説明

ポンプ

【課題】シール部材の作成が容易であり、連結部材の数又はサイズを低減することができるポンプを提供する。
【解決手段】上部のケーシング体の接合面と下部のケーシング体29の接合面33との間がゴムからなる紐状のシール部材によってシールされ、シール部材は、下部のケーシング体29の接合面33に形成されたシール溝35に嵌め込まれ、且つ、上部のケーシング体の接合面に押圧されてシール溝35の深さ方向に所定の圧縮率で圧縮され、シール溝35の長さ方向の末端部分に、シール部材の圧縮率が上記所定の圧縮率よりも高い高圧縮部36が形成されており、高圧縮部36におけるシール溝35の深さが高圧縮部以外の部分37におけるシール溝35の深さよりも浅い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1のケーシング体と第2のケーシング体とが接合面を介して接合されてなるケーシングを有するポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のポンプとしては、図10,図11に示すように、ポンプ60のケーシング61が上部のケーシング体62と下部のケーシング体63とに上下二分割されており、上部のケーシング体62に設けられた上部のフランジ部64と下部のケーシング体63に設けられた下部のフランジ部65とが複数本のボルト66で締結されたものがある。上部のフランジ部64の接合面67と下部のフランジ部65の接合面68との間にはシート状のパッキン69が挟まれて設けられ、パッキン69によって上部のフランジ部64の接合面67と下部のフランジ部65の接合面68との間がシールされている。
【0003】
尚、上記のように上部のケーシング体62の接合面67と下部のケーシング体63の接合面68との間をシート状のパッキン69でシールする構成については、例えば下記特許文献1,2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−146789
【特許文献2】実公平4−17840
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記の従来形式ではパッキン69を接合面67,68の形状に合わせて切断する必要があるため、ポンプ60の機種やサイズごとに形状の異なる多種類のパッキン69(シール部材)を作成する際の手間がかかるという問題がある。また、パッキン69の必要締付面圧を十分に確保するためには、ボルト66(連結部材)の数を増加したりサイズを増大する必要がある。
【0006】
本発明は、シール部材の作成を容易とし、かつ、連結部材の数又はサイズを低減することができるポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本第1発明は、第1のケーシング体と第2のケーシング体とが接合面を介して接合されてなるケーシングと、ケーシング内に形成された吸込側室および吐出側室とを有するポンプであって、
第1のケーシング体の接合面と第2のケーシング体の接合面との間が弾性材からなる紐状のシール部材によってシールされ、
シール部材は、第1および第2のケーシング体の少なくともいずれか一方のケーシング体の接合面に形成されたシール溝に嵌め込まれ、且つ、他方のケーシング体の接合面に押圧されてシール溝の深さ方向に所定の圧縮率で圧縮され、
シール溝の長さ方向の所定部分に、シール部材の圧縮率が上記所定の圧縮率よりも高い高圧縮部が形成されているものである。
【0008】
これによると、シール部材をシール溝に嵌め込み、接合面同士を接合して第1のケーシング体と第2のケーシング体とを連結部材で連結し、ケーシングを組み立てる。これにより、シール部材がシール溝の深さ方向に所定の圧縮率で圧縮され、第1のケーシング体の接合面と第2のケーシング体の接合面との間がシール部材によりシールされる。
【0009】
シール部材は弾性材からなる紐状の部材であるため、ポンプの機種やサイズごとにシール部材の長さを変えるだけで対応できる。したがって、従来のようにシート状のパッキンを用いる場合に比べて、接合面の形状に合わせて切断する手間を大幅に省くことができ、これにより、ポンプの機種やサイズごとにシール部材を作成する際の手間が大幅に削減される。
【0010】
また、高圧縮部以外のシール溝においては、ケーシング内の少量の液体がシール部材の内側を長さ方向に伝って流れるが、このようなシール部材の内側を長さ方向に伝う液体の流れのほとんどは高圧縮部において塞き止められる。したがって、例えば、ケーシング内の吐出側室の液体がシール部材の内側を長さ方向に伝って流れ吸込側室へ漏洩するのをほぼ防止することができる。
【0011】
また、シールに必要な面圧が低減されるため、第1のケーシング体と第2のケーシング体とを連結する連結部材の数又はサイズを低減することができる。
本第2発明におけるポンプは、ケーシングは主軸を含む平面で第1のケーシング体と第2のケーシング体とに分割され、
ケーシングに、主軸が貫通する軸貫通孔が設けられ、
軸貫通孔はケーシングの主軸軸心方向の端面に開口し、
シール溝の長さ方向における末端がケーシングの端面に開口し、
高圧縮部がシール溝の末端部分に形成されているものである。
【0012】
これによると、ケーシング内の液体がシール部材の内側を長さ方向に伝って流れシール溝の末端部分からケーシングの端面の外側へ漏洩するのを防止することができる。また、シール溝の末端がケーシングの端面に開口しているため、シール部材のシール溝への充填状況を目視で確認することができる。
【0013】
本第3発明におけるポンプは、一方のケーシング体の接合面において、シール溝の末端部分と軸貫通孔の内周面との間に、液体状のシール剤を塗布したシール剤塗布部が設けられているものである。
【0014】
これによると、シール溝の末端部分と軸貫通孔の内周面との間は液体状のシール剤でシールされるため、ケーシング内の液体がシール溝の末端部分と軸貫通孔の内周面との間を通って第1のケーシング体の接合面と第2のケーシング体の接合面との間からケーシングの端面の外側へ漏洩するのを防止することができる。
【0015】
本第4発明におけるポンプは、高圧縮部におけるシール溝の断面積が高圧縮部以外の部分におけるシール溝の断面積よりも小さいものである。
本第5発明におけるポンプは、高圧縮部におけるシール溝の深さが高圧縮部以外の部分におけるシール溝の深さよりも浅いものである。
【0016】
これによると、シール部材は高圧縮部においてより確実にシールができ、全ての領域の圧縮率が高圧縮部と同等の圧縮率となるように構成した場合と比べて、第1のケーシング体と第2のケーシング体とを連結する連結部材の数又はサイズを低減することができる。
【0017】
本第6発明におけるポンプは、高圧縮部におけるシール溝の底面に、高圧縮部以外の部分よりも次第にシール溝の深さが浅くなるように傾斜した傾斜面が形成されているものである。
【0018】
これによると、シール部材の圧縮率は高圧縮部以外の部分から傾斜面によって次第に高くなるため、上記圧縮率が急激に上昇(変化)するのを防止することができる。これにより、シール部材で無理のないシールを行なうことができる。
【0019】
本第7発明におけるポンプは、シール溝の両側面と傾斜面とが交差する隅部に、滑らかに湾曲した湾曲部が形成されているものである。
これによると、シール溝の隅部は、湾曲部として形成されているため、圧縮されて変形したシール部材によって容易に隙間無く埋められる。これにより、圧縮されて変形したシール部材とシール溝の隅部との間の隙間を無くすことができ、シール部材を長さ方向に伝う液体の流れのほとんどは高圧縮部において塞き止められる。
【0020】
本第8発明におけるポンプは、高圧縮部は、シール溝に対するシール部材の充填率が100パーセントである部分を備えるものである。
これによると、高圧縮部の上記充填率が100パーセントである部分において、シール溝は圧縮されたシール部材によって隙間無く埋められるため、シール部材の内側を長さ方向に伝う液体の流れは高圧縮部において十分に塞き止められる。
【発明の効果】
【0021】
以上、本発明によると、従来のようにシート状のパッキンを用いる場合に比べて、シール部材を接合面の形状に合わせて切断する手間を大幅に省くことができ、これにより、ポンプの機種やサイズごとにシール部材を作成する際の手間が大幅に削減され、シール部材の作成が容易になる。
【0022】
また、高圧縮部以外のシール溝においては、ケーシング内の少量の液体がシール部材の内側を長さ方向に伝って流れるが、このようなシール部材の内側を長さ方向に伝う液体の流れのほとんどは高圧縮部において塞き止められる。したがって、例えば、ケーシング内の吐出側室の液体がシール部材の内側を長さ方向に伝って流れ吸込側室へ漏洩するのをほぼ防止することができる。
【0023】
また、シールに必要な面圧が低減されるため、第1のケーシング体と第2のケーシング体とを連結する連結部材の数又はサイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるポンプの側面図である。
【図2】同、ポンプの上部のケーシング体の下面図である。
【図3】同、ポンプの下部のケーシング体の上面図である。
【図4】同、ポンプのシール部材の斜視図である。
【図5】同、ポンプのシール溝の一部拡大平面図である。
【図6】同、ポンプのシール溝の末端部分の拡大図であり、(a)は平面図、(b)は(a)におけるX−X断面図を示す。
【図7】同、ポンプのシール溝の横断面図とシール溝内で圧縮変形したシール部材の横断面図であり、(a)は図6(a)におけるY1−Y1矢視図、(b)は上記(a)におけるシール溝内で圧縮変形したシール部材、(c)は図6(a)におけるY2−Y2矢視図、(d)は上記(c)におけるシール溝内で圧縮変形したシール部材、(e)は図6(a)におけるY3−Y3矢視図、(f)は上記(e)におけるシール溝内で圧縮変形したシール部材を示す。
【図8】本発明の第2の実施の形態におけるポンプの下部のケーシング体の上面図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態におけるポンプのシール部材の図であり、(a)は斜視図、(b)は横断面図を示す。
【図10】従来のポンプの側面図である。
【図11】同、ポンプの下部のケーシング体の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明における第1の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1〜図3に示すように、11は両吸込み渦巻きポンプであり、ケーシング12には吸込口13と吐出口14とが形成されている。ケーシング12内には、吐出口14に連通する吐出側室15(渦形室)と、吐出側室15の左右両側に位置して吸込口13に連通する吸込側室16とが形成されている。
【0026】
ケーシング12には、主軸17が貫通する左右一対の軸貫通孔18が設けられている。両軸貫通孔18はそれぞれケーシング12の主軸軸心19方向の端面20に開口している。軸貫通孔18内には、主軸17とケーシング12との間を封止するグランドパッキン22等からなる軸封部23が設けられている。また、主軸17には羽根車25が設けられ、羽根車25は吐出側室15内に収納されている。尚、主軸17はモータ等の駆動装置(図示省略)によって回転駆動される。
【0027】
ケーシング12は、主軸軸心19を含む水平面(主軸を含む平面の一例)で上下に分割された上部のケーシング体28(第1のケーシング体の一例)と下部のケーシング体29(第2のケーシング体の一例)とからなる。
【0028】
図1,図2に示すように、上部のケーシング体28は、下端部に、上部のフランジ部30と上部の接合面31とを有している。また、図1,図3に示すように、下部のケーシング体29は、上端部に、下部のフランジ部32と下部の接合面33とを有している。上部のケーシング体28と下部のケーシング体29とは、互いに接合面31,33同士を接合して、複数のボルト45(連結手段の一例)により連結されている。尚、この際、上部の接合面31と下部の接合面33とは面接触しており、上部の接合面31と下部の接合面33との間が複数の紐状のシール部材34によってシールされている。図4に示すように、シール部材34は、ゴム(弾性材の一例)からなり、横断面形状が円形である。
【0029】
図3,図5〜図7に示すように、下部のケーシング体29(一方のケーシング体の一例)の接合面33には複数(図3では二本)のシール溝35が形成されている。シール部材34は、シール溝35に嵌め込まれ、且つ、上部のケーシング体28(他方のケーシング体の一例)の接合面31に押圧されてシール溝35の深さ方向(すなわち上下方向)に所定の圧縮率(例えば15〜20%)で圧縮される。
【0030】
尚、図7(a)に示すようにシール部材34の非圧縮状態での高さをH1とし、図7(b)に示すように圧縮状態での高さをH2とすると、上記圧縮率Cは下記の式によって表せる。
圧縮率C=(H1−H2)/H1
シール溝35は、幅方向において対向する一対の側面35a,35bと、両側面35a,35bの下端間に形成された底面35cとを有している。シール溝35の長さ方向における両末端がケーシング12の端面20に開口している。図3,図5,図6,図7(c)〜図7(f)に示すように、シール溝35の両末端部分(所定部分の一例)には、シール部材34の圧縮率が上記所定の圧縮率よりも高い(例えば圧縮率35〜40%)高圧縮部36が形成されている。
【0031】
高圧縮部36は、底面35cが下部の接合面33と平行である末端部36aと、底面35cが下部の接合面33に対して傾斜した傾斜部36bとを有している。
図5〜図7(e)に示した高圧縮部36(すなわち末端部36aと傾斜部36b)におけるシール溝35の幅W1と図5〜図7(a)に示した高圧縮部以外の部分37におけるシール溝35の幅W2とは同一である。また、高圧縮部36の末端部36aにおけるシール溝35の深さD1が高圧縮部以外の部分37におけるシール溝35の深さD2よりも浅い。これにより、高圧縮部36の末端部36aにおけるシール溝35の横断面積が高圧縮部以外の部分37におけるシール溝35の横断面積よりも小さくなる。
【0032】
また、図7(f)に示すように高圧縮部36の末端部36aにおいては、シール溝35に対するシール部材34の充填率が100%であり、図7(b)に示すように高圧縮部以外の部分37においては、上記充填率が100%よりも低い(例えば約80%)。
【0033】
尚、シール溝35の横断面積をA1とし、シール部材34の横断面積をA2とすると、上記充填率Fは下記の式によって表せる。
充填率F=A2/A1
また、図5〜図7(c)(d)に示すように、高圧縮部36の傾斜部36bは、末端部36aと高圧縮部以外の部分37との間に形成されている。傾斜部36bにおけるシール溝35の底面35cには、高圧縮部以外の部分37から高圧縮部36の末端部36aにかけて次第にシール溝35の深さD3が浅くなるように傾斜した傾斜面38が形成されている。
【0034】
尚、傾斜面38は所定角度αで傾斜しており、傾斜部36bにおいては、図7(c)(d)に示すように、シール溝35の両側面35a,35bと傾斜面38とが交差する隅部に、滑らかに湾曲した例えば円弧状の湾曲部40が形成されている。
【0035】
図5に示すように、下部のケーシング体29の接合面33において、シール溝35の末端部分(すなわち高圧縮部36)と軸貫通孔18の内周面との間には、液体状のシール剤を塗布したシール剤塗布部41が設けられている。
【0036】
また、図3に示すように、下部の接合面33には別のシール溝47が形成され、別のシール溝47には吐出側室15と吸込側室16との間の漏れを低減する別のシール部材48が嵌め込まれている。
【0037】
以下、上記構成における作用を説明する。
図7に示すようにシール部材34をシール溝35に嵌め込み、図1に示すように接合面31,33同士を接合して上部のケーシング体28と下部のケーシング体29とをボルト45で連結し、ケーシング12を組み立てる。これにより、シール部材34がシール溝35の深さ方向に所定の圧縮率で圧縮され、上部の接合面31と下部の接合面33との間がシール部材34によりシールされる。
【0038】
図4に示すように、シール部材34は弾性材からなる紐状の部材であるため、ポンプ11の機種やサイズごとにシール部材34の長さを変えるだけで対応できる。したがって、従来のようにシート状のパッキンを用いる場合に比べて、接合面31,33の形状に合わせて切断する手間を大幅に省くことができ、これにより、ポンプ11の機種やサイズごとにシール部材34を作成する際の手間が大幅に削減され、シール部材34の作成が容易になる。
【0039】
また、シート状のパッキンを用いる場合に比べて、シールに必要な面圧が低減されるため、ボルト45の本数又はサイズを低減することができる。
また、高圧縮部36の末端部36aにおけるシール溝35の深さD1が高圧縮部以外の部分37におけるシール溝35の深さD2よりも浅いため、シール部材34は高圧縮部36においてより確実にシールができ、全ての領域の圧縮率が高圧縮部36と同等の圧縮率となるように構成した場合と比べて、ボルト45の本数又はサイズを低減することができる。
【0040】
また、上部のケーシング体28と下部のケーシング体29とが連結された状態では、図7(f)に示すように、高圧縮部36の末端部36aにおいて、シール溝35に対するシール部材34の充填率が100%であるため、シール溝35は圧縮されたシール部材34によって隙間無く埋められている。ポンプ11が駆動している際、吐出側室15内の水圧と吸込側室16内の水圧との差によって、ケーシング12内の少量の水(液体の一例)がシール部材34の内側を長さ方向に伝って流れる。しかしながら、このようなシール部材34の内側を長さ方向に伝う水の流れは、図7(f)に示すようなシール溝35がシール部材34により隙間無く埋められた高圧縮部36の末端部36aにおいて、十分に塞き止められる。また、軸封部23の近傍において、ケーシング12内の水がシール部材34の内側を長さ方向に伝って流れシール溝35の末端部分からケーシング12の端面20の外側へ漏洩するのを防止することができる。
【0041】
また、図6に示すように、高圧縮部以外の部分37から高圧縮部36の末端部36aに至るシール部材34の圧縮率は傾斜部36bの傾斜面38によって次第に高くなる。このため、上記圧縮率が急激に上昇(変化)するのを防止することができ、これにより、傾斜部39において、シール部材34で無理のないシールを行なうことができる。
【0042】
また、傾斜部39において、シール溝35の隅部は、湾曲部40として形成されているため、図7(d)に示すように、圧縮されて変形したシール部材34によって容易に隙間無く埋められる。これにより、シール部材34とシール溝35の隅部との間の隙間を無くすことができ、シール部材34を長さ方向に伝う水の流れは高圧縮部36(すなわち末端部36aと傾斜部36b)において塞き止められる。
【0043】
また、図5に示すように、シール溝35の末端部分と軸貫通孔18の内周面との間のシール剤塗布部41は液体状のシール剤でシールされるため、ケーシング12内の水がシール溝35の末端部分と軸貫通孔18の内周面との間を通って上部の接合面31と下部の接合面33との間からケーシング12の端面20の外側へ漏洩するのを防止することができる。
【0044】
上記第1の実施の形態では、シール溝35の長さ方向の所定部分の一例として、図5に示すように、シール溝35の末端部分に高圧縮部36を形成したが、本発明における第2の実施の形態として図8に示すように、吐出側室15の周辺(すなわち点線で囲んだ円内の箇所)にシール溝35の高圧縮部36を形成してもよい。
【0045】
これによると、シール部材34の内側を長さ方向に伝う水の流れは、シール溝35がシール部材34により隙間無く埋められた高圧縮部36において、十分に塞き止められる。このため、吐出側室15内の水がシール部材34の内側を長さ方向に伝って流れ吸込側室16へ漏洩するのを防止することができる。また、この部分に液体状のシール剤を併用すれば、より確実に、吐出側室15内の水がシール部材34の内側を長さ方向に伝って流れ吸込側室16へ漏洩するのを防止することができる。
【0046】
上記第1の実施の形態では、図4に示すように、シール部材34の横断面形状を円形にしたが、第3の実施の形態として図9に示すように、シール部材34の横断面形状を、下部が平坦で且つ上部が半円形状である蒲鉾形にしてもよい。或いは、シール部材34の横断面形状を楕円形にしてもよい。
【0047】
また、上記第1の実施の形態では、高圧縮部36は、末端部36aと傾斜部36bとを備えているが、必ずしも底面35cが接合面33と平行になった末端部36aを備える必要は無く、傾斜面38を備えた傾斜部36bだけで形成されていてもよい。
【0048】
また、上記第1の実施の形態では、シール溝35の高圧縮部36の傾斜部36bのみに湾曲部40を形成したが、シール溝35の全長にわたって湾曲部40を形成してもよい。
また、上記第1の実施の形態では、高圧縮部36においてシール部材34の圧縮率を高めるために、シール溝35の断面積を変えているが、シール溝35の断面積を変えずに、シール部材34の高圧縮部36に対応する部分の直径を太くするなどして、シール部材34の形状を変えることにより、高圧縮部36においてシール部材34の圧縮率を高めてもよい。
【0049】
また、図8に示すように、別のシール溝47に高圧縮部36を形成してもよい。
尚、シール部材34の材質や圧縮率は上記実施の形態に記載されたものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の形態とすることができる。
【符号の説明】
【0050】
11 ポンプ
12 ケーシング
15 吐出側室
16 吸込側室
17 主軸
18 軸貫通孔
19 主軸軸心
20 端面
28 上部のケーシング体(第1のケーシング体,他方のケーシング体)
29 下部のケーシング体(第2のケーシング体,一方のケーシング体)
31 上部の接合面
33 下部の接合面
34 シール部材
35 シール溝
36 高圧縮部
36a 末端部(充填率が100パーセントである部分)
38 傾斜面
40 湾曲部
41 シール剤塗布部
35a,35b シール溝の側面
D1 高圧縮部におけるシール溝の深さ
D2 高圧縮部以外の部分におけるシール溝の深さ
D3 傾斜部におけるシール溝の深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のケーシング体と第2のケーシング体とが接合面を介して接合されてなるケーシングと、ケーシング内に形成された吸込側室および吐出側室とを有するポンプであって、
第1のケーシング体の接合面と第2のケーシング体の接合面との間が弾性材からなる紐状のシール部材によってシールされ、
シール部材は、第1および第2のケーシング体の少なくともいずれか一方のケーシング体の接合面に形成されたシール溝に嵌め込まれ、且つ、他方のケーシング体の接合面に押圧されてシール溝の深さ方向に所定の圧縮率で圧縮され、
シール溝の長さ方向の所定部分に、シール部材の圧縮率が上記所定の圧縮率よりも高い高圧縮部が形成されていることを特徴とするポンプ。
【請求項2】
ケーシングは主軸を含む平面で第1のケーシング体と第2のケーシング体とに分割され、
ケーシングに、主軸が貫通する軸貫通孔が設けられ、
軸貫通孔はケーシングの主軸軸心方向の端面に開口し、
シール溝の長さ方向における末端がケーシングの端面に開口し、
高圧縮部がシール溝の末端部分に形成されていることを特徴とする請求項1記載のポンプ。
【請求項3】
一方のケーシング体の接合面において、シール溝の末端部分と軸貫通孔の内周面との間に、液体状のシール剤を塗布したシール剤塗布部が設けられていることを特徴とする請求項2記載のポンプ。
【請求項4】
高圧縮部におけるシール溝の断面積が高圧縮部以外の部分におけるシール溝の断面積よりも小さいことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポンプ。
【請求項5】
高圧縮部におけるシール溝の深さが高圧縮部以外の部分におけるシール溝の深さよりも浅いことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のポンプ。
【請求項6】
高圧縮部におけるシール溝の底面に、高圧縮部以外の部分よりも次第にシール溝の深さが浅くなるように傾斜した傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項5記載のポンプ。
【請求項7】
シール溝の両側面と傾斜面とが交差する隅部に、滑らかに湾曲した湾曲部が形成されていることを特徴とする請求項6記載のポンプ。
【請求項8】
高圧縮部は、シール溝に対するシール部材の充填率が100パーセントである部分を備えることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−196665(P2010−196665A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44944(P2009−44944)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】