説明

ポリ尿素膜およびその成膜方法

【課題】より耐薬品性に優れたポリ尿素膜およびその成膜方法を提供する。
【解決手段】脂環式ポリアミンと脂環式ポリイソシアナートを蒸着重合法により重合してなるポリ尿素によって形成された被膜。2つの蒸発源21A、21Bにそれぞれ注入された2種の原料モノマーA、Bを加熱し気化させて得られた原料ガスを混合して混合ガスとし、該混合ガスを真空チャンバ12内へ導入し、被処理体13の表面にて、前記2種の原料モノマーを蒸着重合させて、前記被処理体の表面にポリ尿素膜からなる被膜を形成するポリ尿素膜の成膜方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ尿素膜およびその成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材の表面の凹凸の平坦化、基材への断熱性の付与、基材の表面への保護膜の形成、基材の表面の滑り性の向上などを目的として、金属などからなる基材の表面に高分子膜を形成することがある。
このような高分子膜としては、アミンとイソシアナートを重合してなるポリ尿素によって形成されたポリ尿素膜が多方面で利用されている。
【0003】
従来、ポリ尿素膜の成膜方法としては、湿式法、蒸着重合法などが用いられている。
これらの成膜方法のうち、湿式法は、原料モノマーを適当な溶媒に溶解して重合させ、これを基板上に塗布する方法である。
一方、蒸着重合法は、原料モノマーを蒸発させ、これらを真空処理室内に導入し、基体の表面にて重合させて、高分子膜を形成する方法である。この方法は、溶媒を用いることなく成膜することができ、かつ、基体の表面への膜の付きまわりがよいという利点を有する。
【0004】
蒸着重合法によって成膜されたポリ尿素膜に紫外線を照射することにより、230〜300℃に加熱されても熱分解を起こすことのないポリ尿素膜が得られることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。このポリ尿素膜は、アセトンやアルカリ、紫外線に対する耐性を有するものの、アルコールに対する耐性が十分ではなかった。
【0005】
そこで、ポリ尿素膜にアルコールに対する耐性を付与するために、原料モノマーとして、脂肪族ジアミンモノマーと脂肪族ジイソシアナートモノマーを用い、これらの原料モノマーを蒸着重合法により重合してなるポリ尿素によって形成されたポリ尿素膜が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−258370号公報
【特許文献2】特開2007−134099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示されているポリ尿素膜であっても、例えば、2−プロパノール(イソプロピルアルコール)などの一部の薬品に対する耐性が十分ではなかった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、より耐薬品性に優れたポリ尿素膜およびその成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のポリ尿素膜は、脂環式ポリアミンと脂環式ポリイソシアナートを蒸着重合法により重合してなるポリ尿素によって形成された被膜であることを特徴とする。
【0010】
前記脂環式ポリアミンは、4,4´−メチレンビスシクロヘキシルアミンであることが好ましい。
【0011】
本発明のポリ尿素膜の成膜方法は、2つの蒸発源にそれぞれ注入された2種の原料モノマーを加熱し気化させて得られた原料ガスを混合して混合ガスとし、該混合ガスを真空チャンバ内へ導入し、被処理体の表面にて、前記2種の原料モノマーを蒸着重合させて、前記被処理体の表面にポリ尿素膜からなる被膜を形成するポリ尿素膜の成膜方法であって、前記2種の原料モノマーとして、脂環式ポリアミンと脂環式ポリイソシアナートを用いることを特徴とする。
【0012】
前記脂環式ポリアミンは、4,4´−メチレンビスシクロヘキシルアミンであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリ尿素膜によれば、脂環式ポリアミンと脂環式ポリイソシアナートを蒸着重合法により重合してなるポリ尿素によって形成された被膜であるので、従来よりも耐薬品性に優れ、薬品による白濁、被処理体の表面からの剥離がし難くなる。
【0014】
本発明のポリ尿素膜の成膜方法によれば、原料モノマーとして、脂環式ポリアミンと脂環式ポリイソシアナートを用いて、蒸着重合法により、被処理体の表面にポリ尿素膜を形成するので、被処理体の表面の全面に、膜厚が均一であり、かつ、透明であって、従来よりも耐薬品性に優れるポリ尿素膜を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のポリ尿素膜の成膜方法に適用される成膜装置の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のポリ尿素膜およびその成膜方法の実施の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0017】
本発明のポリ尿素膜は、基板などの被処理体の表面に蒸着重合法により形成された被膜であって、より詳細には、脂環式ポリアミンと脂環式ポリイソシアナートを蒸着重合法により重合してなるポリ尿素によって、被処理体の表面に形成された被膜である。
【0018】
脂環式ポリアミンとしては、4,4´−メチレンビスシクロヘキシルアミン(ジアミノジシクロヘキシルメタン)、1,3−アミノメチルシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1−メチル−2,4−シクロヘキサンジアミン、ジシクロへキシルメタンジアミン、5−シクロヘキシルメチル−1,3−シクロヘキサンジアミン、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3,5−シクロヘキサントリアミンなどが挙げられるが、これらの中でも、真空中での蒸発温度の観点から4,4´−メチレンビスシクロヘキシルアミンが好ましい。
【0019】
脂環式ポリイソシアナートとしては、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサン−1,3−ジイルジイソシアナート、メチレンビス(1,4−シクロヘキサンジイル)ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、ジシクロヘキシルジメチルメタン−4,4´−ジイソシアナート、1,1´−ビシクロヘキサン−4,4´−ジイルジイソシアナートなどが挙げられるが、これらの中でも、真空中での蒸発温度の観点から1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサンが好ましい。
【0020】
ポリ尿素膜の厚みは、特に限定されず、用途に応じて、10nm〜300μmとされる。
【0021】
これらの脂環式ポリアミンと脂環式ポリイソシアナートを蒸着重合法により重合してなるポリ尿素によって形成されたポリ尿素膜は、この膜が形成されている基板などの被処理体の表面を基準とした場合、等方的な構造をなす厚みが均一な膜である。また、本発明のポリ尿素膜は、従来の脂肪族ジアミンモノマーと脂肪族ジイソシアナートモノマーを用いて形成されたポリ尿素膜と違い、主鎖に飽和炭化水素の六員環を持つ。この構造により、本発明のポリ尿素膜は、従来よりも耐薬品性に優れた被膜となり、薬品による白濁、被処理体の表面からの剥離がし難くなる。
【0022】
次に、このポリ尿素膜の成膜方法について説明する。
図1は、本発明の成膜方法に適用される成膜装置の一実施形態を示す模式図である。
この実施形態の成膜装置10は、真空排気手段11を有する真空チャンバ12と、真空チャンバ12の内部にそれぞれ配された、被処理体13を保持する支持手段14と、支持手段14と対向して配され、被処理体13の一方の面13aに向けて原料ガスを導入し、被処理体13の一方の面13aに被膜を形成する成膜手段20とから概略構成されている。
また、成膜手段20は、後述する蒸発源21A、21Bと、導入管22A、22Bと、バルブ25A、25Bと、気化手段26A、26Bと、ヒーター27と、ヒーター28と、モノマー混合槽29とから概略構成されている。
【0023】
真空チャンバ12は、導入管22A、22Bを介して導入される各原料モノマーA、Bの蒸気(原料ガス)を混合するための混合槽12aと、基板(被処理体13)に対して成膜処理を行うための処理槽12bとを有している。
ここで、混合槽12aは、その上部に取り付けられた導入管22A、22Bを介して2種類の蒸発源21A、21Bに接続されている。
【0024】
2つの蒸発源21A、21Bは、ハウジング23A、23Bと、各ハウジング23A、23B内に収容された蒸発用容器24A、24Bとから構成される。そして、各蒸発用容器24A、24Bの内部には、被膜(ポリ尿素膜)を形成するための原料モノマーA、Bがそれぞれ注入されている。また、各蒸発用容器24A、24Bの近傍には、各原料モノマーA、Bを加熱するためのヒーター(図示略)が設けられている。
【0025】
各導入管22A、22Bの周囲にはヒーター27が巻き付けられ、これによって原料モノマーA、Bの温度を所定の温度に制御できるように構成されている。
また、各導入管22A、22Bの途中には、各原料モノマーA、Bの供給量を調整するためのバルブ25A、25Bが設けられている。
さらに、各導入管22A、22Bの途中において、バルブ25A、25Bと混合槽12aとの間には、各原料モノマーA、Bを加熱し気化して原料ガスとするための気化手段26A、26Bが設けられている。
【0026】
また、混合槽12aの内壁には、混合槽12a内部に導入された原料モノマーA、Bの蒸気(原料ガス)を加熱および拡散するためのヒーター28が設けられている。
一方、処理槽12bは混合槽12aの下部に気密一体的に形成され、その下部には、被処理体13を支持するための支持手段14が設けられている。この支持手段14の内部には、ヒーターおよび冷媒循環路(図示略)が設けられ、これにより被処理体13を所定の温度に加熱または冷却できるようになっている。
【0027】
また、混合槽12aと処理槽12bとの間には、混合槽12aにおいて混合された原料モノマーA、Bの混合ガスを、被処理体13に対して均一に吹き付けて供給するためのモノマー吹き付け部材29が配設されている。
このモノマー吹き付け部材29は、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ステンレス鋼(SUS)などの熱伝導のよい金属製の板状の部材からなる。このモノマー吹き付け部材29には、混合ガスが通過可能な複数の吹き出し口29aが形成されている。
【0028】
また、被処理体13を真空チャンバ12に搬入するためのアーム部材15が設けられている。
真空チャンバ12内へ被処理体13を搬入する際には、真空チャンバ12に設けられた搬入/搬出口(図示略)から、アーム部材15に保持された被処理体13が搬入され、支持手段14から上方に延びた支持部材14a上に載置される。そして、支持部材14aが下降することにより、被処理体13が支持手段14上に保持される。
一方、被処理体13を真空チャンバ12から搬出する際には、支持部材14aが上昇することにより被処理体13が上に持ち上げられ、アーム部材15に保持されて搬入/搬出口から搬出される。
【0029】
まず、アーム部材15により、被処理体13を真空チャンバ12内に搬入して、被処理体13を支持部材14a上に載置する。
次いで、支持部材14aを下降させて、被処理体13を支持手段14上に配置する。
次いで、真空排気手段11により、真空チャンバ12内および蒸発源21A、21B内を真空排気し、それぞれの内部を所定の気圧にする。
【0030】
次いで、蒸発用容器24A、24Bの近傍に設けられたヒーターにより、蒸発用容器24A、24Bを加熱して、蒸発源21A、21B(ハウジング23A、23B)内をそれぞれ、原料モノマーA、Bの飽和蒸気圧状態とする。
このとき、蒸発用容器24A、24Bの加熱温度を、所定の飽和蒸気圧となる温度に設定する。
【0031】
ここで、原料モノマーA、Bとしては、上記の脂環式ポリアミンと脂環式ポリイソシアナートが用いられる。
【0032】
次いで、被処理体13の一方の面13aに形成する被膜(ポリ尿素膜)の組成や成膜時間に応じて、原料モノマーA、Bの蒸気(原料ガス)の流量を設定し、この流量に基づいて真空チャンバ12と蒸発源21A、21Bの圧力差が求まる。そして、この圧力差に基づいて、原料モノマーA、Bの飽和蒸気圧、バルブ25A、25Bの設定圧力が求められるので、この設定圧力となるように、バルブ25A、25Bを開いて、混合槽12a内部に原料モノマーA、Bの蒸気(原料ガス)を導入し、これらの蒸気を混合して、混合ガスとする。
【0033】
次いで、混合槽12aにおいて混合された原料モノマーA、Bの混合ガスを、モノマー吹き付け部材29を介して真空チャンバ12の処理槽12b内へ導入し、被処理体13の一方の面13aに対する被膜(ポリ尿素膜)の形成(成膜)を開始する。すなわち、この工程では、モノマー吹き付け部材29により、原料モノマーA、Bの混合ガスを、被処理体13の一方の面13aに均一に吹き付けて供給する。
【0034】
これにより、被処理体13の一方の面13aにて、原料モノマーA、Bの蒸着重合反応が進行し、被処理体13の一方の面13aの全面に、ポリ尿素からなる被膜(ポリ尿素膜)が形成される。
【0035】
なお、この実施形態の成膜方法では、被処理体13の一方の面13aに形成される被膜の厚みを、用途に応じて、10nm〜300μmとすることができる。
また、被膜の厚み(膜厚)の制御は、公知の技術を適用することによって行うことができる。例えば、水晶振動子法を用いた膜厚モニタを設置して膜厚を測定しながら成膜するか、成膜時間により膜厚を制御することができる。
【0036】
この実施形態の成膜方法によれば、原料モノマーA、Bとして、脂環式ポリアミンと脂環式ポリイソシアナートを用いるので、被処理体13の一方の面13aの全面に、膜厚が均一であり、かつ、透明であって、従来よりも耐薬品性に優れるポリ尿素膜を容易に形成することができる。また、原料モノマーA、Bとして、脂環式ポリアミンと脂環式ポリイソシアナートを用いることにより、被処理体13の一方の面13aにおいてポリ尿素膜が等方的に成長する。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
「実施例1」
図1に示したような成膜装置10を用いて、プラスチック基板からなる被処理体13の一方の面13aに、ポリ尿素からなる被膜を形成した。
まず、真空チャンバ12内の支持部材14a上に、被処理体13を配置し、真空排気手段11により、真空チャンバ12内および蒸発源21A、21B内を真空排気し、真空チャンバ12内を10−4Paに減圧し、蒸発源21A、21B内を1Pa以下に減圧した。
次いで、蒸発用容器24A、24Bの近傍に設けられたヒーターにより、蒸発用容器24Aを91℃に加熱するとともに、蒸発用容器24Bを81℃に加熱して、蒸発源21A、21B内をそれぞれ、原料モノマーA、Bの飽和蒸気圧状態とする。
ここで、原料モノマーAとしては、4,4´−メチレンビスシクロヘキシルアミン(ジアミノジシクロヘキシルアミン)を用い、原料モノマーBとしては、1,3−(ビスイソシアナートメチル)シクロヘキサンを用いた。
次いで、原料モノマーA、Bの蒸気の流量が所定の量になるようにバルブ25A、25Bを開いて、混合槽12aにおいて混合された原料モノマーA、Bの混合ガスを、モノマー吹き付け部材29を介して真空チャンバ12の処理槽12b内へ導入し、被処理体13の一方の面13aの全面にポリ尿素膜を形成した。なお、真空チャンバ12の処理槽12b内へ原料モノマーA、Bの混合ガスを導入する時間を20分とした。成膜時のチャンバ圧力は0.09Paであった。
この実施例1で作製したポリ尿素膜付きのプラスチック基板を、室温(25℃)にて、2−プロパノールに1分間浸漬した後、目視により、ポリ尿素膜の状態を観察した。
その結果、ポリ尿素膜に変化は見られなかった。
【0039】
「実施例2」
実施例1で作製したポリ尿素膜付きのプラスチック基板を、50℃に調節した2−プロパノールに120分間浸漬した後、目視により、ポリ尿素膜の状態を観察した。
その結果、ポリ尿素膜に変化は見られなかった。
【0040】
「実施例3」
実施例1で作製したポリ尿素膜付きのプラスチック基板を、50℃に調節したアセトンに120分間浸漬した後、目視により、ポリ尿素膜の状態を観察した。
その結果、ポリ尿素膜に変化は見られなかった。
【0041】
「実施例4」
実施例1で作製したポリ尿素膜付きのプラスチック基板を、70℃に調節したn−オクタンに120分間浸漬した後、目視により、ポリ尿素膜の状態を観察した。
その結果、ポリ尿素膜に変化は見られなかった。
【0042】
「実施例5」
実施例1で作製したポリ尿素膜付きのプラスチック基板を、室温(25℃)にて、水酸化テトラメチルアンモニウムに1分間浸漬した後、目視により、ポリ尿素膜の状態を観察した。
その結果、ポリ尿素膜に変化は見られなかった。
【0043】
「実施例6」
実施例1で作製したポリ尿素膜付きのプラスチック基板を、室温(25℃)にて、シクロペンタンに1分間浸漬した後、目視により、ポリ尿素膜の状態を観察した。
その結果、ポリ尿素膜に変化は見られなかった。
【0044】
「比較例」
図1に示したような成膜装置10を用いて、プラスチック基板からなる被処理体13の一方の面13aに、ポリ尿素からなる被膜を形成した。
まず、真空チャンバ12内の支持部材14a上に、被処理体13を配置し、真空排気手段11により、真空チャンバ12内および蒸発源21A、21B内を真空排気し、真空チャンバ12内を10−4Paに減圧し、蒸発源21A、21B内を1Pa以下に減圧した。
次いで、蒸発用容器24A、24Bの近傍に設けられたヒーターにより、蒸発用容器24Aを83℃に加熱するとともに、蒸発用容器24Bを83℃に加熱して、蒸発源21A、21B内をそれぞれ、原料モノマーA、Bの飽和蒸気圧状態とする。
ここで、原料モノマーAとしては、1,12−ジアミノドデカンを用い、原料モノマーBとしては、ヘキサメチレンジイソシアナートを用いた。
次いで、原料モノマーA、Bの蒸気の流量が所定の量になるようにバルブ25A、25Bを開いて、混合槽12aにおいて混合された原料モノマーA、Bの混合ガスを、モノマー吹き付け部材29を介して真空チャンバ12の処理槽12b内へ導入し、被処理体13の一方の面13aの全面にポリ尿素膜を形成した。なお、真空チャンバ12の処理槽12b内へ原料モノマーA、Bの混合ガスを導入する時間を10分とした。成膜時のチャンバ圧力は0.02Paであった。
この比較例で作製したポリ尿素膜付きのプラスチック基板を、室温(25℃)にて、2−プロパノールに1分間浸漬した後、目視により、ポリ尿素膜の状態を観察した。
その結果、ポリ尿素膜は白濁していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、有機材料からなる重合膜の作製に好適な成膜方法および成膜装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
10・・・成膜装置、11・・・真空排気手段、12・・・真空チャンバ、13・・・被処理体、14・・・支持手段、15・・・アーム部材、20・・・成膜手段、21A,21B・・・蒸発源、22A,22B・・・導入管、23A,23B・・・ハウジング、24A,24B・・・蒸発用容器、25A,25B・・・バルブ、26A,26B・・・気化手段、27,28・・・ヒーター、29・・・モノマー吹き付け部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式ポリアミンと脂環式ポリイソシアナートを蒸着重合法により重合してなるポリ尿素によって形成された薄膜であることを特徴とするポリ尿素膜。
【請求項2】
前記脂環式ポリアミンは、4,4´−メチレンビスシクロヘキシルアミンであることを特徴とする請求項1に記載のポリ尿素膜。
【請求項3】
2つの蒸発源にそれぞれ注入された2種の原料モノマーを加熱し気化させて得られた原料ガスを混合して混合ガスとし、該混合ガスを真空チャンバ内へ導入し、被処理体の表面にて、前記2種の原料モノマーを蒸着重合させて、前記被処理体の表面にポリ尿素膜からなる被膜を形成するポリ尿素膜の成膜方法であって、
前記2種の原料モノマーとして、脂環式ポリアミンと脂環式ポリイソシアナートを用いることを特徴とするポリ尿素膜の成膜方法。
【請求項4】
前記脂環式ポリアミンは、4,4´−メチレンビスシクロヘキシルアミンであることを特徴とする請求項3に記載のポリ尿素膜の成膜方法。


【図1】
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【公開番号】特開2011−63865(P2011−63865A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217116(P2009−217116)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】