説明

ポリマーの変性方法

【課題】 ブチルゴムやEPM、更にポリプロピレンなどのラジカル崩壊型ポリマーをニトロキシドラジカルを分子中に有する化合物で変性してポリマーの分子量の低下を抑制しつつ官能基を導入する。
【解決手段】 分子内の炭素ラジカルにより分解するポリマー(A)を、ニトロキシドラジカルを分子中に有する化合物(B)及びラジカル開始剤(C)を(B)/(C)(モル比)が0.7以上の比率で用いて、変性させることによって、ポリマー中に前記ニトロキシドラジカルに由来する有機基を導入することによるポリマーの変性方法及びそれによって得られる変性非ハロゲン化ブチルゴム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマーの変性方法に関し、更に詳しくは分子内の炭素ラジカルにより分解するポリマーに、ニトロキシドラジカルを分子中に有する化合物及びラジカル開始剤を反応させてポリマーを変性する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されているように、TEMPO(即ち、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル)などの安定フリーラジカルをゴムに配合してゴム組成物の物性、特に加工性や耐摩耗性などの物性を改善することが提案されている。また、特許文献2には、TEMPO誘導体をポリマー中に含有させることによりポリマーの老化を防ぐことが開示されている。しかしながら、ゴムなどのポリマーに積極的に炭素ラジカルを発生させることにより、前記安定フリーラジカルを分子中に有する化合物を用いてポリマーを変性することに関する技術ではない。ニトロキシドラジカルを用いてポリマーを変性する手法としては、特許文献3に記載されているが、これはニトロキシドラジカルをリビングラジカル重合の対ラジカルとして導入しており、官能基を付与する目的には用いられていない。特許文献4にはフリーラジカルの存在下、多官能性のニトロキシドラジカルを可逆性の架橋剤として反応させることが開示されているが、官能基を付与する目的には用いられていない。したがって、ラジカル崩壊型のポリマーに分子量の低下を抑制しつつ官能基を導入する方法に関する技術は未だ見出されていない。
【0003】
通常のブチルゴムは不飽和度が極めて低いことから耐候性、耐熱性、耐オゾン性などが優れているが、その反面、加硫が遅いという欠点がある。特に、硫黄で充分に加硫を行うためには、高温と強力な加硫促進剤の使用、もしくは長時間にわたる加硫が必要である。そこで、ブチルゴムの不飽和部位(イソプレン部位)のアリル位に塩素もしくは臭素を導入することにより不飽和部位の加硫活性を高めたハロゲン化ブチルゴムが開発され、これによりブチルゴムの長所を保ちながら、他のジエン系ゴムとの共架橋性や接着性が改善され、幅広く用いられている。しかしながら、近年、環境問題の観点からゴムやエラストマーの開発においてもハロゲンフリーの施策が種々行われており、ハロゲンフリーという観点から考えるとハロゲン化ブチルゴムの環境への負荷は大きい。また、ハロゲン化ブチルゴムは、通常、ブチルゴムを炭化水素溶媒に溶解してからハロゲン化して製造するために、製造工程数が多く、通常のブチルゴムよりもコストが高い。
【0004】
ポリプロピレンに無水マレイン酸などをPO(有機過酸化物)の存在下にグラフトする技術は一般的に使用されている。また、特許文献5にはエポキシ基含有モノマーをポリプロピレンにグラフトすることが開示されている。しかし、これらの方法では変性中のポリプロピレン系ポリマーの分子量の低下、ゲル化が起こる。また、官能性モノマーと開始剤の直接反応によるホモポリマー生成を避けられない。
【0005】
【特許文献1】特開平10−182881号公報
【特許文献2】特開平8−239510号公報
【特許文献3】米国特許第4581429号明細書
【特許文献4】特表2003−524037号公報
【特許文献5】特開平5−59253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明はブチルゴムやエチレンプロピレン共重合体(EPM)、更にはプロピレン単位を含む熱可塑性ポリマーなどのラジカル崩壊型ポリマーをニトロキシドラジカルを分子中に有する化合物で変性してポリマーの分子量の低下を抑制しつつ、官能基を導入することを目的とする。本発明はまたハロゲンを含まないが加硫活性の高いブチルゴムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従えば、分子内の炭素ラジカルにより分解するポリマー(A)を、ニトロキシドラジカルを分子中に有する化合物(B)及びラジカル開始剤(C)を(B)/(C)(モル比)0.7以上の比率で用いて、変性させることによって、ポリマー中に前記ニトロキシドラジカルに由来する有機基を導入するポリマーの変性方法が提供される。
【0008】
本発明に従えば、また、ハロゲンを含まないブチルゴムを、ニトロキシドラジカルを分子中に有する化合物(B)で変性することによって得られる、加硫活性の高い変性ブチルゴムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従えば、ポリマー(A)の分子量の低下を抑制しつつ、ポリマー(A)に化合物(B)をニトロキシドラジカルを介して導入することができる(ラジカル崩壊型のポリマーの分子量を低下させることなく官能基を導入することができる)ので、ポリマー(A)の本来の物性を低下させることなく、ガラスとの接着性やフィラーとの親和性、また、熱可塑性樹脂などとのブレンドにおける相溶性を向上させることができる。
【0010】
本発明に従えば、通常の非ハロゲン化ブチルゴムを混合機中でニトロキシドラジカルを分子中に有する化合物(B)で変性することにより、得られた変性ブチルゴムがハロゲン化ブチルゴムと同等の加硫活性を示すことを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ブチルゴム、EPMなどのゴムやプロピレン単位を含むポリマーなどの熱可塑性樹脂は極性が低いため、ポリアミドやポリエステルなどの樹脂に対する相溶性が低く、またガラスなどへの接着性にも劣るという欠点がある。従って、これらの極性の低いポリマーの極性を高めたり、界面での反応を発現させるための方法として官能基を導入する方法が挙げられる。官能基を導入するためには分子鎖上にラジカルを発生させ、官能基を有する化合物を反応させる手法が用いられることが多いが、以下の化学式の従来法に示すように、これらポリマーの構成単位には、ラジカルの水素引抜きにより分解するユニットが含まれているために、変性中に分子量の低下が起こるおそれが非常に高い。かかる分子量の低下は物性に悪影響を及ぼすため好ましくなく、また、ラジカル開始剤と官能基を有する化合物が直接反応して反応効率が低下したり、ホモポリマーが系内に生成してしまうことも考えられる。
【0012】
【化1】

【0013】
一方、本発明の方法では、上記化学式に模式的に示したように、分子量の低下を抑制しつつラジカル崩壊型のポリマーに官能基を導入する方法を鋭意検討し、その結果、炭素ラジカル補捉能に優れた安定フリーラジカルであるニトロキシドラジカル化合物(B)とラジカル開始剤(C)を特定の比率で添加して変性を行うことにより上記目的が達成できることを見出した。
【0014】
TEMPOなどの安定フリーラジカルを有する化合物は光、熱又は機械的にゴムが切断されて発生したラジカルを速やかにトラップする。しかし、ポリマーの分子中に官能基を導入しようとした場合にはTEMPOなどの安定フリーラジカルを有する化合物のみではポリマーを十分に変性することはできないので、本発明では、ポリマー分子鎖上に積極的に炭素ラジカルを発生させることにより、上記化学式に示したように、ポリマー分子中に所望の官能基を導入することに成功し、本発明をするに至った。
【0015】
本発明に従って変性することができるポリマー(A)としては、例えばブチルゴム(IIR)、臭素化ブチルゴム、イソブチレン−パラメチルスチレン共重合体、臭素化イソブチレン−パラメチルスチレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−ブテン共重合体、ポリスチレン系TPE(SEBS,SEPS)、ポリオレフィン系TPE、ポリプロピレンやプロピレン共重合体などのプロピレン単位を含むポリマー、フッ素ゴム、水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(H−NBR)などを挙げることができる。
【0016】
本発明において使用することができる、ニトロキシドラジカル(−N−O・)を分子内に含む化合物(B)としては、以下の化合物を例示することができる。なお、これら化合物の添加量は、ポリマー100重量部に対し、0.1〜25重量部が好ましく、0.5〜20重量部が更に好ましい。
【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

【0019】
(上記式(1)〜(6)において、Rは炭素数1〜30のアルキル基、アリル基、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、チオール基、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、カルボキシル基、カルボニル基含有基(例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタン酸、無水フタル酸などの環状酸無水物)、アミド基、エステル基、イミド基、ニトリル基、チオシアン基、炭素数1〜20のアルコキシ基、シリル基、アルコキシシリル基、ニトロ基などの官能基を含む有機基を示す。)
【0020】
【化4】

【0021】
【化5】

【0022】
その他の例をあげれば以下の通りである。
【0023】
【化6】

【0024】
【化7】

【0025】
【化8】

【0026】
【化9】

【0027】
【化10】

【0028】
【化11】

【0029】
【化12】

【0030】
【化13】

【0031】
前記ポリマーに炭素ラジカルを発生させる手段としては、ラジカル開始剤(C)を反応系に添加する。本発明において使用することができるラジカル開始剤(C)としては、例えばベンゾイルパーオキサイド(BPO)、t−ブチルパーオキシベンゾエート(Z)、ジクミルパーオキサイド(DCP)、t−ブチルクミルパーオキサイド(C)、ジ−t−ブチルパーオキサイド(D)、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン(2,5B)、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシ−3−ヘキシン(Hexyne−3)、2,4−ジクロロ−ベンゾイルパーオキサイド(DC−BPO)、ジ−t−ブチルパーオキシ−ジ−イソプロピルベンゼン(P)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン(3M)、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどの有機過酸化物、及びアゾジカーボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド、ジメチル2,2’−アゾビス(イソブチレート)、アゾビス−シアン吉草酸(ACVA)、1,1’−アゾビス−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(ACHN)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、アゾビスメチルブチロニトリル(AMBN)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などのラジカル発生剤が挙げられる。これらはポリマーと前記のようなニトロキシドラジカルを有する化合物との反応系(混合系、接触系)に添加することによって、ポリマーに炭素ラジカルを発生させることができる。ラジカル開始剤(C)の添加量は、ポリマー(A)100重量部に対し、好ましくは0.1〜15重量部、更に好ましくは0.2〜10重量部である。
【0032】
ニトロキシドラジカルを分子中に有する化合物(B)とラジカル開始剤(C)の添加量の比率は、モル比(B)/(C)が0.7以上で0.75〜1.3であるのが好ましい。この比率が0.7未満では変性中のポリマー鎖の分解が抑えきれず、分子量が低下してしまうおそれがあるため好ましくない。本発明に従って、モル比(B)/(C)が0.7以上1.5未満の場合には、比較的高い導入率で官能基を導入することができるという特徴が得られ、モル比(B)/(C)が1.5以上、更に好ましくは1.7〜2.0の場合には分子量の低下を完全に抑えることができるという特徴が得られる。
【0033】
本発明に従って、ポリマーの変性によってポリマー中に導入される有機基としては、例えば炭素数1〜30のアルキル基、フェニル基、アリル基、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、チオール基、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、カルボキシル基、カルボニル基含有基(例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタン酸、無水フタル酸などの環状酸無水物)、アミド基、エステル基、イミド基、ニトリル基、チオシアン基、炭素数1〜20のアルコキシ基、シリル基、アルコキシシリル基などが例示される。
【0034】
本発明に従ってポリマー組成物を製造する場合には、変性ポリマーに加えてジエン系ゴム、ポリオレフィン系ゴム、熱可塑性TPE、ポリオレフィン、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などのポリマー、カーボンブラックやシリカなどの補強性充填剤、炭酸カルシウム、タルクなどの充填剤、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤などのカップリング剤などのタイヤ用、その他一般ゴム用、熱可塑性ポリマー用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる配合物は一般的な方法で混練、加硫して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
実施例1〜5及び比較例1〜3
4−グリシジル−TEMPOの合成
50重量%の水酸化ナトリウム水溶液250mLにエピクロロヒドリン171.6g(1.85mol)、硫酸水素テトラブチルアンモニウム8.11g(0.0264mol)を加え攪拌した。0℃にてOH−TEMPO 100.3g(0.580mol)を徐々に加えた。室温にて24時間攪拌し、反応溶液を氷水に注いだ。水層をジエチルエーテル(200mLx3回)で抽出し、有機層を水(200mLx3回)にて洗浄した後、硫酸マグネシウム上にて乾燥した。ろ過、減圧濃縮の後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、シロップ状の4−グリシジル−TEMPOを得た。
【0036】
ブチルゴムの変性
ブチルゴム、ラジカル開始剤、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシル誘導体(OH−TEMPO,G−TEMPO)もしくはGMAの表Iに示した量を60℃に温度を設定した密閉型バンバリーに入れて15分間混合した。得られた混合物を、100℃に温度設定した密閉型バンバリー中に混練しながら5分間窒素置換した。混練下に、温度を表Iに示した温度まで上昇させ、そのまま15分間混練した。得られたポリマーの一部をトルエンに溶解し、再沈殿操作によりポリマーを単離精製した。精製品を用いて、1H−NMR分析並びに元素分析を行うことにより導入率を算出した。また、分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。結果を表IIに示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表I脚注
*1:バイエル社製BUTYL301
*2:日本油脂(株)製ジクミルパーオキサイド(パークミルD)
*3:日本油脂(株)製ジ−t−ブチルパーオキサイド(パーブチルD)
*4:旭電化工業(株)製4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシル(LA7RD)
*5:4−グリシジル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシル(上で合成した4−グリシジル−TEMPO)
*6:関東化学(株)製グリシジルメタクリレート
【0039】
【表2】

【0040】
表IIの結果から明らかなように、TEMPOを使わない比較例1及び3並びにTEMPO/ラジカル開始剤のモル比が0.7未満の比較例2では分子量の低下が顕著であったのに対し0.7以上の実施例1〜5では分子量の低下は認められなかった。この結果を図1にも示す。
【0041】
実施例6〜9及び比較例4〜6
表IIIに示す配合(重量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を70ccのブラベンダーミキサーで5分間混練した。得られたマスターバッチと加硫促進剤、硫黄を8インチのオープンロールにて混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物のJIS K6300に基づく加硫度の測定を行い、加硫特性を評価した(表III)。T5〜T95の値は加硫度が5%〜95%に到達するのに要した時間を示し、MHは測定時の最大トルクを示す。
【0042】
【表3】

【0043】
表III脚注
*1:バイエル社製Butyl301
*2:バイエル社製Bayer Bromobutyl X2
*3:以下の合成例(OH−TEMPO変性)参照
*4:以下の合成例(グリシジル−TEMPO変性)参照
*5:新日化カーボン(株)製HTC#G
*6:日本油脂(株)製ビーズステアリン酸
*7:鶴見化学工業(株)製金華印微粉硫黄(150メッシュ)
*8:三新化学工業(株)製サンセラーDM
*9:大内新興化学(株)製ノクセラーTOTN
*10:正同化学工業(株)製酸化亜鉛8種
【0044】
変性ブチルゴムの合成例
1.OH−TEMPOによる変性
ブチルゴム(Butyl301、バイエル(株)製)350.0g、ジ−t−ブチルパーオキサイド22.8g、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシル32.2gを60℃に温度を設定した密閉型バンバリーに入れ15分間混合した。得られた混合物を100℃に温度設定した密閉型バンバリー中で混練しながら5分間窒息置換した。混練しながら温度を186℃まで上昇させ、15分間混練した。得られたポリマーの一部をトルエンに溶解し、再沈殿操作によりポリマーを単離精製した。精製品を用いて1H−NMR分析を行うことにより導入を確認した。
【0045】
2.グリシジル−TEMPOによる変性
ブチルゴム(Butyl301、バイエル(株)製)350.0g、ジ−t−ブチルパーオキサイド22.8g、4−グリシジル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシル42.3gを60℃に温度を設定した密閉型バンバリーに入れ15分間混合した。得られた混合物を100℃に温度設定した密閉型バンバリー中で混練しながら5分間窒息置換した。混練しながら温度を186℃まで上昇させ、15分間混練した。得られたポリマーの一部をトルエンに溶解し、再沈殿操作によりポリマーを単離精製した。精製品を用いて1H−NMR分析を行うことにより導入を確認した。
実施例10〜13及び比較例7〜9
表IVに示したように、ポリプロピレン(PP)、ラジカル開始剤(t−BPO)及び4−ヒドキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシル(OH−TEMPO)を表IVに示す配合に従ってフラスコに秤取り、溶媒として20mlのt−ブチルベンゼンを入れ、窒素雰囲気下で153℃で3.5時間反応させた。反応物を含む溶液をメタノール中に滴下することによって未反応の4−ヒドキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシル(OH−TEMPO)及びt−ブチルベンゼンを生成ポリマーから分離した。得られたポリマーは60℃で約20時間真空乾燥した。結果は表Vに示す。
【0046】
【表4】

【0047】
【表5】

【0048】
なお表Vに示したOH−TEMPOのグラフト量の測定法は以下の通りである。
元素分析により変性ポリマーに含まれる窒素原子の量(重量%)を測定し、この値から、ポリマー組成をポリプロピレン100%として、プロピレン単位100個当たりに含有されるOH−TEMPOの個数を求め、mol%として表示した。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に従えば、ポリマー分子量を低下させることなく、ニトロキシドラジカルを分子中に有する化合物を反応させて変性することにより、例えばブチルゴム、EPMなどの接着性や加工性を改善することができ、タイヤ、コンベアーベルト、ホースなどのゴム製品の他、プラスチック製品として有用に使用することができる。本発明に従えば、また、非ハロゲン化ブチルゴムをニトロキシドラジカルを分子中に有する化合物と反応させて変性することによりハロゲン化ブチルゴムと同等の加硫活性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例1〜5及び比較例1〜3の変性ポリマーのTEMPO/ラジカル開始剤比と重量平均分子量との関係を示すグラフ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内の炭素ラジカルにより分解するポリマー(A)を、ニトロキシドラジカルを分子中に有する化合物(B)及びラジカル開始剤(C)を(B)/(C)(モル比)0.7以上の比率で用いて、変性させることによって、ポリマー中に前記ニトロキシドラジカルに由来する有機基を導入することを特徴とするポリマーの変性方法。
【請求項2】
前記モル比(B)/(C)が1.5以上である請求項1に記載のポリマーの変性方法。
【請求項3】
前記ポリマー(A)がその構成単位中にイソモノオレフィンユニットを有する請求項1又は2に記載のポリマーの変性方法。
【請求項4】
前記ポリマー(A)がブチルゴムである請求項1,2又は3に記載のポリマーの変性方法。
【請求項5】
前記ポリマー(A)がプロピレン単位を含むポリマーである請求項1,2又は3に記載のポリマーの変性方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の変性方法により得られる変性ポリマー。
【請求項7】
請求項6に記載の変性ポリマーを含むポリマー組成物。
【請求項8】
前記ポリマー(A)がハロゲンを含まないブチルゴムである請求項1又は2に記載の変性方法で得られる加硫活性の高い変性ブチルゴム。
【請求項9】
請求項8に記載の変性ブチルゴムを含むブチルゴム組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2006−152229(P2006−152229A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27650(P2005−27650)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】