説明

ポリマー組成物

【課題】本発明は、少なくとも1個の重合性二重結合を含む枝分かれポリマーおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】一官能性ビニル系モノマー、0.3〜100%w/wの多官能性ビニル系モノマー、0.0001〜50%w/wの連鎖移動剤を反応させ、80〜98%の転化率となる前に重合反応を停止させる(メタ)アクリレート官能化ポリマーの製造方法。また、i)1分子当たり1個の重合性二重結合を有する一官能性モノマー、ii)1分子当たり少なくとも2個の重合性二重結合を有する多官能性モノマー0.3〜100%w/w、iii)連鎖移動剤0.0001〜50%w/w、および、所望により、iv)ラジカル重合開始剤、の残基からなり、少なくとも1個の重合性二重結合を含む枝分かれポリマー。このポリマーは表面コーティングおよびインクの成分、成形用樹脂として、または硬化性コンパウンドにおいて有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマー組成物に関し、より詳細には、重合性二重結合を有する枝分かれポリマーおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
枝分かれポリマーは枝分かれしており、しばしば多くの枝分かれを有する限定的なサイズのポリマー分子である。枝分かれポリマーは、相互に結合した分子を有しかつ一般に可溶性でない限定されないサイズとなる傾向がある架橋ポリマーネットワークとは区別される。枝分かれポリマーは、通常、類似の線状ポリマーを溶解する溶剤中に可溶性であるが、枝分かれポリマーの溶液が、通常、同様の分子量の対応する線状ポリマーの同濃度の溶液よりも粘性が低いという利点を有する。それ故、枝分かれポリマーの溶液は特に高い固形分含量での取扱がより容易であり、そして線状ポリマーの溶液よりも少量の溶剤を用いて製造することができる。この為、枝分かれポリマーは、例えば、溶剤型のコーティングおよびインクへの有用な添加剤であり、そして多くの他の用途もある。さらに、枝分かれポリマーは、また、類似の線状ポリマーよりも低い溶融粘度を有し、そして射出成形、圧縮成形、押出成形または粉体コーティングにおける溶融加工性を改良するために有用である。
【0003】
枝分かれサイトを含む線状ポリマーをさらに重合または変性工程に付し、枝分かれサイトから枝分かれを形成させる2工程プロセスにより、枝分かれポリマーは製造できる。2工程プロセスの本来的な複雑さは魅力がなく、得られる枝分かれポリマーを使用するのが高価になることがある。別の方法として、多官能性モノマーが存在し、ポリマー枝分かれが成長することができる官能基をポリマー鎖中に与える、1工程プロセスが使用できる。しかしながら、従来の1工程プロセスの使用に対する制約は、ポリマーの広範な架橋を回避し、そして不溶性ゲルの形成を回避するように、多官能性モノマーの量を注意深く制御しなければならず、通常、実質的に約0.5%w/w未満の量に制御しなければならないことである。この系を用いて架橋を回避することは、特に、希釈剤としての溶剤の不在下および/またはモノマーのポリマーへの高い転化率では、非常に稀である。
【0004】
残存の重合性二重結合を有するポリマーも、2工程プロセスにより従来から製造されている。というのは、従来の重合プロセスを用いると、ポリマー中の重合性基は重合して、架橋したポリマー分子を生成してしまうからである。通常、重合性二重結合は、官能性ポリマーの官能基と、かかる二重結合を有する化合物との後重合反応により官能性ポリマーの主鎖に追加できる。これらの2工程プロセスは、複雑さが増し、それ故、単純なポリマー製造法と比較してコストが高くなるという欠点がある。
【0005】
GB−A−2294467(特許文献1)は、枝分かれ点の間の分子量が30,000〜1,000,000であり、分子量が80,000〜400,000である枝分かれポリメチルメタクリレートポリマーであり、0.05〜0.2%の多官能性モノマーおよび<0.5モル%の連鎖移動剤を含むものを開示している。
【0006】
1998年6月16日に公開されたUS−A−5,767,211(特許文献2)は、連鎖移動触媒および非過酸化物ラジカル開始剤の存在下におけるジ−もしくはトリビニルモノマーのラジカル重合による多官能性超枝分かれポリマーの合成を記載している。得られるポリマーは、油性であり、低いTgの材料である。
【0007】
EP−A−103199(特許文献3)は、連鎖移動剤の存在下における溶液重合により製造される、t−ブチルアクリレートと、0.1〜3%の多官能性アクリレートと、1〜30重量%の官能性コモノマーとのコポリマーを記載している。官能性コモノマーは縮合化学により架橋されるコーティング組成物を形成するための活性架橋サイトを提供する。
【0008】
US−A−4880889(特許文献4)は、10〜60%のOH官能化モノマー、5〜25%の少なくとも2個のオレフィン系不飽和二重結合を有するモノマー、および、15〜82%のさらなる一官能性モノマーを含む、予備架橋された可溶性のポリマーを記載している。このポリマー組成物は、>0.5%の重合調節剤を用い、非ゲル化コポリマーを製造するように、約50%という低い重合固形分で有機溶剤中において溶液重合法により製造される。ポリマーは架橋コーティングにおいて使用され、OH基はメラミン−ホルムアルデヒド架橋剤と反応する。US−A−4988760(特許文献5)およびUS−A−5115064(特許文献6)はカルボキシルおよびイソシアネートを含む異なる架橋性基を有する官能化モノマーを含む同様の組成物を示している。
【0009】
US−A−5227432(特許文献7)は、5〜60%の官能化モノマー、3〜30%の少なくとも2個のオレフィン系不飽和二重結合を有するモノマーおよび他の一官能性モノマーを含むモノマー混合物を重合させることにより製造されたアクリレートコポリマーを、次の工程において、このポリマーの官能基と反応することができる官能基を有しかつ少なくとも1個のエチレン系不飽和重合性二重結合を有する化合物と反応させる、遊離二重結合を有するアクリレートコポリマーを製造するための方法を記載している。これは、第一の工程で官能基を有するポリマーを製造し、その後、例えば、エステル化反応において、エチレン系不飽和二重結合を含む化合物を上記の官能基と反応させる点で2工程プロセスである。
【0010】
WO98/27121(特許文献8)は、エステル化可能な官能基を有するコポリマーを生成させ、次に、この官能基を、重合可能なアクリレートもしくはメタクリレート基を有する化合物によってエステル化させ、このエステル化反応がカルボジイミド化合物の存在下に行われる、2工程プロセスによって製造されるアクリレート官能化アクリレートコポリマーを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】英国特許第2294467号明細書(GB−A−2294467)
【特許文献2】米国特許第5767211号明細書(US−A−5,767,211)
【特許文献3】欧州特許出願公開第103199号明細書(EP−A−103199)
【特許文献4】米国特許第4880889号明細書(US−A−4880889)
【特許文献5】米国特許第4988760号明細書(US−A−4988760)
【特許文献6】米国特許第5115064号明細書(US−A−5115064)
【特許文献7】米国特許第5227432号明細書(US−A−5227432)
【特許文献8】国際公開第98/27121号パンフレット(WO98/27121)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
それ故、比較的に簡単な方法で、アクリレートもしくはメタクリレート官能化ポリマーを製造するための方法が要求されている。
本発明の目的は、少なくとも1個の重合性二重結合を含む枝分かれポリマーおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によると、(i)1分子当たり1個の重合性二重結合を有する一官能性モノマーと、一官能性モノマーの重量の0.3〜100%w/wの、1分子当たり少なくとも2個の重合性二重結合を有する多官能性モノマーと、一官能性モノマーの重量の0.0001〜50%w/wの連鎖移動剤と、所望により、ラジカル重合開始剤とを混合すること、
(ii)この混合物を反応させてポリマーを生成させること、
(iii)混合物中に存在する重合性二重結合の80〜98%が反応して、ポリマーを生成したときに重合反応を停止させること、
を含む、少なくとも1個の重合性二重結合を含むポリマーの製造方法が提供される。
【0014】
本発明の第二の態様において、i)1分子当たり1個の重合性二重結合を有する一官能性モノマー、
ii)上記の一官能性モノマーの重量の0.3〜100%w/wの、1分子当たり少なくとも2個の重合性二重結合を有する多官能性モノマー、
iii)上記の一官能性モノマーの重量の0.0001〜50%w/wの連鎖移動剤、および、所望により、
iv)ラジカル重合開始剤、
の残基からなる、少なくとも1個の重合性二重結合を含むポリマーを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の枝分かれポリマーは、通常、類似の線状ポリマーを溶解する溶剤中に可溶性であるが、枝分かれポリマーの溶液が、通常、同様の分子量の対応する線状ポリマーの同濃度の溶液よりも粘性が低いという利点を有する。それ故、枝分かれポリマーの溶液は特に高い固形分含量での取扱がより容易であり、そして線状ポリマーの溶液よりも少量の溶剤を用いて製造することができる。
そして、本発明の重合性ポリマー、例えば、(メタ)アクリレート官能化ポリマーは、ペイント、透明ワニス、インクおよび接着剤を含む多種の表面コーティング組成物の成分として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
このようなポリマーは、それ故、例えば、従来技術の2工程プロセスによりアクリレート官能化ポリマーを製造することで必要とされる後重合官能化反応の残基を含まない。しかしながら、官能性ペンダント基、例えば、OH、カルボキシルまたはアミンを有するモノマーを用いて本発明の方法により(メタ)アクリレート官能化ポリマーを製造するときには、必要ならば、このポリマーはその官能基の後重合反応に付されてもよい。
【0017】
(メタ)アクリレートとは、メタクリレート、アクリレートまたは両方のタイプの基を意味する。
【0018】
重量%での全ての量は一官能性モノマーの合計重量を基準として計算される。例えば、もし、100gの一官能性モノマー(異なる一官能性モノマーの混合物であってもよい)を使用するならば、5重量%の多官能性モノマーはこの基準で5gである。
【0019】
単純化のために、1分子当たり1個の重合性二重結合を有するモノマーは以下において、一官能性モノマー(MFM)として参照し、そして1分子当たり少なくとも2個の重合性二重結合を有するモノマーは多官能性モノマー(PFM)として参照する。少なくとも1個の重合性二重結合を含むポリマーとは、このポリマーが製造された後に、さらなる重合反応に参加することができる二重結合を有するポリマーを意味する。この重合性二重結合は、ペンダントであっても、または、末端にあってもよいが、好ましくは、このポリマーは少なくとも1個の重合性二重結合をペンダント基に含む。少なくとも1個の重合性二重結合を含むポリマーは、以下において、重合性ポリマーとして参照する。
【0020】
一官能性モノマーは、メタクリレート、アクリレート、スチレンおよびその誘導体(スチレニックス)、酢酸ビニル、無水マレイン酸、イタコン酸、N−アルキル(アリール)マレイミドおよびN−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミドおよびアクリロニトリルのようなフリーラジカル機構によって重合されうるモノマーを含むことができる。1種より多くの一官能性モノマーの混合物を使用して、ランダム、交互、ブロックもしくはグラフトコポリマーを製造することができる。好ましい一官能性モノマーはアクリレートおよびメタクリレートを含み、即ち、好ましくは、二重結合はアクリレートメタクリレート化合物のビニル二重結合である。
【0021】
適切な一官能性(メタ)アクリレートモノマーの例は、低級アルキル、即ち、C 〜C20アルキル(メタ)アクリレート、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレートまたはドデシル(メタ)アクリレートを含む。さらに、環式アルキルモノマー種を用いてもよく、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートおよびジシクロペンテニル(メタ)アクリレートを用いてもよい。官能性モノマー、例えば、メタクリル酸およびアクリル酸、ヒドロキシアルキルメタクリレート、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートおよびジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートも用いられてよい。(メタ)アクリレートとは、メタクリレートまたは類似のアクリレートが使用されてよいことを意味する。
【0022】
多官能性モノマーとは、1分子当たり少なくとも2個の重合性二重結合を有するモノマーを意味する。用語「多官能性モノマー」には、フリーラジカル機構によって重合可能な二重結合を少なくとも2個有する反応性オリゴマーまたは反応性ポリマーまたはプレポリマーも含まれる。適切な二官能性モノマーの例は、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンおよびその置換類似体を含む。三官能性の例は、トリプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレートを含む。四官能性モノマー、例えば、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、六官能性モノマー、例えば、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレートも使用されてよい。所望により、多官能性モノマーは1種より多くの多官能性化合物の混合物を含むことができる。
【0023】
重合性ポリマーは、多官能性モノマーとして、または、そのうちの1つとして1分子当たり少なくとも2個の重合性二重結合を有する反応性オリゴマーまたは反応性ポリマーまたはプレポリマーを用いて製造できる。用語「多官能性モノマー」には、このような官能性ポリマーおよびオリゴマーが含まれる。というのは、重合性二重結合、好ましくは(メタ)アクリレート基は、単純な多官能性モノマーと同様に、反応性オリゴマーまたは反応性ポリマーを、成長しているポリマー分子へと重合させることができるからである。典型的な反応性オリゴマーは、制限するわけではないが、エポキシ−(メタ)アクリレート、ポリエーテル−(メタ)アクリレート、ポリエステル−(メタ)アクリレートおよびウレタン−(メタ)アクリレートを含む。典型的な反応性ポリマーは、付加もしくは縮合ポリマー、例えば、ペンダントの重合性(メタ)アクリレート基を含むスチレンもしくはアクリルコポリマーまたは不飽和ポリエステルを含む。このオリゴマーもしくは反応性ポリマーの分子量範囲は、500〜500,000g/モルで変わることができる。多官能性モノマーの少なくとも1部を提供するために、このような反応性オリゴマーもしくはポリマーを使用するときには、反応プロセス中に含まれる多官能性材料の量は、通常、このような材料の分子量がより高いことから、単純なモノマーを使用するときよりもずっと多量である。
【0024】
多官能性モノマーの存在量は合計の初期の一官能性モノマーの濃度の100重量%までの量であってよい。好ましくは、多官能性モノマーの存在量は、多官能性モノマーが単純なモノマーであり、即ち、反応性オリゴマーもしくはポリマーでないときには、一官能性モノマーを基準として0.3〜25%、例えば、0.5〜10%である。反応性ポリマーもしくはオリゴマーが使用されるときには、濃度は約50%w/w以下またはそれ以上までで変わることができる。
【0025】
連鎖移動剤は、一官能性および多官能性チオールを含むチオール化合物から選ばれてよい。一官能性チオールは、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、アルキルチオグリコレート、例えば、2−エチルヘキシルチオグリコレートもしくはオクチルチオグリコレート、メルカプトエタノール、メルカプトウンデカン酸、チオ乳酸、チオ酪酸を含む。多官能性チオールは、三官能性化合物、例えば、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、四官能性化合物、例えば、ペンタエリトリトールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールテトラチオグリコレート、ペンタエリトリトールテトラチオラクテート、ペンタエリトリトールテトラチオブチレート、六官能性化合物、例えば、ジペンタエリトリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリトリトールヘキサチオグリコレート、八官能性チオール、例えば、トリペンタエリトリトールオクタ(3−メルカプトプロピオネート)、トリペンタエリトリトールオクタチオグリコレートを含む。多官能性チオールの使用はポリマー中に枝分かれ度を増加させるのに有用である。所望により、連鎖移動剤は1つのタイプより多くのタイプの化合物の混合物を含んでよい。
【0026】
連鎖移動剤の存在量は、合計の初期の一官能性モノマーの濃度の50重量%までの量であってよい。第一の態様において、連鎖移動剤の存在量は一官能性モノマーを基準として0.1〜20%w/w、例えば、0.5〜10%w/wである。重合性ポリマーは、実質的な量の不溶性の架橋ポリマーを生成することを防止するために適切な量の連鎖移動剤を用いて製造される。製造されるポリマーの多くは、モノマーからポリマーへの転化率が高くても可溶性である。少量の架橋したポリマーが生成するかもしれないが、反応条件および連鎖移動剤の量は、生成される架橋ポリマーの量が好ましくは<10%(w/w)、より好ましくは<5%(w/w)、より好ましくは<0.25%(w/w)、そして最適には0%(w/w)であるように選択されるべきである。連鎖移動剤として第二級メルカプタンを使用すると、架橋ポリマーの量が低下し、そして得られる枝分かれポリマーの溶液中のミクロゲルの形成が抑制されることを発見した。それ故、特定の重合系では、第二級メルカプタン連鎖移動剤の使用は好ましいことがある。第二級メルカプタンを含む連鎖移動剤は、重合がバルク重合法または懸濁重合法において行われるときに特に好ましい。
【0027】
別の連鎖移動剤としては、ビニルモノマーの従来のラジカル重合において分子量を抑制することが知られているどの化学種であってもよい。例としては、スルフィド、ジスルフィド、ハロゲン含有種が含まれる。また、触媒性連鎖移動剤、例えば、コバルト錯体、例えば、コバルト(II)キレート、例えば、コバルトポルフィリン化合物は本発明に有用な連鎖移動剤である。適切なコバルトキレートは当業界において知られており、そしてWO98/04603に記載されている。特に適切な化合物は、CoBFとしても知られているビス(ホウ素ジフルオロジメチルグリオキシメート)コバルテート(II)である。触媒性連鎖移動剤は従来のチオール連鎖移動剤と比較して、比較的に低い濃度で使用されてよく、例えば、<0.5重量%、および<0.1重量%で使用されてよい。というのは、これは、低い濃度で非常に有効であるからである。コバルト錯体を基礎とする触媒性連鎖移動剤化合物は、本発明の重合法において、モノマーを基準として0.05%(500ppmw)未満、例えば、0.0001〜0.01%w(1〜100ppmw)の濃度で非常に有効に使用でき、可溶性の枝分かれポリマーを提供することを驚くべきことに発見した。
【0028】
モノマーの重合は熱開始剤、例えば、アゾ化合物、過酸化物またはペルオキシエステルの熱誘導分解によるようなフリーラジカルを発生させる適切な方法によって開始できる。それ故、重合混合物は好ましくは重合開始剤を含み、重合開始剤は既知のもので、そしてラジカル重合反応に従来から使用されているものであってよく、例えば、アゾ開始剤、例えば、アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(4−シアノ吉草酸)、過酸化物、例えば、ジラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、ジベンゾイルペルオキシド、クミルペルオキシド、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシジエチルアセテートおよびt−ブチルペルオキシベンゾエートである。
【0029】
モノマー混合物の重合は、ラジカル重合法のいずれかを用いて行ってよく、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法およびバルク重合法の全てが使用できる。本発明の重合性ポリマーのある用途では、材料が固体状態であることが要求される。これらの用途では、非溶液法、例えば、懸濁重合またはバルク重合によってポリマーを製造することが有利であろう。可溶性のアクリレート官能化枝分かれポリマーを非溶液法において多官能性モノマーからうまく生成させることができることは驚くべきことである。というのは、ゲルの形成が予期されるであろうからである。例えば、US−A−4880889は、約50%という比較的に低い固形分で溶液中で重合を行うことを含む、特殊な反応条件が、非ゲル化ポリマーを得るために要求されることを教示している。
【0030】
それ故、本発明のさらなる態様において、(i)1分子当たり1個の重合性二重結合を有する一官能性モノマーと、この一官能性モノマーの重量の0.3〜100%w/wの、1分子当たり少なくとも2個の重合性二重結合を有する多官能性モノマーと、一官能性モノマーの重量の0.0001〜50%の連鎖移動剤とを混合すること、
(ii)分散剤の存在下に、モノマーが比較的に不溶性である連続相中の不連続相として、得られる混合物を分散させること、この分散剤は連続相中の不連続相としてモノマー混合物を維持することができる、
(iii)このモノマー混合物の重合を開始させること、
iii)モノマーを反応させてポリマーを生成させることができるために十分な時間、反応温度において連続相中のモノマーの分散を維持すること、
iv)混合物中に存在する重合性(メタ)アクリレート基の<99%が反応してポリマーを生成したときに重合反応を停止させること、および、
v)次に、ポリマーを含有する分散相を連続相から分離すること、
を含む、少なくとも1個の重合性二重結合を含むポリマーの製造方法を提供する。
【0031】
重合性ポリマーは、好ましくは、ペンダント(メタ)アクリレート基を含む。
【0032】
連続相は、通常、水である。適切な分散剤は当業界においてよく知られており、その中でもとりわけ、変性セルロースポリマー(例えば、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシプロピルメチル)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、これらの酸の部分中和および完全中和物、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアルコール/ビニルアセテート)コポリマーを含む。連続相中のモノマーの分散体は、通常、重合プロセス全体を通して高速で攪拌されて、それにより、分散体の安定性を維持し、そして連続相と分散ドロップレットまたは粒子との間の良好な熱伝導を可能にする。重合反応が進行するにつれて、分散相中のモノマーは反応して、分散相内に保持されたポリマーを生成する。反応温度は使用されるモノマーおよび開始剤のタイプによって変わることがあり、通常、20〜150℃であり、例えば、50〜120℃である。適切な反応温度は当業界においてよく知られている。
【0033】
あまり好ましくはないが、バルク重合法を用いてもよい。通常、バルク重合において、モノマー混合物は開始剤および連鎖移動剤とともに、シールされた容器、例えば、バッグ中に配置され、そして所望の転化率を達成するまで50〜150℃の間の適切な重合温度に加熱される。通常、温度は、反応が進行しているときに、重合速度を制御するために、反応時間を通して変化される。このような方法はアクリルポリマーを製造する当業界において知られている。
【0034】
重合は、完了する前に、即ち、100%転化率となる前に停止され、そしてこのようにして、重合性ポリマー、例えば、アクリレート官能性を有する枝分かれポリマーを製造することができる。このようなポリマーは、その後、さらに反応され、単離されおよび/または硬化性組成物へと配合され、そしてその後、他の重合性もしくは架橋性の化学種と反応されて、硬化したまたは架橋したポリマー材料を生成する。好ましくは、重合反応は80〜98%の転化率で停止され、より好ましくは85〜97%の転化率で停止される。
【0035】
重合反応は、モノマーが完全にポリマーへと転化されてしまう前に、反応混合物を冷却するかまたは反応混合物に重合抑制剤を添加することにより停止できる。適切な抑制剤は、(所望により置換されていてよい)ヒドロキノン、例えば、メチルヒドロキノン、または、ビニル重合に対して抑制効果があることが知られている他の種、例えば、t−ブチルカテコール、置換フェノール、例えば、2,6−t−ブチル(4−ノニルフェノール)、フェノチアジンおよび置換類似体を含む。
【0036】
または、存在する全てのモノマーが重合する前に、開始剤が消費され、即ち、重合を開始するフリーラジカルの有効量(availability)が減ってそして無くなるように、開始剤のタイプ、開始剤の濃度、重合温度および重合時間の組み合わせを選択することにより、モノマーの完全な転化の前に重合を停止することができる。それ故、重合を開始するためのフリーラジカルの有効量がモノマー混合物中の全ての重合性基をポリマーへと転化させるためには不十分であるように、開始剤のタイプ、開始剤の濃度、重合温度および重合時間の組み合わせを使用して、重合反応を開始する。
【0037】
従来の重合反応において、モノマーを反応させ、適切な時間内に転化が完了するために十分なフリーラジカルを供給することを確保するように開始剤を選択する。ときどき、望ましい重合速度を提供するように開始剤の混合物が選択される。熱開始剤の活性は、しばしば、10時間半減期温度として測定されそして規定される。熱開始剤は重合温度で適切な半減期を有するように選択される。本発明の方法において、好ましいアプローチは、重合温度において比較的に短い半減期を有する1種の開始剤または開始剤の組み合わせを選択することである。短い半減期、即ち、「高速」開始剤の選択は当業界においてよく知られている。
【0038】
熱開始剤の半減期(t1/2)は、与えられた温度において、初期の開始剤含有率が50%にまで低減するために必要な時間であり、そしてモノクロロベンゼン中の開始剤の希釈溶液の示差走査熱量測定により決定できる。開始剤の半減期および10時間半減期温度は、通常、製造者の文献、例えば、Akzo Nobelの¨Initiators for Polymer Production - Product Catalog¨ から容易に入手可能である。AIBNは10時間半減期温度が64℃である。
【0039】
AIBNは、75℃の重合温度で(メタ)アクリレートモノマーをアクリルポリマーに高い転化率で転化させるのに適切である。この重合温度では、10時間半減期温度が64℃未満である、より高速の開始剤が本発明の方法のために好ましい。適切な高速開始剤は、10時間半減期温度が52℃である2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)および10時間半減期温度が46℃であるt−ブチルペルオキシネオデカノエートを含む。
【0040】
または、重合温度におけるモノマーの完全な転化を行うためには不十分であるように開始剤の量が選択されてよい。
【0041】
本発明の重合性ポリマー、例えば、(メタ)アクリレート官能化ポリマーは、ペイント、透明ワニス、インクおよび接着剤を含む多種の表面コーティング組成物の成分として有用である。重合性ポリマーは、重合性ポリマーを含むコーティングの成分が、放射線(例えば、UV、光、電子線、赤外線または熱)の存在下に重合する重合性液体中に溶解しまたは分散している、放射線硬化性配合物中の成分として特に有用であることがある。このようなコーティングは、放射線の不在下に比較的に長期間にわたって架橋または重合することがある。コーティング内での重合性ポリマーの硬化または架橋は優れた耐溶剤性、硬度および耐収縮性を付与することができる。このようなポリマーを含有するコーティングは、改良された付着性およびより速い乾燥または硬化速度をも示すことができる。本発明の方法により製造される重合性ポリマーは、本質的に枝分かれしており、そしてこの特性は同等の線状ポリマーと比較してモノマーもしくは溶剤中での溶解度を改良することができる。このようなコーティング配合物の用途のために、重合性ポリマー、例えば、(メタ)アクリレート官能化ポリマーは、重合プロセスから残存モノマー(もしあれば)を除去することなく供給されてよい。というのは、残存モノマーはコーティング配合物の成分を形成する重合性液体と同一であるかまたは相溶性であることができるからである。例えば、(メタ)アクリレート官能化ポリマーを一官能性モノマーとしてMMAを用いて製造したときに、ある量の未反応MMAを含む、得られるポリマーは、残存モノマーを除去しなくても、MMAをベースとするコーティング配合物中における使用に適切である。
【0042】
官能性ポリマーは、希釈剤の使用を必要としない粉体コーティングおよびホットメルト接着剤(従来型および放射線硬化型)のようなコーティング用途においても有用である。表面コーティングの用途に加えて、本発明の枝分かれポリマーは、射出成形、圧縮成形または押出成形によるバルクポリマー製品の製造のために有用である。重合性ポリマーは、アクリルポリマーが現場で硬化される他の用途、例えば、反応性床材のためのモノマーインポリマーシロップ、キッチンシンク、ワークトップ、アクリルシート、シャワートレーのような成形品のための充填剤入り成形用組成物、硬化性セメント、フォトレジスト、接着剤(感圧接着剤を含む)等における使用のための組成物の成分としても使用できる。本発明の重合性の枝分かれコポリマーは、最終使用において、単独で使用されてもまたは他のポリマーと配合されてもよい。
【0043】
本発明の別の態様において、i)1分子当たり1個の重合性(メタ)アクリレート基を有するモノマーと、
ii)前記1分子当たり1個の重合性(メタ)アクリレート基を有するモノマーの重量の0.3〜100%w/wの、1分子当たり少なくとも2個の重合性(メタ)アクリレート基を有するモノマーと、
iii)前記1分子当たり1個の重合性(メタ)アクリレート基を有するモノマーの重量の0.0001〜50%w/wの連鎖移動剤と、所望により、
iv)ラジカル重合開始剤、
の残基からなり、少なくとも1個の重合性(メタ)アクリレート基を含むポリマーの残基を含む、枝分かれ重合性ポリマーを含む、表面コーティング組成物が提供される。
【0044】
表面コーティング組成物は、通常、モノマー、官能化オリゴマーおよびコポリマー等の重合性種、および、他の化合物、例えば、架橋性種、ポリマー、硬化剤、着色剤、溶剤、分散助剤、潤滑剤、加工助剤、充填剤、キャリア流体および強化剤、可塑剤、柔軟剤、安定剤、香料および適宜他の成分を含んでよい。
【0045】
本発明のさらなる態様において、1)i)1分子当たり1個の重合性(メタ)アクリレート基を有するモノマーと、
ii)前記1分子当たり1個の重合性(メタ)アクリレート基を有するモノマーの重量の0.3〜100%w/wの、1分子当たり少なくとも2個の重合性(メタ)アクリレート基を有するモノマーと、
iii)前記1分子当たり1個の重合性(メタ)アクリレート基を有するモノマーの重量の0.0001〜50%w/wの連鎖移動剤と、所望により、
iv)ラジカル重合開始剤、の残基からなる、枝分かれ重合性ポリマー、および、所望により、
2)モノマー、官能化オリゴマーおよびコポリマー、並びに、他の化合物、例えば、架橋性種、ポリマー、硬化剤、着色剤、溶剤、分散助剤、潤滑剤、加工助剤、充填剤、キャリア流体および強化剤、可塑剤、柔軟剤、安定剤および香料、を含むポリマー製品またはコーティングが提供される。
【0046】
アクリレート官能化枝分かれポリマーの重量平均分子量(Mw)は好ましくは2,000〜500,000である。特定の用途において、枝分かれポリマーの溶解が要求される場合には、より低い分子量、例えば、2,000〜200,000の範囲の分子量が好ましいであろう。
【実施例】
【0047】
次の実施例を参照して、本発明をさらに説明する。全ての実施例において、MFMは一官能性モノマーを指し、PFMは多官能性モノマーを指し、CTAは連鎖移動剤を指す。重合に使用される材料の量は、一官能性モノマーの合計濃度に対するw/wとして計算される。重量%として記載されている、使用される多官能性モノマー、連鎖移動剤および開始剤の重量は、全ての一官能性モノマーの重量の百分率として計算される。例えば、3%のPFMおよび4%のCTAを含むMFMの重合では、3gのPFMおよび4gのCTAが100gのMFMに添加される。
【0048】
懸濁重合によるポリマーの製造
連鎖移動剤、例えば、ドデシルメルカプタン(DDM)、分散剤(ヒドロキシエチルセルロース、モノマーに対して1〜2重量%)およびラジカル開始剤(AIBN、モノマーに対して1重量%)の存在下に、脱イオン水中において、一官能性モノマーおよび多官能性モノマーを含むモノマー混合物の懸濁重合によってポリマーを製造した。典型的な製造において、2000mlの脱イオン水および約4gのヒドロキシエチルセルロース(HEC)を5000mlのバッフル付きフラスコに添加した。この水を通して窒素を30分間パージし、溶解した酸素を除去し、そして1400rpmに設定したステンレススチールスターラーでフラスコを攪拌した。CTAをモノマー混合物(500gのMFMと、必要量のPFMと混合したもの)中に溶解させ、その後、反応フラスコに添加し、次いで、AIBNを添加した。反応フラスコをフルパワーで75℃に加熱し、その後、加熱を抑制した。発熱が静まり始めるまで反応を進行させた。最大の重合温度は、典型的には90℃であった。フラスコを1時間熱処理した。フラスコおよびその内容分を空気で40℃にまで冷却し、そして内容分を遠心分離により脱水した。ポリマーを40℃の炉内または流動床乾燥機内で乾燥した。
【0049】
この基本懸濁重合法を以下の実施例に記載される通りに変更し、完全な転化の前に重合を停止し、重合性ポリマーを提供した。
【0050】
溶液重合によるポリマーの製造
トルエン中にMMAを溶解させ(33%w/w)、選択された濃度の多官能性モノマー(PFM)および連鎖移動剤(CTA)を添加し、そしてAIBN(モノマーに対して1重量%)を用いて重合を開始させることにより溶液重合によってポリマーを製造した。凝縮器を用いて、窒素下にオイルバス中に80℃で重合を行った。下記に記載される通り、冷却しそして抑制剤を添加することにより重合を停止させた。
【0051】
GPCによる特性化
混合ゲルコラムを使用し、そして検定のための狭い分子量分布のPMMA標準品を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって分子量を測定した。クロロホルムを流速1ml/分で移動相とし、そして赤外線ディテクターとして使用した。重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および多分散(Mw/Mn)を決定した。
【0052】
溶液粘度の決定
トルエン中のポリマーの30%(w/w)溶液の粘度を、ブルックフィールド粘度計を用いて、25℃の温度でLV2スピンドルを用いて測定した。
【0053】
MMAはメチルメタクリレートであり、
BMAはn−ブチルメタクリレートであり、
EMAはエチルメタクリレートであり、
MAAはメタクリル酸であり、
TPGDAはトリプロピレングリコールジアクリレートであり、
TMPTAはトリメチロールプロパントリアクリレートであり、
PETAはペンタエリトリトールテトラアクリレートであり、
DPEHAはジペンタエリトリトールヘキサアクリレートであり、
EGDMAはエチレングリコールジメタクリレートであり、
TRIMPはトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)であり、
PETMPはペンタエリトリトールテトラメルカプトプロピオネートであり、
DPEHTGはジペンタエリトリトールヘキサチオグリコレートであり、
DDMはドデシルメルカプタンである。
【0054】
例1〜5
DDMの存在下にMMAおよびTPGDAの懸濁重合によってポリマーを製造した。
90℃での43分間の重合時間により、モノマーの99%転化率を達成した。より短い重合時間で抑制剤を添加することにより、ペンダントのアクリレート基を有するポリマーを得た。このことは、一官能性モノマーに対する0.05%に相当するヒドロキノンの2%水溶液を添加することにより行った。サンプルを空気によって10分間急速に40℃まで冷却した。得られたポリマーを、次にNMR分光器により分析し、ペンダントのアクリレート基の%を計算した。GPCによって分子量を決定した。アクリレート%は、取り込まれたTPGDA中のアクリレート基の合計に対する未反応のペンダントのアクリレート基の分率としての数である。
【0055】
【表1】

【0056】
例6〜21:アクリレート官能化ポリマーの透明ワニス中での使用
アクリレート官能化ポリマーを溶液重合により製造した。水浴から重合物を取り出し、ポリマーに対して0.05%wのTopanol (商標)(Great Lakes Chemicals) 抑制剤を添加することにより重合を停止させ、モノマーの約85〜90%転化率のポリマーとなった。全ての重合物は、一官能性モノマーとしてのMMAを基準として、多官能性モノマーを表2および3に示す。対照の線状ポリマー(例13)は、多官能性モノマーの不在下にMMAを重合することにより製造した。全てのポリマーをヘキサン中の沈殿により単離し、次いで、真空炉中において50℃で乾燥した。
【0057】
アクリレート官能化ポリマー、モノマーとしてトリプロピレングリコールジアクリレート、およびEbecryl (商標)605 (UCB Chemicals) エポキシアクリレートオリゴマーまたはEbecryl (商標)4858ウレタンアクリレートオリゴマーを用いて透明ワニスコーティング組成物を製造した。Darocur (商標)1173 (Ciba-Geigy) をアミン相乗剤のEbecryl(商標)P115とともに光開始剤として使用した。コーティング配合物は以下の通りであった。
wt%
アクリレート官能化ポリマー 15
TPGDA 50
オリゴマー 25
Darocur 1173 5
Ebecryl P115 5
【0058】
配合物を紙基材上に厚さ12μmでコーティングした。その後、Primarc UV硬化装置を用いて、高圧水銀ランプ源を80W.cm−2の出力で用いて、コーティングを硬化した。表面の不粘着性フィルムが得られる最高速度を調べることにより最適硬化速度を評価した。その後、硬化したコーティングを耐溶剤性および光沢に関して試験した。耐溶剤性はメチルエチルケトン(MEK)に対して決定した。硬化したコーティングをMEKを含浸した布で擦り、コーティングが不良となるときの往復摩擦回数を記録した。結果を表2および3に示し、そして、アクリレート官能化枝分かれポリマーを含有するコーティングは線状の非官能化ポリマーを含むコーティングと同様の硬化速度を有し、そして優れた耐溶剤性を有することを示す。
【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
例22〜25
例1〜5と同様に、懸濁重合によりポリマーを製造した。分子量をGPCにより決定した。ポリマーをTPGDAモノマー中に30%w/wで溶解させ、そして、得られた溶液を、黒色顔料をベースとする硬化性インク、エポキシアクリレートオリゴマー、TPGDAモノマーおよび光開始剤とともに50/50で混合した。インクをワイヤーバーでコーティングし、約20μmのコーティング厚さとした。硬化速度および耐溶剤性を例6〜21に記載されるように測定した。インクの粘度をブルックフィールド粘度計により25℃で測定した。結果およびポリマー組成を表4に示す。
【0062】
【表4】

【0063】
例26:高速開始剤
一般法に記載されるように4wt%のDDMの存在下にMMAおよび3%TPGDAの懸濁重合によりポリマーを製造したが、AIBNの代わりに等モル量のVazo 52 を用いた。重合には抑制剤を添加しなかった。Vazo 52 は2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を基礎とする市販のラジカル開始剤である。得られたポリマーは、Mn=6,600g/モルであり、Mw=30,050g/モルであり、残存モノマーは4%であり、そしてポリマーは未反応のアクリレート基を含んでいた。
【0064】
例27:バルク重合
MMA、3%のTPGDA、4%のDDMおよび0.5%のラウロイルペルオキシドを計量し、ナイロンバッグに移し、空気の気泡が存在しないようにシールした。その後、これを炉内に入れ、40時間にわたって段階的に55〜120℃で操作するプログラム化された温度サイクルを用いた。得られたポリマーは13%w/wの残存MMAを有し、Mn=7,050であり、Mw=42,700であり、そして残存アクリレート官能基を含んでいた。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の枝分かれポリマーは、例えば、溶剤型のコーティングおよびインクへの有用な添加剤であり、そして多くの他の用途もある。さらに、枝分かれポリマーは、また、類似の線状ポリマーよりも低い溶融粘度を有し、そして射出成形、圧縮成形、押出成形または粉体コーティングにおける溶融加工性を改良するために有用である。
そして、本発明の重合性ポリマー、例えば、(メタ)アクリレート官能化ポリマーは、ペイント、透明ワニス、インクおよび接着剤を含む多種の表面コーティング組成物の成分として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)1分子当たり1個の重合性二重結合を有する少なくとも1種の一官能性モノマーと、前記一官能性モノマーの重量の0.3〜100%w/wの、1分子当たり少なくとも2個の重合性二重結合を有する多官能性モノマー、前記一官能性モノマーの重量の0.0001〜50%w/wの連鎖移動剤、および、所望により、ラジカル重合開始剤、とを混合すること、
(ii)この混合物を反応させてポリマーを生成させること、
(iii)混合物中に存在する重合性二重結合の80〜98%が反応してポリマーを生成したときに重合反応を停止すること、
を含む、少なくとも1個の重合性二重結合を含む枝分かれポリマーの製造方法。
【請求項2】
前記一官能性モノマーはメタクリレートおよびアクリレート、スチレンおよびその誘導体、酢酸ビニル、無水マレイン酸、イタコン酸、N−アルキル(アリール)マレイミドおよびN−ビニルピロリドンから選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記一官能性モノマーはメチルメタクリレート、ブチルメタクリレートおよび/またはメタクリル酸のうちの少なくともいずれか1種を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記一官能性モノマーは1種より多くの一官能性モノマーの混合物を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記多官能性モノマーは、二官能性(メタ)アクリレート、三官能性(メタ)アクリレート、四官能性(メタ)アクリレート、五官能性(メタ)アクリレート、六官能性(メタ)アクリレート、1分子当たり少なくとも2個の重合性(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーもしくはポリマー、およびそれらの混合物から選ばれる、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記連鎖移動剤は一官能性チオールおよび多官能性チオールから選ばれる、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
反応混合物中に重合抑制剤を添加することおよび/または反応混合物を冷却することにより反応を停止する、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
重合を開始するためのフリーラジカルの有効量がモノマー混合物中の全ての重合性基をポリマーに転化させるためには不十分であるように、開始剤のタイプ、開始剤の濃度、重合温度および重合時間の組み合わせを使用して、重合反応を開始させる、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
10時間半減期温度が64℃未満である開始剤を使用して、70〜80℃の範囲の温度で重合を行う、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記開始剤は2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)およびt−ブチルペルオキシネオデカノエートから選ばれる、請求項9記載の方法。
【請求項11】
i)1分子当たり1個の重合性二重結合を有する一官能性モノマー、
ii)前記一官能性モノマーの重量の0.3〜100%w/wの、1分子当たり少なくとも2個の重合性二重結合を有する多官能性モノマー、
iii)前記一官能性モノマーの重量の0.0001〜50%w/wの連鎖移動剤、および、所望により、
iv)ラジカル重合開始剤、
の残基からなり、少なくとも1個の重合性二重結合を含む枝分かれポリマー。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項記載の方法によって製造される、請求項11記載のポリマー。
【請求項13】
請求項11または12記載のポリマーを含み、所望により、モノマー、官能化されたオリゴマーおよびコポリマー、並びに、架橋性種、ポリマー、硬化剤、着色剤、溶剤、分散助剤、潤滑剤、加工助剤、充填剤、キャリア流体および強化剤、可塑剤、柔軟剤、安定剤および香料からなる群から選ばれた他の化合物、から選ばれるさらなる成分を含む、コーティング組成物。
【請求項14】
請求項11または12記載のポリマーを含む、成形されたポリマー製品。
【請求項15】
コーティング配合物、フォトレジスト、成形用組成物、モノマーシロップ中の硬化性ポリマー、成形されたキッチンシンク、ワークトップ、アクリルシート、シャワートレー、硬化性セメントまたは接着剤の成分としての請求項11または12記載のポリマーの使用。

【公開番号】特開2009−102663(P2009−102663A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30528(P2009−30528)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【分割の表示】特願2000−535686(P2000−535686)の分割
【原出願日】平成11年3月12日(1999.3.12)
【出願人】(500021457)ルーサイト インターナショナル ユーケー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】