説明

マスク用組成物及びその使用方法

【課題】優れた殺菌効果を有し、空気中の病原性物質の感染を予防できるだけでなく、長時間マスクを使用した場合であっても、マスクの肌と接する面における口腔内細菌由来のにおいの発生を防止することができ、更にその効果を長時間維持することができ、マスク着用時の不快感を低減することができるマスク用組成物及びその使用方法の提供。
【解決手段】殺菌剤と、55質量%〜80質量%のポリオールと、を少なくとも含有し、マスク基材に付着させて用いるマスク用組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク用組成物及び該マスク用組成物を用いた使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インフルエンザウイルス、細菌、カビ等の病原体が原因となる感染症が社会問題になっており、例えば、病院内や公共施設など不特定多数の人が集まる場所での大量感染が懸念されている。そこで、感染症を予防するための手段の1つとして、また感染症に感染した者が他者に感染を拡大しないための手段として、マスクの需要が高まっている。
【0003】
感染症予防を目的としたマスクとしては、例えば、少なくとも口及び鼻孔を覆うことが可能な形状及び寸法に作成された通気性を有する覆い部と、前記覆い部の両側に設けられた耳掛け部とを備え、前記覆い部の内面側が非吸湿性の織布又は不織布で覆われているとともに、前記覆い部に、吸湿性の布又は不織布に不揮発性又は沸点が120℃以上の液体を含浸させた液含浸シートが挟まれているマスク(特許文献1参照)、マスク本体が有効な量の殺菌剤を少なくとも1つ有する外層を含み、呼吸のため空気を前記マスク本体を通して吸い込めるように、使用者の口と少なくとも鼻の一部を覆って着用できるように形成されたフェイスマスク(特許文献2参照)、少なくとも1種類のタンパク質変性剤と、少なくとも1種類の親水基を有する高分子化合物とが共担持されている有害物質除去材を適用したマスク(特許文献3参照)などが提案されている。
【0004】
しかし、これらのマスクは、空気中からの病原性物質の侵入を防ぐ効果が十分ではなく、更にこれらのマスクを長時間使用した場合、マスクと肌との空間に口腔内細菌由来の菌が繁殖し、マスクににおいが発生し、着用時や再着用時に不快感が生じるという問題があった。
【0005】
また、抗菌処理などの施されていない市販のガーゼマスクや不織布マスクに抗菌や抗ウイルス性を付与するマスク用スプレー剤としては、リン酸カルシウム系化合物と、アルコールとを含有するマスク用抗菌・抗ウイルススプレーが提案されている(特許文献4参照)。
しかし、アルコールを含むマスク用スプレー剤は、揮発性が高く、殺菌効果の持続性がない点で問題であった。
【0006】
したがって、優れた殺菌効果を有し、空気中の病原性物質の感染を予防できるだけでなく、長時間マスクを使用した場合であっても、マスクの肌と接する面における口腔内細菌由来のにおいの発生を防止することができ、更にその効果を長時間維持することができ、マスク着用時の不快感を低減することができるマスク用組成物及びその使用方法の提供が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−187508号公報
【特許文献2】特表2009−505788号公報
【特許文献3】特開2009−291284号公報
【特許文献4】特開平11−199403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れた殺菌効果を有し、空気中の病原性物質の感染を予防できるだけでなく、長時間マスクを使用した場合であっても、マスクの肌と接する面における口腔内細菌由来のにおいの発生を防止することができ、更にその効果を長時間維持することができ、マスク着用時の不快感を低減することができるマスク用組成物及びその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、殺菌剤と、55質量%〜80質量%のポリオールと、を少なくとも含有し、マスクに付着させて用いるマスク用組成物は、優れた殺菌効果を有し、空気中の病原性物質の感染を予防できるだけでなく、長時間マスクを使用した場合であっても、マスクの肌と接する面における口腔内細菌由来のにおいの発生を防止することができ、更にその効果を長時間維持することができ、マスク着用時の不快感を低減することができることを知見し、本発明の完成に至った。
【0010】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 殺菌剤と、55質量%〜80質量%のポリオールと、を少なくとも含有し、マスク基材に付着させて用いることを特徴とするマスク用組成物である。
<2> 殺菌剤が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、及び塩化セチルピリジニウムから選択される少なくとも1種である前記<1>に記載のマスク用組成物である。
<3> ポリオールが、プロピレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、及び1,3−ブチレングリコールから選択される少なくとも1種である前記<1>から<2>のいずれかに記載のマスク用組成物である。
<4> 殺菌剤の含有量が、0.01質量%〜0.1質量%である前記<1>から<3>のいずれかに記載のマスク用組成物である。
<5> マスクを使用する前に、マスク基材に対して前記<1>から<4>のいずれかに記載のマスク用組成物をスプレー塗布することを特徴とするマスク用組成物の使用方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れた殺菌効果を有し、空気中の病原性物質の感染を予防できるだけでなく、長時間マスクを使用した場合であっても、マスクの肌と接する面における口腔内細菌由来のにおいの発生を防止することができ、更にその効果を長時間維持することができ、マスク着用時の不快感を低減することができるマスク用組成物及びその使用方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(マスク用組成物)
本発明のマスク用組成物は、殺菌剤と、ポリオールとを含有し、必要に応じて更にその他の成分を含有する。
【0013】
<殺菌剤>
前記殺菌剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、トリクロロカルバニド、N−ヤシ油脂肪酸アシルL−アルギニンエチル・DL−ピロリドンカルボン酸塩、抗菌植物抽出物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
前記抗菌植物抽出物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抗菌植物を、水、エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、又はこれらの混合溶剤で抽出した抽出物が挙げられ、その具体例としては、海藻エキス、アロエエキス、コムギ胚芽エキス、ダイズエキス、納豆エキス、サンショウエキス、シコンエキス、ショウキョウエキス、セージエキス、モモ葉エキス、ヨモギエキス、ローズマリーエキス、ユーカリエキス、ラベンダーエキス、ワレモコウエキス、ラベンダーエキス、又はこれらの誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
これらの中でも、前記殺菌剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウムが、殺菌効果が高いだけでなく、不快なにおいの抑制効果やマスク基材への浸透性も高い点で好ましい。
前記殺菌剤としては、市販品を用いることができ、例えば、塩化ベンザルコニウム(山田製薬株式会社製)、塩化ベンゼトニウム(三共株式会社製)、塩化セチルピリジニウム(和光純薬工業株式会社製)、イソプロピルメチルフェノール(大阪化成工業株式会社製)、トリクロサン(日本チバ・ガイギー株式会社製)、トリクロロカルバニド(保土谷化学工業株式会社製)、N−ヤシ油脂肪酸アシルL−アルギニンエチル・DL−ピロリドンカルボン酸塩(味の素株式会社製)などが挙げられる。
【0016】
前記殺菌剤の含有量としては、特に制限はなく、前記殺菌剤の種類などに応じて適宜選択することができるが、0.01質量%〜0.1質量%が好ましく、0.02質量%〜0.1質量%がより好ましい。前記殺菌剤の含有量が、0.01質量%未満であると、殺菌効果や、マスクの不快なにおいを抑制する効果が不十分になることがあり、0.1質量%を超えると、皮膚刺激が生じることがある。
一方、前記殺菌剤の含有量がより好ましい範囲内であると、殺菌効果、不快なにおいの抑制効果が高い点で好ましい。
【0017】
<ポリオール>
前記ポリオールとしては、分子内に水酸基を2つ以上有する化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、前記ポリオールとしては、殺菌効果が高く、殺菌効果の持続性が長い点から、プロピレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールが好ましく、更に不快なにおいの抑制効果が高い点から、プロピレングリコールがより好ましい。
【0018】
前記ポリオールの含有量としては、55質量%〜80質量%であるが、殺菌効果の持続性が長い点から、60質量%〜80質量%が好ましく、更に不快なにおいの抑制効果が高い点から、70質量%〜80質量%がより好ましい。前記ポリオールの含有量が、55質量%未満であると、殺菌効果の持続性や不快なにおいを抑制する効果が不十分になることがあり、80質量%を超えると、べたつくことがあり、使用感の点で好ましくない。
一方、ポリオールの含有量が55質量%〜80質量%の範囲内であると、殺菌効果の持続性が長く、不快なにおいを抑制する効果やマスク基材への浸透性が高い点で好ましい。
【0019】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない限り、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオキシエチレン(POE)硬化ヒマシ油、POEアルキルエーテル、POEポリオキシプロポレン(POP)アルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、N−アルキルジメチルアミンオキシド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド等のノニオン性界面活性剤;脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、モノアルキルリン酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、N−アシルメチルタウリン塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシルサルコシン塩、POEアルキルエーテルリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩、ジアルキル4級アンモニウム塩、脂肪酸アミドアミン塩、アルキルアミン塩等の前記殺菌剤以外のカチオン性界面活性剤;アミノ酸型両性界面活性剤、アミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等の両性界面活性剤;アクリル酸系等のアニオン性ポリマー、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム等のカチオン性ポリマー、ポリビニルピロリドン、HPC、HEC、HPMC等の非イオン性ポリマー、両性ポリマー等の高分子化合物;酢酸トコフェロール、カルニチン、ビタミンK、α−リポ酸、イノシトール、ビタミンA等のビタミン類;グリシン、アラニン、セリン、シスチン、メチオニン、ヒドロキシプロリン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、リシン等のアミノ酸類;グリチルリチン酸、β−グリチルレチン酸、アラントイン、塩化リゾチーム、グアイアズレン、アミノカプロン酸、甘草エキス等の抗炎症剤;ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、安息香酸エステル系、サリチル酸系、ケイ皮酸系等の紫外線吸収剤;メントール、メンチルグリセリルエーテル、薄荷油、カンファ等の冷感付与剤;酸化防止剤;タール系色素、天然系色素等の着色剤;リモネン等の炭化水素、酢酸エステル、カプロラクトン、サリチル酸メチル、シトロネロール、シトラール、テルビネオール等の香料;クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸等の有機酸又はその塩、リン酸又はその塩、塩酸、水酸化ナトリウム等の無機酸又は無機塩等のpH調整剤;ヒノキチオール、チモール、塩酸クロルヘキシジン、クレゾール、パラクロルフェノール、メチルイソチアゾリノン等の前記殺菌剤以外の殺菌剤;安息香酸(塩)、ソルビン酸塩、フェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸アルキル等の防腐剤;α−シクロデキストリン、メチル化シクロデキストリン、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、硫酸化シクロデキストリン等の包接化合物;水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0020】
<使用>
前記マスク用組成物は、1種単独で使用してもよく、他の成分を有効成分とするマスク用組成物と併用してもよい。また、他の成分を有効成分とするマスク用組成物に配合されていてもよい。
【0021】
前記マスク用組成物は、マスク基材に付着させて用いられる。前記マスク基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0022】
また、前記マスク用組成物を前記マスク基材に付着させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記マスク用組成物をそのまま、あるいは溶剤で希釈した状態の前記マスク用組成物を、前記マスク基材に、噴霧する方法、被覆する方法、浸漬する方法などが挙げられる。これらの中でも、スプレー等で噴霧する方法が、簡便で好ましい。
前記マスク用組成物を、前記マスク基材における前記マスク用組成物を付着させる面としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、両面であってもよく、片面であってもよい。また、片面に付着させる場合、肌と接する面であってもよく、外気と接する面(肌と接する面の反対側)であってもよい。
なお、本発明において、前記マスク用組成物は、マスク基材に付着させて用いられるが、前記マスク用組成物を担持させたマスク基材も本発明の範囲に属するものである。
【0023】
前記マスク用組成物は、前記殺菌剤と、前記ポリオールとが、相乗的に作用することで、優れた殺菌効果を有し、空気中の病原性物質の感染を予防できるだけでなく、長時間マスクを使用した場合であっても、マスクの肌と接する面における口腔内細菌由来のにおいの発生を防止することができ、更にその効果を長時間維持することができ、マスク着用時の不快感を低減することができる点で有利である。
前記殺菌効果の持続時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3時間〜8時間が好ましく、6時間〜8時間がより好ましい。前記殺菌効果の持続時間が、3時間未満であると、前記マスク用組成物を頻繁にマスク基材に付着させる必要があり、使用方法が煩雑になることや、コスト的に不利になることがある。
【0024】
(マスク用組成物の使用方法)
本発明のマスク用組成物の使用方法は、マスクを使用する前に、前記マスク基材に対して本発明の前記マスク用組成物をスプレー塗布する方法である。
【0025】
<マスク基材>
前記マスク用組成物を付着させるマスク基材としては、特に制限はなく、市販のマスクに用いられている材質の中から目的に応じて適宜選択することができる。
前記マスク用組成物を付着させる市販のマスク本体の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記不織布のシート材からなる単層構造であってもよく、2層以上のシート材からなる複数層構造であってもよい。また、マスク本体の形状は、平面的な「平型マスク」、立体的になるプリーツ構造を採用した「プリーツ型マスク」、顔のラインに沿った形状で密着性を高めた「立体型マスク」などであってもよい。更に、特開2009−291284号公報に記載されているような吸収性コアが取り付けられていてもよい。なお、本願発明の前記マスク用組成物を前記吸収性コアに含浸させて使用してもよい。
【0026】
<使用量>
前記マスク用組成物の使用量としては、特に制限はなく、前記マスク用組成物中の前記殺菌剤や前記ポリオールの濃度、前記マスク基材の面積、対象となる病原体の種類、使用場所、使用方法、使用時期、混用あるいは併用する薬剤などの種類や使用量等の種々の条件に応じて、適宜選択することができるが、0.02mL〜0.5mLが好ましく、0.05mL〜0.3mLがより好ましい。前記使用量が、0.02mL未満であると、抗菌効果、抗菌効果の持続性、不快なにおいの抑制効果が不十分になることがあり、0.5mLを超えると、べたつきが生じることや、コスト的や不利になることがある。
また、前記マスク用組成物の使用濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0027】
前記マスク用組成物の使用回数としては、特に制限はなく、使用環境などに応じて適宜選択することができる。
【実施例】
【0028】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0029】
(実施例1〜24)
表1〜4の組成に従い、ビーカーに各種ポリオール及びその他の成分をそれぞれ添加し、パドル式攪拌機(新東科学株式会社製)を用いて混合した。次いで、表1〜4に従い各種殺菌剤を添加し、常温(約25℃)で均一に混合し、溶解させた。これにより実施例1〜24のマスク用組成物を調製した。
【0030】
(比較例1)
実施例1〜24において、表4の組成に従い、殺菌剤を添加しなかったこと以外は、実施例1〜24と同様の方法で比較例1のマスク用組成物を調製した。
【0031】
(比較例2)
実施例1〜24において、表4の組成に従い、ポリオールを添加しなかったこと以外は、実施例1〜24と同様の方法でマスク用組成物を調製した。
【0032】
(比較例3)
実施例1〜24において、表4の組成に従い、ポリオールを添加せず、エタノールを添加したこと以外は、実施例1〜24と同様の方法でマスク用組成物を調製した。
【0033】
<殺菌効果の評価>
口腔内細菌(Streptococcus mutans)(ATCC25175)を、Mitis Salivalius寒天培地(DIFCO社製)を用いて嫌気条件下で37℃にて一晩、静置培養した。
この培養物を白金耳でかきとり、GAMブロス(日水製薬株式会社製)に懸濁し、更にGAMブロスで菌数が1×10細胞/mLになるように菌液を調製した。
試験管(約20mL容)に、調製した菌液0.1mL、実施例1〜24及び比較例1〜3のマスク用組成物0.1mL、GAMブロス0.8mLを加えた混合液を調製し、30秒間後にGAMブロスプレート培地(日水製薬株式会社製)に該混合液を0.1mL塗沫した。このプレートは、嫌気条件下で37℃にて7日間培養した。
7日間培養後、生育したコロニー数を目視にて計測し、該コロニー数から残存する生菌数(cfu)を計測し、下記評価基準に基づいて殺菌効果を判定した。結果を表1〜4に示す。
[評価基準]
◎:生菌数が10未満
○:生菌数が10以上10未満
△:生菌数が10以上10未満
×:生菌数が10以上
【0034】
<殺菌効果の持続性の評価>
殺菌効果の持続性の評価は、マスク着用時にマスクのにおいが気になる成人男性5名及び成人女性5名を被験者として以下の方法で行った。
【0035】
−(A)陽性対照区−
前記被験者10名に、滅菌済みのマスク(材質:ポリプロピレン、プリーツ型、川本産業株式会社製)を6時間着用させた後、回収した。回収したマスクの肌と接していた面(口元側)をSCDLP培地(日本製薬株式会社製)に転写し、好気条件下で37℃にて24時間静置培養した。その後、生育したコロニー数を目視にて計測した。
【0036】
−(B)試験区−
前記(A)陽性対照区の方法において、滅菌済みのマスクに代えて、以下の処理を施したマスクを用いたこと以外は、前記(A)陽性対照区と同様の方法で(B)試験区の試験を行った。
【0037】
(B)試験区に用いたマスクは、滅菌済みのマスク(材質:ポリプロピレン、プリーツ型、川本産業株式会社製)の肌と接する面(口元側)に、ディスペンサー容器(タイプ:Z−35−S01、口径:φ0.045、約0.05mL/プッシュ、株式会社三谷バルブ製)に収容した実施例1〜24及び比較例1〜3のマスク用組成物をそれぞれ3プッシュ(合計約0.15mL)噴霧した。なお、各マスク用組成物の噴霧は、それぞれ着用直前に行った。
【0038】
(A)陽性対照区、及び(B)試験区における実施例1〜24及び比較例1〜3のマスク用組成物を用いた試験は、ぞれぞれ別の日に行った。
【0039】
−殺菌効果の持続性の算出−
前記(A)陽性対照区で計測した生育コロニー数と、前記(B)試験区で計測した生育コロニー数から下記計算式を用いて、(B)試験区の生菌率(%)を算出し、下記評価基準に基づいて殺菌効果の持続性を判定した。結果を表1〜4に示す。
生菌率(%)=(B)/(A)×100
前記計算式において、(A)は、前記(A)陽性対照区で計測した生育コロニー数を表し、(B)は、前記(B)試験区で計測した生育コロニー数を表す。
[評価基準]
◎:生菌率が20%未満
○:生菌率が20%以上40%未満
△:生菌率が40%以上60%未満
×:生菌率が60%以上
【0040】
<不快なにおいの抑制効果の評価>
マスク着用時にマスクのにおいが気になる成人男性10名を被験者として行った。
滅菌済みのプリーツ型のマスク(材質:ポリプロピレン、プリーツ型、川本産業株式会社製)の肌と接する面(口元側)にディスペンサー容器(タイプ:Z−35−S01、口径:φ0.045、約0.05mL/プッシュ、株式会社三谷バルブ製)に収容した実施例1〜24及び比較例1〜3のマスク用組成物をそれぞれ3プッシュ(合計約0.15mL)噴霧した。このマスクを、前記被験者に6時間着用させた後、回収した。
回収したマスクをガラス容器(1L容)に入れ密栓し、40℃で1時間静置した。その後、マスクのにおいについての専門パネリスト10名が、前記ガラス容器の蓋を少し開け、隙間から出てくる臭気を嗅いで下記評点に基づいて官能評価を行い、この平均値より下記評価基準に基づいて不快なにおいの抑制効果を判定した。結果を表1〜4に示す。
[評点]
1点:やっと認知できるごく弱いにおい
2点:弱いにおい
3点:楽に感知できるにおい
4点:強いにおい
[評価基準]
◎:1点以上1.5点未満
○:1.5点以上2.5点未満
△:2.5点以上3.5点未満
×:3.5点以上4点以下
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
実施例1〜24のマスク用組成物は、優れた殺菌効果を有し、またその殺菌効果を長時間持続することができ、更にマスク着用時の不快なにおいを抑制することができることがわかった。
一方、殺菌剤を含有しない比較例1は、殺菌効果がなく、ポリオールを含有しない比較例2及び3では、殺菌効果を持続することができず、マスク着用時の不快なにおいも抑制することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のマスク用組成物は、前記殺菌剤と、前記ポリオールとが、相乗的に作用することで、優れた殺菌効果を有し、空気中の病原性物質の感染を予防できるだけでなく、長時間マスクを使用した場合であっても、マスクの肌と接する面における口腔内細菌由来のにおいの発生を防止することができ、更にその効果を長時間維持することができ、マスク着用時の不快感を低減することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌剤と、55質量%〜80質量%のポリオールと、を少なくとも含有し、マスク基材に付着させて用いることを特徴とするマスク用組成物。
【請求項2】
殺菌剤が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、及び塩化セチルピリジニウムから選択される少なくとも1種である請求項1に記載のマスク用組成物。
【請求項3】
ポリオールが、プロピレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、及び1,3−ブチレングリコールから選択される少なくとも1種である請求項1から2のいずれかに記載のマスク用組成物。
【請求項4】
殺菌剤の含有量が、0.01質量%〜0.1質量%である請求項1から3のいずれかに記載のマスク用組成物。
【請求項5】
マスクを使用する前に、マスク基材に対して請求項1から4のいずれかに記載のマスク用組成物をスプレー塗布することを特徴とするマスク用組成物の使用方法。

【公開番号】特開2012−106963(P2012−106963A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258313(P2010−258313)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】