説明

マスク検査装置

【目的】軽量、安価かつ高効率な環境放射線耐性を備えたマスク検査装置を提供する。
【構成】本発明のマスク検査装置は、マスクの欠陥を検査するマスク検査装置であって、光源と、この光源から射出される検査光をマスクに照射する照明光学系と、マスクに照射された検査光を光学像として結像させる拡大光学系と、光学像を取得するイメージセンサ10を備えている。そして、イメージセンサ10が、センサチップの少なくとも受光面の反対面側にタンタル(Ta)以上の比重を有する重金属の環境放射線遮蔽部材が有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体素子用のマスクの欠陥を検査するマスク検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。これらの半導体素子は、回路パターンが形成された原画パターン(マスク、フォトマスク或いはレチクルともいう。以下、マスクと総称する)を用いて、いわゆるステッパと呼ばれる縮小投影露光装置でウェハ上にパターンを露光転写して回路形成することにより製造される。
【0003】
そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。歩留まりを低下させる大きな要因の一つとして、半導体ウェハ上に超微細パターンを露光、転写する際に使用されるマスクのパターン欠陥があげられる。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。そのため、LSI製造に使用される転写用マスクの欠陥を検査するマスク検査装置の高精度化が必要とされている。
【0004】
マスク検査装置では、マスク面に対して、コヒーレント光などの検査光を照射し、その反射光または透過光をイメージセンサにて収集し、データを画像化する。その際、マスク面からの反射光や反射光は微弱な信号となる場合があり、超高感度を要するイメージセンサが不可欠である。
【0005】
一方、超高感度を要するイメージセンサでは、宇宙線や自然放射線などの環境放射線がノイズ源となりえる。この場合、ノイズによる信号とマスクの欠陥による信号の区別をつけることが困難となり、システムの性能に大きな影響を与える(例えば非特許文献1)。
【0006】
特許文献1には、電子部品を収納する、軽量で安価なアルミニウム素材の宇宙環境耐性強化容器が開示されている。
【非特許文献1】A.R.Smith et al.,“Radiation events in astronomical CCD images”,SPIE 4669,172−183(2002)
【特許文献1】特開2002−166899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
宇宙線には、α線、β線、γ線の他、ミューオン、などがある。また、それぞれの宇宙線もエネルギー帯幅は大きく、イメージセンサから非常にエネルギーの大きな宇宙線を完全に遮蔽するためには、鉱山跡などの地下深くに装置を設置するのが最も効果的である。しかし、この方法では装置設置に大きな制約がある。
【0008】
また、イメージセンサを鉛などの重金属の容器に収納する方法もある。この場合、遮蔽率は重金属の厚さが厚いほどよいが、重金属の厚さを適切に設定することにより、所望のエネルギー帯の宇宙線を遮蔽することが可能となり、微弱信号取得のためのイメージセンサからのノイズ源除去には大きな効果がある。しかし、一般的に、イメージセンサに接続された配線や冷却装置など付属装置を全て重金属容器内に収納するためには、重金属容器が大きくなり、重量の増大と高価格という問題が生ずる。
【0009】
現在、マスク検査装置は、軽量化、低価格化が大きな課題であり、高感度なイメージセンサを設置した装置を、軽量且つ低価格で製造する必要がある。特にイメージセンサのように除振台の上に載せられる装置部分については、その固有振動を抑制するためにも軽量化が必要である。
【0010】
以上のように、イメージセンサやカメラを大きな容器に収納する方法は、高重量や高価格といった問題があり、容器材料、とりわけ重量、価格ともに大きな重金属材料の使用を極力抑え、小型で高効率な遮蔽体を使用する必要がある。
【0011】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的とするところは、軽量、安価かつ高効率な環境放射線耐性を備えたマスク検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様のマスク検査装置は、光源と、前記光源から射出される検査光を前記マスクに照射する照明光学系と、前記マスクに照射された前記検査光を光学像として結像させる拡大光学系と、前記光学像を取得するイメージセンサを備え、前記イメージセンサが、センサチップの少なくとも受光面の反対面側に、重金属の環境放射線遮蔽部材を有することを特徴とする。
【0013】
ここで、前記環境放射線遮蔽部材が、前記イメージセンサのパッケージに接して設けられることを特徴とすることが望ましい。
【0014】
ここで、前記環境放射線遮蔽部材が、前記イメージセンサのパッケージであって、
前記センサチップおよび前記イメージセンサの電極ピンと、前記パッケージとを絶縁するために、前記センサチップおよび前記イメージセンサの電極ピンと、前記パッケージとの間に絶縁体が設けられていることが望ましい。
【0015】
ここで、前記重金属がタングステンまたはタングステン合金であることが望ましい。
【0016】
ここで、前記イメージセンサを受光素子とするイメージカメラの、受光面側以外の周囲が、水が充填された第2の環境放射線遮蔽部材で囲まれていることが望ましい。
【0017】
本発明の別の一態様のマスク検査装置は、光源と、前記光源から射出される検査光を前記マスクに照射する照明光学系と、前記マスクに照射された前記検査光を光学像として結像させる拡大光学系と、前記光学像を取得するイメージセンサを受光素子とするイメージカメラを備え、前記イメージカメラのフレームがタンタル(Ta)以上の比重を有する重金属で形成されていることを特徴とする。
【0018】
ここで、前記イメージセンサが、センサチップの少なくとも受光面の反対面側に、タンタル(Ta)以上の比重を有する重金属の環境放射線遮蔽部材が設けられていることが望ましい。
【0019】
ここで、前記フレームの外面に接して水が充填された第2の環境放射線遮蔽部材を有することが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、軽量、安価かつ高効率な環境放射線耐性を備えたマスク検査装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本明細書中、単に重金属とは、単体金属に加え、合金も含む概念をいう。
【0022】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態のマスク検査装置は、光源と、光源から射出される検査光をマスクに照射する照明光学系と、マスクに照射された検査光を光学像として結像させる拡大光学系と、光学像を取得するイメージセンサを備えている。そして、このイメージセンサは、イメージセンサのセンサチップの少なくとも受光面の反対面側に、タンタル(Ta)以上の比重を有する重金属の環境放射線遮蔽部材を有している。
【0023】
図2は、第1の実施の形態のパターン検査装置の構成を示すブロック図である。図2において、パターンが形成された露光用マスクを試料として、かかる試料の欠陥を検査するパターン検査装置100は、光学画像取得部150と制御系回路160を備えている。光学画像取得部150は、XYθテーブル102、光源103、拡大光学系104、イメージセンサ105、センサ回路106、レーザ測長システム122、オートローダ130、照明光学系170を備えている。制御系回路160では、コンピュータとなる制御計算機110が、データ伝送路となるバス120を介して、位置回路107、比較回路108、展開回路111、参照回路112、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、フレシキブルディスク装置(FD)116、CRT117、パターンモニタ118、プリンタ119に接続されている。また、XYθテーブル102は、X軸モータ、Y軸モータ、θ軸モータにより駆動される。
【0024】
図2では、本実施の形態を説明する上で必要な構成部分以外については記載を省略している。パターン検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれることは言うまでもない。
【0025】
以下、パターン検査装置100の動作について図2を参照しつつ説明する。まず、光学画像取得部150は、設計データに基づいてパターンが形成された試料となるマスク101の光学画像を取得する。具体的には、光学画像は、以下のように取得される。
【0026】
被検査試料となるマスク101は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能に設けられたXYθテーブル102上に載置される。そして、マスク101に形成されたパターンには、XYθテーブル102の上方に配置されている適切な光源103によって光が照射される。光源103から照射される光束は、照明光学系170を介してマスク101を照射する。マスク101の下方には、拡大光学系104、イメージセンサ105及びセンサ回路106が配置されており、マスク101を透過した光は拡大光学系104を介して、イメージセンサ105に光学像として結像し、入射する。拡大光学系104は、図示しない自動焦点機構により自動的に焦点調整がなされていてもよい。
【0027】
図3は、光学画像の取得手順を説明するための図である。被検査領域は、図3に示すように、Y方向に向かって、スキャン幅Wの短冊状の複数の検査ストライプに仮想的に分割され、更にその分割された各検査ストライプが連続的に走査されるようにXYθテーブル102の動作が制御され、X方向に移動しながら光学画像が取得される。
【0028】
イメージセンサ105(図2)では、図3に示されるようなスキャン幅Wの画像を連続的に入力する。そして、第1の検査ストライプにおける画像を取得した後、第2の検査ストライプにおける画像を今度は逆方向に移動しながら同様にスキャン幅Wの画像を連続的に入力する。そして、第3の検査ストライプにおける画像を取得する場合には、第2の検査ストライプにおける画像を取得する方向とは逆方向、すなわち、第1の検査ストライプにおける画像を取得した方向に移動しながら画像を取得する。このように、連続的に画像を取得していくことで、無駄な処理時間を短縮することができる。
【0029】
イメージセンサ105上に結像されたパターンの像は、イメージセンサ105によって光電変換され、更にセンサ回路106によってA/D(アナログデジタル)変換される。イメージセンサ105には、例えば、フォトダイオードアレイのTDI(タイムディレイ&インテグレーション)センサのようなセンサが設置されている。ステージとなるXYθテーブル102をX軸方向に連続的に移動させることにより、TDIセンサは試料となるマスク101のパターンを撮像する。これらの光源103、拡大光学系104、イメージセンサ105、センサ回路106により高倍率の検査光学系が構成されている。イメージセンサ105としては、フォトダイオードアレイ以外にも、CMOSセンサ、CCDセンサ等を適用することが可能である。
【0030】
XYθテーブル102は、制御計算機110の制御の下にテーブル制御回路114により駆動される。X方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X−Y−θ)モータの様な駆動系によって移動可能となっている。これらの、X軸モータ、Y軸モータ、θ軸モータは、例えばステップモータを用いることができる。そして、XYθテーブル102の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。また、XYθテーブル102上のマスク101はオートローダ制御回路113により駆動されるオートローダ130から自動的に搬送され、検査終了後に自動的に排出されるものとなっている。
【0031】
センサ回路106から出力された測定データ(被検査パターン画像データ:光学画像)は、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上におけるマスク101の位置を示すデータとともに比較回路108に送られる。測定データは例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調を表現している。測定データは、例えば、512画素×512画素の画像データ毎に比較される。
【0032】
一方、マスク101のパターン形成時に用いた設計データは、記憶装置の一例である磁気ディスク装置109に記憶される。そして、設計データ入力工程として、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して展開回路111に読み出される。そして、展開工程として、展開回路111は、読み出された被検査試料となるマスク101の設計図形データを2値ないしは多値のイメージデータに変換して、このイメージデータが参照回路112に送られる。
【0033】
ここで、設計データは長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の2つの頂点位置における座標(x、y)や、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。かかる図形データとなる設計データが展開回路111に入力されると、図形ごとのデータにまで展開される。そして、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の図形パターンデータに展開される。
【0034】
言い換えれば、設計データを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計データにおける図形データが示す図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データが生成され、内部のパターンメモリに出力される。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/2(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、8ビットの占有率データとして生成され、内部のパターンメモリに格納される。
【0035】
そして、参照回路112は、展開回路111から送られてきた図形のイメージデータから測定データと比較するための参照データ(検査基準パターン画像データ)を作成する。比較対象となる参照データは、測定データと同様、例えば、512画素×512画素の画像データとして作成される。
【0036】
ここでは、「die to database検査」を行うために設計データに基づいて参照データを作成しているが、これに限るものではない。「die to die検査」を行うこともできる。その場合には、比較対象となる別の測定データ(光学画像)に基づいて参照データを作成すればよい。そして、参照データは、比較回路108に送られる。
【0037】
比較回路108では、参照データと測定データを取り込む。そして、参照データと測定データとを所定のアルゴリズムに従って比較し、マスクの欠陥の有無を判定する。
【0038】
なお、ここではマスクを透過した透過光を用いてマスク検査する場合を例に説明したが、本実施の形態のマスク検査装置は、マスクで反射する反射光を用いてマスク検査する構成であっても構わない。
【0039】
図1は本実施の形態のマスク検査装置のイメージセンサの概念図である。図1(a)は断面図、図1(b)は裏面側から見た平面図である。図1に示すように、イメージセンサ10は、フォトダイオードアレイ等のセンサチップ12と、このセンサチップ12を載置するマウントベッド14と、これらセンサチップ12とマウントベッド14を保持する、例えばセラミックスのパッケージ16を備えている。また、センサチップ12の受光面側には、検査光を透過させるとともにセンサチップ12の受光面を保護するガラスカバー18が設けられている。また、センサチップ12からの信号をセンサ回路(図示せず)に供給するための複数の電極ピン20を備えている。
【0040】
さらに、このイメージセンサ10は、センサチップの受光面の反対面側(裏面側)にパッケージ16に接して環境放射線遮蔽部材として重金属、例えばタングステン合金の放射線遮蔽板22を有している。
【0041】
このように、イメージセンサ10の受光面の反対面側(裏面側)に重金属の放射線遮蔽板22を設けることにより、センサチップ12に裏面側から入射してくる環境放射線を効率良く遮蔽するこが可能となる。したがって、環境放射線の入射で生ずるノイズが低減され、マスク検査時の誤判定を防止することが可能となる。そして、放射線遮蔽板22をセンサチップ12に近接した場所に設けることにより、小さい面積でより広範囲からの環境放射線を遮蔽することが可能となる。したがって、効果的な放射線遮蔽を最小の重量増加により、かつ安価に実現できる。また、環境放射線の遮蔽能力は、放射線遮蔽板22の厚さを適宜変更することで調整が可能である。
【0042】
さらに、熱伝導性の高い重金属の放射線遮蔽板22を、センサチップ12に物理的、熱的に接して設けることにより、放射線遮蔽板22がイメージセンサ10を冷却する放熱板(ヒートシンク)としても有効に機能する。したがって、温度上昇によるイメージセンサ10、センサ回路(図示せず)の誤動作あるいは検査装置内の温度上昇による光学的誤差の発生を効率的に抑制することも可能となる。
【0043】
ここで、タンタル(Ta)以上の比重を有する重金属としては、例えば、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Pb、Biやその合金などが適用可能である。もっとも、価格の観点からは、Ta、W、Pbやその合金が望ましい。特に、放射線遮蔽性が高く、毒性の低いタングステンまたはタングステン合金を適用することが望ましい。タングステン合金としては、例えば、タングステンを主成分とし、ニッケル、鉄、銅のすくなくとも1種を少量成分として含有する合金が適用可能である。また、加工性の観点からは純粋なタングステンよりも、タングステン合金が一般に優れているため望ましい。
【0044】
また、放射線遮蔽板22の平面積は、図1(b)に示すように、センサチップ12(図1(b)中破線)の平面積よりも大きいことが望ましい。センサチップ12の裏面に入射する放射線を効果的に遮蔽し、かつ、放熱効果をあげることが可能となるからである。
【0045】
また、ここでは放射線遮蔽板22は、マウントベッド14、パッケージ16を介して間接的にセンサチップ12に接する場合を例に説明した。製造を行う上では、この構造が容易であり望ましいが、例えば、放射線遮蔽板22を、マウントベッド14とセンサチップ12との間に設け、放射線遮蔽板22が直接センサチップ12の裏面に接する構造を採用することも可能である。
【0046】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態のマスク検査装置は、イメージセンサの裏面側に水冷ユニットを有すること以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、重複する記載については記述を省略する。
【0047】
図4は本実施の形態のマスク検査装置のイメージセンサの概念図である。図4(a)は断面図、図14(b)は裏面側から見た平面図である。図4に示すように、イメージセンサ24は、第1の実施の形態と同様、センサチップ12、マウントベッド14、パッケージ16、ガラスカバー18、電極ピン20、放射線遮蔽板22等を備えている。
【0048】
そして、放射線遮蔽板22の下面に接して、冷却ユニット26が設けられている。この冷却ユニット26には、図4中矢印で示す方向に冷却水が流される。したがって、放熱板として機能している放射線遮蔽板22からの熱を吸収し、イメージセンサ24の冷却を促進させることが可能となる。したがって、温度上昇によるイメージセンサ24やセンサ回路(図示せず)の誤動作または検査装置内の温度上昇による光学的誤差の発生を一層効率的に抑制することが可能となる。
【0049】
また、環境放射線のうち、例えば、中性子線については重金属の放射線遮蔽板22では完全に遮蔽することが困難である。水は中性子線の遮蔽性が高い。したがって、本実施の形態のように、放射線遮蔽板22の下面に冷却ユニット26を設けることにより、中性子線の遮蔽効果を向上させることも可能になる。
【0050】
なお、図4(b)に示すように、冷却ユニット26の平面積は、放射線遮蔽板22(図4(b)中破線)の平面積よりと同等または大きいことが望ましい。放射線遮蔽板22の熱の吸収を高め、放熱効果をあげることが可能となるからである。
【0051】
ここでは、立方体形状をした冷却ユニット26を例に説明した。中性子線の遮蔽効果の観点からは、立方体形状が望ましいが、必ずしもこの形状に限られることはなく、例えば、管状の冷却ユニットを適用することも可能である。
【0052】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態のマスク検査装置は、重金属の環境放射線遮蔽部材が、イメージセンサのパッケージである。そして、センサチップおよびイメージセンサの電極ピンと、パッケージとを絶縁するために、センサチップおよびイメージセンサの電極ピンと、パッケージとの間に絶縁体が設けられている。なお、マスク検査装置100の基本構成、環境放射線遮蔽部材の材料選択等については、第1の実施の形態と同様である。したがって、重複する記載については記述を省略する。
【0053】
図5は本実施の形態のマスク検査装置のイメージセンサの概念図である。図5(a)は断面図、図5(b)は裏面側から見た平面図である。図5に示すように、イメージセンサ30は、フォトダイオードアレイ等のセンサチップ12と、このセンサチップ12を載置するマウントベッド14と、これらセンサチップ12とマウントベッド14を保持する、重金属のパッケージ16を備えている。また、センサチップ12の受光面側には、検査光を透過させるとともにセンサチップ12の受光面を保護するガラスカバー18が設けられている。また、センサチップ12からの信号をセンサ回路(図示せず)に供給するための電極ピン20を備えている。
【0054】
さらに、センサチップ12およびイメージセンサ30の電極ピン20と、パッケージ16とを絶縁するために、センサチップ12およびイメージセンサ30の電極ピン20と、パッケージ16との間に絶縁体32が設けられている。このように、イメージセンサ30の受光面の反対面側(裏面側)および側面に環境放射線遮蔽部材として重金属、例えばタングステン合金のパッケージ16が設けられている。
【0055】
このように、イメージセンサ30のパッケージ16を重金属で形成することにより、センサチップ12に裏面側および側面側から入射してくる環境放射線を効率良く遮蔽するこが可能となる。したがって、環境放射線の入射で生ずるノイズが一層低減され、マスク検査時の誤判定を防止することが可能となる。また、パッケージ16自体に、環境放射線遮蔽機能を持たせることにより、環境放射線遮蔽のために新たな部材を設ける必要がなくなり、より簡易な構成で、放射線耐性に優れたマスク検査装置を提供することが可能となる。
【0056】
さらに、センサチップ12の周囲を、熱伝導性の高い重金属で覆うことにより、パッケージ16自体がイメージセンサ30を冷却する放熱板(ヒートシンク)として有効に機能する。したがって、温度上昇によるイメージセンサ30あるいは、センサ回路(図示せず)の誤動作を一層効率的に抑制することも可能となる。
【0057】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態のマスク検査装置は、光源と、この光源から射出される検査光をマスクに照射する照明光学系と、マスクに照射された検査光を光学像として結像させる拡大光学系と、光学像を取得するイメージセンサを受光素子とするイメージカメラを備え、このイメージカメラのフレームがタンタル(Ta)以上の比重を有する重金属で形成されている。なお、マスク検査装置100の基本構成、環境放射線遮蔽部材の材料選択等については、第1の実施の形態と同様である。したがって、重複する記載については記述を省略する。
【0058】
図6は、本実施の形態のマスク検査装置のイメージカメラの概念断面図である。このイメージカメラ40は、第1ないし第3の実施の形態で説明したタンタル(Ta)以上の比重を有する重金属の環境放射線遮蔽部材を有するイメージセンサ10を受光素子として内包している。そして、センサ回路の回路基板42、冷却ユニット用の冷却水配管44等のカメラ機構を内包するフレーム46を備えている。そして、このフレーム46が、タンタル(Ta)以上の比重を有する重金属で形成されている。
【0059】
このように、フレーム46自体をタンタル(Ta)以上の比重を有する重金属で形成することにより、イメージセンサ10に入射してくる環境放射線を遮蔽するこが可能となる。特に、既存のカメラフレームの材質を置き換えるだけであるので、カメラ内部の空間的制約は生じず、内部の設計変更が不要である。また、カメラのフレーム46の厚みの変更は、例えば、イメージセンサ10に設けられる環境放射線遮蔽部材に比べて変更の自由度が高いので、必要な遮蔽能力に応じて容易に変更可能である。そして、あくまで、比重の大きな重金属は、カメラに限って設けられる。したがって、カメラ外のカメラ支持台、冷却用のポンプユニット、センサ回路以外の回路基板等を広く覆うよりも安価かつ軽量で環境放射線遮蔽が実現できる。
【0060】
なお、フレーム46には、例えば、光入射のための窓48や、電力供給のためのソケット部50、ネジ孔などの開口部が設けられる。このような、開口部から入射される環境放射線(図中点線矢印)がイメージセンサ10に到達することが懸念される。これを防止するために、窓48やソケット部50には、タンタル(Ta)以上の比重を有する重金属で形成される環境放射線遮蔽用突起52a、52b、52cを設けることが有効である。また、ネジ孔に関しては、ネジ自体をタンタル(Ta)以上の比重を有する重金属で形成することで環境放射線の遮蔽が可能である。
【0061】
また、マスク検査装置の動作時の発熱は、イメージセンサ10本体のみならず、センサ回路の回路基板42等の電気系すべてから放出され、冷却ユニットでは抑制されなかった熱が、フレーム46に伝達される。したがって、熱伝導性の高い重金属をフレーム46に使用することにより、外部に対して効率よく熱を放出でき、イメージカメラの冷却効果も向上する。したがって、温度上昇によるイメージセンサ10やセンサ回路の誤動作または検査装置内の温度上昇による光学的誤差の発生を一層効率的に抑制することが可能となる。
【0062】
なお、本実施の形態においては、第1ないし第3の実施の形態で説明したタンタル(Ta)以上の比重を有する重金属の環境放射線遮蔽部材を有するイメージセンサ10を受光素子とする場合を例に説明した。この場合は、2重の環境放射線遮蔽により、遮蔽能力が高まるため望ましい。また、2重の冷却機構により、イメージカメラの冷却効率も向上するため望ましい。もっとも、イメージセンサ10が環境放射線遮蔽部材を有することは必須ではなく、フレーム46をタンタル(Ta)以上の比重を有する重金属で形成するだけでも、環境放射線遮蔽および冷却効率向上効果が得られるのは言うまでもない。
【0063】
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施の形態のマスク検査装置は、第1ないし第3の実施の形態で説明したイメージセンサを受光素子とするイメージカメラのフレームの外面に接して、水が充填された第2の環境放射線遮蔽部材が設けられている。なお、マスク検査装置100の基本構成、環境放射線遮蔽部材の材料選択等については、第1の実施の形態と同様である。したがって、重複する記載については記述を省略する。
【0064】
図7は、本実施の形態のマスク検査装置のイメージカメラの概念断面図である。このイメージカメラ60は、イメージセンサ10を受光素子とし、センサ回路の回路基板42等のカメラ機構を内包するフレーム46を備えている。さらに、イメージカメラの、フレームの外面に接して、水が充填された第2の環境放射線遮蔽部材である水冷槽54が設けられている。水冷槽54には、図中矢印で示すように、冷却水が流されている。
【0065】
本実施の形態では、イメージカメラ60の周囲を、重金属の環境放射線遮蔽部材では遮蔽困難な中性子線に対する遮蔽性の高い水で囲む。これにより、イメージセンサ60へ入射する中性子線を遮蔽し、特に中性子線に対する放射線耐性に優れたマスク検査装置を提供することが可能となる。また、水冷槽54の形状やサイズ設計の自由度が大きいため、第2の実施の形態と比較して、放射線遮蔽により、適切な形状およびサイズの設定が可能となる。
【0066】
さらに、熱の発生源となる回路基板42等のカメラ機構の周囲に水冷槽54を設けることで、温度上昇によるイメージセンサ20やセンサ回路(図示せず)の誤動作または検査装置内の温度上昇による光学的誤差の発生をより一層効率的に抑制することが可能となる。
【0067】
(第6の実施の形態)
本発明の第6の実施の形態のマスク検査装置は、第4の実施の形態と、第5の実施の形態を組み合わせた構成となっている。すなわち、イメージカメラ60のフレーム46は、タンタル(Ta)以上の比重を有する重金属で形成されている。また、フレーム46の外面に接して、水が充填された第2の環境放射線遮蔽部材である水冷槽54が設けられている。
【0068】
本実施の形態のマスク検査装置によれば、環境放射線のうち、アルファ線、ベータ線、ガンマ線やエックス線は重金属で、中性子線は水冷槽で効果的に遮蔽される。また、熱伝導率の高い重金属と、水冷槽によりきわめて高い冷却効果も実現できる。よって、環境放射線や温度上昇に伴う誤動作・誤判定を防止するマスク検査装置が提供可能となる。
【0069】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、各実施の形態では、透過光を用いているが、反射光あるいは、透過光と反射光を同時に用いてもよい。検査基準パターン画像となる参照画像は設計データから生成しているが、イメージセンサ等のセンサにより撮像した同一パターンのデータを用いても良い。言い換えれば、die to die検査でもdie to database検査でも構わない。
【0070】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのマスク検査装置は、本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】第1の実施の形態のイメージセンサの概念図である。
【図2】第1の実施の形態のマスク検査装置のブロック図である。
【図3】第1の実施の形態の光学画像の取得手順を説明するための図である。
【図4】第2の実施の形態のイメージセンサの概念図である。
【図5】第3の実施の形態のイメージセンサの概念図である。
【図6】第4の実施の形態のイメージカメラの概念断面図である。
【図7】第5の実施の形態のイメージカメラの概念断面図である。
【図8】第6の実施の形態のイメージカメラの概念断面図である。
【符号の説明】
【0072】
10 イメージセンサ
12 センサチップ
14 マウントベッド
16 パッケージ
18 ガラスカバー
20 電極ピン
22 放射線遮蔽板
24 イメージセンサ
26 水冷ユニット
30 イメージセンサ
32 絶縁体
40 イメージカメラ
42 回路基板
44 冷却水配管
46 フレーム
48 窓
50 電源ソケット
52a、b、c 環境放射線遮蔽用突起
54 水冷槽
60 イメージカメラ
70 イメージカメラ
100 マスク検査装置
103 光源
104 拡大光学系
105 イメージセンサ
106 センサ回路
170 照明光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から射出される検査光を前記マスクに照射する照明光学系と、
前記マスクに照射された前記検査光を光学像として結像させる拡大光学系と、
前記光学像を取得するイメージセンサを備え、
前記イメージセンサが、センサチップの少なくとも受光面の反対面側に、タンタル(Ta)以上の比重を有する重金属の環境放射線遮蔽部材を有することを特徴とするマスク検査装置。
【請求項2】
前記環境放射線遮蔽部材が、前記イメージセンサのパッケージに接して設けられることを特徴とする請求項1記載のマスク検査装置
【請求項3】
前記環境放射線遮蔽部材が、前記イメージセンサのパッケージであって、
前記センサチップおよび前記イメージセンサの電極ピンと、前記パッケージとを絶縁するために、前記センサチップおよび前記イメージセンサの電極ピンと、前記パッケージとの間に絶縁体が設けられていることを特徴とする請求項1記載のマスク検査装置。
【請求項4】
前記重金属がタングステン(W)またはタングステン合金であることを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか一項に記載のマスク検査装置。
【請求項5】
前記イメージセンサを受光素子とするイメージカメラのフレームの外面に接して、水が充填された第2の環境放射線遮蔽部材が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4記載のマスク検査装置。
【請求項6】
光源と、
前記光源から射出される検査光を前記マスクに照射する照明光学系と、
前記マスクに照射された前記検査光を光学像として結像させる拡大光学系と、
前記光学像を取得するイメージセンサを受光素子とするイメージカメラを備え、
前記イメージカメラのフレームがタンタル(Ta)以上の比重を有する重金属で形成されていることを特徴とするマスク検査装置。
【請求項7】
前記イメージセンサが、センサチップの少なくとも受光面の反対面側に、タンタル(Ta)以上の比重を有する重金属の環境放射線遮蔽部材を有することを特徴とする請求項6記載のマスク検査装置。
【請求項8】
前記フレームの外面に接して、水が充填された第2の環境放射線遮蔽部材が設けられていることを特徴とする請求項7または請求項8記載のマスク検査装置。









【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−244155(P2009−244155A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92253(P2008−92253)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(305008983)アドバンスド・マスク・インスペクション・テクノロジー株式会社 (105)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】