説明

マイクロスイッチ用アクチュエータ及びマイクロスイッチ

【課題】機械的に電気信号や光信号の接続、切断を行うに十分な変位発生力と量を発現することが出来、小型、耐久性、信頼性の高いマイクロスイッチ用アクチュエータを提供すること。
【解決手段】マイクロスイッチ用アクチュエータ10は、2本の脚部15a,15bと、その2本の脚部の一方の端部の側で挟まれてそれらを支持する股部17と、を備える。2本の脚部のそれぞれにおいて、積層された複数の圧電層14のうち最外層の一の圧電層14が、正極及び負極の電極層18,19で挟まれず不活性部を構成し、他の圧電層14が、正極及び負極の電極層18,19で挟まれて活性部を構成している。正極及び負極の電極層18,19間に駆動電圧を印加すると、活性部を構成する圧電層14が圧電横効果に基づく変位によって伸縮し、(不活性部を構成する圧電層14が変位を生じないことから)2本の脚部15a,15bが屈曲変位を生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロスイッチ用のアクチュエータと、それを用いたマイクロスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
電気信号や光信号の接続、切断をするためにスイッチが使用される。スイッチとしては、リレーを使用した電気機械式やPINダイオード等を使用した電子式が一般的であるが、最近では、シリコンプロセスを主とする微細電子機械システム(Si−MEMS(Micro Electro Mechanical System))技術の発達とともに、マイクロスイッチが使用され始めている。このマイクロスイッチは、他のスイッチに比して信号損失が少なく、比較的低コストで作製することが出来、低消費電力であるという利点を有するものである。このようなマイクロスイッチ(Si−MEMS型スイッチ)は、その駆動源によって、静電気力を駆動力とする静電型、バイメタルからなる部材を加熱変形させる熱型、磁力を駆動力とする磁性型、及び圧電アクチュエータの駆動力を用いた圧電型等に分類することが出来る。これらのなかでも、圧電型のマイクロスイッチは、他に比して、電気信号や光信号の接続、切断を、高速且つ低消費電力で効率よく行うことが出来るものとして、注目されている。
【0003】
圧電型のマイクロスイッチの駆動源である圧電アクチュエータとしては、積層型のものが知られている。図11は、積層型圧電アクチュエータを用いたマイクロスイッチの一例を示す断面図である。図11に示されるマイクロスイッチ111は、駆動源としての積層型圧電アクチュエータ110(アクチュエータ部)と作動部112で構成される。積層型圧電アクチュエータ110は、数十〜数百μmオーダーの厚さの圧電層314と、数〜十数μmオーダーの厚さの電極層318,319とが、交互に、複数、積層をされてなるとともに、その側面に、電極層318,319を一層おきに、即ち、極性の同じ電極層を接続する、一対の外部電極328,329を有するものである。積層型圧電アクチュエータ110では、圧電層314の分極方向Pが、信号電極(電極層318)から共通電極(電極層319)へ向けた方向になっている。そして、信号電極〜共通電極間(即ち圧電層314)に対し、分極方向Pと同じ方向Eに電圧Vが印加されると、複数の圧電層314のそれぞれが、電界誘起歪みの縦効果に基づき、図11中において矢印S1で示される方向(S1方向)に伸長する変位を生じ、積層型圧電アクチュエータ110全体としても伸長し、作動部112の可動接点321と固定接点322とを接続する。電圧Vが印加されず圧電層314に電界が形成されなくなると、複数の圧電層314のそれぞれは収縮し、積層型圧電アクチュエータ110としても収縮し、作動部112において可動接点321と固定接点322とが切断される。
【0004】
又、圧電アクチュエータとして、バイモルフ型のものが知られている。図12は、バイモルフ型圧電アクチュエータを用いたマイクロスイッチの一例を示す断面図である。図12に示されるマイクロスイッチ121は、駆動源としてのバイモルフ型圧電アクチュエータ120(アクチュエータ部)と作動部122で構成される。バイモルフ型圧電アクチュエータ120は、数〜十数μmオーダーの厚さの電極層68,69で挟まれた数百μm〜数mmオーダーの厚さの板状の2層の圧電層414で構成されるものである。バイモルフ型圧電アクチュエータ120では、一方の圧電層414(図12中において上側)においては、その分極方向Pが、信号電極(電極層68)から共通電極(電極層69)へ向けた方向になっており、他方の圧電層414(図12中において下側)においては、その分極方向Pが、共通電極(電極層69)から信号電極(電極層68)へ向けた方向になっている。そして、信号電極〜共通電極間(即ち圧電層414)に対し電圧Vが印加されると、電界誘起歪みの横効果に基づき、一方の圧電層414(図12中において上側)が収縮し、他方の圧電層414(図12中において下側)が伸長して、バイモルフ型圧電アクチュエータ120全体として屈曲し、図12中において矢印S2で示される方向(S2方向)に変位し、作動部122の可動接点421と固定接点422とを接続する。電圧Vが印加されず圧電層414に電界が形成されなくなると、2層の圧電層414のそれぞれは伸長し又は収縮し(元へ戻り)、バイモルフ型圧電アクチュエータ120としても元へ戻り、作動部122において可動接点421と固定接点422が切断される。尚、マイクロスイッチの先行文献としては、特許文献1が挙げられる。
【0005】
【特許文献1】特開2005−332802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アクチュエータ部が積層型圧電アクチュエータの場合には、圧電層の厚さを薄くすることにより低電圧化が図れるが、大きな変位量を得るためには圧電層を数百オーダーで積層する必要がある。そのため、マイクロスイッチの小型化が困難であるという問題を抱えている。一方、アクチュエータ部がバイモルフ型圧電アクチュエータの場合は、変位発生力が小さい上に、作動部とは反対側を支持部として固定する必要があるので、そこへ応力が集中し易い。そのため、マイクロスイッチが破損し易いという問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、機械的に電気信号や光信号の接続、切断を行うに十分な変位発生力と変位発生量を発現することが可能な、小型で、耐久性に優れ信頼性の高いマイクロスイッチ用アクチュエータを提供することにある。鋭意、検討がなされた結果、以下に示す手段によって、上記目的を達成することが可能であることが見出され、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、先ず、本発明によれば、2本の脚部と、その2本の脚部の一方の端部の側で挟まれてそれらを支持する股部と、を備え、2本の脚部のそれぞれが、その(脚部の)幅方向に積層された、複数の圧電層と、正極及び負極の電極層と、を有するとともに、2本の脚部の長さ方向における先端の側及び股部の側の両方の端面に、極性の同じ電極層を接続し得る外部電極を有し、2本の脚部の圧電層及び股部がセラミック材料で形成され、門型形状を呈する全体として焼成一体化されており、2本の脚部のそれぞれにおいて、積層された複数の圧電層のうち最外層の一の圧電層が、正極及び負極の電極層で挟まれず不活性部を構成し、他の圧電層が、正極及び負極の電極層で挟まれて活性部を構成し、正極及び負極の電極層間に駆動電圧を印加することにより、活性部を構成する圧電層が圧電横効果に基づく変位によって伸縮し、(不活性部を構成する圧電層が変位を生じないことから)2本の脚部が屈曲変位を生じるマイクロスイッチ用アクチュエータが提供される。
【0009】
全体として門型形状と表現したが、2本の脚部とそれらに挟まれて支持する股部とで構成されるので、人間の下半身のような形状ということも出来る。脚部の幅方向とは、脚部の長さ方向に垂直な方向であって、且つ、2本の脚部の並びの方向(2本の脚部を結ぶ方向)に等しい方向である。脚部の先端とは、脚部の、股部を挟んだ側の端部とは反対側の端である。積層された複数の圧電層のうち最外層は2つあり、何れでもよい。即ち、本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータは、2本の脚部の間の側(内側、人間の下半身に例えれば股間側)及び外側(内側の反対側)に、脚部を構成する積層された複数の圧電層の、最外層が存在し、この最外層のうち何れかが正極及び負極の電極層で挟まれず不活性部を構成するものである。
【0010】
本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータにおいては、2本の脚部が、互いに反対方向に屈曲変位を生じ、開脚又は閉脚することが好ましい。
【0011】
又、本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータにおいては、圧電層の厚さが10〜100μmであることが好ましい。
【0012】
次に、本発明によれば、上記した何れかのマイクロスイッチ用アクチュエータと、一の接点が備わる一の接点部材及び他の接点が備わる他の接点部材を有する作動部と、を具備し、マイクロスイッチ用アクチュエータの2本の脚部のうち、一の脚部の先端が一の接点部材と接合され、他の脚部の先端が他の接点部材と接合され、2本の脚部が屈曲変位を生じることによって、一の接点部材に備わる一の接点が他の接点部材に備わる他の接点と、接触又は離隔をし、一の接点及び他の接点に通じた信号の接続又は切断をするマイクロスイッチが提供される。
【0013】
本発明に係るマイクロスイッチにおいては、一の接点部材及び他の接点部材に、駆動電圧の正極又は負極何れかの供給手段が備わり、一の接点部材又は他の接点部材に接合された脚部の先端の側の端面に備わる外部電極を通じて、駆動電圧の供給を受けることが好ましい。即ち、この態様では、外部電極は端子電極を兼ねている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータは、2本の脚部とその2本の脚部の一方の端部の側で挟まれてそれらを支持する股部とを備え、2本の脚部が屈曲変位を生じるように構成されたものであり、好ましくは、2本の脚部が互いに反対方向に屈曲変位を生じ開脚又は閉脚するものであるので、マイクロスイッチのアクチュエータ部として用いたときに、固定端を必要とせず、自立して作動部の接点の開閉動作(接続・切断動作)を行うことが出来る。そのため、固定端を必要とするバイモルフ型圧電アクチュエータでは生じ易かった応力集中が起き難く、破損し難くなり、耐久性に優れ信頼性の高いマイクロスイッチを実現することが可能となる。
【0015】
それでも、脚部の屈曲変位が生じた際には、その脚部と、変位を生じない股部との境界(脚の付け根にあたる部分)に応力が発生すると考えられるが、このような内部応力によってクラックが発生するという問題は生じ難い。本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータは、2本の脚部の圧電層及び股部がセラミック材料で形成され、門型形状を呈する全体として焼成一体化されているからである。即ち、本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータは、アクチュエータ部として、信頼性が高いマイクロスイッチを構築し得るものである。
【0016】
開示されてはいないが、バイモルフ型圧電アクチュエータ(図12を参照)を2本の脚部として採用し、これらを不活性のシム材で挟んで接着し、外見的に、本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータに似せたアクチュエータを作製することは可能である。しかし、このようなアクチュエータは、長時間、駆動させた場合には、バイモルフ型圧電アクチュエータに変位を発生させた際の、バイモルフ型圧電アクチュエータとシム材との接着部分に集中する応力によって、シム材からバイモルフ型圧電アクチュエータが剥がれて、駆動不能になり易く、信頼性に問題がある。本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータでは、全体が焼成一体化されているので、このような脚部が股部から剥がれるという問題は生じ難い。
【0017】
又、上記バイモルフ型圧電アクチュエータを利用した外見的に本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータに似せたアクチュエータは、2つのバイモルフ型圧電アクチュエータを組み立てて作製することから、小型化が困難である。これに対し、本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータは、1本の脚部を独立したアクチュエータとして取り扱うものではなく、2本の脚部及び股部が一体として作製され、全体として1つのアクチュエータを構成するものであるため、小型化が図り易い。
【0018】
本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータは、2本の脚部のそれぞれにおいて、積層された複数の圧電層のうち最外層の一の圧電層が、正極及び負極の電極層で挟まれず不活性部を構成し、他の圧電層が、正極及び負極の電極層で挟まれて活性部を構成し、正極及び負極の電極層間に駆動電圧を印加することにより、活性部を構成する圧電層が圧電横効果に基づく変位によって伸縮し、(不活性部を構成する圧電層が変位を生じないことから)2本の脚部に屈曲変位を生じ、マイクロスイッチのアクチュエータ部として用いたときに、その屈曲変位によって、作動部の接点に開閉動作(接続・切断動作)をさせるものである。そのため、変位効率が高く、機械的に電気信号や光信号の接続、切断を行うに十分な変位発生量を得て、且つ、積層型圧電アクチュエータより小型化することが可能である。
【0019】
本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータは、脚部が複数の圧電層と正極及び負極の電極層とを有し、圧電層のうち活性部を構成するものが直接には伸縮変位を生じ、不活性部の圧電層が変位を生じないことから、脚部として屈曲変位を発現するものであるので、活性部を構成する圧電層の層数を調節することによって、変位発生力を容易に変更することが可能である。活性部を構成する圧電層の層数を増加させると、変位発生力は大きくなる。そのため、マイクロスイッチにおいて、その作動部の態様に合わせて、容易に、機械的に電気信号や光信号の接続、切断を行うに必要な変位発生力を得るのに最適な無駄のないアクチュエータ部を構築することが可能である。
【0020】
本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータは、好ましくは、2本の脚部が互いに反対方向に屈曲変位を生じ開脚又は閉脚するものであるので、ノーマルオープン(非作動時切断)、ノーマルクローズ(非作動時接続)の何れの態様のマイクロスイッチのアクチュエータ部として適用することが可能であり、マイクロスイッチへの適用にかかり応用性に優れる。
【0021】
本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータは、その好ましい態様において、圧電層の厚さが10〜100μmであるので、一般に圧電層の厚さが数μmから30μm程度の積層型圧電アクチュエータに比して、より高い電圧をかけ得るものとなっている。そのため、より大きな変位発生力を得ることが出来、機械的に電気信号や光信号の接続、切断を行うに十分な変位発生力を発現することが可能であり、信頼性の高いマイクロスイッチの実現に寄与する。
【0022】
本発明に係るマイクロスイッチは、本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータと、一の接点が備わる一の接点部材及び他の接点が備わる他の接点部材を有する作動部と、を具備し、マイクロスイッチ用アクチュエータの2本の脚部のうち、一の脚部の先端が一の接点部材と接合され、他の脚部の先端が他の接点部材と接合され、2本の脚部が屈曲変位を生じることによって、一の接点が他の接点と接触又は離隔をし、一の接点及び他の接点に通じた信号の接続又は切断をするものであり、これは、アクチュエータ部として用いられる本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータが、固定端を形成せずに自立して作動部の接点の開閉動作(接続・切断動作)を行い得る態様のマイクロスイッチである。従って、既に、本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータの効果で示したように、このような本発明に係るマイクロスイッチは、応力集中が起き難く、破損し難く、耐久性に優れ、信頼性が高い。加えて、本発明に係るマイクロスイッチは、アクチュエータ部と作動部が独立しているため、構造が単純であり、作製し易く、小型化が図り易い。
【0023】
本発明に係るマイクロスイッチは、その好ましい態様において、一の接点部材及び他の接点部材に、駆動電圧の正極又は負極何れかの供給手段(配線又は回路)が備わり、一の接点部材又は他の接点部材に接合された脚部の先端の側の端面に備わる外部電極を通じて、駆動電圧の供給を受け得るものであるので、駆動電圧の供給系統(配線系統)を簡素化することが容易である。又、マイクロスイッチ用アクチュエータ側の駆動電圧供給回路は、2本の脚部にかかる回路を、予めマイクロスイッチ用アクチュエータ内部に作り込んでおくことが可能であり、そうすることによって製造過程における配線工程・作業は、極少なくなる。従って、本発明に係るマイクロスイッチの好ましい態様を生産するのに要する時間は短くなり、歩留まりが向上する。
【0024】
上記したバイモルフ型圧電アクチュエータを利用した外見的に本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータに似せたアクチュエータを、アクチュエータ部として採用し、マイクロスイッチを構築することは可能であるが、それぞれのバイモルフ型圧電アクチュエータ毎に駆動電圧の供給を受ける端子が必要となり、駆動電圧の供給系統も2つ必要になるから、配線が複雑になり、製造過程における配線工程・作業が増加し、その結果、生産に要する時間が長くなり、歩留まりが低下し易い。本発明に係るマイクロスイッチの好ましい態様によれば、このような問題は生じ得ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明について、適宜、図面を参酌しながら、実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではない。本発明の要旨を損なわない範囲で、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良、置換を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明の実施の形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は、以下に記述される手段である。
【0026】
図1は、本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータの一の実施形態を示す斜視図である。マイクロスイッチ用アクチュエータ10は、図1に示されるように、全体として門型形状、あるいは人間の下半身の形状を呈するものである。
【0027】
マイクロスイッチ用アクチュエータ10は、2本の脚部15a,15bと、その2本の脚部15a,15bの一方の端部の側(図1中において上側)で挟まれてそれらを支持する股部17と、を備えるアクチュエータであり、2本の脚部15a,15bのそれぞれは、その脚部15a,15bの幅方向(図1中において左右方向(横方向))に積層された、10〜100μmの厚さの(例えば)3層の圧電層14と、数〜十数μmオーダーの厚さの正極の電極層18及び負極の電極層19と、を有している。又、2本の脚部15a,15bの長さ方向(図1中において上下方向(縦方向))における先端の側端面には、電極層19に接続した(導通した)外部電極29を有し、股部17の側の端面には、電極層18を接続した(導通した)外部電極28を有している。外部電極28,29は、それぞれ電極層18(信号電極)どうし及び電極層19(共通電極)どうしを接続するものであり、外部の電源を用いて電極層18,19間へ電圧をかけるための、配線の役割を担うとともに、端子としての役割も果たす電極である。
【0028】
マイクロスイッチ用アクチュエータ10は、2本の脚部15a,15bの圧電層14と股部17とがセラミック材料で形成され、焼成一体化されているものである。又、2本の脚部15a,15bのそれぞれにおいて、積層された3層の圧電層14のうち、門型のアクチュエータとして最も外側(図1中において脚部15aでは左側、脚部15bでは右側)に位置する層の圧電層14は、電極層18と電極層19とで挟まれておらず、駆動電圧を印加しても変位を生じない。即ち、不活性部を構成している。一方、それより股部17の側(図1中において脚部15aでは中央及び右側の2層、脚部15bでは中央及び左側の2層)のその他の圧電層14は、電極層18,19で挟まれており、駆動電圧を印加すると変位を生じる。即ち、活性部を構成している。
【0029】
マイクロスイッチ用アクチュエータ10では、活性部における圧電層14の分極方向Pは、信号電極(電極層18)から共通電極(電極層19)へ向けた方向になっている。そして、信号電極〜共通電極間(即ち活性部の圧電層14)に対し、分極方向Pと同じ方向Eに電圧が印加されると、脚部15a,15bのそれぞれにおける2層の圧電層14が、電界誘起歪みの横効果に基づき、脚部の長さ方向に収縮する変位を生じる。一方、不活性部を構成する圧電層では変位が生じない。そのため、2本の脚部15a,15bは、互いに反対方向(図1中において脚部15aは右方向、脚部15bは左方向)に屈曲変位を生じ、閉脚する。即ち、人間の下半身に例えれば、脚を閉じる方向に変形する。駆動電圧が印加されず圧電層14に電界が形成されなくなると、活性部の圧電層14は元に戻るように伸長し、マイクロスイッチ用アクチュエータ10としても脚部15a,15bが元へ戻り平行な脚部となる。
【0030】
図4及び図5は、本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータの他の実施形態を示す斜視図である。図4には、駆動電圧が印加されず、2本の脚部が屈曲変位を生じず平行な脚部の状態が示されており、図5では、活性部の圧電層に対し、分極方向と同じ方向に電圧が印加され、2本の脚部が、互いに反対方向に屈曲変位を生じ、閉脚した状態が示されている。マイクロスイッチ用アクチュエータ40は、図4及び図5に示されるように、その外部電極38,39が、マイクロスイッチ用アクチュエータ10の外部電極28,29のように端面全体に形成されているものではなく、端面に露出したスルーホールとして形成されているところが異なる。その他の仕様は、マイクロスイッチ用アクチュエータ10と同じである(説明を省略する)。
【0031】
図2及び図3は、本発明に係るマイクロスイッチの一の実施形態を示す側面図である。図2及び図3に示されるマイクロスイッチは、上記した図1に示されるマイクロスイッチ用アクチュエータ10をアクチュエータ部として利用したものであり、機械的に電気信号の接続、切断を行い得る、ノーマルオープンのスイッチである。図2には、マイクロスイッチのOFF(切断)状態が示されており、図3では、マイクロスイッチのON(接続)状態が示されている。図2及び図3に示されるマイクロスイッチ11は、上記したマイクロスイッチ用アクチュエータ10と作動部12とを具備し、その作動部12は、信号線48につながる接点41が備わる接点部材43と、同じく信号線48につながる接点42が備わる接点部材44とを有している。そして、マイクロスイッチ用アクチュエータ10の脚部15aの先端が接点部材43と接合され、脚部15bの先端が接点部材44と接合されている。
【0032】
マイクロスイッチ11では、接点部材43,44に駆動電圧の負極側の供給配線49が備わっており、この供給配線49から、接点部材43,44に接合されたマイクロスイッチ用アクチュエータ10の脚部15a,15bの先端の側の端面に備わる外部電極29(端子電極)を通じて、電極層19へ駆動電圧が供給される。一方、駆動電圧の正極側は、他のルートで、外部電極28(端子電極)を通じて電極層18へ接続される。マイクロスイッチ11では、マイクロスイッチ用アクチュエータ10の脚部15a、15bが屈曲変位を生じていないときが、スイッチとしてOFFの状態であり(図2を参照)、このときには、作動部12において接点41,42は離隔しており、信号線48は切断されている。一方、信号電極〜共通電極間(電極層18,19間、即ち活性部の圧電層14)へ駆動電圧がかかってマイクロスイッチ用アクチュエータ10の脚部15a、15bが屈曲変位を生じたときが、スイッチとしてONの状態である(図3を参照)。このときには、作動部12において、マイクロスイッチ用アクチュエータ10の脚部15aに接合された接点部材43と、脚部15bに接合された接点部材44とが、脚部15a、15bの屈曲変位によって、図3中において矢印S4で示される方向(S4方向)に移動して、接点41,42が接触し、信号線48が接続される。このONの状態から、駆動電圧の供給を停止すると、屈曲したマイクロスイッチ用アクチュエータ10の脚部15a、15bが元へ戻り平行な脚部となり、接点部材43と接点部材44とが、脚部15a、15bが元に戻ることによって、図2中において矢印S3で示される方向(S3方向)に移動して、接点41,42が離隔し、信号線48が切断される。
【0033】
図6は、本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータの更に他の実施形態を示す斜視図である。図6に示されるマイクロスイッチ用アクチュエータ60は、マイクロスイッチ用アクチュエータ10,40と同様に、全体として門型形状、あるいは人間の下半身の形状を呈するものである。
【0034】
マイクロスイッチ用アクチュエータ60は、2本の脚部25a,25bと、その2本の脚部25a,25bの一方の端部の側(図6中において上側)で挟まれてそれらを支持する股部17と、を備えるアクチュエータであり、2本の脚部25a,25bのそれぞれは、その脚部25a,25bの幅方向(図6中において左右方向(横方向))に積層された、10〜100μmの厚さの(例えば)3層の圧電層14と、数〜十数μmオーダーの厚さの正極の電極層18及び負極の電極層19と、を有している。又、2本の脚部25a,25bの長さ方向(図6中において上下方向(縦方向))における先端の側端面には、電極層19に接続した(導通した)外部電極29を有し、股部17の側の端面には、電極層18を接続した(導通した)外部電極28を有している。外部電極28,29は、それぞれ電極層18(信号電極)どうし及び電極層19(共通電極)どうしを接続するものであり、外部の電源を用いて電極層18,19間へ電圧をかけるための、配線の役割を担う。外部電極29は端子としての役割も果たす電極であり、一方、正極側には、外部電極28とは別に、それに通じた端子電極58が形成されている。
【0035】
マイクロスイッチ用アクチュエータ60は、2本の脚部25a,25bの圧電層14と股部17とがセラミック材料で形成され、焼成一体化されているものである。又、2本の脚部25a,25bのそれぞれにおいて、積層された3層の圧電層14のうち、門型のアクチュエータとして最も股部17の側(図6中において脚部25aでは右側、脚部25bでは左側)に位置する層の圧電層14は、電極層18と電極層19とで挟まれておらず、駆動電圧を印加しても変位を生じない。即ち、不活性部を構成している。一方、それより外側(図6中において脚部25aでは中央及び左側の2層、脚部25bでは中央及び右側の2層)のその他の圧電層14は、電極層18,19で挟まれており、駆動電圧を印加すると変位を生じる。即ち、活性部を構成している。
【0036】
マイクロスイッチ用アクチュエータ60では、活性部における圧電層14の分極方向Pは、信号電極(電極層18)から共通電極(電極層19)へ向けた方向になっている。そして、信号電極〜共通電極間(即ち活性部の圧電層14)に対し、分極方向Pと同じ方向Eに電圧が印加されると、脚部25a,25bのそれぞれにおける2層の圧電層14が、電界誘起歪みの横効果に基づき、脚部の長さ方向に収縮する変位を生じる。一方、不活性部を構成する圧電層では変位が生じない。そのため、2本の脚部25a,25bは、互いに反対方向(図6中において脚部25aは左方向、脚部25bは右方向)に屈曲変位を生じ、開脚する。即ち、人間の下半身に例えれば、脚を開く方向に変形する。駆動電圧が印加されず圧電層14に電界が形成されなくなると、活性部の圧電層14は元に戻るように伸長し、マイクロスイッチ用アクチュエータ60としても脚部25a,25bが元へ戻り平行な脚部となる。
【0037】
図9及び図10は、本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータの更に他の実施形態を示す斜視図である。図9には、駆動電圧が印加されず、2本の脚部が屈曲変位を生じず平行な脚部の状態が示されており、図10では、活性部の圧電層に対し、分極方向と同じ方向に電圧が印加され、2本の脚部が、互いに反対方向に屈曲変位を生じ、開脚した状態が示されている。図9及び図10に示されるマイクロスイッチ用アクチュエータ90は、マイクロスイッチ用アクチュエータ40と同様に、その外部電極38,39が、端面に露出したスルーホールとして形成されている。端面全体に形成されている外部電極28,29を有するマイクロスイッチ用アクチュエータ60とは、この点において相違するが、その他の仕様は、マイクロスイッチ用アクチュエータ60と同じである(説明を省略する)。
【0038】
図7及び図8は、本発明に係るマイクロスイッチの他の実施形態を示す側面図である。図7及び図8に示されるマイクロスイッチは、上記した図6に示されるマイクロスイッチ用アクチュエータ60をアクチュエータ部として利用したものであり、機械的に電気信号の接続、切断を行い得る、ノーマルクローズのスイッチである。図7には、マイクロスイッチのON(接続)状態が示されており、図8では、マイクロスイッチのOFF(切断)状態が示されている。図7及び図8に示されるマイクロスイッチ61は、上記したマイクロスイッチ用アクチュエータ60と作動部62とを具備し、その作動部62は、信号線48につながる接点41が備わる接点部材43と、同じく信号線48につながる接点42が備わる接点部材44とを有している。そして、マイクロスイッチ用アクチュエータ60の脚部25aの先端が接点部材43と接合され、脚部25bの先端が接点部材44と接合されている。
【0039】
マイクロスイッチ61では、接点部材43,44に駆動電圧の負極側の供給配線49が備わっており、この供給配線49から、接点部材43,44に接合されたマイクロスイッチ用アクチュエータ60の脚部25a,25bの先端の側の端面に備わる外部電極29(端子電極)を通じて、電極層19へ駆動電圧が供給される。一方、駆動電圧の正極側は、他のルートで、端子電極58を介して外部電極28を通じて電極層18へ接続される。マイクロスイッチ61では、マイクロスイッチ用アクチュエータ60の脚部25a、25bが屈曲変位を生じていないときが、スイッチとしてONの状態であり(図7を参照)、このときには、作動部62において接点41,42は接触しており、信号線48は接続されている。一方、信号電極〜共通電極間(電極層18,19間、即ち活性部の圧電層14)へ駆動電圧がかかってマイクロスイッチ用アクチュエータ60の脚部25a、25bが屈曲変位を生じたときが、スイッチとしてOFFの状態である(図8を参照)。このときには、作動部62において、マイクロスイッチ用アクチュエータ60の脚部25aに接合された接点部材43と、脚部25bに接合された接点部材44とが、脚部25a、25bの屈曲変位によって、図8中において矢印S6で示される方向(S6方向)に移動して、接点41,42が離隔し、信号線48が切断される。このOFFの状態から、駆動電圧の供給を停止すると、屈曲したマイクロスイッチ用アクチュエータ60の脚部25a、25bが元へ戻り平行な脚部となり、接点部材43と接点部材44とが、脚部25a、25bが元に戻ることによって、図7中において矢印S5で示される方向(S5方向)に移動して、接点41,42が接触し、信号線48が接続される。
【0040】
次に、本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータ及び本発明に係るマイクロスイッチを製造する方法と、併せて使用する材料について、説明する。本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータを製造するにあたっては、グリーンシート積層法を利用することが好ましい。図13の(a)〜(e)は、このグリーンシート積層法を利用し、作製対象を既に説明した図1に示されるマイクロスイッチ用アクチュエータ10として、本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータの製造工程の一例を表した説明図である。
【0041】
先ず、圧電/電歪材料を主成分とする6枚のセラミックグリーンシート116及び、2枚のセラミックグリーンシート117(以下、グリーンシート又はシートともいう)を用意する。シート116は、のちに脚部の圧電層を構成するものであり、シート116より長さが短いシート117は(図13の(a)を参照)、のちに股部を構成するものである。シート116,117は、従来知られたセラミックグリーンシート製造方法により作製出来る。例えば、圧電/電歪材料の粉末を用意し、これに有機樹脂(バインダ)、溶剤、分散剤、可塑剤、造孔剤等を望む組成に調合してスラリーを作製し、これを脱泡処理後、ドクターブレード法、リバースロールコーター法、リバースドクターロールコーター法等のテープ成形法によって成形し、適宜、それを切断して、シート116,117を作製することが可能である。尚、シート117は、圧電/電歪材料ではないセラミック材料を用いて作製したシートであってもよい。
【0042】
圧電/電歪材料は、電界誘起歪みを起こすセラミック材料であれば、他に条件を問われるものではない。結晶質でも非晶質でもよく、又、半導体セラミック材料や強誘電体セラミック材料、あるいは反強誘電体セラミック材料を用いることも可能である。用途に応じて適宜選択し採用すればよい。又、分極処理が必要な材料であっても必要がない材料であってもよい。
【0043】
具体的には、好ましい材料として、ジルコン酸鉛、チタン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛、ニッケルニオブ酸鉛、ニッケルタンタル酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸鉛、アンチモンスズ酸鉛、マンガンタングステン酸鉛、コバルトニオブ酸鉛、マグネシウムタングステン酸鉛、マグネシウムタンタル酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ナトリウムビスマス、チタン酸ビスマスネオジウム(BNT)、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウムナトリウム、タンタル酸ストロンチウムビスマス、銅タングステンバリウム、鉄酸ビスマス、あるいはこれらのうちの2種以上からなる複合酸化物を挙げることが出来る。又、これらの材料には、ランタン、カルシウム、ストロンチウム、モリブデン、タングステン、バリウム、ニオブ、亜鉛、ニッケル、マンガン、セリウム、カドミウム、クロム、コバルト、アンチモン、鉄、イットリウム、タンタル、リチウム、ビスマス、スズ、銅等の酸化物が固溶されていてもよい。中でも、ジルコン酸鉛、チタン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛の複合酸化物を主成分として酸化ニッケルを含有してなる材料、ジルコン酸鉛、チタン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛、ニッケルニオブ酸鉛の複合酸化物を主成分とする材料が、大きな電界誘起歪が利用出来ることから、好ましい。この場合、ニッケル成分として、酸化物換算で0.05〜3質量%含有するものが特に好ましい。又、上記材料等に、ビスマス酸リチウム、ゲルマニウム酸鉛等を添加した材料は、その圧電層の低温焼成を実現しつつ高い材料特性を発現することが出来るので好ましく、特に、上記したジルコン酸鉛、チタン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛の複合酸化物を主成分として酸化ニッケルを含有してなる材料、ジルコン酸鉛、チタン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛、ニッケルニオブ酸鉛の複合酸化物を主成分とする材料であって、そのニッケル成分として、酸化物換算で0.05〜3質量%含有し、且つゲルマン酸鉛を0.3〜4質量%添加した材料が望ましい。
【0044】
6枚のシート116及び2枚のシート117を作製したら、次に、4枚のシート116の表面に、導電材料を用いて、所定のパターン(電極パターン)の導体膜118を形成し、4枚のシート126を得る。同様にして、残りの2枚のシート116の表面に、導電材料を用いて、所定のパターン(電極パターン)の導体膜119を形成し、2枚のシート127を得る(図13の(b)を参照)。この導体膜118,119は、のちに電極層18,19(信号電極及び共通電極、図1を参照)になる膜である。
【0045】
導体膜118,119の形成手段は、スクリーン印刷法が好適に用いられるが、フォトリソグラフィ、転写、スタンピング等の手段で行ってもよい。使用する導電材料としては、室温で固体である金属が採用される。例えば、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、銀、スズ、タンタル、タングステン、イリジウム、白金、金、又は鉛等の金属単体又はこれら2種類以上からなる合金、例えば、銀−白金、白金−パラジウム、銀−パラジウム等を1種単独で又は2種類以上を組み合わせたものを用いることが好ましい。又、これらの材料と、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化セリウム、ガラス、又は圧電/電歪材料等との混合物、サーメットであってもよい。これらの材料は、圧電層と同時に焼成されるか否かに依存して選定される。電極層の場合には、圧電層と同時に焼成されるため、圧電層の焼成温度においても変化しない白金、パラジウム、白金−パラジウム合金、銀−パラジウム合金等の高融点金属を使用する必要がある。一方、後述する、のちに外部電極又は端子電極となる導体膜の場合には、低温で焼成出来るので、アルミニウム、金、銀、銀−パラジウム合金等を使用することが可能である。加えて、用途によっては、非常に大きな変位を発生させなければならないケースもあり、又、弱い界面にクラックが発生しても、外部電極の断線が生じないように、形成した電極上に、別途、延展性に富む導電材料の箔、板等を載置し、併せて用いてもよい。
【0046】
次に、のちに電極層18になる導体膜118が形成された2枚のシート126によって、のちに電極層19になる導体膜119が形成された1枚のシート127を挟んで積層し圧着して、のちに1つの脚部となるグリーン積層体131を得る(図13の(c)参照)。シート126は4枚、シート127は2枚作製したから、グリーン積層体131は2つ得られる。そして、一方の端面で揃えるようにして、2つのグリーン積層体131によって2枚のシート117を挟んで積層し圧着し、新たなグリーン積層体を得る(図13の(d)参照)。次いで、得られたグリーン積層体に対して、それを構成するグリーン積層体131の長さ方向における先端の側の端面(シート117の端面が揃っていない側の端面)に、のちに外部電極29となる導体膜129を形成するとともに、グリーン積層体131の長さ方向におけるシート117の端面を揃えた側の端面に、のちに外部電極28となる導体膜128を形成し、概ねマイクロスイッチ用アクチュエータの形態を呈するグリーン積層体130を得る(図13の(e)参照)。そして、そのグリーン積層体130を焼成し一体化する。
【0047】
以上の工程によって、図1に示されるマイクロスイッチ用アクチュエータ10が得られる。ここで、更に、マイクロスイッチ用アクチュエータ10の耐湿性、絶縁性を増す目的で、樹脂コートを施すことも好ましい。樹脂コートに使用する樹脂材料としては、ポリフルオルエチレン系、アクリル系、エポキシ系、ポリイミド系、シリコーン系等が挙げられるが、燃料噴射装置等の高環境負荷下では、ポリフルオルエチレン系、ポリイミド系、更には、それらの複合系、例えばPTFE(ポリフルオルエチレン系)とポリアミドイミドの複合系の材料を用いることが好ましい。
【0048】
尚、上記した本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータを製造する方法では、理解容易に説明するため、1個を単独で作製する場合を示したが、実際には、グリーンシートに多数個分の導体膜を形成し(印刷し)、積層、焼成の後で、個割に加工する工程を経ることによって、容易に多数個取りが出来ることはいうまでもない。
【0049】
図1に示されるマイクロスイッチ用アクチュエータ10が得られたら、その脚部15a,15bの先端に別途用意した接点部材43,44を接合すれば、図2及び図3に示されるマイクロスイッチ11が得られる。接点部材43(44)は、ガラス、若しくはポリフルオルエチレン系、アクリル系、エポキシ系、ポリイミド系、シリコーン系の絶縁性材料からなる2枚のシートを用い、1枚のシートの上に導電材料を用いて信号線48となる所定のパターン(配線パターン)の導体膜を形成し、別の1枚のシートの上に導電材料を用いて供給配線49となる所定のパターン(配線パターン)の導体膜を形成するとともに、信号線48となる導体膜を形成したシートの上に、供給配線49となる導体膜を形成したシートを重ねて被覆し、更に、重ねた2枚のシートの端面に、導電材料を用い、信号線48となる導体膜に接続させて、接点41(42)となる導体膜を形成することによって、得られる。信号線48、供給配線49、及び接点41,42を形成する導電材料は、接触抵抗が小さなものであることが望ましく、金、銀、銅、アルミ、又は白金等を、好適に採用することが出来る。
【0050】
尚、本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータは、機械的に光信号の接続、切断を行うマイクロスイッチのアクチュエータ部としても、好適に利用することが出来る。この場合のマイクロスイッチを構成する作動部は、例えば、光ファイバや光導波路の断面が露出した端面であることが望ましく、接続損失を小さくするための反射防止膜等をコーティングした面であることが、更に望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータは、機械的に電気信号や光信号の接続、切断を行うスイッチのアクチュエータ部として、好適に利用することが出来る。そして、本発明に係るマイクロスイッチは、当該スイッチとして、好適に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータの一の実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るマイクロスイッチの一の実施形態を示す側面図であり、OFF(切断)状態を示す図である。
【図3】本発明に係るマイクロスイッチの一の実施形態を示す側面図であり、ON(接続)状態を示す図である。
【図4】本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータの他の実施形態を示す斜視図であり、2本の脚部が屈曲変位を生じていない状態を示す図である。
【図5】本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータの他の実施形態を示す斜視図であり、2本の脚部が互いに反対方向に屈曲変位を生じた状態を示す図である。
【図6】本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータの更に他の実施形態を示す斜視図である。
【図7】本発明に係るマイクロスイッチの他の実施形態を示す側面図であり、ON(接続)状態を示す図である。
【図8】本発明に係るマイクロスイッチの他の実施形態を示す側面図であり、OFF(切断)状態を示す図である。
【図9】本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータの更に他の実施形態を示す斜視図であり、2本の脚部が屈曲変位を生じていない状態を示す図である。
【図10】本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータの更に他の実施形態を示す斜視図であり、2本の脚部が互いに反対方向に屈曲変位を生じた状態を示す図である。
【図11】積層型圧電アクチュエータを用いたマイクロスイッチの一例を示す断面図である。
【図12】バイモルフ型圧電アクチュエータを用いたマイクロスイッチの一例を示す断面図である。
【図13】(a)〜(e)は、本発明に係るマイクロスイッチ用アクチュエータの製造工程の一例を表した説明図である。
【符号の説明】
【0053】
10,40,60,90 マイクロスイッチ用アクチュエータ
11,61 マイクロスイッチ
12,62 作動部
14 圧電層
15a,15b,25a,25b 脚部
17 股部
18,19 電極層
28,29,38,39 外部電極
41,42 接点
43,44 接点部材
48 信号線
49 (駆動電圧の)供給配線
116,117 セラミックグリーンシート
118,119 (電極層となる)導体膜
126,127 (導体膜を形成した)セラミックグリーンシート
128,129 (外部電極となる)導体膜
130,131 グリーン積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の脚部と、その2本の脚部の一方の端部の側で挟まれてそれらを支持する股部と、を備え、前記2本の脚部のそれぞれが、その幅方向に積層された、複数の圧電層と、正極及び負極の電極層と、を有するとともに、前記2本の脚部の長さ方向における先端の側及び前記股部の側の両方の端面に、極性の同じ前記電極層を接続し得る外部電極を有し、
前記2本の脚部の圧電層及び前記股部がセラミック材料で形成され、門型形状を呈する全体として焼成一体化されており、
前記2本の脚部のそれぞれにおいて、前記積層された複数の圧電層のうち最外層の一の圧電層が、前記正極及び負極の電極層で挟まれず不活性部を構成し、他の圧電層が、前記正極及び負極の電極層で挟まれて活性部を構成し、
前記正極及び負極の電極層間に駆動電圧を印加することにより、前記活性部を構成する圧電層が圧電横効果に基づく変位によって伸縮し、前記2本の脚部が屈曲変位を生じるマイクロスイッチ用アクチュエータ。
【請求項2】
前記2本の脚部が、互いに反対方向に屈曲変位を生じ、開脚又は閉脚する請求項1に記載のマイクロスイッチ用アクチュエータ。
【請求項3】
前記圧電層の厚さが10〜100μmである請求項1又は2に記載のマイクロスイッチ用アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1〜3に何れか一項に記載のマイクロスイッチ用アクチュエータと、一の接点が備わる一の接点部材及び他の接点が備わる他の接点部材を有する作動部と、を具備し、
前記マイクロスイッチ用アクチュエータの2本の脚部のうち、一の脚部の先端が前記一の接点部材と接合され、他の脚部の先端が前記他の接点部材と接合され、
前記2本の脚部が屈曲変位を生じることによって、前記一の接点部材に備わる一の接点が前記他の接点部材に備わる他の接点と、接触又は離隔をし、前記一の接点及び前記他の接点に通じた信号の接続又は切断をするマイクロスイッチ。
【請求項5】
前記一の接点部材及び他の接点部材に、前記駆動電圧の正極又は負極何れかの供給手段が備わり、前記一の接点部材又は他の接点部材に接合された前記脚部の先端の側の端面に備わる前記外部電極を通じて、前記駆動電圧の供給を受ける請求項4に記載のマイクロスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−200742(P2007−200742A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18633(P2006−18633)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】