説明

ポリビニルアルコールを基礎とする膜

本発明の主題は、膜の製造のためのシラン変性したポリビニルアルコールの使用において、このシラン変性したポリビニルアルコールが、
a)1〜15個のC原子を有する非分枝又は分枝カルボン酸の1種以上のビニルエステル及び次の一般式の化合物を含む群から選択される1種以上のエチレン性不飽和シラン化合物のラジカルにより開始した共重合、
CR2=CR−B−Si(OR′)3-n(R″)n(1)又はCR2=CRC(=O)−D−B−Si(OR′)3-n(R″)n(2)
[式中、
Bは、アリール−、ヘテロアリール−又は(CR2m−残基であり、この中では場合によって1以上の隣接してないCR2基がヘテロ原子によって置き換えられていることができる、
Dは、ヘテロ原子であり、
Rは、水素原子、アルキル−又はアリール残基又はヘテロ原子であり、これは場合によって水素原子又はアルキル−、アリール−残基で置換されており、
OR′は、アルコキシ−、アルキルカルボキシ−又はアリールカルボキシ−残基であり、
R″は、アルキル−又はアリール残基であり、そして
nは、0、1又は2を意味する、そして
mは0〜15を意味する]、及び
b)工程a)において得られるシラン変性したビニルエステル共重合体の引き続くけん化、によって得られることを特徴とする、使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜の製造のためのポリビニルアルコールの使用、膜の製造方法、並びに、これによって得られる膜、及び、混合物の分離のためのその使用に関する。
【0002】
膜は多孔質固形物質であり、混合物の分離のために使用される。膜−分離方法の利点は、これが低温、例えば室温でも実施でき、これによって、熱分離法、例えば蒸留、昇華又は結晶化に比較してエネルギー消費がより少なく、そして、分離すべき混合物が熱的により少なく負荷されることである。さらに、膜を用いて、熱的方法では可能でない分離が達成されることができ、というのも、例えばアゼオトロープの存在は蒸留による分離を、又は同形結晶形態の存在は再結晶化による分離を不可能にするからである。但し、寿命、分離能、流速、また膜の機械的特性並びにその製造に関連したコストに関する限定は問題を生じる。
【0003】
ポリビニルアルコール(PVA)又はポリビニルアセタート(PVAc)を基礎とする膜は既に長い間知られている。そして、PVA膜はマイクロ濾過及び限外濾過のために使用される(Chuang, Polymer, 2000, Volume 41, 5633〜5641頁)。JP-A 3030820は、酢酸ビニル及び場合によって更なるモノマー、例えばビニルオキシトリメチルシランから出発するシンジオタクティックなポリビニルアルコールの製造及び膜の製造のためのこの種のポリビニルアルコールの使用を記載する。EP-A 423949は、アゼオトロープな水/エタノール混合物の分離のための、PVAを基礎とする膜の使用を推奨する。この種の分離は、透析蒸発とも呼ばれる。PVAはその親水性ポリマー骨格のために、水−混合物の分離のための膜材料として特に適している。したがって、水/エタノール−混合物からは、膜−分離法の使用によって99質量%のエタノールが得られることができる。さらに、PVAは、少ないタンパク質吸着傾向によって特徴付けられ、これによって、いわゆる膜劣化(membrane fouling)、すなわち、有機汚染物質の膜への堆積は、減少されることができる。
【0004】
分離選択的PVA層は多孔質担体構造上に存在するか、又はPVAが自体で多孔質膜へと加工されていてよく、例えばこれは転相プロセスを用いて行われる。したがって、EP-A 96339には、多孔質ポリアクリルニトリル担体構造に設けられるPVA膜が記載される。GB-A 1325227には、転相プロセスに応じて製造された多孔質PVA膜が記載される。
【0005】
PVA膜の製造の流れにおいて、このために使用されるポリビニルアルコールは一般的に架橋される。これは例えば、ジアルデヒド、例えばグルタルアルデヒドを用いたアセタール化によって行われることができる。但し、このように得られる膜は、極めて限定された安定性しか有さず、というのも、相応するアセタールが酸性また塩基性条件下で加水分解されることが有り、これによって、相応する膜の適用領域は分離すべき溶液のpH値に関して著しく限定されるからである。代替的に、ジイソシアナート又は無水物、例えば無水マレイン酸を用いたポリビニルアルコールの架橋が行われることができる。しかし、この方式も、不満足な安定性を有する膜を生じる。架橋のための前述の試薬が毒性があり、そして、大工業的には手間のかかる保護措置を伴ってのみ取り扱われることができることも欠点である。さらに、このようにして得られるPVA膜は70℃超の温度では、又は高い水含有量を有する溶液中では強く膨潤し、これによって、このPVA膜の安定性、水−流速及び選択性は損なわれる。
【0006】
しかし、高い水含有量を有する混合物の分離のための膜の使用ではちょうど、70℃超の温度の適用によって空時収率及びプロセス効率が高められる。これを可能にするためには、例えばPVAとテトラエチルオルトシリカートとの架橋によるPVA膜の製造が推奨される(Karin KuI, Applied Polymer Science, 2004, Volume 94, 1304〜1315頁)。但し、このように得られたPVA膜もまだなお、加水分解に対して十分安定でない。加えて、膜の製造は極めて手間がかかり、というのも、このPVA膜の製造のための個々の出発材料は大抵は混合されず、この結果、PVA及びシリカートの相分離が起こり、最終的に、不均一な組成を有する膜が得られるからであり、これはその膨潤挙動及びその安定性に関して満足がいかない。
【0007】
したがって、ポリビニルアルコールを基礎とする膜の既知の好ましい特性を有するが、前述の欠点を有しない膜を提供することが課題であった。
【0008】
意外なことに、この課題は、1種以上のビニルエステルと、更に、少なくとも1つのアルコキシ−、アルキルカルボキシ−又はアリールカルボキシ基を有する1種以上のエチレン性不飽和シラン化合物から出発して製造が行われた、シラン変性したポリビニルアルコールを基礎とする膜によって解決された。
【0009】
本発明の主題は、膜の製造のためのシラン変性したポリビニルアルコールの使用において、このシラン変性したポリビニルアルコールが、
a)1〜15個のC原子を有する非分枝又は分枝カルボン酸の1種以上のビニルエステル及び次の一般式の化合物を含む群から選択される1種以上のエチレン性不飽和シラン化合物のラジカルにより開始した共重合、
一般式
【化1】

[式中、
Bは、アリール−、ヘテロアリール−又は(CR2m−残基であり、この中では場合によって1以上の隣接してないCR2基がヘテロ原子によって置き換えられていることができる、
Dは、ヘテロ原子であり、
Rは、水素原子、アルキル−又はアリール残基又はヘテロ原子であり、これは場合によって水素原子又はアルキル−、アリール−残基で置換されており、
OR′は、アルコキシ−、アルキルカルボキシ−又はアリールカルボキシ−残基であり、
R″は、アルキル−又はアリール残基であり、そして
nは、0、1又は2を意味する、そして
mは0〜15を意味する]、及び
b)工程a)において得られるシラン変性したビニルエステル共重合体の引き続くけん化、
によって得られることを特徴とする、使用である。
【0010】
本発明にとって本質的であるのは、シラン変性したポリビニルアルコールの製造のために、少なくとも1個のOR′基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和シラン化合物を使用し、そして、このシラン単位のケイ素原子を好ましくは炭素−炭素結合を介してシラン変性したポリビニルアルコールのポリマー鎖へと結合させていることにある。
【0011】
適したビニルエステルの例は、酢酸ビニル、ビニルプロピオナート、ビニル−2−エチルヘキサノエート、ビニルラウレート、1−メチルビニルアセテート、ビニルピバレート及び5〜15個の炭素原子を有するα位で分枝したモノカルボン酸のビニルエステル、例えばVeoVa9(登録商標)又はVeoVa10(登録商標)(Resolutions社の商品名)である。酢酸ビニルが特に好ましい。
【0012】
工程a)におけるシラン変性したビニルエステル−コポリマーの製造には、工程a)におけるモノマーの総量に対して、好ましくは50〜90Mol%、特に好ましくは60〜99Mol%、最も好ましくは80〜90Mol%のビニルエステルが使用される。
【0013】
エチレン性不飽和シラン化合物においては、好ましい残基Rは水素又は1〜12個のC原子を有するアルキル残基、特に水素又はメチル残基である。好ましい残基OR′はメトキシ−、エトキシ−、プロポキシ−、ブチルオキシ−又はアセトキシ−残基である。好ましい残基R″は、1〜12個のC原子を有するアルキル又はアリール残基、特にメチル−、エチル−、プロピル−又はフェニル−残基である。
【0014】
適したアリール又はヘテロアリール残基の例はフェニル−又はイミダゾール残基である。ヘテロ原子の例は、酸素、硫黄又はN−R基であり、その際残基Rは前述の意味合いをとることができる。
【0015】
nのために好ましい値は0又は1であり、nのために特に好ましい値は0である。mのために好ましい値は0〜3であり、mのために特に好ましい値は0である。
【0016】
適したシランのための例は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジエトキシメチルシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルジイソプロポキシメチルシラン、ビニルジメチルイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルジブトキシメチルシラン、ビニルジメチルブトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ガンマ−アクリル−又はガンマ−メタクリルオキシイソプロピルトリアルコキシシラン、ガンマ−メタクリルオキシメチルジ(アルコキシ)メチルシラン、ガンマ−メタクリルオキシジメチル(アルコキシ)シラン、アルファ−メタクリルオキシメチルトリ(アルコキシ)シラン、アルファ−メタクリルオキシメチルジ(アルコキシ)メチルシラン、アルファ−メタクリルオキシジメチル(アルコキシ)シランである。
【0017】
式(1)のシラン化合物が好ましい。特に好ましいシラン化合物は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン及びビニルトリブトキシシランである。
【0018】
好ましくは、工程a)におけるモノマーの総量に対して、0.1〜30Mol%、特に好ましくは5〜20Mol%、最も好ましくは10〜20Mol%のシラン化合物が使用される。
【0019】
工程a)において更なるモノマーとして付加的に、1〜15個のC原子を有するアルコールのメタクリル酸エステル及びアクリル酸エステル、オレフィン、ジエン、ビニル芳香族化合物及びビニルハロゲン化物を含む群からの1種以上のモノマーが使用されることができる。
【0020】
アクリル酸又はメタクリル酸のエステルの群からの適したモノマーの例は、炭素原子1〜15個を有する非分枝状又は分枝状のアルコールのエステルである。好ましいメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルは、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、プロピルアクリラート、プロピルメタクリラート、n−、イソ−、t−ブチルアクリラート、n−、イソ−、t−ブチルメタクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート並びにノルボルニルアクリラートである。アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、n−、イソ−、t−ブチルアクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート及びノルボルニルアクリラートが特に好ましい。好適なジエンの例は、1,3−ブタジエン及びイソプレンである。適したオレフィンの例は、エテン及びプロペンである。適したビニル芳香族化合物の例は、スチレン及びビニルトルエンである。適したビニルハロゲン化物の例は、塩化ビニル、塩化ビニリデン又はフッ化ビニルであり、好ましくは塩化ビニルである。
【0021】
更なるモノマーの割合は、工程a)におけるモノマーの総量に対して好ましくは0〜20Mol%である。
【0022】
場合によって、更に補助モノマーが、工程a)におけるモノマーの総量に対して、好ましくは0.01〜20Mol%の割合で含まれていることができる。例は、エチレン性不飽和モノ−及びジカルボン酸である。好ましくはクロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸及びマレイン酸である。更なる例は、エチレン性不飽和カルボン酸アミド及び−ニトリル、好ましくはN−ビニルホルムアミド、アクリルアミド及びアクリルニトリルである。更に好ましくは、環式アミド、例えばN−ビニルピロリドン、フマル酸及びマレイン酸のモノ−及びジエステル、例えばジエチル−、ジイソプロピルエステル及び無水マレイン酸、エチレン性不飽和スルホン酸又はその塩、好ましくはビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸でもある。更なるモノマーは、同様に、カチオン性モノマー、例えばジアリルアンモニウムクロリド(DADMAC)、3−トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリルアミドクロリド(MAPTAC)及び2−トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリラートクロリドも含む。更なる適した補助モノマーは、ビニルエーテル、ビニルケトン、更にビニル芳香族化合物であって場合によって含まれるヘテロ原子を有するものを含む。更なる同様に好ましい補助モノマーは、官能化された(メタ)アクリレート、特にエポキシ官能性の(メタ)アクリレート、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシドエーテル、ビニルグリシドエーテル又はヒドロキシアルキル官能性の(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は置換もしくは非置換のアミノアルキル(メタ)アクリレートである。同様に好ましいのは、後架橋性コモノマー、例えばアクリルアミドグリコール酸(AGA)、メチルアクリルアミドグリコール酸メチルエステル(MAGME)、N−メチロールアクリルアミド(NMA)、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチロールアリルカルバマート、アルキルエーテル、例えばイソブトキシエーテル又はN−メチロールアクリルアミドの、並びにN−メチロールメチルアクリルアミドの及びN−メチロールアリルカルバマートのエステルである。更なる適した補助モノマーは、複数回エチレン性不飽和のモノマーであり、例えばジビニルアジパート、ジアリルマレアート、アリルメタクリラート、ブタンジオールジアクリラート及びトリアリルシアヌラートである。
【0023】
シラン変性したビニルエステル共重合体は、慣用の重合方法に応じて入手でき、これは例えばDE-A 10140131又はDE-A 102004026609に記載されている。好ましくはこの重合は塊状で、懸濁液中で、エマルション中で又は特に好ましくは溶媒中で行われる。溶媒重合のために好ましい有機溶媒は、エステル、例えば酢酸メチルエステル及び酢酸エチルエステル、又は特に好ましくはアルコール、例えばメタノール、エタノール、n−又はイソ−プロパノール、n−又はt−ブタノールである。
【0024】
工程b)におけるけん化は、加水分解との概念でも知られており、自体公知の方式で、例えば、バンド−又はニーダー法に応じて、酸又は塩基の添加によってアルカリ性又は酸性において行われる。好ましくはこのけん化は塩基性において行われ、例えばアルカリ金属−又はアルカリ土類金属水酸化物又はアルコラート、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメタノラート又はリチウムメタノラートの添加によって行われる。特に好ましくはこのけん化はリチウムメタノラート又は水酸化ナトリウムを用いて行われる。好ましくはこのけん化は溶媒中で、特に水中で、1種以上のアルコール中で、又は水と1種以上のアルコールからの混合物中で、実施される。通常は、この塩基は、シラン変性されるビニルエステル−共重合体のエステル単位に対して1〜10Mol%の量で使用される。このけん化は、好ましくは20〜90℃の温度で行われる。加水分解後にこの溶媒は留去され、このシラン変性したポリビニルアルコールは粉末の形態で得られることができる。さらに、しかし、シラン変性したポリビニルアルコールも、けん化の1種以上の溶媒中で後加工されることができる。しかし、逐次的に第2の溶媒、好ましくは水を添加し、この間に第1の溶媒を留去し、その際、第2の溶媒中の又はここからの混合物中のシラン変性したポリビニルアルコールの溶液が得られることによって、溶媒交換が行われることもできる。
【0025】
完全けん化されたシラン変性したビニルエステル共重合体とは、この場合に、その加水分解度が≧96Mol%である重合体を指す。この加水分解度は、この場合に、シラン変性したビニルエステル共重合体のビニルエステル単位の割合を示し、これはけん化の流れにおいてビニルアルコール単位に移行されている。部分けん化したシラン変性したビニルエステル共重合体は、20Mol%より多くかつ96Mol%より少ない加水分解度を有するものが理解される。この部分−又は完全けん化されたシラン変性したビニルエステル共重合体は、好ましくは加水分解度50Mol%〜99.99Mol%、特に好ましくは70Mol%〜99.99Mol%、最も好ましくは90Mol%〜99.99Mol%を有する。
【0026】
工程b)においては、シラン変性したビニルエステル共重合体のシラン単位の加水分解可能なケイ素結合の好ましくは≦90%、特に好ましくは≦80%、特にとりわけ好ましくは≦70%、最も好ましくは≦50%(シラン化合物の加水分解可能なケイ素結合の総数に対して)が加水分解される。加水分解可能なケイ素結合は、本発明によれば、Si−OR′−結合であり、この加水分解によってSi−OH結合が形成される。
【0027】
このシラン変性されたポリビニルアルコールの粘度(DIN 53015, Hoepplerによる方法、水中4質量%、20℃)は、1mPa〜1200mPa、好ましくは1mPa〜100mPa、特に好ましくは1mPa〜40mPaである。この重合度は好ましくは少なくとも35、好ましくは少なくとも100、特に好ましくは少なくとも150である。
【0028】
本発明の膜の製造には、シラン変性したポリビニルアルコールは好ましくは1種以上の有機及び/又は1種以上の無機溶媒中の溶液の形で使用される。
【0029】
好ましい有機溶媒は、このためには炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、アルコール、ケトン、酸、エステル、窒素含有溶媒及び硫黄含有溶媒である。
【0030】
適した炭化水素の例は、ペンタン、ヘキサン、ジメチルブタン、ヘプタン、1−ヘキセン、1,5−ヘキサジエン、シクロヘキサン、テルペンチン、ベンゼン、イソプロピルベンゼン、キシレン、トルエン、ナフタレン、並びに、テトラヒドロナフタレンである。適したハロゲン化炭化水素の例は、フルオロホルム、ペルフルオロヘプタン、塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロ炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、塩化ペンチル、ブロモホルム、1,2−ジブロモエタン、ヨウ化メチレン、フロオロベンゼン、クロロベンゼン並びに1,2−ジクロロベンゼンである。適したエーテルの例は、ジエチルエーテル、ブチルエチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン、フラン並びに1,4−ジオキサンである。適したアルコールの例は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、ブチルグリコール、グリセロール、フェノール並びにm−クレゾールである。適したケトンの例は、アセトン、ジイソブチルケトン、ブタン−2−オン、シクロヘキサノン並びにアセトフェノンである。適した酸の例はギ酸及び酢酸である。適したエステルの例は、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸ブチルエステル、酢酸フェニルエステル、グリセロールトリアセタート、シュウ酸ジエチルエステル、ジオクチルセバケート、安息香酸メチルエステル、フタル酸ジブチルエステル並びにリン酸トリクレシルエステルである。適した窒素含有溶媒の例は、ニトロメタン、ニトロベンゼン、ブチロニトリル、アセトニトロル、ベンゾニトロル、マロノニトリル、ヘキシルアミン、アミノエタノール、N,N−ジエチルアミノエタノール、アニリン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピペラジン並びに3−ヒドロキシプロピオニトリルである。適した硫黄含有溶媒の例は、硫化炭素(Schwefelkohlenstoff)、メタンチオール、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド並びにチオフェンである。
【0031】
適した無機溶媒の例は、水、アンモニア、ヒドラジン及び二酸化硫黄である。
【0032】
好ましくはこのシラン変性されたポリビニルアルコールは溶媒混合物中で、特に好ましくは水性溶媒混合物中で溶解される。好ましい水性溶媒混合物の例は、水と1種以上の溶媒の混合物であり、この溶媒は、アミン、アルコール、アミド、エーテル及びスルホキシドを含む群から選択される。特に好ましい水性溶媒混合物の例は、水と1種以上の溶媒との混合物であり、この溶媒は、N−メチルピペラジン、アミノエタノール、N,N−ジエチルアミノエタノール、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン並びにジメチルスルホキシドを含む群から選択される。水の有機溶媒に対する体積比はこの混合物で、好ましくは10:1〜1:10、特に好ましくは10:1〜6:4である。
【0033】
最も好ましい溶媒混合物は、水とN−メチルピペラジン並びに1種以上の更なる溶媒(アミノエタノール、N,N−ジエチルアミノエタノール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドを含む群から選択される);水とN,N−ジエチルアミノエタノール並びに1種以上の更なる溶媒(ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドを含む群から選択される)、水とジメチルホルムアミド並びに1種以上の更なる溶媒(アミノエタノール及びジメチルスルホキシドを含む群から選択される)とからの混合物である。水、溶媒(N−メチルピペラジン、N,N−ジエチルアミノエタノール及びジメチルホルムアミドの群から)並びに更なる前述の溶媒の最も好ましい溶媒混合物の混合比は9:1:1〜1:2:3、特に好ましくは4:1:1〜1:2:2、最も好ましくは1:1:1である。
【0034】
前述の1種以上の溶媒中のシラン変性したポリビニルアルコールの溶液の製造のためには、この溶媒又は溶媒混合物が例えば装入され、このシラン変性したポリビニルアルコールが添加されることができる。好ましくはこのシラン変性したポリビニルアルコールが装入され、この溶媒又は溶媒混合物が添加される。特に好ましくはこのシラン変性したポリビニルアルコールが装入され、1種以上の有機溶媒中で溶解され、引き続き水と混合される。この溶媒中のシラン変性したポリビニルアルコールの溶解は、加熱により促進されることができる。好ましくはこの場合に温度10〜160℃、特に好ましくは30〜100℃、最も好ましくは40〜80℃である。
【0035】
このシラン変性したポリビニルアルコールの溶液は、シラン変性したポリビニルアルコールの含有量好ましくは1〜70質量%、特にとりわけ好ましくは2〜30質量%、最も好ましくは5〜10質量%を、シラン変性したポリビニルアルコールの溶液の質量に対して有する。
【0036】
このシラン変性したポリビニルアルコールの溶液は、1種以上の更なる添加剤、例えば無機塩又は有機ポリマーを含有できる。適した無機塩のための例は、アルカリ土類金属/アルカリ金属−ハロゲン、亜鉛又はカドミウム−塩、特にLiF、NaF、KF、LiCl、NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2、ZnCl2又はCdCl2である。有機ポリマーとして好ましくは水溶性ポリマーが使用され、これは例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール又はスルホン化ポリスチレンである。この添加剤を用いて、この膜の親水性又は疎水性が影響されることができる。
【0037】
この添加剤はシラン変性したポリビニルアルコールの溶液中で、このシラン変性したポリビニルアルコールの溶液の質量に対して好ましくは0.01〜50質量%、特に好ましくは0.1質量%〜15質量%、最も好ましくは1〜5質量%含まれている。好ましい溶液は、アルカリ土類金属−/アルカリ金属−ハロゲン化物、特に2質量%のLiCl、及びポリ(ビニルピロリドン)、特に3質量%のポリ(ビニルピロリドン)を含有する。
【0038】
このシラン変性したポリビニルアルコールの溶液は1種以上の添加物質を含むことができ、これは例えば一般式(3)又は(4)のアルコキシ官能性シランである
【化2】

[式中、
nは1、2、3又は4である、
mは0、1、2又は3である、
oは0、1、2又は3である、
但し、n、m及びoからの合計が4であるとの条件付きである]
又は
【化3】

[式中、
pは1、2又は3である、
qは0、1又は2である、
但し、p及びqからの合計は3である]、そして、
式中、
OR′及びR″は、既に記載の意味合いを有し、
Yは、OH官能基、場合によってハロゲン−、ヒドロキシル−、アミノ−、エポキシ−、ホスホナート−、チオール−、カルバマート−置換された炭素原子鎖であって1〜18個のC原子を有するものを意味し、その際、このアルキル残基は隣接してない酸素−、硫黄−又はNR基で中断されていてよく、かつ、
Xは、1〜18個の炭素原子を有する炭素原子鎖を意味し、その際、この炭素鎖は隣接してない酸素−、硫黄−、又はNR基によって中断されていてよい。
【0039】
式3及び4の適したアルコキシ官能性シランの例は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチル−トリメトキシシラン、メチル−トリエトキシシラン、エチル−トリメトキシシラン、エチル−トリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピル−ジエトキシメチルシラン、プロピル−ジメトキシメチルシラン、ジメチル−ジメトキシシラン、ジメチル−ジエトキシシラン、トリメチル−メトキシシラン、トリメチル−エトキシシラン、フェニル−トリメトキシシラン、フェニル−トリエトキシシラン;アミノ官能性シラン、例えばアミノプロピル−トリメトキシシラン、アミノプロピル−トリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピル−トリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピル−トリエトキシシラン、オルト−アミノフェニル−トリエトキシシラン、メタ−アミノフェニル−トリエトキシシラン、パラ−アミノフェニル−トリエトキシシラン、オルト−アミノフェニル−トリメトキシシラン、メタ−アミノフェニル−トリメトキシシラン、パラ−アミノフェニル−トリメトキシシラン、シクロヘキシルアミノプロピル−トリメトキシシラン、シクロヘキシルアミノプロピル−トリメトキシシラン、N,N−ジメチルアミノプロピル−トリメトキシシラン、N,N−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、アミノメチル−トリメトキシシラン、アミノメチル−メチルジメトキシシラン、アミノメチル−ジメチルメトキシシラン、アミノメチル−トリエトキシシラン、アミノメチル−メチルジエトキシシラン、アミノメチル−ジメチルエトキシシラン、シクロヘキシルアミノメチル−トリメトキシシラン、アニリノメトキシ−トリメトキシシラン、N−ピペラジノメチル−トリメトキシシラン、N−ピペラジノメチル−トリエトキシシラン、N−ピペラジノメチル−メチルジメトキシシラン、N−ピペラジノメチル−メチルジエトキシシラン、N−ピペラジノメチル−ジメチルメトキシシラン、N−ピペラジノメチル−ジメチルエトキシシラン、N,N−ジメチルアミノメチル−トリメトキシシラン、N−ベンズイミダゾリル−プロピル−トリメトキシシラン、N−ベンズイミダゾリルプロピル−トリエトキシシラン、N−イミダゾリル−トリメトキシシラン、N−イミダゾリル−トリエトキシシラン;エポキシ官能性シラン、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン又は2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン;クロロシラン、例えばクロロメチルジメチルメトキシシラン、クロロメチルメチルジメトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルジメチルエトキシシラン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、クロロプロピルジメチルメトキシシラン、クロロプロピルメチルジメトキシシラン、クロロプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルジメチルエトキシシラン、クロロプロピルメチルジエトキシシラン及びクロロプロピルトリエトキシシラン;イソシアナート官能性シラン、例えばメチルイソシアナート−トリメトキシシラン、メチルイソシアナート−トリエトキシシラン、メチルイソシアナート−ジメトキシメチルシラン、メチルイソシアナート−ジエトキシメチルシラン、メチルイソシアナート−メトキシジメチルシラン、メチルイソシアナート−エトキシジメチルシラン、プロピルイソシアナート−トリメトキシシラン、プロピルイソシアナート−トリエトキシシラン、プロピルイソシアナート−ジメトキシメチルシラン、プロピルイソシアナート−ジエトキシメチルシラン、プロピルイソシアナート−メトキシジメチルシラン及びプロピルイソシアナート−エトキシジメチルシラン;ビスアルコキシ−又はビスアセトキシシラン、例えばビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)メタン、ビス(メトキシジメチルシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)メタン、ビス(エトキシジメチルシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)エタン、ビス(メトキシジメチルシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)エタン、ビス(エトキシジメチルシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)オクタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)オクタン、ビス(メトキシジメチルシリル)オクタン、ビス(トリエトキシシリル)オクタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)オクタン、ビス(エトキシジメチルシリル)オクタン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)アミン、ビス(メトキシジメチルシリルプロピル)アミン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)アミン、及びビス(エトキシジメチルシリルプロピル)アミンを含む。
【0040】
この添加物質はシラン変性したポリビニルアルコールの溶液中に、このシラン変性したポリビニルアルコールの質量に対して、好ましくは≦50質量%、特に好ましくは0.1質量%〜20質量%、最も好ましくは0.1〜10質量%が含まれている。
【0041】
このシラン変性したポリビニルアルコールの溶液は更なる助剤を含有でき、これは例えばレベリング助剤、表面活性物質、付着促進剤、光保護剤、例えばUV吸収剤及び/又はラジカル捕捉剤、チクソトロープ剤、殺生物剤、例えば殺真菌剤(Fungizide)又は殺細菌剤、特にメチルイソチアゾロン又はベンズイソチアゾロン、並びに更なる固形物質及び充填物質である。
【0042】
場合によってこのシラン変性したポリビニルアルコールの溶液は、1種以上の架橋触媒を含有する。適した架橋触媒の例は、有機スズ化合物、例えばジブチルスズジラウラート、ジオクチルスズジラウラート、ジブチルスズジアセチルアセトナート、ジブチルスズジアセタート又はジブチルスズジオクトアート;有機チタナート、例えばチタン(IV)イソプロピラート;鉄(III)化合物、例えば鉄(III)−アセチル−アセトナート;アミン、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−アザ−ビシクロ[4.3.0]−ノナ−5−エン、N,N−ビス−(ジメチル−2−アミノ−エチル)−メチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチル−フェニルアミン;有機又は無機ブレンステッド酸、例えば酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、リン酸又はそのモノ−又はジエステル、例えばブチルホスファート、イソプロピルホスファート、ジブチルホスファート;酸クロリド、例えば塩化ベンゾイル;有機又は無機ブレンステッド塩基、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリアルキルアミン、例えばトリメチルアミンである。好ましくは塩酸である。
【0043】
架橋触媒は、シラン変性したポリビニルアルコールの質量に対して0〜10質量%、特に好ましくは0.01〜10質量%が使用される。
【0044】
本発明の更なる一主題は、このシラン変性したポリビニルアルコールの1種以上の溶液を基材に設け、並びに、この設けられたシラン変性したポリビニルアルコールを乾燥及び架橋することによって得られる平膜である。
【0045】
本発明の更なる一主題は、このシラン変性したポリビニルアルコールの1種以上の溶液を基材に設け、並びに、この設けられたシラン変性したポリビニルアルコールを乾燥及び架橋することによる平膜の製造方法である。
【0046】
この基材は好ましくは、金属、金属酸化物、ポリマー又はガラスを含む群からの1種以上の物質を含む。この基材は、この場合に、プレート、シート、織られたか又は好ましくは織られていない網の形において又は特に好ましくは織られていないフリースの形で使用されることができる。
【0047】
金属を基礎とする基材は例えばチタン、鉄、銅、アルミニウム又は前述の金属を含む合金を含む。金属酸化物を基礎とする基材は、例えば、ケイ素−、アルミニウム−、ジルコニウム−又はチタン酸化物又はこの金属酸化物の混合物を含む。ポリマーを基礎とする基材は、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボナート、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリビニルクロリド、セルロースアセタート、ポリビニリデンフルオリド、ポリエーテルグリコール、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリアリールエーテルケトン、ポリアクリルニトリル、ポリメチルメタクリラート、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボナート、ポリエチレン又はポリプロピレンを含む。好ましくはこの場合に、少なくとも80℃ガラス転移温度Tgを有するポリマーである。ガラスを基礎とする基材は例えば石英ガラス、鉛ガラス、フロートガラス又はソーダ石灰ガラスを含む。
【0048】
好ましい網−又はフリース−基材は、ガラス−、炭素−、アラミド−、ポリエステル−、ポリエチレン−、ポリプロピレン−、ポリエチレン/ポリプロピレン−コポリマー−又はポリエチレンテレフタラート−繊維を含む。
【0049】
この基材の層厚は好ましくは≧1μm、特に好ましくは≧50μm、特にとりわけ好ましくは≧100μmであり、好ましくは≦2mm、特に好ましくは≦600μm、特にとりわけ好ましくは≦400μmである。基材の層厚に関する最も好ましい範囲は、この前述の値から作成できる範囲である。
【0050】
基材は、好ましくは多孔質である。多孔質基材は、好ましくは1nm〜5μm、特に好ましくは5nm〜500nmの孔直径を有する。多孔質基材とは、好ましくはポリマー又は金属酸化物である。多孔質基材は好ましくはアシンメトリーな孔構造を有し、すなわち、この孔はこの多孔質基材の断面(Querschnitt)に沿って異なる直径を有する。多孔質基材としてマイクロ濾過−、限外濾過−又はナノ濾過膜が特に適している。
【0051】
特に好ましい基材はフリースからなり、これは付加的にその表面に多孔質コーティングを有する。この多孔質コーティングは好ましくは、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、セルロースアセタート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド又はポリウレタンからなる。この多孔質コーティングの厚さは好ましくは少なくとも20μm、特に好ましくは少なくとも150μm、特に好ましくは少なくとも500μm、特に50〜150μmである。
【0052】
この基材の表面は更なる物質で、例えばレベリング助剤、表面活性物質、付着促進剤又は光保護剤、例えばUV吸収剤及び/又はラジカル捕捉剤で変性されていることができる。この基材はさらにオゾン又はUV光で前処理されていることができる。
【0053】
このシラン変性したポリビニルアルコールの溶液は好ましくは≧0℃、特に好ましくは20〜60℃、最も好ましくは20〜50℃の温度でこの基材に設けられる。好ましい一実施態様において、この基材は20〜25℃の温度で、このシラン変性したポリビニルアルコールの溶液は40〜60℃の温度で熱処理される。
【0054】
このシラン変性したポリビニルアルコールの溶液を基材に設けることは好ましくは、ドクターブレードを用いて又はメニスカスコーティング、キャスティング、吹付け、シルクスクリーン、凹版又はスピンオンディスクによって行われる。このようにして設けられた溶液は以下、シラン変性したポリビニルアルコールフィルムとも呼ばれ、かつ、好ましくは≧1μm、特に好ましくは≧20μm、特に≧50μm、好ましくは≦2000μm、特に好ましくは≦500μm、特に≦300μmのフィルム厚を有する。フィルム厚に関する最も好ましい範囲は、この前述の値から作成できる範囲である。
【0055】
シラン変性したポリビニルアルコールフィルムを備える基材は以下、膜−前駆体とも呼ばれ、乾燥及び架橋によって(変法A))又は転相プロセス後に(Loeb-Sourirajanプロセスとの名称でも知られている(変法B)))平膜へと更に加工されることができる。架橋の流れにおいて、このシラン変性したポリビニルアルコールはそのシラン単位を介して一般的にC−Si−O−Si−C結合を形成する。乾燥によって揮発性成分、例えば溶媒が、蒸発によって通常は部分的に又は完全に取り除かれる。
【0056】
変法A)ではこの膜−前駆体の乾燥及び架橋が好ましくは20〜200℃、特に好ましくは20〜150℃の温度で行われる。この乾燥及び架橋は任意の圧力で、例えば負圧で、過圧で又は常圧で実施されることができる。この乾燥及び架橋の期間は、架橋触媒が添加されているかどうかに、並びに、この架橋触媒の種類及び使用量に依存し、かつ、通常は1分間〜数時間、好ましくは〜24時間まで、特に好ましくは〜13時間までである。
【0057】
このように得られる生成物が、酸又は酸無水物、例えば硫酸、塩酸、無水マレイン酸、臭化水素又はその混合物を含有する雰囲気に曝露されることによって、場合によって後架橋が実施されることができる。後架橋は、ガンマ線を用いた照射によって行われることもできる。このようにして、この膜の安定性及び選択性は更に改善されることができる。
【0058】
乾燥及び架橋に続き、この場合によって使用される架橋触媒は不活化されることができ、これは例えば触媒毒、例えば当業者に知られている酸又は塩基の添加によって行われる。
【0059】
このようにして得られる生成物は、直接的に、混合物の分離のための膜として使用されることができる。代替的に、このようにして得られた乾燥されかつ架橋されたシラン変性したポリビニルアルコールフィルムは基材から取り除かれ、場合によって他の基材、例えばフリースに、好ましくは高められた温度及び圧力の適用下で、例えば加熱プレス又は積層装置中で設けられることができる。他の基材に対する付着を改善するために、付着促進剤が使用されることができる。
【0060】
変法B)においてこの膜は転相プロセスに応じて製造される。このために膜−前駆体がまず沈殿媒体中に添加される。この沈殿媒体は好ましくは、シラン変性したポリビニルアルコールの溶解性が20℃で≦5質量%である液体である。
【0061】
好ましい沈殿媒体は、アルコール、ケトン又は窒素含有溶媒を含む群から選択される1種以上の溶媒である。特に好ましくは、1種以上の溶媒は、アルコール、例えばメタノール、エタノール、ブタノール又はイソプロパノール、窒素含有溶媒、例えばアセトニトリル又はN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、又はケトン、例えばアセトンを含む群から選択される。最も好ましくはイソプロパノール又はアセトンである。この沈殿媒体のpH値は好ましく≧8又は≦6である。このpH値の調節は当業者に知られている酸、塩基又は緩衝液を用いて行われることができる。
【0062】
この沈殿媒体は、好ましくは0〜80℃、特に好ましくは0〜30℃、最も好ましくは23〜26℃の温度を有する。
【0063】
この沈殿媒体は更なる成分、例えば無機塩、特に硫酸ナトリウムを含有できる。この他に、この沈殿媒体は、更に上記で添加剤、添加物質又は助剤としてシラン変性したポリビニルアルコール溶液のために説明されている更なる成分を含むこともできる。さらに、この沈殿媒体は表面活性物質を含有できる。沈殿媒体中での前述の更なる成分の濃度は、沈殿媒体の全質量に対して好ましくは10質量%までである。
【0064】
この膜−前駆体は沈殿媒体中への浸漬前に、好ましくは少なくとも10℃、特に好ましくは25〜150℃、最も好ましくは20〜100℃の温度で予備乾燥されることができる。この予備乾燥は好ましくは10分間まで、特に好ましくは7秒〜10分、最も好ましくは10〜60秒かかる。
【0065】
この膜−前駆体は好ましくは10s〜20h、特に好ましくは少なくとも30s〜60分、最も好ましくは3〜7分間沈殿媒体中に残存する。
【0066】
引き続きこのように処理された膜−前駆体をこの沈殿媒体から取り出し、変法A)として既に記載の条件下で乾燥及び架橋に供する。このようにして最終的に膜が得られる。
【0067】
この転相プロセスに応じて製造される膜は一般的に多孔質構造を有する。この自由体積は好ましくは5〜90Vol%、特に好ましくは20〜80Vol%、最も好ましくは35〜75Vol%である。
【0068】
本発明の更なる一主題は、このシラン変性したポリビニルアルコールの溶液の紡糸、並びに、このシラン変性したポリビニルアルコールの乾燥及び架橋によって得られる中空繊維膜である。
【0069】
本発明の更なる一主題は、このシラン変性したポリビニルアルコールの溶液の紡糸、及び引き続く乾燥及び架橋による中空繊維膜の製造方法である。
【0070】
紡糸とは当業者は、中空繊維紡糸ノズルを通じてポリマー溶液がノズル噴霧(verduesen)される、繊維の製造を理解する。中空繊維は当業者に自体公知であり、一般的にシリンダー形状の繊維であり、これは断面において1以上の通過可能な中空室を有し、この種の中空室はカナルとも呼ばれる。
【0071】
この中空繊維の外側直径は好ましくは10μm〜5mm、特に好ましくは100μm〜2mm、最も好ましくは300μm〜1000μmである。この中空繊維の内側直径、すなわち、このカナルの直径は、好ましくは8μm〜4.5mm、特に好ましくは80μm〜1.9mm、最も好ましくは280μm〜900μmである。この中空繊維は任意の長さであることができる。
【0072】
この中空繊維膜の製造の間には、この中空繊維の中空室中に通常はガス、ガス混合物又は液体、好ましくは空気、特に圧縮空気、又は窒素、酸素、二酸化炭素、水又は有機溶媒、例えば炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、アルコール、ケトン、酸、エステル、窒素含有溶媒又は硫黄含有溶媒が存在する。特に好ましくはこの中空室はトルエンで充填されている。このようにしてこの中空繊維の中空室の崩壊が妨げられることができる。さらに、このようにして、このシラン変性したポリビニルアルコールの架橋がこの中空繊維の内側で又は外側で、しかし、この中空繊維の中で行われるように制御されることができる。
【0073】
この紡糸は好ましくは20〜150℃の温度で行われる。この中空繊維の製造の場合には場合によっては1以上の更なるポリマー層(Polymerlage)が共紡糸されることができる。このようにして多層の中空繊維膜が得られる。
【0074】
このようにして得られた中空繊維は膜−前駆体とも呼ばれ、これは乾燥及び架橋(変法A))によって又は転相プロセスに応じて(変法B))中空繊維膜へと後加工されることができ、これは平膜について上記したとおりである。
【0075】
本発明による膜の、この架橋したシラン変性したポリビニルアルコール含有層は、前述の層の全質量に対して、好ましくは少なくとも50質量%が、特に好ましくは少なくとも80質量%が、特にとりわけ好ましくは少なくとも90質量%が、最も好ましくは少なくとも95質量%が、この架橋したシラン変性したポリビニルアルコールからなる。
【0076】
この膜中では、使用されるシラン変性したポリビニルアルコールのケイ素原子の総数に対して、当初使用されるシラン変性したポリビニルアルコールのケイ素原子の好ましくは10〜90%が、特に好ましくは60〜90%が架橋されている。このケイ素原子の架橋とは一般的にC−Si−O−Si−C結合の形成が理解される。この架橋の範囲は、この加水分解可能なケイ素結合の数を介して、すなわち、このシラン単位の架橋可能な基を介して、又は、このシラン変性したポリビニルアルコールのシラン単位の割合を介して制御されることができる。
【0077】
本発明による膜は、シラン変性したポリビニルアルコールを基礎とする層厚、好ましくは0.1〜2000μm、特に好ましくは1〜750μm、特にとりわけ好ましくは5〜100μm、最も好ましくは5〜20μmを有する。
【0078】
このようにして得られた膜は、混合物の分離のために直接的に使用されることができるか、又は、更なる、慣用の後処理に供されることができ、これは例えば熱処理、高圧プラズマ又は低圧プラズマを用いた処置、ガンマ−、レントゲン−、マイクロ波−又は化学線での照射、又は、表面改質、例えば表面コーティングである。
【0079】
この膜の表面コーティングは好ましくは10nm〜500μm、特に好ましくは100nm〜50μm、最も好ましくは500nm〜10μmの厚さを有する。コーティングには、例えば、ポリマー、例えばポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボナート、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、シリコーン、ポリジメチルシリコーン、ポリメチルフェニルシリコーン、ポリメチルオクチルシリコーン、ポリメチルアルキルシリコーン、ポリメチルアリールシリコーン、ポリビニルクロリド、ポリエーテルグリコール、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリアリールエーテルケトン、ポリアクリルニトリル、ポリメチルメタクリラート、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボナート、ポリエチレン又はポリプロピレンが適している。このポリマーは、通常の方法を用いてこの膜に設けられることができ、これは例えば積層、スプレー、ドクターコーティング、又は接着によって設けられることができる。好ましくはこの種のコーティングは、孔10nm〜5μmを有する膜に設けられる。
【0080】
本発明による膜は、膜を用いた混合物の分離のための全ての慣用の方法のための使用に適し、これは例えば逆浸透、ガス分離、透析蒸発、ナノ濾過、限外濾過又はマイクロ濾過である。本発明による膜を用いて、固体−固体、ガス状−ガス状、固体−ガス状又は液状−ガス状、特に液状−液状及び液状−固体混合物が分離されることができる。本発明による方法に応じて、コンパクトな構造を有する膜か、又は孔構造を有する膜も入手できる。
【0081】
本発明による膜は、好ましい適用技術的特性によって混合物の分離のための助剤としての使用に傑出している。そして、本発明による膜は、溶媒、例えば水の存在下で、自体で70℃を超える温度で、従来の膜と比較して顕著により少ない規模において膨潤する。本発明による膜は、比較的高い加水分解安定性により特徴付けられる。本発明による膜は、水に対する高くかつ選択的な透過性、エタノール−水−混合物のより良好な分離により、分離すべき混合物についての高い分離能、分離選択性及び高いスループットにより優れている。
【0082】
本発明による膜は、特に水性混合物の精製に適している。したがって、本発明による膜は高い分離能を、水/エタノール−、水/イソプロパノール−、水/メタノール−、水/酢酸−及び水/有機エステル−混合物の分離で、また同様に、有機溶媒から構成される混合物、例えばトルエン/アセトン−又はジクロロメタン/エタノール−混合物の分離でも示す。本発明による膜は、燃料、例えばガソリン、バイオエタノール又はディーゼル燃料からの水の除去のためにも適している。この場合に、膜はその少ない場所要求のために車両(Fahrzeug)にも組み込まれる。本発明による膜の更なる使用領域は、蒸気透過設備としてエタノール/水混合物の分離のため又は排水からの揮発性有機汚染物質(略してVOC(volatile organic Compounds)としても知られている)の分離のため、例えばベンゼン、アセトン、イソプロパノール、エタノール、メタノール、キシレン、トルエン、塩化ビニル、ヘキサン、アニリン、ブタノール、アセトアルデヒド、エチレングリコール、DMF、DMAC、メチル−エチル−ケトン並びにメチル−イソブチル−ケトンの分離のためである本発明による膜は、溶解した物質、NaCl、MgCl2又はCaCl2の、水、例えば海水、汽水、地表水(Oberflaechenwasser)、純水又は工業排水からの分離にも使用されることができる。この膜は、この場合に、溶解した塩の所望の維持も、また同様に高い流れ輸送速度も示す。特に好ましくは、飲料水獲得のため、海水、汽水及び地表水を脱塩するための逆浸透のための膜の使用である。本発明による膜は、電着塗装の清浄化のため、例えば自動車産業、タンパク質精製、油−水−エマルションの精製において、例えば加工品(Werkstueck)の冷却及び潤滑のために、並びに、粒子形状汚染物質、例えばラテックス残留物を有する排水の工業的水後処理にも適する。更なる典型的適用は、細菌又はウィルスの水からの除去、製薬学的製品の除菌(sterile)濾過、ワイン及びビールの除菌並びに電子産業のための粒子不含純水の製造である。本発明による膜の更なる適用は、例えばMembrane Technologie and Applications, second Edition, R. W. Baker, New York, Wiley, 2004に記載されている。
【0083】
この膜、すなわち、平膜や中空繊維膜は、流通している膜モジュールへと使用されることができ、例えば中空繊維モジュール、スパイラルに編まれたロールモジュール(spiralgewundenen Wickelmodul)、プレート−モジュール、クロス−フロー−モジュール又はデッドエンドモジュールへと使用されることができる。
【0084】
次の例は、本発明をさらに説明するために役立つが、本発明を何ら限定するものではない。
【0085】
他のことが記載されていない限りは、全ての圧力は0.10MPa(abs.)であり、全ての温度は20℃である。
【0086】
シラン変性したビニルエステル−コポリマーの製造:
(コポリマー1):
錨型撹拌機及び還流冷却器を備えた1000mlの重合反応器(無圧)中に、メタノール300g、酢酸ビニル(VAc)174.6g、ビニルトリメトキシシラン(VTMO)60.2g及びt−ブチルペルオキシピバレート(脂肪族中75質量%、半値時間74℃で1時間)21.8gを装入する。この全バッチを反応器中で60℃に加熱し、420分間この温度で維持する。引き続き揮発性成分を回転蒸発器(60℃、1mbar)で除去する。
固形樹脂の分析:
変換率:>99質量%(使用されるモノマーVAc及びVTMOの量に対して);Mw(GPC、溶出剤THF、ポリスチレン標準)13300g/mol、Mn12400g/mol、分散度(Mw/Mn)1.1;ガラス転移温度(DSC測定から)13℃。
【0087】
シラン変性したポリビニルアルコールの製造:
Si−PVOH1:(メタノール中):
還流冷却器を備えた1000mlの丸底フラスコ中で、メタノール456g中にコポリマー145.7gを70℃の温度で溶解した。引き続きリチウムメタノラート(メタノール中75質量%)4.6gを計量供給し、次いで60分間60℃で撹拌した。この後で、逐次メタノール交換を実施し、これは酢酸又は酢酸エステルをこのバッチから取り除くためである。この部分けん化したポリマーはメタノール交換に関する反応後に、固形物質含有量7.2質量%を有した白色溶液であった。
この溶液は、室温での数週間にわたる傑出した貯蔵安定性により優れている。
シラン変性したポリビニルアルコールの分析:
固形物質含有量:7.2質量%(メタノール溶液)、
けん化度VZ:228mgKOH/g。
【0088】
Si−PVOH2:(水溶液中):
還流冷却器を備えた1000mlの丸底フラスコ中に、実施例1で製造したポリマー51.0gをメタノール510g中に温度80℃で溶解した。これに続き、リチウムメタノラート(メタノール中75質量%)5.1gをこのバッチに計量供給し、1h60℃で撹拌した。ゲル点に到達後、この溶媒メタノールを逐次このバッチから留去し、同じ量のメタノールで置き換え、これは例えば酢酸又は酢酸メチルエステルの残分を除去するためである。これに続き、メタノールの主たる部分を逐次水により70℃及び300barで置き換える。数週間にわたり安定である水溶液を得る。
シラン変性したポリビニルアルコールの分析:
固形物質含有量:4質量%(水溶液)、
けん化度:41mgKOH/g。
【0089】
膜の製造:
実施例1:Si−PVOH1からの固形材料(Vollmaterial)からの膜の製造:
Si−PVOH1をメタノールで8.5質量%の固形含有量に調整する。引き続き、この溶液7.5gを100μlのHCl10質量%と混合し、20s撹拌する。この溶液をポリプロピレンシャーレに注ぎ、第1工程において室温で10分間乾燥させ、これに続き60℃で10h乾燥させ、引き続き100℃で2h乾燥させる。
約20μmの層厚を有する高透明性かつフレキシブルな膜を得る。
【0090】
実施例2:Si−PVOH1からの複合材構造を有する膜の製造:
Si−PVOH1をメタノールで8質量%の固形含有量に調整する。引き続き、この溶液7.5gを100μlのHCl10質量%と混合し、1min撹拌する。この溶液の一部を限外濾過膜(タイプ:HT450、Tuffryn(登録商標)、PaIl社、面積50cm2、孔直径0.45μm、材料:ポリスルホン)に注ぎ出した。これに続き、この複合材膜を室温で乾燥させ、60℃で2h、そして更に2h120℃で乾燥させる。
閉鎖された(geschlossen)分離選択層を有する複合材膜が得られ、その際、この完全に閉鎖された、欠陥のない、そしてフレキシブルな分離選択層は前記限外濾過膜と固く結合している。この選択層の層厚は約10μmである。
【0091】
実施例3:Si−PVOH2からの多孔質膜の製造:
Si−PVOH2を水及びNMPで、固形物含有量10質量%(水/NMP混合比80/20を有する溶液)に調整する。これに続き、この溶液をガラスプレートにチャンバードドクターブレード(ドクターブレード高さ300μm)を用いてドクターブレード塗布し、2分間アセトン充填した転化桶(Inversionsbecken )中に浸漬する。
この後で、この膜を空気乾燥させ、このガラスプレートから取り除くことができる。熱的後処理のためには、この多孔質膜を60℃で8h、そして更なる2h120℃で乾燥させる。
ミルクのように濁っており、かつフレキシブルな膜が得られ、これは走査電子顕微鏡において断面が異方性の構造を有する。
この膜は表面に孔<1μmを提供した。
【0092】
比較例4:ポリビニルアルコールからの多孔質膜の製造:
ポリビニルアルコール(粘度3.0mPas(Hoepplerによる)、けん化度VZ14mgKOH/g;このポリビニルアルコールはシラン単位を含まない)から、80/20の水/NMP混合比を有する10質量%溶液を製造する。これに続き、この溶液をガラスプレートにチャンバードドクターブレード(ドクターブレード高さ300μm)を用いてドクターブレード塗布し、アセトン充填した転化桶中に浸漬する。
多孔質膜構造の形成と共に相分離が起こり、これは、透明からミルク状への色変更により表される。
この後で、この膜を空気乾燥させ、このガラスプレートから取り除く。熱的後処理のためには、この多孔質膜を60℃で8h、そして更なる2h120℃で乾燥させる。
ミルクのように濁っており、かつフレキシブルな膜が得られ、これは走査電子顕微鏡において断面が異方性の構造を有する。
【0093】
比較例5:アルデヒド架橋を有するコンパクトなPVA膜の製造:
10質量%のポリビニルアルコールの固形物質含有量を有する水溶液9g(粘度(Hoepplerによる)3.0mPas、VZ14mgKOH/g)をグルタルアルデヒド0.5g及び10質量%のHCl0.1gと混合し、丸いポリプロピレンシャーレ中に注ぐ。この架橋を実施例1〜2と同様に60℃で2h、引き続き2h120℃で行う。
このPVA膜は、この製造後にこのポリプロピレンシャーレから取り出される。
【0094】
実施例3及び比較例4からの多孔質膜の試験:
実施例3又は比較例4からの膜を限外濾過試験状況においてデキストラン試験溶液を用いて試験規定ASTM E-1343-90に詳細に応じて試験した。
【0095】
実施例3からの本発明による膜では、このデキストランが分離された。この膜はこの条件下で安定であった。
【0096】
比較例4からの膜は、これに対して、水性試験媒体中でより短い期間後に溶解した。
【0097】
ここから、ポリビニルアルコールから構成される本発明によらない膜の不十分な加水分解抵抗性が明らかになる。
【0098】
安定性検査:
様々な膜が透析蒸発セル中の条件下で耐えるかどうかを試験するために、この膜を試験溶液(エタノール/水混合物、70/30)中で6h80℃の温度で貯蔵した。
【0099】
これに続き、この膜の質量増加及び体積変化を測定した。この3つの膜の試験結果は第1表に要約されている。
【0100】
第1表:安定性検査からの結果:
【表1】

【0101】
第1表から認識できるとおり、本発明による膜(実施例1及び2)は所望の安定性を有し、その一方で従来の膜(比較例5)は試験媒体中で極めて強く膨潤し、その幾何学的形態及び機械的安定性を失う。
【0102】
本発明による膜は、これに対して、傑出した形態安定性及び十分な膨潤を示す。
【0103】
透析蒸発試験状況における検査:
実施例1、2又は比較例5からの膜を透析蒸発試験セル中で使用し、分離能を測定した。この試験条件は3つ全ての膜で一定に維持された(試験媒体:エタノール/水90/10又は70/30、温度:70℃、真空:透過物側100mbar)。
【0104】
この膜の結果を、第2表に要約する。この透過物は、この場合に、膜を通じて流過する試験媒体の割合である。これに対して残留物は、膜を通じて流過しない試験媒体の割合である。
【0105】
第2表:膜4、5及び7の透析蒸発検査の結果:
【表2】

【0106】
本発明による膜(実施例1及び2)が、従来の膜(比較例5)に比較して極めてより高い清浄化を引き起こすことが第2表から明らかである。更に、本発明による膜では、同様に、高い水割合を含む混合物も分離できる。従来の膜(比較例5)はこの条件で極めて強く膨潤し、低い機械的負荷能のために裂ける。更に、比較例5からの膜で達成される流速は顕著により低かった、というのも、この膜は強く膨潤し、これによって、本発明による膜に比較して顕著により高い輸送バリアーを構築していたからである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜の製造のためのシラン変性したポリビニルアルコールの使用において、このシラン変性したポリビニルアルコールが、
a)1〜15個のC原子を有する非分枝又は分枝カルボン酸の1種以上のビニルエステル及び次の一般式の化合物を含む群から選択される1種以上のエチレン性不飽和シラン化合物のラジカルにより開始した共重合、
一般式
【化1】

[式中、
Bは、アリール−、ヘテロアリール−又は(CR2m−残基であり、この中では場合によって1以上の隣接してないCR2基がヘテロ原子によって置き換えられていることができる、
Dは、ヘテロ原子であり、
Rは、水素原子、アルキル−又はアリール残基又はヘテロ原子であり、これは場合によって水素原子又はアルキル−、アリール−残基で置換されており、
OR′は、アルコキシ−、アルキルカルボキシ−又はアリールカルボキシ−残基であり、
R″は、アルキル−又はアリール残基であり、そして
nは、0、1又は2を意味する、そして
mは0〜15を意味する]、及び
b)工程a)において得られるシラン変性したビニルエステル共重合体の引き続くけん化、
によって得られることを特徴とする、使用。
【請求項2】
エチレン性不飽和シラン化合物が、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジエトキシメチルシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルジイソプロポキシメチルシラン、ビニルジメチルイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルジブトキシメチルシラン、ビニルジメチルブトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ガンマ−アクリル−又はガンマ−メタクリルオキシイソプロピルトリアルコキシシラン、ガンマ−メタクリルオキシメチルジ(アルコキシ)メチルシラン、ガンマ−メタクリルオキシジメチル(アルコキシ)シラン、アルファ−メタクリルオキシメチルトリ(アルコキシ)シラン、アルファ−メタクリルオキシメチルジ(アルコキシ)メチルシラン及びアルファ−メタクリルオキシジメチル(アルコキシ)シラン、を含む群から選択されることを特徴とする請求項1記載のシラン変性したポリビニルアルコールの使用。
【請求項3】
工程a)において、工程a)におけるモノマーの総量に対して、0.1〜30Mol%のエチレン性不飽和シラン化合物を使用することを特徴とする請求項1又は2記載のシラン変性したポリビニルアルコールの使用。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項記載のシラン変性したポリビニルアルコールの1以上の溶液を基材に設け、並びに、この設けたシラン変性したポリビニルアルコールを乾燥及び架橋することによって得られる平膜。
【請求項5】
請求項1から3までのいずれか1項記載のシラン変性したポリビニルアルコールの溶液を紡糸し、並びに、このシラン変性したポリビニルアルコールを乾燥及び架橋することによって得られる中空繊維膜。
【請求項6】
使用されるシラン変性したポリビニルアルコールのケイ素原子の総数に対して、この当初使用されるシラン変性したポリビニルアルコールのケイ素原子の10〜90%が架橋していることを特徴とする請求項4又は5記載の膜。
【請求項7】
この膜の、架橋したシラン変性したポリビニルアルコール含有層は、前述の層の総質量に対して少なくとも50質量%が、架橋したシラン変性したポリビニルアルコールからなることを特徴とする請求項4又は6記載の膜。
【請求項8】
α)請求項1から3までのいずれか1項記載のシラン変性したポリビニルアルコールの1種以上の溶液を基材に設け、
β)場合によって転相プロセスを実施し、そして
γ)このシラン変性したポリビニルアルコールを引き続き乾燥及び架橋する
ことによる、請求項4、6又は7記載の平膜の製造方法。
【請求項9】
この基材が、金属、金属酸化物、ポリマー又はガラスを含む群から選択される1種以上の物質を含むことを特徴とする請求項8記載の平膜の製造方法。
【請求項10】
α)請求項1から3までのいずれか1項記載のシラン変性したポリビニルアルコールの溶液を紡糸し、
β)場合によって転相プロセスを実施し、そして
γ)引き続き乾燥及び架橋する
ことによる請求項5から7までのいずれか1項記載の中空繊維膜の製造方法。
【請求項11】
シラン変性したポリビニルアルコールの溶液が工程α)において1種以上の有機溶媒及び/又は1種以上の無機溶媒を含むことを特徴とする請求項8から10までのいずれか1項記載の膜の製造方法。
【請求項12】
転相プロセスβ)の際に工程α)からの生成物が沈殿媒体中に添加されることを特徴とする請求項8から11までのいずれか1項記載の膜の製造方法。
【請求項13】
この沈殿媒体が、アルコール、ケトン又は窒素含有溶媒を含む群から選択される1種以上の溶媒を含むことを特徴とする請求項12記載の膜の製造方法。
【請求項14】
工程γ)においてこの乾燥及び架橋が20〜200℃の温度で、好ましくは1分から数時間にわたり実施されることを特徴とする請求項8から13までのいずれか1項記載の膜の製造方法。
【請求項15】
混合物の分離のための請求項4又は5記載の膜の使用。

【公表番号】特表2012−522082(P2012−522082A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502573(P2012−502573)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053756
【国際公開番号】WO2010/112372
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】