説明

マイクロカプセル化物、マイクロカプセル化色材、その製造方法、インク組成物、インクジェット記録方法、及び記録物

【課題】水性分散液中における分散安定性に優れ、インク組成物としたとき記録ヘッドからの吐出安定性に優れ、画像の堅牢性、印字濃度、耐擦性に優れる記録物を得ることができ、普通紙を使用する場合においても、画像が滲みにくく、また画像の発色性が高い記録物を得ることができるマイクロカプセル化色材を提供する。
【解決手段】色材粒子の表面がポリマーを主成分とする壁材によって被覆されたマイクロカプセル化色材であって、前記ポリマーは、1)イオン性基を有するポリマーAと、2)前記ポリマーAが有するイオン性基の電荷とは反対の電荷を有するイオン性基を有するポリマーBと、3)親水性モノマー、疎水性モノマー及び重合性界面活性剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上から誘導された繰り返し構造単位を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯物質の表面がポリマーを主成分とする壁材によって被覆されたマイクロカプセル化物、該芯物質として色材粒子を用いたマイクロカプセル化色材、及びその製造方法に関するものであり、さらにそのマイクロカプセル化色材を含む、特にインクジェット記録用インク組成物として好適なインク組成物に関するものである。
また、本発明は該インク組成物を用いたインクジェット記録方法及び該記録方法を用いた記録物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録用インクとして、顔料を水中に分散させた水系顔料インクが提供されている。これは、顔料を用いたインクの方が、水溶性染料を用いたインクに比べて耐水性や耐光性に優れるという特徴を有するからである。このような水系顔料インクにおいては、界面活性剤や高分子分散剤等の分散剤を用いて顔料を水性分散媒中に分散させることが一般的に行われている。
【0003】
例えば、特許文献1では、アセチレングリコール系浸透剤を使用した顔料インクにおいて、顔料粒子の分散剤としてポリマー分散剤を使用し、水性媒体として水、不揮発性有機溶剤、及び低級アルコールを使用することでその分散安定性を確保する検討が行われている。しかし、このように顔料粒子の分散のために分散剤を用いると、インクとして好ましい各種特性にするために、インク組成上調節すべき要素が多くなり、粘度などのインク物性を所望の値に調節するのが困難である。また、この顔料インクを用いて充分高い印字濃度の印刷物を得ることは困難である。
【0004】
さらに、これらの水系顔料インクにおいては、分散剤が顔料粒子表面に単に吸着しているだけであり、一方で、インク液がノズルヘッドの細いノズル内を通って吐出される際に、この顔料粒子に強い剪断力が加わるので、顔料粒子表面に吸着していた分散剤が離脱する結果、顔料の分散性が低下し、インク液の吐出が不安定になる傾向が認められることがある。また、前記の水系顔料インクを長期間保存した場合にも分散性が不安定となる傾向が認められることがある。
【0005】
顔料粒子を水中に分散させる他の手法として、顔料粒子の表面にスルホン酸基を導入する技術も提案されている。例えば、活性プロトンを有しない溶剤中に分散させた有機顔料をスルホン化剤で処理して得られるスルホン化表面処理有機顔料を含む顔料インクが知られている(従来例1;例えば特許文献2参照)。従来例1によれば、前記顔料インクは分散安定性に優れ、また、記録ヘッドのノズルからの吐出安定性(記録ヘッドから一定方向に安定して吐出される特性)が良好であるとされている。
【0006】
また、スルホン酸基を導入した有機顔料塊状体を1価金属イオンで処理することにより、表面を正帯電させる有機顔料塊状体の調製法が知られており、更に、その表面正帯電有機顔料塊状体から調製された顔料微粒子、分散剤、及び水を含む、貯蔵安定性(分散安定性)に優れた水系インク組成物が記載されている(従来例2;例えば、特許文献3参照)。
【0007】
しかしながら、前記従来例1及び従来例2の表面処理顔料粒子を着色剤として用いたインクは、これまでの顔料系インクジェット記録用インクと比較して、分散安定性及び吐出安定性には優れるものの、これを普通紙やインクジェット用記録媒体(インクジェット記録用インクを受容するためのインク受容層が表面に設けられた記録媒体)等の記録媒体に印刷して得られる記録物の耐擦性は依然として不十分なものであった。これは、記録媒体に対する前記表面処理顔料粒子の定着性が良好でないことによるものと考えられる。
【0008】
また、顔料系インクジェット記録用インクに含まれる顔料の記録媒体に対する定着性を向上させる目的で、顔料粒子の表面にポリマーをグラフト重合したもの(例えば、特許文献4参照)が提案されている。これらの処方では、顔料は一般に、顔料を表面処理し、顔料表面に官能基を生成させた上で、ポリマーをその官能基にグラフト重合することにより調製されている。しかし、表面処理により顔料表面に生成される官能基量には限界があり、ポリマー量も官能基量に依存するため、顔料表面をポリマーで十分に被覆するのは困難であり、この結果、やはり得られる記録物の耐擦性は十分とは言えない。
【0009】
一方、顔料系インクジェットインクに含まれる顔料の記録媒体に対する定着性を向上させる目的で、転相乳化法によって室温で皮膜形成性を有する樹脂を被覆した顔料を用いたインク(例えば、特許文献5参照)や、酸析法によってアニオン性基含有有機高分子化合物で被覆した顔料を用いたインク(例えば、特許文献6参照)が提案されている。
【0010】
さらに、転相乳化法によってポリマー微粒子に色材を含浸させてなるポリマーエマルジョンを用いたインクが提案されている(従来例3;例えば特許文献7参照)。しかしながら、転相乳化法や酸析法によって得られた着色剤においても、インクに用いられる浸透剤等の有機溶媒の種類によっては、顔料粒子に吸着されたポリマーの脱離が起きてインク中に溶解することもあり、インクの分散安定性や吐出安定性、画像品質等が十分でない場合もあった。従来例3のインクにおいては、顔料粒子に吸着されたポリマーの脱離が少なからず起きるため、分散安定性の点からインク中の顔料含有量が制限されるので、このインクを使用して得られた記録物の画像は印字濃度が低く、特に、記録媒体に普通紙を用いた場合には、画像の滲みが発生しやすく、また、発色性も低いという問題があった。
【0011】
一方、顔料系インクジェットインクに含まれる顔料の記録媒体に対する定着性を向上させる目的で、着色剤粒子がポリマーで被覆されたマイクロカプセル化顔料を使用する技術が知られている。
顔料微粒子をマイクロカプセル化したもの(例えば、特許文献8参照)や、両親媒性グラフトポリマーを用いて疎水性粉体をマイクロカプセル化する方法が提案されている(例えば、特許文献9参照)が、上記特許文献に記載されている手法では、マイクロカプセル化後の粒子径が大きくなりすぎるという問題があった。
【0012】
また、着色剤粒子がポリマーで被覆されたマイクロカプセル化顔料として、顔料のカチオン性界面活性剤分散液に、アニオン性媒体中の乳化性ポリマー樹脂の乳濁液を混合し、粒子を凝集させる方法が提案されている(特許文献10)が、界面活性剤を使用しているため、インク中の溶剤によっては、容易に顔料から界面活性剤が脱離するなど、分散安定性が不十分であるといった問題がある。
【0013】
他に、顔料を界面活性剤や乳化能を有するポリマーで被覆した後、モノマーと開始剤を導入して重合することにより、マイクロカプセル化顔料を調製する方法が提案されている(特許文献11)。しかし、これらの手法はいずれも顔料界面にモノマーを導入し、重合するため、モノマーの導入量に限界があり、表面被覆も不十分になりがちであり、インク中の溶剤によっては、分散安定性が不十分であるといった問題がある。
【0014】
【特許文献1】特開平3−157464号公報
【特許文献2】特開平10−110129号公報
【特許文献3】特開平11−49974号公報
【特許文献4】特開平5−339516号公報
【特許文献5】特開2000−7961号公報
【特許文献6】特開平11−199783号公報
【特許文献7】特開平9−286939号公報
【特許文献8】特開2003−306611号公報
【特許文献9】特開平5−320276号公報
【特許文献10】特開平9−124985号公報
【特許文献11】特開2004−189928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、下記(1)〜(6)の全てを満足するインクジェット記録用インクを作製可能なマイクロカプセル化色材及びその製造方法と、このマイクロカプセル化色材を含むインク組成物、該インク組成物を用いたインクジェット記録方法並びに該記録方法を用いた記録物を提供することを目的とするものである。
(1)インク組成物用の色材として用いた場合、水性分散液中における分散安定性に優れる。
(2)インク組成物としたとき記録ヘッドからの吐出安定性に優れる。
(3)インク組成物としたとき画像の堅牢性に優れる記録物を得ることができる。
(4)インク組成物としたとき画像の印字濃度が高い記録物を得ることができる。
(5)インク組成物としたとき画像の耐擦性に優れる記録物を得ることができる。
(6)インク組成物としたとき記録媒体として普通紙を使用する場合においても、画像が滲みにくく、また画像の発色性が高い記録物を得ることができる。
【0016】
本発明は、また、下記i)〜vi)の全てを満足するマイクロカプセル化物を提供することを目的とするものである。
i)芯物質として無機物でも有機物でも使用できる。
ii)シェル層(芯物質の被覆層)の厚みを自由に設計できる。
iii)環境に対して優しい。
iv)芯物質とシェル物質とでその機能を分離することができる。
v)毒性などのある芯物質のカプセル化によって低毒化又は無害化が可能である。
vi)粒子径を有する粉体を製造することができる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者等は、顔料粒子に代表される芯物質をポリマーを主成分とする壁材によってマイクロカプセル化する方法に関して鋭意検討の結果、該芯物質粒子の表面に予めイオン性基を有するポリマーを吸着させておき、該ポリマーと反対の電荷を有するイオン性基を有するポリマーと、重合性基を有するモノマー及び/又は重合性界面活性剤との重合体を該芯物質表面で生成させることによって該芯物質をマイクロカプセル化することにより、前記本発明の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0018】
本発明のマイクロカプセル化色材は、色材粒子の表面がポリマーを主成分とする壁材によって被覆されたマイクロカプセル化色材であって、前記ポリマーは、
1)イオン性基を有するポリマーAと、
2)前記ポリマーAが有するイオン性基の電荷とは反対の電荷を有するイオン性基を有するポリマーBと、
3)親水性モノマー、疎水性モノマー及び重合性界面活性剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上から誘導された繰り返し構造単位と
を有することを特徴とする(請求項1)。
【0019】
本発明のマイクロカプセル化色材は、前記ポリマーAのイオン性基がカチオン性基であることが好ましい(請求項2)。
【0020】
また、本発明のマイクロカプセル化色材は、前記色材粒子が水不溶性もしくは水非分散性である場合、前記ポリマーAがさらに疎水性基を有することが好ましい(請求項3,4)。
【0021】
また、本発明のマイクロカプセル化色材は、前記色材粒子が水溶性もしくは水分散性のものも使用することができる(請求項5)。
【0022】
さらに、本発明のマイクロカプセル化色材は、前記色材粒子が顔料であることが好ましい(請求項6)。
【0023】
そして、本発明のマイクロカプセル化色材の製造方法は、このような本発明のマイクロカプセル化色材を製造する方法であって、
(1)水性媒体中において、イオン性基を有するポリマーAを色材粒子表面に吸着させる第1の工程
(2)表面に前記ポリマーAが吸着された色材粒子の水性分散液に、前記ポリマーAが有するイオン性基の電荷とは反対の電荷を有するイオン性基を有するポリマーBを加えて混合する第2の工程
(3)該水性分散液に、親水性モノマー、疎水性モノマー及び重合性界面活性剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上と、重合開始剤とを混合して重合する第3の工程
を含むことを特徴とする(請求項7)。
【0024】
このマイクロカプセル化色材の製造方法では、前記第2の工程において、前記水性分散液に添加されたポリマーB全体の解離したイオン性基数の総量が、色材粒子表面に吸着した前記ポリマーA全体の解離したイオン性基数総量より多いことが好ましい(請求項8)。
【0025】
また、前記第2の工程において、ポリマーBが重合性基を含むことが好ましい(請求項9)。
【0026】
また、前記第3の工程においては、疎水性モノマー及び重合性界面活性剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上と、重合開始剤とを均一化した後、前記水性分散液に加えて乳化することが好ましい(請求項10)。
【0027】
本発明のインク組成物は本発明のマイクロカプセル化色材を含むことを特徴とする(請求項11)。
【0028】
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインク組成物の液滴をインクジェットヘッドから吐出させ、前記液滴を記録媒体に付着させることを特徴とする(請求項12)。
【0029】
本発明の記録物は、本発明のインクジェット記録方法を用いたことを特徴とする(請求項13)。
【0030】
また、本発明のマイクロカプセル化物は、芯物質の表面がポリマーを主成分とする壁材によって被覆されたマイクロカプセル化物であって、前記ポリマーは、
1)イオン性基を有するポリマーAと、
2)前記ポリマーAが有するイオン性基の電荷とは反対の電荷を有するイオン性基を有するポリマーBと、
3)親水性モノマー、疎水性モノマー及び重合性界面活性剤からなる群より選ばれた少なくとも1種又は2種以上から誘導された繰り返し構造単位と
を有することを特徴とする(請求項14)。
【発明の効果】
【0031】
本発明のマイクロカプセル化色材は、インク組成物用の色材として用いた場合、水性分散液中における分散安定性に優れる。そして、このような本発明のマイクロカプセル化色材を含む本発明のインク組成物は、記録ヘッドからの吐出安定性に優れ、画像の堅牢性に優れ、画像の印字濃度が高く、画像の耐擦性に優れる記録物を得ることができる。また、このような本発明のインク組成物を用いる本発明のインクジェット記録方法によれば、記録媒体として普通紙を使用する場合においても、画像が滲みにくく、また画像の発色性が高い記録物を得ることができる。
【0032】
また、本発明のマイクロカプセル化物は、その芯物質として無機物であっても有機物であっても適用ことができ、シェル層(芯物質の被覆層)の厚みを自由に設計することができる。また、溶剤を使用することなく、水系の反応により製造することができるため、環境への悪影響を及ぼすことがなく、また、毒性などのある芯物質のカプセル化によって低毒化、または無害化が可能である。
さらにまた、本発明のマイクロカプセル化物質によれば、芯物質とシェル物質とでその機能を分離することができる上に、均一な表面化状態及び粒子径を有する粉体を製造することができる等の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
【0034】
本発明のマイクロカプセル化色材は、色材粒子の表面がポリマーを主成分とする壁材によって被覆されたマイクロカプセル化色材であって、前記ポリマーは、
1)イオン性基を有するポリマーAと、
2)前記ポリマーAが有するイオン性基の電荷とは反対の電荷を有するイオン性基を有するポリマーBと、
3)親水性モノマー、疎水性モノマー及び重合性界面活性剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上から誘導された繰り返し構造単位と
を有する。
【0035】
このような本発明のマイクロカプセル化色材は、
(1)水性媒体中において、イオン性基を有するポリマーAを色材粒子表面に吸着させる第1の工程
(2)表面に前記ポリマーAが吸着された色材粒子の水性分散液に、前記ポリマーAが有するイオン性基の電荷とは反対の電荷を有するイオン性基を有するポリマーBを加えて混合する第2の工程
(3)該水性分散液に、親水性モノマー、疎水性モノマー及び重合性界面活性剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上と、重合開始剤とを混合して重合する第3の工程
を含む本発明のマイクロカプセル化色材の製造方法によって、好適に製造することができる。
【0036】
また、本発明のマイクロカプセル化物は、色材粒子の代わりに色材以外の芯物質を用いたこと以外は上記の本発明のマイクロカプセル化色材と同様の構成とされている。
【0037】
なお、ここで、その物質が有するイオン性基の電荷と反対の電荷を有するイオン性基とは、色材粒子表面のイオン性基の電荷がプラスで有ればマイナスの電荷を意味し、色材粒子表面のイオン性基の電荷がマイナスで有れば、プラスの電荷を意味する。同種の電荷とは、プラス電荷に対するプラス電荷、マイナス電荷に対するマイナス電荷の意味である。
【0038】
以下に、本発明のマイクロカプセル化色材について、これを製造するために用いる各種原料及びこれらの原料を用いたマイクロカプセル化色材の製造方法に沿って説明する。
【0039】
〔色材粒子〕
本発明のマイクロカプセル化色材の芯物質となる色材としては、水不溶性もしくは水非分散性のものでも、水溶性もしくは水分散性のものでも使用可能である。水不溶性もしくは水非分散性の色材粒子としては、水非分散性顔料や水不溶性染料が挙げられ、水溶性もしくは水分散性の色材粒子としては、水溶性染料や水分散性顔料が挙げられる。これらの中でも発色性、耐候性の観点から顔料が好ましく、その中でも前処理を必要としない水非分散性顔料が特に好ましく、水非分散性顔料としては、粒子表面へのポリマーの吸着効率を高めるため、表面の水性官能基ができるだけ少ないものがさらに好ましい。
以下に、本発明に好適な色材粒子の具体例を挙げるが、本発明に係る色材粒子は何ら以下のものに限定されるものではない。
【0040】
<水非分散性顔料>
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランブブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.l.ピグメントブラック7)類、酸化鉄顔料等を挙げることができる。
有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、及びキレートアゾ顔料などを含む。)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、又はキノフラノン顔料などを含む。)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート又は酸性染料型キレートなどを含む。)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを挙げることができる。これらは、ブラック顔料、シアン顔料、マゼンタ顔料、及びイエロー顔料を含む。さらに所望により、その他の色の顔料を本発明に用いることもできる。
【0041】
これら本発明に用いることができる顔料についてさらに詳述する。
ブラック用として用いられる無機顔料のカーボンブラックとしては、例えば、三菱化学社製のNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、及びNo2200B等(以上、商品名);コロンビア社製のRaven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、及びRaven700等(以上、商品名);キャボット社製のRegal 400R、Regal 330R、Regal 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、及びMonarch 1400等(以上、商品名);あるいは、デグッサ社製のColor Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color Black S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、PrintexV、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、及びSpecial Black 4等(以上、商品名)を挙げることができる。
また、ブラック用の有機顔料としては、アニリンブラック(C.l.ピグメントブラック1)等の黒色有機顔料を用いることもできる。
【0042】
イエローインク用の有機顔料としては、例えば、C.l.ピグメントイエロー1(ハンザイエロー);同2,3(ハンザイエロー10G);同4,5(ハンザイエロー5G);同6,7,10,11,12,13,14,16,17,24(フラバントロンイエロー);同34,35,37,53,55,65,73,74,75,81,83,93,94,95,97,98,99,108(アントラピリミジンイエロー);同109,110,113,117(銅錯塩顔料);同120,124,128,129,133(キノフタロン);同138,139(イソインドリノン);同147,151,153(ニッケル錯体顔料);および、同154,167,172,180などを挙げることができる。
【0043】
マゼンタインク用の有機顔料としては、例えば、C.l.ピグメントレッド1(パラレッド);同2,3(トルイジンレッド);同4,5(lTR Red);同6,7,8,9,10,11,12,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38(ピラゾロンレッド);同40,41,42,48(Ca);同48(Mn),57(Ca),57:1,88(チオインジゴ);同112(ナフトールAS系);同114(ナフトールAS系);同122(ジメチルキナクリドン);同123,144,146,149,150,166,168(アントアントロンオレンジ);同170(ナフトールAS系);同171,175,176,177,178,179(ベリレンマルーン);同184,185,187,202,209(ジクロロキナクリドン);同219,224(ベリレン系);同245(ナフトールAS糸)、又は、C.I.ピグメントバイオレット19(キナクリドン);同23(ジオキサジンバイオレット);同32,33,36,38,43,50などを挙げることができる。
【0044】
シアンインク用の有機顔料としては、例えば、C.l.ピグメントブルー1,2,3,15,15:1,15:2,15:3,15:34,15:4,16(無金属フタロシアニン);同18(アルカリブルートナー);同22,25,60(スレンブルー);同65(ビオラントロン);同66(インジゴ);および、C.l.Vatブルー4,60などを挙げることができる。
【0045】
また、マゼンタ、シアン又はイエローインク以外のカラーインクに用いる有機顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン);同10(グリーンゴールド);同36,37;C.I.ピグメントブラウン3,5,25,26;及び、C.I.ピグメントオレンジ1,2,5,7,13,14,15,16,24,34,36,38,40,43,63などを挙げることができる。
【0046】
本発明に係る色材粒子としては、前記の顔料の1種を単独で用いることも、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、他の色材と組み合わせて用いることもできる。
【0047】
<水分散性顔料>
水分散性顔料とは、粒子表面に親水性基を有しているものであり、特に製造手法は問わないが、顔料粒子の表面を親水性基付与剤によって処理することにより、好適に作製できる。
親水性基を表面に有する顔料粒子を構成する顔料としては、親水性基付与剤に溶解しない顔料であれば特に限定されず、上記水非分散性顔料で挙げられた顔料が使用できる。
親水性基付与剤としては、特に限定されるものではないが、硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、スルホン化ピリジン塩または、スルファミン酸等のスルホン化剤や、次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カリウム等のカルボキシル化剤、ジアゾニウム塩等のカチオン化剤等が挙げられる。
【0048】
<水不溶性染料>
水不溶性染料としては、特に限定されないが、例えば油溶性染料、分散染料、水不溶性含金属染料、バット染料、その他ホトクロミック色素、樹脂着色剤等が挙げられる。これらの中では、発色性が良好な油溶性染料や分散染料が好ましい。
【0049】
<水溶性染料>
水溶性染料としては、特に限定されないが、例えば酸性染料、直接染料、塩基性染料、水溶性含金属染料、反応染料等が挙げられる。これらの中では、発色性が良好な酸性染料、直接染料、塩基性染料が好ましい。
【0050】
〔ポリマーA〕
本発明のマイクロカプセル化色材を製造する際には、まず、上述のような色材粒子の表面に、イオン性基を有するポリマーAを吸着させる処理を施す(第1の工程)。
ここで、色材粒子として非水溶性染料もしくは水非分散性顔料を用いる場合、この色材粒子の表面に吸着させるポリマーAとしては、該ポリマーA中にアニオン性又はカチオン性のいずれかのイオン性基を有し、かつ疎水性基を有するものを使用することが好ましい。
また、一般的にインクジェット用インクは、装置の保守のため、中性から弱アルカリのものが使用されており、色材の最外殻のイオン性基はアニオン性基であることが好ましい。従って、特に限定されるものでないが、本発明のマイクロカプセル化色材におけるポリマーAが有するイオン性基は、カチオン性基であることが、カプセル形成時に最外殻の電荷をアニオン性基に反転させやすいことからより好ましい。
イオン性基及び疎水基を有するポリマーAの具体例としては、以下のものを挙げることができる。
【0051】
<イオン性基及び疎水基を有するポリマーA>
イオン性基及び疎水性基をともに含むポリマーAとしては、イオン性基と疎水性基を有するものであれば良く、その他は限定されない。例えば、合成ポリマーまたは多糖類等の天然高分子でもよく、またそれらの誘導体や変性体であってもよい。
本発明で用いられるポリマーAの例として、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ジブロックコポリマー、トリブロック以上のマルチブロックコポリマー、グラジエントコポリマー、グラフトコポリマー、スターコポリマー等が挙げられる。
また、ポリマーAは、イオン性基及び疎水性基をともに含んでいれば、親水性のノニオン性基を含んでいても良い。
【0052】
ポリマーAの合成法は特に限定されず、例えばラジカル重合、イオン重合、重付加、重縮合などの公知の重合方法を選択でき、またポリマーAはこれらの公知の方法で合成したポリマーの誘導体や変性体であってもよい。なかでも合成手法が簡便であることから、ラジカル重合法を用いて合成されるポリマーが好ましい。ラジカル重合法のなかでも分子量分布が狭いポリマーが得られることから、リビングラジカル重合法を用いて合成されるポリマーが最も好ましい。ラジカル重合法でこれらのポリマーを合成するのに使用されるモノマーとしては、以下に例示する疎水性モノマー、アニオン性モノマー、カチオン性モノマーが挙げられるが、以下の例示に限定されるものではなく従来公知のモノマーを用いることができる。
【0053】
(疎水性モノマー)
疎水性のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル類;スチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−t−ブトキシスチレン、m−t−ブトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン、o−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、p−クロロメチルスチレン等のスチレン類;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセ卜ンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等のアクリルアミド誘導体;N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、ジアセ卜ンメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸エステル、イタコン酸エステル等のジカルボン酸エステル誘導体;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等を挙げることができる。これらのモノマーは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0054】
(アニオン性モノマー)
アニオン性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボン酸系モノマー;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミドエタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−アクリロイルオキシブタンスルホン酸、2−メタクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−メタクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−メタクリロイルオキシブタンスルホン酸等のスルホン酸系モノマー;ビニルホスホン酸、メタアクリロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等のリン酸系モノマー;およびこれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属塩またはアンモニウム塩等を挙げることができる。これらのモノマーは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0055】
(カチオン性モノマー)
カチオン性モノマーとしては、例えばジメチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジエチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−n−プロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジイソプロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−n−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−sec−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジイソブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジメチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジエチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジ−n−プロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジイソプロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジ−n−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジ−sec−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジイソブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、2−エチル−5−ビニルピリジン、N,N−ジメチルアミノスチレン、 N,N−ジメチルアミノメチルスチレン、あるいはこれらのハロゲン化水素、硫酸、硝酸、有機酸等による中和塩、ハロゲン化アルキル、ベンジルハライド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等による四級化物等が挙げられる。これらのモノマーは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0056】
色材粒子として水溶性染料もしくは水分散性顔料を用いる場合、前記色材粒子の表面に吸着させるポリマーAとしては、該ポリマー中にアニオン性又はカチオン性のいずれかのイオン性基を含んでいればよく、その他は限定されない。例えば、上述のイオン性基及び疎水性基を有するポリマーや、これらのポリマーの中で疎水性基を含まないポリマーを使用することが可能である。
【0057】
ポリマーAの分子量は、大き過ぎると液の粘性が上がり粒子の分散が困難になったり、最終的な分散液が高粘度になり分散安定性が低下し、小さ過ぎると耐熱性が低下したり、インク中の溶剤によって粒子表面から脱離しやすくなるため、数平均分子量で2000以上、50000以下であることが好ましく、5000以上、20000以下であることがより好ましい。
【0058】
ポリマーAは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0059】
次いで、上述のようにして表面に前記ポリマーAを吸着させてなる色材粒子の水分散液中に、該ポリマーAが有するイオン性基の電荷とは反対の電荷を有するイオン性基を有する少なくとも1種類のポリマーBを加えて混合した後(第2の工程)、この分散液中に少なくとも1種類の親水性モノマー、疎水性モノマー及び重合性界面活性剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上を添加して該水分散液を乳化させることによってミセル化し(第3の工程)、これに重合開始剤を加えて重合させることによって(第4の工程)、色材粒子の表面を有機物の重合体で被覆してマイクロカプセル化された本発明のマイクロカプセル化色材を得る。
【0060】
〔ポリマーB〕
本発明においては、第2の工程として、前記ポリマーAが吸着した色材粒子の水性分散液に、前記ポリマーAが有するイオン性基の電荷とは反対の電荷を有するイオン性基有するポリマーBを加えて、混合する処理を施す。前記ポリマーAが吸着した色材粒子の水性分散液に加えるポリマーBとしては、例えば、該ポリマー中に前記ポリマーAが有する電荷とは反対の電荷のイオン性基を有する下記のものを使用することができる。
【0061】
ポリマーBは、前記ポリマーAが有する電荷とは反対の電荷を有するイオン性基を含んでいれば良く、その他は限定されない。例えば、合成ポリマーまたは多糖類等の天然高分子でもよく、またそれらの誘導体や変性体であってもよい。
本発明で用いられるポリマーBの例として、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ジブロックコポリマー、トリブロック以上のマルチブロックコポリマー、グラジエントコポリマー、グラフトコポリマー、スターコポリマー等が挙げられる。
また、ポリマーBは、イオン性基を含んでいれば良く、更に疎水性基や親水性のノニオン性基を含んでいても良い。
【0062】
ポリマーBの合成法は特に限定されず、例えばラジカル重合、イオン重合、重付加、重縮合などの公知の重合方法を選択でき、またポリマーBはこれらの公知の方法で合成したポリマーの誘導体や変性体であってもよい。なかでも合成手法が簡便であることから、ラジカル重合法を用いて合成されるポリマーが好ましい。ラジカル重合法のなかでも分子量分布が狭いポリマーが得られることから、リビングラジカル重合法を用いて合成されるポリマーが最も好ましい。ラジカル重合法でこれらのポリマーを合成するのに使用されるモノマーとしては、以下に例示するアニオン性モノマー、カチオン性モノマー、疎水性モノマー、親水性(水溶性)ノニオン性モノマーが挙げられるが、以下の例示に限定されるものではなく従来公知のモノマーを用いることができる。
【0063】
(アニオン性モノマー)
アニオン性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボン酸系モノマー;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミドエタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−アクリロイルオキシブタンスルホン酸、2−メタクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−メタクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−メタクリロイルオキシブタンスルホン酸等のスルホン酸系モノマー;ビニルホスホン酸、メタアクリロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等のリン酸系モノマー;およびこれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属塩またはアンモニウム塩等を挙げることができる。これらのモノマーは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0064】
(カチオン性モノマー)
カチオン性モノマーとしては、例えばジメチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジエチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−n−プロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジイソプロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−n−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−sec−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジイソブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジメチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジエチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジ−n−プロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジイソプロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジ−n−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジ−sec−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジイソブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、2−エチル−5−ビニルピリジン、N,N−ジメチルアミノスチレン、N,N−ジメチルアミノメチルスチレン、あるいはこれらのハロゲン化水素、硫酸、硝酸、有機酸等による中和塩、ハロゲン化アルキル、ベンジルハライド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等による四級化物等が挙げられる。これらのモノマーは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0065】
(疎水性モノマー)
疎水性のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル類;スチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−t−ブトキシスチレン、m−t−ブトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン、o−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、p−クロロメチルスチレン等のスチレン類;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセ卜ンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等のアクリルアミド誘導体;N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、ジアセ卜ンメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸エステル、イタコン酸エステル等のジカルボン酸エステル誘導体;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等を挙げることができる。これらのモノマーは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0066】
(水溶性ノニオン性モノマー)
水溶性のノニオン性モノマーとしては、水酸基を有するモノマーとして、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等が挙げられる。
また、アミド基を有するモノマーとして、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリル酸アミノエチルアミド、アクリル酸メチルアミノエチルアミド、アクリル酸メチルアミノブロピルアミド、アクリル酸エチルアミノエチルアミド、アクリル酸エチルアミノプロピルアミド、アクリル酸アミノプロピルアミド、メタクリル酸アミノエチルアミド、メタクリル酸メチルアミノエチルアミド、メタクリル酸メチルアミノプロピルアミド、メタクリル酸エチルアミノエチルアミド、メタクリル酸エチルアミノプロピルアミド、メタクリル酸アミノプロピルアミド、ビニルピロリドン等が挙げられる。
これらのモノマーは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0067】
また、本発明においては、ポリマーBとしては、分子中に重合性基を有するポリマーを使用することが望ましい。すなわちポリマーの末端及び/又は側鎖に重合性基を有するポリマーを使用することが望ましい。この重合性基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、ビニルベンジル基、アリル基、アクリルアミド基、ビニルエーテル基などが挙げられる。分子中に重合性基を有するポリマーは、例えばカルボキシル基、アミノ基、水酸基等の反応性基を有するモノマー又は連鎖移動剤を用いて反応性基導入ポリマーを得た後に、上記反応性基と反応する基および重合性基を併せ有する化合物、例えばグリシジルメタクリレート、ビニルベンジルクロライド等のラジカル重合性不飽和モノマーを上記ポリマーと反応させることで合成することができる。
【0068】
ポリマーBの分子量は、大き過ぎるとポリマーAが吸着した粒子を再分散が効かないほど顕著に凝集したり、最終的な分散液が高粘度になり分散安定性が低下し、小さ過ぎると耐熱性が低下したり、インク中の溶剤によって粒子から剥がれやすくなるため、数平均分子量で2000以上、50000以下であることが好ましく、5000以上、20000以下であることがより好ましい。
【0069】
ポリマーBは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0070】
なお、この第2の工程においては、前記ポリマーAが有するイオン性基と反対の電荷を有する少なくとも1種類のポリマーBを使用している限りにおいては、ポリマーB以外の他のポリマーを添加してもかまわない。この場合、他のポリマーとしては、特に限定されるものではないが、疎水性ポリマーや、水溶性ノニオン性基と疎水性基を有するポリマー等を用いることができる。
【0071】
〔親水性モノマー、疎水性モノマー、重合性界面活性剤〕
本発明のマイクロカプセル化色材の製造においては、上述のようにして表面に前記ポリマーAを吸着させてなる色材粒子の水分散液中に、ポリマーBを加えて混合した後(第2の工程)、この分散液中に親水性モノマー、疎水性モノマー及び重合性界面活性剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上(以下「モノマー成分C」と称す場合がある。)及び重合開始剤を添加して該水分散液を混合することによってミセル化する(第3の工程)。
【0072】
この第3の工程で使用されるモノマー成分Cとしては、例えば以下に例示されるようなモノマーが挙げられる。
<親水性モノマー>
アニオン性基を有する親水性モノマーの好ましい具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボン酸系モノマー;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミドエタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−アクリロイルオキシブタンスルホン酸、2−メタクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−メタクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−メタクリロイルオキシブタンスルホン酸等のスルホン酸系モノマー;ビニルホスホン酸、メタアクリロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等のリン酸系モノマー;およびこれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属塩またはアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0073】
また、アニオン性基を有する親水性モノマー以外の親水性モノマーとしては、水酸基を有するモノマーとして、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等が挙げられる。また、アミド基を有するモノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリル酸アミノエチルアミド、アクリル酸メチルアミノエチルアミド、アクリル酸メチルアミノブロピルアミド、アクリル酸エチルアミノエチルアミド、アクリル酸エチルアミノプロピルアミド、アクリル酸アミノプロピルアミド、メタクリル酸アミノエチルアミド、メタクリル酸メチルアミノエチルアミド、メタクリル酸メチルアミノプロピルアミド、メタクリル酸エチルアミノエチルアミド、メタクリル酸エチルアミノプロピルアミド、メタクリル酸アミノプロピルアミド、ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0074】
さらにカチオン性基を有する親水性モノマーの好ましい具体例としては、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等を挙げることができる。
【0075】
これらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0076】
<疎水性モノマー>
疎水性モノマーの好ましい具体例としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル類;スチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−t−ブトキシスチレン、m−t−ブトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン、o−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、p−クロロメチルスチレン等のスチレン類;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセ卜ンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等のアクリルアミド誘導体;N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、ジアセ卜ンメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸エステル、イタコン酸エステル等のジカルボン酸エステル誘導体;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等を挙げることができる。
【0077】
これらは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0078】
また、上述の親水性モノマー、疎水性モノマーの他に、色材粒子の表面に吸着したポリマーA,Bを重合するために、本発明の効果を損ねない範囲でその他の重合性モノマー成分を用いることができる。
ここで用いるその他の重合性モノマーとしては、例えば以下に例示するような架橋性モノマーを挙げることができる。架橋性モノマーを共重合させてマイクロカプセル化色材の壁材を形成することにより、壁材の耐溶剤性を高めることができる。壁材の耐溶剤性を高めることにより、マイクロカプセル化色材の壁材を構成するポリマーとの親和性が高い溶剤を含む水性インク組成物においても、マイクロカプセル化色材粒子の分散安定性を優れたものにすることができる。
【0079】
<架橋性モノマー>
本発明において用いる架橋性モノマーとしては、ビニル基,アリル基,アクリロイル基,メタクリロイル基,プロペニル基,ビニリデン基,及びビニレン基から選ばれる1種以上の不飽和炭化水素基を2個以上有する化合物が挙げられ、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、アリルアクリレート、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラブロモピスフェノールAジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、プロビレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン、テトラブロモビスフェノールAジメタクリレート、ジシクロペンタニルジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリグリセーロールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリルメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、及びジエチレングリコールビスアリルカーボネート等が挙げられる。
【0080】
これらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0081】
<一般式(7)で表されるモノマー>
第3の工程において、本発明のマイクロカプセル化色材の壁材の主成分であるポリマーを合成するために用いるモノマー成分Cとして、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに下記一般式(7)で表されるモノマーを用いることができる。
【0082】
【化1】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rはt−ブチル基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、又はヘテロ環基を表す。mは0〜3の整数を表し、nは0又は1の整数を表す。)
【0083】
前記一般式(7)において、Rが示す脂環式炭化水素基としては、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、及びアダマンタン基等が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、ベンジル基等が挙げられ、ヘテロ環基としてはテトラヒドロフラン基等が挙げられ、これらは更に置換基を有していても良い。
【0084】
前記一般式(7)で表されるモノマーの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0085】
【化2】

【0086】
【化3】

【0087】
以上例示したモノマーは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0088】
第3の工程において、モノマー成分Cとして、前記一般式(7)で表されるモノマーを用い、本発明のマイクロカプセル化色材の壁材のポリマー中に前記一般式(7)で表されるモノマー由来の"嵩高い"基である前記R基を入れることによって、壁材のポリマーの分子のたわみやすさを低下させ、すなわち、分子の運動性を低下させて、該ポリマーの機械的強度や耐熱性を高めることができる。このため、該ポリマーで被覆されたマイクロカプセル化色材を含むインク組成物を用いて記録された記録物を、優れた耐擦性と耐久性を有するものにすることができる。また、"嵩高い"基である前記R基がマイクロカプセル壁材を構成するポリマー中に存在することによって、インク組成物中の有機溶剤が壁材のポリマー内部へ浸透することを抑制でき、それによりマイクロカプセル化色材の耐溶剤性を優れたものにすることができるため、水溶性有機溶媒が共存するインク組成物のインクジェットヘッドからの吐出性や、色材の分散性や、インク組成物の保存性を高めることができる。
【0089】
前記の架橋性モノマーから誘導された繰り返し構造単位を有するポリマーや、一般式(7)で表されるモノマーから誘導された繰り返し構造単位を有するポリマーは、Tgが高く、機械的強度、耐熱性、耐溶剤性に優れるという利点を有する。
【0090】
しかし、このような架橋性モノマー及び/又は前記一般式(7)で表されるモノマーを共重合成分として多く含むポリマーで被覆されたマイクロカプセル化色材は、ポリマーの可塑性が低いため、記録媒体と密着しにくくなる場合がある。その結果、このマイクロカプセル化色材を含むインク組成物の記録媒体への定着性、及び得られる画像の耐擦性が低下する場合があるため、これらのモノマーの使用量は適宜調整することが好ましい。
【0091】
一方、前述した疎水性モノマーのうち、長鎖アルキル基を有するモノマーから誘導された繰り返し構造単位を有するポリマーは柔軟性を有する。従って、架橋性モノマーから誘導された繰り返し構造単位及び/又は一般式(7)で表されるモノマーから誘導された繰り返し構造単位と長鎖アルキル基を有するモノマーから誘導された繰り返し構造単位との比率を適宜調整することによって、好ましい可塑性とあわせて、優れた機械的強度及び優れた耐溶剤性を有する壁材を形成することができる。このようなポリマーで被覆されたマイクロカプセル化色材粒子を含むインク組成物は、それが水溶性有機溶媒を含む場合でも、インクジェットヘッドからの吐出安定性が優れており、分散安定性及び長期保存性にも優れている。さらにこのマイクロカプセル化色材粒子を含むインク組成物は、記録媒体への定着性が良く、このインク組成物を用いて記録した記録物の画像は耐擦性、耐久性、及び耐溶剤性に優れる。
【0092】
<重合性界面活性剤>
本発明のマイクロカプセル化色材を製造する前記第3の工程に使用し得る重合性界面活性剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、カチオン性重合性界面活性剤、アニオン性重合性界面活性剤、ノニオン性重合性界面活性剤が使用可能であり、例として下記のような重合性界面活性剤が挙げられる。
【0093】
(カチオン性重合性界面活性剤)
本発明で用いるカチオン性重合性界面活性剤は、イオン性基としてのカチオン性基、疎水性基、及び重合性基を有する化合物である。
カチオン性重合性界面活性剤のカチオン性基としては、一級アンモニウムカチオン、二級アンモニウムカチオン、三級アンモニウムカチオン、及び第四級アンモニウムカチオンなる群から選択されたカチオン性基が好ましい。一級アンモニウムカチオンとしてはモノアルキルアンモニウムカチオン(RNH)等を、二級アンモニウムカチオンとしてはジアルキルアンモニウムカチオン(RNH)等を、三級アンモニウムカチオンとしてはトリアルキルアンモニウムカチオン(RNH)等を、第四級アンモニウムカチオンとしては(R)等を挙げることができる。ここで、Rは、疎水性基及び重合性基であり、以下に示すものを挙げることができる。前記カチオン性基の対アニオンとしては、Cl、Br、及びI等を挙げることができる。
【0094】
前記Rの疎水性基としては、アルキル基及びアリール基からなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましく、一つの界面活性剤分子中にアルキル基及びアリール基の両者を有することもできる。
前記Rの重合性基としては、不飽和炭化水素基が好ましく、具体的には、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ビニリデン基及びビニレン基からなる群から選択された基であることが好ましい。この中でも特にアクリロイル基、メタクリロイル基及びアリル基がより好ましい。
【0095】
前記カチオン性重合性界面活性剤の具体的な例としては、特公平4−65824号公報に記載されているようなカチオン性のアリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体などを挙げることができる。
【0096】
例えば、一般式R44[4−(a+b+c)]414243・Qで表される化合物を挙げることができる(前記一般式中、R44は重合性基であり、R41、R42、R43はそれぞれアルキル基又はアリール基であり、QはCl、Br又はIであり、a、b及びcはそれぞれ1又は0である)。ここで、前記重合性基としては、ラジカル重合可能な不飽和炭化水素基を有する炭化水素基を好適に例示でき、より具体的には、アリル基、アクロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロぺニル基、ビニリデン基、ビニレン基等を挙げることができる。
【0097】
カチオン性重合性界面活性剤の具体例としては、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド塩、及び2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド塩等を挙げることができる。
【0098】
前記カチオン性重合性界面活性剤としては市販品を用いることもでき、例えば、アクリエステルDMC(三菱レイヨン(株))、アクリエステルDML60(三菱レイヨン(株))、及びC−1615(第一工業製薬(株))などを挙げることができる。
以上例示したカチオン性重合性界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。また、ノニオン性重合性界面活性剤と併用して用いることもできる。
【0099】
(アニオン性重合性界面活性剤)
本発明で用いるアニオン性重合性界面活性剤は、イオン性基としてのアニオン性基、疎水性基、及び重合性基を有する化合物である。
本発明に用いるアニオン性重合性界面活性剤の具体例としては、特公昭49−46291号公報、特公平1−24142号公報、又は特開昭62−104802号公報に記載されているようなアニオン性のアリル誘導体、特開昭62−221431号公報に記載されているようなアニオン性のプロペニル誘導体、特開昭62−34947号公報又は特開昭55−11525号公報に記載されているようなアニオン性のアクリル酸誘導体、特公昭46−34898号公報又は特開昭51−30284号公報に記載されているようなアニオン性のイタコン酸誘導体、特開昭62−11534号公報に記載されているような、構造中にラジカル重合性不飽和カルボン酸基及び硫酸エステル基を有するアニオン性の化合物などを挙げることができる。
【0100】
本発明において使用するアニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【0101】
【化4】

(式中、R21及びR31は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基であり、Zは、炭素−炭素単結合又は式:
−CH−O−CH
で表される基であり、xは2〜20の整数であり、Xは式−SOで表される基であり、Mはアルカリ金属、アンモニウム基、又はアルカノールアミン残基である。)
【0102】
【化5】

(式中、R22及びR32は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基であり、Dは、炭素−炭素単結合又は式:
−CH−O−CH
で表される基であり、yは2〜20の整数であり、Yは式−SOで表される基であり、Mはアルカリ金属、アンモニウム基、又はアルカノールアミン残基である。)
で表される化合物が好ましい。
【0103】
前記一般式(1)で表される重合性界面活性剤としては、特開平5−320276号公報、又は特開平10−316909号公報に記載されている化合物を挙げることができる。前記一般式(1)で表される好ましい重合性界面活性剤としては、下記一般式(3)で表される化合物を挙げることができ、さらに具体的には、下記構造式(3a)〜(3d)で表される化合物を挙げることができる。
【0104】
【化6】

(式中、R31、x、及びMは一般式(1)におけると同義である。)
【0105】
【化7】

【0106】
前記アニオン性重合性界面活性剤としては市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のアクアロンHSシリーズ(アクアロンHS−05、HS−10、HS−20、及びHS−1025)(以上、商品名)、あるいは、旭電化工業株式会社製のアデカリアソープSE−10N,及びSE−20N(以上、商品名)などを挙げることができる。
なお、旭電化工業株式会社のアデカリアソープSE−10Nは、前記一般式(3)において、M=NH、R31=C19、x=10の化合物である。旭電化工業株式会社のアデカリアソープSE−20Nは、前記一般式(3)において、M=NH、R31=C19、x=20の化合物である。
【0107】
また、本発明において用いるアニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、下記一般式(4)で表される化合物が好ましく、この一般式(4)で表されるもののうち好ましいアニオン性重合性界面活性剤としては、下記一般式(4a)で表される化合物を挙げることができる。
【0108】
【化8】

(式中、pは9又は11であり、qは2〜20の整数であり、Aは−SOで表わされる基であり、Mはアルカリ金属、アンモニウム基又はアルカノールアミン残基である。)
【0109】
【化9】

(式中、rは9又は11、sは5又は10である。)
【0110】
前記アニオン性重合性界面活性剤としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のアクアロンKHシリーズ(商品名:アクアロンKH−5及びアクアロンKH−10)などを挙げることができる。アクアロンKH−5は、前記一般式(4a)において、r=9でs=5の化合物と、r=11でs=5の化合物との混合物である。
【0111】
また、本発明に用いるアニオン性重合性界面活性剤としては、下記一般式(5)で表される化合物も好ましい。
【0112】
【化10】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、lは2〜20の整数を表し、Mはアルカリ金属、アンモニウム基、又はアルカノールアミン残基を表す。)
【0113】
さらにまた、本発明において用いるアニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、下記一般式(6)で表される化合物も好適に用いられる。
【化11】

(式中、R11,R12,R13,R14はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜18の炭化水素基であり、e,fはそれぞれ独立して2〜20の整数である。)
【0114】
前記アニオン性重合性界面活性剤としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製のアントックスMS−60(以上、商品名)などを挙げることができる。
【0115】
以上に例示したアニオン性重合性界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。また、ノニオン性重合性界面活性剤と併用して使用することもできる。
【0116】
(ノニオン性重合性界面活性剤)
本発明で用いるノニオン性重合性界面活性剤は、水溶性基としてのノニオン性基、疎水性基、及び重合性基を有する化合物である。
本発明に用いるノニオン性重合性界面活性剤の具体例としては、特開昭62−104802号公報に記載されているようなノニオン性のアリル誘導体、特開昭62−100502号公報に記載されているようなノニオン性のプロペニル誘導体、特開昭56−28208号公報に記載されているようなノニオン性のアクリル酸誘導体、特公昭59−12681号公報に記載されているようなノニオン性のイタコン酸誘導体、特開昭59−74102号公報に記載されているようなノニオン性のマレイン酸誘導体などを挙げることができる。
【0117】
本発明において使用するノニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、分子中に反応性基として(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、イソプロペニル基等を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアラルキルフェニルエーテル等を挙げることができる。
【0118】
以上に例示したノニオン性重合性界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。また、カチオン性重合性界面活性剤もしくはアニオン性重合性界面活性剤のいずれか一方と、併用して使用することができる。
【0119】
〔重合開始剤〕
本発明のマイクロカプセル化色材のマイクロカプセル化壁材を構成するポリマーの一部は、上述したように、少なくとも1種類のモノマー成分Cを重合して得られる。この重合反応は公知の重合開始剤を用いて行うことができる。即ち、表面にポリマーAを吸着させてなる色材粒子の水分散液中に、ポリマーBを加えて混合し、次いで、この分散液中に少なくとも1種類のモノマー成分C及び重合開始剤を混合して重合させることによって色材粒子の表面を有機物の重合体で被覆する(第3の工程)。
この重合開始剤としては、特にラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤としては、水溶性の重合開始剤でも油溶性の重合開始剤でも使用することができる。
モノマー成分Cとして、疎水性モノマー及び重合性界面活性剤のみから選ばれる少なくとも1種類のモノマー成分を使用する場合は、モノマー中に均一に重合開始剤を導入可能であることから、油溶性重合開始剤を使用することがより好ましい。
【0120】
<水溶性重合開始剤>
水溶性の重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6,−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]二塩酸塩等のアゾ化合物系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の酸化剤単独、又はこれらの酸化剤と亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、硫酸第1鉄、硝酸第1鉄、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、チオ尿素等の水溶性還元剤と組み合わせたレドックス系開始剤が挙げられる。
【0121】
<油溶性重合開始剤>
油溶性の重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサン1−カーボニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)及び2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物系開始剤;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノニルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、プロピオニトリルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジベンゾイルパーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジイソブチルジパーオキシフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジt−ブチルパーオキシヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、パラメンタンヒドロパーオキサイド、ピナンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド及びクメンパーオキサイド等のパーオキサイド重合開始剤;さらにヒドロペルオキサイド(tret−ブチルヒドロキシペルオキサイド、クメンヒドロキシペルオキサイド等)、過酸化ジアルキル(過酸化ラウロイル等)及び過酸化ジアシル(過酸化ベンゾイル等)等の油溶性過酸化物と、第三アミン(トリエチルアミン、トリブチルアミン等)、ナフテン酸塩、メルカプタン(メルカプトエタノール、ラウリルメルカプタン等)、有機金属化合物(トリエチルアルミニウム、トリエチルホウ素及びジエチル亜鉛等)等の油溶性還元剤とを併用する油溶性レドックス重合開始剤;が挙げられる。
【0122】
本発明のマイクロカプセル化色材の製造にあたって、例えば色材として水非分散性の顔料を用い、顔料粒子表面に吸着させるポリマーAとして、例えばカチオン性基及び疎水基を有するポリマーを使用する場合であれば、まず、該ポリマーAを表面に吸着した顔料粒子の水性分散液を調製し(第1の工程)、ここにアニオン性基を有するポリマーBを加えて混合する(第2の工程)。ここでは、アニオン性基を有するポリマーBのアニオン性基が、カチオン性基を有するポリマーAを吸着した顔料粒子表面のカチオン性基にイオン結合し、固定化される。次に、モノマー成分C、及び重合開始剤を加えて混合して、乳化重合する(第3の工程)。これら各原料をよく混合するために混合分散液に超音波を照射するのが好ましい。なお、アニオン性基を有するポリマーBが疎水性基を有する場合、モノマーをより多く取り込み、高度に均一化された被覆状態を有するカプセル化が可能であるため、より好ましい。
このような手順により、カチオン性基及び疎水性基を有するポリマーA、及び、アニオン性基を有するポリマーBと、親水性モノマー、疎水性モノマー、アニオン性重合性界面活性剤、ノニオン性重合性界面活性剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上のモノマー成分Cから誘導された繰り返し構造単位とを有するポリマーで被覆されたマイクロカプセル化顔料を好適に製造できる。
【0123】
モノマー成分Cとして、疎水性モノマー及び重合性界面活性剤のみから選ばれる少なくとも1種類のモノマー成分を使用する場合は、第3の工程において予めモノマー成分Cと油溶性重合開始剤を均一化した後、この溶液を添加、混合した後、乳化重合することが好ましい。モノマー成分Cと油溶性重合開始剤を予め均一化することにより、モノマー中に重合開始剤が均一に配置され、モノマーがより均一に重合し、色材粒子をより均一にポリマーで被覆することが可能となる。
【0124】
〔原料使用割合〕
前記第1の工程において、色材粒子の表面に吸着させる前記ポリマーAの量は、色材粒子に対しておよそ1〜500重量%の範囲の量とするのが好ましく、より好ましくは10〜200重量%である。ポリマーA量が少なすぎると水性媒体中で色材が分散不安定になり凝集を起こしてしまう。また、ポリマーAの親−疎水バランスや、色材粒子の総表面積、疎水性基と色材粒子表面との親和性等により、色材に対するポリマーAの吸着量には限界があり、ポリマーA量が多すぎると、色材に吸着していない遊離ポリマーA量が増え、分散液の増粘、分散不安定化を引き起こすため好ましくない。
なお、第1の工程において、水性媒体中の色材粒子濃度は、過度に高濃度であると粘度上昇が著しく分散困難となり、低濃度では分散効率が極端に低下するため、1〜30重量%程度であることが好ましい。
【0125】
色材粒子の表面に前記ポリマーAを吸着させるには、例えば、所定量の該ポリマーAと色材粒子とを水を主成分とする水媒体中で一般的な分散機を用いて分散処理をすれば良く、分散処理に用いる分散機としては、通常、顔料分散に使用される各種分散機が適宜使用できる。分散機としては、特に限定されるものではないが、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドミル、アトライター、パールミル、コボールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー、湿式ジェットミル、超音波ホモジナイザー等を用いることができる。分散機としてメディアを使うものには、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、スチレンビーズを用いることができる。このうち、特に好ましい分散処理処方としては、ビーズをメディアとしてミルで分散後、超音波ホモジナイザーで分散する方法である。
【0126】
好ましい粒径を有する色材分散体を得る方法としては、特に限定されるものではないが、分散機の分散メディアのサイズを小さくする、分散メディアの充填率を大きくする、分散液中の色材濃度を高くする、処理時間を長くする、分散後、フィルターや遠心分離機等で分級する等の種々の方法や、あるいはそれらの手法を適宜組み合わせて用いられる。
なお、分散時における発熱により、分散液が増粘したり、発泡したりするなど望ましくない現象がおこる場合は、冷却しながら分散処理をすることが望ましい。
【0127】
前記第2の工程において、前記ポリマーAが吸着した色材粒子の水性分散液へのポリマーBの添加量は、添加されたポリマーB全体の解離したイオン性基数の総量が、色材粒子表面に吸着した前記ポリマーA全体の解離したイオン性基数総量の1倍より多いことが好ましく、より好ましくは2倍以上である。ポリマーB量がこれより少ない場合、水性媒体中で色材が分散不安定になり凝集を起こしてしまう。また、ポリマーB量が多すぎると色材に吸着していない遊離ポリマーB量が増え、分散液の増粘、分散不安定化を引き起こすため、ポリマーB量は、ポリマーB全体の解離したイオン性基数の総量が、色材粒子表面に吸着した前記ポリマーA全体の解離したイオン性基数総量の10倍以下、特に7倍以下となるような量であることが好ましい。
なお、添加されるポリマー量は、一般的にポリマー中の全てのイオン性基が解離しているわけではないので、上述の如く、実際に解離しているイオン性基総量で規定するのが好ましい。
【0128】
前記ポリマーAが吸着した色材粒子に、ポリマーBを吸着させるには、例えば、所定量の該ポリマーBを前記ポリマーAが吸着した色材粒子を有する水性分散液に添加して混合すれば良い。ここで、水性分散液へのポリマーBの混合には、通常溶液の混合に使用される各種装置を使用すればよく、その装置は特に限定されるものではないが、ホモミキサー、ホモジナイザー、湿式ジェットミル、マグネティックスターラー、超音波分散機等を用いることができる。このうち、特に好ましい処理処方としては、超音波分散機が挙げられる。
【0129】
前記第3の工程において、分散液中に添加されるモノマー成分Cの添加量は、色材粒子1重量部に対して、0.1〜10重量部、特に0.2〜5重量部であることが好ましい。モノマー成分Cの添加量が少なすぎると壁材として分子量の低い重合体しか形成されず、色材粒子の被覆が不完全になり好ましくない。また、モノマー成分Cの添加量が多すぎると、色材粒子を含まないポリマー微粒子が多数生成し、分散液の増粘を招くため好ましくない。適切な量のモノマー成分Cを添加することにより、下記のアドミセルが形成され、その後の重合反応によって、目的とする本発明のマイクロカプセル化色材を得ることができる。
【0130】
この第3の工程において、水性分散液にモノマー成分Cを添加して混合する場合も、水性分散液に超音波を照射することが好ましい。
前記ポリマーAがカチオン性基を有する場合、上記の工程により、顔料粒子表面に吸着したカチオン性基を有するポリマーAのカチオン性基にアニオン性基を有するポリマーBが静電的に吸着し、ここに疎水性モノマーを添加した場合はさらにその外側に疎水性モノマーが局在し、さらにその外側にアニオン性基を有するポリマーBと、モノマー成分Cとしてのアニオン性モノマー、ノニオン性モノマー、アニオン性重合性界面活性剤及びノニオン性重合性界面活性剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上が、その親水基(アニオン性基又はノニオン性基)を水相側に向けて配向してアドミセル(admicell)が形成されると推定される。なお、前記ポリマーAとして、アニオン性基を有するポリマーを使用する場合は、カチオン性基を有するポリマーBと、モノマー成分Cとしてカチオン性モノマー、カチオン性重合性界面活性剤及びノニオン性重合性界面活性剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上を使用するのが好ましい。
【0131】
なお、第3の工程における重合反応において、水性分散液への超音波の照射を行わなくても、水性媒体中での分散安定性に優れたマイクロカプセル化色材を得ることができる場合は、超音波照射は必ずしも必要ではない。
【0132】
第3の工程において、重合開始剤の添加は、モノマー成分Cと同時でも、別々に添加・混合してもかまわない。また、重合開始剤が活性化される温度に加熱した上記のアドミセルが形成された水性分散液に重合開始剤を一度にもしくは分割して添加・混合しても、又は連続的に添加・混合しても良い。本発明においては、前述の如く、重合開始剤として水溶性重合開始剤でも油溶性重合開始剤でも使用可能である。モノマー成分Cとして、疎水性モノマー及び重合性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種類のモノマー成分を使用する場合は、予めモノマー成分Cと油溶性重合開始剤を均一化した後、溶液を添加・混合することがより好ましい。添加した重合開始剤が開裂して開始剤ラジカルが発生し、これが重合性界面活性剤の重合性基や重合性モノマーの重合性基を攻撃することによって重合反応が起こる。
【0133】
重合温度及び重合反応時間は、用いる重合開始剤の種類及び重合性モノマーの種類によって異なるが、適宜好ましい重合条件を設定することは容易である。一般に重合温度は40℃〜90℃の範囲とするのが好ましく、重合時間は3時間〜12時間とするのが好ましい。
また、重合開始剤の使用量は用いる重合開始剤の種類及び重合性モノマーの種類によって異なるが、通常、重合性モノマーに対して0.0001〜20モル%、好ましくは0.001〜5モル%である。
【0134】
前記重合反応においては、モノマー成分C、即ち、重合性界面活性剤、親水性モノマー、疎水性モノマー、架橋性モノマー、前記一般式(7)で表される化合物、及びその他の公知の重合性モノマーは、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。また、前記乳化重合反応は、親水性基及び疎水性基を有するポリマーを使用する場合、原料モノマーを含む水性分散液の乳化状態は乳化剤を用いなくても良好な場合が多い。従って、必ずしも乳化剤を用いる必要はないが、必要に応じて公知のアニオン系、ノニオン系、及びカチオン系乳化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることもできる。
【0135】
前記重合反応によって得られたマイクロカプセル化色材の表面にアニオン性基を有する場合は、重合終了後に、得られた水性分散液のpHを7.0〜9.0の範囲に調製し、さらに濾過を行うことが好ましい。この濾過は限外濾過が好ましい。
【0136】
上述した乳化重合法によれば、まず、色材粒子表面に吸着したカチオン性ポリマーのカチオン性基にアニオン性ポリマーが吸着すると考えられる。次いで疎水性モノマーを含む重合性モノマー及び/又は重合性界面活性剤を加え、超音波を照射して処理する。この処理によって、顔料粒子の周囲に存在する重合性界面活性剤や重合性モノマー分子の配置形態が極めて高度に制御され、最外層では水相に向かって親水性基(アニオン性基又はノニオン性基)が配向した状態が形成されると考えられる。そして、この水性分散液を乳化重合することによって、顔料粒子のまわりに高度にモノマー分子が制御された形態のまま、モノマーが重合されてポリマーになり、本発明のマイクロカプセル化色材が得られると考えられる。本発明の前記乳化重合法を用いることにより、副生成物である水溶性のオリゴマーやポリマーの生成を抑制することができる。これによって、低粘度のマイクロカプセル化色材分散液が得られ、このような低粘度のマイクロカプセル化色材分散液であれば、限外濾過等の精製工程を容易に行うことができる。しかも、前記重合法によって得られたマイクロカプセル化色材を用いたインク組成物は、分散安定性に優れ、記録ヘッドからの吐出安定性に優れ、普通紙に対しても滲みにくく、高発色で高濃度の記録画像を得ることができる。
【0137】
以上のようにして得られる本発明のマイクロカプセル化色材は水性溶媒に対して高い分散安定性を有するが、これは色材粒子がポリマー層で完全に被覆されている(被覆されていない部分がない)とともに、マイクロカプセル壁材のポリマー層の親水性基が水性溶媒に向かって規則正しく配向しているためであると考えられる。
【0138】
表面にアニオン性基を有するポリマーAが吸着された色材粒子を用いる場合には、カチオン性基を有するポリマーBを用い、モノマー成分Cとして疎水性モノマー、カチオン性モノマー、水溶性ノニオン性モノマー、ノニオン性重合性界面活性剤及びカチオン性重合性界面活性剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上を用いる。その他の重合開始剤等の原料、並びに超音波照射等の操作や重合条件等は、前記の表面にカチオン性基を有するポリマーAが吸着された顔料粒子を用いる場合と同様である。
【0139】
このようにして得られる本発明のマイクロカプセル化色材は、色材粒子の表面をマイクロカプセル壁材でもあるポリマーが被覆した形態を有するが、所望により、重合前又は重合反応後に、水性分散液に酸化防止剤や可塑剤などを添加してポリマーにそれらの添加剤を含有させることもできる。このような酸化防止剤や可塑剤などは公知の材料を用いることができる。
【0140】
このようにして得られた本発明のマイクロカプセル化色材は、色材粒子(芯物質)が色材表面に吸着したポリマーAの上にさらにポリマーを主成分とするマイクロカプセル壁材で被覆されてなるものであり、この壁材のポリマーが、2)色材表面に吸着したポリマーAのイオン性基とは反対の電荷を有するイオン性基を有するポリマーB、並びに3)疎水性モノマー、親水性モノマー及び重合性界面活性剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上から誘導された繰り返し構造単位を含むものになる。
【0141】
本発明のマイクロカプセル化色材のマイクロカプセル化された色材に対する壁材としてのポリマーの割合は、重量比で10〜1000重量%特に40〜500重量%であることが好ましい。色材に対して壁材としてのポリマーの割合が少な過ぎると色材を十分に被覆し得ず、多過ぎるとマイクロカプセル化色材の粒径が増大しすぎることにより、分散安定性、吐出性の低下を招く。
【0142】
また、本発明のマイクロカプセル化色材の粒子径は、400nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがさらに好ましく、10〜200nmであることが特に好ましい。マイクロカプセル化色材の粒子径がこの範囲より大きいと分散安定性、吐出性の低下を招き、小さいと色材の耐候性の低下を招く。
マイクロカプセル化色材の粒子径は、市販のレーザードップラー方式粒度分布測定機を使用して測定することができる。また、本発明のマイクロカプセル化色材の粒子径は、重合反応開始前に超音波を所定の照射条件(照射エネルギーの違いが主であり、例えば周波数及び照射時間によって制御できる)で反応混合液に照射すること、重合反応中に反応混合物に超音波を照射するか否かの違い、及び重合反応中に反応混合物に超音波を照射する場合はその照射条件の制御等によって所望する粒子径に制御することができる。
【0143】
上述のようにして製造される本発明のマイクロカプセル化色材は、その水性分散液として得られ、これにさらに所望の材料を混合して本発明のインク組成物を調製することができるが、それに先立ち、前記マイクロカプセル化色材の水性分散液中に含まれる未反応モノマー(イオン性重合性界面活性剤や反応性モノマーなどの用いた重合性化合物など)を予め除去して精製して用いることが好ましい。マイクロカプセル化色材を含む水性分散液を精製処理して未反応モノマーの濃度を低減することによって、本発明のマイクロカプセル化色材を用いたインクジェット記録用インクを普通紙に用いて作成した画像(本発明の記録物)を、優れた彩度を有し、印字濃度(印刷濃度)も高いものとすることができ、さらに、画像の滲みの発生も抑制されるという効果が得られる。また、このインクをインクジェット記録用専用メディア、特にインクジェット用光沢メディアを使用した場合に得られる画像は、良好な光沢性をさらに有する。
【0144】
本発明のマイクロカプセル化色材はインク組成物に用いることができ、特にインクジェット記録用インクに用いる色材として好ましい。
次に本発明のマイクロカプセル化色材を用いたインク組成物について説明する。
【0145】
〔インク組成物〕
本発明のインク組成物は水性インク組成物であり、水性媒体中に前記本発明のマイクロカプセル化色材が分散されて含まれるものである。インク組成物中のマイクロカプセル化色材の含有量はインク組成物の全重量に対して1〜30重量%であることが好ましく、3〜20重量%であることがさらに好ましい。特に高い印刷濃度と高発色性を得るためには、マイクロカプセル化色材の含有量が3〜15重量%であることが好ましい。
【0146】
また、本発明のインク組成物に用いる溶媒は、水及び水溶性有機溶媒を含むことが好ましく、さらに所望により他の成分を含むことができる。
【0147】
インクジェット記録用インク組成物に保水性と湿潤性を付与するために、本発明のインク組成物には、高沸点水溶性有機溶媒からなる湿潤剤を添加することが好ましい。このような高沸点水溶性有機溶媒としては、沸点が180℃以上の水溶性有機溶媒が好ましい。
【0148】
本発明に用いることができる、沸点が180℃以上の水溶性有機溶媒の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、グリセリン、メソエリスリトール、及びペンタエリスリトールを挙げることができる。
本発明に用いる高沸点水溶性有機溶媒は、沸点が200℃以上であることがさらに好ましい。
これらの高沸点水溶性有機溶媒の1種又は2種以上を本発明のインク組成物に用いることができる。
【0149】
インク組成物に高沸点水溶性有機溶媒を添加することにより、開放状態(室温でインク組成物が空気に触れている状態)で放置しても、流動性と再分散性とを長時間維持できるインクジェット記録用インクを得ることができる。さらに、このようなインク組成物は、インクジェットプリンタを用いての印字中もしくは印字中断後の再起動時に、インクジェットノズルの目詰まりが生じ難くなるため、インクジェットノズルからの高い吐出安定性を有するインク組成物が得られる。
【0150】
また、特に、本発明のインク組成物にグリセリンを含有させることにより、そのインク組成物をインクジェット記録に用いた場合のインクジェットノズルの目詰まりが発生しにくくなり、さらにインク組成物自身の保存安定性を高めることもできる。
【0151】
これらの高沸点水溶性有機溶媒を含めた水溶性有機溶媒の合計の含有量は、インク組成物の全重量に対して、好ましくは10〜50重量%程度であり、より好ましくは10〜30重量%である。
【0152】
本発明のインク組成物には、さらに2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、ε−カプロラクタム、ジメチルスルホキシド、スルホラン、モルホリン、N−エチルモルホリン、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等からなる群から選ばれる1種以上の極性溶媒を添加することができる。これらの極性溶媒を添加することにより、インク組成物中におけるマイクロカプセル化色材の分散性が向上するという効果が得られ、インクの吐出安定性を良好にすることができる。
これらの極性溶媒の含有量は、インク組成物の全重量に対して、好ましくは0.1〜20重量%であり、より好ましくは1〜10重量%である。
【0153】
本発明のインク組成物は、水性溶媒が記録媒体に浸透することを促進する目的で、浸透剤をさらに含有することが好ましい。水性溶媒が記録媒体に素早く浸透することによって、画像の滲みが少ない記録物を得ることができる。
【0154】
このような浸透剤としては、多価アルコールのアルキルエーテル(グリコールエーテル類ともいう)及び/又は1,2−アルキルジオールが好ましく用いられる。多価アルコールのアルキルエーテルとしては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等が挙げられる。1,2−アルキルジオールとしては、例えば1,2−ペンタンジオール、及び1,2−ヘキサンジオールなどが挙げられる。これらの他に、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、及び1,8−オクタンジオール等の直鎖炭化水素のジオール類を挙げることができ、これらから適宜選択して本発明のインク組成物に用いることができる。
【0155】
特に、本発明においては、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ペンタンジオール、及び1,2−ヘキサンジオールから選ばれる少なくとも1種を浸透剤として用いることが好ましい。
【0156】
これらの浸透剤の含有量は、インク組成物の全重量に対して、総量で、好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは1〜10重量%である。浸透剤の含有量を1重量%より多くすることによって、インク組成物の記録媒体への浸透性を向上する効果が得られ、さらに20重量%以下にすることにより、このインク組成物を用いて印刷した画像に滲みが発生することを防止でき、またインク組成物の粘度があまり高くならないようにすることができる。
また、特に、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール等の1,2−アルキルジオールをインク組成物に用いた場合、印刷後のインク組成物の乾燥性が良好になり、かつ、画像の滲みを少なくすることができる。
【0157】
また、本発明のインク組成物にグリコールエーテル類を用いる場合には、グリコールエーテル類とあわせて、後述するアセチレングリコール系界面活性剤を用いることが好ましい。
【0158】
また、本発明のインク組成物は、界面活性剤、特にアニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。アニオン性界面活性剤の具体例としては、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸、アシルメチルタウリン酸、ジアルキルスルホ琥珀酸、アルキル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化オレフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸塩、及びアルキルザルコシン塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、モノグリセライトリン酸エステル塩などが挙げられる。また、ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミド、グリセリンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、シュガーアルキルエステル、アルカノールアミン脂肪酸アミドなどが挙げられる。
【0159】
より具体的には、アニオン性界面活性剤としてはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩などが挙げられ、ノニオン性界面活性剤の具体例としてはポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル系化合物、並びにポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、及びポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系化合物等を挙げることができる。
【0160】
特に、本発明の実施形態に係るインクジェット記録用インク組成物は、界面活性剤としてアセチレングリコール系界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール系界面活性剤を含むことが望ましく、これにより、インク組成物に含まれる水性溶媒が記録媒体へ浸透しやすくなるため、種々の記録媒体に対して滲みの少ない画像を印刷することができるようになる。
【0161】
本発明において用いられるアセチレングリコール系界面活性剤の好ましい具体例としては、下記一般式(8)で表される化合物が挙げられる。
【0162】
【化12】

(式中、g及びhは、それぞれ0≦g+h≦50を満たす整数であり、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立してアルキル基(好ましくは炭素数6以下のアルキル基)を表す。)
【0163】
上記一般式(8)で表される特に好ましい化合物としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。上記一般式(8)で表される化合物として、アセチレングリコール系界面活性剤として市販されている市販品を利用することも可能であり、具体例としては、サーフィノール104、82、465、485、及びTG(いずれも商品名、Air Products and Chemicals.Inc.より入手可能)、並びにオルフィンSTG及びオルフィンE1010(以上商品名、日信化学社製)が挙げられる。また、アセチレンアルコール系界面活性剤としては、サーフィノール61(商品名、Air Products and Chemicals.Inc.より入手可能)等が挙げられる。
【0164】
これらのアセチレングリコール系界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール系界面活性剤は、インク組成物の全重量に対して、好ましくは0.01〜10重量%の範囲、さらに好ましくは0.1〜5重量%の範囲になるように用いることが好ましい。
【0165】
本発明のインク組成物には、ポリマー微粒子をさらに添加することができる。ポリマー微粒子は、以下の[1]、特に[2]の形態のものが好ましい。
[1] 表面にイオン性基を有し、体積平均粒子径が10〜200nmであるポリマー微粒子。
[2] 表面に本発明のマイクロカプセル化色材表面のイオン性基と同種のイオン性基を有し、体積平均粒子径が10〜200nmであるポリマー微粒子。
【0166】
前記したように、架橋性モノマーから誘導された繰り返し構造単位を有するポリマー及び/又は一般式(7)で表されるモノマーから誘導された繰り返し構造単位を有するポリマーを主成分とするマイクロカプセル壁材で被覆されたマイクロカプセル化色材は、高い機械的強度、耐熱性、及び耐溶剤性を有するものの、ポリマーの可塑性が不十分となって、記録媒体への定着性・耐熱性が低下する傾向にある。しかし、たとえマイクロカプセル化色材のマイクロカプセル壁材の可塑性が不十分な場合でも、前記ポリマー微粒子と併用することにより、得られるインク組成物を用いて記録媒体上に形成した画像においては、マイクロカプセル化色材をポリマー微粒子が覆うことができ、記録媒体への画像の定着性及び画像の耐擦性を高くすることができる。
【0167】
前記ポリマー微粒子としては成膜性を有するものが特に好ましい。ここで、「成膜性を有する」とは、ポリマー微粒子を水に分散させて水性エマルジョンの形態にし、この水性エマルジョンの水分を蒸発させたときにポリマーの皮膜が形成されうることを意味する。成膜性を有するポリマー微粒子を含んだ本発明のインク組成物は、その溶媒成分を蒸発させていくと、ポリマーの皮膜を形成する性質を有する。このポリマーの皮膜によって、インク中のマイクロカプセル化顔料をより強固に記録媒体表面に固着することができる。これによって、より優れた耐擦性及び耐水性を有する画像が形成できる。
【0168】
前記ポリマー微粒子が良好な成膜性を有するためには、そのポリマーのガラス転移温度が30℃以下であることが好ましく、15℃以下であることがさらに好ましく、10℃以下であることが特に好ましい。ポリマーのガラス転移温度は、使用するモノマーの種類や組成比を適宜選択することによって好ましい温度範囲内にすることができ、当業者には周知の方法である。本発明において、ポリマーのガラス転移温度としては、熱走査型熱量計(Differential scanning calorimeter:DSC)による昇温測定によって得られたガラス転移温度を用いた。すなわち、熱走査型熱量計によるポリマーの昇温測定を行って得られた示差熱曲線において、吸熱ピークの底部から吸熱の開始点に向かって接線を引いたとき、その接線とベースラインとの交点の温度をそのポリマーのガラス転移温度(Tg)とした。
【0169】
このようなポリマー微粒子、及び本発明のマイクロカプセル化色材を含有したインク組成物を用いて、普通紙やインクジェット記録用専用メディア等の記録媒体に記録した場合、インク組成物中の水性媒体が記録媒体中に浸透し、ポリマー粒子及びマイクロカプセル化色材粒子が近づき、ポリマー微粒子同士及び/又はマイクロカプセル化色材粒子の被覆ポリマー同士及び/又はポリマー微粒子とマイクロカプセル化色材粒子の被覆ポリマーが融着して色材粒子を内部へ包み込んだ状態で記録媒体上にポリマーの膜が形成される。これにより、画像の記録媒体への定着性や画像の耐擦性を特に良好にすることができる。
【0170】
さらに、前記ポリマー微粒子がその表面にマイクロカプセル化色材と同種のイオン性基を有している場合は、前記ポリマー微粒子及び本発明のマイクロカプセル化色材がインク組成物中に共存しても凝集することなく、安定に分散できることから好ましい。
【0171】
特に、ポリマー微粒子と本発明のマイクロカプセル化色材とがインク組成物中に共存する場合には、ポリマー微粒子のイオン性基が本発明のマイクロカプセル化色材粒子表面のイオン性基と同種であると、インク組成物中における各粒子の分散安定性を優れたものにできる。
【0172】
このポリマー微粒子の粒子径は、特に体積平均粒子径で50〜200nmの範囲であることが好ましい。ポリマー微粒子の体積平均粒子径が200nmを超えるとインクジェットノズルからのインク組成物の吐出が不安定になりやすい傾向がある。ポリマー微粒子の体積平均粒子径が50nm未満では、ポリマー微粒子の紙への浸透性が高くなり、上述した効果が得られにくくなる。
【0173】
また、このポリマー微粒子は、これを濃度10重量%で水媒体に分散させた水性エマルジョンのテフロン板上での接触角が70°以上であることが好ましい。さらに、ポリマー微粒子を濃度35重量%で水媒体に分散させた水性エマルジョンの表面張力が、40×10−3N/m(40dyne/cm、20℃)以上であることが好ましい。このような特性のポリマー微粒子を用いることによって、インクジェット記録方法においてインク滴の飛行曲がりをさらに有効に防止することができ、良好な画質の画像を印刷することが可能となる。
【0174】
さらに、前記のようなイオン性基を比較的多く表面に有するポリマー微粒子をインク組成物に含有させることにより、より良好な画像の耐擦性及び耐水性を実現できる。その理由は定かではないが、以下の様に考えられる。すなわち、本発明のインク組成物を紙のような記録媒体表面に付着させると、先ずインク組成物中の水及び水溶性有機溶媒が記録媒体へ浸透する。そして、記録媒体の表面近傍に本発明のマイクロカプセル化色材とポリマー微粒子とが残る。この時、このポリマー微粒子表面のイオン性基が、紙繊維を構成するセルロースの水酸基やカルボキシル基と作用して、ポリマー微粒子が紙繊維に強固に吸着する。この紙繊維に吸着したポリマー微粒子の近傍の水及び水溶性有機溶媒はさらに紙内部に浸透し減少していく。
【0175】
さらに、上述のとおり、ポリマー微粒子が成膜性を有することから、記録媒体上で水及び水溶性有機溶剤がマイクロカプセル化色材及びポリマー微粒子の近傍から消失すると、粒子同士が合一し、マイクロカプセル化色材を包み込んでポリマー層が形成され、色材粒子をポリマーで被覆した状態が形成される。このポリマーは、イオン性基によって、より強固に記録媒体表面に結合することができる。ただし、これらは本発明の効果を説明するための仮説である。
【0176】
具体的な前記ポリマー微粒子としては、イオン性基を有する不飽和ビニル単量体に由来する繰り返し単位を少なくとも1〜10重量%含むポリマーからなるものであることが好ましい。さらには、イオン性基を有する不飽和ビニル単量体に由来する繰り返し単位を1〜10重量%含み、かつ重合可能な二重結合を二つ以上有する架橋性単量体によって架橋された構造を有し、この架橋性単量体に由来する構造を0.2〜4重量%含有するポリマーからなるものであることがさらに好ましい。重合の際に重合可能な二重結合を二つ以上、さらに好ましくは三つ以上有する架橋性単量体類を他の重合性モノマーと共重合させてポリマー鎖を架橋し、そのような架橋ポリマーからなるポリマー微粒子をインク組成物に用いることによって、インク組成物によってインクジェット記録装置のノズルプレート表面がさらに濡れ難くなるため、インク滴の飛行曲がりを防止でき、吐出安定性を向上させることができる。
【0177】
本発明のインク組成物に用いるポリマー微粒子としては、粒子全体に均一な構造を有する単粒子構造のものを用いることができる一方、コア部とそれを囲むシェル部とからなるコアシェル構造を有するポリマー微粒子や相分離構造を有するポリマー微粒子を用いることも可能である。前記「コアシェル構造」は、シェル部がコア部を完全に被覆している形態のみならず、コア部の一部を被覆しているものも含む。また、シェル部ポリマーの一部がコア粒子内にドメインなどを形成しているものであってもよい。さらに、コア部とシェル部の中間に、更にもう一層以上、組成の異なる層を含む3層以上の多層構造を持つものであってもよい。
【0178】
本発明において用いるポリマー微粒子は、公知の乳化重合法によって製造することができる。例えば、不飽和ビニル単量体(不飽和ビニルモノマー)を重合開始剤、及び乳化剤を存在させた水中において乳化重合することによってポリマー微粒子を得ることができる。
【0179】
前記不飽和ビニル単量体としては、一般的に乳化重合で用いられるアクリル酸エステル単量体類、メタクリル酸エステル単量体類、芳香族ビニル単量体類、ビニルエステル単量体類、ビニルシアン化合物単量体類、ハロゲン化単量体類、オレフィン単量体類、及びジエン単量体類が挙げられる。さらに、具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、及びグリシジルアクリレート等のアクリル酸エステル類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、及びグリシジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等のビニルシアン化合物類;塩化ビニリデン及び塩化ビニル等のハロゲン化単量体類;スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、及びビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体類;エチレン、プロピレン、及びイソプロピレン等のオレフィン類;ブタジエン及びクロロプレン等のジエン類;並びに、ビニルエーテル、ビニルケトン、及びビニルピロリドン等のビニル単量体類が挙げられる。
【0180】
イオン性基を有する不飽和ビニル単量体としては、スルホン酸基、スルフィン酸基、カルボキシル基、カルボニル基、及びこれらの塩から選択されたアニオン性基を有する不飽和ビニル単量体が挙げられ、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、2−スルホエチルメタクリレート、及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などを例示することができる。また、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド塩、及び2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド塩等のカチオン性基を有する不飽和ビニル単量体も例示できる。
【0181】
さらに、前記単量体に加えて、アクリルアミド類又は水酸基含有ビニル単量体を用いて製造したポリマー微粒子をインク組成物に用いることにより、このインク組成物をインクジェット記録方法に用いた場合に、インクジェットヘッドからのインク組成物の吐出安定性を向上させることができる。前記アクリルアミド類の例としてはアクリルアミド及びN,N’−ジメチルアクリルアミドが挙げられる。また、水酸基含有ビニル単量体の例としては2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、及び2−ヒドロキシプロピルメタクリレートが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0182】
また、前記のように、ポリマー微粒子を構成するポリマーとしては、前記モノマー由来の構造単位が、重合可能な二重結合を二つ以上有する架橋性単量体によって架橋された構造を有するポリマーが好ましい。重合可能な二重結合を二つ以上有する架橋性単量体の例としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロピロキシフェニル)プロパン、及び2,2’−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジアクリレート化合物;トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、及びテトラメチロールメタントリアクリレート等のトリアクリレート化合物;ジトリメチロールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、及びペンタエリスリトールテトラアクリレート等のテトラアクリレート化合物;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のヘキサアクリレート化合物;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリブチレングリコールジメタクリレート、及び2,2’−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジメタクリレート化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート、及びトリメチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート化合物;メチレンビスアクリルアミド;並びに、ジビニルベンゼンが挙げられる。
【0183】
また、コアシェル構造のポリマー微粒子は公知の方法を用いて製造できるが、一般的には多段階の乳化重合などによって製造できる。例えば、特開平4−76004号公報で開示されている方法によって製造することができる。コアシェル構造のポリマー微粒子の製造に用いられる不飽和ビニル単量体としては、上述した不飽和ビニル単量体と同じものが例示できる。
また、ポリマー微粒子を乳化重合する際に用いる重合開始剤、界面活性剤、分子量調整剤、及び中和剤等も前記公知の方法に準じて用いることができる。
【0184】
また、本発明のインク組成物はpH調整剤を含有することができる。色材粒子やポリマー粒子表面がアニオン性基を有する場合には、インク組成物のpHを7〜11、より好ましくは8〜9に調整することが好ましく、pH調整剤としては塩基性化合物を用いることが好ましい。また、色材粒子やポリマー粒子表面がカチオン性基を有する場合には、インク組成物のpHを5〜7、より好ましくは6〜7に調整することが好ましく、pH調整剤としては酸性化合物を用いることが好ましい。
【0185】
pH調整剤として好ましい塩基性化合物は、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸リチウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、フタル酸水素カリウム、及び酒石酸水素カリウムなどのアルカリ金属塩類;アンモニア;並びに、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリイソプロペノールアミン、ブチルジエタノールアミン、モルホリン、及びプロパノールアミンなどのアミン類などが挙げられる。
これらの中でも、水酸化アルカリ化合物又はアミンアルコールをインク組成物に添加すると、アニオン性基を有する顔料粒子のインク中での分散安定性を向上させることができる。
【0186】
また、防カビ、防腐、又は防錆の目的で、安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベンチアゾリン−3−オン〔製品名:プロキセルXL(アビシア社製)〕、及び3,4−イソチアゾリン−3−オン、4、4−ジメチルオキサゾリジン等から選ばれる1種以上の化合物を本発明のインク組成物に添加することができる。
また、インクジェット記録ヘッドのノズルが乾燥することを防止する目的で、尿素、チオ尿素、及びエチレン尿素等なる群から選ばれる少なくとも1種を本発明のインク組成物に添加することもできる。
【0187】
特に好ましい本発明のインク組成物の実施態様の一例は、下記(1)〜(5)の成分を含むものである。
(1)本発明のマイクロカプセル化色材
(2)ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、および炭素数4〜10の1,2−アルキルジオールからなる群から選択される1種以上の化合物(浸透剤)
(3)アセチレングリコール系界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール系界面活性剤
(4)グリセリン
(5)水
【0188】
前記実施態様例において、浸透剤として前記(2)のジエチレングリコールモノブチルエーテル及び/又はトリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いる場合の添加量はインク組成物の全重量に対して、10重量%以下であることが好ましく、0.5〜5重量%であることがさらに好ましい。ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び/又はトリエチレングリコールモノブチルエーテルをインク組成物に添加することにより、インク組成物の記録媒体への浸透性を向上させることができ、印字品質の向上に有効である。また、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び/又はトリエチレングリコールモノブチルエーテルは、アセチレングリコール系の界面活性剤の溶解性を向上させるという効果もある。
【0189】
前記実施態様例において、浸透剤として前記(2)の炭素数4〜10の1,2−アルキルジオールを用いる場合の添加量は、インク組成物の全重量に対して、15重量%以下であることが好ましい。なお、炭素数が3以下の1,2−アルキルジオールを用いた場合、記録媒体に対するインク組成物の充分な浸透性が得られず、炭素数が15を超える1,2−アルキルジオールは水に溶解しにくいので好ましくない。
インク組成物中の1,2−アルキルジオールの量が15重量%を超えると、インク組成物の粘度が増加する傾向があるため好ましくない。
1,2−アルキルジオールとしては、具体的には1,2−ペンタンジオール又は1,2−ヘキサンジオールを用いるのが好ましく、いずれか一方を単独で用いることも、両者を併用することもできる。1,2−ペンタンジオールは、インク組成物の全重量に対して3〜15重量%の範囲で添加するのが好ましい。インク組成物に1,2−ペンタンジオールを3重量%以上添加することにより、良好な浸透性を有するインク組成物が得られる。1,2−ヘキサンジオールは、インク組成物の全重量に対して0.5〜10重量%の範囲で添加するのが好ましく、この範囲において良好な浸透性を有するインク組成物が得られる。
【0190】
また、前記実施態様例のインク組成物をインクジェット記録方法に用いる場合、インクジェットノズルの目詰まりが発生しにくくなるように(目詰まり信頼性の向上するように)、固体湿潤剤をインク組成物の全重量に対して3〜20重量%の割合で含有させることが好ましい。固体保湿剤の添加は、前記実施態様例に限らず、本発明のマイクロカプセル化色材を用いたインク組成物に添加することができる。
【0191】
前記固体湿潤剤とは保水機能を有する常温(25℃)で固体の水溶性物質を言う。好ましい固体湿潤剤は、糖類、糖アルコール類、ヒアルロン酸塩、トリメチロールプロパン、及び1,2,6−ヘキサントリオールである。糖の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類及び四糖類を含む)及び多糖類が挙げられ、好ましくはグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、ソルビット、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、及びマルトトリオースなどが挙げられる。ここで、糖類とは広義の糖を意味し、アルギン酸、α−シクロデキストリン、及びセルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いる。また、これらの糖類の誘導体としては、前記糖類の還元糖(例えば、糖アルコール(一般式HOCH(CHOH)CHOH(ここで、k=2〜5の整数を表す)で表される)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ糖など)が挙げられる。これらのうち特に糖アルコール類が好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビトール、及びキシリトールなどが挙げられる。ヒアルロン酸塩は、ヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液(分子量350000)として市販されているものを使用することができる。特に好ましい固体湿潤剤は、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサトリオール、糖類、及び糖アルコール類である。本発明のインク組成物には、これらのうちの1種又は2種以上の固体湿潤剤を添加することができる。
【0192】
インク組成物に固体湿潤剤を用いることにより、その保水機能によってインクの水分の蒸発を抑えることができるため、インクジェットプリンタのインク組成物流路やインクジェットノズル周辺でインク組成物の粘度が上昇することなく、また、インク組成物の水分蒸発による皮膜の形成も起こりにくくなるため、ノズルの目詰りが起こり難くなる。また、前記の固体湿潤剤は化学的に安定であるため、インク組成物中で分解することもなく、長期にわたってインク組成物の品質を維持することができる。また、インク組成物に前記の固体湿潤剤を添加した場合でも、インク組成物がノズルプレートを濡らすことがなく、インクジェットノズルからインク組成物を安定して吐出することができる。固体保湿剤としてトリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、糖類、及び糖アルコール類から選ばれる化合物を用いた場合に特に優れた前記効果が得られる。
【0193】
本発明のインク組成物中に添加する前記の固体湿潤剤の量はその合計量が、インク組成物の全重量に対して3〜20重量%であることが好ましく、3〜10重量%であることがさらに好ましい。固体湿潤剤を2種以上混合して用いる場合の好ましい組み合わせは、糖類、糖アルコール類、及びヒアルロン酸塩から選ばれる1種以上と、トリメチロールプロパン、及び1,2,6−ヘキサントリオールから選ばれる1種以上との組み合わせである。この組み合わせで固体湿潤剤をインク組成物に添加した場合は、インク組成物の粘度の上昇を抑えることができる。インク組成物中に含まれる固体湿潤剤の量を3重量%以上にすることによって、インクジェットノズルの目詰まりを防止する効果が得られ、インク組成物中に含まれる固体湿潤剤の量を20重量%以下にすることによってインク組成物がインクジェットノズルから安定して吐出できるために充分低い粘度のインク組成物を得ることができる。
【0194】
前記実施態様例においては、インク組成物に(3)のアセチレングリコール系界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール系界面活性剤を添加するが、これら界面活性剤はその合計量がインク組成物の全重量に対して0.01〜10重量%であることが好ましく、0.1〜5重量%であることが特に好ましい。
また、インク組成物中の(1)本発明のマイクロカプセル化色材の含有量は、0.1〜30重量%、特に1〜20重量%であることが好ましく、(4)グリセリンの含有量は1〜30重量%、特に5〜25重量%であることが好ましい。
【0195】
前記実施態様例に示したインク組成物は、特に、色材の分散安定性、及びインクジェット記録方法に用いた場合にインクジェットヘッドノズルからの吐出安定性に優れ、更に、長期にわたって、ノズルの目詰まりもなく、安定した印字が可能である。また、このインク組成物は、普通紙及び再生紙並びにコート紙等の記録媒体に印字したときに、印字後のインクの乾燥性が良好であり、このインク組成物を用いることによって滲みがなく、高い印刷濃度を有し、発色性に優れた高品位の画像を得ることができる。
【0196】
なお、本発明のインクジェット記録方法は上述の本発明のインク組成物の液滴をインクジェットヘッドから吐出し、前記液滴を記録媒体に付着させるものであり、また、該インクジェット記録方法により紙などの印刷媒体に記録することによって本発明の記録物が得られる。
以上、本発明について説明したが、本発明のマイクロカプセル化色材を用いて調製した本発明のインク組成物と、従来公知の色材を用いて調製したインク組成物との間には以下のような違いがある。
【0197】
界面活性剤や高分子分散剤等の分散剤を用いて顔料を分散させた顔料分散液と、前記のアセチレングリコール系界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール系界面活性剤と、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の浸透剤とを用いたインク組成物は、細いインクジェットノズルを通って吐出される際に加えられる強い剪断力によって分散剤が顔料表面から容易に脱離して分散性の劣化をもたらし、吐出が不安定となる傾向がある。これに対して、本発明のインク組成物は、こうした現象が全く認められず、インクジェットノズルを通して長期間安定にインク組成物を吐出することができる。また、本発明のマイクロカプセル化色材粒子は耐溶剤性が良好であるため、前記浸透剤によって色材粒子表面からマイクロカプセル壁材のポリマーが脱離したり、ポリマーが膨潤する等のことが起こりにくく、長期にわたって色材粒子をインク組成物中に安定して分散している状態を保つことができる。
【0198】
また、界面活性剤や高分子分散剤等の分散剤を用いて顔料を分散して得られる顔料分散液を用いるとともに、浸透性を向上させた公知のインク組成物では、一般に、顔料を分散液媒体に分散した当初は分散剤の全てが顔料表面には吸着されるわけではないため、顔料分散液中に溶解している分散剤によってインク組成物の粘度が高くなる傾向や、顔料分散後の時間経過にともない顔料から分散剤が脱離し、この脱離した分散剤によってインク組成物の粘度が高くなる傾向がある。このため、顔料分散液中に含まれる顔料の含有量を高くすることができない場合も多い。顔料含有量が少ない顔料分散液を用いたインク組成物を用いて、特に普通紙や再生紙に印刷した場合は、充分な印刷濃度を得ることができず、画像の良好な発色性が得られないことも多い。これに対して、本発明のマイクロカプセル化色材を用いたインク組成物では、経時的なインク組成物の粘度上昇がきわめて起こりにくい。従って、本発明のマイクロカプセル化色材を用いたインク組成物は、低粘度化が容易であり、色材粒子をより多く含有できるという利点を有し、普通紙や再生紙を印刷媒体として用いた場合でも充分に高い印刷濃度を得ることができる。
【0199】
なお、本発明のインク組成物は、後述の実施例の項に記載される測定方法で測定された粘度が1〜10cP、特に1.5〜5cPとなるように調製されることが好ましい。この粘度が高過ぎると吐出性が低下し、低過ぎると紙への画像形成の際の制御が困難となる。
【0200】
[マイクロカプセル化物]
次に本発明のマイクロカプセル化物について説明する。
本発明のマイクロカプセル化物は、芯物質として色材粒子の代わりに医薬品原体、無機化合物、金属粉、セラミックス、有機化合物、ポリマーを用いる以外は上述した本発明のマイクロカプセル化色材と同様にして製造することができる。
そして、上述のようにして製造された本発明のマイクロカプセル化物は、芯物質を医薬品原体とすると該医薬品原体のカプセル化物は遅効性医薬品とすることができ、芯物質を無機化合物とするカプセル化物は無機有機ハイブリッド(複合)粒子としてそれぞれ有用である。また、ポリマー粒子のマイクロカプセル化物は複合ポリマー粒子として有用であり、異なる物性をもつポリマーを芯物質として用いることにより、これらのハイブリッド化が可能であり、さらにまた、液状物を芯物質としてこれをカプセル化することにより液状物の粉体化が可能となる。
【実施例】
【0201】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0202】
〔合成例1〕:カチオンコポリマーI;ポリ(スチレン−co−2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド)の合成
窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのセパラブルフラスコに、触媒として2,2’−アゾビスイゾブチロニトリル13.9gを仕込み、更に、溶媒として「ソルミックスA−11」(エタノール/メタノール/イソプロピルアルコール=85.5/13.4/1.1の混合溶媒、日本アルコール販売社製)2200.0g、蒸留水330.0g、モノマーとしてスチレン415.0g、「アクリエステルDMC」(2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの80%水溶液、三菱レイヨン株式会社製)442.0gを、連鎖移動剤としてラウリルメルカプタン35.1gを、それぞれ上記のフラスコ内に仕込んだ。このセパラブルフラスコをオイルバスに浸し、バス温度を室温から78℃まで1時間かけて上昇させ、78℃で10時間重合を行った。
【0203】
重合終了後、エバポレーターで重合液を減圧濃縮した後、イソプロパノール/テトラヒドロフラン(1/2:v/v)混合溶媒中に濃縮した重合液を滴下して生成したポリマーを沈殿させた。上澄み液をデカンテーションにより除去し、蒸留水5000.0gを加え混合した後、常圧蒸留により残存有機溶媒を除去しポリマー水溶液を得た。得られたポリマー水溶液を乾燥しポリ(スチレン−co−2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド):カチオンコポリマーIを得た。
【0204】
上記コポリマーの構造は、DMSO(ジメチルスルホキシド)を溶媒としたH−NMRにより確認された。H−NMRにより求められた、コポリマーの中のスチレン単位、2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド単位の組成比は、70:30(モル比)であった。また、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定される数平均分子量(Mn)は13000、分子量分布は1.6であった。
【0205】
〔製造例1〕:カチオンコポリマーIブラック顔料分散液(分散液α)の調製
ブラック顔料(三菱化学(株):カーボンブラック#960)28.0g、合成例1で得られたカチオンコポリマーIの水溶液(固形分20.57重量%)81.7g、及び蒸留水170.0gを混合し、0.5mmφのジルコニアビーズをメディアとして自作のビーズミルを用いて25℃で4時間分散し、ビーズを除いた後、顔料濃度8重量%に調整して分散液Iを得た。
この分散液Iを500mLのトールビーカーに入れ、ビーカーを氷水中に漬け、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所(株);US−600T;使用チップ36mmφ)で40分間分散し、顔料分散液IIを得た。
この分散液IIに対して蒸留水を加えて2倍に希釈した後に、限外濾過により遊離ポリマーを除去した後、濃縮して顔料濃度が8重量%の分散液αを得た。
【0206】
<塩素イオン濃度測定>
蒸留水で10倍に希釈した分散液α10.0gにイオン強度調整剤(Thermo Electron Corporation:Cat.No.940011)0.20gを混合した液を調製し、イオン計(Thermo Orion Corporation:モデル290Aplus)に塩素複合電極(Thermo Electron Corporation:モデル9617)を装着して塩素イオン濃度の測定を行った。
得られた塩素イオン濃度は、0.044mol/Lであった。
【0207】
〔合成例2〕:ランダムコポリマーI;ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−n−ブチルアクリレート−co−スチレン)の合成
内部を窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アソビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)30gを仕込み、溶媒としてテトラヒドロフラン3500.0g、モノマーとしてアクリル酸600.0g、n−ブチルアクリレート600.0g、スチレン400.0gを、それぞれ上記のフラスコ内に仕込んだ。このフラスコをオイルバスに浸し、バス温度を室温から70℃まで1時間かけて上昇させ、70℃で8時間、重合反応を行った。
【0208】
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、水酸化ナトリウム/メタノール溶液で中和後、イソプロピルアルコール中にあけて沈殿を生成させた。沈殿を濾過し、真空乾燥することで、ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−n−ブチルアクリレート−co−スチレン)とアクリル酸ナトリウムの混合物を得た。
【0209】
このポリマーのGPCによって測定された数平均分子量(Mn)は11000、分子量分布は1.6であった。
【0210】
上記ランダムコポリマーとアクリル酸ナトリウムの混合物30.0gを水970.0gに溶解した後、限外濾過により、アクリル酸ナトリウムを除去した。アクリル酸ナトリウム除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固することにより、上記ランダムコポリマーIを得た。
このランダムコポリマーIの構造は、重水を溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められた、ランダムコポリマーIの中のアクリル酸ナトリウム単位、n−ブチルアクリレート単位、スチレン単位の組成比は、47:21:32(モル比)であった。
【0211】
<ランダムコポリマーIのナトリウムイオン濃度測定>
ランダムコポリマーI水溶液(13.6重量%)を蒸留水で10倍に希釈した液10.0gに、イオン強度調整剤(Thermo Orion Corporation:Cat.No.841111)1gを混合した液を調製し、イオン計(Thermo Orion Corporation:モデル290Aplus)にナトリウム複合電極(Thermo Orion Corporation:モデル8611BN ROSS(登録商標))を装着してナトリウムイオン濃度の測定を行った。
得られたナトリウムイオン濃度の値は、0.49mol/Lであった。
【0212】
〔製造例2〕:マイクロカプセル化ブラック顔料分散液(分散液A)の調製
合成例2で得られたランダムコポリマーIの水溶液(13.6重量%)276.3gを蒸留水181.6gで希釈した水溶液を、分散液α300.0gに蒸留水266.7gを加え希釈した分散液にスターラー攪拌しながら滴下し、30分間超音波洗浄器(BRANSONIC社製「5510J−DTH」)で超音波照射した後、さらに10分間スターラー攪拌を行い、分散液A’を得た。
【0213】
スチレンモノマー37.2g、架橋剤ライトエステルTMP(トリメチロールプロパントリメタクリレート、共栄社化学(株))0.39g、開始剤V−65(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、和光純薬工業(株))0.97gを混合して均一溶液となし、該溶液12.6gを、分散液A’450.0gを蒸留水59.7gで希釈した分散液にスターラー攪拌しながら徐々に滴下し、滴下終了後30分間スターラー攪拌を続けた。これを、30分間超音波洗浄器(BRANSONIC 5510J−DTH)で超音波照射した後、超音波分散機(SMT社製「ULTRASONIC HOMOGENIZER UH−600」)にて、氷冷下、5分間処理し、さらに1時間スターラー攪拌を行った。その後、攪拌機、冷却器、温度計を備えた内容積1Lの4つ口フラスコに移し、250rpmで攪拌しながら、窒素気流下60℃にて6時間重合させた。重合終了後、限外濾過により水相中の遊離のランダムコポリマーや余分なイオン等を除去し、更に濃縮した後、水酸化ナトリウム水溶液でpHを8に調整し、顔料濃度が8重量%の分散液Aを得た。
【0214】
〔製造例3〕:マイクロカプセル化ブラック顔料分散液(分散液B)の調製
スチレンモノマー16.9g、架橋剤ライトエステルTMP(共栄社化学(株))0.18g、開始剤V−65(和光純薬工業(株))0.90gを混合して均一溶液となし、該溶液8.7gを、反応性界面活性剤アクアロンHS−10(第一工業製薬(株)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩)に蒸留水を加え不揮発分4.5重量%に希釈した液88.8gに滴下し、10分間スターラー攪拌した。これを、超音波分散機(SMT社製「ULTRASONIC HOMOGENIZER UH−600」)にて、氷冷下、10分間処理することによりエマルションを作製した。
【0215】
合成例2で得られたランダムコポリマーIの水溶液(13.6重量%)78.1gを、分散液α160.0gにスターター攪拌しながら滴下し、30分間超音波洗浄器(BRANSONIC 5510J−DTH)で超音波照射した。さらにスターラー攪拌しながら、先のエマルション94.7gを滴下し、再度30分間超音波洗浄器で処理した。
【0216】
得られた分散液を、攪拌機、冷却器、温度計を備えた内容積1Lの4つ口フラスコに移し、250rpmで攪拌しながら、窒素気流下60℃にて6時間重合させた。重合終了後、限外濾過により水相中の遊離のランダムコポリマーや余分なイオン等を除去し、更に濃縮した後、水酸化ナトリウム水溶液でpHを8に調整し、顔料濃度が8重量%の分散液Bを得た。
【0217】
〔製造例4〕:カチオンコポリマーIブラック顔料分散液(分散液β)の調製
カーボンブラックとして、#960(三菱化学(株))の代わりに#47(三菱化学(株))を用いた以外は、製造例1と同様にして、分散液βを得た。
分散液αと同様な手法で塩素イオン濃度の測定を行った結果、0.037mol/Lという値を得た。
【0218】
〔製造例5〕:マイクロカプセル化ブラック顔料分散液(分散液C)の調製
スチレンモノマー14.1g、架橋剤ライトエステルTMP(共栄社化学(株))0.15g、開始剤V−65(和光純薬工業(株))0.75gを混合して均一溶液となし、該溶液4.5gを、反応性界面活性剤アクアロンHS−10(第一工業製薬(株))に蒸留水を加え7.4重量%に希釈した液45.8gに滴下し、10分間スターラー攪拌した。これを、超音波分散機(SMT社製「ULTRASONIC HOMOGENIZER UH−600」)にて、氷冷下、10分間処理することによりエマルションを作製した。
【0219】
合成例2で得られたランダムコポリマーIの水溶液(13.6重量%)30.6gに蒸留水2.1gを加えて希釈した水溶液を、分散液β80.0gにスターラー攪拌しながら滴下し、30分間超音波洗浄器(BRANSONIC社製「5510J−DTH」)で超音波照射した。さらにスターラー攪拌しながら、先のエマルション47.3gを滴下し、再度30分間超音波洗浄器で処理した。
【0220】
得られた分散液を、攪拌機、冷却器、温度計を備えた内容積1Lの4つ口フラスコに移し、250rpmで攪拌しながら、窒素気流下60℃にて6時間重合させた。重合終了後、限外濾過により水相中の遊離のランダムコポリマー、余分なイオン等を除去し、更に濃縮した後、水酸化ナトリウム水溶液でpHを8に調整し、顔料濃度が8重量%の分散液Cを得た。
【0221】
〔製造例6〕:マイクロカプセル化ブラック顔料分散液(分散液D)の調製
トリフロロエチルメタクリレート(ライトエステルM−3F(共栄社化学(株))9.4g、架橋剤ライトエステルTMP(共栄社化学(株))0.10g、開始剤V−65(和光純薬工業(株))0.50gを混合して均一溶液となし、該溶液4.5gを、合成例2で得られたランダムコポリマーIの水溶液(13.6重量%)33.2gを蒸留水12.5gで希釈した水溶液に滴下し、10分間スターラー攪拌した。これを、超音波分散機(SMT社製「ULTRASONIC HOMOGENIZER UH−600」)にて、氷冷下、10分間処理することによりエマルションを作製した。
【0222】
ランダムコポリマーI水溶液(13.6重量%)36.0gを、分散液α80.0gにスターラー攪拌しながら滴下し、30分間超音波洗浄器(BRANSONIC 5510J−DTH)で超音波照射した。さらにスターラー攪拌しながら、先のエマルション47.3gを滴下し、再度30分間超音波洗浄器で処理した。
得られた分散液を、攪拌機、冷却器、温度計を備えた内容積200mLの4つ口フラスコに移し、250rpmで攪拌しながら、窒素気流下60℃にて6時間重合させた。重合終了後、限外濾過により水相中の遊離のランダムコポリマー、余分なイオン等を除去し、更に濃縮した後、水酸化ナトリウム水溶液でpHを8に調整し、顔料濃度が8重量%の分散液Dを得た。
【0223】
〔合成例3〕:ランダムコポリマーII;ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−2−エチルヘキシルアクリレート)の合成
窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アソビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5.5gを仕込み、更に、溶媒としてテトラヒドロフラン547.0g、モノマーとしてアクリル酸156.0g、2−エチルヘキシルアクリレート244.0gを上記のフラスコ内に仕込んだ。このフラスコをオイルバスに浸し、バス温度を室温から70℃まで1時間かけて上昇させ、70℃で8時間重合を行った。
【0224】
重合終了後、エバポレーターで重合液を濃縮し、アセトニトリル中にポリマーを沈殿させた。その後得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリ(アクリル酸−co−2−エチルヘキシルアクリレート)を得た。次いで、上記ポリ(アクリル酸−co−2−エチルヘキシルアクリレート)200.0gを水600mLに懸濁させた後、水酸化ナトリウム水溶液で中和・溶解し、ポリマー水溶液を得た。得られたポリマー水溶液を乾燥することにより、ランダムコポリマーIIを得た。
【0225】
上記のポリマーの構造は重水を溶媒としたH−NMRにより確認された。H−NMRにより求められた、ランダムコポリマーIIの中のアクリル酸ナトリウム単位、2−エチルヘキシルアクリレート単位の組成比は、42:58(モル比)であった。また、GPCによって測定された数平均分子量(Mn)は7000、分子量分布は1.6であった。
【0226】
〔製造例7〕:マイクロカプセル化ブラック顔料分散液(分散液E)の調製
スチレンモノマー9.4g、架橋剤ライトエステルTMP(共栄社化学(株))0.10g、開始剤V−65(和光純薬工業(株))0.50gを混合して均一溶液となし、該溶液4.4gを、合成例3で得られたランダムコポリマーIIの水溶液(18.8重量%)24.1gを蒸留水21.7gで希釈した水溶液に滴下し、10分間スターラー攪拌した。これを、超音波分散機(SMT社製「ULTRASONIC HOMOGENIZER UH−600」)にて、氷冷下、10分間処理することによりエマルションを作製した。
【0227】
合成例3で得られたランダムコポリマーIIの水溶液(18.8重量%)23.6gに蒸留水9.0gを加えて希釈した水溶液を、分散液α80.0gにスターラー攪拌しながら滴下し、30分間超音波洗浄器(BRANSONIC社製「5510J−DTH」)で超音波照射した。さらにスターラー攪拌しながら、先のエマルション47.3gを滴下し、再度30分間超音波洗浄器で処理した。
【0228】
得られた分散液を、攪拌機、冷却器、温度計を備えた内容積200mLの4つ口フラスコに移し、250rpmで攪拌しながら、窒素気流下60℃にて6時間重合させた。重合終了後、限外濾過により水相中の遊離のランダムコポリマー、余分なイオン等を除去し、更に濃縮した後、水酸化ナトリウム水溶液でpHを8に調整し、顔料濃度が8重量%の分散液Eを得た。
【0229】
〔製造例8〕:マイクロカプセル化ブラック顔料分散液(分散液F)の調製
トリフロロエチルメタクリレート(ライトエステルM−3F(共栄社化学株))9.4g、架橋剤ライトエステルTMP(共栄社化学(株))0.10g、開始剤V−65(和光純薬工業(株))0.50gを混合して均一溶液となし、該溶液4.5gを、合成例3で得られたランダムコポリマーII水溶液(18.8重量%)24.1gを蒸留水21.7gで希釈した水溶液に滴下し、10分間スターラー攪拌した。これを、超音波分散機(SMT社製「ULTRASONIC HOMOGENIZER UH−600」)にて、氷冷下、10分間処理することによりエマルションを作製した。
合成例3で得られたランダムコポリマーIIの水溶液(18.8重量%)23.6gに蒸留水9.0gを加えて希釈した水溶液を、分散液α80.0gにスターラー攪拌しながら滴下し、30分間超音波洗浄器(BRANSONIC社製「5510J−DTH」)で超音波照射した。さらにスターラー攪拌しながら、先のエマルション47.3gを滴下し、再度30分間超音波洗浄器で処理した。
得られた分散液を、攪拌機、冷却器、温度計を備えた内容積200mLの4つ口フラスコに移し、250rpmで攪拌しながら、窒素気流下60℃にて6時間重合させた。重合終了後、限外濾過により水相中の遊離のランダムコポリマー、余分なイオン等を除去し、更に濃縮した後、水酸化ナトリウム水溶液でpHを8に調整し、顔料濃度が8重量%の分散液Fを得た。
【0230】
〔製造例9〕:マイクロカプセル化ブラック顔料分散液(分散液G)の調製
モノマーとしてトリフロロエチルメタクリレートの代わりに、オクタフルオロペンチルアクリレートを用いた以外は製造例8と同様にして、分散液Gを得た。
【0231】
〔実施例1〕
(インク組成物の調製)
以下の処方により、インク組成物を調製した。
分散液A :7.50g
蒸留水 :3.82g
グリセリン :2.10g
トリエチレングリコールモノブチルエーテル :0.15g
1,2−ヘキサンジオール :0.45g
2−ピロリドン :0.38g
トリエチレングリコール :0.30g
トリイソパノールアミン :0.15g
オルフィンE1010(エアプロダクツ社製界面活性剤) :0.15g
【0232】
上記成分を混合し、15分撹拌、30分間超音波分散処理後、孔径8μmのメンブレンフィルター(Millipore:ニトロセルロース製)で濾過し、更に孔径0.45μmのメンブレンフィルター(ADVANTEC:セルロースアセテート製)で濾過し、実施例1のインク組成物を得た。
【0233】
得られた実施例1のインク組成物ないし分散液Aについて、下記(a)〜(h)の特性を以下の試験方法で評価し、結果を表1に示した。
なお、プリンターとして、インクジェット記録方式プリンタ(セイコーエプソン社製「EM−930C」)を用い、印字用紙として市販の普通紙(XEROX社製「4024」)と光沢紙(セイコーエプソン社製光沢紙「KA420PSK」)を用いた。
【0234】
(a)分散粒子の平均粒径
平均粒径の測定は、インク組成物を蒸留水で10000倍に希釈し、大塚電子(株)「FPAR−1000」に希薄系プローブを装着して測定し、平均粒径の値はCumulant法により算出した。また、分散液Aについても同様の測定を実施した。
【0235】
(b)粘度
粘度測定はインク組成物をレオメーター(REOLOGICA AB Insturuments;VAR−100;コーン1°/55φ)を使用して測定を行い、剪断速度100/秒の時の値を読み取った。
【0236】
(c)安定性
インク組成物を70℃で15時間保持した後の平均粒径を上記(a)と同様の方法で測定した。平均粒径の増大が小さいほど安定である。
【0237】
(d)ポリマー被覆量
固形分測定は水分計(ザルトリウス株式会社:MA45)を使用し、分散液Aを180℃で90分間乾燥させた時の残留率を固形分の値とし、顔料(カーボンブラック:CB)とポリマーとの重量割合(CB/ポリマー比)を算出した。
【0238】
(e)吐出安定性
インク組成物を、セイコーエプソン(株)EM−930Cプリンターで、カートリッジに充填した後に、普通紙モードで50枚印字を実施し、かすれ等がないか目視観察し、以下の指標で評価した。
○:かすれなし
△:印刷途中でかすれる
×:画像がきれいに印刷できない
【0239】
(f)記録画像の耐擦過性
インク組成物で印字した光沢紙(セイコーエプソン(株)「KA420PSK」)において、印字直後と1時間後の耐擦過性の試験を以下の指標により行った。
○:指でこすっても色落ちしない
△:指でこすると僅かに色落ちする
×:指でこすると剥げる
【0240】
(g)記録画像の光学濃度(OD値)
インク組成物で印字した普通紙(XEROX社製「4024」)を、1日間室温で乾燥させたものの光学濃度を測定した。光学濃度測定は、マクベス濃度計(Gretag−Macbeth AG:SpectroEye)を用いて行った。
【0241】
(h)記録画像のGloss
インク組成物で印字した光沢紙(セイコーエプソン(株)社製「KA420PSK」)を、1日間室温で乾燥させたもののGlossを測定した。Gloss測定は、Haze−Glossメーター(BYK Gardner社製「Cat.No.4601」)を用いて行い、Gloss値は20°で測定した。
【0242】
〔実施例2〜7〕
実施例1の分散液Aを分散液B〜Gにそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にして実施例2〜7のインク組成物を得た。各分散液及び得られたインク組成物について、実施例1と同様にして前記(a)〜(h)の特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0243】
〔製造例10〕:ランダムコポリマーIブラック顔料分散液(分散液γ)の調製
ブラック顔料(三菱化学(株):カーボンブラック#960)28.0g、合成例2で得られたランダムコポリマーIの水溶液(固形分13.6重量%)205.9g、蒸留水46.1gを混合し、0.5mmφのジルコニアビーズをメディアとして自作のビーズミルを用いて25℃で4時間分散し、ビーズを除いた後、顔料濃度8%に調整して分散液IIIを得た。
分散液IIIを500mLのトールビーカーに入れ、ビーカーを氷水中に漬け、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所(株);US−600T;使用チップ36mmφ)で60分間分散し、顔料分散液IVを得た。
分散液IVに対して蒸留水を加えて2倍に希釈した後に、限外濾過により遊離ポリマーを除去後、濃縮して顔料濃度が8重量%濃度の分散液γを得た。
【0244】
〔比較例1〕
実施例1の分散液Aを前記の分散液γに変更した以外は実施例1と同様にして比較例1のインク組成物を製造した。このインク組成物について、実施例1と同様にして前記(a)〜(h)の特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0245】
〔製造例11〕:ランダムコポリマーIIブラック顔料分散液(分散液δ)の調製
カーボンブラック(三菱化学(株):#960)28.0g、合成例3で得られたランダムコポリマーIIの水溶液(固形分18.8重量%)89.4g、蒸留水162.6gを混合し、0.5mmφのジルコニアビーズをメディアとして自作のビーズミルを用いて25℃で4時間分散し、ビーズを除いた後、顔料濃度8%に調整して分散液Vを得た。
分散液Vを500mLのトールビーカーに入れ、ビーカーを氷水中に漬け、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所(株);US−600T;使用チップ36mmφ)で60分間分散し、分散液δを得た。
【0246】
〔比較例2〕
実施例1の分散液Aを前記の分散液δに変更した以外は実施例1と同様にして比較例2のインク組成物を製造した。分散液δ及びこのインク組成物について、実施例1と同様にして前記(a)〜(h)の特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0247】
〔製造例12〕:マイクロカプセル化ブラック顔料分散液(分散液H)の調製
スチレンモノマー14.1g、架橋剤ライトエステルTMP(共栄社化学(株))0.15g、開始剤V−65(和光純薬工業(株))0.75gを混合して均一溶液となし、該溶液3.37gを製造例11で得られた分散液γ80.0gにスターラー攪拌しながら徐々に滴下し、滴下終了後30分間スターラー攪拌を続けた。これを、30分間超音波洗浄器(BRANSONIC社製「5510J−DTH」)で超音波照射した後、超音波分散機(SMT社製「ULTRASONIC HOMOGENIZER UH−600」)にて、氷冷下、5分間処理し、さらに1時間スターラー攪拌を行った。攪拌機、冷却器、温度計を備えた内容積200mLの4つ口フラスコに移し、250rpmで攪拌しながら、窒素気流下60℃にて6時間重合させた。重合終了後、限外濾過により水相中の遊離のアニオン性ポリマーを除去し、更に濃縮した後、水酸化ナトリウム水溶液でpHを8に調整し、顔料濃度が8重量%の分散液Hを得た。
【0248】
〔比較例3〕
実施例1の分散液Aを前記の分散液Hに変更した以外は実施例1と同様に実施して比較例3のインク組成物を製造した。分散液H及びこのインク組成物について、実施例1と同様にして前記(a)〜(h)の特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0249】
〔製造例13〕:界面活性剤ブラック顔料分散液(分散液ε)の調製
ブラック顔料(三菱化学(株):カーボンブラック#960)28.0g、界面活性剤ネオゲンS−20(第一工業製薬株式会社;有効成分(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩)20重量%)140.0g、蒸留水112.0gを混合し、0.5mmφのジルコニアビーズをメディアとして自作のビーズミルを用いて25℃で4時間分散し、ビーズを除いた後、顔料濃度8%に調整して分散液VIIを得た。
分散液VIIを500mLトールビーカーに入れ、ビーカーを氷水中に漬け、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所(株);US−600T;使用チップ36mmφ)で60分分散し顔料分散液VIIIを得た。
得られた分散液VIIIに対して蒸留水を加えて2倍に希釈した後に、限外濾過により遊離界面活性剤を除去し、更に濃縮した後、水酸化ナトリウム水溶液でpHを8に調整し、顔料濃度が8重量%の分散液εを得た。
【0250】
〔製造例14〕:マイクロカプセル化ブラック顔料分散液(分散液I)の調製
製造例13で得られた分散液ε37.5gに対して、蒸留水217.5gを加え希釈した後に、スチレンモノマー15gを加えた液を1Lのセパラブルフラスコに仕込み、窒素置換後、200rpmで1時間攪拌した後、内温70℃までゆっくりと昇温し、内温70℃に保持しながら、過硫酸カリウムを室温で1時間、200rpmで撹拌した後、重合開始剤としてKPSの0.3gを溶解した水溶液10.0gを添加し、次いでスチレンモノマー30.0gを6時間かけてゆっくりと滴下し、さらに2時間撹拌を継続して重合を行った。重合終了後、水酸化ナトリウム水溶液でpHを8とした後、限外濾過によりポリマー微粒子を除去し、濃縮することにより、顔料濃度が8重量%の分散液Iを得た。
【0251】
〔比較例4〕
実施例1の分散液Aを前記の分散液Iに変更した以外は実施例1と同様に実施して比較例4のインク組成物を製造した。分散液I及びこのインク組成物について、実施例1と同様にして前記(a)〜(h)の特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0252】
【表1】

【0253】
表1より、本発明のマイクロカプセル化色材は分散安定性に優れ、このマイクロカプセル化色材を用いた本発明のインク組成物は吐出安定性、記録画像の印字濃度が高く、また耐擦性、発色性等に優れることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材粒子の表面がポリマーを主成分とする壁材によって被覆されたマイクロカプセル化色材であって、前記ポリマーは、
1)イオン性基を有するポリマーAと、
2)前記ポリマーAが有するイオン性基の電荷とは反対の電荷を有するイオン性基を有するポリマーBと、
3)親水性モノマー、疎水性モノマー及び重合性界面活性剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上から誘導された繰り返し構造単位と
を有することを特徴とするマイクロカプセル化色材。
【請求項2】
前記ポリマーAのイオン性基がカチオン性基であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロカプセル化色材。
【請求項3】
前記色材粒子が水不溶性もしくは水非分散性であることを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロカプセル化色材。
【請求項4】
前記ポリマーAがさらに疎水性基を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のマイクロカプセル化色材。
【請求項5】
前記色材粒子が水溶性もしくは水分散性であることを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロカプセル化色材。
【請求項6】
前記色材粒子が顔料であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のマイクロカプセル化色材。
【請求項7】
(1)水性媒体中において、イオン性基を有するポリマーAを色材粒子表面に吸着させる第1の工程
(2)表面に前記ポリマーAが吸着された色材粒子の水性分散液に、前記ポリマーAが有するイオン性基の電荷とは反対の電荷を有するイオン性基を有するポリマーBを加えて混合する第2の工程
(3)該水性分散液に、親水性モノマー、疎水性モノマー及び重合性界面活性剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上と、重合開始剤とを混合して重合する第3の工程
を含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のマイクロカプセル化色材の製造方法。
【請求項8】
前記第2の工程において、前記水性分散液に添加されたポリマーB全体の解離したイオン性基数の総量が、色材粒子表面に吸着した前記ポリマーA全体の解離したイオン性基数総量より多いことを特徴とする請求項7に記載のマイクロカプセル化色材の製造方法。
【請求項9】
前記第2の工程において、ポリマーBが重合性基を含むことを特徴とする請求項7または8に記載のマイクロカプセル化色材の製造方法。
【請求項10】
前記第3の工程において、疎水性モノマー及び重合性界面活性剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上と、重合開始剤とを均一化した後、前記水性分散液に加えて乳化することを特徴とする請求項7ないし9のいずれか1項に記載のマイクロカプセル化色材の製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のマイクロカプセル化色材を含むことを特徴とするインク組成物。
【請求項12】
請求項11に記載のインク組成物の液滴をインクジェットヘッドから吐出させ、前記液滴を記録媒体に付着させることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項13】
請求項12に記載のインクジェット記録方法を用いた記録物。
【請求項14】
芯物質の表面がポリマーを主成分とする壁材によって被覆されたマイクロカプセル化物であって、前記ポリマーは、
1)イオン性基を有するポリマーAと、
2)前記ポリマーAが有するイオン性基の電荷とは反対の電荷を有するイオン性基を有するポリマーBと、
3)親水性モノマー、疎水性モノマー及び重合性界面活性剤からなる群より選ばれた少なくとも1種又は2種以上から誘導された繰り返し構造単位と
を有することを特徴とするマイクロカプセル化物。

【公開番号】特開2008−150524(P2008−150524A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341459(P2006−341459)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】