説明

マイクロプレートの製造方法及びマイクロプレート

【課題】プレート本体に接着される底部透明板材を位置ずれすることなく高精度に組み立てることができるマイクロプレートの製造方法を提供する。
【解決手段】ボトムプレート3を支持プレート4上にX−Y方向に位置決めして支持したまま、プレート本体1に形成された軸孔7aと支持プレート4に突設された位置決めピン8を位置合わせして嵌合させ、ボトムプレート3をプレート本体底部1aに重ね合わせて接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、セル内に収容される試料を光学的に分析するために用いられるマイクロプレートの製造方法及びマイクロプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロプレート(マイクロタイタプレート)は、平板状の基板(例えば樹脂プレートなどの成形品)にマトリクス状に貫通孔が形成され、各貫通孔の一端側を閉止するボトムプレートが接着剤により接着されて小容器(セル)が複数形成されている。このボトムプレートとしては、透光性の板材(ガラス板又はプラスチック板)が用いられる。各小容器(セル)内には試料が収容され、例えば試薬が滴下されて光学的な分析に供される(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平11−281567号公報
【特許文献2】特表2002−530661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
基板底部にガラスプレートを接着する場合、ガラスプレートの板厚分を吸収する段付面が基板底部に形成されていると、接着剤を底部接着面(凹面部)に平均かつ正確に塗布する事が難しい。そこで、ガラスプレートの接着面に例えば格子状に接着剤を塗布してから基板側の底部に位置合わせして接着することが考えられる。しかしながら、基板(成形品)にガラスプレートを貼り合わせる際に、両者の位置精度を確保するのが難しい。特に、ガラスプレートを基板底部へ接着する際に位置ずれし易く、位置ずれすると接着剤がボトムプレートの小容器(セル)内へにじみでて、光学的分析に支障をきたすおそれがある。このため、マイクロプレートの品質が低下しマイクロプレートの製造工程を自動化することも困難であった。
【0004】
本発明の目的は、プレート本体に接着される底部透明板材を位置ずれすることなく高精度に組み立てることができるマイクロプレートの製造方法及びプレート本体に底部透明板材が位置ずれなく接着されたマイクロプレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
即ち、プレート本体に貫通孔が穿孔された複数のセルが形成され、各セルの一端側開口部を閉止する底部透明板材が接着されるマイクロプレートの製造方法であって、底部透明板材を支持プレート上にX−Y方向に位置決めして支持する工程と、底部透明板材若しくはプレート本体底部に接着剤を塗布する工程と、プレート本体に形成された軸孔と支持プレートに突設された位置決めピンを嵌合させて位置合わせし、接着剤が塗布された底部透明板材をプレート本体底部に重ね合わせる工程と、底部透明板材をプレート本体底部に接着したまま支持プレートのみを離間させる工程を含むことを特徴とする。
また、前記支持プレートには底部透明板材の異なる端面が突き当てられ当該底部透明板材の厚さと同等の高さを有する複数の位置決め突部が突設されていることを特徴とする。
また、前記プレート本体の底部外周縁部には位置決め用の軸孔が設けられたボス部が複数突設されており、軸孔に対応する支持プレート上に位置決めピンが複数立設されていることを特徴とする。
また、プレート本体に貫通孔が穿孔された複数のセルが形成され、各セルの一端側開口部を閉止する底部透明板材が接着されたマイクロプレートであって、プレート本体の底部外周縁部には位置決め用の軸孔が設けられたボス部が複数突設されていることを特徴とする。
また、ボス部は矩形状のプレート本体の底部外周縁部の対角位置に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
上述したマイクロプレートの製造方法を用いれば、底部透明板材を支持プレート上にX−Y方向に位置決めして支持したまま、プレート本体に形成された軸孔と支持プレートに突設された位置決めピンを嵌合させて位置合わせし、底部透明板材をプレート本体底部に重ね合わせるので、底部透明板材とプレート本体を位置ずれなく高精度(±50μmの精度)に接着することができる。
また、底部透明板材を支持プレート上にX−Y方向に位置決めする複数の位置決め突部は底部透明板材の異なる端面が突き当てられるので位置決めし易く、当該底部透明板材と同等の高さを有するため、底部透明板材のプレート本体への接着の妨げとなることはない。
また、プレート本体に複数設けられた位置決め用の軸孔と支持プレートに突設された位置置決めピンで位置決めされ、支持プレート上で底部透明板材が位置決めされているので、底部透明板材のプレート本体に対する位置決めが高精度(±50μmの精度)に行なえるため、高品位なマイクロプレートを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明に係るマイクロプレートの好適な実施の形態について添付図面と共に詳述する。図1A、Bにおいて、矩形状のプレート本体1には複数の貫通孔が穿孔されたセル2が例えばマトリクス状に形成されている。プレート本体1は図示しない射出成形機により射出成形されて形成される成形品である。プレート本体1の大きさは、例えば縦横寸法が85×128mmで高さ寸法が14mm程度の基板が用いられる。セル2どうしのピッチ間隔は例えば2.25mm程度で開口部□1.50mmのセル2が10行×15列分設けられている。
【0008】
図2Cにおいて、プレート本体1に設けられた各セル2の一端側開口部を閉止する底部透明板材(ボトムプレート)3が接着剤を介してプレート本体底部1aに接着されている。ボトムプレート3は例えば大きさが109×73mm、厚さ0.175mm程度で透光性の板材(ガラス板又はプラスチック板)が好適に用いられる。接着剤は、例えば液状のものでもよいが、半固形化又は固形化されたものであってもよく、接着面に均一に隙間なく塗れるものがよい。各セル2内には試料が収容され試料を滴下して光学的分析が行われる。
【0009】
図3は、支持プレート4をボトムプレート3の支持面4a側からみた平面図である。図3において、ボトムプレート3の支持面4aには、ボトムプレート3をX−Y方向に位置決めして支持する位置決め突部5が複数箇所(本実施例では3箇所)に突設されている。これらの位置決め突部5はボトムプレート3の異なる端面(X方向及びY方向に相当する端面)に突き当てられて位置決めするようになっている。また、位置決め突部5の高さは、ボトムプレート3の厚さと同等の高さを有している。これによりボトムプレート3がプレート本体1への接着の妨げとなることはない。
【0010】
図4において、プレート本体1の底部にはボトムプレート3が接着されている。このボトムプレート3の外周側には、ボトムプレート3の接着面と高さが異なる段付部6が形成されている。この段付部6には円筒状のボス部7が対角位置で2箇所に突設されている。ボス部7の軸孔7aは後述するように支持プレート4と位置合わせするために用いられる。ボス部7の軸孔7aは、有底孔であっても貫通孔であってもいずれでも良い。有底孔の場合には、セル2から薬液が漏れたとしてもプレート本体1より下方に漏出することがなく、貫通孔の場合にはボス部7の高さを低くすることができる。
【0011】
また、図3において、支持プレート4の支持面4a上であって、ボトムプレート3の支持エリアの外周側には、ボス部7に対応する位置に位置決めピン8が突設されている。位置決めピン8の高さは、位置決め突部5の高さより高く、ボトムプレート3がプレート本体1に重ね合わされる前にボス部7と嵌合して位置合わせするようになっている。
【0012】
次に、マイクロプレートの製造工程の一例について図2A〜図2Cを参照して説明する。
図2Aにおいて、ボトムプレート3を支持プレート4の支持面4a上に位置決め突部5にX−Y方向の端面を突き当てて位置決めして支持する。
また、ボトムプレート3に接着剤をプレート本体底部1aの接着面に合わせて例えば格子状に塗布する。接着剤はボトムプレート3上に例えばスキージを用いた塗布装置により薄膜状に塗布される。ボトムプレート3を支持する支持プレート4を位置決めピン8とプレート本体1に形成されたボス部7の軸孔7aに位置合わせして接近させる。
【0013】
図2Bにおいて、支持プレート4をプレート本体1へ接近させると先ず位置決めピン8がボス部7の軸孔7aに嵌め込まれる。次いで、接着剤を塗布されたボトムプレート3がプレート本体底部1a(図2A参照)に重ね合わせられる。このとき、位置決め突部5の高さは、ボトムプレート3と同等の高さであるため接着の妨げになることはない。また、支持プレート4とプレート本体1が位置決めされ、支持プレート4上でボトムプレート3が位置決めされているので、ボトムプレート3のプレート本体1に対する位置決めが高精度(±50μmの精度)に行なえる。
【0014】
図2Cにおいて、ボトムプレート3がプレート本体1の底部に接着されると、ボス部7から位置決めピン8が抜け出るように支持プレート4を離間させる。
このように、ボトムプレート3のプレート本体1に対する接着精度を高めることができるため、搬送用ロボットを用いてマイクロプレートの製造工程を自動化することも可能である。
【0015】
尚、上述したプレート本体1のサイズやセル2のピッチや数や形状、位置決め突部5や位置決めピン8の数は任意に設計できる。また、プレート本体底部1aの接着面に接着剤を例えば印刷、シール貼付などにより平均かつ正確に塗布することができるならば、ボトムプレート3に接着剤を塗布することなく接着剤が塗布されたプレート本体底部1aと重ね合わせて接着するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】マイクロプレートの平面図及び正面図である。
【図2】マイクロプレートの製造工程を示す説明図である。
【図3】支持プレートのボトムプレート支持面側からみた平面図である。
【図4】プレート本体の底面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 プレート本体
1a プレート本体底部
2 セル
3 ボトムプレート
4 支持プレート
4a 支持面
5 位置決め突部
6 段付部
7 ボス部
7a 軸孔
8 位置決めピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレート本体に貫通孔が穿孔された複数のセルが形成され、各セルの一端側開口部を閉止する底部透明板材が接着されるマイクロプレートの製造方法であって、
矩形状の底部透明板材を支持プレート上にX−Y方向に位置決めして支持する工程と、
底部透明板材若しくはプレート本体底部に接着剤を塗布する工程と、
プレート本体に形成された軸孔と支持プレートに突設された位置決めピンを嵌合させて位置合わせし、底部透明板材をプレート本体底部に重ね合わせる工程と、
底部透明板材をプレート本体底部に接着したまま支持プレートのみを離間させる工程を含むマイクロプレートの製造方法。
【請求項2】
前記支持プレートには底部透明板材の異なる端面が突き当てられ当該底部透明板材の厚さと同等の高さを有する複数の位置決め突部が突設されている請求項1記載のマイクロプレートの製造方法。
【請求項3】
前記プレート本体の底部外周縁部には位置決め用の軸孔が設けられたボス部が複数突設されており、軸孔に対応する支持プレート上に位置決めピンが複数立設されている請求項1記載のマイクロプレートの製造方法。
【請求項4】
プレート本体に貫通孔が穿孔された複数のセルが形成され、各セルの一端側開口部を閉止する底部透明板材が接着されたマイクロプレートであって、プレート本体の底部外周縁部には位置決め用の軸孔が設けられたボス部が複数突設されているマイクロプレート。
【請求項5】
ボス部は矩形状のプレート本体の底部外周縁部の対角位置に設けられている請求項4記載のマイクロプレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−203193(P2008−203193A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42341(P2007−42341)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000144821)アピックヤマダ株式会社 (194)
【Fターム(参考)】