説明

マイクロカプセル

フレグランスのコアおよびアミノプラストポリマーのシェルを含むマイクロカプセルであって、シェルの組成が、50〜90%、好ましくは60〜85%のターポリマーおよび10〜50%、好ましくは10〜25%のポリマー安定剤を含む75〜100%の熱硬化性樹脂であり;ターポリマーが:(a)20〜60%、好ましくは30〜50%の、少なくとも1種のポリアミン由来の部分、(b)3〜50%、好ましくは5〜25%の、少なくとも1種の芳香族ポリオール由来の部分;ならびに(c)20〜70%、好ましくは40〜60%の、1〜6個のメチレン単位、好ましくは1〜4個のメチレン単位および最も好ましくは1個のメチレン単位を有するアルキレンまたはアルキレンオキシ部分を含み;マイクロカプセルがさらに任意に、25%まで、好ましくは10%までのカチオン性ポリマーを含む、前記マイクロカプセル。当該マイクロカプセルは、種々の製品、例えばランドリー製品および衣類仕上げ用製品において香料を保存し、散布するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗剤およびコンディショナーのような消費者製品において用いることが意図され、特に機械的破損および/または熱である外部の刺激に応答して時間の経過に伴う成分の活性化および拡散を制御することができる、マイクロカプセル封入された成分、例えばフレグランス、香味料、悪臭中和剤、プロフレグランス(pro-fragrance)またはこれらの混合物を含む、安定であり、水分散可能であり、帯電しており、かつ高度に布地直接性の(fabric-substantive)マイクロカプセルを含む液体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
成分、例えばフレグランス、殺虫剤、悪臭中和物質、殺真菌剤および殺かび剤などが、これらをこれらの周辺の環境から保護し、これらの制御放出のための手段として作用する固体のシェルまたは膜を含むマイクロカプセル中にカプセル封入され得ることは、周知である。このようなカプセル剤を生産する、代表的な好都合な方法は、成分を液体中に分散させ、小滴の表面上にポリマー膜を作成することからなる。好適なプロセスの例には、ゼラチンのアラビアゴムとの単純な、および複雑なコアセルベーション、続いてグルタルアルデヒドでの架橋結合が含まれる。より一般的には、特定の条件の下で不溶性複合体を形成することができる多くのポリマーまたはポリマーの混合物を用いて、このような界面膜をいわゆるポリマー相分離プロセスにより形成することができる。
【0003】
あるいはまた、界面膜を、種々のコモノマーおよびマクロマの重縮合によって製造することができる。尿素とホルムアルデヒド(UF)とが重縮合して、メラミン(2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン)とホルムアルデヒド(MF)とが重縮合して、いわゆるアミノプラストマイクロカプセルを形成することは、これらのプロセスの中で最も代表的であり、これにより高度に架橋した樹脂(また熱硬化性樹脂とも知られている)からなるシェルが得られる。ベンゾグアナミンおよびホルムアルデヒドをベースとする、またグリコールウリルおよびホルムアルデヒドをベースとするアミノプラスト熱硬化性樹脂は、コーティング産業において用いられる。他方、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド類などのシェルを有するマイクロカプセルもまた、周知であるが、これらの後者の材料の大部分は、熱硬化性樹脂から由来するものよりも、可塑化および漏出しやすい。
【0004】
これらの確立したプロセスにより、本質的に、カプセル封入されるべき成分および連続水相を含む分散油相からなるエマルジョンが、膜により包囲されるコアからなる固体ビーズの懸濁液に変換され、この透過性は、多数の要因に依存し、これには架橋の程度および/または前記膜の厚さが含まれる。
【0005】
フレグランスに適用するときには、これらのマイクロカプセルは典型的に、マイクロカプセルが圧力または摩擦の作用により破壊されるときに、ある時点において驚異的な感覚的効果、例えば増大した香料強度または影響を発生するために用いられる。この方略が、いわゆる「こすると芳香が発生する」系において用いられる。任意に、これらを、液体消費者製品において、カプセル封入されていない香料と共に用いてもよい。
【0006】
しかし、消費者製品において用いるときには、これらのカプセルは一般的に、特に高温にて長期間保管した後に、重大な安定性の問題、例えば浸透圧の影響の下での壁の断裂または界面活性剤および製品基剤中に存在する外部のカプセル封入されていない香料の複合作用による香料の抽出などを有する。これにより、香料の損失がもたらされる。これを、種々の手段、例えば壁の架橋結合密度を上昇させること、またはコーティングをこれに適用することによりマイクロカプセルの壁を補強することによって、回避することができる。しかし、これにより一般的に、マイクロカプセルを破壊するのに必要な負荷の増加がもたらされ、この結果カプセル封入された香料の放出がより困難になる。
【0007】
当該技術分野において遭遇する他の問題は、特に酸性の条件における遊離ホルムアルデヒドの存在またはホルムアルデヒドの発生である。ホルムアルデヒドは極めて望ましくない物質であり、この放出は最小限でなければならず、好ましくは存在してはならない。
【0008】
所望の目的は、外部のカプセル封入されていないフレグランスとマイクロカプセル封入されたフレグランスとの両方を有する製品であり、後者は、強度および品質において前者とは異なる。カプセルは、高レベルの界面活性剤および塩類を含む水性消費者製品中で長期間にわたり十分に安定でなければならず、しかし高温にて長期間保管した後でさえも、軽度の機械的応力、例えば衣服を折りたたみ、身に着け、着用し、脱ぐにあたり遭遇するものを受けたときに、これらが種々の嗅覚的印象の発散を提供することができる好適に高い程度の脆さを有していなければならない。他の所望の目的は、遊離した新生のホルムアルデヒドのレベルが低下した製品である。
【発明の概要】
【0009】
上記の必要条件をほぼすべて満たす、ポリオール部分、特に芳香族ポリオール部分を含むメラミンホルムアルデヒドアミノプラストターポリマーを含むマイクロカプセルを調製することが可能であることが、見出された。したがって、フレグランスのコアおよびアミノプラストポリマーのシェルを含むマイクロカプセルを提供し、シェルの組成は、50〜90%、好ましくは60〜85%のターポリマーおよび10〜50%、好ましくは10〜25%のポリマー安定剤を含む75〜100%の熱硬化性樹脂であり、ターポリマーは、
【0010】
(a)20〜60%、好ましくは30〜50%の、少なくとも1種のポリアミン由来の部分、
(b)3〜50%、好ましくは5〜25%の、少なくとも1種の芳香族ポリオール由来の部分、ならびに
(c)20〜70%、好ましくは40〜60%の、1〜6個のメチレン単位、好ましくは1〜4個のメチレン単位および最も好ましくは1個のメチレン単位、ジメトキシメチレンおよびジメトキシメチレンを有するアルキレンおよびアルキレンオキシ部分からなる群から選択された部分
を含み、
マイクロカプセルはさらに任意に、25%まで、好ましくは10%までのカチオン性ポリマーを含む。
【0011】
本明細書中で、他に特に述べない限り、すべての百分率は重量パーセントである。
【0012】
「部分」により、ターポリマーの一部であり、特定の分子由来の化学的構成要素を意味する。上記のターポリマーは、上記の部分を含む任意のターポリマーであり得、これを、当該技術分野において知られている多くの好適な方法のいずれによっても調製することができる。好適なポリアミン部分の例には、尿素、メラミン、3−置換1,5−ジアミノ−2,4,6−トリアジンおよびグリコウリル(glycouril)由来のものが含まれるが、これらには限定されない。好適な芳香族ポリオール部分の例には、フェノール、3,5−ジヒドロキシトルエン、ビスフェノールA、レゾルシノール、ヒドロキノン、キシレノール、多価ナフタレンならびにセルロースおよびフミン酸の分解によって生成するポリフェノール類由来のものが含まれるが、これらには限定されない。
【0013】
用語「由来の」を用いることは、必ずしもターポリマー中の部分が当該物質自体から直接由来することを意味するわけではないが、そうである場合がある(そして、しばしばそうである)。実際、ターポリマーを調製するより好都合な方法の1つには、アルキロール化(alkylolated)ポリアミン類を出発物質として用いることが含まれる;これらは、単一の分子中で前述の部分(a)と(c)との両方を組み合わせる。
【0014】
好適なアルキロール化ポリアミン類には、同様に1〜6個のメチレン単位を有するアルコール類で部分的にアルキル化され得るモノまたはポリアルキロール化ポリアミン類の混合物が包含される。特に本発明に適するアルキル化ポリアミン類には、モノおよびポリメチロール尿素プレ縮合物(pre-condensate)、例えば登録商標URAC(Cytec Technology Corp.販売)の下で商業的に入手できるもの、および/または部分的にメチル化されたモノおよびポリメチロール−1,3,5−トリアミノ−2,4,6−トリアジンプレ縮合物、例えば登録商標CYMEL(Cytec Technology Corp. 販売)またはLURACOLL(BASF販売)の下で商業的に入手できるもの、および/またはモノおよびポリアルキロール−ベンゾグアナミンプレ縮合物、および/またはモノおよびポリアルキロール−グリコウリルプレ縮合物が含まれる。これらのアルキロール化ポリアミン類は、典型的に1〜6個のメチレン単位を有する短鎖アルコール類を加えることによって得られる、部分的にアルキル化された形態において提供され得る。これらの部分的にアルキル化された形態は、保管中、反応性が比較的低く、したがってより安定であることが知られている。好ましいポリアルキロール−ポリアミン類は、ポリメチロール−メラミンおよびポリメチロール−1−(3,5−ジヒドロキシ−メチルベンジル)−3,5−トリアミノ−2,4,6−トリアジンである。
【0015】
あるいはまた、ポリ[N−(2,2−ジメトキシ−1−ヒドロキシ)]ポリアミン類を用いることができ、これには、ジ−[N−(2,2−ジメトキシ−1−ヒドロキシ)]尿素、トリ−[N−(2,2−ジメトキシ−1−ヒドロキシ)]メラミン、テトラ−[N−(2,2−ジメトキシ−1−ヒドロキシ)]グリコウリルおよびジ−[N−(2,2−ジメトキシ−1−ヒドロキシ)]ベンゾグアニジンが含まれる。
【0016】
ポリマー安定剤は、マイクロカプセルが凝集するのを防止し、したがって保護コロイドとして作用する。これを、重合前にモノマー混合物に加え、この結果、これがポリマーによって部分的に保持され、この間他の部分は連続相中に通過する。
【0017】
好適なポリマー安定剤の特定の例には、スルホン酸塩基を保有するアクリル系コポリマー、例えば登録商標LUPASOL(BASF販売)、例えばLUPASOL PA 140またはLUPASOL VFRの下で商業的に入手できるもの;アクリルアミドおよびアクリル酸のコポリマー、アルキルアクリレートおよびN−ビニルピロリドンのコポリマー、例えば登録商標Luviskol(例えばLUVISKOL K 15、K 30またはK 90、BASF販売)の下で入手できるもの;ポリカルボン酸ナトリウム(Polyscience Inc.販売)またはポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウム(Polyscience Inc.販売);ビニルおよびメチルビニルエーテル−無水マレイン酸コポリマー(例えばAGRIMER(登録商標)、VEMA(登録商標)、AN、ISP販売)およびエチレン、イソブチレンまたはスチレン−無水マレイン酸コポリマーが含まれる。したがって、好ましいポリマー安定剤は、アニオン性高分子電解質である。
【0018】
任意に、マイクロカプセルはカチオン性ポリマーで被覆されていてもよい。カチオン性ポリマーは、マイクロカプセルによって発生する負の電荷の部分的な、もしくは完全な中和、またはさらに負に荷電したマイクロカプセルの正に荷電したマイクロカプセルへの変換をも可能にする。
【0019】
好ましいカチオン性ポリマーは、カチオン性セルロース誘導体、例えば登録商標UCARE(Amerchol販売)の下で入手できるもの、四級化ゴム、例えば登録商標JAGUAR(Rhodia販売)の下で入手できる四級化グアーガム、ポリエチレンイミン、例えば登録商標LUPASOL(BASF販売)の下で商業的に入手できるもの、カチオン性ポリアクリレート類およびアクリルアミド類、ゼラチンおよび四級化タンパク質加水分解物、ならびに四級化アミノシリコーン類を含む。
【0020】
用いることができる他のカチオン性化合物には、すべてが複数の第四アンモニウム基を有するポリクオタニウムの集合、ポリマー種、例えば塩化ジアリルジメチルアンモニウム/アクリルアミドポリマー、例えば登録商標MERQUAT(Nalco販売)の下で入手できるもの、ならびにビニルピロリドンおよび四級化ジメチルアミノアルキルメタクリレートのコポリマー、例えば登録商標GAFQUAT HS 50およびHS 100(ISP販売)の下で入手できるものが含まれる。
【0021】
上記のタイプのマイクロカプセルは、水性スラリーの形態で提供され、典型的に20〜50%の固形分、より典型的には30〜45%の固形分を有し、ここで用語「固形分」は、マイクロカプセルの合計重量を表す。マイクロカプセルの平均の大きさは、1マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲内にあり得、またはさらに、マイクロカプセル形成の間に系に加えられる混合剪断応力に依存する。最も適切なマイクロカプセルの大きさの範囲およびサイズ分布の選択は、想定される用途に依存する。マイクロカプセルをランドリー製品において用いるべきである場合には、20〜60マイクロメートルの範囲内の大きさを有するマイクロカプセルは、小さい、ないし中程度の剪断応力で摩擦したときに、堆積および嗅覚的影響に関して最適な性能を提供することが、見出された。従来技術が好ましくはこのような用途のために20マイクロメートルより小さい大きさを有するマイクロカプセルをクレームしているため、これは驚異的な発見である。
【0022】
スラリーは、配合助剤、例えば安定化および粘性制御親水コロイド、殺生物剤および追加のホルムアルデヒドスカベンジャーを含んでいてもよい。
【0023】
典型的に、親水コロイドを用いて、凝固、沈降およびクリーミングに対するスラリーのコロイド安定性を改善する。用語「親水コロイド」は、アニオン性、カチオン性、両性イオン性または非イオン性特徴を有する広範囲の群の水溶性または水分散性ポリマーを表す。本発明のために有用な親水コロイドは、以下のものを包含する:ポリ炭水化物(polycarbohydrate)、例えばデンプン、改質デンプン、デキストリン、マルトデキストリンおよびセルロース誘導体、およびこれらの四級化形態;天然ゴム、例えばアルギン酸エステル類、カラギーナン、キサンタン、寒天、ペクチン、ペクチン酸および天然ゴム、例えばアラビアゴム、トラガカントゴムおよびカラヤゴム、グアーガムおよび四級化グアーガム;ゼラチン、タンパク質加水分解物およびこれらの四級化形態;合成ポリマーおよびコポリマー、例えばポリ(ビニルピロリドン−コ−酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール−コ−酢酸ビニル)、ポリ((メタ)アクリル酸)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(アルキル(メタ)アクリレート−コ−(メタ)アクリル酸)、ポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)コポリマー、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリ(ビニルエーテル−コ−無水マレイン酸)など、およびポリ−(エチレンイミン)、ポリ((メタ)アクリルアミド)、ポリ(アルキレンオキシド−コ−ジメチルシロキサン)、ポリ(アミノジメチルシロキサン)など、およびこれらの四級化形態。
【0024】
典型的なホルムアルデヒドスカベンジャーは、遊離ホルムアルデヒドを水性媒体中で結合させることができる化合物、例えば亜硫酸ナトリウム、メラミン、グリシンおよびカルボヒドラジンを含む。しかし、マイクロカプセルが低いpHを有する製品、例えば衣類仕上げ用コンディショナーにおいて用いることを目的としているときには、ホルムアルデヒドスカベンジャーを、好ましくはベータジケトン類、例えばベータケトエステル類から、または1,3−ジオール類、例えばプロピレングリコールから選択する。好ましいベータケトエステル類は、マロン酸アルキル類、アセト酢酸アルキル類およびアセト酢酸ポリビニルアルコール類を含む。
【0025】
本発明のマイクロカプセルはさらに、15%より低い、好ましくは10%より低い、最も好ましくは5%より低い、名目上のシェル対コアの質量比により特徴づけられる。したがって、マイクロカプセルは、極めて薄く、壊れやすいシェルを有していてもよい。
【0026】
シェル対コアの比率は、予め水で洗浄し、濾過により分離した、カプセル封入された香油マイクロカプセルの有効量を測定することにより、得られる。これを、マイクロ波で強調された溶媒抽出による湿潤マイクロカプセルケークの抽出および抽出物のその後のガスクロマトグラフィー分析により、達成する。
【0027】
従来技術のアミノプラストマイクロカプセルと比較して、本発明のマイクロカプセルは、多数の予想外の利点を示す。これらには、以下のものが含まれる:
・酸性媒体中での顕著に低いレベルの平衡ホルムアルデヒドレベル、
・従来は、カプセル封入が知られている方法によっては困難であったかまたはさらに不可能であったフレグランス組成物を含む場合であったよりもはるかに広範囲のフレグランス組成物に適合する能力、
【0028】
・これらのマイクロカプセルの調製には、従来のマイクロカプセルにおいて必要であったよりもはるかに少量の前述のアルキロール化ポリアミン出発物質が必要である。マイクロカプセルには、通常カプセル封入(カプセル封入を行う前に提供された、カプセル封入されたフレグランス対フレグランス全体の比率として定義される)の同一の収量を得るのに必要であるアルキロール化ポリアミン出発物質の40%未満が必要である。これは、系中の残留する、および平衡の遊離ホルムアルデヒドの濃度を低下させることに顕著に寄与する、
【0029】
・安定なマイクロカプセルを構成することが必要であるシェル材料の合計量は、顕著に減少し、これにより、従来達成可能であったよりも薄いカプセル壁およびはるかに良好な脆さの安定性に対するバランスがもたらされる。これにより、マイクロカプセル壁の極めて小さい厚さと比較して、驚異的に高い香料保持がもたらされる、
・マイクロカプセルは、外部のカプセル封入されていないフレグランスによる可塑化の傾向がはるかに低い、
【0030】
・マイクロカプセルは、カプセル封入された物質のみの質量の減少を基準として、予想されるよりもはるかに低い残留または平衡遊離ホルムアルデヒドの濃度を示す。これは、樹脂の未反応のメチロール基のより良好な中和およびより好ましい重縮合平衡定数を暗示する。この利点は、ランドリー製品、具体的には粉末、液体洗剤および液体衣類柔軟剤に高度に適する本発明のマイクロカプセルを作成するための補助となる、
【0031】
・マイクロカプセルを、衣類仕上げ用コンディショナーにおいて、綿、ポリエステルおよび他の布地に対してこれらの持続性を妨げずに、アニオン性形態で、即ちいかなるカチオン性コーティングをも伴わずに、用いることができる。これは、従来技術から予想され得ない驚異的な結果である。
【0032】
本発明のマイクロカプセルスラリーはさらに、帯電したマイクロカプセルを放出することができ、これは、脱イオン水中に分散させたときに、0.1mV〜100mVの範囲内の絶対ゼータ電位により特徴づけられる。
【0033】
「ゼータ電位」(ζ)により、特定の測定手法により測定して、溶液中のすべての帯電した目的物により発生した見かけの静電電位を意味する。理論的な基礎の詳細な討議およびゼータ電位の実際的な関連を、例えば、“Zeta Potential in Colloid Sciences” (Robert. J. Hunter; Academic Press, London 1981, 1988)中に見出すことができる。目的物のゼータ電位を、当該目的物の表面からある程度の距離にて測定し、これは一般的に、表面自体における静電電位とは等しくなく、これより低い。しかし、この数値により、溶液、例えば界面活性剤、高分子電解質および表面中に存在する他の目的物との静電的相互作用を確立する目的物の能力の好適な基準が得られる。
【0034】
ゼータ電位は相対的な測定値であり、この数値はこれを測定する方法に依存する。本発明の場合において、マイクロカプセルのゼータ電位を、ZetaPALS機器(Brookhaven Instruments Corporation販売)を用いて、いわゆる位相解析光散乱法により測定する。所定の目的物のゼータ電位はまた、溶液中に存在するイオンの量に依存し得る。本出願において特定するゼータ電位の値を、帯電したマイクロカプセルの対イオンのみが存在する脱イオン水中、または他の荷電種が存在する洗液(wash liquor)中のいずれかで測定する。
【0035】
「絶対ゼータ電位」(|ζ|)により、この(正の、または負の)符号を参照しないゼータ電位の絶対値を意味する。したがって、−10mVのゼータ電位を有する負に帯電した目的物および+10mVのゼータ電位を有する正に帯電した種は、同一の絶対ゼータ電位を有する。
【0036】
特定の態様において、上記のマイクロカプセルを用いる組成物は、衣類仕上げ用コンディショナー用のマイクロカプセルを送達するこの能力によって特徴づけられており、マイクロカプセルは、脱イオン水中に分散するときには、−0.1mV〜−100mVの範囲内の負のゼータ電位を有する。
【0037】
マイクロカプセルは、高度に壊れやすく、これにより、60マイクロメートルの直径を有するマイクロカプセルについて9mNを上回らない、また35マイクロメートルの直径を有するマイクロカプセルについて3mNを上回らない通常の破裂力の作用の下で、カプセル封入された香料を破壊し、放出する、本発明の乾燥マイクロカプセルの能力を意味し、これは、6×10MPaより高くない破裂圧力に相当する。典型的に、本発明のマイクロカプセルの破裂圧力は、1〜10Mpa、好ましくは4〜7MPaを超えない。破裂力と破裂圧力との両方を、種々の方法、例えば例3に記載するナノインデンテーション試験または浸透圧破壊試験により測定してもよい。これらの前述の力は、折りたたみ、身に着け、着用し、または脱ぐときに衣服に一般に加えられるものを表す。
【0038】
「乾燥マイクロカプセル」により、通常の乾燥条件、例えばライン乾燥(line drying)または回転式乾燥機による乾燥(tumble drying)の間に一般的であるものに付されたマイクロカプセルを意味する。
【0039】
液体、水性衣類仕上げ用コンディショナーにおいて用いるためのマイクロカプセルは、本発明の特定の態様を構成し、以下の段階に従うことにより得られる:
1.アルキロール化ポリアミンまたはポリ[N−(2,2−ジメトキシ−1−ヒドロキシ)]ポリアミンプレ縮合物およびポリマー安定剤を脱イオン水に、適度な剪断混合の下で加え、溶解すること、
1A.任意に上記混合物を85℃にて90分間加熱すること、
【0040】
2.香油を上記の溶液に加え、系を中程度ないし高い剪断混合の下で乳化し、これによりミキサーの撹拌速度および配置を、所望の平均のマイクロカプセルの大きさの範囲およびマイクロカプセルのサイズ分布の関数として定義すること、
【0041】
3.1〜3時間の持続時間にわたり、ギ酸を加えることによりpHを3〜4.5の範囲内に調整し、温度を30〜45℃の範囲に調整し、この間同一の撹拌速度を保持すること、
4.段階3を行う間に、段階3の開始時もしくは終了時のいずれか、または連続的に、または段階3の間に段階的に、芳香族ポリオールを反応媒体に加えること。
【0042】
5.1〜5時間の持続時間にわたり混合物を50〜90℃まで加熱すること。
5A.ステップ5を行う間、任意に芳香族ポリオールを反応混合物に加えること、
6.系を室温に冷却すること。
【0043】
本発明の典型的な組成物において、ターポリマーを生成する反応媒体に加える香油の典型的な量は、全混合物の20〜50重量%、好ましくは30〜40重量%、最も好ましくは35〜40重量%である。マイクロカプセル封入において封入される他の成分の組成範囲を、38重量%の名目上の香料濃度について以下に示す。しかし、この名目上の香油濃度を変更することには他の成分の濃度を最適化することが必要であることは、いずれの当業者にも明らかである。
【0044】
したがって、38重量%の名目上の香油濃度のために、反応媒体の組成は、好ましくは以下の通りである:
・1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%および最も好ましくは3〜4重量%のアルキロール化ポリアミン類、
・0.1〜3重量%、好ましくは0.3〜2重量%および最も好ましくは0.5〜1.5重量%の芳香族ポリオール類、
・0.1〜3重量%、好ましくは0.3〜2重量%および最も好ましくは0.5〜1.5重量%の安定化ポリマー。
残りは水である。
【0045】
本発明の組成物において用いるためのフレグランス物質を、天然産物、例えばエッセンシャルオイル、アブソリュート、樹脂性物質、樹脂、凝結物、ならびに合成香水成分、例えば炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エーテル類、酸類、アセタール類、ケタール類およびニトリル類(飽和および不飽和化合物、脂肪族、炭素環式および複素環式化合物、または上記のすべての前駆体を含む)から選択してもよい。用いてもよい着臭剤組成物の他の例は、H 1468 (United States Statutory Invention Registration)中に記載されている。
【0046】
好ましいフレグランス成分の例は、以下のものから選択されるフレグランスのいずれかである。Agrumex、Aldron、Ambrettolide、Ambroxan、ケイ皮酸ベンジル、サリチル酸ベンジル、Boisambrene、セドロール、酢酸セドリル、Celestolide/Crysolide、Cetalox、シトロネリルエトキサレート、Fixal、Fixolide、Galaxolide、Guaiacwood Acetate、サリチル酸シス−3−ヘキセニル、ヘキシルケイ皮アルデヒド、サリチル酸ヘキシル、Iso E Super、安息香酸リナリル、ケイ皮酸リナリル、フェニル酢酸リナリル、Javanol、メチルセドリルケトン、Moskene、Musk、Musk Ketone、Musk Tibetine、Musk Xylol、Myraldyl Acetate、酢酸ネロリジル、Novalide、Okoumal、カプリル酸パラクレシル、フェニル酢酸パラクレシル、Phantolid、ケイ皮酸フェニルエチル、サリチル酸フェニルエチル、Rose Crystals、Rosone、Sandela、テトラデカニトリル、Thibetolide、
【0047】
Traseolide、Trimofix O、2−メチルピラジン、アセトアルデヒドフェニルエチルプロピルアセタール、アセトフェノン、アルコールC6(以下において、表記法Cnは、n個の炭素原子および1つのヒドロキシル官能を有するすべての物質を含む)、アルコールC8、アルデヒドC6(以下において、表記法Cnは、n個の炭素原子および1つのアルデヒド官能を有するすべての異性体を包含する)、アルデヒドC7、アルデヒドC8、アルデヒドC9、ノネニルアルデヒド(nonenylic aldehyde)、グリコール酸アリルアミル、カプロン酸アリル、酪酸アミル、アルデヒドアニシック(anisique)、ベンズアルデヒド、酢酸ベンジル、ベンジルアセトン、ベンジルアルコール、酪酸ベンジル、ギ酸ベンジル、イソ吉草酸ベンジル、
【0048】
ベンジルメチルエーテル、プロピオン酸ベンジル、Bergamyl Acetate、酢酸ブチル、樟脳、3−メチル−5−プロピル−2−シクロヘキセノン、ケイ皮アルデヒド、シス−3−ヘキセノール、酢酸シス−3−ヘキセニル、ギ酸シス−3−ヘキセニル、イソ酪酸シス−3−ヘキセニル、プロピオン酸シス−3−ヘキセニル、チグリン酸シス−3−ヘキセニル、シトロネラール、シトロネロール、シトロネリルニトリル、2−ヒドロキシ−3−メチル−2−シクロペンテン−1−オン、クミンアルデヒド、シクラールC、酢酸(シクロヘキシルオキシ)−2−プロペニルエステル、ダマセノン、アルファ−ダマスコン、ベータ−ダマスコン、ギ酸デカヒドロベータ−ナフチル、マロン酸ジエチル、ジヒドロジャスモン、ジヒドロリナロール、ジヒドロミルセノール、
【0049】
ジヒドロテルピネオール、アントラニル酸ジメチル、ジメチルベンジルカルビノール、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、ジメチルオクテノン、ジメトール(Dimetol)、ジミルセトール、エストラゴール、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、安息香酸エチル、ヘプタン酸エチル、エチルリナロール、サリチル酸エチル、酪酸エチル2−メチル、オイカリプトール、オイゲノール、酢酸フェンキル、フェンキルアルコール、4−フェニル−2,4,6−トリメチル1,3−ジオキサン、2−オクチン酸メチル、4−イソプロピルシクロヘキサノール、2−sec−ブチルシクロヘキサノン、酢酸スチルアリル、ゲラニルニトリル、酢酸ヘキシル、アルファ−イオノン、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、イソ−シクロシトラール、ジヒドロイソジャスモン、イソ−メントン、イソ−ペンチレート、イソ−プレゴール、
【0050】
シスジャスモン、左旋性カルボン、フェニルアセトアルデヒドグリセリルアセタール、カルビン(carbinic)酸3−ヘキセニルメチルエーテル、1−メチル−シクロヘキサ−1,3−ジエン、リナロール、リナロールオキシド、ペンタン酸2−エチルエチルエステル、2,6−ジメチル−5−ヘプテナール、メントール、メントン、メチルアセトフェノン、メチルアミルケトン、安息香酸メチル、アルファ−メチルケイ皮アルデヒド、メチルヘプテノン、メチルヘキシルケトン、メチルパラクレゾール、酢酸メチルフェニル、サリチル酸メチル、ネラール、ネロール、4−tert−ペンチル−シクロヘキサノン、パラ−クレゾール、酢酸パラ−クレシル、パラ−t−ブチルシクロヘキサノン、
【0051】
パラ−トルイルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、酢酸フェニルエチル、フェニルエチルアルコール、酪酸フェニルエチル、ギ酸フェニルエチル、イソ酪酸フェニルエチル、プロピオン酸フェニルエチル、酢酸フェニルプロピル、フェニルプロピルアルデヒド、テトラヒドロ−2,4−ジメチル−4−ペンチル−フラン、4−メチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)テトラヒドロピラン、5−メチル−3−ヘプタノンオキシム、プロピオン酸スチルアリル、スチレン、4−メチルフェニルアセトアルデヒド、テルピネオール、テルピノレン、テトラヒドロ−リナロール、テトラヒドロ−ミルセノール、トランス−2−ヘキセナール、酢酸ベルジルおよびViridine。
【0052】
本発明の好ましい態様において、カプセル封入されたフレグランスは、10Pa ppmより高い、最も好ましくは10Pa ppmより高い損失係数を有するフレグランス成分を少なくとも70重量%含む。用語「損失係数」は、乾燥の間のフレグランス物質の損失に関連するパラメータを表し、純粋な成分の蒸気圧(Pa)と室温における水溶性(ppm)との積として定義される。商業的に入手できるフレグランス成分についての蒸気圧および水溶性のデータは、周知であり、したがって所定のフレグランス成分についての損失係数を、容易に計算することができる。あるいはまた、蒸気圧および水溶性の測定を、当該分野における周知技術を用いて容易に行うことができる。
【0053】
フレグランス成分の蒸気圧を、任意の既知の定量的ヘッドスペース分析技術を用いて測定してもよい。例えば、Mueller and Lamparsky in Perfumes: Art, Science and Technology, 第6章、“The Measurement of Odors”、176〜179頁(Elsevier 1991)を参照。フレグランスの水溶性を、水に難溶性の物質を測定するために当該分野において知られている技術によって測定してもよい。好ましい技術は、フレグランス成分を水に溶解した飽和溶液の生成を伴う。透析膜(dialysed membrane)を有する管を溶液中に配置して、平衡の後に、理想化された溶液が管内に生成するようにする。管を取り外し、この中の水溶液を好適な有機溶媒で抽出して、フレグランス成分を取り出すことができる。最後に、例えばガスクロマトグラフィーを用いて、抽出したフレグランス成分を濃縮し、測定することができる。フレグランスを測定する他の方法は、Gygax et al, Chimia 55 (2001) 401-405中に開示されている。
【0054】
高い損失係数を有する好ましいフレグランスを、以下のものから選択することができる。2−メチルピラジン、アセトアルデヒドフェニルエチルプロピルアセタール、アセトフェノン、アルコールC6(以下において、表記法Cnは、n個の炭素原子および1つのヒドロキシル官能を有するすべての物質を含む)、アルコールC8、アルデヒドC6(以下において、表記法Cnは、n個の炭素原子および1つのアルデヒド官能を有するすべての異性体を包含する)、アルデヒドC7、アルデヒドC8、アルデヒドC9、ノネニルアルデヒド(nonenylic aldehyde)、グリコール酸アリルアミル、カプロン酸アリル、酪酸アミル、アルデヒドアニシック(anisique)、ベンズアルデヒド、酢酸ベンジル、ベンジルアセトン、ベンジルアルコール、酪酸ベンジル、ギ酸ベンジル、イソ吉草酸ベンジル、
【0055】
ベンジルメチルエーテル、プロピオン酸ベンジル、酢酸ベルガミル(bergamyl acetate)、酢酸ブチル、樟脳、3−メチル−5−プロピル−2−シクロヘキセノン、ケイ皮アルデヒド、シス−3−ヘキセノール、酢酸シス−3−ヘキセニル、ギ酸シス−3−ヘキセニル、イソ酪酸シス−3−ヘキセニル、プロピオン酸シス−3−ヘキセニル、チグリン酸シス−3−ヘキセニル、シトロネラール、シトロネロール、シトロネリルニトリル、2−ヒドロキシ−3−メチル−2−シクロペンテン−1−オン、クミンアルデヒド、シクラールC、酢酸(シクロヘキシルオキシ)−2−プロペニルエステル、ダマセノン、アルファ−ダマスコン、ベータ−ダマスコン、マロン酸ジエチル、ジヒドロジャスモン、ジヒドロリナロール、ジヒドロミルセノール、
【0056】
ジヒドロテルピネオール、アントラニル酸ジメチル、ジメチルベンジルカルビノール、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、ジメチルオクテノン、ジメトール、ジミルセトール、エストラゴール、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、安息香酸エチル、ヘプタン酸エチル、エチルリナロール、サリチル酸エチル、酪酸エチル2−メチル、オイカリプトール、オイゲノール、酢酸フェンキル、フェンキルアルコール、4−フェニル−2,4,6−トリメチル1,3−ジオキサン、2−オクチン酸メチル、4−イソプロピルシクロヘキサノール、2−sec−ブチルシクロヘキサノン、酢酸スチルアリル、ゲラニルニトリル、酢酸ヘキシル、アルファ−イオノン、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、イソ−シクロシトラール、ジヒドロイソジャスモン、イソ−メントン、イソ−ペンチレート、イソ−プレゴール、
【0057】
シスジャスモン、左旋性カルボン、フェニルアセトアルデヒドグリセリルアセタール、カルビン酸3−ヘキセニルメチルエーテル、1−メチル−シクロヘキサ−1,3−ジエン、リナロール、リナロールオキシド、2,6−ジメチル−5−ヘプテナール、メントール、メントン、メチルアセトフェノン、メチルアミルケトン、安息香酸メチル、メチルケイ皮アルデヒドアルファ、メチルヘプテノン、メチルヘキシルケトン、メチルパラクレゾール、酢酸メチルフェニル、サリチル酸メチル、ネラール、ネロール、4−tert−ペンチル−シクロヘキサノン、パラ−クレゾール、酢酸パラ−クレシル、パラ−t−ブチルシクロヘキサノン、
【0058】
パラ−トリルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、酢酸フェニルエチル、フェニルエチルアルコール、酪酸フェニルエチル、ギ酸フェニルエチル、イソ酪酸フェニルエチル、プロピオン酸フェニルエチル、酢酸フェニルプロピル、フェニルプロピルアルデヒド、テトラヒドロ−2,4−ジメチル−4−ペンチル−フラン、4−メチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)テトラヒドロピラン、5−メチル−3−ヘプタノンオキシム、プロピオン酸スチルアリル、スチレン、4−メチルフェニルアセトアルデヒド、テルピネオール、テルピノレン、テトラヒドロ−リナロール、テトラヒドロ−ミルセノール、トランス−2−ヘキセナールおよびViridine。
【0059】
本発明の他の特定の態様において、フレグランス成分は、10’000より高い匂い値を有し得る。匂い値は、標準状態(278.15K、1気圧)においてこの着臭剤と熱力学的に平衡にある着臭剤の標準的なヘッドスペース濃度HSとして定義され、マイクログラム/lヘッドスペースで表され、これは、臭度測定により測定したこの着臭剤の嗅覚しきい値(単位マイクログラム/lヘッドスペース)で除したものである。標準的なヘッドスペース濃度は、以下の方程式によって純粋な成分の蒸気圧に相関する:
【数1】

式中、mは、着臭剤のモル質量であり、Rは、気体定数であり、Tは、ケルビンで示される絶対温度であり、pは、気圧で示される標準蒸気圧である。
【0060】
フレグランス成分の前駆体をまた、本発明においてフレグランス物質に提供することができる。前駆体は、活性化条件、例えば光、酵素、高温または酸性もしくはアルカリ性pH値の下で開裂されることによりフレグランス特徴を有する化合物を提供する化合物である。
【0061】
さらに、他の感覚刺激性物質、例えば臭気マスキング剤、昆虫駆除薬などを、フレグランス成分との混合物において用いてもよい。
【0062】
マイクロカプセル封入することが可能であるフレグランスの量は、一般的に、乾燥材料を基準として85重量%を上回り、さらに95重量%をも上回り、マイクロカプセル封入収量は、10Pa ppmより大きい損失係数を有する極めて揮発性の高い成分についても、80重量%に近いかまたはこれを上回る。用語「損失係数」は、乾燥の間のフレグランス物質の損失に関連するパラメータを表し、純粋な成分の蒸気圧(Pa)と室温における水溶性(ppm)との積として定義される。商業的に入手できるフレグランス成分についての蒸気圧および水溶性のデータは、周知であり、したがって所定のフレグランス成分についての損失係数を、容易に計算することができる。あるいはまた、蒸気圧および水溶性の測定を、当該分野における周知技術を用いて、容易に行うことができる。
【0063】
フレグランス成分の蒸気圧を、任意の既知の定量的ヘッドスペース分析技術を用いて測定してもよい。例えば、Mueller and Lamparsky in Perfumes: Art, Science and Technology, 第6章、“The Measurement of Odors”、176〜179頁(Elsevier 1991)を参照。フレグランスの水溶性を、水に難溶性の物質を測定するために当該分野において知られている技術によって測定してもよい。好ましい技術は、フレグランス成分を水に溶解した飽和溶液の生成を伴う。透析膜(dialysed membrane)を有する管を溶液中に配置して、平衡の後に、理想化された溶液が管内に生成するようにする。管を取り外し、この中の水溶液を好適な有機溶媒で抽出して、フレグランス成分を取り出すことができる。最後に、例えばガスクロマトグラフィーを用いて、抽出したフレグランス成分を濃縮し、測定することができる。フレグランスを測定する他の方法は、Gygax et al, Chimia 55 (2001) 401-405中に開示されている。
【0064】
他の特定の態様において、フレグランス成分は、4.5より大きくない、好ましくは2〜4.5の、最も好ましくは3〜4.5のClogP値を有していてもよい。ClogPは、計算されたオクタノール/水分配係数の対数である。
【0065】
本発明の芳香を付与された製品または物品において用いられるフレグランス成分の量は、これを用いる特定の用途によって、およびフレグランス組成物のフレグランス装填に関して変化し得る。洗剤用途について、洗剤の合計重量を基準として0.01〜3重量%のフレグランス材料の量で、フレグランス組成物を用いてもよい。
【0066】
特に、本発明のマイクロカプセルは、10〜80重量%の界面活性剤、5〜90重量%の水および0〜30重量%の親水性賦形剤、例えば短鎖アルコール類、グリコールエーテル類および短鎖ポリエチレングリコール類を含む消費者製品において、高度な安定性およびこれまでにない香料保持を示す。
【0067】
本発明のマイクロカプセルの特定の利点は、2種の極めて商業的に望ましい特性、即ち高温においてさえも、保管するにあたり長期間にわたり香料を保持する能力、および高度な壊れやすさのこれらの組み合わせであり、所要に応じて香料が容易に放出されるのが可能になる。これにおいて、これらは、マイクロカプセルの破裂圧力の低下が一般的にマイクロカプセルからの香料の漏出の増大により随伴される、知られているマイクロカプセルに対して、明らかに優れている。
【0068】
本発明のマイクロカプセルは、パーソナルケアならびに家庭、洗浄および清浄製品、例えば石鹸、シャンプー、スキンケアクリーム、ランドリー洗剤、衣類コンディショナー、皿洗い液、家具のつや出し剤などにおいて、特に有用である。したがって、本発明は、上記で定義したようにマイクロカプセルを含む組成物を含む、パーソナルケア製品、家庭用品、洗浄製品または清浄製品を提供する。
【0069】
マイクロカプセルを用いる製品は、従来は、当該分野に有用である補助材料の技術およびこの全範囲を用いて、配合され得る。このような補助材料の1種は、フリーの(カプセル封入されていない)香料であり得る。興味深い効果が、品質および/または強度においてカプセル封入された香料とは異なるフリーの香料を用いることにより、得られる。
【0070】
ここで、本発明の態様を例示する作用を奏する一連の例が続く。これらの例は例示的であり、本発明はこれらに限定されるものと考慮するべきではないことが、理解される。
【0071】
例1:プロセスの例
1.1 従来技術による比較例
以下の例は、メラミン−ホルムアルデヒドポリマーに基づく標準的なマイクロカプセルの形成を例示する。40.5gのLupasol PA140(BASF販売)および種々の量(表Iを参照)のLuracoll SD(メトキシ−メチロール化メラミンプレ縮合物(モノマー)、BASF販売)の溶液を250gの水に、1lのジャケット反応器中で加えた。撹拌速度を所要の粒度に達するように調整し、混合物を35℃に加熱した。次に、200gの香料(表IIを参照)を混合物に加え、これを連続的撹拌の下に維持して、エマルジョンを形成させた。ギ酸の10%溶液を用いてpH値を3.5に調整することにより、重合を開始した。150分間の撹拌の下で、反応物を35℃に維持した。次に、反応温度を第2の温度T2(表Iを参照)まで上昇させて、マイクロカプセルシェルの完全な架橋を達成した(硬化)。1時間後、硫酸の13%溶液を用いることにより、pH値をpH2.5に調整した。硬化段階の合計の継続時間は、75分または90分のいずれか(表Iを参照)であった。反応物を冷却し、スラリーのpH値を9.3に調整した。
【0072】
スラリーの固形分を、160℃の恒温にて作動するMettler Toledo Halogen Moisture Analyzer HB 43を用いて、重量測定法により測定した。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
1.2 モノマーの前処理を伴う比較例
以下の例は、メラミン−ホルムアルデヒドポリマーに基づく標準的な重縮合マイクロカプセルの生成を例示する。43.5gのLuracoll SD(BASF販売)を、85℃にて90分間加熱することにより前処理した。40.5gのLupasol PA140(BASF販売)およびBASFからの前処理したLuracoll SDの溶液を、1lのジャケット反応器中で250gの水に加えた。撹拌速度を所要の粒度に達するように調整し、混合物を35℃に加熱した。次に、200gの香料を混合物に加え、これを連続的撹拌の下で維持して、エマルジョンを形成させた。ギ酸の10%溶液を用いてpH値を3.5に調整することにより、重合を開始した。反応物を、150分間撹拌しながら35℃にて維持した。シェルを網状にするために、反応温度を75℃に上昇させた。1時間後、ギ酸を用いることによりpH値をpH3.5に調整した。90分後、反応物を冷却し、pH値をアンモニアで9.3に調整した。モノマーの前処理を、方法P4.3以降のものについて行った。
【0076】
1.3 コモノマーを用いた比較例
以下の例は、アミノ化合物、脂肪族ポリオールおよび芳香族ポリオールから選択される種々のコモノマーを含むターポリマーを用いた、改質メラミンホルムアルデヒドマイクロカプセルの形成を例示する。Ag(表IIIを参照)のLupasol PA140(BASF販売)、Bg(表IIIを参照)のLuracoll SD(BASF販売)の溶液を、1lのジャケット反応器中で250gの水に加えた。撹拌速度を所要の粒度に達するように調整し、混合物を第1の温度(35℃)に加熱した。次に、200gの試験香料(表II)を混合物に加え、これを連続的撹拌の下に維持して、エマルジョンを形成させた。ギ酸の10%溶液を用いてpH値を3.5に調整することにより、重合を開始した。Cgの種々のコモノマー(表IVを参照)を加えた。次に、反応温度を90分にわたり75℃に上昇させて、マイクロカプセルシェルの完全な架橋を達成させた(硬化)。1時間の硬化後に、ギ酸を用いることによりpH値をpH3.5に調整した。90分後、反応物を冷却し、アンモニアを用いてpH値を9.3に調整した。表IIIに、コモノマーとしてレゾルシノールを用いて行った代表的なプロセスの変化を要約する。
【0077】
【表3】

【0078】
【表4】

【0079】
1.4 マイクロカプセルのカチオン化
この方法によって製造するカプセルを、FR 2 801 811に記載されている方法に従ってカチオン化した。カプセルを、塩化ナトリウムの8%溶液を加えることにより水相から分離し、各々550gの蒸留水で2回洗浄した。吸引による濾過の後、フィルターケークをビーカーに移送し、500gの蒸留水で懸濁させ、55.7gのGafquat HS溶液(ISP販売)でカチオン化した。混合物を、30分間300rpmにて撹拌した。
【0080】
例2:カプセル力学に関する例
例1におけるようにして得られた懸濁されたマイクロカプセルのスラリーを、脱イオン水で希釈し、研磨し、(N/O)プラズマ洗浄したアルミニウムホルダー上に適用した。水を蒸発させた後、この表面上に別個のマイクロカプセルを有するホルダーを、60マイクロメートルのダイヤモンド平坦トップインデンター本体を備えたMTS Nanoindenter XPに移送する。すべての圧縮試験を、100ナノメートル/秒の変位速度で、制御された変位モードの下で行う。負荷対変位の曲線を測定して、破断における臨界負荷(Fcrit)および臨界変位(hcrit)を得た。代表的な結果を表Vに示す。
【0081】
例3:衣類仕上げ用柔軟剤における漏出に関する例
カプセル封入された試験香料および0.5重量%のフリーの香料を含む1.0重量%のマイクロカプセルを含む衣類柔軟剤試料を、密封されたガラスビン中で37℃の温度にて2ヵ月の貯蔵に付した。1gのIsoluteバルク収着剤Type HM-N(Separtis GmbH, Switerland販売)を、10mlのn−ペンタンおよび2gの衣類柔軟剤基剤と混合した。混合物を、磁気攪拌機上で最大速度にて30分間撹拌した。相分離が完了した後に、有機相をエッペンドルフ管に移送し、フリーザー(−18℃)中で15分間貯蔵した。次に、低温のエッペンドルフ管を、最大速度にて15秒間エッペンドルフ遠心分離機中で遠心分離した。透明なペンタン相を、GCバイアルに移送し、さらに精製せずに、スプリット−スプリットレス(split-splitless)毛細管ガスクロマトグラフィーにより分析した。代表的な漏出結果を表Vに示す。
【0082】
【表5】

【0083】
表I、III、Vの比較により、コモノマーを本発明に従って加えることにより、マイクロカプセルを破壊するのに要する臨界的負荷を、良好な香料保持特性を維持しながら、従来技術のものに近いが顕著により少量のホルムアルデヒドを含有するメチロール化メラミンを用いた数値に減少させるのが可能になることが、示される。
【0084】
例4:ホルムアルデヒドの測定
マイクロカプセルスラリー中の残留遊離ホルムアルデヒドレベルを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、環境保護局(EPA)の方法8315Aに従って測定する。これに、遊離ホルムアルデヒドの予測される量に依存して、100mg〜1gのスラリーを10mlのフラスコ中に秤量し、容積を水で満たす。溶液/懸濁液を、超音波浴に10分間曝露する。マイクロカプセルを、濾過または遠心分離によって液相から分離する。遊離ホルムアルデヒドの誘導体化を、3μlの液相と、1重量%にてアセトニトリルに溶解した2,4−ジニトロ−フェニルヒドラジンDNPHの溶液6μlとを混合することにより、達成する。
【0085】
分析を、UVダイオードアレイ検出器(DAD)を備えたAgilent 1100HPLCシステム中にこの混合物を注入することにより行う。代表的な結果を表VIに要約する。
【0086】
【表6】

【0087】
例5:嗅覚的評価に関する例
マイクロカプセルを用いた洗浄試験を、以下のように行った。ヨーロッパの前入れ方式の洗濯機MIELE WT 940を用い、これは、(4つの)Terry綿タオル(および時々合成繊維製の布)からなる1kgの投入物を含んでいた。110gの無香性洗剤粉末を加えた。洗浄サイクルは、(i)10〜12リットルの水を用いた40℃における洗浄サイクル、(ii)サイクルあたり12〜15リットルの水を用いた3回のすすぎサイクルからなっていた。1.5重量%のマイクロカプセル(0.5重量%のカプセル封入された香料)を含む衣類柔軟剤を、最後のリンスにおいて加えた。次に、投入布地を、800rpmで回転乾燥し、ライン乾燥した。
【0088】
嗅覚評価を、純粋な柔軟剤に関して、濡れた布地に関して、および乾燥布地に関して、1、5および10日後に行った。純粋な製品に関する評価を行って、基部における起こり得る漏出について調査した。濡れた布地に関する評価により、すすぎサイクルの間のカプセルの起こり得る破損の情報が得られた。乾燥布地に関して、試料を、ラビングの前後に評価した。フレグランス強度を、以下に記載するように6段階評価を用いて階級付けした:
強度0 フレグランスシグナルまたは臭気は知覚不能である
強度1 極めて弱いフレグランスシグナルまたはほとんど知覚不能である臭気
強度2 弱いが知覚可能であるフレグランスシグナル
強度3 フレグランスは容易に知覚され、認識可能である
強度4 強度のフレグランス
強度5 極めて強度のフレグランス
【0089】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレグランスのコアおよびアミノプラストポリマーのシェルを含むマイクロカプセルであって、シェルの組成が、50〜90%、好ましくは60〜85%のターポリマーおよび10〜50%、好ましくは10〜25%のポリマー安定剤を含む75〜100%の熱硬化性樹脂であり;ターポリマーが:
(a)20〜60%、好ましくは30〜50%の、少なくとも1種のポリアミン由来の部分、
(b)3〜50%、好ましくは5〜25%の、少なくとも1種の芳香族ポリオール由来の部分;ならびに
(c)20〜70%、好ましくは40〜60%の、1〜6個のメチレン単位、好ましくは1〜4個のメチレン単位および最も好ましくは1個のメチレン単位、ジメトキシメチレンおよびジメトキシメチレンを有するアルキレンおよびアルキレンオキシ部分からなる群から選択された部分;
を含み、
マイクロカプセルがさらに任意に、25%まで、好ましくは10%までのカチオン性ポリマーを含む、前記マイクロカプセル。
【請求項2】
ポリアミン部分が、尿素、メラミン、3置換1,5−ジアミノ−2,4,6−トリアジンおよびグリコウリルの少なくとも1種に由来する、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項3】
芳香族ポリオール部分が、フェノール、3,5−ジヒドロキシトルエン、ビスフェノールA、レゾルシノール、ヒドロキノン、キシレノール、多価ナフタレンならびにセルロースおよびフミン酸の分解によって生成するポリフェノール類の少なくとも1種に由来する、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項4】
ポリアミン部分およびアルキレンまたはアルキレンオキシ部分が、少なくとも1種のアルキロール化ポリアミン由来である、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項5】
ポリマー安定剤がアニオン性高分子電解質である、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項6】
カチオン性セルロース誘導体、四級化ゴム、ポリエチレンイミン、カチオン性ポリアクリレート類およびアクリルアミド類、ゼラチンおよび四級化タンパク質加水分解物、ならびに四級化アミノシリコーン類からなる群から選択されたカチオン性ポリマーが存在する、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項7】
請求項1に記載のマイクロカプセルを含む、芳香を付与されたパーソナルケア製品、家庭用品、洗浄製品または清浄製品。
【請求項8】
ランドリー固体および液体洗剤および液体布地柔軟剤およびコンディショナーから選択される、請求項7に記載の製品。
【請求項9】
製品がフリーの香料を含む、請求項8に記載の製品。
【請求項10】
フリーの香料が、強度および/または品質においてカプセル封入された香料とは異なる、請求項9に記載の製品。
【請求項11】
マイクロカプセルがアニオン形態で存在する、請求項8に記載の布地コンディショナー。

【公表番号】特表2010−520928(P2010−520928A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549352(P2009−549352)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【国際出願番号】PCT/CH2008/000044
【国際公開番号】WO2008/098387
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(501105842)ジボダン エス エー (158)
【Fターム(参考)】