説明

マスタデータメンテナンスツール

【課題】 オペレータに対し理解し易い表示方法と、様々な検索手法を有し、かつデータの更新機能を持ち、業務仕様を柔軟に反映することができるマスタデータメンテナンスツールを提供すること。
【解決手段】 利用者の権限グループとサーバ側の定義ファイルに予め設定されたアクセス権限の情報とを比較し、利用者が参照可能なマスタデータのみを画面に表示する手段と、マスタデータの追加、削除、更新、検索の処理を利用者によって制限する手段と、マスタデータの個々のフィールドに対し、追加、更新、検索の各画面で入力された値が、サーバの定義ファイルに予め設定された属性の条件を満たしているかをチェックする手段と、画面表示時にテキストボックスの初期値の設定、ドロップダウンリストの一覧表示をサーバに設定された画面表示用の情報に基づいて行う手段と、サーバの定義ファイルに設定された条件に基づき、検索画面に検索条件を表示する手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスタデータの追加や削除、参照、更新のメンテナンス作業を安全かつ効率的に行うためのマスタデータメンテナンスツールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータやネットワーク環境の進展により、多くの組織において情報処理装置を利用した業務システムや情報システムが稼動している。
一般的に、それらのシステムが取扱う情報はリレーショナルデータベースに蓄積されており、そのデータベースには基幹となるデータであるマスタデータが含まれる。
このような環境の場合、運用時にマスタデータの追加や削除、更新等のメンテナンス作業が発生する。
マスタデータ等のテーブルデータの編集は通常、データベースソフトに付属しているデータベース開発ツールやマイクロソフト社が提供するMS-Access(登録商標)等のデータベース管理システムが必要となる。
これらのソフトウェアはデータベース上のデータを縦横の表形式で表示し、そこに蓄積されているデータを直接表示するものである。
そのため、マスタデータのメンテナンス作業には、データベースの知識をある程度持つデータベース管理者や、テーブルのデータ構造を理解しているシステム有識者が必要となる。
このような経緯から特許文献1では、ユーザにとって理解容易な形式で情報を表示することができるメンテナンス画面の自動生成装置を提案している。
【0003】
【特許文献1】特開2005−190178号公報 特許文献1では、データメンテナンス時の利便性を向上させる目的から、オペレータが理解容易な任意の情報に置換させて表示させることができるメンテナンス画面を、システム毎に個々にプログラミングすることなく自動的に作成するデータメンテナンス装置を開示している。特に、この装置は、例えば商品コードのような数値や英字の羅列によって識別する値に対し、「他のテーブルと結合する」ことによって、商品名等の利用者にとって理解しやすい形式で表示し、さらにそのデータのメンテナンスを行うことができるとしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のようなデータメンテナンス装置においては、誰でも操作が可能であり、テーブル削除のようなリスクを伴う処理も行えてしまうことから、セキュリティという観点から課題が残った。
また、稼動している現行システムの仕様に対し、柔軟にプログラミングすることはできず、例えば、手入力による入力ミスを防ぐ、データ更新時にカウンタテーブルを更新する等の業務仕様を即時に反映するようなカスタマイズ性はなかった。
このような問題を解決するためには、システム開発時に別途マスタデータメンテナンス用の装置を開発する方法があるが、メンテナンス用の装置自体にコストと期間がかかってしまい、その分のリスクは生じてしまう。
【0005】
本発明の目的は、マスタデータメンテナンス操作の管理と、オペレータに対し理解し易い表示方法の実現と、様々な検索手法を有し、かつデータの更新機能を持ち、業務仕様を柔軟に反映することができるマスタデータメンテナンスツールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のマスタデータメンテナンスツールは、利用者がマスタデータのメンテナンスを行うに際し、当該利用者の権限グループとサーバ側の定義ファイルに予め設定されたアクセス権限の情報とを比較し、利用者が参照可能なマスタデータのみを画面に表示する手段と、
マスタデータの追加、削除、更新、検索の処理を利用者によって制限する手段と、
マスタデータの個々のフィールドに対し、追加、更新、検索の各画面で入力された値が、サーバの定義ファイルに予め設定された属性の条件を満たしているかを自動的にチェックする手段と、
画面表示時にテキストボックスの初期値の設定、ドロップダウンリストの一覧表示をサーバに設定された画面表示用の情報に基づいて行う手段と、
サーバの定義ファイルに設定された検索条件の情報に基づき、検索画面に検索条件を表示する手段と、
上記各手段により、利用者が参照可能なマスタデータをメンテナンスする手段とを備えることを特徴とする。
また、利用者によるマスタデータの追加、削除、更新、検索の各処理の前後にプログラミングできる領域を確保し、この領域に業務仕様を埋め込み、柔軟に業務処理を反映する手段を設けたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のマスタデータメンテナンスツールによれば、次のような効果がある。
マスタデータのメンテナンスにあたって、マスタデータメンテナンス操作の管理と、利用者に対し理解しやすい表示方法の実現と、様々な検索手法を有し、かつデータの更新機能を持つマスタデータメンテナンスプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本発明の一実形態を示すシステム構成図である。
この実施形態のマスタデータメンテナンスツールは、ユーザ端末装置1a,1b,1nとオペレータ(利用者)からの要求を処理するWebサーバ2で構成され、ユーザ端末装置1a,1b,1nとWebサーバ2はインターネット5を通じてWebサーバ2と接続されている。
マスタデータメンテナンスツールを使用するためにWebサーバ2において、データベース接続の設定、サーバソフトウェアの設定を予め行う。
また、マスタデータメンテナンスツールでサポートしている機能に必要な情報をデータベース4で保持し、その管理をデータベースサーバ3で行っている。
なお、データベース4は稼動している現行の業務システム等のデータベース上に構築することが可能である。
【0009】
データベース4には、図2で示すようなオペレータ管理テーブル22が定義され、オペレータの基本情報を保持する。
具体的にはオペレータID、パスワード、オペレータ名、権限グループ名を保有する。権限グループの詳細については図7の(6)にて記述する。
【0010】
図3は、マスタデータメンテナンスツールにおける画面遷移と処理フローを示すフローチャートである。
オペレータはWebサーバ2に接続し、Webサーバ2はログイン画面を返信する(ステップ301)。
オペレータはオペレータIDとパスワードを入力し、Webサーバ2はその値を取得する。Webサーバ2その値を基に、マスタデータメンテナンスツールの使用可否を選定する(ステップ302)。
ステップ302の認証の結果が成功の場合、マスタ選択画面を表示し(ステップ303)、認証結果が失敗した場合は再度ログイン画面を表示する。
【0011】
マスタ選択画面41の画面イメージを図4に示す。
マスタ選択画面41にはオペレータが操作可能なマスタの一覧が表示される。
オペレータはそのマスタ一覧からメンテナンスしたいマスタを選択する(ステップ304)。また、検索条件について「指定する」「指定しない」の選択により、次の遷移先の画面がマスタ検索条件設定画面またはマスタ一覧画面となる(ステップ305)。
検索条件を指定し、マスタを選択した際、次の画面として、図5に示すマスタ検索条件設定画面51が表示される(ステップ306)。
マスタ検索条件設定画面51には、顧客マスタに定義されているフィールドの一覧が表示され、それぞれのフィールドに対し検索条件を入力することで、抽出されるレコードを絞込むことができる(ステップ307)。
【0012】
一方、マスタ選択画面41において検索条件を指定せずマスタを選択した場合、次の画面として図6に示すような顧客マスタ一覧画面61が表示される(ステップ308)。
顧客マスタ一覧画面61では、顧客マスタテーブルに存在するレコード、またはステップ307で入力した検索条件に合致したレコードが一覧表示される(ステップ308)。
一覧表示されているレコードデータについて、更新または削除処理を行う場合、オペレータはそのレコードに対する選択チェックボックスを選択し、それぞれの処理を実行させる(ステップ309)。
また、マスタにレコードを追加したい場合は、マスタ一覧画面の左下の追加ボタンを押下する。すると、図7の画面イメージで示すような顧客マスタ追加画面が表示される(ステップ310)。
オペレータは追加する情報を各フィールドに入力し、登録ボタンを押下することで、入力した情報をマスタに追加することができる(ステップ311)。
【0013】
図8は、マスタデータの定義を記述した設定ファイル81の例である。このマスタ定義ファイルはシステム構成図のWebサーバ2で使用される。
<masters>内には複数の<master>が存在し、<master>はそれぞれのマスタの情報を記述している。
マスタ定義ファイルに宣言されている<master>に対応して、マスタ選択画面に一覧表示される。マスタ定義ファイルに設定する項目を列挙する。
(1)マスタ
マスタデータメンテナンスツール内においてマスタを識別するための、マスタ識別子。
(2)マスタテーブル
接続したデータベースで定義されているテーブル名。この項目で設定している値を基にテーブルに接続する。
(3)マスタ表示名
マスタが画面に表示される際のマスタ名。この値を変更することで、画面上の表示名を変更することができる。
(4)TSVファイル
マスタのフィールド情報を設定するマスタフィールド定義ファイル名。詳細は図8の説明時に記述する。
(5)カスタマイズライブラリ
Java(サンマイクロシステムズ商標登録)のクラスファイル名。このクラスには、下記8つのタイミングで実行される処理メソッドが定義されており、それぞれのメソッドの中に業務仕様をプログラミングすることで、即時に業務処理を追加することができる。
T1.マスタに対しレコードを追加する前
T2.マスタに対しレコードを追加した後
T3.マスタ内のレコードを削除する前
T4.マスタ内のレコードを削除した後
T5.マスタ内のレコードを更新する前
T6.マスタ内のレコードを更新した後
T7.マスタ内のレコードを検索する前
T8.マスタ内のレコードを検索した後
これにより、例えばT2のレコードを追加した後に呼ばれるメソッド内に、カウンタテーブルのカウンタを“1”増加させる処理を追加した場合、オペレータがデータを追加するごとにカウンタを“1”増加させたり、T7のレコードを検索する前に呼ばれるメソッド内に、検索画面で入力された商品コードのフォーマットチェックを行う、といった仕様を容易に実装することができる。
【0014】
(6)権限グループ名
マスタに対するメンテナンス可能な権限グループ名。マスタデータメンテナンスツールを使用するオペレータには権限グループが割り当てられ、それぞれのマスタテーブルのマスタ定義には、参照、追加、更新、削除の4つの処理の実施可否が権限グループとして設定されている。これにより、例えば権限グループaのオペレータが、権限グループbのみ削除を許可しているマスタに対しレコードの削除を試みた場合、利用権限エラーが発生する仕組みとなっている。
【0015】
図9は、マスタの各フィールドの定義を記述した設定ファイル91の例である。
このマスタフィールド定義ファイルはシステム構成図のWebサーバ2で使用される。
<columns>内には複数の<column>が存在し、<column>はそれぞれのフィールドの情報を記述している。マスタフィールド定義ファイルで設定される項目について列挙する。
(1)表示名
フィールドが画面に表示される際のフィールド名。この値を変更することで、画面上の表示名を変更することができる。
(2)リンク先
マスタテーブルで定義されているフィールドのフィールドID。ここで設定された値を基にテーブルのフィールドにアクセスする。
(3)キー設定フラグ
マスタテーブルで定義されているフィールドのキー情報。設定例を下記に示す。
0:指定なし
1:キー項目
2:キー項目および1件表示用アンカー設定
(4)項目データ型
マスタテーブルで定義されているフィールドのデータ型。設定例を下記に示す。
char:文字型
int:整数値型
float:浮動小数型
date:日付型
datetime:日時型
(5)NULL許容フラグ
マスタテーブルで定義されているフィールドのNULL許容の情報。設定例を下記に示す。
Y:NULL可
N:NULL不可
(6)最小値
フィールドの最小値を指定する。ここで設定した値は、下記画面における入力チェックの際の境界値として使用される。
マスタ検索条件設定画面:
オペレータが入力した検索条件について、この項目で設定されている値を下回った場合、エラーとして判定する。
レコード追加画面:
オペレータが追加した入力値について、この項目で設定されている値を下回った場合、エラーとして判定する。
マスタ一覧画面:
オペレータが更新した入力値について、この項目で設定されている値を下回った場合、エラーとして判定する。
(7)最大値
フィールドの最大値を指定する。ここで指定した値は、(6)と同様に入力チェックの境界値として使用される。
(8)過去日
フィールドの型がDate型の場合、許容する日付の過去日を指定する。ここで指定した値は、(6)と同様に、オペレータの入力値がこの項目で設定されている日付より過去であった場合、エラーとして判定する。
(9)未来日
フィールドの型がDate型の場合、許容する日付の未来日を指定する。ここで指定した値は、(6)と同様に、オペレータの入力値がこの項目で設定されている日付より未来であった場合、エラーとして判定する。
(10)全角半角区分
フィールドに対する全角または半角の区分を指定する。ここで指定した値は、(6)と同様に入力チェックの判定値として使用される。
(11)文字種別区分
フィールドに対する文字種別の区分を指定する。ここで指定した値は、(6)と同様に入力チェックの判定値として使用される。例として下記設定案を示す。
1:英字
2:数字
3:ひらがな及び漢字
4:カタカナ
5:その他
(12)入力可能文字
フィールドに対する入力可能文字を指定する。ここで指定した値は、(6)と同様に入力チェックの判定値として使用される。
(13)入力禁則文字
フィールドに対する入力禁則文字を指定する。ここで指定した値は、(6)と同様に入力チェックの判定値として使用される。
(14)検索条件
マスタ検索条件設定画面における検索条件を設定する。例として下記設定案を示す。
1:条件なし
2:完全一致
3:部分一致
4:範囲指定
5:指定値より大
6:指定値より小
(15)検索開始値
マスタ検索条件設定画面における検索条件の下位初期値を指定する。
(16)検索終了値
マスタ検索条件設定画面における検索条件の上位初期値を指定する。
(17)入力フィールドフラグ
マスタ検索条件設定画面、マスタ一覧画面、レコード追加画面における入力フィールドの型を設定する。例として下記設定案を示す
0:インプットテキスト
1:テキストエリア
2:ドロップダウンリスト
(18)横幅/文字数
マスタ検索条件設定画面、マスタ一覧画面、レコード追加画面における入力フィールドの入力可能文字数を指定する。
(19)高さ/行数
前記(17)の設定値が「1」の場合、テキストエリアの行数を指定する。
(20)一覧データ
前記(17)の設定値が「2」の場合、ドロップダウンリストの一覧データの内容を設定する。例えば顧客マスタの性別フィールドについて、0が男性、1が女性を表す場合、「0,男,1,女」と設定することで、画面上ではドロップダウンリストの一覧にデータが表示される。
(21)デフォルト値
マスタ検索条件設定画面、マスタ一覧画面、レコード追加画面の項目入力時の初期値。
(22)権限グループ名
マスタテーブルで定義されているフィールドに対するメンテナンスできる権限グループ名。マスタフィールド定義には参照、追加、更新の3つの処理の実施可否が権限グループとして設定されている。これにより、例えば追加の権限グループにオペレータの権限グループが設定されていない場合、レコード追加画面のこのフィールドは入力不可で表示され、(21)のデフォルト値のみ追加可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態例を示すシステム構成図である。
【図2】オペレータ管理テーブルに格納されているデータの構成図である。
【図3】本発明の一実施の形態例を示す画面遷移及び処理フロー図である。
【図4】マスタ選択画面の一例を示す図である。
【図5】マスタ検索条件設定画面の一例を示す図である。
【図6】マスタ一覧画面の一例を示す図である。
【図7】レコード追加画面の一例を示す図である。
【図8】マスタ定義ファイルの一例を示す図である。
【図9】マスタフィールド定義ファイルの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0017】
1a〜1n ユーザ端末装置
2 Webサーバ
3 データベースサーバ
4 データベース
5 インターネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者がマスタデータのメンテナンスを行うに際し、当該利用者の権限グループとサーバ側の定義ファイルに予め設定されたアクセス権限の情報とを比較し、利用者が参照可能なマスタデータのみを画面に表示する手段と、
マスタデータの追加、削除、更新、検索の処理を利用者によって制限する手段と、
マスタデータの個々のフィールドに対し、追加、更新、検索の各画面で入力された値が、サーバの定義ファイルに予め設定された属性の条件を満たしているかを自動的にチェックする手段と、
画面表示時にテキストボックスの初期値の設定、ドロップダウンリストの一覧表示をサーバに設定された画面表示用の情報に基づいて行う手段と、
サーバの定義ファイルに設定された検索条件の情報に基づき、検索画面に検索条件を表示する手段と、
上記各手段により、利用者が参照可能なマスタデータをメンテナンスする手段とを備えることを特徴とするマスタデータメンテナンスツール。
【請求項2】
利用者によるマスタデータの追加、削除、更新、検索の各処理の前後にプログラミングできる領域を確保し、この領域に業務仕様を埋め込み、柔軟に業務処理を反映する手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のマスタデータメンテナンスツール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−3500(P2009−3500A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160968(P2007−160968)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】