説明

マイクロレンズアレイの製造方法

【課題】マイクロレンズを形成するために必要な液滴の数と同じ回数の吐出走査を実施する必要があることに起因して、マイクロレンズを形成するために多くの時間を要することを抑制するマイクロレンズアレイの製造方法を提供する。
【解決手段】マイクロレンズアレイの製造方法は、液状体を液滴として吐出して、基材の所定の位置に着弾させた液状体によってマイクロレンズを形成するマイクロレンズアレイの製造方法であって、基材におけるマイクロレンズを形成する面を、液状体に対して撥液性にする撥液処理工程と、マイクロレンズを構成するための複数の液滴における最初に着弾させる液滴を、マイクロレンズの座標位置に着弾させる第一液滴配置工程と、複数の液滴における2番目以降に着弾させる液滴を、当該液滴の前に着弾させた液滴に一部が重なる位置に着弾させる第二液滴配置工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に複数のマイクロレンズが2次元的に並べられて形成されているマイクロレンズアレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基材上に複数のマイクロレンズが2次元的に並べられて形成されているマイクロレンズアレイが知られている。所定の機能を有するマイクロレンズアレイを形成するためには、正確な形状のマイクロレンズを、所定の位置に正確に配置することが必要である。
また、液状体を吐出する吐出ヘッドを備え、吐出した液滴を被描画媒体の任意の位置に着弾させることによって、被描画媒体上に任意の画像などを描画する描画装置(液滴吐出装置)が知られている。例えばインクジェット方式の吐出ヘッドを備える描画装置(液滴吐出装置)は、所定の量のインクを所定の位置に精度よく配置することができる。配置したインクを硬化させることによって、精密な形状を有する機能膜や、微細な画像などを形成することができる。光学材料を含む液状体を吐出して、レンズを形成することもできる。
【0003】
特許文献1には、インクジェットヘッドを用いて光学樹脂材料を吐出してマイクロレンズを形成する、マイクロレンズアレイの製造方法が開示されている。特許文献2には、光透過性の樹脂を、液滴吐出ヘッドを用いて塗布し、複数の液滴を用いて1個のマイクロレンズを形成することによって正確な形状のマイクロレンズを形成する、マイクロレンズの製造方法及びマイクロレンズ、さらには当該マイクロレンズを備えた光学膜、プロジェクション用スクリーン、プロジェクターシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−108216号公報
【特許文献2】特開2003−240911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インクジェット方式の液滴吐出装置においては、液滴を着弾させる被描画媒体と吐出ヘッドとを被描画媒体の面方向に相対移動させて、吐出ヘッドから吐出された液滴を被描画媒体に着弾させる吐出走査を実施することで、液状体を配置する。吐出走査において、被描画媒体の所定の位置と吐出ヘッドとの相対位置が、吐出ヘッドから吐出された液状体が被描画媒体の所定の位置に着弾する相対位置になった時点で吐出ヘッドからの吐出を実施することによって、所定の位置に液状体を配置する。この構成では、適切な相対位置において吐出できる液滴の数は、1回の吐出走査において1滴である。
特許文献1や特許文献2に開示された製造方法などにおいては、複数の液滴によって1個のマイクロレンズを形成するために、マイクロレンズを形成するために必要な液滴の数と同じ回数の吐出走査を実施する必要がある。このため、マイクロレンズを形成するために、多くの時間を要するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかるマイクロレンズアレイの製造方法は、液状体を液滴として吐出して、基材の所定の位置に着弾させた前記液状体によってマイクロレンズを形成するマイクロレンズアレイの製造方法であって、前記基材における前記マイクロレンズを形成する面を、前記液状体に対して撥液性にする撥液処理工程と、前記マイクロレンズを構成するための複数の前記液滴における最初に着弾させる前記液滴を、前記マイクロレンズの座標位置に着弾させる第一液滴配置工程と、前記複数の液滴における2番目以降に着弾させる前記液滴を、当該液滴の前に着弾させた前記液滴に一部が重なる位置に着弾させる第二液滴配置工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
本適用例にかかるマイクロレンズアレイの製造方法によれば、第一液滴配置工程において、液滴を、マイクロレンズの座標位置に着弾させる。マイクロレンズの座標位置は、マイクロレンズの光軸の位置である。液滴をマイクロレンズの座標位置に着弾させるとは、液滴の中心がマイクロレンズの座標位置に略一致するように、液滴を着弾させることである。第一液滴配置工程によって、着弾した液滴を、マイクロレンズの座標位置に位置させることができる。
第二液滴配置工程において、液滴を、当該液滴の前に着弾させた液滴に一部が重なる位置に着弾させる。液体は、表面張力によって、表面積が最も小さい形状になろうとするため、一部が重なった2個の液滴は、表面張力によって、一体になる。第二液滴配置工程において、液滴を、当該液滴の前に着弾させた液滴に一部が重なる位置に着弾させることで、着弾させた液滴を、前に着弾させた液滴と一体にすることができる。
撥液処理工程において、基材面が、液状体に対して撥液性に処理される。これにより、基材面に配置された液状体が硬化する前の状態では、液状体が基材面に馴染んで固定されることを抑制して、基材面上を流動可能にすることができる。これにより、着弾させた液滴が流動し易くして、前に着弾させた液滴と一体になり易くすることができる。
第一液滴配置工程において着弾させられる液滴を、第一液滴と表記し、第二液滴配置工程において着弾させられる液滴を、第二液滴と表記する。第一液滴配置工程において着弾した第一液滴は、第二液滴が第一液滴と接触するように着弾した時点では、静的接触角に基く所定の片凸形状に収束静止した状態にある。第二液滴は、第一液滴と接触するように着弾し、濡れ広がるように流動している。液滴が動いている段階では、液滴の形状を規定する接触角は、動的接触角である。一般的に、接触角は、静的接触角より動的前進接触角の方が大きく、動的後退接触角の方が動的前進接触角より大きい。したがって、動いている第二液滴は、大きな動的後退接触角によって、静止している第一液滴側に引き寄せられて一体となる。同様に、第二液滴配置工程において順次着弾する第二液滴は、順次、第一液滴の位置に引き寄せられて一体となる。これにより、マイクロレンズを構成するための複数の液滴を、第一液滴が着弾した位置に集めて、一体にすることができる。
このように、第二液滴配置工程においては、マイクロレンズの座標位置とは異なる位置に液滴を着弾させて、マイクロレンズを構成することができる。これにより、マイクロレンズの座標位置に着弾させることが必要である場合にくらべて、効率よく液滴を配置することができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかるマイクロレンズアレイの製造方法において、前記撥液処理工程では、光硬化型の撥液層液状体を前記基材における前記マイクロレンズを形成する面に配置して、撥液層を形成することが好ましい。
【0010】
このマイクロレンズアレイの製造方法によれば、光硬化型の撥液層液状体を基材におけるマイクロレンズを形成する面に配置するという簡単な工程を実施することで、当該面を撥液性にすることができる。光硬化型の撥液層液状体を用いることで、撥液層液状体を迅速に硬化させることができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかるマイクロレンズアレイの製造方法において、前記撥液処理工程では、前記基材における前記マイクロレンズを形成する面に、前記液状体の静的接触角が30度から70度になる処理を実施することが好ましい。
【0012】
このマイクロレンズアレイの製造方法によれば、マイクロレンズを形成する面は、マイクロレンズを形成するための液状体の静的接触角が30度から70度になる。静的接触角が70度を超えると、液状体が面に密着し難くなり、形成されるマイクロレンズが脱落し易くなる。静的接触角が30度未満の場合、形成されるマイクロレンズの曲率半径が大きくなるため、焦点距離が長くなる。焦点距離が長くなることで、マイクロレンズアレイを備え、マイクロレンズの焦点位置が内部に位置する装置の、マイクロレンズの光軸方向の厚さが大きくなる。
マイクロレンズを形成する面を、マイクロレンズを形成するための液状体の静的接触角が30度から70度である面にすることで、マイクロレンズの固定を確実にすると共に、マイクロレンズアレイを備える装置の厚さが増加することを抑制することができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかるマイクロレンズアレイの製造方法において、前記液状体は、光硬化型の液状体であることが好ましい。
【0014】
このマイクロレンズアレイの製造方法によれば、マイクロレンズを形成するための液状体が光硬化型の液状体である。光硬化型の液状体は、硬化光が照射されることで、硬化が急速に進行する。基材上に着弾した液状体は、硬化光が照射されるまでは、硬化はほとんど進行しないため、液状の状態が維持されて、第二液滴が第一液滴の位置に引き寄せられて一体となることが容易な状態を維持し易くすることができる。
【0015】
[適用例5]上記適用例にかかるマイクロレンズアレイの製造方法において、前記液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと前記基材との相対移動方向及び相対移動速度が略一定に維持される1回の吐出走査において、前記第一液滴配置工程を実施し、次の前記吐出走査において、前記第二液滴配置工程を実施することが好ましい。
【0016】
このマイクロレンズアレイの製造方法によれば、1回の吐出走査において、第一液滴配置工程を実施し、次の吐出走査において、第二液滴配置工程を実施する。これにより、1回の吐出走査において第一液滴配置工程に続けて第二液滴配置工程を実施する場合にくらべて、より確実に、第二液滴配置工程を実施する時点において、第一液滴を、静的接触角に基く所定の片凸形状に収束静止した状態にすることができる。すなわち、より確実に第一液滴の位置に第二液滴が引き寄せられるようにすることができる。
【0017】
[適用例6]上記適用例にかかるマイクロレンズアレイの製造方法において、前記第一液滴配置工程と、前記第二液滴配置工程との間に、前記第一液滴配置工程において着弾させた前記液滴を硬化させる硬化工程をさらに有することが好ましい。
【0018】
このマイクロレンズアレイの製造方法によれば、第二液滴配置工程を実施する前に、第一液滴を硬化させる硬化工程が実施される。これにより、第二液滴配置工程を実施する時点において、より確実に、第一液滴を、静的接触角に基く所定の片凸形状に収束静止した状態にすることができる。すなわち、より確実に第一液滴の位置に第二液滴が引き寄せられるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は、液滴吐出装置全体の概略構成を示す外観斜視図。(b)は、液滴吐出装置が備える液滴吐出ヘッドの概略構成を示す外観斜視図。
【図2】ヘッドユニットの概略構成を示す平面図。
【図3】液滴吐出ヘッドの電気的構成と信号の流れを示す説明図。
【図4】(a)は、吐出ノズルの配置位置を示す説明図。(b)は、液滴をノズル列の延在方向に直線状に着弾させた状態を示す説明図。(c)は、液滴を吐出走査方向に直線状に着弾させた状態を示す説明図。(d)は、液滴を面状に着弾させた状態を示す説明図。
【図5】(a)は、虚像現出装飾体の構成の要部を示す断面図。(b)は、虚像現出装飾体に形成される虚像を示す模式平面図。
【図6】(a)は、虚像現出装飾体のレンズアレイの構成を示す平面図。(b)は、レンズアレイの拡大平面図。(c)は、虚像現出装飾体の画素集合体の構成を示す平面図。(d)は、画素集合体の拡大平面図。(e)は、虚像現出装飾体のレンズアレイと画素集合体との構成を示す平面図。(f)は、レンズアレイと画素集合体との拡大平面図。
【図7】(a)は、マイクロレンズアレイの形成工程を示すフローチャート。(b)、及び(c)は、液滴の着弾位置を示す模式図。(d)は、機能液の状態を示す模式図。(e)はマイクロレンズの形状になった機能液を示す模式図。
【図8】(a)は、接触角と、形成されるマイクロレンズの形状を示す数値とを示す図。(b)は、マイクロレンズの断面形状、及びマイクロレンズの断面形状における(a)に示した各数値が対応する部分を示す説明図。
【図9】(a)は、マイクロレンズアレイの形成工程を示すフローチャート。(b)、及び(c)は、液滴の着弾位置を示す模式図。(d)は、機能液の状態を示す模式図。(e)はマイクロレンズの形状になった機能液を示す模式図。
【図10】(a)は、マイクロレンズアレイの形成工程を示すフローチャート。(b)及び(c)は、液滴の着弾位置を示す模式図。(d)は、機能液の状態を示す模式図。(e)はマイクロレンズの形状になった機能液を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るマイクロレンズアレイの製造方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態は、インクジェット方式の液滴吐出装置を用いてマイクロレンズを形成することによって、マイクロレンズアレイを形成する工程を例にして説明する。液滴吐出装置は、液滴吐出ヘッドと被描画媒体とを相対移動させると共に、液滴吐出ヘッドの吐出ノズルから機能液の液滴を吐出して、被描画媒体上の所定の位置に着弾させることによって、所定の画像を形成する装置である。機能液は、例えば紫外線を照射することによって硬化する紫外線硬化型の機能液を用いる。なお、以下の説明において参照する図面では、図示の便宜上、部材又は部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0021】
<液滴吐出法>
最初に、液状体を液滴として吐出する液滴吐出法について説明する。液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換方式、電気熱変換方式、静電吸引方式などが挙げられる。
帯電制御方式は、液状体に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で液状体の飛翔方向を制御して吐出ノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、液状体に30kg/cm2程度の超高圧を印加して吐出ノズル先端側に液状体を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には液状体が直進して吐出ノズルから吐出され、制御電圧をかけると液状体間に静電的な反発が起こり、液状体が飛散して吐出ノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって液状体を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から液状体を押し出して吐出ノズルから吐出させるものである。
【0022】
また、電気熱変換方式は、液状体を貯留した空間内に設けたヒーターにより、液状体を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の液状体を吐出させるものである。静電吸引方式は、液状体を貯留した空間内に微小圧力を加え、吐出ノズルに液状体のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから液状体を引き出すものである。この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。
【0023】
液滴吐出法は、液状体の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の液状体を的確に配置できるという利点を有する。このうち、ピエゾ方式は、液状体に熱を加えないため、液状体の組成等に影響を与えないなどの利点を有する。本実施形態では、液状体選択の自由度の高さ、及び液滴の制御性の良さの点から上記ピエゾ方式を用いる。
【0024】
<液滴吐出装置>
次に、マイクロレンズを形成するための機能液を吐出してマイクロレンズを形成する位置に配置する液滴吐出装置1について、図1を参照して説明する。図1は、液滴吐出装置の概略構成を示す外観斜視図である。図1(a)は、液滴吐出装置全体の概略構成を示す外観斜視図であり、図1(b)は、液滴吐出装置が備える液滴吐出ヘッドの概略構成を示す外観斜視図である。
【0025】
図1に示すように、液滴吐出装置1は、ヘッド機構部2と、ワーク機構部3と、機能液供給部4と、メンテナンス装置部5と、吐出装置制御部7と、を備えている。ヘッド機構部2は、機能液を液滴として吐出する液滴吐出ヘッド20を備えている。ヘッド機構部2は、また、紫外線照射部95(図2参照)を有している。ワーク機構部3は、液滴吐出ヘッド20から吐出された液滴の吐出対象(描画対象物)であるワークWを載置するワーク載置台33を備えている。機能液供給部4は、液滴吐出ヘッド20へ機能液を供給する。メンテナンス装置部5は、液滴吐出ヘッド20の保守を行う。吐出装置制御部7は、これら各機構部などを総括的に制御する。さらに、液滴吐出装置1は、床上に設置された複数の支持脚8と、支持脚8の上側に設置された定盤9とを備えている。
【0026】
定盤9の上面には、ワーク機構部3が配設されている。ワーク機構部3は、定盤9の長手方向(X軸方向)に延在している。ワーク機構部3の上方には、定盤9に固定された2本の支持柱で支持されているヘッド機構部2が配設されている。ヘッド機構部2は、ワーク機構部3と略直交する方向(Y軸方向)に延在している。定盤9の傍らには、ヘッド機構部2の液滴吐出ヘッド20に連通する供給管を有する機能液供給部4の機能液タンクなどが配置されている。ヘッド機構部2の一方の支持柱の近傍には、メンテナンス装置部5がワーク機構部3と並んでX軸方向に延在して配設されている。さらに、定盤9の下側に、吐出装置制御部7が収容されている。
【0027】
ヘッド機構部2は、液滴吐出ヘッド20を有するヘッドユニット21と、ヘッドユニット21を支持するヘッドキャリッジ22とを備えている。ヘッドキャリッジ22をY軸方向に移動させることで、液滴吐出ヘッド20をY軸方向に自在に移動させる。また、移動した位置に保持する。ワーク機構部3は、ワーク載置台33をX軸方向に移動させることで、ワーク載置台33に載置されたワークWをX軸方向に自在に移動させる。また、移動した位置に保持する。
【0028】
液滴吐出ヘッド20を、Y軸方向の吐出位置まで移動させて停止させ、下方にあるワークWのX軸方向の移動に同調させて、機能液を液滴として吐出させる。液滴吐出ヘッド20からの機能液の吐出をともなう、液滴吐出ヘッド20とワークWとの相対移動方向(走査方向)であるX軸方向を、吐出走査方向と表記する。
X軸方向に移動させるワークWと、Y軸方向に移動させる液滴吐出ヘッド20とを相対的に制御することにより、ワークW上の任意の位置に液滴を着弾させることで、所望する描画などを行うことが可能である。
【0029】
図1(b)に示すように、液滴吐出ヘッド20は、ノズル基板25を備えている。ノズル基板25には、多数の吐出ノズル24が略一直線状に並んだノズル列24Aが2列形成されている。吐出ノズル24から機能液を液滴として吐出し、対向する位置にあるワークWなどに着弾させることで、当該位置に機能液を配置する。ノズル列24Aは、液滴吐出ヘッド20が液滴吐出装置1に装着された状態で、図1(a)に示したY軸方向に延在している。ノズル列24Aにおいて吐出ノズル24は等間隔のノズルピッチで並んでおり、2列のノズル列24A間で、吐出ノズル24の位置がY軸方向に半ノズルピッチずれている。したがって、液滴吐出ヘッド20としては、Y軸方向に半ノズルピッチ間隔で機能液の液滴を配置することができる。
【0030】
Y軸方向の描画範囲を広げるためには、液滴吐出ヘッド20をY軸方向に連ねてもよいし、液滴吐出ヘッド20をY軸方向に移動させて、液滴吐出ヘッド20のY軸方向における位置ごとに、ワークWのX軸方向の移動と液滴吐出ヘッド20からの吐出を実施してもよい。
Y軸方向の液滴の配置ピッチを小さくするためには、複数の液滴吐出ヘッド20を、Y軸方向における吐出ノズル24の位置を互いにずらしてX軸方向に並べてもよいし、3列以上のノズル列を備える液滴吐出ヘッドを用いてもよい。もちろん、製造可能な範囲であれば、ノズルピッチが小さい液滴吐出ヘッドを用いることもできる。
【0031】
<ヘッドユニット>
次に、ヘッド機構部2が備えるヘッドユニット21の概略構成について、図2を参照して説明する。図2は、ヘッドユニットの概略構成を示す平面図である。図2に示したX軸及びY軸は、ヘッドユニット21が液滴吐出装置1に取り付けられた状態において、図1に示したX軸及びY軸と一致している。
【0032】
図2に示したように、ヘッドユニット21は、ユニットプレート23と、ユニットプレート23に搭載された9個の液滴吐出ヘッド20と、を有している。ヘッドユニット21は、また、2個の紫外線照射部95を有している。
液滴吐出ヘッド20は、図示省略したヘッド保持部材を介してユニットプレート23に固定されている。固定された液滴吐出ヘッド20は、ヘッド本体がユニットプレート23に形成された孔(図示省略)に遊嵌して、ノズル基板25が、ユニットプレート23の面より突出した位置に位置している。図2は、ノズル基板25の側から見た図である。9個の液滴吐出ヘッド20は、Y軸方向において、3組に分かれて、それぞれ3個ずつの液滴吐出ヘッド20を有するヘッド組20Aを3群、形成している。それぞれの液滴吐出ヘッド20のノズル列24Aは、ヘッドユニット21が液滴吐出装置1に取り付けられた状態において、Y軸方向に延在している。
【0033】
液滴吐出ヘッド20は、Y軸方向において、互いに隣り合う液滴吐出ヘッド20の、一方の液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24に対して、もう一方の液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24が半ノズルピッチずれて位置する位置に、配設されている。一つのヘッドユニット21が備える9個の液滴吐出ヘッド20のX軸方向の位置を同じにすると、吐出ノズル24は、Y軸方向に半ノズルピッチの等間隔で並ぶ。すなわち、X軸方向の同じ位置において、それぞれの液滴吐出ヘッド20が有するそれぞれのノズル列24Aを構成する吐出ノズル24から吐出された液滴は、設計上では、Y軸方向に半ノズルピッチの等間隔に並んで一直線上に着弾する。
ノズル列24Aは、例えば180個の吐出ノズル24を有しており、液滴吐出ヘッド20は、360個の吐出ノズル24を有している。9個の液滴吐出ヘッド20を有するヘッドユニット21は、3240個の吐出ノズル24を有している。一つのヘッドユニット21が備える9個の液滴吐出ヘッド20が有する18列のノズル列24Aは、1本のノズル列として扱うこともできる。当該ノズル列を「ユニットノズル列240A」と表記する。ユニットノズル列240Aは、3240個の吐出ノズル24を有している。ユニットノズル列240Aのそれぞれの吐出ノズル24から一滴ずつ吐出させて、X軸方向が同じ位置になるように着弾させると、3240個の点が半ノズルピッチのピッチ間隔で連なる直線が形成される。
【0034】
紫外線照射部95は、支持枠(図示省略)と、UVLED(Ultraviolet Light Emitting Diode)96と、LED筐体97と、を備えている。UVLED96は、紫外線を射出するLEDである。
LED筐体97は、ユニットプレート23のX軸方向の側面に支持枠を介して固定されている。LED筐体97は、略直方体形状の外形を有し、内部に略直方体形状で一面が開口した筐体室が形成されている。筐体室は、ワーク載置台33に臨む側が開口している。筐体室には、UVLED96が、開口側に紫外線を射出する状態で固定されている。複数のUVLED96が、Y軸方向に並んで配設されている。複数のUVLED96は、Y軸方向において、ヘッドユニット21の液滴吐出ヘッド20が機能液を配置可能な幅を包含する範囲に、紫外線を照射することができる。
【0035】
紫外線照射部95は、X軸方向(吐出走査方向)において、9個の液滴吐出ヘッド20を挟んで両側に、9個の液滴吐出ヘッド20に関して略対称な状態で、配設されている。
ワーク載置台33がX軸方向に走査されて、ヘッドユニット21の液滴吐出ヘッド20が機能液を吐出する際には、液滴吐出ヘッド20に並んで配設されたUVLED96から、略並行して、紫外線を照射させる。
ワーク載置台33の走査方向において、ヘッドユニット21の後側に位置するUVLED96から紫外線を照射することで、吐出されて着弾させられた機能液に、着弾した直後に紫外線を照射することができる。機能液に紫外線を照射することで、機能液を硬化させることができる。機能液の硬化率に影響を及ぼす要因は、走査速度、UVLED96の照射領域のX軸方向における幅、UVLED96の照射強度、などである。これらの要因について、適切な値に設定することで、着弾させられた機能液を適切な硬化率に硬化させることができる。
【0036】
<機能液の吐出>
次に、液滴吐出装置1における液滴吐出ヘッド20からの吐出の制御方法について、図3を参照して説明する。図3は、液滴吐出ヘッドの電気的構成と信号の流れを示す説明図である。
【0037】
上述したように、液滴吐出装置1は、液滴吐出装置1の各部の動作を制御する吐出装置制御部7を備えている。吐出装置制御部7は、制御信号を出力するCPU84と、液滴吐出ヘッド20の電気的な駆動制御を行うヘッドドライバー20dと、を備えている。
図3に示すように、ヘッドドライバー20dは、FFCケーブルを介して各液滴吐出ヘッド20と電気的に接続されている。液滴吐出ヘッド20は、吐出ノズル24(図1(b)参照)ごとに設けられた圧電素子59に対応して、シフトレジスター(SL)85と、ラッチ回路(LAT)86と、レベルシフター(LS)87と、スイッチ(SW)88とを備えている。
【0038】
液滴吐出装置1における吐出制御は次のように行われる。最初に、CPU84がワークWなどの描画対象物における機能液の配置パターンをデータ化したドットパターンデータをヘッドドライバー20dに伝送する。そして、ヘッドドライバー20dは、ドットパターンデータをデコードして吐出ノズル24ごとのON/OFF(吐出/非吐出)情報であるノズルデータを生成する。ノズルデータは、シリアル信号(SI)化されて、クロック信号(CK)に同期して各シフトレジスター85に伝送される。
【0039】
シフトレジスター85に伝送されたノズルデータは、ラッチ信号(LAT)がラッチ回路86に入力されるタイミングでラッチされ、さらにレベルシフター87でスイッチ88用のゲート信号に変換される。即ち、ノズルデータが「ON」の場合にはスイッチ88が開いて、圧電素子59に駆動信号(COM)が供給され、ノズルデータが「OFF」の場合にはスイッチ88が閉じられて、圧電素子59に駆動信号(COM)は供給されない。そして、「ON」に対応する吐出ノズル24からは機能液が液滴となって吐出され、吐出された機能液の液滴がワークWなどの描画対象物の上に着弾して、描画対象物の上に機能液が配置される。
【0040】
<着弾位置>
次に、液滴吐出ヘッド20の吐出ノズル24と、それぞれの吐出ノズル24から吐出された液滴の着弾位置と、の関係について、図4を参照して説明する。図4は、吐出ノズルと、それぞれの吐出ノズルから吐出された液滴の着弾位置と、の関係を示す説明図である。図4(a)は、吐出ノズルの配置位置を示す説明図であり、図4(b)は、液滴をノズル列の延在方向に直線状に着弾させた状態を示す説明図であり、図4(c)は、液滴を吐出走査方向に直線状に着弾させた状態を示す説明図であり、図4(d)は、液滴を面状に着弾させた状態を示す説明図である。図4に示したX軸及びY軸は、ヘッドユニット21が液滴吐出装置1に取り付けられた状態において、図1に示したX軸及びY軸と一致している。X軸方向が吐出走査方向であって、図4に示した矢印aの方向に吐出ノズル24(液滴吐出ヘッド20)を相対移動させながら、任意の位置において機能液の液滴を吐出することによって、X軸方向の任意の位置に液滴を着弾させることができる。
【0041】
図4(a)に示すように、ノズル列24Aを構成する吐出ノズル24は、Y軸方向にノズルピッチPの中心間距離で配列されている。上述したように、2列のノズル列24Aをそれぞれ構成する吐出ノズル24同士は、Y軸方向において、相互に、ノズルピッチPの1/2ずつ位置がずれている。
【0042】
図4(b)に示すように、着弾位置を示す着弾点91と、着弾した液滴の濡れ広がり状態を示す着弾円91Aとで、着弾した1滴の液滴の状態を示している。2列のノズル列24Aの全部の吐出ノズル24から、図4(b)に二点鎖線で示した仮想線L上に着弾させるタイミングで、それぞれ液滴を吐出させることによって、ノズルピッチPの1/2の中心間間隔で着弾円91Aが連なる直線が形成される。
【0043】
図4(c)に示すように、一つの吐出ノズル24から連続して液滴を吐出させることによって、X軸方向に着弾円91Aが連なる直線が形成される。X軸方向における着弾点91間の中心間距離の最小値を、最小着弾距離dと表記する。最小着弾距離dは、主走査方向の相対移動速度と、吐出ノズル24の最小吐出間隔(時間)との積である。
【0044】
図4(d)に示すように、二点鎖線で示した仮想線L1,L2,L3上に着弾させるタイミングで、それぞれ液滴を吐出させることによって、ノズルピッチPの1/2の中心間間隔で着弾円91Aが連なる直線が、X軸方向に並列した着弾面が形成される。図4(d)に示した仮想線L1,L2,L3間の距離が最小着弾距離dの場合のそれぞれの着弾点91が、液滴吐出装置1によって機能液の液滴を配置可能な位置である。
【0045】
画像の描画に際しては、画像の情報に従って、図4(d)に示したそれぞれの着弾点91の位置について、液滴を配置する位置を定める。例えば、当該配置位置、及び配置位置に液滴を吐出する吐出ノズル24を指定した配置表を形成し、配置表に従って機能液を着弾させることによって、画像の情報によって規定される画像を描画する。なお、図4(d)に示した例では、着弾円91Aの間に隙間が存在するが、ノズルピッチPや最小着弾距離dに対して、吐出する液滴の1滴あたりの吐出重量を適切に定めることによって、隙間なく機能液を配置することが可能である。もちろん、他の液滴と重ねることなく、1滴を配置することも可能である。
【0046】
<虚像現出装飾体>
次に、マイクロレンズアレイを備える虚像現出装飾体の構成について、図5及び図6を参照して説明する。図5は、虚像現出装飾体の構成を示す模式図である。図5(a)は、虚像現出装飾体の構成の要部を示す断面図であり、図5(b)は、虚像現出装飾体に形成される虚像を示す模式平面図である。図6は、虚像現出装飾体を構成する要素の構成を示す模式図である。図6(a)は、虚像現出装飾体のレンズアレイの構成を示す平面図であり、図6(b)は、レンズアレイの拡大平面図であり、図6(c)は、虚像現出装飾体の画素集合体の構成を示す平面図であり、図6(d)は、画素集合体の拡大平面図であり、図6(e)は、虚像現出装飾体のレンズアレイと画素集合体との構成を示す平面図であり、図6(f)は、レンズアレイと画素集合体との拡大平面図である。
【0047】
図5(a)に示すように、虚像現出装飾体51は、基材53と、マイクロレンズアレイ61と、画素集合体71とを備えている。基材53は、透明な素材で形成されたフィルム状の部材である。基材53の素材としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)などが挙げられる。基材53の一面には、撥液層55が形成されている。撥液層55の上には、マイクロレンズアレイ61を構成するマイクロレンズ62が形成されている。基材53の撥液層55が形成されている面の反対側の面には、画素集合体71を構成する画素ユニット72が形成されている。
【0048】
図5(a)に示した矢印sの方向から見ると、図5(b)に示すように、画素虚像73を視認することができる。図5(b)には、画素虚像73として、文字A、文字B、文字C、及び文字Dが例示してある。文字A、文字B、文字C、又は文字Dの形状を有する画素虚像73を、画素虚像73A、画素虚像73B、画素虚像73C、又は画素虚像73Dと表記する。1個の画素虚像73が形成される領域を虚像領域710と表記する。画素虚像73A、画素虚像73B、画素虚像73C、又は画素虚像73Dが形成される虚像領域710を、虚像領域710a、虚像領域710b、虚像領域710c、又は虚像領域710dと表記する。
【0049】
マイクロレンズアレイ61は、マイクロレンズ62が格子状に等ピッチ間隔で並べられて形成されている。1個の虚像領域710に形成されているマイクロレンズ62の集合をマイクロレンズアレイ61と表記し、虚像現出装飾体51全体に形成されているマイクロレンズ62の集合をマイクロレンズアレイ610と表記する。図6(a)に二点鎖線で示した領域に、マイクロレンズアレイ610が形成されている。図6(b)に示すように、マイクロレンズアレイ61は、マイクロレンズ62がピッチP1で、縦横に配列されている。マイクロレンズアレイ61には、例えば、45行×45列で、2025個のマイクロレンズ62が形成されている。ピッチP1は、例えば180μmである。
【0050】
図6(c)に示した二点鎖線で囲まれた領域が、1個所の虚像領域710を示している。1個所の虚像領域710には、1個の画素集合体71が形成されている。虚像領域710a、虚像領域710b、虚像領域710c、又は虚像領域710dに形成されている画素集合体71を、画素集合体71a、画素集合体71b、画素集合体71c、又は画素集合体71dと表記する。図6(d)に示すように、画素集合体71は、画素ユニット72がピッチP2で、縦横に配列されている。ピッチP2と、ピッチP1とは、ピッチP1×(マイクロレンズアレイ61におけるマイクロレンズ62の行数又は列数−1)=ピッチP2×(画素集合体71における画素ユニット72の行数又は列数)の関係を満たす値に設定されている。図6(d)に示した画素集合体71は、画素集合体71aであり、画素虚像73Aと略相似形状を有する画素ユニット72aがピッチP2で配列されている。図6(c)に示した画素集合体71b、画素集合体71c、及び画素集合体71dは、画素虚像73B、画素虚像73C、又は画素虚像73Dと略相似形状を有する画素ユニット72b、画素ユニット72c、又は画素ユニット72dがピッチP2で配列されている。
画素集合体71には、例えば、45行×45列で、2025個の画素ユニット72が形成されている。ピッチP2は、例えば176μmである。
【0051】
図6(e)に示すように、虚像現出装飾体51では、マイクロレンズアレイ61と画素集合体71とが、基材53の面に平行な方向において重なる状態で形成されている。画素虚像73を現出させるマイクロレンズアレイ61と画素集合体71との組を、虚像ユニット76と表記する。画素虚像73A、画素虚像73B、画素虚像73C、又は画素虚像73Dを現出させる虚像ユニット76を、虚像ユニット76a、虚像ユニット76b、虚像ユニット76c、虚像ユニット76dと表記する。
【0052】
図6(f)に示すように、虚像ユニット76(虚像ユニット76a)において、マイクロレンズアレイ61のマイクロレンズ620と、画素集合体71の画素ユニット720とが、中心が合致している。マイクロレンズ620は、マイクロレンズアレイ61の中央のマイクロレンズ62であり、画素ユニット720は、画素集合体71の中央の画素ユニット72である。マイクロレンズ620の隣のマイクロレンズ62と、画素ユニット720の隣の画素ユニット72とは、中心位置が、ピッチP1とピッチP2との差に相当する量だけずれている。P1が180μmであり、ピッチP2が176μmである場合、4μmずれている。
虚像ユニット76の端においては、画素集合体71が有する画素ユニット72の行又は列における端の行又は列を構成する画素ユニット72の中心位置は、マイクロレンズアレイ61が有するマイクロレンズ62の行又は列における端の行又は列を構成するマイクロレンズ62の中心位置と端から2番目の行又は列を構成するマイクロレンズ62の中心位置との中点に位置する。
このように構成された虚像現出装飾体51において、画素ユニット72と対応するマイクロレンズ62とによって、画素ユニット72の一部分の虚像が形成される。虚像ユニット76において、画素ユニット72と対応するマイクロレンズ62ごとに、虚像として形成する画素ユニット72の部分が異なっている。このため、虚像ユニット76において、マイクロレンズ62によって、画素ユニット72が拡大された画素虚像73が、視認可能に形成される。
【0053】
<マイクロレンズアレイ形成工程>
次に、上述したマイクロレンズアレイ61を形成するマイクロレンズアレイ形成工程について、図7及び図8を参照して説明する。マイクロレンズアレイ61は、上述した液滴吐出装置1を用いて、基材53上に機能液を配置して形成する。図7は、マイクロレンズアレイの形成工程を示す図である。図7(a)は、マイクロレンズアレイの形成工程を示すフローチャートであり、図7(b)、及び図7(c)は、液滴の着弾位置を示す模式図であり、図7(d)は、機能液の状態を示す模式図であり、図7(e)はマイクロレンズの形状になった機能液を示す模式図である。図8は、機能液に対する接触角と、形成されるマイクロレンズの形状と、の関係を示す説明図である。図8(a)は、接触角と、形成されるマイクロレンズの形状を示す数値とを示す図であり、図8(b)は、マイクロレンズの断面形状、及びマイクロレンズの断面形状における図8(a)に示した各数値が対応する部分を示す説明図である。
【0054】
図7(a)のステップS21では、基材53の一面に撥液層55を形成する。マイクロレンズ62は、機能液として、例えば、紫外線硬化型のエポキシ系樹脂材料を用いて形成する。当該エポキシ系樹脂材料に対して適切な撥液性を有する撥液層55を形成する。
図8(a)では、マイクロレンズ62を形成するためのエポキシ系樹脂材料に対する撥液層55の特性を、接触角θで示している。図8(a)に示したマイクロレンズ62のレンズ直径D及びレンズ高さHは、210ng(ナノグラム)のエポキシ系樹脂材料で形成した場合の形状における値を、接触角θと対応させて示している。焦点距離fは、屈折率nが1.52である場合の焦点距離を、接触角θと対応させて示している。
【0055】
図8(b)に示すように、マイクロレンズ62と画素ユニット72との、マイクロレンズ62の光軸方向の距離が焦点距離fである場合に、画素集合体71の画素虚像73が形成される。図8(a)に示すように、接触角が20度より小さい場合には、焦点距離fが0.5mmより大きくなる。したがって、虚像現出装飾体51の厚さも0.5mmより厚くなってしまう。このため、撥液層55は、レンズ材料の接触角が30度以上となることが好ましい。
また、接触角が略80度になると、機能液が撥液層55に対する密着性が著しく低下する。このため、撥液層55は、レンズ材料の接触角が70度以下となることが好ましい。
【0056】
撥液層55は、マイクロレンズ62を形成するためのエポキシ系樹脂材料と同じ機能液を塗布することによって形成することができる。硬化した撥液層55の同じ機能液に対する撥液特性は、添加する界面活性剤の種類や量を選択することによって、調整することができる。エポキシ系樹脂材料は、シリコーン系の界面活性剤を添加することで、硬化した同じ材料上に着弾した場合の接触角を、30度から70度の間の接触角に調整することが可能である。
【0057】
次に、図7(a)のステップS22では、図7(b)に示したように、第一液滴92を配置する。上述したように、マイクロレンズ62は、例えば210ngのエポキシ系樹脂材料(機能液)で形成する。210ngの機能液は、1滴あたり7ngの液滴を、30滴着弾させることによって供給する。第一液滴92は、1個のマイクロレンズ62を形成するために着弾させる30滴の中で、最初に着弾させる液滴である。
図7(b)に示した仮想線V1、仮想線V2、又は仮想線V3と、仮想線W1、又は仮想線W2との交点、すなわち仮想線Vn(nは1から45の整数)と、仮想線Wm(mは1から45の整数)との交点が、マイクロレンズ62の中心位置である。
【0058】
上述したように、マイクロレンズアレイ61におけるマイクロレンズ62の配設ピッチは180μmである。図1、図2、及び図4を参照して説明したように、液滴吐出ヘッド20のノズルピッチを360μmにすることで、180μmピッチで液滴を配置することが可能である。基材53を、仮想線WmがY軸方向に一致する方向で液滴吐出装置1に載置し、液滴吐出ヘッド20が有する吐出ノズル24のY軸方向の位置が仮想線Vnの位置と一致するように位置合わせを行う。基材53(ワーク載置台33)をX軸方向に走査させ、吐出ノズル24から吐出した液滴が仮想線Wmに着弾するタイミングで機能液を吐出させることで、図7(b)に示したように、第一液滴92を、仮想線Vnと、仮想線Wmとの交点に配置する。
【0059】
次に、図7(a)のステップS23では、図7(c)に示したように、第二液滴93を配置する。第二液滴93は、1個のマイクロレンズ62を形成するために着弾させる30滴の中で、2番目から30番目に着弾させる29滴の液滴である。
1個のマイクロレンズ62を形成するために第一液滴92を配置するステップS22と第二液滴93を配置するステップS23とは、連続して実施する。仮想線Wm上に形成するマイクロレンズ62を形成するためのステップS23が終了した後は、仮想線Wm+1上に形成する次のマイクロレンズ62を形成するためのステップS22とステップS23とを繰り返して実施する。
【0060】
図8に示したマイクロレンズ62のレンズ直径Dと同様に計算すると、7ngの液滴が着弾した着弾径は、接触角が30度から70度において、約5.2μmから3.6μmである。例えば3μmピッチで着弾するタイミングで、吐出ノズル24から液滴を吐出することで、着弾した30個の液滴が連なる状態となるように着弾させることができる。第一液滴92と最後に着弾した第二液滴93とのピッチ間隔は150μm未満である。仮想線W1に着弾した第一液滴92に連なる第二液滴93と、仮想線W2に着弾した第一液滴92とは、接触しない状態で着弾させることができる。
【0061】
液体は、表面張力によって、表面積が最も小さい形状になろうとするため、一部が重なった2個の液滴は、表面張力によって、一体になる可能性が高い。第一液滴92と、最初の第二液滴93(30滴の液滴の中で2番目に着弾する液滴)は、一部が重なっており、表面張力によって、一体になる。このとき、最初の第二液滴93が着弾した時点では、第一液滴92は、静的接触角に基く所定の片凸形状に収束静止した状態にある。第二液滴93は、第一液滴92と接触するように着弾し、着弾直後は、濡れ広がるように流動している。液滴が動いている段階では、形状を規定する接触角は、動的接触角である。一般的に、接触角は、静的接触角より動的前進接触角の方が大きく、動的後退接触角の方が動的前進接触角より大きい。したがって、動いている第二液滴93は、大きな動的後退接触角によって、静止している第一液滴92側に引き寄せられる状態で一体になろうとする。同様に、2番目の第二液滴93(30滴の液滴の中で3番目に着弾する液滴)以降の第二液滴93は、前に着弾している第二液滴93に引き寄せられる状態で一体になろうとする。したがって、図7(d)に示したように、仮想線Vn上に着弾した第二液滴93は、矢印cで示した方向に移動して、第一液滴92と一体になる。
第一液滴92と29滴の第二液滴93とが一体になることで、図7(e)に示したように、第一液滴92が着弾した位置(仮想線VnとWmの交点)を中心位置とするマイクロレンズ62の形状を有する機能液体62aが形成される。
【0062】
次に、図7(a)のステップS24では、マイクロレンズ62の形状を有する機能液体62aを硬化させる。機能液として、例えば、紫外線硬化型のエポキシ系樹脂材料を用いてマイクロレンズ62を形成する場合、紫外線を照射することで、機能液を硬化させる。マイクロレンズ62の形状を有する機能液体62aを硬化させることで、図6(a)及び図6(b)を参照して説明したような、マイクロレンズ62を有するマイクロレンズアレイ61(マイクロレンズアレイ610)が形成される。
上述したように、液滴吐出装置1が備えるヘッドユニット21は、液滴吐出ヘッド20と、紫外線照射部95を有している。液滴吐出ヘッド20に対して走査方向の後ろ側に位置する紫外線照射部95から紫外線を照射することで、配置された機能液に紫外線を照射して硬化させることができる。
ステップS24を実施して、マイクロレンズアレイ形成工程を終了する。
【0063】
<他のマイクロレンズアレイ形成工程1>
次に、上述したマイクロレンズアレイ形成工程とは一部が異なるマイクロレンズアレイ形成工程について、図9を参照して説明する。マイクロレンズアレイ61は、上述したマイクロレンズアレイ形成工程と同様に、液滴吐出装置1を用いて、基材53上に機能液を配置して形成する。図9は、マイクロレンズアレイの形成工程を示す図である。図9(a)は、マイクロレンズアレイの形成工程を示すフローチャートであり、図9(b)、及び図9(c)は、液滴の着弾位置を示す模式図であり、図9(d)は、機能液の状態を示す模式図であり、図9(e)はマイクロレンズの形状になった機能液を示す模式図である。
【0064】
図9(a)のステップS31では、図7(a)のステップS21と同様に、基材53の一面に撥液層55を形成する。マイクロレンズ62は、機能液として、例えば、紫外線硬化型のエポキシ系樹脂材料を用いて形成する。当該エポキシ系樹脂材料に対して適切な撥液性を有する撥液層55を形成する。図8を参照して説明したように、撥液層55は、レンズ材料の接触角が、30度以上、70度以下となることが好ましい。
【0065】
次に、図9(a)のステップS32では、図9(b)に示したように、第一液滴92を配置する。上述したように、第一液滴92は、1個のマイクロレンズ62を形成するために着弾させる30滴の中で、最初に着弾させる液滴である。
図9(b)に示した仮想線V1、仮想線V2、又は仮想線V3と、仮想線W1、又は仮想線W2との交点、すなわち仮想線Vn(nは1から45の整数)と、仮想線Wm(mは1から45の整数)との交点が、マイクロレンズ62の中心位置である。
上述したように、基材53(ワーク載置台33)をX軸方向に走査させ、吐出ノズル24から吐出した液滴が仮想線Wmに着弾するタイミングで機能液を吐出させることで、図9(b)に示したように、第一液滴92を、仮想線Vnと、仮想線Wmとの交点に配置する。ステップS32では、1回の基材53(ワーク載置台33)のX軸方向の走査)において、マイクロレンズ62を形成する位置に対して、第一液滴92に相当する液滴のみを配置する。
【0066】
次に、図9(a)のステップS33では、図9(c)に示したように、第二液滴93を配置する。上述したように、第二液滴93は、1個のマイクロレンズ62を形成するために着弾させる30滴の中で、2番目から30番目に着弾させる29滴の液滴である。
ステップS33では、1回の基材53(ワーク載置台33)のX軸方向の走査)において、マイクロレンズ62を形成する位置に対して、第二液滴93に相当する液滴のみを配置し、ステップS32で配設されている第一液滴92に連なる位置に、第二液滴93を連ねる状態で着弾させる。上述したように、29個の第二液滴93は、1個の第一液滴92にのみ連なる状態で着弾させることができる。
【0067】
第一液滴92と、最初の第二液滴93(30滴の液滴の中で2番目に着弾する液滴)は、一部が重なっており、表面張力によって、一体になる。ステップS33が実施される時点では、ステップS32で配設されている第一液滴92は、静的接触角に基く所定の片凸形状に収束静止した状態にある。着弾して動いている状態の第二液滴93は、大きな動的後退接触角によって、静止している第一液滴92側に引き寄せられる状態で一体になろうとする。これにより、第一液滴92と第二液滴93とは、第二液滴93が第一液滴92の方に引き寄せられる状態で一体になろうとする。同様に、2番目の第二液滴93(30滴の液滴の中で3番目に着弾する液滴)以降の第二液滴93は、前に着弾している第二液滴93に引き寄せられる状態で一体になろうとする。図9(d)に示したように、仮想線Vn上に着弾した第二液滴93は、矢印cで示した方向に移動して、第一液滴92と一体になる。
第一液滴92と29滴の第二液滴93とが一体になることで、図9(e)に示したように、第一液滴92が着弾した位置(仮想線VnとWmの交点)を中心位置とするマイクロレンズ62の形状を有する機能液体62aが形成される。
【0068】
次に、図9(a)のステップS34では、マイクロレンズ62の形状を有する機能液体62aを硬化させる。機能液として、例えば、紫外線硬化型のエポキシ系樹脂材料を用いてマイクロレンズ62を形成する場合、紫外線を照射することで、機能液を硬化させる。マイクロレンズ62の形状を有する機能液体62aを硬化させることで、図6(a)及び図6(b)を参照して説明したような、マイクロレンズ62を有するマイクロレンズアレイ61(マイクロレンズアレイ610)が形成される。ステップS34を実施して、マイクロレンズアレイ形成工程を終了する。
【0069】
<他のマイクロレンズアレイ形成工程2>
次に、上述したマイクロレンズアレイ形成工程とは一部が異なるマイクロレンズアレイ形成工程について、図10を参照して説明する。マイクロレンズアレイ61は、上述したマイクロレンズアレイ形成工程と同様に、液滴吐出装置1を用いて、基材53上に機能液を配置して形成する。図10は、マイクロレンズアレイの形成工程を示す図である。図10(a)は、マイクロレンズアレイの形成工程を示すフローチャートであり、図10(b)、及び図10(c)は、液滴の着弾位置を示す模式図であり、図10(d)は、機能液の状態を示す模式図であり、図10(e)はマイクロレンズの形状になった機能液を示す模式図である。
【0070】
図10(a)のステップS41では、図7(a)のステップS21と同様に、基材53の一面に撥液層55を形成する。マイクロレンズ62は、機能液として、例えば、紫外線硬化型のエポキシ系樹脂材料を用いて形成する。当該エポキシ系樹脂材料に対して適切な撥液性を有する撥液層55を形成する。図8を参照して説明したように、撥液層55は、レンズ材料の接触角が、30度以上、70度以下となることが好ましい。
【0071】
次に、図10(a)のステップS42では、図9(a)のステップS32と同様に、図10(b)に示したように、第一液滴92を配置する。1回の基材53(ワーク載置台33)のX軸方向の走査)において、マイクロレンズ62を形成する位置に対して、第一液滴92に相当する液滴のみを配置する。
【0072】
次に、図10(a)のステップS43では、ステップS42において配置された第一液滴92を仮硬化させる。機能液として、例えば、紫外線硬化型のエポキシ系樹脂材料を用いてマイクロレンズ62を形成する場合、紫外線を照射することで、第一液滴92を仮硬化させる。上述したように、液滴吐出装置1が備えるヘッドユニット21は、液滴吐出ヘッド20と、紫外線照射部95を有している。液滴吐出ヘッド20に対して走査方向の後ろ側に位置する紫外線照射部95から紫外線を照射することで、配置された機能液に紫外線を照射して仮硬化させることができる。紫外線照射部95から照射する光量や照射時間を調整することによって、第一液滴92を任意の硬化率に仮硬化させることができる。
【0073】
次に、図10(a)のステップS44では、図9(a)のステップS33と同様に、図10(c)に示したように、第二液滴93を配置する。上述したように、第二液滴93は、1個のマイクロレンズ62を形成するために着弾させる30滴の中で、2番目から30番目に着弾させる29滴の液滴である。
【0074】
第一液滴92と、最初の第二液滴93(30滴の液滴の中で2番目に着弾する液滴)は、一部が重なっており、表面張力によって、一体になる。ステップS44が実施される時点では、ステップS43において第一液滴92が仮硬化させられている。このため、第一液滴92の方が第二液滴93より、撥液層55に対する固着力が強い。これにより、第一液滴92と第二液滴93とは、第二液滴93が第一液滴92の方に引き寄せられる状態で一体になろうとする。同様に、2番目の第二液滴93(30滴の液滴の中で3番目に着弾する液滴)以降の第二液滴93は、前に着弾している第二液滴93に引き寄せられる状態で一体になろうとする。図10(d)に示したように、仮想線Vn上に着弾した第二液滴93は、矢印cで示した方向に移動して、第一液滴92と一体になる。
第一液滴92と29滴の第二液滴93とが一体になることで、図10(e)に示したように、第一液滴92が着弾した位置(仮想線VnとWmの交点)を中心位置とするマイクロレンズ62の形状を有する機能液体62aが形成される。
【0075】
次に、図10(a)のステップS45では、図9(a)のステップS34と同様に、マイクロレンズ62の形状を有する機能液体62aを硬化させる。マイクロレンズ62の形状を有する機能液体62aを硬化させることで、図6(a)及び図6(b)を参照して説明したようなマイクロレンズアレイ61(マイクロレンズアレイ610)が形成される。ステップS45を実施して、マイクロレンズアレイ形成工程を終了する。
【0076】
以下、実施形態による効果を記載する。本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)1個のマイクロレンズ62を形成するための複数の液滴を連続して吐出し、着弾した複数の液滴を、表面張力によって一体にする。複数の液滴の着弾位置が異なっていても一個所に集めることができるため、複数の液滴の全てを同じ位置に着弾させることを必要としない。これにより、1回の走査において、液滴を線状に並べて着弾させることによって、1個のマイクロレンズ62を形成するための複数の液滴を配置することができる。1個のマイクロレンズ62を形成するために複数回の走査を必要とする場合にくらべて、マイクロレンズアレイ61を形成するために要する時間を抑制することができる。
【0077】
(2)基材53の一面に撥液層55を形成する。これにより、着弾した機能液が基材53の上を流動し易くして、複数の液滴が一体になり易くすることができる。
【0078】
(3)第二液滴93と第一液滴92とは、後から着弾した第二液滴93が先に着弾している第一液滴92に引き寄せられる状態で一体になる。これにより、第一液滴92を、着弾した第一液滴92の着弾点91がマイクロレンズ62の中心位置となる位置に着弾させることで、マイクロレンズ62を所定の位置に形成することができる。
【0079】
(4)図9を参照して説明したマイクロレンズアレイ形成工程では、1回の走査において第一液滴92を着弾させ、次の走査において29滴の第二液滴93を着弾させる。第一液滴92を着弾させる走査と、第二液滴93を着弾させる走査の間に、第一液滴92は、確実に、静的接触角に基く所定の片凸形状に収束静止した状態になる。これにより、1回の走査の間に第一液滴92及び第二液滴93を着弾させる場合にくらべて、第二液滴93を着弾させる時点において、第一液滴92を、確実に、静的接触角に基く所定の片凸形状に収束静止した状態にすることができる。すなわち、より確実に第一液滴92の位置に第二液滴93が引き寄せられるようにすることができる。
【0080】
(5)図10を参照して説明したマイクロレンズアレイ形成工程では、第一液滴92を着弾させ、第二液滴93を着弾させる前に、第一液滴92を仮硬化させる。これにより、第二液滴93を着弾させる前に、第一液滴92を、確実に、静的接触角に基く所定の片凸形状に収束静止した状態にすることができる。すなわち、より確実に第一液滴92の位置に第二液滴93が引き寄せられるようにすることができる。
【0081】
以上、添付図面を参照しながら好適な実施形態について説明したが、好適な実施形態は、前記実施形態に限らない。実施形態は、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論であり、以下のように実施することもできる。
【0082】
(変形例1)前記実施形態においては、マイクロレンズアレイ61は、虚像現出装飾体51を構成するマイクロレンズアレイであった。しかし、前記実施形態において説明したマイクロレンズアレイの製造方法を用いて好適に形成できるマイクロレンズアレイは、虚像現出装飾体51を構成するマイクロレンズアレイに限らない。画像投射用のスクリーンに形成するマイクロレンズアレイや、表示装置のバックライト用の光拡散用部材に形成するマイクロレンズアレイなど、他の装置を構成するマイクロレンズアレイであってもよい。
【0083】
(変形例2)前記実施形態においては、基材53は、透明な素材で形成されたフィルム状の部材であった。しかし、マイクロレンズアレイを形成する基材が透明な素材で形成されていることは必須ではない。マイクロレンズアレイを備える装置において、基材が透明であることを必要としない場合には、他の素材を用いてもよい。例えば、一般的な印刷用紙や、金属や、金属箔や、ダンボールであってもよい。印刷用のインクの吸収特性を向上させるインク受容層などのコーティング層を形成したものであってもよい。
【0084】
(変形例3)前記実施形態においては、撥液層55は、マイクロレンズ62を形成するためのエポキシ系樹脂材料と同じ機能液を塗布することによって形成していた。しかし、撥液層を形成するための素材が、マイクロレンズを形成するための素材と同じであることは必須ではない。撥液層を形成するための素材は、マイクロレンズを形成するための素材とは異なる素材であってもよい。
【0085】
(変形例4)前記実施形態においては、撥液層55は、マイクロレンズ62を形成するためのエポキシ系樹脂材料と同じ機能液を塗布することによって形成していた。しかし、撥液層を形成するための素材を基材上に塗布することによって撥液層を形成することは必須ではない。例えば反応ガスを用いて基材の表面をプラズマ処理することによって撥液性にするなど、他の方法を用いて基材の表面に撥液層を形成してもよい。
【0086】
(変形例5)前記実施形態においては、虚像現出装飾体51のマイクロレンズアレイ61におけるマイクロレンズ62の配設ピッチP1と、画素集合体71における画素ユニット72の配設ピッチP2との関係は、ピッチP1>ピッチP2であった。また、ピッチP1×(マイクロレンズアレイ61におけるマイクロレンズ62の行数又は列数−1)=ピッチP2×(画素集合体71における画素ユニット72の行数又は列数)を満たす関係であった。マイクロレンズアレイにおけるマイクロレンズの配設ピッチP1と、画素集合体における画素ユニットの配設ピッチP2との関係は、ピッチP1<ピッチP2であってもよい。ピッチP1<ピッチP2の場合、ピッチP1×(マイクロレンズアレイにおけるマイクロレンズの行数又は列数+1)=ピッチP2×(画素集合体における画素ユニットの行数又は列数)となるように、ピッチP1、ピッチP2、マイクロレンズアレイにおけるマイクロレンズの行数及び列数、及び画素集合体における画素ユニットの行数及び列数を設定する。
ピッチP1>ピッチP2の場合、形成される虚像は、画素集合体の位置より沈んで(奥側に)見える。ピッチP1<ピッチP2の場合、形成される虚像は、画素集合体の位置より浮かんで(手前側に)見える。
【0087】
(変形例6)前記実施形態においては、液滴吐出装置1が備えるヘッドユニット21は、液滴吐出ヘッド20と、紫外線照射部95を有しており、紫外線照射部95から紫外線を照射することで、配置された機能液に紫外線を照射して硬化させていた。しかし、液滴を吐出する工程(機能液の液滴を配置する工程)に続いて硬化工程を実施することは必須ではない。基材の全体に機能液を配置した後、一括して硬化させる工程を実施してもよい。
【0088】
(変形例7)前記実施形態においては、マイクロレンズ62を形成するための機能液は紫外線硬化型のエポキシ系樹脂材料であった。マイクロレンズを形成するための液状体は、他の材料であってもよい。例えば、紫外線硬化型のアクリル系樹脂材料であってもよいし、他の周波数の硬化光によって硬化が促進される材料であってもよいし、光以外の硬化促進手段を用いる材料であってもよい。
【0089】
(変形例8)前記実施形態においては、マイクロレンズアレイ61におけるマイクロレンズ62の配設ピッチと、液滴吐出ヘッド20におけるノズルピッチ(ノズル列24Aにおけるノズルピッチの1/2)とが一致している場合を例にして説明した。しかし、マイクロレンズの配設ピッチと、吐出ヘッドにおけるノズルピッチとが一致することは必須ではない。ノズルピッチが小さい吐出ヘッドを用いて、液滴は一部の吐出ノズルのみに吐出させてもよい。マイクロレンズの配設方向に対してノズル列の延在方向を傾けたり、走査方向において複数のノズル列を配置したり、してもよい。
【0090】
(変形例9)前記実施形態においては、第一液滴92や第二液滴93を吐出する工程において、基材53が載置されたワーク載置台33を走査させることによって、液滴吐出ヘッド20と基材53とを相対移動させていた。しかし、吐出ヘッドと基材とを相対移動させる手段が基材を走査させる手段であることは必須ではない。第一液滴配置工程や第二液滴配置工程において吐出ヘッドと基材とを相対移動させる手段は、吐出ヘッドを走査させる手段であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
1…液滴吐出装置、2…ヘッド機構部、3…ワーク機構部、20…液滴吐出ヘッド、21…ヘッドユニット、24…吐出ノズル、33…ワーク載置台、51…虚像現出装飾体、53…基材、55…撥液層、61…マイクロレンズアレイ、62…マイクロレンズ、62a…機能液、71…画素集合体、71a,71b,71c,71d…画素集合体、72…画素ユニット、72a,72b,72c,72d…画素ユニット、73…画素虚像、73A,73B,73C,73D…画素虚像、76…虚像ユニット、91…着弾点、91A…着弾円、92…第一液滴、93…第二液滴、95…紫外線照射部、610…マイクロレンズアレイ、620…マイクロレンズ、710…虚像領域、710a,710b,710c,710d…虚像領域、720…画素ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状体を液滴として吐出して、基材の所定の位置に着弾させた前記液状体によってマイクロレンズを形成するマイクロレンズアレイの製造方法であって、
前記基材における前記マイクロレンズを形成する面を、前記液状体に対して撥液性にする撥液処理工程と、
前記マイクロレンズを構成するための複数の前記液滴における最初に着弾させる前記液滴を、前記マイクロレンズの座標位置に着弾させる第一液滴配置工程と、
前記複数の液滴における2番目以降に着弾させる前記液滴を、当該液滴の前に着弾させた前記液滴に一部が重なる位置に着弾させる第二液滴配置工程と、を有することを特徴とするマイクロレンズアレイの製造方法。
【請求項2】
前記撥液処理工程では、光硬化型の撥液層液状体を前記基材における前記マイクロレンズを形成する面に配置して、撥液層を形成することを特徴とする、請求項1に記載のマイクロレンズアレイの製造方法。
【請求項3】
前記撥液処理工程では、前記基材における前記マイクロレンズを形成する面に、前記液状体の静的接触角が30度から70度になる処理を実施することを特徴とする、請求項1又は2に記載のマイクロレンズアレイの製造方法。
【請求項4】
前記液状体は、光硬化型の液状体であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のマイクロレンズアレイの製造方法。
【請求項5】
前記液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと前記基材との相対移動方向及び相対移動速度が略一定に維持される1回の吐出走査において、前記第一液滴配置工程を実施し、
次の前記吐出走査において、前記第二液滴配置工程を実施することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のマイクロレンズアレイの製造方法。
【請求項6】
前記第一液滴配置工程と、前記第二液滴配置工程との間に、前記第一液滴配置工程において着弾させた前記液滴を硬化させる硬化工程をさらに有することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のマイクロレンズアレイの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−61443(P2013−61443A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199116(P2011−199116)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】