説明

マイクロデバイス

【課題】安価かつ量産可能なシンプルな構成で、且つ等価直径が1mm以下のマイクロ流路を流れる流体の流通を精度良く制御することができるマイクロデバイスを提供すること。
【解決手段】
マイクロ流路に流体を供給するための供給口を有する第1流路と、前記第1流路とは別に流路内の気密性を制御するための制御口を有する第2流路と、前記第1流路及び第2流路を連結する第3流路とが設けられたマイクロデバイスであって、
前記制御口によって流路内の気密性を制御することで前記供給口から供給された流体の流れを制御することによって、マイクロ流路内の流体の流動挙動を制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体の流れの制御方法、たとえば微小空間を用いた分析などに使用されるラボ・オン・ア・チップ(lab−on−a−chip)などに設けられたマイクロ流路内の流体を制御するマイクロデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ラボ・オン・ア・チップに代表される数センチないし数ミリの超小型の生化学分析デバイス(マイクロデバイス)には、マイクロポンプ、マイクロリアクタ、マイクロ電極、マイクロヒータ、制御回路、スイッチングバルブなどが設けられており、これらのリアクタやリザーバーなどとを連通し、被験試料をリアクタに導入したりリザーバーから試薬や洗浄液などを供給するためにミクロンオーダーの幅のマイクロ流路が設けられている。
【0003】
分析に用いる流体には、たとえば血液・タンパク質・遺伝子などを含む溶液、微生物・動植物細胞などの成分を含む溶液、各種化学物質を含む環境水、土壌抽出水など、さらにはそれらの分析に使用する各種の試薬、バッファー液、洗浄水など種々のものがある。
【0004】
近年、マイクロリアクタやマイクロチップ等のマイクロ流路については、数多く研究や開発がなされている。しかし、前記のようなマイクロデバイスにおいて、流体を制御するための機構については、まだ標準仕様となり得るものは定まっていない。
【0005】
マイクロデバイスの流体制御方法やその機構については、これまでに各種の構成のものが提案されている。一般的に、マイクロ空間に用いられるバルブ機構としては、マクロ系と同様に、1)流路を機械的に切り替える方法、2)流路を物で隔てる方法、がありマイクロ系特有の方法としては、3)流路の幅を変える等の表面張力を利用する方法等がある(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【0006】
例えば、特許文献1では、第1の流路を有する第1の部材と、第1の部材に隣接して第1の流路に連通可能な第2の流路を有する第2の部材と、を備え、第1の部材と第2の部材とを相対的に移動させることで、第1の流路と第2の流路とを連通させたり遮断させたりするバルブ装置が提案されている。
【0007】
また、特許文献2では、メンブレンの変位を利用したバルブ機構が提案されている。このバルブ機構は、第1、第2のマイクロ流路と弁座を備えた第1の部材と、メンブレンの変位を収容する収容部を備えた第2の部材と、これらの第1、第2の部材間に配されたメンブレンと、を備えている。これによれば、メンブレンが変位して弁座に着座したり離隔したりすることで、マイクロ流路内のバルブ機構を発現するとされている。
【0008】
また、特許文献3では、主流路よりも流路断面積を小さくし、且つ疎水化した流路をバルブとして用いるパッシブバルブ機構が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−83510号公報
【特許文献2】特開2004−33919号公報
【特許文献3】特開2005−114430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記1)のような方法では、装置の構造が複雑化し、装置も大型化するといった問題があり、マイクロ流路を有するマイクロデバイスの流体制御機構には適さない。また、前記2)のような方法では、流路を隔てる物の隙間から流体が染み出したり、構造が劣化したりするといった問題がある。また、前記3)のような表面張力を利用した方法では、圧力の変動により精度良くバルブ機構を制御することが困難であった。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、安価かつ量産可能なシンプルな構成で、且つ等価直径が1mm以下のマイクロ流路を流れる流体の流通を精度良く制御することができるマイクロデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下の通りである。
(1)マイクロ流路中の流体の流動挙動を制御するマイクロデバイスであって、該流路に流体を供給するための供給を有する第1流路と、前記第1流路とは別に流路内の気密性を制御するための制御口を有する第2流路と、前記第1流路及び第2流路を連結する第3流路とが設けられたマイクロデバイス。
(2)前記制御口に気密性を保つためのシールが設けられ、前記シールを破ることにより流路内の流体の流動挙動を制御することを特徴とする(1)記載のマイクロデバイス。
(3)前記制御口の機密性を保つためのシールがフィルムからなり、熱溶着、粘着剤、接着剤によって貼り合わされていること特徴とする(1)又は(2)記載マイクロデバイス。
(4)気密性を制御する機能を有する装置を前記制御口に接続させ、機械的な動作によって制御口を開閉させ流路内の気密性を制御することにより流路内の流体の流動挙動を制御することを特徴とする(1)記載のマイクロデバイス
(5)前記第3流路の流路断面積が25000平方マイクロメートル以下であることを特徴とする(1)〜(4)いずれか記載のマイクロデバイス。
(6)前記第3流路の断面積が不連続に変化することを特徴とする(1)〜(5)いずれか記載のマイクロデバイス
(7)流路を構成する材質表面の流体に対する接触角が20度以上であることを特徴とする(1)〜(6)いずれか記載のマイクロデバイス。
(8)材質がポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィン、アクリル、ポリメチルメタアクリレート、ポリカーボネート、及びナイロンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)〜(7)いずれか記載のマイクロデバイス
【発明の効果】
【0013】
本発明のマイクロデバイスによれば、安価かつ量産可能なシンプルな構成で、且つ等価直径が1mm以下のマイクロ流路を流れる流体の流通を精度良く制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態としての微量流体操作可能なマイクロデバイスを説明するための平面図である。
【図2】本発明の一実施形態としての微量流体操作可能なマイクロデバイスを説明するための断面図である。
【図3】本発明の一実施形態としての微量流体操作可能なマイクロデバイスを説明するための平面図である。
【図4】本発明にかかるマイクロデバイス構造の一例を示す断面図である。
【図5】本発明にかかるマイクロデバイス構造の一例を示す断面図である。
【図6】本発明にかかるマイクロデバイス構造の一例を示す断面図である。
【図7】本発明にかかるマイクロデバイス構造の一例を示す平面図である。
【図8】本発明にかかるマイクロデバイス構造の一例を示す平面図である。
【図9】本発明にかかるマイクロデバイス構造の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の発明者は、微細な流路内で流体が流通する際の、流路内の気密性に対する流体の挙動に着目し、流路内の気密性を制御することで、微量流体を再現性よく制御できる、即ち、種々の流体を制御する際に、予めその流体と微細な流路との関係、流路内の気密性を制御しておくことで、様々な物性を示す流体に対して再現性よく定量的に微量な流体を操作できることを見出し、本発明を創案した。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変形して実施することができる。
【0016】
本発明に係るマイクロデバイスについて、図面に従って好ましい実施形態について説明する。図1はマイクロデバイス1の概略部分平面図、図2はI−II方向の断面図である。流体を供給する供給口(2)と、供給口(2)に連結する流路A(7)と、流路の気密性を制御する制御口B(3)及びC(4)と、制御口に連結する第2流路B(8)及びC(4)と、第1流路A(7)と第2流路B(8)とを接続する第3流路D(5)と、第1流路A(7)と第2流路C(9)とを接続する第3流路E(6)とがそれぞれ設けられている。
【0017】
第3流路D(5)は第1流路A(7)と第2流路B(8)、第3流路E(6)は第1流路A(7)と第2流路C(9)と連通しており、第3流路D(5)及びEの断面積は、第1流路A(7)、第2流路B(8)、第2流路C(9)よりも小さくなるように形成されている。さらに、第3流路D(5)及びEの接続する境界部分の断面積は、不連続に変化するように形成されている。
本発明に係るマイクロデバイスでは、制御口の開閉により流路内の気密性を制御し、第1流路A(7)から第2流路B(8)またはCへ流れ込む流体を制御することができる。
【0018】
第一段階で第1流路A(7)から第2流路C(9)に流体を流し、第二段階で第1流路A(7)から第2流路B(8)に流体を流す場合について、図3A、Bを用いて説明する。図3A、Bにおいて図1、図2と同符号のものは、同様のものを表す。
使用時には、まず、制御口C(4)を開放状態にして第2流路C(9)内の気体を出入りできるようにしておき、また制御口B(3)を密閉状態にして、第2流路B(8)内の気体が逃げられないようにしておく。図3A、Bに示される制御口B(3)及びCについて、内側が黒く塗りつぶされた丸は制御口が閉じていることを示し、内側が白く抜けている丸は制御口が開いていることを示す。
【0019】
はじめに、前記供給口(2)より流体を導入する。ここでは、流体を導入する際には、一定圧力で外部ポンプより外部ポンプを利用することにより供給口(2)から流体を一定の圧力で流体を流すことができる。導入方法は任意であり、シリンジなどを用いて人の手で導入してもよい。
【0020】
導入開始後、流体が第3流路E(6)と第1流路A(7)との接続部まで来ると、流体は導入圧力によって図3Aで示すように、第3流路E(6)内に進入し、さらに第3流路E(6)を通じて第2流路C(9)内へと進入する。図3A中の矢印は試料流体の動きを示すものであり、また、図中において試料流体が充填された部分を網掛け部分で示し、流体を表わす。進入した流体は第3流路C(9) 全体を満たす。このとき、第3流路D(5)及び第2流路B(8)内に満たされた気体は制御口B(3)が塞がっているために逃げることができず、第3流路D(5)において流体に大きな圧力が発生し、第1流路A(7)から第3流路D(5)に流体が入ることができない。
また、マイクロデバイスの構造によっては、気体は圧縮性流体であるため第1流路A(7)の流体が第3流路D(5)への進入することができる場合がある。しかしながら、第3流路D(5)から第2流路B(8)への進入をすることができない。
【0021】
ついで、制御口B(3)を密閉状態から開放状態にする。この変更により前記第2流路B(8)内の気体が流路外に逃げ出すことができる。図3Bに示すように、前記第3流路E(6)及びCと同様に第1流路A(7)から導入された流体が、第3流路D(5)及び第2流路B(8)へ流れることができる。
【0022】
本発明に係る制御流路内の気密性の制御方法は、流路内の気密性を制御できる機構であればいかなる構造でも可能である。
【0023】
制御流路内の気密性の制御方法について、マイクロデバイス自身に気密性を制御する機能を持たせる場合には、図4で示すように、制御口にシールをしておき必要に応じ穴を開けることでマイクロ流路内の流体を制御することを達成することができる。この構造は、簡便かつ安定に流体を制御するマイクロデバイスにおいて、作製が簡便であり、量産化に適した構造となっている。
【0024】
シール部材の材質としては、アルミ箔、シリコーンゴム、ウレタンゴム、プラスチックシートなどが好ましく、金属針やプラスチックチューブで突き破ることが簡単なアルミ箔、ポリエステルシートであることがより好ましい。
【0025】
シール方法は、マイクロデバイスの生産性を考慮するとラミネート溶着、接着剤、粘着剤などが好ましく、ラミネート溶着、接着剤、粘着剤は溶着時間が短時間かつ密閉性に優れることからより好ましい。
【0026】
制御流路内の気密性の制御方法について、マイクロデバイスを使用する分析装置に流路内の気密性を制御する機能を持たせる場合には、制御口に密着可能な蓋を接続させシールしこの蓋を機械的に開閉する方法(図5)、前記部材を通じて流路空間と機械的なバルブまたはポンプと接続させ制御する方法(図6)、などが挙げられる。
【0027】
制御口に密着可能な蓋を接続させシールしこの蓋を機械的に開閉する方法について、
前記蓋の材質としては、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、二トリルゴム、PDMS、フッ素ゴム、ポリウレタンゴム、プラスチック等が挙げられ、制御口に密着するように押し当てるようにして蓋をすることで、流路内の気密性を達成することができる。
【0028】
前記蓋を通じて流路空間と機械的なバルブと接続させ制御する方法について、
バルブの種類としては、ダイヤフラムバルブ、ボールバルブ、コック、バタフライバルブ、ゲートバルブ、ストップバルブ、ニードルバルブ、ピンチバルブ、チェックバルブボールバルブ、ダイヤフラムバルブ、ゲートバルブ等が挙げられ、流路空間と連通する空間を機械的に開閉することにより、流路内の気密性を達成することができる。
【0029】
前記部材を通じて流路空間と機械的なポンプと接続させ制御する方法について、
ポンプの種類としては、電磁プランジャポンプ、シリンジポンプ、チューブポンプ、スクリューポンプ、ペリスタポンプ等が挙げられ、流路空間と連通する空間を機械的に気体の出し入れを行うことにより、流路内の気密性を達成することができる。
【0030】
次に、図7,8,9を用いて適切な接続する流路について説明する。
【0031】
図7には、マイクロデバイス中の流路形状の一部を示す。前述したように、第1流路A(7)、第2流路B(8)、第3流路D(5)に関して、第1流路A(7)と第2流路B(8)との間に第1流路A(7)の側から第2に向かって第3流路D(5)が橋渡しをするような構造である。好ましくは、第3流路D(5)は第1流路A(7)及び第2流路B(8)よりも小さい断面積を有する。原理的に、第3流路D(5)の断面積が小さければ、流体の表面張力によって第3流路D(5)の第2流路B(8)への開口部で停止する圧力が生じる。しかし、実際にはこの圧力条件のみで再現性良く種々の流体を操作するのは困難である。
【0032】
また、第3流路D(5)において、第1流路A(7)と第2流路B(8)との境界部分の前後の断面積は不連続であることが望ましい。これは第3流路D(5)に毛管引力及び毛管斥力が働く場合においてでも、流路を通過する際に必要な圧力が不連続に大きく増大するため、こうした構造は流体の制御において再現性の向上と操作の安定性の向上に寄与する。しかしながら、流体に対するマイクロデバイスの表面接触角が20°以下の親水性表面を有する流路の場合、毛管引力が大きく、本発明の機能が十分に達成されない。好ましくは、表面接触角が20°以上の材質を用いることが望ましい。
【0033】
第2流路B(8)は直菅の流路だけでなく、図8のように変形してもよい。第3流路D(5)と第1流路A(7)との接続部分は、エアベントによって区切られた限定された空間(チャンバー構造)であることが望ましい。この際、図9にあるように、片側が封管になっている構造でもよい。
【0034】
また、前記の各流路A(7),B(8),D(5)の容積はピコリットルからマイクロリットルオーダーの大きさに形成されていることが好ましい。したがって、前記の流路構造によれば、単純な構成により、簡単な操作のみで、ピコリットルからマイクロリットルオーダーの流体の流れを制御することができる。流体制御の再現性の向上と操作の安定性の向上に寄与するからである。
【0035】
さらに、第3流路D(5)の最小断面積は、通常25000平方マイクロメートル以下、好ましくは20000平方マイクロメートル以下であることが好ましい。これにより、第3流路D(5)で流体を確実に制御することができる。また、マイクロデバイスは2枚を積層した形状に限定されるものではなく、必要に応じて任意の複数枚を積層して作成することもできる。流路断面積の下限は、事実上作成可能なものであればよく、特に限定するものではない。
【0036】
ここでマイクロ流路とは、流路に流体を導入したときに、マイクロ効果が現れる、即ち、流体に何らかの挙動変化が現れる断面形状を有するチャネルを意味する。マイクロ効果の発現は、流体の物性によっても異なるが、断面形状、即ちマイクロチャネルの主流方向に垂直な形状のうち、最も短い間隔(長方形なら短辺、楕円なら短径に相当する)の長さが通常5mm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは200μm以下が適当である。この長さの下限は特に制限されず、マイクロチャネルとしての機能を有する長さであれば良い。
【0037】
前記マイクロデバイス とは、流路構造を含む部分の部材を広く意味するものである。マイクロデバイス の大きさ、形状は特に限定されず、その用途に応じて任意に設定することができる。前記マイクロデバイス1 は、例えば物質の分離、分析、生化学反応、化学反応、タンパク質結晶化などに用いられるものである。このマイクロデバイス1 は、用途上、使い捨てあるいは制限された回数のみの使用で交換されることが好ましいが、恒久的に使用してもかまわない。この場合、分注器あるいは測定器などの機器と一体の微量流体操作装置として構成されることも考えられるが、その場合も、流路構造を含む部分の部材はマイクロデバイス という。なお、試料流体操作装置を、マイクロデバイス の取り外し可能に形成しても良いことはいうまでもない。
【0038】
マイクロデバイスの材料は、前記流路構造を実現できる限りその種類を問わない。材料の具体例としては、ポリジメチルシロキサン( P D M S ) 、ガラス、シリコン、光反応性樹脂やその他の樹脂、金属、セラミック及びそれらの組み合わせなどが挙げられる。生産性の観点より、樹脂が好ましい。
【0039】
マイクロデバイスの製造方法は、前記流路構造を実現できる限り任意である。製造方法の具体例としては、機械加工、射出成型や圧縮成型に代表される転写技術、ドライエッチング(RIE,IE,IBE,プラズマエッチング,レーザーエッチング,レーザーアブレーション,ブラスト加工,放電加工,LIGA,電子ビームエッチング,FABなど)、ウエットエッチング(化学侵食)、光造形やセラミックス敷詰等の一体成型、各種物質を層状にコート、蒸着、スパッタリング、堆積し、部分的に除去することにより微細構造物を形成するS u r f a c e M i c r o - m a c h i n i n g、1枚以上のシート状物質( シート、テープ等) により開口部分を形成して溝を形成する方法、インクジェットやディスペンサーにより流路構成材料を滴下、注入して形成させる方法を含む。
【0040】
通常は2つ以上の材料の貼り合わせによって加工できる。貼り合わせ法としては、接着剤による接着、プライマーによる樹脂接着、拡散接合、陽極接合、共晶接合、熱融着、超音波接合、レーザ溶融、溶剤・溶解溶媒による貼り合わせ、粘着テープ、接着テープ、圧着、自己吸着剤による結合、物理的な保持、凹凸による組み合わせが挙げられる。
【0041】
前記の製造方法と貼り合わせの方法により、図2で示すように、基材Aと基材Bを貼り合わせることで本発明に使用するマイクロデバイスを作製することができる。図2では、制御口を基材Bにあるように示したが、基材Aにあってもよい。簡便かつ、安定的な製造の観点から、好ましくは第一に基材Aに流路形状及び制御口を有する形状を作製し、第二に平滑な面をもつ基材Bを貼り合わせる作製工程が望ましい。特に基材Bは、150μm以下のフィルムを用いることが望ましい。
【実施例】
【0042】
次に、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。図1に示されるマイクロデバイスを使用して、流体を制御する試験を行った。
【0043】
(実施例1)
水に対する接触角が約80度以上のポリスチレン製(PSジャパン株式会社製、HF77)のプラスチック板材に、図1に示すように、大きさ0.5mmφの供給口(2)と、0.2mmφの制御口B(3)及び制御口C(4)と、幅:500μm、深さ:200μmの第1流路A(7)と、幅:500μm、深さ:200μmの第2流路B(8)及び第2流路C(9)と、幅:100μm、深さ:50μmの第3流路D(5)及び第3流路E(6)とを、それぞれドリル加工にて作製した。
【0044】
この加工板の表面にポリスチレン製の平滑な面を有するプラスチック板材を熱溶着により貼り合わせを行った。これらの工程により、マイクロデバイス1を得た。
【0045】
制御口B(3)に粘着性のシール(中興化成工業株式会社製、チューコーフロー粘着テープ 0.18厚)を貼り付け、制御口を密閉した状態で、マイクロピペットを用いて着色水を供給口(2)から導入した。その結果、流体は第1流路A(7)と、制御口C(4)が開放されているため、第3流路E(6)と、第2流路C(9)とへ進入したが、第3流路D(5)、第2流路B(8)へは進入せずに流体の制御を行うことができた。マイクロピペットで、さまざまな流速を変化させ、流体の導入を試したが、いかなる流速においても同様の結果となった。
【0046】
さらに、制御口B(3)に貼られたシールを針で穴あけたマイクロデバイスに、マイクロピペットを用いて着色水を供給口(2)から導入した。その結果、流体は第3流路D(5)と第2流路B(8)とへ進入し、流体を制御することができた。マイクロピペットで、さまざまな流速を変化させ、流体の導入を試したが、いかなる流速においても同様の結果となった。
【0047】
(実施例2)
水に対する接触角が50度以上のアクリル製(住友化学株式会社製、LG2)のプラスチック板材に、図1に示すように、大きさ0.5mmφの供給口(2)と、0.2mmφの制御口B(3)及び制御口C(4)と、幅:500μm、深さ:200μmの流路A(7)と、幅:500μm、深さ:200μmの流路B(8)及び流路C(9)と、幅:100μm、深さ:50μmの流路D(5)及び流路E(6)とを、それぞれドリル加工にて作製した。
【0048】
この加工板の表面にポリスチレン製の平滑な面を有するプラスチック板材を熱溶着により貼り合わせを行った。これらの工程により、マイクロデバイス1を得た。
【0049】
制御口B(3)に粘着性のシール(中興化成工業株式会社製、チューコーフロー粘着テープ 0.18厚)を貼り付け、制御口を密閉した状態で、マイクロピペットを用いて着色水を供給口(2)から導入した。その結果、流体は第1流路A(7)と、制御口C(4)が開放されていることにより、第3流路E(6)と、第2流路C(9)とへ進入したが、第3流路D(5)、第2流路B(8)へは進入せずに流体の制御を行うことができた。マイクロピペットで、さまざまな流速を変化させ、流体の導入を試したが、いかなる流速においても同様の結果となった。
【0050】
さらに、制御口B(3)に貼られたシールを針で穴あけたマイクロデバイスに、マイクロピペットを用いて着色水を供給口(2)から導入した。その結果、流体は第3流路D(5)と第2流路B(8)とへ進入し、流体を制御することができた。マイクロピペットで、さまざまな流速を変化させ、流体の導入を試したが、いかなる流速においても同様の結果となった。
【0051】
(実施例3)
水に対する接触角が約80度以上のポリスチレン製(PSジャパン株式会社製、HF77)のプラスチック板材に、図1に示すように、大きさ0.5mmφの供給口(2)と、0.2mmφの制御口B(3)及び制御口C(4)と、幅:500μm、深さ:200μmの第1流路A(7)と、幅:500μm、深さ:200μmの第2流路B(8)及び第2流路C(9)と、幅:100μm、深さ:50μmの第3流路D(5)及び第3流路E(6)とを、それぞれドリル加工にて作製した。
【0052】
この加工板の表面にポリスチレン製の平滑な面を有するプラスチック板材を熱溶着により貼り合わせを行った。これらの工程により、マイクロデバイス1を得た。
【0053】
制御口B(3)に接着剤を用いてチューブ(ニチアス株式会社製、PFAチューブ )を接着し、制御口B(3)とチューブの接続部が密閉していることを確認した。前記チューブに三方コックを接続し、三方コックを調節することにより、チューブ内の気密性を制御できることを確認した。三方コックでチューブ内を密閉した状態で、マイクロピペットを用いて着色水を供給口(2)から導入した。その結果、流体は第1流路A(7)と、制御口C(4)が開放されていることにより、第3流路E(6)と、第2流路C(9)とへ進入したが、第3流路D(5)、第2流路B(8)へは進入せずに流体の制御を行うことができた。マイクロピペットで、さまざまな流速を変化させ、流体の導入を試したが、いかなる流速においても同様の結果となった。
【0054】
さらに、前記三方コックを開いた状態で、マイクロピペットを用いて着色水を供給口(2)から導入した。その結果、流体は第3流路D(5)と第2流路B(8)とへ進入し、流体を制御することができた。マイクロピペットで、さまざまな流速を変化させ、流体の導入を試したが、いかなる流速においても同様の結果となった。
【0055】
(比較例1)
実施例1のマイクロデバイスにおいて制御口B(3)、Cとも開放したマイクロデバイスに、マイクロピペットを用いて着色水を供給口(2)から導入した。その結果、流体は第1流路A(7)と、第3流路D(5)と、第3流路E(6)と、第2流路B(8)と、第2流路C(9)とすべての流路へ進入し、流体の制御を行うことはできなかった。
【0056】
(比較例2)
実施例2のマイクロデバイスにおいて制御口B(3)、Cとも開放したマイクロデバイスに、マイクロピペットを用いて着色水を供給口(2)から導入した。その結果、流体は第1流路A(7)と、第3流路D(5)と、第3流路E(6)と、第2流路B(8)と、第2流路C(9)とすべての流路へ進入し、流体の制御を行うことはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明を利用することにより、特殊な装置を必要としない簡単でかつ安価で、再現性のより流体制御を可能とするマイクロデバイスを提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1 マイクロデバイス
2 供給口
3 制御口B
4 制御口C
5 第3流路D
6 第3流路E
7 第1流路A
8 第2流路B
9 第2流路C
10 基材A
11 基材B
12 シール部材
13 制御口開閉装置部材
14 バルブまたは、ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流路中の流体の流動挙動を制御するマイクロデバイスであって、該流路に流体を供給するための供給を有する第1流路と、前記第1流路とは別に流路内の気密性を制御するための制御口を有する第2流路と、前記第1流路及び第2流路を連結する第3流路とが設けられたマイクロデバイス。
【請求項2】
前記制御口に気密性を保つためのシールが設けられ、前記シールを破ることにより流路内の流体の流動挙動を制御することを特徴とする請求項1記載のマイクロデバイス。
【請求項3】
前記制御口の機密性を保つためのシールがフィルムからなり、熱溶着、粘着剤、接着剤によって貼り合わされていること特徴とする請求項1又は2記載マイクロデバイス。
【請求項4】
気密性を制御する機能を有する装置を前記制御口に接続させ、機械的な動作によって制御口を開閉させ流路内の気密性を制御することにより流路内の流体の流動挙動を制御することを特徴とする請求項1記載のマイクロデバイス
【請求項5】
前記第3流路の流路断面積が25000平方マイクロメートル以下であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のマイクロデバイス。
【請求項6】
前記第3流路の断面積が不連続に変化することを特徴とする請求項1〜5いずれか記載のマイクロデバイス
【請求項7】
流路を構成する材質表面の流体に対する接触角が20度以上であることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載のマイクロデバイス。
【請求項8】
材質がポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィン、アクリル、ポリメチルメタアクリレート、ポリカーボネート、及びナイロンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載のマイクロデバイス

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−25127(P2011−25127A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171933(P2009−171933)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】