説明

マット加熱装置及び加熱方法

【課題】効率よく、均一に、かつ、高品質の状態でマットを高温にする。
【解決手段】繊維を主成分とし通気性及び熱可塑性を有するマットMを冷間プレスして成形するのに先だって加熱するマット加熱装置であって、相互に対向するとともに相対的に接近及び離隔可能な高温盤22と熱風噴射面45とを有し、高温盤22には、マットMの下面が高温盤22に接触した状態でマットMが配設され、熱風噴射面45には複数の熱風噴射孔43が形成され、その複数の熱風噴射孔43は、マットMの上面に対して熱風を噴射する。第1の加熱段階(当接噴射段階)では、熱風噴射面45がマットMの上面に当接した状態で、熱風噴射孔43からマットMに対して熱風が噴射され、第2の加熱段階(離隔噴射段階)では、熱風噴射面45がマットMの上面から離隔した状態で、熱風噴射孔43からマットMに対して熱風が噴射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維を主成分とし通気性及び熱可塑性を有するマットを冷間プレスして成形するのに先だって当該マットを加熱するマット加熱装置及びマット加熱方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維を主成分とし通気性及び熱可塑性を有するマットが、各種の物品を製造するために使用されている。
ここで、「熱可塑性を有する」とは、マットを構成するすべての要素が熱可塑性を有する必要はなく、熱可塑性樹脂の繊維を一部に含んでいて全体として熱可塑性を有するものも含まれる。その一例として、植物性繊維と熱可塑性樹脂系繊維を主成分とするマットもある。
【0003】
上述のマットは、次のように成形される。
まず、そのマットは加熱され、その後、冷間プレスされることによって、所定の形状に成形される。なお、加熱された後であって冷間プレスされる前の段階において、熱間プレスされることによって、予め、予備的形状(最終的成形状態に近い形状)に成形される場合もある。
こうして、例えば、自動車の部品(内装材等)が製造される。
【0004】
そして、従来、そのマットが加熱される際には、次のようにされている。
第1の技術では、マットの一方の側(例えばおもて面の側)に熱風噴射装置を設け、他方の側(裏面の側)に吸引装置を設け、熱風噴射装置から噴射される熱風がマットを通過して吸引装置によって吸引される。こうして、熱風によってマットを加熱する。
第2の技術では、マットの一方の側又は両方の側に複数のヒータを所定の間隔を隔てて配設し、ヒータの輻射熱によってマットを加熱する。
第3の技術では、ヒータによって高温とされた一対の面(一対の高温の鉄板)によってマットを挟持して、その熱伝導によってマットを加熱する。
【0005】
しかしながら、第1の技術では、マットの密度にばらつきがあると、マットの通気性が一様でなくなる。その場合には、通気性の高い部分には大量の熱風が通過して、その部分が高温となり、一方、通気性の低い部分にはあまり熱風が通過せず、その部分はあまり高温とならない。こうして、マットを均一に加熱することが困難である。
【0006】
また、第2の技術では、複数のヒータの配設の間隔(ばらつき)によって、マットのうちのヒータに近い部分は高温となり、ヒータから遠い部分はあまり高温とならない。こうして、この技術でも、マットを均一に加熱することが困難である。
【0007】
このため、第1及び第2の技術では、マットを移動させるコンベアを設け、コンベアの上下の各側又は一方の側に該当する装置を設け、コンベアによってマットを移動させつつそのマットを加熱することも行われる。
このようにすればマットは均一に加熱されるが、装置全体の規模が大型なものとなり、コストも高くなる。
【0008】
また、第3の技術では、マットの両面が高温の面に接触するため、その両面が溶融して、その品質が損なわれる等の欠点がある。
また、第3の技術では、マットの両面を高温の一対の面(一対の鉄板)で挟むため、マット中の空気が両鉄板の間から流出しにくく、空気は熱伝導率が低いことから、十分な高温状態になるまでに長時間を要する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、効率よく、均一に、かつ、高品質の状態でマットを高温にすることができるとともに、装置の規模もコンパクトとすることができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために、請求項1に係る発明は、繊維を主成分とし通気性及び熱可塑性を有するマットを冷間プレスして成形するのに先だって当該マットを加熱するマット加熱装置であって、相互に対向する支持面と複数の熱風噴射孔とを有し、前記支持面には、前記マットのおもて面及び裏面のうちの一方が当該支持面に接触した状態で当該マットが配設され、前記複数の熱風噴射孔は、前記マットのおもて面及び裏面のうちの他方に対して熱風を噴射するものである、マット加熱装置である。
【0011】
この発明のマット加熱装置では、次の作用効果が得られる。
マットのおもて面又は裏面の一方が支持面に対して接触した状態で、そのマットのおもて面及び裏面のうちの他方の面に対して複数の熱風噴射孔から熱風が噴射される。
こうして、各熱風噴射孔からマットに噴射された熱風のうちの少なくとも一部がマットの内部に進入してマットの内部を流れる。
そして、その熱風がマットを貫通して流れることが支持面によって阻止され、その熱風は、マットの内部をマットの面方向(厚み方向とは直角の方向であり、長さ方向及び幅方向)の成分を有する方向に流れ(その際、それまでマットの内部に存在していた空気がマットの外部に押し出される)、マットが均一に高温とされる。また、熱風がマットを貫通する場合よりもマットの内部において長い距離を流れるために、その分マットが迅速に高温とされる。
【0012】
請求項2に係る発明は、繊維を主成分とし通気性及び熱可塑性を有するマットを冷間プレスして成形するのに先だって当該マットを加熱するマット加熱装置であって、相互に対向するとともに相対的に接近及び離隔可能な支持面と熱風噴射面とを有し、前記支持面には、前記マットのおもて面及び裏面のうちの一方が当該支持面に接触した状態で当該マットが配設され、前記熱風噴射面には複数の熱風噴射孔が形成され、その複数の熱風噴射孔は、前記マットのおもて面及び裏面のうちの他方に対して熱風を噴射するものである、マット加熱装置である。
【0013】
この発明のマット加熱装置は、請求項1に係る発明のマット加熱装置において、支持面に対して接近及び離隔可能な熱風噴射面に複数の熱風噴射孔が形成されているため、次の作用効果が得られる。
【0014】
熱風噴射面がマット(そのおもて面及び裏面のうちの他方)から離隔している場合は、次のとおりである。
マットのおもて面又は裏面の一方が支持面に対して接触した状態で、そのマットのおもて面及び裏面のうちの他方の面に対して複数の熱風噴射孔から熱風が噴射される。
その際、熱風噴射面がマットから離隔しているため、各熱風噴射孔からマットに噴射された熱風のうちの一部はマットの内部には進入しないが、その残部がマットの内部に進入してマットの内部を流れる。
そして、その熱風がマットを貫通して流れることが支持面によって阻止され、その熱風は、マットの内部をマットの面方向(厚み方向とは直角の方向であり、長さ方向及び幅方向)の成分を有する方向に流れ(その際、それまでマットの内部に存在していた空気がマットの外部に押し出される)、マットが均一に高温とされる。また、熱風がマットを貫通する場合よりもマットの内部において長い距離を流れるために、その分マットが迅速に高温とされる。
【0015】
一方、熱風噴射面がマット(そのおもて面及び裏面のうちの他方)に接触した状態で熱風噴射孔から熱風がマットに噴射されることも可能であり、その場合には、上述の効果がより多く得られる。
すなわち、熱風噴射面がマットに接触しているため、各熱風噴射孔からマットに噴射された熱風のすべて(又はほとんとすべて)がマットの内部に進入して、上述のようにしてマットの内部を流れる。このため、より迅速にマットが高温となる。
【0016】
すなわち、この発明の加熱装置では、熱風噴射面がマットに当接した状態でマットを加熱することも、熱風噴射面がマットから離隔した状態で加熱することも可能である。
また、加熱の第1段階として熱風噴射面がマットに当接した状態でマットを加熱し、加熱の第2段階として熱風噴射面がマットから離隔した状態でマットを加熱することも可能である。この場合は、請求項6に係る発明のマット加熱方法における効果(後述)と同様に、全体として非常に効率よく高品質の状態でマットを高温にすることができる。
【0017】
また、「熱風噴射面がマットに当接した状態」には、熱風噴射面がマットを圧縮した状態でマットに当接した状態と、熱風噴射面がマットを圧縮しない状態でマットに当接した状態とがある。そして、最初は前者の状態でマットを加熱し、最後は後者の状態でマットを加熱する、という態様もある。
【0018】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る発明のマット加熱装置であって、前記複数の熱風噴射孔のうちの少なくともいずれかについては、その下流端及びその近傍において当該下流端に向かうにつれてその開口面積が徐々に大きくなっている、マット加熱装置である。
【0019】
この発明では、請求項1又は請求項2に係る発明のマット加熱装置の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、複数の熱風噴射孔のうちの少なくともいずれかについては、その下流端及びその近傍において当該下流端に向かうにつれてその開口面積が徐々に大きくなっているため、その熱風噴射孔から噴射される熱風には、マットの面方向に進む成分が加わりやすくなり、マットがより均一に高温状態とされる。
【0020】
請求項4に係る発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに係る発明のマット加熱装置であって、前記支持面と前記熱風噴射孔との対向方向と直角の成分を有する方向に、前記マットを前記熱風噴射孔に対して相対的に変位させるマット変位機構を有する、マット加熱装置である。
【0021】
この発明では、請求項1〜請求項3のいずれかに係る発明のマット加熱装置の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、マット変位機構によってマットが熱風噴射孔に対して相対的に変位されることによって、熱風噴射孔から噴射される熱風がマットに対してより均一に到達することになり、その分、マットがより均一に高温状態とされる。
【0022】
請求項5に係る発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに係る発明のマット加熱装置であって、前記支持面は熱面である、マット加熱装置である。
【0023】
この発明では、請求項1〜請求項4のいずれかに係る発明のマット加熱装置の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、支持面が熱面であるために、その熱面によってもマットが加熱され、マットがより迅速に高温状態とされる。
【0024】
また、この発明に関連する発明として、次の発明が考えられる。
「請求項5に記載のマット加熱装置であって、
前記熱面の温度及び前記熱風噴射孔から噴射される熱風の温度のうちの少なくとも一方が、前記熱面/前記熱風噴射面のうちの部位ごとに調整可能である、
マット加熱装置。」
この発明では、請求項5に係る発明のマット加熱装置の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この発明では、マットの部位ごとに加熱量を調整することが可能となる。このため、マットの材質や厚さ等がマットの部位によって異なる場合に、それに応じて各部位ごとに加熱量を調整することによって、より適切にマットを高温状態とすることができる。
【0025】
請求項6に係る発明は、繊維を主成分とし通気性及び熱可塑性を有するマットを冷間プレスして成形するのに先だって当該マットを加熱するマット加熱方法であって、前記マットのおもて面及び裏面のうちの一方が支持面に接触し、複数の熱風噴射孔を有する熱風噴射面が前記マットのおもて面及び裏面のうちの他方に当接した状態で、前記熱風噴射孔から当該マットに対して熱風が噴射される当接噴射段階と、前記マットのおもて面及び裏面のうちの一方が前記支持面に接触し、前記熱風噴射面が前記マットのおもて面及び裏面のうちの他方から離隔した状態で、前記熱風噴射孔から当該マットに対して熱風が噴射される離隔噴射段階とを有する、マット加熱方法である。
【0026】
この発明のマット加熱方法では、次の作用効果が得られる。
すなわち、当接噴射段階では、マットのおもて面又は裏面の一方が支持面に対して接触し、マットのおもて面及び裏面のうちの他方に熱風噴射面が当接した状態で、熱風噴射孔からマットに対して熱風が噴射される。
この段階では、熱風噴射面がマットに接触しているため、各熱風噴射孔からマットに噴射された熱風のすべて(又はほとんとすべて)がマットの内部に進入してマットの内部を流れる。そして、その熱風がマットを貫通して流れることが支持面によって阻止され、その熱風は、マットの内部をマットの面方向(厚み方向とは直角の方向であり、長さ方向及び幅方向)の成分を有する方向に流れ(その際、それまでマットの内部に存在していた空気がマットの外部に押し出される)、マットが均一に高温とされる。また、熱風がマットを貫通する場合よりもマットの内部において長い距離を流れるために、その分マットが迅速に高温とされる。
【0027】
次に、離隔噴射段階では、マットのおもて面又は裏面の一方が支持面に対して接触し、マットのおもて面及び裏面のうちの他方から熱風噴射面が離隔した状態で、熱風噴射孔からマットに対して熱風が噴射される。
この段階では、熱風噴射面がマットから離隔しているために、各熱風噴射孔からマットに噴射された熱風の一部はマットの内部に進入せず、その残部がマットの内部に進入し、上述とほぼ同様に流れる。
この離隔噴射段階では、熱風噴射孔から噴射された熱風の一部はマットに進入しないため、その分、当接噴射段階よりも加熱の効率は低くなる。しかしながら、熱風噴射面がマットに接触しないため、熱風噴射面(高温)によってマット(そのおもて面及び裏面のうちの他方)が変質することが防止される。
【0028】
すなわち、この発明のマット加熱方法では、マットの加熱の初期(当接噴射段階)においては、マットもあまり高温ではなく熱風噴射面によって変質するおそれが低いために、熱風噴射面がマットに当接した状態で熱風噴射孔から熱風が噴射され、迅速に(離隔噴射段階よりも迅速に)マットが高温とされる。一方、マットの加熱の終期(離隔噴射段階)においては、熱風噴射面がマットから離隔した状態で熱風噴射孔から熱風が噴射され、当接噴射段階と比較すればマットの加熱の効率が低いがマットが変質することが防止される。
こうして、全体として、非常に効率よく、高品質の状態でマットを高温にすることができるのである。
【0029】
なお、「当接噴射段階」としては、熱風噴射面がマットを圧縮した状態で当該熱風噴射面が当該マットに当接する場合と、熱風噴射面がマットを圧縮しない状態で当該熱風噴射面が当該マットに当接する場合とがあり得る。また、当接噴射段階のうちの最初の段階が前者の場合で最後の段階が後者の場合、という態様もあり得る。
この発明に関連する発明として、「支持面」が「熱面」とされたものも考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
[実施形態1]
次に、本発明の実施形態1について、図1〜図4に基づいて説明する。
図1に示すように、このマット加熱装置は、フレーム10を有している。フレーム10に対して、下側ベース20,上側ベース30が、相互に対向して設けられている。
下側ベース20は、フレーム10に対して固定されている。上側ベース30は、油圧シリンダ31によって上下動可能に設けられている。
【0031】
図1及び図2に示すように、下側ベース20の上側には、金属板からなる高温盤22が配設されている。
図2に示すように、高温盤22は、支持材23を介して下側ベース20に対して設けられており、下側ベース20(その上面)と高温盤22(その下面)との間には隙間が存在している。
高温盤22の裏側(下面)には多数のヒータ24が配設されており、ヒータ24の作動によって高温盤22(全体)が高温となる。各ヒータ24は、高温盤22の各部位ごとに独立的に制御されるようにされており、高温盤22(その上面)は、その各部位ごとに温度の調整が行われ得る。
【0032】
高温盤22の上面には、必要に応じて、保護シート26が敷設されている。これは、後述するようにしてマットMが加熱される際に、その高温状態のマットMが高温盤22に対して貼着すること等を防止するためのものである。
なお、保護シート26が敷設されない場合には、高温盤22の上面が本発明の熱面に該当し、保護シート26が敷設された場合には、その保護シート26の上面が本発明の熱面に該当する。
【0033】
図2に示すように、下側ベース20の場合とほぼ同様に、上側ベース30の下側には、支持材33を介して金属板32が設けられており、金属板32の裏側(上面)には多数のヒータ34が配設されている。金属板32の下側には熱風盤42が配設されている。熱風盤42の下面は、熱風噴射面45とされている。上述と同様に、各ヒータ34は、金属板32の各部位ごとに独立的に制御されるようにされている。
こうして、高温盤22(保護シート26)と熱風噴射面45とが、相互に対向するとともに相対的に接近及び離隔可能とされている。
【0034】
なお、図1において2点鎖線で示すように、必要に応じて、下側ベース20に下死点設定部29が設けられてもよい。下死点設定部29は、上側ベース30等が所定の距離を下降した際に、その上端が金属板32(その下面)に対して当接し、それよりも上側ベース30が(ひいては熱風噴射面45が)下降することが防止される。また、下死点設定部29は、その高さが調整可能なものであってもよい。
【0035】
図2及び図3に示すように、熱風盤42には、多数の熱風噴射孔43が形成されている。各熱風噴射孔43はほぼ円形の断面を有し、ほぼ鉛直に延びており、その下流端(熱風噴射面45と同一高さ)の近傍において、その下流端に向かうにつれて、その開口面積が徐々に大きくなっている。
熱風噴射孔43は、熱風盤42の幅方向に(図3において左右方向に)整列状態で、熱風盤42の長さ方向に(図3において上下方向に)複数列設けられている。隣接する各列間の間隔は、すべて同一とされている。奇数番目の各列の各熱風噴射孔43は、等間隔を隔てて、熱風盤42の幅方向において同一の位置に設けられている。偶数番目の各列の各熱風噴射孔43も、奇数番目の列の場合と同一の等間隔を隔てて、熱風盤42の幅方向において同一の位置に設けられている。そして、偶数番目の各列の各熱風噴射孔43の熱風盤42の幅方向における位置は、奇数番目の各列の熱風盤42の幅方向において隣接する各熱風噴射孔43同士の中間の位置とされている。
【0036】
熱風噴射孔43の各列に対応して、金属板32には、多数の溝36が形成されている。金属板32の幅方向における各側の近傍には、金属板32の長さ方向に沿って、下流側エア配管(可撓性を有さない)56a,56bが配設されている。
図1に示すように、各下流側エア配管56a,56bには、エア配管(可撓性を有する)54a,54bが接続されており、両エア配管54a,54bは上流側において束ねられて一本のエア配管52に接続され、エア配管52の上流側の端部はエアタンク50に接続されている。エア配管52には圧力調整弁53が設けられている。これによって、所定の圧力の空気がエア配管52及びエア配管54a,54bを流れるようにされている。
【0037】
図3に示すように、一方の下流側エア配管56aは、奇数番目の各溝36(奇数番目の列の熱風噴射孔43に対応する各溝36)に対して、各接続管58を介して接続されている。各接続管58には流量調整弁59が設けられている。他方の下流側エア配管56bは、偶数番目の各溝36(偶数番目の列の熱風噴射孔43に対応する各溝36)に対して、接続管58を介して接続されており、各接続管58には流量調整弁59が設けられている。
【0038】
こうして、エアタンク50(図1)から、空気が、エア配管52,エア配管54a,54b,各下流側エア配管56a,56bを通って、各熱風噴射孔43(図2,図3)から噴射するようにされている。
その際、各流量調整弁59が調整されることによって、熱風噴射孔43の各列における風量が調整され得る。こうして、各列の熱風噴射孔43とも、均等な風量とされ得る。なお、列によって異なる所定の風量の空気が熱風噴射孔43から噴射されるように調整されてもよい。
【0039】
そして、エアタンク50(図1)から上述のようにして流れる空気は、ヒータ34(図2)によって加熱されて高温状態の金属板32の溝36等を流れる際に高温となり、各熱風噴射孔43からは熱風(高温の空気)が噴射される。
なお、前述したように、金属板32に設けられた複数のヒータ34は、金属板32の各部位ごとに独立的に制御されるようにされており、熱風噴射面45の各部位の熱風噴射孔43ごとに、熱風の温度の調整が行われ得る。
【0040】
次に、このマット加熱装置の使用方法(マット加熱方法)及び作用効果について説明する。
図1に示すように、熱風盤42が上昇した状態で、マットMが、高温盤22(保護シート26)の上に配置される。すなわち、マットMの下面(おもて面及び裏面のうちの一方)が保護シート26(その上面)に接触する。
次に、図4(a−1)又は図4(a−2)に示すように、熱風盤42が下降され、熱風噴射面45がマットMの上面(おもて面及び裏面のうちの他方)に当接する状態とされる。
図4(a−2)は、熱風噴射面45が非圧縮状態のマットMの上面に当接する状態であり、図4(a−1)は、熱風盤42がさらに下降して、熱風噴射面45によってマットMが圧縮される状態(すなわち、熱風噴射面45が圧縮状態のマットMの上面に当接する状態)である。
【0041】
その状態で、各熱風噴射孔43から熱風が噴射され、その熱風は、マットMの上面からマットMの内部に進入する。その際、各熱風噴射孔43の下流端及びその近傍において、当該下流端に向かうつれて当該熱風噴射孔43の開口面積が徐々に大きくなっているため、その熱風の一部は鉛直下方に向かうとともに、その熱風の一部は、側方へ広がるように斜めに向かう。
このようにして熱風はマットMの内部を流れ、高温盤22(保護シート26)によってその行方が遮られた熱風は、その後は、マットMの内部を高温盤22(保護シート26)の上面とほぼ平行に(すなわち、マットMの面方向に)流れる。そして、最終的には、その熱風は、マットMの端部(マットMの厚みに対応する端部)から流出する。その際、それまでマットMの内部に存在していた常温の空気がその熱風によってマットMの内部から外部に押し出されるとともに、順次新たな熱風がマットMの内部を流れる。
【0042】
このようにしてマットMの内部を熱風が通ることによって、マットMが高温とされる。
また、マットMの上面は高温の熱風噴射面45によって加熱され、マットMの下面は高温盤22(保護シート26)によって加熱される。これらのことによっても、マットMは高温とされる。
これが第1の加熱段階(当接噴射段階)である。
【0043】
なお、図4(a−1)のようにマットMが圧縮される場合は、図4(a−2)のようにマットMが圧縮されない場合よりも、マットMの内部を流れる熱風の風速が大きくなり、より迅速にマットMが高温にされる。
しかしながら、一方では、マットMの材質にもよるが、マットMが変質しやすい場合もあるため、図4(a−2)のようにマットMが圧縮されない方が好ましい場合がある。
また、第1の加熱段階(当接噴射段階)がさらに2つの段階に細分化され、そのうちの最初の段階において図4(a−1)のようにマットMが圧縮状態とされ、最後の段階において図4(a−2)のようにマットMが非圧縮状態とされてもよい。
【0044】
上述のようにしてマットMがある程度高温となった後に、熱風盤42が上昇され、図4(b)に示すように、熱風噴射面45とマットMの上面との間に隙間が生ずる(熱風噴射面45がマットMの上面から離隔する)状態とされる。
その状態で、引き続き、熱風噴射孔43から熱風が噴射される。その際は、熱風の一部はマットMの内部には進入しないが、その残部は、上述と同様にマットMの内部に進入し、マットMの内部を流れる。また、マットMの下面は高温盤22(保護シート26)によって加熱される。
こうして、さらにマットMは高温とされる。
これが第2の加熱段階(離隔噴射段階)である。
【0045】
以上のようにして、マットMは効率よく高温状態となる。そして、次の段階として、冷間プレスされることによって、所定の形状に成形される。
【0046】
上述のように、第1の加熱段階と第2の加熱段階とがあり、第1の加熱段階では熱風噴射面45がマットMの上面に当接し、熱風噴射孔43から噴射された熱風のすべて(又はほとんどすべて)がマットMの内部に進入し、マットMの内部を流れる。
一方、第2の加熱段階では、熱風噴射面45がマットの上面から離隔しているため、熱風噴射孔43から噴射された熱風の一部はマットMの内部に進入しない(一旦進入した熱風の一部がマットMの上面から流出する場合もある)。
このため、第2の加熱段階よりも第1の加熱段階の方が、より効率的にマットMが加熱される。前述したように、熱風噴射面45によってマットMが圧縮される場合は、一層効率的にマットMが加熱される。
【0047】
しかしながら、第1の加熱段階では、高温の熱風噴射面45がマットMに当接するため、その段階が長時間継続されると、マットM(その上面)の材質によっては、マットMの上面が溶融する等、変質するおそれもある。前述したように、熱風噴射面45によってマットMが圧縮される場合はなおさらである。
一方、第2の加熱段階では、高温の熱風噴射面45がマットMに当接しないため、上述のようなおそれはない(又はそのおそれは低い)。
【0048】
このため、加熱の開始時点から所定の高温状態となるまでは、第1の加熱段階としてマットMの上面に熱風噴射面45が当接した状態とされ、所定の高温状態となった後においては、第2段階としてマットMの上面から熱風噴射面45が離隔した状態とされるのである。
こうして、マットMは最も効率よく加熱されるのである。
【0049】
また、マットM(その上面)の材質によっては、当初から、上述の第1及び第2の加熱段階のうち、第2の加熱段階の方法のみでマットMが加熱されることも考えられる。
これによって、マットMの加熱の効率は若干下がるが、マットMが変質する等のおそれが回避される。特に、マットM(その上面)が高温によって変質しやすい場合や、変質した場合に最終製品としての技術的性能や美観が劣化するような場合に有効である。
逆に、マットM(その上面)の材質によっては、最後まで第1の加熱段階の方法のみでマットMが加熱されることも考えられる。これは、そのようにされてもマットM(その上面)が変質等をしない場合に有効である。
【0050】
[実施形態2]
次に、本発明の実施形態2について、図5に基づいて説明する。実施形態2は、実施形態1の変形例であり、実施形態1と相違する点を中心に説明する。実施形態1と同一の要素については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0051】
このマット加熱装置では、次のように、高温盤22に対して、枠体70(シート76)が往復移動可能に配設されている。
すなわち、枠体70にはローラ71が設けられており、枠体70は、エアシリンダ72によって、図1の紙面と直角の方向に往復移動可能とされている。高温盤22にはガイド部材79が設けられており、枠体70(ローラ71)は、ガイド部材79によってガイドされて往復移動する。
枠体70には、シート76が張設されている。シート76は、高温盤22によって高温状態とされる。シート76は、実施形態1の保護シート26と同様に、マットMの加熱時にその高温状態のマットMが高温面に対して貼着すること等を防止する機能を有していることが好ましい。この実施形態2においては、このシート76の上面が本発明の熱面に該当する。
枠体70(シート76)の往復移動の距離(ひいてはマットMの)往復移動の距離は、熱風盤42に設けられた熱風噴射孔43の隣接する各列間の間隔の半分又はその複数倍とされている。
【0052】
そして、このマット加熱装置では、シート76(その上面)に対してマットMが載置され、実施形態1において第2の加熱段階として説明した方法と同様の方法でマットMが加熱される。
すなわち、熱風噴射面45がマットMの上面に近接した(当接せず離隔している)各熱風噴射孔43から噴射される熱風によってマットMが加熱されるとともに、高温盤22によって高温とされたシート76によってもマットMが加熱される。
その際、上述のようにエアシリンダ72によって枠体70及びシート76が往復移動されることによって、マットMが往復移動される。このため、熱風噴射孔43から噴射される熱風が、マットMに対して均一に供給されるため、マットMが均一に高温とされる。なお、上述のようにマットMの往復移動の距離が設定されているために、より適切にマットMが均一に高温とされる。
【0053】
なお、上記のものはあくまで本発明の一実施形態にすぎず、当業者の知識に基づいて種々の変更を加えた態様で本発明を実施できることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態1のマット加熱装置を示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態1のマット加熱装置の要部を示す正断面図である。
【図3】本発明の実施形態1のマット加熱装置を示す図であり、図1中のIII−III線に沿って見た下面図である。
【図4】本発明の実施形態1のマット加熱装置の作用を示す断面図である。(a−1)及び(a−2)は第1の加熱段階を示し、(b)は、第2の加熱段階を示す。また、(a−1)は、第1の加熱段階のうち、マットが圧縮された状態を示し、(a−2)はマットが圧縮されない状態を示す。
【図5】本発明の実施形態2のマット加熱装置の一部を示す図である。(a)は、正面図であり、(b)は側面図である。
【符号の説明】
【0055】
22 高温盤(熱面)
26 保護シート(熱面)
43 熱風噴射孔
45 熱風噴射面
76 シート(熱面)
M マット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を主成分とし通気性及び熱可塑性を有するマットを冷間プレスして成形するのに先だって当該マットを加熱するマット加熱装置であって、
相互に対向する支持面と複数の熱風噴射孔とを有し、
前記支持面には、前記マットのおもて面及び裏面のうちの一方が当該支持面に接触した状態で当該マットが配設され、
前記複数の熱風噴射孔は、前記マットのおもて面及び裏面のうちの他方に対して熱風を噴射するものである、
マット加熱装置。
【請求項2】
繊維を主成分とし通気性及び熱可塑性を有するマットを冷間プレスして成形するのに先だって当該マットを加熱するマット加熱装置であって、
相互に対向するとともに相対的に接近及び離隔可能な支持面と熱風噴射面とを有し、
前記支持面には、前記マットのおもて面及び裏面のうちの一方が当該支持面に接触した状態で当該マットが配設され、
前記熱風噴射面には複数の熱風噴射孔が形成され、その複数の熱風噴射孔は、前記マットのおもて面及び裏面のうちの他方に対して熱風を噴射するものである、
マット加熱装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のマット加熱装置であって、
前記複数の熱風噴射孔のうちの少なくともいずれかについては、その下流端及びその近傍において当該下流端に向かうにつれてその開口面積が徐々に大きくなっている、
マット加熱装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載のマット加熱装置であって、
前記支持面と前記熱風噴射孔との対向方向と直角の成分を有する方向に、前記マットを前記熱風噴射孔に対して相対的に変位させるマット変位機構を有する、
マット加熱装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のマット加熱装置であって、
前記支持面は熱面である、
マット加熱装置。
【請求項6】
繊維を主成分とし通気性及び熱可塑性を有するマットを冷間プレスして成形するのに先だって当該マットを加熱するマット加熱方法であって、
前記マットのおもて面及び裏面のうちの一方が支持面に接触し、複数の熱風噴射孔を有する熱風噴射面が前記マットのおもて面及び裏面のうちの他方に当接した状態で、前記熱風噴射孔から当該マットに対して熱風が噴射される当接噴射段階と、
前記マットのおもて面及び裏面のうちの一方が前記支持面に接触し、前記熱風噴射面が前記マットのおもて面及び裏面のうちの他方から離隔した状態で、前記熱風噴射孔から当該マットに対して熱風が噴射される離隔噴射段階と
を有する、マット加熱方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−95716(P2006−95716A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281373(P2004−281373)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000133065)株式会社タケヒロ (16)
【Fターム(参考)】