説明

マルチホップ無線アラームシステム

【課題】 既存の有線通信網がない箇所や利用できない箇所で広範囲にアラーム情報の検知を行ってそのアラーム情報を各ノードに伝達する場合に、容易に設置可能で、かつ、安価に構成可能なマルチホップ無線アラームシステムを提供すること。
【解決手段】 検知されたアラーム情報が入力されるアラーム情報入力部8と、アラーム情報を出力するアラーム出力部と、情報を送受信する無線通信部と、情報を送信するタイムスロットを決定するタイマーおよび乱数発生部と、制御部とをそれぞれ有する複数のノード1〜4によって構成され、ノード1はアラーム情報が入力されると、アラーム出力部よりアラームを出力し、アラーム情報と共にノード情報を無線通信部より送信する。ノード2および3はアラーム情報とノード情報を無線通信部で受信し、アラームを出力し、アラーム情報とノード情報を無線通信部より送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマルチホップ無線通信により、防災や防犯その他の目的で異常情報や危険情報などのアラーム情報を送受信するマルチホップ無線アラームシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
火災等に対する防災や防犯等の目的で異常な情報を検知した時にアラーム情報を監視点などのノードに通知するアラームシステムとして、従来から有線および無線による通信ネットワークを構築して情報の送受を行うシステムが使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、集合住宅のインターホン同士で情報通信する機能を持たせて、1つの住戸に発生した警報信号を他の住戸に無線または有線通信手段によって送信する警報通知システムが示されている。しかし、このシステムではアラーム情報(警報信号)を、無線通信により無線通信可能範囲内の他のノード(住戸)に伝達することを可能にしているが、アラーム情報を受信したノードはそのアラーム情報の出力のみ行い、さらに他のノードにそのアラーム情報を送信するシステムとはなっていない。
【0004】
また、特許文献2には、監視領域内に分散配置された複数のモジュール間でアドホックネットワークを自律形成し、1つのモジュールで検出された火災検知情報を上記アドホックネットワークを介して各モジュール間を伝送し収集する火災監視システムが示されている。すなわち、複数のノード(モジュール)間にアドホックネットワークを形成することによってアラーム情報(火災検知情報)を伝達することを可能にしている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−258525号公報
【特許文献2】特開2006−268162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のシステムにおいては、広い範囲にアラーム情報を伝達するためにインターホン同士で情報通信する機能を有線通信で行う場合には配線などの設置コストが大きくなってしまう。一方、無線通信により行う場合でも発信拠点との間のアラーム情報を伝達できる通信可能範囲が限られその範囲内のノードとしか通信できないので、その範囲を拡大しようとすると設備の設置コストが増大してしまう。
【0007】
特許文献2のシステムにおいては、一般的に複数のノード間にアドホックネットワークを形成するために複雑なプロコトルを有するアドホックネットワークシステムの実装費用が必要となり、やはり大きなコストがかかってしまう。
【0008】
そこで本発明の課題は、既存の有線通信網がない箇所や利用できない箇所で広範囲にアラーム情報の検知を行ってそのアラーム情報を各ノードに伝達する場合に、容易に設置可能で、かつ、安価に構成可能なマルチホップ無線アラームシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するため、本発明のマルチホップ無線アラームシステムは、検知されたアラーム情報が入力されるアラーム情報入力部と、該入力されたアラーム情報を出力するアラーム出力部と、前記アラーム情報を含む情報を送受信するための手段を有する無線通信部と、前記情報を送信するタイムスロットを決定するためのタイマーおよび乱数発生部と、前記アラーム出力部および前記無線通信部を制御する制御部とをそれぞれ有する複数のノードによって構成されるシステムであって、上記アラーム情報入力部よりアラーム情報が入力された前記ノードは前記アラーム出力部からアラームを出力すると共に前記アラーム情報を前記無線通信部より他の前記ノードに送信し、該他の前記ノードは前記アラーム情報を前記無線通信部により受信して、前記アラーム出力部からアラームを出力すると共に前記アラーム情報の受信時刻と前記乱数発生部より取得した乱数によって無線送信するタイムスロットを決定し、該タイムスロットに前記アラーム情報を前記無線通信部より他の前記ノードに送信することを特徴とする。
【0010】
また、前記ノードはアラーム停止情報が入力されるアラーム停止情報入力部を持ち、該アラーム停止情報入力部より前記アラーム停止情報が入力された前記ノードはアラーム出力を停止すると共に前記アラーム停止情報を前記無線通信部より他の前記ノードに送信する手段を持ち、前記アラーム停止情報を前記無線通信部より受け取った他の前記ノードは、前記アラーム出力部からのアラーム出力を停止し、前記アラーム停止情報の受信時刻と前記乱数発生部より取得した乱数によって無線送信するタイムスロットを決定し、該タイムスロットに前記アラーム停止情報を前記無線通信部より他の前記ノードに送信してもよい。
【0011】
また、前記アラーム情報または前記アラーム停止情報を送信するとき、前記アラーム情報またはアラーム停止情報が入力された前記アラーム情報入力部もしくはアラーム停止情報入力部を有する前記ノードのノード情報を併せて送信してもよい。
【0012】
ここでノードとはネットワーク上のコンピューターなどを意味するものであるが、必ずしもコンピューターに限らず、例えば通信プロトコルを処理できる専用のICを備えた装置や基地局等であってもよい。また、ノードは複数のネットワークに属していてもよい。また、無線通信部とは情報を無線によって送受信する手段を持つものを意味し、例えばアンテナを含めた無線モジュール、無線送受信回路等を意味する。アラーム情報入力部とは、スイッチやセンサ等に接続された電気的な入力回路であってもよく、また、検出されたセンサなどの出力に基づいて人間が入力するためのキーボードやマウス等の入力装置等であってもよい。アラーム出力部とは、ブザーやスピーカー等の音源、ランプ等の光源、コンピューターのディスプレイ等の表示装置を意味する。ノード情報とは、ノードを特定することができる情報で、ノード名やノード番号等、ノードを識別するための情報等を意味する。
【発明の効果】
【0013】
上記の構成により、本発明においては、既存の有線通信網がない箇所や利用できない箇所で広範囲にアラーム情報検知を行ってそのアラーム情報を各ノードに伝達する場合に、容易に設置可能で、かつ、安価に構成可能なマルチホップ無線アラームシステムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に図面を参照して、本発明によるマルチホップ無線アラームシステムの実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明によるマルチホップ無線アラームシステムの一実施の形態の基本構成を示す図であり、ノードが4つの場合の構成を示す図である。図1において、ノード1の無線通信可能範囲内にノード2とノード3が設置されており、ノード4はノード1の無線通信可能範囲外でノード3の無線通信可能範囲内に設置されている。
【0016】
図2は図1に示された各ノードの基本構成を示すブロック構成図である。各ノードは検知されたアラーム情報が入力されるアラーム情報入力部8と、入力されたアラーム情報を出力するアラーム出力部7と、アラーム情報を含む情報を送受信するための手段を有する無線通信部6と、前記情報を送信するタイムスロットを決定するためのタイマー12および乱数発生部11と、アラーム出力部7および無線通信部6を制御する制御部10、アラーム停止情報が入力されるアラーム停止情報入力部9および電源13をそれぞれ有している。だだし、ノード1〜4のアラーム出力部、アラーム情報入力部、アラーム停止情報入力部は同じデバイスである必要は無く、例えばノード1のアラーム出力部は警告を発生するブザーで、ノード4のアラーム出力部が液晶ディスプレイであってもかまわない。全ノードの内、少なくとも1つはノード情報をアラーム情報出力部に出力できることが望ましい。
【0017】
ノード1において、アラーム情報入力部8からアラーム情報が入力されたときの各ノードの情報伝達の動作を図3に示す。また、ノード1がアラーム情報入力部8よりアラーム情報を受け取った時のノード1の制御部10の制御フローを図5に、ノード2、3および4が無線通信部6よりアラーム情報を受信した時のノード2、3および4の制御部10の制御フローを図6にそれぞれ示す。図3および図5において、ノード1のアラーム情報入力部8からアラーム情報が入力されると(ステップS11)、ノード1はノード1のアラーム出力部7よりアラームを出力し(ステップS12)、そのアラーム情報と共にノード1のノード情報を無線通信部6より送信する(ステップS13)。
【0018】
図3および図6において、ノード1の通信可能範囲内に設置されているノード2とノード3はノード1より送信されたアラーム情報とノード1のノード情報を無線通信部6で受信し(ステップS21)、それぞれのノードはアラーム出力部7よりアラームを出力し(ステップS23)、制御部10は乱数発生部11より乱数を取得し(ステップS24)、タイマー12による受信時刻と上記乱数に基づいて送信タイムスロットを決定し、タイマー12に基づいてタイムスロットの時刻まで待った後に(ステップS25)、アラーム情報と共にノード1のノード情報を無線通信部6より送信する(ステップS26)。
【0019】
ノード3の通信範囲内に設置されているノード4はノード3より送信されたアラーム情報とノード1のノード情報を受信し(ステップS21)、アラーム出力部7よりアラームを出力し(ステップS23)、制御部10は乱数発生部11より乱数を取得し(ステップS24)、タイマー12による受信時刻と上記乱数に基づいて送信タイムスロットを決定し、タイマー12に基づいてタイムスロットの時刻まで待った後に(ステップS25)、アラーム情報を無線通信部6より送信する(ステップS26)。
【0020】
アラーム情報とノード1のノード情報を受信した各ノードは、アラーム出力部にノード1のノード情報を出力してもよい(ステップS23)。ノード2がノード3の無線通信可能範囲内にある場合、ノード2はノード3の無線通信部6からのアラーム情報を受け取るが、既にノード1よりアラーム情報を受け取りアラーム出力を行っているのでノード3からのアラーム情報を受け取ったときには現在の処理を継続するに留まる(ステップS22からステップS27への遷移)。
【0021】
同様にノード1においてアラーム停止情報入力部9からアラーム停止情報が入力されたときの各ノードの情報伝達の動作を図4に示す。ノード1がアラーム停止情報入力部9よりアラーム停止情報を受け取った時のノード1の制御部9の制御フローを図7に、ノード2、3および4が無線通信部6よりアラーム停止情報を受け取った時のノード2、3および4の制御部10の制御フローを図8にそれぞれ示す。
【0022】
図4および図7において、ノード1のアラーム停止情報入力部9からアラーム停止情報が入力されると(ステップS31)、ノード1はノード1のアラーム出力部7からのアラーム出力を停止し(ステップS32)、アラーム停止情報と共にノード1のノード情報を無線通信部6より送信する(ステップS33)。図4および図8において、ノード1の通信可能範囲内に設置されているノード2とノード3はノード1より送信されたアラーム停止情報とノード1のノード情報を無線通信部6で受信し(ステップS41)、それぞれのノードはアラーム出力部7からのアラーム出力を停止し(ステップS43)、制御部10は乱数発生部11より乱数を取得し(ステップS44)、タイマー12による受信時刻と上記乱数に基づいて送信タイムスロットを決定し、タイマー12に基づいてタイムスロットの時刻まで待った後に(ステップS45)、アラーム停止情報と共にノード1のノード情報を無線通信部6より送信する(ステップS46)。
【0023】
ノード3の通信範囲内に設置されているノード4はノード3より送信されたアラーム停止情報とノード1のノード情報を受信し(ステップS41)、アラーム出力部7からのアラーム出力を停止し(ステップS43)、制御部10は乱数発生部11より乱数を取得し(ステップS44)、タイマー12による受信時刻と上記乱数に基づいて送信タイムスロットを決定し、タイマー12に基づいてタイムスロットの時刻まで待った後に(ステップS45)、アラーム停止情報を無線通信部6より送信する(ステップS46)。
【0024】
アラーム停止情報とノード1のノード情報を受信した各ノードは、アラーム出力部にノード1のノード情報を出力してもよい(ステップS43)。ノード2がノード3の無線通信範囲内にある場合、ノード2はノード3の無線通信部6からのアラーム停止情報を受け取るが、既にノード1の無線通信部よりアラーム停止情報を受け取りアラーム出力を行っていないのでノード3からのアラーム停止情報を受け取ったときには現在の処理を継続するに留まる(ステップS42からステップS47への遷移)。
【0025】
前述の手順によって、それぞれの無線通信可能範囲が繋がっているノード全体にアラーム情報やアラーム停止情報を行き渡らせることが可能になる。また、従来のアドホックネットワークを構成する場合に比べて容易にネットワークを設置可能で、かつ、安価に構成できる。
【0026】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではないことは言うまでもなく、ノードの数や各ノードの構成は目的とするアラーム情報の種類、用途、通信範囲などに基づいて本発明の範囲内で任意に設計可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明によるマルチホップ無線アラームシステムの一実施の形態の基本構成を示す図。
【図2】各ノードの基本構成を示すブロック構成図。
【図3】アラーム情報が入力されたときの各ノードの情報伝達の動作を示す図。
【図4】アラーム停止情報が入力されたときの各ノードの情報伝達の動作を示す図。
【図5】アラーム情報を受け取った時のノードの制御部の制御フローを示す図。
【図6】アラーム情報を受信した時のノードの制御部の制御フローを示す図。
【図7】アラーム停止情報を受け取った時のノードの制御部の制御フローを示す図。
【図8】アラーム停止情報を受信した時のノードの制御部の制御フローを示す図。
【符号の説明】
【0028】
1、2、3、4、5 ノード
6 無線通信部
7 アラーム出力部
8 アラーム情報入力部
9 アラーム停止情報入力部
10 制御部
11 乱数発生部
12 タイマー
13 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知されたアラーム情報が入力されるアラーム情報入力部と、該入力されたアラーム情報を出力するアラーム出力部と、前記アラーム情報を含む情報を送受信するための手段を有する無線通信部と、前記情報を送信するタイムスロットを決定するためのタイマーおよび乱数発生部と、前記アラーム出力部および前記無線通信部を制御する制御部とをそれぞれ有する複数のノードによって構成されるシステムであって、上記アラーム情報入力部よりアラーム情報が入力された前記ノードは前記アラーム出力部からアラームを出力すると共に前記アラーム情報を前記無線通信部より他の前記ノードに送信し、該他の前記ノードは前記アラーム情報を前記無線通信部により受信して、前記アラーム出力部からアラームを出力すると共に前記アラーム情報の受信時刻と前記乱数発生部より取得した乱数によって無線送信するタイムスロットを決定し、該タイムスロットに前記アラーム情報を前記無線通信部より他の前記ノードに送信することを特徴とするマルチホップ無線アラームシステム。
【請求項2】
前記ノードはアラーム停止情報が入力されるアラーム停止情報入力部を持ち、該アラーム停止情報入力部より前記アラーム停止情報が入力された前記ノードはアラーム出力を停止すると共に前記アラーム停止情報を前記無線通信部より他の前記ノードに送信する手段を持ち、前記アラーム停止情報を前記無線通信部より受け取った他の前記ノードは、前記アラーム出力部からのアラーム出力を停止し、前記アラーム停止情報の受信時刻と前記乱数発生部より取得した乱数によって無線送信するタイムスロットを決定し、該タイムスロットに前記アラーム停止情報を前記無線通信部より他の前記ノードに送信することを特徴とする請求項1に記載のマルチホップ無線アラームシステム。
【請求項3】
前記アラーム情報または前記アラーム停止情報を送信するとき、前記アラーム情報またはアラーム停止情報が入力された前記アラーム情報入力部もしくはアラーム停止情報入力部を有する前記ノードのノード情報を併せて送信することを特徴とする請求項1または2記載のマルチホップ無線アラームシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−70333(P2009−70333A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240976(P2007−240976)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】