説明

マイクロアレイ用担体、パートナー担持マイクロアレイ、及び分析方法

【課題】任意のパートナー(例えば、タンパク質又は核酸)に関して、分析に必要な量を高密度で固定化することが可能なマイクロアレイ用担体を提供する。
【解決手段】マイクロアレイ用担体におけるプラスチック製担持表面が、放射線照射処理されており、好ましくはプラスチック製担体表面がポリスチレン又はスチレン系共重合体であり、放射線照射処理の線量が1〜100kGyであり、放射線がガンマ線であることを特徴とするマイクロアレイ用担体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロアレイ、すなわち、同一反応表面上にて複数の分析対象物質(例えば、タンパク質又は核酸)を同時に分析可能なマイクロアレイ用の担体、及び前記担体にパートナーを担持させたマイクロアレイ、並びにこれらを用いる分析方法に関する。
本明細書における「分析」には、分析対象物質の存在の有無を判定する「検出」と、分析対象物質の量を定量的又は半定量的に決定する「測定」とが含まれる。
【背景技術】
【0002】
ヘテロジニアスアッセイと称される測定法があり、その測定法では、測定対象物質に対して結合活性をもつ抗体などの物質を固相化した担体を用いる。担体の材料としては、シリカや炭素等の粉末、セファローズやセファデックス等の樹脂、あるいはガラス、プラスチック、又は金属等が用いられ、反応後に、担体を含む部分と担体を含まない部分とを分離し、担体に結合した標識物質からの信号を測定する。
【0003】
この担体表面に生理活性物質を固定化する方法には、物理吸着法と化学結合法が知られている。化学結合法は、結合活性をもつ官能基を担体の表面に生じさせて、生理活性物質のアミノ基などと共有結合させて固定化する。物理吸着法は、生理活性物質と担体とが相互に物理的に引きつけられる現象を利用するもので、それにはファンデルワールス力、疎水結合力、イオン結合力、又は水素結合力等が関与しているとされる。
【0004】
化学結合法は、結合力が強固であり解離しにくい点や、結合部分を選択することができる点等にメリットを有するが、物理吸着に比べて絶対的結合量が少ない点、結合反応性官能基をもたない生理活性物質を結合することができない点、結合操作が複雑である点がデメリットである。
一方、物理吸着法は、結合操作が簡単であるという大きなメリットがあるが、剥がれる可能性があることや、生理活性物質の種類によって吸着力が異なるために結合量の制御が困難であるなどのデメリットをもつ。
【0005】
生理活性物質を固定化させる担体としては、アフィニティーカラムに用いられる担体のように、固定化の目的だけに用いられる場合もあるが、信号(シグナル)分析用容器と共用される場合がある。すなわち、反応容器として被検試料(サンプル)から分析対象物質だけを取り出し、そこに標識・付加した信号を測定するための容器にも用いることができる便利さを有している。この固定化担体かつ測定容器という目的を満足させる一つの例にプラスチック容器がある。ELISAプレートのように、プラスチックウェルに物理吸着又は化学結合法で抗体などを結合し、被検試料中の抗原などを結合反応させた後、酵素標識抗体等で抗原をラベルして洗浄した後、基質を加えて発色、発光、又は蛍光などを生じさせて酵素活性を分析する際、測定容器としてこのウェルを用いている。この目的にはポリスチレンが多く用いられている。
【0006】
最近、DNAチップ又はプロテインチップを含むマイクロアレイという概念が広まってきており、平板の上に多くのDNAやタンパク質をドット状に固定化し、被検試料中の多種類に及ぶDNAやタンパク質を、特異的結合性をもつそれぞれのドットに固定化してそれぞれのドットに固定化された標識物質量を測定して多くの情報を一度に得ようとする考え方である。この考え方は、固定化担体機能をもつ測定容器に、更に集積化という3つ目の要素が加わったものといえる。
【0007】
このようなタンパク質チップ用標識剤には蛍光物質が多く用いられている。蛍光物質は、DNAやタンパク質に容易に結合することができる点、ドットごとのシグナルを別々に認識することができる点、測定時溶液を必要としない点等で、チップシステムに向いた性質を多く有しているためである。しかし、大きな問題点として、標識剤として用いている蛍光物質の1分子当たりの蛍光強度が低いという点、ドットごとの測定再現性が悪いという点、標識物質の非特異的吸着によるバックグラウンド値の上昇による検出感度の低下がある。1分子当たりの蛍光強度を飛躍的に高めた検出感度の高い標識物質も検討され、ユーロピウムキレートを封入した粒子と時間分解蛍光測定との組み合わせなどによる高感度化が進んでいる(特許文献1)。
【0008】
近年、タンパク質の構造を認識して特異的に結合することのできるDNAやRNAが開発されており、これらはアプタマーと呼ばれている。イムノアッセイやアフィニティークロマトグラフィーによって特定のタンパク質を分析する場合においても、固相となる担体上へ分析対象物質となるタンパク質に特異的に結合することのできるアプタマーを結合させ、対象物質を分析する試みがなされている。固相となる担体表面上へのアプタマーの結合方法の一つとして、アビジン(又はストレプトアビジン)−ビオチンを用いて間接的に担体表面上に結合させる方法が挙げられる。これは、アプタマーをビオチン標識しておき、アビジン(又はストレプトアビジン)結合担体と反応させることにより、担体表面上へアプタマーを結合させる方法である。この場合には、担体表面上にアビジンを高密度に結合させることが望まれる。
【0009】
これまで述べたように、マイクロアレイ用担体上に分析対象物質に特異的に結合可能なパートナーを結合させる際に、その吸着量を向上させることが求められている。特許文献2には、ガラス、ポリエチレン、又はポリプロピレン製プレートからなり、その表面がコロナ放電処理されたDNAチップが開示されている。このDNAチップでは、コロナ放電処理によってプレート表面の親水性が向上するため、プレート表面に担持させるDNA量を増加させることができる。しかし、コロナ放電処理は、その制御が容易でなく、被処理体の形状によっては適用が著しく困難か不可能であることがあり、更には、大量調製には不向きである等の欠点がある。より具体的には、コロナ放電処理では、電極とサンプルの距離が数ミリ〜数十ミリ程度であるため、サンプルとして樹脂を処理する場合、尖った部分や電極に接近した部分に電子が集中する場合があり、樹脂が焼けたり、場合によっては発火する恐れがあるなどの欠点がある。
【0010】
【特許文献1】国際公開第02/097436A1号パンフレット
【特許文献2】特開2003−28877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
時間分解蛍光測定法を用いて検出感度を通常の蛍光測定の1000倍程度あるいはそれ以上に向上させ、なおかつ近傍に共存させても蛍光消光を起こさないユーロピウムキレート分子の数万個を粒子内部に封入して感度を格段に向上させた標識物質を用いるタンパク質チップシステムには、それに適した測定容器が必要となる。すなわち、固定化担体機能をもつと共に集積化された測定容器である。多種類の異なる等電点や異なる疎水性をもつタンパク質を容易にドット状に固定化することができ、かつ時間分解蛍光測定を妨害しない測定容器という性質が必要となる。しかしながら、従来は、こうした要求を満足することのできる測定容器は開発されていない。
【0012】
ポリスチレンは、タンパク質を物理吸着する性質も有しているため、従来から、固定化担体機能をもつ測定容器の材質として選択され、例えば、ELISAプレートの素材などに広く用いられている。また、時間分解蛍光測定用容器としての採用を考えた場合も、ポリスチレンそれ自体の蛍光時間は短いため、一定のラグタイムを設けて測定を実施すれば大きな悪影響がなく、蛍光消光時間の長い添加剤にさえ注意すれば、充分に適用可能である。しかしながら、ポリスチレンは、異なる等電点や異なる疎水性をもつタンパク質の吸着力に差があるため、任意のタンパク質に関して、分析に必要な量を固定化することができるわけではなく、適用が制限されるという重大な欠点があった。
【0013】
一方、高感度分析を行うためには、分析に用いる標識タグの担体への非特異的吸着量を最大限減らすことが重要である。高感度測定が可能な時間分解蛍光測定法においても、ユーロピウムキレート標識物質自体が担体への非特異的吸着が起これば、分析でのバックグラウンド値の上昇が起こり、結果として検出感度の減少につながる。こうした問題点を解決するために、分析対象物質に対して選択的に結合することのできるパートナーを担体へ結合させた後に、その分析において不活性なタンパク質などを用いて、ブロッキング操作を行うことが一般的である。しかしながら、そのような操作を行っても標識物質の非特異的吸着を完全に抑えることはできていない。
【0014】
従って、本発明の課題は、任意のパートナー(例えば、タンパク質又は核酸)に関して、分析に必要な量を高密度で固定化することが可能なマイクロアレイ用担体を提供することにある。本発明の更なる課題は、前記高密度固定化担体機能をもつと共に、標識物質の担体への非特異的吸着量を既存の固定化担体に比べて減少させることができ、集積化が可能なマイクロアレイ用担体を提供することにある。前記マイクロアレイ用担体は、測定容器としての併用が可能であるため、例えば、時間分解蛍光測定用容器としても使用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の課題は、本発明による、マイクロアレイ用担体におけるプラスチック製担持表面が、放射線照射処理されていることを特徴とする、マイクロアレイ用担体によって解決することができる。
【0016】
本発明によるマイクロアレイ用担体の好ましい態様では、プラスチック製担持表面がポリスチレン又はスチレン系共重合体である。
また、別の好ましい態様では、放射線照射処理の線量が1〜100kGyである。
更に別の好ましい態様では、放射線がガンマ線であり、より好ましくは、コバルト60を線源とするガンマ線である。
更に別の好ましい態様では、時間分解蛍光測定用であり、より好ましくは、ユーロピウム錯体封入ナノ粒子を標識物質として用いる。
【0017】
また、本発明は、前記マイクロアレイ用担体に、パートナーの一方を接触させて固定化し、非固定化パートナーを洗浄除去して得られることを特徴とする、マイクロアレイに関する。
【0018】
また、本発明は、前記マイクロアレイ用担体、あるいは、前記マイクロアレイを用いることを特徴とする、分析対象物質の分析方法に関する。
【0019】
また、本発明は、マイクロアレイ用担体のプラスチック製担持表面を、放射線照射処理することを特徴とする、マイクロアレイ用担体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明のマイクロアレイ用担体においては、プラスチック製担持表面を放射線照射処理によって表面改質を行っているので、種々のパートナー(例えば、等電点の異なる種々のタンパク質)を結合することができ、パートナーの性質の差に影響を受けにくい。更に、放射線未照射担体に比べて、標識物質の担体表面上への非特異的吸着量を減少させることができる。
【0021】
従って、本発明のマイクロアレイ用担体に、種々のパートナー(例えば、タンパク質又は核酸)をドット状に配置するだけで充分な一定量を吸着して、固定化担体機能をもつ集積化された測定容器とすることができ、ブロッキング剤(すなわち、分析において不活性なタンパク質や合成高分子など)を用いた従来と同様のブロッキング操作により、標識物質の担体表面上への非特異的吸着量を減少させることにより、更に高感度分析を可能にさせる測定容器を提供することができる。
【0022】
このように、パートナーを効率的に固定化することができ、分析に用いる標識タグの担体表面上への非特異的吸着を減少させることができるため、生物学的分析方法などにおけるBF分離操作を効率的に実施することができ、特に、時間分解蛍光測定に好適に使用可能である。
また、放射線照射処理は、安価に行うことができ、大量調製も可能である。また、放射線照射処理では、コロナ放電処理でみられる欠点、すなわち、担体を破損する恐れもなく、その制御も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(1)マイクロアレイ用担体及びパートナー担持マイクロアレイ
本発明のマイクロアレイ用担体は、担持表面(すなわち、パートナーを担持させる表面)がプラスチック製であるマイクロアレイ用担体において、前記担持表面が放射線照射処理されている限り、特に限定されるものではなく、例えば、従来公知のプラスチック製担体(すなわち、放射線照射処理が行われていないプラスチック製担体)の表面に対して放射線照射処理を実施することによって製造することができる。
【0024】
放射線照射処理の対象となる被処理出発担体としては、例えば、全体がプラスチックからなるプラスチック製担体、プラスチック又はそれ以外の材料(例えば、ガラス又は金属)からなる基板の全表面又はその一部をプラスチックでコートしたプラスチックコーティング担体などを挙げることができる。
担体材料として用いることのできる前記プラスチックとしては、マイクロアレイ用担体の材料として一般的に使用されているプラスチック、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、又はポリスチレン若しくはスチレン系共重合体[例えば、ポリ(α−メチルスチレン)]を挙げることができる。
被処理出発担体の形状も特に限定されないが、例えば、平板状チップを挙げることができる。
【0025】
放射線照射処理には、例えば、ガンマ線又は電子ビームを用いることができ、ガンマ線を用いることが好ましい。ガンマ線照射線量は、好ましくは1〜100kGy、より好ましくは5〜50kGy、更に好ましくは10〜35kGyにわたって実施することができる。この放射線照射処理によって、プラスチック製担持表面の表面改質が行われるので、パートナー(例えば、タンパク質又は核酸)に対する吸着性が向上する。また、パートナー固定化後に実施することのできるブロッキング処理においても、ブロッキング剤の吸着性が向上するため、その結果、標識物質の担体表面上への非特異的吸着量が減少する。
【0026】
こうして放射線照射処理された本発明によるマイクロアレイ用担体には、任意のパートナー(生物学的パートナー)の一方を担持させることができる。本明細書において「パートナー」とは、相互に特異的に結合することのできる物質を意味し、例えば、抗原抗体反応によって相互に特異的に結合可能な抗原及び抗体、相補的結合により特異的にハイブリダイズ可能な核酸(例えば、DNA又はRNA)、あるいは、相互に特異的に結合可能なアプタマー及びタンパク質を挙げることができ、好ましくはタンパク質である。なお、アプタマーとは、アデニン、グアニン、シトシン、チミンから構成されるDNA(DNAアプタマー)、又はアデニン、グアニン、シトシン、ウラシルから構成されるRNA(RNAアプタマー)で、特定のタンパク質と特異的に結合することのできる核酸を意味する。
【0027】
本発明においては、本発明のマイクロアレイ用担体に、分析対象物質に応じて適宜選択した任意のパートナーを担持させることにより作製した、本発明のマイクロアレイを用いて、分析対象物質の分析(生物学的分析)を実施することができる。本発明によるマイクロアレイ用担体には、分析対象物質に対して特異的に結合可能なパートナーを担持させるか、あるいは、分析対象物質それ自体をパートナーとして担持させることができる。
また、1つのマイクロアレイ用担体上に担持させるパートナーの種類と数は、例えば、分析対象物質の種類と数に応じて適宜選択することができ、特に限定されるものではない。例えば、1種類のパートナーをドット状に複数担持させることもできるし、複数種類のパートナーを、各パートナー毎に1つ又は複数担持させることもできる。後者の場合には、各パートナーの担持数は、各パートナー毎に任意に決定することができる。
【0028】
本発明のマイクロアレイ用担体にパートナーを担持させる方法は、予め放射線照射処理を実施しておくこと以外は、通常のマイクロアレイの作製方法(例えば、物理吸着法)をそのまま適用することができる。より具体的には、放射線照射処理マイクロアレイ用担体に、パートナーの一方を含む水溶液を接触させて前記パートナーを前記担体表面に固定化し、続いて、非固定化パートナーを洗浄して除去し、必要があれば、更にブロッキング剤で処理することができる。
【0029】
前記の洗浄液としては、例えば、緩衝液、蒸留水、若しくは生理食塩水、又は界面活性剤を含んだ緩衝液、蒸留水、若しくは生理食塩水を用いることができる。また、ブロッキング剤としては、例えば、牛血清アルブミン、スキムミルク、及び合成高分子などを用いることができる。パートナーを担持したマイクロアレイ用担体(すなわち、パートナー担持マイクロアレイ)をブロッキング剤で処理することにより、前記パートナー以外のタンパク質の吸着を防止することができる。
【0030】
こうして得られたパートナー担持マイクロアレイは、例えば、タンパク質チップ又はDNAチップとして用いることができる。例えば、担持させるパートナーとして、食品に対する抗体を選択して食品中のアレルギー誘発物質の分析用タンパク質チップを提供することができる。
【0031】
(2)分析方法
本発明のマイクロアレイ用担体を用いて、各種分析を実施することもできる。例えば、本発明の分析方法の一態様として、分析対象物質が抗原であり、固定化用パートナー及び標識化パートナーとして、前記抗原に対する抗体を用いる態様(いわゆるサンドイッチ法)、すなわち、
(1)本発明のマイクロアレイ用担体上に、分析対象物質(例えば、抗原A)に対して特異的に結合可能な第1のパートナー(例えば、抗体B)を固定化する工程;
(2)前記第1パートナー(抗体B)を固定化して担持したマイクロアレイ用担体と、前記分析対象物質(抗原A)を含む可能性のある被検試料とを接触させる工程;
(3)前記第1パートナー(抗体B)を固定化して担持し、更に前記被検試料に接触させたマイクロアレイ用担体と、前記分析対象物質(抗原A)に対して特異的に結合可能で、標識化された第2のパートナー(例えば、抗体C)とを接触させる工程;
(4)マイクロアレイ用担体上に固定化された前記第1パートナー(抗体B)に結合した前記分析対象物質(抗原A)に対して未反応の標識化第2パートナー(抗体C)をマイクロアレイ用担体上から除去する工程;及び
(5)マイクロアレイ用担体上に固定化された前記第1パートナー(抗体B)に結合した前記分析対象物質(抗原A)に結合した標識化第2パートナー(抗体C)の標識に由来する信号を分析する工程
を含むことを特徴とする、分析対象物質の免疫学的分析方法(以下、本発明の分析方法にける「第1態様」と称する)を挙げることができる。
【0032】
前記第1態様におけるパートナーとして免疫学的パートナーを使用する場合には、第1免疫学的パートナー(例えば、抗体B)及び第2免疫学的パートナー(例えば、抗体C)は、ポリクローナル抗体であるかあるいはモノクローナル抗体であることができる。両者がモノクローナル抗体である場合は、第1免疫学的パートナーと第2免疫学的パートナーとで異なるモノクローナル抗体を用いる。
【0033】
前記第1態様において、分析対象物質が核酸(例えば、DNA又はRNA)である場合には、第1パートナー及び第2パートナーとして、前記分析対象核酸に相補的な核酸を使用することができる。また、この場合、分析対象核酸を予め標識しておくことにより、前記工程(3)〜(5)に代えて、下記工程:
(3’)マイクロアレイ用担体上に固定化された前記第1パートナーに対して未反応の分析対象物質をマイクロアレイ用担体上から除去する工程;及び
(4’)マイクロアレイ用担体上に固定化された前記第1パートナーに結合した前記分析対象物質の標識に由来する信号を分析する工程
を実施することができる。
【0034】
前記第1態様における工程(1)において、第1パートナーを担体上に固定化する場合には、例えば、第1パートナーを担体上に直接、固定化することもできるし、あるいは、間接的に、例えば、適当な物質を介して固定化することもできる。例えば、第1パートナーがアプタマーである場合には、ビオチン−アビジン系を介して固定化することができる。より具体的には、例えば、アプタマーを予めビオチン化し、マイクロアレイ用担体上にアビジン(又はストレプトアビジン)を固定化した後、ビオチン化アプタマーとアビジン固定化担体とを接触させることにより、前記担体上に、第1パートナーを間接的に固定化することができる。
【0035】
本発明の分析方法の別の一態様として、分析対象物質が抗体(例えば、抗体X)であり、固定化用パートナーが前記抗体に対する抗原(例えば、抗原Y)であり、標識化パートナーが前記抗原に対する抗体(例えば、抗体Z)である態様(いわゆる2段階競合法)、すなわち、
(1)本発明のマイクロアレイ用担体上に、分析対象物質(例えば、抗体X)に対して特異的に結合可能な第1のパートナー(例えば、抗原Y)を固定化する工程;
(2)前記第1パートナー(抗原Y)を固定化して担持したマイクロアレイ用担体と、前記分析対象物質(抗体X)を含む可能性のある被検試料とを接触させる工程;
(3)前記第1パートナー(抗原Y)を固定化して担持し、更に前記被検試料に接触させたマイクロアレイ用担体と、前記第1パートナー(抗原Y)に対して特異的に結合可能で、標識化された第2のパートナー(例えば、抗体Z)とを接触させる工程;
(4)マイクロアレイ用担体上に固定化された前記第1パートナー(抗原Y)に対して未反応の標識化第2パートナー(抗体Z)をマイクロアレイ用担体上から除去する工程;及び
(5)マイクロアレイ用担体上に固定化された前記第1パートナー(抗原Y)に結合した標識化第2パートナー(抗体Z)の標識に由来する信号を分析する工程
を含むことを特徴とする、分析対象物質の免疫学的分析方法(以下、本発明の分析方法にける「第2態様」と称する)を挙げることができる。
【0036】
本発明の分析方法の更に別の一態様として、分析対象物質が抗原であり、1次抗体及び標識化2次抗体として、前記抗原に対する抗体を用いる態様、すなわち、
(1)本発明のマイクロアレイ用担体上に、分析対象物質(抗原A)を含む可能性のある被検試料を接触させる工程;
(2)前記被検試料を接触させたマイクロアレイ用担体と、前記分析対象物質(抗原A)に対して結合可能な第1のパートナー(例えば、抗体B)とを接触させる工程;
(3)前記被検試料を接触させ、更に前記第1パートナー(抗体B)と接触させたマイクロアレイ用担体と、前記第1パートナー(抗体B)と特異的に結合可能で、標識化された第2のパートナー(例えば、抗体C)とを接触させる工程;
(4)マイクロアレイ用担体上に固定化された前記分析対象物質(抗原A)に結合した前記第1パートナー(抗体B)に対して未反応の標識化第2パートナー(抗体C)をマイクロアレイ用担体上から除去する工程;及び
(5)マイクロアレイ用担体上に固定化された前記分析対象物質(抗原A)に結合した前記第1パートナー(抗体B)に結合した標識化第2パートナー(抗体C)の標識に由来する信号を分析する工程
を含むことを特徴とする、分析対象物質の免疫学的分析方法(以下、本発明の分析方法にける「第3態様」と称する)を挙げることができる。
【0037】
前記第3態様における工程(1)において、被検試料を担体と接触させ、被検試料中の分析対象物質を担体と結合させる場合には、例えば、分析対象物質を担体上に直接、結合させることもできるし、あるいは、間接的に、例えば、適当な物質を介して結合させることもできる。例えば、分析対象物質に特異的に結合することのできるアプタマーを予めビオチン化し、マイクロアレイ用担体上にアビジン(又はストレプトアビジン)を固定化し、ビオチン化アプタマーとアビジン固定化担体とを接触させた後、被検試料を接触させることにより、前記担体上に、分析対象物質を間接的に結合させることができる。
【0038】
更に、本発明による放射線照射処理マイクロアレイ用担体を用いて、アプタマーと特異的に結合することのできるタンパク質を利用して実施することもできる。例えば、その一つの態様は、
(1)分析対象物質(例えば、抗原A)に対して特異的に結合することのできる前記第1パートナー(例えば、アプタマーB)にリガンドを結合させる工程;
(2)本発明による前記担体内壁表面上に、前記第1パートナー(例えば、アプタマーB)に結合させたリガンドに対して特異的に結合することのできるタンパク質(P)を固定化する工程;
(3)担体内壁表面上に固定化された前記タンパク質(P)と、前記分析対象物質(例えば、抗原A)を含む可能性のある被検試料とを接触させる工程;
(4)前記第1パートナー(例えば、アプタマーB)を固定化して担持し、更に前記被検試料に接触させたマイクロアレイ用担体と、前記分析対象物質(例えば、抗原A)に対して免疫学的に特異的に結合可能で、標識化された第2の免疫学的パートナー(例えば、抗体C)とを接触させる工程;
(5)前記第1パートナー(例えば、アプタマーB)を固定化して担持し、更に前記被検試料に接触させたマイクロアレイ用担体と、前記分析対象物質(例えば、抗原A)に対して免疫学的に特異的に結合可能で、標識化された第2の免疫学的パートナー(例えば、抗体C)とを接触させる工程;
(6)マイクロアレイ用担体上に固定化された前記第1パートナー(例えば、アプタマーB)に結合した前記分析対象物質(例えば、抗原A)に対して未反応の標識化第2免疫学的パートナー(例えば、抗体C)をマイクロアレイ用担体上から除去する工程;及び
(7)マイクロアレイ用担体上に固定化された前記第1パートナー(例えば、アプタマーB)に結合した前記分析対象物質(例えば、抗原A)に結合した標識化第2免疫学的パートナー(例えば、抗体C)の標識に由来する信号を分析する工程
を含むことを特徴とする、分析対象物質(例えば、抗原A)の免疫学的分析方法(以下、本発明の分析方法にける「第4態様」と称する)である。
【0039】
前記第4態様において、第1パートナー(例えば、アプタマーB)はDNAアプタマーであるかあるいはRNAアプタマーであることができ、第2免疫学的パートナー(例えば、抗体C)は、ポリクローナル抗体であるかあるいはモノクローナル抗体であることができる。
分析対象物質が抗体(X)である場合には、前記第1パートナーとして前記抗体(X)に対して特異的に結合可能なアプタマー(Y)を用い、更に、前記第2免疫学的パートナーとして、前記分析対象物質(X)に対して免疫学的に特異的に結合可能な抗体(Z)を用いることができる。
【0040】
本発明の分析方法は、公知の時間分解蛍光測定法によって実施することが好ましい。時間分解蛍光測定法においては、公知の蛍光性希土類金属錯体を標識として用いることができ、例えば、蛍光性希土類金属錯体封入コア−シェル型粒子を標識として用いることができる。前記の蛍光性希土類金属錯体封入コア−シェル型粒子は、水不溶性高分子化合物を主成分とするコア部分の表面に、表層に反応性官能基を有する水溶性高分子化合物ブラシを有するコア−シェル型粒子であり、そのコア部分に蛍光性希土類金属錯体が封入されている。なお、希土類金属錯体封入粒子の内、その粒子径がnmオーダー(すなわち、1μm未満)のものが、通常、希土類金属錯体封入ナノ粒子と称されている。
【0041】
以下、時間分解蛍光測定法で用いる蛍光性希土類金属錯体封入コア−シェル型粒子について説明する。
コア部分に蛍光性希土類金属錯体を封入することができるコア−シェル型粒子は、例えば、
(a)水不溶性高分子化合物を主成分とするコア部分と、(b)反応性官能基を有する水溶性高分子化合物を主成分とし、前記コア部分の表面をブラシ状に覆うシェル部分とからなる。
【0042】
コア部分を形成するのに用いることのできる水不溶性高分子化合物は、水に溶解しない高分子化合物であって、しかも、コア部分を形成した際に、その内部に蛍光性希土類金属錯体を封入することができる高分子化合物である限り、特に限定されるものではない。前記水不溶性高分子化合物としては、例えば、疎水性ポリマー[例えば、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)ポリイソプレン、ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸、ポリラクトン、又はポリラクタムなど]、水溶性ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリアリルアミン、又はポリアクリル酸など)の架橋ゲル、あるいは、水不溶性天然高分子化合物(例えば、ゼラチン又は多糖など)などを挙げることができる。
【0043】
前記のコア部分は、前記の水不溶性高分子化合物1種類のみから実質的に形成されているか、又は前記の水不溶性高分子化合物2種類以上の組み合わせから実質的に形成されていることができる。
【0044】
前記コア部分の形状は特に限定されるものではないが、一般的には大略球状あるいは大略楕球状である。また、前記コア部分の寸法も特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜変化させることができるが、大略球状のコア部分の直径は、一般的には5nm〜500nm程度である。
【0045】
シェル部分を形成するのに用いることのできる水溶性高分子化合物は、直鎖状の高分子化合物であり、その一方の末端(結合末端)でコア部分の表面と結合することができると共に、もう一方の末端(自由末端)に反応性官能基を有するか、あるいは、反応性官能基を導入することができ、しかも、前記コア部分の表面にブラシ状に配置することが可能である限り、特に限定されるものではない。本明細書において、「コア部分の表面をブラシ状に覆うシェル部」とは、シェル部が多数の直鎖状水溶性高分子化合物からなり、それら直鎖状水溶性高分子化合物の各々が一方の結合末端でコア部分の表面と結合し、しかも、もう一方の自由末端が、少なくとも水溶性高分子化合物と免疫学的パートナー(例えば、抗原又は抗体)とを反応させる反応液中において、その反応液の系中に糸状又は棒状に表面から突出していることを意味する。また、これらのブラシ状の水溶性高分子化合物鎖の自由末端には、それぞれ免疫学的パートナーと結合可能な反応性官能基が存在するので、シェル部分の最外殻は、多数の反応性官能基で覆われている。
【0046】
前記水溶性高分子化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアミノ酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸ジメチルアミノエチル、又はポリアリルアミンなどを挙げることができ、PEG又はポリビニルアルコールが好ましい。
【0047】
シェル部を構成する水溶性高分子化合物鎖は、各水溶性高分子化合物鎖が前記の水溶性高分子化合物1種類のみから実質的に形成されているか、又は各水溶性高分子化合物鎖が相互に異なる前記の水不溶性高分子化合物2種類以上の組み合わせから実質的に形成されていることができる。また、それぞれの鎖の長さは同じである必要はなく、各水溶性高分子化合物鎖が1種類の水溶性高分子化合物のみから形成されている場合であっても、1種類の長さの鎖のみから実質的に形成されていることもできるし、あるいは、2種類以上の長さの鎖の組み合わせから実質的に形成されていることができる。更に、各水溶性高分子化合物鎖が相互に異なる水不溶性高分子化合物2種類以上の組み合わせから実質的に形成されている場合でも、それぞれ異なる鎖の長さを選択して組み合わせることも可能である。
【0048】
前記シェル部分を構成する水溶性高分子化合物鎖は、前記のコア部分の全表面を実質的に完全に覆っているのが好ましい。また、前記シェル部分を構成する各水溶性高分子化合物鎖は、それぞれ、実質的に同じ長さである必要はないが、各水溶性高分子化合物鎖の自由末端によって大略球状又は大略楕球状のシェル部分外殻表面が形成されるのが好ましい。
【0049】
前記コア部分の直径と前記シェル部分の厚さとの比率は、用途に応じて適宜変化させることができる。例えば、コア部分の直径を、例えば、5nm〜500nmとすることができ、また、シェル部分の厚さを、例えば、5nm〜500nmとすることができる。
【0050】
前記水溶性高分子化合物鎖の自由末端に存在する反応性官能基は、前記水溶性高分子化合物の一方の末端(結合末端)をコア部分表面に結合させる前からもう一方の末端(自由末端)に存在するか、あるいは、前記水溶性高分子化合物の一方の末端(結合末端)をコア部分表面に結合させた後からもう一方の末端(自由末端)に導入するができる。これらの反応性官能基は、いずれも水(又は水系溶媒)中で安定であり、しかも、前記蛍光性希土類金属錯体封入コア−シェル型粒子を標識物質として使用する際の免疫学的パートナーと反応可能な官能基である限り、特に限定されるものではなく、例えば、アルデヒド基、カルボキシル基、メルカプト基、アミノ基、マレイミド基、ビニルスルホン基、又はメタンスルホニル基などを挙げることができ、アルデヒド基、アミノ基、カルボキシル基、又はマレイミド基が好ましい。
【0051】
また、蛍光性希土類金属錯体封入コア−シェル型粒子を標識物質として使用する際の免疫学的パートナーの導入量を調節するために、自由末端に存在する反応性官能基を持たない水溶性高分子化合物鎖(例えば、水素原子、メチレン基、又は水酸基などを自由末端に有する水溶性高分子化合物鎖)を任意の割合で混合することも可能である。この場合、導入させる免疫学的パートナーと自由末端に存在する官能基の反応に干渉させないために、反応性官能基を持たない水溶性高分子化合物鎖の長さを、反応性官能基を持つ水溶性高分子化合物鎖より短くすることが望ましい。
【0052】
水不溶性高分子化合物を主成分とするコア部分の表面に、表層に反応性官能基を有する水溶性高分子化合物ブラシを有するコア−シェル型粒子を調製する方法としては、これまで報告されている様々な公知方法が適用可能である。前記公知方法としては、例えば、
(1)(a)反応性官能基を有する親水性セグメントと疎水性セグメントとを結合したブロック共重合体(親−疎水型ブロック共重合体)と、(b)疎水性ポリマーとを混合して粒子を調製するエマルジョン法;
(2)反応性官能基を有する水溶性高分子マクロモノマーを分散剤として、疎水性モノマーを重合させる分散重合法;又は
(3)ハイドロゲル粒子表面に水溶性高分子化合物ブラシを導入する方法
などを挙げることができる。
【0053】
前記のエマルジョン法(1)で用いる親−疎水型ブロック共重合体の合成方法、及び前記の分散重合法(2)で用いる反応官能基を有する水溶性高分子マクロモノマーの合成方法としては、例えば、既に本発明者及びその共同研究者が開発した方法(例えば、WO96/33233号公報、WO99/571743号公報、特開平11−322917号公報、又は特開2001−324507号公報)を用いることができる。
【0054】
前記の親−疎水型ブロック共重合体又は水溶性高分子マクロモノマーとして使用することのできる化合物としては、例えば、WO96/33233号公報に記載の式(IA):
【化1】

[式中、R1A及びR2Aは、独立して、炭素数1〜10のアルコキシ基、アリールオキシ基、又はアリール−(炭素数1〜3のアルキルオキシ)基であるか、あるいは、R1A及びR2Aは、一緒になって、炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよい式:
−O−CH(R’)−CH−O−
(ここでR’は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である)
で表されるエチレンジオキシであるか、あるいは、R1A及びR2Aは、一緒になって、オキシ(=O)であり、
Lは、式:
−CH(R3A)−O−CO−CH(R4A)−
又は−(CH
で表される2価の基であり、ここで、R3A及びR4Aは、独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、又はアリール−(炭素数1〜3のアルキルオキシ)基であり、rは2〜5の整数であり、mは2〜10,000の整数であり、nは2〜10,000の整数であり、pは1〜5の整数であり、qは0又は1〜20の整数であり、そして、Zは、qが0であるとき、水素原子、アルカリ金属、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、シンナモイル基、p−トルエンスルホニル基、2−メルカプトプロピオニル基、2−アミノプロピオニル基、アリル基、又はビニルベンジル基であり、qが1〜20の整数であるとき、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、カルボキシルメルカプト基、又はアミノ基である]
で表されるヘトロテレケリックブロックコポリマーを挙げることができる。前記の式(IA)で表されるヘトロテレケリックブロックコポリマーは、例えば、WO96/33233号公報に記載の製造方法により調製することができる。
【0055】
また、前記の親−疎水型ブロック共重合体又は水溶性高分子マクロモノマーとして使用することのできる化合物としては、例えば、WO99/571743号公報に記載の式(IB):
【化2】

(式中、A’及びB’は、相互に独立して、有機シリル型のアミノ保護基を表すか、あるいは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、4〜7員のジシラ−アザシクロヘテロ環式環を形成することのできる有機シリル型のアミノ保護基であり、
Yは、水素原子、アルカリ金属、又は適当な反応によりアルカリ金属に代えて導入可能な有機基であり、
Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、
は1〜20,000の整数であり、そして、
は0〜20,000の整数である)
で表されるポリオキシエチレン誘導体を挙げることができる。前記の式(IB)で表されるポリオキシエチレン誘導体は、例えば、WO99/571743号公報に記載の製造方法により調製することができる。
【0056】
また、前記の親−疎水型ブロック共重合体又は水溶性高分子マクロモノマーとして使用することのできる化合物としては、例えば、特開平11−322917号公報に記載の式(IC):
【化3】

(式中、R1C、R2C、及びR3Cは、相互に独立して、直鎖若しくは分岐のアルキル基又はアラルキル基を表し、
は、水素原子、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルベンジル基、アリル基、パラトルエンスルホニル基、モノ−若しくはジ−低級アルキル置換アミノ基、カルボキシル基若しくはそのエステル基を有するアルキル基、アルデヒド基若しくはそのアセタール基を有するアルキル基、及びアルカリ金属からなる群より選ばれ、
は0又は1であり、
は0〜20,000の整数であり、そして、
は正数2又は3であるが、
但し、mとnは同時に0とならない)
で表される有機シリルスルフィド基含有化合物又はポリオキシエチレン誘導体を挙げることができる。前記の式(IC)で表される有機シリルスルフィド基含有化合物又はポリオキシエチレン誘導体は、例えば、特開平11−322917号公報に記載の製造方法により調製することができる。
【0057】
更に、前記の親−疎水型ブロック共重合体又は水溶性高分子マクロモノマーとして使用することのできる化合物としては、例えば、特開2001−324507号公報に記載の式(ID):
A−L−(CHCHO)m−L−(B)n−L−CR=CH (ID)
[式中、Aは官能基を表し、Bは、
【化4】

のユニットを表し、Rは、水素原子又は低級アルキル基であり、Rは、水素原子、メチル基、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、2−ベンジルオキシカルボニルエチル基、又はベンジルオキシカルボニルメチル基であり、Lは、式:
−(CH)q−O−
(ここで、qは1〜6の整数である)の連結基を表し、Lは、原子価結合又は式:
−CHCHNH−
の連結基を表し、Lは、カルボニル基、メチレン基、
【化5】

の基を表し、Rは、水素原子又はメチル基を表し、mは10〜20,000の整数であり、そして、nは0〜10,000の整数である]
で表されるホモポリマー又はブロックコポリマーを挙げることができる。なお、官能基Aは、特に限定されるものではないが、例えば、アルデヒド基(−CHO)、アミノ基(−NH)、メルカプト基(−SH)、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)を挙げることができる。前記の式(ID)で表されるホモポリマー又はブロックコポリマーは、例えば、特開2001−324507号公報に記載の製造方法により調製することができる。
【0058】
コア−シェル型粒子の前記エマルジョン法(1)によれば、前記の式(IA)、式(IB)、式(IC)、又は式(ID)で表される各化合物(すなわち、親−疎水型ブロック共重合体)と、疎水性ポリマーとを混合することにより、コア−シェル型粒子(すなわち、蛍光性希土類金属錯体を封入する前の粒子)を調製することができる。
【0059】
また、コア−シェル型粒子の前記分散重合法(2)によれば、前記の式(IA)、式(IB)、式(IC)、又は式(ID)で表される各化合物(すなわち、水溶性高分子マクロモノマー)を分散剤として、疎水性モノマーを重合させることにより、コア−シェル型粒子(すなわち、蛍光性希土類金属錯体を封入する前の粒子)を調製することができる。
【0060】
また、コア−シェル型粒子の前記分散重合法(2)によれば、水溶性高分子マクロモノマーを分散剤として、蛍光性希土類金属錯体と疎水性モノマーを懸濁させた後に重合させることにより、蛍光性希土類金属錯体の封入とコア−シェル型粒子の調製を同時に行うことができる。更に、例えば、前記の式(IA)における基Z、式(IB)における基Y、又は式(IC)における基Zとして、蛍光性希土類金属と錯体を形成できる官能基であるカルボキシル基、β−ジケトン配位子、又はフェロイン系配位子を導入し、蛍光性希土類金属錯体を安定化した蛍光性希土類金属錯体の封入とコア−シェル型粒子を調製することも可能である。
【0061】
時間分解蛍光測定において使用することのできる蛍光性希土類金属錯体は、コア−シェル型粒子のコア部分に封入した状態でも、そのシグナルをコア−シェル型粒子の外側から分析(検出及び測定を含む)することのできる物質である限り、特に限定されるものではなく、例えば、ランタノイド(例えば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、又はルテチウム)、イットリウム、又はスカンジウム等の各錯体を挙げることができ、ランタノイド錯体が好ましく、ユーロピウム、サマリウム、テルビウム、又はジスプロシウムの各錯体がより好ましい。
【0062】
蛍光性希土類金属錯体封入コア−シェル型粒子の直径も、用途に応じて適宜変化させることができるが、大略球状の粒子の場合、10nm〜1mm程度であることができる。
【0063】
時間分解蛍光測定法で用いることのできる蛍光性希土類金属錯体封入コア−シェル型粒子は、例えば、公知の製造方法(例えば、国際公開第WO02/097436号パンフレットに記載の製造方法)により調製することができる。
【0064】
例えば、国際公開第WO02/097436号パンフレットに記載の製造方法では、例えば、先に説明した種々の公知方法により調製したコア−シェル型粒子(すなわち、蛍光性希土類金属錯体を封入する前の粒子)に、蛍光性希土類金属錯体を封入するのに、まず、コア−シェル型粒子のコア部分を形成する水不溶性高分子化合物を膨潤させる有機溶媒(例えば、アセトン又はトルエン等)が一定比率で含まれる溶液中に、前記コア−シェル型粒子及び蛍光性希土類金属錯体を浸漬させる。前記浸漬により、前記水不溶性高分子化合物は膨潤し、その膨潤に伴って蛍光性希土類金属錯体がコア部分に取り込まれる。続いて、この混合物から、有機溶媒を除去すると、前記水不溶性高分子化合物は収縮するが、疎水的な蛍光性希土類金属錯体はコア部分から外に出ることができず、コア部分に封入される。所望により、コア部分に取り込まれなかった蛍光性希土類金属錯体を除去することにより、蛍光性希土類金属錯体封入コア−シェル型粒子を得ることができる。
【0065】
前記製造方法において、前記混合物から有機溶媒を除去する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、エバポレートなどにより有機溶媒を蒸発乾固する方法、あるいは、非溶媒中で収縮させる方法(例えば、有機溶媒を含有する溶液を、前記有機溶媒を含有しない溶液に置換する方法)などを挙げることができる。
【0066】
また、コア部分を膨潤するのに用いる前記有機溶媒含有溶液における有機溶媒の割合は、蛍光性希土類金属錯体が水不溶性高分子化合物に取り込まれる程度まで、前記水不溶性高分子化合物を膨潤させることができる割合である限り、特に限定されるものではないが、例えば、40〜60(vol/vol)%であることができる。
【0067】
時間分解蛍光測定法においては、蛍光性希土類金属錯体封入コア−シェル型粒子の表面に存在する反応性官能基に、更に、前記反応性官能基と反応可能な導入物として、分析対象物質に特異的な結合可能な免疫学的パートナーを結合させることができる。
【0068】
前記パートナーは、蛍光性希土類金属錯体封入コア−シェル型粒子の表面に存在する反応性官能基と反応可能であって、しかも、分析対象物質に特異的な結合可能である限り、特に限定されない。
【0069】
免疫学的パートナーと、蛍光性希土類金属錯体封入コア−シェル型粒子の表面に存在する反応性官能基とを結合させる方法は、公知の結合方法の中から、前記導入物及び反応性官能基の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、反応性官能基がアルデヒド基である場合には、免疫学的パートナーのアミノ基とシッフベースを形成させることにより、結合することができる。
【0070】
また、反応性官能基がカルボキシル基である場合には、免疫学的パートナーのアミノ基との間を、縮合剤(例えば、カルボジイミドなど)を用いて結合することができる。あるいは、予めカルボキシ基をスクシンイミド又はマレイミド等で活性化しておいて、その状態のまま、免疫学的パートナーと混合することにより結合させることもできる。
【0071】
蛍光性希土類金属錯体封入コア−シェル型粒子としては、これまで述べた種々の粒子を用いることができるが、寿命の長い蛍光を持つユーロピウムキレートを中心の核となるスチレン部分に多量に含み、外部表面は親水性のポリエチレングリコール(PEG)がブラシ状に生えていて親水性を持ち、PEG末端の感能基に化学修飾によって免疫学的パートナーを、活性を保ったまま結合することができるという性質を持った高機能性粒子が好ましい。
【0072】
この粒子に350nm付近に波長特性を持つ励起光をパルスで照射し、マイクロ秒単位の時間をおいてから615nmに波長特性を持つ蛍光を測定すると、まわりの蛍光に影響を受けず高いSN比で検出することができる。また、この粒子は観測時に溶液を必要とせず、蛍光物質同様乾燥状態で測定することができる。一個のユーロピウムキレートでは測定感度に限界があるが、粒子にユーロピウムキレート分子を多数封入したこの試薬は酵素と発光基質を用いた検出系より高感度に測定することができる。この粒子をチップシステムの標識物質として用いることで、今までの標識物質がかかえていた問題を解決することができる。
【0073】
時間分解蛍光測定法などによって本発明方法で分析可能な対象物(すなわち、分析対象物質)は、それに対して免疫学的に特異的に結合可能なパートナーが存在する限り、特に限定されるものではないが、例えば、タンパク質(例えば、抗原又は抗体)である。また、時間分解蛍光測定法などによって本発明方法で分析可能な被検試料は、前記分析対象物質を含む可能性のある試料であれば、特に限定されず、特には生体試料、例えば、血液、血清、血漿、尿、髄液、又は細胞若しくは組織破砕液などを挙げることができる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0075】
《実施例1:アレルゲン結合マイクロアレイの作製》
(1)マイクロアレイ用基板の作製
図1に示すポリスチレン製マイクロアレイ用基板(1.8cm×3.4cm)を、射出成型により作製した。図1に示すように、マイクロアレイ用基板1における基板11の一方の表面に、担持表面12が設けられている。なお、貫通孔13a及び半円形窪み13bは、マイクロアレイ用基板1を測定装置(図示せず)に配置する際に、マイクロアレイの位置決めのために設けたものである。
【0076】
(2)ガンマ線照射
コバルト60のガンマ線を用い、実施例1(1)で作製したポリスチレン製マイクロアレイ用基板を一定時間放射線照射処理することにより、本発明のマイクロアレイ用担体を作製した。処理時間の長さの違いにより、照射線量(6kGy又は15kGy)を制御した。
【0077】
(3)ガンマ線照射処理マイクロアレイ用担体へのアレルゲンの結合
実施例1(2)において調製したガンマ線照射処理ポリスチレン製マイクロアレイ用担体へ、免疫反応の固定化量には充分な量(1μg/mL)のアレルゲンを含むミルクアレルゲン水溶液又は小麦アレルゲン水溶液を、図2に示したマイクロアレイ用担体上のNo.2、No.4、No.6、及びNo.8の位置に1μLの量でスポットし、恒湿槽内で、25℃にて1時間静置し、各アレルゲンを担体上に結合させた。結合反応の終了後、アレルゲン水溶液を除去し、0.25%リピジュア(日本油脂社)を含む20mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.4)200μLを分注し、37℃で1時間インキュベーションし、ブロッキングを行った。作製したマイクロアレイは、アッセイに用いるまで4℃で保存した。
【0078】
《評価例1:アレルゲン特異IgE抗体の測定》
(1)アレルゲン特異IgE抗体のイムノアッセイ手順
前記実施例1で調製したアレルゲン結合マイクロアレイへ、検体(アレルゲン特異IgE抗体陰性ヒト血清又はアレルゲン特異IgE抗体陽性ヒト血清)200μLを分注し、室温で1時間静置した。検体を除去し、洗浄液(0.1%Tween−20及び0.15mol/L−NaClを含む20mmol/Lリン酸緩衝液)400μLで2回洗浄した後、抗ヒトIgE抗体標識ユーロピウム錯体封入ナノ粒子試薬200μLを分注し、室温で1時間静置した。続いて、前記洗浄液400μLで4回洗浄した後、抗原抗体反応によってマイクロアレイ上の各ドット位置に結合したユーロピウム錯体の時間分解蛍光強度を測定し、アレルゲン特異IgE抗体を分析した。
なお、前記の抗ヒトIgE抗体標識ユーロピウム錯体封入ナノ粒子試薬は、Matsuya et al., Anal. Chem., 2003, 75, 6124-6132に記載の抗体標識ユーロピウム錯体封入ナノ粒子の調製法に準じて調製した。
【0079】
(2)時間分解蛍光測定条件
アレルゲン特異IgE抗体のイムノアッセイにおける時間分解蛍光測定は、マイクロアレイ検出用時間分解蛍光検出器(三菱化学ヤトロン社製)を使用し、以下の条件で実施した。
待機時間:0.20ms
測光時間:0.40ms
測定波長:615nm
前記時間分解蛍光検出器は、図2に示された担体上の9個のドット位置の時間分解蛍光強度を測定することができるように設定されている。
【0080】
(3)測定結果
6kGy又は15kGyの2種の条件でガンマ線照射処理を行ったポリスチレン製マイクロアレイと、ガンマ線照射処理を行っていない対照用ポリスチレン製マイクロアレイとに関して、ミルク特異IgE抗体及び小麦特異IgE抗体を測定した結果を図3及び図4に示す。なお、図3及び図4の横軸に示す数字1〜9は、図2に示すマイクロアレイ用担体上の位置No.1〜No.9に対応する。
【0081】
ガンマ線照射処理マイクロアレイ及び対照用マイクロアレイの何れにおいても、アレルゲンを結合させたドット位置[図中、(+)と表示]に、抗原抗体反応に由来する強い蛍光強度が認められ、アレルゲンを結合させていないドット位置[図中、(−)と表示]は、蛍光強度は小さかった。ガンマ線照射条件の違いでは、15kGyの線量で照射されたマイクロアレイのほうが、6kGyの線量で照射されたマイクロアレイよりも測定値がやや安定していた。15kGyガンマ線照射マイクロアレイと対照用マイクロアレイの比較において、ミルク特異IgE抗体測定値[(+)ドット位置の蛍光強度の比較]は、ガンマ線照射処理によりおよそ3倍上昇した。また、ガンマ線照射マイクロアレイにおける(+)ドット位置の測定再現性(CV)は、1.7%(ミルク特異IgE、6kGy)、1.7%(ミルク特異IgE、15kGy)、9.6%(小麦特異IgE、6kGy)、8.9%(小麦特異IgE、15kGy)であり、ガンマ線照射処理を行っていない対照用マイクロアレイにおける(+)ドット位置の測定再現性(CV)は、46.2%(ミルク特異IgE)、40.1%(小麦特異IgE)と比較して、測定再現性が大幅に改善された。一方、アレルゲンを結合させていない(−)ドット位置の測定値(このドットでは、抗原抗体反応が起こらず、標識抗体の非特異的吸着により、蛍光強度が増加する)の比較では、15kGyガンマ線照射マイクロアレイの測定値はガンマ線照射処理を行っていない対照用マイクロアレイに比べておよそ1/3であった。
このように、ポリスチレン製基板をガンマ線照射処理することによって、タンパク質固定量を増加させることができ、しかも、標識抗体(抗原)の非特異的吸着量を減少させ、かつ、抗原抗体反応における反応性を向上させることができた。また、基板に由来する蛍光散乱もなく、隣のドットによるクロストークもなかった。
【0082】
《実施例2:アレルゲン結合マイクロアレイの作製》
実施例1(2)において調製したガンマ線照射処理ポリスチレン製マイクロアレイ用担体へ、免疫反応の固定化量には充分な量(1μg/mL)のアレルゲンを含むダニアレルゲン水溶液、ミルクアレルゲン水溶液、卵白アレルゲン水溶液、米アレルゲン水溶液、大豆アレルゲン水溶液、ピーナツアレルゲン水溶液、又は小麦アレルゲン水溶液を、図2に示したマイクロアレイ用担体上のNo.1〜No.7の位置に1μLの量でスポットし、恒湿槽内で、25℃にて1時間静置し、各アレルゲンを担体上に結合させた。結合反応の終了後、アレルゲン水溶液を除去し、0.25%リピジュアを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)200μLを分注し、37℃で1時間インキュベーションし、ブロッキングを行った。作製したマイクロアレイは、アッセイに用いるまで4℃で保存した。
【0083】
《評価例2:アレルゲン特異IgE抗体の測定》
(1)アレルゲン特異IgE抗体のイムノアッセイ手順
前記実施例2で調製したアレルゲン結合マイクロアレイへ、検体(アレルゲン特異IgE抗体陰性ヒト血清又はアレルゲン特異IgE抗体陽性ヒト血清)100μLを分注し、室温で1時間静置した。検体を除去し、洗浄液(0.1%Tween−20及び0.15mol/L−NaClを含む20mmol/Lリン酸緩衝液)400μLで2回洗浄した後、抗ヒトIgE抗体標識ユーロピウム錯体封入ナノ粒子試薬50μLを分注し、室温で1時間静置した。続いて、前記洗浄液400μLで4回洗浄した後、抗原抗体反応によってマイクロアレイ上の各ドット位置に結合したユーロピウム錯体の時間分解蛍光強度を測定し、アレルゲン特異IgE抗体を分析した。前記の抗ヒトIgE抗体標識ユーロピウム錯体封入ナノ粒子試薬は、Matsuya et al., Anal. Chem., 2003, 75, 6124-6132に記載の抗体標識ユーロピウム錯体封入ナノ粒子の調製法に準じて調製した。
【0084】
(2)時間分解蛍光測定条件
アレルゲン特異IgE抗体のイムノアッセイにおける時間分解蛍光測定は、マイクロアレイ検出用時間分解蛍光検出器(三菱化学ヤトロン社製)を使用し、以下の条件で実施した。
待機時間:0.20ms
測光時間:0.40ms
測定波長:615nm
【0085】
(3)測定結果
15kGyの線量でガンマ線照射処理を行ったマイクロアレイ用担体を用い、1つの担体上で7項目のアレルゲン特異IgE抗体を分析した結果を図5に示す。結果は、同じ条件で作製した5つのアレルゲン固定化マイクロアレイを測定した平均値と標準偏差を示している。
【0086】
アレルゲンを結合させていないドット位置(図中、「無し」と表記)の蛍光強度は低く、各アレルゲンを結合させたドット位置の蛍光強度が抗原抗体反応に依存したものであることが確認できた。
この検体では、ミルク、卵白、及び小麦アレルゲンを結合したドット位置に強い蛍光強度が認められ、ダニ、米、大豆、及びピーナツアレルゲンを結合したドット位置の蛍光強度は低かった。よって、検体中にミルク、卵白、及び小麦特異IgE抗体量が多く、ダニ、米、大豆、及びピーナツ特異IgE抗体量が少ないという判定ができた。
更に、蛍光強度の強さによって、検体中に含まれるアレルゲン特異IgE抗体量の定量も可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のマイクロアレイ用担体は、パートナー(例えば、タンパク質又は核酸)を効率的に固定化することができ、生物学的分析方法(例えば、免疫学的分析方法など)におけるBF分離操作を効率的に実施することができ、特に、時間分解蛍光測定に好適に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】実施例1において本発明のマイクロアレイ用担体の作製に用いたポリスチレン製マイクロアレイ用基板の平面図及び断面図である。
【図2】実施例1で作製した本発明のマイクロアレイ用担体において、担体表面へのアレルゲン水溶液の結合位置を示す、説明図である。
【図3】実施例1で作製した本発明のマイクロアレイ上のアレルゲン結合ドット位置とアレルゲンタンパク質吸着量との関連を、ミルク特異IgE抗体を指標として示すグラフである。記号「黒四角」は6kGyガンマ線照射処理ポリスチレン製マイクロアレイ、記号「黒丸」は15kGyガンマ線照射処理ポリスチレン製マイクロアレイ、及び記号「白丸」は無処理ポリスチレン製マイクロアレイの結果を示す。
【図4】実施例1で作製した本発明のマイクロアレイ上のアレルゲン結合ドット位置とアレルゲンタンパク質吸着量との関連を、小麦特異IgE抗体を指標として示すグラフである。各記号は図3と同じ意味である。
【図5】15kGyガンマ線照射処理ポリスチレン製マイクロアレイ上の各アレルゲン結合ドット位置とアレルゲンタンパク質吸着量との関連を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロアレイ用担体におけるプラスチック製担持表面が、放射線照射処理されていることを特徴とする、マイクロアレイ用担体。
【請求項2】
前記プラスチック製担持表面がポリスチレン又はスチレン系共重合体である、請求項1に記載のマイクロアレイ用担体。
【請求項3】
放射線照射処理の線量が1〜100kGyである、請求項1又は2に記載のマイクロアレイ用担体。
【請求項4】
放射線がガンマ線である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のマイクロアレイ用担体。
【請求項5】
ガンマ線が、コバルト60を線源とするガンマ線である、請求項4に記載のマイクロアレイ用担体。
【請求項6】
時間分解蛍光測定用である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のマイクロアレイ用担体。
【請求項7】
ユーロピウム錯体封入ナノ粒子を標識物質として用いる、請求項6に記載のマイクロアレイ用担体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のマイクロアレイ用担体に、パートナーの一方を接触させて固定化し、非固定化パートナーを洗浄除去して得られることを特徴とする、マイクロアレイ。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のマイクロアレイ用担体、あるいは、請求項8に記載のマイクロアレイを用いることを特徴とする、分析対象物質の分析方法。
【請求項10】
マイクロアレイ用担体のプラスチック製担持表面を、放射線照射処理することを特徴とする、マイクロアレイ用担体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−98297(P2006−98297A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286678(P2004−286678)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000138277)株式会社三菱化学ヤトロン (30)
【Fターム(参考)】