ポリペプチドの経粘膜送達組成物
【解決手段】 本明細書に記載された発明は、生物活性ポリペプチドの経粘膜透過を促進し治療効果をより迅速に発現させる固形経口粘膜剤を提供する。本発明に基づいて調製された製剤は、治療血清濃度において受容者へのポリペプチドの経粘膜吸収を促進することが可能である。本発明は生物活性ポリペプチドを口腔粘膜吸収させるための固形製剤を提供するものであり、当該固形製剤は、生物活性ポリペプチド、胆汁酸塩、および発泡性賦形成分を含み、さらに発泡性カップルおよび選択的にpH調整剤を含む。本発明は生物活性ポリペプチドを投与する方法、及び生物活性ポリペプチドの経粘膜吸収促進方法を含むs。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は35U.S.C.119項に基づき2007年5月1日出願の米国仮特許出願第60/927,006号明細書に対して優先権を主張するものであり、その内容は全て本明細書中に組み込まれる。
【0002】
本発明は生命工学分野および薬化学分野に関連する。特に、本発明は生物活性ポリペプチドの口腔粘膜送達に関連する。
【背景技術】
【0003】
医薬活性ポリペプチドは医療分野の様々な治療において有用であることが知られている。生命工学における進歩により、製薬産業において製品製造に用いる天然および組み換えポリペプチドの大量生産が可能となった。しかし、一部のポリペプチドは消化管中で分解し易く経口投与に適さないことが知られている。したがって、これまでポリペプチド療法は点滴や注射などの非経口ルートで行われるのが一般的であった。
【0004】
経粘膜吸収を促進する組成物を含む剤形を用いたポリペプチド含有薬剤の経粘膜投与法が開発された。例えば、Igariらは米国特許第5,725,852号明細書および同第5,482,706号明細書において、シチジン二リン酸コリンとの混合によるポリペプチドの経粘膜投与について記載している。ポリペプチドの経粘膜送達に関するもう一つの方法は例えばAcharyaらによる米国特許第6,210,699号明細書に記載されており、無可塑ポリビニルピロリドンを粘膜接着剤として使用している。ポリペプチドの経膣吸収がFujiiらによる米国特許第5,238,917号明細書に記載されており、吸収促進剤にはポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルおよび塩酸が含まれる。
【0005】
口腔粘膜吸収は、自己投与能、血漿濃度および治療効果の速やかな発現、有効成分の初回通過代謝の回避、といった特定の利点と関連することがよく知られている。特定の有効成分の口腔粘膜(舌下、頬、歯肉、口蓋、食道粘膜など)送達用として様々な剤形が開発されている。そのような剤形は口腔内で吸収されるべく、急速に分解して有効成分が高濃度となるようにデザインされている。
【0006】
ポリペプチドの口腔粘膜投与も検討されている。例えば、ポリペプチドの口腔投与はHeiberらによる米国特許第5,863,555号明細書および同第5,766,620号明細書に記載されており、その中でグルカゴン様インスリン分泌促進ポリペプチドが胆汁酸塩などの透過促進剤と共に口腔投与されている。
【0007】
フェンタニルなど特定のアヘン剤の口腔粘膜吸収用として具体的に製剤化された経口剤が、ORAVESCENT(登録商標)テクノロジー(ミネソタ州Eden PrairieのCIMA LABS Inc.から入手可能)を利用してFENTORA(登録商標)の商標名として開発されている。この技術は、例えば米国特許第6,200,604号明細書および同第6,974,590号明細書の他、米国公開特許出願第2005/0169989号(2004年12月30日出願の第1/026,132号)、第2005/0142197号(2004年12月30日出願の第1/026,327号)、第2005/0142198号(2004年12月30日出願の第1/027,353号)、および第2005/0163838号(2004年12月30日出願の第11/026,759号)の各明細書に記載されている。この技術では、有効成分であるクエン酸フェンタニルの経粘膜輸送を促進するため、pH調整剤および発泡性カップルを含有する賦形剤を使用する。しかし、ORAVESCENT(登録商標)による発泡剤の経口投与が有効と考えられる他の医薬活性化合物の同定が現在進行中である。
【0008】
ポリペプチドを含む巨大分子の口腔粘膜送達を可能且つ改善する剤形に対する必要性が製薬分野に存在する。さらには、ポリペプチドを含むより大きな分子構造の経粘膜輸送を有効に達成する剤形に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリペプチドの口腔粘膜吸収を促進しそれによる治療効果をより迅速に発現させる組成物を提供する。ポリペプチドの経粘膜吸収を促進し受容者の治療血清濃度を達成する組成物の調製が可能であることが判明した。さらに、本発明に基づいて調製した場合、発泡性経粘膜剤とタウロコール酸(ナトリウム)などの胆汁酸塩との混合がポリペプチドの吸収を有意に促進し得ることが判明した。発泡性組成物と胆汁酸塩の混合は口腔粘膜を通したポリペプチドの送達に相乗効果を及ぼし、それぞれの吸収促進作用の合計を上回る生体利用効率を生じる可能性がある。
【0010】
本発明は、生物活性ポリペプチド、胆汁酸塩、および発泡性カップル含有の発泡性賦形成分を含む口腔粘膜吸収用組成物を提供する。本組成物は選択的に、例えば前記発泡性賦形成分または口腔粘膜組成物の一部としてpH調整剤をさらに含んでいても良い。一部の実施形態において、当該組成物は錠剤など固形の経口剤である。
【0011】
本発明はさらに、生物活性ポリペプチド、胆汁酸塩、および発泡性カップル含有の発泡性賦形成分を含む組成物を受容者に投与する工程を含む、生物活性ポリペプチドの経粘膜吸収促進法を提供し、当該組成物は選択的にpH調整剤をさらに含むものであっても良い。
【0012】
本発明はまた、a)生物活性ポリペプチド、胆汁酸塩、発泡性カップル含有の発泡性賦形剤、およびpH調整剤を含む組成物を提供する工程と、b)当該組成物を受容者の口腔内に適用し粘膜組織と接触させる工程と、c)当該組成物が溶解するのに十分な時間粘膜組織に接触した状態でその場に留まり、粘膜を通じて治療的有効量の同生物活性ポリペプチドが送達されるようにする工程と、を含む生物活性ポリペプチドを受容者に投与する方法を提供する。
【0013】
本発明は、受容者に口腔粘膜組成物を投与する工程を含む糖尿病治療法を提供する。当該組成物は治療的有効量のインスリン、発泡性賦形成分、および胆汁酸塩を含む。
【0014】
本発明はさらに、受容者に口腔粘膜組成物を投与する工程を含む癌治療法を提供する。当該組成物は治療的有効量のIFN−γ、発泡性賦形成分、および胆汁酸塩を含む。
【0015】
本発明はさらに、受容者に口腔粘膜組成物を投与する工程を含むウイルスまたは細菌感染症治療方法を提供する。当該組成物は治療的有効量のIFN−γ、発泡性賦形成分、および胆汁酸塩を含む。
【0016】
本発明は受容者に口腔粘膜組成物を投与する工程を含む糖尿病治療方法、肥満治療方法、または血糖コントロール方法をさらに提供する。当該組成物は治療的有効量のアミリン、発泡性賦形成分、および胆汁酸塩を含む。
【0017】
本発明はさらに、受容者に口腔粘膜組成物を投与する工程を含む精神疾患または精神障害の治療方法を提供する。当該組成物は治療的有効量のアミリン、発泡性賦形成分、および胆汁酸塩を含む。
【0018】
本発明をさらに以下の図により説明するが、いずれも本発明を限定するものではない。
【0019】
図1〜15はin vitro上皮細胞培養組織を用いて異なった賦形剤との混合による各種ポリペプチドの透過性を比較した棒グラフである
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一部の実施形態に従って、アミリン単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。蛍光標識アミリンは蛍光検出により測定する。
【図2】図2は、本発明の一部の実施形態に従って、サーモンカルシトニン単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。蛍光標識カルシトニンは蛍光検出により測定する。
【図3】図3は、本発明の一部の実施形態に従って、GLP−1単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。蛍光標識GLP−1は蛍光検出により測定する。
【図4】図4は、本発明の一部の実施形態に従って、インスリン単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。蛍光標識インスリンは蛍光検出により測定する。
【図5】図5は、本発明の一部の実施形態に従って、グルカゴン単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。蛍光標識グルカゴンは蛍光検出により測定する。
【図6】図6は、本発明の一部の実施形態に従って、PTH単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。蛍光標識PTHは蛍光検出により測定する。
【図7】図7は、本発明の一部の実施形態に従って、オキシトシン単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。蛍光標識オキシトシンは蛍光検出により測定する。
【図8】図8は、本発明の一部の実施形態に従って、Arg−バソプレッシン(デスモプレシン)単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。蛍光標識デスモプレシンは蛍光検出により測定する。
【図9】図9は、本発明の一部の実施形態に従って、PYY単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。蛍光標識PYYは蛍光検出により測定する。
【図10】図10は、本発明の一部の実施形態に従って、サーモンカルシトニン単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。サーモンカルシトニンはELISAキットおよび技法により測定する。
【図11】図11は、本発明の一部の実施形態に従って、デスモプレシン(Arg−バソプレッシン)単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。デスモプレシンはLC/MS/MSにより測定する。
【図12】図12は、本発明の一部の実施形態に従って、インターフェロンα−2b単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。インターフェロンα−2bはELISAキットおよび技法により測定する。
【図13】図13は同じ濃度のインスリンを単独投与した場合の透過性に対する異なった条件下におけるインスリン(In−FITC)のin vitro透過性促進率(ER)を示す棒グラフである。前記条件とは、本発明の一部の実施形態に基づき、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合である。試験を行った各種胆汁酸塩にはタウロコール酸(ナトリウム)(TC)、グリコール酸(GC)、グリコデオキシコール酸(GDC)、タウロデオキシコール酸(TDC)、コール酸(C)、タウロケノデオキシコール酸(TCDC)、およびタウロウルソデオキシコール酸(TUDC)が含まれる。In−FITCは蛍光検出により測定する。
【図14】図14は、IGF−1単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩(様々な濃度で)および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。IGF−1はELISAキットおよび同法により測定する。
【図15】図15は、HRPO−b単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。HRPO−bはHRPO−bによる特異的基質の変換に起因する吸光度の増加により測定する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において使用される用語「口腔粘膜」は、薬物の送達および吸収という文脈において、口腔に関連した1若しくはそれ以上の粘膜組織(例えば舌下、頬、歯肉、口蓋、食道領域の粘膜組織)を経由する蠕動前の薬剤取り込みを指すように意図される。より具体的には、前記用語が意味するところは当該有効成分の主要送達ルートが口腔粘膜組織を経由したものであるということである。より広義の用語「経粘膜」は粘膜組織を通じて達成される送達および吸収を指すように意図されており、口、直腸、または膣の粘膜組織が含まれる。
【0022】
本明細書において使用される用語「約」は、特に別の規定が無い限り、規定値±10%の範囲の値、およびその機能的等価を意味する。例えば、用語「約50mg」は50±10%、または45〜55mgを意味する。
【0023】
本明細書における使用される用語「生物活性ポリペプチド」は、ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質を指すよう意図されており、任意の長さのアミノ酸の多量体型を指し、コードされたまたはコードされていないアミノ酸、化学的または生化学的に修飾または誘導体化されたアミノ酸、および修飾されたペプチド骨格を有するポリペプチドが含まれ得る。同用語には、異種アミノ酸配列を有する融合タンパク質、異種および同種リーダー配列を有する融合タンパク質(N末端メチオニン残基の有無に関わらず)、免疫標識されたタンパク質、などの融合タンパク質が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明において有用な生物活性ポリペプチドには、サイトカイン、成長因子、造血因子、ホルモン、酵素、抗体、抗原、アレルゲン、などが含まれるがこれらに限定されるものではない。生物活性ポリペプチドは塩基性ポリペプチドに関連した生物活性を共有する。生物活性ポリペプチドの長さは例えば約5〜20アミノ酸、約10〜60アミノ酸、約25〜75アミノ酸、約50〜150アミノ酸、約75〜250アミノ酸、約100〜400アミノ酸、約200〜600アミノ酸、またはそれ以上、など様々であり得る。
【0024】
本明細書において使用される用語「治療的有効量」は、意図された生理作用の発現に必要と断定され、所与の投与ルートに関し確立した薬物動態的方法および技法に基づく測定による所与の有効成分に関連する量を指すように意図されている。
【0025】
本明細書における使用において、一般的な意味で使用さる場合の用語「経口剤」は、口腔内で分解/溶解する錠剤、カプセル、カプレット、ゲル、クリーム、スプレー、などが含まれる。本発明の経口剤には生物活性ポリペプチドとともに、当該有効成分の口腔粘膜吸収を促進する賦形成分を含有する、本発明に基づく固形経口剤としての医薬組成物が含まれるように意図されている。
【0026】
本明細書において使用される用語「大いに」は、別の規定がない限り、得られるべき利益または望ましい条件や特性が達成されることを当業者が理解するような程度に規定された基準を満たす特定の特性または性質を指すように意図されている。
【0027】
一般的に、本発明に従った医薬組成物には胆汁酸塩および発泡性組成物が混合されており、有効成分として生物活性ポリペプチドが含まれる。本発明の組成物にはさらにpH調整剤が含まれていても良い。一部の実施形態において、剤形中に用いられる例えば有効成分や賦形剤などの成分の混合は、集合的に機能して有効成分の経粘膜吸収(例えば本発明に基づくCmax対用量比および/または達成削減量)を促進する。一部の実施形態において、タウロコール酸ナトリウムなどの胆汁酸塩との混合による発泡性組成物およびpH調整剤(発泡性賦形剤の一部として)の使用は、ポリペプチドの送達および/または取り込みを有意に促進する。一部の実施形態において、発泡性組成物およびpH調整剤は、併用されることによりポリペプチドの送達および/または取り込みを促進する。
【0028】
本発明の組成物は粉末または錠剤などの固形経口剤として調製および/または投与可能である。また、本発明の組成物を液体形態で送達することも可能である。形態に関わらず、当該組成物を特定の口腔内部位に投与および/または送達することが可能であり、同部位で唾液と接触することにより同組成物は溶解する。一部の実施形態において、当該組成物は約1〜30分間以内に溶解する。当該有効成分は、少なくとも当該組成物が投与された領域においては当該口腔粘膜を越えて輸送される。一部の実施形態において、当該組成物は発泡性賦形剤、胆汁酸塩、および医薬活性ポリペプチドから成り、口腔中の舌下、頬、歯肉、口蓋、および/または食道部位粘膜組織に投与および/または送達され得る。
【0029】
一部の実施形態において、生物活性ポリペプチドは粘膜組織を越えて輸送、吸収され生物学的効果をもたらす。
【0030】
各種ポリペプチドに関連した様々な直接的および間接的生物活性を多方面の治療や処置に利用することができる。そのような治療の例としては、抗生剤療法、造血療法、抗アレルギー療法、ホルモン療法、ポリペプチド補充療法、診断的アッセイ、抗うつおよび向精神療法、抗腫瘍療法、抗不整脈療法、血管拡張療法、血管収縮療法、降圧療法、糖尿病予防およびコントロール、抗凝固療法、食欲抑制行動、血糖コントロール、血糖コントロール、満腹、抗感染療法、骨粗鬆症治療、ワクチン、などが挙げられるがこれらに限定されない。これらの処置または治療は、適切なポリペプチドが粘膜を通じて受容者の血流中にうまく輸送されることによって達成され得る。
【0031】
適切な生物活性ポリペプチドの例として、アミリン、サーモン由来のカルシトニン(s−CT)、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)、グルカゴン、副甲状腺ホルモン(PTH1)、オキシトシン、デスモプレシン(8D−Argバソプレッシン)、インスリン、ペプチドYY(PYY),サイトカイン、およびリンフォカイン(IFNα、IFNβ、IFNγなど)が挙げられるが、それらに限定されない。各種ポリペプチドの表はIgariらによる米国特許第5,725,852号明細書に記載されており、その全文が本明細書に参照により組み込まれる。
【0032】
本発明に使用可能な生物活性ポリペプチドには口腔粘膜組織を越えて血流中に入り関連効果を送達するものが含まれる。一部の実施形態において、当該ポリペプチドの分子量は約500〜200,000ダルトン(200kDa)若しくはそれ以上である。一部の実施形態において、当該ポリペプチドの分子量は約1,000〜20,000ダルトンである。一部の実施形態において、当該ポリペプチドの分子量は約3,000〜30,000ダルトンであり、他の実施形態においては当該ポリペプチドの分子量は約5,000〜60,000ダルトンである。
【0033】
一部の実施形態において、今回の出願はポリペプチド−薬剤複合体に加え、大きな非ペプチド系の化合物および分子の経粘膜送達に関する方法および組成物をさらに提供する。
【0034】
本発明の組成物には少なくとも一つの胆汁酸塩が含まれる。当該組成物のこの部分も以後組成物の「胆汁酸塩成分」と呼ぶ。本明細書で用いられる「胆汁酸塩」はその関連胆汁酸のカチオン塩形態を指し、例えば胆汁酸タウロコール酸は胆汁酸塩としてはタウロコール酸ナトリウムである。本発明に使用可能な胆汁酸塩には、タウロコール酸ナトリウム(TC)、グリココール酸ナトリウム(GC)、グリコデオキシコール酸ナトリウム(GDC)、タウロデオキシコール酸ナトリウム(TDC)、コール酸ナトリウム(C)、タウロケノデオキシコール酸ナトリウム(TCDC)、タウロウルソデオキシコール酸ナトリウム(TUDC)、およびこれらの組合せから成る群から選択される胆汁酸塩が含まれる(これらに限定されるものではない)。一部の実施形態において、当該胆汁酸塩としてタウロコール酸のナトリウム塩(すなわちタウロコール酸ナトリウム)が用いられる。本発明の説明においてはナトリウムが指定カチオンであるが、胆汁酸塩を形成するのに他のカチオンを用いることも可能である。
【0035】
使用可能な胆汁酸塩の量は選択される具体的な胆汁酸塩によって異なる。一部の実施形態において、胆汁酸塩の量は比較的少なく、本発明の利益を達成するための最小有効濃度から最大許容毒性に相当する量の範囲内にある。胆汁酸塩の最小および最大量のパラメータは胆汁酸塩によってそれぞれ異なったものになる。タウロコール酸ナトリウムの場合、本発明に使用可能な量は約0.05〜10w/v%または約0.5〜2.0w/v%である。一部の実施形態においては約1.0w/v%のタウロコール酸ナトリウムが使用される。
【0036】
本発明に基づいて調製された医薬組成物は透過促進剤として発泡性組成物を含有する。本発明に基づく組成物のこの部分も本明細書では「発泡性賦形成分」と称することが可能である。一部の実施形態において、当該発泡賦形成分は発泡性カップルを含有する。発泡性カップルは水または唾液によって活性化される酸および塩基であり、したがって水または唾液と接触すると溶解して発泡性カップルが活性化され二酸化炭素が産生される。一部の実施形態において、当該発泡性賦形成分には発泡性カップルに加えてpH調整剤が含まれる。種々の発泡性組成物または発泡性賦形成分が本発明に使用可能である。例えば、米国特許第5,178,878号明細書および同第5,503,846号明細書に記載された発泡性組成物および発泡性賦形成分が使用可能であり、それらの全文はこの参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
一部の実施形態において発泡性賦形成分は、水分がほとんど若しくはまったく含まれていない無水状態または安定的水和状態に通常保たれた、水若しくは唾液活性の発泡性カップルを含有する。一部の実施形態において、発泡性カップルは少なくとも一つの食品グレードの酸および少なくとも一つの食品グレードの反応性塩基を含有し、炭酸塩または重炭酸塩であっても良い。
【0038】
発泡性賦形成分おける使用が適切な酸としては、食品グレードの酸、無水酸、および酸性塩が挙げられる。食品グレードの酸としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、アスコルビン酸、コハク酸、無水酸、またはそれらの塩が挙げられるが、それらに限定されるものではない。使用される塩は食品グレードのナトリウム塩、カリウム塩、およびカルシウム塩、例えばリン酸2水素ナトリウムおよびリン酸1水素2ナトリウム、およびクエン酸塩および酸性硫酸塩ナトリウムであり得る。
【0039】
本発明との関連で使用可能な塩基としては重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウムなども発泡性カップルの一部として使用される限りで使用可能であるが、発泡性組成物内におけるpH調整剤としても使用可能である。
【0040】
一部の実施形態において、発泡性賦形成分の量は有効量であり、口内における錠剤の分解を達成するのに必要と思われる以外の特性に基づいて決定される。一部の実施形態において、発泡性は口腔における頬、舌下、または歯肉粘膜を通じた有効成分の透過を促進する主成分として用いられる。したがって、一部の実施形態において、発泡性賦形成分の量は剤形の総重量に基づき約5〜85%、約15〜60%、約30〜45%、および約35〜40%である。一部の実施形態において、酸および塩基の相対的比率は、その酸が一塩基、二塩基、または三塩基の相対分子量のいずれであるかなど、具体的成分に依存する。
【0041】
一部の実施形態において、当該pH調整剤は当該発泡性カップルの成分一つに加え、またそれ以外の成分である。電離状態の変化に影響されやすいポリペプチドは、口腔内における溶解および組織を越えての伝達に関する適切な条件を達成することによって投与可能である。一部の実施形態において、特定の薬剤に関する理想的な条件が塩基であれば、発泡性賦形成分またはpH調整剤のいずれかの一部として十分に過剰な量の適切な強酸を加えるのは望ましくない。一部の実施形態においては、例えば無水炭酸ナトリウムなどのpH調整剤が選択され、発泡性カップルとは別に機能する。
【0042】
有効成分の透過性をさらに高めるために様々なpH調整剤を使用することができる。一部の実施形態において、適切なpH調整剤の選択は投与薬剤および特に同薬剤がイオン化または脱イオン化されるpH、またそのイオン化形態または脱イオン化形態が経粘膜輸送を促進するか否かに依存する。
【0043】
一部の実施形態において、前記pH調整剤は局所pHを約3〜10または約4〜9に調整し、経粘膜輸送を促進することのできる任意の物質である。前記pHとは、受容者の口内に適用された時点での口腔粘膜と剤形(またはそれが分解/溶解する際の一部分)との表面接触域の微環境における「局所pH」である。
【0044】
一部の実施形態において、前記局所pHは最初にin vitroにてpH測定法を用いて当該錠剤によって示される動的pH変化を特徴付けることによって測定可能である。同方法は適切な大きさの試験管または他の同様な容器におけるリン酸緩衝生理食塩水0.5〜10mLの使用を含む。塩化ナトリウム9.0g、リン酸ナトリウム1塩基性1水和物0.6g、およびリン酸2ナトリウム(無水)0.78gを脱イオン水約1000mLに溶き、室温で1N 水酸化ナトリウムを撹拌しながら加えてpHを7.0±0.05に調整することによって緩衝生理食塩水1Lを調製することができる。調整には約0.5mLが必要となる。使用する溶剤の量は錠剤の大きさおよび用量に依存する。例えば、200mgの錠剤に対しては1mLの量が使用される。溶剤との接触後直ちに、マイクロコンビネーションpH電極を用いて溶剤のpHが時間の関数としてモニターされる。
【0045】
一部の実施形態において、本発明に基づくpH調整剤として使用可能な材料としては、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、リン酸水素、およびリン酸二水素が挙げられる。適切な炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムが挙げられるが、それらに限定されるものではない。適切なリン酸塩としては、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウムが挙げられるが、それらに限定されるものではない。一部の実施形態において、当該pH調整剤は炭酸ナトリウムである。一部の実施形態において当該pH調整剤は、適切な量で提供された場合、pH調整剤が含まれないことを除いては同一の製剤の場合に比べ、局所pHを少なくとも約0.5pH単位、1.0pH単位、または約2.0pH単位変化させる。
【0046】
一部の実施形態においてpH調整剤の量は、使用するpH調整剤の種類、発泡性カップルからの余分な酸または塩基の量、その他の成分の性質、および有効成分によって異なる。一部の実施形態において、pH調整剤の量は総薬剤重量の約0.5〜25%、約2〜20%、約5〜15%、約7〜12%と様々である。
【0047】
当該組成物が錠剤の場合、一部の実施形態において同組成物は一つ若しくはそれ以上の充填剤、崩壊剤、潤滑剤をさらに含有する。本明細書に記載の結果をもたらす限りにおいて、いかなる種類または量の充填剤を使用してもよい。一部の実施形態において、当該充填剤は糖および糖アルコールであり、これらには非直接圧縮および直接圧縮充填剤が含まれる。一部の実施形態において、非直接圧縮充填剤には製剤された場合に流動および/または圧縮特性が備わっており、増強または調整なしでは高速打錠工程における使用が困難となる。例えば、錠剤が十分に流れず、したがって二酸化ケイ素などの流動促進剤を加える必要が生じる。
【0048】
一部の実施形態において、直接圧縮充填剤は同様の許容を必要とせず、一般に圧縮および流動特性を有し、直接使用が可能である。一部の実施形態において、非直接圧縮充填剤には直接圧縮充填剤の特性が備わっている。一部の実施形態において、非直接圧縮充填剤の粒子サイズは直接圧縮充填剤に比べ小さい傾向がある。一部の実施形態において、スプレー乾燥されたマンニトールなどの充填剤の粒子サイズは比較的小さく、それでいてその後の工程次第ではしばしば直接圧縮が可能である。一部の実施形態において、当該充填剤は大型の非直接圧縮充填剤である。
【0049】
本発明とともに使用される適切な充填剤としてはマンニトール、ラクトース、ソルビトール、デキストロース、スクロース、キシリトール、グルコースなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。一部の実施形態において、当該充填剤はスプレー乾燥されたマンニトールである。使用する充填剤の量は当該製剤重量の約10〜80%、約25〜80%、または約35〜60%である。
【0050】
当該組成物において崩壊剤を使用することもできる。一部の実施形態において、崩壊剤は用量削減および/またはCmax対用量比の上昇を可能にする。一部の実施形態において、崩壊剤には崩壊特性をも有する結合剤が含まれる。適切な崩壊剤としては、マイクロクリスタリン、セルロース、架橋ポリビニルピロリドン(PVP−XL)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、架橋ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられるが、それらに限定されない。一部の実施形態において、崩壊剤の選択は、所与の方式の範囲で、それを使用することにより記載の効果が得られるか否かに依存する。
【0051】
一部の実施形態において、当該崩壊剤はデンプングリコール酸である。一部の実施形態において、当該崩壊剤はデンプングリコール酸ナトリウムである。デンプングリコール酸ナトリウムの例としてEXPLOTAB(商標)(標準グレード、フランスLestremのRoquetteから入手可能)が挙げられる。
【0052】
一部の実施形態において、崩壊剤の量は剤形の大きさ、他の成分の性質および量、などの要素によって異なる。一部の実施形態において、崩壊剤の量は完成剤形の重量に基づき、約0.25〜20%w/w、約0.5〜15%w/w、約0.5〜10%w/w、または約1〜8%w/wである。
【0053】
一部の実施形態において、本発明にはさらに打錠または排出潤滑剤が含まれる。適切な潤滑剤としてはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、およびこれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。一部の実施形態において、当該潤滑剤はステアリン酸マグネシウムである。一部の実施形態において、潤滑剤の量は製剤の1重量%未満である。一部の実施形態において、潤滑剤の量は約0.5%未満である。一部の実施形態において、潤滑剤の量は約1.0%以上、1.5%以上、および約1.5〜3%であり得る。一部の実施形態において、ステアリン酸マグネシウムが当該潤滑剤であり、約2重量%で使用される。
【0054】
一部の実施形態において、本発明の組成物には、本発明から得られる有利な特性を顕著に損なうことがない限りにおいて、他の従来の賦形剤が一般に知られた量で含有される。そのような追加的賦形剤としては結合剤、甘味料、着色剤、香味剤、流動促進剤、潤滑剤、崩壊剤、保存料、などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0055】
一部の実施形態において、本発明の組成物は例えば錠剤などの口腔粘膜固形剤として調製可能である。本発明に基づいて調製される発泡性錠剤は相対的に堅固または柔らかであり得る。例えば、本発明の組成物を含有する錠剤は米国特許第5,178,878号に記載された方法にしたがって調製可能であり、その文章は本明細書に参照として組み込まれている。この方法に基づいて調製された場合、同剤形の硬さは約15ニュートン未満であり得る。当該有効成分は保護剤でコーティングするか、または無コーティングであってもよい。柔らかでもろい錠剤が調製された場合、それらは米国特許第6,155,423号に記載されたようなブリスター包装に梱包することができる。一部の実施形態において、硬さが約15ニュートンの堅固な剤形は、米国特許第6,024,981号に記載された工程に基づいて調製可能である。さらに、粒子サイズの再現性および/または一貫性などの粉末の度合いが結果を左右する。
【0056】
剤形の全体的寸法およびサイズ、および有効成分の量は様々であっても良い。錠剤など剤形の全体的形状または構造は様々である。剤形構造は、頬、歯肉、または舌下など、意図される投与部位によって異なる。一部の実施形態において、本発明によってもたらされるその場における崩壊または溶解時間(滞留時間)は、治療的有効量の医薬活性ポリペプチドを粘膜を通じて送達するのに十分な期間である。前記時間は約30分未満、またはさらに短く約20分未満であり得る。一部の実施形態において、受容者反応および組成成分によっては滞留時間は約5〜10分間である。
【0057】
錠剤は当業者には簡単に入手可能な従来の打錠設備および技術を用いて調製可能である。一部の実施形態において、本発明に基づいて調製された錠剤は乾式混合され直接圧縮される。一部の実施形態において、錠剤は造粒から調製され得る。乾式造粒法を使用することができる。例えば、粒状化されたマンニトールを充填剤として用いることができる。製造工程の一環として、一部の実施形態においては、最終混合および圧縮の前に当該組成物の一部を顆粒化または混合するのが望ましい。選択し材料は所望の用量および含量均一性を得るために前もって選択される。したがって、一部の実施形態において、適量の発泡性カップル、pH調整剤、および崩壊剤が選択され、規定量にて提供され、所望の剤形に製剤される。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤を使用する場合、一部の実施形態において、それらは混合時間の終わりごろ、例えば混合の最終停止の数分前に加える。
【0058】
一部の実施形態において、本発明は、受容者に生物活性ポリペプチドを投与する方法を含み、この方法は、
a)医薬活性ポリペプチド、発泡性組成物、および胆汁酸塩を含む口腔粘膜組成物を提供する工程と、
b)前記口腔粘膜組成物を受容者口腔内粘膜組織上に配置する工程と、
c)前記組成物がその場で溶解するのに十分な時間を与え、治療的有効量の当該ポリペプチドが当該粘膜を通過して送達されるようにする工程と
を含む。
【0059】
用語「提供する」とは、当該組成物またはその剤形の包装または容器からの取り出し、および/または当該剤形を誰かに施させることが含まれるよう意図されている。上記のように、本発明に基づいて調製された剤形はブリスター包装に入れて受容者に提供することができる。本明細書において使用される用語「受容者」にはヒトを含む哺乳類が含まれる。当該受容者、または別の個人、は当該組成物を頬と上部または下部歯茎の間、または舌下に配置することができる。一部の実施形態において、当該組成物は当該組成物をしゃぶったり、かんだり、または飲み込んだりするべきではないことを示す説明書とともに提供される。
【0060】
治療方法
本開示に基づく口腔粘膜組成物については、糖尿病コントロール、血糖コントロール、肥満治療(例えば満腹誘発によるなど)、癌治療、感染症治療、および精神障害治療など数多くの治療法への利用が考えられる。したがって、一部の態様において、本発明は受容者において糖尿病を治療する方法が提供される。前記方法は受容者に口腔粘膜組成物を投与する工程を含む。一部の実施形態において、当該組成物は治療的有効量のインスリン、発泡剤成分、および胆汁酸塩を含む。
【0061】
一部の態様において、本発明は受容者において癌を治療する方法を提供する。前記方法は受容者に口腔粘膜組成物を投与する工程を含む。一部の実施形態において、当該組成物は治療的有効量のIFN−γ、発泡剤成分、および胆汁酸塩を含む。
【0062】
一部の態様において、本発明は受容者におけるウイルスまたは細菌感染症の治療方法を提供する。前記方法は受容者に口腔粘膜組成物を投与する工程を含む。一部の実施形態において、当該組成物は治療的有効量のIFN−γ、発泡剤成分、および胆汁酸塩を含む。
【0063】
一部の態様において、本発明は受容者における糖尿病、肥満、精神疾患または障害の治療方法、または血糖値のコントロール方法を提供する。当該方法は、治療的有効量のアミリン、発泡性賦形成分、および胆汁酸塩を含む口腔粘膜組成物を受容者に投与する工程を含む。一部の実施形態において、前記精神疾患または障害は気分障害、不安症、または統合失調症である。
【0064】
本発明は以下の実施例を用いてさらに説明される。これらのいずれもが必ずしも本発明を制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0065】
in vitro透過性アッセイ
in vitro透過性試験を以下のように実施した。一端を0.6cm四方のアクリルおよびポリカーボネート膜(セルなし)でシールしたアクリルインサートから始めて、培養ヒト口腔癌細胞(SqCC/Y1細胞)を培地内の膜表面で24時間にわたって培養した。前記培地をインサート先端部から除去し(air−lifting工程)、細胞がインサート下の培地から栄養供給を受け続けられるようにした。これらの条件下に細胞を7〜10日間培養してポリカーボネート膜上に多層に集合させ、それによって細胞密度を増やし、頬粘膜組織に似た多層の組織様障壁を調製した。
【0066】
アッセイは前記インサートを炭酸ナトリウムを加えないクレブスリンゲル緩衝液(KRB)でリンスし、経上皮電気抵抗(TEER)の測定により均一性を調べることによって実施した。必要な平均電気抵抗が350オーム若しくはそれ以上の場合、透過性試験用にインサートを選択し、透過障壁の厚さおよび分布が一貫するようにした。
【0067】
医薬有効成分(例えばポリペプチド)の特定剤形の試験に用いられるように、インサートを平均TEER値が極めて類似した群(例えばn=3)に分けた。
【0068】
TEER values (of the group) to be used in testing particular formulations of active pharmaceutical ingredients (i.e., polypeptide).例えば任意の胆汁酸塩に関し、サンプル群は以下のとおりである:
1)ポリペプチド単独;
2)ポリペプチドと胆汁酸塩の混合;
3)ポリペプチドと発泡性賦形成分(賦形剤1)粉末の混合;
4)ポリペプチドと胆汁酸塩(各種濃度)および発泡性賦形成分(賦形剤1)粉末との混合;
前記インサートを規定量のKRBを加えた細胞培養ウェル中に置き、100rpmに設定されたシェーカーテーブル上で37℃で培養した。このように、既述の様々な賦形剤を加えた場合と加えない場合の両様で、細胞を所与の有効成分(ポリペプチド)にさらした。
【0069】
サンプルを10分毎に1時間にわたって基底外側液から除去し、除去した液を同量のKRBで置き換えた。1時間終了時にインサート内の残留液を回収、保存し、同インサートをKRBでリンスし、再びTEER値を測定した。開始時TEERと最終TEERの相違を記録した。
【0070】
次にMTS毒性アッセイを用いて同インサートに関し処置による細胞毒性を評価し、さらにサンプルにおける処置による効果を記録した。MTS毒性アッセイは肝細胞がMTSテトラゾリウム化合物をホルマザン(490nmで紫外線を吸収)に転換させる能力を測定するものである。吸収量は生存細胞数に直接比例する。
【0071】
様々な方法を用いて基底外側ウェルのサンプルを当該有効成分(ポリペプチド)に関し分析した。同ウェル中の有効成分量を計算しサンプリングロスに関して修正を行った。このデータから細胞障壁を通過する有効成分の量を計算し、見かけ上の透過係数(Papp)を計算した。
【0072】
Papp=S/(A*C)
ここで
S=線形領域における透過曲線の傾斜(mg/秒);
A=細胞に覆われたインサート領域(cm2);
C=ドナー医薬有効成分濃度(mg/mL)
【0073】
促進率(ER)は吸収促進剤を使用した場合のPappと吸収促進剤を使用しない場合のPappの比率に等しい。したがって、この方法を下記提案の透過促進組成物のそれぞれに対し使用した。
【0074】
(実施例1A)
賦形剤の調製
賦形剤1(EF1)
最初の賦形成分は乾燥粉末形態の発泡性組成物の調製を含む。一部の実施形態において、使用する発泡性組成物は以下の表に示した賦形剤粉末である。
【0075】
【表1】
【0076】
賦形剤2(EF2)
賦形剤1に基づいて代わりの発泡性組成物を調製した。但し、発泡性カップルおよびpH調整剤のみを使用した。この製剤は賦形剤1 200mgと同じ容量になるように調製した。
【0077】
【表2】
【0078】
(実施例1B)
有効成分および胆汁酸塩成分
2番目の有効成分は液状の生物活性ポリペプチドと胆汁酸塩タウロコール酸ナトリウムとの混合を含む。例えば、乾燥型タウロコール酸ナトリウムおよびポリペプチド成分は緩衝生理食塩水中にもどすことができる。緩衝生理食塩水は例えばクレブスリンゲル緩衝液(D−グルコース1.8g/L)、塩化マグネシウム(無水)0.0468g/L、塩化カリウム0.34g/L、塩化ナトリウム9.0g/L、リン酸二ナトリウム(無水)0.1g/L、リン酸ナトリウム(無水)0.18g/Lから調製可能であり、pHを7.4に調整し、重炭酸ナトリウムは使用しない。
【0079】
従って、一部の実施形態において、本発明の組成物は上記成分(粉末状の発泡性賦形剤、胆汁酸塩含有の活性成分、および液状の生物活性ポリペプチド)を順に沈殿させて調製される。2つの部分からなる組成物を順に沈殿させることができる。すなわち、まず粉末成分、次に液体成分を粘膜組織上に配置する。
【0080】
(実施例1C)
ポリペプチド含有の経粘膜固形剤の調製
実施例1Aおよび1Bに記載した組成物の代わりに、一部の実施形態において、本発明の組成物を圧縮錠などの口腔粘膜固形剤として調製することができる。錠剤は発泡性組成物または発泡性賦形剤、胆汁酸塩、および生物活性ポリペプチド粉末を混合し、次にその粉末混合物を錠剤プレスで圧縮して固形錠とすることによって調製可能である。一部の実施形態において、錠剤型の固形剤は当業者に容易に利用できる従来の方法および設備によって調製可能である。
【0081】
蛍光標識ポリペプチドを用いたin vitro試験
in vitro透過性アッセイを行う場合、使用するポリペプチドはしばしば蛍光部分に結合される。特に、使用する蛍光部分はFAM(5(6)カルボキシフルオレセイン)およびFITC(フルオレセインイソチオシアネート)から選択される。フルオレセイン結合ポリペプチドは、分子量に関わらず同部分を含む任意のポリペプチドに対する単一の高感度検定法の使用を可能にする。これにより、それぞれ特定のポリペプチドに対する特異的アッセイを開発することなく種々のポリペプチドを単一の検定法を用いて評価することが可能となる。
【0082】
蛍光標識ポリペプチドの透過性を、強化を行った場合と行わない場合の両様でin vitro透過性アッセイにより測定した。細胞/組織を通して基底外側液に透過するポリペプチドの量を測定し、各ポリペプチドサンプルに対する見かけ上の透過係数(Papp)を計算した。胆汁酸塩(タウロコール酸)と発泡性粉末との混合のPappを、ポリペプチド単独、ポリペプチドと発泡性組成物の混合(胆汁酸塩はなし)、およびポリペプチドと胆汁酸塩(タウロコール酸ナトリウム)(発泡性組成物はなし)で得られたPapp値と比較し、混合した場合に2つのエンハンサー間に相乗効果が見られるか否かを判断した。試験にタウロコール酸のみを用いる場合、細胞への毒性作用から保護するために同タウロコール酸粉末を細胞上に直接適用することはしなかった。
【実施例2】
【0083】
アミリンのin vitro透過性の比較
ポリペプチドアミリンに関するin vitro透過性を測定した。アミリンは血糖コントロールおよび糖尿病治療に関連する。FAM標識アミリンは分子量が4259.86ダルトンで37個のアミノ酸からなるペプチドである。上記の細胞培養モデルを用い、以下の製剤に関しアミリン−FAMの透過性試験を行った。
【0084】
【表3】
【0085】
結果を図1に示す。グラフ上のデータから分かるように、in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのアミリンと所与の濃度の胆汁酸塩単独とでは粘膜組織を通じた同ポリペプチドの吸収を明確に促進することはないように見られる。同様に、発泡性賦形成分(上記実施例1Aに記載した賦形剤1)単独とポリペプチドアミリン−FAMとの混合も、粘膜組織を通じての吸収を明確に促進することはないように見られる。
【0086】
しかし、発泡性と1%胆汁酸塩との混合は、粘膜組織を通じた同ポリペプチドの輸送/透過性を高めるようである。併用した場合、タウロコール酸、発泡性賦形成分と同ポリペプチドとの混合は、胆汁酸塩および発泡性成分の各単独による透過作用の合計よりも大きな透過をもたらした。
【実施例3】
【0087】
s−CTのin vitro透過性の比較
カルシウム代謝および骨粗鬆症治療に関連したポリペプチドであるサーモン由来カルシトニン(s−CT)のin vitro透過性を測定した。s−CTが満腹ホルモンであるとの報告もある。FAM標識されたs−CTは分子量が3441.1ダルトンで25個のアミノ酸からなるペプチドフラグメント(8−32)である。上記の細胞培養モデルを用い、以下の製剤に関するs−CT−FAMの透過性試験を行った。
【0088】
【表4】
【0089】
結果を図2に示す。グラフ上のデータから見られるように、in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのs−CT−FAMと所与の濃度の胆汁酸塩単独との混合では、同ポリペプチドの粘膜組織を通じた吸収を明確に促進することはないように見られた。
【0090】
同様に、発泡性賦形成分(上記実施例1Aに記載した賦形剤1)単独とポリペプチドs−CT−FAMとの混合も粘膜組織を通じての吸収を明確に促進することはないように見られた。
【0091】
しかし、発泡性成分と1%胆汁酸塩との混合は粘膜組織を通じた同ポリペプチドの輸送/透過性を高めるようである。併用した場合、タウロコール酸、発泡性賦形成分と同ポリペプチドとの混合は、胆汁酸塩および発泡性成分の各単独による透過作用の合計よりも大きな透過をもたらすように見られた。
【実施例4】
【0092】
GLP−1−FAMのin vitro透過性の比較
GLP−1とも知られているグルカゴン様ペプチド1のin vitro透過性を評価した。GLP−1は2型糖尿病治療の他、満腹コントロールおよび体重減少とも関連する。GLP−1−FAMは分子量が4071.71ダルトンで30個のアミノ酸からなるペプチドである。上記の細胞培養モデルを用い、以下の製剤に関しGLP−1−FAMの透過性試験を行った。
【0093】
【表5】
【0094】
結果を図3に示す。グラフ上のデータから分かるように、in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのGLP−1−FAMと所与の濃度の胆汁酸塩単独との混合では、同ポリペプチドの粘膜組織を通じた吸収を明確に促進することはないように見られた。
【0095】
同様に、発泡性賦形成分(上記実施例1Aに記載した賦形剤1)単独とGLP−1−FAMとの混合も粘膜組織を通じての吸収を明確に促進することはないように見られた。
【0096】
しかし、発泡性成分と1%胆汁酸塩との混合は粘膜組織を通じた同ポリペプチドの輸送/透過性を確かに促進するようである。併用した場合、タウロコール酸、発泡性賦形成分と同ポリペプチドとの混合は、胆汁酸塩および発泡性成分の各単独による透過作用の合計よりも大きな透過をもたらすよう見られた。
【実施例5】
【0097】
インスリン−FITCのin vitro透過性の比較
インスリンのin vitro透過性を評価した。インスリンは分子量が5808ダルトンで51個のアミノ酸からなるポリペプチドであり、糖尿病治療に関連する。本試験に用いたインスリンは蛍光部分FITC(フルオレセインイソチオシアネート)に結合されていた。上記の細胞培養モデルを用い、以下の製剤に関しインスリン−FITC透過性の試験を行った。
【0098】
【表6】
【0099】
結果を図4に示す。グラフのデータから分かるように、in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのインスリン−FITCと所与の濃度の胆汁酸塩単独との混合では、粘膜組織を通じた同ポリペプチドの吸収を明確に促進することはないようである。同様に、発泡性賦形成分(上記実施例1Aに記載した賦形剤1)単独とインスリンポリペプチドとの混合も粘膜組織を通じての吸収を明確に促進することはないように見られた。
【0100】
しかし、発泡性と1%胆汁酸塩との混合は粘膜組織を通じた同ポリペプチドの輸送/透過性を高めるようである。併用した場合、タウロコール酸、発泡性賦形成分と同ポリペプチドとの混合は、胆汁酸塩および発泡性成分の各単独による透過作用の合計よりも大きな透過をもたらすように見られた。
【実施例6】
【0101】
グルカゴン−FAMのin vitro透過性の比較
急性低血糖症の治療に関連したグルカゴンのin vitro透過性を評価した。グルカゴン−FAMは分子量が1709.63ダルトンで11個のアミノ酸からなるペプチドである。上記の細胞培養モデルを用い、以下の製剤に関する透過性試験を行った。
【0102】
【表7】
【0103】
結果を図5に示す。グラフのデータから分かるように、in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのグルカゴン−FAMと所与の濃度の胆汁酸塩単独の混合では、粘膜組織を通じた同ポリペプチドの吸収を明確に促進することはないようである。同様に、発泡性賦形成分(上記実施例1Aに記載した賦形剤1)単独とポリペプチドグルカゴン−FAMとの混合も粘膜組織を通じての吸収を明確に促進することはないように見られた。
【0104】
しかし、発泡性成分と1%胆汁酸塩との混合は、粘膜組織を通じた同ポリペプチドの輸送/透過性を確かに促進するようである。併用した場合、タウロコール酸、発泡性賦形成分と同ポリペプチドとの混合は、胆汁酸塩および発泡性成分の各単独による透過作用の合計よりも大きな透過をもたらした。
【実施例7】
【0105】
PTHのin vitro透過性の比較
副甲状腺ホルモン(PTH)のin vitro透過性を評価した。PTHは骨粗鬆症治療に関連した38個のアミノ酸からなるペプチドである。PTH−FAMの分子量は5174.2ダルトンである。上記の細胞培養モデルを用い、以下の製剤に関しPTH−FAMの透過性試験を行った。
【0106】
【表8】
【0107】
結果を図6に示す。グラフ上のデータから分かるように、in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのPTH−FAMと所与の濃度の胆汁酸塩単独との混合では粘膜組織を通じた同ポリペプチドの吸収を明確に促進することはないようである。同様に、発泡性賦形成分(上記実施例1Aに記載した賦形剤1)単独とポリペプチドPTH−FAMとの混合も粘膜組織を通じての吸収を明確に促進することはないようである。
【0108】
しかし、発泡性成分と1%胆汁酸塩との混合は粘膜組織を通じた同ポリペプチドの輸送/透過性を確かに促進するようである。併用した場合、タウロコール酸、発泡性賦形成分と同ポリペプチドとの混合は、胆汁酸塩および発泡性成分の各単独による透過作用の合計よりも大きな透過作用をもたらすようであった。
【実施例8】
【0109】
オキシトシン−FAMのin vitro透過性の比較
子宮収縮に関連するホルモンであるオキシトシンのin vitro透過性を評価した。オキシトシン−FAMは分子量が約1365.18ダルトンで9個のアミノ酸からなるペプチドである。上記の細胞培養モデルを用い、以下の製剤に関しオキシトシン−FAMの透過性試験を行った。
【0110】
【表9】
【0111】
結果を図7に示す。グラフ上のデータから分かるように、in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのオキシトシン−FAMと所与の濃度の胆汁酸塩単独の混合では粘膜組織を通じた同ポリペプチドの吸収を明確に促進することはないようである。同様に、発泡性賦形成分(上記実施例1Aに記載した賦形剤1)単独とポリペプチドオキシトシン−FAMとの混合も粘膜組織を通じての吸収を明確に促進することはないに見られた。
【0112】
しかし、発泡性成分と1%胆汁酸塩との混合は粘膜組織を通じた同ポリペプチドの輸送/透過性を確かに促進するようである。併用した場合、タウロコール酸、発泡性賦形成分と同ポリペプチドとの混合は、胆汁酸塩および発泡性成分の各単独による透過作用の合計よりも大きな透過をもたらすように見られた。
【実施例9】
【0113】
デスモプレシン−FAMのin vitro透過性の比較
デスモプレシンとしても知られている8D−Argバソプレッシン(AVP)のin vitro透過性を評価した。デスモプレシンは血管収縮および利尿療法に関連している。デスモプレシン−FAMは分子量が1442.25ダルトンで9個のアミノ酸からなるペプチドである。上記の細胞培養モデルを用い、以下の製剤に関しデスモプレシン−FAMの透過性試験を行った。
【0114】
【表10】
【0115】
結果を図8に示す。グラフ上のデータから分かるように、in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのデスモプレシン−FAMまたはAVP−FAMと所与の濃度の胆汁酸塩単独との混合では粘膜組織を通じた同ポリペプチドの吸収を明確に促進することはないようである。同様に、発泡性賦形成分(上記実施例1Aに記載した賦形剤1)単独とポリペプチドデスモプレシン−FAMとの混合も粘膜組織を通じての吸収を明確に促進することはないようである。
【0116】
しかし、発泡性と1%胆汁酸塩との混合は粘膜組織を通じた同ポリペプチドの輸送/透過性を明確に促進するようである。併用した場合、タウロコール酸、発泡性賦形成分と同ポリペプチドとの混合は、胆汁酸塩と発泡性成分の各単独による透過作用の合計よりも大きな透過をもたらすようである。
【実施例10】
【0117】
PYY−FAMのin vitro透過性の比較
PYYまたはペプチドYYのin vitro透過性を評価した。PYYは肥満治療に関連した34個のアミノ酸からなるペプチドである。PYY−FAMの分子量は4407.71ダルトンである。上記の細胞培養モデルを用い、以下の製剤に関しPYY−FAMの透過性試験を行った。
【0118】
【表11】
【0119】
結果を図9に示す。グラフ上のデータから分かるように、in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのPYY−FAMと所与の濃度の胆汁酸塩単独との混合では粘膜組織を通じた同ポリペプチドの吸収を明確に促進することはないようである。同様に、発泡性賦形成分(上記実施例1Aに記載した賦形剤1)単独とポリペプチドPYY−FAMとの混合も粘膜組織を通じての吸収を明確に促進することはないようである。
【0120】
しかし、発泡性と1%胆汁酸塩との混合は粘膜組織を通じた同ポリペプチドの輸送/透過性を確かに促進するようである。併用した場合、タウロコール酸、発泡性賦形成分と同ポリペプチドとの混合は、胆汁酸塩および発泡性成分の各単独による透過作用の合計よりも大きな透過をもたらすようである。
【0121】
本発明の相乗的透過促進作用を確認する為、蛍光標識ポリペプチドを使用しない他の方法も使用した。
【実施例11】
【0122】
ELISAによるs−CT分析
サーモンカルシトニン(またはs−CT)を超高感度ELISAキットDSL−10−3600(テキサス州WebsterのDiagnostic Systems Laboratories, Inc.から入手)を用いて測定した。この方法においてs−CTはプラスチック結合抗体に捕らえられ、酵素特異的基質とともにインキュベートすることにより光学濃度を提供する酵素結合特異抗体を用いて発現される。このように、培養口腔細胞を通過するs−CTの量を経時的に測定し、それを用いて見かけ上の透過係数(Papp)を計算した。
【0123】
結果を図10に示す。図のデータから分かるように、in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのs−CTと胆汁酸塩(タウロコール酸ナトリウム)単独との混合、または同ポリペプチドと発泡性組成物(実施例1Aで記載されEF2と称した発泡性賦形剤2)単独との混合、は粘膜組織を通したポリペプチドs−CTの透過性を上昇させることはないようである。
【0124】
しかし、ポリペプチドs−CT、発泡性製剤、および1または2%胆汁酸塩の混合は、粘膜組織を通じた同ポリペプチドの透過/輸送を明確に促進するようである。併用した場合、タウロコール酸、発泡性賦形剤と同ポリペプチドとの混合は、同ポリペプチドと胆汁酸塩単独または発泡性製剤の各単独との混合による合計よりも大きな透過性をもたらすようである。
【実施例12】
【0125】
HPLC−MS−MSによるデスモプレシンの分析
デスモプレシンが培養口腔細胞を透過する量を長時間にわたって測定するため、液体クロマトグラフィ(LC)−質量分析(MS)法を開発した。次にこのデータを用いて見かけ上の透過係数(Papp)を計算した。集めた試験情報を用いて図11を調製した。
【0126】
in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのデスモプレシン(8−Argバソプレッシン、図中にDPとして示す)と所与の濃度の胆汁酸塩(タウロコール酸ナトリウム)または発泡性製剤(上記の実施例1Aに記載の賦形剤2)単独との混合は粘膜組織を通じてのポリペプチドの透過を明確に促進することはないようである。しかし、ポリペプチド(DP)、発泡性製剤、および1または2%胆汁酸塩の混合は、粘膜組織を通じた同ポリペプチドの透過/輸送を明確に促進するようである。したがって、ペプチド定量に関するLC/MS/MS法は、本明細書に記載された蛍光標識ポリペプチド法を用いて見られる結果を支持し裏付ける。
【実施例13】
【0127】
ELISAによるIFNα−2bの分析
本発明に基づく生物活性ポリペプチドとして組み換えヒトインターフェロンα−b(IFNα)(分子量が19,271ダルトンで166個のアミノ酸からなり、比活性度が260ミリオンIU/mgタンパク質)(INTRON(商標)A、ニュージャージー州KenilworthのSchering Corp.から入手)の試験を行った。IFNαはウイルス感染に関連した免疫機能に関わるサイトカインである。ELISA法(ELISAキット41110−2、ニュージャージー州PiscatawayのPBL Interferon Source,Inc.から入手)を用いて活性ポリペプチドを測定した。このアッセイでは、培養口腔細胞を透過するIFNαの量を長時間測定し、それを用いて見かけ上の透過係数(Papp)を計算した。データを図12に示す。
【0128】
図から分かるように、in vitroモデルにおいて、生物活性ポリペプチドとしてのIFNαと胆汁酸塩単独および発泡性組成物(実施例1Aに記載されEF1と称された賦形剤1)単独との混合は粘膜組織を通したIFNαの透過を明確に促進することはないようである。しかし、IFNα、1%または2%胆汁酸塩、および発泡性組成物の混合は粘膜組織を通じた同ポリペプチドの透過を明確に促進するようである。タウロコール酸、発泡性賦形成分とIFNαとの混合は、胆汁酸塩および発泡性成分の各単独による透過作用の合計よりも大きな透過をもたらすようである。ELISA法によるこれらの結果は上記の蛍光標識ポリペプチド透過アッセイで見られる結果を裏付けるものである。
【0129】
ポリペプチドの口腔粘膜透過促進に関するin vitro試験
麻酔イヌモデルに関するプロトコル
麻酔イヌモデルを用い、本発明に基づいて調製されたポリペプチド組成物の経粘膜透過を評価した。大型雑種成犬(15〜35kg)を対象に医学的なスクリーニングを行った。試験のため、イヌに麻酔を施し右側または左側臥位とし、橈側皮静脈からカニューレを挿入した。テフロン(登録商標)リングを口腔粘膜と水平位置に取り付け、容器とした。促進剤を加えた場合と加えない場合の両様により、同リングに囲まれた口腔粘膜上に評価対象となる生物活性ポリペプチドを適用した。試験により、活性ポリペプチドは液体、乾燥粉末、固形剤(錠剤)のいずれかの形態で加えた。10分毎2時間にわたって採血を行い、プロトコルによっては最大4時間まで試料を採取した。60分後に当該活性ポリペプチド含有組成物を容器から取除き、容器を2度リンスした。
【0130】
2時間後、イヌを麻酔から覚醒させ、リングを口腔粘膜から取り外した。麻酔から回復したイヌから引き続き採血を行った。血液試料を凝固するのにまかせ、遠心分離により血清を分離し、同血清を活性ポリペプチド含有量の分析までプロトコルに応じて−20〜−80℃で凍結した。
【実施例14】
【0131】
A.デスモプレシンの口腔粘膜透過
デスモプレシン(デアミノ−Cys1−D−Argバソプレッシン、またはD−Argバソプレッシン)の口腔粘膜を通じた血流中への透過に関し、液体、粉末、圧縮錠など各種投与剤形により試験を行った。デスモプレシンに、発泡性組成物EF1(実施例1A)単独、胆汁酸塩(タウロコール酸ナトリウム)単独、また胆汁酸塩および発泡性組成物の両方を混合して試験を行った。さらにデスモプレシンに、発泡性賦形成分(EF1および実施例1A)に加え基本的発泡性製剤EF2(実施例1A)を混合して試験を行った。
【0132】
デスモプレシン錠の調製
試験用のデスモプレシン含有錠は、実施例1Aに記載の発泡性製剤(EF1)200mgをタウロコール酸ナトリウム20mgと混合することにより調製した。この混合物を乾燥凍結したデスモプレシンが入った容器に直接加えた。粉末が入った容器を30分間混合し、次に穴径5/16"のPiccola 8ステーション打錠機各容器の粉末を各金型に入れ、約3kNの圧縮力で手動で圧縮した。活性ポリペプチドが入った錠剤を調製する前に、最適の圧縮条件を知るために、発泡性組成物と胆汁酸塩のみが入った試験錠剤をいくつか調製しておいた。出来上がった錠剤を試験に使用するまで−20℃で保存した。
【0133】
そうやって調製された錠剤を上記のプロトコルに従いイヌで試験を行った。錠剤を試験に使用する場合、錠剤はイヌの口腔粘膜上に直接置き、1分間にわたり水分を補給した。一連の採血を行い、血清を抽出した。血清試料にLC/MS/MS分析を行ってデスモプレシンを測定した。
【0134】
次表に、査定の製剤情報およびin vivo試験で得られたバイオアベイラビリティの結果を示す。
【0135】
【表12a】
【0136】
上記のデータから分かるように、in vivoモデルにおいて、生物活性ポリペプチドと所与の濃度の胆汁酸塩または発泡性製剤との混合は粘膜組織を通しての当該ポリペプチドの透過を明確に促進することはないようである。しかし、胆汁酸塩と発泡性製剤との混合は粘膜組織を通じた同ポリペプチドの輸送/透過を確かに促進するようである。タウロコール酸ナトリウムおよび発泡性組成物と当該ポリペプチドとの混合が透過性を高めるようである一方で、胆汁酸塩または発泡性組成物を各単独でデスモプレッシンと混合した場合は透過性は高められなかった。
【0137】
さらに、理論に拘束される意図はないが、タウロコール酸ナトリウムと混合した場合には発泡性製剤もデスモプレシンの透過促進に有効なようであり、したがってタウロコール酸と混合した場合に相乗効果を発揮するのは、広範囲の発泡性組成物(賦形剤1)のうち発泡性製剤部分(賦形剤2)(いずれも実施例1Aに記載)である可能性が示唆される。
【0138】
B.サーモンカルシトニンの口腔粘膜透過
サーモンカルシトニン(s−Ct)の口腔粘膜を通じた麻酔イヌ血流中への透過に関し、s−Ctおよび胆汁酸塩(0、2.5、5、10%)含有の発泡性圧縮錠を用いて試験を行った。前記錠剤は、デスモプレシンに関し記載したものと同様の方法および設備を用いて調製した。次表に、評価を行った錠剤の製剤情報を示す。
【0139】
【表12b】
【0140】
イヌにおけるデスモプレシンについて記載した手順を用いて、麻酔イヌを対象に錠剤の試験を行った。下表に示すように、発泡性製剤にNaTCを加えると(AUCの顕著な上昇からも分かるように)麻酔イヌにおけるs−Ctの経粘膜透過性が高まる(台形公式法を用いて評価)。イヌによって吸収に差はあるが、個々のイヌ毎にデータは一貫している。発泡性製剤に2.5%若しくはそれ以上のNaTCを加えることにより透過性は顕著に高まる。
【0141】
【表12c】
【実施例15】
【0142】
A.in vivoインスリン(溶液)透過性比較試験
各種組成溶液をイヌ口腔粘膜に適用することにより、ヒト組み換えインスリンの口腔粘膜を通じた血流中への透過に関する試験を行った。インスリンは、インスリン単独、発泡性製剤EF1(実施例1A)との混合、胆汁酸塩との混合、および胆汁酸塩、発泡性製剤(EF1およびEF2)との混合により試験を行った。この試験に使用した手順には「グルコースクランプ」型プロトコルが含まれ、5%デキストロースが血糖値を比較的一定に保つのに必要な量だけ経時的に注入される。デキストロースの総使用量を、機能的、生物活性インスリン吸収量の間接的測定値として記録する。さらに、インスリン値の試験に用いた血清試料を対象に、ELISAキット(カリフォルニア州CamarilloのBiosourceより入手したKAQ1251)を用いて吸収インスリンを直接測定した。口腔粘膜組織を通過するインスリン量を経時的に測定した。インスリンは、賦形剤1(EF1)のほか発泡性製剤賦形剤2(EF2)との混合で試験を行った。試験を行った製剤および結果を下記表に纏めた。
【0143】
【表13】
【0144】
B.in vivoインスリン(錠)透過性比較試験
インスリン粉末を次の製剤設計に基づいて錠剤化した。
【0145】
【表14】
【0146】
当該錠剤をデスモプレシンに関し記載したものと同様の方法および設備を用いて調製し、上記の麻酔イヌモデルプロトコルを用いて試験を行った。前記In vivoイヌ試験のため、当該錠剤を直接口腔粘膜上に適用し、1分間にわたって水で潤した。血清試料を収集しELISAキットを用いて分析を行った。データを分析し平均値を得た。結果の概要を下表に示す。
【0147】
【表15】
【実施例16】
【0148】
胆汁酸塩データの比較
本発明に適合する最も有効な胆汁酸塩を知るために試験を行った。胆汁酸塩の候補を、まず細胞培養試験(in vitro)において毒性値に関しスクリーニングを行った。胆汁酸塩をクレブスリンゲル緩衝液および逐次2倍希釈液に溶解したものを調製し、試験を行った。同試料に対し、毒性に関するMTSアッセイ(当業者は容易に実施可能)を行った。得られたTox50値を用いて、賦形剤1粉末の規定量との混合による胆汁酸塩の促進能を調べた。試料を2X、1X、1/2X、および1/4X Tox50量で調製し、それら単独および既述の賦形剤(賦形剤1)約5〜6μgとの混合による透過促進能を調べた。このように、促進能および発泡性賦形成分との相乗能力を比較した。
【0149】
このようにして試験を行った広範な胆汁酸塩を、本発明の脈絡の中で発泡性賦形剤と混合した場合の予想される促進能に関しスクリーニングを行った。その結果、予測評価に基づき以下の胆汁酸塩を選択した:タウロコール酸ナトリウム(TC)、グリココール酸ナトリウム(GC)、グリコデオキシコール酸ナトリウム(GDC)、タウロデオキシコール酸ナトリウム(TDC)、コール酸ナトリウム(C)、タウロケノデオキシコール酸ナトリウム(TCDC)、タウロウルソデオキシコール酸ナトリウム(TUDC)、およびこれらの組合せ。
【0150】
促進率(ER)は促進処置を行った場合の見かけ上の透過係数を活性成分単独の場合の見かけ上の透過係数で割った比率である。この方法および計算を、試験を行った各胆汁酸塩に適用した。
【0151】
結果を図13に示す。図のデータから分かるように、7種の胆汁酸塩それぞれに関し、活性ポリペプチド(インスリン)と胆汁酸塩および発泡性成分両方との本発明の組成に基づいた混合は、各透過促進剤を個々に用いた場合(すなわち、胆汁酸塩単独または発泡性賦形剤単独)に比べ、ERで示される透過作用は顕著に高いように見られた。
【0152】
図13から分かるように、当該ポリペプチド(インスリン)を胆汁酸塩単独と混合た場合と発泡性賦形成分単独と混合した場合のいずれも、胆汁酸塩および発泡性賦形成分の両方と混合した場合の透過値には達さないようである。この結果は、製剤設計にどの胆汁酸塩を使用するかに関わらず一貫してもたらされるように見られた。
【実施例17】
【0153】
ELISAを用いたIGF−1分析
インスリン様成長因子−1(IGF−1)のin vitro透過性を調べた。IGF−1は3つの内部ジスルフィド結合を持つ70個のアミノ酸からなる。分子量は約7600ダルトンである。IGF−1は多機能を有する複合成長因子である。上記の細胞培養モデルを用い、IGF−1の透過性を調べた。IGF−1をELISAキット(DG−100、R&D System、ミネソタ州Minneapolis)を用いて測定した。この方法では、IGF−1はプラスチック結合抗体に捉えられ、酵素特異的基質とともにインキュベートすることにより光学濃度を提供する酵素結合特異抗体を用いて発現される。このように、培養口腔細胞を通過するIGF−1の量を経時的に測定し、それを用いて見かけ上の透過係数(Papp)を計算した。
【0154】
結果を図14に示す。図のデータから分かるように、in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのIGF−1と胆汁酸塩(タウロコール酸ナトリウム)単独との混合、または同ポリペプチドと発泡性組成物(実施例1Aで記載されEF2と称した発泡性賦形剤2)単独との混合、は粘膜組織を通したポリペプチドIGF−1の透過性を促進することはないように見られた。
【0155】
しかし、当該ポリペプチドIGF−1、EF2、および1%胆汁酸塩の混合は粘膜組織を通じた当該ポリペプチドの透過/輸送を促進するようである。併用した場合、タウロコール酸、発泡性賦形剤と同ポリペプチドとの混合は、同ポリペプチドと胆汁酸塩および発泡性製剤の各単独との混合による合計よりも大きな透過をもたらすようである。ELISA法によるこれらの結果は、上記の蛍光標識透過アッセイで得られる結果を裏付けるものである。
【実施例18】
【0156】
酵素活性による西洋わさびペルオキシダーゼ分析
ビオチン標識された西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO−b)を入手した(Sigma Chemicals、ミズーリ州St.Louis)。HRPO−bは分子量が約34,000ダルトンで308個のアミノ酸からなる。ELISAなどのバイオアッセイに用いられる一般的な酵素である。ストレプトアビジンでコーティングされた電磁ビーズを用いて試料の他の成分から精製された。洗浄した電磁ビーズ上におけるHRPO−bの酵素活性を、O.D.450nMにおいてペルオキシダーゼ基質(R&D Systems、ミネソタ州Minneapolis)の変換を分析することにより測定した。このように、培養口腔細胞を通過するHRPO−bの量を経時的に測定し、それを用いて見かけ上の透過係数(Papp)を計算した。
【0157】
結果を図15に示す。図のデータから分かるように、in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのHRPO−bと胆汁酸塩(タウロコール酸ナトリウム)単独との混合、または同ポリペプチドと発泡性組成物(実施例1Aで記載されEF2と称した発泡性賦形剤2)単独との混合、は粘膜組織を通したポリペプチドHRPO−bの透過性を促進することはないように見られた。
【0158】
しかし、当該ポリペプチドHRPO−b、EF2、および1%胆汁酸塩の混合は粘膜組織を通じた当該ポリペプチドの透過/輸送を促進するようである。併用した場合、タウロコール酸、発泡性賦形剤と同ポリペプチドとの混合は、同ポリペプチドと胆汁酸塩および発泡性製剤の各単独との混合による合計よりも大きな透過性をもたらすようである。正常な酵素活性を用いたこれらの結果は、上記の蛍光標識透過アッセイを用いて得られた結果を裏付ける。
【0159】
本明細書に記載された試験データは、発泡性成分、胆汁酸塩、および本発明に基づく組成物の生物活性ポリペプチド間における相乗作用を支持するように思われる。理論に束縛されるものではないが、発泡性賦形剤は薬物送達ルートとして粘膜を通じたポリペプチドの輸送を促進する方法で胆汁酸塩成分と相互に作用すると考えられている。もう一つの説明としては、発泡性成分および胆汁酸塩が各単独で粘膜組織に及ぼす作用の混合が正味の細胞透過性総量をより大きなものにすることが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明は様々なポリペプチドの口腔粘膜を経由した受容者への送達に有用である。さらに、本発明は医療、製薬、または栄養の各分野での利用が可能である。
【0161】
本明細書には、本発明に関する各種の具体的な実施形態および方法が記載されている。しかし当業者には、以下の請求項に定義される本発明の精神若しくは範囲のいずれからも大きく逸脱することなく、そのような実施形態および方法からの妥当な変更および修正が可能であることが理解される。
【技術分野】
【0001】
この出願は35U.S.C.119項に基づき2007年5月1日出願の米国仮特許出願第60/927,006号明細書に対して優先権を主張するものであり、その内容は全て本明細書中に組み込まれる。
【0002】
本発明は生命工学分野および薬化学分野に関連する。特に、本発明は生物活性ポリペプチドの口腔粘膜送達に関連する。
【背景技術】
【0003】
医薬活性ポリペプチドは医療分野の様々な治療において有用であることが知られている。生命工学における進歩により、製薬産業において製品製造に用いる天然および組み換えポリペプチドの大量生産が可能となった。しかし、一部のポリペプチドは消化管中で分解し易く経口投与に適さないことが知られている。したがって、これまでポリペプチド療法は点滴や注射などの非経口ルートで行われるのが一般的であった。
【0004】
経粘膜吸収を促進する組成物を含む剤形を用いたポリペプチド含有薬剤の経粘膜投与法が開発された。例えば、Igariらは米国特許第5,725,852号明細書および同第5,482,706号明細書において、シチジン二リン酸コリンとの混合によるポリペプチドの経粘膜投与について記載している。ポリペプチドの経粘膜送達に関するもう一つの方法は例えばAcharyaらによる米国特許第6,210,699号明細書に記載されており、無可塑ポリビニルピロリドンを粘膜接着剤として使用している。ポリペプチドの経膣吸収がFujiiらによる米国特許第5,238,917号明細書に記載されており、吸収促進剤にはポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルおよび塩酸が含まれる。
【0005】
口腔粘膜吸収は、自己投与能、血漿濃度および治療効果の速やかな発現、有効成分の初回通過代謝の回避、といった特定の利点と関連することがよく知られている。特定の有効成分の口腔粘膜(舌下、頬、歯肉、口蓋、食道粘膜など)送達用として様々な剤形が開発されている。そのような剤形は口腔内で吸収されるべく、急速に分解して有効成分が高濃度となるようにデザインされている。
【0006】
ポリペプチドの口腔粘膜投与も検討されている。例えば、ポリペプチドの口腔投与はHeiberらによる米国特許第5,863,555号明細書および同第5,766,620号明細書に記載されており、その中でグルカゴン様インスリン分泌促進ポリペプチドが胆汁酸塩などの透過促進剤と共に口腔投与されている。
【0007】
フェンタニルなど特定のアヘン剤の口腔粘膜吸収用として具体的に製剤化された経口剤が、ORAVESCENT(登録商標)テクノロジー(ミネソタ州Eden PrairieのCIMA LABS Inc.から入手可能)を利用してFENTORA(登録商標)の商標名として開発されている。この技術は、例えば米国特許第6,200,604号明細書および同第6,974,590号明細書の他、米国公開特許出願第2005/0169989号(2004年12月30日出願の第1/026,132号)、第2005/0142197号(2004年12月30日出願の第1/026,327号)、第2005/0142198号(2004年12月30日出願の第1/027,353号)、および第2005/0163838号(2004年12月30日出願の第11/026,759号)の各明細書に記載されている。この技術では、有効成分であるクエン酸フェンタニルの経粘膜輸送を促進するため、pH調整剤および発泡性カップルを含有する賦形剤を使用する。しかし、ORAVESCENT(登録商標)による発泡剤の経口投与が有効と考えられる他の医薬活性化合物の同定が現在進行中である。
【0008】
ポリペプチドを含む巨大分子の口腔粘膜送達を可能且つ改善する剤形に対する必要性が製薬分野に存在する。さらには、ポリペプチドを含むより大きな分子構造の経粘膜輸送を有効に達成する剤形に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリペプチドの口腔粘膜吸収を促進しそれによる治療効果をより迅速に発現させる組成物を提供する。ポリペプチドの経粘膜吸収を促進し受容者の治療血清濃度を達成する組成物の調製が可能であることが判明した。さらに、本発明に基づいて調製した場合、発泡性経粘膜剤とタウロコール酸(ナトリウム)などの胆汁酸塩との混合がポリペプチドの吸収を有意に促進し得ることが判明した。発泡性組成物と胆汁酸塩の混合は口腔粘膜を通したポリペプチドの送達に相乗効果を及ぼし、それぞれの吸収促進作用の合計を上回る生体利用効率を生じる可能性がある。
【0010】
本発明は、生物活性ポリペプチド、胆汁酸塩、および発泡性カップル含有の発泡性賦形成分を含む口腔粘膜吸収用組成物を提供する。本組成物は選択的に、例えば前記発泡性賦形成分または口腔粘膜組成物の一部としてpH調整剤をさらに含んでいても良い。一部の実施形態において、当該組成物は錠剤など固形の経口剤である。
【0011】
本発明はさらに、生物活性ポリペプチド、胆汁酸塩、および発泡性カップル含有の発泡性賦形成分を含む組成物を受容者に投与する工程を含む、生物活性ポリペプチドの経粘膜吸収促進法を提供し、当該組成物は選択的にpH調整剤をさらに含むものであっても良い。
【0012】
本発明はまた、a)生物活性ポリペプチド、胆汁酸塩、発泡性カップル含有の発泡性賦形剤、およびpH調整剤を含む組成物を提供する工程と、b)当該組成物を受容者の口腔内に適用し粘膜組織と接触させる工程と、c)当該組成物が溶解するのに十分な時間粘膜組織に接触した状態でその場に留まり、粘膜を通じて治療的有効量の同生物活性ポリペプチドが送達されるようにする工程と、を含む生物活性ポリペプチドを受容者に投与する方法を提供する。
【0013】
本発明は、受容者に口腔粘膜組成物を投与する工程を含む糖尿病治療法を提供する。当該組成物は治療的有効量のインスリン、発泡性賦形成分、および胆汁酸塩を含む。
【0014】
本発明はさらに、受容者に口腔粘膜組成物を投与する工程を含む癌治療法を提供する。当該組成物は治療的有効量のIFN−γ、発泡性賦形成分、および胆汁酸塩を含む。
【0015】
本発明はさらに、受容者に口腔粘膜組成物を投与する工程を含むウイルスまたは細菌感染症治療方法を提供する。当該組成物は治療的有効量のIFN−γ、発泡性賦形成分、および胆汁酸塩を含む。
【0016】
本発明は受容者に口腔粘膜組成物を投与する工程を含む糖尿病治療方法、肥満治療方法、または血糖コントロール方法をさらに提供する。当該組成物は治療的有効量のアミリン、発泡性賦形成分、および胆汁酸塩を含む。
【0017】
本発明はさらに、受容者に口腔粘膜組成物を投与する工程を含む精神疾患または精神障害の治療方法を提供する。当該組成物は治療的有効量のアミリン、発泡性賦形成分、および胆汁酸塩を含む。
【0018】
本発明をさらに以下の図により説明するが、いずれも本発明を限定するものではない。
【0019】
図1〜15はin vitro上皮細胞培養組織を用いて異なった賦形剤との混合による各種ポリペプチドの透過性を比較した棒グラフである
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一部の実施形態に従って、アミリン単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。蛍光標識アミリンは蛍光検出により測定する。
【図2】図2は、本発明の一部の実施形態に従って、サーモンカルシトニン単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。蛍光標識カルシトニンは蛍光検出により測定する。
【図3】図3は、本発明の一部の実施形態に従って、GLP−1単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。蛍光標識GLP−1は蛍光検出により測定する。
【図4】図4は、本発明の一部の実施形態に従って、インスリン単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。蛍光標識インスリンは蛍光検出により測定する。
【図5】図5は、本発明の一部の実施形態に従って、グルカゴン単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。蛍光標識グルカゴンは蛍光検出により測定する。
【図6】図6は、本発明の一部の実施形態に従って、PTH単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。蛍光標識PTHは蛍光検出により測定する。
【図7】図7は、本発明の一部の実施形態に従って、オキシトシン単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。蛍光標識オキシトシンは蛍光検出により測定する。
【図8】図8は、本発明の一部の実施形態に従って、Arg−バソプレッシン(デスモプレシン)単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。蛍光標識デスモプレシンは蛍光検出により測定する。
【図9】図9は、本発明の一部の実施形態に従って、PYY単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。蛍光標識PYYは蛍光検出により測定する。
【図10】図10は、本発明の一部の実施形態に従って、サーモンカルシトニン単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。サーモンカルシトニンはELISAキットおよび技法により測定する。
【図11】図11は、本発明の一部の実施形態に従って、デスモプレシン(Arg−バソプレッシン)単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。デスモプレシンはLC/MS/MSにより測定する。
【図12】図12は、本発明の一部の実施形態に従って、インターフェロンα−2b単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。インターフェロンα−2bはELISAキットおよび技法により測定する。
【図13】図13は同じ濃度のインスリンを単独投与した場合の透過性に対する異なった条件下におけるインスリン(In−FITC)のin vitro透過性促進率(ER)を示す棒グラフである。前記条件とは、本発明の一部の実施形態に基づき、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合である。試験を行った各種胆汁酸塩にはタウロコール酸(ナトリウム)(TC)、グリコール酸(GC)、グリコデオキシコール酸(GDC)、タウロデオキシコール酸(TDC)、コール酸(C)、タウロケノデオキシコール酸(TCDC)、およびタウロウルソデオキシコール酸(TUDC)が含まれる。In−FITCは蛍光検出により測定する。
【図14】図14は、IGF−1単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩(様々な濃度で)および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。IGF−1はELISAキットおよび同法により測定する。
【図15】図15は、HRPO−b単独、胆汁酸塩との混合、発泡性組成物との混合、胆汁酸塩および発泡性組成物両方との混合によるin vitro透過性を示した棒グラフである。HRPO−bはHRPO−bによる特異的基質の変換に起因する吸光度の増加により測定する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において使用される用語「口腔粘膜」は、薬物の送達および吸収という文脈において、口腔に関連した1若しくはそれ以上の粘膜組織(例えば舌下、頬、歯肉、口蓋、食道領域の粘膜組織)を経由する蠕動前の薬剤取り込みを指すように意図される。より具体的には、前記用語が意味するところは当該有効成分の主要送達ルートが口腔粘膜組織を経由したものであるということである。より広義の用語「経粘膜」は粘膜組織を通じて達成される送達および吸収を指すように意図されており、口、直腸、または膣の粘膜組織が含まれる。
【0022】
本明細書において使用される用語「約」は、特に別の規定が無い限り、規定値±10%の範囲の値、およびその機能的等価を意味する。例えば、用語「約50mg」は50±10%、または45〜55mgを意味する。
【0023】
本明細書における使用される用語「生物活性ポリペプチド」は、ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質を指すよう意図されており、任意の長さのアミノ酸の多量体型を指し、コードされたまたはコードされていないアミノ酸、化学的または生化学的に修飾または誘導体化されたアミノ酸、および修飾されたペプチド骨格を有するポリペプチドが含まれ得る。同用語には、異種アミノ酸配列を有する融合タンパク質、異種および同種リーダー配列を有する融合タンパク質(N末端メチオニン残基の有無に関わらず)、免疫標識されたタンパク質、などの融合タンパク質が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明において有用な生物活性ポリペプチドには、サイトカイン、成長因子、造血因子、ホルモン、酵素、抗体、抗原、アレルゲン、などが含まれるがこれらに限定されるものではない。生物活性ポリペプチドは塩基性ポリペプチドに関連した生物活性を共有する。生物活性ポリペプチドの長さは例えば約5〜20アミノ酸、約10〜60アミノ酸、約25〜75アミノ酸、約50〜150アミノ酸、約75〜250アミノ酸、約100〜400アミノ酸、約200〜600アミノ酸、またはそれ以上、など様々であり得る。
【0024】
本明細書において使用される用語「治療的有効量」は、意図された生理作用の発現に必要と断定され、所与の投与ルートに関し確立した薬物動態的方法および技法に基づく測定による所与の有効成分に関連する量を指すように意図されている。
【0025】
本明細書における使用において、一般的な意味で使用さる場合の用語「経口剤」は、口腔内で分解/溶解する錠剤、カプセル、カプレット、ゲル、クリーム、スプレー、などが含まれる。本発明の経口剤には生物活性ポリペプチドとともに、当該有効成分の口腔粘膜吸収を促進する賦形成分を含有する、本発明に基づく固形経口剤としての医薬組成物が含まれるように意図されている。
【0026】
本明細書において使用される用語「大いに」は、別の規定がない限り、得られるべき利益または望ましい条件や特性が達成されることを当業者が理解するような程度に規定された基準を満たす特定の特性または性質を指すように意図されている。
【0027】
一般的に、本発明に従った医薬組成物には胆汁酸塩および発泡性組成物が混合されており、有効成分として生物活性ポリペプチドが含まれる。本発明の組成物にはさらにpH調整剤が含まれていても良い。一部の実施形態において、剤形中に用いられる例えば有効成分や賦形剤などの成分の混合は、集合的に機能して有効成分の経粘膜吸収(例えば本発明に基づくCmax対用量比および/または達成削減量)を促進する。一部の実施形態において、タウロコール酸ナトリウムなどの胆汁酸塩との混合による発泡性組成物およびpH調整剤(発泡性賦形剤の一部として)の使用は、ポリペプチドの送達および/または取り込みを有意に促進する。一部の実施形態において、発泡性組成物およびpH調整剤は、併用されることによりポリペプチドの送達および/または取り込みを促進する。
【0028】
本発明の組成物は粉末または錠剤などの固形経口剤として調製および/または投与可能である。また、本発明の組成物を液体形態で送達することも可能である。形態に関わらず、当該組成物を特定の口腔内部位に投与および/または送達することが可能であり、同部位で唾液と接触することにより同組成物は溶解する。一部の実施形態において、当該組成物は約1〜30分間以内に溶解する。当該有効成分は、少なくとも当該組成物が投与された領域においては当該口腔粘膜を越えて輸送される。一部の実施形態において、当該組成物は発泡性賦形剤、胆汁酸塩、および医薬活性ポリペプチドから成り、口腔中の舌下、頬、歯肉、口蓋、および/または食道部位粘膜組織に投与および/または送達され得る。
【0029】
一部の実施形態において、生物活性ポリペプチドは粘膜組織を越えて輸送、吸収され生物学的効果をもたらす。
【0030】
各種ポリペプチドに関連した様々な直接的および間接的生物活性を多方面の治療や処置に利用することができる。そのような治療の例としては、抗生剤療法、造血療法、抗アレルギー療法、ホルモン療法、ポリペプチド補充療法、診断的アッセイ、抗うつおよび向精神療法、抗腫瘍療法、抗不整脈療法、血管拡張療法、血管収縮療法、降圧療法、糖尿病予防およびコントロール、抗凝固療法、食欲抑制行動、血糖コントロール、血糖コントロール、満腹、抗感染療法、骨粗鬆症治療、ワクチン、などが挙げられるがこれらに限定されない。これらの処置または治療は、適切なポリペプチドが粘膜を通じて受容者の血流中にうまく輸送されることによって達成され得る。
【0031】
適切な生物活性ポリペプチドの例として、アミリン、サーモン由来のカルシトニン(s−CT)、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)、グルカゴン、副甲状腺ホルモン(PTH1)、オキシトシン、デスモプレシン(8D−Argバソプレッシン)、インスリン、ペプチドYY(PYY),サイトカイン、およびリンフォカイン(IFNα、IFNβ、IFNγなど)が挙げられるが、それらに限定されない。各種ポリペプチドの表はIgariらによる米国特許第5,725,852号明細書に記載されており、その全文が本明細書に参照により組み込まれる。
【0032】
本発明に使用可能な生物活性ポリペプチドには口腔粘膜組織を越えて血流中に入り関連効果を送達するものが含まれる。一部の実施形態において、当該ポリペプチドの分子量は約500〜200,000ダルトン(200kDa)若しくはそれ以上である。一部の実施形態において、当該ポリペプチドの分子量は約1,000〜20,000ダルトンである。一部の実施形態において、当該ポリペプチドの分子量は約3,000〜30,000ダルトンであり、他の実施形態においては当該ポリペプチドの分子量は約5,000〜60,000ダルトンである。
【0033】
一部の実施形態において、今回の出願はポリペプチド−薬剤複合体に加え、大きな非ペプチド系の化合物および分子の経粘膜送達に関する方法および組成物をさらに提供する。
【0034】
本発明の組成物には少なくとも一つの胆汁酸塩が含まれる。当該組成物のこの部分も以後組成物の「胆汁酸塩成分」と呼ぶ。本明細書で用いられる「胆汁酸塩」はその関連胆汁酸のカチオン塩形態を指し、例えば胆汁酸タウロコール酸は胆汁酸塩としてはタウロコール酸ナトリウムである。本発明に使用可能な胆汁酸塩には、タウロコール酸ナトリウム(TC)、グリココール酸ナトリウム(GC)、グリコデオキシコール酸ナトリウム(GDC)、タウロデオキシコール酸ナトリウム(TDC)、コール酸ナトリウム(C)、タウロケノデオキシコール酸ナトリウム(TCDC)、タウロウルソデオキシコール酸ナトリウム(TUDC)、およびこれらの組合せから成る群から選択される胆汁酸塩が含まれる(これらに限定されるものではない)。一部の実施形態において、当該胆汁酸塩としてタウロコール酸のナトリウム塩(すなわちタウロコール酸ナトリウム)が用いられる。本発明の説明においてはナトリウムが指定カチオンであるが、胆汁酸塩を形成するのに他のカチオンを用いることも可能である。
【0035】
使用可能な胆汁酸塩の量は選択される具体的な胆汁酸塩によって異なる。一部の実施形態において、胆汁酸塩の量は比較的少なく、本発明の利益を達成するための最小有効濃度から最大許容毒性に相当する量の範囲内にある。胆汁酸塩の最小および最大量のパラメータは胆汁酸塩によってそれぞれ異なったものになる。タウロコール酸ナトリウムの場合、本発明に使用可能な量は約0.05〜10w/v%または約0.5〜2.0w/v%である。一部の実施形態においては約1.0w/v%のタウロコール酸ナトリウムが使用される。
【0036】
本発明に基づいて調製された医薬組成物は透過促進剤として発泡性組成物を含有する。本発明に基づく組成物のこの部分も本明細書では「発泡性賦形成分」と称することが可能である。一部の実施形態において、当該発泡賦形成分は発泡性カップルを含有する。発泡性カップルは水または唾液によって活性化される酸および塩基であり、したがって水または唾液と接触すると溶解して発泡性カップルが活性化され二酸化炭素が産生される。一部の実施形態において、当該発泡性賦形成分には発泡性カップルに加えてpH調整剤が含まれる。種々の発泡性組成物または発泡性賦形成分が本発明に使用可能である。例えば、米国特許第5,178,878号明細書および同第5,503,846号明細書に記載された発泡性組成物および発泡性賦形成分が使用可能であり、それらの全文はこの参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
一部の実施形態において発泡性賦形成分は、水分がほとんど若しくはまったく含まれていない無水状態または安定的水和状態に通常保たれた、水若しくは唾液活性の発泡性カップルを含有する。一部の実施形態において、発泡性カップルは少なくとも一つの食品グレードの酸および少なくとも一つの食品グレードの反応性塩基を含有し、炭酸塩または重炭酸塩であっても良い。
【0038】
発泡性賦形成分おける使用が適切な酸としては、食品グレードの酸、無水酸、および酸性塩が挙げられる。食品グレードの酸としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、アスコルビン酸、コハク酸、無水酸、またはそれらの塩が挙げられるが、それらに限定されるものではない。使用される塩は食品グレードのナトリウム塩、カリウム塩、およびカルシウム塩、例えばリン酸2水素ナトリウムおよびリン酸1水素2ナトリウム、およびクエン酸塩および酸性硫酸塩ナトリウムであり得る。
【0039】
本発明との関連で使用可能な塩基としては重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウムなども発泡性カップルの一部として使用される限りで使用可能であるが、発泡性組成物内におけるpH調整剤としても使用可能である。
【0040】
一部の実施形態において、発泡性賦形成分の量は有効量であり、口内における錠剤の分解を達成するのに必要と思われる以外の特性に基づいて決定される。一部の実施形態において、発泡性は口腔における頬、舌下、または歯肉粘膜を通じた有効成分の透過を促進する主成分として用いられる。したがって、一部の実施形態において、発泡性賦形成分の量は剤形の総重量に基づき約5〜85%、約15〜60%、約30〜45%、および約35〜40%である。一部の実施形態において、酸および塩基の相対的比率は、その酸が一塩基、二塩基、または三塩基の相対分子量のいずれであるかなど、具体的成分に依存する。
【0041】
一部の実施形態において、当該pH調整剤は当該発泡性カップルの成分一つに加え、またそれ以外の成分である。電離状態の変化に影響されやすいポリペプチドは、口腔内における溶解および組織を越えての伝達に関する適切な条件を達成することによって投与可能である。一部の実施形態において、特定の薬剤に関する理想的な条件が塩基であれば、発泡性賦形成分またはpH調整剤のいずれかの一部として十分に過剰な量の適切な強酸を加えるのは望ましくない。一部の実施形態においては、例えば無水炭酸ナトリウムなどのpH調整剤が選択され、発泡性カップルとは別に機能する。
【0042】
有効成分の透過性をさらに高めるために様々なpH調整剤を使用することができる。一部の実施形態において、適切なpH調整剤の選択は投与薬剤および特に同薬剤がイオン化または脱イオン化されるpH、またそのイオン化形態または脱イオン化形態が経粘膜輸送を促進するか否かに依存する。
【0043】
一部の実施形態において、前記pH調整剤は局所pHを約3〜10または約4〜9に調整し、経粘膜輸送を促進することのできる任意の物質である。前記pHとは、受容者の口内に適用された時点での口腔粘膜と剤形(またはそれが分解/溶解する際の一部分)との表面接触域の微環境における「局所pH」である。
【0044】
一部の実施形態において、前記局所pHは最初にin vitroにてpH測定法を用いて当該錠剤によって示される動的pH変化を特徴付けることによって測定可能である。同方法は適切な大きさの試験管または他の同様な容器におけるリン酸緩衝生理食塩水0.5〜10mLの使用を含む。塩化ナトリウム9.0g、リン酸ナトリウム1塩基性1水和物0.6g、およびリン酸2ナトリウム(無水)0.78gを脱イオン水約1000mLに溶き、室温で1N 水酸化ナトリウムを撹拌しながら加えてpHを7.0±0.05に調整することによって緩衝生理食塩水1Lを調製することができる。調整には約0.5mLが必要となる。使用する溶剤の量は錠剤の大きさおよび用量に依存する。例えば、200mgの錠剤に対しては1mLの量が使用される。溶剤との接触後直ちに、マイクロコンビネーションpH電極を用いて溶剤のpHが時間の関数としてモニターされる。
【0045】
一部の実施形態において、本発明に基づくpH調整剤として使用可能な材料としては、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、リン酸水素、およびリン酸二水素が挙げられる。適切な炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムが挙げられるが、それらに限定されるものではない。適切なリン酸塩としては、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウムが挙げられるが、それらに限定されるものではない。一部の実施形態において、当該pH調整剤は炭酸ナトリウムである。一部の実施形態において当該pH調整剤は、適切な量で提供された場合、pH調整剤が含まれないことを除いては同一の製剤の場合に比べ、局所pHを少なくとも約0.5pH単位、1.0pH単位、または約2.0pH単位変化させる。
【0046】
一部の実施形態においてpH調整剤の量は、使用するpH調整剤の種類、発泡性カップルからの余分な酸または塩基の量、その他の成分の性質、および有効成分によって異なる。一部の実施形態において、pH調整剤の量は総薬剤重量の約0.5〜25%、約2〜20%、約5〜15%、約7〜12%と様々である。
【0047】
当該組成物が錠剤の場合、一部の実施形態において同組成物は一つ若しくはそれ以上の充填剤、崩壊剤、潤滑剤をさらに含有する。本明細書に記載の結果をもたらす限りにおいて、いかなる種類または量の充填剤を使用してもよい。一部の実施形態において、当該充填剤は糖および糖アルコールであり、これらには非直接圧縮および直接圧縮充填剤が含まれる。一部の実施形態において、非直接圧縮充填剤には製剤された場合に流動および/または圧縮特性が備わっており、増強または調整なしでは高速打錠工程における使用が困難となる。例えば、錠剤が十分に流れず、したがって二酸化ケイ素などの流動促進剤を加える必要が生じる。
【0048】
一部の実施形態において、直接圧縮充填剤は同様の許容を必要とせず、一般に圧縮および流動特性を有し、直接使用が可能である。一部の実施形態において、非直接圧縮充填剤には直接圧縮充填剤の特性が備わっている。一部の実施形態において、非直接圧縮充填剤の粒子サイズは直接圧縮充填剤に比べ小さい傾向がある。一部の実施形態において、スプレー乾燥されたマンニトールなどの充填剤の粒子サイズは比較的小さく、それでいてその後の工程次第ではしばしば直接圧縮が可能である。一部の実施形態において、当該充填剤は大型の非直接圧縮充填剤である。
【0049】
本発明とともに使用される適切な充填剤としてはマンニトール、ラクトース、ソルビトール、デキストロース、スクロース、キシリトール、グルコースなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。一部の実施形態において、当該充填剤はスプレー乾燥されたマンニトールである。使用する充填剤の量は当該製剤重量の約10〜80%、約25〜80%、または約35〜60%である。
【0050】
当該組成物において崩壊剤を使用することもできる。一部の実施形態において、崩壊剤は用量削減および/またはCmax対用量比の上昇を可能にする。一部の実施形態において、崩壊剤には崩壊特性をも有する結合剤が含まれる。適切な崩壊剤としては、マイクロクリスタリン、セルロース、架橋ポリビニルピロリドン(PVP−XL)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、架橋ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられるが、それらに限定されない。一部の実施形態において、崩壊剤の選択は、所与の方式の範囲で、それを使用することにより記載の効果が得られるか否かに依存する。
【0051】
一部の実施形態において、当該崩壊剤はデンプングリコール酸である。一部の実施形態において、当該崩壊剤はデンプングリコール酸ナトリウムである。デンプングリコール酸ナトリウムの例としてEXPLOTAB(商標)(標準グレード、フランスLestremのRoquetteから入手可能)が挙げられる。
【0052】
一部の実施形態において、崩壊剤の量は剤形の大きさ、他の成分の性質および量、などの要素によって異なる。一部の実施形態において、崩壊剤の量は完成剤形の重量に基づき、約0.25〜20%w/w、約0.5〜15%w/w、約0.5〜10%w/w、または約1〜8%w/wである。
【0053】
一部の実施形態において、本発明にはさらに打錠または排出潤滑剤が含まれる。適切な潤滑剤としてはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、およびこれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。一部の実施形態において、当該潤滑剤はステアリン酸マグネシウムである。一部の実施形態において、潤滑剤の量は製剤の1重量%未満である。一部の実施形態において、潤滑剤の量は約0.5%未満である。一部の実施形態において、潤滑剤の量は約1.0%以上、1.5%以上、および約1.5〜3%であり得る。一部の実施形態において、ステアリン酸マグネシウムが当該潤滑剤であり、約2重量%で使用される。
【0054】
一部の実施形態において、本発明の組成物には、本発明から得られる有利な特性を顕著に損なうことがない限りにおいて、他の従来の賦形剤が一般に知られた量で含有される。そのような追加的賦形剤としては結合剤、甘味料、着色剤、香味剤、流動促進剤、潤滑剤、崩壊剤、保存料、などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0055】
一部の実施形態において、本発明の組成物は例えば錠剤などの口腔粘膜固形剤として調製可能である。本発明に基づいて調製される発泡性錠剤は相対的に堅固または柔らかであり得る。例えば、本発明の組成物を含有する錠剤は米国特許第5,178,878号に記載された方法にしたがって調製可能であり、その文章は本明細書に参照として組み込まれている。この方法に基づいて調製された場合、同剤形の硬さは約15ニュートン未満であり得る。当該有効成分は保護剤でコーティングするか、または無コーティングであってもよい。柔らかでもろい錠剤が調製された場合、それらは米国特許第6,155,423号に記載されたようなブリスター包装に梱包することができる。一部の実施形態において、硬さが約15ニュートンの堅固な剤形は、米国特許第6,024,981号に記載された工程に基づいて調製可能である。さらに、粒子サイズの再現性および/または一貫性などの粉末の度合いが結果を左右する。
【0056】
剤形の全体的寸法およびサイズ、および有効成分の量は様々であっても良い。錠剤など剤形の全体的形状または構造は様々である。剤形構造は、頬、歯肉、または舌下など、意図される投与部位によって異なる。一部の実施形態において、本発明によってもたらされるその場における崩壊または溶解時間(滞留時間)は、治療的有効量の医薬活性ポリペプチドを粘膜を通じて送達するのに十分な期間である。前記時間は約30分未満、またはさらに短く約20分未満であり得る。一部の実施形態において、受容者反応および組成成分によっては滞留時間は約5〜10分間である。
【0057】
錠剤は当業者には簡単に入手可能な従来の打錠設備および技術を用いて調製可能である。一部の実施形態において、本発明に基づいて調製された錠剤は乾式混合され直接圧縮される。一部の実施形態において、錠剤は造粒から調製され得る。乾式造粒法を使用することができる。例えば、粒状化されたマンニトールを充填剤として用いることができる。製造工程の一環として、一部の実施形態においては、最終混合および圧縮の前に当該組成物の一部を顆粒化または混合するのが望ましい。選択し材料は所望の用量および含量均一性を得るために前もって選択される。したがって、一部の実施形態において、適量の発泡性カップル、pH調整剤、および崩壊剤が選択され、規定量にて提供され、所望の剤形に製剤される。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤を使用する場合、一部の実施形態において、それらは混合時間の終わりごろ、例えば混合の最終停止の数分前に加える。
【0058】
一部の実施形態において、本発明は、受容者に生物活性ポリペプチドを投与する方法を含み、この方法は、
a)医薬活性ポリペプチド、発泡性組成物、および胆汁酸塩を含む口腔粘膜組成物を提供する工程と、
b)前記口腔粘膜組成物を受容者口腔内粘膜組織上に配置する工程と、
c)前記組成物がその場で溶解するのに十分な時間を与え、治療的有効量の当該ポリペプチドが当該粘膜を通過して送達されるようにする工程と
を含む。
【0059】
用語「提供する」とは、当該組成物またはその剤形の包装または容器からの取り出し、および/または当該剤形を誰かに施させることが含まれるよう意図されている。上記のように、本発明に基づいて調製された剤形はブリスター包装に入れて受容者に提供することができる。本明細書において使用される用語「受容者」にはヒトを含む哺乳類が含まれる。当該受容者、または別の個人、は当該組成物を頬と上部または下部歯茎の間、または舌下に配置することができる。一部の実施形態において、当該組成物は当該組成物をしゃぶったり、かんだり、または飲み込んだりするべきではないことを示す説明書とともに提供される。
【0060】
治療方法
本開示に基づく口腔粘膜組成物については、糖尿病コントロール、血糖コントロール、肥満治療(例えば満腹誘発によるなど)、癌治療、感染症治療、および精神障害治療など数多くの治療法への利用が考えられる。したがって、一部の態様において、本発明は受容者において糖尿病を治療する方法が提供される。前記方法は受容者に口腔粘膜組成物を投与する工程を含む。一部の実施形態において、当該組成物は治療的有効量のインスリン、発泡剤成分、および胆汁酸塩を含む。
【0061】
一部の態様において、本発明は受容者において癌を治療する方法を提供する。前記方法は受容者に口腔粘膜組成物を投与する工程を含む。一部の実施形態において、当該組成物は治療的有効量のIFN−γ、発泡剤成分、および胆汁酸塩を含む。
【0062】
一部の態様において、本発明は受容者におけるウイルスまたは細菌感染症の治療方法を提供する。前記方法は受容者に口腔粘膜組成物を投与する工程を含む。一部の実施形態において、当該組成物は治療的有効量のIFN−γ、発泡剤成分、および胆汁酸塩を含む。
【0063】
一部の態様において、本発明は受容者における糖尿病、肥満、精神疾患または障害の治療方法、または血糖値のコントロール方法を提供する。当該方法は、治療的有効量のアミリン、発泡性賦形成分、および胆汁酸塩を含む口腔粘膜組成物を受容者に投与する工程を含む。一部の実施形態において、前記精神疾患または障害は気分障害、不安症、または統合失調症である。
【0064】
本発明は以下の実施例を用いてさらに説明される。これらのいずれもが必ずしも本発明を制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0065】
in vitro透過性アッセイ
in vitro透過性試験を以下のように実施した。一端を0.6cm四方のアクリルおよびポリカーボネート膜(セルなし)でシールしたアクリルインサートから始めて、培養ヒト口腔癌細胞(SqCC/Y1細胞)を培地内の膜表面で24時間にわたって培養した。前記培地をインサート先端部から除去し(air−lifting工程)、細胞がインサート下の培地から栄養供給を受け続けられるようにした。これらの条件下に細胞を7〜10日間培養してポリカーボネート膜上に多層に集合させ、それによって細胞密度を増やし、頬粘膜組織に似た多層の組織様障壁を調製した。
【0066】
アッセイは前記インサートを炭酸ナトリウムを加えないクレブスリンゲル緩衝液(KRB)でリンスし、経上皮電気抵抗(TEER)の測定により均一性を調べることによって実施した。必要な平均電気抵抗が350オーム若しくはそれ以上の場合、透過性試験用にインサートを選択し、透過障壁の厚さおよび分布が一貫するようにした。
【0067】
医薬有効成分(例えばポリペプチド)の特定剤形の試験に用いられるように、インサートを平均TEER値が極めて類似した群(例えばn=3)に分けた。
【0068】
TEER values (of the group) to be used in testing particular formulations of active pharmaceutical ingredients (i.e., polypeptide).例えば任意の胆汁酸塩に関し、サンプル群は以下のとおりである:
1)ポリペプチド単独;
2)ポリペプチドと胆汁酸塩の混合;
3)ポリペプチドと発泡性賦形成分(賦形剤1)粉末の混合;
4)ポリペプチドと胆汁酸塩(各種濃度)および発泡性賦形成分(賦形剤1)粉末との混合;
前記インサートを規定量のKRBを加えた細胞培養ウェル中に置き、100rpmに設定されたシェーカーテーブル上で37℃で培養した。このように、既述の様々な賦形剤を加えた場合と加えない場合の両様で、細胞を所与の有効成分(ポリペプチド)にさらした。
【0069】
サンプルを10分毎に1時間にわたって基底外側液から除去し、除去した液を同量のKRBで置き換えた。1時間終了時にインサート内の残留液を回収、保存し、同インサートをKRBでリンスし、再びTEER値を測定した。開始時TEERと最終TEERの相違を記録した。
【0070】
次にMTS毒性アッセイを用いて同インサートに関し処置による細胞毒性を評価し、さらにサンプルにおける処置による効果を記録した。MTS毒性アッセイは肝細胞がMTSテトラゾリウム化合物をホルマザン(490nmで紫外線を吸収)に転換させる能力を測定するものである。吸収量は生存細胞数に直接比例する。
【0071】
様々な方法を用いて基底外側ウェルのサンプルを当該有効成分(ポリペプチド)に関し分析した。同ウェル中の有効成分量を計算しサンプリングロスに関して修正を行った。このデータから細胞障壁を通過する有効成分の量を計算し、見かけ上の透過係数(Papp)を計算した。
【0072】
Papp=S/(A*C)
ここで
S=線形領域における透過曲線の傾斜(mg/秒);
A=細胞に覆われたインサート領域(cm2);
C=ドナー医薬有効成分濃度(mg/mL)
【0073】
促進率(ER)は吸収促進剤を使用した場合のPappと吸収促進剤を使用しない場合のPappの比率に等しい。したがって、この方法を下記提案の透過促進組成物のそれぞれに対し使用した。
【0074】
(実施例1A)
賦形剤の調製
賦形剤1(EF1)
最初の賦形成分は乾燥粉末形態の発泡性組成物の調製を含む。一部の実施形態において、使用する発泡性組成物は以下の表に示した賦形剤粉末である。
【0075】
【表1】
【0076】
賦形剤2(EF2)
賦形剤1に基づいて代わりの発泡性組成物を調製した。但し、発泡性カップルおよびpH調整剤のみを使用した。この製剤は賦形剤1 200mgと同じ容量になるように調製した。
【0077】
【表2】
【0078】
(実施例1B)
有効成分および胆汁酸塩成分
2番目の有効成分は液状の生物活性ポリペプチドと胆汁酸塩タウロコール酸ナトリウムとの混合を含む。例えば、乾燥型タウロコール酸ナトリウムおよびポリペプチド成分は緩衝生理食塩水中にもどすことができる。緩衝生理食塩水は例えばクレブスリンゲル緩衝液(D−グルコース1.8g/L)、塩化マグネシウム(無水)0.0468g/L、塩化カリウム0.34g/L、塩化ナトリウム9.0g/L、リン酸二ナトリウム(無水)0.1g/L、リン酸ナトリウム(無水)0.18g/Lから調製可能であり、pHを7.4に調整し、重炭酸ナトリウムは使用しない。
【0079】
従って、一部の実施形態において、本発明の組成物は上記成分(粉末状の発泡性賦形剤、胆汁酸塩含有の活性成分、および液状の生物活性ポリペプチド)を順に沈殿させて調製される。2つの部分からなる組成物を順に沈殿させることができる。すなわち、まず粉末成分、次に液体成分を粘膜組織上に配置する。
【0080】
(実施例1C)
ポリペプチド含有の経粘膜固形剤の調製
実施例1Aおよび1Bに記載した組成物の代わりに、一部の実施形態において、本発明の組成物を圧縮錠などの口腔粘膜固形剤として調製することができる。錠剤は発泡性組成物または発泡性賦形剤、胆汁酸塩、および生物活性ポリペプチド粉末を混合し、次にその粉末混合物を錠剤プレスで圧縮して固形錠とすることによって調製可能である。一部の実施形態において、錠剤型の固形剤は当業者に容易に利用できる従来の方法および設備によって調製可能である。
【0081】
蛍光標識ポリペプチドを用いたin vitro試験
in vitro透過性アッセイを行う場合、使用するポリペプチドはしばしば蛍光部分に結合される。特に、使用する蛍光部分はFAM(5(6)カルボキシフルオレセイン)およびFITC(フルオレセインイソチオシアネート)から選択される。フルオレセイン結合ポリペプチドは、分子量に関わらず同部分を含む任意のポリペプチドに対する単一の高感度検定法の使用を可能にする。これにより、それぞれ特定のポリペプチドに対する特異的アッセイを開発することなく種々のポリペプチドを単一の検定法を用いて評価することが可能となる。
【0082】
蛍光標識ポリペプチドの透過性を、強化を行った場合と行わない場合の両様でin vitro透過性アッセイにより測定した。細胞/組織を通して基底外側液に透過するポリペプチドの量を測定し、各ポリペプチドサンプルに対する見かけ上の透過係数(Papp)を計算した。胆汁酸塩(タウロコール酸)と発泡性粉末との混合のPappを、ポリペプチド単独、ポリペプチドと発泡性組成物の混合(胆汁酸塩はなし)、およびポリペプチドと胆汁酸塩(タウロコール酸ナトリウム)(発泡性組成物はなし)で得られたPapp値と比較し、混合した場合に2つのエンハンサー間に相乗効果が見られるか否かを判断した。試験にタウロコール酸のみを用いる場合、細胞への毒性作用から保護するために同タウロコール酸粉末を細胞上に直接適用することはしなかった。
【実施例2】
【0083】
アミリンのin vitro透過性の比較
ポリペプチドアミリンに関するin vitro透過性を測定した。アミリンは血糖コントロールおよび糖尿病治療に関連する。FAM標識アミリンは分子量が4259.86ダルトンで37個のアミノ酸からなるペプチドである。上記の細胞培養モデルを用い、以下の製剤に関しアミリン−FAMの透過性試験を行った。
【0084】
【表3】
【0085】
結果を図1に示す。グラフ上のデータから分かるように、in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのアミリンと所与の濃度の胆汁酸塩単独とでは粘膜組織を通じた同ポリペプチドの吸収を明確に促進することはないように見られる。同様に、発泡性賦形成分(上記実施例1Aに記載した賦形剤1)単独とポリペプチドアミリン−FAMとの混合も、粘膜組織を通じての吸収を明確に促進することはないように見られる。
【0086】
しかし、発泡性と1%胆汁酸塩との混合は、粘膜組織を通じた同ポリペプチドの輸送/透過性を高めるようである。併用した場合、タウロコール酸、発泡性賦形成分と同ポリペプチドとの混合は、胆汁酸塩および発泡性成分の各単独による透過作用の合計よりも大きな透過をもたらした。
【実施例3】
【0087】
s−CTのin vitro透過性の比較
カルシウム代謝および骨粗鬆症治療に関連したポリペプチドであるサーモン由来カルシトニン(s−CT)のin vitro透過性を測定した。s−CTが満腹ホルモンであるとの報告もある。FAM標識されたs−CTは分子量が3441.1ダルトンで25個のアミノ酸からなるペプチドフラグメント(8−32)である。上記の細胞培養モデルを用い、以下の製剤に関するs−CT−FAMの透過性試験を行った。
【0088】
【表4】
【0089】
結果を図2に示す。グラフ上のデータから見られるように、in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのs−CT−FAMと所与の濃度の胆汁酸塩単独との混合では、同ポリペプチドの粘膜組織を通じた吸収を明確に促進することはないように見られた。
【0090】
同様に、発泡性賦形成分(上記実施例1Aに記載した賦形剤1)単独とポリペプチドs−CT−FAMとの混合も粘膜組織を通じての吸収を明確に促進することはないように見られた。
【0091】
しかし、発泡性成分と1%胆汁酸塩との混合は粘膜組織を通じた同ポリペプチドの輸送/透過性を高めるようである。併用した場合、タウロコール酸、発泡性賦形成分と同ポリペプチドとの混合は、胆汁酸塩および発泡性成分の各単独による透過作用の合計よりも大きな透過をもたらすように見られた。
【実施例4】
【0092】
GLP−1−FAMのin vitro透過性の比較
GLP−1とも知られているグルカゴン様ペプチド1のin vitro透過性を評価した。GLP−1は2型糖尿病治療の他、満腹コントロールおよび体重減少とも関連する。GLP−1−FAMは分子量が4071.71ダルトンで30個のアミノ酸からなるペプチドである。上記の細胞培養モデルを用い、以下の製剤に関しGLP−1−FAMの透過性試験を行った。
【0093】
【表5】
【0094】
結果を図3に示す。グラフ上のデータから分かるように、in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのGLP−1−FAMと所与の濃度の胆汁酸塩単独との混合では、同ポリペプチドの粘膜組織を通じた吸収を明確に促進することはないように見られた。
【0095】
同様に、発泡性賦形成分(上記実施例1Aに記載した賦形剤1)単独とGLP−1−FAMとの混合も粘膜組織を通じての吸収を明確に促進することはないように見られた。
【0096】
しかし、発泡性成分と1%胆汁酸塩との混合は粘膜組織を通じた同ポリペプチドの輸送/透過性を確かに促進するようである。併用した場合、タウロコール酸、発泡性賦形成分と同ポリペプチドとの混合は、胆汁酸塩および発泡性成分の各単独による透過作用の合計よりも大きな透過をもたらすよう見られた。
【実施例5】
【0097】
インスリン−FITCのin vitro透過性の比較
インスリンのin vitro透過性を評価した。インスリンは分子量が5808ダルトンで51個のアミノ酸からなるポリペプチドであり、糖尿病治療に関連する。本試験に用いたインスリンは蛍光部分FITC(フルオレセインイソチオシアネート)に結合されていた。上記の細胞培養モデルを用い、以下の製剤に関しインスリン−FITC透過性の試験を行った。
【0098】
【表6】
【0099】
結果を図4に示す。グラフのデータから分かるように、in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのインスリン−FITCと所与の濃度の胆汁酸塩単独との混合では、粘膜組織を通じた同ポリペプチドの吸収を明確に促進することはないようである。同様に、発泡性賦形成分(上記実施例1Aに記載した賦形剤1)単独とインスリンポリペプチドとの混合も粘膜組織を通じての吸収を明確に促進することはないように見られた。
【0100】
しかし、発泡性と1%胆汁酸塩との混合は粘膜組織を通じた同ポリペプチドの輸送/透過性を高めるようである。併用した場合、タウロコール酸、発泡性賦形成分と同ポリペプチドとの混合は、胆汁酸塩および発泡性成分の各単独による透過作用の合計よりも大きな透過をもたらすように見られた。
【実施例6】
【0101】
グルカゴン−FAMのin vitro透過性の比較
急性低血糖症の治療に関連したグルカゴンのin vitro透過性を評価した。グルカゴン−FAMは分子量が1709.63ダルトンで11個のアミノ酸からなるペプチドである。上記の細胞培養モデルを用い、以下の製剤に関する透過性試験を行った。
【0102】
【表7】
【0103】
結果を図5に示す。グラフのデータから分かるように、in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのグルカゴン−FAMと所与の濃度の胆汁酸塩単独の混合では、粘膜組織を通じた同ポリペプチドの吸収を明確に促進することはないようである。同様に、発泡性賦形成分(上記実施例1Aに記載した賦形剤1)単独とポリペプチドグルカゴン−FAMとの混合も粘膜組織を通じての吸収を明確に促進することはないように見られた。
【0104】
しかし、発泡性成分と1%胆汁酸塩との混合は、粘膜組織を通じた同ポリペプチドの輸送/透過性を確かに促進するようである。併用した場合、タウロコール酸、発泡性賦形成分と同ポリペプチドとの混合は、胆汁酸塩および発泡性成分の各単独による透過作用の合計よりも大きな透過をもたらした。
【実施例7】
【0105】
PTHのin vitro透過性の比較
副甲状腺ホルモン(PTH)のin vitro透過性を評価した。PTHは骨粗鬆症治療に関連した38個のアミノ酸からなるペプチドである。PTH−FAMの分子量は5174.2ダルトンである。上記の細胞培養モデルを用い、以下の製剤に関しPTH−FAMの透過性試験を行った。
【0106】
【表8】
【0107】
結果を図6に示す。グラフ上のデータから分かるように、in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのPTH−FAMと所与の濃度の胆汁酸塩単独との混合では粘膜組織を通じた同ポリペプチドの吸収を明確に促進することはないようである。同様に、発泡性賦形成分(上記実施例1Aに記載した賦形剤1)単独とポリペプチドPTH−FAMとの混合も粘膜組織を通じての吸収を明確に促進することはないようである。
【0108】
しかし、発泡性成分と1%胆汁酸塩との混合は粘膜組織を通じた同ポリペプチドの輸送/透過性を確かに促進するようである。併用した場合、タウロコール酸、発泡性賦形成分と同ポリペプチドとの混合は、胆汁酸塩および発泡性成分の各単独による透過作用の合計よりも大きな透過作用をもたらすようであった。
【実施例8】
【0109】
オキシトシン−FAMのin vitro透過性の比較
子宮収縮に関連するホルモンであるオキシトシンのin vitro透過性を評価した。オキシトシン−FAMは分子量が約1365.18ダルトンで9個のアミノ酸からなるペプチドである。上記の細胞培養モデルを用い、以下の製剤に関しオキシトシン−FAMの透過性試験を行った。
【0110】
【表9】
【0111】
結果を図7に示す。グラフ上のデータから分かるように、in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのオキシトシン−FAMと所与の濃度の胆汁酸塩単独の混合では粘膜組織を通じた同ポリペプチドの吸収を明確に促進することはないようである。同様に、発泡性賦形成分(上記実施例1Aに記載した賦形剤1)単独とポリペプチドオキシトシン−FAMとの混合も粘膜組織を通じての吸収を明確に促進することはないに見られた。
【0112】
しかし、発泡性成分と1%胆汁酸塩との混合は粘膜組織を通じた同ポリペプチドの輸送/透過性を確かに促進するようである。併用した場合、タウロコール酸、発泡性賦形成分と同ポリペプチドとの混合は、胆汁酸塩および発泡性成分の各単独による透過作用の合計よりも大きな透過をもたらすように見られた。
【実施例9】
【0113】
デスモプレシン−FAMのin vitro透過性の比較
デスモプレシンとしても知られている8D−Argバソプレッシン(AVP)のin vitro透過性を評価した。デスモプレシンは血管収縮および利尿療法に関連している。デスモプレシン−FAMは分子量が1442.25ダルトンで9個のアミノ酸からなるペプチドである。上記の細胞培養モデルを用い、以下の製剤に関しデスモプレシン−FAMの透過性試験を行った。
【0114】
【表10】
【0115】
結果を図8に示す。グラフ上のデータから分かるように、in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのデスモプレシン−FAMまたはAVP−FAMと所与の濃度の胆汁酸塩単独との混合では粘膜組織を通じた同ポリペプチドの吸収を明確に促進することはないようである。同様に、発泡性賦形成分(上記実施例1Aに記載した賦形剤1)単独とポリペプチドデスモプレシン−FAMとの混合も粘膜組織を通じての吸収を明確に促進することはないようである。
【0116】
しかし、発泡性と1%胆汁酸塩との混合は粘膜組織を通じた同ポリペプチドの輸送/透過性を明確に促進するようである。併用した場合、タウロコール酸、発泡性賦形成分と同ポリペプチドとの混合は、胆汁酸塩と発泡性成分の各単独による透過作用の合計よりも大きな透過をもたらすようである。
【実施例10】
【0117】
PYY−FAMのin vitro透過性の比較
PYYまたはペプチドYYのin vitro透過性を評価した。PYYは肥満治療に関連した34個のアミノ酸からなるペプチドである。PYY−FAMの分子量は4407.71ダルトンである。上記の細胞培養モデルを用い、以下の製剤に関しPYY−FAMの透過性試験を行った。
【0118】
【表11】
【0119】
結果を図9に示す。グラフ上のデータから分かるように、in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのPYY−FAMと所与の濃度の胆汁酸塩単独との混合では粘膜組織を通じた同ポリペプチドの吸収を明確に促進することはないようである。同様に、発泡性賦形成分(上記実施例1Aに記載した賦形剤1)単独とポリペプチドPYY−FAMとの混合も粘膜組織を通じての吸収を明確に促進することはないようである。
【0120】
しかし、発泡性と1%胆汁酸塩との混合は粘膜組織を通じた同ポリペプチドの輸送/透過性を確かに促進するようである。併用した場合、タウロコール酸、発泡性賦形成分と同ポリペプチドとの混合は、胆汁酸塩および発泡性成分の各単独による透過作用の合計よりも大きな透過をもたらすようである。
【0121】
本発明の相乗的透過促進作用を確認する為、蛍光標識ポリペプチドを使用しない他の方法も使用した。
【実施例11】
【0122】
ELISAによるs−CT分析
サーモンカルシトニン(またはs−CT)を超高感度ELISAキットDSL−10−3600(テキサス州WebsterのDiagnostic Systems Laboratories, Inc.から入手)を用いて測定した。この方法においてs−CTはプラスチック結合抗体に捕らえられ、酵素特異的基質とともにインキュベートすることにより光学濃度を提供する酵素結合特異抗体を用いて発現される。このように、培養口腔細胞を通過するs−CTの量を経時的に測定し、それを用いて見かけ上の透過係数(Papp)を計算した。
【0123】
結果を図10に示す。図のデータから分かるように、in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのs−CTと胆汁酸塩(タウロコール酸ナトリウム)単独との混合、または同ポリペプチドと発泡性組成物(実施例1Aで記載されEF2と称した発泡性賦形剤2)単独との混合、は粘膜組織を通したポリペプチドs−CTの透過性を上昇させることはないようである。
【0124】
しかし、ポリペプチドs−CT、発泡性製剤、および1または2%胆汁酸塩の混合は、粘膜組織を通じた同ポリペプチドの透過/輸送を明確に促進するようである。併用した場合、タウロコール酸、発泡性賦形剤と同ポリペプチドとの混合は、同ポリペプチドと胆汁酸塩単独または発泡性製剤の各単独との混合による合計よりも大きな透過性をもたらすようである。
【実施例12】
【0125】
HPLC−MS−MSによるデスモプレシンの分析
デスモプレシンが培養口腔細胞を透過する量を長時間にわたって測定するため、液体クロマトグラフィ(LC)−質量分析(MS)法を開発した。次にこのデータを用いて見かけ上の透過係数(Papp)を計算した。集めた試験情報を用いて図11を調製した。
【0126】
in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのデスモプレシン(8−Argバソプレッシン、図中にDPとして示す)と所与の濃度の胆汁酸塩(タウロコール酸ナトリウム)または発泡性製剤(上記の実施例1Aに記載の賦形剤2)単独との混合は粘膜組織を通じてのポリペプチドの透過を明確に促進することはないようである。しかし、ポリペプチド(DP)、発泡性製剤、および1または2%胆汁酸塩の混合は、粘膜組織を通じた同ポリペプチドの透過/輸送を明確に促進するようである。したがって、ペプチド定量に関するLC/MS/MS法は、本明細書に記載された蛍光標識ポリペプチド法を用いて見られる結果を支持し裏付ける。
【実施例13】
【0127】
ELISAによるIFNα−2bの分析
本発明に基づく生物活性ポリペプチドとして組み換えヒトインターフェロンα−b(IFNα)(分子量が19,271ダルトンで166個のアミノ酸からなり、比活性度が260ミリオンIU/mgタンパク質)(INTRON(商標)A、ニュージャージー州KenilworthのSchering Corp.から入手)の試験を行った。IFNαはウイルス感染に関連した免疫機能に関わるサイトカインである。ELISA法(ELISAキット41110−2、ニュージャージー州PiscatawayのPBL Interferon Source,Inc.から入手)を用いて活性ポリペプチドを測定した。このアッセイでは、培養口腔細胞を透過するIFNαの量を長時間測定し、それを用いて見かけ上の透過係数(Papp)を計算した。データを図12に示す。
【0128】
図から分かるように、in vitroモデルにおいて、生物活性ポリペプチドとしてのIFNαと胆汁酸塩単独および発泡性組成物(実施例1Aに記載されEF1と称された賦形剤1)単独との混合は粘膜組織を通したIFNαの透過を明確に促進することはないようである。しかし、IFNα、1%または2%胆汁酸塩、および発泡性組成物の混合は粘膜組織を通じた同ポリペプチドの透過を明確に促進するようである。タウロコール酸、発泡性賦形成分とIFNαとの混合は、胆汁酸塩および発泡性成分の各単独による透過作用の合計よりも大きな透過をもたらすようである。ELISA法によるこれらの結果は上記の蛍光標識ポリペプチド透過アッセイで見られる結果を裏付けるものである。
【0129】
ポリペプチドの口腔粘膜透過促進に関するin vitro試験
麻酔イヌモデルに関するプロトコル
麻酔イヌモデルを用い、本発明に基づいて調製されたポリペプチド組成物の経粘膜透過を評価した。大型雑種成犬(15〜35kg)を対象に医学的なスクリーニングを行った。試験のため、イヌに麻酔を施し右側または左側臥位とし、橈側皮静脈からカニューレを挿入した。テフロン(登録商標)リングを口腔粘膜と水平位置に取り付け、容器とした。促進剤を加えた場合と加えない場合の両様により、同リングに囲まれた口腔粘膜上に評価対象となる生物活性ポリペプチドを適用した。試験により、活性ポリペプチドは液体、乾燥粉末、固形剤(錠剤)のいずれかの形態で加えた。10分毎2時間にわたって採血を行い、プロトコルによっては最大4時間まで試料を採取した。60分後に当該活性ポリペプチド含有組成物を容器から取除き、容器を2度リンスした。
【0130】
2時間後、イヌを麻酔から覚醒させ、リングを口腔粘膜から取り外した。麻酔から回復したイヌから引き続き採血を行った。血液試料を凝固するのにまかせ、遠心分離により血清を分離し、同血清を活性ポリペプチド含有量の分析までプロトコルに応じて−20〜−80℃で凍結した。
【実施例14】
【0131】
A.デスモプレシンの口腔粘膜透過
デスモプレシン(デアミノ−Cys1−D−Argバソプレッシン、またはD−Argバソプレッシン)の口腔粘膜を通じた血流中への透過に関し、液体、粉末、圧縮錠など各種投与剤形により試験を行った。デスモプレシンに、発泡性組成物EF1(実施例1A)単独、胆汁酸塩(タウロコール酸ナトリウム)単独、また胆汁酸塩および発泡性組成物の両方を混合して試験を行った。さらにデスモプレシンに、発泡性賦形成分(EF1および実施例1A)に加え基本的発泡性製剤EF2(実施例1A)を混合して試験を行った。
【0132】
デスモプレシン錠の調製
試験用のデスモプレシン含有錠は、実施例1Aに記載の発泡性製剤(EF1)200mgをタウロコール酸ナトリウム20mgと混合することにより調製した。この混合物を乾燥凍結したデスモプレシンが入った容器に直接加えた。粉末が入った容器を30分間混合し、次に穴径5/16"のPiccola 8ステーション打錠機各容器の粉末を各金型に入れ、約3kNの圧縮力で手動で圧縮した。活性ポリペプチドが入った錠剤を調製する前に、最適の圧縮条件を知るために、発泡性組成物と胆汁酸塩のみが入った試験錠剤をいくつか調製しておいた。出来上がった錠剤を試験に使用するまで−20℃で保存した。
【0133】
そうやって調製された錠剤を上記のプロトコルに従いイヌで試験を行った。錠剤を試験に使用する場合、錠剤はイヌの口腔粘膜上に直接置き、1分間にわたり水分を補給した。一連の採血を行い、血清を抽出した。血清試料にLC/MS/MS分析を行ってデスモプレシンを測定した。
【0134】
次表に、査定の製剤情報およびin vivo試験で得られたバイオアベイラビリティの結果を示す。
【0135】
【表12a】
【0136】
上記のデータから分かるように、in vivoモデルにおいて、生物活性ポリペプチドと所与の濃度の胆汁酸塩または発泡性製剤との混合は粘膜組織を通しての当該ポリペプチドの透過を明確に促進することはないようである。しかし、胆汁酸塩と発泡性製剤との混合は粘膜組織を通じた同ポリペプチドの輸送/透過を確かに促進するようである。タウロコール酸ナトリウムおよび発泡性組成物と当該ポリペプチドとの混合が透過性を高めるようである一方で、胆汁酸塩または発泡性組成物を各単独でデスモプレッシンと混合した場合は透過性は高められなかった。
【0137】
さらに、理論に拘束される意図はないが、タウロコール酸ナトリウムと混合した場合には発泡性製剤もデスモプレシンの透過促進に有効なようであり、したがってタウロコール酸と混合した場合に相乗効果を発揮するのは、広範囲の発泡性組成物(賦形剤1)のうち発泡性製剤部分(賦形剤2)(いずれも実施例1Aに記載)である可能性が示唆される。
【0138】
B.サーモンカルシトニンの口腔粘膜透過
サーモンカルシトニン(s−Ct)の口腔粘膜を通じた麻酔イヌ血流中への透過に関し、s−Ctおよび胆汁酸塩(0、2.5、5、10%)含有の発泡性圧縮錠を用いて試験を行った。前記錠剤は、デスモプレシンに関し記載したものと同様の方法および設備を用いて調製した。次表に、評価を行った錠剤の製剤情報を示す。
【0139】
【表12b】
【0140】
イヌにおけるデスモプレシンについて記載した手順を用いて、麻酔イヌを対象に錠剤の試験を行った。下表に示すように、発泡性製剤にNaTCを加えると(AUCの顕著な上昇からも分かるように)麻酔イヌにおけるs−Ctの経粘膜透過性が高まる(台形公式法を用いて評価)。イヌによって吸収に差はあるが、個々のイヌ毎にデータは一貫している。発泡性製剤に2.5%若しくはそれ以上のNaTCを加えることにより透過性は顕著に高まる。
【0141】
【表12c】
【実施例15】
【0142】
A.in vivoインスリン(溶液)透過性比較試験
各種組成溶液をイヌ口腔粘膜に適用することにより、ヒト組み換えインスリンの口腔粘膜を通じた血流中への透過に関する試験を行った。インスリンは、インスリン単独、発泡性製剤EF1(実施例1A)との混合、胆汁酸塩との混合、および胆汁酸塩、発泡性製剤(EF1およびEF2)との混合により試験を行った。この試験に使用した手順には「グルコースクランプ」型プロトコルが含まれ、5%デキストロースが血糖値を比較的一定に保つのに必要な量だけ経時的に注入される。デキストロースの総使用量を、機能的、生物活性インスリン吸収量の間接的測定値として記録する。さらに、インスリン値の試験に用いた血清試料を対象に、ELISAキット(カリフォルニア州CamarilloのBiosourceより入手したKAQ1251)を用いて吸収インスリンを直接測定した。口腔粘膜組織を通過するインスリン量を経時的に測定した。インスリンは、賦形剤1(EF1)のほか発泡性製剤賦形剤2(EF2)との混合で試験を行った。試験を行った製剤および結果を下記表に纏めた。
【0143】
【表13】
【0144】
B.in vivoインスリン(錠)透過性比較試験
インスリン粉末を次の製剤設計に基づいて錠剤化した。
【0145】
【表14】
【0146】
当該錠剤をデスモプレシンに関し記載したものと同様の方法および設備を用いて調製し、上記の麻酔イヌモデルプロトコルを用いて試験を行った。前記In vivoイヌ試験のため、当該錠剤を直接口腔粘膜上に適用し、1分間にわたって水で潤した。血清試料を収集しELISAキットを用いて分析を行った。データを分析し平均値を得た。結果の概要を下表に示す。
【0147】
【表15】
【実施例16】
【0148】
胆汁酸塩データの比較
本発明に適合する最も有効な胆汁酸塩を知るために試験を行った。胆汁酸塩の候補を、まず細胞培養試験(in vitro)において毒性値に関しスクリーニングを行った。胆汁酸塩をクレブスリンゲル緩衝液および逐次2倍希釈液に溶解したものを調製し、試験を行った。同試料に対し、毒性に関するMTSアッセイ(当業者は容易に実施可能)を行った。得られたTox50値を用いて、賦形剤1粉末の規定量との混合による胆汁酸塩の促進能を調べた。試料を2X、1X、1/2X、および1/4X Tox50量で調製し、それら単独および既述の賦形剤(賦形剤1)約5〜6μgとの混合による透過促進能を調べた。このように、促進能および発泡性賦形成分との相乗能力を比較した。
【0149】
このようにして試験を行った広範な胆汁酸塩を、本発明の脈絡の中で発泡性賦形剤と混合した場合の予想される促進能に関しスクリーニングを行った。その結果、予測評価に基づき以下の胆汁酸塩を選択した:タウロコール酸ナトリウム(TC)、グリココール酸ナトリウム(GC)、グリコデオキシコール酸ナトリウム(GDC)、タウロデオキシコール酸ナトリウム(TDC)、コール酸ナトリウム(C)、タウロケノデオキシコール酸ナトリウム(TCDC)、タウロウルソデオキシコール酸ナトリウム(TUDC)、およびこれらの組合せ。
【0150】
促進率(ER)は促進処置を行った場合の見かけ上の透過係数を活性成分単独の場合の見かけ上の透過係数で割った比率である。この方法および計算を、試験を行った各胆汁酸塩に適用した。
【0151】
結果を図13に示す。図のデータから分かるように、7種の胆汁酸塩それぞれに関し、活性ポリペプチド(インスリン)と胆汁酸塩および発泡性成分両方との本発明の組成に基づいた混合は、各透過促進剤を個々に用いた場合(すなわち、胆汁酸塩単独または発泡性賦形剤単独)に比べ、ERで示される透過作用は顕著に高いように見られた。
【0152】
図13から分かるように、当該ポリペプチド(インスリン)を胆汁酸塩単独と混合た場合と発泡性賦形成分単独と混合した場合のいずれも、胆汁酸塩および発泡性賦形成分の両方と混合した場合の透過値には達さないようである。この結果は、製剤設計にどの胆汁酸塩を使用するかに関わらず一貫してもたらされるように見られた。
【実施例17】
【0153】
ELISAを用いたIGF−1分析
インスリン様成長因子−1(IGF−1)のin vitro透過性を調べた。IGF−1は3つの内部ジスルフィド結合を持つ70個のアミノ酸からなる。分子量は約7600ダルトンである。IGF−1は多機能を有する複合成長因子である。上記の細胞培養モデルを用い、IGF−1の透過性を調べた。IGF−1をELISAキット(DG−100、R&D System、ミネソタ州Minneapolis)を用いて測定した。この方法では、IGF−1はプラスチック結合抗体に捉えられ、酵素特異的基質とともにインキュベートすることにより光学濃度を提供する酵素結合特異抗体を用いて発現される。このように、培養口腔細胞を通過するIGF−1の量を経時的に測定し、それを用いて見かけ上の透過係数(Papp)を計算した。
【0154】
結果を図14に示す。図のデータから分かるように、in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのIGF−1と胆汁酸塩(タウロコール酸ナトリウム)単独との混合、または同ポリペプチドと発泡性組成物(実施例1Aで記載されEF2と称した発泡性賦形剤2)単独との混合、は粘膜組織を通したポリペプチドIGF−1の透過性を促進することはないように見られた。
【0155】
しかし、当該ポリペプチドIGF−1、EF2、および1%胆汁酸塩の混合は粘膜組織を通じた当該ポリペプチドの透過/輸送を促進するようである。併用した場合、タウロコール酸、発泡性賦形剤と同ポリペプチドとの混合は、同ポリペプチドと胆汁酸塩および発泡性製剤の各単独との混合による合計よりも大きな透過をもたらすようである。ELISA法によるこれらの結果は、上記の蛍光標識透過アッセイで得られる結果を裏付けるものである。
【実施例18】
【0156】
酵素活性による西洋わさびペルオキシダーゼ分析
ビオチン標識された西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO−b)を入手した(Sigma Chemicals、ミズーリ州St.Louis)。HRPO−bは分子量が約34,000ダルトンで308個のアミノ酸からなる。ELISAなどのバイオアッセイに用いられる一般的な酵素である。ストレプトアビジンでコーティングされた電磁ビーズを用いて試料の他の成分から精製された。洗浄した電磁ビーズ上におけるHRPO−bの酵素活性を、O.D.450nMにおいてペルオキシダーゼ基質(R&D Systems、ミネソタ州Minneapolis)の変換を分析することにより測定した。このように、培養口腔細胞を通過するHRPO−bの量を経時的に測定し、それを用いて見かけ上の透過係数(Papp)を計算した。
【0157】
結果を図15に示す。図のデータから分かるように、in vitroモデルにおいて、活性ポリペプチドとしてのHRPO−bと胆汁酸塩(タウロコール酸ナトリウム)単独との混合、または同ポリペプチドと発泡性組成物(実施例1Aで記載されEF2と称した発泡性賦形剤2)単独との混合、は粘膜組織を通したポリペプチドHRPO−bの透過性を促進することはないように見られた。
【0158】
しかし、当該ポリペプチドHRPO−b、EF2、および1%胆汁酸塩の混合は粘膜組織を通じた当該ポリペプチドの透過/輸送を促進するようである。併用した場合、タウロコール酸、発泡性賦形剤と同ポリペプチドとの混合は、同ポリペプチドと胆汁酸塩および発泡性製剤の各単独との混合による合計よりも大きな透過性をもたらすようである。正常な酵素活性を用いたこれらの結果は、上記の蛍光標識透過アッセイを用いて得られた結果を裏付ける。
【0159】
本明細書に記載された試験データは、発泡性成分、胆汁酸塩、および本発明に基づく組成物の生物活性ポリペプチド間における相乗作用を支持するように思われる。理論に束縛されるものではないが、発泡性賦形剤は薬物送達ルートとして粘膜を通じたポリペプチドの輸送を促進する方法で胆汁酸塩成分と相互に作用すると考えられている。もう一つの説明としては、発泡性成分および胆汁酸塩が各単独で粘膜組織に及ぼす作用の混合が正味の細胞透過性総量をより大きなものにすることが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明は様々なポリペプチドの口腔粘膜を経由した受容者への送達に有用である。さらに、本発明は医療、製薬、または栄養の各分野での利用が可能である。
【0161】
本明細書には、本発明に関する各種の具体的な実施形態および方法が記載されている。しかし当業者には、以下の請求項に定義される本発明の精神若しくは範囲のいずれからも大きく逸脱することなく、そのような実施形態および方法からの妥当な変更および修正が可能であることが理解される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔粘膜膜組成物であって、
治療的有効量の生物活性ポリペプチドと、
発泡性賦形成分と、
胆汁酸塩と
を有する組成物。
【請求項2】
請求項1記載の組成物において、前記ポリペプチドの分子量は約500ダルトン〜200キロダルトンである。
【請求項3】
請求項2記載の組成物において、前記ポリペプチドの分子量は約1000〜20,000ダルトンである。
【請求項4】
請求項1記載の組成において、前記発泡性賦形成分は食品グレードの酸および塩基を有するものである。
【請求項5】
請求項4記載の組成物において、前記発泡性賦形成分はクエン酸および重炭酸ナトリウムを有するものである。
【請求項6】
請求項1記載の組成物において、前記胆汁酸塩はタウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、タウロケノデオキシコール酸ナトリウム、タウロウルソデオキシコール酸ナトリウム、およびこれらの組合せから成る群から選択されるものである。
【請求項7】
請求項6記載の組成物において、前記胆汁酸塩はタウロコール酸ナトリウムである。
【請求項8】
請求項1記載の組成物において、前記発泡性賦形成分はpH調整剤をさらに有するものである。
【請求項9】
請求項8記載の組成物において、前記pH調整剤は炭酸塩である。
【請求項10】
請求項9記載の組成物において、前記pH調整剤は炭酸ナトリウムである。
【請求項11】
口腔粘膜組成物であって、
治療的有効量の生物活性ポリペプチドと、
発泡性賦形成分と、
胆汁酸塩と、
崩壊剤と
を有する組成物。
【請求項12】
請求項11記載の組成物において、前記崩壊剤はデンプングリコール酸である。
【請求項13】
請求項12記載の組成物において、前記デンプングリコール酸はデンプングリコール酸ナトリウムである。
【請求項14】
請求項1または11記載の組成物において、前記生物活性ポリペプチドはアミリン、ピンクサーモン由来カルシトニン(s−CT)、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)、グルカゴン、副甲状腺ホルモン(PTH)、オキシトシン、およびデスモプレシン(D−Argバソプレッシン)から成る群から選択されるものである。
【請求項15】
請求項1または11記載の組成物において、前記生物活性ポリペプチドはインスリン、ペプチドYY(PYY)、IFN−α、IFN−β、およびIFN−γから成る群から選択されるものである。
【請求項16】
生物活性ポリペプチドの経粘膜吸収を促進する方法であって、この方法は、前記生物活性ポリペプチドを製剤として受容者に投与する工程を有し、前記製剤は治療的有効量の同生物活性ポリペプチド、胆汁酸塩、および発泡性賦形成分とを含む医薬組成物を有するものである、方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法において、前記ポリペプチドは約500ダルトン〜200キロダルトンの分子量を有するものである。
【請求項18】
請求項17記載の方法において、前記ポリペプチドは約1000〜20,000ダルトンの分子量を有するものである。
【請求項19】
請求項116記載の方法において、前記生物活性ポリペプチドはアミリン、サーモン由来カルシトニン(s−CT)、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)、グルカゴン、副甲状腺ホルモン(PTH)、オキシトシン、およびデスモプレシン(D−Argバソプレッシン)から成る群から選択されるものである。
【請求項20】
請求項16記載の組成物において、前記生物活性ポリペプチドはインスリン、ペプチドYY(PYY)、IFN−α、IFN−β、およびIFN−γから成る群から選択されるものである。
【請求項21】
請求項16記載の方法において、前記胆汁酸塩はタウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、タウロケノデオキシコール酸ナトリウム、タウロウルソデオキシコール酸ナトリウム、およびこれらの組合せから成る群から選択されるものである。
【請求項22】
請求項21記載の方法において、前記胆汁酸塩はタウロコール酸ナトリウムである。
【請求項23】
請求項16記載の方法において、前記発泡性賦形成分は酸および塩基を有するものである。
【請求項24】
請求項23記載の方法において、前記発泡性賦形成分はクエン酸および炭酸ナトリウムを有するものである。
【請求項25】
請求項16記載の方法において、前記発泡性賦形成分はpH調整剤をさらに有するものである。
【請求項26】
請求項25記載の方法において、前記pH調整剤は重炭酸塩である。
【請求項27】
請求項26記載の方法において、前記pH調整剤は重炭酸ナトリウムである。
【請求項28】
請求項16記載の方法において、前記医薬組成物は崩壊剤をさらに有するものである。
【請求項29】
請求項28記載の方法において、前記崩壊剤はデンプングリコール酸である。
【請求項30】
請求項29記載の方法において、前記崩壊剤はデンプングリコール酸ナトリウムである。
【請求項31】
生物活性ポリペプチドを受容者に投与する方法であって、この方法は、受容者の口腔内において医薬組成物を当該組成物の溶解および当該生物活性ポリペプチドの経粘膜送達に十分な時間だけ粘膜組織に接触させる工程を含み、前記医薬組成物は生物活性ポリペプチド、胆汁酸塩、および発泡性賦形成分を含むものである、方法。
【請求項32】
請求項31記載の方法において、前記生物活性ポリペプチドは、アミリン、サーモン由来カルシトニン(s−CT)、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)、グルカゴン、副甲状腺ホルモン(PTH)、オキシトシン、およびデスモプレシン(D−Argバソプレッシン)から成る群から選択されるものである。
【請求項33】
請求項31記載の方法において、前記生物活性ポリペプチドは、インスリン、ペプチドYY(PYY)、IFN−α、IFN−β、およびIFN−γから成る群から選択されるものである。
【請求項34】
a)生物活性ポリペプチドと、
b)発泡性賦形成分と、
c)胆汁酸塩と
を含む、経粘膜吸収固形経口製剤。
【請求項35】
請求項34記載の製剤において、前記発泡性賦形成分はpH調整剤をさらに有するものである。
【請求項36】
請求項34記載の製剤において、前記ポリペプチドはデスモプレシンである。
【請求項37】
請求項34記載の製剤において、前記ポリペプチドはインスリンである。
【請求項38】
請求項34記載の製剤において、前記剤形は圧縮錠である。
【請求項39】
糖尿病の治療を必要とする受容者における糖尿病の治療方法であって、この方法は、治療的有効量のインスリン、発泡性賦形成分、および胆汁酸塩を含む口腔粘膜組成物を受容者に投与する工程を含むものである、方法。
【請求項40】
癌の治療を必要とする受容者における癌の治療方法であって、この方法は、治療的有効量のIFN−γと、発泡性賦形成分と、胆汁酸塩とを含む口腔粘膜組成物を受容者に投与する工程を含むものである、方法。
【請求項41】
細菌感染症の治療を必要とする受容者におけるウイルスまたは細菌感染症の治療方法であって、この方法は、治療的有効量のIFN−γと、発泡性賦形成分と、胆汁酸塩とを含む口腔粘膜組成物を受容者に投与する工程を含むものである、方法。
【請求項42】
精神疾患または障害の治療を必要とする受容者における精神疾患または障害の治療方法であって、治療的有効量のアミリンと、発泡性賦形成分と、胆汁酸塩とを含む口腔粘膜組成物を受容者に投与する工程を含むものである、方法。
【請求項43】
請求項42記載の方法において、前記精神疾患または障害は気分障害、不安症、または統合失調症である。
【請求項44】
請求項39〜43のいずれか1つに記載の方法において、前記組成物は受容者の口腔内または口腔周辺に投与されるものである。
【請求項1】
口腔粘膜膜組成物であって、
治療的有効量の生物活性ポリペプチドと、
発泡性賦形成分と、
胆汁酸塩と
を有する組成物。
【請求項2】
請求項1記載の組成物において、前記ポリペプチドの分子量は約500ダルトン〜200キロダルトンである。
【請求項3】
請求項2記載の組成物において、前記ポリペプチドの分子量は約1000〜20,000ダルトンである。
【請求項4】
請求項1記載の組成において、前記発泡性賦形成分は食品グレードの酸および塩基を有するものである。
【請求項5】
請求項4記載の組成物において、前記発泡性賦形成分はクエン酸および重炭酸ナトリウムを有するものである。
【請求項6】
請求項1記載の組成物において、前記胆汁酸塩はタウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、タウロケノデオキシコール酸ナトリウム、タウロウルソデオキシコール酸ナトリウム、およびこれらの組合せから成る群から選択されるものである。
【請求項7】
請求項6記載の組成物において、前記胆汁酸塩はタウロコール酸ナトリウムである。
【請求項8】
請求項1記載の組成物において、前記発泡性賦形成分はpH調整剤をさらに有するものである。
【請求項9】
請求項8記載の組成物において、前記pH調整剤は炭酸塩である。
【請求項10】
請求項9記載の組成物において、前記pH調整剤は炭酸ナトリウムである。
【請求項11】
口腔粘膜組成物であって、
治療的有効量の生物活性ポリペプチドと、
発泡性賦形成分と、
胆汁酸塩と、
崩壊剤と
を有する組成物。
【請求項12】
請求項11記載の組成物において、前記崩壊剤はデンプングリコール酸である。
【請求項13】
請求項12記載の組成物において、前記デンプングリコール酸はデンプングリコール酸ナトリウムである。
【請求項14】
請求項1または11記載の組成物において、前記生物活性ポリペプチドはアミリン、ピンクサーモン由来カルシトニン(s−CT)、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)、グルカゴン、副甲状腺ホルモン(PTH)、オキシトシン、およびデスモプレシン(D−Argバソプレッシン)から成る群から選択されるものである。
【請求項15】
請求項1または11記載の組成物において、前記生物活性ポリペプチドはインスリン、ペプチドYY(PYY)、IFN−α、IFN−β、およびIFN−γから成る群から選択されるものである。
【請求項16】
生物活性ポリペプチドの経粘膜吸収を促進する方法であって、この方法は、前記生物活性ポリペプチドを製剤として受容者に投与する工程を有し、前記製剤は治療的有効量の同生物活性ポリペプチド、胆汁酸塩、および発泡性賦形成分とを含む医薬組成物を有するものである、方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法において、前記ポリペプチドは約500ダルトン〜200キロダルトンの分子量を有するものである。
【請求項18】
請求項17記載の方法において、前記ポリペプチドは約1000〜20,000ダルトンの分子量を有するものである。
【請求項19】
請求項116記載の方法において、前記生物活性ポリペプチドはアミリン、サーモン由来カルシトニン(s−CT)、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)、グルカゴン、副甲状腺ホルモン(PTH)、オキシトシン、およびデスモプレシン(D−Argバソプレッシン)から成る群から選択されるものである。
【請求項20】
請求項16記載の組成物において、前記生物活性ポリペプチドはインスリン、ペプチドYY(PYY)、IFN−α、IFN−β、およびIFN−γから成る群から選択されるものである。
【請求項21】
請求項16記載の方法において、前記胆汁酸塩はタウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、タウロケノデオキシコール酸ナトリウム、タウロウルソデオキシコール酸ナトリウム、およびこれらの組合せから成る群から選択されるものである。
【請求項22】
請求項21記載の方法において、前記胆汁酸塩はタウロコール酸ナトリウムである。
【請求項23】
請求項16記載の方法において、前記発泡性賦形成分は酸および塩基を有するものである。
【請求項24】
請求項23記載の方法において、前記発泡性賦形成分はクエン酸および炭酸ナトリウムを有するものである。
【請求項25】
請求項16記載の方法において、前記発泡性賦形成分はpH調整剤をさらに有するものである。
【請求項26】
請求項25記載の方法において、前記pH調整剤は重炭酸塩である。
【請求項27】
請求項26記載の方法において、前記pH調整剤は重炭酸ナトリウムである。
【請求項28】
請求項16記載の方法において、前記医薬組成物は崩壊剤をさらに有するものである。
【請求項29】
請求項28記載の方法において、前記崩壊剤はデンプングリコール酸である。
【請求項30】
請求項29記載の方法において、前記崩壊剤はデンプングリコール酸ナトリウムである。
【請求項31】
生物活性ポリペプチドを受容者に投与する方法であって、この方法は、受容者の口腔内において医薬組成物を当該組成物の溶解および当該生物活性ポリペプチドの経粘膜送達に十分な時間だけ粘膜組織に接触させる工程を含み、前記医薬組成物は生物活性ポリペプチド、胆汁酸塩、および発泡性賦形成分を含むものである、方法。
【請求項32】
請求項31記載の方法において、前記生物活性ポリペプチドは、アミリン、サーモン由来カルシトニン(s−CT)、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)、グルカゴン、副甲状腺ホルモン(PTH)、オキシトシン、およびデスモプレシン(D−Argバソプレッシン)から成る群から選択されるものである。
【請求項33】
請求項31記載の方法において、前記生物活性ポリペプチドは、インスリン、ペプチドYY(PYY)、IFN−α、IFN−β、およびIFN−γから成る群から選択されるものである。
【請求項34】
a)生物活性ポリペプチドと、
b)発泡性賦形成分と、
c)胆汁酸塩と
を含む、経粘膜吸収固形経口製剤。
【請求項35】
請求項34記載の製剤において、前記発泡性賦形成分はpH調整剤をさらに有するものである。
【請求項36】
請求項34記載の製剤において、前記ポリペプチドはデスモプレシンである。
【請求項37】
請求項34記載の製剤において、前記ポリペプチドはインスリンである。
【請求項38】
請求項34記載の製剤において、前記剤形は圧縮錠である。
【請求項39】
糖尿病の治療を必要とする受容者における糖尿病の治療方法であって、この方法は、治療的有効量のインスリン、発泡性賦形成分、および胆汁酸塩を含む口腔粘膜組成物を受容者に投与する工程を含むものである、方法。
【請求項40】
癌の治療を必要とする受容者における癌の治療方法であって、この方法は、治療的有効量のIFN−γと、発泡性賦形成分と、胆汁酸塩とを含む口腔粘膜組成物を受容者に投与する工程を含むものである、方法。
【請求項41】
細菌感染症の治療を必要とする受容者におけるウイルスまたは細菌感染症の治療方法であって、この方法は、治療的有効量のIFN−γと、発泡性賦形成分と、胆汁酸塩とを含む口腔粘膜組成物を受容者に投与する工程を含むものである、方法。
【請求項42】
精神疾患または障害の治療を必要とする受容者における精神疾患または障害の治療方法であって、治療的有効量のアミリンと、発泡性賦形成分と、胆汁酸塩とを含む口腔粘膜組成物を受容者に投与する工程を含むものである、方法。
【請求項43】
請求項42記載の方法において、前記精神疾患または障害は気分障害、不安症、または統合失調症である。
【請求項44】
請求項39〜43のいずれか1つに記載の方法において、前記組成物は受容者の口腔内または口腔周辺に投与されるものである。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2010−526071(P2010−526071A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506325(P2010−506325)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/005655
【国際公開番号】WO2008/137054
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(509021085)セファロン、インク. (24)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/005655
【国際公開番号】WO2008/137054
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(509021085)セファロン、インク. (24)
【Fターム(参考)】
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