説明

ポンプ用タペット

【課題】 ポンプ用タペット21の軽量化に貢献できる回り止めピン24の構造を持ったポンプ用タペット21を提供する
【解決手段】 回り止めピン24を、例えば、鋼板の曲げ加工により、中空構造として軽量化した。これにより、ポンプ用タペット21の往復運動速度を高速化できると共に、燃料圧縮ストローク量の増加や燃料圧縮回数増加による燃料高圧化が可能となるので、直噴エンジンの燃料効率向上に貢献できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ポンプ用タペットに関するものであり、特に、ころ軸受を備えるポンプ用タペットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の直噴エンジンでは、シリンダー内に高圧の燃料を噴射するために高圧燃料ポンプが使用される。高圧燃料ポンプは、カム等により駆動され、カムによる回転力をポンププランジャー(ピストン)の往復運動へ効率よく伝達するために、ポンププランジャーとカムとの間にポンプ用タペットが用いられる。
【0003】
ポンプ用タペットを備える高圧ポンプに関する技術として、DE 10 2005 047 234 A1(特許文献1)に開示されたものがある。図19は、特許文献1の高圧ポンプの一部を示す断面図である。
【0004】
この特許文献1に示す高圧ポンプは、図19中の矢印Aの方向に回転運動を行なうカムシャフト1と、このカムシャフトの外径側に設けられたカム2と、このカム2と当接し、カムシャフト1の回転運動を往復直線運動としてポンププランジャー3(以下、単に「プランジャー」という)に伝達すると共に往復直線運動を行なうタペット4と、タペット4に当接して往復直線運動を行なう棒状部材としてのプランジャー3と、プランジャー3の往復直線運動に応じて燃料を送り込み高圧化させる高圧室(図示せず)と、タペット4と当接し、プランジャー3を内方側に配置するようにして設けられたバネ5と、タペット4、プランジャー3およびバネ5を収容するハウジング6とを備えている。
【0005】
タペット4、プランジャー3およびバネ5は、ハウジング6に設けられたガイド穴7内に収容されるようにして配置される。タペット4は、ガイド穴7の内径面で、図17中の上下方向、すなわち、図19中の矢印XVIIの方向またはその逆の方向に案内される。
【0006】
上記のように、タペット4は、ガイド穴7に入りカム2によって往復運動するが、ガイド穴7内でタペット4が周方向に回転しないようにタペット4の外径部に回り止めピン9aが取り付けられている。
【0007】
回り止めピン9aは、タペット4のガイド穴7への収容時に、ガイド穴7の内径面に設けた凹溝7aに収容され、これにより、ガイド穴7内におけるタペット4の周方向への回転を防止している。
【0008】
例えば、特許文献1や特許文献2に開示された回り止めピン9aは、例えば、図20に示すように、円柱形をしており、ケース9の周壁に形成した取付け孔9bに圧入固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】DE 10 2005 047 234 A1(Fig.7)
【特許文献2】特許第3823819号公報(図2、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、近年、直噴エンジンの燃焼効率向上(燃費向上)のために燃料をより高圧化(による微細化)する方向に進んでおり、燃料ポンプにおいては高圧化のために燃料圧縮のストローク量増加(=カムのリフト量アップ)や燃料圧縮回数増加(=カムリフト回数増加)が要求される。カムリフト量アップやカムリフト回数が増加するとポンプ用タペットは、より高速で往復運動するため、ポンプ用タペットに働く慣性力が大きくなり、追従性が悪くなってジャンピングなどの問題が発生する恐れがある。追従性を向上させるためにはポンプ用タペットを軽量化し、慣性力を小さく抑える必要がある。
【0011】
そこで、この発明の課題は、タペットの軽量化に貢献できる回り止めピン構造を持ったポンプ用タペットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題を解決するために、この発明は、シャフトおよびころ軸受を収容するケースの外面に、ハウジングのガイド穴の内径面に形成した凹溝に収容される回り止めピンを備え、この回り止めピンの取付け孔を前記ケースの周壁に設けたポンプ用タペットにおいて、回り止めピンを中空構造にすることにより、軽量化を図ったものである。
【0013】
回り止めピンは、例えば、鋼板を曲げ加工することによって中空構造にしている。
【0014】
回り止めピンは、ガイド穴の内径面に形成した凹溝に収容される半円筒部と、ケースの取付け孔に圧入される取付け脚部とからなり、取付け脚部の先端に、カエリを設けてもよい。カエリを設けることで、より確実に回り止めピンの抜けを防止することができる。
【0015】
さらに、回り止めピンの外周面にクラウニング加工を施してもよい。ポンプ用タペットがガイド穴内で傾くと、回り止めピンもガイド穴の溝に対して傾くため、回り止めピンの端部(角部)がガイド穴の凹溝と接触し、ガイド穴溝を摩耗させる懸念がある。このため、回り止めピンの外周面にクラウニングを設けることにより、ポンプ用タペットが傾いた際にも、ガイド穴の凹溝と回り止めの端部(角部)が接触することを抑制し、ガイド穴溝の摩耗を防止することができる。
【0016】
クラウニングは、プレス加工時に同時に設けてもよいし、機械加工等の後加工で設けてもよい。
【発明の効果】
【0017】
この発明は、以上のように、回り止めピンを中空構造にして軽量化しているので、ポンプ用タペットの往復運動速度を高速化できると共に、燃料圧縮ストローク量の増加や燃料圧縮回数増加による燃料高圧化(微細化)が可能となるため、直噴エンジンの燃料効率向上に貢献できる(燃費の向上につながる)。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の一実施形態に係るタペットを含む高圧ポンプの一部を示す断面図である。
【図2】図1に示す高圧ポンプに含まれるタペットの縦断正面図である。
【図3】図1に示す高圧ポンプに含まれるタペットの縦断側面図である。
【図4】図2および図3に示すタペットの斜視図である。
【図5】図4に示すタペットを、図4中の矢印Vの方向から見た図である。
【図6】図4に示すタペットを、図4中の矢印VIの方向から見た図である。
【図7】図4に示すタペットを、図4中の矢印VIIの方向から見た図である。
【図8】図4に示すタペットを、図4中の矢印VIIIの方向から見た横断面図である。
【図9】回り止めピンの一例を示す拡大縦断横断面図である。
【図10】回り止めピンの他の例を示す拡大縦断横断面図である。
【図11】この発明のタペットのガイド穴との関係を示す部分縦断側面図である。
【図12】回り止めピンの他の例とガイド穴のガイド溝との関係を示す部分縦断側面図である。
【図13】回り止めピンの他の例とガイド穴のガイド溝との関係を示す部分縦断側面図である。
【図14】図2に示すタペットのXIVで示す部分の拡大図である。
【図15】図2に示すタペットに含まれるころ軸受の一部を、図14中の矢印XVの方向から見た図である。
【図16】図2に示すタペットに含まれるころ軸受の一部の断面図であり、図9中のXVI−XVIで切断した断面図である。
【図17】この発明に係るタペットの他の実施形態を示す縦断正面図である。
【図18】この発明に係るタペットの他の実施形態を示す縦断側面図である。
【図19】従来のタペットを含む高圧ポンプの一部を示す断面図である。
【図20】従来の回り止めピンとタペットの取付け孔との関係を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
この発明の一実施形態に係るタペットを備える高圧ポンプ11は、カム12aがその外径側に設けられており、図1中の矢印Aの方向に回転運動を行なうカムシャフト12と、カム12aと当接し、カムシャフト12の回転運動を往復直線運動としてポンププランジャー13(以下、単に「プランジャー」という)に伝達すると共に往復直線運動を行なうタペット21と、タペット21に当接して往復直線運動を行なう棒状部材としてのプランジャー13と、プランジャー13の往復直線運動に応じて燃料を送り込み高圧化させる高圧室(図示省略)と、タペット21と当接し、プランジャー13を内方側に配置するようにして設けられたバネ14と、タペット21、プランジャー13およびバネ14を収容するハウジング15とを備えている。
【0020】
タペット21、プランジャー13およびバネ14は、ハウジング15に設けられたガイド穴16内に収容されるようにして配置される。タペット21は、ガイド穴16の内径面16aで、図1中の上下方向、すなわち、図1中の矢印Iの方向またはその逆の方向に案内される。
【0021】
カムシャフト12とタペット21とは、カム12aの外径面12bと、タペット21に含まれるころ軸受31の外輪32の外径面32aとが当接するように配置される。プランジャー13の一方端部13aは、タペット21に含まれるケース23に設けられた中間底23cと当接するように配置される。バネ14は、その一方端部が中間底23cの下方側に設けられたバネ座17と当接するように配置される。
【0022】
バネ14は下方向、すなわち、図1中の矢印Iで示す方向と逆の方向に弾性力を有する。タペット21は、バネ14の弾性力によりプランジャー13を介して、上方向、すなわち、図1中の矢印Iで示す方向に付勢されている。
【0023】
カムシャフト12の回転運動、バネ14の付勢、およびガイド穴16の内径面16aの案内等により、タペット21およびプランジャー13は、上下方向、すなわち、図1中の矢印Iの方向またはその逆の方向に往復直線運動を行なう。ここでいう往復直線運動は、図1中の矢印Iの方向またはその逆の方向への運動である。カムシャフト12が高速で回転すると、このタペット21およびプランジャー13の往復直線運動の速度も速くなる。
【0024】
高圧室は、プランジャー13の図示しない他方端部側に配置される。プランジャー13の往復直線運動により、高圧室内に供給された燃料の高圧化を図ることができる。
【0025】
次に、この発明の一実施形態に係るタペット21の構成について説明する。タペット21は、シャフト22と、シャフト22の外径側に配置され、シャフト22上に回転可能に支持されたころ軸受31と、シャフト22およびころ軸受31を収容するケース23とを備える。
【0026】
ケース23は、円筒状の周壁23aと、上下方向の空間を仕切るように周壁23aの内径面23bの途中位置に設けられた中間底23cとを備える。ケース23のうち、中間底23cの部分が、プランジャー13と当接する。周壁23aおよび中間底23cは、所定の肉厚を有する。
【0027】
周壁23aの一方端側には、図3に示すように、シャフト22を支持する一対の支持孔23d、23eが設けられている。この一対の支持孔23d、23eにシャフト22を挿入するようにして、シャフト22を配置する。シャフト22の外径側には、ころ軸受31が配置される。このようにして、ケース23は、中間底23cから周壁23aの一方端側に向かう空間23fで、シャフト22およびころ軸受31を収容する。
【0028】
シャフト22は、中空に形成され、シャフト22の端面の外周縁部をかしめ固定することにより、前記支持孔23d、23eに固定されている。符号22aは、かしめ部分を示している。シャフト22を中空にすることにより、中実のシャフトを使用する場合よりも軽量化が図れる。
【0029】
中間底23cから周壁23aの他方端側に向かう空間23gには、プランジャー13の一部が収容される。具体的には、プランジャー13の一方端部13aが中間底23cの径方向の中央部分に当接するようにして配置され、プランジャー13の一方端部13aが収容される。なお、バネ14の一方端部についても、空間23g内に収容される。
【0030】
中間底23cには、その厚み方向に貫通する4つの油孔25が設けられている(図7参照)。4つの油孔25は、プランジャー13の一方端部13aと中間底23cとの当接部分を避けるようにして設けられている。この油孔25を利用して、空間23fおよび空間23g間において、タペット21に供給される潤滑油を通油させることができる。
【0031】
ケース23には、図2に示すように、周壁23aの外径面23hから内径面23bまで貫通する凹部としての取付け孔23iが設けられている。この取付け孔23iには、その一部が外径面23hから突出するように回り止めピン24が嵌合されている。回り止めピン24は、ガイド穴16内に配置されたタペット21の位置決めを行なう。すなわち、タペット21は、ケース23の位置決めを行なう回り止めピン24を備える。
【0032】
回り止めピン24は、中空構造で、ガイド穴16の内径面に形成した凹溝16bに収容される半円筒部24bと、ケース23の取付け孔23iに圧入される取付け脚部24aとからなり、鋼板を曲げ加工して形成している。
【0033】
上記半円筒部24bの付け根部分は、対向する取付け脚部24a間の幅よりも広く鍔形状に形成され、回り止めピン24がケース23の取付け孔23i内に落ち込まないようにしている。
【0034】
また、回り止めピン24の取付け脚部24aは、取付け孔23iに圧入されているが、より確実に回り止めピン24の脱落を防止するために、取付け脚部24aの先端に図10に示すようにカエリ24cを設けることが好ましい。
【0035】
ハウジング15のガイド穴16の内径面16aには、内径面16aから凹むように図1中の矢印Iの方向に延びる凹溝16bが設けられている。タペット21のガイド穴16への収容時には、回り止めピン24の突出した半円筒部24bを、この凹溝16bに嵌合させる。これにより、ガイド穴16内におけるケース23、引いてはタペット21の周方向の位置決めを行なう。これにより、ガイド穴16内におけるタペット21の周方向への回転を防止している。
【0036】
タペット21は、回り止めピン24がガイド穴16の凹溝16bに収容されて、上下動するが、上下動する際に、図11に示すように、タペット21がガイド穴16内で傾くことがある。
【0037】
そうすると、回り止めピン24もガイド穴16の凹溝16bに対して傾くため、
回り止めピン24の端部(角部)がガイド穴16の凹溝16と接触し、ガイド穴16の凹溝16bを摩耗させる懸念がある。
【0038】
このため、図12、図13に示すように、回り止めピン24の外周面にクラウニングを設けることにより、タペット21が傾いた際にも、ガイド穴16の凹溝16bと回り止めの端部(角部)が接触することを抑制し、ガイド穴16の凹溝16bの摩耗を防止することができる。
【0039】
図12は、回り止めピン24の外周面の中央部にストレート部を残して両端だけをクラウニング加工した例であり、図13は、外周面の全体をクラウニング加工した例である。
【0040】
クラウニング加工は、プレス加工時に同時に設けてもよいし、機械加工等の後加工で設けてもよい。
【0041】
次に、タペット21に含まれるころ軸受31の構成について説明する。図14は、図2中の二点鎖線のXIVで示す部分の拡大図である。図14中の一点鎖線で、ころピッチ円31aを示している。図15は、図14に示す矢印XVの方向からころ軸受31の一部を見た図である。図16は、ころ軸受31の一部を示す断面図であり、図14中のXVI−XVI断面である。ころ軸受31は、外輪32と、外輪32とシャフト22との間に配置される複数のころ33と、複数のころ33を保持する保持器34とを備える。
【0042】
保持器34は、一対の環状部34a、34bと、ころ33を収容するポケット34cを形成するように一対の環状部34a、34bを連結する複数の柱部34dとを含む。柱部34dは、軸方向、すなわち、図15で示す断面において、紙面表裏方向に真直ぐに延びる形状である。
【0043】
保持器34は、ころ33と同様に、外輪32とシャフト22との間に配置される。複数のころ33は、保持器34に設けられた各ポケット34cにそれぞれ収容され、保持される。保持器34は、外径案内、すなわち、保持器34の外径側に配置される外輪32の内径面32bと保持器34の外径面34eとが径方向で接触するよう構成されている。また、保持器34には、外径面34eからその内方側に凹むように油溝34fが設けられている。油溝34fは、柱部34dの中央に設けられており、周方向に延びる形状である。
【0044】
カムシャフト12の回転運動により、ころ軸受31の構成部材である外輪32およびころ33も回転する。カムシャフト12が高速で回転すると、ころ33の回転も速くなる。ここで、タペット21の構成部材であるころ軸受31において、高速回転時におけるころ軸受31内でのころ33の位置を保持器34によって安定させることができる。そうすると、ころ33のスキューを抑制して、ころ軸受31の横走りを防止することができる。したがって、高速回転時におけるころ軸受31の潤滑不良、およびころ軸受31の摩耗のおそれを少なくすることができる。すなわち、このようなポンプ用タペットは、安価に製造することができると共に、長寿命化を図ることができる。
【0045】
また、このような高圧ポンプ11は、高速回転時におけるころ軸受31の潤滑不良、およびころ軸受31の摩耗のおそれを少なくすることができるタペット21を含むため、安価に製造することができると共に、短時間でより安定して燃料を高圧化することができる。
【0046】
ここで、保持器34は、外径案内であって、保持器34の外径面34eに、その表面から内方側に凹んだ油溝34fが設けられているため、保持器34と外輪32とを接触させて、保持器34の径方向の位置を安定させることができる。また、保持器34の内径面34gとシャフト22の外径面22aの通油性を向上させると共に保持器34の外径面34eと外輪32の内径面32bとの間の潤滑性を向上させ、保持器34と外輪32との摩耗を抑制することができる。したがって、保持器34、ころ33、外輪32およびシャフト22の長寿命化を図ることができる。なお、油溝は、軸方向に傾きを持って延びるように設けてもよいし、湾曲して延びるように設けてもよい。また、油溝は、複数設けられていてもよい。
【0047】
なお、保持器34は、内径案内であって、保持器34の内径面34gに、油溝が設けられるようにしてもよい。こうすることにより、保持器34とシャフト22とを接触させて、保持器34の径方向の位置を安定させることができる。また、保持器34の外径面34eと外輪32の内径面32bの通油性を向上させると共に保持器34の内径面34gとシャフト22の外径面22aとの間の潤滑性を向上させ、保持器34とシャフト22との摩耗を抑制することができる。したがって、保持器34、ころ33、外輪32およびシャフト22の長寿命化を図ることができる。
【0048】
ころ軸受31に備えられる保持器34については、樹脂製にしても良い。こうすることにより、保持器34自体を軽量にすることができ、総じてタペット21の重量を軽くすることができる。したがって、往復直線運動に要する力、ここでは、タペット21の上下方向の動きに要する力を軽減することができる。また、保持器34を樹脂製とすると、射出成形等により製造することが可能であるため、大量生産が容易となり、安価に製造することができる。保持器34の材質としては、例えば、ナイロン66やナイロン46、ポリフェニレンスルフィド(PPS)やポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。なお、必要に応じて、樹脂に炭素繊維やガラス繊維、カーボンブラック等を充填することにしてもよい。
【0049】
なお、図15において、ポケット34cに収容されたころ33の転動面33aと柱部34dの側壁面34hとのすき間の寸法については、理解を容易にする観点から、誇張して大きく図示している。
【0050】
なお、前記したタペットを構成するころおよびシャフトは、鋼製部材、例えば、SUJ2やSCM420(いずれもJIS規格)等を鍛造、切削等することにより製造される。
【0051】
ここで、前記の実施の形態においては、回り止めピンを嵌合する取付け孔23iは、ケース23の内径面から外径面まで貫通する取付け孔とすることとしたが、これに限らず、取付け孔23iは、ケース23の内径面から外径面まで貫通していなくともよい。
【0052】
なお、前記の実施の形態においては、保持器は、一対の環状部と、複数の柱部とを含むこととしたが、これに限らず、一体型ではなく複数の部材に分割されており、ころの間に配置される間座型の保持器であってもよい。
【0053】
また、前記の実施の形態において、柱部は、軸方向に真直ぐに延びる形状としたが、これに限らず、柱部が径方向に折曲げられていてもよく、例えば、V型保持器やM型保持器のような形状であってもよい。さらに、柱部の側壁面に、ころの径方向の脱落を防止するころ止め部を設けることとしてもよい。
【0054】
なお、前記の実施の形態においては、ころ軸受は、複数のころを保持する保持器を備える構成としたが、これに限らず、ころ軸受が保持器を備えない構成、すなわち、総ころ形式のころ軸受についても適用される。
【0055】
以上の実施形態は、シャフト22の外径側にころ軸受31を設けたタペット21であるが、図17及び図18に示す実施形態は、転動体を省略し、シャフト22の外径側に外輪32aを回転可能に直接設けたタペット21の例であり、前記の実施形態と共通する部分は同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
この発明に係るタペットは、自動車等のエンジンに燃料を供給する高圧ポンプに含まれ、自動車用部品として、有効に利用される。
【符号の説明】
【0058】
11 高圧ポンプ
12 カムシャフト
12a カム
13 プランジャー
13a 一方端部
15 ハウジング
16 ガイド穴
16a 内径面
16b 凹溝
21 タペット
22 シャフト
23 ケース
23a 周壁
23c 中間底
23i 取付け孔
24 回り止めピン
24a 取付け脚部
24b 半円筒部
24c カエリ
31 ころ軸受
32 外輪
33 ころ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムが設けられたカムシャフトの回転運動を往復直線運動としてポンププランジャーに伝達し、前記ポンププランジャーと共に、ハウジングのガイド穴内で往復直線運動を行なうポンプ用タペットであって、
シャフトと、シャフトの外径側に配置され、シャフト上に回転可能に支持されたころ軸受と、シャフトおよびころ軸受を収容するケースとを備え、前記ケースの外面に、前記ハウジングのガイド穴の内径面に形成した凹溝に収容される回り止めピンを備え、この回り止めピンの取付け孔を前記ケースの周壁に設け、前記回り止めピンを中空構造にしたことを特徴とするポンプ用タペット。
【請求項2】
前記中空構造の回り止めピンを、鋼板の曲げ加工により形成したことを特徴とする請求項1に記載のポンプ用タペット。
【請求項3】
前記回り止めピンが、中空構造で、ガイド穴の内径面に形成した凹溝に収容される半円筒部2と、ケースの取付け孔に圧入される取付け脚部とからなる請求項1または2に記載のポンプ用タペット。
【請求項4】
前記取付け脚部の先端に脱落防止用のカエリが設けられていること特徴とする請求項3に記載のポンプ用タペット。
【請求項5】
前記回り止めピンの外周面にクラウニングを設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポンプ用タペット。
【請求項6】
前記請求項1〜5のいずれかに記載のポンプ用タペットを用いたことを特徴とする高圧燃料ポンプ。
【請求項7】
前記請求項6の高圧燃料ポンプを用いた自動車または二輪車。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−72704(P2012−72704A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218000(P2010−218000)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】