説明

マルチトラックデータ編集システム

【課題】 複数のトラックデータの編集者が離れた場所にいても、特定のマルチトラックデータを容易に編集できるシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】 マルチトラックデータを記憶したコンピュータSと、このコンピュータに通信Nを介して接続した複数の端末1とを備え、上記端末1は、コンピュータSに記憶されたマルチトラックデータをダウンロードする機能と、マルチトラックデータを編集する機能と、この編集したマルチトラックデータをコンピュータSにアップロードする機能とを備え、上記コンピュータSは、端末1から送信された編集済みのマルチトラックデータを記憶する機能とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、それぞれデータを記録可能な複数のトラックからなるマルチトラックデータを編集するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のトラックを有するマルチトラックデータは、例えば、トラックごとにドラム、ベース、ギター、キーボード、ボーカルなどを録音したり、伴奏とメロディーとを別々のトラックに録音したりして作成する。このようなマルチトラックデータを再生する場合は、複数のトラックデータを合わせた形で同時に再生し、1つの音楽として楽しむことができるものである。
また、特定のトラックのみを再生して、それを楽しんだり、再生したトラックデータに、再生しないトラックのパートを実際に演奏して合わせて楽しんだりすることもできる。
このようなマルチトラックデータを作成するために、複数のメンバーで個々のトラックのデータを個別に作成・編集することがある。例えば音楽データの場合、各パートの演奏を担当する者が、対応するトラックに自分のパートの演奏を録音することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−017706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、各トラックは個別に編集されるが、これらのトラックを備えたマルチトラックデータが全体として一つの音楽になるように仕上げるためには、他のパートの演奏を聴いたり、他のデータ作成者と打ち合わせしたりすることが必要である。
ところが、複数の編集者が同じ場所に集まることが難しい場合がある。
このように、同じ場所に集まることができない場合、例えば、離れた場所にいる編集者間で、メールなどでトラックデータを送信し、各編集者が担当トラックのデータを編集し、最終的なものとして完成させる方法が考えられる。
【0005】
この場合、最新のマルチトラックデータに対して各編集者が担当トラックのみを編集し、更新版として一つのマルチトラックデータを完成させることが望まれるが、このようなことが確実に行なわれるという保証はない。例えば、メールでマルチトラックデータを受信した編集者が、自分の担当トラック以外のトラックデータを編集してしまい、誰かが更新したトラックを上書きしてしまうという可能性がある。
その結果、トラックごとに別々に編集された複数のマルチトラックデータのファイルができあがってしまうこともある。
【0006】
また、一つのマルチトラックデータをメールで送信しながら、各メンバーが担当のトラックを編集するようにした場合、メールの送信順序に合わせてトラックの編集順序が決められてしまう。さらに、一度編集したトラックを再編集したい場合には、他のメンバーにその旨を連絡してメール送信順を変えてデータを受け取るようするというような煩雑な手続が必要になる。
この発明は、複数のトラックデータの編集者が離れた場所にいても、特定のマルチトラックデータを容易に編集できるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、マルチトラックデータを記憶したコンピュータと、このコンピュータに通信を介して接続した複数の端末とを備え、上記端末は、コンピュータに記憶されたマルチトラックデータをダウンロードする機能と、マルチトラックデータを編集する機能と、この編集したマルチトラックデータをコンピュータにアップロードする機能とを備え、上記コンピュータは、端末からアップロードされた編集済みのマルチトラックデータを記憶する機能とを備えたことを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、コンピュータは、特定の複数の端末からなる端末グループを記憶する機能と、この端末グループを構成する端末のメンバー資格を認定する機能と、メンバー資格を有する端末から、上記端末グループがかかわるマルチトラックデータの要求があったときそのダウンロードおよびアップロードを許可する機能と、メンバー資格を有しない端末から上記特定のマルチトラックデータの要求があったときそのダウンロードおよびアップロードを拒否する機能とを備えたことを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、上記端末が、当該コンピュータに記憶された特定のマルチトラックデータにおけるトラックのうち、特定のトラックを指定するトラック指定信号をコンピュータに送信する機能とを備え、上記コンピュータが、上記トラック指定信号が入力されたとき、上記端末を特定する機能と、その端末の上記メンバー資格の有無を判定する機能と、上記端末がメンバー資格を有すると判定したとき、上記指定信号に対応するトラックが端末グループの他の端末で指定中であるか否かを判定する機能と、上記指定信号に対応するトラックが上記端末グループの他の端末で指定中であると判定したとき、当該トラックの指定を拒否する機能と、上記指定信号に対応するトラックが上記端末グループの他の端末で指定中でないと判定したとき、上記指定信号に対応するトラックを指定中とするとともに、この指定中のトラックに上記端末を対応付けて記憶する機能と、上記端末グループの端末からアップロードされた特定のマルチトラックデータにおけるトラックのうち、上記マルチトラックデータをアップロードした端末が指定中のトラックのみを、上記特定のマルチトラックデータに上書きして記憶する機能とを備えたことを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、上記第3の発明を前提とし、上記端末が、上記トラック指定信号に対応したトラックの指定を解除する解除信号を送信する機能を備え、上記コンピュータが、上記端末から上記指定解除信号が入力されたとき、上記端末が、指定解除信号に対応する特定のトラックを指定中の端末であるか否か判定する機能と、当該端末が、上記特定のトラックを指定中の端末であると判定したとき、入力された解除信号に基づいてトラックの指定中を解除する機能とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1〜第4の発明によれば、マルチトラックデータを編集する端末とは別に、マルチトラックデータを管理するコンピュータを備えたので、個々の端末側では他の端末での編集状況などを考慮せずに、編集したいトラックを編集でき、全体として目的にあったマルチトラックデータを容易に作成することができる。
第2の発明によれば、一つのマルチトラックデータを作り上げるためのメンバーを制限して、編集資格がないメンバーによるデータの編集を自動的に排除することができる。仲間同士でのマルチトラックデータの作成が効率的にできるようになる。
【0012】
第3の発明によれば、特定のトラックに対して指定信号を入力した端末のみが、そのトラックデータの書き換えが可能になる。
もしも、誰でも同時に一つのトラックを編集でき、そのデータでマルチトラックデータが次々に更新されるようにすれば、編集したメンバーは、自分が編集したデータを確認する間もなく、十分に楽しめないこともある。しかし、この発明のように、指定信号を入力した端末以外で編集されたデータでは、トラックデータが上書きされないようにすれば、先にデータを編集したメンバーを満足させることができる。
【0013】
第4の発明によれば、特定のトラックの指定を解除することによって、他の端末による編集を可能にすることができる。つまり、一度編集したデータをさらに編集することが可能になる。
また、先にトラックを指定した端末からトラックの指定を解除できるので、先にデータの編集をしたメンバーが他者による編集を可能にするタイミングを決めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は第1実施形態のシステム構成図である。
【図2】図2は第1実施形態のサーバーが記憶するグループ情報の例を示したテーブルである。
【図3】図3は第1実施形態の処理部の処理手順を示したフローチャートである。
【図4】図4は第2実施形態のシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1,図2に示す第1実施形態は、この発明のマルチトラックデータ編集システムを、音楽データの編集に適用したものである。
図1に示すこのシステムは、インターネットなどの通信ネットNに接続したサーバーSと、上記通信ネットNを介してサーバーSと通信可能な複数のユーザー端末1とを備えている。
上記サーバーSはこの音楽データ編集システムを提供するシステム管理者が管理するコンピュータであり、ユーザー端末1は、このシステムを利用して音楽用のマルチトラックデータを編集するグループメンバーである各ユーザーが用いる端末である。
【0016】
そして、複数のユーザーが、それぞれ自分が使用するユーザー端末1を通信ネットNに接続している。
上記ユーザーからなるグループメンバーは、もともとのバンド仲間でもよいし、このシステムを利用するユーザーとして登録してから結成したグループであってもよい。
また、各ユーザー端末1には、上記サーバーSからダウンロードしたマルチトラックデータを編集する機能を実行するためのアプリケーションプログラムを設定しておくものとする。
【0017】
上記サーバーSには、このシステムでの編集対象となるマルチトラックデータを記憶したマルチトラックデータ記憶部2と、上記ユーザー端末1を使用するユーザーの情報を記憶したユーザー情報記憶部3と、これらの情報を処理したり、通信ネットNを介しての通信を制御したりする処理部4とを備えている。
上記マルチトラックデータ記憶部に記憶されたマルチトラックデータは、複数のトラックで一つのデータファイルを構成したもので、トラックごとにそのデータを編集できるものである。
【0018】
上記マルチトラックデータ記憶部2ではマルチトラックデータのファイルに、そのファイルを特定する情報としてファイルナンバーを対応付けている。
さらに、後で説明するトラック指定信号でトラックが指定されたとき、トラックと指定信号とを対応付けたデータも、上記マルチトラックデータ記憶部2に記憶させるようにしている。そして、このトラック指定信号にはそれを送信したユーザーのユーザーIDあるいは端末IDを対応づけるようにしている。
【0019】
また、上記ユーザー情報記憶部3には、このシステムを利用するユーザーを特定するユーザーIDのほか、複数のユーザーで構成するバンドなどのグループ情報を記憶している。
上記グループ情報には、グループIDにそのメンバーのユーザーIDと、そのグループで編集するマルチトラックデータのファイルナンバーを対応付けたデータを含んでいる。
例えば、図2に示すテーブルのように、グループID(G1,G2・・・)のそれぞれに、ユーザーIDと、ファイルナンバーとを対応付けたデータがグループ情報である。このテーブルに含まれるファイルナンバーは、上記マルチトラックデータ記憶部2が記憶しているマルチトラックデータのファイルに対応したものである。
そして、各グループのメンバーは、自分のグループに対応付けられたマルチトラックデータのみを編集することができるようにしている。
【0020】
なお、一人のメンバーが複数のグループに属してもよいし、一つのグループに複数のマルチトラックデータを対応付けてもよい。
また、上記マルチトラックデータ記憶部2が記憶しているマルチトラックデータは、予め、システム管理者側で用意して、ユーザーが、自分のグループで編集するデータとして選択するようにしてもよいし、特定のユーザーがサーバーSにアップロードしてマルチトラックデータ記憶部2に記憶させるようにしてもよい。
【0021】
次に、このシステムで音楽データを編集する手順を、図3に示すフローチャートに従って詳しく説明する。
ここではユーザーのグループの登録や、マルチトラックデータの登録は済んでいるものとし、例えば、グループG1のメンバーがマルチトラックデータのファイルF1の、特定のトラックを編集する場合について説明する。なお、図3はサーバーSの処理部4の処理を示したフローチャートである。
【0022】
まず、ユーザー端末1からサーバーSにアクセスする。この際、ユーザー端末1からはユーザーIDとパスワードを入力する。
サーバーSの処理部4は、ステップS1でこれらユーザーID及びパスワードを受信し、ステップS2で認証する。上記処理部4は、認証できない場合にはステップS3に進み、認証できない旨をユーザー端末1に通知し、処理を終了する(ステップS9)。
なお、上記ユーザーIDは、このシステムの利用者として登録されているユーザーかどうかを認証するためのものであるが、ユーザーIDの代わりに、端末IDを用いるようにしてもよいし、ユーザーIDと端末IDとの両方を用いるようにしてもよい。
【0023】
ステップS2で認証できた場合には、ユーザー端末1から入力されたデータによってステップS4,S11,S15のいずれかに進む。
ユーザーは、特定のトラック、例えば自分が担当するパートを編集したい場合、そのトラックを指定するトラック指定信号をユーザー端末1から送信する。
処理部4はステップS4に進み、トラック指定信号を受信する。このトラック指定信号は、どのファイルのどのトラックなのか特定する信号である。例えば、「ファイルF1のトラック5」を特定する情報からなる。なお、ユーザーが指定可能なトラックは、予めそのユーザーのグループに対応付けられたファイルのものでなければならない。
【0024】
次に、処理部4は、ステップS5で、上記受信したトラック指定信号のトラックが、当該ユーザーのグループに対応したものかどうかを判断する。具体的には、受信したトラック指定信号のトラックが、図2に示すテーブルにおいて、ステップS1で受信したユーザーIDと対応しているか否かを判断することになる。
ステップS5でトラックとユーザーとが対応しなかった場合には、処理部4はステップS10でマルチトラックデータのファイルのダウンロード拒否を上記ユーザー端末1に通知してからステップS9で処理を終了する。
【0025】
処理部4は、上記ステップS5で受信したトラック指定信号に対応するトラックがユーザーIDと対応していると判断した場合には、ステップS6に進み、上記トラックがすでに指定中か否かを判断する。トラックが指定中か否かは、マルチトラックデータ記憶部2で、上記トラックに指定信号が対応付けられているかどうかに基づいて判断する。
【0026】
もし、そのトラックが指定中の場合にはステップS10へ進みファイルのダウンロード拒否をユーザー端末1へ通知し、指定中でなければステップS7へ進む。
処理部4は、ステップS7で上記トラックに指定信号を対応付けてマルチトラックデータ記憶部2に記憶させるとともに、ステップS8で上記トラックを含むマルチトラックデータのファイルを上記端末1にダウンロードさせる。
これにより、特定のトラックが同時に複数のユーザーに指定されることはなくなり、指定したトラックを含むマルチトラックデータのファイルがユーザー端末1にダウンロードされる。
【0027】
なお、上記ステップS6で、トラックが指定中の場合、その指定信号対応付けられたユーザーIDが、上記ステップS1で受信したユーザーIDと一致するかどうかを判断するようにして、一致した場合には、同一ユーザーが同じトラックを指定したまま、再び指定信号を発信したと判断するようにしてもよい。そして、同一ユーザーが、トラック指定を解除しないまま再指定しようとした場合には、ステップS10でファイルのダウンロードを拒否する代わりに、ユーザー自身で指定中であることや指定拒否を通知するエラーメッセージを送信するようにしてもよい。
また、同じユーザーに対しては、再指定を許可し、ステップS6からステップS7へ進むようにしても良い。
【0028】
一方、トラックを指定してファイルをダウンロードしたユーザー端末1では、ダウンロードしたマルチトラックデータを、編集用のアプリケーションプログラムによって編集することができる。このとき、ユーザーは、上記指定した自分のパート以外のトラックも編集できる。但し、後で説明するが、ユーザーが指定したトラック以外の編集結果はサーバーSのマルチトラックデータに反映されない。
【0029】
ユーザーが、ユーザー端末1でトラックデータを編集したら、編集したデータファイルをサーバーSにアップロードするが、このときの処理部4の処理も、図3のフローチャートに示している。但し、編集したデータをアップロードする場合の処理は、ステップS2からステップS11へ進む。
つまり、ユーザーは、ユーザー端末1からユーザーIDとパスワードとを用いてサーバーSにアクセスし、自分の担当パートのトラックを編集したマルチトラックデータのファイルを送信する。
処理部4は、ステップS11で、ユーザー端末1から送信された編集済みのマルチトラックデータのファイルを受信する。
【0030】
処理部4は、ユーザー端末1からファイルを受信したら、ステップS12で、送信されたファイルの指定トラックとユーザーIDとが対応しているか否かを判断する。具体的には、処理部4が受信したファイルのファイルナンバーからマルチトラックデータ記憶部2が記憶しているファイルを特定し、そのファイルのトラックのうち、上記ユーザーによって指定されたトラックがどれかを特定する。このように指定トラックが特定できない場合、すなわち、指定トラックとユーザーIDとが対応していない場合には、ステップS14に進み、先に受信したファイルを消去して処理を終了する(ステップS9)。
【0031】
もし、上記ステップS12でユーザーIDと指定トラックとが対応していると判断した場合にはステップS13へ進み、マルチトラックデータ記憶部2が記憶しているマルチトラックデータの上記指定トラックのみを更新する。
以上の手順によって、ユーザーが指定したトラックを編集することができ、その編集データがサーバーSのマルチトラックデータ記憶部2に記憶されることになる。つまり、ユーザーはサーバーS上のマルチトラックデータの指定トラックを編集できることになる。
【0032】
なお、この実施形態では、ユーザー端末1内で、上記指定トラック以外のトラックを編集することは可能であるが、指定トラック以外の編集データはサーバーSが記憶しているマルチトラックデータには反映されない。ここでは、サーバーSが記憶しているマルチトラックデータのファイルに反映されない場合は編集できたとは言わないことにする。
【0033】
上記のように、各ユーザーは、特定のトラックを指定しなければマルチトラックデータを編集することができないことになる。また、すでに指定信号が対応付けられたトラックは指定することができないようにして、同一のトラックが同時に編集できないようにしている。
そのため、一旦編集したデータを、他のユーザーが再度編集できるようにするためには、トラックの指定を解除する必要がある。
【0034】
次に、トラックの指定を解除する手順を説明する。
その手順は、図3に示すフローチャートのステップS1からステップS15へ進む処理である。なお、このトラック指定の解除は、そのトラックを指定したユーザーのみができるものとする。
上記処理部4は、ステップS1,S2で、ユーザー端末1のユーザーの認証を行ない、ステップS15でトラック指定の解除信号を受信する。このトラック指定の解除信号には、指定を解除すべきトラックを特定する情報を含んでいる。
処理部4は、ステップS16で、上記受信した解除信号に対応したユーザーIDと指定トラックとが対応しているか否かを、上記マルチトラックデータ記憶部2が記憶しているデータに基づいて判断する。
【0035】
上記ステップS16で、ユーザーIDと指定トラックとが対応していないと判断した場合には、ステップS18に進む、処理部4はトラックの指定解除拒否をユーザー端末1へ通知して、処理を終了する(ステップS9)。
一方、ユーザーIDと指定トラックとが対応していると判断した場合には、ステップS17へ進み、マルチトラックデータ記憶部2が記憶しているトラックの指定を解除してステップS9へ進む。
これにより、一度編集したトラックを、他のユーザーが再度指定して再編集することも可能になる。
なお、上記のようにして編集し、サーバーSに記憶されたマルチトラックデータは、上記した手順とは別の手順によってユーザー端末1がダウンロードし、再生することができるようにしている。
【0036】
以上のように、この実施形態のシステムでは、例えば、音楽用のマルチトラックデータを複数のユーザーによって編集し、完成させることができる。
特に、この第1実施形態は、トラックを指定しなければデータ編集ができないようにしているので、一つのトラックが同時に複数のユーザーに編集されることがない。
また、一度指定したトラックの指定を解除することによって、他のユーザーによる再編集も可能である。
【0037】
但し、トラック指定することなく、自由に編集可能にしてサーバーSにアップロードできるようにしても良い。その場合には、特定のトラックについて複数の編集データが同時にできてしまうことがある。異なるデータがほぼ同時にサーバーSにアップロードされれば、マルチトラックデータが立て続けに更新され、先に編集したデータが、サーバーS上でグループメンバーにほとんど公開されなかったことになってしまうこともある。
いずれにしても、マルチトラックデータや、編集のルールをサーバーSが管理するようにすれば、ユーザー端末1を使用するユーザーは、煩雑な作業をする必要なく、グループメンバーによって目的のマルチトラックデータを完成することができるようになる。
【0038】
なお、上記第1実施形態では、音楽データを複数のバンドメンバーによって編集して、一つの音楽を完成させる例を説明したが、このシステムは音楽データ以外にも適用できる。例えば、吹き替えのデータを作成するため、複数の声優ごとにトラックを割り当てることができる。各声優は、自分のトラックを指定してマルチトラックデータをダウンロードし、指定したトラックに担当部分の台詞を録音してアップロードすれば、サーバーSで全ての声優による吹き替えデータを完成させることができる。
【0039】
図4は、この発明のシステムを英会話の個人レッスンに適用した第2実施形態のシステム構成図である。
この第2実施形態では、サーバーSと、英会話レッスンの生徒が使用する生徒用端末5と、先生が使用する先生用端末6とを通信ネットNを介して接続可能にしている。この第2実施形態では、上記生徒用端末5及び先生用端末6が、マルチトラックデータをダウンロードして編集するこの発明の端末である。
また、サーバーSは、上記第1実施形態と同様に、マルチトラックデータ記憶部2とユーザー情報記憶部3とを備えている。
【0040】
この第2実施形態では、マルチトラックデータ記憶部2が記憶しているマルチトラックデータは英会話の勉強用のものであり、先生が先生用端末6で説明や、質問、会話などの教材を録音するトラックと、生徒が回答などを録音するトラックとを備えている。
そして、上記マルチトラックデータは、それぞれの生徒用に用意され、生徒のユーザーIDに対応付けられている。
このデータファイルと生徒との対応関係は、ユーザー情報記憶部3に生徒のユーザーIDとファイルナンバーとの対応テーブルとして記憶させておく。この対応テーブルは、図2に示すテーブルにおいて、一つのグループのメンバーを、先生と一人の生徒からなるデータにしたものである。
なお、この実施形態においても、一つのグループに複数のマルチトラックデータを対応付けてもよい。例えば、シーン別の会話の教材を別のマルチトラックデータとして、一人の生徒が複数の教材の勉強をするようにしてもよい。
【0041】
一方、生徒用端末5と先生用端末6とは、上記第1実施形態のユーザー端末1と同様の機能を備えている。
すなわち、生徒用端末5と先生用端末6から、サーバーSにユーザーIDとパスワードを用いてアクセスし、サーバーSの処理部4で認証されたら、編集対象のマルチトラックデータのファイルを生徒用端末5あるいは先生用端末6にダウンロードすることができる。
上記生徒用端末5は、サーバーSから自分の教材である特定のマルチトラックデータにおける生徒用のトラックを指定してダウンロードし、指定したトラックを編集してから、それをサーバーSへアップロードする。
【0042】
そして、先生用端末6は、生徒用端末5で編集されたマルチトラックデータの先生用のトラックを指定して、生徒用端末で編集されたマルチトラックデータをダウンロードする。そして、指定したトラックを編集してから、それをサーバーSへアップロードする。
この様な手順を、生徒が英会話を習得するまで繰り返す。
なお、この第2実施形態では、生徒用のトラックと先生用のトラックとを別々にしているので、それぞれ、編集すべきトラックを指定し、生徒及び先生の編集が終了するまでの間、トラックの指定を解除しないようにしておけば、他者によってトラックデータが編集されてしまうことがない。
【0043】
なお、上記のように出たの編集を繰り返す場合、特定のトラックを修正するだけでなく、新たな別のトラックに回答や説明、手本などを編集(録音)するようにしてもよい。
そして、学習に応じて複数のトラックが録音された場合、その過程において必要なトラックのみを再生することで、効率的な学習ができる。
【0044】
さらに、この第2実施形態では、マルチトラックデータの教材が生徒ごとに用意されている。そのため、処理部4はユーザーIDとファイルナンバーとの対応関係が正しいか否かを判定して、正しい場合にのみマルチトラックデータのファイルのダウンロードを許可するようにすれば、同じトラックデータを他の生徒が編集してしまうことは起こらない。そのため、他の生徒によってトラックデータが編集されることを防止するだけならば、生徒用端末5や先生用端末6からトラック指定信号を送信する必要はない。
【0045】
また、先生用のトラックを生徒で編集されないようにするためには、先生用端末6からトラック指定信号によって先生用のトラックを指定しておくことが好ましいが、予め先生用のトラックは生徒が編集しないというルールを人為的に決めておけば、トラック指定信号は不要になる。この第2実施形態では、同一グループのメンバーが、先生と生徒と一人だけなので、上記のようなルールに従うようにしても特にユーザーの作業が煩雑になることはないし、間違いも少ないと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
この発明は、マルチトラックデータを利用した音楽データや、吹き替え、ナレーションデータの作成のほか、学習環境の提供にも利用できるものである。
【符号の説明】
【0047】
S サーバー
N 通信ネット
1 ユーザー端末
2 マルチトラックデータ記憶部
4 処理部
5 生徒用端末
6 先生用端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチトラックデータを記憶したコンピュータと、このコンピュータに通信を介して接続した複数の端末とを備え、上記端末は、コンピュータに記憶されたマルチトラックデータをダウンロードする機能と、マルチトラックデータを編集する機能と、この編集したマルチトラックデータをコンピュータにアップロードする機能とを備え、上記コンピュータは、端末からアップロードされた編集済みのマルチトラックデータを記憶する機能とを備えたマルチトラックデータ編集システム。
【請求項2】
コンピュータは、特定の複数の端末からなる端末グループを記憶する機能と、この端末グループを構成する端末のメンバー資格を認定する機能と、メンバー資格を有する端末から、上記端末グループがかかわるマルチトラックデータの要求があったときそのダウンロードおよびアップロードを許可する機能と、メンバー資格を有しない端末から上記特定のマルチトラックデータの要求があったときそのダウンロードおよびアップロードを拒否する機能とを備えた請求項1記載のマルチトラックデータ編集システム。
【請求項3】
上記端末は、当該コンピュータに記憶された特定のマルチトラックデータにおけるトラックのうち、特定のトラックを指定するトラック指定信号をコンピュータに送信する機能とを備え、上記コンピュータは、上記トラック指定信号が入力されたとき、上記端末を特定する機能と、その端末の上記メンバー資格の有無を判定する機能と、上記端末がメンバー資格を有すると判定したとき、上記指定信号に対応するトラックが端末グループの他の端末で指定中であるか否かを判定する機能と、上記指定信号に対応するトラックが上記端末グループの他の端末で指定中であると判定したとき、当該トラックの指定を拒否する機能と、上記指定信号に対応するトラックが上記端末グループの他の端末で指定中でないと判定したとき、上記指定信号に対応するトラックを指定中とするとともに、この指定中のトラックに上記端末を対応付けて記憶する機能と、上記端末グループの端末からアップロードされた特定のマルチトラックデータにおけるトラックのうち、上記マルチトラックデータをアップロードした端末が指定中のトラックのみを、上記特定のマルチトラックデータに上書きして記憶する機能とを備えた請求項2に記載のマルチトラックデータ編集システム。
【請求項4】
上記端末は、上記トラック指定信号に対応したトラックの指定を解除する解除信号を送信する機能を備え、上記コンピュータは、上記端末から上記指定解除信号が入力されたとき、上記端末が、指定解除信号に対応する特定のトラックを指定中の端末であるか否か判定する機能と、当該端末が、上記特定のトラックを指定中の端末であると判定したとき、入力された解除信号に基づいてトラックの指定中を解除する機能とを備えた請求項3に記載のマルチトラックデータ編集システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−98320(P2012−98320A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243244(P2010−243244)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(598123895)株式会社アストラ (2)
【Fターム(参考)】