説明

ポリビニルアルコールフィルムの染色方法と装置及び偏光フィルムの製造方法と装置並びに偏光フィルムと偏光板

【課題】 液晶ディスプレー用偏光フィルムの基材としてのポリビニルアルコールフィルム(PVAフィルム)に染色を施す際に認められる染色ムラを極小化するとともに、皺などの不良部の発生を防止する。
【解決手段】 染色槽11の染色液12中に設置する複数のガイド手段を、PVAフィルム10対向部に軸周りと軸方向に間隔をおいて多数の染色液吐出孔17を形成するとともに両端部を低加圧染色液供給管18に固定した低加圧染色液吐出シリンダ16で構成するとともに、PVAフィルム10の案内方向に順次下部と上部に千鳥状に配置して、PVAフィルム10を順次表面と裏面が対向するように千鳥状に転向案内する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶ディスプレー(LCD)の主要部材である偏光フィルム(偏光子)の製造の際に、基材としてのポリビニルアルコールフィルム(以下「PVAフィルム」と略称する)に施す染色方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、この種のPVAフィルムの染色は、PVAフィルムを染色液中に設置した複数のガイドローラからなるガイド手段を介して染色液中を案内しながら染色液を浸透させる方式で行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながらこの周知の染色における染色液の浸透は、自然浸透であるため、特に染色液の内部への浸透速度と表面部に対する浸透速度との差の極小化による内外の染色ムラの極小化には限界があり、このため近年における液晶ディスプレーの表示性能の一段のアップに対応した光学特性が一段と優れた偏光フィルムの製造のために必要なPVAフィルムに対する染色の一層の均一化の要請には答え難いという状況にあるほか、ガイドローラとの接触によって部分的に内部に取り込まれる気泡により、PVAフィルムの一部が膨張し、皺などの不良部を形成するなどの問題がある。
【特許文献1】特開平10−153709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は上記のような状況や問題に鑑み、染色液中を案内中におけるPVAフィルムに対する染色液の浸透速度を一段と均一化して、染色ムラを極小化するとともに、PVAフィルムの気泡に基づく局部膨張を解消して、皺などの不良部の発生を防止することを主要な課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明によれば、上記の課題は、特許請求の範囲の請求項1に記載のように、基本的には、PVAフィルムを染色液中に設置した複数のガイド手段を介して染色液中を案内しながら染色液を浸透させるPVAフィルムの染色方法において、少なくとも一つのガイド手段を、PVAフィルム対向部に多数の低加圧染色液吐出孔を有するとともに内部に低加圧染色液供給管を介して低加圧染色液を供給する低加圧染色液吐出シリンダ(ドラム)で構成することによって解決する。
【0006】
請求項1に記載のこの発明に係るPVAフィルムの染色方法においては、請求項2に記載のごとく、少なくとも二つのガイド手段を構成する低加圧染色液吐出シリンダに、PVAフィルムを、表面と裏面が対向するように転向案内することが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
特許請求の範囲の請求項1に記載のこの発明に係るPVAフィルムの染色方法によれば、ガイド手段を構成する低加圧染色液吐出シリンダの染色液吐出孔から吐出される低加圧染色液により、低加圧染色液吐出シリンダの外周部に低加圧染色液層が形成され、これによりPVAフィルムが低加圧染色液吐出シリンダに無接触の状態になるので、PVAフィルムに皺などの不良部が発生する恐れがないとともに、低加圧染色液吐出シリンダからなるガイド手段以外の部分では、周知の場合と同様の染色液の自然な浸透による染色作用を受ける一方、低加圧染色液吐出シリンダからなるガイド手段部では、多数の染色液吐出孔から吐出されて低加圧染色液吐出シリンダの表面部に沿って流動する低加圧染色液の低加圧浸透による強制的な染色作用を受け、これらの両染色作用が相乗的に作用するため、染色ムラが極小に抑えられる。
【0008】
また請求項2に記載の二以上の低加圧染色液吐出シリンダに対するPVAフィルムの表裏両面の対向案内構成によれば、PVAフィルムが、表裏の両面から低加圧染色液の低加圧浸透による強制的な染色作用を受けるため、より均一に近い染色が行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図面に基づいて、この発明に係るPVAフィルムの染色方法の好適な実施形態について説明する。
【0010】
図1は、この発明に係るPVAフィルムの染色方法の好適な一実施形態の構成概要を示したもので、染色槽11内の染色液12中に、PVAフィルム10の導入側の左方から右方に向かって複数個(ここでは3個)の低加圧染色液吐出シリンダ16を下部と上部に千鳥状に配置するとともに、染色槽11外の左側部と右側部には、フィルム導入ローラ13及びガイドローラ15と、ガイドローラ15及びフィルム導出ローラ15を設置し、フィルム導入ローラ14からガイドローラ15を通して染色槽11内の染色液12中に導入するPVAフィルム10を、順次表面と裏面が交互に低加圧染色液吐出シリンダ16に対向するように上下に千鳥状に転向案内した後、染色槽11外のガイドローラ15からフィルム導出ローラ15へと導出するように構成したものである。
【0011】
図2と図3は、低加圧染色液吐出シリンダ16の二つの実施形態を略示したもので、前者は、PVAフィルム10が対向する略半周部(染色槽11内において下側に位置するものについては、図2に示すごとく略下半周部、上部に位置するものについては略上半周部)に、軸方向及び軸周りに間隔をおいて多数の染色液吐出孔17を形成するとともに、両端部に水平にのびる低加圧染色液供給管18を固定した不動型(不回転型)である。
【0012】
他方後者は、全周に軸周りと軸方向に間隔をおいて多数の染色液吐出孔17を形成するとともに両端部を内部を同心的にのびる低加圧染色液供給管18に軸受21を介して支持した回転型で、低加圧染色液供給管18には、低加圧染色液吐出シリンダ16のPVAフィルム10対向部側(下部に位置するものについては、図3に示すように下半側、上部に位置するものについては、上半側)に軸周り及び軸方向に間隔をおいて開口する複数の染色液供給吐出孔19と、左右の両側部を水平にのびる仕切り翼板20が付設してある。
【0013】
この図示の実施形態においては、不動型と回転型のいずれの低加圧染色液吐出シリンダ16を用いる場合においても、フィルム導入ローラ14とガイドローラ15を介して染色槽11内の染色液12中に導入されるPVAフィルム10は、最初の低加圧染色液吐出シリンダ16に到るまでの間及び隣り合う上下の低加圧染色液吐出シリンダ16の間においては、染色槽11内の染色液12の自然の浸透による染色作用を受け、また各低加圧染色液吐出シリンダ16の部分においては、染色液吐出孔17を通して外方に吐出する低加圧染色液により、表面及び裏面のそれぞれから、低加圧浸透による強制的な染色作用を受け、これにより染色槽11から導出するまでに適確に染色される。
【0014】
この発明に係るPVAフィルムの染色方法においては、低加圧染色液吐出シリンダ16の染色液吐出孔17を通して吐出する低加圧染色液は、一般には、PVAフィルム11を低加圧染色液吐出シリンダ16の表面から微小量(例えば約1mm程度)離間させて、無接触状態にするのに適した条件(圧力、流量、流速等)、すなわちPVAフィルム11と低加圧染色液吐出シリンダ16の表面との間に微小な厚さ(例えば約1mm程度)の低加圧染色液の流動層が形成されるのに適した条件で吐出することができ、また染色槽11内の染色液12を循環させる形で用いることができる。
【0015】
これらの低加圧染色液の吐出条件は、PVAフィルム10のサイズ(厚さ、幅)や搬送条件(張力、速度等)、染色槽11内の染色液12の温度などによって適当に設定することができるとともに、これらのPVAフィルム10の搬送条件、染色液12の温度などは、自動制御によって調整可能にすることができる。
【0016】
この発明に係るPVAフィルムの染色方法は、このほか、低加圧染色液吐出ローラを回転駆動可能に構成する(例えば回転型の低加圧染色液吐出シリンダの端部に同心的に従動ギアを取付け、この従動ギアに隣接して設置する駆動ギアを係合する)など、種々の形態で実施することができるもので、上記の形態に限定されるものでない。
【実施例】
【0017】
染色液(30℃)中にほぼ図2に示すような不動型の低加圧染色液吐出シリンダをほぼ図1に準じて配置した染色槽とともに、染色槽前における膨潤槽、染色槽後における設置する延伸槽、定着槽及び乾燥装置を用いて、幅1100mm、厚さ80μのPVAフィルムを、その張力や速度(1.5m/min)等を制御しながら、膨潤、染色、延伸、ヨウ素染色液定着、乾燥の処理を行って、複数枚の偏光フィルムを製造し,これらの両面に保護フィルムを糊着して形成した複数の偏光板について、単体透過度、偏光度及びクロス度を測定したところ、それぞれ平均値として、43.4%弱、99.98%弱、0.01%強が得られた。
【0018】
他方比較のために、低加圧染色液吐出シリンダに代えて、標準的なガイドローラを配置した染色槽とともに、上記と同一の膨潤槽、延伸槽等を用いて、上記と同一のサイズのPVAフィルムを上記とほぼ同等の条件で膨潤、染色、延伸等の処理を行って、複数枚の偏光フィルムを製造し、これにより形成した複数の偏光板について単体透過度、偏光度及びクロス度を測定したところ、それぞれの平均値は、42.5%強、99.96%強、0.03%弱であった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明に係るPVAフィルムの染色方法の一実施形態の構成概要図である。
【図2】低加圧染色液吐出シリンダの一実施形態の略拡大側断面図で、染色槽の下部に設置する状態がPVAフィルムとともに示してある。
【図3】低加圧染色液吐出シリンダの他の実施形態の図2と同様の図である。
【符号の説明】
【0020】
10 PVAフィルム
11 染色槽
12 染色液
13 フィルム導入ローラ
14 フィルム導出ローラ
15 ガイドローラ
16 低加圧染色液吐出ローラ
17 染色液吐出孔
18 低加圧染色液供給管
19 染色液供給吐出孔
20 仕切リ翼板
21 軸受
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶ディスプレー(LCD)の主要部材である偏光フィルム(偏光子)の製造の際に、基材としてのポリビニルアルコールフィルム(以下「PVAフィルム」と略称する)に施す染色方法と装置、及び該染色方法による染色工程と染色装置を含む偏光フィルムの製造方法と装置、並びに該製造方法と装置により製造した偏光フィルムを用いて形成する偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、この種のPVAフィルムの染色は、PVAフィルムを染色液中に設置した複数のガイドローラからなるガイド手段を介して染色液中を案内しながら染色液を浸透させる方式で行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながらこの周知の染色方式における染色液の浸透は、自然浸透であるため、特に染色液の内部への浸透速度と表面部に対する浸透速度との差の極小化による内外の染色ムラの極小化には限界があり、このため近年における液晶ディスプレーの表示性能の一段のアップに対応した光学特性が一段と優れた偏光フィルムの製造のために必要なPVAフィルムに対する染色の一層の均一化の要請には答え難いという状況にあるほか、ガイドローラとの接触によって部分的に内部に取り込まれる気泡により、PVAフィルムの一部が膨張し、皺などの不良部を形成するなどの問題がある。
【特許文献1】特開平10−153709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は上記のような状況や問題に鑑み、特にPVAフィルムの染色方式(方法と装置)として、染色液中を案内中におけるPVAフィルムに対する染色液の浸透速度を一段と均一化して、染色ムラを極小化することが可能であるとともに、PVAフィルムの気泡に基づく局部膨張を解消して、皺などの不良部の発生を防止することができるものを提供すること、及びこの染色方式に基づいて光学特性のより優れた偏光フィルムの製造方式(方法と装置)と偏光板を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明によれば、上記の課題は、特許請求の範囲の請求項1と3に記載のように、基本的には、PVAフィルムを染色液中に設置した複数のガイド手段を介して染色液中を案内しながら染色液を浸透させるPVAフィルムの染色方法と装置において、少なくとも一つのガイド手段を、PVAフィルム対向部に多数の低加圧染色液吐出孔を有するとともに内部に低加圧染色液供給管を介して低加圧染色液を供給する低加圧染色液吐出シリンダ(ドラム)で構成することによって解決する。
【0006】
請求項1と3に記載のこの発明に係るPVAフィルムの染色方法と装置においては、請求項2と4に記載のごとく、少なくとも二つのガイド手段を構成する低加圧染色液吐出シリンダに、PVAフィルムを、表面と裏面が対向するように転向案内することが望ましい。
【0007】
またこの発明は、請求項5に記載のように、PVAフィルムを、請求項1又は2に記載のPVAフィルムの染色方法により染色する工程と、染色する工程の後における延伸工程を含む、偏光フィルムの製造方法を提供する。
【0008】
さらにこの発明は、請求項6に記載のごとく、請求項3又は4に記載のPVAフィルムの染色装置と、染色装置の後に配置する延伸槽を含む、偏光フィルムの製造装置を提供する。
【0009】
さらにまたこの発明は、請求項7に記載のように、請求項5又は6記載の偏光フィルムの製造方法又は装置により製造した偏光フィルムに、保護フィルムを糊着してなる偏光板を提供する。
【発明の効果】
【0010】
特許請求の範囲の請求項1と3に記載のこの発明に係るPVAフィルムの染色方法と装置によれば、ガイド手段を構成する低加圧染色液吐出シリンダの染色液吐出孔から吐出される低加圧染色液により、低加圧染色液吐出シリンダの外周部に低加圧染色液層が形成され、これによりPVAフィルムが低加圧染色液吐出シリンダに無接触の状態になるので、PVAフィルムに皺などの不良部が発生する恐れがないとともに、低加圧染色液吐出シリンダからなるガイド手段以外の部分では、周知の場合と同様の染色液の自然な浸透による染色作用を受ける一方、低加圧染色液吐出シリンダからなるガイド手段部では、多数の染色液吐出孔から吐出されて低加圧染色液吐出シリンダの表面部に沿って流動する低加圧染色液の低加圧浸透による強制的な染色作用を受け、これらの両染色作用が相乗的に作用するため、染色ムラが極小に抑えられる。
【0011】
また請求項2と4に記載の二以上の低加圧染色液吐出シリンダに対するPVAフィルムの表裏両面の対向案内構成によれば、PVAフィルムが、表裏の両面から低加圧染色液の低加圧浸透による強制的な染色作用を受けるため、より均一に近い染色が行われる。
【0012】
さらに請求項5と6に記載の偏心フィルムの製造方法と装置によれば、染色ムラが極小に抑えられるため、一段と優れた光学特性を有するとともに皺などの不良部の無い偏光フィルムを製造することができる。
【0013】
さらにまた請求項7に記載の偏光板は、光学特性が一段と優れた偏光フィルムを用いるので、より優れた光学特性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下図面に基づいて、この発明に係るPVAフィルムの染色方法と装置の好適な実施形態について説明する。
【0015】
図1は、この発明に係るPVAフィルムの染色方法と装置の好適な一実施形態の構成概要を示したもので、染色槽11内の染色液12中に、PVAフィルム10の導入側の左方から右方に向かって複数個(ここでは3個)の低加圧染色液吐出シリンダ16を下部と上部に千鳥状に配置するとともに、染色槽11外の左側部と右側部には、フィルム導入ローラ13及びガイドローラ15と、ガイドローラ15及びフィルム導出ローラ15を設置し、フィルム導入ローラ14からガイドローラ15を通して染色槽11内の染色液12中に導入するPVAフィルム10を、順次表面と裏面が交互に低加圧染色液吐出シリンダ16に対向するように上下に千鳥状に転向案内した後、染色槽11外のガイドローラ15からフィルム導出ローラ15へと導出するように構成したものである。なおこの後PVAフィルム10は、延伸槽等に誘導して、偏光フィルムを製造する。
【0016】
図2と図3は、低加圧染色液吐出シリンダ16の二つの実施形態を略示したもので、前者は、PVAフィルム10が対向する略半周部(染色槽11内において下側に位置するものについては、図2に示すごとく略下半周部、上部に位置するものについては略上半周部)に、軸方向及び軸周りに間隔をおいて多数の染色液吐出孔17を形成するとともに、両端部に水平にのびる低加圧染色液供給管18を固定した不動型(不回転型)である。
【0017】
他方後者は、全周に軸周りと軸方向に間隔をおいて多数の染色液吐出孔17を形成するとともに両端部を内部を同心的にのびる低加圧染色液供給管18に軸受21を介して支持した回転型で、低加圧染色液供給管18には、低加圧染色液吐出シリンダ16のPVAフィルム10対向部側(下部に位置するものについては、図3に示すように下半側、上部に位置するものについては、上半側)に軸周り及び軸方向に間隔をおいて開口する複数の染色液供給吐出孔19と、左右の両側部を水平にのびる仕切り翼板20が付設してある。
【0018】
この図示の実施形態においては、不動型と回転型のいずれの低加圧染色液吐出シリンダ16を用いる場合においても、フィルム導入ローラ14とガイドローラ15を介して染色槽11内の染色液12中に導入されるPVAフィルム10は、最初の低加圧染色液吐出シリンダ16に到るまでの間及び隣り合う上下の低加圧染色液吐出シリンダ16の間においては、染色槽11内の染色液12の自然の浸透による染色作用を受け、また各低加圧染色液吐出シリンダ16の部分においては、染色液吐出孔17を通して外方に吐出する低加圧染色液により、表面及び裏面のそれぞれから、低加圧浸透による強制的な染色作用を受け、染色槽11から導出するまでに適確に染色される。
【0019】
この発明に係るPVAフィルムの染色方法と装置においては、低加圧染色液吐出シリンダ16の染色液吐出孔17を通して吐出する低加圧染色液は、一般には、PVAフィルム11を低加圧染色液吐出シリンダ16の表面から微小量(例えば約1mm程度)離間させて、無接触状態にするのに適した条件(圧力、流量、流速等)、すなわちPVAフィルム11と低加圧染色液吐出シリンダ16の表面との間に微小な厚さ(例えば約1mm程度)の低加圧染色液の流動層が形成されるのに適した条件で吐出することができ、また染色槽11内の染色液12を循環させる形で用いることができる。
【0020】
これらの低加圧染色液の吐出条件は、PVAフィルム10のサイズ(厚さ、幅)や搬送条件(張力、速度等)、染色槽11内の染色液12の温度などによって適当に設定することができるとともに、これらのPVAフィルム10の搬送条件、染色液12の温度などは、自動制御によって調整可能にすることができる。
【0021】
この発明に係るPVAフィルムの染色方法と装置は、このほか、低加圧染色液吐出ローラを回転駆動可能に構成する(例えば回転型の低加圧染色液吐出シリンダの端部に同心的に従動ギアを取付け、この従動ギアに隣接して設置する駆動ギアを係合する)など、種々の形態で実施することができるもので、上記の形態に限定されるものでない。
【実施例】
【0022】
染色液(30℃)中にほぼ図2に示すような不動型の低加圧染色液吐出シリンダをほぼ図1に準じて配置した染色槽とともに、染色槽前における膨潤槽、染色槽後における設置する延伸槽、定着槽及び乾燥装置を用いて、幅1100mm、厚さ80μのPVAフィルムを、その張力や速度(1.5m/min)等を制御しながら、膨潤、染色、延伸、ヨウ素染色液定着、乾燥の処理を行って、複数枚の偏光フィルムを製造し,これらの両面に保護フィルムを糊着して形成した複数の偏光板について、偏光特性としての単体透過度、偏光度及びクロス度を測定したところ、それぞれ平均値として、43.4%弱、99.98%弱、0.01%強が得られた。
【比較例】
【0023】
比較のために、低加圧染色液吐出シリンダに代えて、標準的なガイドローラを配置した染色槽とともに、上記と同一の膨潤槽、延伸槽等を用いて、上記と同一のサイズのPVAフィルムを上記とほぼ同等の条件で膨潤、染色、延伸等の処理を行って、複数枚の偏光フィルムを製造し、これにより形成した複数の偏光板について単体透過度、偏光度及びクロス度を測定したところ、それぞれの平均値は、42.5%強、99.96%強、0.03%弱であった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明に係るPVAフィルムの染色方法と装置の一実施形態の構成概要図である。
【図2】低加圧染色液吐出シリンダの一実施形態の略拡大側断面図で、染色槽の下部に設置する状態がPVAフィルムとともに示してある。
【図3】低加圧染色液吐出シリンダの他の実施形態の図2と同様の図である。
【符号の説明】
【0025】
10 PVAフィルム
11 染色槽
12 染色液
13 フィルム導入ローラ
14 フィルム導出ローラ
15 ガイドローラ
16 低加圧染色液吐出ローラ
17 染色液吐出孔
18 低加圧染色液供給管
19 染色液供給吐出孔
20 仕切リ翼板
21 軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコールフィルムを染色液中に設置した複数のガイド手段を介して染色液中を案内しながら染色液を浸透させるポリビニルアルコールフィルムの染色方法であって、少なくとも一つのガイド手段を、ポリビニルアルコールフィルム対向部に多数の低加圧染色液吐出孔を有するとともに内部に低加圧染色液供給管を介して低加圧染色液を供給する低加圧染色液吐出シリンダで構成することを特徴とする、ポリビニルアルコールフィルムの染色方法。
【請求項2】
少なくとも二つのガイド手段を構成する低加圧染色液吐出シリンダに、ポリビニルアルコールフィルムを、表面と裏面が対向するように転向案内することを特徴とする 請求項1に記載のポリビニルアルコールフィルムの染色方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコールフィルムを染色液中に設置した複数のガイド手段を介して染色液中を案内しながら染色液を浸透させるポリビニルアルコールフィルムの染色方法であって、少なくとも一つのガイド手段を、ポリビニルアルコールフィルム対向部に多数の低加圧染色液吐出孔を有するとともに内部に低加圧染色液供給管を介して低加圧染色液を供給する低加圧染色液吐出シリンダで構成することを特徴とする、ポリビニルアルコールフィルムの染色方法。
【請求項2】
少なくとも二つのガイド手段を構成する低加圧染色液吐出シリンダに、ポリビニルアルコールフィルムを、表面と裏面が対向するように転向案内することを特徴とする 請求項1に記載のポリビニルアルコールフィルムの染色方法。
【請求項3】
ポリビニルアルコールフィルムを染色液中に設置した複数のガイド手段を介して染色液中を案内しながら染色液を浸透させるポリビニルアルコールフィルムの染色装置であって、少なくとも一つのガイド手段を、ポリビニルアルコールフィルム対向部に多数の低加圧染色液吐出孔を有するとともに内部に低加圧染色液供給管を介して低加圧染色液を供給する低加圧染色液吐出シリンダで構成することを特徴とする、ポリビニルアルコールフィルムの染色装置。
【請求項4】
少なくとも二つのガイド手段を構成する低加圧染色液吐出シリンダに、ポリビニルアルコールフィルムを、表面と裏面が対向するように転向案内することを特徴とする 請求項3に記載のポリビニルアルコールフィルムの染色装置。
【請求項5】
ポリビニルアルコールフィルムを、請求項1又は2に記載のポリビニルアルコールフィルムの染色方法により染色する工程と、染色する工程の後における延伸工程を含む、偏光フィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項3又は4記載のポリビニルアルコールフィルムの染色装置と、染色装置の後に配置する延伸槽を含む、偏光フィルムの製造装置。
【請求項7】
請求項5又は6記載の偏光フィルムの製造方法又は装置により製造した偏光フィルムに、保護フィルムを糊着してなる偏光板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−282918(P2006−282918A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−107024(P2005−107024)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(505122726)
【Fターム(参考)】