説明

マルチキャスト中継装置、通信システムおよびマルチキャスト中継方法

【課題】クエリアに障害が発生した場合にMDP中継を速やかに再開することができるマルチキャスト中継装置を得ること。
【解決手段】MLDプロキシを複数備え、MLDプロキシのうちの1つがクエリアとして動作する通信システムにおけるMLDプロキシであって、下位ネットワーク経由で他のMLDプロキシからクエリアとして設定されているか否かを示すプロキシ情報を取得するMLDプロキシ情報交換部43と、下位ネットワークにおける障害検出処理を実施し、プロキシ情報に基づいてクエリアで障害が発生したと判断した場合にクエリア障害を通知するERP制御部38と、クエリア障害を通知されると、自ノードがクエリアでない場合、プロキシ情報に基づいてクエリアの次候補を検索し、検索した次候補が自ノードであった場合に自ノードをクエリアに切替えるMLDクエリア切替部42と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチキャストデータパケットを中継するマルチキャスト中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチキャストグループ管理プロトコルとしてMLD(Multicast Listener Discovery)またはIGMPv2(Internet Group Management Protocol, Version2)が存在する(下記非特許文献1および非特許文献2参照)。MLDおよびIGMPv2では、マルチキャストデータパケット(以下、MDPという)のリスナ(マルチキャスト受信端末)がルータに対して配信の要求等を行うことを規定しており、ルータを越えた動作を規定していない。このため、MDPの送信元(マルチキャストソース)とリスナとの間にルータが存在する場合は、ルータがMLDまたはIGMPv2メッセージを中継するIGMPプロキシまたはMLDプロキシとしての機能を有する必要がある。
【0003】
例えば、下位ネットワークがリングネットワークであり、下位ネットワークではレイヤ2でデータ中継が行われ、上位ネットワークではレイヤ3でデータ中継を行われているとする。このネットワーク構成において、MDPを上記ネットワーク内のマルチキャストルータから下位ネットワーク内のリスナまで中継するには、上位ネットワークと下位ネットワークの境界に設置したルータにおいてマルチキャストプロトコルを動作させるか、あるいは当該ルータがIGMPプロキシまたはMLDプロキシとして動作する必要がある。
【0004】
ルータにおいてマルチキャストプロトコルを動作させる場合はネットワーク設計が複雑になるため、管理を容易にするためルータがIGMPプロキシまたはMLDプロキシとしての機能を備えることがある。
【0005】
IGMPプロキシまたはMLDプロキシとしての機能を備えるルータ(以下、MLDプロキシという)が複数存在する場合、これらのうちの1つのMLDプロキシがクエリアとして設定される。クエリアは、自身が属するリスナが存在するネットワーク内にMLDまたはIGMPv2メッセージを送信するルータである。クエリアとして設定されているMLDプロキシで障害が発生した場合にはクエリアを他のMLDプロキシへ切替える。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】RFC2710「Multicast Listener Discovery (MLD) for IPv6」
【非特許文献2】RFC2236「Internet Group Management Protocol, Version 2」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の技術によれば、クエリアの切り替え動作は、次のようなMLDプロキシ間のやりとりにより行われる。例えば、MLDプロキシ#1〜#3の3台のMLDプロキシを備える場合に、MLDプロキシ#1がクエリアに設定されていたとする。このとき、MLDプロキシ#1に障害が発生した場合、上記非特許文献1の規定によれば、MLDプロキシ#1からのMLDクエリ受信が255秒間停止したことをもって、MLDプロキシ#2およびMLDプロキシ#3がクエリアで障害発生したことを検知する。
【0008】
そして、MLDプロキシ#2およびMLDプロキシ#3は自身がクエリアとして動作開始し、MLDクエリを送信する。MLDクエリは31.25秒間隔で送信され、このMLDクエリを用いてMLDプロキシ#2とMLDプロキシ#3の間でクエリア選定が行われる。クエリア選定の結果、MLDプロキシ#3がクエリアになったとする。リスナはMLDプロキシ#3からMLDクエリを受信すると、MLDプロキシ#3にMLDレポートを送信する。
【0009】
MLDプロキシ#3は、MLDレポート受信によりリスナの存在を認識し、マルチキャストルータにMLDレポートを送信する。これにより、マルチキャストルータからMDPが中継され、MLDプロキシ#3によるリスナへのMDP中継が開始される。
【0010】
以上の手順を実施するため、クエリアで障害が発生してから他クエリアに切り替わるまで最短で255秒を要する、という問題がある。また、クエリアの切り替わり後、クエリア配下のリスナでは最短0秒、最長31.25秒のMDP中継断が生じる、という問題がある。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、クエリアに障害が発生した場合にMDP中継を速やかに再開することができるマルチキャスト中継装置、通信システムおよびマルチキャスト中継方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、マルチキャストルータが所属する上位ネットワークとリスナが所属する下位ネットワークとを接続するマルチキャスト中継装置を複数備え、前記マルチキャスト中継装置のうちの1つが前記リスナへ前記マルチキャストルータから送信されるマルチキャストデータパケットを中継するクエリアとして動作する通信システムにおける前記マルチキャスト中継装置であって、前記下位ネットワーク経由で他の前記マルチキャスト中継装置から当該装置がクエリアとして設定されているか否かを示すプロキシ情報を取得するプロキシ情報交換部と、前記下位ネットワークにおける障害検出処理を実施し、前記プロキシ情報に基づいてクエリアで障害が発生したと判断した場合にクエリア障害を通知する障害検出部と、前記クエリア障害を通知されると、自ノードがクエリアでない場合、前記プロキシ情報に基づいてクエリアの次候補を検索し、検索した次候補が自ノードであった場合に自ノードをクエリアに切替えるクエリア切替部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、クエリアに障害が発生した場合にMDP中継を速やかに再開することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、MLDプロキシの機能構成例を示す図である。
【図2】図2は、通信システムの構成例を示す図である。
【図3】図3は、MLDクエリア切替部の動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】図4は、MLDプロキシ情報交換部の動作の一例を示すフローチャートである。
【図5】図5は、リスナ制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
【図6】図6は、リスナ情報学習部の動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】図7は、通信システムの通常時の動作の一例を示す図である。
【図8】図8は、MLDクエリアに障害が発生した場合の動作の一例を示す図である。
【図9】図9は、MLDクエリアに障害が発生した場合の動作の一例を示すチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明にかかるマルチキャスト中継装置、通信システムおよびマルチキャスト中継方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
実施の形態.
図1は、本発明にかかるMLDプロキシの機能構成例を示す図である。図2は、本実施の形態の通信システムの構成例を示す図である。本実施の形態では、本発明にかかるマルチキャスト中継装置として、MLDプロキシ(MLDプロキシとしての機能を備えるルータ)を例にあげて説明する。
【0017】
なお、本実施の形態では、マルチキャストグループ管理プロトコルとしてMLDを用いる場合を説明するが、マルチキャストグループ管理プロトコルはこれに限定されず、IGMPv2等の他のプロトコルを用いてもよい。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態のMLDプロキシ3は、MLDプロキシ処理部31と、MLD処理部32と、IPv6処理部33と、MAC(Media Access Control)処理部34と、PHY(物理層)処理部35と、端末I/F(Interface)36と、VLAN(Virtual LAN)処理部37と、ERP(Ethernet(登録商標) Ring Protection)制御部38と、リングI/F(Interface)39と、リスナ制御部40と、リスナ情報学習部41と、MLDクエリア切替部42と、MLDプロキシ情報交換部43と、を備える。
【0019】
また、図2に示すように、本実施の形態の通信システムは、マルチキャストソース1と、マルチキャストルータ2と、MLDプロキシ3〜5と、レイヤ2スイッチ6と、リスナ7と、で構成される。MLDプロキシ3〜5とレイヤ2スイッチ6とは、ERPリングネットワーク8を構成している。また、リスナ7はレイヤ2スイッチ6に接続されており、レイヤ2スイッチ6経由でMLDプロキシ3〜5と通信を行う。
【0020】
マルチキャストルータ2とMLDプロキシ3〜5とを接続する上位ネットワーク9では、レイヤ3でデータ中継が行なわれ、マルチキャストルータ2とリスナ7を接続する下位ネットワーク10では、レイヤ2でデータ中継が行なわれる。図2では、MLDプロキシ3がクエリアに設定されており、リスナ7がマルチキャストソース1から送信されるMDPを受信する例を示している。クエリアであるMLDプロキシ3は、MLDクエリ(マルチキャストグループ参加問い合わせ)12を送信し、リスナ7がMLDプロキシ3に対してMLDレポート(マルチキャストグループ参加要求)13を送信する。また、クエリアであるMLDプロキシ3は、マルチキャストルータから送信されるMDP11をERPリングネットワーク8内のリスナ7へ中継する。
【0021】
次に、図1を用いてMLDプロキシ3の各部の機能を説明する。なお、MLDプロキシ4,5の構成もプロキシ3と同様の構成である。MLDプロキシ処理部31は、MLDメッセージを中継する処理を行う。MLD処理部32は、MLDのプロトコル処理を行う。IPv6処理部33は、IP層の処理を行い、MAC(Media Access Control)処理部34は、MAC層の処理を行い、PHY(物理層)処理部35は物理層の処理を行う。端末I/F(Interface)36は、上位ネットワーク9内へ接続するためのインタフェースである。
【0022】
リングI/F39は、ERPリングネットワーク8と接続するためのインタフェースである。VLAN処理部37は、ERPリングネットワーク8内に構成されるVLANを管理し、VLAN処理を実施する。
【0023】
ERP制御部(障害検出部)38は、ERPリングネットワーク8内でITU-T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector) G.8032で規定されているERPの処理を実施する。ERPでは、障害箇所に隣接するノードが障害を検出した側のポートを閉塞して、障害箇所をERPリングネットワーク内に通知する。通知を受けて、障害発生前の閉塞ポートを有するノードが、閉塞ポートを開放することにより経路の再構築を行なっている。従って、ERP制御部38は、ERPリングネットワーク8内で障害が発生した場合には、ERPにより障害発生箇所を把握する。
【0024】
以上のMLDプロキシ処理部31、MLD処理部32、IPv6処理部33、MAC処理部34、PHY処理部35、端末I/F36と、VLAN処理部37と、ERP制御部38とおよびリングI/F39の動作は、従来のMLDプロキシと同様であるため詳細な説明は省略する。
【0025】
次に本実施の形態のリスナ制御部40、リスナ情報学習部41、MLDクエリア切替部42およびMLDプロキシ情報交換部43の動作を説明する。本実施の形態では、MLDクエリア切替部42およびMLDプロキシ情報交換部43は、ERP制御部38と連携することでERPによる通信を送信/受信し、ERPによる障害検出の情報等を取得する。具体的には、ERP制御部38は、ERPによりMLDクエリアで障害を検出した場合にMLDクエリアでの障害発生をMLDクエリア切替部(クエリア切替部)42へ通知する。また、ERP制御部38は、MLDプロキシ情報交換部43へMLDプロキシ情報を通知する。
【0026】
MLDプロキシ情報とは、MLDプロキシ3〜5が動作しているすべてのVLANについて、他MLDプロキシ3〜5のVLAN IDとIPアドレスと、MLDクエリアとして動作しているか否かを示すフラグ(以下、クエリアフラグという)と、を含む。これらMLDプロキシ情報はERPによりMLDプロキシ3〜5間で交換される。また、MLDプロキシ情報交換部43は、ERP制御部38から受け取ったMLDプロキシ情報と自ノードのMLDプロキシ情報とをMLDプロキシ動作ノードリストとして保持しているとする。
【0027】
図3は、MLDクエリア切替部42の動作の一例を示すフローチャートである。まず、MLDクエリア切替部42は、ERP制御部38からMLDリエリアでの障害発生通知を受け取った(障害発生を検知した)か否かを判断する(ステップS1)。障害発生通知を受け取った場合(ステップS1 Yes)、MLDプロキシ情報交換部43が保持するMLDプロキシ動作ノードリストからMLDクエリアの次候補を検索する(ステップS2)。なお、ここでは、ERP制御部38が、MLDプロキシ情報に基づいてどのMLDプロキシがMLDクエリアであるかを把握しており、ERPにより障害を検出した場合、当該障害の障害箇所がMLDクエリアであるか否かを判断することとする。
【0028】
そして、検索結果に基づいてMLDクエリアの次候補が自ノードであるか否かを判断する(ステップS3)。MLDクエリアの次候補については、MLDクエリアの候補が複数想定される場合には、例えば、MLDプロキシ3〜5に予めクエリアとして設定する優先順位を定めておき、その優先順位に基づいて次候補を検索する。
【0029】
MLDクエリアの次候補が自ノードである場合(ステップS3 Yes)、MLDクエリア切替部42は、自ノードをMLDクエリアに切替え、MLDプロキシ処理部31へMLDクエリアとして動作するよう指示し(ステップS4)、ステップS1へ戻る。MLDプロキシ処理部31へMLDクエリアとして動作するよう指示されるとMLDクエリアとしての動作を開始する。
【0030】
ステップS1で障害発生通知を受け取っていない場合(ステップS1 No)、およびMLDクエリアの次候補が自ノードでない場合(ステップS3 No)、ステップS1へ戻る。
【0031】
図4は、MLDプロキシ情報交換部43の動作の一例を示すフローチャートである。MLDプロキシ情報交換部43はMLDクエリア調停を高速化するために上述のMLDプロキシ動作ノードリストを保持する。なお、ここでは、ERPリングネットワーク8内でVLANが構成されている場合を例に説明するが、VLANが構成されていなくてもよく、その場合にはMLDプロキシ情報およびMLDプロキシ動作ノードリストにはVLAN IDを含めなくてよい。
【0032】
MLDプロキシ情報交換部43はERP制御部38からMLDプロキシ情報を受信したか否かを判断する(ステップS11)。MLDプロキシ情報を受信したならば(ステップS11 Yes)、MLDプロキシ情報に基づいてMLDプロキシ動作ノードのVLAN ID、IPアドレス、MLDクエリアとして動作しているか否かのフラグ、の情報を取得し(ステップS12)、取得した情報でMLDプロキシ動作ノードリストを更新し(ステップS13)、ステップS11へ戻る。また、MLDプロキシ情報を受信していない場合(ステップS11 No)、ステップS11へ戻る。
【0033】
図5は、リスナ制御部40の動作の一例を示すフローチャートである。リスナ制御部40は、自ノードがMLDクエリアに切り替わったことをMLDクエリア切替部42から通知された(自ノードがMLDクエリアに切り替わった)か否かを判断する(ステップS21)。なお、MLDクエリア切替部42は、自ノードがMLDクエリアに切り替わった場合、リスナ制御部40へその旨通知する。
【0034】
自ノードがMLDクエリアに切り替わった場合(ステップS21 Yes)、リスナ制御部40は、自ノードがMLDクエリアになったVLANのVLAN IDでリスナリストを検索する(ステップS22)。リスナリストは、リスナが存在するVLAN IDとグループアドレス(マルチキャストグループアドレス)、およびリスナが接続されたポート番号が格納されるリストである。なお、MLDクエリアはVLANごとに1つ設定するとするが、ここではMLDプロキシ3〜5は同一VLANに属するとし、MLDプロキシ3〜5のうちの1つがMLDクエリアに設定されるとする。
【0035】
そして、リスナ制御部40は、検索の結果に基づいてMLDクエリアになったVLANにリスナが存在するか否かを判断する(ステップS23)。MLDクエリアになったVLANにリスナが存在する場合(ステップS23 Yes)、マルチキャストルータ2に対して、マルチキャストルータ2からリスナリストに格納されているグループアドレスに対応するMDPの配信を要求するMLDレポートを送信し(ステップS24)、ステップS21へ戻る。
【0036】
ステップS21で自ノードがMLDクエリアに切り替わっていない場合(ステップS21 No)、およびステップS23でMLDクエリアになったVLANにリスナが存在しない場合(ステップS23 No)、ステップS21へ戻る。
【0037】
図6は、リスナ情報学習部41の動作の一例を示すフローチャートである。リスナ情報学習部41は、MLDクエリア切り替わり時のMDP中継断を短縮するためにリスナリストを保持する。リスナリストは、リスナが存在するVLAN IDとグループアドレス、リスナが接続されたポート番号で構成される。リスナリストは、リスナリストを保持するMLDプロキシ3〜5が、各リスナに対してMDPを中継するために必要な中継情報であり、ここでは、VLAN ID、グループアドレス、リスナが接続されたポート番号とするが、MDPを中継するために必要な中継情報であれば、これらに限定されない。
【0038】
リスナリストを構成する各情報は、リスナが送信するMLDレポートをスヌーピングすることで取得し、リスナ情報収集のために新たなトラヒックは発生させない。
【0039】
リスナ情報学習部41は、MLDプロキシ処理部31およびリスナ制御部40経由(またはMLDプロキシ処理部31経由)でMLDレポートを受信したか否かを判断する(ステップS31)。MLDレポートを受信した場合(ステップS31 Yes)、MLDレポートからリスナのVLAN ID、グループアドレス、リスナが接続されたポート番号を取得し(ステップS32)、取得した情報に基づいて保持しているリスナリストを更新し(ステップS33)、ステップS31へ戻る。また、MLDレポートを受信していない場合(ステップS31 No)、ステップS31へ戻る。
【0040】
次に、本実施の形態の通信システムの動作を用いて説明する。図7は、本実施の形態の通信システムの通常時(障害が発生していない時)の動作の一例を示す図である。MLDプロキシ3がMLDクエリアとして動作しており、MLDプロキシ3〜5は、ERPによりMLDプロキシ情報14を交換し合うことで、それぞれMLDプロキシ動作ノードリストを作成して保持する。また、MLDクエリアでないMLDプロキシ4,5は、MLDレポートをスヌーピングすることでリスナリストを作成し、保持する。
【0041】
次に、MLDプロキシ3で障害が発生した場合の動作を説明する。図8は、本実施の形態の通信システムにおいてMLDクエリアに障害が発生した場合の動作の一例を示す図である。また、図9は、MLDクエリアに障害が発生した場合の動作の一例を示すチャート図である。
【0042】
図9に示すように、MLDプロキシ4、5では、ERP制御部38がMLDクエリアであるMLDプロキシ3で障害が発生したことを、ERPによって検知する(ステップS41)。ERP制御部38は、MLDクエリアに障害は発生したことをMLDクエリア切替部42へ通知する(ステップS42)。
【0043】
次に、MLDプロキシ4、5では、MLDクエリア切替部42が、自身が保持するMLDプロキシ動作ノードリストからMLDクエリア次候補を検索する(ステップS43)。検索の結果、MLDクエリア次候補が自ノードであると判断した場合、MLDクエリア切替部42は、MLDクエリアとしての動作を開始し(ステップS44)、リスナ制御部40へ自ノードがMLDクエリアに切り替わったことを通知する(ステップS45)。なお、ここでは、MLDプロキシ5がMLDクエリア次候補であったとする。
【0044】
上記非特許文献1では、規定されたタイマ255秒の満了後にMLDクエリアが切り替わるが、本実施の形態ではERPによる障害検出とMLDプロキシ動作ノードリストを用いることによって、MLDプロキシ5は速やかにMLDクエリアに切り替わることができる。
【0045】
次に、MLDクエリアに切り替わったMLDプロキシ5では、リスナ制御部40が、自身が保持するリスナリストを検索し、MLDクエリアとなったVLANにリスナが存在するか否かを判断する(ステップS46)。MLDクエリアとなったVLANにリスナが存在するならば、MLDプロキシ処理部31へMDPの受信を要求するMLDレポートを送信するよう通知する(ステップS47)。MLDプロキシ処理部31は、通知に基づいてマルチキャストルータ2へMLDレポートを送信する(ステップS48)。
【0046】
MLDプロキシ5からMLDレポートを受信したマルチキャストルータ2は、図8に示すように、MLDプロキシ5へMDP11の転送を開始する。さらに、MLDプロキシ5はMDP11のリスナ7への中継を行う。
【0047】
上記非特許文献1の規定では、MLDクエリア切り替わり後、MLDクエリを受信したリスナ7がMLDレポートを送信するまで、リスナ7にMDP中継が開始されないが、本実施の形態ではリスナリストを用いることによって、MLDクエリ切り替わり後すぐにMDP中継が開始される。
【0048】
なお、本実施の形態では、下位ネットワーク10がERPリングネットワーク8を構成する場合を例に説明したが、障害検出が行なわれるネットワークであれば下位ネットワーク10はERPリングネットワーク8に限定されない。
【0049】
このように、本実施の形態では、マルチキャストソース1とマルチキャストルータ2が存在するレイヤ3ネットワークである上位ネットワーク9と、リスナ7が存在するERPリングネットワーク8の境界にMLDプロキシが複数台設された通信システムにおいて、MLDプロキシ3〜5は、プロキシ情報交換によって作成したプロキシ動作ノードリストを保持する。そして、ERPリングネットワーク8による障害検出とプロキシ動作ノードリストを用いてMLDクエリアを切替えるようにした。このため、クエリア障害発生時のクエリア調停を高速化できる。また、リスナが送信するマルチキャストグループ参加要求をスヌーピングすることによって作成したリスナリストを用いることで、クエリア切り替え時のリスナにおけるMDP中継時間の短縮を実現できる。以上のことから本実施の形態では、クエリアに障害が発生した場合にMDP中継を速やかに再開することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明にかかるマルチキャスト中継装置、通信システムおよびマルチキャスト中継方法は、マルチキャストグループ管理プロトコルのプロキシとして機能するマルチキャスト中継装置に有用であり、特に、マルチキャストグループ管理プロトコルのプロキシが複数存在する通信システムにおいてプロキシとして機能するマルチキャスト中継装置に適している。
【符号の説明】
【0051】
1 マルチキャストソース
2 マルチキャストルータ
3〜5 MLDプロキシ
6 レイヤ2スイッチ
7 リスナ
8 ERPリングネットワーク
9 上位ネットワーク
10 下位ネットワーク
11 MDP
12 MLDクエリ
13 MLDレポート
14 MLDプロキシ情報
31 MLDプロキシ処理部
32 MLD処理部
33 IPv6処理部
34 MAC処理部
35 PHY処理部
36 端末I/F
37 VLAN処理部
38 ERP制御部
39 リングI/F
40 リスナ制御部
41 リスナ情報学習部
42 MLDクエリア切替部
43 MLDプロキシ情報交換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチキャストルータが所属する上位ネットワークとリスナが所属する下位ネットワークとを接続するマルチキャスト中継装置を複数備え、前記マルチキャスト中継装置のうちの1つが前記リスナへ前記マルチキャストルータから送信されるマルチキャストデータパケットを中継するクエリアとして動作する通信システムにおける前記マルチキャスト中継装置であって、
前記下位ネットワーク経由で他の前記マルチキャスト中継装置から当該装置がクエリアとして設定されているか否かを示すプロキシ情報を取得するプロキシ情報交換部と、
前記下位ネットワークにおける障害検出処理を実施し、前記プロキシ情報に基づいてクエリアで障害が発生したと判断した場合にクエリア障害を通知する障害検出部と、
前記クエリア障害を通知されると、自ノードがクエリアでない場合、前記プロキシ情報に基づいてクエリアの次候補を検索し、検索した次候補が自ノードであった場合に自ノードをクエリアに切替えるクエリア切替部と、
を備えることを特徴とするマルチキャスト中継装置。
【請求項2】
自装置が前記リスナへ当該リスナが参加しているマルチキャストデータパケットを中継するために用いる中継情報を取得し、前記中継情報を前記リスナごとにリスナリストとして保持するリスナ情報学習部と、
前記クエリア切替部が自ノードをクエリアに切替えると、前記リスナリストを検索して自ノードの配下にリスナが存在する場合、前記リスナリストに基づいて当該リスナのマルチキャストグループ参加要求を前記マルチキャストルータへ送信するリスナ制御部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のマルチキャスト中継装置。
【請求項3】
前記リスナ情報学習部は、前記リスナが送信するマルチキャストグループ参加要求をスヌーピングすることにより、前記中継情報を取得する、ことを特徴とする請求項2に記載のマルチキャスト中継装置。
【請求項4】
前記プロキシ情報に前記マルチキャスト中継装置が所属しているVLANのVLAN識別子をさらに含み、
前記中継情報に、前記リスナが所属するVLANのVLAN識別子、マルチキャストグループアドレス、リスナが接続されたポート番号を含み、
前記クエリア切替部は、VLANごとにクエリアの次候補を検索し、検索した次候補が自ノードであった場合に自ノードをクエリアに切替え、
前記リスナ制御部は、前記リスナリストに基づいて自装置がクエリアとなったVLANに存在するリスナのマルチキャストグループ参加要求を送信する、
ことを特徴とする請求項2または3に記載のマルチキャスト中継装置。
【請求項5】
前記下位ネットワークをERPリングネットワークとする、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のマルチキャスト中継装置。
【請求項6】
マルチキャストルータを備える上位ネットワークと、
前記マルチキャストルータからのマルチキャストデータパケットを受信するリスナを備える下位ネットワークと、
前記上位ネットワークと前記上位ネットワークとを接続する請求項1〜5のいずれか1つに記載のマルチキャスト中継装置と、
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項7】
マルチキャストルータが所属する上位ネットワークとリスナが所属する下位ネットワークとを接続するマルチキャスト中継装置を複数備え、前記マルチキャスト中継装置のうちの1つが前記リスナへ前記マルチキャストルータから送信されるマルチキャストデータパケットを中継するクエリアとして動作する通信システムにおける前記マルチキャスト中継装置におけるマルチキャスト中継方法であって、
前記下位ネットワーク経由で他の前記マルチキャスト中継装置から当該装置がクエリアとして設定されているか否かを示すプロキシ情報を取得するプロキシ情報交換ステップと、
前記下位ネットワークにおける障害検出処理を実施し、前記プロキシ情報に基づいてクエリアで障害が発生したと判断した場合にクエリア障害を通知する障害検出ステップと、
前記クエリア障害を通知されると、自ノードがクエリアでない場合、前記プロキシ情報に基づいてクエリアの次候補を検索し、検索した次候補が自ノードであった場合に自ノードをクエリアに切替えるクエリア切替ステップと、
を含むことを特徴とするマルチキャスト中継方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−119857(P2012−119857A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266720(P2010−266720)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】