マニピュレータシステム及びマニピュレータの制御方法
【課題】作業部にセンサ等の電気機器を用いることなく、該作業部を確実に原点復帰させることのできるマニピュレータシステムを提供する。
【解決手段】医療用のマニピュレータシステム500は、先端動作部12の姿勢が変化する作業部16を備えるマニピュレータ10と、該マニピュレータ10を制御するコントローラ514とを有する。コントローラ514は、原点復帰動作として、先端動作部12のグリッパ59を動作範囲の一端である原点位置P0に移動させる際、モータ40に対して、原点位置P0を超える仮想位置を第1制御目標値P1として出力し、その後、原点位置P0を第2制御目標値P2として出力する。第1制御目標値P1は、グリッパ59の制御目標値と実位置との偏差ε相当量よりも大きく原点位置P0を超えた位置である。
【解決手段】医療用のマニピュレータシステム500は、先端動作部12の姿勢が変化する作業部16を備えるマニピュレータ10と、該マニピュレータ10を制御するコントローラ514とを有する。コントローラ514は、原点復帰動作として、先端動作部12のグリッパ59を動作範囲の一端である原点位置P0に移動させる際、モータ40に対して、原点位置P0を超える仮想位置を第1制御目標値P1として出力し、その後、原点位置P0を第2制御目標値P2として出力する。第1制御目標値P1は、グリッパ59の制御目標値と実位置との偏差ε相当量よりも大きく原点位置P0を超えた位置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータによって駆動されて姿勢が変化する作用部を備えるマニピュレータと、該マニピュレータを制御する制御部とを有するマニピュレータシステム及びマニピュレータの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腹腔鏡下手術においては、患者の腹部等に小さな孔をいくつかあけて内視鏡、鉗子(又はマニピュレータ)等を挿入し、術者が内視鏡の映像をモニタで見ながら手術を行っている。このような腹腔鏡下手術は、開腹を必要としないため患者への負担が少なく、術後の回復や退院までの日数が大幅に低減されることから、適用分野の拡大が期待されている。
【0003】
マニピュレータシステムは、例えば特許文献1に記載されているように、マニピュレータ本体と、該マニピュレータ本体を制御する制御装置とから構成される。マニピュレータ本体は、人手によって操作される操作部と、操作部に対して交換自在に着脱される作業部とから構成される。
【0004】
作業部は長い連結シャフトと、該連結シャフトの先端に設けられた先端動作部(エンドエフェクタとも呼ばれる。)とを有し、ワイヤによって先端の作業部を駆動するモータが操作部に設けられている。ワイヤは基端側でプーリに巻き掛けられている。制御装置は、操作部に設けられたモータを駆動して、プーリを介してワイヤを循環駆動する。
【0005】
ところで、腹腔鏡下手術では、手技に応じて多様な作業部が用いられ、例えばグリッパ、はさみ、電気メス、超音波メス、医療用ドリル等が挙げられる。これらの作業部は操作部に対して着脱自在に構成され、装着時には作業部基端側のプーリが操作部に設けられたモータの回転軸に係合するように構成されている。
【0006】
このように、1つの操作部に対して複数の異なる作業部を接続することを前提としているシステムの場合、すべての作業部が唯一共通して着脱のできる姿勢となるモータ位相を設定する必要がある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。これを原点(又は初期位置)としている。
【0007】
前記の通り、モータと作業部との間はワイヤ等の伝達部材により接続されていることから、モータの側を原点に復帰させてもワイヤの不可避的な伸びや各部の摩擦等によりグリッパ側は完全には原点に復帰せず、偏差が残ることがある。
【0008】
このような偏差を防止するためには、例えばモータ側ではなく、作業部に相当する箇所にセンサを設けて(例えば、特許文献3及び特許文献4参照)、該センサの検出値により作業部が原点に復帰するようにフィードバック制御をするとよい。
【0009】
【特許文献1】特開2004−105451公報
【特許文献2】特開平8−71072号公報
【特許文献3】特開2002−261496号公報
【特許文献4】特開2006−149468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
医療用マニピュレータでは、作業部は体腔内に挿入されることに基づいて、いくつかの望ましい設計条件がある。すなわち、できるだけ小型軽量であること、操作部に対して交換自在であること、洗浄・滅菌が容易であること、電気メス等を除いて電気機器が存在しないこと等である。
【0011】
一方、作業部を原点に確実に復帰させるためには前記の特許文献3及び特許文献4記載の発明が挙げられるが、該発明では作業部に相当する箇所にセンサを設けている。このようなセンサを医療用マニピュレータに適用すると、作業部が大きく且つ重くなり、特に先端部の重量が重くなるとモーメントが大きくなるため操作性が低下する。また、電気的接続の必要性から操作部に対する交換が容易でなくなり、しかも洗浄・滅菌が困難となる。
【0012】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、作業部にセンサ等の電気機器を用いることなく、該作業部を確実に原点復帰させることのできるマニピュレータシステム及びマニピュレータの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るマニピュレータシステムは、アクチュエータによって駆動されて姿勢が変化する作用部を備えるマニピュレータと、該マニピュレータを制御する制御部とを有するマニピュレータシステムであって、前記制御部は、原点復帰動作として、前記作用部を動作範囲の一端に移動させる際、前記アクチュエータに対して、前記一端を超える仮想位置を第1制御目標値として出力し、その後、前記一端の位置を第2制御目標値として出力することを特徴とする。
【0014】
本発明に係るマニピュレータの制御方法は、アクチュエータによって駆動されて姿勢が変化する作用部を備えるマニピュレータの制御方法であって、原点復帰動作として、前記作用部を動作範囲の一端に移動させる際、前記アクチュエータに対して、前記一端を超える仮想位置を第1制御目標値として出力する第1工程と、前記第1工程の後、前記一端の位置を第2制御目標値として出力する第2工程とを有することを特徴とする。
【0015】
このように、一度、仮想位置を第1制御目標値として出力すると、作用部は確実に動作範囲の一端に達する。これにより、作用部にセンサ等の電気機器を用いることなく、該作用部を確実に原点復帰させることができる。このままでは、作用部、アクチュエータ及び動力の伝達部材に応力が残っているので、その後、一端の位置を第2制御目標値として出力することにより、該応力を除去することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るマニピュレータシステム及びマニピュレータの制御方法によれば、一度、仮想位置を第1制御目標値として出力すると、作用部は確実に動作範囲の一端に達する。これにより、作用部にセンサ等の電気機器を用いることなく、該作用部を確実に原点復帰させることができる。このままでは、作用部、アクチュエータ及び動力の伝達部材に応力が残っているので、その後、一端の位置を第2制御目標値として出力することにより、該応力を除去することができる。
【0017】
また、本発明では、マニピュレータにおけるアクチュエータと作用部との間が、不可避的に伸びるワイヤ等や摩擦を生じる伝達部材で接続されていても、作用部を相当正確に原点に復帰させ、偏差を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態として医療用のマニピュレータシステム500について添付の図1〜図14を参照しながら説明する。マニピュレータシステム500(図1参照)は、腹腔鏡下手術等に用いられるものである。
【0019】
図1に示すように、マニピュレータシステム500は、マニピュレータ10と、該マニピュレータ10を制御するコントローラ514とを有する。マニピュレータ10とコントローラ514との接続部には着脱可能なようにコネクタが設けられている。
【0020】
マニピュレータ10は、先端動作部12に生体の一部又は湾曲針等を把持して所定の処置を行うためのものである。マニピュレータ10は、基本構成として操作部(第1部分)14と作業部(第2部分)16とを有する。コントローラ514は、マニピュレータ10の電気的な制御をするものであり、グリップハンドル26の下端部から延在するケーブル61に対してコネクタを介して接続されている。
【0021】
図2に示すように、マニピュレータシステム500は、選択的に種々の構成を採りうる。すなわち、作業部16は、バリエーションとして作業部16a〜16dが用意されている。操作部14に対し、作業部16aに代えて作業部16b、16c及び16dを装着することができる。すなわち、術者は手技の種類や慣れ等に応じて作業部16a〜16dを選択することができる。このうち、作業部16bは先端動作部12がはさみとなっている。作業部16cは先端動作部12がブレード型電気メスとなっている。作業部16dは先端動作部12がフック型電気メスとなっている。各作業部16a〜16dは、接続部15内のプーリ(従動体)50a、50b及び50c(図1参照)は共通の構成となっている。
【0022】
次に、操作部14及び作業部16aとを有するマニピュレータ10について説明する。
【0023】
マニピュレータ10は、先端動作部12に生体の一部又は湾曲針等を把持して所定の処置を行うためのものであり、通常、把持鉗子やニードルドライバ(持針器)等とも呼ばれる。
【0024】
図1及び図3に示すように、マニピュレータ10は、人手によって把持及び操作される操作部14と、該操作部14に対して着脱自在な作業部16とを有する。
【0025】
以下の説明では、図1における幅方向をX方向、高さ方向をY方向及び、連結シャフト48の延在方向をZ方向と規定する。また、右方をX1方向、左方をX2方向、上方向をY1方向、下方向をY2方向、前方をZ1方向、後方をZ2方向と規定する。さらに、特に断りのない限り、これらの方向の記載はマニピュレータ10が中立姿勢である場合を基準として表すものとする。これらの方向は説明の便宜上のものであり、マニピュレータ10は任意の向きで(例えば、上下を反転させて)使用可能であることはもちろんである。
【0026】
作業部16は、作業を行う先端動作部12と、操作部14のアクチュエータブロック30に対して接続される接続部15と、これらの先端動作部12と接続部15とを連接する長尺で中空の連結シャフト48とを有する。作業部16は、アクチュエータブロック30における所定の操作によって操作部14から離脱可能であって、洗浄、滅菌及びメンテナンス等を行うことができる。
【0027】
先端動作部12及び連結シャフト48は細径に構成されており、患者の腹部等に設けられた円筒形状のトラカール20から体腔22内に挿入可能であり、操作部14の操作により体腔22内において患部切除、把持、縫合及び結紮等の様々な手技を行うことができる。
【0028】
操作部14は、人手によって把持されるグリップハンドル26と、該グリップハンドル26の上部から延在するブリッジ28と、該ブリッジ28の先端に接続されたアクチュエータブロック30とを有する。
【0029】
図1に示すように、操作部14のグリップハンドル26は、ブリッジ28の端部からY2方向に向かって延在しており、人手によって把持されるのに適した長さであり、入力手段としてのトリガーレバー32と、複合入力部34と、スイッチ36とを有する。
【0030】
ブリッジ28の上面(又は側面)における視認しやすい箇所にはLED29が設けられている。LED29は、マニピュレータ10の制御状態を示すインジケータであり、操作者が容易に認識可能な大きさであり、且つ操作に支障がない程度に十分に小型軽量である。LED29は、ブリッジ28の上面における略中央部で、視認性のよい位置に設けられている。
【0031】
グリップハンドル26の下端には、コントローラ514に接続されるケーブル61が設けられている。グリップハンドル26とケーブル61とは一体的に接続されている。グリップハンドル26とケーブル61とはコネクタにより接続されていてもよい。
【0032】
複合入力部34は、先端動作部12に対してロール方向(軸回転方向)及びヨー方向(左右方向)の回転指令を与える複合的な入力手段であり、例えば軸回転に動作する第1入力手段によってロール方向指示を行い、横方向に動作する第2入力手段によってヨー方向指示を行うことができる。トリガーレバー32は、先端動作部12のグリッパ(作用部)59(図1参照)の開閉指令を与える入力手段である。つまり、コントローラ514は、ロール軸、ヨー軸及びグリッパ軸に対応したモータ40、41、42の角度を示す内部信号を保持しており、複合入力部34及びトリガーレバー32の信号に基づいてこれらの内部信号を変化させてモータ40、41、42の角度が一致するように制御をしている。
【0033】
図3及び図4に示すように、複合入力部34、トリガーレバー32には、それぞれ動作量を検出する入力センサ39a、39b、39cが設けられており、検出した動作信号をコントローラ514に供給する。
【0034】
トリガーレバー32は、ブリッジ28のやや下方でZ1方向にやや突出したレバーであり、人差し指による操作が容易な位置に設けられている。
【0035】
トリガーレバー32は、グリップハンドル26に対してアーム98により接続されており、該グリップハンドル26に対して進退するように構成されている。
【0036】
スイッチ36はグリップハンドル26に対して進退する操作機構であって、トリガーレバー32とスイッチ36とはグリップハンドル26におけるZ1方向の面で、グリップハンドル26の長尺方向(Y方向)に並んで配置されている。スイッチ36はトリガーレバー32の直下(Y2方向)に設けられている。スイッチ36とトリガーレバー32との間には薄い板材130が設けられている。
【0037】
スイッチ36はオルタネート式であって、一度手前(Z2方向)に引き込むことによってオン状態にロックされ、操作子36aは手前側の位置に保持される。再度スイッチ36を手前側に引き込むことによってオン状態は解除されてオフ状態となり、図示しない弾性体によって先端側(Z1方向)の位置に復帰する。
【0038】
マニピュレータ10の動作状態に係る動作モード又は停止モードはスイッチ36の操作によって変更される。つまり、コントローラ514は、スイッチ36の状態を読み込み、オン状態であるときに動作モードとし、オン状態からオフ状態に切り換わったときに原点復帰動作としてモータ40、41、42を所定の原点に戻し、原点に戻った後に停止モードとする。動作モードとは、トリガーレバー32や複合入力部34の操作に基づいて先端動作部12を駆動させるモードであり、停止モードとは、先端動作部12が所定の原点姿勢で停止させるモードである。原点復帰動作については後述する。
【0039】
これらのモード及び動作はコントローラ514によって区別されて制御され、LED29の点灯状態が切り換えられる。
【0040】
アクチュエータブロック30には先端動作部12が有する3自由度の機構に対応してモータ40、モータ41及びモータ42が連結シャフト48の延在方向に沿って並列して設けられている。これらのモータ40、41及び42は小型、細径であって、アクチュエータブロック30はコンパクトな扁平形状に構成されている。アクチュエータブロック30は、操作部14のZ1方向端部の下方に設けられている。また、モータ40、41及び42は、操作部14の操作に基づき、コントローラ514の作用下に回転をする。
【0041】
モータ40、41及び42には、回転角度を検出することのできる角度センサ(検出手段)43、44及び45が設けられており、検出した角度信号はコントローラ514に供給される。角度センサ43、44及び45としては、例えばロータリエンコーダが用いられる。
【0042】
作業部16は、アクチュエータブロック30に対して接続される接続部15と、該接続部15からZ1方向に向かって延在する中空の連結シャフト48とを有する。接続部15には、モータ40、41及び42の駆動軸に接続されるプーリ50a、プーリ50b及びプーリ50cが回転自在に設けられている。プーリ50a〜50cにはそれぞれカップリングが設けられている。
【0043】
プーリ50a、プーリ50b及びプーリ50cには、ワイヤ(伝達部材)52、ワイヤ53及びワイヤ54が巻き掛けられており、連結シャフト48の中空部分48a(図5参照)を通って先端動作部12まで延在している。ワイヤ52、ワイヤ53及びワイヤ54はそれぞれ同種、同径のものを用いることができる。
【0044】
作業部16は、アクチュエータブロック30における所定の操作によって操作部14から離脱可能であって、洗浄、滅菌及びメンテナンス等を行うことができる。また、作業部16は他の形式のもの(図2参照)に交換可能であって、手技に応じて連結シャフト48の長さの異なるもの、又は先端動作部12の機構が異なるものを装着することができる。
【0045】
作業部16は、操作部14に対して着脱自在であり、プーリ50a、50b及び50cの中心穴に対して、モータ40、41及び42の回転軸40a、41a及び42aが嵌合するように構成されている。プーリ50a、50b及び50cのY2方向下端にはそれぞれ十字状の結合凸部が設けられ、回転軸40a、41a及び42aには十字状の結合凹部が設けられている。結合凸部と結合凹部は互いに係合可能に形成されており、モータ40、41及び42の回転がプーリ50a、50b及び50cに対して確実に伝達される。これらの係合部は十字形状に限られない。
【0046】
接続部15には、作業部を個体識別することのできるID(識別子)を保持するID保持部104が設けられている。
【0047】
ID保持部104は、例えばRFID(Radio Frequency Identification)等の無線式、バーコード、マトリックス型二次元コード等の光学式等の非接触検出式、又は小突起列等の接触式で構成するとよい。
【0048】
ID保持部104の保持するIDは、作業部16a〜16d毎に識別が可能なように異なる値が付与されている。
【0049】
ところで、ID保持部104は直接的な通電の必要がなく、接続部15及び作業部16には電気的接点やセンサ類がない。したがって、操作部14から取り外した作業部16は洗浄、滅菌等を容易に行うことができる。つまり、モータやスイッチ、センサ等の電気機器をすべて操作部14側に配し、連結シャフト48及び先端動作部12を有する機械構成部品を作業部16側に配することで洗浄性を向上させている。作業部16と操作部14では汚れ具合、汚れ種類、洗浄方法が異なり、異なるメンテナンスが行われるため、離脱可能にすることが好適である。マニピュレータ10では、作業部16に電気機器を設ける必要がなく、操作部14に対する交換が容易である。
【0050】
また、先端動作部12は、電気機器を設ける必要がないことから小型、細径及び軽量であって、しかも先端重量が小さいことからモーメントが小さく、マニピュレータ10の操作性が向上する。
【0051】
操作部14は、接続された作業部16のID保持部104における情報を読取ってコントローラ514に供給するID中継部(識別手段)106を有する。ID中継部106は、例えば、カメラやRFID用の送受信回路又はフォトカプラー等により構成される。
【0052】
接続部15を操作部14から取り外す場合には、アクチュエータブロック30の両側面に設けられたレバー206を押してそれぞれ外方に開くように傾動させ、該レバー206の楔部206aを、接続部15の両側面に設けられた係合片200から解放する。これにより接続部15を操作部14から上方(Y1方向)に引き抜き、取り外しが可能となる。アクチュエータブロック30の上面には3本のアライメントピン212が設けられており、接続部15に設けられた嵌合孔202に嵌合することにより該接続部15を安定して保持可能である。接続部15を操作部14に取り付ける場合には、3本のアライメントピン212がそれぞれ嵌合孔202に嵌合するように合わせて、接続部15を下方(Y2方向)に押し下げる。これにより、レバー206は一旦外方に拡がり、その後原位置に戻ることにより係合片200に係合して、接続が完了する。
【0053】
接続部15が載置されるアクチュエータブロック30の上面30bにおいて、Z2方向の端部近傍には、接続部15の有無を検出する作業部検出手段107が設けられている。作業部検出手段107は、対向する位置に設けられた投光器107aと受光器107bとを有し、該投光器107aと該受光器107bとの間に接続部15の後端の一部が挿入されて遮光することにより該接続部15が装着されたことを検出できる。投光器107aと受光器107bは、X方向に対向する向きで且つ近接した位置に設けられている。投光器107aは例えばLEDであり、受光器107bは例えばフォトダイオードである。
【0054】
図5及び図6に示すように、先端動作部12はY方向の第1回転軸Oyを中心にして、それよりも先の部分がヨー方向に回動する第1自由度の機構(傾動機構、ピボット軸)と、第2回転軸Orを中心にしてロール方向に回動する第2自由度の機構(ロール回転機構)と、第3回転軸Ogを中心として先端のグリッパ59を開閉させる第3自由度とを有する合計3自由度の機構となっている。
【0055】
第1自由度の機構である第1回転軸Oyは、連結シャフト48の基端側から先端側に延在する軸線Cと非平行に回動可能に設定するとよい。第2自由度の機構である第2回転軸Orは先端動作部12における先端部(つまりグリッパ59)の延在方向の軸線を中心として回動可能な機構とし、先端部をロール回転可能に設定するとよい。
【0056】
グリッパ59は、原点位置で完全に閉状態となり、該原点位置を基準として所定角度開くことができる。グリッパ59は片開き式に限らず、両開き式でもよい。片開き式とは、グリッパ59を構成する一対の把持部材のうちいずれか一方が開閉する形式であり、両開き式とはグリッパ59を構成する一対の把持部材の両方が開閉する形式である。
【0057】
先端動作部12は、ワイヤ52、ワイヤ53及びワイヤ54によって駆動され、各ワイヤ52、53及び54は、それぞれ対応する筒体60c、60b、60aに巻き掛けられている。
【0058】
先端動作部12では、ワイヤ52及び54の作用下に歯車51及び55が回転し、図示しないフェイスギアを回転させることによって先端部をロール方向に回転させることができる。また、ワイヤ54の作用下に歯車51が回転し、ファイスギア57及び歯車58を介してグリッパ59を開閉させることができる。さらに、ワイヤ52、53、54の作用下に主軸部材62を介して先端部をヨー方向に回転させることができる。
【0059】
次に、コントローラ514の内部構成について図7を参照しながら説明する。
【0060】
図7に示すように、コントローラ514は演算部110と、電源部112と、保護装置114と、ドライバ116とを有する。電源部112は、外部電源119から得られる電力を調整して各部に供給するとともに、バッテリ112aに充電を行い、外部電源119から電力が供給されない場合においても自動的にバッテリ112aからの電力供給へと切り換える機能を有しており、いわゆる無停電電源として作用する。バッテリ112aは内部の変圧整流器に対して、通常並列に接続される。
【0061】
演算部110は、角度センサ43、44、45、入力センサ39a、39b、39c、及びスイッチ36に接続されており、これらの各部から得られる信号に基づいてマニピュレータ10の動作を決定して、所定の指令信号をドライバ116に供給するとともに、所定の表示部に状態量を表示させる。演算部110はLED29にも接続されており、該LED29の点灯状態の制御をする。さらに、演算部110は、コントローラ514の表面の、各種スイッチ類に接続されており、制御をする。演算部110は、CPU、ROM及びRAM等から構成されており、プログラムを読み込み実行することにより所定のソフトウェア処理を実行する。
【0062】
ドライバ116は、モータ40、41及び42に接続されており、演算部110から得られる指令に基づいて該モータ40、41及び42を駆動する。ところで、これらのモータ40、41及び42の駆動系は、先ず、入力センサ39a、39b、39cに基づいて先端動作部に対する動作角度指令値を求め、該動作角度指令値と角度センサ43、44、45から得られる角度信号との偏差を求め、該偏差に基づいて所定の補償処理をして指令信号をドライバ116に供給している。したがって、これらの各モータ40、41及び42の駆動系は閉ループを形成している。
【0063】
演算部110は、ID認識部(識別手段)120と、原点復帰制御部122とを有する。ID認識部120は、ID保持部104のIDを認識する。
【0064】
次に、このようなマニピュレータシステム500の作用を図8に基づいて説明する。マニピュレータシステム500は、コントローラ514の演算部110の統合的な制御作用下に動作し、基本的には図8に示すフローチャートに従った処理を行う。図8の処理は予め決められた制御周期にしたがって繰り返し実行される。以下の説明では、断りのない限りステップ番号順に処理が行われるものとする。
【0065】
図8のステップS11において、操作部14の角度検出器及び駆動部モータの角度検出器の出力を演算部110にて読み取る。
【0066】
ステップS12において、指令入力手段やスイッチ36等の入力を演算部110で認識する。
【0067】
ステップS13において、演算部110による認識結果をもとにマニピュレータ10の制御モードを決定する。
【0068】
ステップS14において、判定された制御モードにしたがって動作方式の判別とモータ40、41及び42の目標値を生成する。
【0069】
ステップS15において、生成された制御目標値と先に読み取った角度センサ43、44及び45の信号とからPID制御等の制御演算によってモータ出力を算出しドライバ116へ出力する。
【0070】
ステップS16において、定義された種々の条件と角度センサ43、44及び45等で読み取った状態とを比較し、状態判別を行う。
【0071】
ステップS17において、判別された結果に基づき、コントローラ514に装備されたランプへ出力を行う。
【0072】
次に、原点復帰動作について図9〜図13を参照しながら説明する。原点復帰動作は、スイッチ36やコントローラ514に設けられたスイッチの操作に基づいて、コントローラ514によって行われ、第1段階復帰動作の区間T1(図10参照)と、第2段階復帰動作の区間T2とに分けて制御がなされる。図9では、主に、先端動作部12の3軸の機構のうちグリッパ59を動作範囲の一端、つまり原点位置P0(図10参照)に自動的に移動させる処理について説明する。モータ40の角度は、角度センサ43が設けられてフィードバックをしているので、少なくとも静的には、制御目標値に対する実質的な偏差はないものとする。
【0073】
図9のステップS101において、スイッチ36等の状態を監視し、原点復帰指令の有無を確認する。原点復帰指令が発生したときにはステップS102へ移り、原点復帰指令がないときには待機する。
【0074】
ステップS102において、原点復帰動作を開始する準備がなされているか否かを確認する。準備ができているときにはステップS104へ移り、準備ができていないときには所定の準備処理(ステップS103)をして待機する。
【0075】
原点復帰動作を開始する準備とは、所定のサーボフラグがオンで、第1段階原点復帰動作中フラグ及び第2段階原点復帰動作中フラグがオフで、第2段階動作完了フラグがオフで、且つ、接続されている作業部16が対応する種類のものであるという条件である。サーボフラグは、モータ40、41、42のサーボ制御が可能な状態を示すフラグである。第1段階原点復帰動作中フラグ及び第2段階原点復帰動作中フラグは、区間T1及び区間T2の制御を実行中であることを示すフラグである。第1段階動作完了フラグ及び第2段階動作完了フラグは区間T1及び区間T2の制御が終了したことを示すフラグである。それぞれのフラグは、オンであるときに対応する条件が肯定で、オフであるときに否定を示す。
【0076】
ステップS104において、第1段階復帰動作が終了しているか否かを確認する。つまり、第1段階動作完了フラグを監視し、該フラグがオンであるときにはステップS106へ移り、オフであるときにはステップS105へ移る。
【0077】
ステップS105において、第1段階復帰動作を行うための所定のパラメータの設定を行う。つまり、現在の動作開始角度を取得し、第1制御目標値P1を設定し、第1段階原点復帰動作中フラグをオンにする。
【0078】
図10に示すように、第1制御目標値P1は原点位置P0を閉方向に超える仮想位置として設定されている。第1制御目標値P1は、グリッパ59における目標位置と実位置との偏差εの相当量よりも大きく原点位置P0を超えた位置であり、これにより、原点位置P0における偏差をなくすことができる。図10における実線410は制御目標値、モータ40又はプーリ50aの角度であり、破線412はグリッパ59の実開度を示し、実線と破線との距離が偏差εである。偏差εが一定でない場合には、制御目標値が原点位置P0であるときの偏差ε0に基づいて第1制御目標値P1を設定するとよい。つまり、P1<P0−ε0に設定するとよい。
【0079】
また、第1制御目標値P1は、原点復帰動作以外の通常動作時におけるグリッパ59の制御目標値の制限値Pxより小さい位置に設定する。つまり、通常動作時にも、対象物を確実に把持する力を発生させるために、制御目標値を、原点位置P0を超えた位置で且つ制限値Pxを超えない範囲の値に設定する場合がある。第1制御目標値P1をこの制限値Pxより小さい位置に設定することにより、第1制御目標値P1が過大となることを防止するとともに、原点復帰動作の時間短縮を図ることができる。
【0080】
ステップS106において、第2段階復帰動作を行うための所定のパラメータの設定を行う。つまり、その時点の動作開始角度(第1制御目標値P1にほぼ一致している。)を取得し、第2制御目標値P2を設定し、第2段階原点復帰動作中フラグをオンにする。第2制御目標値P2は、原点位置P0に一致している。ステップS105又はS106の後、ステップS107へ移る。
【0081】
ステップS107において、PTP(Point to Point)動作目標値を生成する。PTP動作とは現在位置と目標位置とを結ぶ目標軌道を生成して、該軌道に従う動作である。現在位置と目標位置とを結ぶ直線補間、台形速度補間又はS字加減速軌道等により実現される。
【0082】
ステップS108において、PTP動作を実行するための制御演算を行う。なお、ステップS105〜S108までの処理は、第1段階復帰動作及び第2段階復帰動作における初回のみ実行すればよい。
【0083】
ステップS109において、制御演算結果に基づくモータ40に対して駆動出力を行う。
【0084】
ステップS110において、動作移行判断を行う。つまり、第1段階復帰動作中は、角度センサ43の検出値が第1制御目標値P1に達したか否かを監視し、該検出値が第1制御目標値P1に達したときに第1段階原点復帰動作中フラグをオフにし、第1段階復帰動作完了フラグをオンにする。
【0085】
第2段階復帰動作中は、角度センサ43の検出値が第2制御目標値P2(=P0)に達したか否かを監視し、該検出値が第2制御目標値P2に達したときに第2段階原点復帰動作中フラグをオフにし、第2段階復帰動作完了フラグをオンにする。これらの判断は、誤差等を考慮して多少の余裕をみて判断をしてもよい。
【0086】
ステップS111において、終了判定を行う。つまり、第1段階復帰動作完了フラグ及び第2段階復帰動作完了フラグの両方がオンになっているときに、原点復帰動作が終了と判定し、図9に示す処理を終了する。それ以外のときには、ステップS104へ戻る。
【0087】
原点復帰動作の開始時の制御目標値が第1制御目標値P1に等しいときには、第1段階復帰動作が即時に終了し、実質的には第2段階復帰動作から開始する。
【0088】
原点復帰動作の開始時の制御目標値が第1制御目標値P1と制限値Pxとの間の値であるとき、つまり、グリッパ59を強く閉じようとしているときには、ステップS102とS104との間で、第1段階復帰動作完了フラグをオンにして、所定の簡便化を図ってもよい。
【0089】
区間T1及びT2による2段階原点復帰の必要がない作業部(例えば、電気メスの作業部16c)が装着されている場合には、通常の原点復帰動作を実行するために、ステップS102とS104との間で、第1段階復帰動作完了フラグをオンにすればよい。
【0090】
ステップS102における判定条件から、第2段階復帰動作完了フラグをオフにする処理を省略すると、原点復帰動作を再度実行することができる。このような処理は、例えば、不測の事態により原点復帰動作に不都合が発生した場合に、操作者の所定の操作に基づいて行うとよい。なお、図9におけるステップS101は、図8におけるステップS12に対応付けられ、ステップS103〜S106は、ステップS13に対応付けられ、ステップS107及びS108はステップS14に対応付けられ、ステップS109〜S110はステップS15に対応付けることができる。
【0091】
次に、上記の制御処理によるマニピュレータ10の作用について説明する。
【0092】
先ず、原点復帰動作の開始時には、図11の仮想線で示すように、グリッパ59は所定量だけ開いているとする。図11〜図13においては、理解を容易にするため、モータ40及びプーリ50aの角度とグリッパ59の回転体300の角度との減速比は1とし、ヨー軸及びロール軸の機構は省略する。グリッパ59の開閉機構も簡略化している。プーリ50a及び回転体300の角度を理解しやすいように基準となるマーカ302及び304を図示している。プーリ50a及び回転体300の原点位置P0は、マーカ302及び304を基準として、それぞれZ2方向とする。
【0093】
原点復帰動作を開始して、回転体300及びプーリ50aがそれぞれ反時計方向(グリッパ59が閉じる方向)に回転し、時刻t1(図10参照)になったときには、図11に示すように、プーリ50aは原点位置P0に達するが、この時点では回転体300は原点位置P0に達することなく、偏差εが残っている。ワイヤ52の伸びや各部の摩擦等の反力があるためである。図11及び図12では、模式的に、強い張力がかかってワイヤ52の伸びている箇所を細く、張力のより弱い箇所を太く示している。
【0094】
このような偏差εが残ったままであると、操作者に違和感を与えるとともに、偏差εが大きいときにはトラカール20(図1参照)を通しにくい。また、この状態で停止してモータ40とプーリ50aとを切り離すと、ワイヤ52の伸びが元に戻ることにより、プーリ50aは時計方向に回転する。
【0095】
そこで、図12に示すように、プーリ50a及び回転体300をさらに反時計方向に回転させる。時刻t2(図10参照)になったときには、プーリ50aは原点位置P0よりも偏差εに相当する量だけ回転し、回転体300は原点位置P0に達し、グリッパ59は完全に閉状態となる。このとき、コントローラ415の制御指令値は、仮想的にグリッパ59を閉位置よりもさらに偏差εに相当する量だけ通過した箇所(仮想線のグリッパ59参照)を指示することになる。
【0096】
この状態でも、グリッパ59は閉状態となるのであるが、種々の制御誤差等を考慮し、確実にグリッパ59を閉じさせるために、プーリ50aを第1制御目標値P1まで反時計方向にさらに回転させる(仮想線のマーク302参照)。
【0097】
これにより、グリッパ59は完全に閉状態となる。第1制御目標値P1は制限値Pxよりは小さく、ワイヤ52やグリッパ59等に過大な力が加わることを防止できるとともに、原点復帰動作時間を短縮することができる。
【0098】
この状態では、グリッパ59は閉状態となっているが、モータ40とプーリ50aとを切り離すと、ワイヤ52の伸びはある程度元に戻るが、張力が相当残留し該ワイヤ52の寿命が低減する。また、モータ40及びプーリ50aの双方が原点位置P0ではないので、原点位置P0における着脱を想定しているシステムには不都合である。つまり、操作部14から所定の作業部16を取り外し、別の作業部16を装着しようとしたときに物理的な装着が困難になるとともに、ソフトウェア処理上で原点位置P0を基準とした所定のパラータの初期化手順が複雑になる。
【0099】
そこで、図13に示すように、プーリ50a及び回転体300を時計方向(グリッパ59が開く方向)に回転させ、原点位置P0まで戻す。このとき、回転体300は実質的に回転することなく原点位置P0の状態をほぼ維持するとともに、ワイヤ52の伸びは元に戻る。従って、モータ40、プーリ50a及び回転体300が原点位置P0に安定して保持される。モータ40とプーリ50aとを切り離しても、ワイヤ52の張力は実質的に0又は元の張力になっていることから回転体300及びプーリ50aは実質的に動くことがなく、しかもワイヤ52の高寿命化を図ることができる。
【0100】
上述したように、本実施の形態に係るマニピュレータシステム500によれば、一度、仮想位置を第1制御目標値P1として出力し、グリッパ59は確実に動作範囲の一端である原点位置P0に達する。これにより、グリッパ59にセンサ等の電気機器を用いることなく、該作用部を確実に原点復帰させることができる。このままでは、グリッパ59、モータ40及びワイヤ52に応力が残っているので、その後、原点位置P0を第2制御目標値P2として出力することにより、該応力を除去することができる。
【0101】
グリッパ59の原点位置P0は閉位置であることから、原点復帰を目視により容易に確認することができるとともに、細径になってトラカール20を通しやすい。
【0102】
モータ40には、動作位置を検出する角度センサ43が設けられ、第1段階原点復帰動作時に、コントローラ514は、該角度センサ43から得られる値を監視し、モータ40が第1制御目標値P1に達したことを確認してから第2段階原点復帰動作に移行する。これにより、モータ40は確実に第1制御目標値P1まで達するので、グリッパ59の偏差を一層確実になくすことができる。
【0103】
マニピュレータ10の作業部16には電気機器を設ける必要がなく、操作部14から取り外して洗浄・滅菌が容易となる。
【0104】
コントローラ514は、ID中継部106から得られる作業部16の種類に応じて第1制御目標値P1を変更してもよい。これにより、作業部16の種類に応じた適切な制御が可能となる。
【0105】
作業部16は、人手で操作をする操作部14に接続されるものとして説明したが、例えば図14に示すような手術用ロボットシステム700に適用してもよい。
【0106】
手術用ロボットシステム700は、ロボットアーム702と、コンソール704とを有し、作業部16はロボットアーム702の先端に接続されている。ロボットアーム702の先端には前記のアクチュエータブロック30と同じ機構を設けることにより、作業部16を接続及び駆動可能である。この場合のマニピュレータ10は、ロボットアーム702と作業部16とを有する。ロボットアーム702は、作業部16を移動させる手段であればよく、据置型に限らず、例えば自律移動型でもよい。コンソール704は、テーブル型、制御盤型等の構成を採りうる。
【0107】
ロボットアーム702は、独立的な6以上の関節(回転軸やスライド軸等)を有すると、作業部16の位置及び向きを任意に設定できて好適である。先端のアクチュエータブロック30は、ロボットアーム702の先端部708と一体化している。
【0108】
ロボットアーム702は、コンソール704の作用下に動作し、プログラムによる自動動作や、コンソール704に設けられたジョイスティック(ロボット操作部)706に倣った動作、及びこれらの複合的な動作をする構成にしてもよい。コンソール704は、前記のコントローラ514の機能を含んでいる。
【0109】
コンソール704には、前記操作部14のうちアクチュエータブロック30を除いた機構の操作部としての2つのジョイスティック706と、モニタ710が設けられている。図示を省略するが、2つのジョイスティック706により、2台のロボットアーム702を個別に操作が可能である。2つのジョイスティック706は、両手で操作しやすい位置に設けられている。モニタ710には、内視鏡による画像等の情報が表示される。
【0110】
ジョイスティック706は、上下動作、左右動作、捻り動作、及び傾動動作が可能であり、これらの動作に応じてロボットアーム702を動かすことができる。ジョイスティック706はマスターアームであってもよい。ロボットアーム702とコンソール704との間の通信手段は、有線、無線、ネットワーク又はこれらの組合わせでよい。
【0111】
本発明に係るマニピュレータシステムは、医療用に限らず、例えば、エネルギー機器等の狭隘部補修の用途に適用可能であることはもちろんである。
【0112】
本発明に係るマニピュレータシステム及びマニピュレータの制御方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本実施の形態に係るマニピュレータシステムの概略構成図である。
【図2】本実施の形態に係るマニピュレータシステムの構成の組合わせに係る説明図である。
【図3】作業部と操作部とを分離したマニピュレータの側面図である。
【図4】操作部の斜視図である。
【図5】先端動作部の斜視図である。
【図6】先端動作部の分解斜視図である。
【図7】コントローラのブロック構成図である。
【図8】マニピュレータシステムの動作を示すメインフローチャートである。
【図9】原点復帰処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】原点復帰処理時の先端動作部のおける制御目標値及びグリッパの角度変化を示すグラフである。
【図11】原点復帰処理時のモータ及びグリッパの第1の状態を示す模式図である。
【図12】原点復帰処理時のモータ及びグリッパの第2の状態を示す模式図である。
【図13】原点復帰処理終了時のモータ及びグリッパの状態を示す模式図である。
【図14】作業部をロボットアームの先端に接続した手術用ロボットシステムの概略斜視図である。
【符号の説明】
【0114】
10…マニピュレータ 12…先端動作部
14…操作部 16、16a〜16d…作業部
40、41、42…モータ 43、44、45…角度センサ
50a〜50c…プーリ 52、53、54…ワイヤ
59…グリッパ 300…回転体
500…マニピュレータシステム 514…コントローラ
700…手術用ロボットシステム T1、T2…区間
P0…原点位置 P1…第1制御目標値
P2…第2制御目標値
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータによって駆動されて姿勢が変化する作用部を備えるマニピュレータと、該マニピュレータを制御する制御部とを有するマニピュレータシステム及びマニピュレータの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腹腔鏡下手術においては、患者の腹部等に小さな孔をいくつかあけて内視鏡、鉗子(又はマニピュレータ)等を挿入し、術者が内視鏡の映像をモニタで見ながら手術を行っている。このような腹腔鏡下手術は、開腹を必要としないため患者への負担が少なく、術後の回復や退院までの日数が大幅に低減されることから、適用分野の拡大が期待されている。
【0003】
マニピュレータシステムは、例えば特許文献1に記載されているように、マニピュレータ本体と、該マニピュレータ本体を制御する制御装置とから構成される。マニピュレータ本体は、人手によって操作される操作部と、操作部に対して交換自在に着脱される作業部とから構成される。
【0004】
作業部は長い連結シャフトと、該連結シャフトの先端に設けられた先端動作部(エンドエフェクタとも呼ばれる。)とを有し、ワイヤによって先端の作業部を駆動するモータが操作部に設けられている。ワイヤは基端側でプーリに巻き掛けられている。制御装置は、操作部に設けられたモータを駆動して、プーリを介してワイヤを循環駆動する。
【0005】
ところで、腹腔鏡下手術では、手技に応じて多様な作業部が用いられ、例えばグリッパ、はさみ、電気メス、超音波メス、医療用ドリル等が挙げられる。これらの作業部は操作部に対して着脱自在に構成され、装着時には作業部基端側のプーリが操作部に設けられたモータの回転軸に係合するように構成されている。
【0006】
このように、1つの操作部に対して複数の異なる作業部を接続することを前提としているシステムの場合、すべての作業部が唯一共通して着脱のできる姿勢となるモータ位相を設定する必要がある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。これを原点(又は初期位置)としている。
【0007】
前記の通り、モータと作業部との間はワイヤ等の伝達部材により接続されていることから、モータの側を原点に復帰させてもワイヤの不可避的な伸びや各部の摩擦等によりグリッパ側は完全には原点に復帰せず、偏差が残ることがある。
【0008】
このような偏差を防止するためには、例えばモータ側ではなく、作業部に相当する箇所にセンサを設けて(例えば、特許文献3及び特許文献4参照)、該センサの検出値により作業部が原点に復帰するようにフィードバック制御をするとよい。
【0009】
【特許文献1】特開2004−105451公報
【特許文献2】特開平8−71072号公報
【特許文献3】特開2002−261496号公報
【特許文献4】特開2006−149468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
医療用マニピュレータでは、作業部は体腔内に挿入されることに基づいて、いくつかの望ましい設計条件がある。すなわち、できるだけ小型軽量であること、操作部に対して交換自在であること、洗浄・滅菌が容易であること、電気メス等を除いて電気機器が存在しないこと等である。
【0011】
一方、作業部を原点に確実に復帰させるためには前記の特許文献3及び特許文献4記載の発明が挙げられるが、該発明では作業部に相当する箇所にセンサを設けている。このようなセンサを医療用マニピュレータに適用すると、作業部が大きく且つ重くなり、特に先端部の重量が重くなるとモーメントが大きくなるため操作性が低下する。また、電気的接続の必要性から操作部に対する交換が容易でなくなり、しかも洗浄・滅菌が困難となる。
【0012】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、作業部にセンサ等の電気機器を用いることなく、該作業部を確実に原点復帰させることのできるマニピュレータシステム及びマニピュレータの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るマニピュレータシステムは、アクチュエータによって駆動されて姿勢が変化する作用部を備えるマニピュレータと、該マニピュレータを制御する制御部とを有するマニピュレータシステムであって、前記制御部は、原点復帰動作として、前記作用部を動作範囲の一端に移動させる際、前記アクチュエータに対して、前記一端を超える仮想位置を第1制御目標値として出力し、その後、前記一端の位置を第2制御目標値として出力することを特徴とする。
【0014】
本発明に係るマニピュレータの制御方法は、アクチュエータによって駆動されて姿勢が変化する作用部を備えるマニピュレータの制御方法であって、原点復帰動作として、前記作用部を動作範囲の一端に移動させる際、前記アクチュエータに対して、前記一端を超える仮想位置を第1制御目標値として出力する第1工程と、前記第1工程の後、前記一端の位置を第2制御目標値として出力する第2工程とを有することを特徴とする。
【0015】
このように、一度、仮想位置を第1制御目標値として出力すると、作用部は確実に動作範囲の一端に達する。これにより、作用部にセンサ等の電気機器を用いることなく、該作用部を確実に原点復帰させることができる。このままでは、作用部、アクチュエータ及び動力の伝達部材に応力が残っているので、その後、一端の位置を第2制御目標値として出力することにより、該応力を除去することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るマニピュレータシステム及びマニピュレータの制御方法によれば、一度、仮想位置を第1制御目標値として出力すると、作用部は確実に動作範囲の一端に達する。これにより、作用部にセンサ等の電気機器を用いることなく、該作用部を確実に原点復帰させることができる。このままでは、作用部、アクチュエータ及び動力の伝達部材に応力が残っているので、その後、一端の位置を第2制御目標値として出力することにより、該応力を除去することができる。
【0017】
また、本発明では、マニピュレータにおけるアクチュエータと作用部との間が、不可避的に伸びるワイヤ等や摩擦を生じる伝達部材で接続されていても、作用部を相当正確に原点に復帰させ、偏差を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態として医療用のマニピュレータシステム500について添付の図1〜図14を参照しながら説明する。マニピュレータシステム500(図1参照)は、腹腔鏡下手術等に用いられるものである。
【0019】
図1に示すように、マニピュレータシステム500は、マニピュレータ10と、該マニピュレータ10を制御するコントローラ514とを有する。マニピュレータ10とコントローラ514との接続部には着脱可能なようにコネクタが設けられている。
【0020】
マニピュレータ10は、先端動作部12に生体の一部又は湾曲針等を把持して所定の処置を行うためのものである。マニピュレータ10は、基本構成として操作部(第1部分)14と作業部(第2部分)16とを有する。コントローラ514は、マニピュレータ10の電気的な制御をするものであり、グリップハンドル26の下端部から延在するケーブル61に対してコネクタを介して接続されている。
【0021】
図2に示すように、マニピュレータシステム500は、選択的に種々の構成を採りうる。すなわち、作業部16は、バリエーションとして作業部16a〜16dが用意されている。操作部14に対し、作業部16aに代えて作業部16b、16c及び16dを装着することができる。すなわち、術者は手技の種類や慣れ等に応じて作業部16a〜16dを選択することができる。このうち、作業部16bは先端動作部12がはさみとなっている。作業部16cは先端動作部12がブレード型電気メスとなっている。作業部16dは先端動作部12がフック型電気メスとなっている。各作業部16a〜16dは、接続部15内のプーリ(従動体)50a、50b及び50c(図1参照)は共通の構成となっている。
【0022】
次に、操作部14及び作業部16aとを有するマニピュレータ10について説明する。
【0023】
マニピュレータ10は、先端動作部12に生体の一部又は湾曲針等を把持して所定の処置を行うためのものであり、通常、把持鉗子やニードルドライバ(持針器)等とも呼ばれる。
【0024】
図1及び図3に示すように、マニピュレータ10は、人手によって把持及び操作される操作部14と、該操作部14に対して着脱自在な作業部16とを有する。
【0025】
以下の説明では、図1における幅方向をX方向、高さ方向をY方向及び、連結シャフト48の延在方向をZ方向と規定する。また、右方をX1方向、左方をX2方向、上方向をY1方向、下方向をY2方向、前方をZ1方向、後方をZ2方向と規定する。さらに、特に断りのない限り、これらの方向の記載はマニピュレータ10が中立姿勢である場合を基準として表すものとする。これらの方向は説明の便宜上のものであり、マニピュレータ10は任意の向きで(例えば、上下を反転させて)使用可能であることはもちろんである。
【0026】
作業部16は、作業を行う先端動作部12と、操作部14のアクチュエータブロック30に対して接続される接続部15と、これらの先端動作部12と接続部15とを連接する長尺で中空の連結シャフト48とを有する。作業部16は、アクチュエータブロック30における所定の操作によって操作部14から離脱可能であって、洗浄、滅菌及びメンテナンス等を行うことができる。
【0027】
先端動作部12及び連結シャフト48は細径に構成されており、患者の腹部等に設けられた円筒形状のトラカール20から体腔22内に挿入可能であり、操作部14の操作により体腔22内において患部切除、把持、縫合及び結紮等の様々な手技を行うことができる。
【0028】
操作部14は、人手によって把持されるグリップハンドル26と、該グリップハンドル26の上部から延在するブリッジ28と、該ブリッジ28の先端に接続されたアクチュエータブロック30とを有する。
【0029】
図1に示すように、操作部14のグリップハンドル26は、ブリッジ28の端部からY2方向に向かって延在しており、人手によって把持されるのに適した長さであり、入力手段としてのトリガーレバー32と、複合入力部34と、スイッチ36とを有する。
【0030】
ブリッジ28の上面(又は側面)における視認しやすい箇所にはLED29が設けられている。LED29は、マニピュレータ10の制御状態を示すインジケータであり、操作者が容易に認識可能な大きさであり、且つ操作に支障がない程度に十分に小型軽量である。LED29は、ブリッジ28の上面における略中央部で、視認性のよい位置に設けられている。
【0031】
グリップハンドル26の下端には、コントローラ514に接続されるケーブル61が設けられている。グリップハンドル26とケーブル61とは一体的に接続されている。グリップハンドル26とケーブル61とはコネクタにより接続されていてもよい。
【0032】
複合入力部34は、先端動作部12に対してロール方向(軸回転方向)及びヨー方向(左右方向)の回転指令を与える複合的な入力手段であり、例えば軸回転に動作する第1入力手段によってロール方向指示を行い、横方向に動作する第2入力手段によってヨー方向指示を行うことができる。トリガーレバー32は、先端動作部12のグリッパ(作用部)59(図1参照)の開閉指令を与える入力手段である。つまり、コントローラ514は、ロール軸、ヨー軸及びグリッパ軸に対応したモータ40、41、42の角度を示す内部信号を保持しており、複合入力部34及びトリガーレバー32の信号に基づいてこれらの内部信号を変化させてモータ40、41、42の角度が一致するように制御をしている。
【0033】
図3及び図4に示すように、複合入力部34、トリガーレバー32には、それぞれ動作量を検出する入力センサ39a、39b、39cが設けられており、検出した動作信号をコントローラ514に供給する。
【0034】
トリガーレバー32は、ブリッジ28のやや下方でZ1方向にやや突出したレバーであり、人差し指による操作が容易な位置に設けられている。
【0035】
トリガーレバー32は、グリップハンドル26に対してアーム98により接続されており、該グリップハンドル26に対して進退するように構成されている。
【0036】
スイッチ36はグリップハンドル26に対して進退する操作機構であって、トリガーレバー32とスイッチ36とはグリップハンドル26におけるZ1方向の面で、グリップハンドル26の長尺方向(Y方向)に並んで配置されている。スイッチ36はトリガーレバー32の直下(Y2方向)に設けられている。スイッチ36とトリガーレバー32との間には薄い板材130が設けられている。
【0037】
スイッチ36はオルタネート式であって、一度手前(Z2方向)に引き込むことによってオン状態にロックされ、操作子36aは手前側の位置に保持される。再度スイッチ36を手前側に引き込むことによってオン状態は解除されてオフ状態となり、図示しない弾性体によって先端側(Z1方向)の位置に復帰する。
【0038】
マニピュレータ10の動作状態に係る動作モード又は停止モードはスイッチ36の操作によって変更される。つまり、コントローラ514は、スイッチ36の状態を読み込み、オン状態であるときに動作モードとし、オン状態からオフ状態に切り換わったときに原点復帰動作としてモータ40、41、42を所定の原点に戻し、原点に戻った後に停止モードとする。動作モードとは、トリガーレバー32や複合入力部34の操作に基づいて先端動作部12を駆動させるモードであり、停止モードとは、先端動作部12が所定の原点姿勢で停止させるモードである。原点復帰動作については後述する。
【0039】
これらのモード及び動作はコントローラ514によって区別されて制御され、LED29の点灯状態が切り換えられる。
【0040】
アクチュエータブロック30には先端動作部12が有する3自由度の機構に対応してモータ40、モータ41及びモータ42が連結シャフト48の延在方向に沿って並列して設けられている。これらのモータ40、41及び42は小型、細径であって、アクチュエータブロック30はコンパクトな扁平形状に構成されている。アクチュエータブロック30は、操作部14のZ1方向端部の下方に設けられている。また、モータ40、41及び42は、操作部14の操作に基づき、コントローラ514の作用下に回転をする。
【0041】
モータ40、41及び42には、回転角度を検出することのできる角度センサ(検出手段)43、44及び45が設けられており、検出した角度信号はコントローラ514に供給される。角度センサ43、44及び45としては、例えばロータリエンコーダが用いられる。
【0042】
作業部16は、アクチュエータブロック30に対して接続される接続部15と、該接続部15からZ1方向に向かって延在する中空の連結シャフト48とを有する。接続部15には、モータ40、41及び42の駆動軸に接続されるプーリ50a、プーリ50b及びプーリ50cが回転自在に設けられている。プーリ50a〜50cにはそれぞれカップリングが設けられている。
【0043】
プーリ50a、プーリ50b及びプーリ50cには、ワイヤ(伝達部材)52、ワイヤ53及びワイヤ54が巻き掛けられており、連結シャフト48の中空部分48a(図5参照)を通って先端動作部12まで延在している。ワイヤ52、ワイヤ53及びワイヤ54はそれぞれ同種、同径のものを用いることができる。
【0044】
作業部16は、アクチュエータブロック30における所定の操作によって操作部14から離脱可能であって、洗浄、滅菌及びメンテナンス等を行うことができる。また、作業部16は他の形式のもの(図2参照)に交換可能であって、手技に応じて連結シャフト48の長さの異なるもの、又は先端動作部12の機構が異なるものを装着することができる。
【0045】
作業部16は、操作部14に対して着脱自在であり、プーリ50a、50b及び50cの中心穴に対して、モータ40、41及び42の回転軸40a、41a及び42aが嵌合するように構成されている。プーリ50a、50b及び50cのY2方向下端にはそれぞれ十字状の結合凸部が設けられ、回転軸40a、41a及び42aには十字状の結合凹部が設けられている。結合凸部と結合凹部は互いに係合可能に形成されており、モータ40、41及び42の回転がプーリ50a、50b及び50cに対して確実に伝達される。これらの係合部は十字形状に限られない。
【0046】
接続部15には、作業部を個体識別することのできるID(識別子)を保持するID保持部104が設けられている。
【0047】
ID保持部104は、例えばRFID(Radio Frequency Identification)等の無線式、バーコード、マトリックス型二次元コード等の光学式等の非接触検出式、又は小突起列等の接触式で構成するとよい。
【0048】
ID保持部104の保持するIDは、作業部16a〜16d毎に識別が可能なように異なる値が付与されている。
【0049】
ところで、ID保持部104は直接的な通電の必要がなく、接続部15及び作業部16には電気的接点やセンサ類がない。したがって、操作部14から取り外した作業部16は洗浄、滅菌等を容易に行うことができる。つまり、モータやスイッチ、センサ等の電気機器をすべて操作部14側に配し、連結シャフト48及び先端動作部12を有する機械構成部品を作業部16側に配することで洗浄性を向上させている。作業部16と操作部14では汚れ具合、汚れ種類、洗浄方法が異なり、異なるメンテナンスが行われるため、離脱可能にすることが好適である。マニピュレータ10では、作業部16に電気機器を設ける必要がなく、操作部14に対する交換が容易である。
【0050】
また、先端動作部12は、電気機器を設ける必要がないことから小型、細径及び軽量であって、しかも先端重量が小さいことからモーメントが小さく、マニピュレータ10の操作性が向上する。
【0051】
操作部14は、接続された作業部16のID保持部104における情報を読取ってコントローラ514に供給するID中継部(識別手段)106を有する。ID中継部106は、例えば、カメラやRFID用の送受信回路又はフォトカプラー等により構成される。
【0052】
接続部15を操作部14から取り外す場合には、アクチュエータブロック30の両側面に設けられたレバー206を押してそれぞれ外方に開くように傾動させ、該レバー206の楔部206aを、接続部15の両側面に設けられた係合片200から解放する。これにより接続部15を操作部14から上方(Y1方向)に引き抜き、取り外しが可能となる。アクチュエータブロック30の上面には3本のアライメントピン212が設けられており、接続部15に設けられた嵌合孔202に嵌合することにより該接続部15を安定して保持可能である。接続部15を操作部14に取り付ける場合には、3本のアライメントピン212がそれぞれ嵌合孔202に嵌合するように合わせて、接続部15を下方(Y2方向)に押し下げる。これにより、レバー206は一旦外方に拡がり、その後原位置に戻ることにより係合片200に係合して、接続が完了する。
【0053】
接続部15が載置されるアクチュエータブロック30の上面30bにおいて、Z2方向の端部近傍には、接続部15の有無を検出する作業部検出手段107が設けられている。作業部検出手段107は、対向する位置に設けられた投光器107aと受光器107bとを有し、該投光器107aと該受光器107bとの間に接続部15の後端の一部が挿入されて遮光することにより該接続部15が装着されたことを検出できる。投光器107aと受光器107bは、X方向に対向する向きで且つ近接した位置に設けられている。投光器107aは例えばLEDであり、受光器107bは例えばフォトダイオードである。
【0054】
図5及び図6に示すように、先端動作部12はY方向の第1回転軸Oyを中心にして、それよりも先の部分がヨー方向に回動する第1自由度の機構(傾動機構、ピボット軸)と、第2回転軸Orを中心にしてロール方向に回動する第2自由度の機構(ロール回転機構)と、第3回転軸Ogを中心として先端のグリッパ59を開閉させる第3自由度とを有する合計3自由度の機構となっている。
【0055】
第1自由度の機構である第1回転軸Oyは、連結シャフト48の基端側から先端側に延在する軸線Cと非平行に回動可能に設定するとよい。第2自由度の機構である第2回転軸Orは先端動作部12における先端部(つまりグリッパ59)の延在方向の軸線を中心として回動可能な機構とし、先端部をロール回転可能に設定するとよい。
【0056】
グリッパ59は、原点位置で完全に閉状態となり、該原点位置を基準として所定角度開くことができる。グリッパ59は片開き式に限らず、両開き式でもよい。片開き式とは、グリッパ59を構成する一対の把持部材のうちいずれか一方が開閉する形式であり、両開き式とはグリッパ59を構成する一対の把持部材の両方が開閉する形式である。
【0057】
先端動作部12は、ワイヤ52、ワイヤ53及びワイヤ54によって駆動され、各ワイヤ52、53及び54は、それぞれ対応する筒体60c、60b、60aに巻き掛けられている。
【0058】
先端動作部12では、ワイヤ52及び54の作用下に歯車51及び55が回転し、図示しないフェイスギアを回転させることによって先端部をロール方向に回転させることができる。また、ワイヤ54の作用下に歯車51が回転し、ファイスギア57及び歯車58を介してグリッパ59を開閉させることができる。さらに、ワイヤ52、53、54の作用下に主軸部材62を介して先端部をヨー方向に回転させることができる。
【0059】
次に、コントローラ514の内部構成について図7を参照しながら説明する。
【0060】
図7に示すように、コントローラ514は演算部110と、電源部112と、保護装置114と、ドライバ116とを有する。電源部112は、外部電源119から得られる電力を調整して各部に供給するとともに、バッテリ112aに充電を行い、外部電源119から電力が供給されない場合においても自動的にバッテリ112aからの電力供給へと切り換える機能を有しており、いわゆる無停電電源として作用する。バッテリ112aは内部の変圧整流器に対して、通常並列に接続される。
【0061】
演算部110は、角度センサ43、44、45、入力センサ39a、39b、39c、及びスイッチ36に接続されており、これらの各部から得られる信号に基づいてマニピュレータ10の動作を決定して、所定の指令信号をドライバ116に供給するとともに、所定の表示部に状態量を表示させる。演算部110はLED29にも接続されており、該LED29の点灯状態の制御をする。さらに、演算部110は、コントローラ514の表面の、各種スイッチ類に接続されており、制御をする。演算部110は、CPU、ROM及びRAM等から構成されており、プログラムを読み込み実行することにより所定のソフトウェア処理を実行する。
【0062】
ドライバ116は、モータ40、41及び42に接続されており、演算部110から得られる指令に基づいて該モータ40、41及び42を駆動する。ところで、これらのモータ40、41及び42の駆動系は、先ず、入力センサ39a、39b、39cに基づいて先端動作部に対する動作角度指令値を求め、該動作角度指令値と角度センサ43、44、45から得られる角度信号との偏差を求め、該偏差に基づいて所定の補償処理をして指令信号をドライバ116に供給している。したがって、これらの各モータ40、41及び42の駆動系は閉ループを形成している。
【0063】
演算部110は、ID認識部(識別手段)120と、原点復帰制御部122とを有する。ID認識部120は、ID保持部104のIDを認識する。
【0064】
次に、このようなマニピュレータシステム500の作用を図8に基づいて説明する。マニピュレータシステム500は、コントローラ514の演算部110の統合的な制御作用下に動作し、基本的には図8に示すフローチャートに従った処理を行う。図8の処理は予め決められた制御周期にしたがって繰り返し実行される。以下の説明では、断りのない限りステップ番号順に処理が行われるものとする。
【0065】
図8のステップS11において、操作部14の角度検出器及び駆動部モータの角度検出器の出力を演算部110にて読み取る。
【0066】
ステップS12において、指令入力手段やスイッチ36等の入力を演算部110で認識する。
【0067】
ステップS13において、演算部110による認識結果をもとにマニピュレータ10の制御モードを決定する。
【0068】
ステップS14において、判定された制御モードにしたがって動作方式の判別とモータ40、41及び42の目標値を生成する。
【0069】
ステップS15において、生成された制御目標値と先に読み取った角度センサ43、44及び45の信号とからPID制御等の制御演算によってモータ出力を算出しドライバ116へ出力する。
【0070】
ステップS16において、定義された種々の条件と角度センサ43、44及び45等で読み取った状態とを比較し、状態判別を行う。
【0071】
ステップS17において、判別された結果に基づき、コントローラ514に装備されたランプへ出力を行う。
【0072】
次に、原点復帰動作について図9〜図13を参照しながら説明する。原点復帰動作は、スイッチ36やコントローラ514に設けられたスイッチの操作に基づいて、コントローラ514によって行われ、第1段階復帰動作の区間T1(図10参照)と、第2段階復帰動作の区間T2とに分けて制御がなされる。図9では、主に、先端動作部12の3軸の機構のうちグリッパ59を動作範囲の一端、つまり原点位置P0(図10参照)に自動的に移動させる処理について説明する。モータ40の角度は、角度センサ43が設けられてフィードバックをしているので、少なくとも静的には、制御目標値に対する実質的な偏差はないものとする。
【0073】
図9のステップS101において、スイッチ36等の状態を監視し、原点復帰指令の有無を確認する。原点復帰指令が発生したときにはステップS102へ移り、原点復帰指令がないときには待機する。
【0074】
ステップS102において、原点復帰動作を開始する準備がなされているか否かを確認する。準備ができているときにはステップS104へ移り、準備ができていないときには所定の準備処理(ステップS103)をして待機する。
【0075】
原点復帰動作を開始する準備とは、所定のサーボフラグがオンで、第1段階原点復帰動作中フラグ及び第2段階原点復帰動作中フラグがオフで、第2段階動作完了フラグがオフで、且つ、接続されている作業部16が対応する種類のものであるという条件である。サーボフラグは、モータ40、41、42のサーボ制御が可能な状態を示すフラグである。第1段階原点復帰動作中フラグ及び第2段階原点復帰動作中フラグは、区間T1及び区間T2の制御を実行中であることを示すフラグである。第1段階動作完了フラグ及び第2段階動作完了フラグは区間T1及び区間T2の制御が終了したことを示すフラグである。それぞれのフラグは、オンであるときに対応する条件が肯定で、オフであるときに否定を示す。
【0076】
ステップS104において、第1段階復帰動作が終了しているか否かを確認する。つまり、第1段階動作完了フラグを監視し、該フラグがオンであるときにはステップS106へ移り、オフであるときにはステップS105へ移る。
【0077】
ステップS105において、第1段階復帰動作を行うための所定のパラメータの設定を行う。つまり、現在の動作開始角度を取得し、第1制御目標値P1を設定し、第1段階原点復帰動作中フラグをオンにする。
【0078】
図10に示すように、第1制御目標値P1は原点位置P0を閉方向に超える仮想位置として設定されている。第1制御目標値P1は、グリッパ59における目標位置と実位置との偏差εの相当量よりも大きく原点位置P0を超えた位置であり、これにより、原点位置P0における偏差をなくすことができる。図10における実線410は制御目標値、モータ40又はプーリ50aの角度であり、破線412はグリッパ59の実開度を示し、実線と破線との距離が偏差εである。偏差εが一定でない場合には、制御目標値が原点位置P0であるときの偏差ε0に基づいて第1制御目標値P1を設定するとよい。つまり、P1<P0−ε0に設定するとよい。
【0079】
また、第1制御目標値P1は、原点復帰動作以外の通常動作時におけるグリッパ59の制御目標値の制限値Pxより小さい位置に設定する。つまり、通常動作時にも、対象物を確実に把持する力を発生させるために、制御目標値を、原点位置P0を超えた位置で且つ制限値Pxを超えない範囲の値に設定する場合がある。第1制御目標値P1をこの制限値Pxより小さい位置に設定することにより、第1制御目標値P1が過大となることを防止するとともに、原点復帰動作の時間短縮を図ることができる。
【0080】
ステップS106において、第2段階復帰動作を行うための所定のパラメータの設定を行う。つまり、その時点の動作開始角度(第1制御目標値P1にほぼ一致している。)を取得し、第2制御目標値P2を設定し、第2段階原点復帰動作中フラグをオンにする。第2制御目標値P2は、原点位置P0に一致している。ステップS105又はS106の後、ステップS107へ移る。
【0081】
ステップS107において、PTP(Point to Point)動作目標値を生成する。PTP動作とは現在位置と目標位置とを結ぶ目標軌道を生成して、該軌道に従う動作である。現在位置と目標位置とを結ぶ直線補間、台形速度補間又はS字加減速軌道等により実現される。
【0082】
ステップS108において、PTP動作を実行するための制御演算を行う。なお、ステップS105〜S108までの処理は、第1段階復帰動作及び第2段階復帰動作における初回のみ実行すればよい。
【0083】
ステップS109において、制御演算結果に基づくモータ40に対して駆動出力を行う。
【0084】
ステップS110において、動作移行判断を行う。つまり、第1段階復帰動作中は、角度センサ43の検出値が第1制御目標値P1に達したか否かを監視し、該検出値が第1制御目標値P1に達したときに第1段階原点復帰動作中フラグをオフにし、第1段階復帰動作完了フラグをオンにする。
【0085】
第2段階復帰動作中は、角度センサ43の検出値が第2制御目標値P2(=P0)に達したか否かを監視し、該検出値が第2制御目標値P2に達したときに第2段階原点復帰動作中フラグをオフにし、第2段階復帰動作完了フラグをオンにする。これらの判断は、誤差等を考慮して多少の余裕をみて判断をしてもよい。
【0086】
ステップS111において、終了判定を行う。つまり、第1段階復帰動作完了フラグ及び第2段階復帰動作完了フラグの両方がオンになっているときに、原点復帰動作が終了と判定し、図9に示す処理を終了する。それ以外のときには、ステップS104へ戻る。
【0087】
原点復帰動作の開始時の制御目標値が第1制御目標値P1に等しいときには、第1段階復帰動作が即時に終了し、実質的には第2段階復帰動作から開始する。
【0088】
原点復帰動作の開始時の制御目標値が第1制御目標値P1と制限値Pxとの間の値であるとき、つまり、グリッパ59を強く閉じようとしているときには、ステップS102とS104との間で、第1段階復帰動作完了フラグをオンにして、所定の簡便化を図ってもよい。
【0089】
区間T1及びT2による2段階原点復帰の必要がない作業部(例えば、電気メスの作業部16c)が装着されている場合には、通常の原点復帰動作を実行するために、ステップS102とS104との間で、第1段階復帰動作完了フラグをオンにすればよい。
【0090】
ステップS102における判定条件から、第2段階復帰動作完了フラグをオフにする処理を省略すると、原点復帰動作を再度実行することができる。このような処理は、例えば、不測の事態により原点復帰動作に不都合が発生した場合に、操作者の所定の操作に基づいて行うとよい。なお、図9におけるステップS101は、図8におけるステップS12に対応付けられ、ステップS103〜S106は、ステップS13に対応付けられ、ステップS107及びS108はステップS14に対応付けられ、ステップS109〜S110はステップS15に対応付けることができる。
【0091】
次に、上記の制御処理によるマニピュレータ10の作用について説明する。
【0092】
先ず、原点復帰動作の開始時には、図11の仮想線で示すように、グリッパ59は所定量だけ開いているとする。図11〜図13においては、理解を容易にするため、モータ40及びプーリ50aの角度とグリッパ59の回転体300の角度との減速比は1とし、ヨー軸及びロール軸の機構は省略する。グリッパ59の開閉機構も簡略化している。プーリ50a及び回転体300の角度を理解しやすいように基準となるマーカ302及び304を図示している。プーリ50a及び回転体300の原点位置P0は、マーカ302及び304を基準として、それぞれZ2方向とする。
【0093】
原点復帰動作を開始して、回転体300及びプーリ50aがそれぞれ反時計方向(グリッパ59が閉じる方向)に回転し、時刻t1(図10参照)になったときには、図11に示すように、プーリ50aは原点位置P0に達するが、この時点では回転体300は原点位置P0に達することなく、偏差εが残っている。ワイヤ52の伸びや各部の摩擦等の反力があるためである。図11及び図12では、模式的に、強い張力がかかってワイヤ52の伸びている箇所を細く、張力のより弱い箇所を太く示している。
【0094】
このような偏差εが残ったままであると、操作者に違和感を与えるとともに、偏差εが大きいときにはトラカール20(図1参照)を通しにくい。また、この状態で停止してモータ40とプーリ50aとを切り離すと、ワイヤ52の伸びが元に戻ることにより、プーリ50aは時計方向に回転する。
【0095】
そこで、図12に示すように、プーリ50a及び回転体300をさらに反時計方向に回転させる。時刻t2(図10参照)になったときには、プーリ50aは原点位置P0よりも偏差εに相当する量だけ回転し、回転体300は原点位置P0に達し、グリッパ59は完全に閉状態となる。このとき、コントローラ415の制御指令値は、仮想的にグリッパ59を閉位置よりもさらに偏差εに相当する量だけ通過した箇所(仮想線のグリッパ59参照)を指示することになる。
【0096】
この状態でも、グリッパ59は閉状態となるのであるが、種々の制御誤差等を考慮し、確実にグリッパ59を閉じさせるために、プーリ50aを第1制御目標値P1まで反時計方向にさらに回転させる(仮想線のマーク302参照)。
【0097】
これにより、グリッパ59は完全に閉状態となる。第1制御目標値P1は制限値Pxよりは小さく、ワイヤ52やグリッパ59等に過大な力が加わることを防止できるとともに、原点復帰動作時間を短縮することができる。
【0098】
この状態では、グリッパ59は閉状態となっているが、モータ40とプーリ50aとを切り離すと、ワイヤ52の伸びはある程度元に戻るが、張力が相当残留し該ワイヤ52の寿命が低減する。また、モータ40及びプーリ50aの双方が原点位置P0ではないので、原点位置P0における着脱を想定しているシステムには不都合である。つまり、操作部14から所定の作業部16を取り外し、別の作業部16を装着しようとしたときに物理的な装着が困難になるとともに、ソフトウェア処理上で原点位置P0を基準とした所定のパラータの初期化手順が複雑になる。
【0099】
そこで、図13に示すように、プーリ50a及び回転体300を時計方向(グリッパ59が開く方向)に回転させ、原点位置P0まで戻す。このとき、回転体300は実質的に回転することなく原点位置P0の状態をほぼ維持するとともに、ワイヤ52の伸びは元に戻る。従って、モータ40、プーリ50a及び回転体300が原点位置P0に安定して保持される。モータ40とプーリ50aとを切り離しても、ワイヤ52の張力は実質的に0又は元の張力になっていることから回転体300及びプーリ50aは実質的に動くことがなく、しかもワイヤ52の高寿命化を図ることができる。
【0100】
上述したように、本実施の形態に係るマニピュレータシステム500によれば、一度、仮想位置を第1制御目標値P1として出力し、グリッパ59は確実に動作範囲の一端である原点位置P0に達する。これにより、グリッパ59にセンサ等の電気機器を用いることなく、該作用部を確実に原点復帰させることができる。このままでは、グリッパ59、モータ40及びワイヤ52に応力が残っているので、その後、原点位置P0を第2制御目標値P2として出力することにより、該応力を除去することができる。
【0101】
グリッパ59の原点位置P0は閉位置であることから、原点復帰を目視により容易に確認することができるとともに、細径になってトラカール20を通しやすい。
【0102】
モータ40には、動作位置を検出する角度センサ43が設けられ、第1段階原点復帰動作時に、コントローラ514は、該角度センサ43から得られる値を監視し、モータ40が第1制御目標値P1に達したことを確認してから第2段階原点復帰動作に移行する。これにより、モータ40は確実に第1制御目標値P1まで達するので、グリッパ59の偏差を一層確実になくすことができる。
【0103】
マニピュレータ10の作業部16には電気機器を設ける必要がなく、操作部14から取り外して洗浄・滅菌が容易となる。
【0104】
コントローラ514は、ID中継部106から得られる作業部16の種類に応じて第1制御目標値P1を変更してもよい。これにより、作業部16の種類に応じた適切な制御が可能となる。
【0105】
作業部16は、人手で操作をする操作部14に接続されるものとして説明したが、例えば図14に示すような手術用ロボットシステム700に適用してもよい。
【0106】
手術用ロボットシステム700は、ロボットアーム702と、コンソール704とを有し、作業部16はロボットアーム702の先端に接続されている。ロボットアーム702の先端には前記のアクチュエータブロック30と同じ機構を設けることにより、作業部16を接続及び駆動可能である。この場合のマニピュレータ10は、ロボットアーム702と作業部16とを有する。ロボットアーム702は、作業部16を移動させる手段であればよく、据置型に限らず、例えば自律移動型でもよい。コンソール704は、テーブル型、制御盤型等の構成を採りうる。
【0107】
ロボットアーム702は、独立的な6以上の関節(回転軸やスライド軸等)を有すると、作業部16の位置及び向きを任意に設定できて好適である。先端のアクチュエータブロック30は、ロボットアーム702の先端部708と一体化している。
【0108】
ロボットアーム702は、コンソール704の作用下に動作し、プログラムによる自動動作や、コンソール704に設けられたジョイスティック(ロボット操作部)706に倣った動作、及びこれらの複合的な動作をする構成にしてもよい。コンソール704は、前記のコントローラ514の機能を含んでいる。
【0109】
コンソール704には、前記操作部14のうちアクチュエータブロック30を除いた機構の操作部としての2つのジョイスティック706と、モニタ710が設けられている。図示を省略するが、2つのジョイスティック706により、2台のロボットアーム702を個別に操作が可能である。2つのジョイスティック706は、両手で操作しやすい位置に設けられている。モニタ710には、内視鏡による画像等の情報が表示される。
【0110】
ジョイスティック706は、上下動作、左右動作、捻り動作、及び傾動動作が可能であり、これらの動作に応じてロボットアーム702を動かすことができる。ジョイスティック706はマスターアームであってもよい。ロボットアーム702とコンソール704との間の通信手段は、有線、無線、ネットワーク又はこれらの組合わせでよい。
【0111】
本発明に係るマニピュレータシステムは、医療用に限らず、例えば、エネルギー機器等の狭隘部補修の用途に適用可能であることはもちろんである。
【0112】
本発明に係るマニピュレータシステム及びマニピュレータの制御方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本実施の形態に係るマニピュレータシステムの概略構成図である。
【図2】本実施の形態に係るマニピュレータシステムの構成の組合わせに係る説明図である。
【図3】作業部と操作部とを分離したマニピュレータの側面図である。
【図4】操作部の斜視図である。
【図5】先端動作部の斜視図である。
【図6】先端動作部の分解斜視図である。
【図7】コントローラのブロック構成図である。
【図8】マニピュレータシステムの動作を示すメインフローチャートである。
【図9】原点復帰処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】原点復帰処理時の先端動作部のおける制御目標値及びグリッパの角度変化を示すグラフである。
【図11】原点復帰処理時のモータ及びグリッパの第1の状態を示す模式図である。
【図12】原点復帰処理時のモータ及びグリッパの第2の状態を示す模式図である。
【図13】原点復帰処理終了時のモータ及びグリッパの状態を示す模式図である。
【図14】作業部をロボットアームの先端に接続した手術用ロボットシステムの概略斜視図である。
【符号の説明】
【0114】
10…マニピュレータ 12…先端動作部
14…操作部 16、16a〜16d…作業部
40、41、42…モータ 43、44、45…角度センサ
50a〜50c…プーリ 52、53、54…ワイヤ
59…グリッパ 300…回転体
500…マニピュレータシステム 514…コントローラ
700…手術用ロボットシステム T1、T2…区間
P0…原点位置 P1…第1制御目標値
P2…第2制御目標値
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータによって駆動されて姿勢が変化する作用部を備えるマニピュレータと、該マニピュレータを制御する制御部とを有するマニピュレータシステムであって、
前記制御部は、原点復帰動作として、前記作用部を動作範囲の一端に移動させる際、前記アクチュエータに対して、前記一端を超える仮想位置を第1制御目標値として出力し、その後、前記一端の位置を第2制御目標値として出力することを特徴とするマニピュレータシステム。
【請求項2】
請求項1記載のマニピュレータシステムにおいて、
前記作用部は、前記マニピュレータの先端に設けられた開閉可能なグリッパであり、前記一端は、該グリッパの閉位置であることを特徴とするマニピュレータシステム。
【請求項3】
請求項1又は2記載のマニピュレータシステムにおいて、
前記仮想位置は、前記作用部の目標位置と実位置との偏差の相当量よりも大きく前記一端を超えた位置であることを特徴とするマニピュレータシステム。
【請求項4】
請求項2又は3記載のマニピュレータシステムにおいて、
前記仮想位置は、前記原点復帰動作以外の通常動作時における前記グリッパの制御目標値の制限値より小さい位置であることを特徴とするマニピュレータシステム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のマニピュレータシステムにおいて、
前記アクチュエータには、動作位置を検出する検出手段が設けられ、
前記制御部は、前記検出手段から得られる値を監視し、前記第1制御目標値を出力した後に、前記アクチュエータが該第1制御目標値に達したことを確認して前記第2制御目標値を出力することを特徴とするマニピュレータシステム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のマニピュレータシステムにおいて、
前記マニピュレータは、前記アクチュエータを含み、前記制御部に接続された第1部分と、
一端に前記作用部を備え、他端が前記第1部分に対して着脱自在な第2部分と、
を有し、
前記作用部は、前記第2部分の他端に前記アクチュエータに係合する従動体と、
前記従動体の動作を前記作用部に伝達する伝達部材と、
を有することを特徴とするマニピュレータシステム。
【請求項7】
請求項6記載のマニピュレータシステムにおいて、
前記第2部分は複数種類存在し、それぞれ、種類を示す識別子を有し、
前記第1部分は、装着された前記第2部分の前記識別子を識別して前記制御部に供給する識別手段を有し、
前記制御部は、前記識別手段から得られる前記第2部分の種類に応じて前記仮想位置を変更することを特徴とするマニピュレータシステム。
【請求項8】
アクチュエータによって駆動されて姿勢が変化する作用部を備えるマニピュレータの制御方法であって、
原点復帰動作として、前記作用部を動作範囲の一端に移動させる際、前記アクチュエータに対して、前記一端を超える仮想位置を第1制御目標値として出力する第1工程と、
前記第1工程の後、前記一端の位置を第2制御目標値として出力する第2工程と、
を有することを特徴とするマニピュレータの制御方法。
【請求項1】
アクチュエータによって駆動されて姿勢が変化する作用部を備えるマニピュレータと、該マニピュレータを制御する制御部とを有するマニピュレータシステムであって、
前記制御部は、原点復帰動作として、前記作用部を動作範囲の一端に移動させる際、前記アクチュエータに対して、前記一端を超える仮想位置を第1制御目標値として出力し、その後、前記一端の位置を第2制御目標値として出力することを特徴とするマニピュレータシステム。
【請求項2】
請求項1記載のマニピュレータシステムにおいて、
前記作用部は、前記マニピュレータの先端に設けられた開閉可能なグリッパであり、前記一端は、該グリッパの閉位置であることを特徴とするマニピュレータシステム。
【請求項3】
請求項1又は2記載のマニピュレータシステムにおいて、
前記仮想位置は、前記作用部の目標位置と実位置との偏差の相当量よりも大きく前記一端を超えた位置であることを特徴とするマニピュレータシステム。
【請求項4】
請求項2又は3記載のマニピュレータシステムにおいて、
前記仮想位置は、前記原点復帰動作以外の通常動作時における前記グリッパの制御目標値の制限値より小さい位置であることを特徴とするマニピュレータシステム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のマニピュレータシステムにおいて、
前記アクチュエータには、動作位置を検出する検出手段が設けられ、
前記制御部は、前記検出手段から得られる値を監視し、前記第1制御目標値を出力した後に、前記アクチュエータが該第1制御目標値に達したことを確認して前記第2制御目標値を出力することを特徴とするマニピュレータシステム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のマニピュレータシステムにおいて、
前記マニピュレータは、前記アクチュエータを含み、前記制御部に接続された第1部分と、
一端に前記作用部を備え、他端が前記第1部分に対して着脱自在な第2部分と、
を有し、
前記作用部は、前記第2部分の他端に前記アクチュエータに係合する従動体と、
前記従動体の動作を前記作用部に伝達する伝達部材と、
を有することを特徴とするマニピュレータシステム。
【請求項7】
請求項6記載のマニピュレータシステムにおいて、
前記第2部分は複数種類存在し、それぞれ、種類を示す識別子を有し、
前記第1部分は、装着された前記第2部分の前記識別子を識別して前記制御部に供給する識別手段を有し、
前記制御部は、前記識別手段から得られる前記第2部分の種類に応じて前記仮想位置を変更することを特徴とするマニピュレータシステム。
【請求項8】
アクチュエータによって駆動されて姿勢が変化する作用部を備えるマニピュレータの制御方法であって、
原点復帰動作として、前記作用部を動作範囲の一端に移動させる際、前記アクチュエータに対して、前記一端を超える仮想位置を第1制御目標値として出力する第1工程と、
前記第1工程の後、前記一端の位置を第2制御目標値として出力する第2工程と、
を有することを特徴とするマニピュレータの制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−148859(P2009−148859A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329772(P2007−329772)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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