説明

マルチカーエレベータ

【課題】複数の乗りかごの位置を高精度に検出し、輸送効率を安全に高め、マルチカーエレベータとして機器の干渉を防止してより信頼性の高いものとする。
【解決手段】第1の音響信号伝導体4aの測定側に設けられ、音響信号を発生させる塔内入力器5aと、第2の音響信号伝導体4bの測定側に設けられ音響信号を検知する塔内検出器6bと、それぞれの乗りかごに設けられたかご上検出器7aと、乗りかごに設けられたかご上入力器8aと、を備え、塔内入力器5aより呼び出し信号を発生し、かご上検出器7aで検出後、かご上入力器8aから第2の音響信号伝導体4bに対して応答信号を発生し、乗りかご1の位置を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の乗りかごを昇降路内に循環移動させるマルチカーエレベータに関し、特に昇降路の2本分の空間を用いるものに好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、昇降路に1台の乗りかごを運行する通常のエレベータは、着床時の位置合わせのため、ドア付近でのみ精度良く位置を検出すれば良かった。しかし、昇降路を複数の乗りかごで共有するマルチカーエレベータは、乗りかご同士が衝突しないように、それぞれの乗りかごの位置を常に正確に把握して安全に制御する必要がある。
そして、乗りかごの位置を検出し、安全な制御を行うため、乗りかごに取り付けたローラを昇降路の上下にわたって据え付けてあるレールに押し当て、ローラの回転量を検出すること、乗りかご上から先行する乗りかごに向かって光や電波等を放射し、その反射信号を利用して2台の相対距離を求めること、これらの位置情報を無線通信により昇降路側にあるメインコントローラに送ること、が知られ、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
また、乗りかご同士をより接近させて運行して輸送効率を高めるため、強磁歪性素材のワイヤの中を超音波の音響信号が均一の速度で伝播する特性を利用し、直接機械室から乗りかごの位置を伝搬時間より検出することが知られ、例えば特許文献2に記載されている。
【0004】
さらに、電力消費を少なくするため、ロープ等のループ状の主索を用いて対向する2台の乗りかごを連結して駆動することが知られ、例えば特許文献3に記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−286655号公報
【特許文献2】特開平2000−221258号公報
【特許文献3】特開平8−26629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術において、無線通信を用いる特許文献1に記載のものでは、外乱に対する信頼性の確保が困難であった。また、音響信号伝導体を用い単に、伝搬時間を利用する特許文献2に記載のものは、同一昇降路内で複数の乗りかごの位置を検出することは困難であり、特許文献1,3のようなマルチカーエレベータに用いることができない。また、さらに、特許文献3には乗りかごの位置を正確,高精度に把握することについては記載なく、主索や乗りかごに干渉なく輸送効率を高めることは考慮されていない。
【0007】
本発明の目的は、同一昇降路内であっても複数の乗りかごの位置や速度を高精度に検出し、輸送効率を安全に高めることにある。また、上下方向と横方向の両方に乗りかごが動いたとしても、位置の把握を可能とし、マルチカーエレベータとして機器の干渉を防止してより信頼性の高いものとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、走行路内に複数の乗りかごを有するマルチカーエレベータにおいて、前記走行路に沿って音響信号を伝播する第1及び第2の音響信号伝導体と、前記第1の音響信号伝導体の測定側となる一端に設けられ、電気信号を音響信号に変換して音響信号を発生させる塔内入力器と、前記第2の音響信号伝導体の測定側となる一端に設けられ、音響信号を検知して電気信号に変換する塔内検出器と、それぞれの前記乗りかごに設けられ、前記第1の音響信号伝導体から伝播された信号を検出するかご上検出器と、前記第2の音響信号伝導体に対して応答信号を発生するかご上入力器と、を備え、前記塔内入力器より呼び出し信号を発生し、前記かご上検出器で検出後、前記かご上入力器から前記第2の音響信号伝導体に対して応答信号を発生し、呼び出し信号を発生させてから前記塔内検出器が応答信号を検出するまでの時間より前記乗りかごの位置を求めるものである。
【0009】
また、本発明は、走行路内に複数の乗りかごを有するマルチカーエレベータにおいて、前記走行路に沿って音響信号を伝播する第1及び第2の音響信号伝導体と、前記第1の音響信号伝導体の測定側となる一端に設けられ、電気信号を音響信号に変換して音響信号を発生させる塔内入力器と、前記第2の音響信号伝導体の測定側となる一端に設けられ、音響信号を検知して電気信号に変換する塔内検出器と、それぞれの前記乗りかごに設けられ、前記第1の音響信号伝導体から伝播された信号を検出するかご上検出器と、前記乗りかごに設けられ、前記第2の音響信号伝導体に対して応答信号を発生するかご上入力器と、を備え、前記塔内入力器より呼び出し信号を発生し、前記かご上検出器で検出後、前記かご上入力器から前記乗りかご毎に所定時間ずらして前記第2の音響信号伝導体に対して応答信号を発生し、呼び出し信号を発生させた時間と、応答信号を検出した時間と、前記乗りかごの速度と、より前記乗りかごの位置を求めるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、音響信号伝導体を用いて複数の乗りかごを検出することができるので、外乱に対する信頼性が高く、乗りかごの位置を高精度に検出し、輸送効率を安全に高めることができる。また、上下方向と横方向の両方に乗りかごが動くマルチカーエレベータにおいても乗りかごの位置の把握が可能で、機器の干渉を防止してより信頼性の高いものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は全体構成を示し、6台の乗りかご1が環状の走行路を循環移動するマルチカーエレベータである。環状の走行路は、左右に並べて配置した2本の上下に伸びる直線状の走行路2a,2bと、2本の走行路の上部と下部をそれぞれ連結する2本の水平方向の走行路3a,3bに区間毎に区切られる。それぞれの区間毎走行路を、左側走行路2a,右側走行路2b,上側走行路3a,下側走行路3bと呼ぶ。
乗りかご1は、左側走行路2aを上昇し、上側走行路3aに達したら、上側走行路3aを右に移動し、右側走行路2bに達したら、右側走行路2bを下降し、下側走行路3bに達したら、下側走行路3bで左に移動し、再び左側走行路2aに戻るようにして循環移動する。ただし、各走行路2,3で乗りかごの追い越しは無いものとする。左側走行路2aについて着目し、左側走行路内2aにある複数の乗りかご1の位置を検出する装置の構成を説明する。
左側走行路2aに沿って左側に第1の音響信号伝導体4aを設け、右側に第2の音響信号伝導体4bを設ける。2本の音響信号伝導体4a,4bの上端部で信号を受けて位置の測定を行い、音響信号伝導体4a,4bの上端部を測定側とする。逆に、下端部は後述の補助信号を発生するときに使うので、補助信号発生側とする。
建屋側に取り付けた装置類は、名称の前に「塔内」を付ける。乗りかご側に取り付けた装置類であれば名称の前に「かご上」を付ける。
【0012】
第1の音響信号伝導体4aの測定側端部に、電気の信号を音響信号に変換して音響信号伝導体4aの中に音響信号を発生させる塔内入力器5aを配置し、予備信号発生側の端部に、音響信号伝導体4aの中を伝播して届く音響信号を検出して電気信号に変換する第1の塔内検出器6aを配置する。第2の音響信号伝導体4bの測定側端部に塔内検出器6bを配置し、補助信号発生側の端部に第2の塔内入力器5bを配置し、さらに、その近傍の測定側に第3の塔内検出器6cを配置する。
各乗りかご1a,1bに、第1の音響信号伝導体4aに対して、かご上検出器7a,
7a′を取り付け、第2の音響信号伝導体4bに対して、第2のかご上検出器7b,
7b′を取り付ける。第2のかご上検出器7b,7b′の位置は、測定側からの距離がかご上検出器7a,7a′と同じか短い方が好ましい。ただし、かご上入力器8が測定側から十分遠い位置にあれば、第2のかご上検出器7b,7b′はかご上検出器7a,7a′よりも測定側から遠い位置に取り付けることも可能である。
【0013】
乗りかご1a,1bには、測定側からの距離がかご上検出器7a,7a′と同じかそれより長くなる位置に、第1のかご上入力器8a,8a′を取り付け、さらに、第1のかご上入力器8a,8a′よりも測定側から遠い位置にかご上第2の入力器8b,8b′を取り付け、さらに、第2のかご上入力器8b,8b′よりも測定側から遠い位置に第3のかご上入力器8c,8c′を取り付ける。
図では左側走行路2aに最大で3台の乗りかご1が存在し得るので、3つのかご上入力器8を取り付けているが、左側走行路2aに十分な高さがあるならば、最大で4台以上の乗りかご1が存在し得る。そのような場合は、かご上入力器8の数が、存在し得る最大の乗りかご1の数になるまで、順次測定側から遠い位置に追加して取り付ける。
【0014】
以上の基本構成により、乗りかご1a,1bの位置を測定する方法を以下に説明する。
【0015】
図示しないコントローラは、所定の時間間隔で、塔内入力器5aより繰り返し呼び出し信号10を発生させる。この時間間隔は、1回の測定に要する十分な時間に設定する。よって、1回の測定が終了するまでは、次の呼び出し信号10は発生しない。
塔内入力器5aより発生した呼び出し信号10は、第1の音響信号伝導体4aの内部を下に向かって音速で伝播する。最初に一番上の乗りかご1aのかご上検出器7aが呼び出し信号10を検出する。これを合図に、乗りかご1aは3つのかご上入力器8のうち、どれか一つを選択して、第2の音響信号伝導体4bに対して応答信号11の第1波を発生する。
初期状態では最も測定側から遠くに取り付けてあるかご上入力器8を選ぶように設定しておく。そして、第2のかご上検出器7bが信号を検出するたびに、一つ上のかご上入力器8にシフトするようにする。乗りかご1aの第2のかご上検出器7bはこの時点でまだ何も信号を検出していないので、第3のかご上入力器8cから第2の音響信号伝導体4bに対して応答信号11の第1波を発生する。
【0016】
応答信号11の第1波は、第2の音響信号伝導体4bの内部を上下に分かれて音速で伝播する。特に、第3のかご上入力器8cは、かご上検出器7aよりも補助信号発生側に近いので、呼び出し信号10よりも先に、下に向かって伝播する。
【0017】
上側に向かった応答信号11aの第1波は、第2のかご上検出器7bに検出される。これにより、乗りかご1aは、かご上入力器8を一つ上のかご上入力器8bに設定変更する。
【0018】
その後、上側に向かった応答信号11aの第1波は塔内検出器6bによって検出される。そして、コントローラは、塔内入力器5aが呼び出し信号10を発生させた時間と、塔内検出器6bが応答信号11の第1波を検出した時間の差を計算し、音響信号の伝搬時間を求めて既知の伝播速度で割ることにより、一番上の乗りかご1aの位置を求める。
【0019】
一方、下側に向かった応答信号11bの第1波は、下の乗りかご1bの第2のかご上検出器7b′を通過する。乗りかご1bは、第2のかご上検出器7b′の検出に基づき、それまで初期状態として一番下のかご上入力器8c′を選択していたものを、一つ上のかご上入力器8b′に選択設定を変更する。
【0020】
さらに、下側に向かった応答信号11bの第1波は、第3の塔内入力器6cを通過する。これにより、コントローラは、左側走行路2a内に乗りかご1が1台存在することを確認する。
【0021】
この間、呼び出し信号10は、応答信号11bの第1波より遅れて上から2番目の乗りかご1bのかご上検出器7a′を通過する。このとき、乗りかご1bは既に一番下から2番目のかご上第2の入力器8b′を選択しているので、ここから応答信号第2波12を発信する。
【0022】
上側に向かった応答信号12aの第2波は、まず、第2のかご上検出器7b′に検出される。これにより、乗りかご1bは、かご上入力器8を一つ上のかご上入力器8a′に設定変更する。
【0023】
さらに、上側に向かった応答信号12aの第2波は、上の乗りかご1aの第2のかご上検出器7bに検出される。これにより、乗りかご1aは、かご上入力器8を一つ上のかご上入力器8aに設定変更する。
【0024】
その後、上側に向かった応答信号12aの第2波は塔内検出器6bによって検出される。そして、コントローラは、塔内入力器5aが呼び出し信号10を発生させた時間と、塔内検出器6bが応答信号12の第2波を検出した時間の差を計算し、音響信号の伝搬時間を求めて既知の伝播速度で割ることにより、上から2番目の乗りかご1bの位置を求める。
一方、下側に向かった応答信号12bの第2波は、第3の塔内入力器6cを通過する。これにより、コントローラは、左側走行路2a内に乗りかご1が2台存在することを確認する。
その後、補助信号発生側に設置した第1の塔内検出器6aが呼び出し信号10を検出する。この時点で、第3の塔内検出器は2つの応答信号11b,12bしか検出しておらず、コントローラは左側走行路2a内に2台の乗りかごがあり、それ以上乗りかごは存在し得ないことがわかる。
【0025】
コントローラは走行路に存在し得る最大の乗りかご数に対して、少ない分だけ補助信号13を第2の塔内入力器5bより発生させるようにしておく。よって、この場合は第2の塔内入力器5bより補助信号13を1回発生させる。
【0026】
上側に向かった補助信号13は、乗りかご1a,1bの第2のかご上検出器7b,
7b′を通過し、各乗りかご1a,1bは、かご上入力器8,8′の設定を変更する。このとき、すでに一番上の第1のかご上入力器8a,8a′が選択されており、それよりも上のかご上入力器8,8′は無いため、再び一番下の第3のかご上入力器8c,8c′に選択を変更して初期状態に復帰する。
ここまでの処理が終って十分な時間がたってから次の呼び出し信号10を発信して上記測定を繰り返す。
【0027】
以上の方法を環状の走行路を循環移動するマルチカーに実施するための方法を以下に説明する。
基本的に、上記と同様にして他の3本の走行路2b,3a,3bを構成すればよい。具体的には、左側走行路2aを時計回りに90度回転させたものを上側走行路3aにあてはめれば良い。よって、上下2本の音響信号伝導体4e,4fのうち、第1の音響信号伝導体4eは上に位置し、第2の音響信号伝導体4fは下に位置する。そして、右側が測定側となる。
右側走行路2bは、上側走行路3aをさらに90度回転させたものにし、下側走行路
3bは、右側走行路2bをさらに90度回転させたものにする。
図1に示すものは、4本すべての走行路2,3でかご上の検出器7と入力器8を共用できるように取り付け方を工夫してある。つまり、第2のかご上検出器7bと第1のかご上入力器8aとかご上第2の入力器8bを回転アーム14上に取り付けている。
【0028】
上側走行路3aを移動中の乗りかご1fは、第1のかご上入力器8aを中心に回転アーム14を時計回りに90度旋回する。右側走行路2bを走行中の乗りかご1dは、さらに時計回りに90度旋回する。下側走行路3bを走行中の乗りかご1cは、さらに時計回りに90度旋回する。
これにより、乗りかご1がどの走行路2a,2b,3a,3bの中にあっても、第2のかご上検出器7bと第1のかご上入力器8aとかご上第2の入力器8bは、常に第2の音響装置伝導体4b,4f,4c,4gに沿って移動することができる。
【0029】
上下の走行路3は区間が短いため、最大で2台の乗りかご1しか存在し得ない。よって、上側走行路ではかご上入力器8を2個しか使わないので、回転アーム14にかご上入力器8を2個しか取り付けていない。なお、図1では、上側走行路3aの2本の音響信号伝導体4e,4fの高さ位置をずらして配置しているが、高さ位置を同じにして前後方向にずらして配置しても良い。下側走行路3bについても同様である。その場合、左右の走行路2a,2bのそれぞれに設置する2本の音響信号伝導体4a,4b,4c,4dも前後方向にずらして配置する必要がある。
回転アームに取り付けず、上下走行路3において別のかご上入力器8を追加で設けても良い。その場合は、図1のかご上第1入力器8aが取り付けてあるところに第2のかご上検出器7bを取り付け、その下に第1のかご上入力器8aを取り付ける。また、右側走行路2bは左側走行路2aに対して上下を逆にしないでそのまま平行移動するようにして配置する。下側走行路3bも、上側走行路3aと同じ向きで配置する。
【0030】
4つのコントローラは上位のメインコントローラによって統合管理し、メインコントローラがすべての乗りかご1の位置を把握する。よって、乗りかご1が、他の走行路2,3に移るとき、各走行路2,3の乗りかごの位置を変更する。さらに、乗りかご1は、最も測定側に近い位置のかご上入力器8aに選択を切り替える。そのため、乗りかご1は自身が走行路2,3を移ったことを検知する手段が必要とされ、乗りかご1の左右側面に、左右走行路2a,2bの壁や壁に沿って取り付けてある機器19を検出する近接センサ20を取り付ける。
近接センサ20の検出状態が変化したときに、乗りかご1は、自身がいずれかの走行路2,3に移ったことを知り、第1のかご上入力器8aを選択する。
【0031】
次に、複数のかご上入力器8を使い分けることについて、図2,図3を用いて説明する。図2,図3は、左側走行路2aに2台の乗りかご1a,1bがある例を示す。
【0032】
図2において、各乗りかご1a,1bには、かご上検出器7が1つとかご上入力器8が1つ取り付けてある。つまり、複数のかご上入力器8を持たず、単一のかご上入力器8より、応答信号11,12を発生する場合の例を示している。
【0033】
図2のAは、かご上検出器7が呼び出し信号10を検出し、かご上出力器8により応答信号11の第1波を発信したときの状態を示している。
その後、図2のBに示すように、応答信号11a,11bは、上向きと下向きに分かれて伝播する。
図2のCは、呼び出し信号10が2番目の乗りかご1bのかご上検出器7′を通過するときの状態を示す。このとき、かご上入力器8′によって応答信号12の第2波を発信するが、ちょうどその位置で、1番目の乗りかご1aの下向きの応答信号第1波11bが通過中である。よって、応答信号12の第2波は干渉を受けてしまう。この干渉により応答信号12の第2波が減衰し、測定が困難となる。これを避けるために、図3に示すようにかご上入力器8を複数取り付ける。
【0034】
図3のAにおいて、上の乗りかご1aのかご上検出器7aが呼び出し信号10を検出したとき、先に述べたとおり測定側より遠い方のかご上第2の入力器8bから応答信号11の第1波を発信する。
次に、図3のBに示すように、下に向かった応答信号11bの第1波が下の乗りかご
1bの第2のかご上検出器7b′を通過する。このとき、下の乗りかご1bの第2のかご上検出器7b′が応答信号11bの第1波を検出する。そして、乗りかご1bは、一つ上に位置するかご上第1の出力器8a′に選択を変更する。
図3のCは、その後、呼び出し信号10が下の乗りかご1bの第1の検出器7a′を通過するときの状態を示す。応答信号11bの第1波は第1のかご上入力器8b′を通過し終えているので、干渉すること無しに、かご上第1の出力器8a′から応答信号12の第2波を発信することができる。
【0035】
物理的な距離を変える方法とは別に、乗りかご毎に所定時間ずらして応答信号を発信することでも良い。つまり、図2の上の乗りかご1aは、図2のAのとき、呼び出し信号
10を受けてから即座に応答信号第1波11を発信するが、図2のC状態のときは、所定時間遅れてから応答信号第2波12を発信する。つまり、かご上第2の検出器7bにより、自かごが一番上から何番目に位置するのか分かるので、順番に応じて遅れ時間を設定する。これにより、かご上入力器8が1つしかなくても応答信号11,12の干渉を避けることができる。ただし、コントローラは乗りかごの速度を考慮して位置を計算する必要がある。
そこで、塔内第2の検出器6bに届く応答信号11を分析して乗りかご1の速度を検出しても良い。
つまり、乗りかご1より応答信号11を発信するとき、所定の時間間隔でパルスを2回発生させる。乗りかごが停止している場合は、同じ時間間隔で塔内第2の検出器6bに2つのパルス信号が届く。乗りかご1が上に向かって走行しているならば、より短い時間間隔で信号が届く。逆に、下に向かって走行しているときは、より長い時間間隔で信号が届く。したがって、乗りかご1の走行速度と移動方向によって、2つのパルス信号の間隔が変化することを利用して乗りかご1の速度を求める。同様に、塔内第2の検出器6bで応答信号11のパルスの幅や波長の変化を検出することによっても速度を求めても良い。
【0036】
また、乗りかごを指定できるように、パルス数もしくはパルス幅等で識別できるような呼び出し信号にしても良い。例として、1山のパルス信号はかご1aを、連続した2山のパルス信号はかご1bを呼び出す信号と定める。初回の測定では第1の音響信号伝導体
4aに1山パルスの呼び出し信号を発信する。上方のかご1aのかご上第1の検出器7aは、1山パルスを検出することにより自かごが呼び出されていることを知り、かご上入力器8から応答信号11を発信する。そして、下方のかご1bのかご上第1の検出器7aは、初回の呼び出し信号は無視し、2回目の測定時に2山パルスの呼び出し信号を検出したときに応答信号12を発信する。ここで、応答信号11,12の干渉を避けるためには、十分な時間が経過した後に2回目の呼び出し信号を発信する必要がある。よって、高層のビルで測定区間が長い場合には測定間隔が長くなるので、最後のかご1の位置を測定した時点で最初に測定したかご1の位置は大きくずれている可能性がある。よって、測定区間が十分短い場合、かごの走行速度が十分に遅い場合に有効である。
【0037】
さらに、測定区間が十分短い場合は応答信号同士の干渉は小さいので、図3において、下向きの応答信号第1波11bが通り過ぎる前に応答信号第2波12を発生させても、上向きの応答信号第2波12は下向きの応答信号第1波11bの影響を受けない。したがってこのような場合は、一番上のかご上入力器8aから順番に応答信号11を発生させるようにしても良い。
【0038】
また、図3に示すように、それぞれの乗りかご1a,1bが、その乗りかごに固有の応答波形を発信すれば、受信側のコントローラは、どのかごがどこにいるのかが分かる。図3では、パルスの数で識別する方法を示しているが、このほかにも、パルスの幅を変えて識別できるようにしてもよいし、パルスの高さを変えて識別するようにしても良い。
【0039】
すべての乗りかご1で同一の波形しか出さない場合は、電源投入時など、初期化する際に無線等で乗りかご1の識別を行う。つまり、初回測定時に、図3のAと図3のCの状態になったとき、応答信号11,12を発信する際に乗りかご1a,1bの識別番号と選択中のかご上入力器8の番号または第2のかご上検出器7bが検出した信号の数を無線でコントローラに送信する。コントローラは、位置検出結果と無線情報をもとに乗りかご1の位置と識別番号を割り当てる。乗りかごの識別番号をコントローラ側から指定し、該当の乗りかご1のみ応答するようにしても良い。このようにすれば、応答信号11,12の波形によらずに識別が可能である。
【0040】
初期化の後、コントローラまたはメインコントローラは、各乗りかご1の位置や速度が連続的に変化することを利用して、先の位置情報に最も近い乗りかご1はどれに相当するか等の判定により、乗りかご1の識別番号と位置を対応付ける。
なお、このように初期化時の乗りかご1の並ぶ順番と位置を記憶して乗りかごを識別しながら運転する方法は、乗りかご1同士の追い越しがないマルチカーエレベータに有効である。
1本の走行路2aのみ使って複数の乗りかご1を移動するワンシャフトマルチカーの場合、各乗りかご1の位置関係は不変なので、初期化時の乗りかご1の識別をも不要とする。さらに、走行路2a内の乗りかご1の総数も変化が無いので、第1の塔内検出器6aと第2の塔内入力器5bと第3の塔内入力器6cは不要である。さらに、各乗りかご1のかご上入力器8は異なる位置に1つあればよい。つまり、図3の場合、上の乗りかご1aは、一番下のかご上入力器8bのみ取り付ければよく、下の乗りかご1bは下から2番目のかご上入力器8aのみ取り付ければよい。よって、かご上入力器8を選択変更する必要は無く、第2のかご上検出器7bも不要である。
【0041】
次に、選択されたかご上入力器8が故障しているため、応答信号11を発生できなかった場合の故障検出方法を説明する。
乗りかご1同士の追い越しが無いので、位置に関して乗りかご1は順番どおりに並ぶはずである。しかし、左走行路2aにおいてある乗りかご1aの入力器8が故障した場合、さらに下に乗りかご1bがあれば、その乗りかご1bの応答信号12aが塔内検出器6bに届く。よって、コントローラやメインコントローラで乗りかご1bの信号が届く順番や、乗りかご1aの瞬間移動を確認することにより、かご上入力器8の故障を検知することができる。
【0042】
また、コントローラにウォッチドッグタイマを付けて、故障検出をすることもできる。例えば、左走行路2aの中に何台の乗りかごが存在するかあらかじめ分かっている場合に、ある乗りかご1のかご上入力器8が故障した場合は、いつになっても最後の1台の応答信号12aが塔内検出器6bに届かない。よって、所定時間が経過したときにウォッチドッグタイマが切れるようにし、異常を検知することができる。ウォッチドッグタイマは、測定側から最も遠い位置の乗りかご1の第1のかご上入力器8aが応答信号12を出した場合にコントローラに信号が伝わる時間よりも長く、1回の測定時間よりも短い時間に設定する。
【0043】
図4を参照して、6台の乗りかご1をループ状の循環ロープ16とモータ17を使って駆動することについて説明する。
乗りかご1bの前後に各1本配置した循環ロープ16b,16b′に、乗りかご1b上部の対角線上の2箇所を固定する。さらに、循環ロープ16b,16b′の対向する位置にもう1台の乗りかご1b′を固定する。2本の循環ロープと2台の乗りかごで1組になったものを3組作る。上部に示した3系統のモータ17a,17b,17cで、円弧状に配置した多数の駆動プーリ18a,18b,18cを連動して回転させ、それぞれの組の循環ロープ16a,16b,16cを独立に駆動する。
複数の駆動プーリ18に均等に摩擦力が働くように円弧状に配置した影響で、上側走行路3aは円弧形状になっている。上下で対称な形にするため、下側走行路3bも同様に円弧形状である。
また、上下の走行路3a,3bは乗りかご1を左右の走行路2a,2bに移して上下の運転方向を反転することが目的のため、必要最低限の長さとしている。よって、この部分を走行する乗りかご1は1台に限られる。
【0044】
図5は、全体構成であり、循環ロープ16の対向する位置に乗りかご1が2台固定されていることから、左走行路2aに乗りかご1が1台存在するならば、必ず右側走行路2bに対となる乗りかご1′が1台存在する。つまり、左右片側の走行路2a,2bに最大で3台の乗りかご1が存在することになる。したがって、各乗りかご1のかご上入力器8の数は、走行路2の長さによらず3つである。
上下部の各走行路3a,3bに存在し得る乗りかご1の数は最大でも1台であることから、どのかご上入力器8を用いても応答信号11の干渉が無い。これは、図2に乗りかご1が1台しか無い場合に相当する。よって、回転アーム14に第1のかご上入力器8aのみ取り付ければ良い。
【0045】
さらに、補助信号13の必要性も無いので第1の塔内検出器6aと第2の塔内入力器
5bと第3の塔内入力器6cは不要である。ただしこの場合、乗りかご1自身で上下部の走行路3a,3bにあることを検知して第1のかご上入力器8aを選択する必要がある。そのため、乗りかご1の左右側面に、左右走行路2a,2bの壁や壁に沿って取り付けてある機器19を検出する近接センサ20を取り付けている。近接センサ20で検出信号が無しのとき、乗りかご1は、自身が上下いずれかの走行路3a,3bにあることを知り、第1のかご上入力器8aを選択する。
上下各走行路3a,3bのいずれかに乗りかご1が存在することが分かれば、左右の各走行路2a,2bに存在する乗りかご1の数が2台であることは明らかである。よって、左右走行路2のコントローラは、上下走行路3a,3bにおける乗りかご1の有無をメインコントローラを介して先に知ることにより、補助信号を1回発信するべきか判断可能である。よって、第3の塔内検出器6cは不要である。
【0046】
次に、音響信号伝導体4の具体的な支持方法について説明する。
音響信号伝導体4は強磁歪性素材でできた細長いワイヤのため、地震や風で容易に揺れ動く。よって、図6に示すように、ガイドリング21の輪にワイヤを通して音響信号伝導体4の揺れを拘束する。
かご上検出器7は、音響信号伝導体4から受信コイル22を介して信号を検出し、かご上入力器8は送信コイル23を介して音響信号伝導体4に信号を発生させる。
送受信コイル22,23は、次の3つの理由でコイルをU字形にする。
【0047】
第1に、送受信コイル22,23から音響信号伝導体4が外れないため、第2に、送受信コイル22,23がガイドリング21の固定部と衝突しないため、第3に、送受信コイル22,23が各走行路2,3に移る際に現在の音響信号伝導体から離れて移動先の音響信号伝導体4に移るためである。
【0048】
ガイドリング21の固定部は柔軟な材質で作るなどして、地震で乗りかご1の送受信コイル22,23が衝突しても損傷がないようにする。
上下側走行路3では、乗りかご1の円弧状の移動軌跡に沿って、ガイドリング21により音響信号伝導体4を曲げながら取り付ける。音響信号伝導体4を伝播する音響信号は縦波なので、ガイドリング21の定常的な接触があっても、それによる信号の減衰は殆ど無い。
【0049】
図6のA,Bに示すように、左右の走行路2から上下部の走行路3に移る部分の音響信号伝導体4の配置方法は2通りある。
図6のAに示すのは、2本の音響信号伝導体4に、同じ受信コイル22を沿わす設置方法である。2本の音響信号伝導体4a,4eの一部を重複させて、U字の受信コイル22が通過できるようにする。ただし、この部分で、2本の音響信号伝導体4a,4eが直接接触しないように、拡大図に示すように2穴ガイドリング24にそれぞれを通して間隔を保つ。なお、後述するとおり、受信コイル22は曲線に沿って回転するように取り付ける。
以上によれば、かご上第1の出力器7aの受信コイル22が、左走行路2aの第1の音響信号伝導体4aから上側走行路3aの第5の音響信号伝導体4eに移るときと、第3の音響信号伝導体4cから下側走行路3bの第7の音響信号伝導体4gに移るときに用いる。
第1のかご上入力器8aが、左側走行路2aから上側走行路3aに移るときに用いても良い。その場合、第2のかご上検出器7bは、第1のかご上入力器8aよりも下側に取り付ける。
走行路2を2本の音響信号伝導体4で分割する場合にもこの方法を用いればよく、分割することにより、走行路2を長くすることができる。
【0050】
図6のBに示すのは、左右走行路2と下側走行路3bで異なるコイル23a,23bを使う方法である。
第1のかご上入力器8aの下に、かご上第2,第3の入力器8b,8cが配置されているため、下側反転部3bでこれらを第8の音響信号伝導体4hよりも下側に通過させなければならない。そのため、送信コイル23が第8の音響信号伝導体4hに干渉しないように第4の音響信号伝導体4dと、第8の音響信号伝導体4hを前後に離して設置してかご上入力器8を通過させる隙間を作る。さらに、第8の音響信号伝導体4hの位置に合わせて別の送信コイル23bを設ける。
【0051】
図7に、音響信号伝導体4に送受信のコイル22,23を沿わせるための取り付けを示す。
かご上検出器7aの受信コイル22aと第1のかご上入力器8aの送信コイル23a,23bは、回転しながら常に音響信号伝導体4の内側から沿わせて移動させる必要がある。ロープ締結部14は、循環ロープ16と一体に固定されるので、360度回転しながら動く構造になっている。つまり、かご上検出器7やかご上入力器8を取り付けるための回転アーム14の機能を持たせる。よって、左側循環ロープ16a′のロープ締結部14aに受信コイル22aを取り付け、右側循環ロープ16aのロープ締結部14bに送信コイル23a,23bを取り付ける。
【0052】
第2のかご上検出器7b,かご上第2,第3の入力器8b,8cの送受信コイル22,23は、上下走行路3で乗りかご1が横に移動する際に音響信号伝導体4b,4dに当たらないように、音響信号伝導体4b,4dの内側から沿わせる必要がある。しかし、これらの送受信コイル22,23を全て回転させて向きを180度変えようとすると機構が複雑になる。よって、1つのかご上検出器7または入力器8の送受信コイル22,23の部分を左右2つに分け、それぞれ180度向きを変えて取り付ける。
これにより、乗りかご1が左側走行路2aにあるときは、左側の受信コイル22bと送信コイル23c,23eを内側から第2の音響信号伝導体4bに沿わせる。逆に、乗りかご1が右側走行路2bにあるときは、右側の受信コイル22cと送信コイル23d,23fを内側から第4の音響信号伝導体4dに沿わせる。左右の送信コイル23への出力は、乗りかご1の位置に応じて左右切り替えを行っても良いし、位置にかかわらず左右両方同時に使って信号を出しても良い。
【0053】
次に、図8の上面図を用いて、循環ロープ16と乗りかご1と音響信号伝導体4と送受信コイル22,23の位置関係を説明する。
図8は、左右の走行路2a,2bに位置する2台の乗りかご1a,1a′と、乗りかご1の前後に配置した循環ロープ16,16′と、音響信号伝導体4の断面と、送受信コイル22,23を上から見た図である。図8の下側25がエレベータの前側25で、その逆が後ろ26である。なお、乗りかご1のドアを反対に取り付けて前後の向きを逆にしても良い。
【0054】
乗りかご1の循環ロープ16への取り付けについて説明をする。
乗りかご1後方26の左側循環ロープ16′は、ロープ締結部14aが循環ロープ
16a′を掴んでいる。ロープ締結部14のロープを掴んでいる側を腹と呼び、その逆側を背と呼ぶ。ロープ締結部の腹側は、循環ロープの内側を向き、背側は外側を向く。
乗りかご前方25の右側循環ロープ16は、乗りかご1の前側25にあり、ロープ締結部14bが循環ロープ16aを掴んでいる。そして、乗りかご1aの左後ろと右前に取り付けた回転軸27a,27bでロープ締結部14a,14bを乗りかご1aに固定する。
【0055】
以上のようにして乗りかご1を循環ロープ16,16′に取り付けているため、音響信号伝導体4が循環ロープ16,16′や乗りかご1に干渉しないためには、以下の2つの条件を満たす必要がある。
第1に、ロープ締結部14aに当らないように循環ロープ16aから十分外側に離して配置すること、第2に、乗りかご1に当らないように、乗りかご1よりも前または後ろの位置に配置することである。
【0056】
以上の配置条件を踏まえ、左側循環ロープ16′とその周囲の配置を説明する。
ロープ締結部14a,14a′の背近傍の乗りかご1よりも後ろの位置に第1の音響信号伝導体4a,第3の音響信号伝導体4cを配置する。そして、その延長上に上下走行路3で使用する第5,第7の音響信号伝導体4e,4gを配置する。
左側の乗りかご1aに着目すると、乗りかご1aの後ろ側にはかご上検出器7aの受信コイル22aのみ必要とする。受信コイル22aのU字の開口部が左を向くようにロープ締結部14aの背に取り付ける。これにより、右側走行路2bに移る際にロープ締結部
14aが180度回転するので、右側走行路の乗りかご1a′の受信コイル22a′の開口部は右側を向く。したがって、常に音響信号伝導体4の内側からコイル22aを沿わすことができる。
コイル22aを360度回転した形状のコイル22Aにして、これをロープ締結部14の軸受28に固定しても良い。これによれば、コイル22Aは回転しないので配線が容易となる。
【0057】
つぎに、右側循環ロープ16とその周囲の配置を説明する。
右側循環ロープ16は、乗りかご1の前側25にあり、乗りかご1の前側では複数の送受信コイル22,23を必要とする。
乗りかご1aの第2のかご上検出器7bとかご上第2,第3の入力器8b,8cの送受信コイル22,23は、2つに分かれて反対の向きに取り付けてあり、これらが循環ロープ16に干渉しないためには、循環ロープよりも後ろに取り付ける必要がある。したがって、第2,第4の音響データ誘導体4b,4dを、ロープ締結部14b,14b′の背近傍の乗りかご1と循環ロープ16の間に配置する。
【0058】
さらに、第2,第4の音響信号伝導体4a,4dよりも前の位置に、上下走行路3で使用する第6,第8の音響信号伝導体4f,4hを配置する。これら上下走行路3で使用する音響信号伝導体4f,4hの位置に合わせて、ロープ締結部14bの背に第1のかご上入力器8aの2つ目の送信コイル23bを取り付ける。上下走行路3の音響信号伝導体
4h,4fを後方にずらして配置しても良いが、前方にずらした方が昇降路断面積が小さく省スペースになる。
ロープ締結部14のコイル23bを360度回転した形状のコイル23Bにして、これをロープ締結部14の軸受28に固定しても良い。ただし、循環ロープ16に干渉しないように、上下走行路3の音響信号伝導体4h,4fを乗りかご3と循環ロープ16の間に配置する。こうすれば、コイル23Bは回転しないので配線が楽にできる。
【0059】
次に、かご上入力器8の取り付け位置の校正方法について説明する。
校正処理を行っている間は、ある特定の乗りかご1のみ呼び出し信号10に反応して応答信号11を発生し、他の乗りかご1は、呼び出し信号10を無視する。
コントローラは、乗りかご1をすべて止めた状態で、呼び出し信号を複数回発信する。特定の乗りかご1のかご上検出器7aがこれを検出するたびに、上から順番にすべてのかご上入力器8から応答信号を発信する。
コントローラは、特定の乗りかご1の各位置のかご上入力器8から送られてくる応答信号より、かご上入力器8の実際の取り付け位置を計算して求め、その値を測定時の校正値として利用する。
故意にかご上入力器8の位置を微妙にずらすことにより、各乗りかご1に固有の間隔でかご上入力器8を取り付けることができる。それを利用して、乗りかごの識別を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明による一実施の形態の全体構成を示すブロック図。
【図2】応答信号の干渉を説明するブロック図。
【図3】一実施の形態による応答信号が干渉しない例を示すブロック図。
【図4】一実施の形態の循環ロープによる駆動方法を示す斜視図。
【図5】他の実施の形態による全体構成を示すブロック図。
【図6】一実施の形態による音響信号伝導体の支持方法を示す図。
【図7】一実施の形態による送受信コイルの取付方法を示す図。
【図8】一実施の形態による各機器の設置位置を示す上面図。
【符号の説明】
【0061】
1…乗りかご、4…音響信号伝導体、5…塔内入力器、6…塔内検出器、7…かご上検出器、8…かご上入力器、10…呼び出し信号、11,12…応答信号、13…補助信号、14…ロープ締結部、16…循環ロープ、17…モータ、18…駆動プーリ、20…近接センサ、21…ガイドリング、22…受信コイル、23…送信コイル、24…2穴ガイドリング、27…回転軸、28…軸受。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行路内に複数の乗りかごを有するマルチカーエレベータにおいて、
前記走行路に沿って音響信号を伝播する第1及び第2の音響信号伝導体と、
前記第1の音響信号伝導体の測定側となる一端に設けられ、電気信号を音響信号に変換して音響信号を発生させる塔内入力器と、
前記第2の音響信号伝導体の測定側となる一端に設けられ、音響信号を検知して電気信号に変換する塔内検出器と、
それぞれの前記乗りかごに設けられ、前記第1の音響信号伝導体から伝播された信号を検出するかご上検出器と、
前記第2の音響信号伝導体に対して応答信号を発生するかご上入力器と、
を備え、前記塔内入力器より呼び出し信号を発生し、前記かご上検出器で検出後、前記かご上入力器から前記第2の音響信号伝導体に対して応答信号を発生し、呼び出し信号を発生させてから前記塔内検出器が応答信号を検出するまでの時間より前記乗りかごの位置を求めることを特徴とするマルチカーエレベータ。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、前記かご上入力器は、前記乗りかご毎に前記測定側からの距離が異なるように複数設けられ、前記塔内入力器より呼び出し信号を発生し、前記かご上検出器で検出後、複数の前記かご上入力器のいずれかを選択して前記第2の音響信号伝導体に対して応答信号を発生することを特徴とするマルチカーエレベータ。
【請求項3】
請求項1に記載のものにおいて、前記乗りかご毎に前記測定側からの距離が異なるように複数設けられた前記かご上入力器と、それぞれの前記乗りかごに設けられ前記第2の音響信号伝導体から伝播された信号を検出する第2のかご上検出器と、を備え、該第2のかご上検出器が信号を検出した場合、選択する前記かご上入力器を移動することを特徴とするマルチカーエレベータ。
【請求項4】
請求項1に記載のものにおいて、前記乗りかご毎に前記測定側からの距離が異なるように複数設けられた前記かご上入力器と、それぞれの前記乗りかごに設けられ前記第2の音響信号伝導体から伝播された信号を検出する第2のかご上検出器と、を備え、前記第2のかご上検出器が信号を検出した場合、前記測定側からの距離に応じて順に選択されることを特徴とするマルチカーエレベータ。
【請求項5】
請求項1に記載のものにおいて、前記かご上入力器は、前記乗りかごの数に応じて設けられたことを特徴とするマルチカーエレベータ。
【請求項6】
請求項1に記載のものにおいて、前記走行路は複数の区間毎走行路に区切られ、それぞれの前記区間毎走行路に前記第1及び第2の音響信号伝導体を備えたことを特徴とするマルチカーエレベータ。
【請求項7】
請求項1に記載のものにおいて、前記走行路は複数の区間毎走行路に区切られ、それぞれの前記区間毎走行路に取り付けてある機器を検出する近接センサを前記乗りかごに設け、前記乗りかごが前記区間毎走行路のうちいずれにあるかを検出することを特徴とするマルチカーエレベータ。
【請求項8】
請求項1に記載のものにおいて、前記走行路は複数の区間毎走行路に区切られ、前記乗りかごは循環ロープに固定されて循環移動することを特徴とするマルチカーエレベータ。
【請求項9】
走行路内に複数の乗りかごを有するマルチカーエレベータにおいて、
前記走行路に沿って音響信号を伝播する第1及び第2の音響信号伝導体と、
前記第1の音響信号伝導体の測定側となる一端に設けられ、電気信号を音響信号に変換して音響信号を発生させる塔内入力器と、
前記第2の音響信号伝導体の測定側となる一端に設けられ、音響信号を検知して電気信号に変換する塔内検出器と、
それぞれの前記乗りかごに設けられ、前記第1の音響信号伝導体から伝播された信号を検出するかご上検出器と、
前記乗りかごに設けられ、前記第2の音響信号伝導体に対して応答信号を発生するかご上入力器と、
を備え、前記塔内入力器より呼び出し信号を発生し、前記かご上検出器で検出後、前記かご上入力器から前記乗りかご毎に所定時間ずらして前記第2の音響信号伝導体に対して応答信号を発生し、呼び出し信号を発生させた時間と、応答信号を検出した時間と、前記乗りかごの速度と、より前記乗りかごの位置を求めることを特徴とするマルチカーエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−13326(P2008−13326A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187341(P2006−187341)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】