マイクロニードルおよびマイクロニードルの製造方法
【課題】マイクロニードルおよびマイクロニードルの製造方法を提供する。
【解決手段】プラスチックのマイクロニードルは、大きい方の端部から先端部に向かってテーパが付いた本体部と、少なくとも1つの側部ポートと、マイクロニードルの本体部の大きい方の端部から本体部の中に延びる内腔とを備え、側部ポートと内腔が互いに流体連通するように、側部ポートが内腔の中へ延びる。
【解決手段】プラスチックのマイクロニードルは、大きい方の端部から先端部に向かってテーパが付いた本体部と、少なくとも1つの側部ポートと、マイクロニードルの本体部の大きい方の端部から本体部の中に延びる内腔とを備え、側部ポートと内腔が互いに流体連通するように、側部ポートが内腔の中へ延びる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義にはマイクロニードル、マイクロニードルの構造、マイクロニードルの製造方法、およびマイクロニードルの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロニードルなどの微細構造体は、例えば身体への薬の投与など様々な技術分野で利用されている。薬は、例えば注射によって身体に投与することができる。典型的な注射の操作は針付きのシリンジを必要とし、針を用いてまず皮膚を破り、次いで針を挿入して身体内の所望の深さに達した後、薬を身体内に注入する。例えば皮膚の表皮層内の身体の様々な部分に薬を送達する経皮送達など、身体内へ薬を送達する様々な方法が存在する。一般にマイクロニードルは、身体内に薬を投与するために皮膚を貫通するのに必要なだけ鋭く、頑強であるべきである。
【0003】
従来のマイクロニードルは、例えばシリコン(Si)、プラスチックまたは金属で製造される。周知のプラスチックのマイクロニードルは、通常はその先端の尖鋭度が限られ、一般に皮膚を貫通するほど強くない。プラスチックのマイクロニードルを製造する1つの周知の方法は、傾斜式のLIGA(Lithografie(リソグラフィ)、Galvanoformung(電鋳)、Abformung(成形))工程の使用を伴う。この方法の1つの欠点は、必要な設備のコストが高いこと、および高価な感光性材料を使用することである。
【0004】
シリコンのマイクロニードルは通常、原料としてシリコン・ウェハを使用し、クリーン・ルーム環境を必要とするウェハ製造技術を利用して製造される。シリコンのマイクロニードルの1つの欠点は、クリーン・ルームおよびウェハ製造設備の設置および維持に高い資本投資を要し、製造コストが高いため、シリコンのマイクロニードルが一度使うだけの使い捨ての製品として不適切なことである。
【0005】
金属のマイクロニードルは通常、Siまたはプラスチックの型の金属被覆、およびその後の型を溶解する解放工程によって製造することができる。したがって、金属のマイクロニードルの製造工程ごとに新しい型を作製しなければならない。
【0006】
さらに、マイクロニードルの周知の製造方法は通常、コスト効率が悪く、マイクロニードルの大量生産には適さない特別注文または専用の装置の使用を伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、前述の問題の少なくとも1つに対処する、またはそれを克服することを企図するマイクロニードル、ならびにマイクロニードルを製造するための方法および装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、プラスチックのマイクロニードルであって、大きい方の端部から先端部に向かってテーパが付いた本体部と、少なくとも1つの側部ポートと、マイクロニードルの本体部の大きい方の端部から本体部の中に延びる内腔とを備え、側部ポートと内腔が互いに流体連通するように、側部ポートが内腔の中へ延びるマイクロニードルが提供される。
【0009】
側部ポートは、マイクロニードルの本体部の側面に配設することができる。
【0010】
マイクロニードルは、マイクロニードルの本体部の対向する側面に配設された2つの側
部ポートを備えることができる。
【0011】
マイクロニードルはさらに、本体部の先端部に成形され、マイクロニードルの頂端を形成する拡張先端部を備えることが可能であり、拡張先端部は、先端部から延びる実質的に細長い突起を備えている。
【0012】
拡張先端部の形状は、実質的に本体部の形状と同じでも異なってもよい。
【0013】
マイクロニードルは、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなるポリマーの群の少なくとも1つから製造することができる。
【0014】
マイクロニードルの本体部は、角錐形、円錐形、六角形などとすることができる。
【0015】
マイクロニードルは、射出成形または注型成形を用いて製造することができる。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、マイクロニードルの配列を含むプラットフォーム部材が提供される。
【0017】
本発明の第3の態様によれば、プラスチックのマイクロニードルを製造する方法であって、大きい方の端部から先端部に向かってテーパが付いた本体部を形成すること、少なくとも1つの側部ポートを形成すること、およびマイクロニードルの本体部の大きい方の端部から本体部の中に延びる内腔を形成することを含み、側部ポートと内腔が互いに流体連通するように、側部ポートが内腔の中へ延びる方法が提供される。
【0018】
当該の方法は、本体部の先端部にマイクロニードルの頂端を形成する拡張先端部を成形することをさらに含み、拡張先端部は先端部から延びる実質的に細長い突起を備えている。
【0019】
当該の方法は、マイクロニードルのポジティブ形(positive shape)を備えた母型を形成すること、母型を用いて、マイクロニードルのネガティブ形(negative shape)の外面を備えたキャビティを含む第2の型を形成すること、および第2の型を用いてマイクロニードルを形成することを含むことができる。
【0020】
当該の方法は、マイクロニードルのポジティブ形を備えた母型を形成すること、母型を用いて、マイクロニードルのネガティブ形の外面を備えたキャビティを含む中間型を形成すること、および中間型を用いて、マイクロニードルのネガティブ形の外面を画定するキャビティを含む第2の型を形成することを含むことができる。
【0021】
中間型はポリマーで製造することができる。
【0022】
母型におけるマイクロニードルのポジティブ形は、精密なワイヤカットによって作製することができる。
【0023】
第2の型は金属で製造することができる。
【0024】
当該の方法は、第2の型のキャビティをポリマーで充填して、マイクロニードルを形成することをさらに含むことができる。
【0025】
当該の方法は、インサート部材を提供すること、インサートの先端縁部がマイクロニードルのネガティブ形の外面と交わるようにインサート部材を受け入れ、整列させるための少なくとも1つの溝孔部をさらに備えた第2の型を提供すること、インサート部材を第2の型に挿入すること、および第2の型を充填材料で充填することをさらに含むことが可能であり、インサートはマイクロニードルの中に内腔を作製し、インサートの先端縁部がマイクロニードルのネガティブ形の外面と交わることによって、内腔と側部ポートが互いに流体連通するように内腔の中へ延びる側部ポートが作製される。
【0026】
マイクロニードルのネガティブ形の外面は、マイクロニードルの拡張先端部を形成するための、マイクロニードルのネガティブ形の頂端から延びる流路を備えることができる。
【0027】
当該の方法は、流路を少なくとも部分的に充填して拡張先端部を形成することをさらに含むことができる。
【0028】
本発明の第4の態様によれば、身体に液体を注入するためのマイクロニードルの使用が提供される。
【0029】
本発明の第5の態様によれば、身体から体液を抽出するためのマイクロニードルの使用が提供される。
【0030】
身体からの体液の抽出には、全血のサンプリングを含むことができる。
【0031】
図面と共に例示のためのみに以下に記載される説明から、当業者には本発明の実施形態がより適切に理解され、容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(a)はマイクロニードルの断面図の概略図である。(b)は皮膚への薬の分配を示す、(a)のマイクロニードルの概略図である。
【図2】他のマイクロニードルの断面図の概略図である。
【図3】(a)は他のマイクロニードルの顕微鏡写真である。(b)は(a)のマイクロニードルの接写した顕微鏡写真である。
【図4】(a)は拡張先端部を有していないマイクロニードルの一部の概略図である。(b)は拡張先端部を有するマイクロニードルの一部の概略図である。
【図5】(a)〜(d)はマイクロニードルの製造に用いられる型の概略図である。
【図6】マイクロニードルの製造に用いられる型半体の一部の概略図である。
【図7】マイクロニードルの製造に用いられる他の型半体の断面図の概略図である。
【図8】他のピンの等角図の概略図である。
【図9】他のピンの等角図の概略図である。
【図10】他のピンの等角図の概略図である。
【図11】(a)〜(c)はマイクロニードルの製造に用いるための第2の型を製造する工程の概略図である。
【図12】(a)〜(d)はマイクロニードルの製造に用いるための第2の型を製造する他の工程の概略図である。
【図13】(a)〜(c)は中間型を製造する工程の概略図である。
【図14】(a)〜(c)は中間型を製造する他の工程の概略図である。
【図15】(a)〜(d)は中間型を用いて第2の型を製造する工程の概略図である。
【図16】(a)は他のマイクロニードルの概略図である。(b)はマイクロニードルのモジュールを形成するためにプラットフォーム上に組み立てられた、(a)の複数のマイクロニードルを示す図である。
【図17】経皮的な薬の送達方法を示す概略図である。
【図18】側部ポートおよび拡張先端部を有するマイクロニードルの配列の顕微鏡写真である。
【図19】(a)〜(c)マイクロニードルを皮膚に適用する前に、どのように皮膚を圧迫し伸ばすかについての概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1(a)に、マイクロニードル100の概略図を示す。マイクロニードル100は、本体104、先端106、2つの分配部108、およびマイクロニードル100の本体104の中に延びる内腔110を備えている。本体104は、本体104の大きい方の端部102から本体104の先端106に向かってテーパが付いている。2つの分配部108は、マイクロニードルの側部に位置し(したがって側部ポートと呼ぶ)、対向する側壁112(すなわち、マイクロニードル100の本体104の対向する面112)上の、マイクロニードル100の先端106から特定の距離を隔てたところに配設されている。内腔110は、内腔110が2つの側部ポート108と流体接続するように、マイクロニードル100の本体104の中を本体104の大きい方の端部102から上方へ先端106に向かって延び、2つの側部ポート108に至る。内腔110は2つの側部ポート108で終わり、側部ポート108とマイクロニードル100の先端106との間にある距離を残す。図1(b)に、薬を送達するために皮膚116を破るマイクロニードル100の概略図を示す。マイクロニードル100によって皮膚116が破かれた後、マイクロニードル100の少なくとも先端106および側部ポート108を含む部分が皮膚116に挿入される。分配される薬は内腔110を通過し、図1(b)に矢印で示すように、側部ポート108を介して皮膚116の中に送達される。
【0034】
他の実施形態では、図2に示すように、マイクロニードル202の側部ポート200はそれぞれ、ポート200の下側部分に、マイクロニードル202の先端206から離れるように(すなわち、マイクロニードル202の本体の大きい方の端部208に向かって)、内側に面取りされた領域204を備えている。内側に面取りされた領域204は、薬をより効率的に分配するのを助け、マイクロニードル202が皮膚に貫入している間、側部ポート200の目詰まりを最小限に抑える。ポートのマイクロニードル202の先端206により近い部分は、マイクロニードルの先端206と共に皮膚を破り、続いて適所で皮膚を広げ保持する目的を果たし、その結果、薬を、側部ポート200を経由して、まず内側に面取りされた領域204によって生成された間隙の中へ、次いで皮膚の中へ分配することが可能になる。
【0035】
埋め込み距離と呼ばれるマイクロニードルの側部ポートと先端の間の距離は、マイクロニードルを用いて皮膚を破るとき、側部ポートのマイクロニードルの先端からの距離が、皮膚を破り圧迫する動作から側部ポートを隔離するのに足りるだけ十分遠いが、側部ポートを皮膚の中に完全に埋め込み、薬をこぼさずに効率的に分配することを可能にするのに足りるだけマイクロニードルの先端に近くなるように選択される。他に考慮すべき問題は、側部ポートがマイクロニードルの先端に近いほど、マイクロニードルの機械的構造が弱くなることである。長さが約1000ミクロンのマイクロニードルの場合、使用される材料、マイクロニードルの形状、ならびに側部ポートの大きさおよび数に応じて、マイクロニードルの先端/頂端からの側部ポートの中心の距離を、約300ミクロン付近、例えば約100〜500ミクロンの間で変えることができる。
【0036】
前述のマイクロニードルでは、それぞれのマイクロニードルが2つの側部ポートを備えている。例えば図1(a)のマイクロニードル100などの中空のマイクロニードル(すなわち、内腔を有するマイクロニードル)の場合、薬の分配を可能にするには、(内腔と流体連通した)少なくとも1つの側部ポートが必要であることを理解すべきである。必要な側部ポートの数は、設計の要求に応じて変えることが可能であることが理解されるであろう。
【0037】
図3(a)に、他のマイクロニードル300の顕微鏡写真を示す。図3(b)には、マイクロニードル300を頂部から見たときの、図3(a)のマイクロニードル300の接写した顕微鏡写真を示す。マイクロニードル300は、2つの側部ポート302に加えて拡張先端部304を備えている。マイクロニードル300は角錐形であり、側部ポート302は本体305の対向する側壁306に位置している。マイクロニードル300の本体305の大きい方の端部308は約400μmであり、マイクロニードル300の拡張先端部304の幅は約50μmである。拡張先端部304は本体305の先端310の上に形成され、マイクロニードル300の頂端312を形成する。拡張先端部304は、マイクロニードル300の先端部310から延びる、実質的に細長い突起を備えている。拡張先端部304は、マイクロニードル300の頂端312を形成する。マイクロニードルの本体305は角錐形であるが、特定の用途の要求に応じて、例えば円錐形、六角形などの他の形も可能であることを理解すべきである。拡張先端部304の形状は、本体305の形状と実質的に同じでも異なってもよいことが理解されるであろう。拡張先端部304は、必要な場合には設計の要求に応じて、例えば50μm未満など他の寸法のものも可能である。
【0038】
前述のマイクロニードルは、例えば様々な等級のポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)などのポリマー、特にポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの生体適合性ポリマーから製造することができる。マイクロニードルを製造するために用いられるポリマーのタイプは、特定用途のために設計されたマイクロニードルの特定の寸法に適した、ポリマーの特有の機械的特性に基づいて選択される。さらに、マイクロニードルの補強および/または導電性のために、各ポリマーを添加剤で満たすことができる。
【0039】
図4(a)および(b)は、皮膚の角質層(SC)408を破るために用いられる、拡張先端部を有していないマイクロニードル402、および拡張先端部406を有するマイクロニードル404の一部の概略図である。図4(a)および(b)には、マイクロニードル402、404の側部ポートは示されていない。図4(b)のマイクロニードル304の拡張先端部406は、拡張先端部を有していないマイクロニードル402の先端410と同じ幅を有している。(粘弾性でもある)大きく変形することができる皮膚の性質により、マイクロニードル402の先端410との最初に接触によって、マイクロニードル402の前進行程の有効な部分に対して皮膚が変形し伸ばされた後、SC408の裂け目が生じる。この変形段階の間、皮膚はマイクロニードル402の形、特に先端410の形状に一致させられる。したがって、拡張先端部を有していないマイクロニードル402と拡張先端部406を有するマイクロニードル404を比べると、「標準の」先端を有する(すなわち拡張先端部を有していない)マイクロニードル402は、皮膚を先端410の形状に完全に一致させる。これによって、図4(a)に示すように、皮膚とマイクロニードルの間により大きい有効な接触領域が生じる。図4(a)および(b)では、有効接触領域が太線で示されている。SC408の穿刺または裂け目が生じることが可能になる前に閾値圧力に達しなければならないため、接触領域が大きくなると、マイクロニードル402の先端410によって皮膚に生じる圧力が低下し、加えなければならない力が大きくなるため、SC408を破ることが難しくなる。しかし、拡張先端部406を有するマイクロニードル404の場合、皮膚とマイクロニードル404の間の有効接触領域は、図4(a)の有効接触領域に比べて小さい領域を有する拡張先端部406の頂端412に限られる。有効接触領域が減少する結果、マイクロニードル404によって皮膚に加えられる圧力が高まり、SC408を破るために加えられる力が小さくなる。
【0040】
図5(a)〜(d)に、マイクロニードルを製造するために用いられる型502(図5(d))の概略図を示す。型502は2つの対称な型半体500を含む。したがって、一方の型半体500についてのみ説明する。図5(a)〜(d)の型半体500を用いて、例えば図1(a)および(b)のマイクロニードル100を製造することができる。型半体500は、製造されるマイクロニードル(例えば図1(a)マイクロニードル100)のネガティブ形の外面を画定するキャビティ504、インサート506、およびインサート506をキャビティ504に対して整列させるための2つの溝孔508を備えている。キャビティ504は三角形であり、インサート506は長方形のピンである。図5(b)に示すように、ピン506を型半体500に挿入すると、ピン506の先端縁部510、この場合には、長方形のピン506の先端角部512が、例えば図1(a)のマイクロニードル100の側部ポート108に対応する2つの位置(すなわち、キャビティを画定する2つの対向する壁)でキャビティ504の外面と交わるように、ピン506をキャビティ504と整列させる。それに応じて、2つの溝孔508は、型半体502の中の適所にピン506を整列させ保持するように形成される。ピン506を型502の中で整列させ保持するために、溝孔508の形は、長方形のピン506の先端角部512に対応している。
【0041】
マイクロニードルを成形するために、例えば射出成形を用いて、型502を溶融ポリマーで充填する。例えば注型成形など、他のタイプの成形を用いることもできる。図5(c)および(d)に示すように、2つの型半体500を閉じ、共にしっかりと保持した後、ピン506を型502に挿入し、型キャビティ504に対して整列させる。ピン506の一部は、型502の外に残る。次いで型キャビティ504を、例えば射出成形を用いることによって溶融ポリマーで充填し、マイクロニードルを成形する。溶融ポリマー(図示せず)を適切な圧力で型502に注入し、型502内の型キャビティ504を実質的に充填する。型キャビティ504のピン506によって占められた部分が溶融ポリマーで充填されないように、溶融ポリマーはピン506のまわりを流れ、それにより、図1(a)のマイクロニードル100の内腔110が作製されると同時に、ピン506の先端縁部510と型キャビティ504の外面が交わることによって、図1(a)のマイクロニードル100の側部ポート108が作製される。したがって、前述の製造方法を用いることによって、2つの側部ポートと流体接続する内腔を有するマイクロニードルを製造することが可能になる。
【0042】
図6に、型半体600、例えば図5(a)の型半体500の一部の概略図を示す。マイクロニードル(図6には示さず)の埋め込み距離aは、キャビティ604の先端614から、ピン606の先端縁部610とキャビティ604の外面の交差部までの距離によって決まり、ピン606がキャビティ604の外面と交わる範囲(すなわち図6の距離b)によって、製造されるマイクロニードルの側部ポート(図示せず)の大きさが決まる。
【0043】
型内のキャビティの形は、製造されるマイクロニードルの形によって決まり、三角形以外にも様々な形のものが可能であることが理解されるであろう。マイクロニードルにただ1つの分配部が必要である場合には、ピンの先端縁部を、キャビティの外面と1箇所だけで交わるように製造することができる。したがって、マイクロニードル内に作製される側部ポートの数は、ピンの先端縁部が型キャビティの外面と交わる位置の数によって決まる。これは、型キャビティの形とピンの形を様々に組み合わせることによって実現することができる。例えば六角形のピンを伴う円錐形の型キャビティは、円錐形のマイクロニードルの中に6つのポートを有するようになり、円形のピンを伴う六角錐形のキャビティは、テーパ付きの多角形のマイクロニードルの中にやはり6つの分配ポートを有するようになる。ピンは、設計の要求に応じて長方形以外にも、例えば円筒形、多角形など他の形のものも可能である。したがってピンの形状に応じて、溝孔を円形や多角形などとすることができる。
【0044】
図5(a)〜(d)の型502または型半体500を、例えば並べて配置された複数のキャビティ504を備えるように変更することも可能であることが理解されるであろう。さらに複数の型502を、例えば複数のマイクロニードルまたはマイクロニードルの配列を製造するために互いに積み重ねることができる。
【0045】
図7に、マイクロニードルを製造するために用いられる他の型半体700の断面の概略図を示す。図7の型半体700は、例えば図3(a)および(b)のマイクロニードル300を製造するのに用いることができる。マイクロニードルを製造するために、2つの対称な型半体700を含む型(図7には示さず)が用いられることが理解されるであろう。したがって、一方の型半体700についてのみ示し説明する。
【0046】
型キャビティ702は、ピン(図7には示さず)を整列させ保持するための2つの溝孔704、および図3(a)および(b)のマイクロニードル300の拡張先端部304を作製するように構成された孔706を含む。孔706は一般に、型キャビティ702の頂端708から延びる細長い流路である。
【0047】
マイクロニードルは、例えば射出成形を用いて、型キャビティ702を溶融ポリマーで充填することによって成形することができる。溶融ポリマー(図示せず)を適切な圧力を用いて型に注入し、型内の型キャビティ702を実質的に充填する。
【0048】
溶融ポリマーは一般に粘性があり、したがって型キャビティを充填することが難しい。これは、例えばマイクロニードル、特に寸法が約10〜100ミクロンの大きさになることがあるマイクロニードルの先端または先端に近い部分など、小さい寸法の物体を成形するときに重大な問題となる。マイクロニードルのキャビティ内の空気は、成形中に溶融ポリマーによって押され、マイクロニードルのキャビティ内に捕捉されて、成形された物体の中にボイドを形成する。例えばマイクロニードルのキャビティの先端の近くまたは先端に空気が捕捉されることがあり、その結果得られるマイクロニードルの先端は尖鋭度が低下し、輪郭が不明確になる。
【0049】
例えば図7の孔706などの孔を有する型を用いることによって、溶融ポリマーが型キャビティ702を満たすと、型キャビティ702の中に捕捉された空気が、孔706を介して型の外へ放出されるようにする。型キャビティ702が実質的に溶融ポリマーで充填されると、溶融ポリマーが部分的に孔706を満たし、図3(a)のマイクロニードル300の拡張先端部304を形成するように、溶融ポリマーに対してさらに圧力が加えられる。したがって孔706は、空気を型キャビティ702から外へ放出可能にすることに加えて、マイクロニードル300の拡張先端部304を作製するように構成される。それに応じて、マイクロニードル300の拡張先端部304の長さは、孔706を満たす溶融ポリマーの高さによって決まる。型キャビティの中に捕捉された残りの空気を除去し、溶融ポリマーがマイクロニードルのキャビティに入り、キャビティを満たすのを助けるために、射出成形を真空チャンバ内で行うことができる。さらに、真空オーブンを用いてポリマーを溶融することもできる。
【0050】
図5(a)〜(d)に示す型半体500も、空気を型キャビティ504から外へ放出するために、前述のように型キャビティ504の頂端の近くまたは頂端に形成された孔を備えることが可能であることが理解されるであろう。拡張先端部を有していないマイクロニードル、例えば図1(a)および(b)のマイクロニードル100、または図2のマイクロニードル200を作製するためには、射出成形工程の間、溶融ポリマーが孔をふさがないように、溶融ポリマーに適切な圧力が加えられる。
【0051】
図5(a)〜(d)、図6および図7では、ピン506、606は長方形のインサートである。設計の要求に応じて、ピンが様々な形状を有することが可能であることが理解されるであろう。作製される内腔の形は、ピンの形状によって決まる。一般に、内腔はピンのネガティブ形の外面を画定する。薬を分配する圧力を低減するためにより大きい内腔が必要であるとき、および特定の大きさの側部ポートが必要であるときには、ピンは軸部および先端縁部に、様々な形状および/または寸法を有することができる。あるいは、ピンをテーパ状に製造することもできる。
【0052】
図8に、他のピン800の等角図の概略図を示す。ピン800は、実質的に平坦な頂端部802を有する角錐形である。
【0053】
図9に、他のピン900の等角図の概略図を示す。ピン900は、第1の部分904および第2の部分906を有する本体902を備えている。第1の部分904は、第2の部分906に向かってテーパが付いている。第2の部分906は、第1の部分904から延びる長方形のブロックである。第1の部分904は、面取り部908によって第2の部分906に接続されている。
【0054】
図16に、他のピン1000の等角図の概略図を示す。ピン1000は、第1の部分1004および第2の部分1006を有する本体1002を備えている。第1の部分1004は、第1の部分1004と第2の部分1006の間の中間面1008に向かってテーパが付いている。第2の部分1006は、中間面1008の中央から延びる長方形のブロックである。
【0055】
前述のように、マイクロニードルの製造に用いられる型(例えば、図5(d)の型502または図7の型700)は、製造されるマイクロニードルのネガティブ形の外面を全体的に画定するキャビティを備えている。型を作製する1つの方法は、まずマイクロニードルのポジティブ形を有する母型を作製することである。換言すれば、母型は、製造されるマイクロニードルの形に全体的に対応する突起を備えている。母型上の突起は、精密なワイヤカットまたは他の精密な工学的手段によって製造することができる。次いで、母型上のマイクロニードルの形に対応する突起のパターンを、例えばホット・エンボス加工によって第2の型に移し、マイクロニードルのネガティブ形に対応するキャビティを形成する。図11(a)〜(c)に、マイクロニードルの製造に用いるための第2の型1100を作製する工程の概略図を示す。第2の型1100は、例えば図7の型700の形にすることが可能であり、例えば図3(a)のマイクロニードル300を形成するのに用いることができる。母型1102は、製造されるマイクロニードル(例えば図3(a)のマイクロニードル300)の形に対応する複数の突起1104を備え、最初に作製される。母型1102は工具鋼で製造される。母型1102上の突起1104は、精密なワイヤカットによって作製することができる。一般に、母型1102上の突起1104の形は、製造されるマイクロニードルのポジティブ像(positive image)である。突起1104は、拡張先端部1106を有する角錐形である。突起1104の拡張先端部1106を用いて、第2の型1100の中に孔1114を形成する。突起1104はそれぞれ、突起1104の本体部1116の2つの対向する側壁1114から突出した、2つの三角形の肩部1108を備えている。2つの三角形の肩部1108を用いて、第2の型1100のキャビティ1112の中に溝孔1110を形成する。肩部1116は、必要とされる溝孔1110の形に応じて、他の形状のものとすることも可能であることが理解されるであろう。一般に、肩部1116の形は、第2の型1100の溝孔1110のポジティブ形である。この場合、ピン(図示せず)が長方形であるため、溝孔1110の形は三角形であり、したがって肩部1116も三角形である。
【0056】
第1の加熱されたプラテン1118に取り付けられた母型1102を、第2の加熱されたプラテン1122に取り付けられた金属基体1120にホット・エンボス加工し、基体1120の中に母型1102のネガティブ像(negative image)(したがって、マイクロニードルのネガティブ像)を形成して、マイクロニードルの製造に用いられる第2の型1100を形成する。孔1114が第2の型1100を貫通して延びるように、第2の型1100の基部1124は、例えば研削によって取り除かれる。あるいは、ホット・エンボス加工中、孔1114が基体1120の基部1124を貫通して延びるように(すなわち、基部1124の研削が不要になるように)、母型1100の拡張先端部1106をより長く製造することも可能であることが理解されるであろう。
【0057】
図12(a)〜(d)に、マイクロニードルの製造に用いるための第2の型1200を製造する他の工程の概略図を示す。第2の型1100は、例えば図7の型700の形にすることが可能であり、例えば図3(a)のマイクロニードル300を形成するのに用いることができる。この例では、マイクロフォーミングを用いてマイクロニードルを製造する。突起1204を備えた母型1202を、パンチ1206に取り付ける。金属シート1208がパンチ1206と変形可能なダイ1210との間に位置するように、金属シート1208を変形可能なダイ1210に載せる。金属シート1208は、鋼、アルミニウムおよび銅などの金属材料で製造することができる。金属シート1208の厚さは、約0.05mm〜約0.5mmの範囲とすることができる。しかし設計の要求に応じて、例えば0.5mm超の厚さなど、他の寸法を用いることもできる。母型1202と共にパンチ1206を金属シート1208の方へ移動させ、金属シート1208および変形可能なダイ1210に押し付ける。金属シート1208を変形させ、金属シート1208に母型1202の突起1204のネガティブ形を作製する。したがって、金属シート1208は、形成されるマイクロニードルのネガティブ形の外面を全体的に画定するキャビティ1212を備えるようになる。同時に、変形可能なダイ1210も母型1202の突起1204による変形を受け、突起1204のネガティブ形を画定するキャビティを形成する。次いで、母型1202と共にパンチ1204を引っ込める。図12(b)の変形した金属シート1208を取り除き、キャビティ1212の外面を画定する金属シート1208の面1214に対して、例えば金属蒸着など厚さを補強する工程を実施し、マイクロニードルの製造に用いられる第2の型1200を形成する。金属蒸着の方向を、図12(c)に矢印によって示す。
【0058】
例えば最初に母型を用いて中間型を製造し、続いて中間型を用いて第2の型を製造するなど、第2の型を製造する他の方法も可能である。
【0059】
図13(a)〜(c)に、中間型1300を製造する工程の概略図を示す。先に説明したように、母型1302は、製造されるマイクロニードルの形に全体的に対応する突起1304を備えている。母型1304上の突起1304は工具鋼で作製され、精密なワイヤカットまたは他の精密な工学的手段によって製造することができる。第1の加熱されたプラテン1306に取り付けられた母型1302を、第2の加熱されたプラテン1310に取り付けられたポリマー基体1308にホット・エンボス加工し、ポリマー基体1308の中に母型1302の突起1304のネガティブ像(したがって、マイクロニードルのネガティブ像)を形成する。次いで、結果として得られる、突起のネガティブ像(したがって、マイクロニードルのネガティブ像)を画定するキャビティ1312を備える、エンボス加工されたポリマー基体1300(すなわち中間型)を用いて、マイクロニードルを製造するための第2の型(図13(a)〜(c)には示さず)を製造する。
【0060】
図14(a)〜(c)に、中間型1400を製造する他の工程の概略図を示す。この例示的な工程では、中間型1400は注型成形される。突起1406を備えた母型1402は、注型工程に使用される注型型1408の一部を形成する。図14(b)に示すように、溶融ポリマー1410を注型型1408の中の母型1402の上に加える。溶融ポリマー1410を硬化させ、注型型1408から取り出し、製造されるマイクロニードルのネガティブ形を画定するキャビティ1412を備えた中間型1400を得る。この例では、突起1406は角錐形であり、突起1406はそれぞれ、中間の第2のポリマー型1400の中に空気孔1418を形成するための拡張先端部1416を含む。中間型1400の孔1418の長さは、注型型1408を満たす溶融ポリマー1410の高さによって決まる(図14(b)参照)。
【0061】
図13(a)〜(c)および図14(a)〜(c)に説明するポリマーの中間型は、シートの形では、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)など、注型成形の場合の液体の形では、ポリジメチルシロキサン(PDMS)など、様々なタイプのポリマーで製造することができる。
【0062】
前述の実施形態では、第2の型を製造するのに用いられるポリマーは、第2の型を再利用することができるように、ある特定の弾性および変形特性を有するように選択される。溶融ポリマーを第2の型に注入してマイクロニードルを形成する前に、第2の型に離型剤を塗布するまたは吹き付けることができる。これによって、成形されたプラスチックのマイクロニードルを効果的に解放することが可能になると同時に、その後も使用することができるように第2の型を損傷から保護する。
【0063】
図15(a)〜(d)に、中間型1502を用いて第2の型1500を製造する方法の概略図を示す。中間型1502は、例えば図13(a)〜(c)の中間型1300、または図14(a)〜(c)の中間型1400の形にすることができる。前述のように、中間型1502は、製造されるマイクロニードルのネガティブ形を画定するキャビティ1504を備えている。(例えば化学的析出または蒸着、電鋳、電気めっきなどによって)中間のポリマーの第2の型1502の上、および中間のポリマーの第2の型1502のキャビティ1504の中に、金属層1506を堆積させる。図15(c)に示すように、キャビティ1508を含む堆積した金属層1506を、中間のポリマーの第2の型1502から取り出す。例えばキャビティ1208の外面を画定する堆積した金属層1506の表面1510上で行われる金属蒸着など、厚さを補強する工程を堆積した金属層1506に施し、マイクロニードルの製造に用いられる第2の型1500を形成する。金属蒸着の方向を、図15(c)に矢印によって示す。
【0064】
図16(a)に、他のマイクロニードル1600の概略図を示す。マイクロニードル1600は、先端部1602、内腔1606を含む軸部1604を備えている。軸部1604は、先端部1602の基部1614から延びる全体的に細長い構造である。軸部1604は、実質的に先端部1602の基部1614と同じ幅を有している。設計の要求に応じて、軸部1604が先端部の基部より大きい、または小さい幅を有することが可能であることが理解されるであろう。先端部1602は、側部ポート1608を備えている。側部ポート1608は、側部ポート1608と内腔1606が流体連通するように内腔1606の中へ延びている。マイクロニードル1600が、例えば図3(a)のマイクロニードル300の拡張先端部304など、これまでの例で説明した様々な特徴を備えることが可能であることが理解されるであろう。
【0065】
図16(b)は、マイクロニードルのモジュール1916を形成するためにプラットフォーム1610上に組み立てられた、複数のマイクロニードル1600を示している。プラットフォーム1610は、複数の穴1612を備えている。マイクロニードル1600はそれぞれ、マイクロニードル1600の内腔1606が共通のリザーバ(図示せず)または穴1612に接続された個々のリザーバ(図示せず)と流体接続して、流体を分配または抽出するように、穴1612の中に組み立てることができる。マイクロニードル1600は、例えば図5(a)〜(d)を参照して説明したものと同様の型構造体を用いて製造することができる。
【0066】
マイクロニードル1600の配列は、プラットフォーム1610上の穴1612の配置に応じて得られることが理解されるであろう。例えば穴1612を2次元の配列に配置した場合、2次元配列のマイクロニードル1600を得ることができる。さらに個々のマイクロニードル1600を、プラットフォーム1610とは別々に製造することができる。これにより、基体基部上に一体化して製造される複数のマイクロニードルに比べて、配列の設計における柔軟性が増すと共に、プラットフォームおよび/またはマイクロニードルに使用可能な材料の選択範囲が広がる。基体基部上に一体化して製造される配列では、異なる配列の設計に対して新しい型を作製しなければならない。
【0067】
前述の実施形態で説明したマイクロニードルを、配列として製造することが可能であることが理解されるであろう。マイクロニードルの配列は、例えば約2〜10cm2とすることができる。
【0068】
図17は、経皮的な薬の送達方法を示す概略図である。経皮的な送達方法では、薬(または液体)が皮膚を横断して身体内に投与され、毛細血管(図示せず)の中に拡散する。角質層(SC)1702と呼ばれる皮膚の最外層は、水を通さない層を形成する死細胞を含み、それが身体の外側から身体の内側への薬の輸送を妨げる。SC1702で示す障壁を克服するにはいくつかの方法がある。1つの例は、マイクロニードル1704を用いてSC1702を破り、SC1702に穴をあけ、表皮層1706に挿入することによって薬を浅く皮膚内へ送達することである。理論的には、この薬送達方法は、無痛ではないにしても、痛みを最小限に抑えるはずである。マイクロニードル1704をプラットフォーム1708上に組み立て、例えば図16(b)のマイクロニードルのモジュール1612の形にすることができる。各マイクロニードル1704の内腔1714がシリンジ1712内のリザーバ1716と流体連通するように、プラットフォーム1708が、シリンジ1712と結合するためのアダプタ1710に受け入れられるようにすることができる。薬の送達中、リザーバ1716の中に蓄えられた薬は、側部ポート1718を介して皮膚の表皮層1706の中に分配される。
【0069】
マイクロニードル1704を用いて体液を抽出することも可能であり、それには全血のサンプリングを含むことができる。全血のサンプリングの場合、体液を身体、例えば毛細血管から、側部ポート1718および内腔1714を介して抽出することができる。抽出された体液は、シリンジ1712内のリザーバ1716に蓄えることができる。
【0070】
プラットフォーム1708およびアダプタ1710は、プラスチックで製造することができる。
【0071】
図18に、側部ポートおよび拡張先端部を有するマイクロニードル1802の配列1800の顕微鏡写真を示す。
【0072】
貫入の効率を高めるために、SCを破る前に皮膚を伸ばし、圧迫する必要がある場合がある。これは、例えば図19(a)〜(c)に示すように、中指1900および親指1902を用いて皮膚を圧迫し(図19(b))、皮膚1904を伸ばし(図19(c))、適切な力を用いて皮膚をマイクロニードルのプラットフォームで押すことによって実施することができる。
【0073】
SCを破るために、数mmの厚さのプラットフォーム上に、マイクロニードルを約0.1〜1.0mmの長さで製造することができる。マイクロニードル本体の大きい方の端部の直径は、長さの数分の1とすることが可能であり、例えば長さ750ミクロンのマイクロニードルの基部の寸法を、300ミクロンとすることができる。2つのマイクロニードル間のピッチは、マイクロニードルの長さと同様であり、場合によってはその長さよりわずかに短い。配列の面積は、約2〜10cm2から変更することができる。外部のアプリケータまたは手によって、マイクロニードルの配列がSCを破るのを助けることができる。
【0074】
前述のマイクロニードルは、外傷を軽減するように、長さ(貫入深さ)、大きさおよび先鋭度を制御することによって、皮膚の穿刺を最小限に抑えるように設計される。
【0075】
イオントフォレシス、エレクトロフォレシス、エレクトロポレーション、ソノフォレシス(超音波)などの従来の経皮送達手段は、非侵入性の手段によってSCを破ることを目標にしているが、こうした技術は十分な再現性および確証的な臨床結果を示すことができておらず、したがって依然として、経皮送達のためにSCを機械的に破ることに大きく依存している。
【0076】
マイクロニードルのプラットフォームを皮膚に押し付けることにより、マイクロニードルの配列を用いて皮膚を穿刺することができる。続いてプラットフォームを穿刺位置から取り除き、処分する。薬を皮膚の中に受動拡散させると同時に、破かれた皮膚を外部環境から隔離するために、生理活性物質で被覆したパッチを穿刺位置に貼ることができる。
【0077】
さらに、マイクロニードルの配列を可撓性のあるプラットフォーム上に配置し、スキンケアのために用いられる化粧パッドとして組み込むことができる。
【0078】
広範に説明した本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、特定の実施形態として示した本発明に多くの変更および/または修正を加えることが可能であることが、当業者には理解されるであろう。したがって、これらの実施形態は、すべての面において例示的なものであり、限定的なものではないと考えるべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義にはマイクロニードル、マイクロニードルの構造、マイクロニードルの製造方法、およびマイクロニードルの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロニードルなどの微細構造体は、例えば身体への薬の投与など様々な技術分野で利用されている。薬は、例えば注射によって身体に投与することができる。典型的な注射の操作は針付きのシリンジを必要とし、針を用いてまず皮膚を破り、次いで針を挿入して身体内の所望の深さに達した後、薬を身体内に注入する。例えば皮膚の表皮層内の身体の様々な部分に薬を送達する経皮送達など、身体内へ薬を送達する様々な方法が存在する。一般にマイクロニードルは、身体内に薬を投与するために皮膚を貫通するのに必要なだけ鋭く、頑強であるべきである。
【0003】
従来のマイクロニードルは、例えばシリコン(Si)、プラスチックまたは金属で製造される。周知のプラスチックのマイクロニードルは、通常はその先端の尖鋭度が限られ、一般に皮膚を貫通するほど強くない。プラスチックのマイクロニードルを製造する1つの周知の方法は、傾斜式のLIGA(Lithografie(リソグラフィ)、Galvanoformung(電鋳)、Abformung(成形))工程の使用を伴う。この方法の1つの欠点は、必要な設備のコストが高いこと、および高価な感光性材料を使用することである。
【0004】
シリコンのマイクロニードルは通常、原料としてシリコン・ウェハを使用し、クリーン・ルーム環境を必要とするウェハ製造技術を利用して製造される。シリコンのマイクロニードルの1つの欠点は、クリーン・ルームおよびウェハ製造設備の設置および維持に高い資本投資を要し、製造コストが高いため、シリコンのマイクロニードルが一度使うだけの使い捨ての製品として不適切なことである。
【0005】
金属のマイクロニードルは通常、Siまたはプラスチックの型の金属被覆、およびその後の型を溶解する解放工程によって製造することができる。したがって、金属のマイクロニードルの製造工程ごとに新しい型を作製しなければならない。
【0006】
さらに、マイクロニードルの周知の製造方法は通常、コスト効率が悪く、マイクロニードルの大量生産には適さない特別注文または専用の装置の使用を伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、前述の問題の少なくとも1つに対処する、またはそれを克服することを企図するマイクロニードル、ならびにマイクロニードルを製造するための方法および装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、プラスチックのマイクロニードルであって、大きい方の端部から先端部に向かってテーパが付いた本体部と、少なくとも1つの側部ポートと、マイクロニードルの本体部の大きい方の端部から本体部の中に延びる内腔とを備え、側部ポートと内腔が互いに流体連通するように、側部ポートが内腔の中へ延びるマイクロニードルが提供される。
【0009】
側部ポートは、マイクロニードルの本体部の側面に配設することができる。
【0010】
マイクロニードルは、マイクロニードルの本体部の対向する側面に配設された2つの側
部ポートを備えることができる。
【0011】
マイクロニードルはさらに、本体部の先端部に成形され、マイクロニードルの頂端を形成する拡張先端部を備えることが可能であり、拡張先端部は、先端部から延びる実質的に細長い突起を備えている。
【0012】
拡張先端部の形状は、実質的に本体部の形状と同じでも異なってもよい。
【0013】
マイクロニードルは、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなるポリマーの群の少なくとも1つから製造することができる。
【0014】
マイクロニードルの本体部は、角錐形、円錐形、六角形などとすることができる。
【0015】
マイクロニードルは、射出成形または注型成形を用いて製造することができる。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、マイクロニードルの配列を含むプラットフォーム部材が提供される。
【0017】
本発明の第3の態様によれば、プラスチックのマイクロニードルを製造する方法であって、大きい方の端部から先端部に向かってテーパが付いた本体部を形成すること、少なくとも1つの側部ポートを形成すること、およびマイクロニードルの本体部の大きい方の端部から本体部の中に延びる内腔を形成することを含み、側部ポートと内腔が互いに流体連通するように、側部ポートが内腔の中へ延びる方法が提供される。
【0018】
当該の方法は、本体部の先端部にマイクロニードルの頂端を形成する拡張先端部を成形することをさらに含み、拡張先端部は先端部から延びる実質的に細長い突起を備えている。
【0019】
当該の方法は、マイクロニードルのポジティブ形(positive shape)を備えた母型を形成すること、母型を用いて、マイクロニードルのネガティブ形(negative shape)の外面を備えたキャビティを含む第2の型を形成すること、および第2の型を用いてマイクロニードルを形成することを含むことができる。
【0020】
当該の方法は、マイクロニードルのポジティブ形を備えた母型を形成すること、母型を用いて、マイクロニードルのネガティブ形の外面を備えたキャビティを含む中間型を形成すること、および中間型を用いて、マイクロニードルのネガティブ形の外面を画定するキャビティを含む第2の型を形成することを含むことができる。
【0021】
中間型はポリマーで製造することができる。
【0022】
母型におけるマイクロニードルのポジティブ形は、精密なワイヤカットによって作製することができる。
【0023】
第2の型は金属で製造することができる。
【0024】
当該の方法は、第2の型のキャビティをポリマーで充填して、マイクロニードルを形成することをさらに含むことができる。
【0025】
当該の方法は、インサート部材を提供すること、インサートの先端縁部がマイクロニードルのネガティブ形の外面と交わるようにインサート部材を受け入れ、整列させるための少なくとも1つの溝孔部をさらに備えた第2の型を提供すること、インサート部材を第2の型に挿入すること、および第2の型を充填材料で充填することをさらに含むことが可能であり、インサートはマイクロニードルの中に内腔を作製し、インサートの先端縁部がマイクロニードルのネガティブ形の外面と交わることによって、内腔と側部ポートが互いに流体連通するように内腔の中へ延びる側部ポートが作製される。
【0026】
マイクロニードルのネガティブ形の外面は、マイクロニードルの拡張先端部を形成するための、マイクロニードルのネガティブ形の頂端から延びる流路を備えることができる。
【0027】
当該の方法は、流路を少なくとも部分的に充填して拡張先端部を形成することをさらに含むことができる。
【0028】
本発明の第4の態様によれば、身体に液体を注入するためのマイクロニードルの使用が提供される。
【0029】
本発明の第5の態様によれば、身体から体液を抽出するためのマイクロニードルの使用が提供される。
【0030】
身体からの体液の抽出には、全血のサンプリングを含むことができる。
【0031】
図面と共に例示のためのみに以下に記載される説明から、当業者には本発明の実施形態がより適切に理解され、容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(a)はマイクロニードルの断面図の概略図である。(b)は皮膚への薬の分配を示す、(a)のマイクロニードルの概略図である。
【図2】他のマイクロニードルの断面図の概略図である。
【図3】(a)は他のマイクロニードルの顕微鏡写真である。(b)は(a)のマイクロニードルの接写した顕微鏡写真である。
【図4】(a)は拡張先端部を有していないマイクロニードルの一部の概略図である。(b)は拡張先端部を有するマイクロニードルの一部の概略図である。
【図5】(a)〜(d)はマイクロニードルの製造に用いられる型の概略図である。
【図6】マイクロニードルの製造に用いられる型半体の一部の概略図である。
【図7】マイクロニードルの製造に用いられる他の型半体の断面図の概略図である。
【図8】他のピンの等角図の概略図である。
【図9】他のピンの等角図の概略図である。
【図10】他のピンの等角図の概略図である。
【図11】(a)〜(c)はマイクロニードルの製造に用いるための第2の型を製造する工程の概略図である。
【図12】(a)〜(d)はマイクロニードルの製造に用いるための第2の型を製造する他の工程の概略図である。
【図13】(a)〜(c)は中間型を製造する工程の概略図である。
【図14】(a)〜(c)は中間型を製造する他の工程の概略図である。
【図15】(a)〜(d)は中間型を用いて第2の型を製造する工程の概略図である。
【図16】(a)は他のマイクロニードルの概略図である。(b)はマイクロニードルのモジュールを形成するためにプラットフォーム上に組み立てられた、(a)の複数のマイクロニードルを示す図である。
【図17】経皮的な薬の送達方法を示す概略図である。
【図18】側部ポートおよび拡張先端部を有するマイクロニードルの配列の顕微鏡写真である。
【図19】(a)〜(c)マイクロニードルを皮膚に適用する前に、どのように皮膚を圧迫し伸ばすかについての概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1(a)に、マイクロニードル100の概略図を示す。マイクロニードル100は、本体104、先端106、2つの分配部108、およびマイクロニードル100の本体104の中に延びる内腔110を備えている。本体104は、本体104の大きい方の端部102から本体104の先端106に向かってテーパが付いている。2つの分配部108は、マイクロニードルの側部に位置し(したがって側部ポートと呼ぶ)、対向する側壁112(すなわち、マイクロニードル100の本体104の対向する面112)上の、マイクロニードル100の先端106から特定の距離を隔てたところに配設されている。内腔110は、内腔110が2つの側部ポート108と流体接続するように、マイクロニードル100の本体104の中を本体104の大きい方の端部102から上方へ先端106に向かって延び、2つの側部ポート108に至る。内腔110は2つの側部ポート108で終わり、側部ポート108とマイクロニードル100の先端106との間にある距離を残す。図1(b)に、薬を送達するために皮膚116を破るマイクロニードル100の概略図を示す。マイクロニードル100によって皮膚116が破かれた後、マイクロニードル100の少なくとも先端106および側部ポート108を含む部分が皮膚116に挿入される。分配される薬は内腔110を通過し、図1(b)に矢印で示すように、側部ポート108を介して皮膚116の中に送達される。
【0034】
他の実施形態では、図2に示すように、マイクロニードル202の側部ポート200はそれぞれ、ポート200の下側部分に、マイクロニードル202の先端206から離れるように(すなわち、マイクロニードル202の本体の大きい方の端部208に向かって)、内側に面取りされた領域204を備えている。内側に面取りされた領域204は、薬をより効率的に分配するのを助け、マイクロニードル202が皮膚に貫入している間、側部ポート200の目詰まりを最小限に抑える。ポートのマイクロニードル202の先端206により近い部分は、マイクロニードルの先端206と共に皮膚を破り、続いて適所で皮膚を広げ保持する目的を果たし、その結果、薬を、側部ポート200を経由して、まず内側に面取りされた領域204によって生成された間隙の中へ、次いで皮膚の中へ分配することが可能になる。
【0035】
埋め込み距離と呼ばれるマイクロニードルの側部ポートと先端の間の距離は、マイクロニードルを用いて皮膚を破るとき、側部ポートのマイクロニードルの先端からの距離が、皮膚を破り圧迫する動作から側部ポートを隔離するのに足りるだけ十分遠いが、側部ポートを皮膚の中に完全に埋め込み、薬をこぼさずに効率的に分配することを可能にするのに足りるだけマイクロニードルの先端に近くなるように選択される。他に考慮すべき問題は、側部ポートがマイクロニードルの先端に近いほど、マイクロニードルの機械的構造が弱くなることである。長さが約1000ミクロンのマイクロニードルの場合、使用される材料、マイクロニードルの形状、ならびに側部ポートの大きさおよび数に応じて、マイクロニードルの先端/頂端からの側部ポートの中心の距離を、約300ミクロン付近、例えば約100〜500ミクロンの間で変えることができる。
【0036】
前述のマイクロニードルでは、それぞれのマイクロニードルが2つの側部ポートを備えている。例えば図1(a)のマイクロニードル100などの中空のマイクロニードル(すなわち、内腔を有するマイクロニードル)の場合、薬の分配を可能にするには、(内腔と流体連通した)少なくとも1つの側部ポートが必要であることを理解すべきである。必要な側部ポートの数は、設計の要求に応じて変えることが可能であることが理解されるであろう。
【0037】
図3(a)に、他のマイクロニードル300の顕微鏡写真を示す。図3(b)には、マイクロニードル300を頂部から見たときの、図3(a)のマイクロニードル300の接写した顕微鏡写真を示す。マイクロニードル300は、2つの側部ポート302に加えて拡張先端部304を備えている。マイクロニードル300は角錐形であり、側部ポート302は本体305の対向する側壁306に位置している。マイクロニードル300の本体305の大きい方の端部308は約400μmであり、マイクロニードル300の拡張先端部304の幅は約50μmである。拡張先端部304は本体305の先端310の上に形成され、マイクロニードル300の頂端312を形成する。拡張先端部304は、マイクロニードル300の先端部310から延びる、実質的に細長い突起を備えている。拡張先端部304は、マイクロニードル300の頂端312を形成する。マイクロニードルの本体305は角錐形であるが、特定の用途の要求に応じて、例えば円錐形、六角形などの他の形も可能であることを理解すべきである。拡張先端部304の形状は、本体305の形状と実質的に同じでも異なってもよいことが理解されるであろう。拡張先端部304は、必要な場合には設計の要求に応じて、例えば50μm未満など他の寸法のものも可能である。
【0038】
前述のマイクロニードルは、例えば様々な等級のポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)などのポリマー、特にポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの生体適合性ポリマーから製造することができる。マイクロニードルを製造するために用いられるポリマーのタイプは、特定用途のために設計されたマイクロニードルの特定の寸法に適した、ポリマーの特有の機械的特性に基づいて選択される。さらに、マイクロニードルの補強および/または導電性のために、各ポリマーを添加剤で満たすことができる。
【0039】
図4(a)および(b)は、皮膚の角質層(SC)408を破るために用いられる、拡張先端部を有していないマイクロニードル402、および拡張先端部406を有するマイクロニードル404の一部の概略図である。図4(a)および(b)には、マイクロニードル402、404の側部ポートは示されていない。図4(b)のマイクロニードル304の拡張先端部406は、拡張先端部を有していないマイクロニードル402の先端410と同じ幅を有している。(粘弾性でもある)大きく変形することができる皮膚の性質により、マイクロニードル402の先端410との最初に接触によって、マイクロニードル402の前進行程の有効な部分に対して皮膚が変形し伸ばされた後、SC408の裂け目が生じる。この変形段階の間、皮膚はマイクロニードル402の形、特に先端410の形状に一致させられる。したがって、拡張先端部を有していないマイクロニードル402と拡張先端部406を有するマイクロニードル404を比べると、「標準の」先端を有する(すなわち拡張先端部を有していない)マイクロニードル402は、皮膚を先端410の形状に完全に一致させる。これによって、図4(a)に示すように、皮膚とマイクロニードルの間により大きい有効な接触領域が生じる。図4(a)および(b)では、有効接触領域が太線で示されている。SC408の穿刺または裂け目が生じることが可能になる前に閾値圧力に達しなければならないため、接触領域が大きくなると、マイクロニードル402の先端410によって皮膚に生じる圧力が低下し、加えなければならない力が大きくなるため、SC408を破ることが難しくなる。しかし、拡張先端部406を有するマイクロニードル404の場合、皮膚とマイクロニードル404の間の有効接触領域は、図4(a)の有効接触領域に比べて小さい領域を有する拡張先端部406の頂端412に限られる。有効接触領域が減少する結果、マイクロニードル404によって皮膚に加えられる圧力が高まり、SC408を破るために加えられる力が小さくなる。
【0040】
図5(a)〜(d)に、マイクロニードルを製造するために用いられる型502(図5(d))の概略図を示す。型502は2つの対称な型半体500を含む。したがって、一方の型半体500についてのみ説明する。図5(a)〜(d)の型半体500を用いて、例えば図1(a)および(b)のマイクロニードル100を製造することができる。型半体500は、製造されるマイクロニードル(例えば図1(a)マイクロニードル100)のネガティブ形の外面を画定するキャビティ504、インサート506、およびインサート506をキャビティ504に対して整列させるための2つの溝孔508を備えている。キャビティ504は三角形であり、インサート506は長方形のピンである。図5(b)に示すように、ピン506を型半体500に挿入すると、ピン506の先端縁部510、この場合には、長方形のピン506の先端角部512が、例えば図1(a)のマイクロニードル100の側部ポート108に対応する2つの位置(すなわち、キャビティを画定する2つの対向する壁)でキャビティ504の外面と交わるように、ピン506をキャビティ504と整列させる。それに応じて、2つの溝孔508は、型半体502の中の適所にピン506を整列させ保持するように形成される。ピン506を型502の中で整列させ保持するために、溝孔508の形は、長方形のピン506の先端角部512に対応している。
【0041】
マイクロニードルを成形するために、例えば射出成形を用いて、型502を溶融ポリマーで充填する。例えば注型成形など、他のタイプの成形を用いることもできる。図5(c)および(d)に示すように、2つの型半体500を閉じ、共にしっかりと保持した後、ピン506を型502に挿入し、型キャビティ504に対して整列させる。ピン506の一部は、型502の外に残る。次いで型キャビティ504を、例えば射出成形を用いることによって溶融ポリマーで充填し、マイクロニードルを成形する。溶融ポリマー(図示せず)を適切な圧力で型502に注入し、型502内の型キャビティ504を実質的に充填する。型キャビティ504のピン506によって占められた部分が溶融ポリマーで充填されないように、溶融ポリマーはピン506のまわりを流れ、それにより、図1(a)のマイクロニードル100の内腔110が作製されると同時に、ピン506の先端縁部510と型キャビティ504の外面が交わることによって、図1(a)のマイクロニードル100の側部ポート108が作製される。したがって、前述の製造方法を用いることによって、2つの側部ポートと流体接続する内腔を有するマイクロニードルを製造することが可能になる。
【0042】
図6に、型半体600、例えば図5(a)の型半体500の一部の概略図を示す。マイクロニードル(図6には示さず)の埋め込み距離aは、キャビティ604の先端614から、ピン606の先端縁部610とキャビティ604の外面の交差部までの距離によって決まり、ピン606がキャビティ604の外面と交わる範囲(すなわち図6の距離b)によって、製造されるマイクロニードルの側部ポート(図示せず)の大きさが決まる。
【0043】
型内のキャビティの形は、製造されるマイクロニードルの形によって決まり、三角形以外にも様々な形のものが可能であることが理解されるであろう。マイクロニードルにただ1つの分配部が必要である場合には、ピンの先端縁部を、キャビティの外面と1箇所だけで交わるように製造することができる。したがって、マイクロニードル内に作製される側部ポートの数は、ピンの先端縁部が型キャビティの外面と交わる位置の数によって決まる。これは、型キャビティの形とピンの形を様々に組み合わせることによって実現することができる。例えば六角形のピンを伴う円錐形の型キャビティは、円錐形のマイクロニードルの中に6つのポートを有するようになり、円形のピンを伴う六角錐形のキャビティは、テーパ付きの多角形のマイクロニードルの中にやはり6つの分配ポートを有するようになる。ピンは、設計の要求に応じて長方形以外にも、例えば円筒形、多角形など他の形のものも可能である。したがってピンの形状に応じて、溝孔を円形や多角形などとすることができる。
【0044】
図5(a)〜(d)の型502または型半体500を、例えば並べて配置された複数のキャビティ504を備えるように変更することも可能であることが理解されるであろう。さらに複数の型502を、例えば複数のマイクロニードルまたはマイクロニードルの配列を製造するために互いに積み重ねることができる。
【0045】
図7に、マイクロニードルを製造するために用いられる他の型半体700の断面の概略図を示す。図7の型半体700は、例えば図3(a)および(b)のマイクロニードル300を製造するのに用いることができる。マイクロニードルを製造するために、2つの対称な型半体700を含む型(図7には示さず)が用いられることが理解されるであろう。したがって、一方の型半体700についてのみ示し説明する。
【0046】
型キャビティ702は、ピン(図7には示さず)を整列させ保持するための2つの溝孔704、および図3(a)および(b)のマイクロニードル300の拡張先端部304を作製するように構成された孔706を含む。孔706は一般に、型キャビティ702の頂端708から延びる細長い流路である。
【0047】
マイクロニードルは、例えば射出成形を用いて、型キャビティ702を溶融ポリマーで充填することによって成形することができる。溶融ポリマー(図示せず)を適切な圧力を用いて型に注入し、型内の型キャビティ702を実質的に充填する。
【0048】
溶融ポリマーは一般に粘性があり、したがって型キャビティを充填することが難しい。これは、例えばマイクロニードル、特に寸法が約10〜100ミクロンの大きさになることがあるマイクロニードルの先端または先端に近い部分など、小さい寸法の物体を成形するときに重大な問題となる。マイクロニードルのキャビティ内の空気は、成形中に溶融ポリマーによって押され、マイクロニードルのキャビティ内に捕捉されて、成形された物体の中にボイドを形成する。例えばマイクロニードルのキャビティの先端の近くまたは先端に空気が捕捉されることがあり、その結果得られるマイクロニードルの先端は尖鋭度が低下し、輪郭が不明確になる。
【0049】
例えば図7の孔706などの孔を有する型を用いることによって、溶融ポリマーが型キャビティ702を満たすと、型キャビティ702の中に捕捉された空気が、孔706を介して型の外へ放出されるようにする。型キャビティ702が実質的に溶融ポリマーで充填されると、溶融ポリマーが部分的に孔706を満たし、図3(a)のマイクロニードル300の拡張先端部304を形成するように、溶融ポリマーに対してさらに圧力が加えられる。したがって孔706は、空気を型キャビティ702から外へ放出可能にすることに加えて、マイクロニードル300の拡張先端部304を作製するように構成される。それに応じて、マイクロニードル300の拡張先端部304の長さは、孔706を満たす溶融ポリマーの高さによって決まる。型キャビティの中に捕捉された残りの空気を除去し、溶融ポリマーがマイクロニードルのキャビティに入り、キャビティを満たすのを助けるために、射出成形を真空チャンバ内で行うことができる。さらに、真空オーブンを用いてポリマーを溶融することもできる。
【0050】
図5(a)〜(d)に示す型半体500も、空気を型キャビティ504から外へ放出するために、前述のように型キャビティ504の頂端の近くまたは頂端に形成された孔を備えることが可能であることが理解されるであろう。拡張先端部を有していないマイクロニードル、例えば図1(a)および(b)のマイクロニードル100、または図2のマイクロニードル200を作製するためには、射出成形工程の間、溶融ポリマーが孔をふさがないように、溶融ポリマーに適切な圧力が加えられる。
【0051】
図5(a)〜(d)、図6および図7では、ピン506、606は長方形のインサートである。設計の要求に応じて、ピンが様々な形状を有することが可能であることが理解されるであろう。作製される内腔の形は、ピンの形状によって決まる。一般に、内腔はピンのネガティブ形の外面を画定する。薬を分配する圧力を低減するためにより大きい内腔が必要であるとき、および特定の大きさの側部ポートが必要であるときには、ピンは軸部および先端縁部に、様々な形状および/または寸法を有することができる。あるいは、ピンをテーパ状に製造することもできる。
【0052】
図8に、他のピン800の等角図の概略図を示す。ピン800は、実質的に平坦な頂端部802を有する角錐形である。
【0053】
図9に、他のピン900の等角図の概略図を示す。ピン900は、第1の部分904および第2の部分906を有する本体902を備えている。第1の部分904は、第2の部分906に向かってテーパが付いている。第2の部分906は、第1の部分904から延びる長方形のブロックである。第1の部分904は、面取り部908によって第2の部分906に接続されている。
【0054】
図16に、他のピン1000の等角図の概略図を示す。ピン1000は、第1の部分1004および第2の部分1006を有する本体1002を備えている。第1の部分1004は、第1の部分1004と第2の部分1006の間の中間面1008に向かってテーパが付いている。第2の部分1006は、中間面1008の中央から延びる長方形のブロックである。
【0055】
前述のように、マイクロニードルの製造に用いられる型(例えば、図5(d)の型502または図7の型700)は、製造されるマイクロニードルのネガティブ形の外面を全体的に画定するキャビティを備えている。型を作製する1つの方法は、まずマイクロニードルのポジティブ形を有する母型を作製することである。換言すれば、母型は、製造されるマイクロニードルの形に全体的に対応する突起を備えている。母型上の突起は、精密なワイヤカットまたは他の精密な工学的手段によって製造することができる。次いで、母型上のマイクロニードルの形に対応する突起のパターンを、例えばホット・エンボス加工によって第2の型に移し、マイクロニードルのネガティブ形に対応するキャビティを形成する。図11(a)〜(c)に、マイクロニードルの製造に用いるための第2の型1100を作製する工程の概略図を示す。第2の型1100は、例えば図7の型700の形にすることが可能であり、例えば図3(a)のマイクロニードル300を形成するのに用いることができる。母型1102は、製造されるマイクロニードル(例えば図3(a)のマイクロニードル300)の形に対応する複数の突起1104を備え、最初に作製される。母型1102は工具鋼で製造される。母型1102上の突起1104は、精密なワイヤカットによって作製することができる。一般に、母型1102上の突起1104の形は、製造されるマイクロニードルのポジティブ像(positive image)である。突起1104は、拡張先端部1106を有する角錐形である。突起1104の拡張先端部1106を用いて、第2の型1100の中に孔1114を形成する。突起1104はそれぞれ、突起1104の本体部1116の2つの対向する側壁1114から突出した、2つの三角形の肩部1108を備えている。2つの三角形の肩部1108を用いて、第2の型1100のキャビティ1112の中に溝孔1110を形成する。肩部1116は、必要とされる溝孔1110の形に応じて、他の形状のものとすることも可能であることが理解されるであろう。一般に、肩部1116の形は、第2の型1100の溝孔1110のポジティブ形である。この場合、ピン(図示せず)が長方形であるため、溝孔1110の形は三角形であり、したがって肩部1116も三角形である。
【0056】
第1の加熱されたプラテン1118に取り付けられた母型1102を、第2の加熱されたプラテン1122に取り付けられた金属基体1120にホット・エンボス加工し、基体1120の中に母型1102のネガティブ像(negative image)(したがって、マイクロニードルのネガティブ像)を形成して、マイクロニードルの製造に用いられる第2の型1100を形成する。孔1114が第2の型1100を貫通して延びるように、第2の型1100の基部1124は、例えば研削によって取り除かれる。あるいは、ホット・エンボス加工中、孔1114が基体1120の基部1124を貫通して延びるように(すなわち、基部1124の研削が不要になるように)、母型1100の拡張先端部1106をより長く製造することも可能であることが理解されるであろう。
【0057】
図12(a)〜(d)に、マイクロニードルの製造に用いるための第2の型1200を製造する他の工程の概略図を示す。第2の型1100は、例えば図7の型700の形にすることが可能であり、例えば図3(a)のマイクロニードル300を形成するのに用いることができる。この例では、マイクロフォーミングを用いてマイクロニードルを製造する。突起1204を備えた母型1202を、パンチ1206に取り付ける。金属シート1208がパンチ1206と変形可能なダイ1210との間に位置するように、金属シート1208を変形可能なダイ1210に載せる。金属シート1208は、鋼、アルミニウムおよび銅などの金属材料で製造することができる。金属シート1208の厚さは、約0.05mm〜約0.5mmの範囲とすることができる。しかし設計の要求に応じて、例えば0.5mm超の厚さなど、他の寸法を用いることもできる。母型1202と共にパンチ1206を金属シート1208の方へ移動させ、金属シート1208および変形可能なダイ1210に押し付ける。金属シート1208を変形させ、金属シート1208に母型1202の突起1204のネガティブ形を作製する。したがって、金属シート1208は、形成されるマイクロニードルのネガティブ形の外面を全体的に画定するキャビティ1212を備えるようになる。同時に、変形可能なダイ1210も母型1202の突起1204による変形を受け、突起1204のネガティブ形を画定するキャビティを形成する。次いで、母型1202と共にパンチ1204を引っ込める。図12(b)の変形した金属シート1208を取り除き、キャビティ1212の外面を画定する金属シート1208の面1214に対して、例えば金属蒸着など厚さを補強する工程を実施し、マイクロニードルの製造に用いられる第2の型1200を形成する。金属蒸着の方向を、図12(c)に矢印によって示す。
【0058】
例えば最初に母型を用いて中間型を製造し、続いて中間型を用いて第2の型を製造するなど、第2の型を製造する他の方法も可能である。
【0059】
図13(a)〜(c)に、中間型1300を製造する工程の概略図を示す。先に説明したように、母型1302は、製造されるマイクロニードルの形に全体的に対応する突起1304を備えている。母型1304上の突起1304は工具鋼で作製され、精密なワイヤカットまたは他の精密な工学的手段によって製造することができる。第1の加熱されたプラテン1306に取り付けられた母型1302を、第2の加熱されたプラテン1310に取り付けられたポリマー基体1308にホット・エンボス加工し、ポリマー基体1308の中に母型1302の突起1304のネガティブ像(したがって、マイクロニードルのネガティブ像)を形成する。次いで、結果として得られる、突起のネガティブ像(したがって、マイクロニードルのネガティブ像)を画定するキャビティ1312を備える、エンボス加工されたポリマー基体1300(すなわち中間型)を用いて、マイクロニードルを製造するための第2の型(図13(a)〜(c)には示さず)を製造する。
【0060】
図14(a)〜(c)に、中間型1400を製造する他の工程の概略図を示す。この例示的な工程では、中間型1400は注型成形される。突起1406を備えた母型1402は、注型工程に使用される注型型1408の一部を形成する。図14(b)に示すように、溶融ポリマー1410を注型型1408の中の母型1402の上に加える。溶融ポリマー1410を硬化させ、注型型1408から取り出し、製造されるマイクロニードルのネガティブ形を画定するキャビティ1412を備えた中間型1400を得る。この例では、突起1406は角錐形であり、突起1406はそれぞれ、中間の第2のポリマー型1400の中に空気孔1418を形成するための拡張先端部1416を含む。中間型1400の孔1418の長さは、注型型1408を満たす溶融ポリマー1410の高さによって決まる(図14(b)参照)。
【0061】
図13(a)〜(c)および図14(a)〜(c)に説明するポリマーの中間型は、シートの形では、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)など、注型成形の場合の液体の形では、ポリジメチルシロキサン(PDMS)など、様々なタイプのポリマーで製造することができる。
【0062】
前述の実施形態では、第2の型を製造するのに用いられるポリマーは、第2の型を再利用することができるように、ある特定の弾性および変形特性を有するように選択される。溶融ポリマーを第2の型に注入してマイクロニードルを形成する前に、第2の型に離型剤を塗布するまたは吹き付けることができる。これによって、成形されたプラスチックのマイクロニードルを効果的に解放することが可能になると同時に、その後も使用することができるように第2の型を損傷から保護する。
【0063】
図15(a)〜(d)に、中間型1502を用いて第2の型1500を製造する方法の概略図を示す。中間型1502は、例えば図13(a)〜(c)の中間型1300、または図14(a)〜(c)の中間型1400の形にすることができる。前述のように、中間型1502は、製造されるマイクロニードルのネガティブ形を画定するキャビティ1504を備えている。(例えば化学的析出または蒸着、電鋳、電気めっきなどによって)中間のポリマーの第2の型1502の上、および中間のポリマーの第2の型1502のキャビティ1504の中に、金属層1506を堆積させる。図15(c)に示すように、キャビティ1508を含む堆積した金属層1506を、中間のポリマーの第2の型1502から取り出す。例えばキャビティ1208の外面を画定する堆積した金属層1506の表面1510上で行われる金属蒸着など、厚さを補強する工程を堆積した金属層1506に施し、マイクロニードルの製造に用いられる第2の型1500を形成する。金属蒸着の方向を、図15(c)に矢印によって示す。
【0064】
図16(a)に、他のマイクロニードル1600の概略図を示す。マイクロニードル1600は、先端部1602、内腔1606を含む軸部1604を備えている。軸部1604は、先端部1602の基部1614から延びる全体的に細長い構造である。軸部1604は、実質的に先端部1602の基部1614と同じ幅を有している。設計の要求に応じて、軸部1604が先端部の基部より大きい、または小さい幅を有することが可能であることが理解されるであろう。先端部1602は、側部ポート1608を備えている。側部ポート1608は、側部ポート1608と内腔1606が流体連通するように内腔1606の中へ延びている。マイクロニードル1600が、例えば図3(a)のマイクロニードル300の拡張先端部304など、これまでの例で説明した様々な特徴を備えることが可能であることが理解されるであろう。
【0065】
図16(b)は、マイクロニードルのモジュール1916を形成するためにプラットフォーム1610上に組み立てられた、複数のマイクロニードル1600を示している。プラットフォーム1610は、複数の穴1612を備えている。マイクロニードル1600はそれぞれ、マイクロニードル1600の内腔1606が共通のリザーバ(図示せず)または穴1612に接続された個々のリザーバ(図示せず)と流体接続して、流体を分配または抽出するように、穴1612の中に組み立てることができる。マイクロニードル1600は、例えば図5(a)〜(d)を参照して説明したものと同様の型構造体を用いて製造することができる。
【0066】
マイクロニードル1600の配列は、プラットフォーム1610上の穴1612の配置に応じて得られることが理解されるであろう。例えば穴1612を2次元の配列に配置した場合、2次元配列のマイクロニードル1600を得ることができる。さらに個々のマイクロニードル1600を、プラットフォーム1610とは別々に製造することができる。これにより、基体基部上に一体化して製造される複数のマイクロニードルに比べて、配列の設計における柔軟性が増すと共に、プラットフォームおよび/またはマイクロニードルに使用可能な材料の選択範囲が広がる。基体基部上に一体化して製造される配列では、異なる配列の設計に対して新しい型を作製しなければならない。
【0067】
前述の実施形態で説明したマイクロニードルを、配列として製造することが可能であることが理解されるであろう。マイクロニードルの配列は、例えば約2〜10cm2とすることができる。
【0068】
図17は、経皮的な薬の送達方法を示す概略図である。経皮的な送達方法では、薬(または液体)が皮膚を横断して身体内に投与され、毛細血管(図示せず)の中に拡散する。角質層(SC)1702と呼ばれる皮膚の最外層は、水を通さない層を形成する死細胞を含み、それが身体の外側から身体の内側への薬の輸送を妨げる。SC1702で示す障壁を克服するにはいくつかの方法がある。1つの例は、マイクロニードル1704を用いてSC1702を破り、SC1702に穴をあけ、表皮層1706に挿入することによって薬を浅く皮膚内へ送達することである。理論的には、この薬送達方法は、無痛ではないにしても、痛みを最小限に抑えるはずである。マイクロニードル1704をプラットフォーム1708上に組み立て、例えば図16(b)のマイクロニードルのモジュール1612の形にすることができる。各マイクロニードル1704の内腔1714がシリンジ1712内のリザーバ1716と流体連通するように、プラットフォーム1708が、シリンジ1712と結合するためのアダプタ1710に受け入れられるようにすることができる。薬の送達中、リザーバ1716の中に蓄えられた薬は、側部ポート1718を介して皮膚の表皮層1706の中に分配される。
【0069】
マイクロニードル1704を用いて体液を抽出することも可能であり、それには全血のサンプリングを含むことができる。全血のサンプリングの場合、体液を身体、例えば毛細血管から、側部ポート1718および内腔1714を介して抽出することができる。抽出された体液は、シリンジ1712内のリザーバ1716に蓄えることができる。
【0070】
プラットフォーム1708およびアダプタ1710は、プラスチックで製造することができる。
【0071】
図18に、側部ポートおよび拡張先端部を有するマイクロニードル1802の配列1800の顕微鏡写真を示す。
【0072】
貫入の効率を高めるために、SCを破る前に皮膚を伸ばし、圧迫する必要がある場合がある。これは、例えば図19(a)〜(c)に示すように、中指1900および親指1902を用いて皮膚を圧迫し(図19(b))、皮膚1904を伸ばし(図19(c))、適切な力を用いて皮膚をマイクロニードルのプラットフォームで押すことによって実施することができる。
【0073】
SCを破るために、数mmの厚さのプラットフォーム上に、マイクロニードルを約0.1〜1.0mmの長さで製造することができる。マイクロニードル本体の大きい方の端部の直径は、長さの数分の1とすることが可能であり、例えば長さ750ミクロンのマイクロニードルの基部の寸法を、300ミクロンとすることができる。2つのマイクロニードル間のピッチは、マイクロニードルの長さと同様であり、場合によってはその長さよりわずかに短い。配列の面積は、約2〜10cm2から変更することができる。外部のアプリケータまたは手によって、マイクロニードルの配列がSCを破るのを助けることができる。
【0074】
前述のマイクロニードルは、外傷を軽減するように、長さ(貫入深さ)、大きさおよび先鋭度を制御することによって、皮膚の穿刺を最小限に抑えるように設計される。
【0075】
イオントフォレシス、エレクトロフォレシス、エレクトロポレーション、ソノフォレシス(超音波)などの従来の経皮送達手段は、非侵入性の手段によってSCを破ることを目標にしているが、こうした技術は十分な再現性および確証的な臨床結果を示すことができておらず、したがって依然として、経皮送達のためにSCを機械的に破ることに大きく依存している。
【0076】
マイクロニードルのプラットフォームを皮膚に押し付けることにより、マイクロニードルの配列を用いて皮膚を穿刺することができる。続いてプラットフォームを穿刺位置から取り除き、処分する。薬を皮膚の中に受動拡散させると同時に、破かれた皮膚を外部環境から隔離するために、生理活性物質で被覆したパッチを穿刺位置に貼ることができる。
【0077】
さらに、マイクロニードルの配列を可撓性のあるプラットフォーム上に配置し、スキンケアのために用いられる化粧パッドとして組み込むことができる。
【0078】
広範に説明した本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、特定の実施形態として示した本発明に多くの変更および/または修正を加えることが可能であることが、当業者には理解されるであろう。したがって、これらの実施形態は、すべての面において例示的なものであり、限定的なものではないと考えるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックのマイクロニードルであって、
大きい方の端部から先端部に向かってテーパが付いた本体部と、
少なくとも1つの側部ポートと
前記マイクロニードルの前記本体部の前記大きい方の端部から前記本体部の中に延びる内腔と
を備え、前記側部ポートと前記内腔が互いに流体連通するように、前記側部ポートが前記内腔の中へ延びることを特徴とするマイクロニードル。
【請求項2】
前記側部ポートが、前記マイクロニードルの前記本体部の側面に配設されることを特徴とする請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項3】
前記マイクロニードルの前記本体部の対向する側面に配設された2つの側部ポートを備えることを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロニードル。
【請求項4】
前記本体部の前記先端部に成形され、前記マイクロニードルの頂端を形成する拡張先端部をさらに備え、前記拡張先端部が、前記先端部から延びる実質的に細長い突起を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のマイクロニードル。
【請求項5】
前記拡張先端部の形状が実質的に前記本体部の形状と同じである、または異なることを特徴とする請求項4に記載のマイクロニードル。
【請求項6】
ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなるポリマーの群の少なくとも1つから製造されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のマイクロニードル。
【請求項7】
前記マイクロニードルの前記本体部が、角錐形、円錐形、六角形などであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のマイクロニードル。
【請求項8】
射出成形または注型成形を用いて製造されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のマイクロニードル。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のマイクロニードルの配列を含むことを特徴とするプラットフォーム部材。
【請求項10】
プラスチックのマイクロニードルを製造する方法であって、
大きい方の端部から先端部に向かってテーパが付いた本体部を形成するステップ、
少なくとも1つの側部ポートを形成するステップ、および
前記マイクロニードルの前記本体部の前記大きい方の端部から前記本体部の中に延びる内腔を形成するステップ
を含み、前記側部ポートと前記内腔が互いに流体連通するように、前記側部ポートが前記内腔の中へ延びることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記本体部の前記先端部に前記マイクロニードルの頂端を形成する拡張先端部を成形するステップをさらに含み、前記拡張先端部が前記先端部から延びる実質的に細長い突起を備えることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記マイクロニードルのポジティブ形を備えた母型を形成するステップ、
前記母型を用いて、前記マイクロニードルのネガティブ形の外面を備えたキャビティを含む第2の型を形成するステップ、および
前記第2の型を用いて前記マイクロニードルを形成するステップ
を含むことを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記マイクロニードルのポジティブ形を備えた母型を形成するステップ、
前記母型を用いて、前記マイクロニードルのネガティブ形の外面を備えたキャビティを含む中間型を形成するステップ、および
前記中間型を用いて、前記マイクロニードルのネガティブ形の外面を画定するキャビティを含む第2の型を形成するステップ
を含むことを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【請求項14】
前記中間型がポリマーで製造されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記母型における前記マイクロニードルの前記ポジティブ形が、精密なワイヤカットによって作製されることを特徴とする請求項12から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の型が金属で製造されることを特徴とする請求項12から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の型の前記キャビティをポリマーで充填して、前記マイクロニードルを形成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項12から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
インサート部材を提供するステップ、
前記インサートの先端縁部が、前記マイクロニードルの前記ネガティブ形の前記外面と交わるように前記インサート部材を受け入れ、整列させるための少なくとも1つの溝孔部をさらに備えた第2の型を提供するステップ、
前記インサート部材を前記第2の型に挿入するステップ、および
前記第2の型を充填材料で充填するステップ
をさらに含み、前記インサートが前記マイクロニードルの中に前記内腔を作製し、前記インサートの前記先端縁部が前記マイクロニードルの前記ネガティブ形の前記外面と交わることによって、前記内腔と前記側部ポートが互いに流体連通するように前記内腔の中へ延びる前記側部ポートが作製されることを特徴とする請求項12から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記マイクロニードルの前記ネガティブ形の前記外面が、前記マイクロニードルの前記拡張先端部を形成するための、前記マイクロニードルの前記ネガティブ形の頂端から延びる流路を備えることを特徴とする請求項18に記載のマイクロニードルの製造方法。
【請求項20】
前記流路を少なくとも部分的に充填して前記拡張先端部を形成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項19に記載のマイクロニードルの製造方法。
【請求項21】
身体に液体を注入するための、請求項1から9のいずれか1項に記載のマイクロニードルの使用。
【請求項22】
身体から液体を抽出するための、請求項1から9のいずれか1項に記載のマイクロニードルの使用。
【請求項23】
前記身体からの体液の抽出が全血のサンプリングを含む請求項22に記載の使用。
【請求項1】
プラスチックのマイクロニードルであって、
大きい方の端部から先端部に向かってテーパが付いた本体部と、
少なくとも1つの側部ポートと
前記マイクロニードルの前記本体部の前記大きい方の端部から前記本体部の中に延びる内腔と
を備え、前記側部ポートと前記内腔が互いに流体連通するように、前記側部ポートが前記内腔の中へ延びることを特徴とするマイクロニードル。
【請求項2】
前記側部ポートが、前記マイクロニードルの前記本体部の側面に配設されることを特徴とする請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項3】
前記マイクロニードルの前記本体部の対向する側面に配設された2つの側部ポートを備えることを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロニードル。
【請求項4】
前記本体部の前記先端部に成形され、前記マイクロニードルの頂端を形成する拡張先端部をさらに備え、前記拡張先端部が、前記先端部から延びる実質的に細長い突起を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のマイクロニードル。
【請求項5】
前記拡張先端部の形状が実質的に前記本体部の形状と同じである、または異なることを特徴とする請求項4に記載のマイクロニードル。
【請求項6】
ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなるポリマーの群の少なくとも1つから製造されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のマイクロニードル。
【請求項7】
前記マイクロニードルの前記本体部が、角錐形、円錐形、六角形などであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のマイクロニードル。
【請求項8】
射出成形または注型成形を用いて製造されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のマイクロニードル。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のマイクロニードルの配列を含むことを特徴とするプラットフォーム部材。
【請求項10】
プラスチックのマイクロニードルを製造する方法であって、
大きい方の端部から先端部に向かってテーパが付いた本体部を形成するステップ、
少なくとも1つの側部ポートを形成するステップ、および
前記マイクロニードルの前記本体部の前記大きい方の端部から前記本体部の中に延びる内腔を形成するステップ
を含み、前記側部ポートと前記内腔が互いに流体連通するように、前記側部ポートが前記内腔の中へ延びることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記本体部の前記先端部に前記マイクロニードルの頂端を形成する拡張先端部を成形するステップをさらに含み、前記拡張先端部が前記先端部から延びる実質的に細長い突起を備えることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記マイクロニードルのポジティブ形を備えた母型を形成するステップ、
前記母型を用いて、前記マイクロニードルのネガティブ形の外面を備えたキャビティを含む第2の型を形成するステップ、および
前記第2の型を用いて前記マイクロニードルを形成するステップ
を含むことを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記マイクロニードルのポジティブ形を備えた母型を形成するステップ、
前記母型を用いて、前記マイクロニードルのネガティブ形の外面を備えたキャビティを含む中間型を形成するステップ、および
前記中間型を用いて、前記マイクロニードルのネガティブ形の外面を画定するキャビティを含む第2の型を形成するステップ
を含むことを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【請求項14】
前記中間型がポリマーで製造されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記母型における前記マイクロニードルの前記ポジティブ形が、精密なワイヤカットによって作製されることを特徴とする請求項12から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の型が金属で製造されることを特徴とする請求項12から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の型の前記キャビティをポリマーで充填して、前記マイクロニードルを形成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項12から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
インサート部材を提供するステップ、
前記インサートの先端縁部が、前記マイクロニードルの前記ネガティブ形の前記外面と交わるように前記インサート部材を受け入れ、整列させるための少なくとも1つの溝孔部をさらに備えた第2の型を提供するステップ、
前記インサート部材を前記第2の型に挿入するステップ、および
前記第2の型を充填材料で充填するステップ
をさらに含み、前記インサートが前記マイクロニードルの中に前記内腔を作製し、前記インサートの前記先端縁部が前記マイクロニードルの前記ネガティブ形の前記外面と交わることによって、前記内腔と前記側部ポートが互いに流体連通するように前記内腔の中へ延びる前記側部ポートが作製されることを特徴とする請求項12から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記マイクロニードルの前記ネガティブ形の前記外面が、前記マイクロニードルの前記拡張先端部を形成するための、前記マイクロニードルの前記ネガティブ形の頂端から延びる流路を備えることを特徴とする請求項18に記載のマイクロニードルの製造方法。
【請求項20】
前記流路を少なくとも部分的に充填して前記拡張先端部を形成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項19に記載のマイクロニードルの製造方法。
【請求項21】
身体に液体を注入するための、請求項1から9のいずれか1項に記載のマイクロニードルの使用。
【請求項22】
身体から液体を抽出するための、請求項1から9のいずれか1項に記載のマイクロニードルの使用。
【請求項23】
前記身体からの体液の抽出が全血のサンプリングを含む請求項22に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2010−502267(P2010−502267A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526575(P2009−526575)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【国際出願番号】PCT/SG2006/000246
【国際公開番号】WO2008/027011
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(507284466)エージェンシー・フォー・サイエンス・テクノロジー・アンド・リサーチ (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【国際出願番号】PCT/SG2006/000246
【国際公開番号】WO2008/027011
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(507284466)エージェンシー・フォー・サイエンス・テクノロジー・アンド・リサーチ (5)
【Fターム(参考)】
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