説明

ポリプロピレン樹脂からなる感圧接着材料

密度が0.86〜0.89g/cm、好ましくは0.86〜0.88g/cm、特に好ましくは0.86〜0.87g/cmであり、結晶融点が少なくとも105℃、好ましくは少なくとも115℃、特に好ましくは少なくとも135℃、極めて好ましくは少なくとも150℃である、好ましくはアイソタクチックなポリプロピレン樹脂と、少なくとも1種の接着性樹脂とからなる感圧接着剤であって、接着性樹脂の含量が少なくとも20phr、好ましくは少なくとも50phrであり、接着テープに、少なくとも0.5N/cmの鋼への接着力を与える感圧接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密度は低いが融点の高いポリプロピレン樹脂および少なくとも1種の接着性樹脂を用いた感圧接着材料、ならびに接着テープへの使用に関する。この接着テープは例えば低エネルギー表面への接着に適する。
【背景技術】
【0002】
コモノマー含量の高いランダムコポリマー(プラストマーとも呼ばれる)は、結晶化度が低く、融点も約40℃〜60℃と低くあるいは非晶質である。これらは、固いポリオレフィンに対し、柔軟化材、または耐衝撃性改良材として使用される。これらは、多くの場合エチレンを主モノマーとして含み、コモノマーとしてプロピレン、ブテン、オクテン、または酢酸ビニルを含有する。これらは、融点が低く、耐熱性でないので、ホットメルト接着剤には、限定的な量だけ用いられる。このため、諸用途(例えば、板紙接着、おむつの製造、ホットメルト・ガン)には、通常EVA、粘着付与剤(接着性樹脂)、およびワックスを用いた接着材料を使用する。
【0003】
こうした柔軟なランダムコポリマーは、共押出し層として、容易に接着でき、また容易に剥がすことのできる表面保護フィルム用に提案されている。これらは、室温ではほとんど接着力がない(すなわち0.1N/cm未満)が、融点より高温ではポリカルボナート、アクリルガラスまたはABSの板に傷防止材としてシールされ、後に室温でまた剥がされる。しかし、共押出し層が、酢酸ビニルなどの極性コモノマーを含有すると、保護フィルムは後に容易には剥がれないようにされる。柔軟なランダムコポリマーでなる表面保護フィルムは、少しでも貯蔵温度が上がるとロールがブロッキングしてしまう、すなわちもはや巻き解くことができないので、貯蔵性が良くなく、さらに利用時の耐熱性がない。このため、シール温度を高くしないといけないときでも、通常融点が60℃以上のランダムコポリマーが使用される。これに代わって、ポリアクリラートまたは合成ゴムを用いた感圧接着材料の塗工層を設けたフィルムも使用される。
【0004】
こうした柔軟なランダムコポリマーは、室温(23℃)で接着性の表面保護フィルム用にも提案されている。少量の可塑剤または粘着付与剤(樹脂)を加えることで、室温でも合成樹脂板または研磨した鋼板に対して良好に接着できるまで結晶化度は減少する。しかしそうした接着剤は、柔軟なランダムコポリマーを用いる共押出し層よりもさらに耐熱性が低い。さらにそうした板から剥がした後に、当業者がゴーストと呼ぶ薄い付着体が残る。したがって、そうした用途には通用できていない。したがって、感圧接着性表面保護フィルムには、通常ポリアクリラートまたは合成ゴムを用いた接着材料塗工層を有するフィルムを使用する。
【0005】
ポリイソブチレンやEPDMゴムといった、結晶化度がゼロまたは無視できる程度の柔軟なポリマーも、感圧接着性でない、すなわち実質的な接着力を示さない。そうした柔軟なポリオレフィンによる非常に平滑な層は、ガラスまたはポリカルボナート板といった非常に平滑な下地に対しては軽く接着するが、これは天然ゴム、ブチルゴムまたは高度に可塑化されたPVCの平滑な層と同じである。こうした材料は、自重は支持でき、自然に落下することはないが、ガラス転移温度が感圧接着剤と比べてはるかに低いので、剥離力に対して実質的に抵抗力がない。さらにこれらの材料は、十分な結晶化度がないので、貯蔵によって、合着する傾向があり、そのためブロック(梱(Ballen))状で供給される。これは押し出し機にかけることはできない。さらに、これらは結晶融点が極く低いか、存在しないので耐熱性がない。
【0006】
接着テープは、少なくとも1層の(感圧)接着剤を含み、または、少なくとも1層の(感圧)接着剤からなり、この接着剤は通常天然ゴム、合成ゴム(例えばポリイソブチレン、スチレンブロックコポリマー、EVA、SBR)と接着性樹脂またはポリアクリラートとの組合せに基づき、また非常にまれには非常に高価なシリコーンでなる。通常の感圧接着剤は、高い接着力、剪断強度、融液からの無溶媒加工性、(分散液コートに比べて)高い耐水性、安いコストまたは高い熱老化安定性およびUV安定性といった性質を示す。
【0007】
低エネルギー表面への接着用の接着テープは、したがって通常天然ゴム、スチレンブロックコポリマー、およびアクリラート系の接着剤を用いて作製される。天然ゴム接着剤は、溶媒を含み、老化安定性およびUV安定性が乏しい。スチレンブロックコポリマー接着剤は、通常スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーに基づき、溶媒を使用せずに加工できるが、同様に老化安定性およびUV安定性が乏しい。両方の種類のゴム接着剤とも、低エネルギー表面へ良好に接着する。水素化スチレンブロックコポリマーに基づく接着剤は、非常に高価であり、タックおよび接着力が低く、したがって多くの下地へあまり接着しない。また、同様に明瞭に100℃より低温で軟化してしまう。アクリラート接着剤は、老化安定性およびUV安定性は良好であるが、低エネルギーの非極性ポリマー、例えばポリエチレンには、これまで多くの努力がなされたがうまく接着しないので、接着対象の表面を含溶媒性プライマーで前処理しないといけない。シリコーン感圧接着剤は、老化安定性およびUV安定性が良好で、低エネルギー表面への接着も良好だが、極めて高価で、また通常のシリコーン加工したライナーで被覆できない(あるいは再び剥がすことができなくなる)。
【0008】
溶媒を含まないこと、低エネルギー表面にも高い接着性を有すること、アクリラート接着剤のような老化安定性およびUV安定性、ならびに安いコスト、および十分な剪断強度といった様々な接着剤の優れた性質を互いに組み合わせた接着剤への需要が長きにわたり存在した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2006/027389号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、従来技術の欠点のない、例えば接着テープ用の感圧接着材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、独立請求項に記載するような感圧接着材料により解決される。本発明の対象の有利な改良形態ならびにそうした接着材料の使用は、従属請求項に示されている。本発明の核心は、特別なプロピレン樹脂であるが、これまで当業者には、ポリプロピレンが感圧接着剤に適するなどとは想像することもできなかった。
【0012】
これに従い、本発明は、密度が0.86〜0.89g/cm、好ましくは0.86〜0.88g/cm、特に好ましくは0.86〜0.87g/cm、および結晶融点が少なくとも105℃、好ましくは少なくとも115℃、特に好ましくは少なくとも135℃、極めて好ましくは少なくとも150℃の好ましくはアイソタクチックなポリプロピレン樹脂、および少なくとも1種の接着性樹脂を含み、ここに接着性樹脂の含量が少なくとも20phr、好ましくは少なくとも50phrである感圧接着材料に関する。「phr」とは、100重量部のゴムまたは樹脂に対する重量部(parts per hundred rubberあるいはresin)、すなわちここでは100重量部のポリプロピレン樹脂に対する重量部を意味する。そうした感圧接着材料は、接着テープに、少なくとも0.5N/cm、好ましくは少なくとも1N/cmの鋼への接着力を付与できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
親和性の良い接着性樹脂を、場合により可塑剤を添加して使用することにより、100℃より明らかに低い結晶融点を有するプロピレン樹脂の融解ピークは、接着剤配合物において消失する、すなわち室温において結晶架橋により、剪断強度が与えられないことが確認されている。さらに好ましくは、可塑剤もまたポリプロピレン樹脂と親和性を良くする。感圧接着性を実現するには、結晶化度が低くなければならないが、これは低い密度、低い曲げ弾性率、小さい融解熱で示される。コモノマーの含量を増やすと結晶化度は下がるが、結晶融点Tcrも下がってしまう。
【0014】
後者については、下記の実験により実証された関係が当てはまる:
cr=(−5.12*X+145.68)*℃
ここに、Xはモル%単位でのエチレン含量である。上式の正確な値は、重合条件によっても若干影響を受ける、また原則的には他のコモノマー例えばブテンにも当てはまる。最近出現した密度と結晶化度が低い幾つかのプロピレン樹脂は、柔らかいプロピレンランダムコポリマーに典型的な100℃より明白に低い融解ピークの他に、100℃よりも高い温度での小さな融解ピークがある。このピークは、比較的小さな融解熱を示す。本発明によれば、ポリプロピレン樹脂の融解熱は好ましくは3〜18J/gである。これと比べると、プロピレンホモポリマーまたは不均一相コポリマーでの融解熱は100J/gを超える(純粋なポリプロピレン結晶の融解熱の文献値は、165または189J/gである)。当業者にとっては驚くべきことに、本発明によるプロピレン樹脂では、親和性の高い接着性樹脂を混合した後で、場合により特に親和性の良い可塑剤を加えて、純粋なプロピレン樹脂よりも結晶融点が約5℃低いときでも、100℃よりも高い融解ピークが基本的には維持されることが確認された。
【0015】
そうしたプロピレン樹脂は、いまや感圧接着剤の製造を可能にしている。純粋なプロピレン樹脂は、30℃〜165℃の範囲での十分な融解熱あるいは結晶化度により、室温において顆粒として取り扱え、押し出し機での加工が可能である。接着性樹脂と混合し、場合により特に親和性の良い可塑剤を加えると、結晶化度が大きく失われ、混合体は感圧接着性になる。しかし100℃より高い融解ピークの結晶化度を十分に維持することで、本発明による感圧接着剤は使用温度、すなわち室温から少なくとも70℃までにおいて、結晶化領域による物理的架橋が生じ、通常のランダムコポリマーにより製造された感圧接着剤と対照的に、十分な剪断強度が付与される。本発明のプロピレン樹脂は、不均一相ポリプロピレンコポリマー用の通常な方法により製造されるが、コモノマーの含量が非常に多く、結晶化度がはるかに低い点でそれらと異なっている。この方法は、1つの反応器でなく少なくとも2つの反応器または反応器カスケードにおいて重合され、このとき反応器ごとにプロピレンとコモノマーの割合が異なるやり方に基づいている。多くの気相法、例えばスフェリポール法、ハイポール法、キャタロイ法、およびノボレン法が適している。また、反応器は1つだけだが、中に少なくとも2つの反応条件の異なるゾーンが存在するスフェリゾーン法も、原理的には本発明のプロピレン樹脂の製造に適している。
【0016】
以下において、感圧接着材料、感圧、および感圧接着物質という概念は同じ意味を持つものとして使用される。感圧接着剤は粘弾性の材料であり、室温で乾燥状態で持続的に粘着性があり接着性が維持される。接着は、表面エネルギーが十分あるどんな基材(したがってシリコーンおよびテフロンは除外される)にも軽く押しつければすぐに達成される。
【0017】
感圧接着材料とは、本発明の意味において、接着テープに、鋼に対する少なくとも0.5N/cm、好ましくは少なくとも1N/cmの接着力を付与することができるものである。
【0018】
プロピレンポリマーはこれまで当業者において、感圧接着剤には適切でないとされてきた。ところが驚くべきことには、密度が0.86〜0.89g/cm、および結晶融点が少なくとも105℃のポリプロピレン樹脂を用いて、高い接着力、高いタックおよび高い剪断強度の感圧接着剤が製造でき、これは多様な下地、とりわけ非極性塗料やオレフィン合成樹脂のような低エネルギー表面に対しても優れた接着性を示す。
【0019】
本発明のポリプロピレン樹脂は、好ましくはメルトインデクッスが0.5〜10g/10分、特に好ましくは3〜8g/10分である。このポリプロピレン樹脂の曲げ弾性率は、好ましくは50MPa未満、特に好ましくは26MPa未満である。
【0020】
本発明の別の有利な実施形態において、ポリプロピレン樹脂は、プロピレン、および他のC〜C10のオレフィン、好ましくはC〜C10のαオレフィンから選ばれる少なくとも1種の別のコモノマーを含む。特に適しているのは、1−ブテンおよびエチレンを用いたコポリマー、とりわけ1−ブテンおよびプロピレンを用いたコポリマー、ならびにプロピレン、ブテン−(1)、およびエチレンを用いたターポリマーである。
【0021】
このポリプロピレン樹脂は、好ましくは、75〜95モル%、特に好ましくは80〜90モル%のプロピレンをモノマーとして含有する。プロピレンの割合がさらに高いと、感圧接着材料は通常の大方の用途に対して、タックが低くなり過ぎ、割合がさらに低いと、剪断強度(凝集力)が低くなり過ぎる。ポリマーの結晶性の割合は、シンジオタクチックまたは好ましくはアイソタクチックプロピレン配列により定まる。主にエチレンを含有するポリマーでは、結晶性の部分はエチレン配列で形成され、融点が低過ぎるので適していない。
【0022】
このポリプロピレン樹脂は、多様な方法、例えばブロックコポリマーとして、グラフトポリマーとして、または不均一相ポリプロピレンにおけるようないわゆるリアクター・ブレンド(耐衝撃性ポリプロピレンとも呼ばれる、あるいは必ずしも正確でないがポリプロピレンブロックコポリマーとも呼ばれる)として構成できる。このポリプロピレン樹脂は、プロピレンモノマーおよび別のオレフィンモノマー(例えばエチレンまたはブテン)を統計学的に分布させて含有する、融点の低い古典的な不均一相でないポリプロピレンランダムコポリマーではない。なぜならそうしたポリマーは、非常に低い剪断強度、接着力、および耐熱性しか得られないからである。しかし、不均一相ポリプロピレンは、結晶融点が、本発明による範囲内に依然ある限りは、結晶性成分中に少量のコモノマーを含有できる。
【0023】
このポリプロピレン樹脂のポリプロピレン結晶の大きさは、好ましくは100nm以下であり、これにより感圧接着材料は透明度が高くなる。そうしたポリプロピレン樹脂は、ジルコニウム系のメタロセン触媒により製造できる。このポリプロピレン樹脂は、好ましくは、ASTM D1003により測定するヘイズ値が、8未満である(2mm厚のペレットを用いシクロヘキサノール中で測定)。
【0024】
ポリプロピレン樹脂の密度は、ISO 1183に従って測定して、単位g/cmで表す。メルトインデクッスは、ISO 1133に従って2.16kgを用いて試験して、単位g/10分で表す。本開示に示す値は、当業者に周知の通り、ポリマーの主モノマーによって異なる温度で測定され、主としてエチレンまたは1−ブテンを含むポリマーでは190℃であり、また主としてプロピレンを含むポリマーでは230℃である。曲げ弾性率(flexural modulus)は、ASTM D790(2%伸びにおける割線係数)に従って求める。結晶融点(Tcr)および融解熱はDSC(Mettler DSC822)で、ISO 3146に従って昇温速度10℃/分で測定する。幾つもの融解ピークが出現するときには、100℃を超える融解ピークのみが感圧接着材料配合物で維持され有効であり、これに対し100℃を大きく下回る融解ピークは維持されず製品の特性に影響しないので、最高温度のピークが選ばれる。融解熱は、一方で配合物の接着力およびタックを決定するが、他方では、特に高温(すなわち70℃以上)での剪断強度を決定する。したがって、ポリプロピレン樹脂の融解熱は、接着特性間の最適なバランスに対し重要であり、好ましくは3〜18J/g、特に好ましくは5〜12J/gである。
【0025】
したがって、感圧接着材料の融解熱も同様に、接着特性間の最適なバランスに対し重要であり、好ましくは1〜6J/g、特に好ましくは2〜5J/gである。
【0026】
感圧接着材料中の、本発明によるポリプロピレン樹脂の含量は、好ましくは少なくとも15重量%、特に好ましくは少なくとも20重量%である。
【0027】
感圧接着材料中の、本発明によるポリプロピレン樹脂の含量は、さらに好ましくは40重量%未満、特に好ましくは35重量%未満、また極めて好ましくは30重量%未満であり、これにより感圧接着剤は特に良好なタック(保持能力、粘着性)を達成できる。
【0028】
本発明によるポリプロピレン樹脂は、ゴム材として知られる、天然ゴムまたは合成ゴムといったエラストマーと組み合わせることができる。これにより、液状で移行性の可塑剤を用いないで済む。好ましくは、天然ゴム、SBR、NBR、または不飽和スチレンブロックコポリマーといった不飽和エラストマーは極く少量しか使用されず、または特に好ましくは全く使用されない。ポリイソブチレン、ブチルゴム、EPM、HNBR、または水素化スチレンブロックコポリマーといった主鎖が飽和した合成ゴムが、所望の改質の場合に好ましい。
【0029】
驚くべきことには、本発明によるポリプロピレンに基づく接着剤の粘着性(タック)および接着力は、従来のゴム材と対照的に、樹脂の多分散性に大きく依存することが判明した。多分散性とは、モル質量分布の重量平均と数平均の比であり、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定できる。このため接着性樹脂には、多分散性が2.1未満、好ましくは1.8未満、特に好ましくは1.6未満のものが使用される。最大のタックは、多分散性が1.0〜1.4の樹脂で達成される。
【0030】
本発明による感圧接着剤用の接着性樹脂としては、コロホニウム(例えばバルサム樹脂)、またはコロホニウム誘導体(例えば、不均化、二量化、またはエステル化コロホニウム)系の樹脂、好ましくは部分的ないしは完全に水素化したものが適していることが判明した。これらは、全ての接着性樹脂の中で最大のタック(粘着性、保持能力)を示す。おそらくこれは多分散性が1.0〜1.2と小さいことに起因する。テルペンフェノール樹脂も同様に適しているが、タックは中程度となる。しかし、その代わりに剪断強度および耐老化性が極めて高い。
【0031】
炭化水素樹脂も、おそらくその極性により親和性が良いので、同様に好ましい。これらは、例えば、クマロンインデン樹脂、またはスチレンまたはαメチルスチレン系樹脂といった芳香族樹脂、クラッカーのCまたはC留分からのピペリレン等のCモノマー、またはβ−ピネンまたはδ−リモネン等のテルペン類の重合で得られる脂環式炭化水素樹脂、またはこれらの組合せで、好ましくは部分的ないしは完全に水素化したもの、さらに芳香族を含有する炭化水素樹脂またはシクロペンタジエンポリマーを水素化して得られる炭化水素樹脂である。
【0032】
さらに、ポリテルペンに基づく樹脂も、好ましくは部分的ないしは完全に水素化して使用することができる。
【0033】
接着性樹脂の量は、好ましくは130〜350phr、特に好ましくは200〜240phrである。
【0034】
この接着剤は、例えば(パラフィン系または分岐した)脂肪族、(ナフテン系)脂環式、および芳香族の鉱油や、フタル酸、トリメリト酸、クエン酸、またはアジピン酸のエステル;羊毛脂や、例えば低分子量ニトリルゴム、ブタジエンゴム、またはポリイソプレンゴムといった液体ゴムや、イソブテンおよび/またはブテンからの液体重合体や、特に上述した接着性樹脂の種類の接着性樹脂の原料に基づく、融点が40℃未満の液体樹脂または軟性樹脂など、液体可塑剤を好ましくは含む。その中で特に好ましいのは、イソブテンホモポリマーまたはイソブテンブテンコポリマーといった液体イソブテン重合体や、フタル酸、トリメリト酸、クエン酸またはアジピン酸のエステル、とりわけそれらの分岐オクタノールまたはノナノールとのエステルである。鉱油は、ポリプロピレン樹脂を粘着性にするのには非常に適しているが、接着対象の下地中に移行する可能性があるので、接着剤は、1つの可能な実施形態では、鉱油を実質的に含まない。
【0035】
接着性樹脂の融点(DIN ISO 4625に従い測定)も同様に重要である。通常、ゴム材(天然または合成ゴム系)の接着力は、接着性樹脂の融点とともに増加する。本発明によるポリプロピレン樹脂においては、この傾向は逆のようである。融点が105℃〜140℃と高い接着性樹脂は、本発明において好ましい融点が90℃未満の接着性樹脂に比べて明確に不利である。融点が85℃未満の樹脂は、フレークや錠剤が輸送や貯蔵中に固まってしまうので、市場で入手できるものは数が少ない。したがって、本発明においては、好ましくは通常の(例えば融点が85〜105℃範囲の)接着性樹脂を可塑剤と組み合わせて、事実上樹脂融点を低下させる。混合融点は、接着性樹脂と可塑剤を接着剤における割合と同じ割合で均一に混ぜた混合体で測定する。この融点は好ましくは45〜95℃の範囲にある。
【0036】
エラストマー成分として、天然ゴムまたは不飽和スチレンブロックコポリマーに基づく従来の接着剤は、通常フェノール系酸化防止剤を、ポリマー鎖中に二重結合を有するこれらのエラストマー成分の酸化分解を防止するために含有する。しかしながら本発明による接着剤は、酸化に敏感な二重結合を持たないポリプロピレン樹脂を含むので、酸化防止剤を含まなくてもよく、例えば皮膚への適用に有利である。
【0037】
特性の最適化のために、使用される自己接着剤に、一次および二次酸化防止剤、フィラー、難燃剤、顔料、UV吸収剤、耐オゾン剤、金属不活性化剤、光安定剤、燃焼剤、光開始剤、架橋剤または架橋促進剤といった、さらなる添加物を混合できる。適したフィラーおよび顔料は、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、ケイ酸塩またはケイ酸である。微小バルーン、特に中空ビーズのようなガラスまたはポリマーの中空体が好ましい。1層の接着テープにおいては、好ましくはガラスまたはポリマーの繊維が添加される。
【0038】
好ましくは一次酸化防止剤、および特に好ましくは二次酸化防止剤も使用される。本発明による接着剤は、好ましい実施形態において、少なくとも2phrの、特に好ましくは6phrの一次酸化防止剤、または好ましくは少なくとも2phrの、特に少なくとも6phrの一次と二次の酸化防止剤の組合せを含むが、このとき一次と二次の酸化防止官能基は、異なる分子中になくても構わず、単一の分子中に統合されていてもよい。二次酸化防止剤の量は好ましくは5phrまでで、特に好ましくは0.5〜1phrである。驚くべきことに、一次酸化防止剤(例えば、立体障害フェノールまたはCAS 181314−48−7といったCラジカル捕捉剤)と、二次酸化防止剤(例えば、硫黄化合物、亜リン酸塩、または立体障害アミン)の組合せが、親和性を改善することが見出された。とりわけ、好ましくは相対分子質量が500ダルトンを超える立体障害フェノールである一次酸化防止剤と、硫黄化合物の種類の、または亜リン酸塩の種類の、好ましくは相対分子質量が500ダルトンを超える二次酸化防止剤との組合せが好ましく、ここで、フェノール、硫黄含有、亜リン酸の官能基が3つの異なる分子に存在する必要はなく、複数の官能基を一つの分子に統合できる。
【0039】
さらに好ましくは、感圧接着剤は、エチレン、プロピレン、ブテン−(1)、ヘキセン−(1)、またはオクテン−(1)でなる別のコポリマーまたはターポリマーを含み、ここでこのコポリマーまたはターポリマーの曲げ弾性率が好ましくは20MPa未満であり、および/またはその結晶融点が好ましくは60℃未満にあり、および/またはその密度は0.86〜0.87g/cmにある。このコポリマーまたはターポリマーの量は好ましくは100phrを超える。
【0040】
さらに、可塑剤または他の添加剤または補助材を用いない接着剤も可能である。
【0041】
感圧接着剤の作製および加工は、溶液および融液から行うことができる。好ましい作製および加工方法は融液からのものである。この場合、適した作製方法は、バッチ法も連続法も含む。押し出し機を用いて感圧接着剤を連続作製し、続いて、塗工する基材に接着剤に応じた高さの温度で直接塗工することが特に好ましい。感圧接着剤の塗工法としては、Tダイを用いた押出しコート法、およびカレンダー・コート法が好適である。
【0042】
本発明の対象は、好ましくは片面または両面接着性の接着テープに使用される。接着テープが多層構造の場合、多層は共押出し、ラミネーション、またはコーティングで積層することができる。コーティングは、支持体の上に直接、またはライナー、または工程用ライナー上に施すことができる。
【0043】
(感圧)接着剤は、以下のようなものであってよい。
− 支持体なし、別の層なしで存在する。
− 支持体なし、別の感圧接着剤層とともに存在する。
− 支持体の片面にあり、支持体の他面には、好ましくはポリアクリラート系の別の感圧接着剤、またはシール層が存在する。または
− 支持体の両面にあり、双方の感圧接着剤は、同一の組成を有していても異なる組成を有していてもよい。
【0044】
この接着テープは、好ましくは片面または両面をライナーで被覆される。製品用ライナーまたは工程用ライナーは、例えば剥離紙あるいは剥離フィルムであり、好ましくはシリコーン・コートを有する。ライナーの支持体としては、例えば、ポリエステルまたはポリプロピレン製フィルム、または分散液あるいはポリオレフィンのコートのあるまたはコートのないカレンダーかけした紙が対象になる。
【0045】
層の塗工量(コート厚さ)は、好ましくは15〜300g/m、好ましくは20〜75g/mである。
【0046】
この接着テープは鋼への接着力が、少なくとも0.5N/cm、好ましくは少なくとも1N/cm、特に好ましくは少なくとも2N/cm、極めて好ましくは少なくとも6N/cm、特に少なくとも9N/cmである。鋼への接着力は、AFERA 4001に従い、180°の引き剥がし角で、15mm幅の試験片に対して測定する。このため、表面保護材、延伸フィルム、または、食品包装用ラップのような軽く粘着するフィルムは、本発明の意味での接着テープではない。本発明の接着剤あるいは接着テープは、タックが高いことを特徴とする。PSTC 6によるボール・タックは、通常10cm未満で、多くの場合5cm未満である。PSTC 6による測定においては、直径が1.1cmの鋼球が、内面が半円形の、傾斜が21°30’の斜面(65mm高の斜面)から、サンプル片の接着材料層上に転がされる。球が静止するまでに転がった距離が、タックに対する尺度とされる。球が転がった距離が長いほど、ボール・タックは低い。
【0047】
好ましくは、少なくとも1つの層、好ましくは本発明による層が、架橋される。これは高エネルギー放射線、好ましくは電子線を用いて、または過酸化物架橋またはシラン架橋によって実施することができる。
【0048】
支持体材料としては、全ての既知の支持体、例えばスクリム、織布、編布、不織布、フィルム、紙、薄織物、発泡体、および発泡フィルムが使用できる。適したフィルムは、ポリプロピレン、好ましくは延伸したポリエステル、硬質および/または軟質PVCである。ポリオレフィン発泡体、ポリウレタン発泡体、EPDM発泡体、およびクロロプレン発泡体が好ましい。ポリオレフィンは、ここではポリエチレンとポリプロピレンを意味するが、柔軟性のためポリエチレンが好ましい。ポリエチレンの概念には、LDPEのほか、LLDPEおよびEVAといったエチレンコポリマーも含む。特に架橋ポリエチレン発泡体または粘弾性の支持体が適している。粘弾性の支持体は、好ましくはポリアクリラート製であり、特に好ましくはガラスまたはポリマーの中空体を充填してある。この支持体は、接着剤と一緒にする前に、プライマー処理で、またはコロナ等の物理的前処理で調整されることがある。架橋ポリエチレン発泡体は、両面接着性接着テープ用にはそのように処理される。というのも、この支持体は製造法上、エルカ酸アミドといった滑剤を含むので、支持体へのアクリラート感圧接着剤の接着性は非常に低く、処理を行っても十分に満足できるまでにはならない程だからである。したがって、本発明による接着剤が、処理を行わなくてもそうした発泡体に極めて良く接着する、すなわち無理に引き剥がそうとすると、発泡体が破壊してしまうというのは、まさに驚くべきことである。
【0049】
「接着テープ」という表現は、本発明の趣旨において、全ての面状物、例えば2次元方向に延びたフィルムまたはフィルム片、長さ方向に延び、制限された幅のテープ、テープ片、打ち抜き体、ラベル、および同様なものを包含する。好ましくは、接着テープは、ロール状の連続シートであり、打ち抜き体またはラベルではない。本発明の趣旨において、「接着テープ」は、弱く接着することしかできない表面保護フィルムとは対照的に、明白に接着するものと理解され、例えば少なくとも0.5N/m、好ましくは少なくとも1.0N/mの鋼への接着力で表すことができる。
【0050】
この接着テープは、ロール状、すなわちそれ自体の上にアルキメデスのらせんの形状に巻かれて製造される。
【0051】
接着テープ中の本発明による接着剤(感圧接着物質)は、非極性塗料、印刷版、またはオレフィン合成樹脂といった接着下地への接着に非常に適し、ポリオレフィン袋を閉じる、もしくは縛る、またはオレフィン合成樹脂製もしくはエラストマー製の部品を固定する、特に自動車部品を固定するのに特に好ましい。
【0052】
シリコーン処理していないポリオレフィン製の被覆フィルム(ライナー)を付けた両面接着テープでは、接着テープを例えば合成樹脂型材に貼着した後で、被覆フィルムの除去が難しいので、一方の端部にポリオレフィン製のつまみを溶接しないといけないという問題がある。接着テープ中の本発明による接着剤は、被覆フィルムが容易に剥がせる程度に強く合成樹脂型材に接着する。さらに、本発明の対象は、透明度が高く、プラスチックボトルに良く接着し、耐水性があり、また耐老化性があるので、化粧品包装(例えば、シャンプーびん)のラベル用に理想的である。磁気アラーム・ラベルといった安全ラベル、またはHolospot(登録商標)といったデータ支持体において、本発明の対象は、非極性下地に対する従来の接着剤の接着不良の問題を解決する。接着テープ中の本発明による接着剤は、さらに、ヒトの皮膚および建設分野の粗い下地への接着に、包装用接着テープとして、また、巻き付け用途に向いている。ヒトの皮膚への利用の例には、ロール状または個別の絆創膏、人工肛門袋や電極の接着用の打ち抜き体、作用物質絆創膏(経皮絆創膏)、および包帯がある。この接着剤は、その接着特性により、皮膚刺激性または他の化学的作用のある物質を避けられる可能性がある。したがって、本発明による接着剤は、乳児のおむつや生理用ナプキンといった衛生製品を構成するのに適し、さらに、特にそのとき用いられるポリオレフィンのフィルムや不織布に接着し、また従来の水素化スチレンブロックコポリマーでなる接着材に比べ、より安価であり、かつより高い耐熱性を有する。さらに、本発明による感圧接着材料は、おむつの留め具あるいは生理用ナプキンといった衛生製品に使用可能である。巻き付け用途の例には、電気絶縁、および自動車用ケーブル・ハーネスの作製がある。本発明による接着剤は、天然または合成ゴム接着剤と対照的に、高温においてもPP、PE、またPVCによる電線絶縁体と親和性がある。建設での利用では、漆喰用テープとして、屋根絶縁フィルムの接着用に、およびシール目的のためのアスファルト接着性テープとして、低温での良好な接着性能を確認することができる。本発明の対象は、さらにフィルムへの利用、すなわち例えばポリオレフィンまたはポリアミドフィルムのアルミニウム箔とのラミネーションに適しており、溶媒貼合接着剤あるいはUV貼合接着剤より取扱いが容易である。さらなるフィルム用途には、印刷したまたは印刷なしのフィルムシートの連続接着用スプライシング・テープがある。さらなる用途には、剥離可能な接着ストリップ(実質的に接着平面内で伸ばすことで、残渣や破壊なしに剥がすことができる少なくとも1層からなる感圧接着フィルムストリップ)、およびVelcro(登録商標)社から大規模に販売されている面ファスナーがある。
【0053】
以下に本発明を幾つかの例によりさらに詳細に説明するが、これにより本発明を限定する意図はない。
【実施例】
【0054】
例における原料:
NOTIO PN−3560: プロピレンとブテン−(1)のコポリマー(場合により少量のエチレンも含む)、メルトインデクッス6g/10分、密度0.866g/cm、曲げ弾性率12MPa、結晶融点161℃、融解熱16.9J/g
NOTIO PN−0040: プロピレンとブテン−(1)のコポリマー(場合により少量のエチレンも含む)、メルトインデクッス4g/10分、密度0.868g/cm、曲げ弾性率42MPa、結晶融点159℃、融解熱5.2J/g
Softell CA02: プロピレンとエチレンのコポリマー、メルトインデクッス0.6g/10分、密度0.870g/cm、曲げ弾性率20MPa、結晶融点142℃、融解熱9.9J/g
PP4352F3: プロピレンのホモポリマー、メルトインデクッス3g/10分、密度0.9g/cm、曲げ弾性率1400MPa、結晶融点160℃
Versify 2400: プロピレンとエチレンのコポリマー、メルトインデクッス2g/10分(230℃)、密度0.86g/cm、曲げ弾性率2MPa、結晶融点48℃
Exact 4053: エチレンとブテン−(1)のランダムコポリマー、メルトインデクッス2.2g/10分(190℃)、密度0.888g/cm、曲げ弾性率27MPa、結晶融点70℃
Ondina 933: 白油(パラフィンナフテン系鉱油)
Shell−Bitumen R 85/25: 酸化アスファルト、軟化点85℃、
Indopol H−100: ポリイソブテンポリブテンコポリマー、動粘度210cSt(100℃、ASTM D 445による)
Wingtack 10: 液状C炭化水素樹脂
Escorez 1310: 非水素化C炭化水素樹脂、融点94℃、多分散性1.5
Regalite R1100: 水素化芳香族炭化水素樹脂、融点100℃、多分散性1.6
Foral 85: 全水素化したコルホニウムのグリセリンエステル、融点85℃、多分散性1.2
Irganox 1726: 二次酸化防止剤の硫黄系の官能基を有するフェノール系酸化防止剤
Irganox 1076: フェノール系酸化防止剤
Tinuvin 622: HALS光安定剤
【0055】
例1
接着剤は、以下の成分で構成する:
100phrのNOTIO PN−0040、78.4phrのWingtack 10、212phrのEscorez 1310、
および8phrのIrganox 1726
【0056】
この接着剤を、押し出し機で連続的に作製し、ダイ・コーティングで融液から25g/mの薄織物の両面の上に70g/mで塗工する。この製造物をシリコーン処理したポリエチレンをコートした剥離紙で被覆する。
【0057】
AFERA 4001に従って180°の引き剥がし角で、15mm幅の試験片において接着力を測定する。鋼あるいはポリプロピレンに接着されない面に、接着力の測定前に、25μm厚のエッチングしたポリエステルフィルムをラミネートする。鋼に対する露出面の接着力および被覆面での接着力はそれぞれ8.4N/cmである。ポリプロピレン板への接着力はそれぞれ>10N/cm(ポリエステルフィルムは接着テープから外す)である。ボール・タックは1.5cmである。感圧接着剤の融解熱は、1.6J/gである。
【0058】
例2
押し出し機で、50重量%のShell−Bitumen R 85/25、15重量%のOndina 933、15重量%のIndopol H−100、および20%のNOTIO PN−0040の混合体を作製し、ポリアミド遮蔽層を有するポリエチレン製の片面にシリコーン加工した剥離フィルムの上に500μmの厚さで押し出し、設備の最後で50μm厚のアルミニウム箔をラミネートして50mm幅のロールに加工する。
【0059】
接着力は13N/cmである。剪断強度は55分である。ボール・タックは3cmである。
【0060】
例3
接着剤を例1と同様に作製し、ポリアクリラートを用いた800μm厚の粘弾性の支持体に、50g/mで塗布した。この支持体は、国際公開第2006/027389号(特許文献1)の支持体VT1(Traeger VT1)の例に対応して製造される。反対面には、前述の特許出願に対応してアクリラート溶剤物質PA 1を同じく50g/mラミネートする。
【0061】
このポリプロピレン樹脂接着剤の鋼への接着力は12N/cmであり、アクリラート接着剤の接着力は15N/cmである。ボール・タックは2cmである。ポリプロピレン樹脂接着剤のポリプロピレン板への接着力は10N/cm超であり、アクリラート接着剤の接着力は2N/cmである。
【0062】
例4
接着剤を例1と同様に作製し、ダイ・コーティングで融液からポリエステル織布上に70g/mだけ塗布する。前述のフィラメント織布は、167dtexのポリエステル糸を経方向に45本/cm、緯方向に25本/cm用い、坪量が130g/mである。
【0063】
鋼への接着力は8.6N/cm、裏面への接着力は4.8N/cmである。ボール・タックは2cmである。70℃で1カ月のロール貯蔵:ロールはわずかに変形するが、良好に巻き解くことができる。親和性試験:製作された接着テープを、Daimler、Audi、BMW、およびVolkswagen社間の共通標準であるLV 312−1「自動車のケーブル・ハーネスの保護システム、接着テープ;試験指針」(02/2008)に従い、多様な絶縁材料を有するケーブル対の周りに巻き付け、相応の温度で貯蔵する。
【0064】
絶縁材料ごとに6個のそうした試験体を作製する。500時間ごとにサンプルのうち1つを検査する。接着テープをほどいて、ケーブルを10mm径の心棒および2mm径の心棒の周りに巻き付ける。絶縁が破壊されているか、接着剤が感圧接着性を示すか(試験温度:PVCでは105℃、架橋PEでは125℃)を調べる。3000時間後、全てのケーブル絶縁は依然損なわれていない。3000時間後、105℃では、接着剤は支持体中にほとんど侵入しておらず、依然良好な感圧接着性を示す。3000時間後、125℃では、接着剤は部分的に支持体中に侵入しているが、依然感圧接着性を示す。
【0065】
例5
支持体フィルムは、35μmのRadil TM(2軸延伸ポリプロピレンホモポリマーフィルム)である。そのコロナ処理した面には、ポリビニルステアリルカルバマートのトルエン溶液を塗工し、前面には、次の組成のホットメルト感圧接着剤を28g/mだけ付ける:100phrのSoftellのCA02、78.4phrのOndina 933、212phrのEscorez 1310、および3phrのIrganox 1076。
【0066】
鋼への接着力は2.5N/cmである。ボール・タックは6cmである。接着力の測定で記述したのと同様な方法でサンプルをクラフト紙に塗工し、このサンプルをすぐに引き剥がすことで、付着挙動を測定する。接着面の50%以上で紙の繊維が引き抜かれ、紙の一部が裂けるので、付着挙動は良好である。
【0067】
例6
次の組成のホットメルト感圧接着剤を混練機で作製し、例5におけるのと同様にフィルムに塗工する:100phrのNOTIO PN−0040、78.4phrのWingtack 10、212phrのForal 85、8phrのIrganox 1726。
【0068】
鋼への接着力は、接着剤の塗工量が20g/mで14N/cmである。付着挙動は良好で、紙が裂ける。ボール・タックは7cmである。鋼への接着力は、接着剤の塗工量が70g/mで17N/cmであり、ボール・タックは4cmである。
【0069】
例7
次の組成のホットメルト感圧接着剤を混練機で作製し、2枚のライナーの間に塗り付ける:100phrのNOTIO PN−0040、78.4phrのVersify 2400、150phrのForal 85、8phrのIrganox 1726。
【0070】
剥離可能性の測定には、幅20mm、長さ50mmの試験体を20枚作製する。つまみとして、一方の端部の両面を20mm×20mmの大きさの25μmのポリエステルフィルムで被覆する。反対側の端部を円錐状に切り、先端を幅2mmとし、円錐の長さは20mmとする。これにより、つまみと円錐の始まりの間に、長さ10mm、幅20mmのサンプルが残る。サンプルを2枚のガラス板の間に接着して、接着剤は完全に被覆され、つまみだけが突出するようにする。10日間の保管後、20個の試験体を15°の角度で引張り、剥離させる。引きちぎられた接着テープ数を記録する:ここではゼロ。
【0071】
比較例1
例1に記載したのと同様に実施するが、NOTIO PN−0040に代わりPP4352F3を使用する。コートは感圧接着性でなく、固く油状の表面を示す。ボール・タックは30cmを超える。
【0072】
比較例2
例1に記載したのと同様に実施するが、NOTIO PN−0040に代わりVersify 2400を使用する。コートは非常に柔らかく、粘着性である。接着力の測定は、凝集破壊のため不可能である。ボール・タックは1cmである。
【0073】
比較例3
例1に記載したのと同様に実施するが、組成は以下のとおりである:100phrのVersify 2400、12.5phrのPP4352F3、212phrのEscorez 1310。コートは、感圧接着性でなく、固い。ボール・タックは30cmを超える。
【0074】
比較例4
例5に記載したのと同様に実施するが、組成は以下のとおりである:100phrのNOTIO PN−0040、78.4phrのOndina 933および3phrのIrganox 1076。サンプルは容易にガラスに貼り付くが、ガラスおよび鋼への接着力は0.1N/cm未満である。ボール・タックは30cmを超える。
【0075】
比較例5
例5に記載したのと同様に実施するが、組成は以下のとおりである:100phrのNOTIO PN−0040および3phrのIrganox 1076。サンプルは容易にガラスに貼り付くが、ガラスおよび鋼への接着力は0.1N/cm未満である。ボール・タックは30cmを超える。
【0076】
比較例6
例5に記載したのと同様に実施するが、組成は以下のとおりである:100phr(45重量%)のNOTIO PN−0040、111phr(50重量%)のExact 4053および11phr(5重量%)のRegalite R1100。接着力は、鋼には0.02N/cm、ポリカルボナートおよびPlexiglas(アクリラート、PMMA)にはそれぞれ0.05N/cmである。サンプルは、クラフト紙に貼り付かない。ボール・タックは30cmを超える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が0.86〜0.89g/cm、好ましくは0.86〜0.88g/cm、特に好ましくは0.86〜0.87g/cmであり、結晶融点が少なくとも105℃、好ましくは少なくとも115℃、特に好ましくは少なくとも135℃、極めて好ましくは少なくとも150℃でありポリプロピレン樹脂と、少なくとも1種の接着性樹脂とからなり、前記接着性樹脂の含量が少なくとも20phr、好ましくは少なくとも50phrである感圧接着材料。
【請求項2】
前記ポリプロピレン樹脂が、
メルトインデックスが0.5〜10g/10分、好ましくは3〜8g/10分であり、および/または
曲げ弾性率が50MPa未満、好ましくは26MPa未満である
ことを特徴とする請求項1に記載の感圧接着材料。
【請求項3】
前記ポリプロピレン樹脂が、ブロックコポリマーとして、グラフトポリマーとして、または不均一相ポリプロピレンとして存在する、および/または前記ポリプロピレン樹脂が、アイソタクチックプロピレン配列を有することを特徴とする請求項1または2に記載の感圧接着材料。
【請求項4】
前記ポリプロピレン樹脂の融解熱が、3〜18J/g、好ましくは5〜12J/gである
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の感圧接着材料。
【請求項5】
前記ポリプロピレン樹脂が、プロピレン、および他のC〜C10のオレフィン、好ましくはC〜C10のαオレフィンから選択される少なくとも1種の別のコモノマーを含み、このときプロピレンおよびエチレンからなるコポリマー、とりわけプロピレンおよびブテン−(1)からなるコポリマー、ならびにプロピレン、ブテン−(1)およびエチレンからなるターポリマーが特に好ましいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の感圧接着材料。
【請求項6】
前記ポリプロピレン樹脂が、75〜95モル%、好ましくは80〜90モル%のプロピレンを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の感圧接着材料。
【請求項7】
前記感圧接着材料中のポリプロピレン樹脂含量が、少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の感圧接着材料。
【請求項8】
前記感圧接着材料中のポリプロピレン樹脂含量が、40重量%未満、好ましくは35重量%未満、特に好ましくは30重量%未満であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の感圧接着材料。
【請求項9】
前記感圧接着材料の融解熱が1〜6J/g、好ましくは2〜5J/gであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の感圧接着材料。
【請求項10】
前記接着性樹脂の多分散性が、2.1未満、好ましくは1.8未満、特に好ましくは1.6未満、極めて好ましくは1.0〜1.4であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の感圧接着材料。
【請求項11】
前記接着性樹脂が、
コロホニウム系または好ましくは部分的または完全に水素化されたコロホニウム誘導体系樹脂、
好ましくは部分的または完全に水素化された、Cモノマー系炭化水素樹脂、
芳香族を含有する炭化水素樹脂を水素化してなる炭化水素樹脂、
水素化シクロペンタジエンポリマー系の炭化水素樹脂、および/または
好ましくは部分的または完全に水素化された、ポリテルペン系の樹脂、
からなる群から選択され、前記接着剤中の接着性樹脂の量が好ましくは130〜350phr、特に好ましくは200〜240phrであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の感圧接着材料。
【請求項12】
前記感圧接着材料が、好ましくは、鉱油、イソブテンホモポリマーおよび/またはイソブテン/ブテンコポリマーなどの液状重合体、および、フタル酸、トリメリト酸、クエン酸またはアジピン酸のエステル、特にそれらの、分岐したオクタノールおよびノナノールとのエステルからなる群から選択される可塑剤を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の感圧接着材料。
【請求項13】
前記感圧接着材料が、
一次酸化防止剤を、好ましくは少なくとも2phrの量、特に好ましくは少なくとも6phr含み、および/または
二次酸化防止剤を、0〜5phrの量、好ましくは0.5〜1phrの量含み、
前記一次酸化防止剤が、好ましくは立体障害フェノール基を有する、および/または500ダルトンを超える相対分子質量を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の感圧接着材料。
【請求項14】
前記感圧接着材料が、エチレン、プロピレン、ブテン−(1)、ヘキセン−(1)、またはオクテン−(1)からなるさらなるコポリマーまたはターポリマーを含み、前記コポリマーまたはターポリマーの曲げ弾性率が好ましくは20MPa未満であり、および/または結晶融点が好ましくは60℃未満であり、および/または密度が0.86〜0.87g/cmであり、前記コポリマーまたはターポリマーの量が好ましくは100phrを超えることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一つに記載の感圧接着材料。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一つに記載の感圧接着材料の片面または両面接着性接着テープへの使用であって、前記接着テープは少なくとも片面の鋼への接着力が少なくとも1N/cm、好ましくは少なくとも2N/cm、特に好ましくは少なくとも6N/cm、極めて好ましくは少なくとも9N/cmである使用。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか一つに記載の感圧接着材料の片面または両面接着性接着テープへの使用であって、該感圧接着材料の1層の塗工量が、15〜300g/cm、好ましくは20〜75g/cmである使用。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか一つに記載の感圧接着材料の片面または両面接着性接着テープへの使用であって、支持体が、織布、不織布、薄織物、フィルム、または発泡体、好ましくは架橋ポリエチレン発泡体、または粘弾性の支持体であり、特に、任意選択でガラスまたはポリマーからなる中空体を充填したポリアクリラートからなる支持体である使用。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれか一つに記載の感圧接着材料の片面または両面接着性接着テープへの使用であって、前記接着テープが、低エネルギー表面、フィルム、ヒトの皮膚、または建築分野での粗面の下地への接着、剥離性接着ストリップ、または自動車のケーブル・ハーネスの製造などの巻き付け用途に適している使用。

【公表番号】特表2011−524919(P2011−524919A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512087(P2011−512087)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056632
【国際公開番号】WO2009/147098
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(509120403)テーザ・ソシエタス・ヨーロピア (118)
【Fターム(参考)】