説明

ポリ乳酸樹脂組成物

【課題】ポリ乳酸の結晶化速度、結晶化度を向上させることが可能で、かつ優れた透明性を保持し、耐ブリード性、耐衝撃性、耐熱性、成形加工性にも優れるポリ乳酸樹脂組成物、ならびに当該樹脂組成物を用いたポリ乳酸樹脂成形体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸(A)と、ブロック共重合体(B)と、特定構造のトリメシン酸トリアミド化合物(C)とを含有するポリ乳酸樹脂組成物であって、前記ブロック共重合体(B)が、ポリアルキレンエーテル構造単位(D)とポリヒドロキシカルボン酸構造単位(E)とを有するブロック共重合体であることを特徴とするポリ乳酸樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、透明性、耐衝撃性、成形加工性に優れた食品包装等の分野で使用可能なポリ乳酸樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸は一般にトウモロコシ等の植物を出発原料として大量生産が可能で、かつ優れた透明性、及び生分解性等を有することから、環境調和型の成形用樹脂として注目されている。また、ポリ乳酸は、いまや食品包装分野でのスタンダードとなりつつあるポリオレフィン等衛生協議会の定めるポジティブリストに登録されたことで多方面での用途展開が期待されている。
【0003】
一方、ポリ乳酸は耐衝撃性、耐熱性、結晶化速度遅いといった性能面での欠点を有しており、例えば包装容器では、輸送・保管の際の変形、熱殺菌や電子レンジ用途等の高温使用分野への展開、成形サイクル性等といった課題があり、ポリ乳酸の市場展開を進めるうえで大きな障害となっている。したがって、産業界からはポリ乳酸固有の優れた剛性等を損なうことなく、前記のような欠点を改善することが強く求められている。
【0004】
前記ポリ乳酸の耐熱性を改善する方法の1つとして、ポリ乳酸の結晶化を高めることによって向上させることが可能である。すなわち、ポリ乳酸の結晶化速度を高めることによって高い結晶化度を有することによって耐熱性を向上させることが期待できる。
【0005】
一般的にポリ乳酸を結晶化させる場合、成形加工時に金型温度をポリ乳酸の結晶化ピーク温度近辺、すなわち90℃以上、特に100〜140℃の範囲でセットして(高温設定では結晶化速度はある程度高められるものの成形品が軟化してしまう)金型での保持を長時間行うか、成形後に成形品をアニール処理して結晶化させる手法が挙げられる。しかし、成形時における長時間の冷却工程は、実用的でなく、かつ結晶化が不十分になり易く、また、アニールによる後結晶化は成形品が結晶化する過程で変形するため、寸法安定性が得られない、実用面ではひび、割れといった欠点があった。さらに大きな欠点として結晶化により透明性が著しく悪化することが挙げられる。
【0006】
そこで、従来からポリ乳酸の結晶化速度を高める手法として、無機系又は有機系の添加剤、すなわち結晶核剤を添加する方法が検討されてきた。ポリ乳酸に無機系の結晶核剤を使用したものとしては、例えば、ポリ乳酸とポリ乳酸以外の融点が100〜250℃、重量平均分子量3万〜50万の脂肪族ポリエステルを含有するものと結晶性SiOを含有する耐熱性樹脂組成物が挙げられている(例えば、特許文献1及び2参照。)。しかしながら、実際に乳酸系ポリマーに核剤として記載のタルク、シリカ等を使用して射出成形を試みるものの未だ結晶化速度が遅く、また得られる成形物が脆いため、実用に耐えうる成形物を得られたとは言い難かった。
【0007】
また、ポリ乳酸のステレオコンプレックスに対し、アミド系結晶核剤を添加した乳酸系ポリエステル組成物が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。さらにポリ乳酸に有機系の結晶核剤を使用したものとしては、例えば、ポリ乳酸と、特定のトリメシン酸トリアミド化合物を含有したポリ乳酸系樹脂組成物が挙げられている(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、このポリ乳酸系樹脂組成物は、射出成形、真空成形等の成形において、未だ結晶化速度が遅く、型再現性や実用レベルの成形サイクルを得るには未だ不十分なものがあった。加えて結晶化による透明性の低下は改善されず、透明性と耐熱性の両立の点で課題があった。
【0008】
一方、ポリ乳酸の脆さ、結晶化速度を促進させる目的で、乳酸を主成分とするポリエステル重合体からなる育苗用容器が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。耐衝撃性を解決する目的でポリ乳酸系ポリマーブロック共重合体又は/及び混合するのに適したガラス転移温度の低い、例えば、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペートといった脂肪族ポリエステルを用いることによって耐衝撃性の改良を図っているが、これら脂肪族ポリエステルとポリ乳酸との相溶性が不充分であるため、ブリードや実用に耐え得る様々な成形品に適用するレベルに到っていないし、透明性の改善の点でも効果は期待できない。
【0009】
一方で、ポリ乳酸の前記性能を改良する目的で、ポリ乳酸を他の樹脂等と共重合する検討も進んでいる。例えば、ポリヒドロキシカルボン酸構造単位と、ジカルボン酸及びジオールから誘導されるポリエステル構造単位とを有するブロック共重合体からなり、前記ポリヒドロキシカルボン酸構造単位とポリエステル構造単位とのいずれか一方の構造単位が形成するマトリックス中に他方の構造単位がドメインを形成するミクロ相分離構造を有する特定の成形用樹脂や、該成形用樹脂及びポリヒドロキシカルボン酸を含有してなるポリ乳酸樹脂組成物、及びそれらを成形して得られるフィルム等の成形物が、柔軟性、耐衝撃性及び生分解性に優れ、かつ透明性にも優れることが知られている(例えば、特許文献6参照)。ただし、結晶化促進の点では大きな効果は認められていない。
【0010】
また、前記のポリ乳酸に有機系の結晶核剤として特定の酸アマイドを使用する系にさらに可塑剤を併用するポリ乳酸系樹脂組成物も検討されている(例えば、特許文献7参照。)。しかしながら、これらを実際に射出成形、真空成形等の成形を試みた場合確かに結晶化速度は速くなるものの未だ遅く、型再現性や実用レベルの成形サイクルを得るには未だ不十分なものであり透明性の点でも不十分なレベルとなっている。さらに、低分子の可塑剤のブリードも成形物を使用する場合大きな課題となっている。
【0011】
【特許文献1】特許3359764号公報
【特許文献2】特許3599533号公報
【特許文献3】特開2004−359828号公報
【特許文献4】特許3671547号公報
【特許文献5】特許3687171号公報
【特許文献6】特開2004−250663号公報
【特許文献7】国際公開W02003/042302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、ポリ乳酸の結晶化速度、結晶化度を向上させることが可能で、かつ優れた透明性を保持し、耐ブリード性、耐衝撃性、耐熱性、成形加工性にも優れるポリ乳酸樹脂組成物、ならびに当該樹脂組成物を用いたポリ乳酸樹脂成形体及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ポリ乳酸に、ポリアルキレンエーテル構造単位とポリヒドロキシカルボン酸構造単位とを有するブロック共重合体を加え、さらに特定のトリメシン酸トリアミド化合物を加えたポリ乳酸樹脂組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明は、ポリ乳酸(A)と、ブロック共重合体(B)と、下記一般式(1)で表されるトリメシン酸トリアミド化合物(C)とを含有するポリ乳酸樹脂組成物であって、前記ブロック共重合体(B)が、ポリアルキレンエーテル構造単位(D)とポリヒドロキシカルボン酸構造単位(E)とを有するブロック共重合体であることを特徴とするポリ乳酸樹脂組成物、ならびに当該樹脂組成物を用いたポリ乳酸樹脂成形体及びその製造方法を提供するものである。
【0015】
【化1】

〔一般式(1)中のR、R及びRは、それぞれ独立に、炭化水素基を表す。〕
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸の結晶化速度、結晶化度を向上させることが可能で、その場合でも優れた透明性を保持することができ、しかも、耐ブリード性、耐衝撃性、耐熱性、成形加工性にも優れるという利点があり、例えば透明耐熱包装容器等の広範な分野に適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明で使用するポリ乳酸(A)としては、例えば、L−ポリ乳酸、D−ポリ乳酸、D,L−ポリ乳酸、及びそれらの混合物、ステレオステレオコンプレックス等が挙げられる。
【0018】
前記D,L−ポリ乳酸は、L−乳酸又はL−ラクタイドと、D−乳酸又はD−ラクタイドとの共重合体であって、特にL−乳酸又はL−ラクタイド由来の構造単位の割合又はD−乳酸もしくはD−ラクタイド由来の構造単位の割合が90質量%以上であるものを使用することが好ましく、95質量%以上であるものを使用することがより好ましい。かかるD,L−ポリ乳酸を使用することによって、耐熱性、及び成形加工性に優れたポリ乳酸樹脂組成物を得ることができる。
【0019】
前記D,L−ポリ乳酸を構成するL体及びD体の割合(光学異性比率)は、それを加水分解して得られた乳酸を、光学異性体分離カラムを備えた高性能液体クロマトグラフィーを用いて、L―乳酸とD−乳酸とに分離した後、それらを定量することにより決定できる。前記加水分解の方法としては、例えば、D,L−ポリ乳酸と水酸化ナトリウム/メタノール混合溶液とを、例えば65℃に設定した水浴浸とう器を用いて混合する方法が挙げられる。高性能液体クロマトグラフィーを用いた定量の際には、予め希塩酸溶液等を用いて中和したものを使用することが好ましい。
【0020】
また、前記ポリ乳酸(A)としては、良好な成形加工性や機械的特性を維持する観点から、分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(以下、「GPC」と省略する。)による標準ポリスチレン換算で、重量平均分子量が50,000〜400,000の範囲であるものを使用することが好ましく、重量平均分子量が100,000〜400,000の範囲であるものを使用することがより好ましい。
【0021】
前記GPCは、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置(東ソー株式会社製「HLC−8220」)を使用し、カラムとして、TSK gel SuperHZM−Mを2本、及びTSK gel SuperHZ−2000を2本と、ガードカラムとしてTSK SuperH−Hを用い、展開溶媒として、テトラヒドロフランを用いて測定することができる。
【0022】
前記ポリ乳酸(A)は、例えば、乳酸の縮合重合法や、乳酸の環状2量体であるラクタイドの開環重合法等で製造することができる。乳酸の重縮合反応は、乳酸の有するカルボキシル基及び水酸基をエステル化反応させる方法であり、例えばL−乳酸もしくはD−乳酸又はこれらの混合物を高沸点溶媒存在下、減圧下で共沸脱水させる方法が挙げられる。また、前記ラクタイドを用いた開環重合法とは、開環したラクタイド同士をエステル化反応する方法であり、例えば重合調節剤、及び重合触媒の存在下でL−ラクタイド又はD−ラクタイドを開環させる方法が挙げられる。又、L−乳酸とD−乳酸の2量体であるD,L−ラクタイドを本発明の目的を達成する範囲内で併用してもよい。
【0023】
また、本発明において、ポリ乳酸(A)として強度、靭性を有するグリコール酸、柔軟性を有するカプロラクトン、植物度が高いヒドロキシブチレート、及びヒドロキシバリレート、からなる群から選ばれる1種以上のヒドロキシカルボン酸誘導重合体とポリ乳酸との併用あるいは各々のヒドロキシカルボン酸の共重合体(ランダム、ブロックは問わず)とポリ乳酸との併用ポリマーも好ましく使用することができる。共重合体の例としては、グリコール酸と乳酸との重合体や、ラクチドとカプロラクトンとの重合体である。ここで、前記植物度とは、製品、商品、プラスチックに占める植物由来原料の質量%(体積%を明示する場合もある)をいう。例えば、植物度100%であれば、植物由来原料から生産されたプラスチックであることを意味する。
【0024】
本発明で用いるブロック共重合体(B)は、ポリアルキレンエーテル構造単位(D)とポリヒドロキシカルボン酸構造単位(E)とからなるブロック共重合体である。このブロック共重合体(B)は、ポリ乳酸(A)の結晶化を促進させ、柔軟性、耐衝撃性、耐熱性、成形加工性を付与する。
【0025】
前記ブロック共重合体(B)の形態としては、例えば、ポリアルキレンエーテル構造単位(D)をXとし、ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(E)をYとした場合、XY型ブロック共重合体、XYX型ブロック共重合体、ランダムブロック共重合体及びこれらの混合物等が挙げられる。また、ブロック共重合体(B)の特性を損なわなければ、これらに未共重合物としてポリアルキレンエーテルやポリヒドロキシカルボン酸などを含んでいてもよい。
【0026】
前記ブロック共重合体(B)を構成するポリアルキレンエーテル構造単位(D)の原料となるポリアルキレンエーテル(D’)としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレンジオール、ポリエチレンオキサイドの開環重合物等やこれら2種以上からなる共重合物又は混合物などを挙げることができる。
【0027】
前記ポリアルキレンエーテル(D’)のGPCによる重量平均分子量は、500〜50,000の範囲が好ましく、1,000〜40,000の範囲がより好ましく、2,000〜30,000の範囲がさらに好ましい。
【0028】
前記ブロック共重合体(B)を構成するポリヒドロキシカルボン酸構造単位(E)の原料となるポリヒドロキシカルボン酸(E’)としては、例えば、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、p―ヒドロキシ安息香酸及びこれらの混合物の重縮合物等が挙げられる
【0029】
前記ポリヒドロキシカルボン酸(E’)の中でも、本発明の特性を発揮させるにはポリ乳酸を主成分として用いることが好ましい。すなわち、ポリヒドロキシカルボン酸(E’)中に含まれるポリ乳酸の含有量が、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、100質量%のものを用いることがさらに好ましい。
【0030】
また、前記ポリヒドロキシカルボン酸(E’)としては、ポリ乳酸のように繰り返し単位中に不斉炭素原子を有するもの場合、L体、D体、L体とD体の混合物(混合比率は特に限定しない。)、ラセミ体のいずれも用いることができる。
【0031】
前記ポリヒドロキシカルボン酸(E’)をポリ乳酸とした場合には、前記ポリ乳酸(A)とステレオコンプレックスを形成させるため、前記ポリ乳酸(A)の構造単位がL−乳酸の場合は、ポリヒドロキシカルボン酸(E’)をポリ(D−乳酸)とし、前記ポリ乳酸(A)の構造単位がD−乳酸の場合は、ポリヒドロキシカルボン酸(E’)をポリ(L−乳酸)とすることにより、ステレオコンプレックスが形成され、本発明のポリ乳酸樹脂組成物の結晶化が促進され耐熱性が付与されると同時により透明性が高い成形物が得られるので好ましい。
【0032】
また、前記ポリヒドロキシカルボン酸(E’)のGPCによる重量平均分子量は、500〜400,000の範囲が好ましく、5,000〜400,000の範囲がより好ましく、10,000〜400,000の範囲がさらに好ましく、10,000〜300,000の範囲が特に好ましく、15,000〜250,000の範囲が最も好ましい。
【0033】
前記ブロック共重合体(B)としては、ブロック共重合体(B)を構成する前記ポリアルキレンエーテル構造単位(D)と前記ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(E)との重量割合[(D)/(E)]が、15/85〜85/15の範囲であるものを使用することが好ましく、30/70〜70/30の範囲であるものを使用することが、優れた結晶化速度、結晶化度、耐ブリードを有するポリ乳酸樹脂組成物を得るうえで好ましい。
【0034】
前記ポリアルキレンエーテル構造単位(D)は、結晶性であっても非結晶性であってもよいが、得られるポリ乳酸樹脂組成物の耐衝撃性、透明性、柔軟性、耐熱性、及び成形加工性が向上するため非結晶性であることが好ましい。
【0035】
一方、前記前記ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(E)は、結晶性であっても非結晶性であってもよい。
【0036】
なお、本発明でいう結晶性とは、例えば、昇温速度20℃/分でDSC測定した際に融点が観察されるものをいい、また、非結晶性とは、DSC測定により融点が観察されないものをいう。
【0037】
また、前記ブロック共重合体(B)としては、重量平均分子量10,000〜300,000の範囲のものが好ましく、前記ポリ乳酸(A)との相容性の観点から、重量平均分子量15,000〜200,000の範囲のものがより好ましく、透明性を得るために重量平均分子量20,000〜100,000の範囲のものが特に好ましい。この範囲の重量平均分子量のブロック共重合体(B)を使用することによって、耐衝撃性、透明性、柔軟性、耐ブリード性の優れたポリ乳酸樹脂組成物を得ることができる。
【0038】
前記ブロック共重合体(B)としては、JIS K 7122に準じたDSC測定によるガラス転移温度(Tg)が−80〜70℃の範囲に1つ有するものを使用することが好ましく、ポリ乳酸の結晶化速度、結晶化度を向上させるためには、−20〜60℃の範囲に1つ有するものを使用することが好ましい。前記温度範囲内にガラス転移温度が1つ観察されるということは、前記ブロック共重合体(B)を構成するポリアルキレンエーテル構造単位(D)と、ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(E)とが相溶していることを意味し、このようなブロック共重合体(B)を使用することによって結晶化速度に優れたポリ乳酸樹脂組成物を得ることができる。結晶化速度に優れるメカニズムとしては、次のように推定する。ポリ乳酸マトリックス中に微細に分散した前記ブロック共重合体(B)がポリ乳酸の結晶核となって核成長速度が高まったこと、又はポリ乳酸の結晶構造が、前記ブロック共重合体(B)により可塑化されて高次構造が乱れることにより結晶化速度が大きくなったと推察する。
【0039】
また、前記ブロック共重合体(B)のガラス転移温度(Tg)を測定するその他の手法としては、前記ブロック共重合体(B)を含む本発明のポリ乳酸樹脂組成物を加工して得られたフィルムの動的粘弾性を、例えばJIS K 7198に準じて測定周波数1Hz、昇温速度3℃/分の測定条件で測定すると、損失正接のピーク極大値が現れる。ここで、損失正接のピーク極大値をガラス転移温度(Tg)と定義することもあるので、前記ブロック共重合体(B)のガラス転移温度(Tg)としてもよい。また、この場合、加工条件によっては、例えば、一軸または二軸延伸加工して得られたフィルムの動的粘弾性を、例えばJIS K 7198に準じて測定周波数1Hz、昇温速度3℃/分の測定条件で測定すると、損失正接のピーク極大値が2つ現れる。これは、延伸という外力によって、ポリ乳酸樹脂組成物が相分離したことを意味し、このピーク極大値は、ガラス転移温度(Tg)に相当するものであって、前記ポリアルキレンエーテル構造単位(D)及び前記ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(E)のそれぞれに対応したものが観察される。
【0040】
次に、前記ブロック共重合体(B)は、例えば、下記の方法1〜3により製造することができる。
【0041】
前記ブロック共重合体(B)は、例えば、ポリアルキレンエーテル(D’)とポリヒドロキシカルボン酸(E’)とを溶融混合した後、エステル化触媒を添加し、減圧下でエステル化反応させることによって製造することができる(方法1)。
【0042】
前記方法1での反応温度は、170〜220℃の範囲であることが好ましく、180〜210℃の範囲であることがより好ましい。前記範囲の温度で反応させることによって、得られるブロック共重合体(B)の分子量低下、色相の低下、ポリヒドロキシカルボン酸(E’)の解重合を抑制することが可能である。
【0043】
また、前記方法1での減圧度は、高真空である程、エステル化反応が速やかに進行するので好ましい。具体的には267Pa以下が好ましく、133Pa以下がより好ましく、67Pa以下が特に好ましい。
【0044】
前記エステル化触媒としては、後述するポリエステルを製造する際に使用できるものとして例示したものと同様のものを用いることができる。エステル化触媒の使用量は、ポリアルキレンエーテル(D’)とポリヒドロキシカルボン酸(E’)と合計量に対して50〜500ppmの範囲であることが好ましく、50〜300ppmの範囲であることがより好ましく、50〜200ppmの範囲であることが特に好ましい。かかる範囲でエステル化触媒を使用することで、ブロック共重合体(B)の分子量の低下を抑制するとともに、良好な色相を有したブロック共重合体(B)を得ることができる。
【0045】
また、前記ブロック共重合体(B)は、前記ポリアルキレンエーテル(D’)と前記ポリヒドロキシカルボン酸(E’)とをエステル化触媒を用いて、高沸点溶媒の共存下、減圧条件で共沸脱水重縮合反応させることにより製造することもできる(方法2)。
【0046】
前記高沸点溶媒としては、例えば、キシレン、アニソール、ジフェニルエーテル等が挙げられる。また、減圧度は、高沸点溶媒が系内を還流させることが目的で、1000〜3000Paの範囲内であることが好ましい。なお、減圧下で反応させる場合には、前記高沸点溶媒が還流するような装置を用いることが好ましい。
【0047】
また、水分の存在は、ブロック共重合体(B)の分子量低下の要因となるため、特に前記ポリアルキレンエーテル(D’)は、反応に供する前に十分に乾燥させたものを使用することが好ましい。
【0048】
さらに、前記ブロック共重合体(B)は、前記ポリアルキレンエーテル(D’)とラクトンとを、開環重合触媒の存在下にて反応させることにより製造することができる(方法3)。
【0049】
前記ポリアルキレンエーテル(D’)とラクトンとを開環重合触媒の存在下で反応させ前記ブロック共重合体(B)を製造する方法は、具体的には不活性ガス雰囲気下、所定温度に設定した反応容器中に、前記ポリアルキレンエーテル(D’)と前記ラクトンとを適当な良溶媒中に溶解または分散、均一化し、次いで、開環重合触媒を添加することによりそれらを反応させる方法である。反応温度は、ブロック共重合体(B)の着色及び熱分解を防ぐという観点から150〜220℃の範囲が好ましく、160〜210℃の範囲がより好ましく、170〜200℃の範囲が特に好ましい。
【0050】
前記ラクトンとしては、例えば、ラクチド、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン及びこれらの混合物等が挙げられ、特にラクチドのが好ましい。
【0051】
また、反応系内に存在する水分による前記ポリアルキレンエーテルとラクトンとの開環重合反応の阻害や、得られるブロック共重合体(B)の分子量の低下を防止するため、前記ポリアルキレンエーテル(D’)は、反応前に十分に乾燥させて水分を除去したものを使用することが好ましい。
【0052】
前記方法3で使用可能な溶媒としては、例えば、トルエンなどの不活性な溶媒が挙げられる。溶媒の添加量は、ポリアルキレンエーテル(D’)とラクトンとの合計量に対して、3〜30質量部の範囲が好ましく、5〜30質量部の範囲がより好ましく、5〜20質量部がさらに好ましい。
【0053】
前記開環重合触媒としては、例えば、Sn、Ti、Zr、Zn、Ge、Co、Fe、Al、Mn、Hf等の金属又は有機金属化合物を好ましく使用することができる。これらの中でも、錫粉末、オクタン酸スズ、2−エチルヘキシル酸錫、ジブチルスズジラウレート、テトライソプロピルチタネート、テトラブトキシチタン、チタンオキシアセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、鉄(III)エトキサイド、アルミニウムイソプロポキサイド、アルミニウムアセチルアセトナートは、反応に対する活性作用が高い開環重合触媒であるため好ましい。
【0054】
前記開環重合触媒の使用量は、前記ポリアルキレンエーテル(D’)とラクトンとの合計量に対して50〜500ppmの範囲が好ましく、50〜300ppmの範囲がより好ましく、50〜200ppmの範囲が特に好ましい。開環重合触媒の使用量がかかる範囲であれば、ブロック共重合体(B)の分子量低下を抑制するとともに、良好な色相を有するブロック共重合体(B)を得ることができる。
【0055】
前記ブロック共重合体(B)を製造する方法としては、前記方法1〜3のなかでも、通常、多量の溶媒を除去する必要のない方法1及び3が好ましい。
【0056】
また、ブロック共重合体(B)は、例えば前記したような製造方法で製造して得られるブロック共重合体(B)をさらに多官能ポリオールや酸無水物や多価イソシアネートやエポキシ化合物や過酸化物等と反応させることにより高分子量化されたものであってもよい。
【0057】
前記ブロック共重合体(B)を製造する際にした開環重合触媒やエステル化触媒は、必要に応じて適当な溶媒を用いることによって抽出除去してもよく、また前記キレート化剤を用いて前記エステル化触媒等を失活させてもよい。
【0058】
また、前記ブロック共重合体(B)の保存安定性を向上させることを目的として、適宜、助剤を使用してもよい。かかる助剤としては、例えばカルボジイミドを使用することができる。
【0059】
前記ブロック共重合体(B)を構成するポリヒドロキシカルボン酸構造単位(E)としてポリ乳酸構造単位を用いる場合、ポリ乳酸(A)を構成する乳酸と光学異性の関係にあるポリ乳酸構造単位を使用した場合、ポリ乳酸(A)とポリ乳酸構造単位との間にステレオコンプレックスを形成する。この場合形成されたステレオコンプレックスによる耐熱性の向上に加え、形成されたステレオコンプレックスが結晶核剤として働き且つ核剤として微細であることよりこれにより結晶化してポリ乳酸(A)の結晶構造がより微細化するため本発明の目的である透明性の保持に有効となる。具体的にはポリ乳酸(A)としてLポリ乳酸をもちいた場合にはブロック共重合体(B)に用いるポリ乳酸構造単位としてはDポリ乳酸(方法1,2)あるいはDラクチド(方法3)を用いて同様な方法で導入される。
【0060】
また本発明の目的を阻害させない範囲でポリアルキレンエーテル構造単位(D)以外の構造をもった共重合体を用いても良い。ポリアルキレンエーテル構造単位(D)以外の構造の組成物への導入方法としては共重合体中のポリアルキレンエーテル構造の一部をその他の構造に置換した共重合体を使用しても良く、あるいはポリアルキレンエーテル構造単位(D)以外の構造でポリアルキレンエーテル構造単位(D)の一部と置換したブロック共重合体と置換していないブロック共重合体とを併用することも可能である。ポリアルキレンエーテル構造単位(D)以外の構造単位としてはポリエステル構造単位(F)が挙げられる。
【0061】
前記ポリアルキレンエーテル構造単位(D)以外の構造を持った共重合体の製造方法は上記の共重合体の製造方法の内、ポリアルキレンエーテル構造単位(D)以外の構造を持つポリマーでポリアルキレンエーテル(D’)の一部あるいは全量置き換えた方法で同様に合成することで得られる。
【0062】
ポリアルキレンエーテル構造単位(D)以外の構造のブロック共重合体に占める割合は本発明の目的を損なわない範囲であれば特に限定されるものでは無い。
【0063】
上記ポリエステル構造単位(F)を導入するポリエステルとしては、ジカルボン酸とジオールとをエステル化反応させて得られるポリエステルやラクトンの開環重縮合から得られるポリエステル(F’)が挙げられる。
【0064】
前者のポリエステルは、ジオール、ジカルボン酸、及びヒドロキシカルボン酸を反応させることによって製造可能なポリエステルである。
【0065】
前記ポリエステル(F’)は、結晶性であっても非結晶性であってもよいが、透明性、成形加工性に優れたフィルム又はシートを得るためには、非結晶性のポリエステルを用いることが好ましい。ここで、本発明でいう「結晶性のポリエステル」及び「非結晶性のポリエステル」とは、融点の有無で定義する。具体的には、「非結晶性のポリエステル」とは、融解熱量が0kJ/kgであるポリエステルを指す。また、前記融点は、標準状態で状態調節を行ったポリエステルのフィルム片約10mgを、JIS K 7122に準じて、TAインスツメンタル社製の示差走査熱量測定装置「DSC 220C」を用いて、窒素ガス流量50ml/分、昇温速度10℃/分で−100℃から210℃までの測定を行うことによって求めることができる。前記測定温度範囲内に、吸熱ピークが存在しないポリエステルは、非結晶性ポリエステルということができる。
【0066】
また、前記ポリエステル(F’)としては、10以下の酸価を有するものが好ましく、8以下であることがより好ましく、0.1〜5の範囲であることが特に好ましい。この範囲の酸価を有するポリエステルを用いると、前記ブロック共重合体(B)を製造する際の反応の転化率の向上により未反応物を抑制でき、かつゲル化しにくい成形加工性に優れたブロック共重合体(B)を得ることができる。
【0067】
また、前記ポリエステル(F’)としては、ジオール由来の構造単位と、ジカルボン酸由来の構造単位とが、不規則に配列した、いわゆるランダム共重合体であるものを用いると、副生成物生成を抑制でき、かつポリエステルを高分子量化できることから好ましい。
【0068】
前記ポリエステル(F’)は、GPC法による重量平均分子量が5,000〜200,000の範囲であることが好ましく5000〜200,000の範囲であることがより好ましく5000〜200,000の範囲であることが特に好ましい。この範囲の重量平均分子量を有するポリエステル由来のポリエステル構造単位を一部有するブロック共重合体は、本発明の効果である耐熱性や透明性の保持性を阻害すること無くポリアルキレンエーテル構造が持つ過度の弾性率の低下や耐衝撃性の悪化を改善できる利点がある。
【0069】
前記ポリエステル(F’)を製造する際に用いるジオールとしては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ジオール、芳香族ジオール、脂環式ジオールを用いることが好ましい。
【0070】
前記脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3,3−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、n−ブトキシエチレングリコール、ダイマー酸ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、キシリレングリコール、フェニルエチレングリコール等を用いることができる。
【0071】
上記の芳香族ジオールとしてビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物などを用いることもできる。また脂環式ジオールとしてシクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAが挙げられる。
【0072】
上記のジオールは、単独で用いることもできるが、2種類以上を併用することもできる。例えば、1,2−プロパンジオールとポリエチレングリコールとの併用、エチレングリコールと1,4−ブタンジオールとの併用などが挙げられる。
上記の
【0073】
前記ポリエステル(F’)を製造する際に用いるジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸や、フマル酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸や、無水コハク酸、無水アジピン酸や、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。これらは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0074】
また、前記ポリエステル(F’)を製造する際に本発明の効果を損なわない範囲で、ヒドロキシカルボン酸を用いることが可能である。このヒドロキシカルボン酸としては、1分子中に水酸基及びカルボキシル基を有する化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、p―ヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。これらは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。光学異性体が存在するヒドロキシカルボン酸を用いる場合には、D体、L体、又はラセミ体のいずれも用いることができる。また、前記ヒドロキシカルボン酸は、固体であっても液体であってもよく、水溶液で用いてもよい。
【0075】
前記ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸又はグリコール酸を用いることが、入手が容易であること、前記ポリエステル(F’)を製造する際の反応制御が容易であること、ポリエステルの2量体や3量体等の副生成物の発生を大幅に抑制できることなどから好ましい。また、前記ヒドロキシカルボン酸を用いることにより、得られるポリエステルの分子量を比較的高分子量に調整することが容易である。
【0076】
前記ポリエステル(F’)の製造方法は、特に限定されず、例えば、前記ジオールと、ジカルボン酸、その無水物又はそのエステル化物と、前記ヒドロキシカルボン酸とを、必要に応じてエステル化触媒を用いて、公知慣用のエステル化反応によってエステル化させることにより製造することができる。その際、ポリエステルの着色を抑制するため、亜リン酸エステル化合物等の酸化防止剤を、前記ジオールと、ジカルボン酸、その無水物又はそのエステル化物と、前記ヒドロキシカルボン酸との合計量に対し、10〜2000ppmの範囲で用いることが好ましい。
【0077】
前記ヒドロキシカルボン酸は、ジオールと、ジカルボン酸、その無水物又はそのエステル化物と、ヒドロキシカルボン酸とを一括混合してエステル化反応させてもよいが、ジオールと、ジカルボン酸、その無水物又はそのエステル化物とを予め反応させた後に、ヒドロキシカルボン酸を混合しエステル化反応させてもよい。
【0078】
前記のジオールとジカルボン酸との組み合わせは、特に限定されるものではないが、炭素原子数が3〜8のジオールと、炭素原子数が4〜12のジカルボン酸との組み合わせが好ましい。
【0079】
前記エステル化触媒としては、周期律表2族、3族、及び4族からなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属又はそれらの金属化合物からなるものを用いることが好ましい。前記金属としては、例えば、Ti、Sn、Zn、Al、Zr、Mg、Hf、Ge等の金属が挙げられる。また、前記金属化合物としては、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンオキシアセチルアセトナート、オクタン酸スズ、2−エチルヘキサンスズ、アセチルアセトナート亜鉛、4塩化ジルコニウム、4塩化ジルコニウムテトラヒドロフラン錯体、4塩化ハフニウム、4塩化ハフニウムテトラヒドロフラン錯体、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム等が挙げられる。
【0080】
前記エステル化触媒の使用量は、通常、反応が制御でき、かつ良好な品質が得られる量であればよく、一般的にジオール、ジカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸の合計量に対し、10〜1000ppmの範囲であることが好ましく、20〜800ppmの範囲であることがより好ましく、ポリエステル(II’)の着色を低減する観点から、30〜500ppmの範囲が特に好ましい。
【0081】
前記エステル化触媒は、ジオール、ジカルボン酸等の原料を仕込む際に添加しておいても、反応系内を減圧する前に添加してもよい。
【0082】
また、前記エステル化触媒は、前記ポリエステル(F’)の製造後に、公知慣用の方法で失活させることが、後述するポリ乳酸やラクトンとの反応の際にこれらとの溶融混合時に副反応を抑制できることから好ましい。エステル化触媒の失活方法としては、例えばキレート化剤を用いる方法がある。
【0083】
前記キレート化剤としては、公知慣用の有機系キレート化剤又は無機系キレート化剤を用いることができる。有機系キレート化剤としては、例えば、アミノ酸、フェノール類、ヒドロキシカルボン酸、ジケトン類、アミン類、オキシム、フェナントロリン類、ピリジン化合物、ジチオ化合物、ジアゾ化合物、チオール類、ポルフィリン類、配位原子として窒素原子を有するフェノール類やカルボン酸等が挙げられる。また、無機キレート化剤としては、例えば、リン酸、リン酸エステル、亜リン酸、亜リン酸エステル等のリン化合物が挙げられる。
【0084】
また、エステル化触媒の失活剤の添加前後にポリエステルに、酸無水物、多価イソシアネート、過酸化物等を反応させてポリエステルの化学構造を分岐状にして、さらに高分子量化したポリエステルとすることもできる。
【0085】
前記ポリエステル(F’)を製造する際の温度は、150〜260℃の範囲であることが好ましく、180〜230℃の範囲であることがより好ましい。前記ポリエステルを製造する際の重合時間は2時間以上であることが好ましく、4〜60時間の範囲であることがより好ましい。前記ポリエステルを製造する際の減圧度は、133kPa以下であることが好ましく、0.26kPa以下であることがより好ましい
【0086】
本発明で使用するトリメシン酸トリアミド化合物(C)は下記一般式(1)で表される化合物である。
【0087】
【化2】

〔一般式(1)中のR、R及びRは、それぞれ独立に、炭化水素基を表す。]
【0088】
前記一般式(1)で表されるトリメシン酸トリアミド化合物(C)は、ポリ乳酸(A)又はブロック共重合体(B)の結晶核を形成し、これらの結晶化を促進させる結晶核剤として有効に作用するものであり、得られるポリ乳酸樹脂組成物の結晶化速度、結晶化度の向上、すなわち、耐熱性、成形加工性の向上に寄与する。さらに通常結晶化の進行に伴い悪化する透明性の改善にも有効である。
【0089】
前記前記一般式(1)で表されるトリメシン酸トリアミド化合物が有するアルキル基(R、R、R)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、第2ブチル基、第3ブチル基、n−アミル基、第3アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、第3オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、オクタデセニル基、等が挙げられる。
【0090】
これらのアルキル基の内、炭素原子数が3〜14のアルキル基が直鎖状あるいは分岐状を問わず好ましく、なかでも炭素原子数が4〜8のアルキル基が直鎖状あるいは分岐状を問わずより好ましく、炭素原子数5あるいは6の直鎖状のアルキル基であるn−ペンチル基n−ヘキシル基が最も好ましい。
【0091】
これらのトリメシン酸トリアミド化合物は、単独使用はもとより複数併用することも可能である。また、アルキル基以外の炭化水素基を有するトリメシン酸トリアミド化合物も本発明の効果を損なわない範囲で併用が可能である。
【0092】
前記アルキル基以外の炭化水素基としては、脂環式基あるいは芳香族基が挙げられる。例えば、脂環式基としては、シクロヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、3−メチルシクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、2−エチルシクロヘキシル基、3−エチルシクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基、2−n−プロピルシクロヘキシル基、3−n−プロピルシクロヘキシル基、4−n−プロピルシクロヘキシル基、2−iso−プロピルシクロヘキシル基、3−iso−プロピルシクロヘキシル基、4−iso−プロピルシクロヘキシル基、2−n−ブチルシクロヘキシル基、3−n−ブチルシクロヘキシル基、4−n−ブチルシクロヘキシル基、2−iso−ブチルシクロヘキシル基、3−iso−ブチルシクロヘキシル基、4−iso−ブチルシクロヘキシル基、2−sec−ブチルシクロヘキシル基、3−sec−ブチルシクロヘキシル基、4−sec−ブチルシクロヘキシル基、2−tert−ブチルシクロヘキシル基、3−tert−ブチルシクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、2,3−ジメチルシクロヘキシル基、2,4−ジメチルシクロヘキシル基、2,5−ジメチルシクロヘキシル基、2,6−ジメチルシクロヘキシル基、2,3,4−トリメチルシクロヘキシル基、2,3,5−トリメチルシクロヘキシル基、2,3,6−トリメチルシクロヘキシル基、2,4,6−トリメチルシクロヘキシル基、3,4,5−トリメチルシクロヘキシル基等の炭素原子数1〜6のアルキル基を有していてもよいシクロヘキシル基が挙げられ、その他脂環族基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、シクロヘキシルメチル基、メチルシクロヘキシルメチル基、ジメチルシクロヘキシルメチル基、トリメチルシクロヘキシルメチル基、メトキシシクロヘキシルメチル基、エトキシシクロヘキシルメチル基、ジメトキシシクロヘキシルメチル基、クロロシクロヘキシルメチル基、ジクロロシクロヘキシルメチル基、α−シクロヘキシルエチル基、β−シクロヘキシルエチル基、メトキシシクロヘキシルエチル基、ジメトキシシクロヘキシルエチル基、クロロシクロヘキシルエチル基、ジクロロシクロヘキシルエチル基、α−シクロヘキシルプロピル基、β−シクロヘキシルプロピル基、γ−シクロヘキシルプロピル基、メチルシクロヘキシルプロピル基等が挙げられる。
【0093】
芳香族基としては、例えば、フェニル基、アルキル置換フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アミノアントラセン基、2−アミノアントラセン基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、メトキシベンジル基、エトキシベンジル基、ジメトキシベンジル基、クロロベンジル基、ジクロロベンジル基、α−フェニルエチル基、β−フェニルエチル基、メトキシフェニルエチル基、ジメトキシフェニルエチル基、クロロフェニルエチル基、ジクロロフェニルエチル基、α−フェニルプロピル基、β−フェニルプロピル基、γ−フェニルプロピル基、メチルフェニルプロピル基等が挙げられる。
【0094】
上記アルキル基の内、炭素原子数が3〜14のアルキル基が直鎖状あるいは分岐状を問わず好ましく、なかでも炭素原子数が4〜8のアルキル基が直鎖状あるいは分岐状を問わずより好ましく、炭素原子数5あるいは6の直鎖状のアルキル基であるn−ペンチル基n−ヘキシル基がさらに好ましい。またアルキル基以外の炭化水素としてはシクロヘキシル基が好ましい。
【0095】
前記トリメシン酸トリアミド化合物(C)は、トリメシン酸、又はその酸クロライドと、炭素原子数1〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を有していてもよいシクロヘキシルアミンとをアミド化することにより得られる。
【0096】
これらのトリメシン酸トリアミド化合物は、これらは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。また、アルキル基以外の炭化水素基を有するトリメシン酸トリアミド化合物も本発明の効果を損なわない範囲で併用が可能である。
【0097】
また、本発明のポリ乳酸樹脂組成物中におけるトリメシン酸トリアミド化合物の形状には特に制限がないが、ポリ乳酸(A)とブロック共重合体(B)との溶融混練時の溶解性が良好で、ポリ乳酸樹脂組成物への造核作用、及び透明性が向上する結果、得られる成形体の結晶化度が高くなり、耐熱性が向上することから、平均粒径が0.01〜30μmの範囲の粉末状であることが好ましい。
【0098】
次に本発明のポリ乳酸樹脂組成物について説明する。本発明のポリ乳酸樹脂組成物では、ポリ乳酸の結晶化速度、及び結晶化度が高められ、耐ブリード性も有することから耐熱性、柔軟性、耐衝撃性、成形加工性に優れ、かつ、通常であれば結晶化の進行により透明性は悪化するに対し生成したポリ乳酸の結晶の大きさを小さくするあるいは生成する結晶の割合を制御することによると思われる効果により透明性の保持がなされる。
【0099】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物としては、前記ポリ乳酸(A)と前記ブロック共重合体(B)との重量割合(A)/(B)が95/5〜30/70の範囲であることが好ましく、より一層の結晶化促進効果が高く、耐熱性、剛性、耐ブリード性、成形加工性に優れることから、90/10〜40/60の範囲であることがより好ましい。
【0100】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物において、前記ポリ乳酸(A)と前記ブロック共重合体(B)との合計量に対して、トリメシン酸トリアミド化合物(C)を0.05〜5質量部となる範囲で含有することが好ましく、トリメシン酸トリアミド化合物(C)を前記ポリ乳酸(A)と前記ブロック共重合体(B)中に均一溶解させ、より効果的な結晶核成長させるためには、0.10〜1質量部となる範囲で含有することがより好ましい。
【0101】
ここで、トリメシン酸トリアミド化合物(C)としてのトリメシン酸トリアミド化合物の添加量に関しての理論的な知見として次のような考察が成り立つ。すなわち、ポリ乳酸樹脂組成物中におけるトリメシン酸トリアミド化合物が結晶核剤として完全に働くとすべての球晶の中心に1つの核が存在する。従って、ポリ乳酸樹脂組成物中に核剤粒子を多くすれば、球晶サイズは小さくなる筈である。具体的には、例えば直径10nmの核剤粒子の周りに直径100nmの球晶があれば、結晶核剤の混合(体積)比率は1/1000=0.1%。球晶の直径が50nmであれば、体積比率は1/125=0.8%である。
【0102】
一方、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を用いて、例えば、得られるシートを透明化するためには、結晶核剤が完全には働かないことや、その比重を考慮すると、球晶を透明のレベルまで十分小さくすればよく、具体的には、レイリー散乱以下の球晶サイズにすればよく、この時の球晶の大きさは、直径100nm以下程度になり、結晶核剤の混合(体積)比率は0.05〜0.2%の範囲内で適宜調製すればよいことになる。
【0103】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、
(1)ポリ乳酸(A)とブロック共重合体(B)とトリメシン酸トリアミド化合物(C)とを適切なミキサーで混合し、十分な混練能力のある一軸あるいは多軸の押出機で加熱溶融混練する方法、
(2)ポリ乳酸(A)とブロック共重合体(B)とを加熱溶融混練した後に、トリメシン酸トリアミド化合物(C)及び必要に応じてその他の添加剤を供給し、高速撹拌機または低速攪拌機などを用いて均一混合した後、十分な混練能力のある一軸あるいは多軸の押出機で加熱溶融混練する方法、
(3)予め少量のポリ乳酸(A)と過剰のブロック共重合体(B)と過剰のトリメシン酸トリアミド化合物(C)とを適切なミキサーで混合し、溶融混錬させた、いわゆるマスターバッチと、ポリ乳酸(A)とを、押出機を用いて加熱溶融混錬する方法、等によって製造することができる。また、前記マスターバッチの形状は、ペレットや粉末等であることが好ましい。
【0104】
前記各成分を混練することにより、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を得ることができるが、各成分の混錬方法としては特に制限はなく、各種の方法により混合することができる。例えば、各成分をタンブラー、V型ブレンダー、リボンブレンダー、ヘルシェルミキサー、タンブラーミキサーなどに仕込み混練するドライブレンド法、さらに該ドライブレンド物を1軸又は2軸押出機、ニーダー、ロール等で溶融混練し冷却、ペレット化する方法、または、各樹脂を溶媒に溶かし、混合した後に溶媒を除去する溶液ブレンド法などが挙げられる。
【0105】
より具体的な本発明のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法としては、上述した3つの製造方法に加え、ポリ乳酸(A)とブロック共重合体(B)に、トリメシン酸トリアミド化合物(C)が溶解する温度(以下、溶解温度)以上の温度でトリメシン酸トリアミド化合物(C)が均一に分散するまで溶融混練させる方法が挙げられる。これにより、優れた結晶化速度を有するため、短時間で成形体に高い結晶化度を付与し、優れた耐熱性、耐衝撃性、成形加工性を有する成形体を得ることができる。
【0106】
本発明でトリメシン酸トリアミド化合物(C)として用いる前記一般式(1)で表されるトリメシン酸トリアミド化合物は、一般に融点が180〜400℃の範囲に存在するため、ポリ乳酸(A)、及びブロック共重合体(B)とトリメシン酸トリアミド化合物とを溶融混練すると、まずポリ乳酸(A)とブロック共重合体(B)が先に溶融し、次いでトリメシン酸トリアミド化合物がポリ乳酸(A)とブロック共重合体(B)に溶解する。ここで溶解温度は、190〜260℃の範囲が好ましく、200〜255℃の範囲がより好ましく、ポリ乳酸(A)とブロック共重合体(B)の熱分解を抑制し、トリメシン酸トリアミド化合物がより均一に分散することから210〜250℃の範囲で溶解させることが特に好ましい。
【0107】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物では、溶融温度で溶解後は直ちに冷却固化せしめることで一端溶解したトリメシン酸トリアミド化合物を析出させ、さらに析出したトリメシン酸トリアミド化合物が微細な核を形成せしめるため、透明性、結晶化速度、結晶化度を高める。
【0108】
前記溶解温度を事前に簡便に測定する手法としては、例えば、加熱プレート等の温度調節機を付属した光学顕微鏡を用いて、ポリ乳酸樹脂組成物を加熱しながら、溶融したポリ乳酸(A)とブロック共重合体(B)中に存在するトリメシン酸トリアミド化合物由来の固体が観察されなくなるまでの温度を観察する。又、実際にトリメシン酸トリアミド化合物が認められなくなるまで溶融混練するには、加熱溶融時のポリ乳酸樹脂組成物の滞留時間、スクリューの回転数等を調整することにより行うことができる。次いで、この溶融状態を維持したまま、成形工程に供して、ポリ乳酸樹脂組成物を冷却・結晶化させる。なお冷却時の温度(例えば、射出成形においては金型温度)は、ポリ乳酸樹脂組成物のガラス転移温度〜140℃の範囲、特に80〜120℃の範囲が好ましい。かかる成形方法を用いることにより、結晶化速度が大きく、高い結晶化度、耐ブリード性を有し、優れた耐熱性、耐衝撃性、柔軟性、成形加工性のある成形体を得ることができる。
【0109】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物としては、例えば、セイコー電子工業株式会社製の示差走査熱量測定装置「DSC 220C」を用いて、10mgのポリ乳酸樹脂組成物を測定容器に入れ、窒素ガス流量50mL/分、加熱速度10℃/分で20℃から210℃まで昇温した際に観察される結晶化ピーク温度が、110℃〜ポリ乳酸樹脂組成物の融点の範囲に観察されるものが、耐熱性に優れることから好ましく、さらに耐熱性に優れることから、結晶化ピーク温度が115〜160℃の範囲に観察されるものであることがより好ましい。
【0110】
また、本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、DSCを用いて、10mgのポリ乳酸樹脂組成物を測定容器に入れ、窒素ガス流量50mL/分、加熱速度10℃/分で20℃から210℃まで昇温し、この後、210℃で3分間ホールドさせた後、冷却速度20℃/分で−100℃まで降温し、再度、2次昇温を200℃まで行なう。この時、2次昇温時で描かれたDSC曲線の融解熱量ピーク面積(ΔHm)と1次昇温時に描かれたDSC曲線の結晶化熱量ピーク面積(ΔHc)を用いて、次式から算出される結晶化度αは20〜100%の範囲であることが好ましく、優れた結晶化速度を有するためには30〜100%の範囲がより好ましく、格段な成形加工性を有するためには40〜100%の範囲を有することが特に好ましい。
結晶化度α=〔(ΔHm−ΔHc)/ΔHm〕×100 (%)
【0111】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物には、必要に応じてその他の樹脂等を併用することができ、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンに代表される汎用樹脂や、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、酢酸セルロース等に代表される生分解性樹脂、ポリエチレンオキサイド、メタクリルブチレンスチレン樹脂(MBS樹脂)、アクリロニトリルブチレンスチレン樹脂(ABS樹脂)等を使用することができ、なかでも環境負荷低減の観点からバイオマス由来である熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
【0112】
本発明にかかるポリ乳酸樹脂組成物には、目的に応じて、本発明を損なわない範囲内で、顔料、滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、粘着付与剤、可塑剤、フィラー、内部離型剤、抗菌抗カビ剤、その他フィラーを添加することができる。
【0113】
顔料としては、有機顔料、無機顔料に大別されるが、無機顔料としては、体質顔料として沈降性硫酸バリウム、沈降性炭酸カルシウム、ホワイトカーボン(シリカ)、焼成クレー、カオリンクレー、タルク等が、金属酸化物として酸化チタン、亜鉛華、チタンブラック、黄色酸化鉄、弁柄、黒鉄、酸化クロム、ビリジアン等が、複合金属酸化物としてコバルトブルー、コバルトグリーン、チタンイエロー等が、クロム酸塩として黄鉛、クロムバーミリオン等が、硫化物としてリトポン、カドミウムイエロー、カドミウムレッド等が、リン酸塩としてコバルトバイオレットディープ等が、金属錯体として紺青、群青等が、炭素としてカーボンブラック等が、金属粉としてアルミニウム粉、亜鉛末等が、その他としてコバルトバイオレットノーバ等がそれぞれ挙げられる。有機系顔料としては、アゾ系顔料と縮合多環系顔料に大別できるが、アゾ系顔料として不溶性アゾ顔料(ノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、β−ナフトール系、ナフトールAS系、ピラゾロン系、ベンツイミダゾロン系)、縮合アゾ顔料(イエロー、レッド)、アゾレーキ顔料(イエロー、β−ナフトール系、BON酸系、ナフトールAS系)等が、縮合多環系顔料としてはフタロシアニン系顔料(ブルー、グリーン)、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料(インダンスロンブルー、アントラキノン系)、ペリレン系顔料、ペリレン系顔料、インジゴ系顔料、ジオキサジン系顔料、キノフタロン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等が挙げられる。これらの顔料の量は、樹脂分100質量部に対して、0.05〜1質量部の範囲内で使用することができる。
【0114】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネートなどが、熱安定剤としては、トリフェニルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイトなどが、紫外線吸収剤としては、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノンなどが、帯電防止剤としては、N,N−ビス(ヒドリキシエチル)アルキルアミン、アルキルアミン、アルキルアリルスルフォネート、アルキルスルフォネートなどが挙げられる。これら添加剤の量としては、樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部の範囲内で使用することができる。
【0115】
難燃剤としては、各種の難燃剤を使用することができ、例えば、臭素系や塩素系等のハロゲン系難燃剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン系難燃剤、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム、シリコーン系化合物等の無機系難燃剤、赤リン、リン酸エステル類、ポリリン酸アンモニウム、フォスファゼン等のリン系難燃剤、メラミン、目ラム、メレム、メロン、メラミンシアヌレート、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩、アルキルホスホン酸メラミン、フォスホン酸メラミン、硫酸メラミン、メタンスルホン酸メラム等のメラミン系難燃剤、PTFE等のフッ素樹脂等が挙げられる。これらの難燃剤の量は、樹脂分100質量部に対して、0.05〜100質量部の範囲内で使用することができる。
【0116】
滑剤としては、各種の滑剤を使用することができ、例えば、N,N’−ジシクロヘキシル−2.6−ナフタレンジカルボキシアミド、N,N,N’,N’−テトラシクロヘキシル−1,4−ブタンテトラアミド、N,N’,N″−トリシクロヘキシルトリメシックアミド、N,N’−ジフェニル−3−スルフォニルジベンズアミド、N,N’、N″−トリブチルトリメシックアミド、N,N’−ジフェニルテレフタルアミド、N,N’−ジフェニルサクシンアミド、N,N’−ジフェニルスベリックアミド、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−2−フォスフォフェニル)メタンのナトリウム塩、ジ−t−ブチルアルミニウムベンゾエート、脂肪族カルボン酸系において、脂肪族カルボン酸アミドとして、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、リシノール酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビスー12−ヒドロキシステアリン酸アミド、脂肪族カルボン酸塩としてステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、モンタン酸カルシウム、脂肪族カルボン酸エステルとしてエチレングリコールジステアレート、脂肪族アルコールとしてステアリルアルコール等がそれぞれ挙げられる。これらの滑剤の量は、樹脂分100質量部に対して、0.05〜100質量部の範囲内で使用することができる。
【0117】
フィラーとしては、各種の無機フィラーを使用することができ、例えば、タルク、シリカ、マイカ、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス繊維、炭素繊維、二酸化珪素、窒化ホウ素、酸化錫、酸化モリブデン、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化ゲルマニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。これらの無機フィラーの量は、樹脂分100質量部に対して、0.05〜50質量部の範囲内で使用することができる。
【0118】
その他フィラーとしては、ケナフ繊維が挙げられる。本発明に適用されるケナフ繊維は、平均繊維長が100μm〜20mmで、かつ少なくとも300μm〜20mmの繊維長のケナフ繊維を含んでいるものが好ましい。本発明のポリ乳酸樹脂組成物はこうした範囲からなるケナフ繊維が含有されている場合には、成形体の補強効果がより高められる。より好ましいケナフ繊維の平均繊維長は1〜10mmであり、ポリ乳酸樹脂組成物の補強効果をより一層向上させることができる。ここで、平均繊維長とは、破砕片を除く繊維の数平均繊維長を意味し、破砕片とは、長手方向の長さが50μmに満たないものと定義する。
【0119】
含有するケナフ繊維が20mmを超える平均繊維長である場合または20mmを超える繊維長のケナフ繊維を含む場合には、ケナフ繊維強化樹脂組成物を製造する際に、混練機などの製造装置内で樹脂中の繊維分の分散が不均一になり易い。成形品の肉厚に対して長過ぎる繊維が含まれると、成形品の外観や手触りなどが損なわれるので、最大繊維長は成形品の肉厚に対して10倍以下が望ましく、より望ましくは5倍以下である。さらに射出成形時においては、成形装置内で樹脂組成物が詰まる原因となる。特に、繊維長が50mmを超えるケナフ繊維については、混練機に導入する前に除去することが望ましい。一方、繊維長が300μm未満のケナフ繊維のみを含有したケナフ繊維強化樹脂組成物を用いた場合は、ケナフ繊維による補強効果が十分ではない。
【0120】
平均繊維長が100μm〜20mmで、かつ少なくとも300μm〜20mmの繊維長のケナフ繊維を含むケナフ繊維を、本発明のポリ乳酸樹脂組成物に含有させた場合、強度が向上するだけでなく、熱変形温度を指標とする耐熱性も向上効果が期待できる。
【0121】
本発明で使用する内部離型剤としては、通常の高級脂肪酸及びその塩やエステル油、シリコーン油、ポリビニルアルコール、ポリアルキルグリコール、低分子量ポリオレフィン等の離型剤が挙げられるが、特に、シリコーン油が好ましい。シリコーン油の具体例としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイル等のストレートシリコーン油、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有シリコーンオイル等の変性シリコーン油等が挙げられ、特に安全性の点で、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイルが好ましい。これらの内部離型剤の量は、樹脂分100質量部に対して、0.05〜10質量部の範囲内で使用することができる。
【0122】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、成形してポリ乳酸樹脂成形体を得ることができる。
【0123】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は成形加工性に優れるため、各種成形物を得ることができる。各種成形物の製造方法としては、特に限定するものでなく、一般のプラスチックと同様の押出成形、射出成形、カレンダー成形、真空成形、圧空成形、マッチモールド成形、ニュージェネレーションフォーミング等のような各種の成形法によって、種々の形状の成形体に容易に成形することができ、しかも、得られる成形体は高強度で熱安定性に優れたものとなりうる。また、溶融紡糸することにより、繊維状に成形することもできる。
【0124】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物を用いて製造可能な成形物としては、例えばフィルム、繊維、各種容器、各種部品等の成形物に使用することができるが、特にフィルムやシートの製造に好適な材料である。フィルムやシートの具体的な成形方法としては、押出し法、共押出し法、カレンダー法、ホットプレス法、溶媒キャスティング法、インフレーション法、バルーン法、テンター法等が挙げられるが、その方法に何ら制限はない。
【0125】
なお、本発明でいうフィルムは、その形状、大きさ、厚み及び意匠等の点で何ら制限されるものではない。本発明では混乱を避けるため、フィルム及びシートの表現を「フィルム」に一元化するものとする。本発明のフィルムは、5μm〜2mmの範囲の厚みを有することが好ましい。
【0126】
前記押出し法によりフィルムを成形する場合には、例えばTダイ、インフレーションダイ(円形ダイ)、フラットダイ、シングルマニホールドダイ等のダイを用いることができる。共押出し法によれば、性質の異なる複数の該ポリマー及び/又は他種ポリマーを用いて、多層フィルムを製造することができる。
【0127】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物からなるフィルムは、前記した各種成形法により成形された、加熱溶融状態のフィルムは、通常、所定の厚みになるようにキャスティングされ、必要により冷却・固化される。その際、タッチロール、エアーナイフ、薄い場合には静電ピンニングを使い分けることにより均一なフィルムを作製することができる。
【0128】
前記フィルムは、ポリ乳酸樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)以上、融点以下の温度でテンター方式やインフレーション方式等の公知慣用の方法で一軸及び二軸に延伸することができる。延伸温度は、ポリ乳酸樹脂組成物のTg〜(Tg+50)℃の範囲が好ましく、Tg〜(Tg+30)℃の範囲が特に好ましく設定することができる。
【0129】
一軸延伸の場合は、ロール法による縦延伸、又はテンターによる横延伸により、縦方向又は横方向に1.3〜10倍延伸することが好ましい。二軸延伸の場合は、ロール法による縦延伸及びテンターによる横延伸により行うことが好ましい。前記延伸は、一軸目の延伸と二軸目の延伸を逐次的に行っても、同時に行っても良い。延伸倍率は、縦方向及び横方向にそれぞれ1.00〜3.00倍延伸するのが好ましい。
【0130】
前記得られた延伸フィルムを成形加工することによって、透明性、耐熱性、耐衝撃性、成形加工性が特に優れた成形体を得ることができる。前記した性能の発現は、延伸によりフィルムが配向結晶するため獲得されるが、特にフィルムの場合、トリメシン酸トリアミド化合物の結晶核剤効果、及びポリ乳酸樹脂組成物の配向結晶の相乗効果によりその性能レベルを格段に飛躍することができる。
【0131】
また、前記フィルムは延伸直後に後述するヘーズ値を損なわない範囲内で延伸された状態で熱セット処理を行うことでフィルムの歪みを除去し(収縮の抑制)、または結晶化を促進させることができる。熱セット処理温度は、ポリ乳酸樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)〜ポリ乳酸樹脂組成物の融点の範囲で行うことができるが、50%〜160℃の範囲、より好ましくは60%〜140℃の範囲で行うと、耐熱性だけではなく引張伸度、引張強度等の他のフィルム物性を向上させることができる。ただし、前記フィルムを延伸後に熱処理により完全に結晶化させてしまうと熱加工がしにくくなり、良好な成形体を得難くなる。
【0132】
熱セット処理時間は通常0.1秒〜30分間の範囲であるが、生産性等の実用性を考えた場合、この時間は短い程良いため、好ましくは0.1秒〜3分間の範囲、より好ましくは0.1秒〜1分間の範囲である。
【0133】
前記フィルムは、ヘーズ値が0.1〜50%の範囲であることが好ましく、より微細な結晶核が実現できれば、ヘーズ値が0.1〜40%の範囲である。また、特に透明性を必要な分野に適用する場合には、フィルムのヘーズ値が0.1〜10%の範囲を有することが好ましい。
【0134】
ヘーズ値の測定方法としては、ポリ乳酸樹脂組成物を80℃で3時間真空乾燥させた後、加熱プレス機を用いて200℃で加熱溶融することで、縦15cm、横15cm、厚さ200μmのフィルムを作製した。このフィルムを5cm×5cmの正方形に切り抜き、濁度計(日本電色工業株式会社製「ND−1001DP」)を用いて、JIS K 7105に準じて、フィルム表面のヘーズ値を測定した。
【0135】
前記方法で得られたフィルムは、さらにブロー加工法、真空成形法、圧空成形等の方法によって二次加工に供することができる。具体的には、前記フィルムを二次加工することによって、例えばスーパーマーケット用持ち帰りバッグ、冷凍食品や精肉等の低温の食品パックに結露する水が周囲を濡らすことを防ぐための袋、コンポストバッグ、等の袋やバッグを製造することができる。2次加工では、成形加工前後でフィルムの耐熱性を向上させるためにガラス転移温度〜150℃の範囲で熱処理することが特に好ましい。
【0136】
本発明のフィルムは、シュリンクフィルム、蒸着フィルム、ラップフィルム、食品包装、その他一般包装、ゴミ袋、レジ袋、一般規格袋、重袋等の包装や、紙おむつ及び生理用品等の衛生材料や、創傷被覆材等の医療用材料や、発芽フィルム、農業用マルチフィルム、養生フィルム及び苗木ポット等の農業資材や、トレー、カップ、皿及びメガホン等の紙製品の表面ラミネーション材料や、その他結束テープ(結束バンド)、プリペイカード、風船、セロハン粘着テープ、傘、合羽、手袋、煙草等のフィルター等の多岐にわたる用途に使用することができる。
【0137】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、例えば80℃で3時間真空乾燥させた後、加熱プレス機を用いて190℃で加熱溶融、冷却固化させることで、縦15cm、横15cm、厚み200μmのフィルムを作製することができる。前記フィルムを用いて、JIS−P−8115に準拠し、MIT耐折強度試験を行うと、3,000回以上が好ましく、5,000回以上がより好ましく、10,000回が特に好ましい。上記の回数を有することによって、成形品の割れ、脆さといった耐衝撃性の判断材料となる。ここで、汎用樹脂の1つであるPET(A−PET)では、MIT耐折強度試験で3,000回以上である。よって、MIT耐折強度試験によって、3,000回以上であることが実用上好ましい。
【0138】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物から得られるフィルムは、加熱処理することによって優れた耐熱性を有する。フィルムの耐熱性を測定する方法としては、例えば、フィルムを真空成形により成形した成形体のフランジ部分を用いて、幅20mm、長さ120mm、厚み250μmの試験片とし(試験片の長手方向に両端から長さ10mmのところに標線を付した)、該試験片の一方の端に、全重量約160gの分銅の入った容器をクリップに結びつけた治具を取り付け(クリップのつかみ部分10mm)、他方の端を適当な冶具にて固定してフィルムおよび分銅が垂下するようにする。これを100℃に設定した恒温ギアオーブン(例えば、エスペック社製GPHH−101)中に、試験片が恒温器の中央に位置するように静置し、1分間加熱した。恒温器中から、試験片を取り出して冷却した後、試料片の長さ(A:単位mm)を測定し、加熱、荷重負荷処理(温度100℃の環境下、0.4MPaの荷重を1分間負荷)後の処理前の長さに対する長さ変化率D(単位%)を次式にて算出した。例えば、Dが0%であれば実質上、その試料片は100℃の耐熱性を有すると判断することができる。
長さ変化率D=〔(A−100)/100〕×100 (%)
【0139】
上記耐熱試験方法における100℃における長さ変化率Dは、0〜30%の範囲が好ましく、優れた耐熱性を有するためには0〜10%がより好ましく、0〜5%の範囲が特に好ましい。
【0140】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物を成形加工して得られたフィルム又は容器は、優れた耐ブリード性を有する。例えば、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を成形して得られた100〜600μm厚の範囲のフィルムを10cm×10cmの正方形に切り抜き、40℃で湿度90%の恒温恒湿器に放置したとき、これらフィルム表面から少なくとも200日以上ブリードの発生が認められない。
【実施例】
【0141】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0142】
〔数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の測定方法〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置(東ソー株式会社製「HLC−8220」)を使用し、カラムとして、TSK gel SuperHZM−Mを2本、及びTSK gel SuperHZ−2000を2本と、ガードカラムとしてTSK SuperH−Hを用い、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用い、標準ポリスチレンとの比較で、ポリ乳酸、ポリ乳酸系ブロック共重合体の分子量を測定した。
【0143】
〔ガラス転移温度(Tg)の測定方法〕
ポリ乳酸系ブロック共重合体10mgを測定容器に入れ、示差走査熱量測定装置(セイコー電子工業株式会社製の「DSC 220C」)を用いて、窒素ガス流量50mL/分、加熱速度10℃/分で20℃から210℃まで昇温し、210℃で3分間ホールドさせた後、冷却速度50℃/分で−100℃まで降温し、再度、2次昇温を200℃まで行うことによって描かれたDSC曲線からガラス転移温度と融点を求めた。
【0144】
〔ポリエステルを構成するジオール構造単位、ジカルボン酸構造単位及びヒドロキシカルボン酸構造単位のモル組成比、ならびにポリ乳酸系ブロック共重合体を構成するポリヒドロキシカルボン酸構造単位とポリエステル構造単位の重量組成比の測定方法〕
H−NMR装置(日本電子株式会社製「JNM−LA300」)を用いて、ポリエステルのクロロホルム−d(CDCl)溶液を分析することで、該ポリエステルを構成する中のジオール構造単位、ジカルボン酸構造単位及びヒドロキシカルボン酸構造単位のモル組成比(モル%)を測定した。
【0145】
また、ブロック共重合体のクロロホルム−d(CDCl)溶液を上記と同様の装置を用いて分析することで、該ブロック共重合体を構成するポリヒドロキシカルボン酸構造単位とポリエステル構造単位との重量組成比(質量%)を算出した。
【0146】
製造例1〔ポリエステル(1)の製造〕
反応器にセバシン酸(以下、「SeA」と省略する。)1000gとプロピレングリコール(以下、「PG」と省略する。)414gを仕込み、窒素気流下で150℃から1時間に20℃ずつ昇温し、生成する水を留去しながら230℃まで加熱撹拌してエステル化反応を行った。230℃到達1時間後、重合触媒としてチタンテトラブトキシドを、SeAとPGとの仕込み合計量に対して70ppm加えて、3,500Paまで減圧し加熱撹拌した。さらに減圧2時間後、100Paまで減圧して7時間反応させた。反応終了後、得られたポリエステルに対して重合触媒の失活剤として2−エチルヘキサン酸ホスフェートを80ppm添加することにより数平均分子量が43,000、重量平均分子量が60,000のポリエステル(1)を得た。なお、ポリエステル(1)の酸価は0.2、ガラス転移温度は−48℃、PG由来の構造単位とSeA由来の構造単位との組成比は50.8/49.2(モル%)であった。
【0147】
製造例2〔ポリエステル(2)の製造〕
反応器にコハク酸(以下、「SuA」と省略する。)1000gとPG696gを仕込み、窒素気流下で150℃から1時間に20℃ずつ昇温し、生成する水を留去しながら220℃まで加熱撹拌してエステル化反応を行った。220℃到達1時間後、重合触媒としてチタンテトラブトキシドを、SuAとPGの仕込み合計量に対して70ppm加えて、3,500Paまで減圧し加熱撹拌した。さらに減圧1時間後、100Paまで減圧して7時間反応させた。反応終了後、得られたポリエステルに対して重合触媒の失活剤として2−エチルヘキサン酸ホスフェートを80ppm添加することにより数平均分子量が15,000、重量平均分子量が24,000のポリエステル(2)を得た。なお、ポリエステル(2)の酸価は0.5、ガラス転移温度は−4℃、PG由来の構造単位とSuA由来の構造単位との組成比は50.4/49.6(モル%)であった。
【0148】
製造例3〔ブロック共重合体(B−1)の製造〕
反応器に、ポリエチレングリコール(三洋化成工業株式会社製「PEG−20000」、数平均分子量:20,000、水酸基価:5.6mgKOH/g;以下、「PEG」と省略する。)を50g仕込み、窒素雰囲気下、ジャケット温度200℃で加熱した。その後、L−ポリ乳酸(三井化学株式会社製「レイシアH−400」:数平均分子量が92,000、重量平均分子量が170,000;以下、「L−PLA」と省略する。)を55g加えて溶融混合した。PEG及びL−PLAが均一に溶融混合したことを目視で確認した後、さらに2時間溶融混合した。次いで、エステル化触媒としてチタンテトラブトキシドを溶融混合物の全量に対して200ppm添加し、減圧度80Paで4時間反応させた。反応終了後にエステル化触媒の失活剤として、2−エチルヘキサン酸ホスフェートを、反応物の全量に対して500ppm添加し、数平均分子量が44,000、重量平均分子量が56,000のブロック共重合体(B−1)を得た。ガラス転移温度は4℃であった。
【0149】
製造例4〔ブロック共重合体(B−2)の製造〕
反応器に、製造例1で得られたポリエステル(1)を50g仕込み、窒素雰囲気下、ジャケット温度200℃で加熱した。その後、L−PLAを55g加えて溶融混合した。ポリエステル(1)及びL−PLAが均一に溶融混合したことを目視で確認した後、さらに2時間溶融混合した。次いで、エステル化触媒としてチタンテトラブトキシドを溶融混合物の全量に対して200ppm添加し、減圧度80Paで4時間反応させた。反応終了後にエステル化触媒の失活剤として、2−エチルヘキサン酸ホスフェートを、反応物の全量に対して500ppm添加し、数平均分子量が66,000、重量平均分子量が111,000のブロック共重合体(B―2)(ガラス転移温度:−47.5℃、55.5℃)を得た。
【0150】
製造例5〔ブロック共重合体(B−3)の製造〕
反応器に、PEGを25g仕込み、製造例2で得られたポリエステル(2)を25g仕込み、窒素雰囲気下、ジャケット温度200℃で加熱した。その後、L−PLAを55g加えて溶融混合した。PEG、ポリエステル(2)及びL−PLAが均一に溶融混合したことを目視で確認した後、さらに2時間溶融混合した。次いで、エステル化触媒としてチタンテトラブトキシドを溶融混合物の全量に対して200ppm添加し、減圧度80Paで4時間反応させた。反応終了後にエステル化触媒の失活剤として、2−エチルヘキサン酸ホスフェートを、反応物の全量に対して500ppm添加し、数平均分子量が48,000、重量平均分子量が58,000のブロック共重合体(B−3)(ガラス転移温度:7.5℃)を得た。
【0151】
製造例6〔ブロック共重合体(B−4)の製造〕
反応器に、PEGを50g仕込み、窒素雰囲気下、ジャケット温度200℃で加熱した。その後、D−ポリ乳酸(数平均分子量が90,000、重量平均分子量が164,000)を55g加えて溶融混合した。PEG及びD−ポリ乳酸が均一に溶融混合したことを目視で確認した後、さらに2時間溶融混合した。次いで、エステル化触媒としてチタンテトラブトキシドを溶融混合物の全量に対して200ppm添加し、減圧度80Paで4時間反応させた。反応終了後にエステル化触媒の失活剤として、2−エチルヘキサン酸ホスフェートを、反応物の全量に対して500ppm添加し、数平均分子量が41、000、重量平均分子量が63,000のブロック共重合体(B−4、ガラス転移温度4℃)を得た。
【0152】
実施例1〔ポリ乳酸樹脂組成物(P−1)の調製〕
L−PLA2400gと、製造例3で得られたブロック共重合体(B−1)600gと、トリメシン酸トリシクロへキシルアミド(新日本理化株式会社製「TF−1」、平均粒子径3μm;以下、「TF−1」と省略する。)7.5gとをドライブレンドした後、それらをシリンダー温度が240〜250℃の範囲の温度に設定した二軸混練押出機(株式会社東洋精機製作所製)を用いて溶融混合し、ペレット状であるポリ乳酸樹脂組成物(P−1)を得た。
【0153】
実施例2〔ポリ乳酸樹脂組成物(P−2)の調製〕
L−PLA2400gと、製造例5で得られたブロック共重合体(B−3)600gと、TF−1 7.5gとをドライブレンドした後、それらをシリンダー温度が240〜250℃の範囲の温度に設定した二軸混練押出機を用いて溶融混合し、ペレット状であるポリ乳酸樹脂組成物(P−2)を得た。
【0154】
実施例3〔ポリ乳酸樹脂組成物(P−3)の調製〕
L−PLA2400gと、製造例6で得られたブロック共重合体(B−4)600gと、TF−1 7.5gとをドライブレンドした後、それらをシリンダー温度が240〜250℃の範囲の温度に設定した二軸混練押出機を用いて溶融混合し、ペレット状であるポリ乳酸樹脂組成物(P−3)を得た。
【0155】
実施例4〔ポリ乳酸樹脂組成物(P−4)の調製〕
L−PLA2400gと、製造例3で得られたブロック共重合体(B−1)600gと、トリメシン酸トリ−n−ペンチルアミド(平均粒子径3μm;以下、「TP」と省略する。)30gとをドライブレンドした後、それらをシリンダー温度が240〜250℃の範囲の温度に設定した二軸混練押出機を用いて溶融混合し、ペレット状であるポリ乳酸樹脂組成物(P−4)を得た。
【0156】
実施例5〔ポリ乳酸樹脂組成物(P−5)の調製〕
L−PLA2400gと、製造例3で得られたブロック共重合体(B−1)600gと、トリメシン酸トリ−n―ヘキシルアミド(平均粒子径3μm;以下、「TH」と省略する。)7.5gとをドライブレンドした後、それらをシリンダー温度が240〜250℃の範囲の温度に設定した二軸混練押出機を用いて溶融混合し、ペレット状であるポリ乳酸樹脂組成物(P−5)を得た。
【0157】
比較例1〔ポリ乳酸樹脂組成物(P−6)の調製〕
L−PLAをシリンダー温度が240〜250℃の範囲の温度に設定した二軸混練押出機を用いて溶融混合し、ペレット状であるポリ乳酸樹脂組成物(P−6)を得た。
【0158】
比較例2〔ポリ乳酸樹脂組成物(P−7)の調製〕
L−PLA3000gと、TF−1 7.5gとをドライブレンドした後、それらをシリンダー温度が240〜250℃の範囲の温度に設定した二軸混練押出機を用いて溶融混合し、ペレット状であるポリ乳酸樹脂組成物(P−7)を得た。
【0159】
比較例3〔ポリ乳酸樹脂組成物(P−8)の調製〕
L−PLA2400gと、製造例3で得られたブロック共重合体(B−1)600gをドライブレンドした後、それらをシリンダー温度が240〜250℃の範囲の温度に設定した二軸混練押出機を用いて溶融混合し、ペレット状であるポリ乳酸樹脂組成物(P−8)を得た。
【0160】
比較例4〔ポリ乳酸樹脂組成物(P−9)の調製〕
L−PLA2400gと、製造例6で得られたブロック共重合体(B−4)600gをドライブレンドした後、それらをシリンダー温度が240〜250℃の範囲の温度に設定した二軸混練押出機を用いて溶融混合し、ペレット状であるポリ乳酸樹脂組成物(P−9)を得た。
【0161】
比較例5〔ポリ乳酸樹脂組成物(P−10)の調製〕
L−PLA2400gと、製造例4で得られたブロック共重合体(B−2)600gと、TF−1 7.5gとをドライブレンドした後、それらをシリンダー温度が240〜250℃の範囲の温度に設定した二軸混練押出機を用いて溶融混合し、ペレット状であるポリ乳酸樹脂組成物(P−10)を得た。
【0162】
比較例6〔ポリ乳酸樹脂組成物(P−11)の調製〕
L−PLA2400gと、製造例3で得られたブロック共重合体(B−1)600gと、フェニルホスホン酸亜鉛(日産化学工業株式会社製「PPA−Zn」、平均粒子径3.0μm;以下、「PPA−Zn」と省略する。)9gとをドライブレンドした後、それらをシリンダー温度が240〜250℃の範囲の温度に設定した二軸混練押出機を用いて溶融混合し、ペレット状であるポリ乳酸樹脂組成物(P−11)を得た。
【0163】
比較例7〔ポリ乳酸樹脂組成物(P−12)の調製〕
L−PLA2700gと、安息香酸系可塑剤(新日本理化株式会社製「LA−100」、分子量200のポリエチレングリコールのジ安息香酸エステル;以下、「LA−100」と省略する。)300gと、TF−1 7.5gとをドライブレンドした後、それらをシリンダー温度が240〜250℃の範囲の温度に設定した二軸混練押出機を用いて溶融混合し、ペレット状であるポリエステル組成物(P−12)を得た。
【0164】
比較例8〔ポリ乳酸樹脂組成物(P−13)の調製〕
L−PLA2700gと、アジピン酸系可塑剤(大八化学株式会社製「SN0213」;以下、「SN0213」と省略する。)300gと、TF−1 7.5gとをドライブレンドした後、それらをシリンダー温度が240〜250℃の範囲の温度に設定した二軸混練押出機を用いて溶融混合し、ペレット状であるポリエステル組成物(P−13)を得た。
【0165】
実施例1〜5及び比較例1〜8で得られたポリ乳酸樹脂組成物(P−1)〜(P−13)について、以下に示す方法で結晶化時間、冷却時間、MIT耐折強度、ヘーズ値、耐ブリード性を測定、評価又は算出した。その結果及び各ポリ乳酸樹脂組成物の組成を第1表〜第3表に示す。
【0166】
〔結晶化時間の測定〕
ポリ乳酸樹脂組成物を80℃で3時間真空乾燥させた後、加熱プレス機を用いて200℃で加熱溶融することで、縦15cm、横15cm、厚さ200μmのフィルムを作製した。5cm×5cmの正方形に切り抜いた室温のフィルムを100℃の乾燥機に入れて経時的に結晶化度を測定し、結晶化度が90%以上になる時間を測定した。結晶化度は一定時間加熱したフィルムを室温のプレスで挟んで急速冷却してから前記DSCによる方法で測定した。
【0167】
〔冷却時間の評価〕
ポリ乳酸樹脂組成物を80℃で3時間真空乾燥させた後、1oz竪型射出成型機(株式会社山城精機製作所製「SAV30」)を用いて、シリンダー温度が155℃〜185℃、金型温度が110℃、射出時間15秒の条件で、バー試験片13mm×130mm×6mm、15mm×130mm×3mm)を成形した。
【0168】
この際、冷却時間を変えて、突き出しによる変形、目視による結晶化の状態、成形品の型離れの成形品の状態確認を行って最適な冷却時間を定めた。例えば、前記成形条件で数平均分子量94,000、重量平均分子量172,000のL−PLAの冷却時間は30分以上要した。
【0169】
〔MIT耐折強度の評価〕
ポリ乳酸樹脂組成物を80℃で3時間、真空乾燥させた後、加熱プレス機を用いて190℃で加熱溶融、冷却固化させることで、縦15cm、横15cm、厚さ200μmのフィルムを作製した。前記フィルムを用いて、JIS P 8115に準拠してMIT耐折強度試験を行った。例えば、汎用樹脂の1つであるPET(A−PET)では、MIT耐折強度試験で3,000回以上である。よって、MIT耐折強度試験によって、3,000回以上であることが実用上好ましい。
【0170】
〔ヘーズ値の測定〕
ポリ乳酸樹脂組成物を80℃で3時間真空乾燥させた後、加熱プレス機を用いて200℃で加熱溶融することで、縦15cm、横15cm、厚み200μmのフィルムを作製した。かかるフィルムを5cm×5cmの正方形(200μm厚み)に切り抜き、濁度計(日本電色工業株式会社製「ND−1001DP」)を用いて、JIS K 7105に準じて、フィルム表面のヘーズ値を測定した。このヘーズ値を「加熱前ヘーズ」とする。
【0171】
さらに、このフィルムを100℃の乾燥機に入れて5分間加熱した後、ヘーズ値を測定した。このヘーズ値を「加熱後ヘーズ」とする。
【0172】
なお、上記加熱後ヘーズの値は、概ね50%以下であることが実用上好ましく、10%以下であることが実用上より好ましい。
【0173】
〔耐ブリード性の評価〕
前記方法で作製したポリ乳酸樹脂組成物からなる各フィルム(厚さ200μm)を15cm×15cmの正方形に切抜き、このフィルムを40℃、湿度90%の条件に保った恒温恒湿器(エスペック社製、型式PR−2F)内に保存した。フィルム表面にブリードが発生しているか否かを目視で観察し、以下の基準で耐ブリード性試験を評価した。
○:120日以上経過してもブリードが発生しなかったもの。
×:120日以内にブリードが発生したもの。
【0174】
〔加熱後フィルムの結晶化度の算出〕
ヘーズ値の測定で加熱したフィルム(加熱後ヘーズを測定した試料)10mgを測定容器に入れ、DSCを用いて、窒素ガス流量50mL/分、加熱速度10℃/分で20℃から210℃まで昇温し、210℃で3分間ホールドさせた後、冷却速度20℃/分で−100℃まで降温し、再度、2次昇温を200℃まで行った。2次昇温時で描かれたDSC曲線の融解熱量ピーク面積(ΔHm)と1次昇温時に描かれたDSC曲線の結晶化熱量ピーク面積(ΔHc)から次式にて結晶化度αを算出した。
結晶化度α=〔(ΔHm−ΔHc)/ΔHm〕×100 (%)
【0175】
ポリ乳酸樹脂組成物(P−6)以外のフィルムで結晶化度が、ほぼ100%であることを確認した。なお、ポリ乳酸樹脂組成物(P−6)の結晶化度は10%であった。
【0176】
【表1】

【0177】
【表2】

【0178】
【表3】

【0179】
上記の第1表〜第3表より、実施例1〜5のポリ乳酸樹脂組成物からなる成形品は、比較例1〜8のポリ乳酸樹脂組成物からなる成形品と比較して、結晶化時間、冷却時間、MIT耐折強度、加熱前後のヘーズ値及び耐ブリード性のすべてにおいてバランスが取れており、成形加工性、透明性の点で優れていた。
【0180】
実施例6〜10及び比較例9〜18
〔成形体の作製〕
実施例1〜5及び比較例1〜8で得られたポリ乳酸樹脂組成物(P−1)〜(P−13)を90℃にセットした真空乾燥機を用いて2時間乾燥させた。この後、Tダイを付設した単軸押出機(田辺プラスチックス機械社製、50mmφ、L/D=36)を用いて、厚みが250μmのフィルムを作製した。真空成形機(ハーミス社製、FE型)を用いて得られたフィルムを金型温度100℃にて底部直径60mm、高さ35mmの勘合可能な成形体(フランジ付き容器)(M−1)〜(M−13)を作製した。
【0181】
〔成形体の結晶化度の算出〕
上記で作製した成形体10mgを試料とした以外は、上記の加熱後フィルムの結晶化度の算出と同様の方法で結晶化度αを算出した。
【0182】
〔成形体の状態評価〕
上記で作製したポリ乳酸組成物からなる容器(M−1)〜(M−13)は、状態観察にて成形加工性を2段階の評価を行った。すなわち、所定時間金型冷却した後、金型形状を正確にトレースし、割れ、ひびが観察されなかったものを○、所定時間金型冷却した後、金型形状をトレースが困難、若しくは容器に割れや、ひびや、表面荒れ、金型からの成形体の離型が困難であること、ブリードが観察されたものを×とした。
【0183】
ここで、真空成形について、(1)予備加熱時間は作製したフィルムが軟化すればよく、本発明では概ね2〜6秒の範囲で適宜選択し、(2)金型保持時間は、実施例1〜5、比較例1〜8に示した結晶化時間を参考に選定し金型内にて成形体を保持し、(3)冷却時間は離型するための冷却時間をいい、一律10秒間とした。
【0184】
第4表〜第6表に実施例6〜10及び比較例9〜16で得られたポリ乳酸樹脂組成物からなる成形体の状態観察結果を示した。
【0185】
【表4】

【0186】
【表5】

【0187】
【表6】

【0188】
第4表〜第6表に示した評価結果より、実施例1〜5で得られたポリ乳酸樹脂組成物(P−1)〜(P−5)は、比較例1〜8で得られたポリ乳酸樹脂組成物(P−6)〜(P−13)と比較して、成形加工性、成形品位等の点で格段に優れていることが分かった。
【0189】
以上の評価結果より、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を用いて成形して得られる成形体は、優れた結晶化度、成形性を有しており、耐熱性、成形加工性を必要とすることから食品包装材料をはじめとする様々な分野に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸(A)と、ブロック共重合体(B)と、下記一般式(1)で表されるトリメシン酸トリアミド化合物(C)とを含有するポリ乳酸樹脂組成物であって、前記ブロック共重合体(B)が、ポリアルキレンエーテル構造単位(D)とポリヒドロキシカルボン酸構造単位(E)とを有するブロック共重合体であることを特徴とするポリ乳酸樹脂組成物。
【化1】

〔一般式(1)中のR、R及びRは、それぞれ独立に、炭化水素基を表す。〕
【請求項2】
前記ブロック共重合体(B)がガラス点移転(Tg)を1つ有する請求項1項記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)中のR、R及びRが、それぞれ独立に、炭素原子数3〜14のアルキル基である請求項1又は2記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項4】
前記一般式(1)中のR、R及びRが、それぞれ独立に、無置換のシクロへキシル基又は炭素原子数1〜6のアルキル基を置換基に有するシクロへキシル基である請求項1又は2記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項5】
前記一般式(1)中のR、R及びRが、それぞれ独立に、n−ヘキシル基またはn−ペンチル基である請求項1又は2に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項6】
前記ブロック共重合体(B)を構成するポリヒドロキシカルボン酸構造単位(E)が、グリコール酸由来の構造単位、乳酸由来の構造単位及びヒドロキシカプロン酸由来の構造単位からなる群から選ばれる1種以上の構造単位である請求項1〜5のいずれか1項記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項7】
前記ブロック共重合体(B)を構成するポリヒドロキシカルボン酸構造単位(E)が、前記ポリ乳酸(A)を構成する乳酸と光学異性の関係にある乳酸由来のポリ乳酸構造単位である請求項1〜5のいずれか1項記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリ乳酸(A)と、前記ブロック共重合体(B)との質量比(A/B)が、90/10〜30/70の範囲である請求項1〜7のいずれか1項記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポリ乳酸(A)と前記ポリ乳酸系ブロック共重合体(B)との合計100質量部に対して、前記トリメシン酸トリアミド化合物(C)を0.05〜5質量部含有する請求項1又は2に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項記載のポリ乳酸樹脂組成物からなることを特徴とするポリ乳酸樹脂成形体。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項記載のポリ乳酸樹脂組成物を、当該ポリ乳酸樹脂組成物のガラス転移温度以上140℃以下の温度にした金型に射出成形して得られるポリ乳酸樹脂成形体。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項記載のポリ乳酸樹脂組成物を溶融混練した後、急冷条件下で成形することを特徴とするポリ乳酸樹脂成形体の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項記載のポリ乳酸樹脂組成物をフィルム状に溶融押出した後、長手方向(MD方向)と幅方向(TD方向)とについて、延伸倍率がそれぞれ1〜3となるように延伸し、次いで賦形すること特徴とするポリ乳酸樹脂成形体の製造方法。

【公開番号】特開2010−150385(P2010−150385A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329865(P2008−329865)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】