説明

ポリプロピレン材料の官能化方法

本発明は、ホットメルト接着剤の様なプラスチック製品の添加剤として用いることのできる、カルボン酸グラフト官能化プロピレン ホモポリマー及びコポリマーを含む反応製品の調整プロセスに係るものである。その様なプロセスは以下を含む:a) i)ある選択された種類の溶融プロピレンベース ホモポリマー又はコポリマーを含む第一の反応物質, ii)ある種の有機過酸化物を含む開始剤、及びiii)不飽和カルボン酸ベース官能化剤を含む第二の反応物質を組み合わせて反応混合物を形成し、b)比較的高いグラフト効率を持つ酸グラフトプロピレンベースポリマー材料を含む反応製品が形成されるまで、反応混合物を約130℃から約165℃の間の温度に維持すること。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
プロピレンのホモポリマー及びコポリマーの様なポリオレフィン材料は、極性となる様に修飾され、その用途は広い。極性官能性ポリプロピレン材料は、例えば、プラスチック製品の添加剤として、又はその製品において、その製品の表面特性又は調製加工性を修飾するために用いることができる。官能化されたプロピレン ホモポリマー及びコポリマーはまた、自動車の水性分散液及び洗浄用製品の調製に使用することができ、ホットメルト接着剤の製剤の添加剤として、その接着特性を修飾するために特に有用である。
【0002】
酸性部分のグラフト化による、プロピレン ホモポリマー及びコポリマーの酸性官能化は、溶融プロピレンベースのポリマーを、有機過酸化物の様な遊離基開始剤の存在下で不飽和カルボン酸又は無水マレイン酸の様な誘導体と反応させることを含む。官能化プロピレンベースのポリマーのこの様な一般的な方法による調製は、例えば、米国特許第4,753,997号; 第5,001,197号; 第5,319,030号; 第5,728,776号; 第5,998,547号; 第6,228,948号; 第6,331,595号;第6,437,049号 及び第6,784,251号; 米国特許出願公開広報第2002/0026010号及び第2004/0054086号に記載されている。
【0003】
酸官能化、例えば、マレイン酸化の様な、プロピレンベース ポリマー(以下、ホモポリマー、コポリマーを問わず「ポリプロピレン」と言う)の酸官能化が起きる方法及び範囲は、生成される官能化ポリマーを含む反応製品の特性、特徴及び有用度に影響を与えることがある。使用される官能化剤の全量に比べて、余りに少量の官能化酸反応物質しかポリマー骨格にグラフトされない場合は、反応製品内に残った未反応酸性反応物質が問題を起こすことがある。
【0004】
例えば、マレイン酸化する操作においてグラフトされない無水マレイン酸は、特に比較的高い温度の様な反応条件下で存在する場合は、マレイン酸化反応中又はその後に副生物が生成することもありうる。結果の反応製品は、その後、例えば、ホットメルト接着製剤中の非官能化ポリオレフィン材料と結合する場合、これらの副生物は接着製剤に望ましくない色彩を作りだすこともありうる。更に、これらの未反応残留不純物は、接着剤が熱に曝されると色彩が不安定となり、ポリマーの分子分解を生じ、チャー形成を起こす。余りに多量の遊離無水マレイン酸又はマレイン酸ベースの副生物を含むマレイン酸化反応生成物を用いたホットメルト接着剤は、本来好ましくは透明でヘーズを含むべきでない接着剤製品に望ましからぬヘーズを生ずることもある。
【0005】
官能化ポリプロピレンを含む反応製品の商業的規模での生産で起き得る上に述べた問題は、官能基小部分をポリプロピレン骨格にグラフトさせる効率を(ある所望の範囲で)向上させることにより除去又は最小化することができる。したがって、あるグラフト含有量(Grafting Content)まで官能化された、このタイプの材料を調製するための好適なグラフト効率(Grafting Efficiency)を実現するために使用することのできる反応剤と反応条件の組み合わせを選択することが有利である。
【0006】
グラフト効率は、ポリプロピレン骨格に共有結合しているカルボン酸ベースの官能化剤の濃度の測定数値を言う。これは、ポリマー骨格にグラフトされた官能化剤の濃度であり、粗反応製品内の官能化剤の濃度のパーセントとして定義される。
【0007】
グラフト含有量は、ポリマー骨格にグラフトされた官能化酸性基の全量を酸価により数値化したものである、すなわち、官能化ポリマーのグラム当たりの必要な中和KOHのミリグラムである。
【0008】
所望の重合反応製品内、又はその官能化反応製品は添加される最終製品内でそれ自身望ましくない特徴(例えば、貧弱な色彩、又は溶融時の透明度の減少)を作り出さず又は与えることのない反応条件を用いて、グラフト効率及びグラフト含有量の効果的及び好適な数値を生み出すことは有益であろう。
【発明の概要】
【0009】
本明細書においては、ホットメルト接着剤の様なプラスチック製品の添加剤として用いることのできる、カルボン酸グラフト官能化プロピレン ホモポリマー及びコポリマーを含む反応製品の調整プロセスが開示される。その様なプロセスは以下を含む:a) i)ある選択された種類の溶融プロピレンベース ホモポリマー又はコポリマーを含む第一の反応物質, ii)ある種の有機過酸化物を含む開始剤、及びiii)不飽和カルボン酸ベース官能化剤を含む第二の反応物質を組み合わせて反応混合物を形成し、b)比較的高いグラフト効率を持つ酸グラフトプロピレンベースポリマー材料を含む反応製品が形成されるまで、反応混合物を約130℃から約165℃の間の温度に維持すること。
【0010】
ある実施の態様においては、第一の反応物質中で又は反応物質として使用されるプロピレン ホモポリマー又はコポリマーは、重量平均分子量が約100,000g/モル未満、結晶ピーク融点、Tmが約157℃未満、及び溶融粘度が190℃で約40,000cPs未満である。開始剤として使用される有機過酸化物は、反応混合物の温度で約30分未満の分解半減期を持つものである。カルボン酸ベースの官能化剤は好ましくはマレイン酸又は無水マレイン酸であるのが良く、プロセスは、少なくとも約60%のグラフト効率を持つ反応製品を得ることのできる反応条件で実施される。
【0011】
本明細書の反応製品を生成するプロセスのある実施の形態においては、反応混合物は、開始剤、及び第二の反応物質を第一の反応物質に段階的に加える方法を用いて形成される。その様な成分の段階的な添加は好ましくは、まず一定量の開始剤を加え、次に一定量の第二の反応物質を第一の反応物質に別々に加えることを繰り返すことを含んでも良く、その各続く一定量の添加は開始剤の半減期に関連した時間の後になされる。一定量の開始剤は第一の反応物質に一度に加えても良い。しかし一定量の第二の反応物質は好ましくは反応混合物に、過酸化物開始剤の半減期の約1.5から2.5倍、より好ましくは約2倍の時間をかけてゆっくり添加されるのが良い。
【0012】
他の実施の態様では、官能性ポリプロピレンを含む反応製品それ自体及び例えば、その反応製品がそれらに添加された、非官能化ポリオレフィンを含むプラスチック製品に関するものである。
【0013】
反応製品は、官能化ポリマー材料単位グラム当り約5mgのKOHより大きいグラフト含有量を持つ官能化プロピレン ホモポリマー及びコポリマーを含んでも良い。その様な反応製品が、ホットメルト接着剤の様なプラスチック製品の添加剤として使用される場合、添加剤中の比較的少量の未反応官能化剤又はその副産物は、その様なプラスチック製品に望ましくない特性(例えば、望ましくない色彩、又は色強度、ヘーズ、濁り又は熱に対する不安定性)を与えることはない。
【発明の詳細な説明】
【0014】
本明細書に開示される、酸で官能化されるポリマー材料はプロピレンベース ホモポリマー及びコポリマーである。ポリマー材料は実質的にヘイズを含まないのが好ましい。出発ポリマー材料に曇りがあると、官能化製品も曇りが出ると予想される。これに限定するものではないが、受容できる出発材料は、チグラーナッタ触媒プロセス又はメタロセン触媒プロセスにより生成される最初に実質的にへイズがないポリマー材料である。更に、これに限定するものではないが、受容できる出発材料は、本明細書に開示される官能化の前の、任意の段階で低分子量開始材料を生成するために熱分解された高分子ポリマー材料である。つまり、もしヘーズのない製品を望む場合には、開始材料が実質的にへイズのないものである限り、開始ポリマー材料をどのような任意のソースから選択しても重大な要素とはならない。
【0015】
ある実施の態様においては、コポリマーが官能化される場合、本明細書で開始材料として有用なポリプロピレンコポリマーは、チグラー又はキラル メタロセン触媒の存在下で、プロピレンをC2 又はC4-C20 アルファ オレフィン、最も好ましくはプロピレン及びエチレン又はヘキセンと、活性剤及び任意的に捕捉剤を用いて重合させることで生成することができる。プロピレンと共に用いるコモノマーは線状又は分枝状であっても良い。好ましい線状アルファーオレフィンには、エチレン又はC4からC8 のアルファ−オレフィン、より好ましくはエチレン、1-ブテン, 1-ヘキセン及び1−オクテン、更により好ましくはエチレン又は1−ヘキサンである。好ましい分枝アルファ−オレフィンには、4-メチル-l-ペンテン、3-メチル-l-ぺンテン、及び3,5,5-トリメチル-l-ヘキセンを含む。
【0016】
好ましいポリプロピレンコポリマーは、モルベースで平均プロピレン含有量が約75%から約99%、より好ましくは約85%から約98%, 更に好ましくは約90%から約 97%、最も好ましくは約92%から約96%である。コポリマーの残りの部分は、上に規定の一以上のアルファ−オレフィン及び任意の少量の一以上のジエンモノマーを含む。
【0017】
好ましくは、プロピレンコポリマーは、1−ヘキセンをコモノマーとして約0.3から約11.2モル%、より好ましくは約1.1から約8.6モル% 、更に好ましくは約1.9から約6.2モル% 最も好ましくは約2.7から約3.4モル%の範囲の1-ヘキセンを含むのが良い。
【0018】
ある実施の態様においては、プロピレン ホモポリマー及びコポリマーは、好ましくは重量平均分子量Mwが約100,000 g/モル未満であるのが良い。より好ましくは、本発明により官能化されるプロピレン ベースポリマーはMwが約20,000から約80,000g/モル,最も好ましくは約30,000から約50,000g/モルであるのが良い。これらのポリマー材料の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて標準の方法で決定することができる。
【0019】
ある実施の態様においては、またポリプロピレン ホモポリマー及びコポリマーはまた結晶質ピーク融点Tmが約157°C未満である。より好ましくはその様なポリマー材料はTmが約125℃から約145℃であるのが良い。ピーク融点(Tm)、ピーク結晶化温度(並びに、融解熱及び結晶化度)は、ASTM E 794-85により以下の手順で決定することができる。示差走査熱量計(DSC)のデータがTA Instruments Model 2920 装置を用いて得られる。約7-10mg重量のサンプルがアルミニウム サンプル皿に封入される。まずサンプル−50℃に冷却し、その後10° C/分の割合で徐々に200℃まで加熱することによるDSCデータが記録される。サンプルは、第二の冷却サイクルが実施される前に200℃で5分間置かれる。その後第二の冷却及び加熱サイクル熱イベントが記録される。
【0020】
複数溶融又は結晶化ピークを示すポリマーでは、最高溶融ピークはピーク溶融点として取られ、最高結晶化ピークはピーク結晶化温度とされる。
【0021】
ある実施の態様においては、プロピレン ホモポリマー及びコポリマーは更に、比較的低い溶融粘度を持つものがある。通常、これらのポリマー材料の溶融粘度は190℃で約40,000cPs以下である。より好ましくは190℃での溶融粘度は約400から約10,000cPsの範囲であり、最も好ましくは約500から約3,000cPsであるのが良い。溶融粘度は通常Brookfield Thermosel粘度計及び27番のスピンドルを用いてASTM D-3236の手順に従い測定される。
【0022】
好ましいプロピレンベース ポリマーはまた環球法軟化点が約157 °Cより低い。より好ましくは本発明により官能化されるプロピレン ホモポリマー及びコポリマーは環球法軟化点が約125℃から約145℃であるのが良い。環球法軟化点はASTM E28の手順により決定される。
【0023】
前記のタイプのプロピレンベース ポリマーを官能化するために、これらのポリマー材料は不飽和、カルボン酸ベース官能化剤と反応させても良い。この官能化剤は少なくとも一つのエチレン系不飽和カルボン酸又は無水酸の様な酸の誘導体、エステル、塩、アミド、イミド等を含む。その様な剤には、以下のものを含むがこれに限定されるものではない:アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、4- メチルシクロhexa-4-ene-l,2-無水ジカルボン酸、バイシクロ(2.2.2)oct-5-ene- 2,3-無水ジカルボン酸、1 ,2,3,4,5,8,9, 10-オクタヒドロナフタレン-2,3-無水ジカルボン酸、2-オクサ-l,3-ジケトスピロ(4.4)non-7-ene, バイシクロ(2.2.1)hept-5-ene-2,3-無水ジカルボン酸、マレオピマル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、norborn-5-ene-2,3-無水ジカルボン酸、無水ナド酸, 無水ナド酸メチル, 無水フミック酸(himic), 無水フミック酸(himic)メチル、及びx-メチルバイシクロ(2.2.1)hept-5-ene-2,3-無水ジカルボン酸 (XMNA)である。
【0024】
他のモノマーには、少なくとも一つのエチレン系不飽和部分及び一以上の以下の基を持つものを含むがこれに限定されるものではない:エポキシ、イソシアン酸塩、チオシアン酸塩、シロキサン、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、塩化アクリル。
【0025】
好ましい具体的な酸官能化剤は、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、イチコン酸、無水イタコン酸、ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸、メチルエチルマレイン酸、ジブチルマレイン酸、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択されるものがある。これらの内無水マレイン酸及びマレイン酸が最も好ましい。
【0026】
本明細書に記載のプロピレンベース ポリマー材料と酸官能化剤の間の反応は遊離基生成開始剤化合物の存在下で起きる。ある実施の態様においては、開始剤は有機過酸化物化合物の形をとる。過酸化物開始剤は、ポリマーと官能化剤の間の、酸グラフト官能化反応が起きる比較的低い温度条件での使用に適する分解半減期を持つものが選択される。
【0027】
有機過酸化物のt1/2(半減期)はその熱誘発分解速度である。それは開始剤の元の量の50%が、ある与えられた温度で分解するに要する時間である。t1/2は通常、
対象の過酸化物の希釈溶液の示差走査熱量計−示差熱分析(DSC-TAM)
により決定される。t1/2はアレニウスの式kd = A(e-Ea/RT) 及びt1/2 = In2/kdにより計算することができる。式中
kd = 秒当りの解離定数
A =秒当りのアレニウス因子
Ea = 過酸化物の解離に要するJ/モルで表した活性化エネルギー
R = 8.3142 J/モル-K
T = 絶対温度Kで表した温度
t1/2= 秒で表した過酸化物の半減期
ある実施の態様においては、使用される有機過酸化物は、反応混合物の温度で約30分未満のt1/2(半減期)を持つものである。より好ましくは、有機過酸化物開始剤の半減期は、使用される反応温度で約3から約5分の範囲である。本プロセスで使用される過酸化物は、好ましくは、本発明の官能化反応での温度より幾らか高い温度で実施される同様の反応でしばしば開始剤として使用されるLuperox 101, 2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペロキシ)−ヘキサネル([2,5-di-methyl-2,5-di(t-butylperoxy)-hexane])の半減期以下の半減期を持つものが良い (Luperox 101の140℃でのドデカン中の0.2M 溶液として測定された半減期は31.9 分である) 。
【0028】
以上の結果より、有機過酸化物開始剤はジアルキル過酸化物、ジアクリル過酸化物、ジペロキシケタール、ヒドロペルオキシド、ケトン過酸化物、ペルオキシカルボネート、ペルオキシエステル及びこれらの組み合わせの広い種類のものから選択しても良い。好ましい開始剤には、ジ-t- ブチルペルオキシ(di-t-butyl peroxide), t-ブチル ヒドロペルオキシド(t-butyl hydroperoxide), t-ブチル ペルオキシベンゾエート (t-butyl peroxybenzoate) (Luperox P)), OO-(t-アミル) O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカルボネート (OO-(t-amyl) O-(2-ethylhexyl) monoperoxycarbonate (Luperox TAEC)), OO-(t-ブチル) O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカルボネート(OO-(t-butyl) O-(2-ethylhexyl) monoperoxycarbonate (Luperox TBEC)), 及び1,1-ジ(t-アミルペルオキシ)−シクロヘキサン(1,1-di (t-amylperoxy)-cyclohexane (Luperox 531M80))を含む。
【0029】
本発明のプロピレンポリマーの官能化は、「第二の」反応物質を含む上記の官能化剤及び上記の開始剤を共に、官能化される溶融ポリプロピレン材料を含む「第一の」反応物質に加えることにより、行ってもよい。開始材料及び第二の反応物質を第一の反応物質に添加し反応混合物を成形するためには、その添加はその量を漸次増加させ、逐次的に、同時に又は以下に述べる様に成分を規定の段階に従って添加することにより実施しても良い。
【0030】
官能化プロセスの好ましくは実施の態様においては、第一及び第二の反応物質及び開始剤は組み合わされ、官能化反応が使用される過酸化物開始剤の半減期に関係した特定の方法で実施される。特に開始剤及び官能化剤を含む第二の反応物質が、官能化されるポリプロピレンを含む第二の反応物質と組み合わされる場合は、この組み合わせは、好ましくは第一の反応物質に最初に一定量の開始剤を、その後に一定量の第二の反応物質を交互に加えることにより実施されるのが良い。この好ましい反応物質の添加方法においては、通常各使用される開始剤の全量及び第二の反応物質の全量は少なくとも2つの各一定量として、好ましくは2つのみの、各別々の一定量として加えるのが良い。
【0031】
開始剤及び第二の反応物質成分の各一定量の添加は、更に好ましくは、一定量の添加より生成される反応混合物が、各その様な一定量が完全に添加され、次の一定量が添加される前に、有機過酸化物の半減期の約80%から120%に等しい時間で(反応混合物の温度において)反応することを可能にする様なタイミングとするのが良い。
【0032】
更に好ましくは、反応混合物は、次の一定量が添加される前に反応混合物の温度で開始剤の半減期におおよそ等しい時間の間で反応させる様にするのが良い。
【0033】
最後に、また一定量の開始剤及び第二の反応物質が各々添加される時間の長さについて好ましい時間がある。特に開始剤の一定量が反応混合物に直ちに、又は一度に添加されるのが好ましいが、一方、第二の反応物質の一定量は、有機過酸化物開始剤の半減期の約1.5から2.5倍に等しい時間を掛けて(反応混合物の温度で)ゆっくりと添加すべきである。最も好ましくは、開始剤の一定量は直ちに添加し、第二の反応物質の一定量は、反応混合物の温度で過酸化物開始剤の半減期の約2倍の時間でゆっくりと添加されるのが良い。本発明の目的との関係で、「直ちに」又は「一度に」開始剤を添加するとは、成分の量、成分の流動性、添加方法及び使用機器と整合する、現実的に可能な短い時間で添加されることを言う。
【0034】
反応物質の添加方法にかかわらず、第二の反応物質を第一の反応物質に添加する場合は、十分な第二の反応物質が使用され、不飽和カルボン酸ベースの官能化剤が、反応前のベースで、第一の反応物質、第二の反応物質及び開始剤の最終的組み合わせた量の約0.1重量%から約10重量%を構成する様にする。より好ましくは、この官能化剤は、重量で第一の反応物質、第二の反応物質及び開始剤の最終的組み合わせた量の約0.5% から約6%を構成し、更に好ましくは最終的組み合わせた重量の約2%から約5%を構成するのが良い。言い換えると、本発明のプロセスは、通常ポリプロピレンの官能化剤に対する重量比が約10から約1,000、より好ましくは約15から約200、最も好ましくは約20から約50のもので実施される。
【0035】
開始剤成分を第一の反応物質に添加する場合、十分な開始剤材料が用いられ、開始剤材料は、反応開始前のベースで第一の反応物質、第二の反応物質及び開始剤の最終的組み合わせた重量の約0.1重量%から約5重量%を構成する様にする。より好ましくは、この開始剤成分は第一の反応物質、第二の反応物質及び開始剤の最終的組み合わせた重量の約0.5%から約2%を構成するのが良い。言い換えると、本発明のプロセスは、通常、ポリプロピレンの開始剤成分に対するモル比が約20から約1,000、より好ましくは約50から約200のものを用いて実施される。
【0036】
ある実施の態様においては、一度組み合わされると第一及び第二の反応物質は約130℃及び約165℃の間で、より好ましくは約140℃から約150℃の反応温度で、酸グラフトプロピレンベース ポリマー材料を含む反応製品を形成するのに十分な時間維持される。第一及び第二の反応物質及び開始剤が完全に結合されるという観点から言うと、反応温度は通常、使用される反応温度で有機過酸化物開始剤の半減期の約3から約6倍の時間維持される。したがって多くの場合、反応時間は約10から約70分の範囲である。反応温度は官能化反応の間の必須の範囲内で一定値に維持されても、そうでないこともある。
【0037】
官能化反応は、反応条件が効果的にコントロール可能な方法及び範囲で、反応物質が結合することができる任意の好適な反応器で実施することができる。バッチ反応器を用いても良い。代替的に連続、攪拌タンク反応器、半バッチ反応器、管状反応器、栓流反応器又は押出機を本発明のプロセスの実施のために使用しても良い。
【0038】
本明細書に開示された、選択された反応物質及び反応条件を用いることにより反応製品が得られ、反応混合物に加えられた比較的大きい割合の酸官能化剤がプロピレンポリマー材料に共有結合され、したがって、比較的少量の第二の反応物質は、モノマー又はオリゴマーの形で反応製品中に残る。
【0039】
M. Sclavons他(Polymer, 41(2000), 1989-1999ページ) www.sciencedirect. com/science/journalsより入手可能)が記載の方法を用いてマレイン酸ポリプロピレンの無水マレイン酸含有量が決定される。その様な方法では、約1.0gのマレイン酸ポリプロピレンが還流温度で100 mLのトルエン中で溶解される。メタノール中でフェノールフタレインを変色指示薬として用い、ポリプロピレンが滴定中沈殿しない加熱溶液で、テトラーブチルアンモニア水酸化物で滴定が実施される。
【0040】
官能性ポリプロピレン材料製品は分析のため反応製品から分離しても良い。通常この反応製品混合物から得られる官能性ポリプロピレン材料は、この官能化ポリマー材料の酸価により数値化されるあるグラフト含有量(Grafting Content)を持つ。酸価は、1グラムの官能化ポリマー材料を中和するために必要なミリグラム単位のKOHの数値として定義される。Sclavons他の滴定方法により、KOHを用いる従来の酸価試験から得られる数値と同等な数値が得られる。
【0041】
したがって、全ての、Sclavons他の滴定方法を用いて得られた結果はg樹脂当りのmg KOH/として報告される。
【0042】
上記の方法で確認される無水マレイン酸含有量は、マレイン酸ポリプロピレン反応製品の「未処理」(crude)及び「クリーン」にされた(cleaned)ものの両方の場合について決定される。
【0043】
「未処理」の場合はサンプルはマレイン酸化反応が行われた直後に採取されるサンプルである。「クリーン」の場合は、「未処理」製品約5gを還流温度で100mLのトルエンに溶解し、続いてアセトンをゆっくりと添加しマレイン酸ポリプロピレンを沈殿させることにより得られるサンプルである。
【0044】
沈殿させたマレイン酸ポリプロピレンはアセトン/トルエン混合物をろ過し、その後105%で48時間真空乾燥させる。これ手順により残留無水マレイン酸(モノマー又はオリゴマー状)がマレイン酸プロピレンから除去される。
【0045】
M. Sclavons 他は水酸化テトラーブチルアンモニアと無水マレイン酸の間の反応の化学量論的モル比は1:1であると報じている(Polymer, 41(2000), 1989-1999ページ)。この数値を用い、「未処理」及び「クリーン」マレイン酸ポリプロピレン サンプルの両方で、無水マレイン酸の重量パーセントが本明細書に記載の滴定実験から得られる数値より計算される。「グラフト効率」が、ポリプロピレン骨格(「クリーン」マレイン酸化サンプルより決定される)に共有結合している無水マレイン酸の「未処理」マレイン酸ポリプロピレンの全無水マレイン酸含有量に対するパーセントとして計算される。「グラフト含有量」は「クリーン」にされたサンプル内の無水マレイン酸の濃度であり、ポリマー樹脂のmg KOH/gで表したものである。
【0046】
本明細書に開示されたプロセスにより生成される反応製品は通常少なくとも約60%のグラフト効率値を持つこともある。より好ましくはこの反応製品は約70%から約90%のグラフト効率を持つ。
【0047】
生成された官能性ポリプロピレン材料は、官能化ポリマー材料グラム当り約5mg KOHより大きいグラフト含有量を持つ。より好ましくは本プロセスで生成された官能性ポリプロピレン材料は、官能化ポリマー材料グラム当り約10から約40mgのKOHのグラフト含有量を持ち、より好ましくは約12から約30mg のKOHを持つのが良い。
【0048】
酸グラフトされた官能性プロピレンポリマー含有反応製品は、広範囲の種類の製品の成分及び添加剤として使用することができ、その場合、例えば、その様な製品の安定性、流動性、表面特性、接着性、及び加工性を修飾するためにあるレベルの極性又は官能性がこれらの製品の構成成分に必要である。したがって、官能性ポリプロピレン ホモポリマー及びコポリマーは、自動車用の水性分散液及び洗浄製品の調製に制限なく使用でき、また、ポリオレフィンとガラス、金属の様な基材及びポリアミドの様なエンジニアリングプラスチックの間の接着促進剤として作用する種々の非水性ポリマー製品で用いることができる。官能性ポリプロピレンは、事実ホットメルト接着剤の様なホットメルト製品で広く用いられる。これらの官能性プロピレンベース材料はまた、例えば、フィルム又はポリオレフィンから製造することのできる種々の成形品で用いても良い。
【0049】
本明細書に開示されている官能性ポリプロピレン含有反応製品はポリプロピレンの様な非官能性ポリオレフィンを含むポリマーブレンド又は混合物中で用いても良い。ホットメルト接着剤の様なホットメルト製品では、本発明の反応製品は、重量でホットメルト製品の約0.1%から約10%を構成しても良い。より好ましくは、本明細書に記載の官能性ポリプロピレン含有反応製品は重量でホットメルト組成物の約1%から約5%を構成しても良い。本明細書に開示され、特許請求の範囲に記載されているポリマーブレンド又は混合物を含むホットメルト接着剤はまた、ポリエチレンワックス、ポリプロピレン ワックス、炭化水素粘着付与剤、及びこれらの追加成分の組み合わせよりなる群から選択される追加の成分を含むこともある。ホットメルト接着剤のこれら及び他の成分については、米国特許第6,946,528号により詳細に記載されており、本文献は参照により本明細書に組み入れられる。
【0050】
官能性ポリプロピレン含有反応製品を含む本明細書に記載のポリマーブレンド又は混合物は、固形化した場合、またポリオレフィンベースであっても良いポリマーフィルムの少なくとも一つの層、例えば、結合層(tie layer)を含んでも良い。これらの官能性ポリプロピレン含有反応製品成分と本明細書のポリマーブレンド又は混合物はまた、同様にしばしばポリオレフィンベースである成形製品を生成するために用いても良い。その様な商品は、射出、押出又は引張成形の方法を用いてブロー成形することができる。
【0051】
ホットメルト接着剤の様なホットメルト製品又は他の製品で用いられる場合、官能性ポリプロピレン含有反応成分は、そこに含まれる残留未反応官能化剤、又は官能化剤副産物により、それらが添加されるホットメルト製品に望ましくない光学的特徴を与えない様にするのが重要になることがしばしある。
【0052】
例えば、多くのホットメルト接着剤での応用では、望ましくない色彩上の特徴又は色彩強度を避けることが重要となる。また、官能化ポリマー添加剤の使用により、溶融した場合に、美的観点より、商業面より、または販売上の理由より少なくとも最も明るく、透明であることが必要なホットメルト接着剤に望ましくない曇りや又は濁りを与えないことがしばしば重要となる。
【0053】
本明細書に記載のプロセスによる官能性ポリプロピレン含有反応製品の生成により、その様な製品での比較的高いグラフト効率は、上記の望ましい光学特性が必要とされるホットメルト接着剤の様な製品での使用に特に適していることが見出された。理論に拘泥するものではないが、グラフト反応の完了により反応製品混合物中に比較的少量のグラフトされない官能化剤しか存在しないため、それらが添加される製品内で、遊離官能化剤、又はその副産物又は副生物が問題を引起す傾向が減少し又は効果的に除去される。また更に、高いグラフト効率を持つ官能性ポリプロピレン含有反応製品を商業的生産することは、消費される官能化剤原料が比較的高い割合で使用されることにより、ポリプロピレンの官能化をもたらしコスト面でより経済的となる。
【0054】
上で見た様に、高いグラフト効率を持つ官能性ポリプロピレン含有反応製品の使用により、光学特性、すなわち、その様な反応製品の色彩及び/又は透明性、特性、及びそれらが組み合わされる製剤は、美的観点より望ましい最終使用に適したものとなるホットメルト製剤をもたらすことが可能となる。色彩及び色彩強度については、本明細書に記載の反応製品によりホットメルト製剤に加えられる色彩又は色合いを問わず、本発明の反応製品のそれよりも通常低いグラフト高率を持つ同様の反応製品と比較して、その色彩又は色彩強度は明らかに低減している。本明細書に記載の官能性ポリプロピレン含有反応製品はしばしば、そのガードナー色彩指数(Gardner Color Index [ASTM D6166])が約8未満、約6未満又は約4未満である。
【0055】
本明細書に開示され、特許として請求される、官能性ポリプロピレン含有反応製品を含むホットメルト製剤の透明性に関しては、その様なホットメルト製剤は、溶融した場合、また開始時において177℃で24時間置かれた後の両方において通常透明である。ポリマー製剤の透明性に関するその様な特徴は通常簡単な肉眼による検査で判定することができる。
【0056】
実施例
官能性ポリプロピレン含有反応製品は、本明細書で開示され特許として請求されているものを含め、並びにこれらの反応製品を含むあるホットメルト製品は以下の実施例により説明することができる。これらの実施例では、以下に記載され、表1に示される特性を持つ種々のポリプロピレン開始材料が、また以下に記載される種々の過酸化物開始剤の存在下で無水マレイン酸により官能化される。これらのマレイン酸化反応を実施する一般的に手順は以下の通りである。反応条件及び結果は表2A及び2Bに記載の通りである。当業者は本明細書に開示される実施例は説明の目的で示されており、特許請求の範囲の発明はこれらの実施例又はその特定の条件に限定されるものではないことを理解するであろう。
【0057】
一般的マレイン酸化手順
マレイン酸ポリプロピレンは攪拌棒、熱電対及び加熱マントルを持つ400mLガラスビーカーで合成される。混合速度は全反応を通して150 - 350 RPMの範囲である。官能化プロセス中、大気酸素が存在することは望ましくない;したがって、大気酸素の濃度は、反応混合物の上部に常時窒素流を流すことによって最小にされる。
【0058】
ポリプロピレンが反応温度(例えば、140℃)で完全に溶融された後、有機過酸化物及び無水マレイン酸が、最初に過酸化物の、次に無水マレイン酸の一定量が添加される。各一定量の全添加量は過酸化物開始剤の大よそ半減期に等しい間隔を置いて分離される。この手順では使用される過酸化物の全量の半分が開始剤の第一の一定量として一度に添加される。過酸化物のほぼ半減期に等しい時間を置いた後、使用される無水マレイン酸全量の半分が、有機過酸化物の半減期の二倍にほぼ等しい時間を掛けて反応混合物にゆっくりと添加される。その後、新たにほぼ過酸化物の半減期に等しい時間間隔を置いた後、この手順が残りの過酸化物及び無水マレイン酸の残りを添加するため同様方法で繰り返される。この及び同様な方法による反応物質を組み合わせることは、反応物質の「段階的添加」と呼ぶ。
【0059】
有機過酸化物開始剤及び無水マレイン酸の添加が完全に終わった後、更に、使用される有機過酸化物の半減期t1/2の5倍に等しい時間の間反応が続けられる。反応混合物の揮発性成分は、溶融した成分に30分間窒素を通して除去される。「未処理」の溶融マレイン酸ポリプロピレンはケイ素で内張りした容器に注がれ、特性解析前に冷却される。「クリーン」にされたマレイン酸製品の生成及び回収がグラフト効率に関する開示に関連して本明細書に記載される。
【0060】
実施例のポリプロピレン
ポリマーAは米国特許出願公開公報第 2004/0127614号に記載される一般的手順に従い生成された実験ホモポリプロピレンである。本文献は参照により本明細書に組み入れられる。
【0061】
ポリマーBは米国特許出願公開公報第 2004/0127614号に記載される一般的手順に従い生成されたポリプロピレン及び1−ヘキセンの実験コポリマーである。本文献は参照により本明細書に組み入れられる。
【0062】
ポリマーCは、Eastman Chemical Companyから入手可能なEastoflex 1003、プロピレン及びエチレンのコポリマーである。
【0063】
ポリマーDはClariantから入手可能なLicocene 1302、メタロセン触媒により生成されたホモポリプロピレンである。
【0064】
ポリマーEは、Huntsman Polymersから入手可能なRextac 2304、プロピレン及びエチレンのコポリマーである。
【0065】
ポリマーFは、市場で入手可能な、当初MFRが1500 g/10分であるホモポリプロピレンより調製された分解ワックスである。
【0066】
これらの熱及び流体特性を表1に示す。
【数1】

【0067】
実施例の有機過酸化物
Luperox 101はArkema, Inc.より購入可能な有機過酸化物(2,5-Di(t-ブチルペロオキシ)-2,5- ジメチルヘキサン((2,5-Di(t-butylperoxy)-2,5- dimethylhexane) )である。
【0068】
Luperox P はArkema, Inc.より購入可能な有機過酸化物(t-(ブチル ペルオキシベンゾエート (t-Butyl Peroxybenzoate) )である。
【0069】
Luperox TBECは Arkema, Inc.より購入可能な有機過酸化物((OO-(t-ブチル) O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボーネート) (OO-(t-Butyl) O-(2-Ethylhexyl) Monoperoxycarbonate)である。
【0070】
Luperox 531M80は Arkema, Inc.より購入可能な有機過酸化物 (l,l-Di(t-アミルペルオキシ)−シクロヘキサン) (l,l-Di(t-amylperoxy)- cyclohexane))である。
【0071】
反応条件及びマレイン酸化の結果:
【数2】

【0072】
ホットメルト接着製剤
ホットメルト接着製剤がホモポリプロピレン(上の実施例に記載のポリマーA及びBとタイプ及び特徴が類似)及び表2A及び2Bに記載の種々の官能性ポリプロピレン反応製品を含み、生成される。これらの製剤は177℃で手動で混合され、1時間そのまま置かれた。この後、ホットメルト接着製剤は色彩及び透明度が定量的に検査された。透明度については、各特徴は以下の3つのいずれかに分類にされる:曇りがある、中程度、又は透明。
【0073】
各成分の量、その特徴、及び色彩及び透明度、結果のホットメルト接着剤の特性は表3A及び3Bに示す。
【数3】

【0074】
表2A、2B、表3A及び3Bは反応温度の低減及び適当な反応物質を選択することにより、ポリプロピレンマレイン酸化、特に反応物質が段階的に添加される場合に、グラフト効率を増すことができることを示す。結果のマレイン酸化反応製品は容易に生成することができ、低い粘度を持ち、実質的に架橋された材料を含まず、殆んど又は全く色彩を持たない。ホットメルト接着剤に添加された場合、これらのマレイン酸化反応製品は、曇りが全く無く、又は受け入れ可能な程度に低く、また望ましい色彩及び色彩強度の特性を持つ。
【0075】
本明細書には本発明の好ましい実施の態様が開示されているが、本発明の範囲から逸脱することなく種々の改変が可能であることを理解せねばならない。参照により本明細書に組み入れられる特徴及び/又は刊行物による開示が、本明細書の記載の用語を不明確にする場合は、本明細書の記載が優先する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)反応混合物を形成するためにi)溶融プロピレンベース ホモポリマー又はコポリマーを含む第一の反応物質、ii)有機過酸化物を含む開始剤、及びiii)不飽和カルボン酸ベース官能化剤を含む第二の反応物質を組み合わせ、b)酸グラフトプロピレンベース ポリマー材料を含む反応製品が形成されるまで、出来た反応混合物を反応温度に維持することを含むプロセスであって、該プロセスは、
A)前記ホモポリマー又はコポリマーは、重量平均分子量が100,000 g/モル以下、結晶質ピーク融点Tmが157℃未満、及び溶融粘度が190℃で40,000 cPs以下であり;
B)前記有機過酸化物開始剤は、前記反応混合物の温度で30分未満の分解半減期を持ち;
C)前記反応混合物は反応製品を形成するため、130℃から165℃の間の反応温度に維持され、反応製品は少なくとも60%のグラフト効率(Grafting Efficiency)を持つ、
前記プロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスであって、組み合わせるステップは、前記第一の反応物質に、最初に少なくとも一定量の開始剤を、その後に一定量の第二の反応物質を交互に加え、その添加は、前記各一定量の添加により生成される反応混合物が、各その様な一定量が完全に添加され、次の一定量が添加される前に、前記有機過酸化物の半減期の約80%から120%に等しい時間で反応することを可能にする様な時間間隔とされる添加を含む、前記プロセス。
【請求項3】
請求項2に記載のプロセスであって、一定量の開始剤が前記反応混合物に一度に完全に添加され、一定量の第二の反応物質は、有機過酸化物の半減期の1.5から2.5倍に等しい時間で前記反応混合物にゆっくりと添加される、前記プロセス。
【請求項4】
開始剤の全量及び第二の反応物質の全量が、添加される成分が少なくとも2つの一定量で前記第一の反応物質に添加され反応物質を形成し、各一定量の開始剤は前記反応混合物に一度に添加され、各一定量の第二の反応物質は前記反応混合物に、前記有機過酸化物の半減期の2倍の時間でゆっくり添加され、各その様な一定量の前記反応混合物への完全な添加は前記有機過酸化物の半減期に大よそ等しい時間間隔を置いて実施される、請求項2又は3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記プロピレン ホモポリマー又はコポリマーは、重量平均分子量が20,000から80,000 g/モル、結晶質ピーク融点Tmが125℃から145℃、及び溶融粘度は190℃で 400から10,000 cPsである、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の前記プロセス。
【請求項6】
前記ポリプロピレンベース ホモポリマー又はコポリマーがチーグラー・ナッタ又はメタロセン触媒により生成され、環球法軟化点が約157°Cより低い、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の前記プロセス。
【請求項7】
前記飽和カルボン酸ベース官能化剤が、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、イチコン酸、無水イタコン酸、ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸、メチルエチルマレイン酸、ジブチルマレイン酸、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の前記プロセス。
【請求項8】
前記有機過酸化物がジアルキル過酸化物、ジアクリル過酸化物、ジペロキシケタール、ヒドロペルオキシド、ケトン過酸化物、ペルオキシカルボネート、ペルオキシエステル及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の前記プロセス。
【請求項9】
前記反応混合物が、反応混合物が完全に形成された後に、前記反応温度での有機過酸化物開始剤の半減期の3から6倍の時間、反応温度で維持される、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の前記プロセス。
【請求項10】
前記不飽和カルボン酸ベース官能化剤が、第一の反応物質、第二の反応物質及び開始剤の組み合わせた重量の0.1重量%から10重量%を含む、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の前記プロセス。
【請求項11】
前記有機過酸化物開始剤が、当初の第一の反応物質、第二の反応物質及び開始剤の組み合わせた重量の0.1重量%から5重量%を含む、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の前記プロセス。
【請求項12】
前記反応物質と反応製品製剤の結合がバッチ反応器、管状反応器、又は押出機で実施される、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の前記プロセス。
【請求項13】
反応製品を生成するプロセスであって、該プロセスは、
a) 重量平均分子量が20,000から80,000g/モル、結晶質ピーク融点Tmが125℃から145℃、及び溶融粘度が190℃で400から10,000cPsである溶融ポリプロピレン材料を含む第一の反応物質を提供し;
b) 反応混合物を形成するために、第一の反応物質を、前記反応混合物の温度で3から5分の分解半減期を持つジブチル含有過酸化物を含む開始剤と、マレイン酸及び無水マレイン酸から選択されるマレイン酸化剤を含む第二の反応物質の両方と組み合わせ、前記の組み合わせは、第一の反応物質に第一の一定量の開始剤を、続いて第一の一定量の第一のマレイン酸化剤を、続いて第二の一定量の開始剤を加え、続いて第二の一定量のマレイン酸化剤を加えることで実施され、前記反応混合物への、各その様な一定量の完全な添加は、前記過酸化物の少なくとも半減期の長さの時間を置いて、分離されで実施され、その範囲は2から6分であり;
c) 第一の反応物質、第二の反応物質及び開始剤の組み合わせから得られる反応混合物を140℃から150℃の温度で、過酸化物開始剤の前記反応温度での半減期の3から6倍の時間維持し、それによりマレイン酸ポリプロピレンを含む反応製品を形成する、
ことを含む前記プロセス。
【請求項14】
前記開始剤の両方の一定量が前記反応混合物に直ちに添加され一方、第二の反応物質の両方の一定量が、前記反応混合物に、反応混合物の温度で過酸化物の半減期の約2倍に等しい時間でゆっくりと添加される、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
官能性ポリプロピレン含有反応製品が、前記反応製品が溶融プロピレン ホモポリマー又はコポリマーを、反応温度で分解半減期が30分未満である有機過酸化物開始剤の存在下で不飽和カルボン酸官能化剤と反応させて生成され、前記ホモポリマー又はコポリマーは重量平均分子量が100,000g/モル以下であり、結晶質ピーク融点Tmが157°C未満であり、溶融粘度は190℃で40,000cPs未満であり、前記反応製品は少なくとも60%のグラフト効率を持ち、そして前記反応製品は更に官能性ポリプロピレン グラム当り5mg KOHより大きいグラフト含有量(Grafting Content)を持つ官能性ポリプロピレン材料を含む、前記反応製品。
【請求項16】
70%から90%のグラフト効率を持つ請求項15に記載の反応製品。
【請求項17】
グラフト含有量が10から50mgのKOH/gである官能性ポリマー材料を含む、請求項15又は16に記載の反応製品。
【請求項18】
請求項15乃至17のいずれか1項に記載の反応製品であり、前記プロピレンベース ホモポリマー又はコポリマーがチーグラー・ナッタ又はメタロセン触媒により生成され、そして環球法軟化点が約157°Cより低く、及び前記不飽和カルボン酸ベース官能化剤が、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、イチコン酸、無水イタコン酸、ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸、メチルエチルマレイン酸、ジブチルマレイン酸、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択され、及び前記有機過酸化物はジアルキル過酸化物、ジアクリル過酸化物、ジペロキシケタール、ヒドロペルオキシド、ケトン過酸化物、ペルオキシカルボネート、ペルオキシエステル及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される、前記反応製品。
【請求項19】
ホットメルト ポリマー溶液であり、溶融非官能性ポリプロピレン及び請求項15乃至18のいずれか1項に記載の溶融官能性ポリマー含有反応製品の前記溶液を重量で0.1%から10%含む、前記ポリマー溶液。
【請求項20】
177℃の温度で24時間おかれた後、透明且つ実質的にヘーズのない請求項19に記載のホットメルト ポリマー溶液。
【請求項21】
請求項19に記載の固形化したホットメルト ポリマー溶液を含む少なくとも一つの層を含むポリマー性フィルム。
【請求項22】
請求項19に記載のホットメルト ポリマー溶液を用いて製造される成形商品。
【請求項23】
ホットメルト接着剤であり、請求項15乃至18のいずれか1項に記載のマレイン酸ポリプロピレン含有反応製品を重量で1%から5%含み、ホットメルト接着剤の残りの部分は、ポリエチレンワックス、ポリプロピレン ワックス、炭化水素粘着付与剤、及びこれらの追加成分の組み合わせよりなる群から選択される追加の成分を含む、前記接着剤。

【公表番号】特表2009−518504(P2009−518504A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544330(P2008−544330)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/038784
【国際公開番号】WO2007/067243
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】