説明

ポールトレーラ

【課題】ポールトレーラのブレーキコントロールエアの応答遅れを、純機械的な機構により解消する。
【解決手段】リレーバルブ64が、コントロールライン34の上流側からのブレーキ指令エアを受けて、サプライライン36からコントロールライン34の下流側へとエアを補給することにより、ポールトレーラ10に搭載されたブレーキ制御に係るリレーエマージェンシーバルブ50への、ブレーキ指令エアの伝達時間を短縮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポールトレーラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6、図7に示されるように、ポールトレーラ10は、長尺の積載物12の運搬に使われるものであり、伸縮可能なドローバ14の全長を運搬する積載物12の寸法に合わせ、なおかつ、積載物12自体をフレームとしても機能させることで、回送時におけるトレーラ単体の重量の軽量化と構造の簡素化とを実現した形式のトレーラである。
ドローバ14は、相似形の断面形状を有する複数のパイプ14A、14B、14C、14D、14Eを摺動自在に組み合わせた多段伸縮構造を備えている。そして、先端のパイプ14Eには、トラクタ16のピントルフックに引っ掛けるためのルネットアイ18(図2参照)が設けられている。又、ポールトレーラ10及びトラクタ16の各々に、積載物12を載置するためのターンテーブル20、22が設置されている。なお、図6(a)〜(c)には、長尺の積載物12を積載した走行状態が示されており、図7(a)には、ドローバ14を縮めた回送状態が示されている。
【0003】
ところで、ポールトレーラ10のドローバ14は、ポールトレーラ10のターンテーブル20とトラクタ16のターンテーブル22との距離が、長尺の積載物12に対応するだけの最伸張長さを有するものである。そして、ポールトレーラ10とトラクタ16とをつなぐ、ポールトレーラ10のブレーキ作動用のジャンパホース(コントロール用、サプライ用)24と、同じく灯火、制動制御用のジャンパケーブル26も、ドローバ14の伸縮に対応するだけの長さを有している。
従来、これらジャンパホース24及びジャンパケーブル26は、ドローバ14の伸縮に追従するように、ドローバ14の所用長さの1、5倍から2倍の長さを有して、図7(b)に示されるように螺旋状に束ねられ、ドローバ14に通された環状のハンガ28の吊具30によって懸垂される構造が採用されている。そして、環状のハンガ28がいわゆるカーテンレールの要領でドローバ14の長手方向にスライドすることにより、図6(c)の最伸張状態と図7(a)の最短縮状態との間の、ドローバ14の伸縮作動時に、ジャンパホース24及びジャンパケーブル26を追従させるものである(例えば、特許文献1参照)。
このように、ポールトレーラ10のジャンパホース24及びジャンパケーブル26は、全長が一定である一般的なトレーラよりも、自ずと全長が長くなることから、ジャンパホース24により供給されるブレーキコントロールエアの、応答遅れが顕著に出現し易い。そこで、従来から、かかるブレーキコントロールエアの応答遅れを解消する技術が発明されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−105279号公報
【特許文献2】特開平9−24821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のブレーキコントロールエアの応答遅れを解消する技術は、電気的な制御機構を有しており、かつ、かかる電気的な制御機構が故障した場合を想定して、機械的な制御機構による応答遅れ解消手段も併用している。従って、構造の複雑化を招いており、かねてから、ブレーキコントロールエアの応答遅れを解消する機能を、機械的な機構のみによって成立させる仕組みが求められていた。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ポールトレーラのブレーキコントロールエアの応答遅れを、純機械的な機構により解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0007】
(1)運搬する積載物の寸法に合わせて伸縮可能なドローバと、トラクタに接続されるブレーキ作動用のジャンパホースとを備えるポールトレーラであって、前記ブレーキ作動用のジャンパホースの中間位置に、コントロールラインの上流側からのブレーキ指令エアを受けて、サプライラインから前記コントロールラインの下流側へとエアを補給するリレーバルブが設置されているポールトレーラ(請求項1)。
本項に記載のポールトレーラは、リレーバルブが、コントロールラインの上流側からのブレーキ指令エアを受けて、サプライラインからコントロールラインの下流側へとエアを補給することにより、ポールトレーラに搭載されたブレーキ制御に係るリレーバルブへの、ブレーキ指令エアの伝達時間を短縮するものである。
【0008】
(2)上記(1)項において、前記リレーバルブは、相似形の断面形状を有する複数のパイプを摺動自在に組み合わせた多段伸縮構造を有するドローバの、中間のパイプの先端位置に固定されているポールトレーラ(請求項2)。
本項に記載のポールトレーラは、リレーバルブが、相似形の断面形状を有する複数のパイプを摺動自在に組み合わせた多段伸縮構造を有するドローバの、中間のパイプに固定されていることで、ドローバの伸縮長さの如何に関わらず、概ねドローバの中間位置にリレーバルブが位置する。これにより、ブレーキ作動用のジャンパホースの、リレーバルブの上流側或いは下流側の一方に伸縮量が偏り、ジャンパホースの一部にストレスが集中することを防ぐものである。又、中間のパイプの先端位置にリレーバルブが設けられることで、中間のパイプの伸縮(特に縮側)に支障を来たすことも無い。
【0009】
(3)上記(1)、(2)項において、前記リレーバルブと前記サプライラインとの連絡配管には、二次圧縮エア供給用エアタンクが設けられているポールトレーラ(請求項3)。
本項に記載のポールトレーラは、リレーバルブとサプライラインとの連絡配管に設けられた二次圧縮エア供給用エアタンクに、サプライラインから常時エアが供給され、リレーバルブが、コントロールラインの上流側からのブレーキ指令エアを受けて、かかる二次圧縮エア供給用エアタンクからコントロールラインの下流側へとエアを安定的に補給することにより、ポールトレーラに搭載されたブレーキ制御に係るリレーバルブへの、ブレーキ指令エアの到達速度を、より確実に高めるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明はこのように構成したので、ポールトレーラのブレーキコントロールエアの応答遅れを、純機械的な機構により解消することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。なお、従来技術と同一部分若しくは相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
本発明の実施の形態に係るポールトレーラは、図1に模式的に示されるエア回路32を備えている。このエア回路32は、トラクタ16(図6、図7参照)からポールトレーラ10へとエアを供給するためのジャンパホース24として、コントロールライン34と、サプライライン36を備えている。コントロールライン34は、ブレーキ指令を伝達するための信号エアを供給するジャンパホースである。又、サプライライン36は、ポールトレーラ10のエアブレーキ用ブレーキチャンバ38、40、42、44を作動させるためのエアを、ポールトレーラ10に搭載されたエアタンク46、48に供給するためのジャンパホースである。
【0012】
そして、トラクタ16にポールトレーラ10が連結された状態では、トラクタ16から、サプライライン36及びリレーエマージェンシーバルブ50を介して、ポールトレーラ10のエアタンク46、48に、常時エアが供給される。一方、制動時には、リレーエマージェンシーバルブ50がコントロールライン34からブレーキ指令信号エアを受けて、サプライライン36経由のエアを、リレーエマージェンシーバルブ50、プレッシャコントロールリレーバルブ52又はモジュレータ54を介して、夫々、エアブレーキ用ブレーキチャンバ38、40、42、44へと、直接的に供給するものである。又、トラクタ16からのエアの供給が途絶えたような場合には、エアタンク46、48からリレーエマージェンシーバルブ50を経由して、エアブレーキ用ブレーキチャンバ38、40、42、44へとエアが供給される。
なお、図中、符号56はパーキングブレーキバルブ、符号58はダブルチェックバルブ、符号60はプレッシャコントロールバルブ、符号68、70は、トラクタ16に連結されるエアホースカップリングである。
【0013】
更に、本発明の実施の形態における特徴部分として、ブレーキ作動用のジャンパホース24の中間位置に、コントロールライン34の上流側(トラクタ16寄り)からのブレーキ指令エアを受けて、サプライライン36からコントロールライン34の下流側(ポールトレーラ10寄り)へとブレーキ指令信号エアを補給するリレーバルブ62が設置されている。又、リレーバルブ62とサプライライン36との連絡配管には、二次圧縮エア供給用エアタンク64が設けられている。これら、リレーバルブ62及び二次圧縮エア供給用エアタンク64は、可能な限り、ブレーキ作動用のジャンパホース24(コントロールライン34及びサプライライン36)の丁度中間地点に設けられることが望ましい。
又、本発明の実施の形態では、図2から図5に示されるように、相似形の矩形断面形状を有する複数のパイプ14A、14B、14C、14D、14Eを摺動自在に組み合わせた多段伸縮構造を有するドローバ14の、中間のパイプ14Cの先端位置に、ブラケット66を介して、吊り下げられるようにして固定されている。
【0014】
上記構成をなす、本発明の実施の形態に係るポールトレーラによれば、次のような作用効果を得ることが可能となる。まず、リレーバルブ64が、コントロールライン34の上流側からのブレーキ指令エアを受けて、サプライライン36からコントロールライン34の下流側へとエアを補給することにより、ポールトレーラ10に搭載されたブレーキ制御に係るリレーエマージェンシーバルブ50への、ブレーキ指令エアの伝達時間を短縮することができる。なお、リレーバルブ62及び二次圧縮エア供給用エアタンク64は、可能な限り、ブレーキ作動用のジャンパホース24の、丁度中間地点に設けられることが、最も効果的である。
【0015】
又、リレーバルブ62が、相似形の断面形状を有する複数のパイプ14A、14B、14C、14D、14Eを摺動自在に組み合わせた多段伸縮構造を有するドローバ14の、中間のパイプ14Cの先端位置に固定されていることで、ドローバ14の伸縮長さの如何に関わらず、概ねドローバ14の中間位置にリレーバルブ62が位置することとなる。よって、ブレーキ作動用のジャンパホース24の、リレーバルブ62の上流側或いは下流側の一方に伸縮量が偏り、ジャンパホース24の一部にストレスが集中することを防ぐことができる。又、中間のパイプ14Cの先端位置にリレーバルブ62が設けられることで、中間のパイプ14Cの伸縮(特に縮側)に支障を来たすことも無い。
【0016】
又、リレーバルブ62とサプライライン36との連絡配管に設けられた二次圧縮エア供給用エアタンク64に、サプライライン36から常時エアが供給され、リレーバルブ62が、コントロールライン34の上流側からのブレーキ指令エアを受けて、二次圧縮エア供給用エアタンク64からコントロールライン34の下流側へとエアを安定的に補給することにより、ポールトレーラ10に搭載されたブレーキ制御に係るリレーエマージェンシーバルブ50への、ブレーキ指令エアの到達時間を、より確実に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係るポールトレーラの、エア回路図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るポールトレーラのドローバを示すものであり、(a)は最伸張状態の平面図、(b)は同側面図、(c)は最短縮状態の拡大平面図、(d)は同拡大側面図である。
【図3】図2(c)、(d)に示される最短縮状態のドローバの、縦断面図である。
【図4】(a)は、図2、図3に示されるドローバの、中間のパイプの先端位置に固定された、リレーバルブ及び二次圧縮エア供給用エアタンクを示す下面図、(b)は中間のパイプの先端位置に、リレーバルブ及び二次圧縮エア供給用エアタンクを固定するためのブラケットを示す正面図である。
【図5】図2、図3に示されるドローバの、中間のパイプの先端位置に固定された、リレーバルブ及び二次圧縮エア供給用エアタンクを示す側面図である。
【図6】従来のポールトレーラを示すものであり、(a)は長尺の積載物を積載した状態の直線走行状態の平面図、(b)は同曲線走行状態の平面図、(c)は(a)の側面図である。
【図7】(a)は、従来のポールトレーラのドローバを縮めた回送状態の平面図、(b)は(a)のA−A断面の拡大図である。
【符号の説明】
【0018】
10:ポールトレーラ、12:積載物、14:ドローバ、 14A、14B、14C、14D、14E:パイプ、16:トラクタ、18:ルネットアイ、 20、22:ターンテーブル、24:ジャンパホース、26:ジャンパケーブル、28:ハンガ、30:吊具、32:エア回路、34:コントロールライン、36:サプライライン、 38、40,42、44:エアブレーキ用ブレーキチャンバ、 46、48:エアタンク、50:リレーエマージェンシーバルブ、52:プレッシャコントロールリレーバルブ、54:モジュレータ、56:パーキングブレーキバルブ、58:ダブルチェックバルブ、60:プレッシャコントロールバルブ、62:リレーバルブ、64:二次圧縮エア供給用エアタンク、66:ブラケット、 68、70:エアホースカップリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬する積載物の寸法に合わせて伸縮可能なドローバと、トラクタに接続されるブレーキ作動用のジャンパホースとを備えるポールトレーラであって、前記ブレーキ作動用のジャンパホースの中間位置に、コントロールラインの上流側からのブレーキ指令エアを受けて、サプライラインから前記コントロールラインの下流側へとエアを補給するリレーバルブが設置されていることを特徴とするポールトレーラ。
【請求項2】
前記リレーバルブは、相似形の断面形状を有する複数のパイプを摺動自在に組み合わせた多段伸縮構造を有するドローバの、中間のパイプの先端位置に固定されていることを特徴とする請求項1記載のポールトレーラ。
【請求項3】
前記リレーバルブと前記サプライラインとの連絡配管には、二次圧縮エア供給用エアタンクが設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のポールトレーラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−149615(P2010−149615A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328381(P2008−328381)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【Fターム(参考)】