説明

マルチディスプレイの制御方法、制御プログラムおよびマルチディスプレイ装置

【課題】プレゼンテーターの空間的な移動を低減し、他の表示装置への画面表示の切り替えや、表示したデータの編集を容易且つ直感的に行えるマルチディスプレイの制御方法、制御プログラムおよび制御装置を提供する。
【解決手段】タッチパネル10と表示部20とを有するマスタ表示装置100と、表示部を有する(少なくとも1つの)スレーブ表示装置200、300、400と、マスタ表示装置100およびスレーブ表示装置200、300、400と接続して、マスタ表示装置100のタッチパネル10からの入力に基づいてマスタ表示装置100およびスレーブ表示装置200、300、400の表示に係る制御を行う制御装置150と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチディスプレイの制御方法、制御プログラムおよびマルチディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
会議や授業等において、各種の視聴覚機器を用いたプレゼンテーションの重要性が増すなか、訴求力・演出力の高いプレゼンテーションが求められるようになっている。ディスプレイも大画面化が図られてはいるが、1つのディスプレイの画面サイズを上回る大きな表示画面を必要とする場合、複数のディスプレイを縦横に配置したマルチディスプレイを使用することも多い。
【0003】
図1は、複数の表示装置を縦横に配置したマルチディスプレイの従来構成例を示す模式図である。図の例は、同一の表示装置を上下左右に4台配置した構成で、各表示装置はマウス機能を有するタッチパネルを搭載しており、それぞれの表示装置においてタッチパネル上で表示の制御が可能となっている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−306631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1に示すような、従来のマルチディスプレイでは、例えば、プレゼンテーターが表示装置D540で説明を行っていて、次に表示装置A510の表示について説明を行う場合、表示装置A510近傍へ移動してそのタッチパネルを操作して説明を行うのが一般的であった。つまり、用いる表示の場所まで移動せねばならず、プレゼンテーションのための動作が煩雑で、見栄え上も好ましくないという問題があった。特に、表示装置が大型であるような場合、表示装置A510が高い操作し難い位置に設置される可能性もある。
【0006】
一方、いわゆる電子黒板機能を有するディスプレイでも、1つのディスプレイに書き込めるスペースには限りがあるため、ディスプレイを上下左右に重ねて使用するニーズが発生しうるが、直前の板書データを表示しつつ次の板書を行う場合、他のディスプレイへの板書データの移動や、表示装置間の映像出力の切り替え、といった煩雑な制御動作が必要になるという問題があった。
【0007】
更に、従来のマルチディスプレイでは、各表示装置でタッチパネル操作を行うので表示装置台数分のタッチパネルが必要となりマルチディスプレイとしてのコストが比較的高いという問題もあった。
【0008】
上記の問題に鑑みれば、1つの表示装置のタッチパネル上でその他すべての表示装置に係る表示の制御までを行うことができれば、プレゼンテーターが移動する必要もなく、また、操作不要なタッチパネルを削除することでマルチディスプレイとしての製造コストが削減され、課題を解決できると考えられる。
【0009】
具体的な制御内容としては、タッチパネルを搭載するメインの表示装置の現在の表示内容(または編集内容)を簡単なタッチパネル操作でそのまま別の表示装置へ移動させたり、別の表示装置の現在の表示内容をメインの表示装置へ逆に移動させてタッチパネル操作により編集等を行ったりする、という表示装置間の表示の移動(または入れ替え)等が容易に行える表示制御であることが望ましい。
【0010】
パーソナルコンピュータなどの制御装置に複数のディスプレイを接続して複数の情報を表示する例は従来より存在するが(例えば、特許文献1参照)、表示の移動等を容易にする目的の制御装置、またはそれを含むマルチディスプレイシステム等はこれまで皆無であった。特に、制御装置に付属するキーボードなどではなく、表示された部分をそのまま操作してマルチディスプレイの表示の移動や入れ替えを容易に行うという制御方法はこれまでに提案されていない。
【0011】
このような制御方法が実現されれば、プレゼンテーターは表示装置間を移動することなく、自身の容易な操作でマルチディスプレイの表示を制御できるため、プレゼンテーションを円滑に進行させることができる。また、プレゼンテーターの進行に合わせて、遠隔の制御装置から表示の制御を行うような人員も不要となるため、プレゼンテーションの省力化にも貢献できる。
【0012】
本発明が解決しようとする課題としては、マルチディスプレイを用いたプレゼンテーションにおいて、操作入力を一の表示装置に固定することにより、プレゼンテーターの空間的な移動を低減し、他の表示装置への画面表示の切り替えや、表示したデータの編集を容易且つ直感的に行えるマルチディスプレイの制御方法、制御プログラムおよびマルチディスプレイ装置を提供することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載のマルチディスプレイの制御方法は、タッチパネルと表示部とを有するマスタ表示装置と、表示部を有する少なくとも1つのスレーブ表示装置と、を備えるマルチディスプレイに対して、前記マスタ表示装置のタッチパネルからの入力に基づいて前記マスタ表示装置および前記スレーブ表示装置の表示に係る制御を行うマルチディスプレイの制御方法であって、
前記マスタ表示装置から所望の前記スレーブ表示装置への表示の移動の入力を検知するステップと、
前記マスタ表示装置の現在の画面表示に係る画像情報を取得し、取得した画像情報を所望の前記スレーブ表示装置に送出するステップと、を含むことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載のプログラムは、タッチパネルと表示部とを有するマスタ表示装置と、表示部を有する少なくとも1つのスレーブ表示装置と、を備えるマルチディスプレイに対して、前記マスタ表示装置のタッチパネルからの入力に基づいて前記マスタ表示装置および前記スレーブ表示装置の表示に係る制御の各手順をコンピュータに実行させるためのマルチディスプレイの制御プログラムであって、
前記マスタ表示装置から所望の前記スレーブ表示装置への表示の移動の入力を検知するステップと、
前記マスタ表示装置の現在の画面表示に係る画像情報を取得し、取得した画像情報を所望の前記スレーブ表示装置に送出するステップと、を含むことを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載のマルチディスプレイ装置は、タッチパネルと表示部とを有するマスタ表示装置と、
表示部を有する少なくとも1つのスレーブ表示装置と、
前記マスタ表示装置および前記スレーブ表示装置と接続して、前記マスタ表示装置のタッチパネルからの入力に基づいて前記マスタ表示装置および前記スレーブ表示装置の表示に係る制御を行う制御装置と、を備えることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るマルチディスプレイ装置及びマルチディスプレイの制御方法の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図2は、本発明の実施の形態に係るマルチディスプレイ装置の一例を示すブロック図である。図3は、本発明の実施の形態に係るマルチディスプレイ装置の制御装置の機能ブロック図である。
【0017】
本実施の形態に係るマルチディスプレイ装置は、図2に示すように、マスタ表示装置100と、制御装置150と、(少なくとも1つの)スレーブ表示装置200、300、400と、で構成されている。マスタ表示装置100は、タッチパネル10と表示部20を備えている。タッチパネル10は、例えば、表示部20の枠に着脱可能としてもよく、赤外線等の光センサーを含む位置センサー、またはシート状に配置された圧電素子などの接触センサーを装備したものなどで構成され、ディスプレイ表面に接近または接触させたペン先や指の位置を検知することができる。
【0018】
マスタ表示装置100は、プレゼンテーターが、入力手段としてのタッチパネル10を操作し、各種の表示制御を行うためのメインの表示装置である。スレーブ表示装置200、300、400は、タッチパネル10からの表示に係る指示に基づいて制御装置150が送出する画像情報を表示する表示装置である。具体的には、マスタ表示装置100で取得された静止画像が表示される。
【0019】
制御装置150は、マルチディスプレイの表示に係る制御を統括して行う制御部である。制御装置150は、マスタ表示装置100を含む表示装置台数分の映像出力端子を有し、各映像出力に別々の出力機能を有する。制御装置150は、図3に示すように、主に、入力検知部151と、表示切替部152と、表示履歴記憶部156と、を有している。
【0020】
入力検知部151は、タッチパネル10からの入力を検知する。表示切替部152は、マスタ表示装置100およびスレーブ表示装置200、300、400の各表示装置の表示の切り替えに係る制御を行う。具体的には、次の各機能部により以下のような動作を行う。
【0021】
画像取得部153は、各スレーブ表示装置へ送出するための静止画像の取得(画像キャプチャ)を行う。取得する静止画像は、マスタ表示装置100で現在表示中の画像である。後述する画面表示を移動させるためのタッチパネル上の操作をトリガとして取得が開始される。画像送出・送出停止部154は、取得した画像情報の送出および送出の停止を行う。表示最小化・最大化部155は、各表示装置へ送出する画像情報の画面上における最小化表示・最大化表示を選択する。
【0022】
表示履歴記憶部156は、マスタ表示装置100およびスレーブ表示装置200、300、400の各表示装置で表示した画像の表示履歴を記憶するメモリである。表示履歴情報を参照することにより、過去の表示状態を再生することができる。
【0023】
なお、制御装置150は、汎用のオペレーティングシステム157およびアプリケーション158を含み、マスタ表示装置100のタッチパネル10を介して画面上の操作でアプリケーションの起動やデータ編集等を行うことができる。アプリケーション158とは、テキストエディタや表計算ソフトなどの汎用アプリケーションのほか、本発明に係る制御方法を実現するためのGUI等のプログラムも含まれる。
【0024】
次に、本発明に係るマルチディスプレイの制御方法の実施の形態について説明する。
まず、本発明の第1の実施形態に係るマルチディスプレイの制御方法について詳細に説明する。図4は、本発明の第1の実施形態に係るマルチディスプレイの制御方法における制御手順を示すフローチャートである。
はじめに、制御装置150の入力検知部151は、タッチパネル10を介して、マスタ表示装置100からスレーブ表示装置200、300、400のいずれかへの画面表示の移動に係る操作が行われたか否かを検知する(ステップS101)。画面表示の移動に係る操作の具体例については後述する。操作を検知した場合、表示切替部152の画像取得部153は、これをトリガとしてマスタ表示装置100の現在の画面表示をキャプチャして画像情報(静止画像)を取得する(ステップS102)。そして、取得した画像情報を、タッチパネルを介した操作で指定されたスレーブ表示装置へ出力する(ステップS103)。
【0025】
図5は、図4のフローチャートに示す制御動作手順が実行された際のマスタ表示装置およびスレーブ表示装置の画面表示の変化の様子(a),(b)を示す模式図である。
なお、図では説明の便宜のため、スレーブ表示装置として表示装置300のみ記載している。
【0026】
図5(a)の状態のときに、プレゼンテーターがマスタ表示装置100のタッチパネル10を操作して、「JKL」というマスタ表示装置100の画面表示をスレーブ表示装置300へ移動させる旨の命令を行うと、制御装置150は、マスタ表示装置100の現在の画面表示「JKL」をキャプチャして、静止画像としてスレーブ表示装置300へ出力する。スレーブ表示装置300には、マスタ表示装置100と同じ「JKL」という静止画像が表示される(図5(b))。
【0027】
プレゼンテーターは、マスタ表示装置100に表示されている「JKL」が、例えばテキストエディタアプリケーションを用いて書いた文字データである場合、これに文字を追記したり描画を行うなどの編集がタッチパネルを介して行えるので、上下のデータを比較しながらプレゼンテーションを行うような場合の表示に効果的である。
なお、スレーブ表示装置300に表示されている「JKL」はキャプチャされた静止画像であるので、これを編集することはできない。
【0028】
次に、本発明の第2の実施形態に係るマルチディスプレイの制御方法について詳細に説明する。図6は、本発明の第2の実施形態に係るマルチディスプレイの制御方法における制御手順を示すフローチャートである。
【0029】
フローチャートのステップS201からS203までは、第1の実施形態の図4のフローチャートにおけるステップS101からS103までと同じであるため、説明を省略する。次に、制御装置150の表示切替部152は、マスタ表示装置100においてデスクトップにアプリケーションウィンドウを表示する画像出力を行っていたか否かを判断し(ステップS204)、表示していた場合、アプリケーション名、座標位置などの表示履歴情報を表示履歴記憶部156に保存する(ステップS205)。そして、表示最小化・最大化部155は、当該アプリケーションの画像出力においてウィンドウの最小化表示を命令する(ステップS206)。
【0030】
図7は、図6のフローチャートに示す制御動作手順が実行された際のマスタ表示装置およびスレーブ表示装置の画面表示の変化の様子(a),(b),(c)を示す模式図である。
なお、図では説明の便宜のため、スレーブ表示装置として表示装置300のみ記載している。
【0031】
図7(a)の状態のときに、プレゼンテーターがマスタ表示装置100のタッチパネル10を操作して、「JKL」というマスタ表示装置100の画面表示をスレーブ表示装置300へ移動させる旨の命令を行うと、制御装置150は、マスタ表示装置100の現在の画面表示「JKL」をキャプチャして、静止画像としてスレーブ表示装置300へ出力する。スレーブ表示装置300には、マスタ表示装置100と同じ「JKL」という静止画像が表示される(図7(b))。
【0032】
ほぼ同時に、マスタ表示装置100で「JKL」を表示していたアプリケーション(例えばテキストエディタ)のウィンドウが、表示最小化・最大化部155により最小化表示され、デスクトップ画面表示となる(図7(c))。マスタ表示装置100にあった「JKL」の表示が消失し、スレーブ表示装置300に表示され、視覚上は移動したように見えるので、直感的に把握しやすく、単に表示内容を下から上へ移動させるような場合の表示において効果的である。
【0033】
次に、図6のフローチャートに戻り、ステップS204においてマスタ表示装置100のデスクトップにアプリケーションウィンドウが表示されていなかった場合、表示切替部152は、次に、マスタ表示装置100で電子黒板アプリケーションを起動中であるか否かを判断する(ステップS207)。電子黒板アプリケーションを起動中である場合、画像送出・送出停止部154は、新規ページ(白紙画面)を出力する(ステップS208)。
【0034】
図8は、図6のフローチャートに示す制御動作手順が実行された際のマスタ表示装置およびスレーブ表示装置の画面表示の変化の様子(a),(b),(c)を示す模式図である。
なお、図では説明の便宜のため、スレーブ表示装置として表示装置300のみ記載している。
【0035】
図8(a)の状態のときに、プレゼンテーターがマスタ表示装置100のタッチパネル10を操作して、「JKL」というマスタ表示装置100の画面表示をスレーブ表示装置300へ移動させる旨の命令を行うと、制御装置150は、マスタ表示装置100の現在の画面表示「JKL」をキャプチャして、静止画像としてスレーブ表示装置300へ出力する。スレーブ表示装置300には、マスタ表示装置100と同じ「JKL」という静止画像が表示される(図8(b))。
【0036】
ほぼ同時に、電子黒板アプリケーションの新規ページウィンドウ(白紙画面)が画像送出・送出停止部154よりマスタ表示装置100へ出力される(図8(c))。マスタ表示装置100にあった「JKL」の表示が消失し、スレーブ表示装置300に表示され、視覚上は移動したように見えるので、直感的に把握しやすく、上下2枚の擬似的な黒板において下の板書内容を上方へ移動させるような場合の表示において効果的である。
【0037】
なお、図6のフローチャートのステップS207において、電子黒板アプリケーションを起動していない場合、画像送出・送出停止部154は、同じ画像情報を出力する(ステップS209)。これは、第1の実施形態における図5に示す画像表示状態と同じである。
【0038】
次に、本発明の第3の実施形態に係るマルチディスプレイの制御方法について詳細に説明する。図9は、本発明の第3の実施形態に係るマルチディスプレイの制御方法における制御手順を示すフローチャートである。
【0039】
はじめに、制御装置150の入力検知部151は、タッチパネル10を介して、スレーブ表示装置200、300、400のいずれかからマスタ表示装置100への画面表示の移動に係る操作が行われたか否かを検知する(ステップS301)。画面表示の移動に係る操作の具体例については後述する。操作を検知した場合、表示切替部152は、これをトリガとして表示履歴記憶部156に保存された表示履歴情報を参照して、該当する画像情報(アプリケーション)をマスタ表示装置100に出力する(ステップS302)。
【0040】
図10は、図9のフローチャートに示す制御動作手順が実行された際のマスタ表示装置およびスレーブ表示装置の画面表示の変化の様子(a),(b)を示す模式図である。
なお、図では説明の便宜のため、スレーブ表示装置として表示装置300のみ記載している。
【0041】
図10(a)の状態のときに、プレゼンテーターがマスタ表示装置100のタッチパネル10を操作して、「DEF」というスレーブ表示装置300の画面表示をマスタ表示装置100へ移動させる旨の命令を行うと、表示切替部152は、表示履歴記憶部156で、過去に「DEF」という静止画像をキャプチャした際のマスタ表示装置100における表示履歴情報を照会する。
【0042】
「DEF」が、例えばテキストエディタアプリケーションを用いて書いた文字データであり、当該テキストエディタアプリケーションがマスタ表示装置100において最小化表示されていた場合、画像送出・送出停止部154は、当該アプリケーションの画像情報をマスタ表示装置100に出力し、表示最小化・最大化部155は最大化表示を指定する。
【0043】
スレーブ表示装置300には、マスタ表示装置100と同じ「DEF」という静止画像が表示されたままである(図10(b))。プレゼンテーターは、マスタ表示装置100に復元された「DEF」に文字を追記したり描画を行うなどの編集が行えるので、上下のデータを比較しながらプレゼンテーションを行うような場合の表示に効果的である。なお、スレーブ表示装置300に表示されている「DEF」はキャプチャされた静止画像であるので、これを編集することはできない。
【0044】
次に、本発明の第4の実施形態に係るマルチディスプレイの制御方法について詳細に説明する。図11は、本発明の第4の実施形態に係るマルチディスプレイの制御方法における制御手順を示すフローチャートである。
【0045】
フローチャートのステップS401からS402までは、第3の実施形態の図9のフローチャートにおけるステップS301からS302までと同じであるため、説明を省略する。次に、制御装置150の表示切替部152は、スレーブ表示装置300にそのまま同じ画像情報を出力する設定であるか否かを判断する(ステップS403)。
【0046】
同じ画像情報を出力する設定である場合、画像送出・送出停止部154は、同じ画像情報を出力する(ステップS404)。これは、実施の形態3における図10に示す画像表示状態と同じである。
【0047】
一方、同じ画像情報を出力する設定でない場合(ステップS403のNo)、表示切替部152は、スレーブ表示装置300において「DEF」を表示する一つ前の画面表示に係る表示履歴情報が表示履歴記憶部156に保存されているか否かを照会する(ステップS405)。表示履歴情報が保存されている場合、画像送出・送出停止部154は、履歴情報に基づいて、一つ前の静止画像情報をスレーブ表示装置300に出力する(ステップS406)。
【0048】
図12は、図11のフローチャートに示す制御動作手順が実行された際のマスタ表示装置およびスレーブ表示装置の画面表示の変化の様子(a),(b),(c)を示す模式図である。
なお、図では説明の便宜のため、スレーブ表示装置として表示装置300のみ記載している。
【0049】
図12(a)の状態のときに、プレゼンテーターがマスタ表示装置100のタッチパネル10を操作して、「DEF」というスレーブ表示装置300の静止画像表示をマスタ表示装置100へ移動させる旨の命令を行うと、制御装置150は、表示履歴記憶部156の表示履歴に基づいて、例えば、最小化表示していた「DEF」の画面表示に係るアプリケーションをマスタ表示装置100において最大化表示するための画像表示出力を行う(図12(b))。
【0050】
そして、表示履歴記憶部156への照会結果から、スレーブ表示装置300で「DEF」の静止画像表示が行われる前に「XYZ」という静止画像表示が行われていたことが追跡できた場合、スレーブ表示装置300には、「XYZ」という静止画像情報が出力される(図12(c))。
【0051】
スレーブ表示装置300にあった「DEF」の表示が消失し、マスタ表示装置100に表示され、視覚上は移動したように見える。その際、スレーブ表示装置300において一つ前に表示されていた静止画像に画面表示が切り替わり、下に隠れていた画像が再び現れたような表示となるので、直感的に把握しやすく、単に表示内容を上から下へ移動させるような場合の表示において効果的である。
【0052】
次に、図11のフローチャートに戻り、ステップS405において、スレーブ表示装置300に係る一つ前の表示履歴情報が保存されていない場合、画像送出・送出停止部154は、スレーブ表示装置300への画像情報の出力を停止する(ステップS407)。
【0053】
図13は、図11のフローチャートに示す制御動作手順が実行された際のマスタ表示装置およびスレーブ表示装置の画面表示の変化の様子(a),(b),(c)を示す模式図である。
なお、図では説明の便宜のため、スレーブ表示装置として表示装置300のみ記載している。
【0054】
図13(a)の状態のときに、プレゼンテーターがマスタ表示装置100のタッチパネル10を操作して、「DEF」というスレーブ表示装置300の静止画像表示をマスタ表示装置100へ移動させる旨の命令を行うと、制御装置150は、表示履歴記憶部156の表示履歴に基づいて、例えば、最小化表示していた「DEF」の画面表示に係るアプリケーションをマスタ表示装置100において最大化表示するための画像情報出力を行う(図13(b))。
【0055】
そして、スレーブ表示装置300への画像情報出力が停止される。スレーブ表示装置300にあった「DEF」の表示が消失し、マスタ表示装置100に表示され(図13(c))、視覚上は移動したように見えるので、直感的に把握しやすく、単に表示内容を上から下へ移動させるような場合の表示において効果的である。
【0056】
ここで、画面表示の移動に係るタッチパネル上の操作について説明する。プレゼンテーターは、タッチパネル10に所定の入力操作を行って表示装置間で画面表示を移動させるための命令を実行する。タッチパネル10では、その他にも文字や描画の入力等も行うため、画面表示の移動の指示は簡易且つ直感的な操作によって実行されることが好ましい。以下にその操作例を示す。
【0057】
図14は、画面上にGUI(Graphical User Interface)アイコンを表示して画面表示の移動を実行する例を示す模式図である。
図14において、プレゼンテーターがタッチパネル10の↑矢印ボタン部分をタッチすると、上記の制御手順により、マスタ表示装置100の画面表示がスレイブ表示装置へ移動する。同様に、↓矢印ボタン部分をタッチするとスレーブ表示装置300の画面表示がマスタ表示装置100へ移動する。
【0058】
次に、図15は、タッチパネル上の特定の操作(ジェスチャー)で画面表示の移動を実行する例を示す模式図である。図の例では、タッチパネル上で、下から上へ指または専用ペンを動かすことにより、マスタ表示装置100の画面表示がスレイブ表示装置へ移動する。但し、この時、特定のジェスチャーは通常のマウス操作と異なるものであることが識別できなければならない。識別可能な操作例としては、タッチパネルドライバが2地点以上を認識したときのみ移動のための操作であると判断する、指2本または3本などで動かした場合のみ移動のための操作であると判断する、タッチパネル専用ペンに表示切替専用ボタンを設け、それが押下された状態で操作した場合のみ移動のための操作であると判断する、図16に示すように、特定の座標エリアから座標エリアまで、XXcm/sec(所定の速度)以上の移動速度で動作した場合のみ移動のための操作であると判断する、などが考えられる。
【0059】
なお、上記実施の形態において、表示履歴記憶部156に保存される表示履歴情報は、少なくとも、アプリケーション名、座標位置、表示装置ID、画像データを含む情報である。
【0060】
また、上記実施の形態では、スレーブ表示装置を3台とする構成としたが、スレーブ表示装置は何台であってもかまわない。また、本実施の形態では、制御装置150を独立した構成単位としたが、制御装置150をマスタ表示装置100に含める構成としてもよい。
【0061】
以上、詳述したように、本実施の形態に係るマルチディスプレイの制御方法及びそのプログラムは、タッチパネル10と表示部20とを有するマスタ表示装置100と、表示部を有する(少なくとも1つの)スレーブ表示装置200、300、400と、を備えるマルチディスプレイに対して、マスタ表示装置100のタッチパネル10からの入力に基づいてマスタ表示装置100およびスレーブ表示装置200、300、400の表示に係る制御を行うマルチディスプレイの制御方法(あるいは、マルチディスプレイの制御プログラム)であり、マスタ表示装置100から所望のスレーブ表示装置(200、300、400のいずれか)への表示の移動の入力を検知するステップ(ステップS101)と、マスタ表示装置100の現在の画面表示に係る画像情報を取得し、取得した画像情報を所望のスレーブ表示装置(200、300、400のいずれか)に送出するステップ(ステップS102とステップS103)と、を含むものである。これにより、プレゼンテーターが表示装置間を移動することなく、他の表示装置への画面表示の切り替えや、表示したデータの編集を容易且つ直感的に行うことができる。
【0062】
また、本実施の形態に係るマルチディスプレイの制御装置は、タッチパネル10と表示部20とを有するマスタ表示装置100と、表示部を有する(少なくとも1つの)スレーブ表示装置200、300、400と、マスタ表示装置100およびスレーブ表示装置200、300、400と接続して、マスタ表示装置100のタッチパネル10からの入力に基づいてマスタ表示装置100およびスレーブ表示装置200、300、400の表示に係る制御を行う制御装置150と、を備えるので、プレゼンテーターが表示装置間を移動することなく、他の表示装置への画面表示の切り替えや、表示したデータの編集を容易且つ直感的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】複数の表示装置を縦横に配置したマルチディスプレイの従来構成例を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るマルチディスプレイの制御装置を使用したマルチディスプレイの一例を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るマルチディスプレイの制御装置の機能ブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るマルチディスプレイの制御方法における制御手順を示すフローチャートである。
【図5】図4のフローチャートに示す制御動作手順が実行された際のマスタ表示装置およびスレーブ表示装置の画面表示の変化の様子(a),(b)を示す模式図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るマルチディスプレイの制御方法における制御手順を示すフローチャートである。
【図7】図6のフローチャートに示す制御動作手順が実行された際のマスタ表示装置およびスレーブ表示装置の画面表示の変化の様子(a),(b),(c)を示す模式図である。
【図8】図6のフローチャートに示す制御動作手順が実行された際のマスタ表示装置およびスレーブ表示装置の画面表示の変化の様子(a),(b),(c)を示す模式図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るマルチディスプレイの制御方法における制御手順を示すフローチャートである。
【図10】図9のフローチャートに示す制御動作手順が実行された際のマスタ表示装置およびスレーブ表示装置の画面表示の変化の様子(a),(b)を示す模式図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係るマルチディスプレイの制御方法における制御手順を示すフローチャートである。
【図12】図11のフローチャートに示す制御動作手順が実行された際のマスタ表示装置およびスレーブ表示装置の画面表示の変化の様子(a),(b),(c)を示す模式図である。
【図13】図11のフローチャートに示す制御動作手順が実行された際のマスタ表示装置およびスレーブ表示装置の画面表示の変化の様子(a),(b),(c)を示す模式図である。
【図14】画面上にGUIアイコンを表示して画面表示の移動を実行する例を示す模式図である。
【図15】タッチパネル上の特定の操作で画面表示の移動を実行する例を示す模式図である。
【図16】タッチパネル上の特定の操作で画面表示の移動を実行する例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0064】
10 タッチパネル
20 表示部
100 マスタ表示装置
150 制御装置
151 入力検知部
152 表示切替部
153 画像取得部
154 画像送出・送出停止部
155 表示最小化・最大化部
156 表示履歴記憶部
157 オペレーティングシステム
158 アプリケーション
200,300,400 スレーブ表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルと表示部とを有するマスタ表示装置と、表示部を有する少なくとも1つのスレーブ表示装置と、を備えるマルチディスプレイに対して、前記マスタ表示装置のタッチパネルからの入力に基づいて前記マスタ表示装置および前記スレーブ表示装置の表示に係る制御を行うマルチディスプレイの制御方法であって、
前記マスタ表示装置から所望の前記スレーブ表示装置への表示の移動の入力を検知するステップと、
前記マスタ表示装置の現在の画面表示に係る画像情報を取得し、取得した画像情報を所望の前記スレーブ表示装置に送出するステップと、を含むことを特徴とするマルチディスプレイの制御方法。
【請求項2】
さらに、前記マスタ表示装置の前記現在の画面表示を最小化するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載のマルチディスプレイの制御方法。
【請求項3】
さらに、所望の前記スレーブ表示装置の現在の画面表示に係る画像情報を、前記マスタ表示装置に送出するステップと、
所望の前記スレーブ表示装置の現在の画面表示に係る画像情報の送出を停止するステップと、を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のマルチディスプレイの制御方法。
【請求項4】
さらに、所望の前記スレーブ表示装置に、前記現在の画面表示の一つ前の画面表示に係る画像情報を送出するステップを含むことを特徴とする請求項3に記載のマルチディスプレイの制御方法。
【請求項5】
さらに、前記マスタ表示装置および前記スレーブ表示装置の画面表示の履歴に係る情報を時系列で記憶するステップを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のマルチディスプレイの制御方法。
【請求項6】
タッチパネルと表示部とを有するマスタ表示装置と、表示部を有する少なくとも1つのスレーブ表示装置と、を備えるマルチディスプレイに対して、前記マスタ表示装置のタッチパネルからの入力に基づいて前記マスタ表示装置および前記スレーブ表示装置の表示に係る制御の各手順をコンピュータに実行させるためのマルチディスプレイの制御プログラムであって、
前記マスタ表示装置から所望の前記スレーブ表示装置への表示の移動の入力を検知するステップと、
前記マスタ表示装置の現在の画面表示に係る画像情報を取得し、取得した画像情報を所望の前記スレーブ表示装置に送出するステップと、を含むことを特徴とするマルチディスプレイの制御プログラム。
【請求項7】
タッチパネルと表示部とを有するマスタ表示装置と、
表示部を有する少なくとも1つのスレーブ表示装置と、
前記マスタ表示装置および前記スレーブ表示装置と接続して、前記マスタ表示装置のタッチパネルからの入力に基づいて前記マスタ表示装置および前記スレーブ表示装置の表示に係る制御を行う制御装置と、を備えることを特徴とするマルチディスプレイ装置。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記マスタ表示装置から所望の前記スレーブ表示装置への表示の移動の入力と、所望の前記スレーブ表示装置から前記マスタ表示装置への表示の移動の入力と、を検知する入力検知部と、
前記マスタ表示装置の現在の画面表示に係る画像情報を取得する画像取得部と、
取得した画像情報を所望の前記スレーブ表示装置に送出し、所望の前記スレーブ表示装置の現在の画面表示に係る画像情報を、前記マスタ表示装置に送出し、所望の前記スレーブ表示装置の現在の画面表示に係る画像情報の送出を停止する画像送出・送出停止部と、を有することを特徴とする請求項7に記載のマルチディスプレイ装置。
【請求項9】
前記マスタ表示装置の前記現在の画面表示を最小化又は最大化する表示最小化・最大化部を有することを特徴とする請求項8に記載のマルチディスプレイ装置。
【請求項10】
前記マスタ表示装置および前記スレーブ表示装置の画面表示の履歴に係る情報を時系列で記憶する表示履歴記憶部を有することを特徴とする請求項8又は9に記載のマルチディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−198734(P2009−198734A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39519(P2008−39519)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(505440789)パイオニアソリューションズ株式会社 (33)
【Fターム(参考)】