説明

ポリプロピレン系樹脂発泡シートの成形方法

【課題】 シャープな断面形状を有し、かつ部分的な厚みの薄肉化が抑えられた収納面を備えた軽量で強度のある容器(トレイ)、特に前記電気・電子製品(部品を含む)用容器(トレイ)を成形することができるポリプロピレン系樹脂発泡シートの成形方法を提供する。
【解決手段】 ポリプロピレン系樹脂発泡シートを成形機の加熱炉内にて加熱した後、次の成形ゾーンにて製品(部品を含む)の収納部を有する成形品を成形するポリプロピレン系樹脂発泡シートの成形方法において、
成形直前における、製品(部品を含む)の収納側の面を形成する前記発泡シートの表面温度が150〜155℃、反対側の表面温度が135〜145℃、当該反対側の前記発泡シートの表面温度が前記収納側の表面温度よりも10〜15℃低い温度となるようにして成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂発泡シートの成形方法に関し、詳しくは、ポリプロピレン系樹脂発泡シートを用いて、IC部品等の電子部品,液晶表示パネル(LCD)、携帯情報端末装置(PDA)、液晶盤等の電気・電子製品(部品を含む)を収納する緩衝包装容器(トレイ含む)を成形する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂発泡シートを用いて成形された電気・電子製品(部品を含む)用包装用容器(トレイ)が、緩衝包装材として使用されている。輸送コスト、保管コストなどの削減のためコンパクトな包装が可能な包装用容器(トレイ)が望まれており、特に電気・電子製品(部品を含む)を収納する包装用容器(トレイ)の収納部において当該電気・電子製品(部品を含む)を一定位置に保持する微小な支持部のコーナーを丸まりの少ないシャープな形状となした包装用容器(トレイ)として構成し、前記包装物の緩衝性を維持しつつ収納性を高めたトレイが要望されるようになってきた。
【0003】
ところで従来、発泡ポリプロピレンシートの成形方法として、発泡ポリプロピレンシートを、密閉されたオーブンにて、155〜200℃の雰囲気温度、シート表面温度160±5℃等の成形条件にて成形することにより、加熱時間を短縮し、発泡PPシートの加熱不足や加熱オーバーを防止し、成形品の外観不良の発生を防止し品質のすぐれた成形品を得る成形方法が提供されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平6−218805号公報
【0004】
また、発泡ポリプロピレンシートの成形方法として、ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートを、加熱炉内にて5〜30秒加熱した後、成形直前におけるポリプロピレン系樹脂発泡シートの上下の表面温度差が10℃以下となるように、加熱されたポリプロピレン系樹脂発泡シートを成形金型の成形位置に導き、成形し、外観美麗、剛性、耐熱性のすぐれたポリプロピレン系樹脂発泡シートを成形する方法が提供されている。
【特許文献2】特開2001−138349号公報
【0005】
また、発泡ポリプロピレンシートの他の成形方法として、ポリプロピレン系樹脂発泡シートを予備加熱した後、成形金型により所望の成形品を得るポリプロピレン系樹脂発泡シートの成形方法において、上記成形金型の温度を予め40℃〜100℃に設定しておき、上記予備加熱によってポリプロピレン系樹脂発泡シートの表面温度を160℃〜200℃に設定した後に、上記金型により成形し、断熱性、緩衝性のすぐれたポリプロピレン系樹脂発泡シートの成形方法が提供されている。
【特許文献3】特開平11−254518号公報
【0006】
前記特許文献1の方法は、155〜200℃の雰囲気温度、シート表面温度160±5℃等の成形条件にて成形することから、ポリプロピレン系樹脂発泡シートの伸びを最大限に発揮させ、成形品への残留歪を小さくするには良好な方法である。従ってこの方法は、収納面をシャープに成形したり、あるいはまた高い耐熱性を要求されるが、皿や浅い丼や弁当容器など角ばった凹凸状形状の少ない形状の食品容器用としては適している。
しかし、前記特許文献1の方法や特許文献3の方法では、シートの表面温度が高すぎて、既述した電気・電子製品(部品を含む)用包装用トレイのように、角ばった凸凹が多く、側壁の垂直度の高い形状のトレイにおいては、収納面をシャープに成形すると、部分的に成形品の側壁厚みが薄肉化しやすく、そのため外観不良や強度不足などが発生しやすかった。そこで、それを補うためにポリプロピレン系樹脂発泡シートの目付けを大きくすると、容器重量が重くなる上コストの高いものとなってしまうという問題があった。
【0007】
一方、前記特許文献2は、5〜30秒以内の加熱時間でシート表面温度差を10℃以内の条件にて成形する方法であるから、収納面をシャープに成形するために成形温度を比較的高温にすると、前記の方法と同様、部分的に成形品の側壁厚みが薄肉化しやすく、そのため外観不良や強度不足などが発生しやすい。成形品の側壁厚みの薄肉化を防止するめに、上下シート温度差10℃以内に設定しつつ成形温度を下げると、成形品での部分的な薄肉化は少なくなるが、収納面にシャープな成形ができないという問題があった。
従来、シート成形する際は出来るだけシート温度差をつけずに成形することが好ましいとされてきたが、角ばった凸凹形状の多い、側壁の垂直度の高い形状の容器の成形においては薄肉化の防止とシャープな形状の両立はできなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の解決すべき課題は、シャープな断面形状を有し、かつ部分的な厚みの薄肉化が抑えられた収納面を備えた軽量で強度のある容器(トレイ)、特に前記電気・電子製品(部品を含む)用容器(トレイ)を成形することができるポリプロピレン系樹脂発泡シートの成形方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明は、
ポリプロピレン系樹脂発泡シートを成形機の加熱炉内にて加熱した後、次の成形ゾーンにて製品(部品を含む)の収納部を有する成形品を成形するポリプロピレン系樹脂発泡シートの成形方法において、
成形直前における、製品(部品を含む)の収納側の面を形成する前記発泡シートの表面温度が150〜155℃、反対側の表面温度が135〜145℃、当該反対側の発泡シートの表面温度が前記収納側の面の表面温度よりも10〜15℃低い温度となるようにして成形することを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡シートの成形方法を採用した。
【発明の効果】
【0010】
これにより、本発明は、シャープな断面形状を有し、かつ部分的な厚みの薄肉化が抑えられた収納面を備えた軽量で強度のある容器(トレイ)を成形することができる。
【0011】
従って、本発明は、高い耐熱性を要求される食品用容器というよりは、むしろ角ばった凹凸断面を食品用容器より多く備えた前記電気・電子製品(部品を含む)用容器(トレイ)の成形方法として好適に用いられる。具体的には、断面が垂直方向の側面要素と水平方向の平面要素で構成され、容器(トレイ)の縦横XY方向の少なくとも一方向における一方又は両方の側壁において角ばった凹凸断面をなして、製品(部品を含む)を支える段差部を備えている緩衝包装用容器を成形するポリプロピレン系樹脂発泡シートの成形方法に好ましく適用できる。さらに具体的には、断面が垂直方向の側面要素と水平方向の平面要素で構成され、容器(トレイ)の縦横XY方向の少なくとも一方向における一方又は両方の側壁において角ばった凹凸断面をなして当該凸部の数を合計3個以上/150mm有する成形方法に好ましく適用できる。またさらには、製品(部品を含む)を底側から支える前記平面要素を段差部として構成し、当該製品(部品を含む)を両側から支える突起を前記側面要素に形成した前記容器の成形方法にも適用できる。なお、前記側面要素(側面部)と水平要素(水平部)のなす角度は、90〜100度が好ましい。90度を超える場合は特に前記突起(小突起)をさらに設けることが好ましい。
なお、前記150mmの測定箇所は、収納部の縦横XY方向の図1に示す平面長さS1あるいはS2によって測定した。
【0012】
このようなことから、本発明は、ポリプロピレン系樹脂発泡シートからなる容器を軽薄短小化でき、コンパクトな包装が可能となるほか、容器の収納面の当該容器内側にて前記段差部と側壁部もしくは側壁部に形成された突起部分(微小な突起部分)において製品(部品を含む)を良好に支えることができ、緩衝性、収納性に優れた成形品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂発泡シートを成形機の加熱炉内にて加熱した後、次の成形ゾーンにて製品(部品を含む)の収納部を有する成形品を成形するポリプロピレン系樹脂発泡シートの成形方法において、
成形直前における、製品(部品を含む)の収納側の面を形成する前記発泡シートの表面温度が150〜155℃、反対側の表面温度が135〜145℃、当該反対側の前記発泡シートの表面温度が前記収納側の表面温度よりも10〜15℃低い温度となるようにして成形することを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡シートの成形方法である。
【0014】
前記発泡シートにおける収納面側の面のシート表面温度が150℃未満では、当該収納面側の面をシャープな断面形状に成形することが困難である。前記収納面側の面のシート表面温度が155℃を超えると、成形品に薄肉化現象が生じやすい。また前記収納面側と反対側の前記発泡シートの面の表面温度が135℃未満では、伸びが不足して成形することが困難である。反対側の前記発泡シートの面の表面温度が145℃を超えると、成形品に薄肉化現象が生じやすい。
さらに、反対側の発泡シートの表面温度と前記収納側の面の表面温度の温度差が10℃未満では、シャープ性を追及するため成形温度を前記のように高温に設定したとき、成形品に薄肉化現象が生じやすい。前記温度差を10℃以内に設定しつつ成形温度を下げると、薄肉化は抑えられるが、収納面にシャープな成形ができない。既述の通り、シートを成形する際は出来るだけシート温度差をつけずに成形する事が好ましいとされてきたが、薄肉化の防止とシャープな形状の両立は困難である。
一方、前記温度差が15℃を超えると、シート温度差が大きく、前記収納側と反対側の両面でのシート伸びの差が大きくなりすぎ、良好な成形品を得る事が困難である。
前記表面温度の測定は非接触温度計(例えばHORIBA社製非接触放射温度計 IT−550L)を用いて測定することができる。温度測定は、成形直前の温度を測定することが好ましい。具体的には、成形機の加熱ゾーンで加熱された発泡シートが成形ゾーンに移動して成形位置に停止させられた後に測定する。発泡シートの表面温度が前記条件を満足しておれば直ちに成形する。成形までの時間は、長いと発泡シートの表面温度が低下しすぎる恐れがあるので3秒以内が好ましく、2秒以内がより好ましい。
【0015】
なお、成形するにあたっては、収納面の形状をよりシャープにするために、少なくとも前記発泡シートの収納側の面を真空吸引し成形することが好ましい。また、前記成形ゾーンにおいて、10〜15℃表面温度差を発泡シートに安定してつけられることから、前記発泡シートの前記収納側の面を下側にして成形することが好ましい。
【0016】
(ポリプロピレン系樹脂発泡シート)
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡シートは、メルトテンションが20〜40gで、かつ自由末端長鎖分岐を有するポリプロピレン系樹脂(a)10〜50重量%と、メルトテンションが0.01g〜6gで、かつ重量平均分子量と数平均分子量の比の値が3〜8であるポリプロピレン系樹脂(b)90〜50重量%とからなるポリプロピレン系樹脂混合物を基材樹脂として、押出発泡されたポリプロピレン系樹脂発泡シートであることが好ましい。
【0017】
これは、(a)の割合が多いほど、低密度で独立気泡率の高いポリプロピレン系樹脂発泡シートが製造しやすく、熱成形性にも優れるからである。一方で、(a)の樹脂は、製造方法が煩雑であり汎用の樹脂に比べると高価であるという問題があり、安価な汎用樹脂に含まれる(b)を混合するでコストダウンできる。
【0018】
ポリプロピレン系樹脂(a)のメルトテンションは、20〜40gであり、より好ましくは20〜30gである。メルトテンションが20gより低いと、良好な発泡性を得ることができず、40gを超えると、極端に流動性が悪くなったり、ゲルを生じ易くなったりして、押出加工性が低下する。また、ポリプロピレン系樹脂(a)の重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)の値は、7〜20が好ましく、7〜15がさらに好ましい。この値が7より低いと良好な発泡性が得られ難く、20を超えるとゲルを生じ易くなり、外観が悪くなり易い。
【0019】
(a)の樹脂は、特開昭62−121704号公報や特開平2−69533号公報に開示されているような方法で製造され、例えば、サンアロマー社から高溶融張力ポリプロピレン(HMSPP)として商品名「PF−814」として販売されている。
【0020】
また、本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(b)のメルトテンションは0.01〜6gである。メルトテンションが0.01gより低いと、張力が低すぎるために熱成形する際、加熱時に垂れ下がり現象(ドローダウン)が生じ、良好な熱成形ができない。また、メルトテンションが6gを超えると、溶融粘度が高くなるため融点近傍まで樹脂温度を下げることが困難となる。その結果、得られる発泡体は連続気泡体となり易く、熱成形性が低下する。
【0021】
ポリプロピレン系樹脂(b)の重量平均分子量と数平均分子量の比の値は3〜8であり、好ましくは4〜6である。この値が3より小さいと弾性が低くて熱成形性が悪くなり、8を超えると均一に樹脂温度を下げることが困難となり、連続気泡率の低い発泡シートが得られ難くなる。このようなポリプロピレン系樹脂(b)としては、例えば、上記の条件を満足するホモポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などが挙げられる。
【0022】
ポリプロピレン系樹脂(a)とポリプロピレン系樹脂(b)との混合割合は、(a)10〜50重量%(b)90〜50重量%であり、(a)20〜50重量%(b)80〜50重量%がより好ましく、(a)30〜50重量%(b)70〜50重量%が特に好ましい。ポリプロピレン系樹脂(a)の混合割合が10重量%より少ないと、ポリプロピレン系樹脂(b)の発泡性を向上させることが困難となり、得られた発泡シートの熱成形性が劣る。
【0023】
本発明で使用されるポリプロピレン系樹脂発泡シートの製造に使用する発泡剤としては、種々の揮発性発泡剤や分解型発泡剤が挙げられる。揮発性発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタンなどの炭化水素、テトラフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。分解型発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン等の有機系発泡剤、重炭酸ナトリウムまたはクエン酸のような有機酸もしくはその塩と重炭酸塩との組み合わせなどが挙げられる。また、場合によっては、二酸化炭素、窒素ガス、水なども適宜用いることができる。これらの発泡剤は単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡シートの基材樹脂には、上記のような発泡剤が添加されるほか、例えばタルク、重炭酸ナトリウム−クエン酸などの、発泡の際に気泡の大きさ等を調整する気泡調整剤や、顔料、安定剤、充填剤、帯電防止剤などの種々の添加剤を添加してもよい。充填材としては、例えばタルク、クレー、炭酸カルシウム、シリカ、水酸化マグネシウム等の無機充填剤が好ましく、基材樹脂100重量部に対して5〜50重量部添加するのが好ましい。
【0024】
また、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡シートは、成形品の外観ならびに強度を向上させるために、ポリプロピレン系樹脂発泡シートの片面あるいは両面に非発泡性の樹脂からなるフィルムを積層してもよい。
【0025】
フィルムを構成する樹脂としては、特に限定されないが、発泡シートと同タイプのプロピレン系樹脂を主成分とするものが好ましい。
【0026】
フィルムは延伸フィルムでも無延伸フィルムでもよく、フィルム層の厚さは、通常0.02〜1.0mm、好ましくは0.1〜0.5mmである。このフィルム層には、例えばタルク、クレー、炭酸カルシウム、シリカ、水酸化マグネシウム等の無機充填剤、帯電防止剤、カーボンなどの導電性材料が含まれていてもよい。フィルムの積層は、例えば熱ラミネート法、共押出法等、常法により行われる。
【0027】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡シートは、ポリプロピレン系樹脂(a)およびポリプロピレン系樹脂(b)からなる基材樹脂と発泡剤とを押出機で溶融混練し、次いで押出機先端に取り付けられた金型を通して押出発泡する方法により製造される。
このようにして製造されるポリプロピレン系樹脂発泡シートは、例えば、厚み0.5〜5.0mm、好ましくは0.5〜3mmに成形される。厚みが0.5mm未満であると、強度が弱く、緩衝性が低下するので好ましくない。また、5.0mmを超えると熱成形性が悪くなり好ましくない。
【0028】
ポリプロピレン系樹脂発泡シートは0.1〜0.45g/cm3、好ましくは0.18〜0.45g/cm3程度の密度を有している。密度が0.1g/cm3より低いと強度が弱くなり好ましくない。また、0.45g/cm3より高いと緩衝性が低下するので好ましくない。
【0029】
ポリプロピレン系樹脂発泡シートの目付けは、小さいと本発明の成形方法であっても、成形品の形状にもよるが部分的な薄肉化を生じたり、成形品の強度が不足する恐れがあるので500g/m以上であるものを使用することが好ましい。
【0030】
本発明における、ポリプロピレン系樹脂のメルトテンションは、次の方法により求められる。(株)東洋精機製作所製のキャピログラフPMD−Cを使用して、ポリプロピレン系樹脂を230℃に加熱し、溶融したポリプロピレン系樹脂をピストン押出式プラストメーターでノズル(口径2.095mm、長さ8mm)からピストンの降下速度を10mm/分の一定速度に保ちながらひも状に押出し、次いで該ひも状物を前記ノズルの下方35cmに位置する張力検出プーリーに通過させた後、巻き取りロールで約66m/分2程度の割合で、ひも状物が切れるまで巻き取り速度を徐々に増加させていき、その切れた時点の張力(g)をその樹脂のメルトテンションとした。ただし、巻き取り速度が60m/分を超えてもひも状物が切断しない場合には、巻き取り速度60m/分での張力(g)をその樹脂のメルトテンションとした。
【0031】
本発明における、ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量と数平均分子量の比の値は、ゲルパーミエイションクロマトグラフによる分子量分布測定により以下の条件で求められる。
測定装置:Waters社製 GPC 150−C
カラム :UT−806M 3本(SHODEX)
カラム温度:145℃
注入温度: 145℃
ポンプ温度:55℃
使用溶剤: o−ジクロロベンゼン
流量: 1.0ml/分
【0032】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(a)および(b)における、自由末端長鎖分岐の有無は、特開昭62−121704号公報に記載の方法に従って、樹脂の伸び特性を見ることにより確認した。
【実施例】
【0033】
本発明の成形方法を用いて図1に示する電子部品収納用のトレイを成形した。
【0034】
(発泡シートの製造)
ポリプロピレン系樹脂として、サンアロマー社製、商品名「PF−814」(MI値3、メルトテンション24.5g)40重量%、日本ポリプロ社製、商品名「BC6C」(MI値2.5、メルトテンション2.3g)60重量%の混合樹脂100重量部に、気泡調整剤として重曹−クエン酸系マスターバッチ(大日精化社製、商品名「ファインセルマスターPO410K」)0.3重量部をドライブレンドし、この混合物を、口径φ65−φ90mmの第1押出機および第2押出機からなるタンデム押出機の口径φ65mm押出機のホッパーを通じて供給し、加熱溶融した後、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=35/65)を圧入し、溶融混合させた。次いで、口径90mm押出機に移送して均一に冷却した後、口径60mmの円筒状ダイから吐出量40kg/時間で押出発泡させ、得られた円筒状発泡体を内部が約20℃の水で冷却されているφ170のマンドレル上を沿わせ、またその外面をその径よりも大きいエアリングによりエアーを吹き付けることにより冷却成形し、円周上の1点でカッターにより切開して、目付け700g/m、厚み2.2mm、密度0.318g/cmのポリプロピレン系樹脂発泡シートを得た。
【0035】
上記ポリプロピレン系樹脂発泡シートを用い、成形機は入口と出口のみ開放された加熱炉を有する連続成形機を使用した。成形用金型はマッチモールド成形金型を使用し、前期発泡シートの前記収納側の面を下側にし下金型側で成形し、反対側の面は上金型側で成形した。また当該成形は、前記発泡シートの収納側の面を真空吸引(真空度:85KPa)して成形した。成形金型温度は40℃以下とした。
【0036】
発泡シート成形の温度条件は表1に示す通りである。発泡シートの表面温度は、非接触放射温度計 HORIBA IT−550Lを用いて、発泡シートが加熱炉から成形金型面に移動し、成形直前の温度を測定した。
【0037】
図1は本発明の実施例の方法により成形される電子部品収納用のトレイの平面図、図2は同正面図、図3は同右側面図、図4は同トレイに形成された収納部の要部拡大平面図、図5は図4におけるA−A線断面図である。
【0038】
図において、1は電子部品3の収納用のトレイ、2は電子部品を嵌め入れて収納する凹形状の収納部である。本トレイ1は、縦幅550mm、横幅310mm、高さ20mmであり、図示の通り、電子部品を嵌め入れて収納する収納部2が横2列にて縦方向に5箇所形成されている。収納部2は、図1及び図5に示すように、縦幅S1は75mm、横幅S2は55mm、深さS3は15mmで構成されている。
【0039】
図4及び図5に示すように、本トレイ1は、当該容器(トレイ)の縦X方向それぞれの収納部2内側の各側壁B、Cにおいて、収納部2の開口部2a側より深さ方向に向って、断面が水平方向の平面要素22a、断面が垂直方向の側面要素21a、断面が水平方向の平面要素22b、断面が垂直方向の側面要素21b、断面が水平方向の平面要素22cとで構成されている。そして、当該容器(トレイ)の縦X方向それぞれの収納部2内側の各側壁B、Cには、角ばった凹凸断面をなして収納部2の深さ方向に当該凸部23a、23bをそれぞれ有している。24aは側面要素21aと平面要素22bで構成された凹部、24bは側面要素21bと平面要素22cで構成された凹部である。平面要素22cは収納部2の底面部26を構成している。凹部24aと凸部23b間の平面要素22bと、凸部23bと凹部24b間の側面要素21bとは、各側壁B、Cにおいて、電子部品3を当該平面要素22bにおいて底側から支える段差部27を構成している。また各側壁B、Cには、収納部2の開口部側の側面要素21aの前記凹部24a側の一部に、収納する電子部品3を両側から支える微小な突部25a(小突起)が突出形成されている。
なお、この例では、凸部23a、23bは側壁Bにおいて2個、側壁Cにおいて2個あり、X方向の収納部平面長さ75mmあたり合計4個有している。またこの例では、各側壁B、Cの側面要素21aと平面要素22bとがなす角度及び側面要素21bと平面要素22cとがなす角度は97度である。
【0040】
かかる構成は、図4に示す当該容器(トレイ)の横Y方向の横断面においても同様に形成されている。
【0041】
また比較のため、表1に示す条件以外は同条件で前記実施例と同様に図1に示する電子部品収納用のトレイを成形した。
【0042】
【表1】

【0043】
次に、成形して得られたそれぞれの電子部品収納用のトレイについて、収納面のシャープ性を評価するため、前記凸部23の断面アール(R)を測定した。この断面アール(R)は、断面をカットして拡大写真を撮影し測定した。成形品からN=5(サンプル数)を抽出してその平均値で下記の基準で評価した。表2にその結果を示す。
○ 凸部Rが1.3mm未満
△ 凸部Rが1.3mm以上、2mm未満
× 凸部Rが2mm以上
【0044】
次に、成形性を、トレイを10個成形して下記の基準で評価した。
○ 10個のトレイすべて、側面要素である側壁部分に薄肉化による成形前発泡シートの厚みの1/10以下の厚みの部分または穴あきがない。
△ 1〜2個のトレイに、側面要素である側壁部分に薄肉化にによる成形前発泡シートの厚みの1/10以下の厚みの部分または穴あきがある。
× 3個以上のトレイに、側面要素である側壁部分に薄肉化による成形前発泡シートの厚みの1/10以下の厚みの部分または穴あきがある。
【0045】
さらに総合評価を下記の基準で評価した。
○ 収納面シャープ性評価、及び成形性評価ともに○
× 収納面シャープ性評価、及び成形性評価ともに○でないもの
【0046】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の方法により、ポリプロピレン系樹脂発泡シートを用いて、断面が角ばった凸凹形状の多く、側壁の垂直度の高い形状の容器、例えばIC部品等の電子部品,液晶表示パネル(LCD)、携帯情報端末装置(PDA)、液晶盤等の電気・電子製品(部品を含む)を収納する緩衝包装容器(トレイ含む)を、シャープな断面形状を有し、かつ部分的な厚みの薄肉化が抑えられた収納面を備えた容器(トレイ)として成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施例の方法により成形される電子部品収納用のトレイの平面図である。
【図2】同正面図である。
【図3】同右側面図である。
【図4】同トレイに形成された収納部の要部拡大平面図である。
【図5】図4におけるA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 トレイ
2 収納部
3 電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂発泡シートを成形機の加熱炉内にて加熱した後、次の成形ゾーンにて製品(部品を含む)の収納部を有する成形品を成形するポリプロピレン系樹脂発泡シートの成形方法において、
成形直前における、製品(部品を含む)の収納側の面を形成する前記発泡シートの表面温度が150〜155℃、反対側の表面温度が135〜145℃、当該反対側の前記発泡シートの表面温度が前記収納側の表面温度よりも10〜15℃低い温度となるようにして成形することを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡シートの成形方法。
【請求項2】
少なくとも前記発泡シートの収納側の面を真空吸引し成形することを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂発泡シートの成形方法。
【請求項3】
前記ポリプロピレン系樹脂発泡シートが、メルトテンションが20〜40gで、かつ自由末端長鎖分岐を有するポリプロピレン系樹脂(a)10〜50重量%と、メルトテンションが0.01g〜6gで、かつ重量平均分子量と数平均分子量の比の値が3〜8であるポリプロピレン系樹脂(b)90〜50重量%とからなるポリプロピレン系樹脂混合物を基材樹脂として、押出発泡されたポリプロピレン系樹脂発泡シートであることを特徴とする請求項1又は2記載のポリプロピレン系樹脂発泡シートの成形方法。
【請求項4】
断面が垂直方向の側面要素と水平方向の平面要素で構成され、
容器(トレイ)の縦横XY方向の少なくとも一方向における一方又は両方の側壁において角ばった凹凸断面をなして、当該凸部の数を合計3個以上/150mm有し、且つ製品(部品を含む)を支える段差部を備えている緩衝包装用容器を成形する請求項1乃至3のいずれかの項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡シートの成形方法。
【請求項5】
前記製品(部品を含む)が電気・電子製品(部品を含む)である請求項4記載のポリプロピレン系樹脂発泡シートの成形方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−268919(P2007−268919A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99363(P2006−99363)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】