説明

マッサージ機能及び形状調整を有する車両シート

本発明は、シートクッション(2)及びシートバック(3)に、それぞれ、異なるマッサージ効果を得るためのコントローラ(5)によって加圧かつ制御できるいくつかの要素(4)が設けられた、自動車のための車両シートに関する。加圧できる要素(4)はクッション状の要素であり、シート形状の表面と比べて小さく、実質的に点状にシート形状を変えるため、ライン(6)を介してそれぞれ別々に制御できるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッサージ機能を行うための設備が装備された、自動車の、特に乗用車又はトラックの車両シートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車両シートは、クッション要素及び各バネシステムによって予め定められたシート形状が設けられた、少なくとも1つのシートクッションとシートバックとを備える。この種の車両シートとして構築された物は、従来、クッションパッドにより、次いでこれに対応するシートカバーにより覆われた各バネ下設備を具備する。この場合、詰め物及びシートカバーの綴じた継目により、自動車の運転者のために、長い間座っている場合にも疲労の症状をできる限り少なくし、かつ運転者の特定の身体構造にできる限りうまく適応されたシート形状を設けるようにされる。このため、車両シートに、コントローラを介してかつ圧力発生装置により、シート形状を特定の運転者に最適な形で適応できるようにした、1つ以上の空気圧要素を設けることが知られている。これらの比較的大きい空気圧要素の欠点は、シート形状に対する作用が、背もたれ、及びシートクッションの、それぞれ、比較的厚肉のクッションパッドのために制限されることである。
【0003】
さらに、車両シートの場合、特にトラックの車両シートの場合には、シート内に空気圧要素を設けることが知られており、この要素を制御装置を介して加圧し、空気圧要素を介して種々なマッサージ機能を実現することができる。このような手段により、小さな粒から構成された車両シートのマッサージパッドと同様の方法で、周期的に変化するシート形状が作られ、車両シートに長時間座っていることからくる疲労の症状を一定の方法で防止することができる。この場合の欠点は、空気圧要素が、一般に、空気圧で、したがって圧力に関連した方法で相互に接続されるので、小さな効果しか発揮しないこと、及び/又は車両シートのクッションパッドの下で、大きい又はやや大きい圧力が発生した場合にも、また一般にこのクッションパッドの上の固定位置に綴じられたカバーのために、マッサージ効果が比較的弱く、運転者の身体に対する圧力の効果的な伝達が回避されることである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに対して、本発明は、車両シートに、構造的にできる限り簡単な方法で実現でき、かつ所望のシート形状について、できる限り効果的かつ様々なシートの調整が可能となる、形状調整及びマッサージ機能を設けることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、請求項1の特徴を有する車両シートによって達成される。本発明の好ましい発展形態及び改良形態が、従属請求項の主題である。
【0006】
本発明による車両シートは、それぞれ、シート形状に作用を及ぼすための複数の加圧要素が設けられたシートクッション及びシートバックと、これらの要素の一定の加圧のためのコントローラとを備えており、このコントローラにより、異なるマッサージ効果を得ることができる。本発明による車両シートは、加圧要素が、シート形状の表面に対して小さく、かつそれぞれ、実質的に点状にシート形状を変えるため、ラインを介して別々に作動できるクッション状の要素であることを特徴とする。したがって、まず最初に、実質的に点状に圧力が発生することにより、シート形状が一定の方法で変化できるようになるので、効果的なマッサージ機能が加圧要素によって実現できる。加圧要素が比較的小さいクッション状の要素であることにより、必要な体積が小さく、したがって反応時間が短い。小さい追加空間容積が必要となるだけであるので、マッサージ機能を既存シートに適合させることができる。個々の要素に又は複数の加圧要素を組み合わせたものに、点状に圧力が発生するだけで、シート形状を一定に変化させるのに、及びマッサージ機能を効果的に実現させるのに、全く十分である。ほんの小さい体積の加圧要素があるだけであるが、車両のシートバック及びシート内で、点の形で圧力を増加させることにより、ライニング及び/又は詰め物及びカバーを具備したシート形状により、またこのシート形状と合わせて、一定のかつ効果的な方法でシート形状を変えることができる。
【0007】
本発明の1つの好ましい改良形態によれば、車両シートの加圧要素及びコントローラにより、所望の固定シート形状が設定できる。この予め設定された固定シート形状、即ち個々の圧力要素の異なる加圧によって定義されたシート形状に基づいて、たとえば胸椎領域などの領域全体の、個々の圧力要素又は複数の加圧要素を周期的に変えることにより、又はたとえばこれらを組み合わせて作動させることにより、簡単かつ効果的な方法で、マッサージ機能が実現できることが好ましく、運転者専用に適応されたシート形状は、後に容易に元に戻る。したがって、複数のユーザのために同様に予め設定されたシート位置は、近頃は時折自動車内で既に実現されているように、一定の方法で、即ち特定の整形外科及び/又は快適性に関連する条件に従って、異なる車両ユーザに車両シートを適応させることができる。本発明によれば、シート形状は、1つ以上のマッサージ動作が行われた後、常に、再び回復されるか又は自動的に元に戻ることができる。このことは、それぞれ、ほんの小さい体積しか有さず、したがって反応時間の短い、個々の要素の加圧によって行われることが好ましい。組み合わせられたマッサージ機能を有する本発明による形状調整は、小さい空間しか占めず、車両シートの個々の要素、特にシートの、バネ下設備、詰め物、及びカバーの間に、簡単に適合させることができる。
【0008】
本発明のさらに好ましい改良形態によれば、加圧要素は、車両シートの詰め物とカバーとの間に配置される。したがって、加圧要素による実質的に点状に圧力を発生させる効果は、さらに増加することができる。この場合、実質的に点状に、とは、個々の加圧要素により別々に動作可能な、シートの又は車両シートのシートバックの表面全体に対して比較的小さい領域、具体的には5〜10cm程度の領域という意味であると理解されたい。特定の要素の数及び配置は、実質的にシート形状の表面全体に分散されることが好ましいが、個々の一定の領域に限定されることもある。
【0009】
本発明の1つの好ましい改良形態によれば、加圧要素は、シート状の支持挿入物に固定され、車両シートのライニングの下に配置され、このライニングは、シートのカバーによって覆われる。このことにより、本発明によるシートの組立てが容易になる。何故なら、個々の要素及びそれらの接続ラインが支持面に固定されて、車両シートの生産中、車両シートがすべったり移動したりすることが回避されるからである。したがって、特定の圧力要素の位置が正確に確立されるので、特に、シート形状の領域内にある個々の場所の一定のマッサージでさえも可能となる。
【0010】
本発明のさらに好ましい改良形態によれば、加圧要素の形状は、シート形状内に、実質的に点状の圧力領域が作られ得るような形状である。このことにより、1つの要素を動作させることにより、シートクッションの又は背もたれの、又は少なくともその大部分の領域全体が、同様に動くことが回避される。点状に加圧することは、シートによって実現できるマッサージ機能の多様性と同様に、より様々な形でシート形状を予め設定できるという特定の利点を有する。点状に圧力領域を発生させることに実質的に適応される加圧要素の形状は、たとえば、側方に境界の継目を有する楕円形又は円形の形状であるので、要素が加圧された場合には、実質的にシート形状の表面に対して横方向にのみ拡大される。点状に圧力が発生できるような、圧力要素の形状の代替例として、シート状の対向する両側壁によって接続された蛇腹状の側部領域を設けることがある。ここでもまた、実質的にシート面の及び背もたれ面の表面方向に、圧力が発生し、これに関連して要素が両側部に拡張することもなく、したがって、シート状の(点状でない)圧力が発生する。勿論、この代わりに、本発明のこの態様に従って、マッサージ動作に関して、実質的に点状の加圧、即ち一定かつ効果的な加圧、及び所望のシート形状の設定が実現され得る限り、他の任意の形状の加圧要素からなるものを使用することもできる。
【0011】
本発明の別の好ましい改良形態によれば、加圧要素は、それぞれ別個のラインによって動作することができ、このラインは、支持挿入物の表面に配置され、固定され、制御要素の方向にまとめて1つにされる。このような配置により、簡単な、シート状の支持挿入物をシートの層に適合させ、固定させれば良いので、車両シートの生産中、圧力要素の及びそれらのラインの設置が簡単なものとなる。その上、制御装置の又は圧力発生装置の接続ラインは、このため、できる限り短いものとなり、加圧された時の、これに対応する反応時間が、これに対応して短くなる。さらに、支持挿入物の表面に固定することは、必要な空間容積が、垂直方向で最小限まで減少するという利点を有する。
【0012】
本発明のさらに好ましい改良形態によれば、加圧要素は、空気圧又は電気空圧により加圧できる。代替形態として、流体による加圧がなされることもあるが、漏れの問題を考えると、空気を使用することが好ましい。
【0013】
本発明のさらに好ましい改良形態によれば、コントローラは、予め設定され、かつ個々に設定可能な複数のマッサージ機能を行うよう適応される。マッサージ機能は、シート形状の領域内の特定の圧力要素を組み合わせて、周期的に変える及び/又は個々に作動させることによって実現される。特に、このことにより、たとえば、身体の個々の領域の一定のマッサージを含む、反射区のマッサージなどの、既知の種類のマッサージを実施することができる。
【0014】
本発明の別の好ましい改良形態によれば、シート形状の、複数の予め選択された設定は、コントローラによって格納できる。このことにより、長い間運転している場合に重要な、シート形状の一定の適応を、異なる車両ユーザのために、特にトラックの場合に、それぞれの場合において格納することができる。シート位置(シートの高さ、背もたれの勾配、ペダルからの距離など)を予め設定するのと同様の方法で、特定のシート形状も、特に適応でき、この適応形態において、格納できることが好ましい。特定の運転者がしなければならないことは、自分の体格のために最適化されて予め設定されたものを選択するだけであり、このことは、加圧要素を介してコントローラによって実現される。
【0015】
本発明のさらなる利点、好ましい改良形態、及び詳細が、図面に例示した例示的実施形態を参照しながら、本発明についてより詳細に記述し、説明する、以下の記述より見出され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
マッサージ機能及び形状調整を組み合わせた、本発明による車両シートの第1の例示的実施形態が、図1の、斜めから見た図に概略的に例示されている。知られているように、車両シート1は、関節式に相互に接続されたシートクッション2と背もたれ3とを備える。車両シート1には、そのカバー8の下に、各接続ライン6を介して、圧力発生装置(図示せず)による空気圧で動作できる、複数の加圧要素又は空気圧要素4が設けられる。空気圧要素4は、比較的小さい体積又は表面の拡大を有することが好ましく、これにより、実質的に点状に圧力が発生することが可能となる。ここに示されている例示的実施形態においては、空気圧要素4の形状は、実質的に楕円形又は円形であり、小さい圧力パッド又は圧力クッションが、車両シート1のシート形状の選択された領域内に形成される。代替形態として、シート形状全体に、例示されている空気圧要素4が設けられることがある。空気圧要素4は、シート状の支持挿入物9に適合され、固締されるので、シート形状の表面内のそれらの各位置が、正確に確立される。その上、このことにより、組立てが容易になる。空気圧要素4の作動は、シートバック3の領域内に配置されたコントローラ5を介して、それ自体で、組合せて、又は順次に行われる。それぞれの空気圧要素4には、それぞれ別個の接続ライン6を介して、コントローラにより、必要な空気圧が別々に提供される。したがって、一定のシート形状の実現と全く同様のマッサージ機能の実現も、媒体又は圧縮空気内の比較的小さい体積、即ち比較的低い圧力で、有効かつ効果的な方法で実現できる。
【0017】
図2は、図1の本発明の例示的実施形態による車両シート1を概略的に示す側方断面図である。車両シートの構築物及び構造は、ここから見出され得る。即ち、車両シート1のシートクッション2の及びシートバック3の構築物は、それぞれ、特に、バネ下設備11と、詰め物7と、ライニング10と、これらの要素を覆うカバー8とを具備する。この例示的実施形態においては、マッサージ機能及びシートの形状調整のための空気圧要素の、本発明による挿入物は、詰め物7とライニング10との間に配置される。比較的小さい、別個の空気圧要素4は、車両シート1のシート形状の表面の近傍に配置されて、低い圧力及び小さい体積で、シート面及び背もたれ面の特定の領域又は点の調整が可能となる。コントローラ5は、背もたれ3の領域内に配置されることが好ましく、したがって、追加の空間容積は不要である。
【0018】
図3は、本発明による車両シートの例示的実施形態を、図2と同様の図で例示した図であり、2つの選択された空気圧要素4が、ここでは加圧状態で例示されている。2つの加圧された空気圧要素4は、それぞれ、予め定められた点で局部的な膨らみを作るが、実質的に、車両シートの形状全体は変化しない。つまり、2つの要素4が加圧された後、再び元のシート形状になることが確実である。同様に、図3に例示されている状況は、ある運転者の身体に対して最適な整形外科的な適応形態又は他の種類の適応形態のための、腰椎領域内及び前部シート面領域内にそれぞれの高さを有する、この運転者の予め選択された一定のシート形状であり得る。
【0019】
図4は、本発明による空気圧要素又は圧力要素4の形状の変形形態を例示する図である。図4に例示されている形状のすべてに共通する特徴は、この形状が、空気圧要素による実質的に点状の加圧が可能となる形状であることである。その上、要素4は、その体積が比較的小さく、シート形状の表面全体に対して、その表面の拡大も小さい。それぞれの空気圧要素4には、各ライン接続6が設けられ、これを介して圧力が供給され、また再び圧力を取り去ることができる。点状に圧力を発生できる例として例示されている形状の変形形態は、以下の形状である。即ち、楕円形、眼の形、側方がくびれた蛇腹型の形、2室形、出っ張り状の膨らみを有する長円形、及び複数の出っ張りが形成された長円形である。勿論、少ない空間しか必要とせずに、実質的に点状に圧力を発生させることが可能である限り、マッサージ及び車両シートのシート形状の調整のための本発明による配置について、他の形状及び変形形態が好適であることもある。
【0020】
図5は、個々の空気圧要素4(例示せず)に対する各ライン接続6の設計及び配置の、2つの変形形態を示す図である。例示されている第1の変形形態のライン6は、支持挿入物9上に配置され、固締された円筒形の管路であり、コントローラ又は圧力発生装置(例示せず)の方向に、まとめて1つにされている。支持挿入物9上に固定することは、組立てがより容易になるという利点を有し、支持挿入物9の表面上に固締することは、垂直方向に少ない空間容積しか必要としないという利点を有する。代替形態として、例示されている第2の変形形態においては、複数の水路状の、断面が矩形のライン6が支持挿入物9上に設けられ、たとえば複数の薄膜層を溶接することによって実現できる。
【0021】
記述、特許請求の範囲、及び図面に例示されている特徴のすべてが、それ自体でも、及び所望の任意の組合せにおいても、本発明に該当し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による空気圧要素を備えた車両シートの第1の例示的実施形態を示す斜め概略平面図。
【図2】圧力要素が緩んだ状態の、図1の例示的実施形態の車両シートを示す概略切欠側面図。
【図3】加圧状態の2つの空気圧要素を備えた、図2の車両シートを示す図。
【図4】本発明による空気圧要素の形状の変形形態を示す図。
【図5】本発明による空気圧要素のための圧力ラインの形状及び配置の詳細の変形形態を示す図。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1の前文に記載の車両シートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車両シートは、クッション要素及び各バネシステムによって予め定められたシート形状が設けられた、少なくとも1つのシートクッションとシートバックとを備える。この種の車両シートとして構築された物は、従来、クッションパッドにより、次いでこれに対応するシートカバーにより覆われた各バネ下設備を具備する。この場合、詰め物及びシートカバーの綴じた継目により、自動車の運転者のために、長い間座っている場合にも疲労の症状をできる限り少なくし、かつ運転者の特定の身体構造にできる限りうまく適応されたシート形状を設けるようにされる。このため、車両シートに、コントローラを介してかつ圧力発生装置により、シート形状を特定の運転者に最適な形で適応できるようにした、1つ以上の空気圧要素を設けることが知られている。これらの比較的大きい空気圧要素の欠点は、シート形状に対する作用が、背もたれ、及びシートクッションの、それぞれ、比較的厚肉のクッションパッドのために制限されることである。
【0003】
さらに、車両シートの場合、特にトラックの車両シートの場合には、シート内に空気圧要素を設けることが知られており、この要素を制御装置を介して加圧し、空気圧要素を介して種々なマッサージ機能を実現することができる。このような手段により、小さな粒から構成された車両シートのマッサージパッドと同様の方法で、周期的に変化するシート形状が作られ、車両シートに長時間座っていることからくる疲労の症状を一定の方法で防止することができる。この場合の欠点は、空気圧要素が、一般に、空気圧で、したがって圧力に関連した方法で相互に接続されるので、小さな効果しか発揮しないこと、及び/又は車両シートのクッションパッドの下で、大きい又はやや大きい圧力が発生した場合にも、また一般にこのクッションパッドの上の固定位置に綴じられたカバーのために、マッサージ効果が比較的弱く、運転者の身体に対する圧力の効果的な伝達が回避されることである。特許文献1に、車両シート内のシート形状の表面に対して小さい、複数のクッション状のエアクッションの統合が既に開示されており、このエアクッションは、シート形状に作用を及ぼすためのコントローラにより一定の方法で加圧できるものであり、この結果、異なるマッサージ効果が得られる。この場合、シートクッション及びシートバック内のエアクッションの正確な配置については説明されていない。特許文献2にも、同様に、数多くの小さいエアクッションがクッション内に埋め込まれ、かつシート形状を変えるために、それぞれ別個のラインを介して作動できる車両シートが開示されている。最後に、特許文献3及び特許文献4にも、同様に、小さいエアクッションがクッション内に配置された車両シートが開示されている。
【0004】
【特許文献1】独国特許発明第4331663C1号明細書
【特許文献2】特開昭60154925号公報
【特許文献3】米国特許第4655505号明細書
【特許文献4】米国特許第5155685号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに対して、本発明は、加圧要素が、所望のシート形状についてできる限り効果的にシート内に配置された、冒頭で説明した種類の車両シートを提供するという目的を有するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、請求項1の特徴を有する車両シートによって達成される。本発明の好ましい発展形態及び改良形態が、従属請求項の主題である。
【0007】
車両シートは、それぞれ、シート形状に作用を及ぼすための複数の加圧要素が設けられたシートクッション及びシートバックと、これらの要素の一定の加圧のためのコントローラとを備えており、このコントローラにより、異なるマッサージ効果を得ることができる。加圧要素は、シート形状の表面に対して小さく、かつそれぞれ、実質的に点状にシート形状を変えるため、ラインを介して別々に作動できるクッション状の要素である。したがって、まず最初に、実質的に点状に圧力が発生することにより、シート形状が一定の方法で変化できるようになるので、効果的なマッサージ機能が加圧要素によって実現できる。加圧要素が比較的小さいクッション状の要素であることにより、必要な体積が小さく、したがって反応時間が短い。小さい追加空間容積が必要となるだけであるので、マッサージ機能を既存シートに適合させることができる。個々の要素に又は複数の加圧要素を組み合わせたものに、点状に圧力が発生するだけで、シート形状を一定に変化させるのに、及びマッサージ機能を効果的に実現させるのに、全く十分である。ほんの小さい体積の加圧要素があるだけであるが、車両のシートバック及びシート内で、点の形で圧力を増加させることにより、ライニング及び/又は詰め物及びカバーを具備したシート形状により、またこのシート形状と合わせて、一定のかつ効果的な方法でシート形状を変えることができる。この場合、加圧要素は、車両シートの詰め物とカバーとの間に配置される。したがって、加圧要素による実質的に点状に圧力を発生させる効果は、さらに増加することができる。この場合、実質的に点状に、とは、個々の加圧要素により別々に動作可能な、シートの又は車両シートのシートバックの表面全体に対して比較的小さい領域、具体的には5〜10cm程度の領域という意味であると理解されたい。特定の要素の数及び配置は、実質的にシート形状の表面全体に分散されることが好ましいが、個々の一定の領域に限定されることもある。
【0008】
本発明の1つの好ましい改良形態によれば、車両シートの加圧要素及びコントローラにより、所望の固定シート形状が設定できる。この予め設定された固定シート形状、即ち個々の圧力要素の異なる加圧によって定義されたシート形状に基づいて、たとえば胸椎領域などの領域全体の、個々の圧力要素又は複数の加圧要素を周期的に変えることにより、又はたとえばこれらを組み合わせて作動させることにより、簡単かつ効果的な方法で、マッサージ機能が実現できることが好ましく、運転者専用に適応されたシート形状は、後に容易に元に戻る。したがって、複数のユーザのために同様に予め設定されたシート位置は、近頃は時折自動車内で既に実現されているように、一定の方法で、即ち特定の整形外科及び/又は快適性に関連する条件に従って、異なる車両ユーザに車両シートを適応させることができる。本発明によれば、シート形状は、1つ以上のマッサージ動作が行われた後、常に、再び回復されるか又は自動的に元に戻ることができる。このことは、それぞれ、ほんの小さい体積しか有さず、したがって反応時間の短い、個々の要素の加圧によって行われることが好ましい。組み合わせられたマッサージ機能を有する本発明による形状調整は、小さい空間しか占めず、車両シートの個々の要素、特にシートの、バネ下設備、詰め物、及びカバーの間に、簡単に適合させることができる。
【0009】
本発明の1つの好ましい改良形態によれば、加圧要素は、シート状の支持挿入物に固定され、車両シートのライニングの下に配置され、このライニングは、シートのカバーによって覆われる。このことにより、本発明によるシートの組立てが容易になる。何故なら、個々の要素及びそれらの接続ラインが支持面に固定されて、車両シートの生産中、車両シートがすべったり移動したりすることが回避されるからである。したがって、特定の圧力要素の位置が正確に確立されるので、特に、シート形状の領域内にある個々の場所の一定のマッサージでさえも可能となる。
【0010】
本発明のさらに好ましい改良形態によれば、加圧要素の形状は、シート形状内に、実質的に点状の圧力領域が作られ得るような形状である。このことにより、1つの要素を動作させることにより、シートクッションの又は背もたれの、又は少なくともその大部分の領域全体が、同様に動くことが回避される。点状に加圧することは、シートによって実現できるマッサージ機能の多様性と同様に、より様々な形でシート形状を予め設定できるという特定の利点を有する。点状に圧力領域を発生させることに実質的に適応される加圧要素の形状は、たとえば、側方に境界の継目を有する楕円形又は円形の形状であるので、要素が加圧された場合には、実質的にシート形状の表面に対して横方向にのみ拡大される。点状に圧力が発生できるような、圧力要素の形状の代替例として、シート状の対向する両側壁によって接続された蛇腹状の側部領域を設けることがある。ここでもまた、実質的にシート面の及び背もたれ面の表面方向に、圧力が発生し、これに関連して要素が両側部に拡張することもなく、したがって、シート状の(点状でない)圧力が発生する。勿論、この代わりに、本発明のこの態様に従って、マッサージ動作に関して、実質的に点状の加圧、即ち一定かつ効果的な加圧、及び所望のシート形状の設定が実現され得る限り、他の任意の形状の加圧要素からなるものを使用することもできる。
【0011】
本発明の別の好ましい改良形態によれば、加圧要素は、それぞれ別個のラインによって動作することができ、このラインは、支持挿入物の表面に配置され、固定され、制御要素の方向にまとめて1つにされる。このような配置により、簡単な、シート状の支持挿入物をシートの層に適合させ、固定させれば良いので、車両シートの生産中、圧力要素の及びそれらのラインの設置が簡単なものとなる。その上、制御装置の又は圧力発生装置の接続ラインは、このため、できる限り短いものとなり、加圧された時の、これに対応する反応時間が、これに対応して短くなる。さらに、支持挿入物の表面に固定することは、必要な空間容積が、垂直方向で最小限まで減少するという利点を有する。
【0012】
本発明のさらに好ましい改良形態によれば、加圧要素は、空気圧又は電気空圧により加圧できる。代替形態として、流体による加圧がなされることもあるが、漏れの問題を考えると、空気を使用することが好ましい。
【0013】
本発明のさらに好ましい改良形態によれば、コントローラは、予め設定され、かつ個々に設定可能な複数のマッサージ機能を行うよう適応される。マッサージ機能は、シート形状の領域内の特定の圧力要素を組み合わせて、周期的に変える及び/又は個々に作動させることによって実現される。特に、このことにより、たとえば、身体の個々の領域の一定のマッサージを含む、反射区のマッサージなどの、既知の種類のマッサージを実施することができる。
【0014】
本発明の別の好ましい改良形態によれば、シート形状の、複数の予め選択された設定は、コントローラによって格納できる。このことにより、長い間運転している場合に重要な、シート形状の一定の適応を、異なる車両ユーザのために、特にトラックの場合に、それぞれの場合において格納することができる。シート位置(シートの高さ、背もたれの勾配、ペダルからの距離など)を予め設定するのと同様の方法で、特定のシート形状も、特に適応でき、この適応形態において、格納できることが好ましい。特定の運転者がしなければならないことは、自分の体格のために最適化されて予め設定されたものを選択するだけであり、このことは、加圧要素を介してコントローラによって実現される。
【0015】
本発明のさらなる利点、好ましい改良形態、及び詳細が、図面に例示した例示的実施形態を参照しながら、本発明についてより詳細に記述し、説明する、以下の記述より見出され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
マッサージ機能及び形状調整を組み合わせた、本発明による車両シートの第1の例示的実施形態が、図1の、斜めから見た図に概略的に例示されている。知られているように、車両シート1は、関節式に相互に接続されたシートクッション2と背もたれ3とを備える。車両シート1には、そのカバー8の下に、各接続ライン6を介して、圧力発生装置(図示せず)による空気圧で動作できる、複数の加圧要素又は空気圧要素4が設けられる。空気圧要素4は、比較的小さい体積又は表面の拡大を有することが好ましく、これにより、実質的に点状に圧力が発生することが可能となる。ここに示されている例示的実施形態においては、空気圧要素4の形状は、実質的に楕円形又は円形であり、小さい圧力パッド又は圧力クッションが、車両シート1のシート形状の選択された領域内に形成される。代替形態として、シート形状全体に、例示されている空気圧要素4が設けられることがある。空気圧要素4は、シート状の支持挿入物9に適合され、固締されるので、シート形状の表面内のそれらの各位置が、正確に確立される。その上、このことにより、組立てが容易になる。空気圧要素4の作動は、シートバック3の領域内に配置されたコントローラ5を介して、それ自体で、組合せて、又は順次に行われる。それぞれの空気圧要素4には、それぞれ別個の接続ライン6を介して、コントローラにより、必要な空気圧が別々に提供される。したがって、一定のシート形状の実現と全く同様のマッサージ機能の実現も、媒体又は圧縮空気内の比較的小さい体積、即ち比較的低い圧力で、有効かつ効果的な方法で実現できる。
【0017】
図2は、図1の本発明の例示的実施形態による車両シート1を概略的に示す側方断面図である。車両シートの構築物及び構造は、ここから見出され得る。即ち、車両シート1のシートクッション2の及びシートバック3の構築物は、それぞれ、特に、バネ下設備11と、詰め物7と、ライニング10と、これらの要素を覆うカバー8とを具備する。この例示的実施形態においては、マッサージ機能及びシートの形状調整のための空気圧要素の、本発明による挿入物は、詰め物7とライニング10との間に配置される。比較的小さい、別個の空気圧要素4は、車両シート1のシート形状の表面の近傍に配置されて、低い圧力及び小さい体積で、シート面及び背もたれ面の特定の領域又は点の調整が可能となる。コントローラ5は、背もたれ3の領域内に配置されることが好ましく、したがって、追加の空間容積は不要である。
【0018】
図3は、本発明による車両シートの例示的実施形態を、図2と同様の図で例示した図であり、2つの選択された空気圧要素4が、ここでは加圧状態で例示されている。2つの加圧された空気圧要素4は、それぞれ、予め定められた点で局部的な膨らみを作るが、実質的に、車両シートの形状全体は変化しない。つまり、2つの要素4が加圧された後、再び元のシート形状になることが確実である。同様に、図3に例示されている状況は、ある運転者の身体に対して最適な整形外科的な適応形態又は他の種類の適応形態のための、腰椎領域内及び前部シート面領域内にそれぞれの高さを有する、この運転者の予め選択された一定のシート形状であり得る。
【0019】
図4は、本発明による空気圧要素又は圧力要素4の形状の変形形態を例示する図である。図4に例示されている形状のすべてに共通する特徴は、この形状が、空気圧要素による実質的に点状の加圧が可能となる形状であることである。その上、要素4は、その体積が比較的小さく、シート形状の表面全体に対して、その表面の拡大も小さい。それぞれの空気圧要素4には、各ライン接続6が設けられ、これを介して圧力が供給され、また再び圧力を取り去ることができる。点状に圧力を発生できる例として例示されている形状の変形形態は、以下の形状である。即ち、楕円形、眼の形、側方がくびれた蛇腹型の形、2室形、出っ張り状の膨らみを有する長円形、及び複数の出っ張りが形成された長円形である。勿論、少ない空間しか必要とせずに、実質的に点状に圧力を発生させることが可能である限り、マッサージ及び車両シートのシート形状の調整のための本発明による配置について、他の形状及び変形形態が好適であることもある。
【0020】
図5は、個々の空気圧要素4(例示せず)に対する各ライン接続6の設計及び配置の、2つの変形形態を示す図である。例示されている第1の変形形態のライン6は、支持挿入物9上に配置され、固締された円筒形の管路であり、コントローラ又は圧力発生装置(例示せず)の方向に、まとめて1つにされている。支持挿入物9上に固定することは、組立てがより容易になるという利点を有し、支持挿入物9の表面上に固締することは、垂直方向に少ない空間容積しか必要としないという利点を有する。代替形態として、例示されている第2の変形形態においては、複数の水路状の、断面が矩形のライン6が支持挿入物9上に設けられ、たとえば複数の薄膜層を溶接することによって実現できる。
【0021】
記述、特許請求の範囲、及び図面に例示されている特徴のすべてが、それ自体でも、及び所望の任意の組合せにおいても、本発明に該当し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による空気圧要素を備えた車両シートの第1の例示的実施形態を示す斜め概略平面図。
【図2】圧力要素が緩んだ状態の、図1の例示的実施形態の車両シートを示す概略切欠側面図。
【図3】加圧状態の2つの空気圧要素を備えた、図2の車両シートを示す図。
【図4】本発明による空気圧要素の形状の変形形態を示す図。
【図5】本発明による空気圧要素のための圧力ラインの形状及び配置の詳細の変形形態を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ、シート形状に作用を及ぼすための複数の加圧要素(4)が設けられたシートクッション(2)及びシートバック(3)と、前記加圧要素(4)の一定の加圧のためのコントローラ(5)とを備えた車両シート(1)であって、前記コントローラ(5)が、異なるマッサージ効果を得るよう適応されている車両シート(1)において、
前記加圧要素(4)が、シート形状の表面に対して小さく、かつ実質的に点状にシート形状を変えるため、ライン(6)を介してそれぞれ別々に作動できるクッション状の要素であることを特徴とする車両シート(1)。
【請求項2】
所望の固定シート形状が、前記加圧要素(4)及び前記コントローラ(5)によって設定できることを特徴とする請求項1に記載の車両シート(1)。
【請求項3】
前記加圧要素(4)が、前記車両シート(1)の詰め物(7)とカバー(8)との間に配置されることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の車両シート(1)。
【請求項4】
前記加圧要素(4)が、前記車両シート(1)の前記カバー(8)によって覆われたライニング(10)の下のシート状の支持挿入物(9)に配置され、固定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両シート(1)。
【請求項5】
前記加圧要素(4)の形状が、実質的に点状の圧力領域がシート形状内に作られ得るような形状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両シート(1)。
【請求項6】
前記加圧要素(4)が、それぞれ別個のライン(6)を介して動作でき、前記ライン(6)が、支持挿入物(9)の表面に固定され、前記コントローラ(5)の方向に、まとめて1つにされることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両シート(1)。
【請求項7】
前記要素(4)が、空気圧又は電気空圧により加圧できることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両シート(1)。
【請求項8】
前記コントローラ(5)が、予め設定され、かつ個々に設定可能な多くのマッサージ機能を行うよう適応されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の車両シート(1)。
【請求項9】
シート形状の、予め選択された複数の設定を、前記コントローラ(5)によって格納できることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の車両シート(1)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ、シート形状に作用を及ぼすための複数の加圧要素(4)が設けられたシートクッション(2)及びシートバック(3)と、前記加圧要素(4)の一定の加圧のためのコントローラ(5)とを備えた車両シート(1)であって、前記コントローラ(5)が、異なるマッサージ効果を得るよう適応されており、前記加圧要素(4)が、シート形状の表面に対して小さく、かつ実質的に点状にシート形状を変えるため、ライン(6)を介してそれぞれ別々に作動できるクッション状の要素である車両シート(1)において、
前記加圧要素(4)が、前記車両シート(1)の詰め物(7)とカバー(8)との間に配置されることを特徴とする車両シート(1)。
【請求項2】
所望の固定シート形状が、前記加圧要素(4)及び前記コントローラ(5)によって設定できることを特徴とする請求項1に記載の車両シート(1)。
【請求項3】
前記加圧要素(4)が、前記車両シート(1)の前記カバー(8)によって覆われたライニング(10)の下のシート状の支持挿入物(9)に配置され、固定されることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の車両シート(1)。
【請求項4】
前記加圧要素(4)の形状が、実質的に点状の圧力領域がシート形状内に作られ得るような形状であることを特徴とする請求項1に記載の車両シート(1)。
【請求項5】
前記加圧要素(4)が、それぞれ別個のライン(6)を介して動作でき、前記ライン(6)が、支持挿入物(9)の表面に固定され、前記コントローラ(5)の方向に、まとめて1つにされることを特徴とする請求項1に記載の車両シート(1)。
【請求項6】
前記要素(4)が、空気圧又は電気空圧により加圧できることを特徴とする請求項1に記載の車両シート(1)。
【請求項7】
前記コントローラ(5)が、予め設定され、かつ個々に設定可能な多くのマッサージ機能を行うよう適応されることを特徴とする請求項1に記載の車両シート(1)。
【請求項8】
シート形状の、予め選択された複数の設定を、前記コントローラ(5)によって格納できることを特徴とする請求項1に記載の車両シート(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−514560(P2006−514560A)
【公表日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−536999(P2004−536999)
【出願日】平成15年9月6日(2003.9.6)
【国際出願番号】PCT/EP2003/009916
【国際公開番号】WO2004/026623
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【Fターム(参考)】