説明

マルチキャスト中継装置、マルチキャスト中継方法、及びマルチキャスト中継プログラム

【課題】確保した帯域内での帯域制御、契約形態に沿った帯域制御、及び効率的な帯域制御を実現することができる。
【解決手段】マルチキャスト中継装置(マルチキャストルータ)4は、帯域確保クラスと最低帯域確保クラスとを識別する転送品質クラス及び事業者情報が記憶されるチャネル情報テーブル61と、転送品質クラス及び事業者情報ごとの割当帯域ならびに使用帯域の帯域情報が記憶される帯域情報テーブル62と、転送品質クラス判定部72が帯域確保クラスであると判定した場合に配信設定処理を行う帯域確保クラス配信設定部751と、転送品質クラス判定部72が最低帯域確保クラスであると判定した場合に、帯域情報テーブル62に記憶される帯域情報を参照して配信設定処理を行う最低帯域確保クラス配信設定部753を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IPマルチキャスト放送により配信される映像(以下、「チャネル」と呼ぶときがある)を中継する、マルチキャスト中継装置、マルチキャスト中継方法、及びマルチキャスト中継プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
固定通信事業者が提供するサービスに「電話」、「ブロードバンド接続」、「IPマルチキャスト放送」を組み合わせたサービスである「トリプルプレイサービス」がある。「トリプルプレイサービス」において、IPマルチキャスト放送により映像を配信する場合、IPマルチキャスト放送の帯域制御はプロビジョニング(利用者や通信量の増え具合を予想して、早め早めに設備を増強すること)で帯域設計や収容設計を行っている。つまり、マルチキャストルータとユーザ端末との間で、あらかじめIPマルチキャスト放送用の帯域を確保し、確保した帯域の中で映像を配信する運用を行っている(非特許文献1参照)。
【0003】
従来における、IPマルチキャスト放送の帯域制御を図11及び図12を参照して説明する。図11は、マルチキャスト中継システムの構成図である。事業者A,Bが所有するマルチキャスト配信サーバH(以下、単に「配信サーバ」と呼ぶときがある)からIPマルチキャスト放送が配信され、マルチキャストルータR及び集線装置Sを介して視聴ユーザ端末Tに中継される。このとき、視聴ユーザ端末Tの数が「10」だとすると、図12(a)に示すように、視聴ユーザ端末Tの数に応じて、集線装置S下の視聴ストリーム(チャネル)数で必要となる帯域を予測し、プロビジョニングで帯域設計を行う。
【0004】
ここで、収容率向上のために、視聴ユーザ端末Tの数を「15」に変更したとする。視聴ユーザ端末Tの増加に伴い、集線装置S下の視聴ストリーム(チャネル)数を予測し、新たに帯域を確保することも可能であるが、ネットワークにおける帯域は有限であるので、無駄な帯域はなるべく確保したくない。その為、集線装置S下の最大視聴ストリーム数による帯域よりも確保する帯域を少なくした場合を図12(b)に示す。その場合、集線装置S下の視聴による帯域は確保した帯域を超える場合が発生する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】笠原英樹、錦戸淳、織田一弘、大西邦宏、梶山義夫、「次世代ネットワークを支えるネットワーク基盤技術」、NTT技術ジャーナル、平成19年4月、Apr.2007、p.38−p.43
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記したように、マルチキャストルータとユーザ端末間との間で、あらかじめ確保した帯域を、IPマルチキャスト放送で使用するデータ量が超過する場合、IPマルチキャスト放送サービス以外の電話サービス及びブロードバンド接続サービスで使用するはずの帯域を使用してしまい、電話サービス及びブロードバンド接続サービスに悪影響を及ぼす。また、確保した帯域内で無理に納めようとすると、IPマルチキャスト放送サービスの品質の低下を招く恐れがある。その為、IPマルチキャスト放送を確保した帯域内で帯域制御する必要がある。
【0007】
また、IPマルチキャスト放送サービスの運用にあたって、固定通信事業者と配信事業者との間に結ばれる種々の契約形態を考慮した場合、ある配信事業者に帯域を占有されないようにしたり、所定の放送については必ず帯域を確保する等、契約形態に沿った帯域制御が必要になる。
【0008】
一方、ネットワークにおける帯域は有限であるので、確保した帯域内での帯域制御及び契約形態に沿った帯域制御を行うにしても、使用していない無駄な帯域は極力減らし、効率的に帯域制御を行う必要がある。
【0009】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、確保した帯域内での帯域制御、契約形態に沿った帯域制御、及び効率的な帯域制御を実現することができる、マルチキャスト中継装置、マルチキャスト中継方法、及びマルチキャスト中継プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明に係るマルチキャスト中継装置は、複数の事業者からIPマルチキャスト放送によりコンテンツがチャネルとして配信され、前記チャネルの配信要求が転送されてきたネットワークにインタフェースを介して中継するマルチキャスト中継装置であって、前記チャネルを識別するための情報であるチャネル識別情報、前記チャネルの配信元の事業者を識別する事業者情報、前記ネットワークにチャネルの中継で用いる帯域を確保し当該チャネルの中継を保証する帯域確保クラスのチャネルか、チャネルの中継で用いる帯域を複数のチャネルで共用して確保し所定数のチャネルの中継を保証するがそれ以上のチャネルの中継は保証しない最低帯域確保クラスのチャネルかを識別する転送品質クラス、及び前記チャネルの中継に要する前記ネットワークの帯域であるチャネル帯域が記憶される第1の記憶部と、前記事業者ごとの、前記ネットワークに中継される可能性がある前記帯域確保クラスのすべてのチャネルを中継した場合に必要となる帯域である前記帯域確保クラスの割当帯域、前記帯域確保クラスの割当帯域のうち使用されている帯域である前記帯域確保クラスの使用帯域、前記最低帯域確保クラスの所定数のチャネルを中継するために事前に設定された帯域である前記最低帯域確保クラスの割当帯域、前記最低帯域確保クラスの割当帯域のうち使用されている帯域である前記最低帯域確保クラスの使用帯域、前記最低帯域確保クラスの割当帯域を超えて前記最低帯域確保クラスのチャネルの配信設定要求があった場合に、最低帯域確保クラスの当該超過分のチャネルを中継するために事業者共用で使用される帯域である共用割当帯域、及び前記共用割当帯域のうち使用されている共用使用帯域、が前記インタフェース単位で記憶される第2の記憶部と、前記チャネルの配信設定要求を受信した場合に、当該配信設定要求に設定されているチャネル識別情報をキーにして前記第1の記憶部を検索し、当該チャネル識別情報に対応する前記転送品質クラスを取得し、当該チャネルの転送品質クラスを判定する転送品質クラス判定部と、前記転送品質クラス判定部が、当該チャネルの転送品質クラスを前記帯域確保クラスであると判定した場合に、前記第1の記憶部から当該チャネルの前記事業者情報を取得し、前記第2の記憶部に記憶される前記取得した事業者情報に対応する前記帯域確保クラスの使用帯域に、前記第1の記憶部に記憶される当該チャネルの前記チャネル帯域を加算すると共に、当該チャネルをマルチキャストグループアドレス宛に中継するように配信設定する帯域確保クラス配信設定部と、前記転送品質クラス判定部が、当該チャネルの転送品質クラスを前記最低帯域確保クラスであると判定した場合に、前記第1の記憶部から当該チャネルの前記事業者情報を取得し、前記第2の記憶部に記憶される前記取得した事業者情報に対応する前記最低帯域確保クラスの使用帯域に前記第1の記憶部に記憶される当該チャネルの前記チャネル帯域を加算した値が、当該事業者情報に対応する前記最低帯域確保クラスの割当帯域を超えるか否かを判定し、前記最低帯域確保クラスの割当帯域を超えないときには当該チャネルの前記チャネル帯域を前記最低帯域確保クラスの使用帯域に加算すると共に、当該チャネルを前記マルチキャストグループアドレス宛に中継するように配信設定し、前記最低帯域確保クラスの割当帯域を超えるときには前記第2の記憶部に記憶される前記共用使用帯域に当該チャネルの前記チャネル帯域を加算した値が前記共用割当帯域を超えるか否かを判定し、前記共用割当帯域を超えないときには当該チャネルの前記チャネル帯域を前記共用使用帯域に加算すると共に、当該チャネルを前記マルチキャストグループアドレス宛に中継するように配信設定し、前記共用割当帯域を超えるときには当該チャネルを配信設定しない最低帯域確保クラス配信設定部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るマルチキャスト中継方法は、複数の事業者からIPマルチキャスト放送によりコンテンツがチャネルとして配信され、前記チャネルの配信要求が転送されてきたネットワークにインタフェースを介して中継するマルチキャスト中継装置に用いられるマルチキャスト中継方法であって、前記マルチキャスト中継装置は、前記チャネルを識別するための情報であるチャネル識別情報、前記チャネルの配信元の事業者を識別する事業者情報、前記ネットワークにチャネルの中継で用いる帯域を確保し当該チャネルの中継を保証する帯域確保クラスのチャネルか、チャネルの中継で用いる帯域を複数のチャネルで共用して確保し所定数のチャネルの中継を保証するがそれ以上のチャネルの中継は保証しない最低帯域確保クラスのチャネルかを識別する転送品質クラス、及び前記チャネルの中継に要する前記ネットワークの帯域であるチャネル帯域が記憶される第1の記憶部と、前記事業者ごとの、前記ネットワークに中継される可能性がある前記帯域確保クラスのすべてのチャネルを中継した場合に必要となる帯域である前記帯域確保クラスの割当帯域、前記帯域確保クラスの割当帯域のうち使用されている帯域である前記帯域確保クラスの使用帯域、前記最低帯域確保クラスの所定数のチャネルを中継するために事前に設定された帯域である前記最低帯域確保クラスの割当帯域、前記最低帯域確保クラスの割当帯域のうち使用されている帯域である前記最低帯域確保クラスの使用帯域、前記最低帯域確保クラスの割当帯域を超えて前記最低帯域確保クラスのチャネルの配信設定要求があった場合に、最低帯域確保クラスの当該超過分のチャネルを中継するために事業者共用で使用される帯域である共用割当帯域、前記共用割当帯域のうち使用されている共用使用帯域、が前記インタフェース単位で記憶される第2の記憶部と、を備えており、前記チャネルの配信設定要求を受信した場合に、当該配信設定要求に設定されているチャネル識別情報をキーにして前記第1の記憶部を検索し、当該チャネル識別情報に対応する前記転送品質クラスを取得し、当該チャネルの転送品質クラスを判定し、当該チャネルの転送品質クラスを前記帯域確保クラスであると判定した場合に、前記第1の記憶部から当該チャネルの前記事業者情報を取得し、前記第2の記憶部に記憶される前記取得した事業者情報に対応する前記帯域確保クラスの使用帯域に、前記第1の記憶部に記憶される当該チャネルの前記チャネル帯域を加算すると共に、当該チャネルをマルチキャストグループアドレス宛に中継するように配信設定し、当該チャネルの転送品質クラスを前記最低帯域確保クラスであると判定した場合に、前記第1の記憶部から当該チャネルの前記事業者情報を取得し、前記第2の記憶部に記憶される前記取得した事業者情報に対応する前記最低帯域確保クラスの使用帯域に前記第1の記憶部に記憶される当該チャネルの前記チャネル帯域を加算した値が、当該事業者情報に対応する前記最低帯域確保クラスの割当帯域を超えるか否かを判定し、前記最低帯域確保クラスの割当帯域を超えないときには当該チャネルの前記チャネル帯域を前記最低帯域確保クラスの使用帯域に加算すると共に、当該チャネルを前記マルチキャストグループアドレス宛に中継するように配信設定し、前記最低帯域確保クラスの割当帯域を超えるときには前記第2の記憶部に記憶される前記共用使用帯域に当該チャネルの前記チャネル帯域を加算した値が前記共用割当帯域を超えるか否かを判定し、前記共用割当帯域を超えないときには当該チャネルの前記チャネル帯域を前記共用使用帯域に加算すると共に、当該チャネルを前記マルチキャストグループアドレス宛に中継するように配信設定し、前記共用割当帯域を超えるときには当該チャネルを配信設定しない、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るマルチキャスト中継プログラムを、前記マルチキャスト中継装置に実行させる、ことを特徴とする。
【0013】
このようにすることで、マルチキャスト中継装置、マルチキャスト中継方法、及びマルチキャスト中継プログラムは、事業者単位及び転送品質クラス単位でチャネルの帯域制御を行い、かつ、転送品質クラスが最低帯域確保クラスのチャネルについては事業者間で帯域を共有する。よって、本発明に係るマルチキャスト中継装置、マルチキャスト中継方法、及びマルチキャスト中継プログラムによれば、確保した帯域内での帯域制御、契約形態に沿った帯域制御、及び効率的な帯域制御を実現することができる。
【0014】
また、本発明に係るマルチキャスト中継装置は、前記最低帯域確保クラスのチャネルごとに、前記チャネルを中継する前記インタフェース配下の配信数が前記インタフェース単位で記憶される第3の記憶部をさらに備え、前記第2の記憶部は、各事業者の前記帯域確保クラスの割当帯域、前記最低帯域確保クラスの割当帯域、及び前記共用割当帯域を合計した合計割当帯域、各事業者の前記帯域確保クラスの使用帯域、前記最低帯域確保クラスの使用帯域、及び前記共用使用帯域を合計した合計使用帯域、前記帯域確保クラスの割当帯域のうち所定時間使用していない不使用帯域を前記共用割当帯域に積み増したオーバーサブ後共用割当帯域、がさらに記憶され、前記帯域確保クラス配信設定部は、前記転送品質クラス判定部が、当該チャネルの転送品質クラスを前記帯域確保クラスであると判定した場合に、前記第1の記憶部から当該チャネルの前記事業者情報を取得し、前記第2の記憶部に記憶される前記合計使用帯域に前記第1の記憶部に記憶される当該チャネルの前記チャネル帯域を加算した値が前記合計割当帯域を超えるか否かを判定し、前記合計割当帯域を超えないときには前記第2の記憶部に記憶される前記取得した事業者情報に対応する前記帯域確保クラスの使用帯域に、前記第1の記憶部に記憶される当該チャネルの前記チャネル帯域を加算すると共に、当該チャネルを前記マルチキャストグループアドレス宛に中継するように配信設定し、前記合計割当帯域を超えるときには前記第3の記憶部に記憶される前記配信しているチャネルのうち前記配信数が少ないチャネルから順に中継を停止し、当該中継を中止したチャネルの帯域を用いて配信設定し、前記最低帯域確保クラス配信設定部は、前記最低帯域確保クラスの割当帯域を超えるときには前記第2の記憶部に記憶される前記共用使用帯域に当該チャネルの前記チャネル帯域を加算した値が前記オーバーサブ後共用割当帯域を超えるか否かを判定し、前記オーバーサブ後共用割当帯域を超えないときには、さらに前記第2の記憶部に記憶される前記合計使用帯域に前記第1の記憶部に記憶される当該チャネルの前記チャネル帯域を加算した値が前記合計割当帯域を超えるか否かを判定し、前記合計割当帯域を超えないときには当該チャネルの前記チャネル帯域を共用使用帯域に加算すると共に、当該チャネルを前記マルチキャストグループアドレス宛に中継するように配信設定し、前記オーバーサブ後共用割当帯域を超えるとき及び前記合計割当帯域を超えるときには、当該チャネルを配信設定しない、ことを特徴とする
【0015】
このようにすることで、マルチキャスト中継装置は、帯域確保クラスの残余帯域を監視し、所定時間内に使用していない残余帯域を共用帯域の割当帯域に積み増す(オーバーサブ)。よって、本発明に係るマルチキャスト中継装置によれば、さらに効率的な帯域制御を実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、確保した帯域内での帯域制御、契約形態に沿った帯域制御、及び効率的な帯域制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係るマルチキャスト中継システムの構成図である。
【図2】第1実施形態に係るマルチキャスト中継装置(マルチキャストルータ)の機能構成図である。
【図3】第1実施形態に係るマルチキャスト中継装置の記憶部に記憶されるチャネル情報テーブルのデータ構成図である。
【図4】第1実施形態に係るマルチキャスト中継装置の記憶部に記憶される帯域情報テーブルのデータ構成図である。
【図5】第1実施形態に係るマルチキャスト中継装置の動作を説明するためのフローチャート図である。
【図6】第2実施形態に係るマルチキャスト中継装置(マルチキャストルータ)の機能構成図である。
【図7】第2実施形態に係るマルチキャスト中継装置の記憶部に記憶される帯域情報テーブルのデータ構成図である。
【図8】第2実施形態に係るマルチキャスト中継装置の記憶部に記憶されるチャネル配信数テーブルのデータ構成図である。
【図9】共用帯域のオーバーサブの設定を説明するための図である。
【図10】第2実施形態に係るマルチキャスト中継装置の動作を説明するためのフローチャート図である。
【図11】従来のマルチキャスト中継システムの説明図である。
【図12】集線装置下のストリーム数と制限帯域の関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
≪第1実施形態に係るマルチキャスト中継システムの構成≫
(概要)
図1は、本発明の第1実施形態に係るマルチキャスト中継システム1の構成図である。マルチキャスト中継システム1は、配信サーバ2A,2B,・・,2N(以下、まとめて「配信サーバ2」と呼ぶときがある)、ユーザ端末3Aa,・・,3An、3Ba,・・,3Bn、3Ca,・・,3Cn(以下、まとめて「ユーザ端末3A」「ユーザ端末3B」「ユーザ端末3C」または「ユーザ端末3」と呼ぶときがある)、上流側マルチキャストルータ4A、下流側マルチキャストルータ4B,4C,4D(以下、まとめて「マルチキャストルータ4」と呼ぶときがある)、及び集線装置5A,5B,5C(以下、まとめて「集線装置5」と呼ぶときがある)を備えて構成される。配信サーバ2、マルチキャストルータ4、及び集線装置5は、IP網9の中に配置される。
【0019】
最初に、マルチキャスト中継システム1におけるユーザ端末3のマルチキャストグループ(あるマルチキャストグループアドレス宛に送信されたパケットを受信する端末の集合)への参加及びマルチキャストグループからの離脱処理の概要を説明する。ユーザ端末3がマルチキャストグループへの参加を要求すると、下流側マルチキャストルータ4B,4C,4Dが参加要求を受信する。次に、参加要求を受信した下流側マルチキャストルータ4B,4C,4Dは、その受信した参加要求を上流側マルチキャストルータ4Aに送信する。このようにして、下流側のルータから上流側のルータに順を追ってマルチキャスト経路を生成していく。マルチキャスト経路の生成に際して、ユーザ端末3と下流側マルチキャストルータ4B,4C,4Dとの間のプロトコルは、例えばIGMP(Internet Group Management Protocol)、MLD(Multicast Listener Discovery)等を用いる。また、下流側マルチキャストルータB,4C,4Dと上流側マルチキャストルータ4Aとの間のプロトコルは、例えばPIM−SM(Protocol Independent Multicast-Sparse Mode)等を用いる。
【0020】
そして、配信サーバ2からマルチキャストグループアドレス宛に送信されたパケットを、マルチキャストルータ4が生成したマルチキャスト経路を用いて、該当するマルチキャストグループに参加しているユーザ端末3に対して転送する。以下、マルチキャスト中継システム1を構成する各装置について説明する。
【0021】
配信サーバ2は、マルチキャストに対応したサーバであり、IPマルチキャスト放送を配信する。具体的には、配信サーバ2は、放送用の映像をIPパケットに変換し、マルチキャストグループアドレス宛に送信する。
【0022】
ユーザ端末3は、例えば、IPマルチキャスト放送用の受信機、図示しないSTB(Set-Top Box)を介したテレビ、マルチキャストに対応した端末用ソフトを備えたPC(Personal Computer)等である。ユーザ端末3は、マルチキャストグループへの参加,離脱等の通知を集線装置5を介して、収容されるマルチキャストルータ4に送信する。
【0023】
マルチキャスト中継装置としてのマルチキャストルータ4は、マルチキャスト対応のルータである。マルチキャストルータ4は、ユーザ端末3からマルチキャストグループへの参加等の通知を受け取り、マルチキャスト経路を生成する。また、マルチキャストルータ4は、生成したマルチキャスト経路に従い、IPマルチキャスト放送用のIPパケットをユーザ端末3に中継する。マルチキャストルータ4の機能については詳細を後記する。
【0024】
集線装置5は、例えば、レイヤ2スイッチであり、IPマルチキャスト放送用のIPパケットを複製して、ユーザ端末3に送信する。なお、集線装置5が、MLDのProxy機能、MLDのSnooping機能を保持し、配信制御を行うようにし、集線装置5が、マルチキャストルータ4と同様のマルチキャストルータ機能を実現するようにしてもよい。
【0025】
≪第1実施形態に係るマルチキャスト中継装置の機能≫
(概要)
図2は、第1実施形態に係るマルチキャストルータ4(マルチキャスト中継装置)の機能構成図である。
マルチキャストルータ4は、記憶部6と、制御部7と、通信部8とを備える。マルチキャストルータ4の記憶部6は、チャネル情報テーブル(第1の記憶部)61と、帯域情報テーブル(第2の記憶部)62とを記憶する。マルチキャストルータ4の制御部7は、通信制御部71と、転送品質クラス判定部72と、信号種別判定部73と、マルチキャスト転送部74と、受付制御部75とを備える。また、マルチキャストルータ4の通信部8は、上流側インタフェース81と、下流側インタフェース82とを備える。以下、マルチキャストルータ4が備える各機能を説明する。
【0026】
<記憶部に記憶される情報>
図3は、第1実施形態に係るチャネル情報テーブル(第1の記憶部)61のデータ構成図である。チャネル情報テーブル61は、図示しないマルチキャスト管理サーバを介して、マルチキャスト中継システム1を管理する管理者によって事前に設定される。チャネル情報テーブル61は、各マルチキャストルータ4が、一つずつ備える。
【0027】
マルチキャスト識別子(チャネル識別情報)611には、配信サーバ2から送信される映像(チャネル)を識別するための情報が設定される。例えば、ユーザ端末3に設定されるグループアドレス、またはグループアドレスと配信サーバ2に設定されるソースアドレスとの組が設定される。事業者(事業者情報)612には、チャネルを配信する事業者を識別するための情報が設定される。
【0028】
転送品質クラス(QoSクラス)613には、固定通信事業者の配信事業者に対するチャネル配信におけるネットワーク利用提供サービスがいずれの契約形態に属するのかを識別するための情報が設定される。ここで、本実施形態では、「帯域確保型チャネル」「最低帯域確保型チャネル」「帯域非確保型チャネル(ベストエフォート型チャネル)」の3つのサービスを設定する。「帯域確保型チャネル」は、指定されるチャネルが必ず視聴できるように、プロビジョニングにより指定されるチャネル分の帯域を割り当て、その帯域を用いてチャネルの配信をするサービスであり、転送品質クラス613として「帯域確保(以下、「QoS1」と呼ぶときがある)」が設定される。「最低帯域確保型チャネル」は、最低限配信可能な帯域を割り当て、まずその帯域を用いてチャネルの配信を行い、割り当てられた帯域をオーバーするチャネルの配信については共用帯域(最低帯域確保クラスにおいて、事業者間で共有する帯域)として割り当てられている帯域を用いてチャネルを配信するサービスであり、転送品質クラス613として「最低帯域確保(以下、「QoS2」と呼ぶときがある)」が設定される。「帯域非確保型チャネル(ベストエフォート型チャネル)」は、帯域の確保及び帯域の管理を行わず、配信要求があったチャネルはすべて配信をするサービスであり、転送品質クラス613として「帯域非確保(以下、「BE」と呼ぶときがある)」が設定される。
【0029】
帯域確保型は、高視聴率で常時視聴されているチャネル等での利用を想定する。最低帯域確保型は、低視聴率で視聴傾向にばらつきのあるチャネル等での利用を想定する。すなわち、これらのクラス(型)を設定することで、常時視聴されているような人気チャネルは、常に帯域確保することが品質確保の観点で有効であり、低視聴率で視聴傾向にばらつきのあるチャネルは、同時視聴数を考慮し帯域共用することで、帯域利用効率を向上することが期待できる。帯域非確保型は、網混雑時の配信品質劣化を許容する代わりに安く値付けする配信サービスでの利用を想定する。チャネル帯域614には、各チャネルの通信に要する帯域が設定される。
【0030】
図4は、第1実施形態に係る帯域情報テーブル(第2の記憶部)62のデータ構成図である。帯域情報テーブル62は、図示しないマルチキャスト管理サーバを介して、マルチキャスト中継システム1を管理する管理者によって、サービス登録時にプロビジョニングにより事前に設定される。帯域情報テーブル62は、マルチキャストルータ4が有する後記する下流側インタフェース82単位で備える。
【0031】
帯域種別621は、帯域が割り当てられた各サービスの種別、及び合計帯域を表している。図4の「A社帯域確保」は、A社の帯域確保型チャネルであることを示す。「A社最低帯域確保」は、A社の最低帯域確保型チャネルであることを示す。「B社帯域確保」は、B社の帯域確保型チャネルであることを示す。「B社最低帯域確保」は、B社の最低帯域確保型チャネルであることを示す。「共用帯域」は、全事業者の最低帯域確保型チャネルで共有する帯域であることを示す。「合計帯域」は、全サービスの帯域を合計したものである。
【0032】
割当帯域622は、帯域種別621に示すサービスに割り当てられる帯域(割当帯域)が記憶される。使用帯域623は、帯域種別621に示すサービスが使用している帯域(使用帯域)が記憶される。残余帯域624は、帯域種別621に示すサービスに割当帯域622から使用帯域623を減算した残余帯域が記憶される。なお、帯域種別621が「共用帯域」であるときの割当帯域622を共用割当帯域とする。帯域種別621が「共用帯域」であるときの使用帯域623を共用使用帯域とする。
【0033】
<制御部が備える機能>
図2に示す、制御部7内に「○○部」と記載する機能は、制御部7が、記憶部6に記憶される図示しないプログラムを、図示しないCPU(Central Processing Unit)が実行することで実現する。なお、制御部7の機能の説明は、一例として、ユーザ端末3と下流側マルチキャストルータ4B,4C,4Dとの間での処理を、MLDを用いて行う場合を説明する。IGMPを用いた場合や、上流側マルチキャストルータ4Aと下流側マルチキャストルータ4B,4C,4Dとの間での処理の説明は行わないが、当業者であればそれらの処理に以下の説明を援用可能である。
【0034】
通信制御部71は、上流側インタフェース81及び下流側インタフェース82を介して接続される上流側の通信網及び下流側の通信網にデータを送信、または上流側の通信網及び下流側の通信網からデータを受信する。以下、「○○部がデータを送信、または受信する」という記載がある場合には、通信制御部71が上流側インタフェース部81及び下流側インタフェース82を介して接続される上流側の通信網及び下流側の通信網にデータを送信、または上流側の通信網及び下流側の通信網からデータを受信するものとする。
【0035】
転送品質クラス判定部72は、ユーザ端末3から送信されたマルチキャストグループへの参加要求及び離脱要求(以下、「MLD要求信号」と呼びときがある)がなされたチャネルの転送品質クラス(613)を判定する。具体的には、転送品質クラス判定部72は、MLD要求信号に設定されているマルチキャスト識別子611をキーにして、図3に示すチャネル情報テーブル61を検索し、該当する転送品質クラス(613)を取得し、取得した転送品質クラスを判定する。転送品質クラス判定部72は、取得した転送品質クラス(613)が「帯域確保(QoS1)」である場合は、帯域確保クラスのチャネルであると判定し、「最低帯域確保(QoS2)」である場合は、最低帯域確保クラスのチャネルであると判定し、「帯域非確保(BE)」である場合は、帯域非確保クラスのチャネルであると判定する。
【0036】
以下、図3及び図4等のデータ構成図の符号を用いて機能等の説明をする際に、括弧なしの符号(例えば、前記した「転送品質クラス613」)は、データが記憶される論理的な領域を表し、括弧付きの符号(例えば、前記した「転送品質クラス(613)」)は、論理的な領域に記憶される、または記憶されていたデータ自体を表すものとする。
【0037】
図2に戻り、信号種別判定部73は、MLD要求信号がマルチキャストグループへの参加要求(以下、「配信設定要求」と呼ぶときがある)とマルチキャストグループからの離脱要求(以下、「配信停止要求」と呼ぶときがある)のどちらであるかを判定する。具体的には、信号種別判定部73は、MLD要求信号に設定されている信号種別を取得し、取得した信号種別を判定する。信号種別判定部73は、取得した信号種別が「配信設定(Allow)」である場合は、MLD要求信号が配信設定要求であると判定し、「配信停止(Block)」である場合は、MLD要求信号が配信停止要求であると判定する。
【0038】
マルチキャスト転送部74は、受付制御部75から転送を開始するチャネル及び転送先のグループアドレスの情報を受け取り、下流側インタフェース82を介して、該当するチャネルの転送を開始する。また、マルチキャスト転送部74は、受付制御部75から転送を停止するチャネル及び転送先のグループアドレスの情報を受け取り、該当するチャネルの転送を停止する。
【0039】
受付制御部75は、帯域確保クラス配信設定部751と、帯域確保クラス配信停止部752と、最低帯域確保クラス配信設定部753と、最低帯域確保クラス配信停止部754と、帯域非確保クラス配信設定部755と、帯域非確保クラス配信停止部756とを含んで構成される。受付制御部75は、配信設定要求を受信すると帯域の状態に基づいて配信設定処理を行う。また、受付制御部75は、配信停止要求を受信すると配信停止処理を行う。また、受付制御部75は、マルチキャスト転送部74にチャネルの転送開始、又は停止の指示を行う。さらに、上流側マルチキャストルータ4Aに対して、受信した配信設定要求または配信停止要求を送信する。以下、受付制御部75を構成する各機能を説明する。
【0040】
帯域確保クラス配信設定部751は、転送品質クラス(613)(図3参照)が「帯域確保(QoS1)」のチャネルの配信設定処理を行う。具体的には、転送品質クラス判定部72で取得した転送品質クラス(613)が「帯域確保(QoS1)」であると判定され、かつ、信号種別判定部73で取得した信号種別が「配信設定(Allow)」であると判定された場合に、帯域確保クラス配信設定部751は以下の処理を行う。帯域確保クラス配信設定部751は、MLD要求信号に設定されているマルチキャスト識別子611をキーにして、図3に示すチャネル情報テーブル61を検索し、該当する事業者(612)及びチャネル帯域(614)を取得し、図4に示す帯域情報テーブル62の該当する事業者(612)の帯域確保の使用帯域(623)及び合計帯域の使用帯域(623)に、取得したチャネル帯域(614)を加算し、さらに、該当する事業者(612)の帯域確保の残余帯域(624)から、取得したチャネル帯域(614)を減算する。
なお、帯域確保クラス配信設定部751は、MLD要求信号に設定されているマルチキャスト識別子611をキーにして、図3に示すチャネル情報テーブル61を検索し、該当する事業者(612)及びチャネル帯域(614)を取得し、図4に示す帯域情報テーブル62の該当する事業者(612)の帯域確保の使用帯域(623)に取得したチャネル帯域(614)を加算した値が、該当する事業者(612)の帯域確保の割当帯域(622)を超えるか否かを判定するようにしてもよい。
【0041】
帯域確保クラス配信停止部752は、転送品質クラス(613)が「帯域確保(QoS1)」のチャネルの配信停止処理を行う。具体的には、転送品質クラス判定部72で取得した転送品質クラス(613)が「帯域確保(QoS1)」であると判定され、かつ、信号種別判定部73で取得した信号種別が「配信停止(Block)」であると判定された場合に、帯域確保クラス配信停止部752は以下の処理を行う。帯域確保クラス配信停止部752は、MLD要求信号に設定されているマルチキャスト識別子611をキーにして、図3に示すチャネル情報テーブル61を検索し、該当する事業者(612)及びチャネル帯域(614)を取得し、図4に示す帯域情報テーブル62の該当する事業者(612)の帯域確保の使用帯域(623)及び合計帯域の使用帯域(623)から、取得したチャネル帯域(614)を減算し、さらに、該当する事業者(612)の帯域確保の残余帯域(624)に、取得したチャネル帯域(614)を加算する。
【0042】
最低帯域確保クラス配信設定部753は、転送品質クラス(613)が「最低帯域確保(QoS2)」のチャネルの配信設定処理を行う。具体的には、転送品質クラス判定部72で取得した転送品質クラス(613)が「最低帯域確保(QoS2)」であると判定され、かつ、信号種別判定部73で取得した信号種別が「配信設定(Allow)」であると判定された場合に、最低帯域確保クラス配信設定部753は以下の処理を行う。
【0043】
最初に、最低帯域確保クラス配信設定部753は、MLD要求信号に設定されているマルチキャスト識別子611をキーにして、図3に示すチャネル情報テーブル61を検索し、該当する事業者(612)及びチャネル帯域(614)を取得し、図4に示す帯域情報テーブル62の該当する事業者(612)の最低帯域確保の使用帯域(623)に取得したチャネル帯域(614)を加算した値が、該当する事業者(612)の最低帯域確保の割当帯域(622)を超えるか否かを判定する。最低帯域確保の割当帯域(622)を超えないと判定したときには、最低帯域確保クラス配信設定部753は、図4に示す帯域情報テーブル62の該当する事業者(612)の最低帯域確保の使用帯域(623)及び合計帯域の使用帯域(623)に、取得したチャネル帯域(614)を加算し、さらに、該当する事業者(612)の最低帯域確保の残余帯域(624)から、取得したチャネル帯域(614)を減算する。一方、最低帯域確保の割当帯域(622)を超えると判定したときには、最低帯域確保クラス配信設定部753は、帯域情報テーブル62の共用帯域の使用帯域(623)に取得したチャネル帯域(614)を加算した値が、共用帯域の割当帯域(622)を超えるか否かを判定する。
【0044】
そして、最低帯域確保クラス配信設定部753は、共用帯域の割当帯域(622)を超えないと判定したときに、図4に示す帯域情報テーブル62の共用帯域の使用帯域(623)及び合計帯域の使用帯域(623)に、取得したチャネル帯域(614)を加算し、さらに、共用帯域の残余帯域(624)から、取得したチャネル帯域(614)を減算する。共用帯域の割当帯域(622)を超えると判定したときには、当該チャネルの配信設定処理を行わずに、MLD要求信号を破棄する。
【0045】
最低帯域確保クラス配信停止部754は、転送品質クラス(613)が「最低帯域確保(QoS2)」のチャネルの配信停止処理を行う。具体的には、転送品質クラス判定部72で取得した転送品質クラス(613)が「最低帯域確保(QoS2)」であると判定され、かつ、信号種別判定部73で取得した信号種別が「配信停止(Block)」であると判定された場合に、最低帯域確保クラス配信停止部754は以下の処理を行う。
【0046】
最低帯域確保クラス配信停止部754は、MLD要求信号に設定されているマルチキャスト識別子611をキーにして、図3に示すチャネル情報テーブル61を検索し、該当する事業者(612)及びチャネル帯域(614)を取得し、図4に示す帯域情報テーブル62の共用帯域の使用帯域(623)及び合計帯域の使用帯域(623)から、取得したチャネル帯域(614)を減算し、さらに、該当する事業者(612)の最低帯域確保の残余帯域(624)に、取得したチャネル帯域(614)を加算する。なお、該当する事業者(612)が共用帯域を使用していない場合には、図4に示す帯域情報テーブル62の該当する事業者(612)の最低帯域確保の使用帯域(623)及び合計帯域の使用帯域(623)から、取得したチャネル帯域(614)を減算し、さらに、該当する事業者(612)の最低帯域確保の残余帯域(624)に、取得したチャネル帯域(614)を加算する。
【0047】
帯域非確保クラス配信設定部755は、転送品質クラス(613)が「帯域非確保(BE)」のチャネルの配信設定処理を行う。具体的には、転送品質クラス判定部72で取得した転送品質クラス(613)が「帯域非確保(QoS2)」であると判定され、かつ、信号種別判定部73で取得した信号種別が「配信設定(Allow)」であると判定された場合に、帯域非確保クラス配信設定部755は配信設定処理を行う。
【0048】
帯域非確保クラス配信停止部756は、転送品質クラス(613)が「帯域非確保(BE)」のチャネルの配信停止処理を行う。具体的には、転送品質クラス判定部72で取得した転送品質クラス(613)が「帯域非確保(BE)」であると判定され、かつ、信号種別判定部73で取得した信号種別が「配信停止(Block)」であると判定された場合に、帯域非確保クラス配信停止部756は配信停止処理を行う。
【0049】
<通信部が備える機能>
通信部8は、IP網9を介して他の装置と接続する通信インタフェースである。通信部8のうち、配信サーバ2側(上流側)の通信網と接続する部分を上流側インタフェース81と呼び、ユーザ端末3側(下流側)の通信網と接続する部分を下流側インタフェース82と呼ぶ。
【0050】
≪第1実施形態に係るマルチキャストルータのチャネル配信設定処理及びチャネル配信停止処理の動作≫
図5は、第1実施形態に係るマルチキャストルータ4のチャネル配信設定処理及びチャネル配信停止処理のフローチャートである。以下、図5を参照して、マルチキャストルータ4のチャネル配信設定処理及びチャネル配信停止処理の動作を説明する。
【0051】
転送品質クラス判定部72は、MLD要求信号を受信すると、要求対象のチャネルの転送品質クラス(QoSクラス)613を判定する(ステップS001)。QoSクラスが「帯域確保(QoS1)」である場合に処理はステップS002に進む。QoSクラスが「最低帯域確保(QoS2)」である場合に処理はステップS004に進む。QoSクラスが「帯域非確保(BE)」である場合に処理はステップS008に進む。
【0052】
ステップS001で転送品質クラス(QoSクラス)(613)が「帯域確保(QoS1)」であると判定された場合、信号種別判定部73は、MLD要求信号に設定されているMLD信号種別を判定する(ステップS002)。MLD信号種別が「配信設定(Allow)」である場合に処理はステップS003に進む。MLD信号種別が「配信停止(Block)」である場合に処理はステップS010に進む。
【0053】
ステップS002でMLD信号種別が「配信設定(Allow)」である場合に、帯域確保クラス配信設定部751は、チャネル情報テーブル61を検索し、該当する事業者(事業者情報)(612)を判別する(ステップS003)。次に、帯域確保クラス配信設定部751は、帯域情報テーブル62の該当する事業者(612)の帯域確保の使用帯域(623)等を変更し、マルチキャスト転送部74に該当するチャネルの転送の開始を指示することで配信設定処理を行う(ステップS009)。
【0054】
ステップS002でMLD信号種別が「配信停止(Block)」である場合に、帯域確保クラス配信停止部752は、帯域情報テーブル62の該当する事業者(612)の帯域確保の使用帯域(623)等を変更し、マルチキャスト転送部74に該当するチャネルの転送の停止を指示することで配信停止処理を行う(ステップS010)。
【0055】
ステップS001で転送品質クラス(QoSクラス)(613)が「最低帯域確保(QoS2)」であると判定された場合、信号種別判定部73は、MLD要求信号に設定されているMLD信号種別を判定する(ステップS004)。MLD信号種別が「配信設定(Allow)」である場合に処理はステップS005に進む。MLD信号種別が「配信停止(Block)」である場合に処理はステップS010に進む。
【0056】
ステップS004でMLD信号種別が「配信設定(Allow)」である場合に、最低帯域確保クラス配信設定部753は、チャネル情報テーブル61を検索し、該当する事業者(612)を判別する(ステップS005)。次に、最低帯域確保クラス配信設定部753は、帯域情報テーブル62の該当する事業者(612)の最低帯域確保の残余帯域(624)(「QoS2空帯域」と図示する)に、配信設定要求があったチャネルのチャネル情報テーブル61のチャネル帯域(614)(「要求帯域」と図示する)よりも大きい帯域があるか否かを判定する(ステップS006)。最低帯域確保の残余帯域(QoS2空帯域)に要求帯域よりも大きい帯域がある場合(ステップS006“yes”)に、処理はステップS009に進む。
【0057】
ステップS009において、最低帯域確保クラス配信設定部753は、帯域情報テーブル62の該当する事業者(612)の最低帯域確保の使用帯域等を変更し、マルチキャスト転送部74に該当するチャネルの転送の開始を指示することで配信設定処理を行う。
【0058】
一方、最低帯域確保の残余帯域(QoS2空帯域)(624)に要求帯域よりも大きい帯域がない場合(ステップS006“no”)に、処理はステップS007に進む。ステップS007において、最低帯域確保クラス配信設定部753は、帯域情報テーブル62の共用帯域の残余帯域(624)(「共用空帯域」と図示する)に要求帯域よりも大きい帯域があるか否かを判定する。
【0059】
共用帯域の残余帯域(共用空帯域)(624)に要求帯域よりも大きい帯域がある場合(ステップS007“yes”)に、最低帯域確保クラス配信設定部753は、帯域情報テーブル62の共用帯域の使用帯域等を変更し、マルチキャスト転送部74に該当するチャネルの転送の開始を指示することで配信設定処理を行う(ステップS009)。
【0060】
一方、共用帯域の残余帯域(共用空帯域)(624)に要求帯域よりも大きい帯域がない場合(ステップS007“no”)に、最低帯域確保クラス配信設定部753は、該当するチャネルの配信設定処理を行わずに、MLD要求信号を破棄する(ステップS011)。
【0061】
ステップS001で転送品質クラス(QoSクラス)(613)が「帯域非確保(BE)」であると判定された場合、信号種別判定部73は、MLD要求信号に設定されているMLD信号種別を判定する(ステップS004)。MLD信号種別が「配信設定(Allow)」である場合に処理はステップS009に進む。MLD信号種別が「配信停止(Block)」である場合に処理はステップS010に進む。
【0062】
ステップS008でMLD信号種別が「配信設定(Allow)」である場合に、帯域非確保クラス配信設定部755は、マルチキャスト転送部74に該当するチャネルの転送の開始を指示することで配信設定処理を行う(ステップS009)。
【0063】
ステップS008でMLD信号種別が「配信停止(Block)」である場合に、帯域非確保クラス配信停止部756は、マルチキャスト転送部74に該当するチャネルの転送の停止を指示することで配信停止処理を行う(ステップS010)。
以上で、第1実施形態に係るマルチキャストルータ4のチャネル配信設定処理及びチャネル配信停止処理の動作の説明を終了する。
【0064】
以上のように、第1実施形態に係るマルチキャスト中継装置、及びマルチキャスト中継方法は、事業者単位及び転送品質クラス単位でチャネルの帯域制御を行い、かつ、転送品質クラスが最低帯域確保クラスのチャネルについては事業者間で帯域を共有することができる。よって、第1実施形態に係るマルチキャスト中継装置及びマルチキャスト中継方法によれば、確保した帯域内での帯域制御、契約形態に沿った帯域制御、及び効率的な帯域制御を実現することができる。
【0065】
≪第2実施形態に係るマルチキャスト中継システムの構成≫
(概要)
第1実施形態に係るマルチキャストルータ4は、帯域確保クラスのチャネルの帯域を常に確保しておくので、図4に示すように、帯域確保クラスの帯域が使用されずに、残余帯域となってしまうことが考えられる。第2実施形態では、帯域確保クラスの残余帯域を有効に使用する。図9は、帯域確保クラスの残余帯域を有効に使用する方法の説明図である。図9(a)は、A社の時間経過に伴う帯域確保クラスの使用帯域の変化を表している。図9(b)は、B社の時間経過に伴う帯域確保クラスの使用帯域の変化を表している。ここで、所定時間、帯域確保の使用帯域または残余帯域を監視し、所定時間内(定常的)に使用されない残余帯域がどのくらいあるのか把握する。そして、把握した残余帯域を図4の共用帯域の割当帯域(622)に積み増す(以下、このことを「オーバーサブ」と呼ぶ)。図9(a)では600Mbpsが、図9(b)では300Mbpsが定常的に使用されない残余帯域であると把握され、合計900Mbpsを共用帯域の割当帯域(622)に積み増す。
【0066】
本発明の第2実施形態に係るマルチキャスト中継システム1aの構成は、図1に示す第1実施形態に係るマルチキャスト中継システム1と同様であるため、図示を省略する。
【0067】
第1実施形態と第2実施形態とでは、マルチキャストルータ4が備える機能が異なる。図6は、第2実施形態に係るマルチキャストルータ4a(マルチキャスト中継装置)の機能構成図である。第2実施形態に係るマルチキャストルータ4aは、第1実施形態に係るマルチキャストルータ4と比較して、記憶部6にチャネル配信数テーブル(第3の記憶部)63が追加されている点、記憶部6の帯域情報テーブル62a、制御部7の受付制御部75aの帯域確保クラス配信設定部751a、最低帯域確保クラス配信設定部753aが変更されている点が相違する。以下では、第1実施形態に係るマルチキャストルータ4との相違する点のみ説明し、同様の機能については同一の符号を付して、説明を省略する。
【0068】
<記憶部に記憶される情報>
図7は、第2実施形態に係る帯域情報テーブル62aのデータ構成図である。帯域情報テーブル62aは、第1実施形態に係る帯域情報テーブル62とデータ構成自体は同様であるが、記憶されるデータが異なる。前提として、A社帯域確保の残余帯域(624)「150(Mbps)」とB社帯域確保の残余帯域(624)「100(Mbps)」とは監視等で把握した所定時間内(定常的)に使用していない残余帯域(624)であるとする。そこで、A社帯域確保の残余帯域(624)「150(Mbps)」とB社帯域確保の残余帯域(624)「100(Mbps)」との合計である「250(Mbps)」を共用帯域の割当帯域(622)にオーバーサブする。その為、共用帯域の割当帯域は(622)「850(Mbps)」から「1100(Mbps)」に積み増され、それに伴い、共用帯域の残余帯域(624)も「700(Mbps)」から「950(Mbps)」に積み増される。ここで、合計帯域の割当帯域(622)には残余帯域(624)をオーバーサブしない。オーバーサブは、帯域確保の割当帯域(622)のうち所定時間(定常的)に使用していない残余帯域(624)を共用帯域として使用するものであるから、実際の合計帯域は増えていないためである。
【0069】
なお、本実施形態では、帯域確保の残余帯域(624)を共用帯域の割当帯域(622)に加算(オーバーサブ)しているが、オーバーサブ後の共用帯域の割当帯域(622)(オーバーサブ後共用割当帯域)をオーバーサブ前の共用帯域の割当帯域(622)とは別の項目として保有するようにしてもよい。
【0070】
図8は、第2実施形態に係るチャネル配信数テーブル(第3の記憶部)63のデータ構成図である。チャネル配信数テーブル63は、マルチキャストルータ4aが有する下流側インタフェース82単位で備える。チャネル配信数テーブル63は、最低帯域確保クラスのチャネルについて、当該テーブルに対応する下流側インタフェース82配下の配信数(632)が記憶される。チャネル配信数テーブル63は、さらに、帯域確保クラスのチャネルの配信数についても記憶するようにしてもよい。マルチキャスト識別子631には、図3に示す、チャネル情報テーブル61のマルチキャスト識別子611のうち、転送品質クラス(613)が「最低帯域確保」のものが設定される。
【0071】
<制御部が備える機能>
(受付制御部)
図6に示す、受付制御部75aは、配信設定要求を受信すると帯域の状態に基づいて配信設定処理を行う。また、受付制御部75aは、配信停止要求を受信すると配信停止処理を行う。また、受付制御部75aは、マルチキャスト転送部74にチャネルの転送開始、又は停止の指示を行う。さらに、上流側マルチキャストルータ4Aに対して、受信した配信設定要求または配信停止要求に対応する要求を送信する。
【0072】
帯域確保クラス配信設定部751aは、転送品質クラス(613)が「帯域確保(QoS1)」のチャネルの配信設定処理を行う。具体的には、転送品質クラス判定部72で取得した転送品質クラス(613)が「帯域確保(QoS1)」であると判定され、かつ、信号種別判定部73で取得した信号種別が「配信設定(Allow)」であると判定された場合に、帯域確保クラス配信設定部751aは以下の処理を行う。帯域確保クラス配信設定部751aは、MLD要求信号に設定されているマルチキャスト識別子611をキーにして、図3に示すチャネル情報テーブル61を検索し、該当する事業者(612)及びチャネル帯域(614)を取得し、図7に示す帯域情報テーブル62aの合計帯域の使用帯域(623)に取得したチャネル帯域(614)を加算した値が、合計帯域の割当帯域(622)(以下「最大割当帯域」と呼ぶときがある)を超えるか否かを判定する。
【0073】
最大割当帯域を超えないと判定したときには、帯域確保クラス配信設定部751aは、図7に示す帯域情報テーブル62aの該当する事業者(612)の帯域確保の使用帯域(623)及び合計帯域の使用帯域(623)に、取得したチャネル帯域(614)を加算し、さらに、該当する事業者(612)の帯域確保の残余帯域(624)から、取得したチャネル帯域(614)を減算する。最大割当帯域を超えると判定したときには、帯域確保クラス配信設定部751aは、図8に示すチャネル配信数テーブル63の中から配信しているチャネルのうち配信数(632)が最も少ないマルチキャスト識別子(631)を取得し、取得したマルチキャスト識別子631をキーにして、最低帯域確保クラス配信停止部754が該当するチャネルの配信停止処理を行う。なお、帯域が足りない場合には、さらにチャネルの配信数が少ない順にチャネルの配信停止処理(中継の停止)するようにしてもよい。次に、帯域確保クラス配信設定部751aは、最大割当帯域を超えないと判定したときと同様に、転送品質クラス(613)が「帯域確保(QoS1)」のチャネルの配信設定処理を行う。
【0074】
最低帯域確保クラス配信設定部753aは、転送品質クラス(613)が「最低帯域確保(QoS2)」のチャネルの配信設定処理を行う。具体的には、転送品質クラス判定部72で取得した転送品質クラス(613)が「最低帯域確保(QoS2)」であると判定され、かつ、信号種別判定部73で取得した信号種別が「配信設定(Allow)」であると判定された場合に、最低帯域確保クラス配信設定部753aは以下の処理を行う。
【0075】
最初に、最低帯域確保クラス配信設定部753aは、MLD要求信号に設定されているマルチキャスト識別子611をキーにして、図3に示すチャネル情報テーブル61を検索し、該当する事業者(612)及びチャネル帯域(614)を取得し、図7に示す帯域情報テーブル62aの該当する事業者(612)の最低帯域確保の使用帯域(623)に取得したチャネル帯域(614)を加算した値が、該当する事業者(612)の最低帯域確保の割当帯域(622)を超えるか否かを判定する。最低帯域確保の割当帯域(622)を超えないと判定したときには、最低帯域確保クラス配信設定部753aは、図7に示す帯域情報テーブル62aの該当する事業者(612)の最低帯域確保の使用帯域(623)及び合計帯域の使用帯域(623)に、取得したチャネル帯域(614)を加算し、さらに、該当する事業者(612)の最低帯域確保の残余帯域(624)から、取得したチャネル帯域(614)を減算する。
【0076】
最低帯域確保の割当帯域(622)を超えると判定したときには、最低帯域確保クラス配信設定部753aは、帯域情報テーブル62aの共用帯域の使用帯域(623)に取得したチャネル帯域(614)を加算した値が、共用帯域の割当帯域(622)を超えるか否かを判定する。共用帯域の割当帯域(622)を超えないと判定したときには、最低帯域確保クラス配信設定部753aは、図7に示す帯域情報テーブル62aの合計帯域の使用帯域(623)に取得したチャネル帯域(614)を加算した値が、合計帯域の割当帯域(622)(以下「最大割当帯域」と呼ぶときがある)を超えるか否かを判定する。
【0077】
最大割当帯域を超えないと判定したときには、最低帯域確保クラス配信設定部753aは、図7に示す帯域情報テーブル62aの共用帯域の使用帯域(623)及び合計帯域の使用帯域(623)に、取得したチャネル帯域(614)を加算し、さらに、共用帯域の残余帯域(624)から、取得したチャネル帯域(614)を減算する。共用帯域の割当帯域(621)を超えると判定したとき、または、最大割当帯域を超えると判定したときには、当該チャネルの配信設定処理を行わずに、MLD要求信号を破棄する。
【0078】
≪第2実施形態に係るマルチキャストルータのチャネル配信設定処理及びチャネル配信停止処理の動作≫
図10は、第2実施形態に係るマルチキャストルータ4のチャネル配信設定処理及びチャネル配信停止処理のフローチャートである。以下、図10を参照して、マルチキャストルータ4aのチャネル配信設定処理及びチャネル配信停止処理の動作を説明する。なお、説明は、第1実施形態と相違する点のみを説明し、同一の動作については同一のステップ番号を付して説明は省略する。
【0079】
ステップS003の後で、帯域確保クラス配信設定部751aは、帯域情報テーブル62aの合計帯域の使用帯域(623)(合計使用帯域)に、配信設定要求があったチャネルのチャネル情報テーブル61のチャネル帯域(614)(要求帯域)を加算した値が、帯域情報テーブル62aの合計帯域の割当帯域(622)(最大割当帯域)を超えるか否かを判定する(ステップS101)。
【0080】
最大割当帯域を超えない場合(ステップS101“yes”)に、帯域確保クラス配信設定部751aは、帯域情報テーブル62aの該当する事業者(612)の帯域確保の使用帯域(623)等を変更し、マルチキャスト転送部74に該当するチャネルの転送の開始を指示することで配信設定処理を行う(ステップS009)。
【0081】
最大割当帯域を超える場合(ステップS101“no”)に、帯域確保クラス配信設定部751aは、図8に示すチャネル配信数テーブル63の中から配信しているチャネルのうち配信数(632)が最も少ない(配信数の最も小さい)マルチキャスト識別子(631)を取得する。次に、最低帯域確保クラス配信停止部754は取得したマルチキャスト識別子631をキーにして、該当するチャネル(QoS2フロー)の配信停止処理を行う(ステップS102)。次に、帯域確保クラス配信設定部751aは、最大割当帯域を超えない場合(ステップS101“yes”)と同様に、チャネルの配信設定処理を行う(ステップS009)。
【0082】
ステップS007の後で、最低帯域確保クラス配信設定部753aは、帯域情報テーブル62aの合計帯域の使用帯域(623)(合計使用帯域)に、配信設定要求があったチャネルのチャネル情報テーブル61のチャネル帯域(614)(要求帯域)を加算した値が、帯域情報テーブル62aの合計帯域の割当帯域(622)(最大割当帯域)を超えるか否かを判定する(ステップS103)。
【0083】
最大割当帯域を超えない場合(ステップS103“yes”)に、最低帯域確保クラス配信設定部753aは、帯域情報テーブル62aの共用帯域の使用帯域(623)等を変更し、マルチキャスト転送部74に該当するチャネルの転送の開始を指示することで配信設定処理を行う(ステップS009)。
【0084】
最大割当帯域を超える場合(ステップS103“no”)に、処理はステップS011に進む。最低帯域確保クラス配信設定部753aは、該当するチャネルの配信設定処理を行わずに、MLD要求信号を破棄する(ステップS011)。
【0085】
以上のように、第2実施形態に係るマルチキャスト中継装置、及びマルチキャスト中継方法は、転送品質クラスが帯域確保クラスの残余帯域を監視し、所定時間に使用していない残余帯域を共用帯域の割当帯域に積み増す(オーバーサブ)ことができる。よって、第2実施形態に係るマルチキャスト中継装置、及びマルチキャスト中継方法によれば、第1実施形態に係る装置及び方法に比べて、さらに効率的な帯域制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0086】
1,1a マルチキャスト中継システム
2 配信サーバ
3 ユーザ端末
4,4a マルチキャストルータ(マルチキャスト中継装置)
5 集線装置
6 記憶部
61 チャネル情報テーブル(第1の記憶部)
62,62a 帯域情報テーブル(第2の記憶部)
63 チャネル配信数テーブル(第3の記憶部)
7 制御部
71 通信制御部
72 転送品質クラス判定部
73 信号種別判定部
74 マルチキャスト転送部
75,75a 受付制御部
751,751a 帯域確保クラス配信設定部
752 帯域確保クラス配信停止部
753,753a 最低帯域確保クラス配信設定部
754 最低帯域確保クラス配信停止部
755 帯域非確保クラス配信設定部
756 帯域非確保クラス配信停止部
8 通信部
81 上流側インタフェース
82 下流側インタフェース
9 IP網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の事業者からIPマルチキャスト放送によりコンテンツがチャネルとして配信され、前記チャネルの配信要求が転送されてきたネットワークにインタフェースを介して中継するマルチキャスト中継装置であって、
前記チャネルを識別するための情報であるチャネル識別情報、前記チャネルの配信元の事業者を識別する事業者情報、前記ネットワークにチャネルの中継で用いる帯域を確保し当該チャネルの中継を保証する帯域確保クラスのチャネルか、チャネルの中継で用いる帯域を複数のチャネルで共用して確保し所定数のチャネルの中継を保証するがそれ以上のチャネルの中継は保証しない最低帯域確保クラスのチャネルかを識別する転送品質クラス、及び前記チャネルの中継に要する前記ネットワークの帯域であるチャネル帯域が記憶される第1の記憶部と、
前記事業者ごとの、前記ネットワークに中継される可能性がある前記帯域確保クラスのすべてのチャネルを中継した場合に必要となる帯域である前記帯域確保クラスの割当帯域、前記帯域確保クラスの割当帯域のうち使用されている帯域である前記帯域確保クラスの使用帯域、前記最低帯域確保クラスの所定数のチャネルを中継するために事前に設定された帯域である前記最低帯域確保クラスの割当帯域、前記最低帯域確保クラスの割当帯域のうち使用されている帯域である前記最低帯域確保クラスの使用帯域、前記最低帯域確保クラスの割当帯域を超えて前記最低帯域確保クラスのチャネルの配信設定要求があった場合に、最低帯域確保クラスの当該超過分のチャネルを中継するために事業者共用で使用される帯域である共用割当帯域、及び前記共用割当帯域のうち使用されている共用使用帯域、が前記インタフェース単位で記憶される第2の記憶部と、
前記チャネルの配信設定要求を受信した場合に、当該配信設定要求に設定されているチャネル識別情報をキーにして前記第1の記憶部を検索し、当該チャネル識別情報に対応する前記転送品質クラスを取得し、当該チャネルの転送品質クラスを判定する転送品質クラス判定部と、
前記転送品質クラス判定部が、当該チャネルの転送品質クラスを前記帯域確保クラスであると判定した場合に、前記第1の記憶部から当該チャネルの前記事業者情報を取得し、前記第2の記憶部に記憶される前記取得した事業者情報に対応する前記帯域確保クラスの使用帯域に、前記第1の記憶部に記憶される当該チャネルの前記チャネル帯域を加算すると共に、当該チャネルをマルチキャストグループアドレス宛に中継するように配信設定する帯域確保クラス配信設定部と、
前記転送品質クラス判定部が、当該チャネルの転送品質クラスを前記最低帯域確保クラスであると判定した場合に、前記第1の記憶部から当該チャネルの前記事業者情報を取得し、前記第2の記憶部に記憶される前記取得した事業者情報に対応する前記最低帯域確保クラスの使用帯域に前記第1の記憶部に記憶される当該チャネルの前記チャネル帯域を加算した値が、当該事業者情報に対応する前記最低帯域確保クラスの割当帯域を超えるか否かを判定し、前記最低帯域確保クラスの割当帯域を超えないときには当該チャネルの前記チャネル帯域を前記最低帯域確保クラスの使用帯域に加算すると共に、当該チャネルを前記マルチキャストグループアドレス宛に中継するように配信設定し、前記最低帯域確保クラスの割当帯域を超えるときには前記第2の記憶部に記憶される前記共用使用帯域に当該チャネルの前記チャネル帯域を加算した値が前記共用割当帯域を超えるか否かを判定し、前記共用割当帯域を超えないときには当該チャネルの前記チャネル帯域を前記共用使用帯域に加算すると共に、当該チャネルを前記マルチキャストグループアドレス宛に中継するように配信設定し、前記共用割当帯域を超えるときには当該チャネルを配信設定しない最低帯域確保クラス配信設定部と、
を備えることを特徴とするマルチキャスト中継装置。
【請求項2】
前記マルチキャスト中継装置は、
前記最低帯域確保クラスのチャネルごとに、前記チャネルを中継する前記インタフェース配下の配信数が前記インタフェース単位で記憶される第3の記憶部をさらに備え、
前記第2の記憶部は、各事業者の前記帯域確保クラスの割当帯域、前記最低帯域確保クラスの割当帯域、及び前記共用割当帯域を合計した合計割当帯域、各事業者の前記帯域確保クラスの使用帯域、前記最低帯域確保クラスの使用帯域、及び前記共用使用帯域を合計した合計使用帯域、前記帯域確保クラスの割当帯域のうち所定時間使用していない不使用帯域を前記共用割当帯域に積み増したオーバーサブ後共用割当帯域、がさらに記憶され、
前記帯域確保クラス配信設定部は、前記転送品質クラス判定部が、当該チャネルの転送品質クラスを前記帯域確保クラスであると判定した場合に、前記第1の記憶部から当該チャネルの前記事業者情報を取得し、前記第2の記憶部に記憶される前記合計使用帯域に前記第1の記憶部に記憶される当該チャネルの前記チャネル帯域を加算した値が前記合計割当帯域を超えるか否かを判定し、前記合計割当帯域を超えないときには前記第2の記憶部に記憶される前記取得した事業者情報に対応する前記帯域確保クラスの使用帯域に、前記第1の記憶部に記憶される当該チャネルの前記チャネル帯域を加算すると共に、当該チャネルを前記マルチキャストグループアドレス宛に中継するように配信設定し、前記合計割当帯域を超えるときには前記第3の記憶部に記憶される前記配信しているチャネルのうち前記配信数が少ないチャネルから順に中継を停止し、当該中継を中止したチャネルの帯域を用いて配信設定し、
前記最低帯域確保クラス配信設定部は、前記最低帯域確保クラスの割当帯域を超えるときには前記第2の記憶部に記憶される前記共用使用帯域に当該チャネルの前記チャネル帯域を加算した値が前記オーバーサブ後共用割当帯域を超えるか否かを判定し、前記オーバーサブ後共用割当帯域を超えないときには、さらに前記第2の記憶部に記憶される前記合計使用帯域に前記第1の記憶部に記憶される当該チャネルの前記チャネル帯域を加算した値が前記合計割当帯域を超えるか否かを判定し、前記合計割当帯域を超えないときには当該チャネルの前記チャネル帯域を共用使用帯域に加算すると共に、当該チャネルを前記マルチキャストグループアドレス宛に中継するように配信設定し、前記オーバーサブ後共用割当帯域を超えるとき及び前記合計割当帯域を超えるときには、当該チャネルを配信設定しない、
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチキャスト中継装置。
【請求項3】
複数の事業者からIPマルチキャスト放送によりコンテンツがチャネルとして配信され、前記チャネルの配信要求が転送されてきたネットワークにインタフェースを介して中継するマルチキャスト中継装置に用いられるマルチキャスト中継方法であって、
前記マルチキャスト中継装置は、
前記チャネルを識別するための情報であるチャネル識別情報、前記チャネルの配信元の事業者を識別する事業者情報、前記ネットワークにチャネルの中継で用いる帯域を確保し当該チャネルの中継を保証する帯域確保クラスのチャネルか、チャネルの中継で用いる帯域を複数のチャネルで共用して確保し所定数のチャネルの中継を保証するがそれ以上のチャネルの中継は保証しない最低帯域確保クラスのチャネルかを識別する転送品質クラス、及び前記チャネルの中継に要する前記ネットワークの帯域であるチャネル帯域が記憶される第1の記憶部と、前記事業者ごとの、前記ネットワークに中継される可能性がある前記帯域確保クラスのすべてのチャネルを中継した場合に必要となる帯域である前記帯域確保クラスの割当帯域、前記帯域確保クラスの割当帯域のうち使用されている帯域である前記帯域確保クラスの使用帯域、前記最低帯域確保クラスの所定数のチャネルを中継するために事前に設定された帯域である前記最低帯域確保クラスの割当帯域、前記最低帯域確保クラスの割当帯域のうち使用されている帯域である前記最低帯域確保クラスの使用帯域、前記最低帯域確保クラスの割当帯域を超えて前記最低帯域確保クラスのチャネルの配信設定要求があった場合に、最低帯域確保クラスの当該超過分のチャネルを中継するために事業者共用で使用される帯域である共用割当帯域、前記共用割当帯域のうち使用されている共用使用帯域、が前記インタフェース単位で記憶される第2の記憶部と、を備えており、
前記チャネルの配信設定要求を受信した場合に、当該配信設定要求に設定されているチャネル識別情報をキーにして前記第1の記憶部を検索し、当該チャネル識別情報に対応する前記転送品質クラスを取得し、当該チャネルの転送品質クラスを判定し、
当該チャネルの転送品質クラスを前記帯域確保クラスであると判定した場合に、前記第1の記憶部から当該チャネルの前記事業者情報を取得し、前記第2の記憶部に記憶される前記取得した事業者情報に対応する前記帯域確保クラスの使用帯域に、前記第1の記憶部に記憶される当該チャネルの前記チャネル帯域を加算すると共に、当該チャネルをマルチキャストグループアドレス宛に中継するように配信設定し、
当該チャネルの転送品質クラスを前記最低帯域確保クラスであると判定した場合に、前記第1の記憶部から当該チャネルの前記事業者情報を取得し、前記第2の記憶部に記憶される前記取得した事業者情報に対応する前記最低帯域確保クラスの使用帯域に前記第1の記憶部に記憶される当該チャネルの前記チャネル帯域を加算した値が、当該事業者情報に対応する前記最低帯域確保クラスの割当帯域を超えるか否かを判定し、前記最低帯域確保クラスの割当帯域を超えないときには当該チャネルの前記チャネル帯域を前記最低帯域確保クラスの使用帯域に加算すると共に、当該チャネルを前記マルチキャストグループアドレス宛に中継するように配信設定し、前記最低帯域確保クラスの割当帯域を超えるときには前記第2の記憶部に記憶される前記共用使用帯域に当該チャネルの前記チャネル帯域を加算した値が前記共用割当帯域を超えるか否かを判定し、前記共用割当帯域を超えないときには当該チャネルの前記チャネル帯域を前記共用使用帯域に加算すると共に、当該チャネルを前記マルチキャストグループアドレス宛に中継するように配信設定し、前記共用割当帯域を超えるときには当該チャネルを配信設定しない、
ことを特徴とするマルチキャスト中継方法。
【請求項4】
請求項3に記載のマルチキャスト中継方法を前記マルチキャスト中継装置に実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−176509(P2011−176509A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38022(P2010−38022)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】