説明

マイクロ波照射装置およびそれを用いた分解処理方法

【課題】 マイクロ波を利用した化学反応において、マイクロ波の利用効率を高め、それによって反応所要時間を短縮することが可能となるマイクロ波照射装置、およびそれを用いた分解処理方法を提供する。
【解決手段】 マイクロ波発振器から発振もしくは伝送されたマイクロ波を一定方向に反射するための反射板を有することを特徴とする化学反応用のマイクロ波照射装置。前記の反射板を有するマイクロ波照射装置内に、触媒層を設け、該触媒層に有機ハロゲン化合物を含む混合液を流通し、前記反射板を介してマイクロ波を照射することにより、有機ハロゲン化合物を分解処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学反応用のマイクロ波照射装置およびそれを用いた有機ハロゲン化合物の分解処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種有機ハロゲン化合物のなかでも、ポリ塩化ビフェニール(以下PCBと略称することがある。)は人体を含む生体に極めて有害であることから、1973年に特定化学物質に指定され、その製造、輸入、使用が禁止されている。しかし、その後適切な廃棄方法が決まらないまま数万トンのPCBが未処理の状態で放置されている。PCBは、高温(30〜750℃)分解では強毒性のダイオキシン類である塩素化ジベンゾ−p−ダイオキシン(PCDD)とジベンゾフラン(PCDF)が副生することから、技術的にPCBを安全に分解することが難しく、永年にわたりPCBの安全で効率的な各種分解法が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1〜5には、触媒存在下で反応系にマイクロ波を照射して有機ハロゲン化合物を脱塩素化する方法が開示されている。しかしながら、マイクロ波を照射する反応においては、マイクロ波の減衰や照射ロスが生じ、マイクロ波効果が充分に発揮されないために余分なエネルギーが必要となり、改善の余地があった。
【0004】
【特許文献1】特開2001−19646号公報
【特許文献2】特開2004−167232号公報
【特許文献3】特開2004−201701号公報。
【特許文献4】特開2004−201702号公報。
【特許文献5】特開2004−201967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、マイクロ波を利用した化学反応において、マイクロ波の利用効率を高め、それによって反応所要時間を短縮することが可能となるマイクロ波照射装置、およびそれを用いた分解処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、マイクロ波照射装置の内部に反射板を設け、マイクロ波を整流することにより、前記課題を解決できることを見出し本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
1)マイクロ波発振器から発振もしくは伝送されたマイクロ波を一定方向に反射するための反射板を有することを特徴とする化学反応用のマイクロ波照射装置、
2)前記反射板は、反射されたマイクロ波が、当該装置内に設けられた前記の化学反応用の触媒層に照射されるように配置されている前記1)に記載のマイクロ波照射装置、
3)前記化学反応が有機ハロゲン化合物の分解反応で、前記触媒が有機ハロゲン化合物分解触媒である前記1)または2)に記載のマイクロ波照射装置、
4)マイクロ波発振器から発振もしくは伝送されたマイクロ波を一定方向に反射するための反射板を有するマイクロ波照射装置内に、触媒層を設け、該触媒層に有機ハロゲン化合物を含む混合液を流通し、前記反射板を介してマイクロ波を照射することにより有機ハロゲン化合物を分解することを特徴とする分解処理方法、
5)前記マイクロ波照射装置内に導入された混合液を冷却する冷却手段を設けた前記4)に記載の分解処理方法、
6)前記混合液が、有機ハロゲン化合物、水素供与体、およびアルカリ化合物を含む混合液である前記5)に記載の分解処理方法、
7)前記触媒が、炭素結晶化合物、金属担持炭素化合物、金属担持酸化物および金属担持複合酸化物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物である前記4)〜6)のいずれかに記載の分解処理方法、
8)前記有機ハロゲン化合物がポリ塩化ビフェニールである前記4)〜7)のいずれかに記載の分解処理方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のマイクロ波照射装置によれば、マイクロ波が減衰することなく一定方向に照射されるので、化学反応における反応所要時間を短縮することができる。
【0009】
本発明の分解処理方法によれば、有機ハロゲン化合物のマイクロ波分解反応を従来よりも短時間で終了することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係るマイクロ波照射装置、およびそれを用いた分解処理方法について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明のマイクロ波照射装置およびそれを用いた有機ハロゲン化合物の分解処理方法の一実施形態を示す概略図であり、マイクロ波照射装置内に設置された反射板を介して、触媒層にマイクロ波を照射することにより、有機ハロゲン化合物を分解処理する様子を示している。図中、31はマイクロ波発振器、32は導波管、33は反射板、34はマイクロ波出力用のアンテナである。マイクロ波発振器31から発生したマイクロ波は、導波管32を介して伝送され、装置中央部に設置したアンテナ34から出力される。アンテナ34から出力されたマイクロ波は、反射板33によって反射され、下方に設置された触媒層21に向けて照射される。これにより、マイクロ波を一定方向に導くことができ、出力されたマイクロ波を効率よく被照射体に当てることができる。
【0012】
マイクロ波照射装置20内には、反応用触媒層21が設置されており、マイクロ波によって加熱された触媒層の温度を、反応温度制御用熱電対22によって測定し、マイクロ波の出力を制御しながら、反応温度を制御するようになっている。この反応用触媒層は、カラムに所定の触媒等が充填されたものなど、任意のものであってよい。
【0013】
マイクロ波発振器としては、マグネトロン等のマイクロ波発振器や、固体素子を用いたマイクロ波発振器等を適宜用いることができ、通常、出力10W〜20kWのものを用いる。また、図1では導波管32を介してアンテナ34からマイクロ波を出力しているが、導波管を介さずに、マイクロ波発振器31を装置に直接取付けてもよい。
【0014】
図2は、本発明のマイクロ波照射装置の断面図を示すものである。図2は、ドーム状の反射板43を使用した例である。反射板の形状は特に限定されるものではなく、触媒層の形状等に合わせて種々の形状に設計することができ、ドーム形状、円錐形状、四角錘形状などを挙げることができる。
【0015】
また、反射板の材質は、マイクロ波を吸収しない材質であればよく、例えば、真鋳、銅、青銅、銀、銀メッキ、アルミニウム、ステンレスなどを使用できる。
【0016】
有機ハロゲン化合物の分解反応に応用する場合は、該反応は強アルカリ下での反応であることより、耐食性に優れた真鋳、銅、青銅などの材質が好ましく用いられる。
【0017】
図3は、図2に示すマイクロ波照射装置の平面図を示すものである。マイクロ波照射装置20内には触媒層21が設けられており、それに反射板43がアンテナ33を中心として円形状の広がりを有しており、その下方に触媒層21が配置されている。これにより、触媒層の外に散乱するマイクロ波を少なくすることで、マイクロ波を万遍なく効率的に触媒層に照射することが可能となる。
【0018】
反射板は、触媒層の形状等に合わせるなど、できるだけ触媒層全体にマイクロ波が照射されるように設計することが望ましいが、その平面形状は任意である。例えば、図4に示す実施形態のように、触媒層の平面が円形の場合は、反射板53をドーム形や円錐形など、平面が円形になるように設計することもできる。
【0019】
本発明のマイクロ波照射装置を用いて分解処理する場合は、マイクロ波発振器から発振もしくは伝送されたマイクロ波を一定方向に反射するための反射板を有するマイクロ波照射装置内に、触媒層を設け、該触媒層に有機ハロゲン化合物を含む混合液を流通し、前記反射板を介してマイクロ波を照射することにより、有機ハロゲン化合物を分解処理する。有機ハロゲン化合物を含む混合液としては、水素供与体、アルカリ化合物、または溶媒などを少なくとも1種含み、有機ハロゲン化合物の分解用に供される溶液を使用することができる。
【0020】
なかでも、有機ハロゲン化合物、水素供与体、およびアルカリ化合物を含む混合液を流通することが好ましい。かかる混合液を流通することによって、難分解性のPCBを短時間で分解処理することができる。有機ハロゲン化合物は、高濃度品であっても、油(鉱油、電気絶縁油、熱媒体用の油、潤滑油)等に微量ないし少量含まれている低濃度品であってもよい。
【0021】
本発明の方法で有機ハロゲン化合物等を分解処理する場合、照射するマイクロ波の出力や周波数、照射方法は、特に限定されるものではなく、反応温度が所定の範囲に保持できるよう電気的に制御すればよい。出力が低すぎる場合は水素発生量が少なくなり、出力が高すぎる場合はマイクロ波の利用率が悪くなるため、電気的に制御しながら10W〜20kWの範囲にするのが望ましい。マイクロ波の周波数は1〜300GHzが望ましい。1GHz未満又は300GHzを超える周波数範囲では、触媒や水素供与体の加熱が不十分となる。マイクロ波の照射は連続照射、間欠照射のいずれの方法であってもよいが、電気的に制御しながら連続照射するのが好ましい。
【0022】
反応の雰囲気は不活性ガス中で行うことが、望ましくない副反応が起きないので、より好ましい。但し、反応環境によっては不活性ガスの調達が困難な場合もあり得るため、自然雰囲気中で反応を行うこともできる。
【0023】
触媒層の反応温度は200℃以下が望ましく、好ましくは100℃以下、特に好ましくは15〜80℃の範囲である。反応温度を15℃以上にすることにより、分解反応が進行する。一方、200℃を超える場合は、脱塩素化反応は十分進むが、副生物が生成し易くなり、また経済性にも劣るものとなる。
【0024】
本発明において、分解処理対象である有機ハロゲン化合物としては、ポリ塩化ビフェニール類(PCB)やダイオキシン類等を挙げることができ、その種類は特に限定されない。
【0025】
次に、図1に示すマイクロ波照射装置を用いた有機ハロゲン化合物の分解処理方法について具体的に説明する。図1は本発明に係る分解処理方法の一実施形態を示す概略図であり、柱上変圧器に充填された有機ハロゲン化合物含有油の分解処理の一例を示すものである。
【0026】
図1において、柱上変圧器6に充填された有機ハロゲン化合物を含有する油に、水素供与体とアルカリ化合物を添加して混合液7を調製し、この混合液を、供給ライン12を介して、柱上変圧器6の上方に設置されたマイクロ波照射装置20内に導入した後、触媒層21に流通させる。通過後の混合液は、排出(戻り)ライン11を介して、再び柱上変圧器6に戻すことができる。触媒層の上方からマイクロ波が照射されるため、触媒層を流通する混合液は、照射されるマイクロ波によって加熱された触媒と接触する。かくして、混合液中の有機ハロゲン化合物は短時間で分解する。
【0027】
加熱触媒と接触して温度上昇した混合液を冷却するために、冷却装置を設けることもできる。冷却装置の設置場所は任意であり、例えば、供給ライン12や排出ライン11のうちの少なくとも1箇所に設けてもよいし、別途混合液を循環させる循環ラインを設け(図示省略)、該循環ライン上に設けてもよい。
【0028】
また、図1に示す実施形態では、柱上変圧器6の内部巻き線2の上に触媒充填装置(触媒カラム)10が設置され、有機ハロゲン化合物を分解しうる触媒が充填されて触媒層が形成されている。混合液は、供給ライン5、ポンプ4、供給ライン5を介し、触媒充填装置10に設けられた導入管(L字管)を通して触媒充填装置10の下部に導入される。導入された混合液は、触媒充填層を流通し、流通後の混合液7は、触媒充填装置10の上部から溢れ出る。かくして、混合液が触媒と接触することにより、混合液中の有機ハロゲン化合物は分解する。流通時の反応温度は特に限定されないが、装置の簡略化を図るためには、加熱装置を設置せずに実施することが好ましい。
【0029】
本発明の分解処理方法を用いて有機ハロゲン化合物を分解処理する場合、その実施形態は特に限定されるものではなく、マイクロ波照射のみで分解する方法、マイクロ波照射と加熱装置を設置しない分解を併用する方法のいずれであってもよい。併用する場合は、加熱装置を設置しない分解を行いながら必要に応じてマイクロ波照射を施して分解を促進させる方法、あるいは、加熱装置を設置しない分解とマイクロ波による分解を循環ラインを介して併用する方法、などが挙げられる。
【0030】
したがって、混合液中の有機ハロゲン化合物が所定の濃度以下になるまで分解処理を施せばよいので、マイクロ波照射装置20内におけるマイクロ波照射は、必要に応じて行えばよく、その回数や時期、照射時間は限定されない。マイクロ波の照射は、迅速処理の観点からはできるだけ連続照射またはできるだけ長時間の照射が望ましいが、運転の安全やコスト、人員の確保等を考慮すると、昼間のみ行うことが望ましい。後者の場合は、昼間はマイクロ波分解と常温(すなわち加熱装置を設置しない状態)による分解を併用し、夜間は常温による分解のみ行うのがよい。
【0031】
上記の本発明において油に添加する「水素供与体」としては、例えば、複素環式化合物、アミン系化合物、アルコール系化合物、ケトン系化合物、および脂環式化合物等の有機系水素供与体等が挙げられる。これらの化合物の中でも、安全性の観点より、アルコール系化合物、ケトン系化合物、脂環式化合物が好ましく、特に、安全性が高く、低コストで入手可能であり、しかも反応制御が容易で、PCB分解効率が高い点より、アルコール系化合物が好ましい。これらの水素供与体は、単独で又は二種以上を任意に組合わせて使用することができる。
【0032】
ここで、前記のアルコール系化合物としては、脂肪族アルコール、芳香族アルコールのいずれであってもよく、直鎖又は分岐鎖を有する一価アルコールや多価アルコールを用いることができる。アルコール系化合物の炭素数は1〜12の範囲が好ましく、より好ましくは2〜9の範囲、さらに好ましくは3〜6の範囲である。前記アルコール系化合物の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール等の脂肪族アルコール、シクロプロピルアルコール、シクロブチルアルコール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、シクロヘプチルアルコール、シクロオクチルアルコール等の脂環式アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、デカリンジオール等の多価アルコール等が挙げられる。これらの中でも、分解効率の点から2−プロパノール、シクロヘキサノールが特に好ましい。
【0033】
また、アルカリ化合物としては、有機ハロゲン化合物の脱ハロゲン化反応を促進しうるものであれば制限なく使用することができるが、脱ハロゲン化効率を高める観点より、苛性ソーダ、苛性カリ、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、水酸化カルシウム等が好ましく用いられる。中でも、コストやハンドリング性の観点より、苛性ソーダ、苛性カリが特に好ましい。アルカリ化合物は、単独で又は二種以上を任意に組合わせて使用することができる。
【0034】
本発明の分解処理方法では、上記の水素供与体およびアルカリ化合物を事前にプレ攪拌してアルカリ化合物を水素供与体に溶解させておいたものを、有機ハロゲン化合物と混合してもよい。
【0035】
水素供与体は、低濃度の有機ハロゲン化合物を含む油等に対しては、5〜50%(vol)用いることが好ましく、より好ましくは10〜40%(vol)である。水素供与体の量が5%未満では溶液の粘度が高くなり、また分解反応が進まなくなる。また、水素供与体の量が50%を超えると、反応は十分進むが実用上意味がない。また、高濃度の有機ハロゲン化合物に対しては、1〜10000倍(容量比)用いることが好ましい。水素供与体の容量比が1倍未満では溶液の粘度が高くなり、また分解反応が進まなくなる。また、水素供与体の容量比が10000倍を超えると、反応は十分進むが、実用上意味がない。前記容量比は、50〜5000倍が好ましく、特に50〜1000倍が好ましい。
【0036】
また、アルカリ化合物は、水素供与体に対する割合として、0.1〜40%(w/v)とするのが好ましく、より好ましくは0.2〜20%(w/v)、さらに好ましくは1〜10%(w/v)である。前記割合が0.1%未満では分解反応が進まず、40%を超えるとアルカリ化合物が溶解しきれなくなる。
【0037】
アルカリ化合物は、有機ハロゲン化合物に対して、1.0〜1.5倍当量用いることが好ましい。
【0038】
本発明で用いる触媒としては、有機ハロゲン化合物の分解触媒が好ましい。該触媒は有機ハロゲン化合物、中でもPCBの脱ハロゲン化反応を促進しうる触媒を使用することが好ましく、その種類は特に限定されない。無機系触媒は触媒寿命が長く、かつ、アルカリ化合物存在下でも安定であるため、有機系触媒よりも好ましい。無機系触媒の好ましい具体例としては、脱ハロゲン化効率を高める観点より、複合金属酸化物、炭素結晶化合物、金属担持炭素化合物、金属担持酸化物、金属担持複合金属酸化物および金属酸化物等が好ましく用いられる。中でも、アルカリ性雰囲気で安全性が高い点より、炭素結晶化合物、金属担持炭素化合物、金属担持酸化物および金属担持複合酸化物が好ましく、特にマイクロ波吸収性の高い金属担持炭素化合物が好ましい。これらの触媒は、単独で又は二種以上を任意に組合せて使用することができる。これらの再生触媒を使用してもよい。
【0039】
前記の金属担持炭素化合物としては、その金属担持量は、触媒全量に対して0.1〜20wt%、より好ましくは0.1〜10wt%であるのがよい。担持される金属としては、例えば、鉄、銀、白金、ルテニウム、パラジウム、ロジウム等が挙げられ、脱ハロゲン化効率を高める観点より、パラジウム、ルテニウム、白金が好ましい。金属担持炭素化合物の具体例としては、例えば、Pd/C(パラジウム担持炭素化合物)、Ru/C(ルテニウム担持炭素化合物)、Pt/C(白金担持炭素化合物)等が挙げられる。
【0040】
前記の金属担持酸化物および金属担持複合酸化物は、金属を担持した酸化物、複合酸化物であれば制限なく用いることができ、その金属担持量および金属の種類は、上記の金属担持炭素化合物と同様である。金属担持酸化物の具体例としては 例えば、Pd/TiO(パラジウム担持2酸化チタン)等が挙げられる。金属担持複合酸化物の具体例としては、例えば、Pd/SiO・Al(パラジウム担持シリカ−アルミナ)等が挙げられる。
【0041】
金属担持炭素化合物等の触媒は、粒状のものでもハニカム状のものでもよい。粒状の場合はカラムの上下をメッシュ等で固定する必要があり、その場合の粒子径は75μm〜10mmが好ましい。10mmを超える場合は比表面積が不足し、75μm未満の場合はメッシュが詰まり差圧が高くなる。より好ましくは150μm〜5mmが望ましい。触媒粒子は、できるだけ粒子径のそろったものがよい。
【0042】
本発明の分解処理方法によれば、有機ハロゲン化合物が短期間に濃度0.5ppm以下にまで分解されるので、分解処理後の油を回収して後処理することにより、燃料などとして再利用することができる。
【0043】
本発明に係るマイクロ波照射装置は、有機ハロゲン化合物を始めとする各種化合物の分解反応、合成反応(酸化、還元、転位、重合)、抽出等の種々の反応に利用することができる。その他、乾燥、加熱手段として使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係るマイクロ波照射装置と、それを用いた有機ハロゲン化合物分解処理方法の一実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明に係るマイクロ波照射装置の設置例を示す断面図である。
【図3】図2に示すマイクロ波照射装置の平面図である。
【図4】本発明に係るマイクロ波照射装置の他の設置例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0045】
2 柱上変圧器内部巻き線
4 ポンプ
5 ライン
6 柱上変圧器
7 混合液
10 触媒充填装置
11 排出ライン
12 供給ライン
20 マイクロ波照射装置
21 触媒層
29 温度制御用熱電対
31 マイクロ波発振器
32 導波管
33,43,53,63 反射板
34 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波発振器から発振もしくは伝送されたマイクロ波を一定方向に反射するための反射板を有することを特徴とする化学反応用のマイクロ波照射装置。
【請求項2】
前記反射板は、反射されたマイクロ波が、当該装置内に設けられた前記の化学反応用の触媒層に照射されるように配置されている請求項1に記載のマイクロ波照射装置。
【請求項3】
前記化学反応が有機ハロゲン化合物の分解反応で、前記触媒が有機ハロゲン化合物分解触媒である請求項1または2に記載のマイクロ波照射装置。
【請求項4】
マイクロ波発振器から発振もしくは伝送されたマイクロ波を一定方向に反射するための反射板を有するマイクロ波照射装置内に、触媒層を設け、該触媒層に有機ハロゲン化合物を含む混合液を流通し、前記反射板を介してマイクロ波を照射することにより有機ハロゲン化合物を分解することを特徴とする分解処理方法。
【請求項5】
前記マイクロ波照射装置内に導入された混合液を冷却する冷却手段を設けた請求項4に記載の分解処理方法。
【請求項6】
前記混合液が、有機ハロゲン化合物、水素供与体、およびアルカリ化合物を含む混合液である請求項4または5に記載の分解処理方法。
【請求項7】
前記触媒が、炭素結晶化合物、金属担持炭素化合物、金属担持酸化物および金属担持複合酸化物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物である請求項4〜6のいずれかに記載の分解処理方法。
【請求項8】
前記有機ハロゲン化合物がポリ塩化ビフェニールである請求項4〜7のいずれかに記載の分解処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−105062(P2007−105062A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−231281(P2005−231281)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】