説明

マイクロカプセル

【課題】 適度な大きさの粒子を多く含有し、強度、緻密性、耐水性、耐熱性、耐温湿性に優れ、且つ短時間で製造でき安価なマイクロカプセルを提供する。
【解決手段】 本発明のマイクロカプセルは、アニオン性高分子電解質の酸性水溶液中に油性芯物質を乳化分散させた乳化液中で、メラミンとホルムアルデヒドとの初期縮合物の硬化反応により前記油性芯物質の表面に壁膜を形成して得られるマイクロカプセルであって、前記アニオン性高分子電解質が、(1)カルボキシル基及び燐酸エステル基のいずれも含有しない重合性不飽和モノマー(a)と(2)カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(b)と(3)メタクリロイルポリオキシエチレンアシッドフォスフェート(c)等からなる不飽和単量体混合物を水溶液重合して得られる水溶性共重合体であって、該水溶性共重合体のガラス転移温度が70℃以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ樹脂からなる壁膜を有するマイクロカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセルとは、芯物質を微小の球形カプセル内に閉じ込めて、該芯物質を変質させることなく保護しうる構成からなり、その応用時に必要に応じて段階的に開放し(徐放)、またはカプセルを一時に破壊することにより放出して芯物質の本来の性能を発揮せしめるものである。
【0003】
今日、マイクロカプセルの応用範囲は極めて広く、ノーカーボン紙に代表される感圧記録材料、医薬品、農薬除草剤、香料、粘接着剤、食品、洗剤、染料、触媒、酵素、防錆剤等多岐にわたっている。なかでも、ノーカーボン紙は、宅配便や各種伝票類などに使用されるなど産業上の広い分野で多く利用されている。ノーカーボン紙は、上用紙と下用紙の2層の紙面の間にマイクロカプセルが挟まれた構成であって、上用紙に加えられた筆圧でマイクロカプセルが破壊されて、カプセルに内包されている染料が下用紙の上用紙接触面側に塗布された顕色剤と反応して発色する構造を有している。従って、マイクロカプセルとしては、膜壁が緻密で、耐熱性を備え、高温多湿下で経時的変化がなく、紙の摩擦程度では破壊されないが筆圧で破壊可能な程度の強度を有し、発色が良好であることが要求される。
【0004】
マイクロカプセルは、種々の方法で製造することができるが、なかでもin−Situ重合法は、安価で重合反応に特別な触媒が不要で、短時間で簡易にマイクロカプセルを製造可能な点で広く利用されている。in−Situ重合法は、水溶性のアニオン性高分子電解質を乳化分散剤として用い、膜壁を形成するための硬化剤としてメラミン樹脂等のアミノ樹脂を用いる。しかし、従来の方法では、油性芯物質の乳化分散性、膜壁の緻密性等が他の方法より劣るという問題があった。
【0005】
上記問題に対して、特にマイクロカプセルの製造に用いる乳化分散剤の組成について種々の検討がなされている。例えば、特公昭54−16949号公報には、油性芯物質の乳化分散に用いるアニオン性高分子電解質としてエチレン/無水マレイン酸共重合体を用いる方法が開示されている。この方法によれば、油性芯物質の乳化分散性、カプセル膜壁の強度、緻密性が改善されるが、カプセルスラリーの粘度が高く、エチレン/無水マレイン酸樹脂の水への溶解性が悪いため析出するなど作業性に難点があった。
【0006】
特開昭54−49984号公報には、乳化分散剤としてスチレン/無水マレイン酸共重合体を用いる方法が開示されている。この方法は、油性芯物質の乳化分散性が向上し、安定な低粘度のカプセルスラリーを得ることができるが、低pHで水に対する溶解性が乏しいため析出してしまうという欠点があった。
【0007】
特開昭56−51238号公報には、乳化分散剤としてポリスチレンスルホン酸等のスチレンスルホン酸系ポリマーを用いる方法が開示されている。スチレンスルホン酸系ポリマーは、低pHでも安定であるが、乳化分散時(乳化分散スラリー)及びメラミン樹脂硬化時の発泡性が高く、作業性に劣る。例えば、マイクロカプセルを紙などに塗布して利用する際には、紙面上の塗工膜が発泡によりはじかれて、塗工むらが生じやすく商品化が困難であった。
【0008】
特許第2634836号公報には、乳化分散剤としてアクリル酸類と、アクリロニトリルと、アシッドフォスフォオキシポリエチレングリコールメタクリレートとの三元共重合体を用いることにより、疎水性芯物質の乳化分散性及び緻密性が改善されたカプセルを製造でき、低粘度であって最終的に高濃度のカプセルスラリーを形成できることが記載されている。しかし、乳化分散粒子及びマイクロカプセルの粒径が小さいものが多く形成されており、しかも粒子径分布が広く、小さすぎたり大きすぎる粒子が多く含まれるなどの問題があった。このため、得られたマイクロカプセルをノーカーボン紙の材料に用いた場合には、粒子が小さすぎるカプセルは破壊されないため発色性が不足し、破壊できずに残存したカプセルが無駄となり経済性に劣るという問題があった。また、粒子が大きすぎるものも多く、滲みや汚染の原因となっていた。
【0009】
さらに、カプセル製造工程において、前記三元共重合体は疎水性芯物質に対する乳化分散性が弱いため、疎水性芯物質に対する使用割合が少ない場合には乳化分散が困難となり、油が表面に浮いたり、カプセルスラリーが分離してしまう場合もあった。そのため、三元共重合体の使用量を増加させる必要があり、経済性の点で不利であった。
【特許文献1】特公昭54−16949号公報
【特許文献2】特開昭54−49984号公報
【特許文献3】特開昭56−51238号公報
【特許文献4】特許第2634836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、適度な大きさの粒子を多く含有し、強度、緻密性、耐水性、耐熱性、耐温湿性に優れ、且つ短時間で製造でき安価なマイクロカプセルを提供することにある。
本発明の他の目的は、油性芯物質に対するアニオン性高分子電解質の使用割合を低減でき、経済性に優れたマイクロカプセルを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、油性芯物質の乳化分散性が良く、乳化液が安定で、高濃度且つ低粘度のカプセルスラリーを形成しうるアニオン性高分子電解質の原料となるアニオン性高分子電解質用組成物、及び該アニオン性高分子電解質用組成物を用いて製造されるマイクロカプセルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の組成からなるアニオン性高分子電解質を用いることにより、少量の使用で油性芯物質を良好に乳化分散することができ、適度な大きさの粒子を高濃度に含有するマイクロカプセルを得ることができること、さらに、該カプセルの膜壁を特定の樹脂で形成することにより、緻密性、耐水性、耐熱性、耐温湿性を向上しうることを見いだし、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、アニオン性高分子電解質の酸性水溶液中に油性芯物質を乳化分散させた乳化液中で、メラミンとホルムアルデヒドとの初期縮合物の硬化反応により前記油性芯物質の表面に壁膜を形成して得られるマイクロカプセルであって、前記アニオン性高分子電解質が、(1)カルボキシル基及び燐酸エステル基のいずれも含有しない重合性不飽和モノマー(a)と(2)カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(b)と(3)メタクリロイルポリオキシエチレンアシッドフォスフェート(c)及び/又はメタクリロイルポリオキシプロピレンアシッドフォスフェート(d)からなる不飽和単量体混合物を水溶液重合して得られる水溶性共重合体であって、該水溶性共重合体のガラス転移温度が70℃以上であることを特徴とするマイクロカプセルを提供する。
【0013】
前記(1)カルボキシル基及び燐酸エステル基のいずれも含有しない重合性不飽和モノマー(a)は、アルキル基の炭素数1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a−1)、又は前記アルキル基の炭素数1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a−1)と、スチレン系モノマー(a−2)、(メタ)アクリロニトリル(a−3)、アミド結合含有重合性不飽和モノマー(a−4)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(a−5)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(a−6)、水酸基含有重合性不飽和単量体(a−7)、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a−8)及び多官能ビニル基含有重合性不飽和単量体(a−9)からなる群より選択された少なくとも1種のモノマーとの混合モノマーであることが好ましい。
【0014】
前記アニオン性高分子電解質を形成する不飽和単量体混合物は、該不飽和単量体混合物の総量に対して、(1)カルボキシル基及び燐酸エステル基のいずれも含有しない重合性不飽和モノマー(a)を2〜25重量%、(2)カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(b)を60〜95重量%、(3)メタクリロイルポリオキシエチレンアシッドフォスフェート(c)及び/又はメタクリロイルポリオキシプロピレンアシッドフォスフェート(d)を0.5〜15重量%含んでいてもよい。
【0015】
本発明のマイクロカプセルは、油性芯物質100重量部に対してアニオン性高分子電解質を1〜30重量部用いたものであってもよい。
【0016】
本発明は、また、アニオン性高分子電解質の酸性水溶液中に油性芯物質を乳化分散させた乳化液中で、メラミンとホルムアルデヒドとの初期縮合物の硬化反応により前記油性芯物質の表面に壁膜を形成してマイクロカプセルを得る際に用いられるアニオン性高分子電解質を形成するアニオン性高分子電解質組成物であって、(1)アルキル基の炭素数1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a−1)、又は前記アルキル基の炭素数1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a−1)と、スチレン系モノマー(a−2)、(メタ)アクリロニトリル(a−3)、アミド結合含有重合性不飽和モノマー(a−4)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(a−5)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(a−6)、水酸基含有重合性不飽和単量体(a−7)、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a−8)及び多官能ビニル基含有重合性不飽和単量体(a−9)からなる群より選択された少なくとも1種のモノマーとの混合モノマーであるカルボキシル基及び燐酸エステル基のいずれも含有しない重合性不飽和モノマー(a)と、(2)カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(b)と(3)メタクリロイルポリオキシエチレンアシッドフォスフェート(c)及び/又はメタクリロイルポリオキシプロピレンアシッドフォスフェート(d)からなる不飽和単量体混合物で構成され、ガラス転移温度が70℃以上のアニオン性高分子電解質を形成可能なアニオン性高分子電解質組成物を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明において、マイクロカプセルの製造に用いるアニオン性高分子電解質は油性芯物質の乳化分散性が良好であり、乳化液が安定で、高濃度、低粘度のスラリーを形成することができるため、得られるマイクロカプセルは、適度な大きさの粒子を多く含み、強度、緻密性、耐水性、耐熱性、耐温湿性に優れている。また、油性芯物質に対して、アニオン性高分子電解質の使用量を低減させた場合にも安定なカプセルスラリーが得られるため、経済性に優れている。このようなマイクロカプセルによれば、油性芯物質をカプセルに封じた状態で長期間保存することができ、加圧により容易に破壊して油性芯物質を速やかに放出することができる。このため、特に発色性に優れ、滲みなどの汚染がされにくいノーカーボン紙の材料として好適である。
【0018】
なお、本発明おいては、水溶性共重合体のガラス転移温度(Tg)は、水溶性共重合体の重合に用いた単量体不飽和モノマーMi(i=1,2,・・・,i)の各ホモポリマーのガラス転移温度Tgi(i=1,2,・・・,i)と、前記モノマーMiの不飽和単量体混合物中における重量分率Xi(i=1,2,・・・,i)とを、式:1/Tg=Σ(Xi/Tgi) に代入することにより、良好な近似で算出される理論値を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のマイクロカプセルは、アニオン性高分子電解質の酸性水溶液中に油性芯物質を乳化分散させた乳化液中で形成される。
【0020】
前記アニオン性高分子電解質は、(1)カルボキシル基及び燐酸エステル基のいずれも含有しない重合性不飽和モノマー(a)と(2)カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(b)と(3)メタクリロイルポリオキシエチレンアシッドフォスフェート(c)及び又はメタクリロイルポリオキシプロピレンアシッドフォスフェート(d)からなる不飽和単量体混合物を水溶液重合して得られる水溶性共重合体である。
【0021】
カルボキシル基及び燐酸エステル基のいずれも含有しない重合性不飽和モノマー(a)としては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a−1)、スチレン系モノマー(a−2)、(メタ)アクリロニトリル(a−3)、アミド結合含有重合性不飽和モノマー(a−4)、ポリエチレングリコールモノアクリレート(a−5)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(a−6)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−7)、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a−8)、多官能ビニル基含有重合性不飽和モノマー(a−9)、及びこれらを2種以上組み合わせた混合物が挙げられる。
【0022】
アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a−1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの1種又は2種以上が適宜組み合わされ使用される。なかでも、アルキル基の炭素数が1〜10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0023】
スチレン系モノマー(a−2)としては、スチレンのほかに、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。これらのモノマーは1種又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0024】
アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a−1)、スチレン系モノマー(a−2)は、マイクロカプセルの膜壁に良好な硬さと強靱性を付与しうる。また、ポリマーに乳化分散剤として必要な疎水性を付与し、HLB(親水親油バランス)を低下させる効果がある。
【0025】
(メタ)アクリルニトリル(a−3)は、モノマー単独では親水性であるが、重合後はポリマーに高度な疎水性を付与して、HLBを下げる作用がある。さらに、重合体に結晶性を付与し、マイクロカプセルの膜壁成分として強靱で耐熱性を向上させる働きがある。
【0026】
アミド結合含有重合性不飽和モノマー(a−4)としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、α−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、N−ビニルピロリドンなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0027】
アミド結合含有重合性不飽和モノマー(a−4)は、モノマー自体及び重合後のポリマーともに水溶性となり、乳化分散剤としてカルボキシル基含有重合性不飽和単量体(b)を補完する役割を担い、保護コロイドとしての能力に優れる。
【0028】
ポリエチレングリコールモノメタクリレート(a−5)としては、例えば下記式(1)
【化1】

(式中、nは1〜12の整数を示す)
で表される化合物が挙げられる
【0029】
ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(a−6)としては、例えば下記式(2)
【化2】

(式中、nは1〜16の整数を示す)
で表される化合物が挙げられる。
【0030】
ポリエチレングリコールモノメタクリレート(a−5)及びポリプロピレングリコールモノメタクリレート(a−6)は、共重合モノマーとして用いると、ノニオン性の乳化剤成分としての機能を発揮することができる。ノニオン性乳化剤は、系のHLBを調節して、乳化ミセルのサイズを大きくし、粒径が大きい粒子を均一に形成することができる点で、一般に分散粒子の粒子径が小さくなるアニオン性乳化剤より有利である。このように、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(a−5)及び/又はポリプロピレングリコールモノメタクリレート(a−6)が共重合された乳化分散剤は、比較的大きい粒子が高濃度に分布するように制御することができる。また、油性芯物質に対して少ない乳化分散剤の使用比率で安定なマイクロカプセルスラリーを得ることができる。
【0031】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a−7)としては、水酸基を有する不飽和モノマーであれば特に限定されないが、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、ε−カプロラクトン変性アクリルモノマー等の水酸基含有アクリル系モノマーなどが挙げられる。これらは1種または2種以上が組み合わされて使用される。ε−カプロラクトン変性アクリルモノマーとしては、ダイセル化学工業(株)の商品名「プラクセルFA−1」、「プラクセルFA−2」、「プラクセルFA−3」、「プラクセルFA−4」、「プラクセルFA−5」、「プラクセルFM−1」、「プラクセルFM−2」、「プラクセルFM−3」、「プラクセルFM−4」、及び「プラクセルFM−5」などが挙げられる。
【0032】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a−7)は、モノマー、ポリマー共にHLBが大きく親水性が高いため、乳化分散性を向上させる働きがある。また、モノマーに含まれる水酸基部位は、メラミン樹脂との硬化性に富み、マイクロカプセルにおいて強靱な膜壁を形成する働きをする。
【0033】
エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a−8)としては、エポキシ基を含有する不飽和モノマーであれば特に限定されないが、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート(GMA)、グリシジルクロネート、グリシジルアリルエーテル、β−グリシジルメタクリレート、(3,4−エポキシクロロヘキシル)メタクリレート、3−エポキシクロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等が挙げられ、通常はグリシジルメタクリレートが使用される場合が多い。エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a−8)は、特にカルボキシル基との架橋性に富み、メラミン樹脂による硬化を補強して、マイクロカプセルにおいて強靱な膜壁を形成する働きがある。
【0034】
多官能ビニル基含有重合性不飽和単量体(a−9)としては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ネトペンチルギルコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等のジビニル系モノマー;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリビニル系モノマー;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のヘキサビニル系モノマー等が挙げられる。多官能ビニル基含有重合性不飽和単量体(a−9)は、内部架橋性に優れ、マイクロカプセルにおいて硬く、強靱で耐熱性に優れた膜壁を形成する働きをし、メラミン硬化を補完する働きをする。
【0035】
なかでも、カルボキシル基及び燐酸エステル基のいずれも含有しない重合性不飽和モノマー(a)として、アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a−1)単独、又はアルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a−1)と、スチレン系モノマー(a−2)、(メタ)アクリロニトリル(a−3)、アミド結合含有重合性不飽和モノマー(a−4)、ポリエチレングリコールモノアクリレート(a−5)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(a−6)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−7)、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a−8)及び多官能ビニル基含有重合性不飽和モノマー(a−9)からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーとの混合モノマーが好ましく用いられる。
【0036】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a−1)の量は、モノマー(a)の総量に対して、例えば20〜100重量%、好ましくは30〜80重量%、さらに好ましくは40〜70重量%程度である。スチレン系モノマー(a−2)の量は、モノマー(a)の総量に対して、例えば0〜50重量%、好ましくは20〜40重量%、さらに好ましくは25〜35重量%程度である。また、(メタ)アクリロニトリル(a−3)の量は、モノマー(a)の総量に対して、通常0〜80重量%(例えば10〜80重量%)、好ましくは20〜80重量%(例えば20〜75重量%)程度であり、アミド結合含有重合性不飽和モノマー(a−4)の量は、モノマー(a)の総量に対して、通常0〜20重量%(例えば1〜20重量%)、好ましくは0〜10重量%(例えば1〜10重量%)程度である。
【0037】
ポリエチレングリコールモノアクリレート(a−5)の量は、モノマー(a)の総量に対して、通常0.1〜20重量%(例えば0.2〜20重量%)、好ましくは0.2〜10重量%(例えば0.5〜5重量%)程度である。ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(a−6)の量は、モノマー(a)の総量に対して、通常0.1〜20重量%(例えば0.2〜20重量%)、好ましくは0.2〜10重量%(例えば0.5〜5重量%)程度である。水酸基含有重合性不飽和モノマー(a−7)の量は、モノマー(a)の総量に対して、通常0.1〜20重量%(例えば0.2〜20重量%)、好ましくは0.2〜10重量%(例えば0.5〜5重量%)程度である。エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a−8)の量は、モノマー(a)の総量に対して、通常0.1〜10重量%(例えば0.2〜10重量%)、好ましくは0.2〜5重量%程度である。多官能ビニル基含有重合性不飽和モノマー(a−9)の量は、モノマー(a)の総量に対して、通常0〜5重量%(例えば0.1〜5重量%)、好ましくは0.1〜3重量%程度である。
【0038】
カルボキシル基及び燐酸エステル基のいずれも含有しない重合性不飽和モノマー(a)の使用量は、不飽和単量体混合物の総量[=モノマー成分(a)、(b)、(c)及び(d)の総量]に対して、例えば2〜25重量%、好ましくは5〜15重量%である。2重量%未満の場合には、乳化分散剤としての乳化分散力が弱く、乳化粒子の安定性に欠け、マイクロカプセルとしての強度、耐熱性が不足しやすく、25重量%を超える場合には、乳化分散剤としてのバランスが悪く、安定なスラリーが得られにくい。
【0039】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b)としては、カルボキシル基(酸無水物基を含む)と重合性不飽和基を有する単量体であれば特に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、α−エチルアクリル酸、β−エチルアクリル酸、β−プロピルアクリル酸、β−イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、フマール酸、β−カルボキシエチルアクリレート(β−CEA)などが挙げられ、これらは商品名「ライトエステルHOA−MS」(共栄社化学社製)として市販されている。なお、分子内のカルボキシル基は遊離していてもよく、一部又は全部がナトリウム、カリウムなどの金属、アンモニウム、アミンなどの塩を形成していてもよい。
【0040】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b)を共重合に用いると、乳化液の安定性を向上し、油性芯物質を均一に分散することができる。
【0041】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b)の使用量は、不飽和単量体混合物の総量[=モノマー成分(a)、(b)、(c)及び(d)の総量]に対して60〜95重量%、好ましくは65〜90重量%、より好ましくは70〜90重量%であり、特に75〜85重量%であることが好ましい。60重量%未満の場合には、水溶解性が不足するため、マイクロカプセル製造用樹脂組成物として油性芯物質の乳化分散力が弱く、乳化粒子の安定性に欠ける。95重量%を超える場合には、疎水性部分が少なく水溶性が大きすぎるため、乳化分散剤としてのHLBバランスに欠ける。このため、カプセルスラリーが異常に高粘度となったり、分離を起こすなど不安定となりやすい。
【0042】
メタクリロイルポリオキシエチレンアシッドフォスフェート(c)、及びメタクリロイルポリオキシプロピレンアシッドフォスフェート(d)としては、それぞれ下記式(3)
【化3】

(式中、nは1〜12の整数を示す)
、及び下記式(4)
【化4】

(式中、nは1〜16の整数を示す)
で表される化合物が挙げられる。
【0043】
メタクリロイルポリオキシエチレンアシッドフォスフェート(c)及び/又はメタクリロイルポリオキシプロピレンアシッドフォスフェート(d)の使用量(総量)は、不飽和単量体混合物の総量[=モノマー成分(a)、(b)、(c)及び(d)の総量]に対して0.5〜15重量%、好ましくは1〜12重量%である。0.5重量%未満の場合には、乳化分散力が弱く、分散粒子の安定性に欠ける。また、小さすぎたり大きすぎる粒子が形成されやすく、適度な大きさの粒子の割合が低減してしまう。さらに、メラミン樹脂等の硬化剤による硬化速度が遅く、カプセル膜壁の強度が不足する傾向にあるため耐熱性や耐温湿性に欠け、例えば紙基材などに塗布したマイクロカプセルの貯蔵安定性が低く、商品価値の低下を招く。15重量部より多いと、乳化分散が却って悪くなり、凝集や分離を引き起こす場合もある。また、局部的に硬化が進むことにより強度が不均一となり、しかも弱い膜壁となるため不安定なマイクロカプセルになりやすい。
【0044】
本発明では、上記単量体混合物を水溶液重合して得られる水溶性共重合体のガラス転移温度(Tg)が70℃以上、好ましくは80℃以上であるため、乳化分散剤として用いると、カプセル膜壁の硬さ、強度、耐熱性に優れたマイクロカプセルを形成することができる。前記Tgが70℃未満では、カプセル膜壁の硬さ、強度、耐熱性が不足し、例えば、ノ−カーボン紙に塗布して使用する場合、マイクロカプセルの硬さや強度が劣り、発色性が悪く、耐熱性も低下する。Tgの上限は特に限定されないが、例えば130℃程度である。
【0045】
水溶液重合は、前記モノマー成分(a)、(b)、(c)及び(d)の重合性不飽和単量体混合物を水性液中で、ラジカル重合開始剤の存在下、撹拌下に加熱することによって実施できる。反応温度は例えば30〜100℃程度、反応時間は0.5〜10時間程度が好ましい。反応温度の調節は、水を仕込んだ反応容器にモノマー混合液を一括添加又は暫時滴下することによって行うとよい。
【0046】
ラジカル重合開始剤としては、通常アクリル樹脂の乳化重合で使用される公知の開始剤が使用できる。具体的には、水溶性のフリーラジカル重合開始剤として、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素などや、これらの酸化剤と、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等の還元剤との組み合わせからなるいわゆるレドックス系開始剤などが、それぞれ水溶液の形で使用される。上記以外のラジカル重合開始剤として、クメンパーオキサイド、シクロヘキサンパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、メチルエチルケエトンパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリルなどを用いることもできる。
【0047】
上記重合反応により、水溶性共重合体からなるアニオン性高分子電解質を得ることができる。アニオン性高分子電解質の重量平均分子量は、特に限定されないが、一般に1000〜200000程度、好ましくは5000〜100000程度である。前記重量平均分子量は、ラジカル重合開始剤の使用量に応じて適宜調製することができる。
【0048】
本発明では、アニオン性高分子電解質は、水と種々の割合で混合溶解可能であり、該アニオン性高分子電解質を水に溶解し、必要に応じてpHを調整することにより酸性水溶液の形態で利用される。pHの調整に際し、酸性とする場合には、例えば、塩酸、硫酸などの無機酸;ギ酸、酢酸、クエン酸、燐酸などの有機酸等を、アルカリ性とする場合には、例えば、苛性ソーダ等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸ソーダ等のアルカリ金属の炭酸塩などの無機塩基;アミン類、アンモニア水等の有機塩基等の塩基性物質を用いることができる。前記酸性水溶液のpHは、例えば1〜6、好ましくは2〜5程度である。
【0049】
アニオン性高分子電解質の酸性水溶液の固形分濃度(不揮発分)は、例えば10〜40重量%程度である。10重量%未満では、生成カプセルの濃度が低くなり生産効率が悪く、40重量%を超えるとアニオン性高分子電解質の酸性水溶液(樹脂水溶液)の粘度が高くなりすぎてカプセルの分散が悪くなる傾向にあり好ましくない。
【0050】
こうして得られるアニオン性高分子電解質の酸性水溶液は、粘度が例えば50〜1000mPa・s、好ましくは100〜500mPa・s程度である。前記酸性水溶液の粘度が50mPa・s未満では、油性芯物質に対する乳化分散性が弱く、カプセル化工程において凝集や分離が生じやすく、1000mPa・sを超えると、作業性に劣り、得られるカプセルスラリーも高粘度となるため好ましくない。
【0051】
前記粘度は、pH2〜5の条件下、固形分濃度15〜25重量%程度のアニオン性高分子電解質の酸性水溶液について、B型粘度計(60rpm)を用いて23℃で測定した値である。
【0052】
油性芯物質としては、特に限定されないが、例えば、魚油、ラード等の動物油;大豆油、胡麻油、落花生油、亜麻仁油、ひまし油、トウモロコシ油等の植物油;石油、ケロシン、ガソリン、ナフサ、パラフィン、トルエン、キシレン等の鉱物油;ビフェニル化合物、ターフェニル化合物、リン酸化合物、アルキルナフタレン系高沸点溶剤、アルキル置換ジフェニルアルカン、ジフェニルエタン、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、サリチル酸メチルなどの合成油等の油等を利用できる。また、油性芯物質としては、マイクロカプセルの用途、目的に応じて、例えば上記に例示の油に、香料、染料、医薬、農薬、食品、接着剤、触媒、示温剤、顕色剤、防錆剤、洗剤、液晶等を溶解した溶液を用いることもできる。
【0053】
本発明におけるアニオン性高分子電解質は、上記構成を有するため、少量の使用で油性芯物質に対して優れた乳化分散性を発揮することができる。従って、油脂芯物質を乳化分散する際にアニオン性高分子電解質を多量に使用する必要がなく、油が表面に浮いたり、カプセルスラリーが分離してしまうなどの弊害を回避することができる。このようなアニオン性高分子電解質の使用量は、油性芯物質100重量部に対して、好ましくは1〜30重量部、特に好ましくは3〜25重量部程度である。アニオン性高分子電解質の使用量が1重量部未満では、乳化分散力が弱いためカプセル化工程において凝集や分離及び浮きが生じやすく、30重量部を超えると、得られるカプセルスラリーの粘度が高くなったり粒子径が小さくなりやすく、良好なマイクロカプセルが得られにくくなり、また不経済である。また、アニオン性高分子電解質の使用量は、製造過程におけるカプセルスラリーの固形分濃度(不揮発分)、粘度、目的とするマイクロカプセルの粒子径等に応じて適宜選択できる。
【0054】
油性芯物質の乳化分散は、アニオン性高分子電解質の酸性水溶液に油性芯物質を添加した後、pHを例えば2以上、7未満の酸性範囲に保持しつつ、ホモジナイザー等の慣用の撹拌機を用いて強制的に撹拌することにより行われる。撹拌は短時間で行うことが好ましく、例えば、ホモジナイザーを用いて回転速度5000〜10000rpmの高速で、10分程度撹拌する方法により行うことができる。
【0055】
上記アニオン性高分子電解質の酸性水溶液中に油性芯物質を乳化分散させた乳化液中で、メラミンとホルムアルデヒドとの初期縮合物の硬化反応により前記油性芯物質の表面に壁膜を形成してマイクロカプセルが得られる。すなわち、本発明のマイクロカプセルは、前記初期縮合物の硬化物であるメラミン樹脂からなるカプセル膜壁で構成されている。
【0056】
メラミンとホルムアルデヒドとの初期縮合物は、例えば、メラミン、パラホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドからなる混合物や、メチロールメラミン等を出発原料として用いて得ることができる。前記メチロールメラミンは、メラミンとホルムアルデヒドの混合物を弱アルカリ条件下、撹拌、加熱して生成することができ、また、市販品を利用することもできる。
【0057】
メラミンとホルムアルデヒドとの初期縮合物におけるメラミンとホルムアルデヒドとの比率は、前者/後者(モル比)として例えば1〜5、好ましくは1.5〜4,より好ましくは2〜3.5程度から適宜選択される。前記比率は、生成カプセルの緻密性、膜壁強度、耐熱性、粒子径等に大きく影響を与える。
【0058】
メラミンとホルムアルデヒドとの初期縮合物は、pH8〜10程度の弱アルカリ条件下、メラミンとホルムアルデヒド及び/又はパラホルムアルデヒドを加熱、撹拌することによりメチロール化反応を利用して調製できる。得られた初期縮合物(プレポリマー)の安定性、特に低温安定性を向上させるため、上記反応に次いで、pHを酸性側に下げ、反応系中で形成されたプレポリマーと等重量以上のメタノールを添加してメチルエーテル化反応を行い、アルカリで中和後、過剰のメタノールを減圧濃縮して除去することにより、所期の安定なメラミンとホルムアルデヒドとの初期縮合物を得ることも可能である。pHの調整には、上記に例示の酸又は塩基性物質を用いて行うことができる。
【0059】
硬化反応時の系内におけるアニオン性高分子電解質と、メラミンとホルムアルデヒドとの初期縮合物との比率は、前者/後者(重量比)が例えば0.2〜10、好ましくは0.3〜5である。前記比率が小さすぎると、カプセル化で分離、増粘又は凝集が起こりやすく、比率が大きすぎると分散粒子が小さくなりやすく好ましくない。
【0060】
前記メラミンとホルムアルデヒドとの初期縮合物を用いた硬化反応は、弱酸性条件下で、適度な反応速度で進行することができる。このため、硬化を強酸性条件下で行うことによる装置の腐食や、硬化反応が速すぎることにより硬く脆い膜壁が形成される等の問題がなく、硬化反応を容易にコントロールでき、強靱なメラミン樹脂からなるカプセル膜壁を形成することができる。
【0061】
硬化反応は、アニオン性高分子電解質の酸性水溶液に油性芯物質が乳化分散した乳化液と、メラミンとホルムアルデヒドとの初期縮合物を混合した後、例えば60〜90℃程度の温度を維持しつつ、0.5〜5時間程度撹拌することにより行うことができる。前記混合は、乳化液に初期縮合物を添加してもよく、初期縮合物が溶解した溶液に乳化液を添加してもよい。上記反応により、メラミンとホルムアルデヒドとの初期縮合物が硬化して、乳化液中に分散した油性芯物質の表面にメラミン樹脂からなる膜壁が形成される。
【0062】
本発明のマイクロカプセルの大きさは、用途に応じて適宜選択できる。例えば、ノーカーボン紙(感圧記録紙等)の材料に用いる場合には、平均粒子径が例えば3〜10μm、好ましくは4〜7μm、特に好ましくは4.4〜7μm程度である。
【0063】
本発明のマイクロカプセルは、上記構成からなるため、小さすぎたり大きすぎる粒子の割合が少なく、適度な大きさの粒子を高濃度で含む粒子径分布を有している。具体的には、粒子径が1.5μm以下である小粒子群の割合は、マイクロカプセル全体の例えば15%以下、好ましくは10%以下、特に5%以下である。一方、粒子径が8μm以上である大粒子群の割合は、マイクロカプセル全体の例えば20%以下、好ましくは15%以下、特に8%以下である。また、前記小粒子群と大粒子群との割合の合計は、マイクロカプセル全体の例えば40%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは15%以下、特に9%以下である。このように大きさの揃った粒子で構成されているマイクロカプセルは、品質に優れているため、広い分野に好適に利用することができる点で有利である。特に、ノーカーボン紙の材料に用いる場合には、粒子径が1.5μm以下の粒子は筆圧で破壊されずに残存して不経済となり、粒子径が8μm以上の粒子は汚れの原因となるが、本発明のマイクロカプセルはいずれの粒子径の含有量も少ないため、筆圧でカプセルを確実に破壊して、発色性に優れたノーカーボン紙を安価に形成することができる。
【0064】
マイクロカプセルの粒子径分布の調整は、例えば、アニオン性高分子電解質を形成する単量体混合物の種類や使用量、メラミンとホルムアルデヒドの初期縮合物におけるメラミンとホルムアルデヒドの比率等を適宜選択することにより行うことができる。
【0065】
マイクロカプセルは、通常、マイクロカプセルが溶媒中に分散したカプセルスラリーの形態で得られる。この場合、カプセルスラリーの粘度は、例えば50〜2000mPa・s、好ましくは80〜500mPa・s程度である。前記カプセルスラリーの粘度が50mPa・s未満では、沈降しやすくカプセルの形成が困難となり、2000mPa・sを超えると、カプセルの分散が悪く、大きすぎたり小さすぎる粒子が多く生成される点で好ましくない。
【0066】
なお、前記粘度は、B型粘度計(60rpm)を用いて23℃で測定した値である。
【0067】
本発明によれば、油性芯物質の乳化分散性がよく、発泡もなく乳化液が安定で、高濃度且つ低粘度のスラリーを形成できるため、得られるマイクロカプセルは、適度な大きさの粒子を高濃度に有している。このため、強度、緻密性、耐水性、耐熱性、耐温湿性に優れている。さらに、製造工程が簡易であり短時間で上記特性を備えたマイクロカプセルを得ることができる。
【0068】
本発明のマイクロカプセルは、ノーカーボン紙に代表される感圧記録材料、医薬品、農薬徐放剤、香料、粘接着剤、食品、洗剤、染料、触媒、酵素、防錆剤等の広範な分野で利用することができる。
【0069】
本発明のマイクロカプセルは、特に、膜壁が緻密で、耐熱性を備え、高温多湿下で経時的変化がなく、しかも筆圧で容易に破壊しうる程度の大きさの粒子が多く分布している点で、ノーカーボン紙の原料として好適である。ノーカーボン紙は、マイクロカプセルの分散液(カプセルスラリー)を、ロールコーター、カーテンロールコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、グラビアコーターなどの慣用のコーターを用いて、紙などの支持体上に塗布することにより製造できる。本発明のマイクロカプセルを用いることにより、紙の摩擦程度では破壊されないが筆圧で破壊可能な程度の強度を有し、良好な発色を呈するノーカーボン紙を製造することができる。
【実施例】
【0070】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、「部」は「重量部」を示しており、粘度は、B型粘度計を用いて23℃で測定した値を示し、Tgは、上記式より算出した理論値を示している。実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。
【0071】
調製例1
(アニオン性高分子電解質の合成)
撹拌機、滴下ロート、還流冷却器及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水730部を仕込み、撹拌しながら60℃まで昇温した。一方、アクリル酸(AA:80重量%濃度溶液)310部、メタクリル酸(MAA)13部、メチルメタクリレート(MMA)33部、及びメタクリロイルポリオキシエチレン(6モル)アシッドフォスフェート20部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製、商品名「ブレンマーPE−30」)5部からなる重合性不飽和単量体をイオン交換水300部に均一に溶解して重合性不飽和単量体水溶液を調製し、該水溶液を滴下ロートに入れ、そのうち10%を反応容器に添加した。次に、反応容器の内部温度(内温)を75℃まで上げ、過硫酸カリウム(ラジカル重合開始剤)3部とイオン交換水10部とを反応容器に添加し、反応溶液の内温80℃で10分間反応した。次に、前記重合性不飽和単量体水溶液の残り90%を反応溶液の内温83〜85℃で3時間かけて滴下した。他方、過硫酸カリウム2部をイオン交換水60部に溶解して過硫酸カリウム水溶液を調製し、該水溶液を別の滴下ロートに入れ、重合性不飽和単量体水溶液の滴下開始1時間後から2時間30分かけて滴下した。過硫酸カリウム水溶液の滴下終了後、83〜85℃で1時間熟成反応を行った。その後、反応容器を40℃以下まで冷却し、苛性ソーダ15部をイオン交換水90部に溶解してアニオン性高分子電解質の酸性水溶液を添加した。
【0072】
得られたアニオン性高分子電解質の酸性水溶液の不揮発分(固形分濃度)は21.3%、粘度は380mPa・s、pHは3.8、Tgは106℃であった。
【0073】
調整例2
(メラミンホルムアルデヒド初期縮合物の合成)
撹拌機、還流冷却器及び温度計を備えた反応容器に、37重量%濃度ホルムアルデヒド240部、メラミン180部、92重量%濃度パラホルムアルデヒド60部を投入し、撹拌しつつ80℃まで昇温した。80℃に保持して30分間撹拌して付加反応(メチロール化反応)を行った後、メタノール720部と10重量%塩酸7部を投入し、60℃で撹拌しつつメタノール変性反応を行った。反応中、ピペットでサンプリングした反応物を大量の水(バケツに入れた水)に添加した際に白濁した時点を反応の終点と判断し(約1時間)、その後、20重量%濃度苛性ソーダ水溶液3部を投入した。冷却後、減圧下で反応混合物からメタノールと水を除去し、不揮発分が75%になるまで濃縮して製品とした。
【0074】
得られたメラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液の不揮発分は75.2%、粘度は1700mPa・s、pHは8.9であった。
【0075】
調製例3
(アニオン性高分子電解質の合成)
調製例1において、重合性不飽和単量体混合物を構成するモノマーのうち、AA310部、MAA13部の代わりにAA(80重量%溶液)326部を用い、イオン交換水を297部を用いた点以外は、調製例1と同様の方法によりアニオン性高分子電解質の酸性水溶液を得た。得られたアニオン性高分子電解質の酸性水溶液の不揮発分は21.15、粘度は380mPa・s、pH3.5、Tgは105℃であった。
【0076】
調製例4
(アニオン性高分子電解質の合成)
調製例1において、重合性不飽和単量体混合物を構成するモノマーのうち、MMA33部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート5部の代わりに、MMA30部、グリシジルメタクリレート(GMA)8部を用いた点以外は、調製例1と同様の方法によりアニオン性高分子電解質の酸性水溶液を得た。得られたアニオン性高分子電解質の酸性水溶液の不揮発分は21.1%、粘度は360mPa・s、pH3.7、Tgは105℃であった。
【0077】
調製例5
(アニオン性高分子電解質の合成)
調製例1において、重合性不飽和単量体混合物を構成するモノマーのうち、メタクリロイルポリオキシエチレン(6モル)アシッドフォスフェート20部の代わりに、メタクリロイルポリオキシプロピレン(6モル)アシッドフォスフェート20部を用いた点以外は、調製例1と同様の方法によりアニオン性高分子電解質の酸性水溶液を得た。得られたアニオン性高分子電解質の酸性水溶液の不揮発分は21.2%、粘度は250mPa・s、pH3.6、Tgは106℃であった。
【0078】
調製例6
(アニオン性高分子電解質の合成)
調製例1において、重合性不飽和単量体混合物を構成するモノマーのうち、MMA33部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート5部の代わりに、MMA20部、エチルアクリレート(EA)18部を用いた点以外は、調製例1と同様の方法によりアニオン性高分子電解質の酸性水溶液を得た。得られたアニオン性高分子電解質の酸性水溶液の不揮発分は21.2%、粘度は260mPa・s、pH3.5、Tgは96℃であった。
【0079】
調製例7
(アニオン性高分子電解質の合成)
調製例1において、重合性不飽和単量体混合物を構成するモノマーのうち、MMA33部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート5部の代わりに、MMA20部、ブチルアクリレート(BA)18部を用いた点以外は、調製例1と同様の方法によりアニオン性高分子電解質の酸性水溶液を得た。得られたアニオン性高分子電解質の酸性水溶液の不揮発分は21.0%、粘度は240mPa・s、pH3.6、Tgは92℃であった。
【0080】
調製例8
(アニオン性高分子電解質の合成)
調製例1において、重合性不飽和単量体混合物を構成するモノマーのうち、MMA33部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート5部の代わりに、MMA10部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)10部、BA18部を用いた点以外は、調製例1と同様の方法によりアニオン性高分子電解質の酸性水溶液を得た。得られたアニオン性高分子電解質の酸性水溶液の不揮発分は22.2%、粘度は280mPa・s、pH3.5、Tgは90℃であった。
【0081】
調製例9
調製例1において、重合性不飽和単量体混合物を構成するモノマーのうち、MMA33部、メタクリロイルポリオキシエチレン(6モル)アシッドフォスフェート20部の代わりに、MMA53部を用いた点以外は、調製例1と同様の方法によりアニオン性高分子電解質の酸性水溶液を得た。得られたアニオン性高分子電解質の酸性水溶液の不揮発分は21.1%、粘度は360mPa・s、pH3.9、Tgは106℃であった。
【0082】
調製例10
(アニオン性高分子電解質の合成)
調製例1において、重合性不飽和単量体混合物を構成するモノマーのうち、MAA13部、MMA33部、メタクリロイルポリオキシエチレン(6モル)アシッドフォスフェート20部の代わりに、MMA66部のみを用いた点以外は、調製例1と同様の方法によりアニオン性高分子電解質の酸性水溶液を得た。得られたアニオン性高分子電解質の酸性水溶液の不揮発分は21.2%、粘度は120mPa・s、pH3.3、Tgは110℃であった。
【0083】
調製例11
(アニオン性高分子電解質の合成)
調製例1において、重合性不飽和単量体混合物を構成するモノマーのうち、MAA13部、MMA33部、メタクリロイルポリオキシエチレン(6モル)アシッドフォスフェート20部の代わりに、MMA6部、メタクリロイルポリオキシエチレン(6モル)アシッドフォスフェート60部を用いた点以外は、調製例1と同様の方法によりアニオン性高分子電解質の酸性水溶液を得た。得られたアニオン性高分子電解質の酸性水溶液の不揮発分は21.3%、粘度は220mPa・s、pH3.6、Tgは105℃であった。
【0084】
調製例12
(アニオン性高分子電解質の合成)
調製例1において、重合性不飽和単量体混合物を構成するモノマーのうち、AA310部、MMA33部の代わりに、AA290部、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)53部を用いた点以外は、調製例1と同様の方法によりアニオン性高分子電解質の酸性水溶液を得た。得られたアニオン性高分子電解質の酸性水溶液の不揮発分は21.1%、粘度は420mPa・s、pH3.8、Tgは61℃であった。
【0085】
実施例1
クリスタルバイオレットラクトン(CVL)13部をアルキルジフェニルエタン(商品名「ハイゾール SAS−296」、日本石油化学(株)製)260部に加え、撹拌しつつ90℃で10分間加熱溶解した後、冷却して油性芯物質を調製した。一方、調製例1
で得たアニオン性高分子電解質の酸性水溶液130部、水220部、10重量%苛性ソーダ水溶液15部、及び前記油性芯物質を別の容器に入れ、混合し、ホモジナイザー(特殊機化工業(株)製)を用いて回転数9000rpmで3分間乳化した。得られたO/W型乳化液の平均粒子径は5.3μmであった。次いで、この乳化液に、調製例2で得たメラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液70部をイオン交換水200部に溶解した溶液を添加し、80℃まで昇温して、80℃に保持しつつ2時間撹拌を続けた。その後、40℃以下まで冷却し、10重量%苛性ソーダ水溶液80部を投入し、撹拌、混合した後120メッシュのネットで濾過した。
【0086】
得られたマイクロカプセルスラリーの平均粒子径は5.3μm、粘度は160mPa・sであった。尚、マイクロカプセル作製時の各工程において、異常な粘度上昇や発泡は全くなく、良好なマイクロカプセルスラリーが得られた。
【0087】
実施例2
実施例1において、調製例1のアニオン性高分子電解質の酸性水溶液の代わりに、調製例3のアニオン性高分子電解質の酸性水溶液を用いた点以外は実施例1と同様の方法によりマイクロカプセルスラリーを得た。得られたマイクロカプセルスラリーの平均粒子径は5.3μm、粘度は180mPa・sであった。尚、マクロカプセル作製時の各工程において、異常な粘度上昇や発泡は全くなく、良好なマイクロカプセルスラリーが得られた。
【0088】
実施例3
実施例1において、調製例1のアニオン性高分子電解質の酸性水溶液の代わりに、調製例4のアニオン性高分子電解質の酸性水溶液を用いた点以外は実施例1と同様の方法によりマイクロカプセルスラリーを得た。得られたマイクロカプセルスラリーの平均粒子径は5.0μm、粘度は140mPa・sであった。尚、マクロカプセル作製時の各工程において、異常な粘度上昇や発泡は全くなく、良好なマイクロカプセルスラリーが得られた。
【0089】
実施例4
実施例1において、調製例1のアニオン性高分子電解質の酸性水溶液の代わりに、調製例5のアニオン性高分子電解質の酸性水溶液を用いた点以外は実施例1と同様の方法によりマイクロカプセルスラリーを得た。得られたマイクロカプセルスラリーの平均粒子径は5.1μm、粘度は130mPa・sであった。尚、マクロカプセル作製時の各工程において、異常な粘度上昇や発泡は全くなく、良好なマイクロカプセルスラリーが得られた。
【0090】
実施例5
実施例1において、調製例1のアニオン性高分子電解質の酸性水溶液の代わりに、調製例6のアニオン性高分子電解質の酸性水溶液を用いた点以外は実施例1と同様の方法によりマイクロカプセルスラリーを得た。得られたマイクロカプセルスラリーの平均粒子径は5.1μm、粘度は140mPa・sであった。尚、マクロカプセル作製時の各工程において、異常な粘度上昇や発泡は全くなく、良好なマイクロカプセルスラリーが得られた。
【0091】
実施例6
実施例1において、調製例1のアニオン性高分子電解質の酸性水溶液の代わりに、調製例7のアニオン性高分子電解質の酸性水溶液を用いた点以外は実施例1と同様の方法によりマイクロカプセルスラリーを得た。得られたマイクロカプセルスラリーの平均粒子径は5.2μm、粘度は160mPa・sであった。尚、マクロカプセル作製時の各工程において、異常な粘度上昇や発泡は全くなく、良好なマイクロカプセルスラリーが得られた。
【0092】
実施例7
実施例1において、調製例1のアニオン性高分子電解質の酸性水溶液の代わりに、調製例8のアニオン性高分子電解質の酸性水溶液を用いた点以外は実施例1と同様の方法によりマイクロカプセルスラリーを得た。得られたマイクロカプセルスラリーの平均粒子径は5.0μm、粘度は180mPa・sであった。尚、マクロカプセル作製時の各工程において、異常な粘度上昇や発泡は全くなく、良好なマイクロカプセルスラリーが得られた。
【0093】
比較例1
実施例1において、調製例1のアニオン性高分子電解質の酸性水溶液の代わりに、調製例9のアニオン性高分子電解質の酸性水溶液を用いた点以外は実施例1と同様の方法によりマイクロカプセルスラリーを得た。得られたマイクロカプセルスラリーの平均粒子径は7.4μm、粘度は2140mPa・sであった。マイクロカプセル製造中に、異常発泡と増粘が起こり、得られたマクロカプセルスラリーには凝集物が多く含まれ、一部油が表面に分離していた。
【0094】
比較例2
実施例1において、調製例1のアニオン性高分子電解質の酸性水溶液の代わりに、調製例10のアニオン性高分子電解質の酸性水溶液を用いた点以外は実施例1と同様の操作を行ったが、マクロカプセル製造時に乳化分散ができず、二層分離してしまい、マイクロカプセルを得ることができなかった。
【0095】
比較例3
実施例1において、調製例1のアニオン性高分子電解質の酸性水溶液の代わりに、調製例11のアニオン性高分子電解質の酸性水溶液を用いた点以外は実施例1と同様の操作を行ったが、マクロカプセル製造時に乳化分散ができず、二層分離してしまい、マイクロカプセルを得ることができなかった。
【0096】
比較例4
実施例1において、調製例1のアニオン性高分子電解質の酸性水溶液の代わりに、調製例12のアニオン性高分子電解質の酸性水溶液を用いた点以外は実施例1と同様の方法によりマイクロカプセルスラリーを得た。得られたマイクロカプセルスラリーの平均粒子径は3.8μm、粘度は1860mPa・sであった。マイクロカプセル製造中に、異常発泡はなかったが、増粘が起こり、カプセル化率が悪く、得られたマイクロカプセルには小さい粒子が多く分布していた。
【0097】
(評価試験)
平均粒子径と分布
実施例及び比較例で得たマイクロカプセルの粒子径を、島津SALD−2000J[島津製作所(株)製]を用いて測定し、平均粒子径を算出した。さらに、粒子径が1.5μm以下である小粒子群と、粒子径が8μm以上である大粒子群とに分け、各群の粒子数を数えて全粒子数に対する比率を算出した。結果を表1に示す。
【0098】
粘度
実施例及び比較例で得たマイクロカプセルスラリーについて、B型粘度計(60rpm)を用いて23℃における粘度を測定した。
【0099】
カプセル化率
実施例及び比較例で得たマイクロカプセルスラリーを、市販のノーカーボン紙用下用紙に、0.05mmのアプリケーケーターで塗布し、常温で乾燥後、下用紙の汚れ程度により測定した。
【0100】
発色性
実施例及び比較例で得たマイクロカプセルスラリーについて、マイクロカプセルスラリー33重量部に、小麦粉澱粉7重量部を水60重量部に溶解した溶液を加え、坪量40g/m2の原紙に#10のコーティングバーで塗布し、110℃で3分間乾燥することによりノーカーボン紙上用紙を作成した。この上用紙を市販の下用紙と重ね合わせてタイプライターにて印字し、発色性を評価した。
【0101】
耐汚れ性
実施例及び比較例で得たマイクロカプセルスラリーを用いて、発色性試験用と同様の方法で上用紙を作成し、市販の下用紙と重ね合わせ、約1.5kg/cm2の静圧を加え、下用紙顕色剤面の発色汚れを評価した。
【0102】
耐温湿性
実施例及び比較例で得たマイクロカプセルスラリーを、市販のノーカーボン紙用下用紙の片面に、0.05mmのアプリケータで塗布し、常温で乾燥して作成した塗工紙を、50℃、相対湿度80%の恒温恒湿器中に1ヶ月間放置後、表面の汚れ具合を評価した。
【0103】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性高分子電解質の酸性水溶液中に油性芯物質を乳化分散させた乳化液中で、メラミンとホルムアルデヒドとの初期縮合物の硬化反応により前記油性芯物質の表面に壁膜を形成して得られるマイクロカプセルであって、前記アニオン性高分子電解質が、(1)カルボキシル基及び燐酸エステル基のいずれも含有しない重合性不飽和モノマー(a)と(2)カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(b)と(3)メタクリロイルポリオキシエチレンアシッドフォスフェート(c)及び/又はメタクリロイルポリオキシプロピレンアシッドフォスフェート(d)からなる不飽和単量体混合物を水溶液重合して得られる水溶性共重合体であって、該水溶性共重合体のガラス転移温度が70℃以上であることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項2】
アニオン性高分子電解質を形成する不飽和単量体混合物が、該不飽和単量体混合物の総量に対して、(1)カルボキシル基及び燐酸エステル基のいずれも含有しない重合性不飽和モノマー(a)を2〜25重量%、(2)カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(b)を60〜95重量%、(3)メタクリロイルポリオキシエチレンアシッドフォスフェート(c)及び/又はメタクリロイルポリオキシプロピレンアシッドフォスフェート(d)を0.5〜15重量%含んでいる請求項1記載のマイクロカプセル。
【請求項3】
油性芯物質100重量部に対してアニオン性高分子電解質を1〜30重量部用いる請求項1記載のマイクロカプセル。
【請求項4】
前記(1)カルボキシル基及び燐酸エステル基のいずれも含有しない重合性不飽和モノマー(a)が、アルキル基の炭素数1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a−1)、又は前記アルキル基の炭素数1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a−1)と、スチレン系モノマー(a−2)、(メタ)アクリロニトリル(a−3)、アミド結合含有重合性不飽和モノマー(a−4)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(a−5)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(a−6)、水酸基含有重合性不飽和単量体(a−7)、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a−8)及び多官能ビニル基含有重合性不飽和単量体(a−9)からなる群より選択された少なくとも1種のモノマーとの混合モノマーである請求項1〜3の何れかの項に記載のマイクロカプセル。
【請求項5】
アニオン性高分子電解質の酸性水溶液中に油性芯物質を乳化分散させた乳化液中で、メラミンとホルムアルデヒドとの初期縮合物の硬化反応により前記油性芯物質の表面に壁膜を形成してマイクロカプセルを得る際に用いられるアニオン性高分子電解質を形成するアニオン性高分子電解質組成物であって、(1)アルキル基の炭素数1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a−1)、又は前記アルキル基の炭素数1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a−1)と、スチレン系モノマー(a−2)、(メタ)アクリロニトリル(a−3)、アミド結合含有重合性不飽和モノマー(a−4)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(a−5)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(a−6)、水酸基含有重合性不飽和単量体(a−7)、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a−8)及び多官能ビニル基含有重合性不飽和単量体(a−9)からなる群より選択された少なくとも1種のモノマーとの混合モノマーであるカルボキシル基及び燐酸エステル基のいずれも含有しない重合性不飽和モノマー(a)と、(2)カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(b)と(3)メタクリロイルポリオキシエチレンアシッドフォスフェート(c)及び/又はメタクリロイルポリオキシプロピレンアシッドフォスフェート(d)からなる不飽和単量体混合物で構成され、ガラス転移温度が70℃以上のアニオン性高分子電解質を形成可能なアニオン性高分子電解質組成物。

【公開番号】特開2006−167655(P2006−167655A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−366170(P2004−366170)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】