説明

マットセンサー

【課題】患者が躓かないようにしつつ、部品数を減らし、ジョイントマット片を確実に連結できるようにする。
【解決手段】ジョイントマット片1の正方形の3辺に連結部を形成し、他の1辺に傾斜部を形成する。この傾斜部を転倒防止側に配置し、転倒防止側に連結部が配置される場合にはその正方形の1辺と同じ長さの2つの長辺および2つの短辺により形成され、一方の長辺に接続部を形成し、他方に傾斜部を形成した転倒防止片2を連結部に接続する。これにより、転倒防止側に傾斜部が配置され、患者がマットセンサーの外周で躓かなくなる。また、ジョイントマット片1と転倒防止片2との2種類の部品で構成されるとともに、ジョイントマット片1の傾斜部を外周に配置することで転倒防止片2の使用数を減らすことができるので、部品数を減らすことができる。また、正方形の3辺に連結部が形成されるので、ジョイントマット片1が確実に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者や被介護者がある領域に出入りしたことや、患者や被介護者がベッドを離床したこと、患者がベッドから転倒/転落したことを検出するためのマットセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、病院や介護施設などでは、ナースコールシステムが用いられている。ナースコールシステムは、病院の患者が看護師のサポートを必要とする際、または介護施設の被介護者が介護師のサポートを必要とする際に、患者や被介護者(以下、患者と記載する)が呼出ボタンを押下することによって看護師や介護師(以下、医療従事者と記載する)を呼び出すことができるように成されたシステムである。
【0003】
多くのナースコールシステムは、病室のベッド近傍やトイレ、浴室などに設置されるナースコール子機と、ナースセンターに設置されるナースコール親機と、病室や介護室等の各部屋の入口付近に設置される廊下灯と、通話やデータの送受信に関する制御を行う制御機とを備えて構成されている。また、上述した構成に加えて、医療従事者が携行する携帯端末(例えば、PHS(Personal Handy phone System)端末など)とPBX(Private Branch Exchange:電話交換機)とを備えたナースコールシステムも提供されている。ここで、ナースコール子機としては、呼出ボタンなどの呼出操作部を有するものがある。
【0004】
そして、このようなナースコールシステムは、患者がナースコール子機の呼出ボタンを操作した場合に、ナースコール子機からナースコール親機へ呼出信号を出力し、呼出信号を入力したナースコール親機にて呼び出しの報知するように構成されている。
【0005】
ところで、ナースコール子機には、上述した呼出ボタンを備えたものだけではなく、荷重を検出するマットセンサーによって構成されるものも存在する。このマットセンサーをベッド近傍の床に敷き、患者が乗ったことを検出することにより、患者の離床やベッドからの転倒/転落を示す呼出信号をナースコール親機へ出力するようにしたナースコールシステムも知られている(例えば、特許文献1など)。また、患者がある領域(例えばトイレなどの共用スペース)に出入りしたことをマットセンサーにより検出することも考えられる。
【0006】
特許文献1などに記載されている従来のマットセンサーは、ベッド近傍の床に設置されるため、ベッドの大きさ、ベッドと他のベッドや壁などとの間隔、ベッドを使用する患者の体格、マットセンサーを設置する施設の担当者などの判断などにより、求められる大きさが異なる。また、マットセンサーをある領域へ出入りしたことを検出するために使用する場合にも、マットセンサーに求められる大きさが異なる。
【0007】
すなわち、ベッドの大きさ(あるいはある領域への出入口の広さ、以下同)が大きい場合には、マットセンサーが大きいことが好ましく、ベッドの大きさが小さい場合には、マットセンサーが小さいことが好ましい。また、ベッドと他のベッドや壁などとの間隔が広い場合には、マットセンサーが大きいことが好ましく、ベッドと他のベッドや壁などとの間隔が狭い場合には、マットセンサーが小さいことが好ましい。また、患者の体格が大きい場合には、マットセンサーが大きいことが好ましく、患者の体格が小さい場合には、マットセンサーが小さいことが好ましい。また、施設の担当者が患者の離床やベッドからの転倒/転落を確実に検出したいと判断する場合には、マットセンサーが大きいことが好ましく、患者の離床やベッドからの転倒/転落の検出精度と医療従事者や他の患者がマットセンサーに乗ることによる誤報とのバランスを考慮した場合には、マットセンサーが小さいことが好ましい。
【0008】
このように、マットセンサーは様々な大きさであることが好ましいが、様々な大きさのマットセンサーを用意することは、メーカーにとっては負担がかかってしまうという問題があった。これを解決するための技術として、マットセンサーに関する技術ではないが、同一形状のジョイントマット片を連結する技術が知られている(例えば、特許文献2など)。この特許文献2に記載の技術では、連結したジョイントマット片の周端縁に連結部が露呈し、患者が連結部で躓いて転倒することがあるため、傾斜面を有する端縁連結部材およびコーナー連結部材をジョイントマット片の連結部に接続するようにしている。
【0009】
しかしながら、上述した特許文献2に記載の技術では、連結したジョイントマット片の周端縁の数だけ端縁連結部材が必要になるとともに、四隅にコーナー連結部材が必要になるため、部品点数が多くなり、連結作業や各部品の管理などが煩雑となってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−213266号公報
【特許文献2】登録実用新案第3092531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような課題を解決するための手法として、ジョイントマット片と端縁連結部材、コーナー連結部材を一体的に形成することが考えられる。例えば、一つのジョイントマット片と、一つのジョイントマット片の四つの周端縁に連結される四つの端縁連結部材と、ジョイントマット片の四隅に連結される四つのコーナー連結部材とを一体的に形成すると、このように形成したジョイントマット片をどのように並べても、その外周が傾斜面となるため、患者が躓いて転倒する可能性が低くなる。
【0012】
しかしながら、上述した従来技術では、ジョイントマット片に連結部が存在していないため、各ジョイントマット片を連結することができなくなり、特にマットセンサーの場合には、電気的な接続ができなくなってしまうという問題があった。本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、マットセンサーの外周で患者が躓かないようにしつつ、マットセンサーを構成するための部品の数をできるだけ減らし、かつ、マットセンサーを構成するジョイントマット片を確実に連結できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために、本発明では、荷重を検出することで検出信号を出力する略正方形状のジョイントマット片の正方形の3辺に他のジョイントマット片を連結可能とする連結部を形成し、他の1辺に転倒を防止するために傾斜成形された傾斜部を形成する。また、ジョイントマット片の正方形の1辺と同じ長さの2つの長辺とそれに比較して十分に短い2つの短辺とにより形成され、2つの長辺のうちの一方に他のジョイントマット片を接続可能とする接続部を形成し、他方に転倒を防止するために傾斜成形された傾斜部を形成する転倒防止片を備え、転倒を防止したい側にジョイントマット片に形成された傾斜部を配置し、転倒を防止したい側にジョイントマット片の連結部が配置される場合に、その連結部に転倒防止片を接続してマットセンサーを構成するようにしている。
【発明の効果】
【0014】
上記のように構成した本発明によれば、転倒を防止したい側にジョイントマット片の傾斜部か転倒防止片の傾斜部が配置されるので、患者がマットセンサーの外周で躓かないようにすることができる。また、1辺に傾斜部が形成されているジョイントマット片および同じく傾斜部が形成されている転倒防止片の2種類の部品にてマットセンサーが構成されている。また、ジョイントマット片の傾斜部を外周に配置することで転倒防止片の使用数を減らすことができる。従って、マットセンサーを構成するための部品の数をできるだけ減らすことができる。また、ジョイントマット片の正方形の3辺に連結部が形成されているので、複数のジョイントマット片を配置する際にジョイントマット片を確実に連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態によるマットセンサーの構成例を示す図である。
【図2】本実施形態によるマットセンサーの連結例を示す図である。
【図3】本実施形態によるマットセンサーの他の連結例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態によるマットセンサーを構成するジョイントマット片1および転倒防止片2の構成例を示す図である。図1(a)において、ジョイントマット片1は、略正方形状の表面を形成しており、その表面の荷重を検出して呼出信号を出力する。ここで、ジョイントマット片1の内部には、2枚の導電性電極板が弾性のある絶縁材料を挟んで全域に渡って形成されている。そのため、ジョイントマット片1の上から荷重がかかると、電極板が接触して導通し、検出信号を生成する。
【0017】
また、ジョイントマット片1は、図1(a)中正面から見た場合に形成される正方形の3辺の側面に連結部を形成している。連結部は、このジョイントマット片1と他のジョイントマット片1とを連結するために用いられ、両者を電気的に接続するとともに、両者を機構的にも接続する。具体的には、連結部に端子が形成されており、この端子同士を接続することで、ジョイントマット片1同士を連結することができる。また、連結部には、接続コードの先端に形成された接続端子を接続することができる。また、連結部によるジョイントマット片1同士の機構的な連結方法は、周知の技術を用いて実現されるため、説明を省略する。
【0018】
また、図1(a)中正面から見た場合にジョイントマット片1に形成される正方形の残りの1辺の側面には、傾斜部が成形されている。傾斜部は、図1(a)のA−A´断面図に示すように、ジョイントマット片1の端部に行くに従ってジョイントマット片1の厚みが薄くなるように傾斜している。この傾斜部により患者のつま先などがジョイントマット片1に引っ掛かることがなくなる。
【0019】
また、転倒防止片2は、図1(b)中正面から見た場合に形成される長方形の2つの長辺の長さが、ジョイントマット片1の正方形の1辺の長さに等しくなるように形成されている。また、転倒防止片2の一方の長辺には、B−B´断面図に示すように、傾斜部が形成されている。また、図1(b)中正面から見た場合に転倒防止片2に形成される長方形の残りの2つの辺は、長辺と比較して十分に短く形成されており、C−C´断面図に示すように、傾斜部が形成されている。ここで、転倒防止片2の長方形の2つの短辺の長さは、2つの長辺の一方に傾斜部を形成することができる程度の長さである。また、一方の長辺に形成した傾斜部と、短辺に形成した傾斜部との間には境界部が成形されている。
【0020】
また、転倒防止片2の他方の長辺には、転倒防止片2をジョイントマット片1に接続するための接続部が形成されている。ここで、転倒防止片2の面積がジョイントマット片1に比べて小さい点、および、転倒防止片2が後述するようにマットセンサーの外周に配置される点から、転倒防止片2の内部に電極板などは内蔵されていない。そのため、転倒防止片2の接続部は、ジョイントマット片1の連結部を機構的に接続するのみであり、電気的に接続されることはない。
【0021】
これらのように構成されたジョイントマット片1を4枚、転倒防止片2を2枚用いてマットセンサーを構成する場合、図2に示すような構成となる。ここで、マットセンサーはベッド側を除いた3つの方向からの転倒を防止するようにしている。すなわち、ベッド側の反対方向にジョイントマット片1の傾斜部が配置されるように、2枚のジョイントマット片1が連結部にて連結される。そして、傾斜部の隣の他のジョイントマット片1と連結していない連結部に転倒防止片2の接続部を接続している。また、残り2枚のジョイントマット片1の傾斜部が転倒防止片2に隣接するように、残り2枚のジョイントマット片1が配置される。また、ベッド側に配置されたジョイントマット片1の連結部には、接続コードに形成された一方の接続端子が接続され、他方の接続端子はナースコールシステムに接続される。
【0022】
このように構成されたマットセンサーは、接続コードが接続されたジョイントマット片1から見て、何れのジョイントマット片1も連結部を介して接続されているため、電気的にも機構的にも連結されていることになる。これにより、どのジョイントマット片1に荷重がかかっても、検出信号がナースセンターなどに送られるようになる。
【0023】
また、ジョイントマット片1を9枚、転倒防止片2を2枚用いてマットセンサーを構成する場合、図3に示すような構成となる。ここで、図2と同様にマットセンサーはベッド側を除いた3つの方向からの転倒を防止するようにしている。すなわち、ベッド側の反対方向にジョイントマット片1の傾斜部が配置されるように、3枚のジョイントマット片1が連結部にて連結される。そして、傾斜部の隣の他のジョイントマット片1と連結していない連結部に転倒防止片2の接続部を接続している。また、2枚のジョイントマット片1の傾斜部が転倒防止片2の傾斜部と同じ側になるように、2枚のジョイントマット片1がそれぞれ配置される。また、他のジョイントマット片1に挟まれるように他のジョイントマット片1に接続されている残り2枚のジョイントマット片1の傾斜部は、どの方向を向いていても良い。また、ベッド側に配置されたジョイントマット片1の連結部には、接続コードの一端に形成された接続端子が接続され、他端に形成された接続端子はナースコールシステムに接続される。
【0024】
このように構成されたマットセンサーは、接続コードが接続されたジョイントマット片1から見て、何れのジョイントマット片1も連結部を介して接続されているため、電気的にも機構的にも連結されていることになる。これにより、どのジョイントマット片1に荷重がかかっても、検出信号がナースセンターなどに送られるようになる。
【0025】
以上詳しく説明したように、本実施形態によれば、荷重を検出することで検出信号を出力する略正方形状のジョイントマット片1の正方形の3辺に他のジョイントマット片1を連結可能とする連結部を形成し、他の1辺に転倒を防止するために傾斜成形された傾斜部を形成する。また、ジョイントマット片1の正方形の1辺と同じ長さの2つの長辺とそれに比較して十分に短い2つの短辺とにより形成され、2つの長辺のうちの一方に他のジョイントマット片1を接続可能とする接続部を形成し、他方に転倒を防止するために傾斜成形された傾斜部を形成する転倒防止片2を備え、転倒を防止したい側にジョイントマット片1に形成された傾斜部を配置し、転倒を防止したい側にジョイントマット片1の連結部が配置される場合には、その連結部に転倒防止片2を接続するようにしている。
【0026】
これにより、転倒を防止したい側にジョイントマット片1の傾斜部か転倒防止片2の傾斜部が配置されるので、患者がマットセンサーの外周で躓かないようにすることができる。また、1辺に傾斜部が形成されているジョイントマット片1および同じく傾斜部が形成されている転倒防止片2の2種類の部品にてマットセンサーが構成されている。また、ジョイントマット片1の傾斜部を外周に配置することで転倒防止片2の使用数を減らすことができる。従って、マットセンサーを構成するための部品の数をできるだけ減らすことができる。また、ジョイントマット片1の正方形の3辺に連結部が形成されているので、複数のジョイントマット片1を配置する際にジョイントマット片1を確実に連結することができる。
【0027】
なお、前述した実施形態では、ジョイントマット片1の連結部に接続コードの一端に設けた接続端子を接続し、他端に設けた接続端子をナースコールシステムに接続しているが、これに限定されない。例えば、検出信号をナースコールシステムに送信する無線送信機をジョイントマット片1の連結部に接続するようにしても良い。これにより、接続コードが不要となり、患者が躓く可能性をより低くすることができる。
【0028】
また、前述した実施形態では、ベッド近傍にマットセンサーを設置しているが、これに限定されない。例えば、所定の領域に入った患者を検出するためにマットセンサーを使用するようにしても良い。この場合、マットセンサーは全ての方向(4方向)から踏まれる可能性があるため、外周にジョイントマット片1の連結部が配置されるような場合には、その連結部に転倒防止片2を接続する。
【0029】
その他、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 ジョイントマット片
2 転倒防止片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重を検出することで検出信号を出力する略正方形状のジョイントマット片と、前記ジョイントマット片の正方形の1辺と同じ長さの2つの長辺とそれに比較して十分に短い2つの短辺とにより形成され、前記2つの長辺のうちの一方に他のジョイントマット片を接続可能とする接続部を形成し、他方に転倒を防止するために傾斜成形された傾斜部を形成する転倒防止片とを組み合わせて構成されるマットセンサーであって、
前記ジョイントマット片は、その正方形の3辺に他のジョイントマット片を電気的および機構的に連結可能とする連結部を形成し、他の1辺に転倒を防止するために傾斜成形された傾斜部を形成して、
転倒を防止したい側に前記ジョイントマット片に形成された傾斜部を配置し、転倒を防止したい側に前記ジョイントマット片の連結部が配置される場合には、その連結部に転倒防止片を接続することを特徴とするマットセンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−152503(P2012−152503A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16454(P2011−16454)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(591253593)株式会社ケアコム (493)
【Fターム(参考)】