説明

マイクロアレイ処理装置

【課題】DNAマイクロアレイにおいて、ハイブリダイズ反応およびその検出を迅速かつ効率的に実施するための手段を提供する。
【解決手段】活性エステル基を有する担体上にDNAが固定されてなるマイクロアレイを被検核酸とのハイブリダイズ反応を検出するためのマイクロアレイ処理装置で、サンプル液を収容するための収容部とサンプル液の温度調整を行う温度調整部とを備えた核酸増幅反応処理およびハイブリダイズ反応処理を行うための反応部と、マイクロアレイ洗浄のための洗浄部と、ハイブリダイズ反応を検出処理するための検出部と、マイクロアレイ取り付け部と、収容部内のサンプル液にマイクロアレイを浸漬可能なようにマイクロアレイ取り付け部または収容部を移動させるための移動手段と、を備え、マイクロアレイ取り付け部が、反応部、洗浄部または検出部にマイクロアレイを移動させて前記処理を行うための移動手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAマイクロアレイにおいてハイブリダイズ反応を行い、該ハイブリダイズ反応を検出するためのマイクロアレイ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、核酸、糖鎖、タンパク質などの生体分子を担体上に固定化し、それにターゲットとなる生体分子を反応させて両分子の相互作用を研究する方法が広く使用されている。DNAが固定化された担体は、DNAマイクロアレイと称され、担体上に1平方センチメートル当たり数百から数十万の密度でDNAを整列させ、固定化することにより作製される。ある生物種の全ての遺伝子配列が解明されている場合、その情報を元にDNAマイクロアレイを作製することにより、1回のハイブリダイズ反応で試料の全発現情報を得ることができる。つまり配列が既知の数千種類の異なるDNAプローブをアレイ状に整列して固定化させ、そこに未知の試料を加えてハイブリダイズ反応を行うことにより、同時に数千個の遺伝子を同定することができる。基礎研究の分野では、DNAマイクロアレイは、既知遺伝子の発現パターンと比較することにより新たに発見された遺伝子の機能を推定する研究、シグナル伝達経路における重要物質を特定する研究、新種の遺伝子を同定する研究等に利用されている。また治療薬に対する新たな標的分子の発見、病気の診断、ゲノム毒物学、疾病関連遺伝子の探索など、高いスループットが要求される分野においても重要な技術となっている。
【0003】
上記のようなDNAマイクロアレイを用いた測定作業は、試料数が多いため単純な作業の繰り返しが発生すること、各工程で用いる装置が独立しているため広い設置面積が必要であること、反応温度の管理を行う必要があり反応の進行に長時間を要すること、更に微量な試料を精度高く取り扱うことが必要であること等の理由から簡便とはいえず、各工程を機械化して自動的に行うことが従来から切望されていた。
【0004】
しかし、DNAマイクロアレイ上のDNAプローブに試料由来の増幅核酸をハイブリダイズさせる場合、増幅反応を行った後に精製工程が必要となる。精製工程は、一般に遠心器によるフィルターろ過によって実施されるが、このような精製工程を自動化装置に組み込もうとすると装置がかなり複雑となる。実際に行われている方法の一つとして、増幅反応後の反応液を遠心器にてフィルターろ過し、フィルター上の増幅核酸を洗浄してバッファーに再度溶解する方法がある。しかし、実際にこのような精製工程を実施する機構を自動化装置に組み込むと、装置が非常に大きくなり、装置の作製コストもかさんでしまう。
【0005】
また、DNAマイクロアレイにおける相互作用の検出においては、蛍光強度を検出する方法が主流であるが、当該検出方法は、励起光を数μm〜数十μm間隔でマイクロアレイ全面に走査させて、蛍光を検出する装置を利用するものである。このような蛍光検出装置は、光学系や駆動部分を備えるために装置が非常に大きく、ハイブリダイズ反応に関わる各工程が自動化された装置に連結することが困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、DNAマイクロアレイにおいて、ハイブリダイズ反応およびその検出を迅速かつ効率的に実施するための手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、活性エステル基を有する担体上にDNAが固定されてなるマイクロアレイを用いることにより、核酸増幅反応後の反応液を精製することなくハイブリダイズ反応を実施および検出できることを見出した。従って、増幅反応後の反応液にマイクロアレイを直接浸漬してハイブリダイズ反応を実施できること、その結果、増幅反応、ハイブリダイズ反応およびハイブリダイズ反応の検出の各工程を機械化して自動的に行うマイクロアレイ処理装置を小型化できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)活性エステル基を有する担体上にDNAが固定されてなるマイクロアレイを被検核酸とのハイブリダイズ反応に付し、該ハイブリダイズ反応を検出するためのマイクロアレイ処理装置であって、
サンプル液を収容するための収容部と該収容部内のサンプル液の温度調整を行う温度調整部とを備えた、核酸増幅反応処理およびハイブリダイズ反応処理を行うための反応部と、
マイクロアレイを洗浄処理するための洗浄部と、
マイクロアレイにおいてハイブリダイズ反応を検出処理するための検出部と、
マイクロアレイを取り付けるためのマイクロアレイ取り付け部と、
収容部内のサンプル液にマイクロアレイを浸漬可能なように、マイクロアレイ取り付け部または収容部を移動させるための移動手段と、
を備え、
マイクロアレイ取り付け部が、反応部、洗浄部または検出部にマイクロアレイを移動させて前記処理を行うための移動手段を備える、前記装置。
(2)マイクロアレイ取り付け部は、マイクロアレイを旋回させる旋回アームを有しており、反応部、洗浄部および検出部は、マイクロアレイが旋回する円周上に配置されている、(1)記載の装置。
(3)検出部が、励起光をマイクロアレイに照射し、得られる蛍光の強度を検出するものである、(1)または(2)記載の装置。
(4)マイクロアレイ取り付け部が、複数のマイクロアレイを取り付け可能なように構成されており、反応部および洗浄部が、取付け部に取り付けられた複数のマイクロアレイに対して、同時に前記処理を行うことが可能なように構成されている、(1)〜(3)のいずれかに記載の装置。
(5)マイクロアレイ取り付け部が、収容部の蓋として機能するように構成されている、(1)〜(4)のいずれかに記載の装置。
(6)マイクロアレイが10mm以下の寸法を有する平板状である、(1)〜(5)のいずれかに記載の装置。
(7)活性エステル基を有する担体上にDNAが固定されてなるマイクロアレイを被検核酸とのハイブリダイズ反応に付し、該ハイブリダイズ反応を検出する方法であって、
試料から抽出した核酸の核酸増幅反応を行う工程、
増幅核酸を含むサンプル液にマイクロアレイを浸漬してマイクロアレイ上のDNAと増幅核酸とのハイブリダイズ反応を行う工程、
マイクロアレイを洗浄する工程、および
マイクロアレイにおけるハイブリダイズ反応を検出する工程
を含み、
核酸増幅反応後のサンプル液を精製することなくハイブリダイズ反応を実施することを特徴とする前記方法。
(8)マイクロアレイの洗浄の後、乾燥を行わずにハイブリダイズ反応を検出する、(7)記載の方法。
(9)界面活性剤およびNaAcを含む洗浄液、または界面活性剤およびMgClを含む洗浄液でマイクロアレイを洗浄する、(7)または(8)記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、DNAマイクロアレイにおいて、ハイブリダイズ反応およびその検出を迅速かつ効率的に実施するための手段が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、マイクロアレイを被検核酸とのハイブリダイズ反応に付し、該ハイブリダイズ反応を検出するためのマイクロアレイ処理装置であって、活性エステル基を有する担体上にDNAが固定されてなるマイクロアレイを処理するための装置に関する。
【0011】
活性エステル基を有する担体上にDNAが固定されてなるマイクロアレイは、化学修飾基として活性エステル基を導入した担体にDNAをスポッティングすることにより作製でき、DNAが活性エステル基との間で共有結合を形成した担体に固定化されたものである。
【0012】
活性エステル基は、エステル基のアルコール側に酸性度の高い電子求引性基を有して求核反応を活性化するエステル群、すなわち反応活性の高いエステル基を意味する。アルキルエステルよりも活性化されたエステル基である。活性エステル基は、アミノ基、チオール基、水酸基等の基に対する反応性を有する。さらに具体的には、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、シアノメチルエステル、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等がアルキルエステル等に比べてはるかに高い活性を有する活性エステル基として知られている。より具体的には、活性エステル基として、例えば、p−ニトロフェニル基、N−ヒドロキシスクシンイミド基、コハク酸イミド基、フタル酸イミド基、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド基等が挙げられ、特に、N−ヒドロキシスクシンイミド基が好ましい。
【0013】
活性エステル基の導入は、例えば、担体上にカルボキシル基を導入した後、シアナミドやカルボジイミド(例えば、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド)などの脱水縮合剤とN−ヒドロキシスクシンイミドなどの化合物でカルボキシル基を活性エステル化することにより実施できる。この処理により、アミド結合を介して炭化水素基の末端に、N−ヒドロキシスクシンイミド基等の活性エステル基が結合した基を形成することができる(特開2001−139532)。
【0014】
カルボキシル基の導入は、アミノ化または塩素化した担体に、例えば、式:X−R−COOH(式中、Xはハロゲン原子、Rは炭素数10〜12の2価の炭化水素基を表す)で示されるハロカルボン酸、例えばクロロ酢酸、フルオロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸、2−クロロプロピオン酸、3−クロロプロピオン酸、3−クロロアクリル酸、4−クロロ安息香酸;式:HOOC−R−COOH(式中、Rは単結合または炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す。)で示されるジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、トリメリット酸、ブタンテトラカルボン酸などの多価カルボン酸;式:R−CO−R−COOH(式中、Rは水素原子または炭素数1〜12の2価の炭化水素基、Rは炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す。)で示されるケト酸またはアルデヒド酸;式:X−OC−R−COOH(式中、Xはハロゲン原子、Rは単結合または炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す。)で示されるジカルボン酸のモノハライド、例えばコハク酸モノクロリド、マロン酸モノクロリド;無水フタル酸、無水コハク酸、無水シュウ酸、無水マレイン酸、無水ブタンテトラカルボン酸などの酸無水物を反応させることにより実施できる。
【0015】
活性エステル基を導入する担体の材料としては、当技術分野で公知のものを使用でき、特に制限されない。例えば、白金、白金黒、金、パラジウム、ロジウム、銀、水銀、タングステンおよびそれらの化合物などの貴金属、およびグラファイト、カ−ボンファイバ−に代表される炭素などの導電体材料;単結晶シリコン、アモルファスシリコン、炭化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素などに代表されるシリコン材料、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)などに代表されるこれらシリコン材料の複合素材;ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、セラミクス、フォルステライト、感光性ガラスなどの無機材料;ポリエチレン、エチレン、ポリプロビレン、環状ポリオレフィン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエンスチレン共重合体、ポリフェニレンオキサイドおよびポリスルホンなどの有機材料等が挙げられる。
【0016】
本発明の装置は、微細な平板状の構造を有する担体からなるマイクロアレイの処理に好適に用いられる。担体の形状は、長方形、正方形および丸形など限定されないが、通常、寸法が1〜75mmのもの、好ましくは1〜10mmのもの、より好ましくは1〜3mmの平板状の担体を用いる。寸法とは、平板における最長の長さをさす。あるいは、1〜75mm四方、好ましくは1〜10mm四方、より好ましくは1〜3mm四方の平板状担体を用いる。微細な平板状の担体を製造しやすいことから、シリコン材料や樹脂材料からなる担体を用いるのが好ましく、単結晶シリコンからなる担体に活性エステル基を導入したものがより好ましい。単結晶シリコンには、部分部分でごくわずかに結晶軸の向きが変わっているものや(モザイク結晶と称される場合もある)、原子的尺度での乱れ(格子欠陥)が含まれているものも包含される。特に半導体等の分野で使用されるようなシリコン基板を担体として用いるのが好ましい。
【0017】
上記のような比較的サイズの小さい担体を用いて得られるマイクロアレイを用いることにより、ハイブリダイズ反応およびその検出を実施する装置全体を小型化することができる。また、サンプル液が少量の場合でも、マイクロアレイ全体をサンプル液に浸漬して、ハイブリダイズ反応を実施できることから、装置構造の複雑化を避けることができる。
【0018】
本発明においては、好ましくは表面にカーボン層を有する担体に活性エステル基を導入する。カーボン層としては、特に制限されないが、合成ダイヤモンド、高圧合成ダイヤモンド、天然ダイヤモンド、軟ダイヤモンド(例えば、ダイヤモンドライクカーボン)、アモルファスカーボン、炭素系物質(例えば、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ)のいずれか、それらの混合物、またはそれらを積層させたものが挙げられる。また、炭化ハフニウム、炭化ニオブ、炭化珪素、炭化タンタル、炭化トリウム、炭化チタン、炭化ウラン、炭化タングステン、炭化ジルコニウム、炭化モリブデン、炭化クロム、炭化バナジウム等の炭化物の層でもよい。上記のような担体にこれらの物質を反応させることにより、カーボン層を形成することができる。軟ダイヤモンドとは、いわゆるダイヤモンドライクカーボン(DLC)等の、ダイヤモンドとカーボンとの混合体である不完全ダイヤモンド構造体を総称し、その混合割合は、特に限定されない。カーボン層は、化学的安定性に優れておりその後の活性エステル基の導入や分析対象物質との結合における反応に耐えることができる点、UV吸収がないため検出系UVに対して透明性である点において有利である。また、被検核酸とのハイブリダイズ反応において、非特異的吸着が少ない点においても有利である。カーボン層の形成は公知の方法で行うことができる。例えば、マイクロ波プラズマCVD(Chemical vapor deposit)法、ECRCVD(Electric cyclotron resonance chemical vapor deposit)法、ICP(Inductive coupled plasma)法、直流スパッタリング法、ECR(Electric cyclotron resonance)スパッタリング法、イオン化蒸着法、アーク式蒸着法、レーザー蒸着法、EB(Electron beam)蒸着法、抵抗加熱蒸着法などが挙げられる。
【0019】
本発明においては、特に、シリコン基板にDLC層を形成し、そのDLC層に活性エステル基を導入したものを、マイクロアレイ用の担体として用いるのが好ましい。
【0020】
DNAマイクロアレイは、スポッティング用バッファーにDNAプローブを溶解してスポッティング用溶液を調製し、スポッター装置等によって上記のような担体にスポッティングすることにより製造することができる。
【0021】
本発明の装置は、サンプル液を収容するための収容部と該収容部内のサンプル液の温度調整を行う温度調整部とを備えた、核酸増幅反応処理およびハイブリダイズ反応処理を行うための反応部を備える。温度調整部は、収容部内のサンプル液を核酸増幅反応およびハイブリダイズ反応に適した温度に調整する。収容部には、細胞や組織などの試料からDNAやRNA等の核酸を抽出し、これに核酸増幅用の試薬(例えば、核酸合成酵素、ヌクレオチドミックス、標識物質など)を加えたものを収容する。そして、温度調整部で温度を変化させることにより、収容部内で核酸増幅反応を実施する。核酸増幅反応は、マイクロアレイをサンプル液に浸漬した状態で実施してもよい。続いて、増幅核酸を含むサンプル液にマイクロアレイを浸漬し、温度調整部でサンプル液の温度をハイブリダイズ反応に適した温度に調製することにより、マイクロアレイ上のDNAプローブと被検核酸(すなわち、試料由来の核酸から調製された増幅核酸)とのハイブリダイズ反応を実施することができる。
【0022】
活性エステル基を有する担体上にDNAが固定されてなるマイクロアレイを用いることにより、核酸増幅反応後のサンプル液を精製することなくハイブリダイズ反応を実施および検出することができる。従って、収容部で増幅反応を行った後、そのままマイクロアレイをサンプル液に浸漬してハイブリダイズ反応を実施できる。その結果、増幅核酸を精製するための装置を組み込む必要がなく、増幅反応、ハイブリダイズ反応およびハイブリダイズ反応の検出の各工程を機械化して自動的に行うマイクロアレイ処理装置を小型化することができる。
【0023】
収容部は、マイクロアレイを収容できるものであれば特に制限されない。収容部は、好ましくは、複数のマイクロアレイを収容できるような複数の区画を有する。また、収容部の材料としては核酸増幅反応やハイブリダイズ反応における温度変化に耐えるものを用いる。
【0024】
反応部は、収容部を揺動させる手段を有していてもよい。核酸増幅反応およびハイブリダイズ反応の際に収容部を揺動させることにより、反応を効率的に実施することができる。
【0025】
温度調整部は、核酸増幅反応やハイブリダイズ反応のために、収容部内のサンプル液の温度を調整できるものであればよい。温度調節が加熱のみで冷却は自然放熱で十分な場合は、温度調整部は、収容部の周りを電気ヒーターで覆う構成としてもよい。また、冷却も必要な場合は、収容部の周りをジャケット構造とし、所定の温度に加熱または冷却された熱媒体を循環させる構成としてもよい。加熱/冷却を電源の極性反転で容易に反転可能なペルチェ素子を有する装置を温度調整部としてもよい。
【0026】
反応部は、好ましくは、ハイブリダイズ反応を促進するための促進剤を供給するための促進剤供給部をさらに備える。促進剤は、塩(SSCなど)および界面活性剤(SDSなど)を含み、収容部におけるハイブリダイズ反応を促進する機能を有する。促進剤供給部は、促進剤が充填された促進剤ボトル、促進剤を吸引して収容部に供給するためのノズル、ノズルアーム、促進剤を送液するためのポンプ、促進剤を供給するためのノズルを移動させて促進剤を収容部に注入するための移動手段などをさらに備えていてもよい。例えば、ノズルアームが、ネジ送り、ベルト送りまたはアクチェータ等の移動手段により、収容部に対し水平および垂直方向に任意に移動できる構成とする。垂直方向の移動については一定の間隔の昇降を繰り返すのであれば、電磁シリンダ、ピストンなどを用いてもよい。
【0027】
本発明の装置は、マイクロアレイを洗浄するための洗浄部を備える。洗浄部では、ハイブリダイズ反応後のマイクロアレイを洗浄して、DNAプローブにハイブリダイズしなかった核酸などを洗浄除去する。洗浄部において、ハイブリダイズ反応前のマイクロアレイを洗浄してもよい。洗浄部は、マイクロアレイを洗浄できる構造であればどのようなものでもよい。洗浄部は、例えば、洗浄液およびマイクロアレイを収容して洗浄処理を行うための洗浄用容器を有し、マイクロアレイを容器内の洗浄液に浸漬することにより洗浄する構成とすることができる。その場合、洗浄部は、洗浄用容器に収容された洗浄液を揺動させる手段を有していてもよい。洗浄液を揺動させることにより、洗浄を効率的に実施することができる。洗浄用容器は、複数の洗浄液を収容するために複数の区画を有することが好ましい。あるいは、洗浄部は、洗浄液を洗浄用ノズルからマイクロアレイ上に噴流させることにより洗浄する構成としてもよい。
【0028】
洗浄部は、洗浄液が充填された洗浄液ボトル、洗浄液を供給するためのノズル、使用済みの洗浄液を吸引して廃棄するためのノズル、ノズルアーム、洗浄液を送液するためのポンプ、洗浄液を供給するためのノズルを移動させて洗浄液を供給するための移動手段などをさらに備えていてもよい。洗浄部が洗浄用容器を有し、これにマイクロアレイを浸漬して洗浄する構成とする場合、例えば、ノズルアームが、ネジ送り、ベルト送りまたはアクチェータ等の移動手段により、洗浄用容器に対し水平および垂直方向に任意に移動できる構成とする。垂直方向の移動については一定の間隔の昇降を繰り返すのであれば、電磁シリンダ、ピストンなどを用いてもよい。
【0029】
洗浄部は、マイクロアレイを乾燥処理するための乾燥部をさらに備えていてもよい。乾燥部では、洗浄されたマイクロアレイを乾燥する。乾燥部は、例えば、エアーブロー乾燥、Nブロー乾燥、熱風乾燥、真空乾燥および遠心乾燥などによりマイクロアレイを乾燥する構成とすることができる。
【0030】
乾燥工程が必要な理由には、例えば、光学系の検出では、自然乾燥してしまうと洗浄溶液に含まれる塩が析出してノイズの原因となることが挙げられる。乾燥せずに測定を行う方法としては、チップを透明な容器に入った透明な溶液中にいれて測定する方法や、チップ上の水分を蒸発させないために透明なカバーガラスなどで覆って測定する方法などが考えられる。しかし、装置の構造が複雑になることが懸念される。そこで本発明者らは、洗浄液の組成を工夫して自然乾燥を防ぐことで、ハイブリダイズ反応後の洗浄処理の後、乾燥を行わずにそのまま測定を行ってもハイブリダイズ反応を検出できることを見出した。従って、本発明の装置における洗浄部は乾燥部を備える必要がなく、その結果、装置全体をより一層小型化することができる。洗浄後に乾燥を行わない場合、洗浄部において洗浄するための洗浄液としては、NaAc(酢酸ナトリウム)および界面活性剤(例えば、Tween20)を含む洗浄液、ならびにMgClおよび界面活性剤(例えば、Tween20)を含む洗浄液を用いるのが好ましい。洗浄は、これらの洗浄液の片方を用いて実施してもよいし、両方を用いて実施してもよいが、好ましくは両方を用いて実施する。従って、本発明の装置は、好ましくはNaAc(酢酸ナトリウム)および界面活性剤(例えば、Tween20)を含む洗浄液を充填するための洗浄液ボトル、ならびに/またはMgClおよび界面活性剤(例えば、Tween20)を含む洗浄液を充填するための洗浄液ボトルを備える。
【0031】
本発明の装置は、マイクロアレイにおいてハイブリダイズ反応を検出処理するための検出部を備える。検出部は、好ましくは、レーザー等を用いて励起光をマイクロアレイに照射し、得られる蛍光の強度を検出するものである。反応部での核酸増幅反応において蛍光標識を増幅核酸に取り込ませ、得られた増幅核酸を被検核酸としてマイクロアレイ上のDNAプローブにハイブリダイズさせ、洗浄後または洗浄し乾燥後、検出部でマイクロアレイに励起光を照射すると、DNAプローブにハイブリダイズした被検核酸に由来する蛍光が検出される。これを検出することにより、ハイブリダイズ反応を検出することができる。本発明の装置において、マイクロアレイとして比較的サイズの小さいもの、例えば、寸法が10mm以下、好ましくは5mm以下、さらに好ましくは3mm以下のマイクロアレイ、最も好ましくは1〜5mm四方のマイクロアレイを用いると、一度にマイクロアレイに全体にレーザーを照射して蛍光を検出できるので、マイクロアレイの全面にレーザーを走査させる必要がなく、検出を短時間で実施することができるとともに、装置を小型化することができる。
【0032】
本発明の装置における検出部の一実施形態を図1に示す。本実施形態は、受光部分にCCDカメラ(11)を用いており、1ショットで1マイクロアレイを検出できる。励起光を照射する時間が長くなる(1s以上)場合は、冷却CCDカメラを用いることが好ましい。励起光を照射するためのレーザー(12)としては、マイクロアレイ全体を照射できるように、φの大きなレーザーを用いることが好ましい。φの大きなレーザー光は、スリット(15)を介してマイクロアレイ全体に照射されるように調整してもよい。また、レーザー光をマイクロアレイ(14)に対して斜めに照射することで、正反射光をカットしつつ、蛍光標識からの微弱な光を捉えることができ、より高いS/N値を実現することができる。蛍光(16)は蛍光フィルター(17)を透過してCCD素子(18)において検出される。拡散反射光は、蛍光フィルターにおいてカットされる。
【0033】
本発明の装置は、マイクロアレイを取り付けるためのマイクロアレイ取り付け部を備える。マイクロアレイ取り付け部は、反応部、洗浄部または検出部に、マイクロアレイを移動させて処理を行うための移動手段を備える。マイクロアレイ取り付け部にマイクロアレイを取り付ける方法は、マイクロアレイを取り付けかつ除去できる方法であればいずれの方法でもよい。把持具を有するマイクロアレイ取り付け部によってマイクロアレイを把持してもよい。粘着テープによってマイクロアレイをマイクロアレイ取り付け部に取り付けてもよい。粘着テープを用いる場合は、ハイブリダイズ反応を阻害しないものであって、反応部における温度条件下においても、溶融したり、粘着性を失ったりしないものを用いる。
【0034】
本発明の一実施形態の上面図を図2に示す。本実施形態において、マイクロアレイ取り付け部(21)は、マイクロアレイ(14)を旋回させる旋回アーム(22)を有しており、反応部(23)、洗浄部(24)および検出部(25)は、マイクロアレイが旋回する円周上に配置されている。反応部(23)における核酸増幅反応およびハイブリダイズ反応の後、マイクロアレイは旋回アーム(22)の旋回によって洗浄部に移動される。洗浄部でマイクロアレイの洗浄処理を実施した後、マイクロアレイは旋回アーム(22)の旋回によって検出部に移動される。反応部(23)、洗浄部(24)および検出部(25)がマイクロアレイが旋回する円周上に配置されているとは、マイクロアレイが旋回アームの旋回によって移動したときに、反応部(23)、洗浄部(24)および検出部(25)においてマイクロアレイの反応処理、洗浄処理および検出処理を実施できる位置にそれぞれ配置されていることをさす。
【0035】
また、一実施形態においてマイクロアレイ取り付け部は、複数のマイクロアレイを取り付け可能なように構成されており、反応部および洗浄部は、取付け部に取り付けられた複数のマイクロアレイに対して、同時に反応処理および洗浄処理を行うことが可能なように構成されている。例えば、反応部はマイクロアレイの数に対応した収容部を有し、洗浄部はマイクロアレイの数に対応した洗浄用容器または洗浄用ノズルを有する。
【0036】
洗浄部(24)は、マイクロアレイ取り付け部に対して水平方向に移動可能なように構成されていることが好ましい。一実施形態において洗浄部(24)は、移動手段(26)上に配置され、マイクロアレイが旋回アームによって洗浄部に移動されてきたとき、移動手段(26)がマイクロアレイ取り付け部に対して水平方向に移動することにより、複数の洗浄用容器(28)にマイクロアレイを順番に浸漬することや、マイクロアレイの乾燥が可能なように乾燥部(27)を移動させることができる。検出部(25)もマイクロアレイ取り付け部に対して水平方向に移動可能なように構成されていることが好ましい。一実施形態において検出部(25)は、移動手段(26)上に配置され、マイクロアレイが旋回アーム(22)によって検出部に移動されてきたとき、移動手段(26)がマイクロアレイ取り付け部に対して水平方向に移動することにより、複数のマイクロアレイに順番に励起光を照射してハイブリダイズ反応を順番に検出することができる。上記のような実施形態において、検出部および洗浄部は、同一の移動手段上に配置されていてもよいし、異なる移動手段上に配置されてもよい。
【0037】
また、洗浄部および検出部をマイクロアレイ取り付け部に対して水平方向に移動させるかわりに、マイクロアレイ取り付け部を、洗浄部および検出部に対して水平方向に移動させてもよい。
【0038】
さらに本発明の装置は、収容部内のサンプル液にマイクロアレイを浸漬可能なように、マイクロアレイ取り付け部または収容部を移動させるための移動手段を備える。収容部内のサンプル液へのマイクロアレイの浸漬は、マイクロアレイ取り付け部を収容部に対して垂直に移動させることによって実施する構成としてもよいし、収容部をマイクロアレイ取り付け部に対して垂直に移動させることによって実施する構成としてもよい。例えば、マイクロアレイ取り付け部または収容部は、例えば、ネジ送り、ベルト送りまたはアクチェータ等の移動手段により、水平および垂直方向に任意に移動できる構成とする。垂直方向の移動については一定の間隔の昇降を繰り返すのであれば、電磁シリンダ、ピストンなどを用いてもよい。
【0039】
一実施形態においてマイクロアレイ取り付け部は、反応部(23)における収容部(31)の蓋として機能するように構成されている(図3)。マイクロアレイを収容部内のサンプル液(32)に浸漬したときに、マイクロアレイ取り付け部(21)が収容部(31)の蓋として機能することにより、ハイブリダイズ反応において温度調整を短時間で実施でき、ハイブリダイズ反応を迅速かつ効率的に実施できる。マイクロアレイ取り付け部(21)は、洗浄部の洗浄用容器の蓋としても機能するように構成されていることが好ましい。
【0040】
また、図3に示すように、マイクロアレイ取り付け部(21)は、挿入部(33)を有することが好ましく、この挿入部にマイクロアレイを取り付けられるように構成されていることが好ましい。マイクロアレイ取り付け部(21)が挿入部(33)を有すると、挿入部がマイクロアレイとともにサンプル液に浸漬され、サンプル液の水位が上昇する。そのため、サンプル液が少量の場合でも、マイクロアレイをサンプル液に浸漬することが可能になる。
【0041】
本発明の装置においては、反応部における核酸増幅反応およびハイブリダイズ反応の各反応処理、洗浄部における洗浄処理、および検出部における検出処理、収容部内のサンプル液にマイクロアレイを浸漬可能なようにマイクロアレイ取り付け部または収容部を移動させる処理、ならびに、反応部、洗浄部または検出部にマイクロアレイを移動させる処理が、制御手段によって自動化されていることが好ましい。本発明の装置の自動化は、制御手段としてのコンピューターに装置に各構成要素を連結することによって実施できる。
【0042】
以下に、図2に示す本発明の一実施形態における装置の動作および処理について説明する。
(i)マイクロアレイ(14)を、旋回アーム(22)を有するマイクロアレイ取り付け部(21)に粘着テープで固定する。このときマイクロアレイ取り付け部(21)は、Aの位置、すなわち、反応部の真上に位置する。
(ii)マイクロアレイ取り付け部が下降し、サンプル液が収容された収容部にマイクロアレイが浸漬されるとともに、マイクロアレイ取り付け部が収容部の蓋として機能し、収容部が密閉される。温度制御部で温度を制御することによってPCR反応が実施される。
(iii)PCR反応後、サンプル液の温度を下げてから、マイクロアレイ取り付け部(21)を上昇させる。サンプル液の温度を30℃程度に下げることにより、PCR反応後のサンプル液の蒸発を防ぐことと同時にマイクロアレイの乾燥防止ができる。
(iv)促進剤供給用のノズルにより、促進剤がサンプル液中に注入され、場合によりピペッティングされる。マイクロアレイ取り付け部が再度下降することにより、サンプル液が収容された収容部にマイクロアレイが再度浸漬されるとともに、マイクロアレイ取り付け部が収容部の蓋として機能し、収容部が密閉される。温度制御部で温度を制御することによってハイブリダイズ反応が実施される。その際、揺動機構により収容部を揺動させる。ハイブリダイズ反応後、サンプル液の温度を30℃程度に下げることにより、サンプル液の蒸発と同時にマイクロアレイの乾燥を防ぐことができる。
(v)マイクロアレイ取り付け部(21)が上昇し、旋回アーム(22)が右に旋回することによって、マイクロアレイ取り付け部が洗浄部の真上に移動される。マイクロアレイ取り付け部(21)が下降し、洗浄液が収容された洗浄用容器にマイクロアレイが浸漬されるとともに、マイクロアレイ取り付け部が容器の蓋として機能し、容器が密閉される。その際、揺動機構により容器を揺動させる。洗浄用容器のはじめの列における洗浄を終えると、洗浄部が配置された移動手段(26)が左に動き、次の洗浄用容器の列がマイクロアレイ取り付け部の下に移動してくると、マイクロアレイ取り付け部が再度下降して次の列の洗浄用容器にマイクロアレイが浸漬される。
(vi)洗浄処理が終わると、マイクロアレイ取り付け部が上昇し、移動手段(26)が左に動き、乾燥部(27)がマイクロアレイ取り付け部の下に移動してくると、マイクロアレイ取り付け部が再度下降してエアーブローによる乾燥処理が実施される。乾燥は必要に応じて行われる。乾燥処理終了後、マイクロアレイ取り付け部(21)が上昇し、旋回アーム(22)が右に旋回して、マイクロアレイ取り付け部(21)を検出部(25)の上に移動する。
(vii)検出部(25)のCCDカメラおよびレーザーはマイクロアレイの方向を向いており、ここでマイクロアレイにレーザー光が照射され、蛍光がCCDカメラで検出される。その際、検出部が配置された移動手段(26)が、1つのマイクロアレイについて検出を終えるごとに左に移動し、複数のマイクロアレイにおけるハイブリダイズ反応の検出が順番に実施される。
【0043】
本発明はまた、活性エステル基を有する担体上にDNAが固定されてなるマイクロアレイを被検核酸とのハイブリダイズ反応に付し、該ハイブリダイズ反応を検出する方法に関する。本発明の方法は、
試料から抽出した核酸の核酸増幅反応を行う工程、
増幅核酸を含むサンプル液にマイクロアレイを浸漬してマイクロアレイ上のDNAと増幅核酸とのハイブリダイズ反応を行う工程、
マイクロアレイを洗浄する工程、および
マイクロアレイにおけるハイブリダイズ反応を検出する工程
を含み、
核酸増幅反応後のサンプル液を精製することなくハイブリダイズ反応を実施することを特徴とする。
【0044】
活性エステル基を有する担体上にDNAが固定されてなるマイクロアレイを用いることにより、核酸増幅反応後の反応液を精製することなくハイブリダイズ反応を実施及び検出することが可能となる。
【0045】
また、マイクロアレイを洗浄する工程においては、界面活性剤およびNaAcを含む洗浄液、または界面活性剤およびMgClを含む洗浄液で洗浄することが好ましい。このような洗浄液を用いることにより、自然乾燥を防ぐことができ、ハイブリダイズ反応後の洗浄処理の後、乾燥を行わずにそのまま測定を行ってもハイブリダイズ反応を検出することができる。すなわち、本発明の方法においては、マイクロアレイの洗浄の後、乾燥を行わずにハイブリダイズ反応を検出することもできる。
【0046】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。
【実施例】
【0047】
(実施例1)DNAマイクロアレイの作製
3mm角のシリコン基板にイオン化蒸着法を用いてダイヤモンドライクカーボン層をコーティングし、カルボキシル基で修飾後、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミドおよびN−ヒドロキシスクシイミドで活性エステル化し、シリコン基板表面にDLC層およびN−ヒドロキシスクシイミド基を有する担体を作製した。
【0048】
上記DLC層を有するシリコン基板上にアンモニアプラズマによりアミノ基を導入し、シリコン基板表面にDLC層およびアミノ基を有する担体を作製した。
【0049】
オリゴヌクレオチド(北海道システム・サイエンス社製)を滅菌水にて100μMに調整した。4倍濃縮Sol.6(東洋鋼鈑製)にて溶かして、終濃度5μMのDNA溶液とした。SPBIO2000(日立ソフトエンジニアリング社製)にて、上記で作製した担体上にDNA溶液をスポット(64点/担体)した。
【0050】
DNA溶液をスポットした担体を、80℃のベーキングチャンバーに入れ、1時間放置してDNAを固定化した。続いて、室温の洗浄液(2xSSC/0.2%SDS)にて15分間洗浄を行った。約70℃に加熱した洗浄液(2xSSC/0.2%SDS)にて5分間洗浄を行った。超純水にてリンスを3回行った。このときに、加熱された洗浄液に浸漬することで、活性エステルを不活性化した。そして、遠心器にて水分を吹き飛ばすことにより、活性エステル基を有する担体上にDNAが固定化されてなるマイクロアレイを作製した。
【0051】
アミノ基を導入した担体は、DNA溶液をスポットして、BSA(牛血清アルブミン 3%)に15分間浸してアミノ基のブロッキングを行い、その後に室温の洗浄液(2xSSC/0.2%SDS)にて15分間洗浄し、超純水で3回洗浄した。そして、遠心器にて水分を吹き飛ばすことにより、アミノ基を有する担体上にDNAが固定化されてなるマイクロアレイを作製した。
【0052】
(実施例2)DNAマイクロアレイにおけるハイブリダイズ反応
自動核酸抽出システムQuick Gene 800(富士フィルム社製)を用いてDNAの抽出を行った。各種細胞に細胞溶解液を加え細胞を溶かし、その溶解液を装置カートリッジに添加し、DNAを抽出した。TAKARA Ex Taq(タカラバイオ社製)を用いて、PCR溶液を作製し、PCRを行った。また、Cy5標識dCTP(GE ヘルスケア)を用いることでPCR増幅核酸にCy5を取り込ませた。
【0053】
上記で調製したCy5標識増幅核酸を精製することなくこれに促進剤(5xSSC/0.5%SDS)を加え、その中に実施例1で作製したDNAマイクロアレイを浸し、揺動させながらハイブリダイズ反応させた。50℃で1時間反応させた。
【0054】
ハイブリダイズ反応後、室温の洗浄液(2xSSC/0.2%SDS、2xSSC)を用いて、30s×3回ほど揺動させながら洗浄し、Nブローにて乾燥させた。
【0055】
FLA−8000(日立ソフト製)検出器にて、マイクロアレイ上のDNAにハイブリダイズしたCy5標識増幅核酸に由来する蛍光を検出した(図4)。
【0056】
これより、アミノ基を有する担体上にDNAが固定化されたマイクロアレイでは、不要な蛍光が数多く見られて、ハイブリダイズした増幅核酸のスポットを確認することができなかったが、活性エステル基を有する担体上にDNAが固定化されたマイクロアレイでは、ハイブリダイズした増幅核酸のスポットを明確に確認することができた。すなわち、増幅反応後の反応液の精製を行わなくても、ハイブリダイズ反応を良好に検出できることが分かった。
【0057】
(実施例3)自動化装置での検出
活性エステル基を有する担体上にDNAが固定化されたマイクロアレイを用い、図2に示す自動化マイクロアレイ処理装置を用いて、実施例2と同様の工程を実施し、ハイブリダイズ反応を検出した。
【0058】
冷却CCDの露光時間は30sとした。レーザーは斜めから照射を行った。蛍光フィルターはCy5用蛍光フィルターを用いた。
【0059】
検出された蛍光画像を図5に示す。非常にスポットがはっきりした画像が得られた。これにより、一連の核酸増幅反応、ハイブリダイズ反応、および検出までの工程を自動で実施できることが確認できた。
【0060】
(実施例4)
自動核酸抽出システムQuick Gene 800(富士フィルム社製)を用いてDNAの抽出を行った。各種細胞に細胞溶解液を加え細胞を溶かし、その溶解液を装置カートリッジに添加し、DNAを抽出した。TAKARA Ex Taq(タカラバイオ社製)を用いて、PCR溶液を作製し、PCRを行った。また、Cy5標識dCTP(GE ヘルスケア)を用いることでPCR増幅核酸にCy5を取り込ませた。
【0061】
上記で調製したCy5標識増幅核酸を精製することなくこれに促進剤(0.5N NaAc/0.5% Tween20)を加え、その中に実施例1で作製した活性エステル基を有する担体上にDNAが固定化されたマイクロアレイを浸し、揺動させながらハイブリダイズ反応させた。50℃で1時間反応させた。
【0062】
ハイブリダイズ反応後、室温の洗浄液(1N NaAc/0.5% Tween20)を用いて、1分×4回揺動させながら洗浄し、さらに、室温の洗浄液(1N MgCl/0.5% Tween20)を用いて、1分×1回揺動させながら洗浄した。Nブローによる乾燥は実施しなかった。
【0063】
FLA−8000(日立ソフト製)検出器にて、マイクロアレイ上のDNAにハイブリダイズしたCy5標識増幅核酸に由来する蛍光を検出した(図6)。
【0064】
これより、ハイブリダイズ反応後の洗浄処理の後、乾燥を行わずにそのまま測定を行っても蛍光を検出できることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の装置における検出部の一実施形態を示す。
【図2】本発明の装置の一実施形態の上面図を示す。
【図3】本発明におけるマイクロアレイ取り付け部、マイクロアレイおよび反応部の一実施形態を示す。
【図4】活性エステル基を有する担体上にDNAが固定化されたマイクロアレイ(41)と、アミノ基を有する担体上にDNAが固定化されたマイクロアレイ(42)について、DNAプローブにハイブリダイズしたCy5標識増幅核酸に由来する蛍光を検出した結果を示す。
【図5】活性エステル基を有する担体上にDNAが固定化されたマイクロアレイを用い、図2に示す自動化マイクロアレイ処理装置を用いて、実施例2と同様の工程を実施し、ハイブリダイズ反応を検出した結果を示す。
【図6】活性エステル基を有する担体上にDNAが固定化されたマイクロアレイについて、ハイブリダイズ反応後の洗浄処理の後、乾燥を行わずにDNAプローブにハイブリダイズしたCy5標識増幅核酸に由来する蛍光を検出した結果を示す。
【符号の説明】
【0066】
11 CCDカメラ
12 レーザー
13 レンズ
14 マイクロアレイ
15 スリット
16 蛍光
17 蛍光フィルター
18 CCD素子
21 マイクロアレイ取り付け部
22 旋回アーム
23 反応部
24 洗浄部
25 検出部
26 移動手段
27 乾燥部
28 洗浄用容器
31 収容部
32 サンプル液
33 挿入部
41 活性エステル基を有する担体上にDNAが固定化されたマイクロアレイ
42 アミノ基を有する担体上にDNAが固定化されたマイクロアレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エステル基を有する担体上にDNAが固定されてなるマイクロアレイを被検核酸とのハイブリダイズ反応に付し、該ハイブリダイズ反応を検出するためのマイクロアレイ処理装置であって、
サンプル液を収容するための収容部と該収容部内のサンプル液の温度調整を行う温度調整部とを備えた、核酸増幅反応処理およびハイブリダイズ反応処理を行うための反応部と、
マイクロアレイを洗浄処理するための洗浄部と、
マイクロアレイにおいてハイブリダイズ反応を検出処理するための検出部と、
マイクロアレイを取り付けるためのマイクロアレイ取り付け部と、
収容部内のサンプル液にマイクロアレイを浸漬可能なように、マイクロアレイ取り付け部または収容部を移動させるための移動手段と、
を備え、
マイクロアレイ取り付け部が、反応部、洗浄部または検出部にマイクロアレイを移動させて前記処理を行うための移動手段を備える、前記装置。
【請求項2】
マイクロアレイ取り付け部は、マイクロアレイを旋回させる旋回アームを有しており、反応部、洗浄部および検出部が、マイクロアレイが旋回する円周上に配置されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
検出部が、励起光をマイクロアレイに照射し、得られる蛍光の強度を検出するものである、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
マイクロアレイ取り付け部が、複数のマイクロアレイを取り付け可能なように構成されており、反応部および洗浄部が、取付け部に取り付けられた複数のマイクロアレイに対して、同時に前記処理を行うことが可能なように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
マイクロアレイ取り付け部が、収容部の蓋として機能するように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
マイクロアレイが10mm以下の寸法を有する平板状である、請求項1〜5のいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
活性エステル基を有する担体上にDNAが固定されてなるマイクロアレイを被検核酸とのハイブリダイズ反応に付し、該ハイブリダイズ反応を検出する方法であって、
試料から抽出した核酸の核酸増幅反応を行う工程、
増幅核酸を含むサンプル液にマイクロアレイを浸漬してマイクロアレイ上のDNAと増幅核酸とのハイブリダイズ反応を行う工程、
マイクロアレイを洗浄する工程、および
マイクロアレイにおけるハイブリダイズ反応を検出する工程
を含み、
核酸増幅反応後のサンプル液を精製することなくハイブリダイズ反応を実施することを特徴とする前記方法。
【請求項8】
マイクロアレイの洗浄の後、乾燥を行わずにハイブリダイズ反応を検出する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
界面活性剤およびNaAcを含む洗浄液、または界面活性剤およびMgClを含む洗浄液でマイクロアレイを洗浄する、請求項7または8記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−92420(P2009−92420A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261076(P2007−261076)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(390003193)東洋鋼鈑株式会社 (265)
【Fターム(参考)】