様にして、組成物B−23および組成物B−24を得た。結果を表8に示す。
【0210】
(組成物B−25の調製)
上記の組成物B−18の調整において、反応性官能基含有オレフィン系重合体−1に代えて反応性官能基含有オレフィン系重合体−4を使用した以外は同様にして、組成物B−25を得た。結果を表8に示す。
【0211】
(組成物B−26の調製)
上記の組成物B−23の調整において、ポリオレフィン−9に代えてポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、ノバテックPP)を使用した以外は同様にして、組成物B−26を得た。結果を表8に示す。
【0212】
(組成物B−27の調製)
40gの反応性官能基含有オレフィン系重合体−1および0.05gの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールをラボプラストミル(200℃、60rpm、5分)で溶融混錬し、組成物B−27を得た。結果を表8に示す。
【0213】
(組成物B−28の調製)
上記の組成物B−17の調整において、使用する反応性官能基含有オレフィン系重合体−1の量を0.04gとした以外は同様にして、組成物B−28を得た。結果を表8に示す。
【0214】
【表8】

【0215】
(組成物C−2の調製)
40gのポリオレフィン−9および0.05gの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールをラボプラストミル(200℃、60rpm、5分)で溶融混錬し、組成物C−2を得た。
【0216】
[実施例21]
組成物A−1を10cm×10cm×1mmの型枠内で熱プレス(150℃、12kg/cm、30分)して得たフィルム(フィルムA−1)と、組成物B−17を10cm×10cm×1mmの型枠内で熱プレス(200℃、12kg/cm、5分)して得たフィルムを重ね、12kg/cmの圧力下、135℃で30分熱処理し、積層体−21(A層/B層)を得た。
【0217】
(接着性の評価)
積層体−21を1cm×10cmの短冊状に切り、23℃、50%RHで一晩調湿した。短冊の長辺方向を端から2cm程度、A層とB層の間で剥離し、オートグラフ(株式会社島津製オートグラフAG−IS)を使用して、100mm/分で180°剥離試験を5回行い、層間接着力の5回の平均値を求めた。評価結果を表9に示す。
【0218】
[実施例22〜31]
組成物B−17に代えて、それぞれ組成物B−18〜27を用いた以外は実施例21と同様の方法により積層体を作製し、同様の評価をした。評価結果を表9に示す。
【0219】
[実施例32、33]
組成物A−1に代えて、それぞれ組成物A−2またはA−3を用いた以外は実施例21と同様の方法により積層体を作製し、同様の評価をした。評価結果を表9に示す。
【0220】
[実施例34]
組成物A−1を10cm×10cm×1mmの型枠内で熱プレス(150℃、12kg/cm、30分)して得たフィルム(フィルムA−1)の片面に、組成物B−17のトルエン溶液(1wt%)をアプリケーターで塗布したもの(溶液の塗布厚さ10μm)と、組成物C−2を10cm×10cm×1mmの型枠内で熱プレス(200℃、12kg/cm、5分)して得たフィルム(フィルムC−2)を、組成物B−17の塗布面がフィルムC−2と接するように重ね、12kg/cmの圧力下、135℃で30分熱処理し、積層体−34(A層/B層/C層)を得た。
【0221】
(接着性の評価)
積層体−34を1cm×10cmの短冊状に切り、23℃、50%RHで一晩調湿した。短冊の長辺方向を端から2cm程度A層とC層の間で剥離し、オートグラフ(株式会社島津製オートグラフAG−IS)を使用して、100mm/分で180°剥離試験を5回行い、層間接着力の5回の平均値を求めた。評価結果を表9に示す。
【0222】
[実施例35]
組成物A−1を10cm×10cm×0.4mmの型枠内で熱プレス(150℃、12kg/cm、30分)して得たフィルム(フィルムA−1’)2枚と、組成物B−17を10cm×10cm×0.2mmの型枠内で熱プレス(200℃、12kg/cm、5分)して得たフィルム(フィルムB−17’)1枚を、(フィルムA−1’)/(フィルムB−17’)/(フィルムA−1’)の順に重ね、12kg/cmの圧力下、135℃で30分熱処理し、積層体−35(A層/B層/A層)を得た。
【0223】
積層体−35とフロート板ガラス(10cm×10cm×2mm)2枚を、(フロート板ガラス)/(積層体−35)/(フロート板ガラス)の順に重ね、50℃下、ニップロールで脱気後、オートクレーブで本接着し(140℃、12bar、2時間)、合わせガラス−15を得た。スガ試験機株式会社製 ヘイズメーターにより合わせガラスのヘイズを評価した。評価結果を表9に示す。
【0224】
[実施例36]
組成物A−1を10cm×10cm×0.4mmの型枠内で熱プレス(150℃、12kg/cm、30分)して得たフィルム(フィルムA−1’)の片面に組成物B−17のトルエン溶液(1wt%)をアプリケーターで塗布したもの(溶液の塗布厚さ10μm)2枚と、組成物C−2を10cm×10cm×0.2mmの型枠内で熱プレス(200℃、12kg/cm、5分)して得たフィルム(フィルムB−17’)1枚を、(フィルムA−1’)/(フィルムB−17’)/(フィルムA−1’)の順に、また、各組成物B−17の塗布面がフィルムB−17’に接する向きに重ね、12kg/cmの圧力下、135℃で30分熱処理し、積層体−36(A層/B層/C層/B層/A層)を得た。
【0225】
積層体−35に代えて、積層体−36を使用した以外は実施例35と同様にして合わせガラスを得て、ヘイズを評価した。評価結果を表9に示す。
【0226】
[比較例3]
組成物B−17に代えて、組成物C−2を使用した以外は実施例21と同様の方法により積層体を作製し、評価した。評価結果を表9に示す。
【0227】
[比較例4]
組成物B−17に代えて、組成物B−28を使用した以外は実施例21と同様の方法により積層体を作製し、評価した。評価結果を表9に示す。
【0228】
【表9】

【産業上の利用可能性】
【0229】
本発明の積層体は、組成物Bに必須成分として含まれる有機金属官能基含有オレフィン系重合体中のケイ素、ホウ素が、ポリビニルアセタールが有する水酸基と反応し共有結合を形成するか、もしくはポリビニルアセタールが有する水酸基と強力な水素結合を形成することができ、また、有機金属官能基含有オレフィン系重合体は、それを構成する多くの部分がポリオレフィン系モノマーの重合体からなるため、分子極性が比較的近いポリオレフィンとも相溶、接着可能である。また、本発明の積層体は、組成物Bに必須成分として含まれる反応性官能基含有オレフィン系重合体中のカルボキシル基、カルボキシル基の誘導体基、および、エポキシ基から選ばれる1種類以上の基が、ポリビニルアセタールが有する水酸基と反応し共有結合を形成することができ、また、反応性官能基含有オレフィン系重合体は、それを構成する多くの部分がポリオレフィン系モノマーの重合体からなるため、分子極性が比較的近いポリオレフィンとも相溶、接着可能である。
【0230】
そのため、本発明の組成物AからなるA層と、組成物BからなるB層とを積層してなる構成を含む積層体、あるいはA層と組成物CからなるC層を、組成物Bを含むB層を介して積層されてなる構成を含む積層体はA層とB層、あるいはA層とC層の層間接着性に優れ、特にこれら積層体を合わせガラス中間膜に使用する場合に好適である。
【符号の説明】
【0231】
1 ガラス等
2 充填材
3 太陽電池セル(結晶系)
4 太陽電池セル(薄膜タイプ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアセタールを含む組成物AからなるA層と、
ポリオレフィン、および/または、接着性官能基含有オレフィン系重合体を含有する組成物BからなるB層とを積層してなり、(ポリオレフィン)/(接着性官能基含有オレフィン系重合体)の質量比が、0/100〜99.95/0.05である積層体。
【請求項2】
接着性官能基含有オレフィン系重合体が、ホウ素および/又はケイ素を含む有機金属官能基を含有する接着性官能基含有オレフィン系重合体である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記有機金属官能基が、ボロン酸基、ボロン酸基の誘導体基、ボリン酸基およびボリン酸基の誘導体基からなる群から選ばれる1種類以上の基である、請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記B層における前記有機金属官能基の量が、ホウ素原子換算で0.1〜1500μeq/gである、請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記有機金属官能基が、アルコキシシリル基およびアルコキシシリル基の誘導体基からなる群から選ばれる1種類以上の基である、請求項2に記載の積層体。
【請求項6】
前記B層における前記有機金属官能基の量が、ケイ素原子換算で0.1〜1500μeq/gである、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
接着性官能基含有オレフィン系重合体が、カルボキシル基、カルボキシル基の誘導体基、および、エポキシ基から選ばれる1種類以上の反応性官能基を含有する接着性官能基含有オレフィン系重合体であって、(ポリオレフィン)/(接着性官能基含有オレフィン系重合体)の質量比が、0/100〜99.9/0.1である請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
前記反応性官能基がカルボキシル基およびカルボキシル基の誘導体基からなる群から選ばれる1種類以上の基である、請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
前記B層における前記反応性官能基の量が1〜1500μeq/gである、請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
前記反応性官能基がエポキシ基である、請求項7に記載の積層体。
【請求項11】
前記B層における前記反応性官能基の量が1〜1500μeq/gである、請求項10に記載の積層体。
【請求項12】
ポリオレフィンを含む組成物CからなるC層とA層がB層を介して積層してなる、請求項1〜11のいずれかに記載の積層体。
【請求項13】
前記ポリオレフィンが、炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素および炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素からなる群から選ばれる1種類以上の単量体単位からなる重合体、または、その水添物である、請求項1〜12のいずれかに記載の積層体。
【請求項14】
前記接着性官能基含有オレフィン系重合体が、炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素単位および炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素単位からなる群から選ばれる1種類以上の単量体単位からなる重合体、または、その水添物であり、その分子鎖の末端または側鎖に前記接着性官能基を有する、請求項1〜13のいずれかに記載の積層体。
【請求項15】
前記接着性官能基含有オレフィン系重合体が、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素単位からなる重合体ブロック(X’)と、炭素数2〜12の脂肪族共役ポリエン単位からなる重合体ブロック(Y’)とを含むブロック共重合体、または、その水添物であり、その分子鎖の末端または側鎖に前記接着性官能基を有する、請求項14に記載の積層体。
【請求項16】
前記炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素がスチレンであり、前記炭素数2〜12の脂肪族共役ポリエンがブタジエン、イソプレン、または、ブタジエンおよびイソプレンの混合物である、請求項15に記載の積層体。
【請求項17】
前記ポリビニルアセタールが、粘度平均重合度150〜3000のポリビニルアルコールをアセタール化して得られるものである、請求項1〜16のいずれかに記載の積層体。
【請求項18】
前記ポリビニルアセタールがポリビニルブチラールである、請求項1〜17のいずれかに記載の積層体。
【請求項19】
前記ポリビニルアセタールの平均アセタール化度が40〜85モル%、平均酢酸ビニル基量が0.01〜30モル%である、請求項1〜18のいずれかに記載の積層体。
【請求項20】
前記A層が、ポリビニルアセタール100質量部に対して1〜100質量部の可塑剤を含有する、請求項1〜19のいずれかに記載の積層体。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれかに記載の積層体を含有する合わせガラス。
【請求項22】
請求項1〜20のいずれかに記載の積層体を含有する太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−6406(P2012−6406A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203129(P2011−203129)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【分割の表示】特願2010−547912(P2010−547912)の分割
【原出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】