説明

ポンプ装置

【課題】
従来のポンプ装置は制御基板を冷却するためにポンプ装置の運転に連動する制御基板用冷却ファンを載置していたので、高コストになっていた。
【解決手段】
ケーシング内に設けられた羽根車をポンプ駆動用モータにより回転させてポンプ作用を行うポンプ部と、前記ポンプ駆動用モータの回転数を変速させて前記ポンプ部を制御する制御部を有するポンプ装置において、前記ポンプ駆動用モータの外殻後部に備えられた外扇ファンと、該外扇ファンを覆うファンカバーと、前記ポンプ駆動用モータの上部に位置し、前記ファンカバーより吐出された風を前記制御部に導く導風ダクトを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のポンプ装置の発熱部品の冷却構造について図8と図9を用いて説明する。
【0003】
本ポンプ装置の発熱部品としては、ポンプ作用を発生させるために羽根車52を回転させるポンプ駆動用モータ51と、ポンプ装置の圧力を制御するためにポンプ駆動用モータ51の回転数を変速させる制御基板53と、ポンプ装置を制御する際に発生する高調波を抑制する高調波抑制コイル54が挙げられる。
【0004】
各々の発熱部品の冷却方法について説明する。
【0005】
まずポンプ駆動用モータ51であるが、外殻の素材は熱伝導性の良いアルミニウムで形成し、しかも外殻の表面積を増やすためにフィン構造としている。また、外殻後部に外扇ファン55を具備し、その外扇ファン55を円筒状のファンカバー56で覆うことにより、外扇ファン55で発生した風を効率良くポンプ駆動用モータ外殻のフィンに導風して冷却する構造になっている。
【0006】
次に、高調波抑制コイル54は、極力ポンプ駆動用モータ外殻のフィンに近接させることにより、フィンに導風した風の一部により冷却される。
【0007】
次に、制御基板53は例えば特許文献1に例示されるような構造で冷却される。特許文献1では、ポンプ駆動用モータ外殻後部に外扇ファンとファンカバーを具備し、モータの回転により外扇ファンが回転して風が発生し、発生した風がファンカバー円筒側面に部分的に形成した切欠き口より吐出されることにより制御基板53が冷却される。
【0008】
ポンプ装置市場では大水量化が求められており、ポンプ装置は大出力,大型化となる。それに従い、制御基板の発熱量も大きくなりファンカバー円筒側面に部分的に形成した切欠き口より吐出される風量では冷却できず、制御基板上に制御基板用冷却ファンを搭載し冷却する構造としている。
【0009】
【特許文献1】特開2004−84510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来のポンプ装置の発熱部品の冷却構造であるが、特に制御基板を冷却するためにポンプ装置の運転に連動する制御基板用冷却ファンを載置していることにより、高コストになっていた。
【0011】
また、この制御基板用冷却ファンはポンプ装置の運転と同時に制御基板からのON信号によって駆動するため、万一、信号線の断線およびコネクタの差し込み不具合や、異物侵入等により制御基板用冷却ファンが回転しない場合は、制御基板が熱故障に至る可能性がある。
【0012】
さらには、一般的にファン回転時には風切り音やベアリング音,異物噛込み音等の不具合が発生する。これらはポンプ駆動用モータと、制御基板用冷却ファンに起因され、複数の起因源がある。
【0013】
本発明の目的は上記課題を解決し、コストを低減するとともに、信頼性の高いポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明の特徴とするところは、ケーシング内に設けられた羽根車をポンプ駆動用モータにより回転させてポンプ作用を行うポンプ部と、前記ポンプ駆動用モータの回転数を変速させて前記ポンプ部を制御する制御部を有するポンプ装置において、前記ポンプ駆動用モータの外殻後部に備えられた外扇ファンと、該外扇ファンを覆うファンカバーと、前記ポンプ駆動用モータの上部に位置し、前記ファンカバーより吐出された風を前記制御部に導く導風ダクトを設けたことにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、制御基板用冷却ファンを廃止することができるので、コストを抑制することができるとともに、制御基板用冷却ファンの回転不具合による制御基板の熱故障を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について、添付の図面を用いて説明する。
【0017】
まず、本発明の一実施例に係るポンプ装置の概要について図1から図3を引用して説明する。
【0018】
ポンプ装置は、水通路が形成されたベース1と、ベース1の吐出側水通路部上部に載置された圧力タンク2と、ベース1の上に配置されたポンプ駆動用モータ3とポンプ駆動用モータ3の回転数を変速させてポンプ装置を制御する制御基板4(制御部)と、制御基板4と通信線で接続されポンプ装置の吐出圧力値の表示や運転圧力等の設定を切り替え操作できる表示基板5と、ポンプ装置を制御する際に発生する高調波を抑制するための高調波抑制コイル6と、ベース1の吐出側水通路部上部に載置されたポンプ装置の圧力を略直線的に検出する圧力センサー7とを備えており、これらをポンプカバー10が覆う構造である。
【0019】
ポンプ部15は、羽根車16と、この羽根車16を内置するケーシング17と、ケーシング17の前面を閉じるケーシングカバー18を有する。このポンプは、ウェスコポンプと称するもので、ケーシング17に吸込口17(a)と吐出口17(b)を有する。なお、本実施例の説明は、代表的ポンプであるウェスコポンプを例示するが、本実施例はウェスコポンプに限定されるものではない。
【0020】
ポンプ部15の上部には、気水分離室19が備わる。気水分離室19はベース1の吸込側水通路1(a)と連通するように吸込管20で接続される。
【0021】
吸込側水通路1(a)のベース1側端面には配管接続用の吸込フランジ21が取り付けられる。また、吸込管20の上部の気水分離室19内には逆止弁22が備わる。この逆止弁22は吸込口側からケーシング17側への水の流れを許すが、逆向きの流れを阻止するよう作動する。
【0022】
また、気水分離室19はベース1の吐出側水通路1(b)と連通するように吐出管23で接続される。
【0023】
吐出側水通路1(b)のベース1側端面には配管接続用の吐出フランジ24が取り付けられる。
【0024】
気水分離室19の上部にはねじ込み式の呼び水給水用栓25が備わる。この呼び水給水用栓25を外して呼び水を給水する。
【0025】
ポンプ装置の運転はポンプ駆動用モータ3を運転することにより行われる。まず、自吸運転が行われ、自吸運転が終了してから揚水運転に移行するのである。
【0026】
自吸運転では、ケーシング吐出口17(b)から気水分離室19内の呼び水が還流して、空気が排出され、ポンプ部15のケーシング吸込口17(a)から上流側の空気が徐々に抜けて水が満たされて行く。そして、水が全部に満たされると、自吸運転が終了し、揚水運転に移行するのである。
【0027】
揚水運転では、吸い上げられた水が吐出フランジ24を介して吐出配管から送り出されるのである。かかる揚水運転で、吐出配管につながる流路が閉じられると、吐出配管から下流側の圧力が上がる。通常は、この圧力を圧力センサー7が検知してポンプ駆動用モータ3の運転が止まる。
【0028】
次に、本実施例のポンプ装置の動作概略について図4のチャート図を用いて説明する。
【0029】
運転待機状態から、T1で水栓を開いて水を使い始めると、圧力タンク2に蓄水された水が流出し、ポンプ装置に設けられた圧力センサー7の検出圧力が(c)のように、およびポンプ吐出圧力が(b)のように徐々に低下する。この結果、運転開始圧力T2に到達した時点で運転を開始する。水栓の開度つまり水の使用量に応じて圧力センサー7の検出圧力も低下し、ポンプ駆動用モータ3の回転数を制御基板4で増して、ポンプ装置の吐出圧力を一定に保持しながら運転している。
【0030】
T3にて水の使用量を減じた場合には、圧力センサー7の検出圧力が上昇するので、ポンプ駆動用モータ3の回転数は減じられて、同様にポンプ装置の吐出圧力を一定に保持しながら運転している。同様にT4で再度水の使用量が増す場合、T5で水の使用量が一定となる場合も各々の状況に応じて圧力センサー7の検出圧力に伴い、ポンプ駆動用モータ3の回転数を変えて、ポンプ装置の吐出圧力を一定としているもので、この繰り返しで運転されるものである。
【0031】
そして、T6にて水栓を閉じて水の使用を終了すると停止判定領域に入り、水使用の有無を判定するためにT7でポンプ駆動用モータ3の回転数を若干下げた後、T8からT9間でポンプ駆動用モータ3の回転数を一定に保持し、この間圧力センサー7の検出圧力が低下方向への変化がないことを確認してT9でポンプ装置を停止し、待機状態となるものである。
【0032】
次に、本実施例の主要部である発熱部品の冷却構造について説明する。
【0033】
まず、従来のポンプ装置の発熱部品の冷却構造について図8と図9を用いて説明する。ポンプ装置の発熱部品としては、ポンプ作用を発生させるために羽根車52を回転させるポンプ駆動用モータ51と、ポンプ装置の圧力を制御するためにポンプ駆動用モータ51の回転数を変速させる制御基板53と、ポンプ装置を制御する際に発生する高調波を抑制する高調波抑制コイル54が挙げられる。
【0034】
各々の発熱部品の冷却方法について説明する。
【0035】
まずポンプ駆動用モータ51であるが、外殻の素材は熱伝導性の良いアルミニウムで形成し、しかも外殻の表面積を増やすためにフィン構造としている。また、外殻後部に外扇ファン55を具備し、その外扇ファン55を円筒状のファンカバー56で覆うことにより、外扇ファン55で発生した風を効率良くポンプ駆動用モータ外殻のフィンに導風して冷却する構造になっている。
【0036】
次に、高調波抑制コイル54は、極力ポンプ駆動用モータ外殻のフィンに近接させることにより、フィンに導風した風の一部により冷却される。
【0037】
次に、制御基板53であるが、制御基板53にはポンプ駆動用モータ51を駆動させるIPM等の高発熱電子部品が多く搭載されているため、制御基板53の上部にポンプ装置の運転に連動する制御基板用冷却ファン57を載置して冷却する構造としている。
【0038】
上記従来の冷却構造の大きな問題点としては、制御基板53を冷却するために制御基板用冷却ファン57を載置していることにより高コストになっていることである。
【0039】
また、この制御基板用冷却ファン57はポンプ装置の運転と同時に制御基板53からのON信号によって駆動するため、万一、信号線の断線およびコネクタの差し込み不具合,異物侵入等により制御基板用冷却ファン57が回転しない場合は、制御基板53が熱故障に至る可能性がある。
【0040】
さらには、一般的にファン回転時には風切り音やベアリング音,異物噛込み音等の不具合が発生する。これらはポンプ駆動用モータと、制御基板用冷却ファンに起因され、複数の起因源があった。
【0041】
本実施例は上記課題を解決するために、発熱部品の冷却構造について、コストを抑制した高効率,高信頼性の冷却構造に改良したものである。
【0042】
ここで、本発明に係る実施例のポンプ装置の冷却構造について図5と図6を用いて説明する。
【0043】
ポンプ駆動用モータ3の外殻後部に外扇ファン31を具備するところは従来のポンプ装置と同様であるが、ポンプ駆動用モータ3の上部には外扇ファン31が回転することにより発生した風が制御基板4に直接当たるように導く為の導風ダクト32を載置して制御基板4を効率よく冷却する構造とした。導風ダクト32はファンカバー33の上部に接合されている。
【0044】
次に風の流れについて図を用いて説明する。図5においてファンカバー33から吐出された風は全体的にポンプ駆動用モータ3の軸方向へ流れる。代表方向を矢印Xにて表す。これによるとポンプ駆動用モータ3の軸方向へ流れた風は制御基板4に向かわず制御基板4の冷却効果は低くなる。図6においてはポンプ駆動用モータ3の上下方向風の流れを表し、ポンプ駆動用モータ3の上部に載置した導風ダクト32に覆われた部分の風は軸方向から上方向に向きを変える。矢印Yにて表す。図7においてはポンプ駆動用モータ3の回転方向風の流れを表し、ポンプ駆動用モータ3の軸方向に流れる全体的な風の向きを導風ダクト32により軸方向から上方向へ変え、次に風は制御基板4へ向かい吐出され制御基板4の冷却効果を上げることになる。制御基板4へ向かい吐出される風を矢印Zにて表す。
【0045】
ポンプ駆動用モータ3の回転方向は図7より見て時計方向回転となり矢印Dにて表す。
【0046】
また、外扇ファン31は、従来のポンプ装置と同様に円筒状のファンカバー33で覆われているが、本実施例ではファンカバー33の円筒外形寸法D1を、ポンプ駆動用モータ3の外殻外形寸法D2より若干大きく形成し間隙Lを設けることにより、外扇ファン31で発生した風によりポンプ駆動用モータ3の外殻を冷却するのは勿論のこと、導風ダクト32と高調波抑制コイル6に効率よく導風することが可能となった。
【0047】
導風ダクト32を、円筒状に形成されたファンカバー33の円筒外形上部に配置することにより間隙Lは外部から塞がれることになり、外扇ファン31で発生した風を損なうことなく、工具,異物などの侵入による危険防止ができ信頼性向上を図ることができる。
【0048】
本実施例によれば、従来のポンプ装置の制御基板を冷却するために載置していた制御基板用冷却ファンを廃止することができ、コスト抑制と信頼性向上を図ることができた。
【0049】
また、本実施例によれば、ファン回転時に発生する風切り音やベアリング音,異物噛込み音等不具合の起因源を減らすことができる。
【0050】
また、本実施例によれば、導風ダクトにより、工具,異物などの侵入による危険防止ができ信頼性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施例に係るポンプ装置の縦断面図である。
【図2】図1の右側面図である。
【図3】図1のポンプカバーを外した状態の平面図である。
【図4】本発明の一実施例に係る運転制御を時系列的に示したチャート図である。
【図5】本発明の一実施例に係る導風ダクトの上部断面図である。
【図6】本発明の一実施例に係る導風ダクトを取り付けたポンプ駆動用モータの縦断面図である。
【図7】図1の背面図である。
【図8】従来例のポンプ装置の縦断面図である。
【図9】図8のポンプカバーを外した状態の平面図である。
【符号の説明】
【0052】
3 ポンプ駆動用モータ
4 制御基板
31 外扇ファン
32 導風ダクト
33 ファンカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に設けられた羽根車をポンプ駆動用モータにより回転させてポンプ作用を行うポンプ部と、前記ポンプ駆動用モータの回転数を変速させて前記ポンプ部を制御する制御部を有するポンプ装置において、
前記ポンプ駆動用モータの外殻後部に備えられた外扇ファンと、該外扇ファンを覆うファンカバーと、前記ポンプ駆動用モータの上部に位置し、前記ファンカバーより吐出された風を前記制御部に導く導風ダクトを設けたことを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ファンカバーは円筒状に形成され、前記導風ダクトは前記ファンカバーの円筒外形上部に配置させたことを特徴とするポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−24932(P2010−24932A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186634(P2008−186634)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】