説明

マイクシステムおよびマイク装置

【課題】 音質の劣化を防ぐ。
【解決手段】 本体装置から縦列接続される各マイク1では、音声入力手段3は、集音した音声をデジタル信号に変換し、音声入力信号としてエコーキャンセラ手段4に伝達する。エコーキャンセラ手段4は、音声入力信号に含まれるエコー成分を除去した音声信号を生成し、音声情報生成手段5へ伝達する。そして、上りデータが通信制御手段2で受信されると、音声情報生成手段5は、取得した上りデータに含まれる下流の音声情報に自マイク装置の音声信号を加算して音声情報を更新し、自マイク装置が最下流の場合は、自マイク装置の音声信号から音声情報を生成する。更新された音声情報は上りデータに設定され、通信制御手段2経由で上流に送信される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクシステムおよびマイク装置に関し、特にシステム全体を制御する本体装置と、本体装置側を上流、反対側を下流として本体装置から縦列接続され、音声信号を順次伝達するマイク装置から構成されるマイクシステムおよびそのマイク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビ会議システムに代表されるように、遠隔地間など多地点に設置された複数の端末を介して音声や映像などを送受することによって、多地点間で会議を行うことを可能にする会議システムが構築されている。
【0003】
図8は、従来の多地点間の会議システムの一例を示した構成図である。
従来の会議システムでは、各地点に配置される端末装置500、510、520がネットワークにより接続され、音声データや映像データが交換されている。各端末装置、たとえば端末装置500は、音声を集音するマイク501と、音声を出力するスピーカ503を備える。同様に、端末装置510は、カスケードに接続されるマイク511、512とスピーカ513を備え、端末装置520は、マイク521、522とスピーカ523を具備する。このような会議システムにおいて、マイク501が取得した音声は、端末装置500で音声処理され、端末装置510、520に送信された後、各端末装置のスピーカ503、513、523から出力される。
【0004】
従来、端末装置500、510、520間で送受信される音声データもしくは映像データは、図示しない多地点制御装置を介して送受信されていたが、縦列接続された端末装置間において、音声データまたは映像データを順次次段に伝達することによって、多地点制御装置を不要とする会議システムが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。このような構成の会議システムでは、各端末装置が自己のマイクが集音した音声を前段から取得した音声データに加算して続く端末装置に出力するとともに、取得した音声データに自己の音声データを加算した音声をスピーカより出力する。これにより、同時に通話することが可能となる。
【0005】
また、端末装置に接続するマイクについては、端末装置510のマイク511、512のように、カスケードに接続されたマイクのそれぞれが集音した話者の音声を音声信号に変換し、カスケード接続された他のマイクからの音声信号とミキシングして得られた混合音声信号を生成するマイク装置がある(たとえば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−23129号公報(段落番号〔0012〕〜〔0038〕、図1)
【特許文献2】特許第3379313号明細書(段落番号〔0016〕〜〔0018〕、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の構成の従来の会議システムでは、端末装置とマイクの間で伝達される音声信号はアナログ信号が用いられており、音声信号処理、たとえば、エコーキャンセラ処理や、この端末装置に接続するマイクが集音した音声信号を端末装置間で中継される音声信号に加算する処理などは、端末装置によって行われていた。
【0007】
しかしながら、音声信号に関する処理は端末装置で行われるため、マイクが多段に接続されるような場合、遠くに接続されるマイクからの音声信号を端末装置まで伝達する間に音声信号にノイズが付加されたりするなどして、音質が劣化するという問題点がある。
【0008】
また、上記の説明のように、端末装置とマイクの間では、マイク側から端末装置に音声信号が伝達されるだけであるため、マイクの状態(オン/オフ、音量、指向性など)や、端末装置に接続するマイクの本数を端末装置側で把握することができないという問題点もある。さらに、端末装置側においてマイクの状態を把握できないばかりでなく、マイクの音量調節や指向性調整などは、各マイク本体を手動で操作しなければならず、調整に手間がかかるという問題点もある。
【0009】
また、マイクをカスケード接続する際には、通常1つの電源で動作可能なマイクの個数は決められており、動作可能な個数以上のマイクを接続するとその電源系列のマイク全体で正常動作ができなくなってしまう。このような場合、カスケード接続の途中に電源を接続しなければならないが、1つの電源で接続可能なマイクの個数はマイクを接続するケーブルの長さなどによっても変動するため、電源系統を決めるのは容易ではない。従来、このような電源系統の設定は、各種条件を考慮して手動により行われており、設定までには煩雑な作業が必要であった。
【0010】
このように、従来の会議システムに使用されるマイクシステムでは、多段に接続された場合に音質の劣化を防ぐことができないばかりでなく、調整や設定を手動で行わなければならず操作性や利便性が低いという問題点がある。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、音質の劣化を防ぎ、操作性や利便性を向上させることが可能なマイクシステムおよびマイク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では上記課題を解決するために、全体を制御する本体装置とマイク装置が縦列接続するマイクシステムにおいて、装置を縦列接続する回線を介した通信を制御する通信制御手段、音声を入力する音声入力手段、エコーを除去するエコーキャンセラ手段および本体装置に向けて伝達する音声情報を生成する音声情報生成手段を具備するマイク装置と、このような構成のマイク装置が縦列接続に従って、本体装置から受信したデータを順次伝達し、最下流のマイク装置から本体装置に向けて応答データを順次伝達するマイクシステムが提供される。ここで、縦列接続の本体装置側の接続方向を上流、反対側を下流とし、本体装置から送信され、上流から下流のマイク装置に順次伝達されるデータを下りデータ、本体装置に向けて下流から上流のマイク装置に順次伝達されるデータを上りデータとする。
【0013】
通信制御手段は、この上りデータと下りデータの通信を制御し、上流から受信した下りデータは所定の処理後に下流に送信し、下流から受信した上りデータは所定の処理後に上流に送信する。音声入力手段は、集音した音声をデジタル信号に変換して音声入力信号としてエコーキャンセラ手段に出力する。エコーキャンセラ手段は、音声出力の回り込みによって音声入力信号に混入したエコー成分を除去して音声信号を生成し、音声情報生成手段に出力する。音声情報生成手段は、下流のマイク装置の音声情報を含む上りデータを取得した場合には、下流のマイク装置の音声情報に自マイク装置の音声信号を加算して音声情報を更新し、更新された音声情報を含む上りデータを通信制御手段経由で上流に送信する。
【0014】
このようなマイクシステムによれば、本体装置から縦列接続される各マイク装置が上流から受信した下りデータを下流に、下流から受信した上りデータを上流に順次伝達することにより、本体装置から下りデータが送信されると、本体装置に近い上流のマイク装置から接続順に最下流のマイク装置まで下りデータが伝達する。そして、最下流のマイク装置に到達すると、下りデータとは逆順で上りデータが各マイク装置を経由して伝達され、最終的に本体装置に伝達される。このとき、各マイク装置では、音声入力手段が集音した音声をデジタル信号に変換して音声入力信号を生成し、エコーキャンセラ手段は、音声入力信号に含まれるエコー成分を除去した音声信号を生成する。そして、上りデータが通信制御手段で受信されると、音声情報生成手段は、上りデータに含まれる下流の音声情報に自マイク装置の音声信号を加算して音声情報を更新する。自マイク装置が最下流の場合は、自マイク装置の音声信号から音声情報を生成する。そして更新された音声情報を上りデータに設定し、通信制御手段経由で上流に送信する。
【0015】
これにより、マイク装置間で伝達されても劣化しないデジタルの音声信号であって、それぞれのマイク装置で効率的にエコーキャンセラが施された音声信号がマイク装置を通過することに加算されていき、最終的に全てのマイク装置の音声信号が加算された音声信号が本体装置に伝達される。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、マイク装置が本体装置に縦列接続されるマイクシステムにおいて、各マイク装置が、集音した音声をデジタル信号に変換し、エコーキャンセラを行って音声信号を生成する。この音声信号は、縦列接続されるマイク装置の下流から順に本体装置に向けて送られる。このとき各マイク装置では、下流のマイク装置から受信した音声信号に自マイク装置の音声信号を加算して上流のマイク装置の送信する処理が行われ、これにより最終的に本体装置は、接続する全てのマイク装置の音声信号が加算された音声信号を取得する。
【0017】
このように、音声信号をデジタル信号にして伝達するため、マイク装置間で伝達しても音声信号が劣化することがない。また、各マイク装置において、エコーキャンセラを行うため、効率よくエコーキャンセラを動作させることができる。この結果、マイク装置が何台接続されていても、劣化しない良質な音声信号を本体装置へ伝達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず、実施の形態に適用される発明の概念について説明し、その後、実施の形態の具体的な内容を説明する。
図1は、実施の形態に適用される発明の概念図である。
【0019】
マイク装置(以下、マイクとする)1は、図示しない本体装置と本体装置から縦列接続された複数のマイクから成るマイクシステムにおいて、通信回線と電源ケーブルによって縦列接続されるマイクのうちの1台で、他装置との通信を制御する通信制御手段2、音声を入力する音声入力手段3、音声入力信号からエコーを除去するエコーキャンセラ手段4、他装置へ伝達する音声情報を生成する音声情報生成手段5、本体装置からの指令(コマンド)を処理するコマンド処理手段6および電源を制御する電源制御手段7を有する。このようなマイクシステムでは、本体装置から出力されたデータが縦列接続に従ってマイク間に順次伝達される。そして、接続の最下流のマイクまで到達すると、データが逆順にマイク間に伝達され、本体装置まで到達する。
【0020】
以下、本体装置から通信回線と電源ケーブルによって接続される縦列接続の本体装置側方向を上流、反対側方向を下流とする。また、本体装置から下流のマイクに向けて順次流れるデータを下りデータ、逆に最下流のマイクから本体装置に向けて接続の逆順に流れるデータを上りデータとする。
【0021】
通信制御手段2は、上流のマイクもしくは本体装置、および下流にマイクがある場合には下流のマイクとの間で、音声情報、機器情報、台数情報、電源情報、調整情報およびレファレンスデータなどのデータの送受信を制御する。上流のマイクもしくは本体装置から受信した下りデータは、所定の処理を行った後、下流のマイクに送信する。一方、下流のマイクから受信した上りデータは、所定の処理を行った後、上流のマイクもしくは本体装置に送信する。また、各マイクには、本体装置からの識別を可能とするため、機器IDが設定される。機器IDは、本体装置から送出される下りデータに設定される機器情報に基づき設定され、上流から順番に設定される。このため、マイク1は、下りデータを取得すると、機器情報に基づき自マイクの機器IDを設定するとともに、機器情報の値を1増加した下りデータを下流のマイクに送信する。これにより、接続順(下りデータの転送順)に従って、マイクに機器IDが設定される。通信制御手段2では、コマンドなど、下りデータに特定のマイクを対象とするものがあった場合、コマンドとともに付与される指定機器IDと自マイクの機器IDを照合し、対象が自マイクであるかどうかを判定する。また、上りデータには、下流に接続されているマイクの台数を示す台数情報が含まれており、下流のマイクから上りデータを受信すると、台数情報の値を1増加して上りデータを更新し、上流のマイクに送信する。自マイクが最下流の場合、台数情報には初期値を設定する。これにより、本体装置は、取得した上りデータの台数情報の値により、接続するマイクの台数を知ることができる。
【0022】
音声入力手段3は、マイク1の外部の音声を入力し、その音声信号をデジタル信号に変換してエコーキャンセラ手段4へ出力する。また、音声入力手段3は、コマンド処理手段6に従って、ミュート、音量、マイク指向性などを本体装置からの指示に従って所定の状態に設定する。
【0023】
エコーキャンセラ手段4は、自身が検出し、他装置へ送信した音声信号が音声出力されることにより、また戻って音声入力された音声信号(エコー)成分を取り除く処理を行う。たとえば、会議システムの場合、自マイクが入力した音声信号を他装置に送信し、その音声信号をスピーカで流す。スピーカから流れる音声は、再び音声信号として入力されるため、これを除去しないと音質が劣化してしまう。そこで、エコーキャンセラ手段4では、たとえば、エコーキャンセラ用のレファレンスデータを本体装置から取得し、入力した音声信号データからレファレンスデータを差し引くことによりエコーを除去する。なお、レファレンスデータは、内部で遅延のあるエコー成分を予測して算出することもできる。
【0024】
音声情報生成手段5は、通信制御手段2経由で、下流のマイクから取得した上りデータに含まれる音声情報を取得すると、エコーキャンセラ手段4より取得した自マイクの音声信号を加算して音声情報を更新する。下流のマイクから取得した音声情報には、下流のマイクの音声信号が加算された音声信号が格納されており、自マイクの音声信号を加算することにより、自マイクより下流のマイクによって生成された音声信号を合成する。また、下流にマイクが存在しない場合は、自マイクの音声信号より音声情報を生成する。さらに、音声信号を加算する際に、音声信号があらかじめ設定された条件を満たしているかどうかを判定し、条件を満たした有意な音声である場合のみ、音声情報に加算する。たとえば、有意な音声であると認められる一定レベル以上の音声信号のみを加算するようにすれば、周囲の雑音などを除去することができる。
【0025】
コマンド処理手段6は、通信制御手段2経由で取得したコマンドに従って、各種処理を行う。コマンドは、本体装置からの対象のマイクに対する指令を表すもので、本体装置より送信される下りデータ中に設定される。コマンドには、たとえば、ミュート、音量、マイク指向性などに関するマイク調整のための制御コマンドがあり、コマンド処理手段6では、制御コマンドに従って音声入力手段3が所定の状態となるように調整を行う。また、通信制御手段2経由で入力する読み出しコマンドに従って、現在の調整状態を示す調整情報を送出する。
【0026】
電源制御手段7は、マイク1の電源制御と、マイク1に接続する下流のマイクに電源を供給するか否かを制御する。マイクシステムでは、各マイクは、本体装置もしくは外部電源からの電源供給を上流のマイク経由で受ける。ここで、上流および下流のマイクは、通信制御手段2の上流および下流のマイクと同一である。電源制御手段7では、上流のマイクから供給された電源を下流のマイクに順次供給することにより、電源系を構成している。しかしながら、1つの電源で電源供給可能な台数には限界があり、その場合には外部電源が接続される。電源制御手段7は、外部電源の接続有無を検出する外部検出手段の機能も備える。そして、マイクが所定の電源から何番目に接続されているかを示す電源情報を下りデータに付加し、順次この電源情報を伝達することにより電源制御を行っている。すなわち、上流からの下りデータの電源情報に基づいて、自マイクが電源から何番目に接続されているかを知り、接続台数が1つの電源で接続可能な最大接続台数に到達しているかどうかを判定する。自マイクではまだ最大接続台数に到達していない場合は、さらに電源接続可と判断し、下流のマイクに電源を供給する。そして、電源情報の値を増加して下りデータを更新し、通信制御手段2経由で下流のマイクに送信する。電源情報の値をいくつ増加させるかは、ケーブルの長さに応じて決まる。所定の電源が供給可能なマイク台数は、電源ケーブルの長さに応じて決まり、電源ケーブルが長いほど台数は少なくなる。そこで、電源ケーブルが長い場合は、電源値を通常より多い値で増加させ、電源供給する台数を少なくする。自マイクで最大接続台数に到達している場合は、下流のマイクに電源を供給しない。しかし、下流のマイクに外部電源が接続され、電源を供給しなくても動作する場合があるので、下りデータは送信する。一方、自マイクに外部電源が接続されている場合には、自マイクから最大接続台数まで電源を供給できるので、下流のマイクに電源を供給するとともに、電源情報の値を初期化して下りデータを更新し、通信制御手段2経由で下流のマイクに送信する。電源制御の詳細については、後述する。
【0027】
以上の構成のマイクシステムの動作について説明する。
図に示したマイク1と同様に構成される複数のマイクが通信回線と電源ケーブルにより縦列接続され、システム全体を制御する本体装置に接続する。
【0028】
本体装置からは、所定のタイミングで縦列接続するマイク群に向けて下りデータが送信される。下りデータには、機器情報、電源情報、本体装置から指令がある場合にはそのコマンドと対象マイクを指定する指定機器ID、エコーキャンセラ用のレファレンスデータなどが必要に応じて設定されている。
【0029】
マイク1は、下りデータを通信制御手段2で受信すると、所定の処理を行い、更新された下りデータを下流のマイクに送信する。まず、下りデータに含まれる機器情報に基づいて自マイクの機器IDを設定するとともに、機器情報の値を増加して下りデータを更新する。下りデータにコマンドが設定されている場合、指定機器IDと自マイクの機器IDが一致する場合には、コマンド処理手段6がそのコマンドの対応処理を実行する。下りデータにレファレンスデータが設定されている場合には、エコーキャンセラ手段4に伝達され、エコーキャンセラ手段4は、以降のエコー処理でこのレファレンスデータを使用する。さらに、下りデータに設定された上流に電源接続するマイクの台数を表した電源情報に基づき、電源制御手段7は、自マイクによる接続で電源接続が可能な最大接続台数に到達するかによって、下流のマイクの電源接続の可否を判定する。可の場合は、電源供給を行うとともに、電源情報を増加して更新した下りデータを下流のマイクに送信する。不可の場合は、下流のマイクに電源供給を行わない。また、自マイクが外部電源に接続している場合には、下流のマイクに電源供給を行うとともに、電源情報を初期化し、電源情報を更新する。こうして、一連の処理終了後、機器情報や電源情報などが更新された下りデータを下流のマイクに送信する。
【0030】
一方、下りデータ処理とは別に、各マイクは、音声入力手段3により周囲の音声を入力し、デジタル信号に変換して音声入力信号を生成する。音声入力信号は、エコーキャンセラ手段4でエコー成分が除去された音声信号となり音声情報生成手段5へ伝達される。
【0031】
以上のように、それぞれのマイクは、音声信号処理を行うとともに、本体装置から送出され、順次伝達される下りデータに応じたデータ処理を実行する。
こうして下りデータが縦列接続の最下流のマイクに到達すると、この最下流のマイクは上りデータを生成し、本体装置に向けて上流のマイクに送信する。上りデータには、音声情報、台数情報、コマンドに対する応答データなどが必要に応じて設定される。自マイクが最下流のマイク1は、音声情報生成手段5においてエコーキャンセラ手段4の音声信号に基づいて音声情報を生成し、上りデータに設定する。なお、音声信号が有意である場合のみ、音声信号が音声情報に反映される。さらに、上りデータに、台数情報の初期値と、必要であれば、コマンドに対する応答データを設定する。また、マイク1が接続の途中にあり、下流のマイクから上りデータを受信した場合、音声情報生成手段5は、自マイクの音声信号が有意であれば、上りデータに含まれる音声情報に自マイクの音声信号を加算して音声情報を更新する。さらに、台数情報の値を増加して更新し、必要であればコマンドに対する応答データを設定する。
【0032】
こうして、一連の処理終了後、マイクの情報が加えられた上りデータが上流に送信され、最終的に本体装置が上りデータを受信する。各マイクでデジタル変換された音声信号は、何台のマイクを経て伝送された場合でも劣化することがない。また、エコーキャンセラ処理も各マイクで行うので効果的に動作させることができる。この結果、何台のマイクが接続されていたとしても、本体装置は劣化していない良質な音声信号を取得することができる。また、コマンドを用いて本体装置から各マイクに指示を与えると、各マイクがそのコマンドを自動処理するので、マイクシステム全体のコントロールが容易になるという利点がある。さらに、電源供給の制御をマイクが自動的に行うので、電源管理が容易になるという利点もある。
【0033】
以下、実施の形態をテレビ会議システムの音声処理に適用した場合を例に図面を参照して詳細に説明する。図2は、実施の形態のテレビ会議システムに適用されるマイクシステムの構成図である。
【0034】
実施の形態のテレビ会議システムは、テレビ会議システム本体(以下、本体とする)200に対し、マイク1(100)、マイク2(101)、マイク3(102)およびマイク4(103)が通信路301、302、303、304と電源信号路311、312、313、314によってカスケード接続されている。各マイクは同じ構成であるので、以下、マイク1(100)の場合で説明する。
【0035】
マイク1(100)は、音声処理を行うDSP(Digital Signal Processor)110、電源処理を行う電源制御回路120とDC−DC変換器121、シリアル通信を制御するシリアルI/F FPGA(Field Programmable Gate Array)130、マイクのオン/オフスイッチ140、および音声を入力する集音部150とA/D変換器151を有する。以下、シリアルI/F FPGA130をシリアルI/F130と表記する。
【0036】
DSP110は、エコーキャンセラ手段4および音声情報生成手段5を構成し、音声検出111、選択スイッチ112、加算器113およびエコーキャンセラ114を具備する。音声検出111は、オン/オフスイッチ140の状態を検出し、状態に応じて選択スイッチ112を操作する。すなわち、オンの場合は、選択スイッチ112を接続し、集音部150からの入力信号を加算器113に出力する。また、オフの場合は、選択スイッチ112を操作して集音部150からの入力を切り離す。加算器113は、シリアルI/F130から入力されるカスケード接続された他マイクの音声情報と(Cascade In)、選択スイッチ112を介して入力する自マイクの音声信号を加算し、シリアルI/F130を介して送信する(Cascade out)。エコーキャンセラ114は、本体200より取得した、自身が送信した音声が相手側へ送られてから戻ってくる音(エコー)に関する情報(Line Audio)を取得し、これに基づいてエコー取り除いて出力する。また、図示しない制御部によって、シリアルI/F130を介して制御指令を入力し、指令に応じた処理を行う(Control I/O)。なお、DSP110は、シリアルI/F130を介して入力する下りデータに応じて動作クロックを発生させる。
【0037】
電源制御回路120は、上流の本体200から供給されたDC電源をDC−DC121へ送るとともに、下流に電源を供給するかどうかを判断し、供給する場合は、電源信号路312を介してマイク2(101)へ電源を供給する制御を行う。このとき、自マイクに外部DC電源400が接続されているか否か、下流に接続する電源ケーブルの長短なども考慮し、下流に電源供給を行うかどうかを判断する。
【0038】
シリアルI/F130は、本体200から送信される下りデータを入力し、所定の処理を行うとともに、下りデータを下流のマイク2(101)へ出力する。また、下流のマイク2(101)から入力された上りデータに対し音声情報に自マイクの音声信号を加算するなどの処理を行った後、上流の本体200に出力する。以下、通信される下りデータおよび上りデータを総称して通信コマンドとする。
【0039】
オン/オフスイッチ140は、マイク1(100)のオン/オフを操作するための外部スイッチである。
集音部150は、外部の音声を入力してA/D151へ送る。A/D151は、集音部150の生成したアナログの音声信号をデジタル信号に変換してエコーキャンセラ114へ出力する。
【0040】
本体200は、カスケード接続するマイク1(100)、マイク2(101)、マイク3(102)、マイク4(103)と通信コマンドを介して情報交換して、これらのマイクを管理している。
【0041】
外部DC電源400は、必要に応じて、各マイクに接続され、電源を供給する。
以上の構成のテレビ会議システムの動作について説明する。ここでは、DSP110による音声処理を中心として、マイクおよびマイクシステムの動作について説明する。
【0042】
集音部150は、周囲の音声を入力し、音声に応じたアナログ信号を生成してA/D変換器151へ出力する。A/D変換器151は、音声に応じて生成されたアナログ信号をデジタルに変換し、音声入力信号としてDSP110に出力する。一方、マイク機能のオン/オフを選択可能にするオン/オフスイッチ140は、利用者のマイクの使用状況に応じて任意にオン/オフされる。オン/オフスイッチ140の状態は、DSP110から読み出し可能である。
【0043】
DSP110では、エコーキャンセラ114が、シリアルI/F130経由で取得したレファレンスデータを用いて、A/D変換器151から入力された音声入力信号からエコー成分を除去し、音声信号を生成する。この音声信号は、選択スイッチ112経由で加算器113に出力される。音声検出111では、オン/オフスイッチ140の状態を検出し、オンであれば選択スイッチ112を接続状態とし、エコーキャンセラ114の生成した音声信号を加算器113に出力する。一方、オフであれば、選択スイッチ112を切り離し、音声信号を加算器113に出力しない。また、加算器113は、選択スイッチ112を介して入力する音声信号と、シリアルI/F13を介して入力する下流のマイクの音声信号(Cascade In)を加算し、出力する(Cascade Out)。
【0044】
このように、DSP110では、オン/オフスイッチ140がオンの場合には、自マイク(マイク1(100))が検出したエコーキャンセラを施した音声信号を下流からの音声情報に加算し、上流に送信する。一方、オフの場合には、自マイクの音声信号を加算せずに、上流に送信する。従って、本体200は、オン/オフスイッチ140がオンの場合のみ、マイク1の音声信号を取得することができる。音声信号はデジタル信号に変換されており、複数台のマイクのDSP110によって音声信号の加算処理が行われても、音質信号が劣化することがない。さらに、エコーキャンセラ114によって各マイクにおいてエコーキャンセラが実施されるため、全てのマイクの音声信号を取得した本体側でエコーキャンセラを行う場合に比べて、効率的かつ効果的にエコーキャンセラを行うことができる。この結果、マイクが何台も接続されている場合でも、本体200において良質な音声信号を得ることができる。
【0045】
次に、上記手順により生成された音声情報(音声信号)や、機器情報、電源情報、制御コマンドなどの通信制御を行うシリアルI/F130の詳細について説明する。図3は、本発明の実施の形態の通信インタフェースの構成を示したブロック図である。図2と同じものには同じ番号を付し、説明は省略する。
【0046】
シリアルI/F130は、通信路301によって上流側装置(マイクもしくは本体)と、通信路302によって下流のマイクと接続し、通信コマンドを受信する受信ブロック131、通信コマンドを送信する送信ブロック132、通信コマンドに基づき下りデータを生成する下りデータ生成回路133、上りデータを生成する上りデータ生成回路134、DSP110へ送信するデータを生成するDSP送信データ生成回路135、DSP110から取得したデータを処理するDSP受信データ処理回路136、下りデータの機器情報を記憶する機器ID記憶部137および上りデータの台数情報を記憶する台数記憶部138を具備する。また、受信信号を選択するセレクタ(Selector)161と、クロックを生成するためのPLL回路162を接続する。
【0047】
受信ブロック131は、通信路301を介して入力する上流からの下りデータおよび通信路302を介して入力する下流からの上りデータを受信し、DSP送信データ生成回路135へ送る。また、下りデータは、下りデータに含まれる機器情報の値を1増加させて機器ID記憶部137に格納するとともに、下りデータ生成回路133へ転送する。また、上りデータは、上りデータに含まれる台数情報の値も1増加させて台数記憶部138へ格納するとともに、上りデータ生成回路134へ転送する。
【0048】
送信ブロック132は、通信路301を介して上流に上りデータを、および通信路302を介して下流に下りデータを送信する。上りデータは、上りデータ生成回路134により作成され、下りデータは下りデータ生成回路133により作成される。なお、送受信クロックは、セレクタ161とPLL回路162によって生成される。セレクタ161は、図示しない制御手段による制御信号(Select)に応じて、上流から送信された下りデータの受信信号を選択し、PLL回路162で受信した下りデータに応じたクロックが生成される。
【0049】
DSP送信データ生成回路135は、受信ブロック131から取得した通信コマンドに基づき、DSP110へ出力するDSP送信データを生成し、DSP110へ出力する。たとえば、下りデータよりDSP110の動作を指示する制御コマンド、エコーキャンセラ用のレファレンスデータなどが、上りデータより他マイクの音声情報などがDSP110に対して送られる。
【0050】
DSP受信データ処理回路136は、DSP110から取得したデータを処理し、上りデータ生成回路134もしくは下りデータ生成回路133へ出力する。たとえば、DSP110より取得した自マイクの音声信号が加算された音声情報、制御コマンドに対する応答などが上りデータ生成回路134に出力される。
【0051】
下りデータ生成回路133は、受信ブロック131から転送された下りデータの機器情報を機器ID記憶部137の機器ID(受信した機器IDに+1された値)に更新するとともに、電源制御回路120によって設定された電源情報を設定し、通信路302を介して下流に送信する下りデータを生成する。
【0052】
上りデータ生成回路134は、受信ブロック131から転送された上りデータの台数情報を台数記憶部138の台数(受信した台数に+1された値)に更新するとともに、DSP受信データ処理回路136より取得したDSP110の音声情報や応答データを設定し、通信路301を介して上流に送信する上りデータを生成する。
【0053】
このような構成のシリアルI/F130の動作について説明する。
通信は、必ず上流側からの受信で開始される。通信路301経由で上流からの下りデータ信号が入力されると、セレクタ161によりPLL162が入力信号に基づき送受信クロックを生成する。受信ブロック131は、送受信クロックに従って入力される下りデータ信号を受信する。このとき、送信ブロック132は、上りデータ生成回路134によって生成された上りデータを通信路301により上流に送信する処理を開始する。通信路301は、2本の信号線が用意されており、それぞれの信号線を用いて受信と送信が同時期に行われる。
【0054】
そして、下りデータ全体を受信した受信ブロック131は、下りデータが正常であるかどうかを確認した後、下りデータをDSP送信データ生成回路135、下りデータ生成回路133および電源制御回路120へ転送する。このとき、機器ID記憶部137に機器IDを格納する。
【0055】
下りデータ生成回路133により下りデータが生成されると、送信ブロック132は、通信路302経由で下りデータを下流に送信する。このとき、下流のマイクにおいても上述の処理が行われるため、受信ブロック131には、通信路302を介して下流のマイクが送信する上りデータが受信される。受信ブロック131は、下流からの上りデータ全体を取得すると、上りデータが正常であるかどうかを確認した後、DSP送信データ生成回路135および上りデータ生成回路134へ上りデータを転送する。このとき、台数記憶部138に読み出した台数情報の値に1を加算して格納する。上りデータ生成回路134は、上りデータを設定し、送信ブロック132による上りデータ送信のタイミング(下りデータ受信)を待つ。
【0056】
以上の処理手順により、マイク間のデータ伝送が制御される。なお、マイクが最下流の場合、下りデータの下流への送信は行わない。
次に、シリアルI/F130で処理される上りデータおよび下りデータの流れについて説明する。図4は、本実施の形態の下りデータおよび上りデータの構成を示している。
【0057】
下りデータは、電源情報部(PowId)401、機器情報部(TermId)402、指定機器ID部(Dest)403、制御コマンド部(CMD)404、レファレンスデータ部(Line Audio)405、DSPコード部(DSP Boot Code)406、CRC407および同期信号部(Sync)408を備える。
【0058】
電源情報部(PowId)401は、上流の電源に接続されるマイクの台数を示している。電源制御部は、電源情報部401の値を読み出し、下流に電源供給が可能であるかどうかの判断に用いる。電源供給が可能である場合には、電源供給とともに、電源情報部401の値を電源ケーブルの長さに応じて増加させる。たとえば、ケーブル長が2メートルであれば1増加させ、8メートルであれば4増加させる。これは、ケーブルが長い場合に接続台数を制限するための処理である。また、本体、外部電源が接続されたマイクでは、上流から0が来ているとみなす。機器情報部(TermId)402は、本体から何番目の機器であるかを示し、このマイクの機器IDになる。上流から来た値を1増加させて下流に伝える。ただし、本体では、上流から0が来ているとみなす。指定機器ID部(Dest)403は、次の制御コマンド(CMD)を実行すべき機器ID(TermID)を指定する。なお、特定の機器ID(たとえば、0xffなど)を指定すれば、全ての機器に一斉に制御コマンドを実行させるようにすることができる。制御コマンド部(CMD)404は、マイクに実行させる指示を表す。たとえば、1であればDSPプログラムのステータスを読み出し、2であればマイクステータス、3であればレベルの読み出しなど、予め処理が決められている。レファレンスデータ部(Line Audio)405には、エコーキャンセラのためのレファレンス信号が設定される。DSPコード部(DSP)406には、DSP部の動作を指定するコードが設定される。CRC407は、各データのCRCが格納され、CRCチェックに使用される。同期信号部(Sync)408は、同期をとるための信号が設定される。
【0059】
一方、上りデータは、台数情報部(MaxTerm)411、応答機器情報部(SrcId)412、ステータスID部(StsId)413、音声情報部(MixedMic Audio)414、ステータス部(Status)415、CRC416および同期信号部(Sync)417を備える。
【0060】
台数情報部(MaxTerm)411は、下流に接続するマイクの台数を示し、下流から来た値が1増加されて上流に伝えられる。応答機器情報部(SrcId)412は、指定された制御コマンド(CMD)を処理して、ステータスIDとステータスに値を書き込んだマイクの機器IDが設定される。ステータスID部(StsId)413は、ステータス部(Status)415と合わせて、コマンドに対する処理結果が書かれる。音声情報部(MixedMic Audio)414は、下流の音声信号をMixした音声信号であり、自マイクが集音した音声信号をさらに加えて上流へ伝える。CRC416および同期信号部(Sync)417は、下りデータと同様である。
【0061】
このような下りデータと上りデータの通信処理を行うシリアルI/F130のデータ処理について説明する。
本実施の形態のマイクシステムでは、本体200から下りデータが送信されると、各マイクにおける通信処理が順次開始される。
【0062】
上流側に接続する通信路301経由で下りデータが受信ブロック131に入力される。このとき、セレクタ161により受信信号が選択されてPLL162に入力し、送受信用のクロックが生成される。そして、受信ブロック131は、下りデータの機器情報部(TermId)402に格納された機器IDに1を加算し、機器ID記憶部137へ格納するとともに、下りデータを下りデータ生成回路133へ送る。また、下りデータの電源情報部401は電源制御回路120に伝達され、指定機器ID部403、制御コマンド部404、レファレンスデータ部405およびDSPコード部406は、DSP送信データ生成回路135へ送られる。
【0063】
下りデータ生成回路133は、受信ブロック131が受信した下りデータのうち、機器情報部(TermId)402を機器ID記憶部137に格納された機器IDの値に更新する。これにより、取得した下りデータから機器IDが+1された機器情報部402が設定される。また、電源制御回路120から取得した電源情報に基づき、電源情報部(PowId)401を更新する。こうして、電源情報部(PowId)401、機器情報部(TermId)402が更新された下りデータが送信ブロック132へ送られる。そして、送信ブロック132は、下りデータ生成回路133の作成した下りデータを通信路302経由で下流のマイクに送信する。
【0064】
一方、DSP送信データ生成回路135経由で下りデータを取得したDSP110は、本体からの指示に応じた処理を実行する。たとえば、各種ステータスの読み出しの他、音量レベルの設定やミュートなどの調整が行われる。読み出しの場合等は、DSP110から応答が返り、DSP受信データ処理回路136へ入力される。DSP受信データ処理回路136は、応答を上りデータ生成回路134に伝達する。
【0065】
次に、受信ブロック131が、下流側に接続する通信路302経由で上りデータを入力する。受信ブロック131は、上りデータの台数情報部(MaxTerm)411の値に1を加算して台数記憶部138に格納するとともに、上りデータを上りデータ生成回路134およびDSP送信データ生成回路135へ転送する。DSP送信データ生成回路135は、下流の音声情報部(MixedMic Audio)414のデータをDSP110へ送る。そして、DSP受信データ処理回路136は、DSP110から自マイクの音声信号が加算された音声情報を取得し、上りデータ生成回路134へ伝達する。
【0066】
上りデータ生成回路134では、上流に送信する上りデータの台数情報部(MaxTerm)411に台数記憶部138の値を設定し、音声情報部(MixedMic Audio)414にDSP受信データ処理回路136から取得した音声情報を設定する。また、DSP受信データ処理回路136から制御コマンドの応答を受けていれば、応答に応じて、応答機器情報部(SrcId)412、ステータスID部(StsId)413およびステータス部(Status)415を設定する。こうして生成された上りデータは、送信ブロック132が所定のタイミングで上流に送信する。
【0067】
次に、電源制御について説明する。
電源制御回路120は、外部DC電源が自マイクに接続されているかどうかを検出する外部電源検出手段と、電源ケーブル長が所定の長さより長いか短いかを検出する電源ケーブル長検出手段を具備する。これは、外部DC電源が接続されていれば、電源供給可能な下流のマイク台数が増加し、電源ケーブル長が所定の長さより長い場合には電源供給可能な下流のマイク台数が減少するためである。
【0068】
ここで、電源ケーブル長検出手段の一例を説明する。図5は、本実施の形態の電源ケーブルを示した図である。(A)は、ショートケーブルの場合、(B)はロングケーブルの場合を示している。
【0069】
図に示した電源ケーブルは、自マイクのコネクタに接続するピン1(P1)51と、ピン1(P1)上流もしくは下流のマイクのコネクタに接続するピン2(P2)52が複数の信号線によって接続されている。なお、ピン1(51)が上流もしくは下流のマイクで、ピン2(52)が自マイクに接続されていてもよい。
【0070】
図から明らかなように、(A)ショートケーブルの場合は、ピン1(51)およびピン2(52)のピン番号6、7は空きになっている。一方、(B)ロングケーブルの場合はピン1(51)およびピン2(52)のピン番号6と7は信号線53、54により内部で結線されている。これにより、ピン番号6、7の状態を確認すれば、ケーブルが所定の長さより短いショートケーブルであるか、長いロングケーブルであるかどうかが判別できる。なお、結線は、ショートケーブル側だけで行うようにすることもできる。
【0071】
次に、電源制御回路120による電源制御処理について説明する。
以下の説明では、マイクシステムは、ショートケーブルのみで接続される場合は、電源1台につき、接続可能な最大接続台数は8台であるが、1つのロングケーブルが間に挿入されると、最大接続台数が4台分少なくなるとする。なお、本体は、いくつかの電源系を有することができ、1つの電源系が電源1台に相当するとする。
【0072】
1つの電源に接続されているマイクの台数は、下りデータの電源情報を用いて管理し、各マイクは下りデータの電源情報を取得すると、自マイクに接続されるケーブルがショートケーブルの場合は1、ロングケーブルの場合は4(自マイクが電源供給を受ける場合は自マイク分を+1して5)を加算して電源情報を更新し、下流のマイクに送信する。また、外部DC電源が接続されている場合および本体から送信される電源情報は、初期値0が設定される。このように電源ケーブル長に応じて加算値を変えることにより、結果として、1つの電源で電源供給が可能な最大接続台数をケーブル長に応じて可変にしている。
【0073】
以下、具体例を挙げて説明する。
図6は、本実施の形態の電源制御を適用した第1の例のマイクシステムの構成図である。第1の例は、外部DC電源が接続されない場合の構成の一例である。
【0074】
電源を供給するテレビ会議システム本体200は、2つの電源系を有し、それぞれにショートケーブル接続の場合で最大接続台数が8台になる。
第1の電源系列は、ロングケーブル31aによりマイク11aが接続され、以下順にショートケーブル31b、31c、31d、31eによってマイク11b、11c、11d、11eの5台が接続されている。
【0075】
最上流のマイク11aについてみると、マイク11aにはロングケーブル31aが接続されており、電源ケーブル長検出手段によりロングケーブルが接続されていることが検出される。本体200から送信される下りデータを受信すると、電源情報部には、初期値(0)が設定されているので、ケーブル長に応じた加算値を加算する。この場合はロングケーブルで電源供給を受けているので5を加算する。そして、最大接続台数(8)と比較し、まだ最大接続台数を超えていないので、続くマイク11bへの電源供給を行うとともに、電源情報部の値を5に更新した下りデータを下流のマイク11bへ送信する。次のマイク11bは、下りデータの電源情報部には、5が設定されているので、ケーブル長に応じた加算値(ショートケーブルであるので1)を加算し、6とする。そして、最大接続台数(8)と比較し、まだ最大接続台数に到達していないので、続くマイク11cへの電源供給を行うとともに、電源情報部の値を6に更新した下りデータを下流のマイク11cへ送信する。こうして順次処理され、マイク11cは6、マイク11dは7の電源情報を含む下りデータを受信する。マイク11dは、ケーブル長に応じた加算値(1)を加算すると8となり、最大接続台数(8)に到達する。そこで、次のマイク11eへの電源供給を停止する。これにより、マイク11a、11b、11c、11dの4台が電源供給を受け、動作する。
【0076】
一方、第2の電源系列は、すべてショートケーブルで構成され、マイク12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、12h、12iがショートケーブル32a、32b、32c、32d、32e、32f、32g、32h、32iで接続している。この場合、下りデータの電源情報は、マイク12aで0、マイク12bで1、マイク12cで2、マイク12dで3、マイク12eで4、マイク12fで5、マイク12gで6、マイク12hで7が受信される。マイク12hは、ケーブル長に応じた加算値(1)を加算すると8となり、最大接続台数(8)に到達する。そこで、次のマイク12iへの電源供給を停止する。これにより、マイク12aからマイク12hまでの8台が電源供給を受け、動作する。
【0077】
図7は、本実施の形態の電源制御を適用した第2の例のマイクシステムの構成図である。第2の例は、さらに、外部DC電源が接続された場合の構成の一例である。
第1の電源系列は、マイク13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13h、13i、13j、13k、13l、13mがロングケーブル33a、33eと、ショートケーブル33b、33c、33d、33f、33g、33h、33i、33j、33k、33l、33mで接続されている。また、マイク13eには外部DC電源41aが接続されている。この場合、マイク13aとマイク13eは、ロングケーブルが接続されていることを検出し、電源情報の値に5を加算する。また、マイク13eは、外部DC電源41aが接続されていることを検出して、電源情報を0に初期化する。その他のマイクは、電源情報の値に1を加算する。この結果、下りデータの電源情報は、マイク13aで0、マイク13bで5、マイク13cで6、マイク13dで7が受信され、マイク13dは下流のマイク13eへの電源を停止する。しかしながら、マイク13eには外部DC電源41aが接続されているので、通信は可能であり、マイク13eでは、電源情報の値が0でリセットするが、上流から電源供給を受けていないので、さらに1を加算して電源情報の値を設定する。下りデータの電源情報は、続いて、マイク13fで1、マイク13gで2、マイク13hで3、マイク13iで4、マイク13jで5、マイク13kで6、マイク13lで7が受信される。マイク13lは、ケーブル長に応じた加算値(1)を加算すると8となり、最大接続台数(8)に到達するので、次のマイク13mへの電源供給は行わない。マイク13mは外部DC電源が接続されていないので、ダウンする。
【0078】
第2の電源系列は、マイク14a、14b、14c、14d、14e、14f、14g、14h、14iがロングケーブル34a、34eと、ショートケーブル34b、34c、34d、34f、34g、34h、34iで接続されている。また、マイク14dには外部DC電源42aが接続されている。この場合、マイク14aとマイク14eは、ロングケーブルが接続されていることを検出し、電源情報の値に5を加算する。また、マイク14dは、外部DC電源42aが接続されていることを検出して、電源情報を0に初期化する。その他のマイクは、電源情報の値に1を加算する。この結果、下りデータの電源情報は、マイク14aで0、マイク14bで5、マイク14cで6、マイク14dで7が受信される。このとき、マイク14dは、上流から電源供給を受け、かつ、外部DC電源42aが接続されているので、電源情報の値を0でリセットして電源情報の値を設定する。下りデータの電源情報は、続いて、マイク14eで0、マイク14fで5、マイク14gで6、マイク14hで7が受信される。マイク14hは、ケーブル長に応じた加算値(1)を加算すると8となり、最大接続台数(8)に到達するので、次のマイク14iへの電源供給は行わない。マイク14iは外部DC電源が接続されていないので、ダウンする。
【0079】
なお、上記の説明では、上流側に接続するケーブルの長短を検出して加算値を調整するようにしていたが、下流側に接続するケーブルの長短に応じて処理を行うとすることもできる。
【0080】
以上のように、本実施の形態によれば、各マイクが、下りデータの電源情報と自マイクが接続されるケーブルのケーブル長や外部DC電源の接続状況に応じて下流のマイクに対して電源の供給を行うか否かを適切に判断して、自律的に電源制御を行う。
【0081】
この結果、電源の設定に要する煩雑な作業を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施の形態に適用される発明の概念図である。
【図2】実施の形態のテレビ会議システムに適用されるマイクシステムの構成図である。
【図3】本発明の実施の形態の通信インタフェースの構成を示したブロック図である。
【図4】本実施の形態の下りデータおよび上りデータの構成を示している。
【図5】本実施の形態の電源ケーブルを示した図である。
【図6】本実施の形態の電源制御を適用した第1の例のマイクシステムの構成図である。
【図7】本実施の形態の電源制御を適用した第2の例のマイクシステムの構成図である。
【図8】従来の多地点間の会議システムの一例を示した構成図である。
【符号の説明】
【0083】
1・・・マイク(装置)、2・・・通信制御手段、3・・・音声入力手段、4・・・エコーキャンセラ手段、5・・・音声情報生成手段、6・・・コマンド処理手段、7・・・電源制御手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
システム全体を制御する本体装置と、前記本体装置側を上流、反対側を下流として前記本体装置から縦列接続され、音声信号を順次伝達するマイク装置から構成されるマイクシステムにおいて、
前記本体装置もしくは上流のマイク装置、および存在する場合は下流のマイク装置との間で、前記本体装置から送信される下りデータと、前記本体装置に向けて送信される上りデータの通信を制御する通信制御手段と、
集音した音声をデジタル信号に変換して音声入力信号として出力する音声入力手段と、
音声出力の回り込みによって前記音声入力信号に混入したエコー成分を除去して音声信号を生成するエコーキャンセラ手段と、
前記下流のマイク装置の音声情報を含む上りデータを取得した場合は、前記下流のマイク装置の音声情報に自マイク装置の前記音声信号を加算して前記音声情報を更新し、更新した前記音声情報を含む前記上りデータを前記通信制御手段により上流に向けて送信する音声情報生成手段と、
を具備するマイク装置が、前記縦列接続に従って、前記本体装置から送信された前記下りデータを最下流のマイク装置まで順に送信し、前記上りデータを前記最下流のマイク装置から前記本体装置に向かって逆順に送信することを特徴とするマイクシステム。
【請求項2】
前記通信制御手段は、下流に接続されているマイク装置の台数を示す台数情報を含む上りデータを取得すると、前記台数情報の値を増加して前記上りデータを更新するとともに上流に送信し、自マイク装置が前記最下流のマイク装置である場合は、前記台数情報に初期値を設定した前記上りデータを上流に送信し、
前記本体装置は、取得した前記上りデータに含まれる前記最下流のマイク装置から順次増加された前記台数情報の値を前記本体装置に縦列接続されるマイク装置の台数とすることを特徴とする請求項1記載のマイクシステム。
【請求項3】
前記通信制御手段は、縦列接続の順番に付与される機器IDを示した機器情報を含む下りデータを取得すると、前記機器情報に基づいて自マイク装置の機器IDを設定し、前記機器情報の値をインククリメントして前記下りデータを更新するとともに前記下流のマイク装置に送信し、
前記本体装置は、前記機器情報に初期値を設定した前記下りデータを送信し、前記機器情報に基づいて前記マイク装置に設定される前記機器IDを用いて対象の前記マイク装置を識別することを特徴とする請求項1記載のマイクシステム。
【請求項4】
前記マイク装置は、
前記通信制御手段によって前記本体装置が必要に応じて設定した前記マイク装置に対する指示内容を表すコマンドを含む下りデータを取得すると、前記コマンドとともに設定された指定機器IDと自マイク装置の前記機器IDとを照合し、一致する場合には前記コマンドに関する処理を実行するとともに、必要に応じて、前記機器IDを付与した応答の上りデータを作成して前記上流のマイク装置に送信するコマンド処理手段、
を有することを特徴とする請求項3記載のマイクシステム。
【請求項5】
前記コマンド処理手段は、
前記本体装置が前記コマンドによって設定した指示内容に従って、音量調整、ミュート、マイク指向性を含む前記音声入力手段の調整を行うことを特徴とする請求項4記載のマイクシステム。
【請求項6】
前記音声情報生成手段は、
前記音声信号が所定の条件を満たす有意な音声である場合のみ、前記音声信号を用いて前記音声情報を更新することを特徴とする請求項1記載のマイクシステム。
【請求項7】
前記マイク装置は、
前記通信制御手段によって前記マイク装置が所定の電源から何番目に接続されているかを示す電源情報を含む下りデータを取得すると、前記電源情報に基づいて、自マイク装置の接続により前記所定の電源に接続可能な最大接続台数に到達したかどうかで電源接続の可否を判定し、接続可の場合は前記電源情報の値をインククリメントして更新した前記下りデータを前記下流のマイク装置に対して送信するとともに電源ケーブルを介して前記下流のマイク装置に対して電源を供給し、接続不可の場合は前記下流のマイク装置に電源供給を行わない電源制御手段、
を有することを特徴とする請求項1記載のマイクシステム。
【請求項8】
前記電源制御手段は、外部電源の接続有無を検出する外部電源検出手段を有し、
前記外部電源検出手段により前記外部電源が接続されていることを検出すると、前記電源情報の値を初期化して前記下りデータを更新し、前記下流のマイク装置に送信するとともに、前記電源ケーブルを介して前記下流のマイク装置に対して電源を供給することを特徴とする請求項7記載のマイクシステム。
【請求項9】
前記電源制御手段は、電源供給を行う前記電源ケーブルが所定の長さより短いか長いかを検出する電源ケーブル長検出手段を有し、
前記電源ケーブル長検出手段により検出された前記電源ケーブルが前記所定の長さより長い場合と短い場合とで、前記電源供給を行う前記最大接続台数を変えることを特徴とする請求項7記載のマイクシステム。
【請求項10】
システム全体を制御する本体装置と、前記本体装置側を上流、反対側を下流として前記本体装置から縦列接続され、音声信号を順次伝達するマイク装置において、
前記本体装置もしくは上流のマイク装置、および存在する場合は下流のマイク装置との間で、前記本体装置から送信される下りデータと、前記本体装置に向けて送信される上りデータの通信を制御する通信制御手段と、
集音した音声をデジタル信号に変換して音声入力信号として出力する音声入力手段と、
音声出力の回り込みによって前記音声入力信号に混入したエコー成分を除去して音声信号を生成するエコーキャンセラ手段と、
前記下流のマイク装置の音声情報を含む上りデータを取得した場合は、前記下流のマイク装置の音声情報に自マイク装置の前記音声信号を加算して前記音声情報を更新し、更新した前記音声情報を含む前記上りデータを前記通信制御手段により上流に向けて送信する音声情報生成手段と、
を具備することを特徴とするマイク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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