説明

マイクロリアクター、マイクロリアクターを用いた触媒反応およびマイクロリアクターを用いた方法

【課題】気液流の反応における反応率を改善することができるマイクロリアクターを提供する。
【解決手段】マイクロリアクター10は、流路15と、流路内に配置されたアルミニウム板20であって陽極酸化処理によって微細孔を有する皮膜を形成されたアルミウム板20と、アルミニウム板の微細孔に担持された触媒と、を備える。アルミニウム板20は、板状のベース部25と、ベース部から立ち上がった複数の突出片30と、を含む。ベース部25との接続箇所をなす各突出片の基端部31に隣接して、ベース部25に貫通孔26が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液流を反応させるマイクロリアクターに係り、とりわけ、反応効率を改善することができる反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医薬品等の付加価値の高い化学品の生産技術として、混合反応が速く、温度や反応時間の制御が容易なマイクロリアクターが注目されている。また、最近の小型携帯素子機器の高機能化に伴い、その電源として、高出力密度である固体高分子型燃料電池(PEFC)が注目されており、この固体高分子型燃料電池用の改質器の小型化および高性能化に寄与するマイクロリアクターが期待されている。
【0003】
一般的にマイクロリアクターは、例えば特許文献1や2に開示されたような反応管に気体や液体の原料を通過させ、その間における反応や触媒反応によって目的物を得るものである。また、特許文献3のマイクロリアクターを用いた改質ガス製造装置では、流体が通過する直線状の多数の流路と、触媒を担持し且つ各流路内に配置された板材とを有する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−104928号公報
【特許文献2】特開2008−68241号公報
【特許文献3】特開2007−244944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらマイクロリアクターでは、流路内での流れが層流支配となり、物質・伝熱境膜が大きくなる。この特性は、気液流の触媒反応を促進する上で好ましくない。また、層流が支配する一般的なマイクロリアクター内での反応は、低温域では、反応速度が支配する反応律速で進むが、反応効率を高めるためにマイクロリアクターの温度を上昇させると、反応速度が反応物の拡散速度に支配される拡散律速となり、十分に反応効率を高めることができなかった。
【0006】
本件発明者らは、鋭意研究を重ねた結果として、触媒を担持すべきアルミニウム板に、所定の構造を付与し、且つ陽極酸化処理によって皮膜を形成することによって、マイクロリアクター内での気液流が乱流支配となり、その結果、反応効率を飛躍的に向上させることができ、さらに高温領域においても反応律速を維持し反応効率を高める、との知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、本発明による反応装置は、気液流を反応させるマイクロリアクターであって、
流路と、
前記流路内に配置されたアルミニウム板であって、陽極酸化処理によって微細孔を有する皮膜を形成されたアルミウム板と、
前記アルミニウム板の前記微細孔に担持された触媒と、を備え、
前記アルミニウム板は、板状のベース部と、前記ベース部から立ち上がった複数の突出片と、を含み、前記ベース部との接続箇所をなす各突出片の基端部に隣接して前記ベース部に貫通孔が形成されているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、マイクロリアクター内の、触媒を担持すべきアルミニウム板に、所定の構造を付与し且つ陽極酸化処理によって皮膜を形成することによって、マイクロリアクター内での気液流が乱流支配となり、その結果、反応効率を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明による一実施の形態を説明するための図であって、マイクロリアクターを示す斜視図である。
【図2】図2は、図1のマイクロリアクターに組み込まれたアルミニウム板を示す斜視図である。
【図3】図3は、図1のマイクロリアクター内における流体の流れを説明するための図である。
【図4】図4は、図1のマイクロリアクター内における流体の流れを説明するための図である。
【図5】図5は、図1に対応する図であって、マイクロリアクターの一変形例を説明するための図である。
【図6】図6は、図1に対応する図であって、マイクロリアクターの他の変形例を説明するための図である。
【図7】図7は、実施例1に係るマイクロリアクターを用いた場合におけるメタノール転化率と反応温度との関係を、比較例1に係るマイクロリアクターを用いた場合と比較した結果を示すグラフである。
【図8】図8は、実施例1に係るマイクロリアクターを用いた場合におけるアレニウスプロット(速度定数、温度と活性化エネルギーの関係式であるアレニウスの式より求める)と、比較例1に係るマイクロリアクターを用いた場合におけるアレニウスプロットと、比較した結果を示すグラフである。
【図9】図9は、実施例2に係るマイクロリアクターを用いた場合におけるメタノール転化率と、比較例2に係るマイクロリアクターを用いた場合におけるメタノール転化率と、を比較した結果を示すグラフである。
【図10】図10は、実施例3に係るマイクロリアクターを用いた場合におけるメタノール転化率と反応温度との関係を、実施例4に係るマイクロリアクターを用いた場合と比較した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
【0011】
以下に説明するマイクロリアクター10は、気液流を反応させる装置である。図1に示すように、マイクロリアクター10は、入口12aおよび出口12bを有する管12によって画成された流路15と、流路15内に配置されたアルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板20と、アルミニウム板20に担持された触媒と、を有している。そして、このマイクロリアクター10によれば、後述するアルミニウム板20の所定の構造とアルミニウム板20による触媒の所定の担持方法との組み合わせにより、後に説明する実施例において実証されているように、技術水準から予測される範囲を超えた極めて高い反応率で、気液流を反応させることができる。
【0012】
なお、マイクロリアクター10内では、気液流を原料とする種々の反応や触媒反応が行われ得る。これらの反応は、吸熱反応であってもよいし、発熱反応であってもよい。吸熱反応の一例として、次の化学反応式(1)による、メタノール水蒸気改質反応(メタノール転化反応の一例)がマイクロリアクター10内で行われ得る。化学反応式(1)で表された反応では、メタノールガスと水蒸気とがマイクロリアクター10内に供給され、水素および二酸化炭素が生成される。また、発熱反応の一例として、次の化学反応式(2)による、水素燃焼反応がマイクロリアクター10内で行われ得る。化学反応式(2)で表された反応では、水素ガスと酸素ガスとがマイクロリアクター10内に供給され、水が生成される。
CHOH+HO→CO+3H ・・・式(1)
2H+O→2HO ・・・式(2)
【0013】
以下、マイクロリアクター10の構成についてより詳細に説明していく。流路15は、入口12aおよび出口12bを有する管12から形成され得る。この管12は、流路15内で起こる反応に適した材料、例えば、原料となる気液流や当該気液流からの生成物に対して耐性を有し、且つ、流路15内で起こる反応に条件(温度等)に適した材料から構成される。一例として、上述の化学反応式(1)または化学反応式(2)で表される触媒反応がマイクロリアクター10内において行われる場合には、ステンレス製の円筒状の管12を用いることができる。
【0014】
図2により示されているように、アルミニウム板20は、板状のベース部25と、ベース部25から立ち上がった多数の突出片30と、を有している。ベース部25には、多数の貫通孔26が形成されている。各突出片30は、いずれか一つの貫通孔26に隣接する位置において、ベース部25から立ち上がっている。言い換えると、ベース部25との接続箇所をなす各突出片30の基端部31に隣接して、一つの貫通孔26がベース部25に形成されている。図2に示すように、本実施の形態において、突出片30はベース部25と一体的に形成されている。
【0015】
このようなアルミニウム板20は、一例として、アルミニウム製の板材またはアルミニウム合金製の板材に切り起こし加工を施すことによって、作製され得る。なお、切り起こし加工とは、元材の対象となる部分について、その輪郭の一部分を除いて、元材に切り込みを入れるとともに、さらに、当該切り込まれていない前記輪郭の一部分を曲げ軸線として、切り込まれた対象となる部分を元材に対して折り曲げる加工のことを意味している。また、切り起こし加工は、切り曲げ加工または切り上げ加工とも呼ばれる。切り起こし加工によれば、元材のうちの対象となる部分を、その一部において元材に接続された状態で、元材の元の位置から取り去るとともに元材から立ち上げることができる。
【0016】
図2に示すように、切り起こし加工によって作製されたアルミニウム板20において、突出片30は、切り起こし加工を施される元材と同様に、板状に形成される。また、図2に示すように、突出片30の平面視形状(すなわち、突出片30の板面への法線方向から当該突出片30を観察した場合における突出片30の形状)は、貫通孔26の平面視形状(すなわち、板状からなるベース部25の板面への法線方向から当該貫通孔26を観察した場合における貫通孔26の形状)と一致するようになる。また、突出片30の基端部31は、切り起こし加工における突出片30の折り曲げ軸線に相当する。なお、本明細書において、「板面」とは、対象となる板状の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となる板状の部材の平面方向と一致する面のことを指す。
【0017】
図2に示す例では、全ての突出片30が、ベース部25から一方の側に突出している。
また、板状からなる各突出片30は、同様に板状からなるベース部25に対して略直交するようにして、当該ベース部25から立ち上がっている。すなわち、全ての突出片30が、ベース部25から同一の向きに突出している。なお、各突出片30のベース部25に対する折り曲げ角度は、図示した例のように90°であることがベース部25からより高く起き上がる点において好ましいが、マイクロリアクター10内での反応を促進する観点からすれば必ずしも90°である必要はない。
【0018】
図2に示す例において、突出片30は、平面視正方形状を有している。したがって、突出片30の基端部31および先端部42は互いに並行に延びる直線状に形成され、互いに同一の幅を有している。ただし、突出片30の平面視形状は、マイクロリアクター10内での反応を促進する観点からすれば必ずしも正方形である必要はなく、種々の形状を有することができる。
【0019】
また、図示された例では、全ての突出片30が同様に構成され、これにともなって、全ての貫通孔26が同様に構成されている。具体的には、全ての突出片30が同一の平面視形状を有するように構成され、これにともなって、全ての貫通孔26が同一の平面視形状を有するように構成されている。加えて、図2に示すように、多数の突出片30および多数の貫通孔26は、板状からなるベース部25の板面上において、互いに異なる第1配列方向および第2配列方向のそれぞれに並べて配列されている。突出片30および貫通孔26は、それぞれ、第1配列方向に一定の配列ピッチで並べて配置されるとともに、第2配列方向にも一定の配列ピッチで並べて配置されている。とりわけ、図示する例において、第1配列方向と第2配列方向とは直交している(図3参照)。さらに、図示する例において、多数の突出片30の各基端部31は、ベース部25の板面上の同一のある一つの方向に延びている。図2および図3に示すように、基端部31が延びる一方向は、突出片30が並べられている第1配列方向と平行となっている。ただし、マイクロリアクター10内での反応を促進する観点からすれば必ずしも図示された例のように、突出片30および貫通孔26が構成されている必要はない。
【0020】
以上のような構造を有したアルミニウム板20の寸法の具体例として、最も接近して隣り合う二つの突出片30の配列ピッチを500μm〜3000μmとし、突出片30の幅および高さを、それぞれ、300μm〜1500μmとすることができ、ベース部25および突出片30の厚みを20μm〜1000μmとすることができる。このような寸法のアルミニウム板20によれば、上述の化学反応式(1)または化学反応式(2)で表される触媒反応を、マイクロリアクター10内において効果的に促進させることができる。
【0021】
また、アルミニウム板20は、触媒を担持するための構成として、陽極酸化処理によって微細孔を有する皮膜を形成されている。アルミニウムの陽極酸化処理によって形成されるアルマイト皮膜はそこに生成された多孔質微細孔に微細な粒子の触媒をより多く且つ強固に担持させることが可能となる。このアルミニウムの陽極酸化処理は次のようなプロセスで行われ得る。
【0022】
陽極酸化の電解浴は酸性浴のみならず、アルカリ浴、あるいはホルムアルデヒドと硼酸系の非水浴によっても多孔質皮膜を形成することができる。陽極酸化処理の酸性電解浴としては、燐酸、硫酸、蓚酸、クロム酸、スルフォサルチル酸、ピロリン酸、スルファミン酸、リンモリブデン酸、硼酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、フタル酸、イタコン酸、リンゴ酸、グリコール酸等1種類以上を溶解した水溶液を用いることができる。この酸性浴における電解方法としては、定電流、定電圧、定電力、および連続、断続あるいは電流回復などを応用した高速アルマイト法を採用することができる。さらに電解時の電流波形としては、直流、交流、交直重畳、交直併用、不完全整流波形、パルス波形、三角波形、あるいは周期波形等を用いることができる。
【0023】
他方、アルカリ電解浴としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、アンモニア水等1種類以上を溶解した水溶液を用いることができる。アルカリ電解用の場合も電解方法、電流波形は酸性電解浴の場合と同様とすることができる。
【0024】
なお、陽極酸化処理後のアルミニウム板20にエッチング処理を施して、陽極酸化処理によって形成された皮膜の微細孔を拡大(拡径)するようにしてもよい。このようなエッチング処理によれば、陽極酸化処理の処理時間を増大させることなく、すなわち、陽極酸化処理時の消費電気量を増大させることなく、皮膜の微細孔の孔径を表層側から拡径し、皮膜のBET比表面積を増大させることができる。
【0025】
また、陽極酸化処理によって形成された皮膜のBET比表面積を増大させる観点から、陽極酸化処理後のアルミニウム板20を、50〜350℃の熱水又は水蒸気(通常は100℃以下)によって水和処理することが好ましい。この場合の熱水のpHは7以上であることが好ましく、特に10〜12とすることが、水和処理に要する時間を短縮する上で好ましい。水和処理の時間は、用いられる熱水のpHにも依存するが、1時間以上とすることが好ましく、約2時間実施することにより、略pH値に関係なくBET比表面積を顕著に増大させることができる。
【0026】
さらに、陽極酸化処理によって形成された皮膜のBET比表面積を増大させる観点から、陽極酸化処理後のアルミニウム板20を、必要に応じて更に焼成処理することが好ましく、特に上記焼成を400〜550℃で3時間程度行うことが好ましい。焼成処理をアルミニウム板20に施すことによって、アルミニウム板20の表面に均一なγ−アルミナ層を形成せしめ、触媒担体表面を増大させることができると共に、表面の均一性と強度を改善することができる。
【0027】
以上のようなアルミニウム板20に担持せしめる触媒は、反応装置10内での触媒反応に対応して、適宜選択され得る。具体例として、例えば、白金族金属、白金族金属の合金、金、金合金、マンガン、鉄、亜鉛、銅、ニッケル、ニッケル合金、コバルトおよびコバルト合金、ならびにこれら金属の酸化物等の中から選択された一種以上、特に、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、セリウム、コバルト、鉄、銅、亜鉛、金、銀、レニウム、マンガン、および錫、またはこれらの合金もしくは酸化物、あるいはこれらの混合物を、アルミニウム板20に担持される触媒として用いることができる。
【0028】
触媒は、種々の既知な方法を用いて、アルミニウム板20の皮膜に形成された微細孔内に担持させることができる。具体例として、加圧含浸、減圧含浸、電解担持法、ゾルゲル法、電気泳動法等を採用して、触媒をアルミニウム板20に担持させることができる。
【0029】
触媒を担持したアルミニウム板20は、そのままの板材として、管12によって画成され気液流が流れるようになる流路15内に配置されてもよい。その一方で、触媒を担持したアルミニウム板20が、複数枚のアルミニウム板20を重ねてなる積層構造体18として或いは一以上のアルミニウム板20を巻き上げてなる積層構造体18として、流路15内に配置されていてもよい。本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、触媒を担持したアルミニウム板20が積層構造体18をなして流路内に配置されている場合には、後述する実施例で実証されているように、マイクロリアクター10内で起こる反応の反応率を効果的に向上させることができた。
【0030】
図1および図2には、一枚のアルミニウム板20が巻き取られて積層構造体18をなす例が開示されている。そして、図1および図2に示す例では、一枚のアルミニウム板20が巻き取られてなる円柱状の積層構造体18が、円筒状の管12内に挿入されている。
【0031】
図2に示された例では、突出片30および貫通孔26の第1の配列方向は、アルミニウム板20を巻き上げる際の巻き取り軸線d1と直交している。結果として、図1に示されているように、突出片30および貫通孔26の第1の配列方向は、流路15の入口側と出口側とを結ぶ方向と直交するようになる。また、図示する例において、突出片30および貫通孔26の第2の配列方向は、第1配列方向と直交している。すなわち、第2配列方向は、アルミニウム板20を巻き上げる際の巻き取り軸線d1と平行に延び、結果として、積層構造体18の入口側と出口側とを結ぶ方向と平行となる。
【0032】
このため、図示する例では、多数の突出片30の各基端部31は、アルミニウム板20を巻き上げる際の巻き取り軸線d1と直交する方向に延び、結果として、流路15をなす管12の入口側と出口側とを結ぶ方向(アルミニウム板20を巻き上げる際の巻き取り軸線d1)と交差する方向、より厳密には、流路15をなす管12の入口側と出口側とを結ぶ方向と直交する方向に延びている。また、図示する例では、各突出片30は、当該突出片30に対応する貫通孔26に対して、流路15の下流側に位置している。
【0033】
以上に説明したマイクロリアクター10を用いた場合、後述する実際の試験結果からも実証されているように、入口12aの側から管12内に供給された気液流は、触媒を担持したアルミニウム板20がマイクロリアクターに配置された流路15内を流れている際中に極めて高い反応率での反応を起こすようになる。すなわち、本発明によるマイクロリアクター10によれば、極めて効果的に気液流の反応を促進させることができる。以下に、そのメカニズムについて説明するが、本発明は、以下に限定されるものではない。
【0034】
本発明によるマイクロリアクター10では、流路15内に触媒を担持するアルミニウム板20が設けられている。このアルミニウム板20は、ベース部25から突出する突出片30を有し、且つ、触媒を担持する微細孔を含む陽極酸化皮膜を表層に有している。このため、流路15内に突出する突出片30によるマクロ的な拡散(図3および図4に示された拡散)と、皮膜の微細孔によるミクロ的な拡散と、によって、流路15内を流れる気液流が拡散されることになる。実際に流路15内での気液流の流れをシミュレーションしたところ、図4に示すように、流路15に沿った突出片30の直後には、アルミニウム板20の表面に沿って流れる渦流efが形成されている。このようなアルミニウム板20の表層(皮膜)に沿って流れる渦流efによって、アルミニウム板20の皮膜の微細孔に起因したミクロ的な拡散が促進され、且つ、当該微細孔内に配置された触媒による気液流の反応が極めて促進される。
【0035】
すなわち、本発明によるマイクロリアクター10によれば、突出片30によって流路15内における気液流の流れが乱流化し、反応原料と突出片30を含むアルミニウム板20全体にわたり陽極酸化により接触面を多孔質高表面積化することにより高密度で多量に担持された触媒と反応すべき物資(原料)との接触効率が飛躍的に高まる。また、気液流の乱流化により熱の活発な拡散が引き起こされ、さらにアルミニウム板20が伝熱性に優れていることが効率の向上に寄与している。加えてマイクロリアクター10を構成する母材等に伝熱性に優れたものを用いることにより、さらなる向上を図ることが出来る。このようなアルミニウム板20の突出片30と、アルミニウム板20に形成された陽極酸化皮膜の微細孔による触媒担持方法と、の相乗作用の結果として、技術水準から予測される範囲を超えた極めて高い反応率で、気液流の反応を引き起こすことができる。
【0036】
なお、後述する図8では、本発明に係るマイクロリアクターでの反応に関するアレニウスプロットと、突出片30および貫通孔26が形成されていない未加工の単なるアルミニウムプレートに触媒を担持させて流路内に配置してなるマイクロリアクターでの反応に関するアレニウスプロットと、が比較されている。本発明に係るマイクロリアクターでは、プロットされた点がグラフ上でほぼ一直線上に並んでいる。これは、本発明に係るマイクロリアクターによる反応では低温領域から高温領域にわたり高い反応効率を保ち推移する反応律速が支配していることを示している。一方、単なる板材からなるアルミニウムプレートを用いたマイクロリアクターでは、高温側において横軸に対する傾斜角度が小さくなる折れ線に沿って、各点がプロットされている。これは、未加工のアルミニウムプレートを用いたマイクロリアクターによる反応では、高温領域において反応効率が低下する拡散律速が支配していることを示している。すなわち、本発明に係るマイクロリアクターを用いることにより、各種化合物の反応において、低温域から高温域全体に渡って高効率な反応を行うことができる。
【0037】
また、図1および図2に示された例では、アルミニウム板20が、積層構造体18として、流路15内に高密度で配置されている。したがって、反応率の向上に寄与する拡散が、流路15の各所で引き起こされ、気液流の反応が効果的に促進される。この点については、後述する図10に関連する試験結果でも実証されている。
【0038】
さらに、図1および図2に示された例では、積層構造体18として流路15に配置されたアルミニウム板20に貫通孔26が形成されている。したがって、流路15内での気液流の拡散は、アルミニウム板20の板面に沿った拡散(図3に示された拡散)だけでなく、貫通孔26を介した、アルミニウム板20の板面に対する法線方向への熱および反応すべき物質(原料)の拡散も生じる。これにより、気液流の反応がさらに効果的に促進される。
【0039】
さらに、図1および図2に示された例では、各突出片30は、当該突出片30に対応する貫通孔26に対して、流路15の下流側に位置している。このため、図4に示された渦流efの発生が促進され、この渦流efは、突出片30の下流側を向く表層だけでなく、当該突出片30の直後に位置するベース部25の表層に沿っても流れるようになる。この結果、アルミニウム板20の表層に担持された触媒によって、流路15内を流れる気液流の反応がより効果的に促進されることになる。
【0040】
以上、図1〜図4を参照しながら、本発明の一実施の形態について説明してきたが、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、この他にも種々の態様で実施可能である。以下、適宜図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いており、重複する説明を省略する。
【0041】
図5に示すように、マイクロリアクター10が筒状部材40をさらに備え、一以上のアルミニウム板20が筒状部材40に巻き取られるようにしてもよい。一例として、アルミニウム板20が配置された流路15内での反応が吸熱反応(例えば、上述した化学反応式(1)で示される反応)である場合、加熱された流体を筒状部材40内に流すことにより、或いは、筒状部材40の内壁に触媒が担持され、当該触媒によって発熱反応(例えば、上述した化学反応式(2)で示される反応)を引き起こすようになる気液流を筒状部材40内に流すことにより、筒状部材40から気液流の流路15に熱を供給することが可能となる。このような構成によれば、マイクロリアクター10の外部から熱を供給することなく、流路15内での吸熱反応を促進することが可能となる。加えて、筒状部材を設けることによってアルミニウム板20の巻き姿が安定し、流路15内の各位置で均一に反応を引き起こすことも可能となる。これにより、触媒を担持したアルミニウム板20を長寿命化させることができる。なお、筒状部材40内を流体が流れる方向と、流路15内を流体が流れる方向とは、同一の向きであってもよいし、逆向きであってもよい。
【0042】
また、マイクロリアクター10が、流路(第1の流路)15に隣接して配置された第2の流路16を更に有し、当該第2の流路16内にも触媒を担持した第2のアルミニウム板20が配置されるようにしてもよい。図6に示された例では、第2の流路16は、入口13aおよび出口13bを有する円筒状の管13によって画成されている。第2の流路16を形成する第2の管13の内径は、第1の流路15を形成する管(第1の管)12の外形よりも大きく、第1の流路15を形成する管12は、第2の流路16を形成する管13の内部を延びている。すなわち、第2の流路16は、第1の流路15を取り囲むように形成されている。第2の流路16内に配置された第2のアルミニウム板21は、第1の流路15内に配置された上述のアルミニウム板20と同様に構成されている。そして、図6に示す例において、第2のアルミニウム板21は、第1の流路15を形成する第1の管12の外周に巻き付けられている。なお、図6では、第1の流路15内を流体が流れる方向と第2の流路16内を流体が流れる方向とが逆向きとなっている例を示しているが、この例に限られず、第1の流路15内を流体が流れる方向と第2の流路16内を流体が流れる方向とが同一の向きとなっていてもよい。
【0043】
図6に示された例に係るマイクロリアクター10を用いる場合、第1の流路15内において、吸熱反応および発熱反応のいずれか一方が起こり、第2の流路16内において、吸熱反応および発熱反応の他方が起こるようにしてもよい。このような使用態様においては、第1の流路15を画成する第1の管15を介した第1流路12と第2流路15との間での熱伝達が行われ、吸熱反応および発熱反応を極めて高い反応率で引き起こすことが可能となる。
【0044】
また、上述した実施の形態で説明したアルミニウム板20の構成および流路15への配置態様は例示に過ぎず、種々の変更が可能である。例えば、上述した実施の形態において、多数の突出片30の各基端部31が、流路15をなす管12の入口側と出口側とを結ぶ方向と直交する方向に延びる例を示したが、この例に限られない。一例として、多数の突出片30の各基端部31が、流路15をなす管12の入口側と出口側とを結ぶ方向に対して90°以外の角度をなして傾斜するようにしてもよい。また、上述した実施の形態において、各突出片30は、当該突出片30に対応する貫通孔26に対して、流路15の下流側に位置している例を示したが、この例に限られない。一例として、各突出片30が、当該突出片30に対応する貫通孔26に対して、流路15の上流側に位置するようにしてもよい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、特にことわりのない限り、「流速」とは体積空間速度(GHSV)を示すものとする。
【0046】
<試験1>
以下の実施例1および比較例1に係るマイクロリアクターを実際に作製し、上述の実施の形態で説明したアルニウム板を用いた場合における反応率を評価した。
【0047】
実施例1
厚み126μmのA1050製板材に切り起こし加工を施し、突出片および突出片に隣接した貫通孔を有するアルミニウム板を作製した。突出片の平面形状は、一辺が0.375mmの正方形となるようにした。上述した実施の形態と同様に、突出片は、直交する第1方向および第2の方向に、それぞれ一定のピッチ(第1配列方向:0.728mm、第2配列方向:0.695mm)で形成した。
【0048】
次に、切り起こし加工を施したアルミニウム製板材に、次の処理を行って、実施の形態で説明したアルミニウム板を作製した。まず、切り起こし加工を施したアルミニウム製板材を、25℃の4wt%シュウ酸水溶液中において、50A/mの電流密度で4時間、陽極酸化処理した。その後、陽極酸化処理後のアルミニウム製板材を、25℃の4wt%シュウ酸水溶液中に4時間浸し、陽極酸化処理で形成された皮膜の微細孔の孔径を表層側から拡大させる細孔径拡大処理を行った。その後、細孔径拡大処理後のアルミニウム製板材を、350℃1時間の条件で、焼成処理した。次に、アルミニウム製板材を、80℃の水中に2時間浸して、水和処理を行った。その後、水和処理後のアルミニウム製板材を、500℃3時間の条件で焼成し、アルミニウム板を得た。
【0049】
以上のように作製されたアルミニウム板に、次の手順で、触媒を担持させた。まず、アルミニウム板を、NH溶液でpHを8.95に調整した25℃のCu:0.49mol/L、Zn:0.01mol/Lの混合溶液中に3時間含浸させ、その後、350℃1時間の条件で焼成した。次に、アルミニウム板を、再度、NH溶液でpHを8.95に調整した25℃のCu:0.49mol/L、Zn:0.01mol/Lの混合溶液中に3時間含浸させ、その後、350℃1時間の条件で焼成した。以上の方法によって、Cu/ZnO/Al触媒をアルミニウム板に担持させた。触媒の担持量は、Cu:1.95g/m、Zn:0.67g/mとなった。
【0050】
マイクロリアクターの流路を形成する管をアルミニウム製チューブとし、以上のようにして得られた触媒を担持したアミニウム板を、このアルミニウム製チューブ内に配置した。アルミニウム製チューブは、外径12.00mm、内径10.00mm、長さ60.0mmの円筒状のものを使用した。このアルミニウム製チューブ内に、40mm×28mmの大きさのアルミニウム板を、直径8mm×長さ28mmの円柱状に巻いた状態で挿入した。
【0051】
切り起こし加工によって形成されたアルミニウム板の突出片および貫通孔の流路に対する位置関係は、上述した実施の形態で図示された例と同様になるようにした。すなわち、突出片の基端部が流路の入口側と出口側とを結ぶ方向と直交するようにして、且つ、各突出片が、当該突出片に対応する貫通孔よりも、流路の下流側に位置するようにして、アルミニウム板をアルミニウム製チューブ内に挿入した。
【0052】
比較例1
厚み126μmのA1050製板材に、対して切り起こし加工を施すことなく、実施例1と同様の条件で、陽極酸化処理、細孔径拡大処理、焼成処理、水和処理および焼成処理を、この順番で施して、触媒担持用のアルミニウムプレートを得た。このアルミニウムプレートに対して、実施例1と同様の条件で、Cu/ZnO/Al触媒を担持させた。触媒の担持量は、Cu:2.68g/m、Zn:0.86g/mとなった。
【0053】
実施例1と同一のSUS製チューブ内に、触媒を担持させたアルミニウムプレートを配置した。アルミニウムプレートは、40mm×28mmのプレート状のものを、直径8mm×長さ28mmの円柱状に巻いた状態で、アルミニウム製チューブ内に挿入した。
【0054】
試験手順および評価
以上のようにして得られた実施例1に係るマイクロリアクターおよび比較例1に係る反応装置を用いて、化学反応式(I)で表されるメタノール転化反応により、メタノールから水素を生成した。
CHOH+HO→CO+3H ・・・式(I)
試験は、次の手順で実施した。まず、280℃で2時間の条件でマイクロリアクターの水素還元処理を行った。次に、メタノールと水の混合溶液をキャリアガスである窒素により気化器に送り込む。それを気化器内で150℃に加熱蒸発させ、マイクロリアクターに供給した。アルミニウムチューブ内に供給される窒素、メタノール、水のモル比を、次のように設定した。
:MeOH:HO=5:2:3
また、実施例1を用いた場合と比較例1を用いた場合との間で、メタノールの供給量Fに対する触媒重量Wの比(W/F)の値が、同一の値(0.322)となるようにSUS製チューブ内に供給される気体の流速を調節した。具体的には、実施例1を用いた試験では流速を158h−1とし、比較例1を用いた試験では流速を213h−1とした。
【0055】
水素還元処理後、220℃から320℃まで20℃刻みで昇温し、出口から流出するガスをガスクロマトグラフィーで検出し、メタノール転化率(反応率)を評価した。なお、ここで、メタノール転化率とは、反応装置内に供給されたメタノール量に対する、反応装置内で反応したメタノールの量の割合を意味している。結果を図7のグラフに示す。図7に示されているように、実施例1のマイクロリアクターを用いた場合、メタノール転化率(反応率)が反応温度の上昇にともなって向上し、比較例1を用いた場合に対して最大で45%も上昇した。このような45%もの上昇率は、技術水準から予測される範囲を超えた極めて高い上昇率である。
【0056】
また、図8には、実施例1のマイクロリアクターを用いた試験結果および比較例1のマイクロリアクターを用いた試験結果から得られたアレニウスプロットを示している。実施例1についてのアレニウスプロットは、直線になっているが、比較例1についてのアレニウスプロットは、折れ線になっている。これは、実施例1の反応が低温領域から高温領域全体にわたり高い反応効率を保つ反応律速が支配していることを示していることに対し、比較例1の反応では、高温領域において反応効率が低下する拡散律速が支配していることを示している。
【0057】
一般的に、気液相触媒反応、とりわけ気相触媒反応では高温になるにつれて流体境膜内の拡散抵抗の影響が強くなる。しかしながら、試験結果からすれば、実施例1のマイクロリアクターの流路内では、原料となる気液流の流れが乱され、物質移動が促進される。このため、図8に示されているように、実施例1は、反応律速が支配する低温領域において比較例1より高い反応効率を示し、反応温度が高い領域においても、反応律速を保ったまま反応効率が上昇している。比較例1では、高温領域において拡散律速に支配され、反応効率の上昇が抑えられている。従って、反応温度が高温になるにつれて、実施例1の反応と比較例1の反応における反応効率の差が増大している。
このことは図7においても同様に示されており、反応温度が低い領域において実施例1のメタノール転化率は比較例1より高く、反応温度の上昇とともに実施例1と比較例1のメタノール転化率の差が大きくなることがわかる。
【0058】
<試験2>
以下の実施例2および比較例2に係るマイクロリアクターを実際に作製し、上述の実施の形態で説明したアルニウム板を用いた場合における反応率を、上述の試験1とはメタノールの水(水蒸気)に対する割合を低下させて評価した。
【0059】
実施例2
アルミニウム板による触媒担持量を変更したことを除き、実施例1と同様のマイクロリアクターを作製した。実施例2において、アルミニウム板による触媒の担持量は、Cu:2.94g/m、Zn:1.01g/mとした。
【0060】
比較例2
アルミニウムプレートによる触媒担持量を変更したことを除き、比較例1と同様のマイクロリアクターを作製した。比較例2において、アルミニウム板による触媒の担持量は、Cu:12.84g/m、Zn:2.75g/mとした。
【0061】
試験手順および評価
以上のようにして得られた実施例2に係るマイクロリアクターおよび比較例2に係るマイクロリアクターを用いて、上述の化学反応式(1)で表されるメタノール転化反応により、メタノールから水素を生成した。試験の手順は、試験1と同様にした。ただし、アルミニウムチューブ内に供給される窒素、メタノール、水のモル比を、次のように設定した。
:MeOH:HO=4:1:3
また、実施例2を用いた場合と比較例2を用いた場合との間で、メタノールの供給量Fに対する触媒重量Wの比(W/F)の値が、同一の値(1.562)となるようにアルミニウム製チューブ内に供給される気体の流速を調節した。具体的には、実施例2を用いた試験では流速を700h−1とし、比較例2を用いた試験では流速を2070h−1とした。結果を図9のグラフに示す。
【0062】
<試験3>
下記のようなアルミニウム板の充填方法を変更した実施例3,4に係るマイクロリアクターを実際に作製し、充填方法が反応率に与える影響を調査した。
【0063】
実施例3
アルミニウム板による触媒担持量を変更したことを除き、実施例1と同様にしてCu/ZnO/Al触媒を担持したアルミニウム板を作製した。実施例3において、アルミニウム板による触媒の担持量は、Cu:2.94g/m、Zn:1.01g/mとした。このアルニウム板を、12.6mm×22mmの大きさで切り出し、切り出したアルニウム板を、周長22mm(径:略7mm)×長さ12.6mmの円筒状に丸めて、すなわち、重なり合う部分が生じないように、実施例1と同様のアルミニウム製チューブに挿入した。切り起こし加工によって形成されたアルミニウム板の突出片および貫通孔の流路に対する位置関係は、実施例1と同様にした。
【0064】
実施例4
実施例3と同様のアルミニウム板を用意した。このアルニウム板を、12.6mm×70mmの大きさで切り出し、切り出したアルニウム板を、周長22mm(径:略7mm)×長さ12.6mmの円柱状に巻きあげ、実施例1と同様のアルミニウム製チューブに挿入した。すなわち、実施例4のマイクロリアクターは、実施例3のマイクロリアクターと比較して3.18倍の触媒面積を有するようにした。切り起こし加工によって形成されたアルミニウム板の突出片および貫通孔の流路に対する位置関係は、実施例1と同様にした。
【0065】
試験手順および評価
以上のようにして得られた実施例3,4に係るマイクロリアクター反応装置を用いて、上述の化学反応式(1)で表されるメタノール転化反応により、メタノールから水素を生成した。試験の手順は、試験1と同様にした。したがって、アルミニウムチューブ内に供給される窒素、メタノール、水のモル比を、次のように設定した。
:MeOH:HO=5:2:3
また、実施例3を用いた場合と実施例4を用いた場合との間で、メタノールの供給量Fに対する触媒重量Wの比(W/F)の値が、同一の値(0.322)となるようにアルミニウム製チューブ内に供給される気体の流速を調節した。具体的には、実施例3を用いた試験では流速を255h−1とし、実施例4を用いた試験では流速を835h−1とした。
【0066】
結果を図10のグラフに示す。図10に示された結果から理解され得るように、触媒を担持したアルミニウム板を流路内に高密度で配置することによって、メタノール転化率(反応率)をさらに向上させることができた。
【符号の説明】
【0067】
10 反応装置
12 管(第1の管)
12a 入口
12b 出口
13 管(第2の管)
13a 入口
13b 出口
15 流路(第1の流路)
16 流路(第2の流路)
18 積層構造体
20 アルミニウム板(第1のアルミニウム板)
21 アルミニウム板(第2のアルミニウム板)
25 ベース部
26 貫通孔
30 突出片
31 基端部
32 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気液流を反応させるマイクロリアクターであって、
流路と、
前記流路内に配置されたアルミニウム板であって、陽極酸化処理によって微細孔を有する皮膜を形成されたアルミウム板と、
前記アルミニウム板の前記微細孔に担持された触媒と、を備え、
前記アルミニウム板は、板状のベース部と、前記ベース部から立ち上がった複数の突出片と、を含み、前記ベース部との接続箇所をなす各突出片の基端部に隣接して前記ベース部に貫通孔が形成されている、マイクロリアクター。
【請求項2】
複数枚の前記アルミニウム板を重ねてなる積層構造体として、前記アルミニウム板は前記流路内に配置されている、請求項1に記載のマイクロリアクター。
【請求項3】
一枚の前記アルミニウム板または重ねられた複数枚の前記アルミニウム板を巻き取ってなる積層構造体として、前記アルミニウム板は前記流路内に配置されている、請求項1に記載のマイクロリアクター。
【請求項4】
前記突出片の前記基端部が前記流路の入口側と出口側とを結ぶ方向と交差するようにして、前記アルミニウム板は前記流路内に配置されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のマイクロリアクター。
【請求項5】
各突出片が、当該突出片に対応する貫通孔よりも、流路の下流側に位置するようにして、前記アルミニウム板は前記流路内に配置されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載のマイクロリアクター。
【請求項6】
前記流路に隣接して配置された第2の流路と、
前記第2の流路内に配置された第2のアルミニウム板であって、陽極酸化処理によって微細孔を有する皮膜を形成された第2のアルミウム板と、
前記第2のアルミニウム板の前記微細孔に担持された第2の触媒と、をさらに備え、
前記第2のアルミニウム板は、板状のベース部と、前記ベース部から立ち上がった複数の突出片と、を含み、前記ベース部との接続箇所をなす各突出片の基端部に隣接して前記ベース部に貫通孔が形成されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のマイクロリアクター。
【請求項7】
前記第2の流路は、前記流路を囲むように形成され、
前記第2の流路内の前記アルミニウム板は、前記流路の外周に巻かれるようにして前記第2の流路内に配置されている、請求項6に記載のマイクロリアクター。
【請求項8】
前記触媒は、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、セリウム、コバルト、鉄、銅、亜鉛、金、銀、レニウム、マンガン、および錫、ならびに、これらの合金および酸化物からなる群より選択される少なくとも一種、または、当該一種以上を含む混合物からなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載のマイクロリアクター。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のマイクロリアクターを用いた触媒反応であって、
気液流を前記流路内で反応させる、触媒反応。
【請求項10】
メタノールから水素を生成するメタノール転化反応である、請求項9に記載の触媒反応。
【請求項11】
気液流がメタノールと水の混合液である、請求項9または10に記載の触媒反応。
【請求項12】
メタノールから、メタノール転化反応により水素を製造する方法であって、請求項1〜8のいずれか一項に記載のマイクロリアクターを用いて、前記メタノール転化反応を行う、方法。
【請求項13】
前記転化反応を、280℃以上の温度で行う、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−161727(P2012−161727A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23209(P2011−23209)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 1.刊行物名、巻数、号数 化学工学会第42回秋季大会研究発表講演要旨集 2.発行者名 社団法人化学工学会 3.発行年月日 平成22年8月6日〔刊行物等〕1.刊行物名、巻数、号数 イノベーション・ジャパン2010−大学見本市 2.発行者名 日経BP社 3.発行年月日 平成22年9月29日
【出願人】(507342478)株式会社 ナノ・キューブ・ジャパン (9)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】