説明

ポリフェノール組成物

【課題】エグ味が低減されたカメリアシネンシス由来のポリフェノール組成物を提供すること。
【解決手段】カメリアシネンシス由来のフラボノールアグリコン及びフラボノール配糖体を含有するポリフェノール組成物であって、
次の(A)及び(B):
(A)高速液体クロマトグラフィーにより測定される、加水分解後の当該ポリフェノール組成物の固形分中のフラボノールアグリコン総量。
(B)酒石酸鉄法により測定される、当該ポリフェノール組成物の固形分中に含有されるポリフェノール総量。
の質量比[(B)/(A)]が0.01〜18であることを特徴とする、ポリフェノール組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメリアシネンシスから得られるポリフェノール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の嗜好の多様化、健康志向の高揚により、多種多様の健康食品が上市され需要が拡大している。例えば、ポリフェノールは、抗酸化力を有することが知られており、抗動脈硬化、抗アレルギー、血流増強等の効果が期待されるため、健康食品の重要な成分として認識されている。
【0003】
このようなポリフェノールは、例えば、烏龍茶の水性抽出液を活性炭又は吸着樹脂と接触させ非重合体カテキン類を除去してポリフェノール画分として得ることができる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/077384号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポリフェノールは本来エグ味が強いため、飲食品中に多量に含まれる場合には、その嗜好性が大きく損なわれてしまうことが多い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、カメリアシネンシス由来のポリフェノール組成物について種々検討したところ、ポリフェノール組成物中のフラボノールアグリコン及びフラボノール配糖体の含有比率が特定範囲内にあると、ポリフェノール特有のエグ味が顕著に低減されることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、カメリアシネンシス由来のフラボノールアグリコン及びフラボノール配糖体を含有するポリフェノール組成物であって、
次の(A)及び(B);
(A)高速液体クロマトグラフィーにより測定される、加水分解後の当該ポリフェノール組成物の固形分中に含有されるフラボノールアグリコン総量。
(B)酒石酸鉄法により測定される、当該ポリフェノール組成物の固形分中に含有されるポリフェノール総量。
の質量比[(B)/(A)]が0.01〜18である、
ポリフェノール組成物を提供するものである。
【0008】
本発明はまた、上記ポリフェノール組成物を含有する飲食品を提供するものである。
【0009】
本発明は更に、上記ポリフェノール組成物の製造方法であって、
カメリアシネンシス抽出物を合成吸着剤に吸着させる工程と、
上記合成吸着剤に第1の有機溶媒水溶液を接触させて、第1の画分を溶出させる工程と、
上記第1の画分を溶出した後の合成吸着剤に、上記第1の有機溶媒水溶液よりも疎水性の高い第2の有機溶媒水溶液を接触させて、ポリフェノール組成物を含む第2の画分を溶出させる工程
を含む、製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高濃度のポリフェノールを含有するにも拘らず、ポリフェノール特有のエグ味が顕著に低減されたカメリアシネンシス由来ポリフェノール組成物が提供される。このポリフェノール組成物は、非重合体カテキン類やフラボノール類単独では味わえない嗜好性の高い苦味を有しているが、甘味料や調味料で苦味を緩和しても後味に違和感を生じないことから、健康食品等として常食に適するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、試験例1における食後の血糖値の推移を示す図である。
【図2】図2は、試験例2におけるα−アミラーゼ活性阻害作用を示す図である。
【図3】図3は、試験例3におけるリパーゼ活性阻害作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
先ず、本明細書で使用する用語について説明する。
本明細書において「ポリフェノール」とは、酒石酸鉄法により測定されるものをいい、具体的には、フラボノール類、フラバン−3−オール類、プロアントシアニジン類及びそれらの重合体が例示される。フラボノール類には、ケルセチン、ミリセチン、ケンフェロール等やそれらの配糖体が包含され、またフラバン−3−オール類にはカテキン類が包含され、更にその重合体にはテアフラビン類、ウーロンホモビスフラバン類等が包含される。
「カメリアシネンシス(Camellia sinensis)」とは、ツバキ科ツバキ属のチャノキのことであるが、加工方法により、不発酵茶、半発酵茶、発酵茶に大別することができる。
中でも、不発酵茶が好ましい。不発酵茶としては、Camellia属、例えば、C.var.sinensis(やぶきた種を含む)、C.var.assamica及びそれらの雑種から選択される茶から製茶された、茎茶、棒茶、芽茶、煎茶、番茶、碾茶、釜入り茶等の緑茶が例示される。半発酵茶としては、総称して烏龍茶と呼ばれる鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶等が例示される。発酵茶としては、紅茶と呼ばれるダージリン、ウバ、キーマン等が例示される。ここで、本明細書において「不発酵茶、半発酵茶、発酵茶、緑茶、烏龍茶、紅茶」とは、飲用に供される茶抽出物ではなく、該茶抽出物を得るための茶原料をいう。
本明細書において「フラボノールアグリコン」とは、ミリセチン、ケルセチン及びケンフェロールからなる混合物の総称である。また本明細書において「フラボノール配糖体」とは、ミリセチン、ケルセチン及びケンフェロールをアグリコン骨格として有する配糖体をいい、これら配糖体に更に糖が結合したものも包含される。本明細書における「フラボノールアグリコン総量」は、これらフラボノールアグリコン及びフラボノール配糖体を含むポリフェノール組成物を加水分解し、加水分解後の溶液中に含有されるミリセチン、ケルセチン及びケンフェロールの合計量に基づいて定義される。
【0013】
次に、本発明のポリフェノール組成物について説明する。
本発明のポリフェノール組成物は、次の(A)及び(B)を特定の比率で含有することを特徴とするものである。
ここで、(A)は、高速液体クロマトグラフィーにより測定される、加水分解後の当該ポリフェノール組成物の固形分中に含有されるフラボノールアグリコン総量(以下、「(A)フラボノールアグリコン総量」という)であるが、(A)フラボノールアグリコン総量は0.7〜50質量%であることが好ましく、風味や水への溶解性の観点から、1.5〜45質量%、更に5〜40質量%、更に7〜35質量%、特に9〜25質量%であることが好ましい。
また、(B)は、酒石酸鉄法により測定される、当該ポリフェノール組成物の固形分中に含有されるポリフェノール総量(以下、「(B)ポリフェノール総量」という)であるが、(B)ポリフェノールの総量は5〜95質量%であることが好ましく、風味や水への溶解性の観点から、10〜90質量%、更に15〜80質量%、更に20〜70質量%、特に25〜40質量%であることが好ましい。ここで、本明細書において「固形分」とは、ポリフェノール組成物を105℃の電気恒温乾燥機で3時間乾燥して水などの揮発物質を除いた残分をいう。
そして、上記(A)及び(B)の質量比[(B)/(A)]は0.01〜18であるが、エグ味低減の観点から、0.01〜16、更に0.1〜11、更に0.3〜9、更に0.5〜7、特に1〜5であることが好ましい。
なお、「(A)フラボノールアグリコン総量」及び「(B)ポリフェノール総量」は、後掲の実施例に記載の方法により定量されたものである。
【0014】
また、本発明のポリフェノール組成物はルチンを含有することができるが、本発明のポリフェノール組成物は、エグ味低減の観点から、カメリアシネンシスから抽出して得られる従来の抽出物(例えば、緑茶抽出物、紅茶抽出物及び烏龍茶抽出物)に比べてルチン含有量が高いことが好ましい。具体的には、(C)当該ポリフェノール組成物の固形分中のルチンの含有量は0.4〜30質量%であることが好ましく、より一層のエグ味低減の観点から、0.8〜25質量%、更に2〜20質量%、更に4〜15質量%、特に6〜15質量%であることが好ましい。ここで、「ルチン」とは、フラボノール配糖体の一種であり、ケルセチンの3位の酸素原子にβ−ルチノース(6−O−α−L−ラムノシル−D−β−グルコース)が結合したものである。
【0015】
上記質量比[(B)/(A)]及び(C)ルチン含有量が上記範囲内にあるポリフェノール組成物は、例えば、下記の工程(1)〜(3)によりカメリアシネンシス抽出物を分画して得ることができる。
(1)カメリアシネンシス抽出物を合成吸着剤に吸着させる工程、
(2)上記合成吸着剤に第1の有機溶媒水溶液を接触させて、第1の画分を溶出させる工程、
(3)上記第1の画分を溶出した後の合成吸着剤に、上記第1の有機溶媒水溶液よりも疎水性の高い第2の有機溶媒水溶液を接触させて、ポリフェノール組成物を含む第2の画分を溶出させる工程。
【0016】
工程(1)で使用するカメリアシネンシス抽出物としては、例えば、カメリアシネンシスから熱水又は水溶性有機溶媒により抽出した抽出物が例示される。カメリアシネンシス抽出物は、そのまま使用しても、乾燥又は濃縮して使用してもよい。茶抽出物の形態としては、例えば、液体、スラリー、半固体、固体が例示される。抽出方法としては、攪拌抽出、カラム抽出、ドリップ抽出等の公知の方法を採用することができる。
また、カメリアシネンシス抽出物として、上記カメリアシネンシス抽出物を使用する代わりに、カメリアシネンシス抽出物の濃縮物を水又は有機溶媒に溶解又は希釈したものを用いても、カメリアシネンシス抽出物及びその濃縮物を併用してもよい。ここで、カメリアシネンシス抽出物の濃縮物とは、カメリアシネンシス抽出物から溶媒を一部除去したものであり、例えば、特開昭59−219384号公報、特開平4−20589号公報、特開平5−260907号公報、特開平5−306279号公報等に記載の方法により調製することができる。また、カメリアシネンシス抽出物の濃縮物として市販品を使用してもよく、例えば、三井農林(株)の「ポリフェノン」、伊藤園(株)の「テアフラン」、太陽化学(株)の「サンフェノン」等の緑茶抽出物の濃縮物が挙げられる。
【0017】
カメリアシネンシス抽出物としては緑茶抽出物が好適に用いられる。なお、カメリアシネンシス抽出物は、必要によりタンナーゼ処理しても(例えば、特開2004−321105号公報)、当該タンナーゼ処理後に更に活性炭、酸性白土及び活性白土から選ばれる少なくとも1種で処理してもよい(例えば、特開2007−282568号公報)。
【0018】
合成吸着剤としては、イオン交換能が1meq/g未満であり、かつ不溶性の三次元架橋構造を有するポリマーからなるものが好ましい。また、合成吸着剤の粒子形状は、球形、不均一形状等のいずれの形状であってもよいが、良好な分離条件を満たすために球形であることが好ましい。
このような合成吸着剤は公知の方法により製造してもよいが、市販品を使用してもよい。市販の合成吸着剤としては、例えば、アンバーライトXAD4、XAD16HP、XAD1180、XAD2000(供給元:米国ローム&ハース社)、ダイヤイオンHP20、HP21(三菱化学社製)、セパビーズSP−850、SP−825、SP−700、SP−70(三菱化学社製)、VPOC1062(Bayer社製)等のスチレン系;セパビーズSP205、SP206、SP207(三菱化学社製)等の芳香環に臭素原子を導入して吸着能を高めた置換スチレン系;ダイヤイオンHP1MG、HP2MG(三菱化学社製)等のメタクリル系;アンバーライトXAD761(ロームアンドハース社製)等のフェノール系;アンバーライトXAD7HP(ロームアンドハース社製)等のアクリル系;TOYOPEARL、HW-40C(東ソー社製)等のポリビニル系;SEPHADEX、LH−20(ファルマシア社製)等のデキストラン系が例示される。
中でも、合成吸着剤としては、その母体がスチレン系、メタクリル系、アクリル系、ポリビニル系が好ましく、分離能の観点から、スチレン系が特に好ましい。
【0019】
合成吸着剤の使用量としては、カメリアシネンシス抽出物中の非重合体カテキン類の全質量と、合成吸着剤の全容量との比が20〜60g/L、更に25〜55g/L、特に30〜50g/Lとなる量を選択することが、分離能の観点から好ましい。
【0020】
工程(1)においては、カメリアシネンシス抽出物に合成吸着剤を添加し撹拌して吸着させた後、ろ過操作により合成吸着剤を回収するバッチ方法、あるいは合成吸着剤を充填したカラムを用いて連続的に吸着処理を行なうカラム方法を採用することができるが、生産性の点からカラムによる連続処理方法が好ましい。
【0021】
工程(1)に供する際、カメリアシネンシス抽出物中の非重合体カテキン類濃度を好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは0.8〜5質量%に調整することが、吸着効率の観点から好ましい。なお、カメリアシネンシス抽出物中の非重合体カテキン類濃度を上記範囲内に調整するために、カメリアシネンシス抽出物を必要により濃縮又は希釈等してもよい。
【0022】
第1及び第2の有機溶媒水溶液としては、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類等の有機溶媒の水溶液が例示される。第2の有機溶媒水溶液としては、第1の有機溶媒水溶液よりも疎水性の高いものであれば特に限定されず、例えば、第1の有機溶媒水溶液よりも有機溶媒濃度の高い水溶液を使用するか、あるいは第1の有機溶媒よりも炭素数の多い有機溶媒を含む水溶液を使用することができる。第1及び第2の有機溶媒水溶液中の有機溶媒濃度は適宜設定することが可能であるが、例えば、第1の有機溶媒水溶液中の有機溶媒濃度としては、好ましくは10〜45質量%、特に好ましくは20〜40質量%であり、また第2の有機溶媒水溶液中の有機溶媒濃度としては、好ましくは50〜98質量%、特に好ましくは50〜95質量%である。
【0023】
上記工程(1)及び(2)における具体的な操作方法としては、例えば、特開2006−160656号公報、特開2008−079609号公報等に記載の方法を採用することが可能である。
有機溶媒水溶液の通液条件は適宜設定することが可能であり、第2の有機溶媒水溶液の通液条件は第1の有機溶媒水溶液と同一でも異なっていてもよい。第1及び第2の有機溶媒水溶液の通液条件は、例えば、通液速度(SV)が好ましくは0.5〜10[h-1]、特に好ましくは0.5〜5[h-1]であり、かつ通液倍数(BV)が合成吸着剤の容量に対して好ましくは0.5〜10[v/v]、特に好ましくは1〜4[v/v]である。
【0024】
工程(3)後においては、第2の画分を濃縮することで疎水性のポリフェノール組成物を得ることができるが、濃縮は蒸留、減圧蒸留、精留、薄膜蒸留、膜濃縮等により行うことが可能である。また、濃縮前又は濃縮後において、必要によりろ過及び/又は遠心分離処理により夾雑物を分離してもよい。ポリフェノール組成物の形態としては、固体、半固体、液体、スラリー等の種々のものが例示される。
【0025】
また、本発明においては、上記ポリフェノール画分に、カメリアシネンシス抽出物、その濃縮物及びそれらの精製物、並びに他のポリフェノール組成物から選ばれる少なくとも1種を配合して所望の質量比[(B)/(A)]及び(C)ルチン含有量に調整してもよい。ここで、カメリアシネンシス抽出物の精製物とは、溶剤やカラムを用いてカメリアシネンシス抽出物又はその濃縮物から沈殿物等を除去したものをいう。カメリアシネンシス抽出物、その濃縮物及びそれらの精製物の形態としては、固体、水溶液、スラリー状等の種々のものが例示される。なお、ポリフェノール画分に配合する「カメリアシネンシス抽出物、その濃縮物及びそれらの精製物」は、ポリフェノール画分と同種及び異種の何れのカメリアシネンシスから得られたものであってもよい。一方、「他のポリフェノール組成物」としては、例えば、異なる分画条件で得られたポリフェノール画分や、異種のポリフェノール含有植物から得られたポリフェノール画分が例示される。
【0026】
本発明のポリフェノール組成物は、高濃度のポリフェノールを含有するにも拘らず、ポリフェノール特有のエグ味が低減されている。また、本発明のポリフェノール組成物は、非重合体カテキン類やフラボノール類単独では味わえない嗜好性の高い苦味を有しているが、甘味料や調味料で苦味を緩和しても後味に違和感が生じない。したがって、本発明のポリフェノール組成物は、飲食品に配合して使用することができる。
【0027】
本発明の飲食品中のポリフェノール組成物の含有量は、食品の種類や形態により適宜選択することができるが、通常固形分換算で0.1〜10質量%である。
【0028】
本発明の飲料としては、例えば、茶飲料、非茶系飲料が挙げられる。茶飲料としては、例えば、緑茶飲料、烏龍茶飲料、紅茶飲料が挙げられる。また、非茶系飲料としては、清涼飲料(例えば、果汁ジュース、野菜ジュース、スポーツ飲料、アイソトニック飲料、炭酸飲料)、コーヒー飲料、栄養ドリンク剤、美容ドリンク剤等の非アルコール飲料、ビール、ワイン、清酒、梅酒、発泡酒、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ラム、ジン、リキュール類等のアルコール飲料が例示される。
【0029】
本発明の飲料は、ポリフェノール組成物をそのまま又は希釈して容器詰飲料とすることが可能であるが、ポリフェノール組成物の水溶解性を改善するために、有機酸及び/又はその塩を配合してもよい。
【0030】
有機酸としては、分子中に1個以上のカルボキシル基を有すれば、芳香族でも、脂肪族でも、ラクトンでもよいが、ヒドロキシカルボン酸又はそのラクトンが好ましい。具体的には、アスコルビン酸、エリソルビン酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、アジピン酸、フマル酸、リンゴ酸等が例示され、中でもアスコルビン酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸が好ましい。なお、塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミノ酸塩が挙げられ、中でもアルカリ金属塩が好ましく、特にナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。
【0031】
有機酸及び/又はその塩は、本発明の飲料中の有機酸イオン濃度が1〜100mmol/Lとなるように配合することが好ましい。有機酸イオン濃度は、溶解性向上及び外観改善の観点から、好ましくは2〜95mmol/L、より好ましくは5〜90mmol/L、より好ましくは10〜85mmol/L、より好ましくは15〜80mmol/L、更に好ましくは18〜70mmol/L、特に好ましくは20〜60mmol/Lである。なお、有機酸イオン濃度は、例えば、有機酸がn価の多価カルボン酸である場合、第1段〜第n段まで解離状態にあるカルボキシルアニオン(COO−)の合計濃度である。
【0032】
本発明の飲料には、飲食品を調製する際に用いられる一般的な添加物、例えば、酸化防止剤、苦渋味抑制剤、ビタミン、香料、各種エステル類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤等の他、コーヒー抽出物等の植物エキスを単独で又は併用して配合することができる。
【0033】
本発明の飲料は、pH(25℃)が2〜9であることが好ましく、風味及び外観の観点から、2.5〜8、更に3〜7.0、特に3.5〜6.5であることが好ましい。
【0034】
本発明の飲料を充填する容器としては、一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合化した紙容器、瓶等の通常の包装容器が挙げられる。
【0035】
また、容器詰飲料は、例えば、金属缶のような容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては適用されるべき法規(日本にあっては食品衛生法)に定められた殺菌条件で製造できる。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用できる。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。さらに、酸性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを中性に戻すことや、中性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを酸性に戻すなどの操作も可能である。
【0036】
本発明の食品の形態としては、摂取しやすい形態であれば特に限定されるものではなく、例えば、ペースト状、粉末、液体、ゲル状、スラリー状、造粒物、顆粒、錠剤、カプセル剤等の固形状物が例示される。また、食品の形態に応じて、本発明のポリフェノール組成物を減圧濃縮や薄膜濃縮などにより溶媒を除去しても、噴霧乾燥や凍結乾燥等により粉体化してもよい。
【0037】
本発明の食品としては、例えば、菓子類(例えば、パン、ケーキ、クッキー、ビスケット等の焼菓子、チューインガム、チョコレート、キャンデー)、デザート類(例えば、ゼリー、ヨーグルト、アイスクリーム)、レトルト食品、調味料(例えば、ソース、スープ、ドレッシング、マヨネーズ、クリーム)が例示される。
【0038】
本発明の食品には、食品を調製する際に用いられる一般的な食品添加物、例えば、ミネラル、ビタミン、アミノ酸、甘味料、酸味料、香料、果実又は野菜の乾燥品、果汁、野菜汁又はそれらの粉末乾燥品等を配合することができる。さらに、賦形剤、滑沢剤、被覆剤等の成形助剤を配合してもよい。
【実施例】
【0039】
1.非重合体カテキン類及びカフェインの測定
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP、島津製作所製)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム(L−カラムTM ODS、4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラディエント法により分析した。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有する蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有するアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。なお、グラディエントの条件は、以下のとおりである。
【0040】
時間(分) A液濃度(体積%) B液濃度(体積%)
0.0 97 3
5.0 97 3
37.0 80 20
43.0 80 20
43.5 0 100
48.5 0 100
49.0 97 3
60.0 97 3
【0041】
2.ルチンの測定
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフ(型式Waters2695、WATERS製)を用い、カラム(Shimpach VP ODS、150×4.6mmI.D.)を装着し、カラム温度40℃でグラディエント法により分析した。移動相A液はリン酸を0.05質量%含有する蒸留水溶液、B液はメタノール溶液とし、流速は1mL/分、試料注入量は10μL、UV検出器波長は368nmの条件で行った。なお、グラディエントの条件は、以下のとおりである。
【0042】
時間(分) A液濃度(体積%) B液濃度(体積%)
0.0 95 5
20.0 80 20
40.0 30 70
41.0 0 100
46.0 0 100
47.0 95 5
60.0 95 5
【0043】
3.フラボノールアグリコン(ミリセチン、ケルセチン及びケンフェロール)の測定
(1)試料の加水分解
固形分濃度0.2質量%に調整した試料溶液5mLにメルカプトエタノール200μL、2N塩酸500μLを添加した。その後、ドライブロックバス(アズワン株式会社製)にて設定温度120℃で40分間加熱し試料中のフラボノール配糖体を加水分解してフラボノールアグリコン(ミリセチン、ケルセチン、ケンフェロール)を生成させた後に、冷却した。
【0044】
(2)分析
加水分解後の試料溶液中に存在しているミリセチン、ケルセチン及びケンフェロールを、高速液体クロマトグラフィーにより定量した。なお、定量はグラディエント法により行ったが、その分析方法は上記「ルチンの測定」と同じである。
【0045】
(3)フラボノールアグリコンの総量
上記分析により定量されたミリセチン量、ケルセチン量及びケンフェロール量の総和として求めた。
【0046】
4.ポリフェノールの測定
(1)試薬の調製
1)酒石酸鉄試薬の調製
500mLメスフラスコに硫酸第一鉄七水塩0.50gと(+)酒石酸ナトリウム・カリウム四水和物2.50gを採取し、イオン交換水でメスアップした。
【0047】
2)リン酸バッファーの調製
2000mLメスフラスコにリン酸水素二ナトリウム・二水和物20.00gとリン酸二水素カリウム2.90gを採取し、イオン交換水でメスアップした。この溶液のpHが7.5〜7.6になるように調整した。pH7.6を超える場合、リン酸二水素カリウム・二水和物0.9g/100mL水溶液を添加し、pH7.5未満の場合、リン酸二水素カリウム1.2g/100mL水溶液を添加し調整した。
【0048】
(2)装置及び器具
1)分光光度計(U−2010;日立製作所製)
2)石英製セル(10mm×10mm)
3)25mL、100mL、200mL、500mL、2000mLのメスフラスコ
4)1mL、5mL、10mL、20mL、30mLのホールピペット
5)1mL、3mL、5mLのマイクロピペット
【0049】
(3)分析条件
1)測定波長:540nm
2)温度 :20℃±2℃
【0050】
(4)操作:
1)検量線作成
i)没食子酸エチル約0.5gを使用前に2〜3時間乾燥させた。
ii)200mLメスフラスコに乾燥した没食子酸エチル0.2gを採取し、イオン交換水でメスアップした。(100mg/100mL標準液)
iii)100mLメスフラスコに、ii)の標準液を用い、5mg/100mL、10mg/100mL、20mg/100mL、30mg/100mLの各標準液を調製した。
iv)25mLメスフラスコに、iii)の標準液をそれぞれ5mL採取し、酒石酸鉄試薬5mLを加えリン酸バッファーでメスアップした。また、ブランクとして標準液を加えないものを調製した。
v)分光光度計にて吸光度を測定し検量線を作成した。
なお、検量線については下記を目安にし、逸脱した時は再調整した。
R2 :0.9995〜1.0000
検量線傾き:34.5±0.4
切片 :0.3以下
【0051】
2)試料測定
i)イオン交換水にて分光光度計をゼロ補正した。
ii)25mLメスフラスコに試料を所定量採取し、酒石酸鉄試薬5mLを加えリン酸バッファーでメスアップした後、吸光度を測定した。なお、吸光度の測定は、発色後40分以内とした。
【0052】
実施例1
ポリフェノール組成物A
緑茶葉(大葉種)を熱水で抽出した後、噴霧乾燥により緑茶抽出物Aを得た。『緑茶抽出物A』は、非重合体カテキン類濃度30.8質量%、カフェイン濃度5.5質量%であった。
次いで、『緑茶抽出物A』の非重合体カテキン類濃度が1質量%になるようにイオン交換水で希釈した。次いで、『緑茶抽出物A』の希釈液800gをカラム(内径50mm×高さ180mm、容積353.3mL)に充填した合成吸着剤(SP−70、三菱化学(株)製)200mLに吸着させた。次いで、イオン交換水300mL、30質量%エタノール水溶液400mLを順次合成吸着剤に通液して非重合体カテキン類を溶出させた。次いで、合成吸着剤に50質量%エタノール水溶液を400mL通液してポリフェノール組成物を溶出させた。なお、本分画操作はすべて、通液速度SV=0.8〜1.2[h-1]、通液倍数(BV)=2.0[v/v]になるように流量調整して行った。次いで、得られた溶出液を減圧濃縮によりエタノールを留去しつつ不溶物を除去した後、凍結乾燥により水分を除去して『ポリフェノール組成物A』を得た。
『ポリフェノール組成物A』は、(A)フラボノールアグリコン総量が19.2質量%、(B)ポリフェノール総量が33.1質量%、質量比[(B)/(A)]が1.72、(C)ルチン含有量が10.6質量%であった。なお、『ポリフェノール組成物A』は、後掲の本発明品1〜5に使用した。
【0053】
実施例2
ポリフェノール組成物B
緑茶葉(大葉種)を熱水で抽出した後、噴霧乾燥により緑茶抽出物Bを得た。『緑茶抽出物B』は、非重合体カテキン類濃度30.3質量%、カフェイン濃度5.5質量%であった。
次いで『緑茶抽出物B』の非重合体カテキン類濃度が1質量%になるようにイオン交換水で希釈した。次いで、『緑茶抽出物B』の希釈液8000gをカラム(内径89.2mm×高さ600mm、容積3748mL)に充填した合成吸着剤(SP−70、三菱化学(株)製)2000mLに吸着させた。次いで、イオン交換水3000mL、25質量%エタノール水溶液9000mLを順次合成吸着剤に通液して非重合体カテキン類を溶出させた。次いで、合成吸着剤に92.5質量%エタノール水溶液を4000mL通液してポリフェノール組成物を溶出させた。なお、本分画操作はすべて、流速SV=0.5〜2.1[h-1]、通液倍数(BV)=2.0[v/v]になるように流量調整して行った。次いで、得られた溶出液を減圧濃縮によりエタノールを留去した後、凍結乾燥により水分を除去して『ポリフェノール組成物B』を得た。
『ポリフェノール組成物B』は、(A)フラボノールアグリコン総量が18.3質量%、(B)ポリフェノール総量が34.0質量%、質量比[(B)/(A)]が1.86、(C)ルチン含有量が9.3質量%であった。なお、『ポリフェノール組成物B』は、後掲の本発明品6に使用した。
【0054】
実施例3
ポリフェノール組成物C
実施例2で得た『緑茶抽出物B』の非重合体カテキン類濃度が1質量%になるようにイオン交換水で希釈した。次いで、『緑茶抽出物B』の希釈液2400gをカラム(内径60.6mm×高さ330mm、容積951mL)に充填した合成吸着剤(SP−70、三菱化学(株)製)600mLに吸着させた。次いで、イオン交換水900mL、25質量%エタノール2700mLを順次合成吸着剤に通液して非重合体カテキン類を溶出させた。次いで、合成吸着剤に92.5質量%エタノール水溶液を1200mL通液してポリフェノール組成物を溶出させた。なお、本分画操作はすべて、流速SV=0.7〜1.8[h-1]、通液倍数(BV)=2.0[v/v]になるように流量調整して行った。次いで、得られた溶出液を減圧濃縮によりエタノールを留去した後、凍結乾燥により水分を除去して『ポリフェノール組成物C』を得た。
『ポリフェノール組成物C』は、(A)フラボノールアグリコン総量が23.3質量%、(B)ポリフェノール総量が34.1質量%、質量比[(B)/(A)]が1.46、(C)ルチン含有量が7.4質量%であった。なお、『ポリフェノール組成物C』は、後掲の本発明品7に使用した。
【0055】
実施例4
ポリフェノール組成物D
実施例1で得られたポリフェノール組成物A 0.08質量部と、市販の緑茶抽出物(EGCg製剤、DSM Nutritional Products社製、以下『緑茶抽出物a』という)0.12質量部を混合して『ポリフェノール組成物D』を得た。なお、『緑茶抽出物a』は、(A)フラボノールアグリコンの総量が0.0質量%、(B)ポリフェノールの総量が110.5質量%※(※酒石酸鉄法の分析値)である。
『ポリフェノール組成物D』は、(A)フラボノールアグリコン総量が7.7質量%、(B)ポリフェノール総量が79.5質量%、質量比[(B)/(A)]が10.32、(C)ルチン含有量が4.2質量%であった。なお、『ポリフェノール組成物D』は、後掲の本発明品8に使用した。
【0056】
実施例5
ポリフェノール組成物E
市販の紅茶葉(ヌワラエリア、ブルックボンドハウス社製)5gを沸騰水500gに添加し、150rpmで5分間攪拌抽出した。次いで、2号ろ紙で吸引ろ過し採液量を測定後、氷冷(液温25℃以下)した。その後、水分を凍結乾燥で除いて紅茶抽出物を得た。得られた紅茶抽出物を、以下『紅茶抽出物a』という。
紅茶抽出物a 0.42質量部と、実施例1で得られたポリフェノール組成物A 0.025質量部とを混合して『ポリフェノール組成物E』を得た。
『ポリフェノール組成物E』は、(A)フラボノールアグリコン総量が1.9質量%、(B)ポリフェノール総量が17.7質量%、質量比[(B)/(A)]が9.32、(C)ルチン含有量が1.3質量%であった。なお、『ポリフェノール組成物E』は、後掲の本発明品9に使用した。
【0057】
実施例6
ポリフェノール組成物F
市販の紅茶葉(AS CTC、ブルックボンドハウス社製)茶葉5gを沸騰水500gに添加し、150rpmで5分間攪拌抽出した。次いで、2号ろ紙で吸引ろ過し採液量を測定後、氷冷(液温25℃以下)した。その後、水分を凍結乾燥で除いて紅茶抽出物を得た。得られた紅茶抽出物を、以下『紅茶抽出物b』という。
紅茶抽出物b 0.39質量部と、実施例1で得られたポリフェノール組成物A 0.025質量部とを混合して『ポリフェノール組成物F』を得た。
『ポリフェノール組成物F』は、(A)フラボノールアグリコン総量が1.4質量%、(B)ポリフェノール総量が13.3質量%、質量比[(B)/(A)]が9.5、(C)ルチン含有量が0.9質量%であった。なお、『ポリフェノール組成物F』は、後掲の本発明品10に使用した。
【0058】
実施例7
ポリフェノール組成物G
市販の烏龍茶葉(ウーロン茶、国太楼社製)5gを沸騰水500gに添加し、150rpmで5分間攪拌抽出し、2号ろ紙で吸引ろ過し採液量を測定後、氷冷(液温25℃以下)した。その後、水分を凍結乾燥で除いて烏龍茶抽出物を得た。得られた烏龍茶抽出物を、以下『烏龍茶抽出物a』という。
烏龍茶抽出物a 0.39質量部と、実施例1で得られたポリフェノール組成物A 0.025質量部とを混合して『ポリフェノール組成物G』を得た。
『ポリフェノール組成物G』は、(A)フラボノールアグリコン総量が1.6質量%、(B)ポリフェノール総量が14.7質量%、質量比[(B)/(A)]が9.19、(C)ルチン含有量が0.8質量%であった。なお、『ポリフェノール組成物G』は、後掲の本発明品11に使用した。
【0059】
実施例8
ポリフェノール組成物H
実施例1で得られたポリフェノール組成物A 0.05質量部と、緑茶抽出物a 0.138質量部を混合して『ポリフェノール組成物H』を得た。
『ポリフェノール組成物H』は、(A)フラボノールアグリコン総量が5.1質量%、(B)ポリフェノール総量が89.9質量%、質量比[(B)/(A)]が17.63、(C)ルチン含有量が2.8質量%であった。なお、『ポリフェノール組成物H』は、後掲の本発明品12に使用した。
【0060】
実施例9
ポリフェノール組成物I
実施例1で得られたポリフェノール組成物A 0.01質量部と、紅茶抽出物a 0.43質量部を混合して『ポリフェノール組成物I』を得た。
『ポリフェノール組成物I』は、(A)フラボノールアグリコン総量が1.3質量%、(B)ポリフェノール総量が17.2質量%、質量比[(B)/(A)]が13.23、(C)ルチン含有量が0.9質量%であった。なお、『ポリフェノール組成物I』は、後掲の本発明品13に使用した。
【0061】
実施例10
ポリフェノール組成物J
実施例1で得られたポリフェノール組成物A 0.01質量部と、紅茶抽出物b 0.44質量部を混合して『ポリフェノール組成物J』を得た。
『ポリフェノール組成物J』は、(A)フラボノール量アグリコン総が0.7質量%、(B)ポリフェノール総量が12.5質量%、質量比[(B)/(A)]が17.85、(C)ルチン含有量が0.5質量%であった。なお、『ポリフェノール組成物J』は、後掲の本発明品14に使用した。
【0062】
実施例11
ポリフェノール組成物K
実施例1で得られたポリフェノール組成物A 0.01質量部と、烏龍茶抽出物a 0.41質量部を混合して『ポリフェノール組成物K』を得た。
『ポリフェノール組成物K』は、(A)フラボノールアグリコン総量が0.9質量%、(B)ポリフェノール総量が14.0質量%、質量比[(B)/(A)]が15.56、(C)ルチン含有量が0.4質量%であった。なお、『ポリフェノール組成物K』は、後掲の本発明品15に使用した。
【0063】
比較例1
市販の緑茶抽出物(ポリフェノン70A、三井農林社製、以下『緑茶抽出物b』という)を用いた。
緑茶抽出物bは、(A)フラボノールアグリコン総量が1.1質量%、(B)ポリフェノール総量が99.0質量%、質量比[(B)/(A)]が90.00、(C)ルチン含有量が0.1質量%であった。なお、『緑茶抽出物b』は、後掲の比較品1に使用した。
【0064】
比較例2
紅茶抽出物aを用いた。
紅茶抽出物aは、(A)フラボノールアグリコン総量が0.9質量%、(B)ポリフェノール総量が16.8質量%、質量比[(B)/(A)]が18.67、(C)ルチン含有量が0.7質量%であった。なお、『紅茶抽出物a』は、後掲の比較品2に使用した。
【0065】
比較例3
紅茶抽出物bを用いた。
紅茶抽出物bは、(A)フラボノールアグリコン総量が0.3質量%、(B)ポリフェノール総量が12.0質量%、質量比[(B)/(A)]が40.00、(C)ルチン含有量が0.2質量%であった。なお、『紅茶抽出物b』は、後掲の比較品3に使用した。
【0066】
比較例4
烏龍茶抽出物aを用いた。
烏龍茶抽出物aは、(A)フラボノールアグリコン総量が0.5質量%、(B)ポリフェノール総量が13.5質量%、質量比[(B)/(A)]が27.00、(C)ルチン含有量が0.1質量%であった。なお、『烏龍茶抽出物a』は、後掲の比較品4に使用した。
【0067】
比較例5
0.15質量%の重曹水溶液(95℃)で600gのウーロン茶葉をカラム法で抽出し、抽出物約6000gを得た。液温を60〜65℃に保ち、400gの粒状活性炭(クラレ社製、GW-H32/60)に通液し、非重合カテキン類及びカフェインを選択的に除去した。この通過液を減圧下で濃縮し、Brix10以上の茶抽出物約900gを調製し『烏龍茶抽出物b』を得た。
『烏龍茶抽出物b』は、(A)フラボノールアグリコン総量が0.84質量%、(B)ポリフェノール総量が19.4質量%、質量比[(B)/(A)]が23.1、(C)ルチン含有量が0.18質量%であった。なお、『烏龍茶抽出物b』は、後掲の比較品5に使用した。
【0068】
比較例6
緑茶抽出物cの製造
緑茶抽出液の濃縮物(ポリフェノンHG、三井農林(株)製)200gを、25℃にて250r/min攪拌条件下の40質量%エタノール水溶液800g中に分散させ、酸性白土(ミズカエース#600、水澤化学社製)80gを投入後、約10分間攪拌を続けた。次に、2号ろ紙で濾過した後、濾液に活性炭8gを添加し再び2号ろ紙で濾過した。次に、0.2μmメンブランフィルターによって再濾過した。次に、40℃、減圧下にて濾液からエタノールを留去し、イオン交換水で非重合体カテキン類濃度を調整して「緑茶抽出物c」を得た。
「緑茶抽出物c」は、(A)フラボノールアグリコン総量が1.5質量%、(B)ポリフェノール総量が47.7質量%、質量比[(B)/(A)]が32.49、(C)ルチン含有量が0.96質量%であった。なお、『緑茶抽出物c』は、後掲の比較品6に使用した。
【0069】
(1)風味の評価
表1及び2に示す各成分をサンプル瓶中にて各配合量に秤量し、その中にイオン交換水を投入して分散させた。その後、60℃のウォーターバス中で溶解してから、室温(25℃)で2時間静置し、飲料を調製した。各飲料が室温に調温したところで官能試験を下記の基準で行った。その結果を表1及び2に示す。
【0070】
(2)評価基準
5:大変良好(嗜好性の高い苦味があり、エグ味が少ない)
4:良好(エグ味は感じるが気にならない)
3:やや良好(エグ味が若干気にかかる)
2:やや不良(エグ味がやや強い)
1:不良(エグ味が強い)
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
表1及び2から、(A)フラボノールアグリコン総量と、(B)ポリフェノール総量との質量比[(B)/(A)]が0.01〜18であるポリフェノール組成物は、従来のカメリアシネンシス抽出物に比べてポリフェノール特有のエグ味が顕著に低減されており、風味が良好で口当たりのよいことが確認された。
【0074】
焼き菓子の評価
実施例1のポリフェノール組成物Aを用いて焼き菓子を作製した。
材料α(脱脂粉乳25質量部、無塩バター25質量部、白砂糖29質量部、マーガリン45質量部)を秤量し、ミキサー[Hobart社製 N50 MIXER(5コートミキサー)]に入れ、ビーターを用いて低速30秒で攪拌後、さらに中速にて攪拌し比重0.9の生地を調製した。
次に、材料αに低速で30秒攪拌しながら、卵を溶いたものを3分割して加えた。1回目の卵を添加後、低速で30秒撹拌を行った。2回目の添加時に食塩を溶解させた卵水と、ポリフェノール組成物Aを同時にミキサーに直接投入し、低速にて30秒撹拌を行った。上記終了後、ミキサーの壁に付着した油をかき落とした後、最後の卵を加え、低速30秒撹拌後、さらに均一なクリーム状になるまで中速にて2分間撹拌を行った。
次に、薄力粉を入れ、低速で45秒間撹拌した。攪拌により得られた原料を20g秤量し、縦72mm×横22mm×高さ14mmの長方形の焼き型に詰め、剥離紙を敷いた展板にならべ、型に詰めた生地表面に6個の穴をつまようじで開けた。展板1枚当たり、4個/4個/4個ずつ3列に並べ、計12個を並べた。次に、上記展板の下にさらに2枚の展板を重ね、表面にアルミホイルをかけた。焼成はオーブン中、160℃にて行った。アルミホイルをかぶせて20分間焼成、アルミを外した後18分間焼成を行い、焼き菓子を調製した。焼成後、網の上で室温下20分冷却後、チャック付きポリエチレン袋に入れ、20℃恒温室にて1晩放置した。食感評価の結果、食感上の問題を意識することなく食べることができた。
【0075】
試験例1
食後の血糖値上昇抑制効果
雄性マウスC57BL/6J(7週齢)を6日間予備飼育し、試験開始前に16時間絶食させてから4群(実施例1群、比較例6群、比較例5群、対照群(水)、各群n=5)に分け、血液を採取した。
実施例1群には実施例1で得られた製剤を20質量%エタノール水溶液に溶解し、これを0.57mg/g体重として経口投与した。また、比較例6群には比較例6で得られた製剤を20質量%エタノール水溶液に溶解し、これを0.39mg/g体重として経口投与した。更に、比較例5群には比較例5で得られた製剤を20質量%エタノール水溶液に溶解し、これを1.00mg/g体重として経口投与した。一方、対照群には20質量%エタノールを経口投与した。そして、各試料を投与直後のマウスに、表3に示す組成の脂肪乳剤を40mg/g体重となるように経口投与した。
【0076】
【表3】

【0077】
乳剤投与から10分、30分、60分、120分経過ごとに各マウスから血液を採取し、グルコースCII‐テストワコー(和光純薬社製)により血糖値を分析した。食後の血糖値の推移を図1に示す。a,b,cは、グラフ間で有意差があることを示す。
【0078】
図1から、次のことが確認された。すなわち、対照群は脂肪乳剤の投与により食後の血糖値が上昇するのに対し、比較例5群は対照群と同等の値をとり、実施例1群、比較例6群はともに食後の血糖値上昇が抑制されるが、実施例1群の方が比較例6群よりも食後の血糖値上昇が極めて抑制されることが確認された。
【0079】
試験例2
α−アミラーゼ活性阻害効果
α−アミラーゼ活性の測定は、下記の方法により行った。
酵素 :50U/mL ブタ膵臓由来アミラーゼ(dissolved in buffer)
基質 :20mg Starch Azure(in 80 μL buffer)
緩衝液:40mMリン酸緩衝液(20mM NaClを含む)(pH7.0)
阻害剤:実施例1で得た製剤(被験試料)又は比較例5及び6で得た製剤(対照試料)
(dissolved in 20%EtOH)
手順:
(1)基質20mg/80μLと阻害剤10μLを等量混和し、37℃5分間プレインキュベート
(2)酵素溶液10μLを加え、37℃15分間反応
(3)100 mM リン酸緩衝液(pH4.3)900μLを添加
(4)反応液を遠心分離し、上清を波長595 nmで測定
【0080】
測定結果を図2に示す。図2から、実施例1群は比較例6群及び比較例5群に比較してα−アミラーゼ活性を強く阻害することが確認された。
【0081】
試験例3
リパーゼ活性阻害効果
リパーゼ活性の測定は、下記の方法により行った。
酵素 :50U/mL ブタ膵臓由来リパーゼ(Sigma type II dissolved in buffer)
基質 :0.1M 4-Methylumbelliferyl oleate(dissolved in DMSO)
緩衝液:150 mM NaCl、1.36mM CaCl2を含む 13 mM Tris-HCl (pH 8.0)
阻害剤:実施例1で得た製剤又は比較例5及び6で得た製剤(dissolved in 20%EtOH)
手順 :
(1)25℃でマイクロプレートに、緩衝液60μL、基質20μLを添加し混合
(2)阻害剤10μLを添加
(3)酵素10μLを添加
(4)25℃で30分間インキュベート
(5)停止液(クエン酸緩衝液pH4.2)100μLを添加
(6)励起波長355nmで波長460nmの蛍光を測定
【0082】
蛍光測定の結果を図3に示す。図3から、実施例1群は比較例6群及び比較例5群に比較してリパーゼ活性を強く阻害することが確認された。
【0083】
これら試験例により、本発明のポリフェノール組成物は、優れた、食後の血糖値上昇抑制作用、α−アミラーゼ活性阻害作用及びリパーゼ活性阻害作用を有することが確認されたことから、食事由来の脂肪吸収の抑制、血中中性脂肪の上昇抑制、肥満防止等のための医薬の有効成分として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメリアシネンシス由来のフラボノールアグリコン及びフラボノール配糖体を含有するポリフェノール組成物であって、
次の(A)及び(B):
(A)高速液体クロマトグラフィーにより測定される、加水分解後の当該ポリフェノール組成物の固形分中に含有されるフラボノールアグリコン総量。
(B)酒石酸鉄法により測定される、当該ポリフェノール組成物の固形分中に含有されるポリフェノール総量。
の質量比[(B)/(A)]が0.01〜18である、ポリフェノール組成物。
【請求項2】
前記(A)フラボノールアグリコン総量が0.7〜50質量%である、請求項1記載のポリフェノール組成物。
【請求項3】
前記(B)ポリフェノール総量が5〜95質量%である、請求項1又は2記載のポリフェノール組成物。
【請求項4】
当該ポリフェノール組成物がルチンを含有し、(C)当該ポリフェノール組成物の固形分中に含有されるルチンの含有量が0.4〜30質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリフェノール組成物。
【請求項5】
前記カメリアシネンシスが緑茶である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリフェノール組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリフェノール組成物を含有する、飲食品。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリフェノール組成物の製造方法であって、
カメリアシネンシス抽出物を合成吸着剤に吸着させる工程と、
前記合成吸着剤に第1の有機溶媒水溶液を接触させて、第1の画分を溶出させる工程と、
前記第1の画分を溶出した後の合成吸着剤に、前記第1の有機溶媒水溶液よりも疎水性の高い第2の有機溶媒水溶液を接触させて、ポリフェノール組成物を含む第2の画分を溶出させる工程を含む、製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−246530(P2010−246530A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60408(P2010−60408)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】