ミコバクテリウム・ツベルクローシスのエピトープ、およびその使用法
本発明は、新規クラスI HLA-A2拘束性およびクラスII HLA-DR4拘束性エピトープ、ならびにM.ツベルクローシス(M. tuberculosis)および他のものとしてM.レプレ(M. leprae)を含むミコバクテリウム感染の感染または潜伏に特異的な、末梢血におけるT細胞を検出する際のこうしたエピトープの使用法を提供する。例えば、M.ツベルクローシスによる感染または曝露の存在を診断するための方法は、結合したHLA結合性ペプチドを有するHLAモノマーまたは修飾モノマーのマルチマーを利用して、患者PBLのハイスループット・スクリーニングを行う。患者において抗ミコバクテリウム治療の成功を監視し、かつヒトにおいて、ミコバクテリウムの曝露、感染、および潜伏を治療するかまたは予防する際の有効性に関して、ワクチンおよび薬剤をスクリーニングするために、この方法を用いてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般的に免疫学に、かつより具体的にはT細胞エピトープの同定、およびミコバクテリウム種に感染したかまたは曝露されたヒト被験体を同定する方法に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)項に基づいて、2004年6月17日に出願された米国特許出願第60/580,559号、および2004年10月27日に出願された米国特許出願第60/622,505号の優先権の恩典を主張し、各々の内容は全体として、参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ミコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)(MTB)は、世界人口の3分の1に感染し、かつ毎年200〜300万人の死の原因である。毎年800万人の人々が臨床的疾患を生じる。防御ワクチンはいまだに利用可能でなく、かつ多剤耐性MTB株が、発展途上国および先進工業国において、脅威を与えている。多重防御機構が、細胞内MTB感染を潜伏に封じ込めるのに利用可能であり、これには、抗MTB制御を維持するのに役立つ、抗原反応性γδ+ T細胞、記憶Tリンパ球に分化し得るCD4+ T細胞、およびCD8+ T細胞が含まれる。
【0004】
潜伏MTB感染は、感染した個体に対して、かつ他の個体への感染性病原体の伝播に対しての両方で、大きな脅威に相当する。年齢、栄養不良、免疫抑制、またはHIVの重感染に関連して細胞性免疫が弱まると、MTB封じ込めの喪失につながる。TBにおける疾患封じ込めは、免疫細胞の複雑なネットワークと、このネットワークが有効免疫応答を高め、かつ維持する能力とを伴う。ヒトにおいて、この疾患の潜伏を維持する際に関与する、すべての従事免疫事象の知識は、いまだに完全ではない。しかし、この細胞内病原体と戦うため、協調した細胞性免疫が重要であることは、議論の余地がない。MHCクラスII拘束性CD4+ならびにMHCクラスI拘束性CD8+ T細胞の必須の役割が、よく確立されている(最近、概説されている)。これらのT細胞の主要な武器の1つは、マクロファージを活性化可能であり、かつ殺細菌分子の産生を誘導可能であるサイトカイン、例えばIFN-γおよびTNF-αの産生である。非古典的な拘束性CD8+リンパ球、CD4-CD8-およびCD1拘束性T細胞、γδ細胞およびNK細胞もまた、CD1分子上に提示されるミコバクテリウム脂質抗原を認識し、かつ疾患制御に関与することが報告されている。
【0005】
この知見は、主に、マウスにおける研究に由来する。潜伏性もしくは活性ヒトTB、またはTBへの曝露に関する大部分の研究は、現在まで、末梢血リンパ球(PBL)の分析に限定され、かつMTB感染の主な部位である、肺の免疫学的状況には取り組んでいない。さらに、潜伏性TBの研究は、疾患のこの状態の適切な動物モデルが欠如しているため、妨げられている。
【0006】
尖叉皮膚試験(TST)は、皮内PPD注射に対する応答として、ミコバクテリウム種に対して向けられる細胞性免疫反応性の存在を評価する。この試験は、ツベルクローシス以外のミコバクテリウム(MOTT)での感染、カルメット・ゲラン桿菌(Bacille Calmette Guerin)(BCG)のワクチン接種、および臨床的に意義があるM.ツベルクローシス感染の間を識別不能である。この試験はまた、正確な抗原特異性、ならびにCD4+またはCD8+ T細胞の関与およびその分化状態またはホーミング能に関する情報もまったく提供しない。ミコバクテリウム種の有効な封じ込めを決定するには、いくつかの変数が重要である:CD4+ T細胞は、急性感染において、感染を撃退するのに非常に重大であるようであり、CD8+ T細胞は、長期抗MTB免疫応答を維持する際に関与する可能性がより高い。また、強く、かつ長期に存続する免疫応答を維持するには、異なるT細胞サブセットが重要である。最大のかつ長期に存続する防御を達成するためには、増殖またはサイトカイン産生の異なる潜在能力を持ち、自由に血流を離れて、かつ感染部位に進入可能な、「前駆体」T細胞、即時作用「エフェクター」T細胞、または記憶Tリンパ球のプールが好適であり得る。異なるターゲット抗原における免疫応答の正確で詳細な分析は、これまで知られていないが、MTB、MOTTまたはM.レプレ(M. leprae)感染患者の間の識別を可能にするであろう。ESAT-6はMTB(およびM.レプレ)のみで発現されるが、BCGまたはMOTTでは発現されず、このことから、このタンパク質は、真実のMTB特異的T細胞応答を評価するのに魅力的なワクチン候補およびターゲットに指定される。逆に、HLA-DR4拘束性Ag85bエピトープは、MTB診断法に加えて、ブルーリ潰瘍の原因病原体であるM.ウルセランス(M. ulcerans)、または免疫低下患者における感染の頻繁な原因であるM.アビウム・イントラセルラレ(M. avium intracellulrare)に特徴的なT細胞を列挙するのに有用であり得る。したがって、TSTならびにIFNγ応答アッセイ(IGRA)は、どちらのアッセイ系も、刺激剤として、異なるターゲット・タンパク質およびリポタンパク質の混合物であるPPD(精製タンパク質派生物)を使用し、かつ定義された抗原特異的ペプチド・エピトープを使用しないため、MTB特異的でかつ有効な免疫応答の上記様相に対応不能である。大部分の場合で72時間のインキュベーション期間が必要であり、かつT細胞列挙、ならびにT細胞ホーミングおよび分化と関連するT細胞マーカー分析を同時に可能にしない、ELISPOTアッセイでも同様の状況が当てはまる。
【0007】
より最近開発され、主要組織適合複合体(MHC)分子のテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーを利用する抗原特異的T細胞を検出する方法が、T細胞分析を根本的に変えた。例えば、MHCテトラマー複合体は、4つのMHCモノマー、例えば4つのMHCクラスI分子/β2-ミクログロブリン・モノマーと特異的ペプチド抗原および蛍光色素などの検出可能標識の会合によって形成される。こうしたMHCクラスI分子テトラマー複合体は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を含む、CD8+ T細胞サブセット上のT細胞受容体の別個のセットに結合する。エフェクターCD8+ T細胞であるCTLは、必ずしもCD8+ T細胞の抗原特異的プール全体に相当しない。この点において、LDAおよびサイトカイン・アッセイはどちらも、CTLまたはCTLの亜集団を検出し、一方、MHCテトラマー法は、エフェクター機能を示さない未刺激(naive)およびアネルギー性CD8+ T細胞を含む、すべての抗原特異的CD8+ T細胞を検出可能である。MHCテトラマーと末梢血リンパ球または全血を混合し、かつ検出系としてフローサイトメトリーを用いることによって、ペプチドに特異的なすべてのT細胞数およびそのマッチするアレルが提供される。こうしたものとして、MHCテトラマーは、特定のペプチドに対する細胞性応答の測定を可能にする。
【0008】
TCRレパートリーのスペクトラタイピング(spectratyping)によって、CDR3長の関数として、24のTCR VBファミリーから得られる各個々のTCR可変CDR3プロファイルを表すことが可能になる。各ピークは、1つのアミノ酸残基の3bpコードに相当し、各CDR3プロファイルにおいて、9または10のアミノ酸が同定される。三次元スペクトラタイプにおいて、全CDR3分析の領域は、各TCR VBファミリーに関して100%と概算され、かつ各個々のCDR3ピークの曲線下の領域が全CDR3の領域の割合として表される。可変領域のPCRに基づく増幅が定量的でないため、スペクトラタイピングは、TCRレパートリーの構造組成を反映するが、各TCR VA、さらにVBファミリーの量に関する情報は提供しない。
【0009】
T細胞特異性を分析するためのMHCテトラマーの使用は定量的である;これは放射性色素の使用を必要とせず;かつハイスループット・アッセイ形式に容易に適応される。さらに、この方法は、迅速に実行可能であり、かつしたがって新鮮な血液または組織試料を調べるために使用可能である。MHCテトラマー複合体に蛍光標識が含まれる場合、T細胞を含む細胞集団をさらに、1つまたは複数の他の蛍光標識分子、例えば他の細胞表面分子に特異的な蛍光標識分子で染色し、かつフローサイトメトリーを用いて分析し、こうして応答細胞のさらなる特徴付けを可能にしてもよい。この場合、ターゲット細胞を染色するのに用いた標識と容易に識別可能な波長で蛍光を発する、さらなる蛍光標識を選択する。さらに、MHCテトラマー分析は、標識細胞に対して毒性でなく、したがって、テトラマー結合性細胞は、フローサイトメトリーによって均一な集団に選別可能であり、かつその機能的能力、例えば抗原に応答して増殖する能力を確認するさらなるアッセイによって調べることも可能である。
【0010】
したがって、当技術分野において、ヒトにおいて、MTBを封じ込め、かつヒト肺における潜伏を維持する原因となる因子を診断する方法に対する必要性がある。新規ワクチン候補の有効性を評価するための、潜伏性MTB感染を診断かつ監視するための、MTB曝露を検出するための、既に確立された治療戦略および新規治療戦略の経過においてMTB根絶に関して試験するための、および「防御免疫」を維持するのに必要な免疫学的閾値を定義するための、生物学的に意味がある代理マーカーを提供するためには、抗MTB反応性CD4+またはCD8+ T細胞のエクスビボ同定が望ましい。
【発明の開示】
【0011】
発明の概要
本発明は、ミコバクテリウム・ツベルクローシス(MTB)由来の単離ヒトHLA-DR4拘束性T細胞エピトープを提供することによって、当技術分野のこれらの問題および他の問題を解決する。エピトープは、例えば、SEQ ID NO:3、6、7、または8に示すようなアミノ酸配列を含む。
【0012】
1つの態様において、本発明は、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、または8に示すようなアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0013】
別の態様において、本発明は、ヒト被験体において、MTBによる感染またはMTBに対する曝露の存在を診断する方法を提供する。この方法には、SEQ ID NO:8に示すようなアミノ酸配列を有する、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-DR4モノマーまたは修飾モノマーのマルチマーまたはオリゴマーと、被験体から得られた末梢血リンパ球(PBL)を接触させる工程、およびPBLへのマルチマーまたはオリゴマーの結合を検出する工程が含まれ、ここで、PBLへのテトラマーの結合は、被験体におけるMTB感染または曝露の存在の指標となる。
【0014】
別の態様において、本発明は、ヒト被験体において、MTBによる感染またはMTBに対する曝露の存在を診断する方法を提供する。この方法には、SEQ ID NO:3に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマーのテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーと、被験体から得られたPBLを接触させる工程、およびPBLへのテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーの結合を検出する工程が含まれ、ここで、PBLへのテトラマーの結合は、被験体におけるMTB感染または曝露の存在の指標となる。
【0015】
別の態様において、本発明は、ヒト被験体におけるMTB感染または潜伏の治療または予防のための薬剤の有効性を決定するための方法を提供する。この方法には、潜伏性MTBのため薬剤を用いた治療を受けている、DR4アレルを持つ患者から、PBLの試料を得る工程、および適切な結合条件下で、HLAモノマーまたは修飾モノマーの結合したテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーを有する固体支持体と、試料を接触させる工程が含まれる。HLAモノマーまたは修飾モノマーのテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーには、SEQ ID NO:6、7、8に示すアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-DR4モノマーまたは修飾モノマー;およびSEQ ID NO:1、2、または3に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマーが含まれる。PBLへのテトラマーの結合量を検出する。治療期間の適切な間隔後に、プロセスを反復し、かつ結果を比較する。比較により、治療期間の適切な間隔後に結合量の減少が見られる場合は、薬剤の有効性が示され、減少の欠如は、ヒトにおけるMTBの感染または潜伏の治療または予防のための薬剤の有効性の欠如を示す。
【0016】
別の態様において、本発明は、ヒト被験体におけるMTB感染または潜伏の治療のための薬剤の有効性を決定するための方法を提供する。この方法には、MTBのため薬剤を用いた治療を受けている、DR4アレルを持つ患者から、PBLを含む試料を得る工程、および適切な結合条件下で、HLAモノマーまたは修飾モノマーの結合したテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーを有する固体支持体と、試料を接触させる工程が含まれる。HLAモノマーまたは修飾モノマーのテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーには、SEQ ID NO:6、7、および8に示すアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-DR4モノマーまたは修飾モノマー;およびSEQ ID NO:1、2、または3に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマーが含まれる。PBLへのテトラマーの結合量を検出する。治療期間の適切な間隔後に、プロセスを反復し、かつ結果を比較する。比較により、治療期間の適切な間隔後に結合量の減少がみられる場合は、薬剤の有効性が示され、減少の欠如は、ヒトにおけるMTBの感染または潜伏の治療のための薬剤の有効性の欠如を示す。
【0017】
別の態様において、本発明は、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLAモノマーまたは修飾モノマーのテトラマーと、被験体から得られたPBLを接触させる方法を提供する。被験体はHLA-DR4アレルを有し、かつ結合性ペプチドはSEQ ID NO:8に示すようなアミノ酸配列を含む。あるいは、被験体はHLA-A2アレルを有し、かつ結合性ペプチドはSEQ ID NO:3に示すようなアミノ酸配列を含む。PBLへのテトラマーの結合を検出して、被験体における、M.レプレまたはM.ツベルクローシス感染または曝露の存在を同定する。
【0018】
別の態様において、本発明は、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLAモノマーまたは修飾モノマーのテトラマーと、被験体から得られたPBLを接触させる方法を提供する。被験体はHLA-DR4アレルを有し、モノマーはHLA-DR4モノマーであり、かつ結合性ペプチドはSEQ ID NO:6または7に示すようなアミノ酸配列を含む。あるいは、被験体はHLA-A2アレルを有し、モノマーはHLA-A2モノマーであり、かつ結合性ペプチドはSEQ ID NO:1および/または2に示すようなアミノ酸配列を含む。PBLへのテトラマーの結合を検出して、被験体における、M.レプレまたはM.ツベルクローシス以外のミコバクテリウム曝露または感染の存在を同定する。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は、ミコバクテリウム感染に関連する抗原から提供される、新規に同定されたMHC結合性ペプチド・エピトープを用いて、インビトロ操作の必要性を伴わずに、MHCクラスI拘束性およびクラスII拘束性およびMTBエピトープ特異的T細胞を、末梢血において、直接視覚化可能であるという発見に基づく。エクスビボ選別されたDR4/ペプチド・テトラマー反応性T細胞が、自己マクロファージ上の、天然にプロセシングされかつ提示されたターゲット抗原由来のエピトープを認識し(図10)、かつDR4+/MTBペプチド・テトラマー複合体が、尖叉試験陽性個体由来の肉芽腫組織における、肉芽腫関連リンパ球を特異的に染色する(図14)という観察によって、これらのHLAに提示されるペプチドの生物学的重要性が立証される。T細胞分化マーカー分析と組み合わせた、抗原特異的T細胞の同時試験によって、潜伏性TBにおけるMTB指向免疫応答を評価する新たなプラットホームが提供される。
【0020】
HLA-DR4拘束性T細胞エピトープ
【0021】
HLA-A2拘束性T細胞エピトープである、ESAT-6ペプチドLLDEGKQSLのテトラマー分析
【0022】
19kDa AgおよびAg85b由来のこれらのHLA A*0201拘束性ペプチドは、PBLにおいて既に記載されており、本発明者らは、本明細書において、MTB患者由来のCD8+ GALの焦点がAg85bエピトープ上にあるという証拠を加える。
【0023】
本発明は、1つの態様において、ミコバクテリウム・ツベルクローシス(MTB)由来の単離ヒトHLA-A2拘束性T細胞エピトープであって、本明細書のSEQ ID NO:3に示すようなアミノ酸配列を含む該エピトープ、およびその保存的バリエーションを提供する。このT細胞エピトープは、ヒトにおけるMTBまたはMTB以外のミコバクテリウムの感染またはこれらに対する曝露に関連する。別の態様において、本発明は、ミコバクテリウム・ツベルクローシス(MTB)由来の単離ヒトHLA-DR4拘束性T細胞エピトープであって、本明細書のSEQ ID NO:6、7、または8に示すようなアミノ酸配列を含む該エピトープ、およびその保存的バリエーションを提供する。
【0024】
別の態様において、本発明は、SEQ ID NO:3、ならびに6、7、および8を有する本発明のエピトープ、ならびに本発明のエピトープの保存的バリエーションをコードする単離ポリヌクレオチドを提供し、これには遺伝コードの結果として縮重しているものを含む。ポリヌクレオチドは、DNA、cDNA、RNA、mRNA等であってもよい。本発明のポリヌクレオチドを用いて、本発明のT細胞エピトープを組換えにより産生することも可能である。本発明のT細胞エピトープをコードする本発明のポリヌクレオチドを含む、本明細書に開示するような発現ベクター、例えばウイルスベクターもまた提供し、こうしたベクターで安定に形質転換された宿主細胞も提供する。
【0025】
さらに別の態様において、本発明は、ヒト被験体において、MTBによる感染またはMTBに対する曝露の存在を診断するための方法であって、SEQ ID NO:8に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-DR4モノマーまたは修飾モノマーのマルチマーまたはオリゴマーと、被験体から得られた末梢血リンパ球(PBL)を接触させる工程、およびPBLへのマルチマーまたはオリゴマーの結合を検出する工程を含む方法を提供し、ここで、PBLへの結合は、被験体におけるMTB感染または曝露の存在の指標となる。本発明の方法は、当技術分野に公知であるような、ハイスループット・スクリーニング技術を用いて、テトラマー、オリゴマー、またはマルチマーの結合を検出するのに特に適している。例えば、本発明の方法で用いるテトラマーを、本明細書の実施例に記載するものなどのフルオロフォアで標識してもよく、かつ検出工程は、フルオロフォアによって産生されるシグナルを測定する工程を含む。本発明の方法は、さらに、SEQ ID NO:6または7に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-DR4モノマーまたは修飾モノマーのさらなるテトラマーと、PBLを接触させる工程、およびPBLへのさらなるテトラマーの少なくとも1つの結合を検出する工程をさらに含んでもよい。
【0026】
さらに別の態様において、本発明は、ヒト被験体において、MTBによる感染またはMTBに対する曝露の存在を診断するための方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
a)SEQ ID NO:3に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマーのテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーと、被験体から得られたPBLを接触させる工程;および
b)PBLへのテトラマーの結合を検出する工程、ここで、PBLへのテトラマーの結合は、被験体におけるMTB感染または曝露の存在の指標となる。本方法は、SEQ ID NO:1または2に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマーのさらなるテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーと、PBLを接触させる工程、およびPBLへのさらなるテトラマーの少なくとも1つの結合を検出する工程をさらに含んでもよい。
【0027】
別の態様において、本発明は、SEQ ID NO:3に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマーのテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーと、被験体から得られたPBLを接触させる工程、およびPBLへのテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーの結合を検出する工程によって、ヒト被験体において、MTBによる感染またはMTBに対する曝露の存在を診断するための方法を提供し、ここで、PBLへのテトラマーの結合は、被験体におけるMTB感染または曝露の存在の指標となる。本方法は、SEQ ID NO:1または2に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマーのさらなるテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーと、PBLを接触させる工程、およびPBLへのさらなるテトラマーの少なくとも1つの結合を検出する工程をさらに含んでもよい。
【0028】
さらに別の態様において、本発明は、ヒト被験体におけるMTBの感染または潜伏の治療または予防のための薬剤の有効性を決定するための方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
a)潜伏性MTBのため薬剤を用いた治療を受けている、DR4アレルを持つ患者から、PBLを含む試料を得る工程;
b)適切な結合条件下で、以下の少なくとも1つから選択されるHLAモノマーまたは修飾モノマーの結合したテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーを有する固体支持体と、試料を接触させる工程:
1)SEQ ID NO:6、7、8に示すアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-DR4モノマーまたは修飾モノマー;および
2)SEQ ID NO:1、2または3に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマー。PBLへのテトラマーの結合量を検出する。治療期間の適切な間隔後に、プロセスを反復し、かつ結果を比較する。比較により、治療期間の適切な間隔後に結合量の減少が見られる場合は、薬剤の有効性が示され、減少の欠如は、ヒトにおけるMTBの感染または潜伏の治療または予防のための薬剤の有効性の欠如を示す。本発明の方法の他の態様におけるように、薬剤または薬剤候補の有効性を決定するための方法は、薬剤候補を薬剤スクリーニングするために当技術分野に公知の適応を用いた、任意の型のハイスループット・スクリーニングによく適しており、かつ抗TBワクチン候補の予備スクリーニングにおいて、または任意のミコバクテリウムの増殖をインビトロで減少させるかまたは抑止することが公知の化学的化合物(すなわち「小分子」)をスクリーニングするために使用可能である。
【0029】
本発明のさらに別の態様は、MTBのため薬剤を用いた治療を受けている、DR4アレルを持つ患者から、PBLを含む試料を得る工程;1)SEQ ID NO:6、7、および8に示すアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-DR4モノマーまたは修飾モノマー;および2)SEQ ID NO:1、2、または3に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマーの少なくとも1つから選択される、HLAモノマーまたは修飾モノマーの結合したテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーを有する固体支持体と、適切な結合条件下で、試料を接触させる工程によって、ヒト被験体におけるMTB感染または潜伏の治療のための薬剤の有効性を決定するための方法を提供する。PBLへのテトラマーの結合量を検出する。治療期間の適切な間隔後に、プロセスを反復し、かつ結果を比較する。比較により、治療期間の適切な間隔後に結合量の減少が見られる場合は、薬剤の有効性が示され、減少の欠如は、ヒトにおけるMTBの感染または潜伏の治療のための薬剤の有効性の欠如を示す。
【0030】
さらに別の態様において、本発明は、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLAモノマーまたは修飾モノマーのテトラマーと、被験体から得られたPBLを接触させる方法を提供し、ここで、被験体はHLA-DR4アレルを有し、かつ結合性ペプチドはSEQ ID NO:8に示すようなアミノ酸配列を含む、または被験体はHLA-A2アレルを有し、かつ結合性ペプチドはSEQ ID NO:3に示すようなアミノ酸配列を含む。PBLへのテトラマーの結合を検出して、被験体における、M.レプレまたはM.ツベルクローシス感染または曝露の存在を同定する。
【0031】
さらに別の態様において、本発明は、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLAモノマーまたは修飾モノマーのテトラマーと、被験体から得られたPBLを接触させる方法を提供し、ここで、被験体はHLA-DR4アレルを有し、モノマーはHLA-DR4モノマーであり、かつ結合性ペプチドはSEQ ID NO:6または7に示すようなアミノ酸配列を含む、または被験体はHLA-A2アレルを有し、モノマーは、HLA-A2モノマーであり、かつ結合性ペプチドはSEQ ID NO:1および/または2に示すようなアミノ酸配列を含む。PBLへのテトラマーの結合を検出して、被験体における、M.レプレまたはM.ツベルクローシス以外のミコバクテリウム感染または曝露の存在を同定する。
【0032】
本明細書において用いる場合、「MHCモノマー」および「HLAモノマー」という用語は、再生条件下で、適切なMHC結合性またはHLA結合性ペプチドおよびβ-2ミクログロブリン(β-2m)と三元複合体に集合する能力を維持するか、または集合している、クラスI MHC重鎖を指す。「MHCモノマー」および「HLAモノマー」という用語はまた、三元複合体を変性条件に供して、モノマーをアンフォールディングさせて、かつMHC結合性ペプチドおよびβ-2ミクログロブリンから解離させることから生じる、モノマーの変性型を指すようにも用いられる。
【0033】
本明細書において用いる場合、「修飾MHCモノマー」および「修飾HLAモノマー」という用語は、上述のようなクラスIモノマーであるが、以下に記載するような修飾を導入するように操作されているものを指す。これらの用語はまた、再生条件下で、適切なMHC結合性またはHLA結合性ペプチドおよびβ-2ミクログロブリンと三元複合体に集合する能力、ならびに変性条件下で解離する能力を維持する、MHCモノマーの機能性断片も含む。例えば、機能性断片は、クラスI重鎖のα1、α2、α3ドメインのみ、またはα1、α2ドメインのみ、すなわち三元複合体の形成に関与する細胞表面ドメインのみを含むことも可能である。別の態様において、修飾MHCモノマーは、融合タンパク質または「一本鎖」分子中に含有されるクラスI重鎖分子、またはその機能性断片であってもよいし、さらに、モノマーの細胞表面ドメイン間のリンカーとして、検出可能マーカーとして、または融合タンパク質中のリガンドと反応する第二のリガンドでコーティングされた固体支持体に分子を付着させるリガンドとして機能するアミノ酸配列を含んでもよい。さらに、「修飾MHCモノマー」および「修飾HLAモノマー」という用語は、1より多い種に由来するか、または1より多いクラスIサブクラスに由来する、クラスI重鎖分子のドメインを含有するキメラを含むよう意図される。例えば、ヒトHLA-A2モノマーにおけるヒトβ-2mに対してマウスβ-2mを置換することによって、キメラを調製してもよい。
【0034】
SEQ IDの本発明のエピトープの一次アミノ酸配列のマイナーな修飾は、例示される本発明のエピトープに比較した際、実質的に同等の活性を有するタンパク質を生じ得る。こうした修飾は、部位特異的突然変異誘発などの方法によって導入される修飾など、意図的であってもよいし、また自然発生的であってもよい。修飾がエピトープの機能、例えば本明細書に開示するような、対応するT細胞拘束性複合体に結合する能力を破壊しないという条件で、これらの修飾によって産生されるポリペプチドはすべて、本発明内に含まれる。
【0035】
本発明のエピトープをコードするポリヌクレオチド配列は、例示される配列(すなわちSEQ ID NO:3、6、7、および8、ならびに例示されるポリペプチド配列の保存的バリエーションを含む。本明細書において用いる用語「保存的バリエーション」は、場合、別の生物学的に類似のアミノ酸残基によるアミノ酸残基の置換を指す。保存的バリエーションの例には、イソロイシン、バリン、もしくはロイシンなどへの疎水性残基の別のものからの置換、または極性残基への別のものからの置換、例えばリジンからアルギニンへの置換、アスパラギン酸からグルタミン酸への置換、もしくはアスパラギンからグルタミンへの置換等が含まれる。用語「保存的バリエーション」にはまた、置換エピトープと特異的に相互作用する抗体が、未置換エピトープとも特異的に免疫反応性であるという条件で、未置換親アミノ酸の代わりの置換アミノ酸の使用も含まれる。
【0036】
MHCテトラマーは、ビオチンに対するテトラマー結合性部位を有する分子であるストレプトアビジンと4つのMHCモノマーの複合体であり、これに蛍光色素、例えばフィコエリトリン(PE)が結合している。クラスIモノマーに関しては、モノマーはまた、β2-ミクログロブリン、推定上のT細胞エピトープを含有するペプチド断片、および目的のペプチド断片の予測されるMHCサブタイプに対応するMHCモノマーの可溶性サブユニットと複合体を形成し、宿主細胞におけるポリペプチドの発現によって得られる。通常の条件下では、MHCモノマーは、T細胞がクラスIモノマーを発現する場合であってさえ、抗原提示細胞の細胞表面に係留される(すなわち交差提示)。MHCテトラマーに含有される4つのモノマーの各々は、各々、β2-ミクログロブリン、MHC結合性ペプチド、および対応するMHC分子を含有する、再構成されたモノマーへの可溶性単位の集合を支持する条件下で、これらの可溶性サブユニットを再フォールディングすることによって、モノマーとして産生される。モノマーをビオチン化し、かつ続いてビオチン化された再構成モノマーを蛍光色素標識ストレプトアビジンと接触させることによって、モノマーからMHCテトラマーを構築する。被験体の末梢血リンパ球(PBL)の試料に含有されるものなどの多様な集団のT細胞と接触させると、試料中のT細胞に認識される再構成モノマーを含有するテトラマーは、マッチしたT細胞に結合するであろう。蛍光フローサイトメトリーを用いて、反応の内容を分析して、結合したMHCテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーを有するT細胞を決定し、定量化し、かつ/または単離する。MHC結合性ペプチドは、T細胞に認識されるテトラマー、オリゴマー、またはマルチマー中に見出される(全体として参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,635,363号を参照されたい)。
【0037】
MHCモノマーは、モノマーのクラスI構成要素内に操作されるペプチド配列、例えばBirA酵素のビオチン化部位を含有するシグナル配列をさらに含有してもよく;かつ検出可能標識を含有してもよい。用語「MHCマルチマー」または「マルチマー性MHCモノマーまたは修飾MHCモノマー複合体」は、本明細書において、通常は多価実体を介して一緒に結合される、2つまたはそれ以上のMHCモノマーを含有する複合体を指すよう用いられる。MHCマルチマーは、MHCダイマー、MHCトリマー、MHCテトラマー等を含むことも可能である(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,635,363号を参照されたい)。MHCマルチマー中のMHCモノマーはまた、例えばジスルフィド結合を通じて直接、または例えば特異的結合対を通じて間接的に連結されていてもよく、かつまた、例えばモノマーのMHCクラスI分子構成要素内に操作されることも可能な、ロイシンジッパーなどの、モノマーの二次構造または三次構造間の特異的相互作用を通じて会合していてもよい。MHCテトラマーは、特異的ペプチド抗原と会合し、かつ蛍光色素を含有する、4つのMHCモノマーの複合体である(米国特許第5,635,363号)。
【0038】
MHCクラスIモノマーは、ビオチン化可能なペプチド配列で、重鎖の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを置換することによって調製されており、かつこうしたモノマーを、4つのビオチン部分に結合可能なストレプトアビジンと接触させることによって、MHCクラスIテトラマーが形成されており(例えば、各々、参照により本明細書に組み入れられる、Altman et al., Science 274:94-96, 1996; Ogg and McMichael, Curr. Opin. Immunol. 10:393-396, 1998を参照されたい;また、米国特許第5,635,363号も参照されたい)、かつこうしたテトラマーは市販されている(Immunomics/Beckman Coulter, Inc.)。
【0039】
細胞表面CD8へのHLA分子の結合を最小限にするため、HLA-A*0201、HLA-B*3501, HLA-A*1101、HLA-B*0801、およびHLA-B*2705を含む、突然変異クラスIA HLA分子を含むMHCクラスI分子を用いて、MHCテトラマーが調製されている(Ogg and McMichael、上記、1998)。呼称「m」は、そのクラスIA分子が突然変異体であることを示し;例えば、HLA-A*0201mは、A245V置換を導入することによって、HLA-A*0201から生成される(例えばBodinier et al., Nat. Med. 6:707-710, 2000を参照されたい)。突然変異HLA分子を含有するMHCテトラマーは、CD8細胞の一般的な集団への非常に減少した結合を有するが、ペプチド特異的結合を保持し、したがって、まれな特異的T細胞(CD8+の1%未満; Altman et al、上記、1996)の正確な識別を容易にする。例えば、各々、特定のペプチドに結合し、かつフィコエリトリン(PE)に結合した、4つのHLA-A*0201 MHCクラスIA分子で構成されるMHCテトラマーが調製されている(「i Tag(商標)MHCテトラマー」); Immunomics/Beckman Coulter, Inc.)。HLA-A0201アレルは、全体的な集団の約40%〜50%で見出されており、かつCD8が仲介する結合を最小限にするように修飾されている(参照により本明細書に組み入れられる、Bodinier et al., Nat. Med. 6:707-710, 2000)。これらの複合体は、CD8+ T細胞サブセット上の、別個のセットのT細胞受容体(TCR)に結合する(参照により本明細書に組み入れられる、McMichael and O'Callaghan, J. Exp. Med. 187:1367-1371, 1998)。i TAg(商標)MHCテトラマー複合体は、例えば、複合体中の特定のペプチドおよびHLA分子に特異的なヒトCD8+ T細胞を認識する。特異的結合は、機能経路に依存しないため、これらのテトラマーによって同定される集団には、機能状態に関わらず、すべての特異的CD8+細胞が含まれる。
【0040】
MHCテトラマーまたは他のMHCマルチマーのモノマーを、共有的もしくは非共有的に、かつ物理的会合もしくは化学的結合を通じて直接、または特異的結合対の使用を通じてもしくは特異的結合対の使用を通じた多価実体への付着によって間接的に、機能可能であるように一緒に連結してもよい。あるいは、MHCマルチマーのモノマーを、MHCモノマーに対する多数の特異的付着部位を含有する多価実体に、機能可能であるように連結してもよい。本明細書において用いる場合、「機能可能であるように連結された」または「機能可能であるように会合した」という用語は、第一の分子および少なくとも第二の分子が、各分子が元来の機能または天然の機能を実質的に維持するように、共有的または非共有的に一緒に連結されることを意味する。例えば、各々、ペプチド抗原に特異的に結合可能な、2つまたはそれ以上のMHCモノマーを機能可能であるように連結してMHCマルチマーを形成する場合、MHCマルチマー中の2つまたはそれ以上のMHCモノマーは、各々、ペプチド抗原に特異的に結合する能力を維持する。MHCマルチマーが、T細胞に抗原性ペプチドを提示する能力を実質的に減少させず、またこの能力を阻害しないという条件で、モノマーを機能可能であるように連結するためのいかなる手段を用いてもよい。一般的に、MHCモノマーは、モノマーの重鎖構成要素を通じて、一緒にまたはマルチマー部分に連結される。したがって、例えば重鎖を含むアミノ酸の反応性側基間に形成される鎖間ペプチド結合を通じて、重鎖中のシステイン残基間で形成される鎖間ジスルフィド結合を通じて、またはアミノ酸側鎖に提示される化学基間に一般的に形成可能である任意の他の種類の結合を通じて、モノマーを連結してもよい。多価実体にMHCマルチマーのモノマーを機能可能であるように連結するための好適な手段は、結合対の各部分である、特異的付着部位を利用する。MHCマルチマーが、マルチマー部分へのMHCモノマーの付着によって形成される場合、モノマーおよび多価実体は各々、結合対を構成する、特異的付着部位の1つを提供する。
【0041】
例えば、モノマーの重鎖をビオチン化して、かつ、天然に4つのビオチン結合性部位を有するストレプトアビジンに、この重鎖を化学的にカップリングすることによって、テトラマーを形成してもよい(図1)。本明細書において用いる場合、「特異的結合対」という用語は、互いに特異的に相互作用可能な2つの分子を指す。特異的結合対の2つの分子を、「特異的結合対のメンバー」または「結合パートナー」と称してもよい。特異的結合対は、イムノアッセイを行うために一般的に用いられる条件下で、相互作用が安定であるように、選択される。多くの特異的結合対が当技術分野において周知であり、かつこれには、例えば、エピトープと特異的に相互作用する抗体およびエピトープ、例えば抗FLAG抗体およびFLAGペプチド(Hopp et al., BioTechnology 6:1204 (1988);米国特許第5,011,912号);グルタチオンおよびグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST);ニッケルイオンまたはコバルトイオンなどの二価金属イオンおよびポリヒスチジン・ペプチド;またはこれと同様のものが含まれる。
【0042】
MHCテトラマーを調製するため、ビオチンおよびストレプトアビジンが用いられており(ストレプトアビジンが、ビオチンに対して4つの特異的付着部位を提供する多価実体として作用する)、かつビオチンおよびアビジンもまた使用可能である。これらの特異的結合対は、単一のアビジンまたはストレプトアビジン分子が、4つのビオチン部分と結合可能であるという利点を提供し、したがってテトラマーなどのMHCマルチマーを調製するのに好適な手段を提供する。ビオチンは、MHC重鎖のリジン残基に化学的に結合可能であるし、または酵素反応を用いて結合可能であり、この場合、酵素BirAのビオチン化部位を含むペプチドシグナル配列を含有するように、重鎖が修飾されている(Altman et al.、上記、1996; Ogg and McMichael、上記、1998)。あるいは、ビオチンが、MHC重鎖より少ないリジン残基を有するβ2-ミクログロブリンに連結されていてもよく、または単一のアクセス可能なリジン残基しか含有しないように突然変異誘発されている、突然変異体β2-ミクログロブリンに連結されていてもよい。
【0043】
別の態様において、多価実体は、モノマーおよび抗体の多数の付着部位を含有するリポソーム表面などの脂質表面であってもよい。例えば、多価実体は、ヒスチジン・タグに結合するように修飾された脂質を含有するリポソームであってもよく、かつ、各々カルボキシ末端ヒスチジン・タグを有する、少なくとも1つのMHCモノマーまたは修飾MHCモノマーおよび抗体または抗体断片を、ヒスチジン・タグを介して、リポソーム表面に結合させてもよい。例えば、Ni-イミノ二酢酸(Ni-IDA)またはNi-ニトリロ酢酸(Ni-NTA)を含有する脂質が、ポリヒスチジンの結合パートナーである。ヒスチジン・タグに結合するように修飾された脂質の例は、共有結合したニッケル・キレート基を伴う1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-[N-95アミノ-1-カルボキシペンチル)イミノ二酢酸)スクシニル]、N'',N''-ビス[カルボキシメチル]-L-リジン(ニトリロ酢酸)(DOGS-Ni-NTA)である。
【0044】
別の態様において、多価実体は、少なくとも1つ、かつ好ましくは複数のMHCモノマーまたは修飾MHCモノマーを細胞表面上に発現する、酵母細胞であってもよい。単数の抗体を酵母細胞表面に付着させてもよく、複数の抗体を細胞の表面に付着させる(例えば表面上で発現させる)。さらにmataha
、多価実体はハイブリドーマであってもよく、かつMHCモノマーまたは修飾MHCモノマーをハイブリドーマ表面上で発現させてもよい。さらに別の態様において、架橋複合体中の非TCR所持ターゲット細胞は、抗体が特異的であるペプチドをその細胞表面上に発現するハイブリドーマであってもよい。
【0045】
本明細書において用いる場合、「感染および/または曝露」という句には、ミコバクテリウム感染または潜伏としての患者における多様な状態、抗ミコバクテリウム・ワクチン接種に対する応答、ミコバクテリウム感染を有するかもしくは有すると疑われる個体との緊密な接触、またはヒトにおいて、特に無防備状態のヒトにおいて疾患を引き起こすミコバクテリウムとの緊密な接触が含まれる。
【0046】
本明細書に記載する実施例において、未知の病因の肺病変を提示する7人の患者(以下の表1を参照されたい)の肺生検から、肉芽腫関連リンパ球を培養した。病理学的診断によって、5人の患者で結核が明らかになり、他の2人の患者で、肺のサルコイドーシスまたはリウマチ様関節炎関連病変が明らかになった。生存ミコバクテリウムは、痰、気管支洗浄液(broncholavage)、または生検自体からは単離不能であった。
【0047】
【表1】
【0048】
本明細書記載の実験の目的は、以下を分析することによって、ヒト肺における潜伏を維持するのに関与する局面を確かめることであった:a)T細胞受容体(TCR)CDR3スペクトラタイピングによって決定されるようなT細胞応答の質、b)フローサイトメトリー分析において決定されるような、各TCR VβファミリーにおけるT細胞の量、およびc)サイトカイン放出アッセイによって定義されるようなGALの機能。
【0049】
CD4+ GALおよびCD8+ GALは、オリゴクローン性であり、非常に拡大されたファミリーで構成され、PBLに比較して、特質な集団を構成する。磁気ビーズ選別後、フローサイトメトリーによって測定されるTCRレパートリーの定量的評価によって補完される、TCR CDR3スペクトラタイピングによって定義される、TCRレパートリーの「客観的」構造組成に関して、CD4+およびCD8+ GAL集団を、別個に分析した。図1および図2Aにおいて、x軸上に24のVβファミリーを示し、z軸上にアミノ酸数としてのファミリー内のCDR3長を示し、かつy軸上に、フローサイトメトリー列挙およびスペクトラタイピングによって決定されるような曲線下の領域の組み合わせとして、リンパ球集団内のCDR3長の割合を示す、「TCRランドスケープ」をプロットした。
【0050】
Vβファミリー内の単一のCDR3長の増大は、通常、特異的免疫応答に関与し得るTリンパ球のクローン性拡大のためであると見なされる。各患者は、主にオリゴクローン性であるCD4+およびCD8+ GAL集団両方に関して、個々の、特定のTCR Vβプロファイルを示した。Vβファミリーは、オリゴクローン性であるだけでなく、分析した全部で24のVβファミリーのうち、数ファミリーがGAL集団中で拡大された。何人かの患者において、別個のオリゴクローン性またはモノクローン性Vβファミリーに属するT細胞が、リンパ球集団の主要な画分を構成した。例えば、患者#1では、Vβ14陽性CD4+リンパ球が、かつ患者#5では、Vβ7陽性T細胞が、すべてのCD4+ GALのうち、それぞれ27%および19%を占めた。CDR3スペクトラタイピングによって、これらのVβファミリーが、単一のCDR3長の拡大によって特徴付けられることが明らかになり、したがって、これらのVβファミリーが、単一T細胞クローンで構成されることが示された。潜伏性TBにおける機能を分析するため、公知の方法を用いて、これらのクローンのTCR(以下の表2を参照されたい)を配列決定した。
【0051】
【表2】
【0052】
主な拡大はまた、CD8+ GALにおいても見ることができる:患者#1におけるモノクローン性Vβ3陽性T細胞(TCR配列に関しては表2を参照されたい)、患者#3におけるオリゴクローン性Vβ17陽性リンパ球、および患者#7におけるVβ13陽性CD8+ GALは、それぞれ、すべてのCD8+ GALの最大17%、9%、および12%を構成した。
【0053】
個々の患者またはHLA型を比較した際、ヒトMTB封じ込めにおける優先的なVβ使用を示す可能性もある、Vβファミリーの共通の拡大は同定不能であった。
【0054】
市販されている24のVβ特異的抗体のパネルは、80%より多くをカバーするが、完全なVβレパートリーではないため、MTBを制御する際に関与し得る、すべてのT細胞を定量的に同定することは不可能であった。例えば、患者#1において、CD4+ GALの20%およびCD8+ GALの55%は、フローサイトメトリーにおいて、Vβ発現に関して定量的に評価不能であった。Vβ頻度が測定不能なこれらのT細胞は、分子評価によれば、数個のさらなるVβファミリーしか含まず、したがってまたクローン性に拡大されていた可能性もある。
【0055】
肺のTCRレパートリーが末梢血の単なる鏡像なのか、または肺が別個のTCRレパートリーを獲得するのかを決定するため、試験患者の両方の解剖学的区画を分析した(材料が制限されていたため、患者#1のPBLを除く)。患者#2に関して(CD4+およびCD8+ T細胞両方に関して)、および患者#5に関して(総/未選別PBLおよびGALに関して)得られたデータを、図3に原理の証明として提示する。PBLに関して得られた「TCRランドスケープ」からGAL「TCRランドスケープ」を引くことによって、図3A(分子TCR-CDR3分析)および3B(TCR Vβ頻度の分析によって補正したCDR3分析)に示すように、相違パーセントを視覚化することが可能であった。乱れたランドスケープは、2つの区画が似ていないTCRレパートリーで実際に構成され、かつ肉芽腫組織内で、個々のTCRファミリーが優先的に拡大されていることを示す。レパートリーが同一であれば、フラットなランドスケープが生じたはずである。Vβファミリー拡大によって特徴付けられると同定されたGALをさらなる研究のために選択した。
【0056】
MTBに反応してTh1/Tc1サイトカイン分泌パターンを示すGAL
Vβファミリー拡大によって特徴付けられるGALの機能に取り組む前に、より一般的なアプローチを用いて、生存MTBにインビトロで一晩感染させておいた自己マクロファージを抗原提示細胞(APC)として用いるサイトカイン放出アッセイにおいて、不均質なCD4+およびCD8+ GAL集団の機能を決定した。分析した5人の患者のうち、4人の患者のCD4+ GALは、769から>2000pg/mlのレベルのIFN-γを産生し(図1B)、一方、GM-CSFは、このサイトカインの産生に関して分析した3人の患者すべてで、38〜2031pg/mlのレベルで測定可能であった(#3、#6、および#7;データ示さず)。CD8+ TCR+ GALに関しては、分析した3人の患者のうち2人が、それぞれ614および>2000pg/mlのIFN-γを産生し(図2B)、かつ3つのCD8+ GAL集団がすべて、35〜1262pg/mlのレベルでGM-CSF産生に関して免疫応答を示し、一方、IL-4はどの患者でも測定不能であった(データ示さず)。驚くべきことに、生検にTB特異的病変がない(患者#6および#7)が、ESAT-6応答性のため、陽性の「免疫学的診断」を有する患者(以下を参照されたい)であっても、やはり、MTBに対して48時間以内に、強い細胞仲介性免疫応答を開始することが可能であった。注目すべきことに、分析したリンパ球を、MTB抗原を用いてあらかじめインビトロ刺激はしていなかった。
【0057】
患者#3において、自己APC上の、天然にプロセシングされかつ提示されたMTBエピトープに対する反応としては、IFN-γまたはIL-4は測定不能であった。しかし、この患者のGALは、異なる実験設定において、MTB由来ペプチドに反応して実質量のIFN-γを産生可能であり(図7および8を参照されたい)、これらの細胞が、機能的にサイトカイン分泌可能であることが示唆された。
【0058】
MHC拘束を確認するため、MHCクラスIまたはクラスIIに対して向けられる遮断モノクローナル抗体(mAb)を用いて、さらなる実験を行った。サイトカイン産生は、CD4+ GAL集団において、DR、DP、およびDQに対して向けられるmAbによって部分的または完全のいずれかで阻害され(図1A〜C)(しかしCD8+ GAL集団では阻害されず(図2A〜C))、MHCクラスII分子上にMTBペプチドが提示されることが示された。他方、MHCクラスI mAbは、CD8+ TCR+集団のサイトカイン産生を部分的にまたは完全に阻害し(図2B)、一方、CD4+ GALにはまったく効果を示さなかった(データ示さず)。
【0059】
モノマーの調製
ヒトにおいて、クラスI MHCは染色体6上に位置し、かつ3つの遺伝子座、HLA-、HLA-B、およびHLA-Cを有する。最初の2つの遺伝子座は、アロ抗原をコードする多数のアレルを有する。これらは44Kd重鎖サブユニットおよびすべての抗原特異性に共通の12Kdβ-2-ミクログロブリン・サブユニットからなることが見出されている。例えば、Turner, M. J. et al., J. Biol. Chem. (1977) 252:7555-7567によって記載されるように、ホモ接合体ヒト・リンパ芽球細胞株J-Y由来の形質膜のパパイン消化後に、可溶性HLA-A2を精製することも可能である。パパインは、膜貫通領域近くで44Kd重鎖を切断し、α1、α2、α3ドメインおよびβ-2-ミクログロブリンで構成される分子を生じる。
【0060】
MHCモノマーは適切な細胞から単離することができ、または例えばPaul et al, Fundamental Immunology, 2d Ed., W. E. Paul, ed., Ravens Press N.Y. 1989, Chapters 16-18に記載されるように、組換えにより産生し、かつ以下に記載するように容易に修飾することができる。
【0061】
本明細書においてMHCモノマーに適用される「単離された」という用語は、天然状態以外の、例えばMHCを通常発現する細胞の細胞膜に会合していない、MHCクラスIのMHC糖タンパク質重鎖を指す。この用語は、全長サブユニット鎖、ならびにMHCモノマーの機能性断片を含む。機能性断片は、抗原結合性部位および適切なT細胞受容体による認識に必要な配列を含むものである。断片は、典型的には、全長鎖の配列の少なくとも約60〜80%、典型的には90〜95%を含む。本明細書において記載するように、「単離された」MHCサブユニット構成要素は、組換えにより産生されることもまたは適切な細胞供給源から可溶化されることもありうる。
【0062】
「成熟」MHC糖タンパク質モノマーの天然型が、配列における1つまたは複数のアミノ酸の欠失、置換、および挿入または付加のため、長さがいくぶん多様であろうことは周知である。したがって、MHCモノマーは、実質的な天然修飾に供され、それでもなおその機能を保持することが可能である。また、当業者に周知であり、かつ以下に詳細に記載する、多様な組換えDNA技術を利用して、修飾タンパク質鎖を容易に設計し、かつ製造してもよい。例えば、鎖は、アミノ酸置換、付加、欠失等によって、一次構造レベルで、天然存在配列と異なっていてもよい。いくつかの組み合わせでこれらの修飾を用いて、最終修飾タンパク質鎖を産生してもよい。
【0063】
一般的に、部位特異的突然変異誘発などの、多様な周知の技術によって、MHCモノマーをコードする遺伝子の修飾を容易に達成可能である。所望の特性に適したアッセイにおいて、ルーチンのスクリーニングによって、任意の特定の修飾の効果を評価してもよい。例えば、適切な抗体を用いた競合的イムノアッセイによって、サブユニットの免疫学的特性の変化を検出してもよい。標準的インビトロ細胞アッセイまたは以下の実施例セクションに記載する方法を用いて、モノマーがT細胞を活性化する能力に対する修飾の効果を試験してもよい。標準的技術にしたがって、酸化還元安定性もしくは熱安定性、疎水性、タンパク質分解に対する感受性、または凝集する傾向などの他の特性の修飾をすべてアッセイする。
【0064】
本発明は、抗原性ペプチドおよび/またはT細胞受容体に対するサブユニットの親和性を増加させ、サブユニットの安定性、精製、および調製を促進することを含めて、多様な目的を念頭において調製される、MHCモノマーのアミノ酸配列修飾を提供する。また、モノマーを、血漿半減期を修飾するか、療法有効性を改善するか、または本発明の複合体の療法的使用中の副作用の重症度もしくは副作用の発生を低下させるように修飾してもよい。サブユニットのアミノ酸配列修飾は、通常、天然または天然存在アレルには見られない、あらかじめ決定された変異体である。変異体は、典型的には、天然存在類似体と同じ生物学的活性(例えばMHC-ペプチド結合)を示す。
【0065】
本発明の挿入修飾は、MHCモノマーのあらかじめ決定された部位に、1つまたは複数のアミノ酸残基が導入され、かつ既存の残基を置き換えるものである。例えば、挿入修飾は、サブユニットのアミノ末端またはカルボキシル末端への異種タンパク質またはポリペプチドの融合であってもよい。
【0066】
他の修飾には、異種シグナル配列とモノマーの融合、および当技術分野に公知であるような免疫グロブリン鎖またはその断片など、増強された血漿半減期を有する(通常、>約20時間)ポリペプチドへのモノマーの融合が含まれる。
【0067】
置換修飾は、少なくとも1つの残基が取り除かれ、かつ異なる残基がその代わりに挿入されているものである。非天然アミノ酸(すなわち天然タンパク質には通常、見られないアミノ酸)、ならびに等比体積の(isosteric)類似体(アミノ酸または別のもの)もまた、本発明での使用に適している。
【0068】
ポリペプチド主鎖の構造(例えばシートまたはらせんコンホメーションとしての構造)、ターゲット部位の分子の電荷もしくは疎水性、または側鎖のかさ(bulk)の維持に対する影響が異なる置換残基を選択することによって、機能または免疫学的同一性の実質的な変化を作製する。一般的に、機能の最大変化を生じると期待される置換は、(a)親水性残基、例えばセリンもしくはスレオニンを、疎水性残基、例えばロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリン、もしくはアラニンに対して(もしくはこれらによって)置換するか;(b)システインもしくはプロリンを、任意の他の残基に対して(もしくはこれらによって)置換するか;(c)電気的陽性側鎖を有する残基、例えばリジン、アルギニン、もしくはヒスチジンを、電気的陰性残基、例えばグルタミンもしくはアスパラギンに対して(もしくはこれらによって)置換するか;または(d)かさばる側鎖を有する残基、例えばフェニルアラニンを、側鎖を持たないもの、例えばグリシンに対して(もしくはこれらによって)置換するものであろう。
【0069】
モノマーの置換修飾にはまた、MHCサブユニットドメインの1つまたは複数に対して、ルーチンの方法によって、他のタンパク質の機能的に相同な(少なくとも約70%の相同性を有する)ドメインを置換するものが含まれる。この目的のために特に好ましいタンパク質は、他の種、例えばネズミ種由来のドメインである。
【0070】
別の種類の修飾は、欠失修飾である。欠失は、MHCモノマー配列からの1つまたは複数のアミノ酸残基の除去によって特徴付けられる。典型的には、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを欠失させる。システインまたは他の不安定な残基の欠失もまた、例えばMHC複合体の酸化安定性を増加させる際に望ましい可能性もある。潜在的なタンパク質分解部位、例えばArgArgの欠失または置換を、塩基性残基の1つを欠失させるか、またはグルタミニルもしくはヒスチジル残基によって1つを置換することによって、達成する。
【0071】
好ましい種類の置換または欠失修飾は、サブユニットの膜貫通領域を伴うものを含む。MHCモノマーの膜貫通領域は、細胞膜の脂質二重層にまたがるのに適したサイズの、高度に疎水性または親油性のドメインである。これらは、MHC分子を細胞膜に係留すると考えられる。典型的には膜貫通ドメインのヒドロキシル化残基を欠失させるかまたは置換することによって、膜貫通ドメインを不活化すると、その細胞または膜脂質親和性が減少し、かつ水溶解度が改善されることによって、回収および配合が容易になるであろう。あるいは、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを欠失させて、潜在的に免疫原性であるエピトープの導入を回避してもよい。この部位で、実質的に親水性であるヒドロパシー・プロファイルを生じるのに十分な残基を欠失させることによって、または同じ結果を達成する異種残基で置換することによって、膜結合機能の不活化を達成する。
【0072】
膜貫通不活化MHCモノマーの主な利点は、組換え宿主の培地に分泌可能であることである。この変異体は、血液などの体液に可溶性であり、かつ細胞膜脂質に認識可能な親和性を持たず、したがって組換え細胞培養物からの回収がかなり単純化される。典型的には、本発明の修飾MHCモノマーは、機能する膜貫通ドメインを持たず、かつ好ましくは機能する細胞質配列を持たないであろう。こうした修飾MHCモノマーは、本質的に、MHCモノマーの細胞外ドメインの有効部分からなるであろう。いくつかの状況において、モノマーは、可溶性が有意に影響を受けない限り、膜貫通領域由来の配列(最大約10アミノ酸)を含む。
【0073】
例えば、膜貫通ドメインを、任意のアミノ酸配列、例えば、全体として親水性ヒドロパシー・プロファイルを示す、約5〜50個のセリン、スレオニン、リジン、アルギニン、グルタミン、アスパラギン酸等の親水性残基のランダム配列またはあらかじめ決定した配列によって置換してもよい。欠失(切り詰められた(truncated))モノマー同様、これらのモノマーは、組換え宿主の培地に分泌される。
【0074】
グリコシル化変異体が、本発明の範囲内に含まれる。これらには、グリコシル化を完全に欠く変異体(非グリコシル化)および天然型より少なくとも1つ少ないグリコシル化部位を有する変異体(脱グリコシル化)、ならびにグリコシル化が変化している変異体が含まれる。含まれるのは、脱グリコシル化および非グリコシル化アミノ酸配列変異体、天然非修飾アミノ酸配列を有する脱グリコシル化および非グリコシル化サブユニットである。例えば、置換または欠失突然変異誘発を使用して、サブユニットのN連結またはO連結グリコシル化部位を排除して、例えばアスパラギン残基を欠失させるか、またはリジンもしくはヒスチジンなどの別の塩基性残基によって置換する。または、グリコシル化認識部位を取り除くことによって、グリコシル化を妨げるため、アスパラギン残基が未変化のままであったとしても、グリコシル化部位を構成する隣接残基を置換するかまたは欠失させる。加えて、原核生物は、ポリペプチドにグリコシル化を導入することができないため、組換え原核細胞培養においては、天然モノマーのアミノ酸配列を有する非グリコシル化MHCモノマーが産生される。
【0075】
適切な宿主細胞を選択することによって、またはインビトロ法によって、グリコシル化変異体が好適に産生される。例えば、酵母は、哺乳動物系のものとは有意に異なるグリコシル化を導入する。同様に、MHC供給源とは異なる種起源(例えばハムスター、ネズミ、昆虫、ブタ、ウシ、またはヒツジ)または異なる組織起源(例えば肺、肝臓、リンパ系、間葉系、または上皮)を有する哺乳動物細胞を、例えば上昇したレベルのマンノースまたは異なる比のマンノース、フコース、シアル酸、および哺乳動物糖タンパク質に典型的に見られる他の糖によって特徴付けられるように、多様なグリコシル化を導入する能力に関して、ルーチンにスクリーニングする。サブユニットのインビトロ・プロセシングは、典型的には、酵素的加水分解、例えばノイラミニダーゼ消化によって達成される。
【0076】
本発明で使用するのに適したMHC糖タンパク質は、パパインでの処理による、3M KClでの処理による、および界面活性剤での処理による可溶化を含む多様な技術を用いて、非常に多数の細胞から単離されている。例えば、クラスIタンパク質の界面活性剤抽出後、アフィニティー精製を用いてもよい。次いで、透析または選択的結合ビーズによって、界面活性剤を取り除いてもよい。任意のMHC I所持細胞からの単離によって、例えばターゲットとされる癌またはウイルス疾患を患う個体から、分子を得てもよい。
【0077】
当業者に知られる標準的技術を用いて、単離MHC糖タンパク質からの個々の重鎖の単離を容易に達成する。例えば、SDS/PAGE、およびゲルからの重鎖の電気溶出を用いて、重鎖を単離してもよい(例えば、Dornmair et al.、上記、およびHunkapiller, et al., Methods in Enzymol. 91:227-236 (1983)を参照されたい)。また、Gorga et al. J. Biol. Chem. 262:16087-16094 (1987)およびDornmair et al. Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 54:409-416 (1989)に記載されるように、SDS/PAGE後、電気溶出を用いて、MHC I分子由来の別個のサブユニットを単離する。当業者は、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、またはアフィニティー・クロマトグラフィーなどの、分子を分離する、いくつかの他の標準法を用いてもよいことを認識するであろう。
【0078】
または、いくつかのクラスIおよびクラスIIタンパク質のアミノ酸配列が知られ、かつ遺伝子がクローニングされており、したがって、組換え法を用いてMHCモノマーを発現させてもよい。これらの技術によって、上述のようなMHCモノマーのいくつかの修飾が可能になる。例えば、組換え技術は、疎水性膜貫通ドメインを欠失させる、カルボキシ末端切り詰めの方法を提供する。カルボキシ末端はまた、例えば分子内にシステインおよび/またはリジン残基を導入することによって、リガンドまたは標識の結合を容易にするように、任意に選択され得る。合成遺伝子には、典型的には、発現ベクターへの挿入および遺伝子配列の操作を補助する、制限部位が含まれるであろう。次いで、適切なモノマーをコードする遺伝子を発現ベクターに挿入して、適切な宿主、例えば大腸菌、酵母、昆虫、または他の適切な細胞で発現させ、かつ組換えタンパク質を得る。
【0079】
遺伝子が入手可能であれば、配列の容易な操作が可能になるため、構築の第二世代には、キメラ構築物が含まれる。例えば、クラスI重鎖のα1、α2、α3ドメインを、典型的には、クラスIのα3ドメインによって、β-2ミクログロブリンと連結して、かつ同時発現させて複合体を安定化させてもよい。任意で、クラスIまたはクラスII遺伝子の膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインもまた含まれてもよい。
【0080】
当技術分野に公知の方法によって、適切なDNA配列由来の発現ベクターの構築および組換え体産生を行う。DNAおよびRNA単離、増幅、およびクローニングに、標準的技術を用いる。一般的に、製造者の仕様書にしたがって、DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼ等を伴う酵素反応を行う。一般的に、Sambrook et al., Molecular Cloning--A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N. Y., 1989にしたがって、これらの技術および多様な他の技術を実行する。この文献の手法は、当技術分野に周知であると考えられる。
【0081】
発現は原核系または真核系におけるものであってもよい。適切な真核系には、酵母、植物、および昆虫系、例えば誘導性プロモーター下のショウジョウバエ(Drosophila)発現ベクターが含まれる。原核生物は、最も頻繁には、大腸菌の多様な株に代表される。しかし、他の微生物株、例えばバチルス、例えば枯草菌(Bacillus subtilis)、シュードモナス属(Pseudomonas)の多様な種、または他の細菌株もまた、使用可能である。こうした原核系において、宿主と適合する種に由来する複製部位および制御配列を含有するプラスミドベクターを用いる。例えば、大腸菌は、典型的には、Bolivar et al., Gene (1977) 2:95による大腸菌種に由来するプラスミドであるpBR322の誘導体を用いて形質転換される。一般的に用いられる原核制御配列は、本明細書において、転写開始のためのプロモーターを、任意でオペレーターと共に、リボソーム結合部位配列を伴って含むと定義され、β-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトース(lac)プロモーター系(Change et al., Nature (1977) 198:1056)およびトリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel et al., Nucleic Acids Res. (1980) 8:4057)およびλ由来PLプロモーターおよびN-遺伝子リボソーム結合部位(Shimatake et al., Nature (1981) 292:128)のような一般的に用いられるプロモーター系が含まれる。原核生物と適合する任意の入手可能なプロモーター系が使用可能である。
【0082】
真核宿主に有用な発現系は、適切な真核遺伝子に由来するプロモーターを含む。酵母に有用なプロモーターの種類には、例えば、解糖酵素の合成のためのプロモーターが含まれ、3-ホスホグリセリン酸キナーゼのものが含まれる(Hitzeman, et al., J. Biol. Chem. (1980) 255:2073)。他のプロモーターには、例えば、エノラーゼ遺伝子由来のもの(Holland, M. J., et al. J. Biol. Chem. (1981) 256:1385)またはYEp 13から得られるLeu2遺伝子由来のもの(Broach, J., et al., Gene (1978) 8:121)が含まれる。誘導性プロモーター下のショウジョウバエ発現系(Invitrogen, San Diego, CA)もまた、使用可能である。
【0083】
適切な哺乳動物プロモーターには、SV40由来の初期および後期プロモーター(Fiers, et al., Nature (1978) 273:113)、またはポリオーマ、アデノウイルスII、ウシ・パピローマウイルスもしくは鳥類肉腫ウイルスに由来するものなどの他のウイルス・プロモーターが含まれる。適切なウイルスおよび哺乳動物エンハンサーを上に引用する。
【0084】
当技術分野によく理解される標準的連結および制限技術を使用して、標準法を用い、MHC配列に機能可能であるように連結した前述の制御エレメントから、発現系を構築する。単離プラスミド、DNA配列、または合成オリゴヌクレオチドを切断し、最適化して、かつ所望の形に再連結する。
【0085】
当技術分野に一般的に理解され、かつこれらの市販されている制限酵素の製造者がその詳細を明記する条件下で、適切な単数の制限酵素(または複数の酵素)で処理することによって、部位特異的DNA切断を行う。一般的に、約1μgのプラスミドまたはDNA配列を、約20μlの緩衝溶液中、1単位の酵素によって切断する;過剰な制限酵素を用いて、DNA基質の完全な消化を確実にしてもよい。各インキュベーション後、フェノール/クロロホルムでの抽出によってタンパク質を取り除き、かつその後、エーテル抽出してもよく、かつエタノールでの沈殿後、Sephadex G-50スピンカラム上に流すことによって、水性画分から核酸を回収してもよい。望ましい場合、切断断片のサイズ分離を行ってもよい。
【0086】
4つのデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)の存在下で、大腸菌DNAポリメラーゼI(Klenow)の大断片で処理することによって、制限切断断片を平滑化してもよい。Klenowで処理した後、混合物をフェノール/クロロホルムで抽出し、かつエタノール沈殿した後、Sephadex G-50スピンカラム上に流す。
【0087】
市販されている自動化オリゴヌクレオチド合成装置を用いて、合成オリゴヌクレオチドを調製する。しかし、本発明のタンパク質において、合成遺伝子が好適に使用される。遺伝子設計には、コード配列部分をこれらのコード類似体で置換するため、遺伝子の容易な操作を可能にする、制限部位が含まれてもよい。
【0088】
E. coli Genetic Stock Center、CGSC #6135から得た大腸菌株MM294、または他の適切な宿主を、連結混合物で、まず形質転換することによって、プラスミド構築物の正しい連結を確認してもよい。アンピシリン、テトラサイクリン、もしくは他の抗生物質耐性によって、または当技術分野で理解されるように、プラスミド構築の様式に応じた他のマーカーを用いることによって、成功した形質転換体を選択してもよい。次いで、任意でクロラムフェニコール増幅後、形質転換体からプラスミドを調製する。単離したDNAを制限によって分析し、および/またはMessing, et al., Nucleic Acids Res. (1981) 9:309にさらに記載されるような、Sanger, F., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1977) 74:5463のダイデオキシ法によって、またはMaxam, et al., Methods in Enzymology (1980) 65:499の方法によって、配列決定する。
【0089】
次いで、構築したベクターをタンパク質の産生に適した宿主に形質転換する。用いる宿主細胞に応じて、こうした細胞に適した標準的技術を用いて、形質転換を行う。実質的な細胞壁バリアを含有する原核生物または他の細胞には、Cohen, S. N., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1972) 69:2110に記載されるような、塩化カルシウムを使用したカルシウム処理、またはManiatis, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (1982) Cold Spring Harbor Press, p. 254に記載されるようなRbCl法を用いる。こうした細胞壁を持たない哺乳動物細胞には、Graham and van der Eb, Virology (1978) 52:546のリン酸カルシウム沈殿法またはエレクトロポレーションが好ましい。Van Solingen, P., et al., J. Bacter. (1977) 130:946およびHsiao, C. L., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1979) 76:3829の方法にしたがって、酵母への形質転換を行う。
【0090】
次いで、MHC配列の発現を支持する条件下で形質転換細胞を培養し、かつ組換えにより産生されたタンパク質を培養から回収する。
【0091】
MHC結合性ペプチド
抗原提示細胞(APC)の表面上のMHC糖タンパク質による抗原の提示は、抗原性タンパク質がより小さいペプチド単位に加水分解されるのに続いて起こると考えられる。抗原性タンパク質内のこれらのより小さいセグメントの位置は、実験的に決定可能である。これらのMHC結合性ペプチドは、長さ約8〜約10、おそらく約8〜約11、または約8〜約12残基であると考えられ、かつアグリトープ(MHC分子に認識される)およびエピトープ(T細胞上のT細胞受容体によって認識される)両方を含有する。エピトープは、長さ約8〜約10、おそらく約8〜約11、または約8〜約12残基の直鎖配列であり、抗原特異的T細胞受容体に認識される。アグリトープは、MHC糖タンパク質とペプチドの結合の原因となる、連続性または不連続性配列である。本発明は、推定上のMHC結合性ペプチドを評価して、こうした断片をMHCモノマーまたは修飾MHCモノマーとの三元複合体に取り込み可能であるかどうかを決定するための、系、キット、およびアッセイを提供する。
【0092】
テトラマーまたは他のマルチマーの形成を容易にするため、モノマーがビオチン化されていることが、現在好ましい。好ましくは、タグ付けしたモノマーを多価コア実体に付着させるのに使用可能な部分で、交換モノマーのマルチマーにタグ付けする。例えば、アッセイに用いるモノマーにビオチンをタグ付け可能である場合、細胞表面、リポソーム等のアビジン化多価実体に、モノマーを結合することによって、マルチマーを形成することも可能である。好ましくは、ビオチン化した交換モノマーをストレプトアビジンまたはアビジンに結合して、PEで検出可能に標識されている、テトラマーを形成することによって、マルチマーを形成する。次いで、TCR所持細胞のテトラマー「染色」の決定は、本明細書の実施例に例示されるように、フローサイトメトリーを用いて、容易に決定される。
【0093】
主要なIFN-γ産生体である、拡大Vβファミリーによって特徴付けられるCD4+ GALおよびCD8+ GAL
CD4+およびCD8+ GAL集団内のVβファミリーの拡大が、実際に疾患との戦いにおける大きな機能的役割の指標であるのかどうかを調べるため、拡大されたVβファミリーにしたがってGALを選別し、かつサイトカイン放出アッセイにおいて分析した。上に詳述するように、CDR3スペクトラタイピングをフローサイトメトリーと組み合わせると、CD4+ GAL集団における主要な提示Vβファミリーとして、患者#1ではVβ9およびVβ14、患者#2ではVβ8およびVβ9、かつ患者#5ではVβ7が認識可能になり、ならびにCD8+ GALにおいては、患者#1でVβ3が認識可能になった。これらの患者は、TBに関して陽性の病的診断を有した。本発明者らは、適切なVβファミリーを発現するT細胞を選別し、かつ上述のように、MTB感染マクロファージに48時間曝露した。これらのT細胞によるIFN-γの産生は、匹敵する細胞数のGAL全集団によって産生されるより、はるかにより高い濃度を生じた(CD4+ GALに関しては、1300〜9955pg/ml、CD8+ GALに関しては、1185pg/ml;図5A〜C)。予期されるように、MHCクラスIに対して向けられるmAbは、Vβ3+CD8+ GALのサイトカイン産生を阻害した。CD4+、Vβ選別GALでは、DR、DP、またはDQ mAbのいずれかによって、IFN-γ産生が遮断され、選別されたT細胞が単一のMHCクラスIIアレルに拘束されていることが示唆された。
【0094】
ESAT-61-20を認識する、特定の拡大Vβファミリーに属するCD4+ GAL
選別したCD4+ GALの抗原特異性を決定するため、Vβ選別したT細胞がMTB由来DR結合性ペプチドESAT-61-20およびESAT-672-95を認識する能力の分析を行った。これらの研究において、Vβ選別したGALは、患者#1、#2、および#5において、ESAT-61-20を認識し、かつIFN-γを産生し;一方、ESAT-672-95は、患者#5のVβ7+ GALにおいてのみ、バックグラウンドレベルを超えたIFN-γ産生上昇を誘導した(図6E)。ペプチド濃度の増加は、図6B、D、およびFに示すように、より強いサイトカイン応答を誘発したが、試験した最高ペプチド濃度では、結果は多様であり、患者#2におけるさらなる増加から、患者#5におけるIFN-γ抑制までの範囲があった。同一の実験設定で、対応するVβが枯渇したGAL集団を分析すると、バックグラウンドレベルを超えて測定可能なIFN-γ産生がないように、これらのGALがESAT-61-20ペプチドを認識しないことが観察された(患者#1ではVβ9陰性GAL:4pg/ml;患者#2ではVβ9陰性GAL:検出レベル未満;患者#5ではVβ7陰性GAL:45pg/ml;図6A中、データ示さず)。したがって、ESAT-61-20の認識は、これらの3人の患者において、単一Vβファミリーに拘束され、または患者#5では、単一のVβ7+ T細胞クローンにさえ拘束された。
【0095】
さらに、生検において、TBに特異的な病理学的病変がない患者において、ESAT-6特異的免疫応答を調べた。どちらの患者のESAT-61-20の認識も、実質量のIFN-γおよびGM-CSFの産生を導き、これはHLA-DRに対して向けられるmAbによって遮断可能であった(図8A〜C)。IL-4産生は検出不能であった(データ示さず)。他の患者で見られるように、ESAT-672-95は、測定可能なサイトカイン産生を誘導せず、IL-4さえ誘導しなかった。
【0096】
CD8+ GALにおいてTc1サイトカイン応答を誘発するMTB由来HLA A2結合性ペプチド
HLA A2+患者のCD8+ GAL集団において、抗原性ペプチドの認識を調べた(表1、図8A〜C)。MTB由来HLA A2結合性ペプチド、Ag85A48-56、Ag85A242-250、Ag85B143-152、Ag85B199-207、および19kDa Ag88-97を、それぞれ、T2細胞に負荷し、CD8+ GALを添加し、かつインキュベーション48時間後、インビトロ・サイトカイン産生を測定した。黒色腫由来Gp100ペプチドを陰性対照として用いた。
【0097】
19kDa Ag88-97は中程度の免疫応答を誘発したが、IFN-γおよびGM-CSF産生によって決定されるように、最も免疫原性であるペプチドは、Ag85A242-250およびAg85B199-207であることがわかった。試験した他のペプチドは、いずれの患者でも、対照ペプチドgp100よりはるかに高いサイトカイン産生を誘発しなかった。IL-4は、いずれの場合でも検出不能であった(データ示さず)。さらに、ESAT-6より提供される3つの候補A2結合性ターゲット・ペプチドに対する反応性に関して、患者#3由来のGALを分析した。これらのGALは、MHCクラスI拘束性方式で、優先的にESAT-628-36を認識し、かつ実質量のIFN-γおよびGM-CSFを産生し(図9A〜B)、ESAT-617-25およびESAT-662-70は少量のサイトカイン産生を誘発した。
【0098】
GALおよびPBLのVβレパートリー間で相違が検出されたため、フローサイトメトリー分析において、Tet-Ag85B+ GALの規模を測定し、かつPBLで見られる頻度と比較した(患者#7において例示するようなもの)。潜伏性CMV感染が大部分の患者に存在すると期待され、したがって、HLA-A2結合性pp65ペプチドを陽性対照および参照点として用いた。Tet-Ag85B+およびTet-CMVpp65+ T細胞両方の頻度は、GAL集団において、かつPBLにおいて、類似であり、急性ウイルス感染で見られるテトラマー陽性T細胞の高頻度、および多くの悪性腫瘍で見られる低頻度の間の範囲であった。これらの2つの区画で見られる類似の量は、TCRランドスケープを比較した際に見られた明確な量的相違とはいくぶん一致しないと解釈可能であった。しかし、CDR3スペクトラタイピングによって、Tet-Ag85B+ GAL集団が、広い範囲の異なるVβファミリーに属するT細胞からなり、かつしたがって多様なT細胞クローンからなることが明らかになった(データ示さず)。PBLの入手可能性が限定されているため、GALにおける分子TCR組成を、PBLにおけるものと比較しなかった。これらのデータによって、テトラマー染色が、異なる解剖学的区画のMHC拘束性および抗原特異的T細胞の列挙に関する情報を提供するが、例えばTCR-CDR3分析を用いて、クローンレベルでPBLおよび組織由来リンパ球を定性的に比較することによって、これを補足可能であることが示される。
【0099】
インサイチューのCD8+ GALの新たな観点を提供する共焦点レーザー走査型顕微鏡(CLSM)
TB特異的病変を提示する患者#3および#4において、Ag85b199-207および19kDa Ag88-97のHLA A2テトラマーで、肺切片を染色することによって、抗原特異的CD8+ GALをインサイチューで視覚化した。TCR結合テトラマーは、CLSMでは赤色に見え、一方、CD8αに対して向けられるmAbは、FITC標識され、緑色に見える。ネズミ・リンパ系組織で先に観察されたように、テトラマー染色は、T細胞の1つ(またはいくつか)の極でクラスター形成するようであるTCRを視覚化し、球状の細胞上、単数または複数の鮮赤色の点の印象を与えたが、一方、CD8は、より一様に分布しているようであり、細胞に均質な環状の外見を与えた。二重発現に際して、赤色および緑色は、細胞の橙色〜黄色の着色を生じた。陰性対照としてgp100-MHCテトラマーで染色すると、単なるバックグラウンド染色が導かれた。テトラマー陽性細胞は、肺切片内のいくつかの異なる場所に集中した。
【0100】
潜伏性結核の免疫学的状況は、疾患のこの状態に関して適切な動物モデルがないため、理解および研究が困難であった。さらに、ヒトにおけるPBLの分析から得られる結果は、感染部位自体での免疫応答を必ずしも反映しない可能性がある。いくつかの研究は、PBLにおいて、IL-10などのTh2型サイトカインが顕著であることを報告する。他方、活性TB患者の他の区画、例えば胸水由来のT細胞、または気管支肺胞洗浄液によって単離されたT細胞は、顕著なIFN-γおよび/または増殖性応答を示し、これは、分析した同じ患者のPBLにおいては、低いかまたは存在さえしなかった。この現象は、おそらくCCR2またはCCR5などの特定のケモカイン受容体のため、特殊なMTB反応性T細胞が感染部位に隔離されてしまうためである可能性がある。したがって、肺組織自体における免疫学的事象をより詳細に見ると、MTBに対する防御免疫のよりよい理解につながる可能性がある。
【0101】
TCR抗原認識の細かい特異性は、大部分、TCR VαおよびVβ鎖の相補性決定領域3に存する。抗原に応答した抗原特異的T細胞のクローン性拡大は、CDR3スペクトラタイピングにおいて、Vβファミリー内の単数またはいくつかの過剰提示された(overrepresented)CDR3ピークとして反映される。最終的には、T細胞のこのクローン性拡大は、ウイルスおよび細菌感染両方に関して、ヒト肺組織から単離されたものが、個々のVβファミリーのオリゴクローン性またはモノクローン性拡大によって特徴付けられると記載されたように、Vβレパートリー内の適切なVβファミリーの増大を生じることになり得る。GALにおけるこれらのVβ拡大は、試験中の患者のPBLでは観察不能であり、MTB反応性T細胞が、実際に肺に隔離されていたことを示した。活性ヒトTBに関する研究において、匹敵する区画化が報告されており、この場合、胸水由来のリンパ球のVβレパートリーは、PBLで見られるものとは異なっていた。
【0102】
拡大されたGALは、MTB感染自己マクロファージを容易に認識し、かつMTBに対する免疫に寄与することがよく確立されているサイトカインであるIFN-γを産生した。潜伏性TB患者における、測定可能なIL-4の非存在下での、CD4+ GALおよびCD8+ GALによるIFN-γのこの強い産生は、ヒトにおいて、肺組織に存するリンパ球による細胞仲介性免疫応答が、実際に、MTB封じ込めに関与していることを示す。
【0103】
拡大されたMTB特異的T細胞クローンの頻度は、活性TB患者のPBLにおけるCD8+ Tet-19kD Ag+反応性T細胞に関する先に公表された知見(CD8+ PBLのおよそ2%)、またはMelan-A/MART127-35特異的腫瘍浸潤T細胞に関して見られるような(TILの5.68%)、組織に存するリンパ球に関して比較した際、予想外に、肺組織で高かった(単一の患者において、CD4+ GALの最大27%に達する)。これらの研究で用いたテトラマー分析または限界希釈アッセイが、図9A〜Bに示すように、多様なクローンの抗原特異的T細胞の頻度を反映している可能性があり、一方、GALでは単一クローンの拡大が見られることを考慮すると、潜伏性TBに関するこの頻度増加は、より顕著でさえあるようである。他方、急性ネズミ・リステリア症における臓器特異的テトラマー反応性T細胞応答を分析した際、他者によって、GALにおけるものと類似の頻度が検出された。リステリア症において、これらの頻度は、疾患回復に成功した後、8%未満に下落した。潜伏性TBでは、生存MTBがマクロファージ内部に長年存在し続けるために、疾患が本質的に排除されないことから、頻度は上昇したままであると予期することが可能である。興味深いことに、MTB反応性GALはまた、患者#6および#7に見られるように、明確なTB特異的病変がない肺組織にも存在した。
【0104】
潜伏性TBと診断された3人の患者に関して、主要な拡大Vβファミリーを含むCD4+ GAL集団における細胞の抗原特異性を定義した:患者#1および#2ではVβ9、ならびに患者#5ではVβ7。これらのGALは、全CD4+ GAL集団に比較した際、MTBに反応して、増加した量のIFN-γを産生し、かつすべてESAT-6特異的であった。患者#5において、例えば、単一のVβ7陽性T細胞クローン(表2)が、ESAT-6エピトープの認識専門の、肺に存するリンパ球の19%を構成した。初期分泌抗原性ターゲット6(ESAT-6)は、BCGおよび大部分の環境由来ミコバクテリウム種では発現が存在しないため、ヒトにおける活性または潜伏性MTB感染の検出に感受性かつ特異的であると暗に示されている。さらに、これらの拡大されたリンパ球は、全GAL集団において、ESAT-61-20由来のペプチドを認識する単独のCD4+ T細胞であった。この知見は、肺におけるMTB抗原を選択する非常に集中的な免疫応答を示す。これらのデータは、MTB封じ込めの成功が、いくつかのTCRクローン型に非常に集中し、かつ限定される可能性があることを示す。すべての拡大されたVβファミリーを、MTB関連エピトープの認識に結びつけることは不可能であった。CMVなどの肺の他の再発性または慢性感染の免疫学的制御もまた、適切に拡大されたT細胞の存在を必要とする可能性があり得る。
【0105】
これらのデータの臨床的暗示は重要である。各臓器が、質または量の点で、同じ病原体に対して、異なる免疫応答を装備し得るという観察を考慮すると、ヒトTBにおける肺の免疫学的状況を理解することは、有効なMTBワクチン戦略の開発に必須である。理想的なワクチンは、広く適用可能であり、かつ有効でなければならない。この例では、調べたTB患者において、感染の原発部位で潜伏性を維持する際の主な機能因子の中に、ESAT-61-20ペプチド特異的CD4+リンパ球があったように、有効性は、ESAT-6 Agを含むことによって、強く増強されうる。
【0106】
ESAT-6は、MTBに対する免疫応答において、確かに重要な抗原である可能性があり、研究は、ネズミ・モデルにおけるワクチン接種にこの抗原を推奨するか、または既に使用に成功している。
【0107】
しかし、免疫優性エピトープ(有効性および適用可能性の両方に潜在的に重要である)に関するデータは、世界的に異なる。結果は、抗原のアミノ末端(N末端)およびカルボキシ末端(C末端)部分をカバーするペプチドESAT-61-20およびESAT-672-95を含み、かつコーカサス・ドイツ人患者のGALに対して行った、本明細書に提示する例で得た。この集団に基づくと、結果は、免疫優性エピトープがESAT-6のN末端部分に存し、かつ多様なHLA DR分子上に提示可能であることを示し、そのため、ドイツ人患者を伴うUlrichらによるPBLに関する研究、ならびにBoston, Massachusettsの最近のPPD陽転者に関する同じグループの報告と一致する。他方、世界の他の地域の研究では、他のESAT-6エピトープが推奨される:エチオピア人患者は、抗原の中央部分(アミノ酸42〜75位)を優先的に認識し、一方、クウェート人およびデンマーク人患者は、最も頻繁には、C末端領域(アミノ酸72〜95位)を認識する。MustafaらおよびRavnらの両者に論じられるように、この現象は、異なる民族群の遺伝子HLA構成の多様性から生じ得る。遺伝的に異なるマウスのESAT-6リコール応答に関して類似の観察が行われており、かつこの遺伝要因はまた、新規TBワクチン接種および/または検出系の開発において、考慮に入れるべきである。
【0108】
結核におけるCD8+リンパ球の重要な役割に関して、実質的な証拠が存在する。本明細書の実施例に含まれる研究において、肺組織で、MTB特異的CD8+ GALのクローン性拡大もまた観察され、例えば、患者#1におけるCD8+ GAL集団の17%を構成するVβ3陽性T細胞クローンがある。したがって、重要なターゲットとして文献に報告されている分泌Ag、85A、85B、およびESAT-6、ならびに19kDaリポタンパク質に由来するHLA-A2提示ペプチド・パネルをスクリーニングすることによって、CD8+ GALの主な抗原性ターゲットを決定する研究を行った。潜伏性TBのこれらの研究において、Ag85A242-250およびAg85B199-207、ならびにESAT-628-36の優先的な認識、かつ19kDa Ag88-97への中程度の反応が観察された。対照的に、Ag85A48-56およびAg85B143-152は、あるとしてもわずかな応答しか誘発しなかった。この観察が、肺由来CD8+ T細胞の一般的な傾向であるか、または個々の患者に特異な特徴であるかどうかは、より大きいコホートにおいて、さらに研究する必要があり得る。しかし、これらのデータの主な重要性は、Ag85Aおよび85B特異的、ならびにESAT-6および19kDa Ag特異的CD8+ T細胞が、ヒト肺において、機能する免疫細胞として実際に存在し(かつ末梢血におけるだけでなく)、これらの抗原が、潜伏性の維持に関与することである。これらの細胞をエクスビボで視覚化するため、インサイチュー・テトラマー染色後、CLSMを行った。この手法は、ヒト肺組織において、Ag85b特異的および19kDa Ag特異的CD8+ T細胞両方の、前例がない提示を達成した。
【0109】
まとめると、本発明者らは、ヒト潜伏性TBにおいて、CD4+およびCD8+ MTB反応性リンパ球が存在し、非常に拡大され、かつ肺組織で機能性であることを立証する。CD8+テトラマー・インサイチュー染色に加えて、CD4+およびESAT-6反応性T細胞もまた、テトラマー・インサイチュー染色を使用して、肉芽腫組織において、直接視覚化可能であった。CDR3スペクトラタイピングとフローサイトメトリーVβ分析を組み合わせると、これらの同定の強力なツールとなり、これにより、PBLとは異なる集中したリンパ球集団が潜伏性を支配していることを理解することが可能になった。重要なターゲットは、ESAT-6、ならびにAg 85Aおよび85Bのような分泌抗原の特定のペプチドである。将来、これらの抗原をワクチンに統合すると、MTBに対する防御免疫を確立するのに重要であることが立証され得る。
【0110】
したがって、新規ワクチンの有効性を評価するために、潜伏性MTB感染を試験するために、既に確立された治療戦略および新規治療戦略の経過においてMTB根絶に関して試験するために、および潜在的に「防御免疫」を維持するのに必要な閾値を定義するために、生物学的に意味がある代理マーカーを提供するためには、抗MTB反応性CD4+またはCD8+ T細胞のエクスビボ同定が望ましい。本発明者らは、本明細書において、MTBおよびツベルクローシス以外のミコバクテリウム(MOTT)間で共有される抗原、すなわち19kDaリポタンパク質、AG85b、またはMTBのみに存在するESAT-6タンパク質に対して向けられる、HLA-DR4拘束性抗原特異的CD4+ T細胞の同定を報告する。
【0111】
本発明を以下の限定されない実施例によって、さらに例示する。
【0112】
実施例1. 材料および方法
肺結核と診断された患者(7人のうち5人)を、Heidelberg大学病院から採用した。典型的な病巣y X線およびPCRに基づくMTB同定によって、結核を診断した。悪性病巣を排除するため、手術によって肺組織を得た。HE染色によって肉芽腫組織が同定されたならば、新鮮に単離された肺組織を、10% FCSおよび抗生物質を補ったRPMI培地中に入れ、かつ結腸直腸癌組織からT細胞を得るために先に記載されたように処理した。肺肉芽腫肺組織由来のT細胞を肉芽腫関連リンパ球(GAL)と名づけた。7人の患者のうち2人が、それぞれ、リウマチ様関節炎またはサルコイドーシスと診断された(表2に列挙)。すべての患者はPPD反応性に関して陽性と判定された。地元の倫理委員会によって認可された研究に登録した個人のインフォームドコンセントを得た後、血液を抜き取った。
【0113】
フローサイトメトリー
肺結核診断時、および標準的三重療法(リファンピシン、エタンブトール、およびイソニジド)の開始後の異なる時点で、ヘパリン処理した血液を患者から抜き取った。これらの研究に用いたすべての患者は、治療に適合し、かつ肺病巣の排除を示した。Ficoll勾配上の分離によって末梢血単核細胞(PBMC)を得て、かつ90%ウシ胎児血清(FCS)および10% DMSO中、1〜5x107細胞/バイアルで液体窒素中に保存した。凍結末梢血白血球(PBL)を融解し、かつ20% FCSを補ったRPMI-1640中で洗浄し、1% FCSを補ったRPMI中に細胞ペレットを再懸濁し、かつ1μgフィコエリトリン(PE)標識テトラマー試薬と室温で30分間インキュベーションし(MHCクラスIテトラマーの場合)、その後、直接、エネルギー・カップリング色素(ECD)標識抗CD45RA(クローン2H4LDH11LDB9、ネズミIgGl)またはフィコエリトリン-シアニン(PC5)標識抗CD8αmAbクローンB9.11(ネズミIgGl)および抗CD28 mAb(FITC、クローンCD28.2)とインキュベーションした。以下に記載するように、PBLを2時間インキュベーションすることによって、抗原特異的HLA-DR4拘束性CD4+ T細胞の染色を達成した。BD/Pharmingen(San Diego, CA)から購入したCCR5特異的mAb(CD 195)を除いて、すべてのmAbは、Beckman/Coulter, Krefeld, Germanyから得た。
【0114】
フローサイトメトリー分析
Coulter Epics XLおよびXLシステム・ソフトウェア2.1(Beckman-Coulter, Fullerton, CA)を用いて、細胞を分析した。CD8+ CD45RA+またはCD8+ CD45RA-細胞に対して細胞を別個にゲーティングし、その後、CD28+/-細胞に関してゲーティングして、かつ最後にテトラマー結合を評価した。T細胞分化、ホーミングおよびエフェクター機能を反映する、前駆体(CD45RA+、CD28+)、活性化(CD45RA-、CD28+)、記憶(CD45RA-、CD28-)またはエフェクター(CD45RA+、CD28-)Tリンパ球を含む、異なるT細胞亜集団における抗原反応性リンパ球の存在を、記載するように行った。結腸直腸癌患者由来のTILに関して記載されるように、肺結核またはサルコイドーシスを患う患者由来のGAL(肉芽腫関連リンパ球)を調製した(Maeurer et al., J. Exp. Med., 1996)。National Center for Clinical Laboratory Standardsガイドラインにしたがって、尖叉試験を適用し、かつこの実験は地元の倫理委員会によって認可された。公知の方法を用いたゲノム型決定によって、各個体由来のMHCクラスIおよびIIアレルを決定した。
【0115】
テトラマー試薬の調製
HLA-A2野生型(wt)またはHLA-A2突然変異体(HLA-A2m、MHCクラスI-α3ドメインの245位のアラニン→バリン、MHCクラスI重鎖とCD8の相互作用がより有効でないため、減少したバックグラウンド染色を生じる)からテトラマー複合体を調製した。19kDa抗原(VLTDGNPPEV)(アミノ酸88〜97位)(SEQ ID NO:1)、Ag85b(KLVANNTRL)(SEQ ID NO:2)またはESAT-6(アミノ酸28〜36位)(LLDEGKQSL)(SEQ ID NO:3)由来の、HLA-A2に提示されるMTBエピトープのいずれかを、HLAモノマーに負荷した。CMVpp65抗原エピトープ(NLVPMVATV)(SEQ ID NO:4)または黒色腫関連抗原gplOO(YLEPGPVTV)(SEQ ID NO:5)を対照として用いた。 HLA-DR4テトラマー複合体に、(QMPYQPVQSPTQVEA)(19kDA Ag)(SEQ ID NO:6)、(PVEYLQYPSPSMGRD)(Ag85b)(SEQ ID NO:7)または(FAGIEAAASAIQGNV)(ESAT-8-22)(SEQ ID NO:8)のいずれかを負荷した。テトラマー複合体をPEに直接カップリングし、かつPBLと2時間、室温(Ag85bおよび19kDa Ag由来ペプチド)または4℃(ESAT-6)のいずれかでインキュベーションし、その後、本明細書に記載するようなT細胞マーカーで染色した。
【0116】
MTB Ag85複合体由来のペプチド:Ag85a、アミノ酸48〜56位:GLPVEYLQV(SEQ ID NO:21)、Ag85a、アミノ酸242〜250位:KLIANNTRV(SEQ ID NO:22)、Ag85b アミノ酸143〜152位:FIYAGSLSAL(SEQ ID NO:23)、Ag85b アミノ酸199〜207位、KLVANNTRL(SEQ ID NO:2)、19kDa抗原ペプチドVLTDGNPPEV(SEQ ID NO:1)(アミノ酸88〜97位)、ならびに候補ターゲットESAT-6由来ペプチドAIQGNVTSI(SEQ ID NO:24)(アミノ酸17〜25位)、LLDEGKQSL(SEQ ID NO:3)(アミノ酸28〜36位)およびATAELNNA(SEQ ID NO:25)(アミノ酸62〜70位)を用いて、MHCクラスI(HLA-A2)拘束性T細胞応答を試験した。
【0117】
免疫磁気細胞選別および機能アッセイ
抗CD8コーティング免疫磁気ビーズ(Miltenyi, Bergisch Gladbach, Germany)を用いて、3〜5x107 PMBCからCD4+ T細胞を分離した。CD8+ T細胞が枯渇したPBMC集団を、示すように、それぞれのPE標識テトラマー試薬(1μgテトラマー/2xl07細胞)と2時間インキュベーションし、1回洗浄し、かつ免疫磁気ビーズ(Miltenyi, Bergisch Gladbach, Germany)に付着した抗PE指向(directed)mAbと15分間インキュベーションした。10% FCSおよび50 ng/mlヒト組換えIL-7(Dr. Natalio Vita, Sanofi, Franceによって提供された)を補ったGibco(Eggenstein, Germany)から得られる50% AIM-V培地、50% DMEM(高グルコース)を含有する96ウェルプレート中、陽性選択細胞を、24時間休止させた。
【0118】
先に詳細に記載するような、M.ツベルクローシスまたはM.アビウム・イントラセルラレのいずれかに感染させた自己マクロファージに、テトラマー選別細胞を72時間曝露した。天然にプロセシングされかつ提示された抗原のMHCクラスII拘束性T細胞認識を遮断するため、抗DR指向mAb L243を用い、かつ抗MHCクラスI指向mAb w6/32を陰性対照として用いた。上清を採取し、かつELISA系(Diaclone, Besancon, France)を用いて、IFNγまたはGM-CSFに関して試験した。ペプチド再刺激のため、10 ng/ml IL-7および1 IU IL-2 /mlを補った50% AIM-Vおよび50% DMEM(高グルコース)を含有する血清不含培地中、1μg/mlの適切なペプチドとPBL(5xlO6細胞/ml)を7日間インキュベーションした。
【0119】
テトラマー・インサイチュー染色
臨床的結核の徴候がない尖叉+個体(これらの個体は肺癌を排除する診断目的で開胸術を受けた)由来の肺肉芽腫組織由来の新鮮凍結5μm厚切片を、適切なペプチド(最終濃度1μg/ml)を負荷したHLA-A2またはDR4テトラマー複合体、およびDAKO抗体希釈剤ChemMate希釈緩衝液(DAKO, Hamburg, Germany)中で希釈したヒトCD8α鎖のカルボキシ末端のペプチド・マッピングに対して向けられるヤギ抗CD8 Ab(最終濃度0.002μg/ml、Santa Cruz、sc-1141)と、振盪装置上、4℃で一晩インキュベーションした。抗CD4抗体(ヤギ)もまた、DAKOから得た。以下の工程を室温(RT)で行った: PBSで2分間の洗浄を3回、PBS中で緩衝された2%ホルムアルデヒド溶液中で5分間の固定、およびPBSで2分間を3回、その後、希釈緩衝液中のマウス抗PE(最終濃度0.001μg/ml;Miltenyi, Germany)を30分間、その後、PBSで5分間を3回。希釈緩衝液中のビオチン化F(ab)2断片(最終濃度3.25μg/ml、Dianova, Hamburg, Germany)を30分間添加した。Alexa Fluor 594結合ストレプトアビジン(最終濃度1.25μg/ml、Molecular Probes, Mobitec, Gottingen, Germany)およびAlexa Fluor 488ロバ抗ヤギ(最終濃度5 μg/ml)を、希釈緩衝液中で30分間添加し、その後、PBSで5分間3回の洗浄工程および蒸留水で3回の洗浄工程を行った。試料を風乾し、かつVectaShield封入剤(Vector Laboratories, Burlinghame, CA, USA)中で封入した。Zeiss Axioskop 2(Zeiss, Oberkochen, Germany)を用いてスライドを分析し、かつColorview-XS DIGITAL カメラ(Olympus, Hamburg, Germany)で記録した。
【0120】
実施例2. 天然にプロセシングされかつ提示されたミコバクテリウム抗原を認識し、かつ肺肉芽腫病巣に存在する、HLA-DR4拘束性ESAT-6またはAG85bテトラマー選別CD4+ T細胞
Ag85b、19kDAg、およびM.ツベルクローシス特異的抗原ESAT-6から提供されるペプチドを負荷したHLA-DR4テトラマーとの反応性に関して、健康なHLA-DR4+血液ドナー由来のPBLを試験した。尖叉試験陽性個体では、CD4+ T細胞集団において、上に列挙する抗原のいずれに対しても、反応性がもっぱら陽性と判定された。わずかな(nominal)T細胞エピトープの存在下で、CD4+ PBLをインビトロ拡大すると、尖叉試験陽性および陰性個体において、CD4+テトラマー反応性T細胞の拡大を生じた。インビトロ刺激の前および後の両方で、これらのT細胞は、前駆体CD4+CD45RA+CD28+ T細胞サブセットのメンバーであった。Ag85bまたはESAT-6エピトープいずれかを用いたテトラマー選別CD4+ T細胞のエクスビボ分析によって、CD4+、HLA-DR4拘束性、およびAg85b反応性T細胞が、M.ツベルクローシスおよびM.アビウム・イントラセルラレから提供される、天然にプロセシングされかつ提示されたエピトープを認識することが明らかに示された(図11A〜D)。対照的に、DR-4拘束性およびESAT-6特異的T細胞は、M.ツベルクローシスに感染した自己マクロファージのみを認識し、M.アビウム・イントラセルラレに感染したものは認識しなかった。DR4拘束性およびミコバクテリウム種特異的CD4+ T細胞が、尖叉陽性個体の肺由来の肉芽腫病巣にもまた存在するかどうかを調べるため、テトラマー・インサイチュー染色、およびフローサイトメトリーによる肉芽腫関連リンパ球(GAL)のエクスビボ分析を用いて、CD4+およびミコバクテリウム種抗原特異的T細胞を検出した。肺組織におけるテトラマー反応性およびCD4+ T細胞の共染色は、フローサイトメトリーによって、同じ検体由来のGALの染色によって統合された、HLA-DR4拘束性および19kDA抗原特異的またはESAT-6特異的T細胞の存在を示した: CD4+ GALの0.1%がESAT-6エピトープに関して陽性に染色され;19kDa抗原では0.3%;およびAg85b抗原では0.2%であった。HLA-A2に提示されるESAT-6エピトープに関して、類似のエクスビボ状況が当てはまることが見出された: ESAT-6または19kDaテトラマー複合体およびCD8での共染色は、肉芽腫病巣内に、抗原特異的およびHLA-A2拘束性T細胞を検出した。無関係な対照(黒色腫gp100抗原)テトラマー試薬では、テトラマー染色はまったく検出不能であった。
【0121】
エクスビボ単離されたGALのより詳細な分析によって、19kDa抗原、抗原85bまたはESAT-6に対して向けられる、HLA-A2拘束性またはDR4拘束性T細胞の大部分が、主にCD45RA+、CD28+ T細胞集団内に見られることが明らかになった。
【0122】
実施例3. CD45RA+CD28+およびCD45RA-CD28- T細胞集団に存し、かつ抗原特異性に関連する異なる動態を示す、HLA-DR4拘束性およびミコバクテリウム特異的T細胞
長期分析のため、診断時、ならびに診断/療法開始の2週間後および16週間後、5人の肺結核患者からPBLを採取し、かつHLA-DR4拘束性CD4+ T細胞における19kDA抗原、Ag85b、およびESAT-6に対する反応性に関して試験した(図11A)。対応するCD8+およびHLA-A2拘束性T細胞応答を3人の患者で評価した。5人の患者のうち3人は、経時的に、ESAT-6反応性に関してDR4拘束性T細胞の増加を示した(患者MZTB1、-3および-4)。患者MZTBC-3および-4はまた、ESAT-6に対するHLA-A2拘束性エピトープの対応する増加も示し、患者MZTBC-1におけるCD8+ T細胞応答は試験しなかった。5人の患者のうち4人(患者MZTBC-4を除く)は、経時的にAg85bエピトープに関するDR4拘束性T細胞の減少を示した。MHCクラスII拘束性およびAg85反応性T細胞のパターンは、HLA-A2拘束性CD8+免疫応答に類似であることが見出された:DR4拘束性およびA2拘束性両方のAg85b特異的T細胞応答において、患者MZTBC-3は減少を示し、かつ患者MZTBC-4は増加を示した。
【0123】
19kDaリポタンパク質に対するDR4拘束性CD4+ T細胞応答は、より複雑なパターンを示した。患者MZTBC1における治療開始2週間後のAg特異的T細胞の増加を除いて、5人の患者のうち4人が、経時的に、DR4/19kDa Ag反応性T細胞の減少を示し、患者MZTBC4は、療法開始後16週間の期間に渡って、これらのT細胞の増加を示した。HLA-A2に提示される19kDa Agに対して向けられるCD8+ T細胞応答は、患者MZTBC-3および-5において、類似のパターン、すなわち減少した数のAg反応性T細胞を示したが、患者MZTBC-4では異なる動態が明らかになった:19kDa抗原反応性DR4拘束性T細胞は経時的に増加したが、19kDa抗原応答をHLA-A2拘束性CD8+ T細胞集団で測定した場合、減少した。
【0124】
より詳細な分析では、CD45RAおよびCD28での差次染色に基づいて、異なるT細胞サブセットにおいて、ミコバクテリウム抗原反応性T細胞の存在に関して、図11に取りまとめたすべての血液試料を試験した。結果の典型的な例を図13A〜F.7に提供する:ESAT-6、AG85b、および19kDa抗原反応性は、CD8+ T細胞プールの4つの異なるT細胞サブセットすべてで見られ、一方、MHCクラスII(DR4)拘束性T細胞抗原反応性CD4+ T細胞は、主に、前駆体(CD45RA+、CD28+)または活性化(CD45RA-、CD28+)T細胞サブセットのいずれかで見られた。CCR5+ T細胞は、気管支肺胞系へのホーミングに関連すると報告されているため、CCR5陰性およびCCR5陽性T細胞サブセットにおける、ミコバクテリウム反応性およびHLA-A2拘束性またはHLA-DR4拘束性T細胞の存在もまたアッセイした。末梢血中にCCR5+ T細胞が少数であるにもかかわらず、療法開始後の時点とは無関係に、ESAT-6、19kDa Ag、またはAg85bに対して向けられるCD4+ T細胞が、CCR5-染色細胞に比較した際、CCR5+ T細胞集団に、少なくとも同数存在し、または上昇さえしていた。
【0125】
実施例4. T細胞分化表現型に影響を与えないミコバクテリウム特異的およびHLA-DR4拘束性T細胞のインビトロ拡大
健康な尖叉試験陽性個体における状況と同様、結核患者において、DR4の脈絡において、AG85b、19kDa、またはESAT-6抗原のいずれかを認識する少数または検出不能なCD4+ T細胞(例えば患者MZTBC5由来のPBL)が、インビトロで、適切なペプチドで7日間刺激する間に拡大可能であった:主なCD4+ T細胞応答は、やはり前駆体(CD45RA+CD28+)または活性化(CD45RA-CD28+)T細胞サブセット内で検出される(図13AおよびB)。しかし、注目すべきことに、療法開始後の血液採取時点にかかわりなく、わずかなペプチド・エピトープの存在下で抗原反応性CD4+ T細胞のインビトロ拡大が、劇的に、CD45RA-CD28-およびCD45RA+CD28- T細胞サブセットを減少させ、かつCD45RA+CD28+およびCD45RA-CD28+ T細胞集団を増加させた。HLA-A2提示ミコバクテリウム・ペプチドでのインビトロ拡大に供されたCD8+ T細胞に関しても、同じパターンが当てはまることが見出された(データ示さず)。
【0126】
注目すべきことに、個々の患者(例えばMZTBC4およびMZTBC5、図5)は、同じ抗原に対して反応性であるCD4+ T細胞が少数であったにもかかわらず、強いCD8+ミコバクテリウム反応性Ag85b特異的T細胞応答を示した。最近の報告によって、機能するCD8+ T細胞記憶が、CD4 T細胞の補助に依存することが示唆されているが、肺MTB感染のネズミ・モデルからのデータは、拡大およびCD8+ T細胞からのIFN産生が、細胞溶解活性の獲得以外、CD4+ T細胞の補助に依存しないことを示唆した。一般的に、CD4+ T細胞応答のPBLにおける動態パターンは、抗原の性質に依存することが判明し、かつまたELISPOTアッセイにおいて、異なるESAT-6ペプチドの混合物を用いた他の研究で観察されるように、患者間で異なる可能性もある。マクロファージにおいて、MTB関連19kDAリポタンパク質は、有効なMHCクラスIおよびクラスII抗原プロセシングおよび提示に干渉可能であり、かつしたがってT細胞記憶に影響を及ぼし得るため、こうした相違は、末梢循環におけるT細胞のホーミング・シナリオが異なるためである可能性もあり、また再刺激およびT細胞維持に必要な抗原の入手可能性が異なるためである可能性もある。
【0127】
現在まで、抗TBC特異的T細胞反応性を判断するアッセイは、T細胞応答を測定するための供給源として、PBLを用いるという事実によって制限されてきた。末梢T細胞レパートリーは、全リンパ球プールのわずか2%にしか相当せず、かつアッセイ系は、このプールが組織に存在するT細胞の他の98%と平衡状態であるという仮定に基づいている。しかし、ケモカイン受容体5(CCR5)陽性T細胞は、血液、脾臓およびリンパ節でまれであるが、腸の粘膜表面、ならびに呼吸管および生殖器官を含む組織に存在する、記憶T細胞サブセットに相当する。本明細書の実施例で調べたすべての患者において、末梢リンパ球のわずかな部分(最大3%)のみが、CCR5に関して陽性に染色された。末梢循環中のCCR5+ T細胞が少数であるにもかかわらず、HLA-DR4拘束性CD4+ T細胞は、CCR5陰性T細胞集団にのみ存するのではなく、かつHLA-A2拘束性およびテトラマー反応性T細胞は、CCR5+ T細胞において、等しいかまたはより多数であるかいずれかのテトラマー反応性T細胞を示すことが見出されている。この観察は、MTBから提供される抗原に限定されず、HLA-A2拘束性CMVpp65特異的T細胞でもまた同定可能であった。CCR5+細胞は、T細胞活性化のマーカーであるCD25に関して陰性に染色された(データ示さず)。したがって、CCR5がT細胞ホーミングに関連するならば、PBL中のMTB MHCクラスI拘束性およびクラスII拘束性T細胞すべての少なくとも50%は、呼吸管へのホーミングが可能なリンパ球に存する。
【0128】
本発明の基礎を形成する重要な発見の1つは、感染を封じ込め可能である患者由来の肺肉芽腫関連リンパ球においても、インビボ拡大後、診断および治療開始後の異なる時間間隔の肺結核患者においても、またはTST+の健康な個体由来のエクスビボのPBLにおいても、HLA-DR4拘束性応答の大部分が、「前駆体」CD45RA+CD28+および活性化CD45RA-CD28+ CD4+ T細胞集団で見られることである:これらのデータは、適応CD4+ T細胞トランスファー実験が、記憶エフェクターT細胞が実際に「未刺激」表現型を復帰可能であり、この能力が長期免疫監視および保護に重要な「前駆体」T細胞プールに貢献しうることを示唆する、MTB感染のネズミ・モデルと一致する。この現象はまた、肉芽腫病変におけるバチルスのインサイチュー封じ込めにも重要である(図3を参照されたい)。この知見は、生涯に渡る感染、例えばEBV感染患者におけるCD4+ T細胞表現型由来の、より最近のデータにおいて立証されている。EBV潜伏性および溶菌サイクル・タンパク質に対して向けられる、個々のCD4+ T細胞集団は、CD27およびCD28およびCD45RAを発現する。したがって、MHCクラスIIテトラマー複合体をT細胞マーカー分析と組み合わせて用いたエクスビボ分析のみが、潜伏性MTB感染における防御性およびペプチド抗原特異的免疫応答の決定を提供する。
【0129】
実施例5. 潜伏性ヒト肺M.ツベルクローシス感染における非常に集中的なT細胞応答
TBにおける疾患封じ込めは、異なるT細胞サブセットの複雑なネットワーク、および有効な免疫応答を開始し、かつ維持する能力を伴う。関与する免疫事象すべての知識はいまだに完全ではない。MHCクラスII拘束性CD4+およびMHCクラスI拘束性CD8+ T細胞の必須の役割がよく確立されている。その主な武器の1つは、マクロファージを活性化し、かつ殺細菌分子の産生を誘導可能なサイトカイン、例えばIFN-γおよびTNF-αの産生である。非古典的な拘束性CD8+リンパ球、CD4- CD8-およびCD1拘束性T細胞、γδ+ T細胞およびNK細胞もまた、MTB関連抗原を認識し、かつ疾患制御に関与することが報告されている。
【0130】
この知見は、主に、マウスにおける研究に由来する。活性または潜伏性ヒトTBに関する大部分の研究は、現在まで、末梢血リンパ球(PBL)の分析に限定され、かつMTB感染の主な部位である、肺の免疫学的状況には取り組んでいない。本発明者らの目的は、どの因子が、ヒト肺においてMTBを封じ込めかつ潜伏性を維持する原因となるのかを決定することであった。潜伏性MTB感染を持つ5人の患者において、本発明者らは、肺生検由来のGALを培養し、かつその分子組成、表現型、頻度、抗原特異性、および機能に関して、これらの細胞を分析した。さらに、我々は、テトラマー技術を利用して、CLSMによる肺組織のインビボ免疫学的状況の直接の外観を得た。
【0131】
患者
肺の悪性病巣を排除するため、試験的手術を受けた5人の患者を、Heidelberg大学病院から採用した。HE染色によって、手術検体(およそ10mmx8mm)を分析し、かつ癌の徴候がないが、強いT細胞浸潤と関連する肉芽腫形成があることが明らかになった。石灰化または乾酪性改変の大きな領域は同定されなかった。NCCLS基準にしたがって、痰(手術後に得られたもの)ならびに手術検体由来のアリコットを、液体(BACTEC MGlT 960、Becton Dickinson, Heidelberg, Germany)培地中で、および固形(Lowenstein-Jenssen、Becton Dickinson, Heidelberg, Germany)培地を用いて、6週間培養した。生存ミコバクテリウムは同定不能であった。手術検体由来のアリコットは、MTBに関するPCR(Cobas Amplicor(商標)ミコバクテリウム・ツベルクローシス試験、Roche, Diisseldorf, Germany)によって、陽性と判定された。したがって、i) X線による典型的な肺病巣、ii) PCRに基づくMTB検出、およびiii) HE染色によって定義される典型的な肉芽腫形成に基づいて、潜伏性MTB感染に関して患者を診断した。このパターン(培養可能な細菌が存在しない)は、MTBの臨床的徴候を伴わない個体から得られたヒト肺組織(剖検時)のインサイチューPCR分析と一致して最近概説されたような「潜伏性MTB感染」と一致する。各手術検体のアリコットを、結腸直腸癌患者由来の検体に関して先に記載されたように、小片(1 mm x 1 mm)に切り刻んだ。簡潔には、組織切片を、RPMI、10% FCSおよび抗生物質に加えて、Dr. Adrian Minty, Sanofi, France から厚意で提供された50 ng組換えヒトIL-7/mlを補った48ウェルプレートに入れた。
【0132】
肺肉芽腫性肺組織由来のT細胞を48時間以内増殖させ、かつ肉芽腫関連リンパ球(GAL)と名づけ、さらなる分析に供した。何人かの患者では、限定された数のTリンパ球しか得られず、これは、各症例の総合的なCD4+またはCD8+ T細胞分析を可能にしなかった。注目すべきことに、T細胞をペプチドまたは自己マクロファージで再刺激しなかった。すべての患者は、NCCLSガイドラインにしたがって、PPD反応性に関して陽性と判定された。地元の倫理委員会によって認可された研究に登録した個人のインフォームドコンセントを得た後、血液を抜き取った(1999年11月15日からの参照番号837.327.99(2272)のファイル上)。
【0133】
フローサイトメトリーおよびテトラマー分析
患者からヘパリン処理した血液を抜き取り、かつFicoll勾配上の分離によってPBMCを得て、かつ90%ウシ胎児血清および10% DMSO中、1〜5x107細胞/バイアルで液体窒素中に保存した。Immunomics Corporation(Beckman Coulter, San Diego, USA)から、HLA-A2結合性M.ツベルクローシス19kDaペプチドVLTDGNPPEV(SEQ ID NO:1)、M.ツベルクローシス・ペプチドMTB Ag85b、KLVANNTRL(SEQ ID NO:2)、ESAT-6ペプチドLLDEGKQSL(SEQ ID NO:3)を負荷したテトラマー試薬、またはESAT-6ペプチドFAGIEAAASAIQGNV(SEQ ID NO:8)を負荷したHLA-DR4テトラマー複合体が調製され、かつ得られた。CMVpp65エピトープNLVPMVATV(SEQ ID NO:4)または黒色腫関連gplOOペプチドYLEPGPVTV(SEQ ID NO:5)を負荷したHLA-A2テトラマー複合体(Beckman/Coulter)が対照として働いた。凍結PBLを融解し、洗浄し、かつ先に詳細に記載されるように、テトラマー分析またはTCR VB頻度を行った。
【0134】
テトラマー・インサイチュー染色
TCR-CDR3分析に供したものと同一の肉芽腫病変を用いて、テトラマー・インサイチュー染色を行った。本発明者らには、T細胞インサイチュー検出を行うのに利用可能な患者#3および#4由来の十分な量の組織しかなかった。肺組織由来の10μm厚の10〜20の凍結切片を得て、かつ上に列挙するような、M.ツベルクローシス19kDaまたはAg85bエピトープを負荷したPE標識HLA-A2テトラマーのいずれかと、4℃で一晩インキュベーションした(PBS中の2%正常ヤギ血清中で希釈した、最終濃度1μg/ml)。以下の工程をすべて、室温で行い、かつ抗体希釈緩衝液(DAKO, Hamburg, Germany)中で、一次および二次抗血清を希釈した。PBS中で切片を3回洗浄し、PBS中で緩衝した2%ホルムアルデヒド溶液中で5分間固定し、その後、PBSを用いた3回の洗浄工程を行った。マウス抗PE(Sigma, Deisenhofen, Germany)を1:100で2時間インキュベーションし、その後、PBSで3回洗浄した。Cy3標識ロバ抗マウス(Dianova, Hamburg, Germany)を1:800希釈で1時間用いた。1:50希釈のマウス抗ヒトCD8α(DAKO、クローンC8/144B)を用いた二重染色を1時間行った。このインキュベーション前に、交差認識を回避するため、製造者の指示にしたがって、ARK(商標)キット(DAKO)でのビオチン化工程を適用した。FITC標識ストレプトアビジン(DAKO)を1:50で適用して、CD8+ T細胞を検出した。テトラマー陽性細胞は赤色に見え、CD8+ T細胞は緑色に見える。Zeiss Axioskop顕微鏡(Zeiss, Oberkochen, Germany)に取り付けたColorView-XS(Olympus, Hamburg, Germany)を用いて、検体の写真を撮影した。
【0135】
免疫磁気細胞選別および機能アッセイ
抗CD4またはCD8コーティング免疫磁気ビーズ(Miltenyi, Bergisch Gladbach, Germany)を用いて、3〜5x106 PMBCまたはGALからCD4+またはCD8+ T細胞を分離した。PEで直接標識したVB特異的mAb(Beckman Coulter, Krefeld, Germany)を用い、その後、抗PE特異的免疫磁気ビーズ選別を用いて、TCR VB選別T細胞を得た。10% FCSおよび50 ng/mlヒト組換えIL-7を補った、Gibco(Eggenstein, Germany)から得られる50% AIM-V培地、50% DMEM(高グルコース)を含有する96ウェルプレート中、T細胞を48時間培養した。HLA-A2+患者に関して、MHCクラスI拘束性サイトカイン産生を決定するため、適切なペプチド・エピトープでパルス処理したT2細胞と、CD4+、CD8+またはTCR-VB選別細胞を混合した。希釈剤のみ(10% DMSO、90% RPMI)または示すような1μgペプチドのいずれかを負荷し、SIGMA(Deisenhofen, Germany)から得られるヒトβ-2ミクログロブリン(20μg/106細胞/ml)を補ったT2細胞が、ターゲット細胞集団として働いた。ウェル当たり50μlのこのターゲット細胞懸濁物を用い、エフェクター・ターゲット比は1:1であった。自己の放射線照射PBMCを用いて、MHCクラスII応答を検出した。個々の患者由来のPBMCをESAT-6由来ペプチド(アミノ酸1〜20位 MTEQQWNFAGIEAAASAIQG(SEQ ID NO:26)およびアミノ酸72〜95位 LARTISEAGQAMASTEGNVT-GMFA)(SEQ ID NO:27)で、示すように、37℃で2時間パルス処理し、その後、CD4+応答性T細胞と48時間インキュベーションした。これらのESAT-6由来ペプチドは、結核患者由来の大部分のT細胞によって認識されることが記載されており、かつ大部分のHLA-DRアレルに無差別に結合するようである。M.ツベルクローシス感染自己マクロファージを試験するため、プラスチックに2時間PBMCを接着させ、その後、FCSを補った培地で2回注意深く洗浄する工程を行うことによって、マクロファージを選択した。先に記載するように、アッセイ24時間前に、肺結核を患う患者の痰由来のM.ツベルクローシスMZ#610と名づけた新鮮単離M.ツベルクローシス株に、マクロファージを感染させた。エフェクターT細胞をターゲットと48時間インキュベーションし(E:T比=1:1)、上清を採取し、かつDiaclone, Besancon, France から得たELISA系を用いて、IFNγ、IL-4またはGM-CSFに関して試験した。異なるエフェクター集団(例えばCD4+またはCD8+ GAL対TCR-VB選別GAL)を用いた結果を比較するため、本発明者らは、すべての実験において、同じバッチのAPCを使用し、MHCクラスI拘束性T細胞応答は、10μg/ウェルの抗MHCクラスI特異的mAb W6/32で遮断され、抗DR特異的mAb L243を用いて、MHCクラスII拘束性(HLA-DR)T細胞応答を遮断した。クローンH143は、DPに対して向けられ、かつクローンTU169はDQクラスIIアレルに対して向けられた。どちらもBD/Pharmingen, Hamburg, Germanyから得られた。
【0136】
先に記載するように、MTB Ag85複合体由来のペプチド:Ag85a、アミノ酸48〜56位:GLPVEYLQV(SEQ ID NO:21)、Ag85a、アミノ酸242〜250位:KLIANNTRV(SEQ ID NO:22)、Ag85b アミノ酸143〜152位:FIYAGSLSAL(SEQ ID NO:23)、Ag85b アミノ酸199〜207位、KLVANNTRL(SEQ ID NO:2)、19kDa抗原ペプチドVLTDGNPPEV(SEQ ID NO:1)(アミノ酸88〜97位)、ならびに候補ターゲットESAT-6由来ペプチドAIQGNVTSI(SEQ ID NO:24)(アミノ酸17〜25位)、LLDEGKQSL(SEQ ID NO:3)(アミノ酸28〜36位)およびATAELNNA(SEQ ID NO:25)(アミノ酸62〜70位)を用いて、MHCクラスI(HLA-A2)拘束性T細胞応答を試験した。
【0137】
TCR-CDR3スペクトラタイピング
CD4もしくはCD8いずれかの陽性選別T細胞(免疫磁気ビーズを用いる)、またはHLA-A2/Ag85bもしくはHLA-DR4/ESAT-6複合体いずれかを用いたテトラマー選別T細胞の分子TCR組成を、記載するように完成させた。これらのT細胞は、インビトロで再刺激されず、IL-7の存在下で48時間の培養期間の後に得られた。注目すべきことに、IL-7は、TCRレパートリーを歪めないと報告されている。簡潔には、2x105細胞からRNAを抽出し、かつcDNAに逆転写し、個々のTCR VB特異的プライマー対によって増幅し、かつフルオロフォア標識TCR-CB特異的プライマーを用いたランオフ反応を行った(PCR条件:94℃、1分間/60℃、1分間/72℃、1分間、40サイクル)。適切なサイズ標準および310配列決定装置およびGenescanソフトウェア(ABI, Weiterstadt, Germany)を用いたDNA断片分析によって、標識単位複製配列を分析した。CD4+またはCD8+選別T細胞集団いずれかの連続希釈(10x105m 5x105、2x105、1x105、0.5x105)は、このアッセイ系において、少なくとも1x105 T細胞を用いると、アッセイ内変動およびアッセイ間変動に関連して、非常に再現性があるTCRパターンが生じ、かつ「偽陽性」モノクローン性TCR-CDR3パターンにつながらないことを示した。モノクローン性/オリゴクローン性TCR転写物を同定するため、単位複製配列をTA配列決定ベクター(Invitrogen, Groningen, The Netherlands)にサブクローニングした。TCR VA/VBは、PCR単位複製配列またはすべてのサブクローニングPCR転写物の直接配列決定のいずれかが、同一のTCR配列を生じる場合のみ、モノクローン性として報告された。TCR VA/VBファミリーがオリゴクローン性またはポリクローン性である場合、CDR3長のガウス分布が生じる。各ピークは、所与のCDR3長を持つインフレーム転写物に相当する。曲線下の領域は、個々のTCR VA/VBファミリーにおける別個のCDR3長の頻度に相当する。単一試料分析からの情報を凝縮するため、個々のTCR VAまたはVBファミリーを、アミノ酸数として表したCDR3長と共にVB1〜VB24の単一の合計数にグループ分けした。このTCR-CDR3ランドスケープは、T細胞亜集団における各TCRファミリーのTCR-CDR3長によって定義されるような「構造的解剖学」を提供する。各CDR3ピークの曲線下の領域は、全CDR3の領域(100%)の割合として表される。見やすくするため、スケール間隔上に示すように、相違を異なる色で表す。肉芽腫病巣から得られたCD8+またはCD4+ T細胞(GAL)から得られたCDR3パターンを、同時に、すなわち手術中に得られた、CD4+またはCD8+選別PBLと比較してもよい。各試料におけるCDR3分布および対照分布間の領域によって、各CDR3長内のこのTCR「摂動」を計算する。陽性または陰性摂動が各TCR VA/VB CDR3ピークで起こり得るし、かつこれを対照試料に比較した際の相違として表す。10%の相違を生じる各摂動を異なる色で表す。この分析において、「フラットな」TCRランドスケープは、摂動が存在しない、すなわちTCR-VA/VBランドスケープが、対照試料と比較した際に同一の図を生じることを暗示することに注目されたい。2人の患者から得られた対応する新鮮に採取された肺組織を用いて、CD8+、CD4+(未選別)GALにおいてTCR CDR3長測定の比較分析を行った。
【0138】
CDR3分析およびTCR-VB染色:定量的TCR分析
TCRスペクトラタイピングは、T細胞集団の定性的評価のみを生じ、定量的評価は生じない。TCR VB鎖に対して向けられる24の個々のmAbのパネル(Beckman Coulter, Krefeld, Germany)を、FITC、PEで標識されたか、またはFITC/PEで二重標識されたかいずれかの3つの個々の抗VB mAbにグループ分けし、これらは、ECD-CD4またはPC5-CD8+ T細胞いずれかに関してゲーティング可能である。したがって、CD4+またはCD8+ T細胞集団いずれかの24の個々のTCR VBファミリーの頻度を、8つの異なる試験管で分析可能であり、これによって、CD3+ CD8+ T細胞における割合が得られる(VBファミリーのX%)。ここで、この因子を用いて、CDR3-VBランドスケープ分析を補正してもよい。TCR VB鎖に対して向けられるmAbパネルのみが入手可能であり、TCR-VA鎖に対して向けられるパネルは入手可能でない。
【0139】
結果
未知の病因の肺病変を提示する5人の患者の肺生検から、肉芽腫関連リンパ球を培養した。病理学的診断(典型的肉芽腫形成)およびMTBのPCR補助増幅によって、5/5の患者で、潜伏性結核感染が明らかになった。生存ミコバクテリウムは、痰、気管支洗浄液、または生検自体からは単離不能であった。したがって、本発明者らは、PCR陽性、培養陰性のヒト肺肉芽腫組織を、MTB関連抗原に対するT細胞反応性に関して分析する可能性を有した。
【0140】
この研究の目的は、a)T細胞受容体(TCR)CDR3スペクトラタイピングによって決定されるようなT細胞応答の質、b)フローサイトメトリー分析において決定されるような、各TCR VBファミリーにおけるT細胞の量、およびc)サイトカイン産生によって定義されるようなGALの機能を分析することによって、ヒト肺におけるMTB潜伏を維持するのに関与する局面を確かめることであった。
【0141】
実施例6. オリゴクローン性であり、非常に拡大されたVβファミリーで構成され、かつPBLに比較した際、特質な集団を構成する、CD4+ GALおよびCD8+ GAL
磁気ビーズ選別後、フローサイトメトリーによって測定されるTCRレパートリーの定量的評価によって補完される、TCR CDR3スペクトラタイピングによって定義される、TCRレパートリーの「客観的」構造組成に関して、CD4+およびCD8+ GAL集団を、別個に分析した。図1および図2においては、x軸上に24のVBファミリーを、z軸上にアミノ酸数としてのファミリー内のCDR3長を、かつy軸上に、フローサイトメトリー列挙およびCDR3分析によって決定されるような曲線下の領域の組み合わせとして、リンパ球集団内のCDR3長の割合を示す、「TCRランドスケープ」をプロットした。
【0142】
VBファミリー内の単一のCDR3長の増大は、特異的免疫応答に関与し得るTリンパ球の拡大のためであると見なされる。各患者は、主にオリゴクローン性であるCD4+(図1)およびCD8+ GAL集団(図2)両方に関して、個々の、特定のTCR VBプロファイルを示した。何人かの患者において、別個のオリゴクローン性またはモノクローン性VBファミリーに属するT細胞が、リンパ球集団の主要な画分を構成した。例えば、患者#1では、VB14陽性CD4+リンパ球が、かつ患者#5では、VB7陽性T細胞が、すべてのCD4+ GALのうち、それぞれ27%および19%を占めた。TCR CDR3スペクトラタイピングによって、これらのVBファミリーが、単一T細胞クローンで構成されることが示唆された。本発明者らは、個々のTCR(表2)を配列決定し、かつ潜伏性TBにおけるこれらの機能の分析を進めた。
【0143】
主なT細胞拡大はまた、CD8+ GALにおいても見られ得る:患者#1におけるモノクローン性VB3陽性T細胞(TCR配列に関しては表2を参照されたい)および患者#3におけるオリゴクローン性VB17陽性リンパ球は、それぞれ、CD8+ GALの最大17%および9%を構成した。個々の患者またはHLA型を比較した際、TCR VBファミリーの共通の拡大は同定不能であり、これは、ヒトMTB封じ込めにおいて、優先的なVB使用があることを示す可能性もある。
【0144】
市販されている24のVB特異的抗体のパネルは、80%より多くをカバーするが、完全なVBレパートリーではないため、本発明者らは、MTBを制御する際に関与し得る、すべてのT細胞を(定量的方式で)同定することは、いままでのところ、不可能であった。例えば、患者#1において、CD4+ GALの20%およびCD8+ GALの55%は、フローサイトメトリーにおいて、VB発現に関して定量的に評価不能であった。VB頻度が測定不能なこれらのT細胞は、分子評価によれば、数個のさらなるVBファミリーしか含まず、したがってまたクローン性に拡大されていた可能性もある(データ示さず)。
【0145】
肺のTCRレパートリーが末梢血の単なる鏡像なのか、または肺が別個のレパートリーを獲得するのかを決定するため、本発明者らは、患者の両方の区画(GAL対PBL)を分析し(材料が制限されていたため、患者#1のPBLを除く)、かつ患者#2に関して(CD4+およびCD8+ T細胞両方に関して)、および患者#5に関して(総/未選別PBLおよびGALに関して)得られたデータを、図3および4に原理の証明として提示する。PBLに関して得られた「TCRランドスケープ」からGAL「TCRランドスケープ」を引くことによって、本発明者らは、図3A〜B(分子TCR-CDR3分析)および図4A〜B(TCR VB頻度の分析によって補正した分子TCR-CDR3分析)に示すように、相違パーセントを視覚化した。乱れたランドスケープは、各区画が似ていないTCRレパートリーで実際に構成され、かつ肉芽腫組織内で、個々のTCRファミリーが優先的に拡大されていることを示す。レパートリーが同一であれば、フラットなランドスケープが生じたはずである。未選別(48時間、IL-7拡大)GALは、対応する新鮮に単離した肉芽腫組織切片に比較して、類似のTCR組成を示した。
【0146】
実施例7. 自己マクロファージに提示されるMTBエピトープに反応してTh1サイトカイン分泌パターンを示すCD4+ GAL
VBファミリー拡大によって特徴付けられるGALの機能に取り組む前に、本発明者らは、より一般的なアプローチで、生存MTBバチルスにインビトロで一晩感染させておいた自己マクロファージを抗原提示細胞(APC)として用いる、サイトカイン放出アッセイにおいて、不均質なCD4+およびCD8+ GAL集団の機能を決定した。3/5の患者由来のCD4+ GALは十分に拡大可能であった。これらは、110から>1000pg/mlレベルでIFN-γを産生し(図1)、一方、GM-CSFは患者#3由来のCD4+ GALのみで測定可能であった(データ示さず)。CD8+ TCR+ GALに関しては、分析した患者の0/3がIFN-γを産生し、患者#3由来のCD8+ GALのみがGM-CSF産生に関して免疫応答を示し、一方、IL-4はどの患者でも測定不能であった(データ示さず)。注目すべきことに、分析したリンパ球を、MTB抗原を用いてあらかじめインビトロ刺激はしていなかった。
【0147】
患者#3において、自己APC上の、天然にプロセシングされかつ提示されたMTBエピトープに対する反応としては、IFN-γまたはIL-4は測定不能であった。しかし、この患者のGALは、異なる実験設定において、MTB由来ペプチドに反応して実質量のIFN-γを産生可能であり(図8および9)、これらの細胞が、機能的にサイトカイン分泌可能であることが示唆された。
【0148】
MHC拘束を確認するため、本発明者らは、MHCクラスIまたはクラスII抗原に対して向けられる遮断モノクローナル抗体(mAb)を用いて、さらなる実験を行った。サイトカイン産生は、CD4+ GAL集団において、DR、DP、およびDQに対して向けられるmAbによって部分的または完全のいずれかで阻害され(図1)、MHCクラスII分子上にMTBペプチドが提示されることが示された。
【0149】
実施例8. 主要なIFN-γ産生体である、拡大VBファミリーによって特徴付けられるCD4+ GALおよびCD8+ GAL
CD4+およびCD8+ GAL集団内のVBファミリーの拡大が、実際に疾患との戦いにおける大きな機能的役割の指標であるのかどうかを調べるため、本発明者らは、拡大されたVBファミリーにしたがってGALを選別し、かつサイトカイン放出アッセイにおいて分析した。上に詳述するように、TCR-CDR3スペクトラタイピングをフローサイトメトリーと組み合わせると、CD4+ GAL集団における主要な提示VBファミリーとして、患者#1ではVB9および14、患者#2ではVB8およびVB9、かつ患者#5ではVB7が認識可能になり、ならびにCD8+ GALにおいては、患者#1でVB3が認識可能になった。本発明者らは、適切なVBファミリーを発現するT細胞を選別し、かつ上述のように、MTB感染自己マクロファージに48時間曝露した。これらのT細胞によるIFN-γの産生は、匹敵する細胞数のGAL全集団によって産生されるより、はるかにより高い濃度を生じた(CD4+ GALに関しては、1300〜9955pg/mlの範囲、CD8+ GALに関しては、1185pg/mlの範囲;図5)。予期されるように、MHCクラスIに対して向けられるmAbは、VB3+CD8+ GALのサイトカイン産生を阻害した。CD4+、VB選別GALではDR、DP、またはDQ mAbのいずれかによって、IFN-γ産生が遮断され、選別されたT細胞が単一のMHCクラスIIアレルに拘束されていることが示唆された。
【0150】
実施例9. ESAT-61-20を認識する、特定の拡大TCR VBファミリーに属するCD4+ GAL
選別したCD4+ GALの抗原特異性を決定するため、本発明者らは、個々のTCR VB選別したT細胞がMTB由来DR結合性ペプチドESAT-61-20およびESAT-672-95を認識する能力を分析した。VB選別したGALは、患者#1、#2、および#5において、ESAT-61-20を認識し、かつIFN-γを産生し、一方、ESAT-672-95は、患者#5のVB7+ GALにおいてのみ、バックグラウンドレベルを超えたIFN-γ産生上昇を誘導した(図6)。
【0151】
ペプチド濃度の増加は、図4A〜Eに示すように、より強いサイトカイン応答を誘発したが、試験した最高ペプチド濃度では、結果は多様であり、患者#2におけるさらなる増加から、患者#5におけるIFN-γ抑制までの範囲があった。同一の実験設定で、対応するTCR VBが枯渇したGAL集団を分析した場合に、発明者らは、バックグラウンドレベルを超えて測定可能なIFN-γ産生がないように、これらのGALがESAT-61-20ペプチドを認識しないことを観察した(患者#1ではVB9陰性GAL:4pg/ml;患者#2ではVB9陰性GAL:検出レベル未満;患者#5ではVB7陰性GAL:45pg/ml;図6中、データ示さず)。したがって、ESAT-61-20の認識は、これらの3人の患者において、単一VBファミリーに拘束され、または患者#5では、単一のVB7+ T細胞クローンにさえ拘束された。
【0152】
実施例10. CD8+ GALにおいてTelサイトカイン応答を誘発するMTB由来HLA A2結合性ペプチド
HLA A2+患者のCD8+ GAL集団において、MTB関連抗原ESAT-6、19kDa AgまたはAg85a/bによって提供されるペプチドの認識を調べた(表1、図8A〜B)。MTB由来HLA A2結合性ペプチド、Ag85a48-56、Ag85a242-250、Ag85b143-152、Ag85b199-207、および19kDa Ag88-97を、それぞれ、T2細胞に負荷し、CD8+ GALを添加し、かつインキュベーション48時間後、インビトロ・サイトカイン産生を測定した。黒色腫由来HLA-A2結合性gp100由来ペプチドを陰性対照として用いた。
【0153】
19kDa Ag88-97は中程度のサイトカイン産生を誘発したが、IFN-γおよびGM-CSF産生によって決定されるように、ペプチドAg85a242-250およびAg85b199-207が認識された。他のペプチドは、いずれの患者でも、対照ペプチドgp100よりはるかに高いサイトカイン産生を誘発しなかった。IL-4は、いずれの場合でも検出不能であった(データ示さず)。さらに、ESAT-6から提供される3つのA2結合性ターゲット・ペプチドに対する反応性に関して、患者#3由来のGALを分析した。これらのGALは、MHCクラスI拘束性方式で、ESAT-628-36を認識し、かつ実質量のIFN-γおよびGM-CSFを産生した(図9A〜B)。ESAT-617-25およびESAT-662-70は少量のサイトカイン産生を誘発した。ペプチド反応性GALの存在は、GALにおけるHLA-A2テトラマー染色によって立証された:患者#3由来のCD8+ GALは、ESAT-6ペプチドLLDEGKQSL(SEQ ID NO:3)に関して陽性に染色され(2.4%)、19kDaおよびAg85bテトラマーに関して、それぞれ、1.1%および1.6%染色された(データ示さず)。
【0154】
実施例11. テトラマー分析によってインサイチューで定義されるMTB反応性GAL
本発明者らは、Ag85b199-207および19kDa Ag88-97のHLA A2テトラマーで染色することによって、抗原特異的CD8+ GALをインサイチューで視覚化するのを可能にする、十分な連続切片を、患者#3および#4由来の肉芽腫病変から得ることが可能であった。TCR結合テトラマーは、CLSMでは赤色に見え、一方、CD8αに対して向けられるmAbは、FITC標識され、緑色に見えた(図20)。しかし、テトラマー・インサイチュー染色によって、MHCクラス1/ペプチド特異的T細胞の空間的配置がインサイチューで視覚化可能になるが、この染色は、抗原特異的T細胞集団の分子組成には対処しない。MHC/ペプチド特異的T細胞におけるTCR使用を評価するため、本発明者らは、患者#3由来のHLA-2/Ag85b結合性CD8+ GALを選別し、かつTCR-CDR3分析を行った(図21)。テトラマー選別およびCD8+ GALにおけるTCR使用を比較すると、定義されるT細胞エピトープに対して向けられる、いくつかのクローン型の存在が示される。T細胞は、顕著なリンパ球浸潤(図20a)を伴って、肉芽腫病巣(HE、平行切片)から採取されている。潜伏性ヒト肺結核の異なる患者から単離されたHLA-DR4拘束性ESAT-6特異的CD4+ T細胞集団もまた、いくつかのT細胞クローン型が構成する(図21)。テトラマー・インサイチュー染色(図20b)は、Ag85b反応性T細胞が、肉芽腫組織のいくつかの場所に集中することを示唆する。ネズミ・リンパ系組織で先に観察されたように、テトラマー染色は、T細胞の1つ(またはいくつか)の極でクラスター形成するようであるTCRを視覚化し、球状の細胞上、単数または複数の鮮赤色の点の印象を与えたが、一方、CD8は、より一様に分布しているようであり、細胞に均質な環状の外見を与えた。二重発現に際して、赤色および緑色は、細胞の橙色〜黄色の着色を生じた。陰性対照としてgp100-MHCテトラマーで染色すると、単なるバックグラウンド染色が導かれる。テトラマー陽性細胞は、肉芽腫切片内のいくつかの異なる場所に集中した。患者#3に関して、平行組織切片のHE染色を示す。
【0155】
実施例12. まとめ
潜伏性結核の免疫学的状況は、理解および研究が困難であった。ヒトにおけるPBLの分析から得られる結果は、感染部位自体での免疫応答を必ずしも反映しない可能性がある。いくつかの研究は、PBLにおいて、Th2型サイトカイン、例えばIL-10が顕著であることを報告する。他方、活性TB患者の他の区画、例えば胸水由来のT細胞、または気管支肺胞洗浄液によって単離されたT細胞は、顕著なIFN-γおよび/または増殖性応答を示し、これは、分析した同じ患者のPBLにおいては、低いかまたは存在さえしなかった。この現象は、おそらくCCR2またはCCR5などの特定のケモカイン受容体のため、特殊なMTB反応性T細胞が感染部位に隔離されてしまうためである可能性がある。したがって、肺組織自体における免疫学的事象をより詳細に見ることが、MTBに対する防御免疫のよりよい理解に必須である。
【0156】
TCR抗原認識の細かい特異性は、TCR VAおよびVB鎖の相補性決定領域3に存する。抗原に応答した抗原特異的T細胞のクローン性拡大は、CDR3スペクトラタイピングにおいて、VBファミリー内の単数またはいくつかの過剰提示されたCDR3ピークとして反映される。最終的には、T細胞のこのクローン性拡大は、ウイルスおよび細菌感染両方に関して記載されたように、VBレパートリー内の適切なVBファミリーの増大を生じることになり得る。本発明者らは、ヒト肺組織から単離されたGALが、個々のVBファミリーのオリゴクローン性またはモノクローン性拡大によって特徴付けられることを示した。GALにおけるこれらのTCR VB拡大は、対応するPBLでは観察不能であり、MTB反応性T細胞が、実際に肺に隔離されていたことを示唆した。活性ヒトTBに関する研究において、匹敵する区画化が報告されており、この場合、胸水由来のリンパ球のTCR VBレパートリーは、PBLで見られるものとは異なっていた。新鮮に得られた肉芽腫組織におけるTCRレパートリー分析が、(未選別で)48時間拡大したGALに比較して類似のパターンを示し(図3および4を参照されたい)、かつT細胞培養に用いたIL-7がTCRレパートリーを歪めないようであるという事実は、機能上のTCR組成データが、実際にインサイチューの状況を反映していることを示唆する。
【0157】
CD4+ GALは、MTB感染自己マクロファージを容易に認識し、かつMTBに対する免疫に寄与することがよく確立されている重要なサイトカインであるIFN-γを産生した。対照的に、CD8+ GALは、CD8+ TCR VB3選別T細胞が、同じMTB感染抗原提示細胞を認識するという事実にもかかわらず(図6A〜F)、自己MTB感染ターゲットに応答して、INFを産生できなかった(データ示さず)。2つの互いに排他的でない機構が、この現象を説明しうる:第一に、(クローン性、表2を参照されたい)TCR VB3選別T細胞のエフェクター:ターゲット比が、未選別CD8+ GAL集団に比較して優れていた可能性があり、ここでVB3+細胞は最大17%を構成する(図1および2)。第二に、MTBでのインビトロの自己マクロファージ感染が、MHCクラスII提示エピトープの提示をかなり促進する可能性がある(図1および2を参照されたい)。
【0158】
拡大されたMTB特異的T細胞クローンの頻度は、活性TB患者のPBLにおけるCD8+ MTB Tet-19kD Ag+反応性T細胞に関する、本発明者らの先に公表した知見(CD8+ PBLのおよそ2%)、またはMelan-A/MART127-35特異的腫瘍浸潤T細胞に関して見られるような(TILの5.68%)、組織に存するリンパ球に関して比較した際、予想外に、肺組織で高かった(単一の患者において、CD4+ GALの最大27%に達する)。これらの研究で用いたテトラマー分析または限界希釈アッセイが、多様なT細胞クローンの抗原特異的T細胞の頻度を反映している可能性があり、一方、本発明者らが、GALにおいて単一T細胞クローン拡大を観察したことを考慮すると、頻度の相違は、より顕著でさえあるようである。他方、Masopustおよび共同研究者らは、急性ネズミ・リステリア症における臓器特異的テトラマー反応性T細胞応答を分析した際、GALにおけるものと類似の頻度を検出した。これらの頻度は、疾患回復に成功した後、下落した。潜伏性MTB感染では、バチルスがマクロファージ内部に長年存在し続けるために、感染が本質的に排除されないことから、T細胞頻度は上昇したままであり得る。
【0159】
潜伏性TB感染と診断された3人の患者に関して、本発明者らは、主要な拡大VBファミリーの抗原特異性を定義可能であった(患者#1および#2ではVB9、ならびに患者#5ではVB7)。これらのGALは、全CD4+ GAL集団に比較した際、天然にプロセシングされかつ提示されたMTBエピトープに反応して、増加した量のIFN-γを産生した。患者#5において、例えば、単一のVB7陽性T細胞クローン(表2)が、ESAT-6エピトープの認識専門の、肺に存するリンパ球の19%を構成した。注目すべきことに、同じTCR VB7クローンが、対応する新鮮に採取された肺病変のTCR-CDR3型決定によって同定されており、VB7ファミリーがインサイチューでクローン性に拡大していたことが示唆される(データ示さず)。初期分泌抗原性ターゲット6(ESAT-6)は、BCGおよび大部分の環境由来ミコバクテリウム種では発現が存在しないため、ヒトにおける活性または潜伏性MTB感染の検出に感受性かつ特異的であると暗に示されている。さらに、これらの拡大されたリンパ球は、全GAL集団において、ESAT-61-20を認識する単独のCD4+ T細胞であった。これは、肺におけるMTB抗原を選択する非常に集中的な免疫応答を示す。これらのデータは、MTB封じ込めの成功が、少なくとも何人かの患者では、いくつかのTCRクローン型に非常に集中し、かつ限定される可能性があることを示唆する:この状況は、HIVの封じ込め成功に、またはより最近、癌患者における臨床的に有効なT細胞応答に当てはまることが見出された。
【0160】
本発明者らは、本報告において、すべての拡大されたTCR VBファミリーを、天然にプロセシングされかつ提示されたMTBエピトープの認識に結び付けることはできなかった。細胞内生存に必要な遺伝子のMTB転写機構を指示する環境条件に関連して、MTBエピトープの異なるレパートリーが生成される可能性がある。本研究でAPCとして用いた、MTBでの自己マクロファージのON感染が、肉芽腫病巣における抗原プロセシングを反映しない可能性が最も高い。加えて、本発明者らは、定義されるT細胞エピトープのHLA-A2拘束性およびHLA-DR4拘束性提示しか取り扱えなかった;他のMHCクラスIまたはクラスIIアレルが、集中的なMTB特異的T細胞応答を形作るのにより有効である可能性もある。最終的に、潜在的な「免疫優性」T細胞応答の存在に取り組むためには、異なるMHCアレルによって提示される、より広い抗原ペプチドセットを使用する、さらなる研究が必要である。CMV、または非複製持続性バチルスに関連する他の重要なMTB関連ターゲット・エピトープなどの、肺の他の再発性または慢性感染の免疫学的制御もまた、適切に拡大されたT細胞の存在を必要とする可能性があり得る。
【0161】
これらのデータは、ワクチン設計に対して、ならびに免疫防御に関連する新規代理マーカーの定義に対して含意をもつ。各臓器が、質または量の点で、同じ病原体に対して、異なる免疫応答を装備し得るという観察を考慮すると、ヒトTBにおける肺の免疫学的状況を理解することは、MTBワクチン設計に必須である。IFN-γ産生によって定義されるような主な機能因子の中に、ESAT-61-20ペプチド特異的CD4+リンパ球があったように、ワクチン有効性は、ESAT-6 Agを含むことによって、強く増強されうる。
【0162】
ESAT-6は、MTBに対する免疫応答において、確かに重要な抗原である可能性があり、かつ研究は、ネズミ・モデルにおけるワクチン接種にこの抗原を推奨するか、または既に使用に成功している。しかし、免疫優性エピトープ(有効性および適用可能性の両方に潜在的に重要である)に関するデータは、異なる。本発明者らの実験は、抗原のアミノ末端(N末端)およびカルボキシ末端(C末端)部分をカバーするペプチドESAT-61-20およびESAT-672-95を含み、かつコーカサス人患者のGALに対して行った。本報告のデータは、エピトープがESAT-6のN末端部分に存し、かつ優先的に認識されることを示す。これらは、ドイツ人患者を伴うUlrichらによるPBLに関する研究、ならびにBoston, Massachusettsの最近のPPD陽転者に関する同じグループの報告と一致して、多様なHLA DR分子上に提示可能である。他方、世界の他の地域の研究では、他のESAT-6エピトープが推奨される:エチオピア人患者のT細胞は、抗原の中央部分を優先的に認識し、一方、クウェート人およびデンマーク人患者は、最も頻繁には、C末端領域(アミノ酸72〜95位)を認識する。MustafaらおよびRavnらの両者に論じられるように、この現象は、異なる民族群の遺伝子HLA構成の多様性から生じ得る。遺伝的に異なるマウスのESAT-6リコール応答に関して類似の観察が行われている。
【0163】
結核におけるCD8+リンパ球の重要な役割に関して、かなりの証拠が存在する。本発明者らはまた、肺組織で、MTB特異的CD8+ GALのクローン性拡大も観察しており、例えば、患者#1におけるCD8+ GAL集団の17%を構成するTCR VB3陽性T細胞クローンがある。本発明者らの目的は、したがって、MTB関連ターゲットとして報告されている、分泌Ag、85a、85b、ESAT-6、および19kDaリポタンパク質に由来するHLA-A2提示ペプチドのパネルをスクリーニングすることによって、CD8+ GALの主な抗原性ターゲットを決定することであった。本発明者らは、Ag85a242-250およびAg85b199-207、ならびにESAT-628-36の優先的な認識、かつ19kDaAg88-97への中程度の反応を観察し、一方、Ag85a48-56およびAg85b143-152は、あるとしてもわずかな応答しか誘発しなかった。この観察が、肺由来CD8+ T細胞の一般的な傾向であるか、または個々の患者に特異な特徴であるかどうかは、より大きいコホートにおいて、さらに研究する必要があり得る。しかし、これらのデータの主な重要性は、Ag85aおよびAg85b特異的、ならびにESAT-6および19kDa Ag特異的CD8+ T細胞が、肺において実際に存在し(抗原刺激に際するIFN-γ産生に定義されるように)、かつ末梢血におけるだけでなく、かつこれらの抗原が、おそらく潜伏性の維持に関与することである。これらの細胞をエクスビボで視覚化するため、インサイチュー・テトラマー染色後、CLSMを行い、かつそれによって、T細胞のインビトロ培養のバイアスを伴わず、ヒト肺組織において、Ag85bおよび19kDaAg特異的CD8+ T細胞両方の、前例がない提示を達成した。単一の患者由来のHLA-A2/Ag85bまたはHLA-DR4/ESAT-6選別GALにおけるTCR分析もまた、拘束されたTCR使用を示唆する(図21)。
【0164】
まとめると、本発明者らは、ヒト潜伏性TBにおいて、CD4+およびCD8+ MTB反応性リンパ球が存在し、非常に拡大され、かつ肺組織で機能性であることを立証する。CDR3スペクトラタイピングとフローサイトメトリーTCR VB分析を組み合わせると、これらの同定の強力なツールとなり、かつPBLとは異なる、集中したリンパ球集団が潜伏性を支配していることを理解することが可能になった。重要なターゲットは、ESAT-6およびAg 85a/85bのようなMTB分泌抗原のペプチドである。これらの抗原をワクチンに統合すると、MTBに対する防御免疫に重要となるはずである。
【0165】
本発明は、上記実施例に関連して記載しているが、本発明の精神および範囲内に、修飾および変動が含まれることが理解されるであろう。したがって、本発明は特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】図1A〜C。疾患を封じ込めることが可能であった、すなわち臨床的に明らかな結核を持たない、MTB感染患者の肺病巣から、肉芽腫関連リンパ球(GAL)が得られている。GALをCD4(図1A〜C)およびCD8(図2A〜C)に分離し、かつ分子組成(TCRランドスケープ)、およびMTBに感染した自己マクロファージに反応したサイトカイン放出に関して評価した。図1A、患者#1および#2;DR、DP、DQは拘束性エレメントとして働く。図1B、患者#3および#5;IFN放出なし。図1C、患者#6:DR拘束性応答;患者#7:mAbでの遮断によって定義されるように、DRおよびDQ拘束性応答。
【図2】図2A〜Cは、試験した患者のCD8+αβTCR+GALに関してプロットした一連の「TCRランドスケープ」、およびサイトカイン産生がMHCクラスI拘束性であり、かつCD8+GAL集団において、DR、DP、およびDQに対して向けられるmAbによって阻害されないことを示す、対応するグラフである。図2A、患者#1および患者#3:サイトカイン応答なし。図2B、患者#5および患者#6:抗MHCクラスI w6/32 mAbでの遮断によって定義される、MHCクラスI拘束性CD8+応答。図2C、患者#7:抗MHC指向遮断mAbで部分的にしか遮断されない。
【図3】図3Aおよび3Bは、患者2に関するスペクトラタイプ分析を示す。図3Aは、GALにおける患者#2のCDR3分析(CD4+およびCD8+ T細胞両方)の結果を示す。図3Bは、異なる解剖学的区画(GAL対PBS)におけるCD4+またはCD8+ T細胞の分子組成の相違パーセントを視覚化するため、PBLに関して得られた「TCRランドスケープ」から、GALにおいて得られた結果を引くことによって得られる「TCRランドスケープ」を示す。
【図4】図4Aおよび4Bは、患者#5に関して得られたデータのスペクトラタイプ分析の結果を示す。図4Aは、相違パーセント(総/未選別PBLおよびGALに関するもの)を視覚化するため、PBLに関して得られた「TCRランドスケープ」から、(CD4+、CD8+、未選別)GAL「TCRランドスケープ」における結果を引くことによって得られる「TCRランドスケープ」を示す。分子組成のみを示す。図4Bは、フローサイトメトリーによって定義されるTCR VB頻度によって、値を補正した以外、同一のデータである:GAL対PBLの個々のVBファミリーの増幅。
【図5】図5A〜Cは、患者T細胞によるIFN-γの産生が、匹敵する細胞数で、GALの全集団によって産生されたものより高濃度であったことを表す一連のグラフおよび表を示す。特異的TCR-VB mAbを用いて、T細胞エフェクター集団を選別した、すなわちCD4+におけるVB9+もしくはVB14+ T細胞、またはCD8+ T細胞集団におけるVB3+ T細胞由来のデータ。図5A=患者#1;図5B=患者#2;図5C=患者#5。
【図6】図6A〜Fは、ESAT-6においてGALによって認識されるエピトープを狭めるための、Vβ選別T細胞がMTB由来ペプチドESAT-61-20およびESAT-672-95を認識する能力の分析を示す。これらの結果の後、本発明者らは、DR4/ESAT-6テトラマー複合体を生成した。したがって、本発明者らは、DCに対して、2つのペプチド、ESAT1-20およびESAT72-95でパルス処理し、かつテトラマー化したそれぞれのDR4結合性ペプチドESAT68-22(FAGIEAAASAIQGNV(SEQ ID NO:8))でパルス処理した。図6A〜B、患者#1、図6C〜D、患者#2;図6E〜F、患者#5。ペプチドESAT1-20は、ESAT72-95と比較した際、より頻繁に認識される。さらに、抗DR mAb L243がT細胞認識を有意に無効にするため、ESAT1-20応答は、DR拘束性であるようである。
【図7】図7Aおよび7Bは、生検中、TBに特徴的な病理学的病変を持たない両方の患者において、ESAT-61-20に対するESAT-6特異的免疫応答が、実質量のIFN-γおよびGM-CSFの産生を導き、これがHLA-DRに対して向けられるmAbによって遮断可能であったことを示すグラフである。図7A、患者#6、図7B、患者#7。
【図8】図8A〜Cは、患者#3、#4、および#7における19kDa Ag、Ag85a、またはAg85bターゲット・ペプチド由来のHLA-A2結合性ペプチドに対して向けられるCD8+ T細胞によるIFN-γおよびGM-CSF産生を示すグラフである。図8A、患者#3;図8B、患者#4;および図8C、患者#7。これらのデータによって、GALにおけるCD8+ T細胞応答は、IFNγ産生によって定義されるように、AG85a242-250およびAg85b199-207に集中していることが示される。
【図9】図9Aおよび9Bは、MTB関連タンパク質ESAT-6由来の3つの異なる候補ペプチドに応答した、結核患者(患者#3)のCD8+ GALによるサイトカインの産生を示す。ESAT-628-36が認識される。この応答は、抗MHCクラスI特異的mAb w6/32によって遮断可能である。
【図10】図10A〜Dは、Ag85bまたはESAT-6エピトープのいずれかを用いた、テトラマー選別CD4+ T細胞のエクスビボ分析の結果を示す一連の4つのグラフであり、CD4+、HLA-DR4拘束性、およびAg85b反応性T細胞が、M.ツベルクローシスおよびM.アビウム・イントラセルラレから提供される、天然にプロセシングされかつ提示されたエピトープを認識したことを明らかに示す。Ag85b選別T細胞が、MTBおよびM.アビウム・イントラセルラレを認識することに注目されたい。対照的に、DR4/ESAT-6選別T細胞は、MTBバチルスのみを認識する。
【図11】図11Aは、診断時、ならびにまた、診断およびそれと同時の療法開始の2週間後および16週間後の時点(水平軸)での、5人の肺結核患者のHLA-DR4拘束性CD4+ T細胞における19kDa抗原、Ag85b、およびESAT-6に対するPBL反応性を示す一連のグラフである。 図11Bは、診断時、ならびにまた、診断およびそれと同時の療法開始の2週間後および16週間後の時点(水平軸)での、5人の肺結核患者のうちの3人のHLA-DR4拘束性CD8+ T細胞における19kDa抗原、Ag85b、およびESAT-6に対するPBL反応性を示す一連のグラフである。PATMZTBx=患者MZTBx。
【図12】図12Aおよび12Bは、CD45RAおよびCD28での差次染色に基づいて、異なるT細胞サブセットにおけるミコバクテリウム抗原反応性T細胞の存在に関して、図11A〜Bに取りまとめた患者MZTB4の血液試料の反応性を示す一連のグラフである。(3つのバーの各セットにおいて、バー1=ESAT-6;バー2=19DaAg;バー3=Ag85b。)
【図13】図13Aおよび13Bは、DR4の脈絡において、AG85b、19kDa、またはESAT-6抗原のいずれかを認識する、結核患者中の低いまたは検出不能なCD4+ T細胞(例えば患者MZTBC5由来のPBL)が(図13A)、インビトロで、適切なペプチドで7日間刺激中に拡大可能であったことを示すグラフである:やはり、主なCD4+ T細胞応答(図13B)は、前駆体(CD45RA+、CD28+)内で、または活性化された(CD45RA-CD28+)T細胞サブセット中で検出される。(3つのバーの各セットにおいて、バー1=ESAT-6;バー2=19DaAg;バー3=Ag85b。)
【図14】図14Aおよび14Bは、インサイチュー・テトラマー染色を通じて、テトラマー反応性GALの分散した局在を示す。図14Aは、患者#3から得られた組織検体由来の平行切片に関するHE染色が、肉芽腫形成を示すことを示す(倍率x200)。図14Bは、肺組織由来の10μm厚の10〜20個の凍結切片が、Ag85b199-207および19kDa Ag88-97のHLA A2テトラマー、または陰性対照としてのgp100で染色され、CD8 mAbで共染色され、かつCLSMによって視覚化されたものを示す。テトラマー結合性GALは、肉芽腫内で分散して見られ、一方、GALにおいて、CD8の均質な分布が明らかであり、テトラマーで染色されたTCRは、細胞の1つまたはいくつかの極に局在して見られた。データは、患者#3および#4を示す。無関係な対照(gp100)テトラマーに関するバックグラウンド染色(倍率x400)。患者#3由来のGALにおいて、HLA-A2拘束性/Ag85b反応性T細胞のテトラマーガイド分析(tetramer-guided analysis)を行ったことに注目されたい(図15を参照されたい)。
【図15】図15A〜Cは、定義されたMHC/ペプチド複合体に対して集中的なT細胞応答を示す。図15Aは、患者#3由来のCD8+ GALにおけるHLA-A2拘束性/Ag85b特異的T細胞(左)のテトラマーガイド選別を示す(図1および2を参照されたい)。表1に列挙しない、潜伏性にMTB感染した、異なる(HLA-DR4+)患者から、十分なCD4+ GALを採取するのに成功し、かつHLA-DR4/ESAT-6テトラマー複合体を用いて選別した(右)。図15Bは、肉芽腫組織から単離したCD8+、HLA-A2/Ag85b特異的(左)またはCD4+、HLA-DR4/ESAT-6特異的T細胞いずれかのTCRレパートリー分析を示す。データをそれぞれ、CD8+ GAL、またはCD4+ GALに比較した際のテトラマー選別T細胞におけるTCR VBファミリーの過剰提示%として表す。図15Cは、CD4+ GALにおいて、TCR-VB特異的mAbパネルを用いて、個々のVBファミリーを定量的に評価可能であることを例示する。TCR VB4およびVB7は、HLA-DR4/ESAT-6反応性CD4 +GAL中、モノクローン性である。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般的に免疫学に、かつより具体的にはT細胞エピトープの同定、およびミコバクテリウム種に感染したかまたは曝露されたヒト被験体を同定する方法に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)項に基づいて、2004年6月17日に出願された米国特許出願第60/580,559号、および2004年10月27日に出願された米国特許出願第60/622,505号の優先権の恩典を主張し、各々の内容は全体として、参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ミコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)(MTB)は、世界人口の3分の1に感染し、かつ毎年200〜300万人の死の原因である。毎年800万人の人々が臨床的疾患を生じる。防御ワクチンはいまだに利用可能でなく、かつ多剤耐性MTB株が、発展途上国および先進工業国において、脅威を与えている。多重防御機構が、細胞内MTB感染を潜伏に封じ込めるのに利用可能であり、これには、抗MTB制御を維持するのに役立つ、抗原反応性γδ+ T細胞、記憶Tリンパ球に分化し得るCD4+ T細胞、およびCD8+ T細胞が含まれる。
【0004】
潜伏MTB感染は、感染した個体に対して、かつ他の個体への感染性病原体の伝播に対しての両方で、大きな脅威に相当する。年齢、栄養不良、免疫抑制、またはHIVの重感染に関連して細胞性免疫が弱まると、MTB封じ込めの喪失につながる。TBにおける疾患封じ込めは、免疫細胞の複雑なネットワークと、このネットワークが有効免疫応答を高め、かつ維持する能力とを伴う。ヒトにおいて、この疾患の潜伏を維持する際に関与する、すべての従事免疫事象の知識は、いまだに完全ではない。しかし、この細胞内病原体と戦うため、協調した細胞性免疫が重要であることは、議論の余地がない。MHCクラスII拘束性CD4+ならびにMHCクラスI拘束性CD8+ T細胞の必須の役割が、よく確立されている(最近、概説されている)。これらのT細胞の主要な武器の1つは、マクロファージを活性化可能であり、かつ殺細菌分子の産生を誘導可能であるサイトカイン、例えばIFN-γおよびTNF-αの産生である。非古典的な拘束性CD8+リンパ球、CD4-CD8-およびCD1拘束性T細胞、γδ細胞およびNK細胞もまた、CD1分子上に提示されるミコバクテリウム脂質抗原を認識し、かつ疾患制御に関与することが報告されている。
【0005】
この知見は、主に、マウスにおける研究に由来する。潜伏性もしくは活性ヒトTB、またはTBへの曝露に関する大部分の研究は、現在まで、末梢血リンパ球(PBL)の分析に限定され、かつMTB感染の主な部位である、肺の免疫学的状況には取り組んでいない。さらに、潜伏性TBの研究は、疾患のこの状態の適切な動物モデルが欠如しているため、妨げられている。
【0006】
尖叉皮膚試験(TST)は、皮内PPD注射に対する応答として、ミコバクテリウム種に対して向けられる細胞性免疫反応性の存在を評価する。この試験は、ツベルクローシス以外のミコバクテリウム(MOTT)での感染、カルメット・ゲラン桿菌(Bacille Calmette Guerin)(BCG)のワクチン接種、および臨床的に意義があるM.ツベルクローシス感染の間を識別不能である。この試験はまた、正確な抗原特異性、ならびにCD4+またはCD8+ T細胞の関与およびその分化状態またはホーミング能に関する情報もまったく提供しない。ミコバクテリウム種の有効な封じ込めを決定するには、いくつかの変数が重要である:CD4+ T細胞は、急性感染において、感染を撃退するのに非常に重大であるようであり、CD8+ T細胞は、長期抗MTB免疫応答を維持する際に関与する可能性がより高い。また、強く、かつ長期に存続する免疫応答を維持するには、異なるT細胞サブセットが重要である。最大のかつ長期に存続する防御を達成するためには、増殖またはサイトカイン産生の異なる潜在能力を持ち、自由に血流を離れて、かつ感染部位に進入可能な、「前駆体」T細胞、即時作用「エフェクター」T細胞、または記憶Tリンパ球のプールが好適であり得る。異なるターゲット抗原における免疫応答の正確で詳細な分析は、これまで知られていないが、MTB、MOTTまたはM.レプレ(M. leprae)感染患者の間の識別を可能にするであろう。ESAT-6はMTB(およびM.レプレ)のみで発現されるが、BCGまたはMOTTでは発現されず、このことから、このタンパク質は、真実のMTB特異的T細胞応答を評価するのに魅力的なワクチン候補およびターゲットに指定される。逆に、HLA-DR4拘束性Ag85bエピトープは、MTB診断法に加えて、ブルーリ潰瘍の原因病原体であるM.ウルセランス(M. ulcerans)、または免疫低下患者における感染の頻繁な原因であるM.アビウム・イントラセルラレ(M. avium intracellulrare)に特徴的なT細胞を列挙するのに有用であり得る。したがって、TSTならびにIFNγ応答アッセイ(IGRA)は、どちらのアッセイ系も、刺激剤として、異なるターゲット・タンパク質およびリポタンパク質の混合物であるPPD(精製タンパク質派生物)を使用し、かつ定義された抗原特異的ペプチド・エピトープを使用しないため、MTB特異的でかつ有効な免疫応答の上記様相に対応不能である。大部分の場合で72時間のインキュベーション期間が必要であり、かつT細胞列挙、ならびにT細胞ホーミングおよび分化と関連するT細胞マーカー分析を同時に可能にしない、ELISPOTアッセイでも同様の状況が当てはまる。
【0007】
より最近開発され、主要組織適合複合体(MHC)分子のテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーを利用する抗原特異的T細胞を検出する方法が、T細胞分析を根本的に変えた。例えば、MHCテトラマー複合体は、4つのMHCモノマー、例えば4つのMHCクラスI分子/β2-ミクログロブリン・モノマーと特異的ペプチド抗原および蛍光色素などの検出可能標識の会合によって形成される。こうしたMHCクラスI分子テトラマー複合体は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を含む、CD8+ T細胞サブセット上のT細胞受容体の別個のセットに結合する。エフェクターCD8+ T細胞であるCTLは、必ずしもCD8+ T細胞の抗原特異的プール全体に相当しない。この点において、LDAおよびサイトカイン・アッセイはどちらも、CTLまたはCTLの亜集団を検出し、一方、MHCテトラマー法は、エフェクター機能を示さない未刺激(naive)およびアネルギー性CD8+ T細胞を含む、すべての抗原特異的CD8+ T細胞を検出可能である。MHCテトラマーと末梢血リンパ球または全血を混合し、かつ検出系としてフローサイトメトリーを用いることによって、ペプチドに特異的なすべてのT細胞数およびそのマッチするアレルが提供される。こうしたものとして、MHCテトラマーは、特定のペプチドに対する細胞性応答の測定を可能にする。
【0008】
TCRレパートリーのスペクトラタイピング(spectratyping)によって、CDR3長の関数として、24のTCR VBファミリーから得られる各個々のTCR可変CDR3プロファイルを表すことが可能になる。各ピークは、1つのアミノ酸残基の3bpコードに相当し、各CDR3プロファイルにおいて、9または10のアミノ酸が同定される。三次元スペクトラタイプにおいて、全CDR3分析の領域は、各TCR VBファミリーに関して100%と概算され、かつ各個々のCDR3ピークの曲線下の領域が全CDR3の領域の割合として表される。可変領域のPCRに基づく増幅が定量的でないため、スペクトラタイピングは、TCRレパートリーの構造組成を反映するが、各TCR VA、さらにVBファミリーの量に関する情報は提供しない。
【0009】
T細胞特異性を分析するためのMHCテトラマーの使用は定量的である;これは放射性色素の使用を必要とせず;かつハイスループット・アッセイ形式に容易に適応される。さらに、この方法は、迅速に実行可能であり、かつしたがって新鮮な血液または組織試料を調べるために使用可能である。MHCテトラマー複合体に蛍光標識が含まれる場合、T細胞を含む細胞集団をさらに、1つまたは複数の他の蛍光標識分子、例えば他の細胞表面分子に特異的な蛍光標識分子で染色し、かつフローサイトメトリーを用いて分析し、こうして応答細胞のさらなる特徴付けを可能にしてもよい。この場合、ターゲット細胞を染色するのに用いた標識と容易に識別可能な波長で蛍光を発する、さらなる蛍光標識を選択する。さらに、MHCテトラマー分析は、標識細胞に対して毒性でなく、したがって、テトラマー結合性細胞は、フローサイトメトリーによって均一な集団に選別可能であり、かつその機能的能力、例えば抗原に応答して増殖する能力を確認するさらなるアッセイによって調べることも可能である。
【0010】
したがって、当技術分野において、ヒトにおいて、MTBを封じ込め、かつヒト肺における潜伏を維持する原因となる因子を診断する方法に対する必要性がある。新規ワクチン候補の有効性を評価するための、潜伏性MTB感染を診断かつ監視するための、MTB曝露を検出するための、既に確立された治療戦略および新規治療戦略の経過においてMTB根絶に関して試験するための、および「防御免疫」を維持するのに必要な免疫学的閾値を定義するための、生物学的に意味がある代理マーカーを提供するためには、抗MTB反応性CD4+またはCD8+ T細胞のエクスビボ同定が望ましい。
【発明の開示】
【0011】
発明の概要
本発明は、ミコバクテリウム・ツベルクローシス(MTB)由来の単離ヒトHLA-DR4拘束性T細胞エピトープを提供することによって、当技術分野のこれらの問題および他の問題を解決する。エピトープは、例えば、SEQ ID NO:3、6、7、または8に示すようなアミノ酸配列を含む。
【0012】
1つの態様において、本発明は、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、または8に示すようなアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0013】
別の態様において、本発明は、ヒト被験体において、MTBによる感染またはMTBに対する曝露の存在を診断する方法を提供する。この方法には、SEQ ID NO:8に示すようなアミノ酸配列を有する、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-DR4モノマーまたは修飾モノマーのマルチマーまたはオリゴマーと、被験体から得られた末梢血リンパ球(PBL)を接触させる工程、およびPBLへのマルチマーまたはオリゴマーの結合を検出する工程が含まれ、ここで、PBLへのテトラマーの結合は、被験体におけるMTB感染または曝露の存在の指標となる。
【0014】
別の態様において、本発明は、ヒト被験体において、MTBによる感染またはMTBに対する曝露の存在を診断する方法を提供する。この方法には、SEQ ID NO:3に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマーのテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーと、被験体から得られたPBLを接触させる工程、およびPBLへのテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーの結合を検出する工程が含まれ、ここで、PBLへのテトラマーの結合は、被験体におけるMTB感染または曝露の存在の指標となる。
【0015】
別の態様において、本発明は、ヒト被験体におけるMTB感染または潜伏の治療または予防のための薬剤の有効性を決定するための方法を提供する。この方法には、潜伏性MTBのため薬剤を用いた治療を受けている、DR4アレルを持つ患者から、PBLの試料を得る工程、および適切な結合条件下で、HLAモノマーまたは修飾モノマーの結合したテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーを有する固体支持体と、試料を接触させる工程が含まれる。HLAモノマーまたは修飾モノマーのテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーには、SEQ ID NO:6、7、8に示すアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-DR4モノマーまたは修飾モノマー;およびSEQ ID NO:1、2、または3に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマーが含まれる。PBLへのテトラマーの結合量を検出する。治療期間の適切な間隔後に、プロセスを反復し、かつ結果を比較する。比較により、治療期間の適切な間隔後に結合量の減少が見られる場合は、薬剤の有効性が示され、減少の欠如は、ヒトにおけるMTBの感染または潜伏の治療または予防のための薬剤の有効性の欠如を示す。
【0016】
別の態様において、本発明は、ヒト被験体におけるMTB感染または潜伏の治療のための薬剤の有効性を決定するための方法を提供する。この方法には、MTBのため薬剤を用いた治療を受けている、DR4アレルを持つ患者から、PBLを含む試料を得る工程、および適切な結合条件下で、HLAモノマーまたは修飾モノマーの結合したテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーを有する固体支持体と、試料を接触させる工程が含まれる。HLAモノマーまたは修飾モノマーのテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーには、SEQ ID NO:6、7、および8に示すアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-DR4モノマーまたは修飾モノマー;およびSEQ ID NO:1、2、または3に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマーが含まれる。PBLへのテトラマーの結合量を検出する。治療期間の適切な間隔後に、プロセスを反復し、かつ結果を比較する。比較により、治療期間の適切な間隔後に結合量の減少がみられる場合は、薬剤の有効性が示され、減少の欠如は、ヒトにおけるMTBの感染または潜伏の治療のための薬剤の有効性の欠如を示す。
【0017】
別の態様において、本発明は、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLAモノマーまたは修飾モノマーのテトラマーと、被験体から得られたPBLを接触させる方法を提供する。被験体はHLA-DR4アレルを有し、かつ結合性ペプチドはSEQ ID NO:8に示すようなアミノ酸配列を含む。あるいは、被験体はHLA-A2アレルを有し、かつ結合性ペプチドはSEQ ID NO:3に示すようなアミノ酸配列を含む。PBLへのテトラマーの結合を検出して、被験体における、M.レプレまたはM.ツベルクローシス感染または曝露の存在を同定する。
【0018】
別の態様において、本発明は、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLAモノマーまたは修飾モノマーのテトラマーと、被験体から得られたPBLを接触させる方法を提供する。被験体はHLA-DR4アレルを有し、モノマーはHLA-DR4モノマーであり、かつ結合性ペプチドはSEQ ID NO:6または7に示すようなアミノ酸配列を含む。あるいは、被験体はHLA-A2アレルを有し、モノマーはHLA-A2モノマーであり、かつ結合性ペプチドはSEQ ID NO:1および/または2に示すようなアミノ酸配列を含む。PBLへのテトラマーの結合を検出して、被験体における、M.レプレまたはM.ツベルクローシス以外のミコバクテリウム曝露または感染の存在を同定する。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は、ミコバクテリウム感染に関連する抗原から提供される、新規に同定されたMHC結合性ペプチド・エピトープを用いて、インビトロ操作の必要性を伴わずに、MHCクラスI拘束性およびクラスII拘束性およびMTBエピトープ特異的T細胞を、末梢血において、直接視覚化可能であるという発見に基づく。エクスビボ選別されたDR4/ペプチド・テトラマー反応性T細胞が、自己マクロファージ上の、天然にプロセシングされかつ提示されたターゲット抗原由来のエピトープを認識し(図10)、かつDR4+/MTBペプチド・テトラマー複合体が、尖叉試験陽性個体由来の肉芽腫組織における、肉芽腫関連リンパ球を特異的に染色する(図14)という観察によって、これらのHLAに提示されるペプチドの生物学的重要性が立証される。T細胞分化マーカー分析と組み合わせた、抗原特異的T細胞の同時試験によって、潜伏性TBにおけるMTB指向免疫応答を評価する新たなプラットホームが提供される。
【0020】
HLA-DR4拘束性T細胞エピトープ
【0021】
HLA-A2拘束性T細胞エピトープである、ESAT-6ペプチドLLDEGKQSLのテトラマー分析
【0022】
19kDa AgおよびAg85b由来のこれらのHLA A*0201拘束性ペプチドは、PBLにおいて既に記載されており、本発明者らは、本明細書において、MTB患者由来のCD8+ GALの焦点がAg85bエピトープ上にあるという証拠を加える。
【0023】
本発明は、1つの態様において、ミコバクテリウム・ツベルクローシス(MTB)由来の単離ヒトHLA-A2拘束性T細胞エピトープであって、本明細書のSEQ ID NO:3に示すようなアミノ酸配列を含む該エピトープ、およびその保存的バリエーションを提供する。このT細胞エピトープは、ヒトにおけるMTBまたはMTB以外のミコバクテリウムの感染またはこれらに対する曝露に関連する。別の態様において、本発明は、ミコバクテリウム・ツベルクローシス(MTB)由来の単離ヒトHLA-DR4拘束性T細胞エピトープであって、本明細書のSEQ ID NO:6、7、または8に示すようなアミノ酸配列を含む該エピトープ、およびその保存的バリエーションを提供する。
【0024】
別の態様において、本発明は、SEQ ID NO:3、ならびに6、7、および8を有する本発明のエピトープ、ならびに本発明のエピトープの保存的バリエーションをコードする単離ポリヌクレオチドを提供し、これには遺伝コードの結果として縮重しているものを含む。ポリヌクレオチドは、DNA、cDNA、RNA、mRNA等であってもよい。本発明のポリヌクレオチドを用いて、本発明のT細胞エピトープを組換えにより産生することも可能である。本発明のT細胞エピトープをコードする本発明のポリヌクレオチドを含む、本明細書に開示するような発現ベクター、例えばウイルスベクターもまた提供し、こうしたベクターで安定に形質転換された宿主細胞も提供する。
【0025】
さらに別の態様において、本発明は、ヒト被験体において、MTBによる感染またはMTBに対する曝露の存在を診断するための方法であって、SEQ ID NO:8に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-DR4モノマーまたは修飾モノマーのマルチマーまたはオリゴマーと、被験体から得られた末梢血リンパ球(PBL)を接触させる工程、およびPBLへのマルチマーまたはオリゴマーの結合を検出する工程を含む方法を提供し、ここで、PBLへの結合は、被験体におけるMTB感染または曝露の存在の指標となる。本発明の方法は、当技術分野に公知であるような、ハイスループット・スクリーニング技術を用いて、テトラマー、オリゴマー、またはマルチマーの結合を検出するのに特に適している。例えば、本発明の方法で用いるテトラマーを、本明細書の実施例に記載するものなどのフルオロフォアで標識してもよく、かつ検出工程は、フルオロフォアによって産生されるシグナルを測定する工程を含む。本発明の方法は、さらに、SEQ ID NO:6または7に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-DR4モノマーまたは修飾モノマーのさらなるテトラマーと、PBLを接触させる工程、およびPBLへのさらなるテトラマーの少なくとも1つの結合を検出する工程をさらに含んでもよい。
【0026】
さらに別の態様において、本発明は、ヒト被験体において、MTBによる感染またはMTBに対する曝露の存在を診断するための方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
a)SEQ ID NO:3に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマーのテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーと、被験体から得られたPBLを接触させる工程;および
b)PBLへのテトラマーの結合を検出する工程、ここで、PBLへのテトラマーの結合は、被験体におけるMTB感染または曝露の存在の指標となる。本方法は、SEQ ID NO:1または2に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマーのさらなるテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーと、PBLを接触させる工程、およびPBLへのさらなるテトラマーの少なくとも1つの結合を検出する工程をさらに含んでもよい。
【0027】
別の態様において、本発明は、SEQ ID NO:3に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマーのテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーと、被験体から得られたPBLを接触させる工程、およびPBLへのテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーの結合を検出する工程によって、ヒト被験体において、MTBによる感染またはMTBに対する曝露の存在を診断するための方法を提供し、ここで、PBLへのテトラマーの結合は、被験体におけるMTB感染または曝露の存在の指標となる。本方法は、SEQ ID NO:1または2に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマーのさらなるテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーと、PBLを接触させる工程、およびPBLへのさらなるテトラマーの少なくとも1つの結合を検出する工程をさらに含んでもよい。
【0028】
さらに別の態様において、本発明は、ヒト被験体におけるMTBの感染または潜伏の治療または予防のための薬剤の有効性を決定するための方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
a)潜伏性MTBのため薬剤を用いた治療を受けている、DR4アレルを持つ患者から、PBLを含む試料を得る工程;
b)適切な結合条件下で、以下の少なくとも1つから選択されるHLAモノマーまたは修飾モノマーの結合したテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーを有する固体支持体と、試料を接触させる工程:
1)SEQ ID NO:6、7、8に示すアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-DR4モノマーまたは修飾モノマー;および
2)SEQ ID NO:1、2または3に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマー。PBLへのテトラマーの結合量を検出する。治療期間の適切な間隔後に、プロセスを反復し、かつ結果を比較する。比較により、治療期間の適切な間隔後に結合量の減少が見られる場合は、薬剤の有効性が示され、減少の欠如は、ヒトにおけるMTBの感染または潜伏の治療または予防のための薬剤の有効性の欠如を示す。本発明の方法の他の態様におけるように、薬剤または薬剤候補の有効性を決定するための方法は、薬剤候補を薬剤スクリーニングするために当技術分野に公知の適応を用いた、任意の型のハイスループット・スクリーニングによく適しており、かつ抗TBワクチン候補の予備スクリーニングにおいて、または任意のミコバクテリウムの増殖をインビトロで減少させるかまたは抑止することが公知の化学的化合物(すなわち「小分子」)をスクリーニングするために使用可能である。
【0029】
本発明のさらに別の態様は、MTBのため薬剤を用いた治療を受けている、DR4アレルを持つ患者から、PBLを含む試料を得る工程;1)SEQ ID NO:6、7、および8に示すアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-DR4モノマーまたは修飾モノマー;および2)SEQ ID NO:1、2、または3に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマーの少なくとも1つから選択される、HLAモノマーまたは修飾モノマーの結合したテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーを有する固体支持体と、適切な結合条件下で、試料を接触させる工程によって、ヒト被験体におけるMTB感染または潜伏の治療のための薬剤の有効性を決定するための方法を提供する。PBLへのテトラマーの結合量を検出する。治療期間の適切な間隔後に、プロセスを反復し、かつ結果を比較する。比較により、治療期間の適切な間隔後に結合量の減少が見られる場合は、薬剤の有効性が示され、減少の欠如は、ヒトにおけるMTBの感染または潜伏の治療のための薬剤の有効性の欠如を示す。
【0030】
さらに別の態様において、本発明は、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLAモノマーまたは修飾モノマーのテトラマーと、被験体から得られたPBLを接触させる方法を提供し、ここで、被験体はHLA-DR4アレルを有し、かつ結合性ペプチドはSEQ ID NO:8に示すようなアミノ酸配列を含む、または被験体はHLA-A2アレルを有し、かつ結合性ペプチドはSEQ ID NO:3に示すようなアミノ酸配列を含む。PBLへのテトラマーの結合を検出して、被験体における、M.レプレまたはM.ツベルクローシス感染または曝露の存在を同定する。
【0031】
さらに別の態様において、本発明は、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLAモノマーまたは修飾モノマーのテトラマーと、被験体から得られたPBLを接触させる方法を提供し、ここで、被験体はHLA-DR4アレルを有し、モノマーはHLA-DR4モノマーであり、かつ結合性ペプチドはSEQ ID NO:6または7に示すようなアミノ酸配列を含む、または被験体はHLA-A2アレルを有し、モノマーは、HLA-A2モノマーであり、かつ結合性ペプチドはSEQ ID NO:1および/または2に示すようなアミノ酸配列を含む。PBLへのテトラマーの結合を検出して、被験体における、M.レプレまたはM.ツベルクローシス以外のミコバクテリウム感染または曝露の存在を同定する。
【0032】
本明細書において用いる場合、「MHCモノマー」および「HLAモノマー」という用語は、再生条件下で、適切なMHC結合性またはHLA結合性ペプチドおよびβ-2ミクログロブリン(β-2m)と三元複合体に集合する能力を維持するか、または集合している、クラスI MHC重鎖を指す。「MHCモノマー」および「HLAモノマー」という用語はまた、三元複合体を変性条件に供して、モノマーをアンフォールディングさせて、かつMHC結合性ペプチドおよびβ-2ミクログロブリンから解離させることから生じる、モノマーの変性型を指すようにも用いられる。
【0033】
本明細書において用いる場合、「修飾MHCモノマー」および「修飾HLAモノマー」という用語は、上述のようなクラスIモノマーであるが、以下に記載するような修飾を導入するように操作されているものを指す。これらの用語はまた、再生条件下で、適切なMHC結合性またはHLA結合性ペプチドおよびβ-2ミクログロブリンと三元複合体に集合する能力、ならびに変性条件下で解離する能力を維持する、MHCモノマーの機能性断片も含む。例えば、機能性断片は、クラスI重鎖のα1、α2、α3ドメインのみ、またはα1、α2ドメインのみ、すなわち三元複合体の形成に関与する細胞表面ドメインのみを含むことも可能である。別の態様において、修飾MHCモノマーは、融合タンパク質または「一本鎖」分子中に含有されるクラスI重鎖分子、またはその機能性断片であってもよいし、さらに、モノマーの細胞表面ドメイン間のリンカーとして、検出可能マーカーとして、または融合タンパク質中のリガンドと反応する第二のリガンドでコーティングされた固体支持体に分子を付着させるリガンドとして機能するアミノ酸配列を含んでもよい。さらに、「修飾MHCモノマー」および「修飾HLAモノマー」という用語は、1より多い種に由来するか、または1より多いクラスIサブクラスに由来する、クラスI重鎖分子のドメインを含有するキメラを含むよう意図される。例えば、ヒトHLA-A2モノマーにおけるヒトβ-2mに対してマウスβ-2mを置換することによって、キメラを調製してもよい。
【0034】
SEQ IDの本発明のエピトープの一次アミノ酸配列のマイナーな修飾は、例示される本発明のエピトープに比較した際、実質的に同等の活性を有するタンパク質を生じ得る。こうした修飾は、部位特異的突然変異誘発などの方法によって導入される修飾など、意図的であってもよいし、また自然発生的であってもよい。修飾がエピトープの機能、例えば本明細書に開示するような、対応するT細胞拘束性複合体に結合する能力を破壊しないという条件で、これらの修飾によって産生されるポリペプチドはすべて、本発明内に含まれる。
【0035】
本発明のエピトープをコードするポリヌクレオチド配列は、例示される配列(すなわちSEQ ID NO:3、6、7、および8、ならびに例示されるポリペプチド配列の保存的バリエーションを含む。本明細書において用いる用語「保存的バリエーション」は、場合、別の生物学的に類似のアミノ酸残基によるアミノ酸残基の置換を指す。保存的バリエーションの例には、イソロイシン、バリン、もしくはロイシンなどへの疎水性残基の別のものからの置換、または極性残基への別のものからの置換、例えばリジンからアルギニンへの置換、アスパラギン酸からグルタミン酸への置換、もしくはアスパラギンからグルタミンへの置換等が含まれる。用語「保存的バリエーション」にはまた、置換エピトープと特異的に相互作用する抗体が、未置換エピトープとも特異的に免疫反応性であるという条件で、未置換親アミノ酸の代わりの置換アミノ酸の使用も含まれる。
【0036】
MHCテトラマーは、ビオチンに対するテトラマー結合性部位を有する分子であるストレプトアビジンと4つのMHCモノマーの複合体であり、これに蛍光色素、例えばフィコエリトリン(PE)が結合している。クラスIモノマーに関しては、モノマーはまた、β2-ミクログロブリン、推定上のT細胞エピトープを含有するペプチド断片、および目的のペプチド断片の予測されるMHCサブタイプに対応するMHCモノマーの可溶性サブユニットと複合体を形成し、宿主細胞におけるポリペプチドの発現によって得られる。通常の条件下では、MHCモノマーは、T細胞がクラスIモノマーを発現する場合であってさえ、抗原提示細胞の細胞表面に係留される(すなわち交差提示)。MHCテトラマーに含有される4つのモノマーの各々は、各々、β2-ミクログロブリン、MHC結合性ペプチド、および対応するMHC分子を含有する、再構成されたモノマーへの可溶性単位の集合を支持する条件下で、これらの可溶性サブユニットを再フォールディングすることによって、モノマーとして産生される。モノマーをビオチン化し、かつ続いてビオチン化された再構成モノマーを蛍光色素標識ストレプトアビジンと接触させることによって、モノマーからMHCテトラマーを構築する。被験体の末梢血リンパ球(PBL)の試料に含有されるものなどの多様な集団のT細胞と接触させると、試料中のT細胞に認識される再構成モノマーを含有するテトラマーは、マッチしたT細胞に結合するであろう。蛍光フローサイトメトリーを用いて、反応の内容を分析して、結合したMHCテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーを有するT細胞を決定し、定量化し、かつ/または単離する。MHC結合性ペプチドは、T細胞に認識されるテトラマー、オリゴマー、またはマルチマー中に見出される(全体として参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,635,363号を参照されたい)。
【0037】
MHCモノマーは、モノマーのクラスI構成要素内に操作されるペプチド配列、例えばBirA酵素のビオチン化部位を含有するシグナル配列をさらに含有してもよく;かつ検出可能標識を含有してもよい。用語「MHCマルチマー」または「マルチマー性MHCモノマーまたは修飾MHCモノマー複合体」は、本明細書において、通常は多価実体を介して一緒に結合される、2つまたはそれ以上のMHCモノマーを含有する複合体を指すよう用いられる。MHCマルチマーは、MHCダイマー、MHCトリマー、MHCテトラマー等を含むことも可能である(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,635,363号を参照されたい)。MHCマルチマー中のMHCモノマーはまた、例えばジスルフィド結合を通じて直接、または例えば特異的結合対を通じて間接的に連結されていてもよく、かつまた、例えばモノマーのMHCクラスI分子構成要素内に操作されることも可能な、ロイシンジッパーなどの、モノマーの二次構造または三次構造間の特異的相互作用を通じて会合していてもよい。MHCテトラマーは、特異的ペプチド抗原と会合し、かつ蛍光色素を含有する、4つのMHCモノマーの複合体である(米国特許第5,635,363号)。
【0038】
MHCクラスIモノマーは、ビオチン化可能なペプチド配列で、重鎖の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを置換することによって調製されており、かつこうしたモノマーを、4つのビオチン部分に結合可能なストレプトアビジンと接触させることによって、MHCクラスIテトラマーが形成されており(例えば、各々、参照により本明細書に組み入れられる、Altman et al., Science 274:94-96, 1996; Ogg and McMichael, Curr. Opin. Immunol. 10:393-396, 1998を参照されたい;また、米国特許第5,635,363号も参照されたい)、かつこうしたテトラマーは市販されている(Immunomics/Beckman Coulter, Inc.)。
【0039】
細胞表面CD8へのHLA分子の結合を最小限にするため、HLA-A*0201、HLA-B*3501, HLA-A*1101、HLA-B*0801、およびHLA-B*2705を含む、突然変異クラスIA HLA分子を含むMHCクラスI分子を用いて、MHCテトラマーが調製されている(Ogg and McMichael、上記、1998)。呼称「m」は、そのクラスIA分子が突然変異体であることを示し;例えば、HLA-A*0201mは、A245V置換を導入することによって、HLA-A*0201から生成される(例えばBodinier et al., Nat. Med. 6:707-710, 2000を参照されたい)。突然変異HLA分子を含有するMHCテトラマーは、CD8細胞の一般的な集団への非常に減少した結合を有するが、ペプチド特異的結合を保持し、したがって、まれな特異的T細胞(CD8+の1%未満; Altman et al、上記、1996)の正確な識別を容易にする。例えば、各々、特定のペプチドに結合し、かつフィコエリトリン(PE)に結合した、4つのHLA-A*0201 MHCクラスIA分子で構成されるMHCテトラマーが調製されている(「i Tag(商標)MHCテトラマー」); Immunomics/Beckman Coulter, Inc.)。HLA-A0201アレルは、全体的な集団の約40%〜50%で見出されており、かつCD8が仲介する結合を最小限にするように修飾されている(参照により本明細書に組み入れられる、Bodinier et al., Nat. Med. 6:707-710, 2000)。これらの複合体は、CD8+ T細胞サブセット上の、別個のセットのT細胞受容体(TCR)に結合する(参照により本明細書に組み入れられる、McMichael and O'Callaghan, J. Exp. Med. 187:1367-1371, 1998)。i TAg(商標)MHCテトラマー複合体は、例えば、複合体中の特定のペプチドおよびHLA分子に特異的なヒトCD8+ T細胞を認識する。特異的結合は、機能経路に依存しないため、これらのテトラマーによって同定される集団には、機能状態に関わらず、すべての特異的CD8+細胞が含まれる。
【0040】
MHCテトラマーまたは他のMHCマルチマーのモノマーを、共有的もしくは非共有的に、かつ物理的会合もしくは化学的結合を通じて直接、または特異的結合対の使用を通じてもしくは特異的結合対の使用を通じた多価実体への付着によって間接的に、機能可能であるように一緒に連結してもよい。あるいは、MHCマルチマーのモノマーを、MHCモノマーに対する多数の特異的付着部位を含有する多価実体に、機能可能であるように連結してもよい。本明細書において用いる場合、「機能可能であるように連結された」または「機能可能であるように会合した」という用語は、第一の分子および少なくとも第二の分子が、各分子が元来の機能または天然の機能を実質的に維持するように、共有的または非共有的に一緒に連結されることを意味する。例えば、各々、ペプチド抗原に特異的に結合可能な、2つまたはそれ以上のMHCモノマーを機能可能であるように連結してMHCマルチマーを形成する場合、MHCマルチマー中の2つまたはそれ以上のMHCモノマーは、各々、ペプチド抗原に特異的に結合する能力を維持する。MHCマルチマーが、T細胞に抗原性ペプチドを提示する能力を実質的に減少させず、またこの能力を阻害しないという条件で、モノマーを機能可能であるように連結するためのいかなる手段を用いてもよい。一般的に、MHCモノマーは、モノマーの重鎖構成要素を通じて、一緒にまたはマルチマー部分に連結される。したがって、例えば重鎖を含むアミノ酸の反応性側基間に形成される鎖間ペプチド結合を通じて、重鎖中のシステイン残基間で形成される鎖間ジスルフィド結合を通じて、またはアミノ酸側鎖に提示される化学基間に一般的に形成可能である任意の他の種類の結合を通じて、モノマーを連結してもよい。多価実体にMHCマルチマーのモノマーを機能可能であるように連結するための好適な手段は、結合対の各部分である、特異的付着部位を利用する。MHCマルチマーが、マルチマー部分へのMHCモノマーの付着によって形成される場合、モノマーおよび多価実体は各々、結合対を構成する、特異的付着部位の1つを提供する。
【0041】
例えば、モノマーの重鎖をビオチン化して、かつ、天然に4つのビオチン結合性部位を有するストレプトアビジンに、この重鎖を化学的にカップリングすることによって、テトラマーを形成してもよい(図1)。本明細書において用いる場合、「特異的結合対」という用語は、互いに特異的に相互作用可能な2つの分子を指す。特異的結合対の2つの分子を、「特異的結合対のメンバー」または「結合パートナー」と称してもよい。特異的結合対は、イムノアッセイを行うために一般的に用いられる条件下で、相互作用が安定であるように、選択される。多くの特異的結合対が当技術分野において周知であり、かつこれには、例えば、エピトープと特異的に相互作用する抗体およびエピトープ、例えば抗FLAG抗体およびFLAGペプチド(Hopp et al., BioTechnology 6:1204 (1988);米国特許第5,011,912号);グルタチオンおよびグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST);ニッケルイオンまたはコバルトイオンなどの二価金属イオンおよびポリヒスチジン・ペプチド;またはこれと同様のものが含まれる。
【0042】
MHCテトラマーを調製するため、ビオチンおよびストレプトアビジンが用いられており(ストレプトアビジンが、ビオチンに対して4つの特異的付着部位を提供する多価実体として作用する)、かつビオチンおよびアビジンもまた使用可能である。これらの特異的結合対は、単一のアビジンまたはストレプトアビジン分子が、4つのビオチン部分と結合可能であるという利点を提供し、したがってテトラマーなどのMHCマルチマーを調製するのに好適な手段を提供する。ビオチンは、MHC重鎖のリジン残基に化学的に結合可能であるし、または酵素反応を用いて結合可能であり、この場合、酵素BirAのビオチン化部位を含むペプチドシグナル配列を含有するように、重鎖が修飾されている(Altman et al.、上記、1996; Ogg and McMichael、上記、1998)。あるいは、ビオチンが、MHC重鎖より少ないリジン残基を有するβ2-ミクログロブリンに連結されていてもよく、または単一のアクセス可能なリジン残基しか含有しないように突然変異誘発されている、突然変異体β2-ミクログロブリンに連結されていてもよい。
【0043】
別の態様において、多価実体は、モノマーおよび抗体の多数の付着部位を含有するリポソーム表面などの脂質表面であってもよい。例えば、多価実体は、ヒスチジン・タグに結合するように修飾された脂質を含有するリポソームであってもよく、かつ、各々カルボキシ末端ヒスチジン・タグを有する、少なくとも1つのMHCモノマーまたは修飾MHCモノマーおよび抗体または抗体断片を、ヒスチジン・タグを介して、リポソーム表面に結合させてもよい。例えば、Ni-イミノ二酢酸(Ni-IDA)またはNi-ニトリロ酢酸(Ni-NTA)を含有する脂質が、ポリヒスチジンの結合パートナーである。ヒスチジン・タグに結合するように修飾された脂質の例は、共有結合したニッケル・キレート基を伴う1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-[N-95アミノ-1-カルボキシペンチル)イミノ二酢酸)スクシニル]、N'',N''-ビス[カルボキシメチル]-L-リジン(ニトリロ酢酸)(DOGS-Ni-NTA)である。
【0044】
別の態様において、多価実体は、少なくとも1つ、かつ好ましくは複数のMHCモノマーまたは修飾MHCモノマーを細胞表面上に発現する、酵母細胞であってもよい。単数の抗体を酵母細胞表面に付着させてもよく、複数の抗体を細胞の表面に付着させる(例えば表面上で発現させる)。さらにmataha
、多価実体はハイブリドーマであってもよく、かつMHCモノマーまたは修飾MHCモノマーをハイブリドーマ表面上で発現させてもよい。さらに別の態様において、架橋複合体中の非TCR所持ターゲット細胞は、抗体が特異的であるペプチドをその細胞表面上に発現するハイブリドーマであってもよい。
【0045】
本明細書において用いる場合、「感染および/または曝露」という句には、ミコバクテリウム感染または潜伏としての患者における多様な状態、抗ミコバクテリウム・ワクチン接種に対する応答、ミコバクテリウム感染を有するかもしくは有すると疑われる個体との緊密な接触、またはヒトにおいて、特に無防備状態のヒトにおいて疾患を引き起こすミコバクテリウムとの緊密な接触が含まれる。
【0046】
本明細書に記載する実施例において、未知の病因の肺病変を提示する7人の患者(以下の表1を参照されたい)の肺生検から、肉芽腫関連リンパ球を培養した。病理学的診断によって、5人の患者で結核が明らかになり、他の2人の患者で、肺のサルコイドーシスまたはリウマチ様関節炎関連病変が明らかになった。生存ミコバクテリウムは、痰、気管支洗浄液(broncholavage)、または生検自体からは単離不能であった。
【0047】
【表1】
【0048】
本明細書記載の実験の目的は、以下を分析することによって、ヒト肺における潜伏を維持するのに関与する局面を確かめることであった:a)T細胞受容体(TCR)CDR3スペクトラタイピングによって決定されるようなT細胞応答の質、b)フローサイトメトリー分析において決定されるような、各TCR VβファミリーにおけるT細胞の量、およびc)サイトカイン放出アッセイによって定義されるようなGALの機能。
【0049】
CD4+ GALおよびCD8+ GALは、オリゴクローン性であり、非常に拡大されたファミリーで構成され、PBLに比較して、特質な集団を構成する。磁気ビーズ選別後、フローサイトメトリーによって測定されるTCRレパートリーの定量的評価によって補完される、TCR CDR3スペクトラタイピングによって定義される、TCRレパートリーの「客観的」構造組成に関して、CD4+およびCD8+ GAL集団を、別個に分析した。図1および図2Aにおいて、x軸上に24のVβファミリーを示し、z軸上にアミノ酸数としてのファミリー内のCDR3長を示し、かつy軸上に、フローサイトメトリー列挙およびスペクトラタイピングによって決定されるような曲線下の領域の組み合わせとして、リンパ球集団内のCDR3長の割合を示す、「TCRランドスケープ」をプロットした。
【0050】
Vβファミリー内の単一のCDR3長の増大は、通常、特異的免疫応答に関与し得るTリンパ球のクローン性拡大のためであると見なされる。各患者は、主にオリゴクローン性であるCD4+およびCD8+ GAL集団両方に関して、個々の、特定のTCR Vβプロファイルを示した。Vβファミリーは、オリゴクローン性であるだけでなく、分析した全部で24のVβファミリーのうち、数ファミリーがGAL集団中で拡大された。何人かの患者において、別個のオリゴクローン性またはモノクローン性Vβファミリーに属するT細胞が、リンパ球集団の主要な画分を構成した。例えば、患者#1では、Vβ14陽性CD4+リンパ球が、かつ患者#5では、Vβ7陽性T細胞が、すべてのCD4+ GALのうち、それぞれ27%および19%を占めた。CDR3スペクトラタイピングによって、これらのVβファミリーが、単一のCDR3長の拡大によって特徴付けられることが明らかになり、したがって、これらのVβファミリーが、単一T細胞クローンで構成されることが示された。潜伏性TBにおける機能を分析するため、公知の方法を用いて、これらのクローンのTCR(以下の表2を参照されたい)を配列決定した。
【0051】
【表2】
【0052】
主な拡大はまた、CD8+ GALにおいても見ることができる:患者#1におけるモノクローン性Vβ3陽性T細胞(TCR配列に関しては表2を参照されたい)、患者#3におけるオリゴクローン性Vβ17陽性リンパ球、および患者#7におけるVβ13陽性CD8+ GALは、それぞれ、すべてのCD8+ GALの最大17%、9%、および12%を構成した。
【0053】
個々の患者またはHLA型を比較した際、ヒトMTB封じ込めにおける優先的なVβ使用を示す可能性もある、Vβファミリーの共通の拡大は同定不能であった。
【0054】
市販されている24のVβ特異的抗体のパネルは、80%より多くをカバーするが、完全なVβレパートリーではないため、MTBを制御する際に関与し得る、すべてのT細胞を定量的に同定することは不可能であった。例えば、患者#1において、CD4+ GALの20%およびCD8+ GALの55%は、フローサイトメトリーにおいて、Vβ発現に関して定量的に評価不能であった。Vβ頻度が測定不能なこれらのT細胞は、分子評価によれば、数個のさらなるVβファミリーしか含まず、したがってまたクローン性に拡大されていた可能性もある。
【0055】
肺のTCRレパートリーが末梢血の単なる鏡像なのか、または肺が別個のTCRレパートリーを獲得するのかを決定するため、試験患者の両方の解剖学的区画を分析した(材料が制限されていたため、患者#1のPBLを除く)。患者#2に関して(CD4+およびCD8+ T細胞両方に関して)、および患者#5に関して(総/未選別PBLおよびGALに関して)得られたデータを、図3に原理の証明として提示する。PBLに関して得られた「TCRランドスケープ」からGAL「TCRランドスケープ」を引くことによって、図3A(分子TCR-CDR3分析)および3B(TCR Vβ頻度の分析によって補正したCDR3分析)に示すように、相違パーセントを視覚化することが可能であった。乱れたランドスケープは、2つの区画が似ていないTCRレパートリーで実際に構成され、かつ肉芽腫組織内で、個々のTCRファミリーが優先的に拡大されていることを示す。レパートリーが同一であれば、フラットなランドスケープが生じたはずである。Vβファミリー拡大によって特徴付けられると同定されたGALをさらなる研究のために選択した。
【0056】
MTBに反応してTh1/Tc1サイトカイン分泌パターンを示すGAL
Vβファミリー拡大によって特徴付けられるGALの機能に取り組む前に、より一般的なアプローチを用いて、生存MTBにインビトロで一晩感染させておいた自己マクロファージを抗原提示細胞(APC)として用いるサイトカイン放出アッセイにおいて、不均質なCD4+およびCD8+ GAL集団の機能を決定した。分析した5人の患者のうち、4人の患者のCD4+ GALは、769から>2000pg/mlのレベルのIFN-γを産生し(図1B)、一方、GM-CSFは、このサイトカインの産生に関して分析した3人の患者すべてで、38〜2031pg/mlのレベルで測定可能であった(#3、#6、および#7;データ示さず)。CD8+ TCR+ GALに関しては、分析した3人の患者のうち2人が、それぞれ614および>2000pg/mlのIFN-γを産生し(図2B)、かつ3つのCD8+ GAL集団がすべて、35〜1262pg/mlのレベルでGM-CSF産生に関して免疫応答を示し、一方、IL-4はどの患者でも測定不能であった(データ示さず)。驚くべきことに、生検にTB特異的病変がない(患者#6および#7)が、ESAT-6応答性のため、陽性の「免疫学的診断」を有する患者(以下を参照されたい)であっても、やはり、MTBに対して48時間以内に、強い細胞仲介性免疫応答を開始することが可能であった。注目すべきことに、分析したリンパ球を、MTB抗原を用いてあらかじめインビトロ刺激はしていなかった。
【0057】
患者#3において、自己APC上の、天然にプロセシングされかつ提示されたMTBエピトープに対する反応としては、IFN-γまたはIL-4は測定不能であった。しかし、この患者のGALは、異なる実験設定において、MTB由来ペプチドに反応して実質量のIFN-γを産生可能であり(図7および8を参照されたい)、これらの細胞が、機能的にサイトカイン分泌可能であることが示唆された。
【0058】
MHC拘束を確認するため、MHCクラスIまたはクラスIIに対して向けられる遮断モノクローナル抗体(mAb)を用いて、さらなる実験を行った。サイトカイン産生は、CD4+ GAL集団において、DR、DP、およびDQに対して向けられるmAbによって部分的または完全のいずれかで阻害され(図1A〜C)(しかしCD8+ GAL集団では阻害されず(図2A〜C))、MHCクラスII分子上にMTBペプチドが提示されることが示された。他方、MHCクラスI mAbは、CD8+ TCR+集団のサイトカイン産生を部分的にまたは完全に阻害し(図2B)、一方、CD4+ GALにはまったく効果を示さなかった(データ示さず)。
【0059】
モノマーの調製
ヒトにおいて、クラスI MHCは染色体6上に位置し、かつ3つの遺伝子座、HLA-、HLA-B、およびHLA-Cを有する。最初の2つの遺伝子座は、アロ抗原をコードする多数のアレルを有する。これらは44Kd重鎖サブユニットおよびすべての抗原特異性に共通の12Kdβ-2-ミクログロブリン・サブユニットからなることが見出されている。例えば、Turner, M. J. et al., J. Biol. Chem. (1977) 252:7555-7567によって記載されるように、ホモ接合体ヒト・リンパ芽球細胞株J-Y由来の形質膜のパパイン消化後に、可溶性HLA-A2を精製することも可能である。パパインは、膜貫通領域近くで44Kd重鎖を切断し、α1、α2、α3ドメインおよびβ-2-ミクログロブリンで構成される分子を生じる。
【0060】
MHCモノマーは適切な細胞から単離することができ、または例えばPaul et al, Fundamental Immunology, 2d Ed., W. E. Paul, ed., Ravens Press N.Y. 1989, Chapters 16-18に記載されるように、組換えにより産生し、かつ以下に記載するように容易に修飾することができる。
【0061】
本明細書においてMHCモノマーに適用される「単離された」という用語は、天然状態以外の、例えばMHCを通常発現する細胞の細胞膜に会合していない、MHCクラスIのMHC糖タンパク質重鎖を指す。この用語は、全長サブユニット鎖、ならびにMHCモノマーの機能性断片を含む。機能性断片は、抗原結合性部位および適切なT細胞受容体による認識に必要な配列を含むものである。断片は、典型的には、全長鎖の配列の少なくとも約60〜80%、典型的には90〜95%を含む。本明細書において記載するように、「単離された」MHCサブユニット構成要素は、組換えにより産生されることもまたは適切な細胞供給源から可溶化されることもありうる。
【0062】
「成熟」MHC糖タンパク質モノマーの天然型が、配列における1つまたは複数のアミノ酸の欠失、置換、および挿入または付加のため、長さがいくぶん多様であろうことは周知である。したがって、MHCモノマーは、実質的な天然修飾に供され、それでもなおその機能を保持することが可能である。また、当業者に周知であり、かつ以下に詳細に記載する、多様な組換えDNA技術を利用して、修飾タンパク質鎖を容易に設計し、かつ製造してもよい。例えば、鎖は、アミノ酸置換、付加、欠失等によって、一次構造レベルで、天然存在配列と異なっていてもよい。いくつかの組み合わせでこれらの修飾を用いて、最終修飾タンパク質鎖を産生してもよい。
【0063】
一般的に、部位特異的突然変異誘発などの、多様な周知の技術によって、MHCモノマーをコードする遺伝子の修飾を容易に達成可能である。所望の特性に適したアッセイにおいて、ルーチンのスクリーニングによって、任意の特定の修飾の効果を評価してもよい。例えば、適切な抗体を用いた競合的イムノアッセイによって、サブユニットの免疫学的特性の変化を検出してもよい。標準的インビトロ細胞アッセイまたは以下の実施例セクションに記載する方法を用いて、モノマーがT細胞を活性化する能力に対する修飾の効果を試験してもよい。標準的技術にしたがって、酸化還元安定性もしくは熱安定性、疎水性、タンパク質分解に対する感受性、または凝集する傾向などの他の特性の修飾をすべてアッセイする。
【0064】
本発明は、抗原性ペプチドおよび/またはT細胞受容体に対するサブユニットの親和性を増加させ、サブユニットの安定性、精製、および調製を促進することを含めて、多様な目的を念頭において調製される、MHCモノマーのアミノ酸配列修飾を提供する。また、モノマーを、血漿半減期を修飾するか、療法有効性を改善するか、または本発明の複合体の療法的使用中の副作用の重症度もしくは副作用の発生を低下させるように修飾してもよい。サブユニットのアミノ酸配列修飾は、通常、天然または天然存在アレルには見られない、あらかじめ決定された変異体である。変異体は、典型的には、天然存在類似体と同じ生物学的活性(例えばMHC-ペプチド結合)を示す。
【0065】
本発明の挿入修飾は、MHCモノマーのあらかじめ決定された部位に、1つまたは複数のアミノ酸残基が導入され、かつ既存の残基を置き換えるものである。例えば、挿入修飾は、サブユニットのアミノ末端またはカルボキシル末端への異種タンパク質またはポリペプチドの融合であってもよい。
【0066】
他の修飾には、異種シグナル配列とモノマーの融合、および当技術分野に公知であるような免疫グロブリン鎖またはその断片など、増強された血漿半減期を有する(通常、>約20時間)ポリペプチドへのモノマーの融合が含まれる。
【0067】
置換修飾は、少なくとも1つの残基が取り除かれ、かつ異なる残基がその代わりに挿入されているものである。非天然アミノ酸(すなわち天然タンパク質には通常、見られないアミノ酸)、ならびに等比体積の(isosteric)類似体(アミノ酸または別のもの)もまた、本発明での使用に適している。
【0068】
ポリペプチド主鎖の構造(例えばシートまたはらせんコンホメーションとしての構造)、ターゲット部位の分子の電荷もしくは疎水性、または側鎖のかさ(bulk)の維持に対する影響が異なる置換残基を選択することによって、機能または免疫学的同一性の実質的な変化を作製する。一般的に、機能の最大変化を生じると期待される置換は、(a)親水性残基、例えばセリンもしくはスレオニンを、疎水性残基、例えばロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリン、もしくはアラニンに対して(もしくはこれらによって)置換するか;(b)システインもしくはプロリンを、任意の他の残基に対して(もしくはこれらによって)置換するか;(c)電気的陽性側鎖を有する残基、例えばリジン、アルギニン、もしくはヒスチジンを、電気的陰性残基、例えばグルタミンもしくはアスパラギンに対して(もしくはこれらによって)置換するか;または(d)かさばる側鎖を有する残基、例えばフェニルアラニンを、側鎖を持たないもの、例えばグリシンに対して(もしくはこれらによって)置換するものであろう。
【0069】
モノマーの置換修飾にはまた、MHCサブユニットドメインの1つまたは複数に対して、ルーチンの方法によって、他のタンパク質の機能的に相同な(少なくとも約70%の相同性を有する)ドメインを置換するものが含まれる。この目的のために特に好ましいタンパク質は、他の種、例えばネズミ種由来のドメインである。
【0070】
別の種類の修飾は、欠失修飾である。欠失は、MHCモノマー配列からの1つまたは複数のアミノ酸残基の除去によって特徴付けられる。典型的には、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを欠失させる。システインまたは他の不安定な残基の欠失もまた、例えばMHC複合体の酸化安定性を増加させる際に望ましい可能性もある。潜在的なタンパク質分解部位、例えばArgArgの欠失または置換を、塩基性残基の1つを欠失させるか、またはグルタミニルもしくはヒスチジル残基によって1つを置換することによって、達成する。
【0071】
好ましい種類の置換または欠失修飾は、サブユニットの膜貫通領域を伴うものを含む。MHCモノマーの膜貫通領域は、細胞膜の脂質二重層にまたがるのに適したサイズの、高度に疎水性または親油性のドメインである。これらは、MHC分子を細胞膜に係留すると考えられる。典型的には膜貫通ドメインのヒドロキシル化残基を欠失させるかまたは置換することによって、膜貫通ドメインを不活化すると、その細胞または膜脂質親和性が減少し、かつ水溶解度が改善されることによって、回収および配合が容易になるであろう。あるいは、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを欠失させて、潜在的に免疫原性であるエピトープの導入を回避してもよい。この部位で、実質的に親水性であるヒドロパシー・プロファイルを生じるのに十分な残基を欠失させることによって、または同じ結果を達成する異種残基で置換することによって、膜結合機能の不活化を達成する。
【0072】
膜貫通不活化MHCモノマーの主な利点は、組換え宿主の培地に分泌可能であることである。この変異体は、血液などの体液に可溶性であり、かつ細胞膜脂質に認識可能な親和性を持たず、したがって組換え細胞培養物からの回収がかなり単純化される。典型的には、本発明の修飾MHCモノマーは、機能する膜貫通ドメインを持たず、かつ好ましくは機能する細胞質配列を持たないであろう。こうした修飾MHCモノマーは、本質的に、MHCモノマーの細胞外ドメインの有効部分からなるであろう。いくつかの状況において、モノマーは、可溶性が有意に影響を受けない限り、膜貫通領域由来の配列(最大約10アミノ酸)を含む。
【0073】
例えば、膜貫通ドメインを、任意のアミノ酸配列、例えば、全体として親水性ヒドロパシー・プロファイルを示す、約5〜50個のセリン、スレオニン、リジン、アルギニン、グルタミン、アスパラギン酸等の親水性残基のランダム配列またはあらかじめ決定した配列によって置換してもよい。欠失(切り詰められた(truncated))モノマー同様、これらのモノマーは、組換え宿主の培地に分泌される。
【0074】
グリコシル化変異体が、本発明の範囲内に含まれる。これらには、グリコシル化を完全に欠く変異体(非グリコシル化)および天然型より少なくとも1つ少ないグリコシル化部位を有する変異体(脱グリコシル化)、ならびにグリコシル化が変化している変異体が含まれる。含まれるのは、脱グリコシル化および非グリコシル化アミノ酸配列変異体、天然非修飾アミノ酸配列を有する脱グリコシル化および非グリコシル化サブユニットである。例えば、置換または欠失突然変異誘発を使用して、サブユニットのN連結またはO連結グリコシル化部位を排除して、例えばアスパラギン残基を欠失させるか、またはリジンもしくはヒスチジンなどの別の塩基性残基によって置換する。または、グリコシル化認識部位を取り除くことによって、グリコシル化を妨げるため、アスパラギン残基が未変化のままであったとしても、グリコシル化部位を構成する隣接残基を置換するかまたは欠失させる。加えて、原核生物は、ポリペプチドにグリコシル化を導入することができないため、組換え原核細胞培養においては、天然モノマーのアミノ酸配列を有する非グリコシル化MHCモノマーが産生される。
【0075】
適切な宿主細胞を選択することによって、またはインビトロ法によって、グリコシル化変異体が好適に産生される。例えば、酵母は、哺乳動物系のものとは有意に異なるグリコシル化を導入する。同様に、MHC供給源とは異なる種起源(例えばハムスター、ネズミ、昆虫、ブタ、ウシ、またはヒツジ)または異なる組織起源(例えば肺、肝臓、リンパ系、間葉系、または上皮)を有する哺乳動物細胞を、例えば上昇したレベルのマンノースまたは異なる比のマンノース、フコース、シアル酸、および哺乳動物糖タンパク質に典型的に見られる他の糖によって特徴付けられるように、多様なグリコシル化を導入する能力に関して、ルーチンにスクリーニングする。サブユニットのインビトロ・プロセシングは、典型的には、酵素的加水分解、例えばノイラミニダーゼ消化によって達成される。
【0076】
本発明で使用するのに適したMHC糖タンパク質は、パパインでの処理による、3M KClでの処理による、および界面活性剤での処理による可溶化を含む多様な技術を用いて、非常に多数の細胞から単離されている。例えば、クラスIタンパク質の界面活性剤抽出後、アフィニティー精製を用いてもよい。次いで、透析または選択的結合ビーズによって、界面活性剤を取り除いてもよい。任意のMHC I所持細胞からの単離によって、例えばターゲットとされる癌またはウイルス疾患を患う個体から、分子を得てもよい。
【0077】
当業者に知られる標準的技術を用いて、単離MHC糖タンパク質からの個々の重鎖の単離を容易に達成する。例えば、SDS/PAGE、およびゲルからの重鎖の電気溶出を用いて、重鎖を単離してもよい(例えば、Dornmair et al.、上記、およびHunkapiller, et al., Methods in Enzymol. 91:227-236 (1983)を参照されたい)。また、Gorga et al. J. Biol. Chem. 262:16087-16094 (1987)およびDornmair et al. Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 54:409-416 (1989)に記載されるように、SDS/PAGE後、電気溶出を用いて、MHC I分子由来の別個のサブユニットを単離する。当業者は、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、またはアフィニティー・クロマトグラフィーなどの、分子を分離する、いくつかの他の標準法を用いてもよいことを認識するであろう。
【0078】
または、いくつかのクラスIおよびクラスIIタンパク質のアミノ酸配列が知られ、かつ遺伝子がクローニングされており、したがって、組換え法を用いてMHCモノマーを発現させてもよい。これらの技術によって、上述のようなMHCモノマーのいくつかの修飾が可能になる。例えば、組換え技術は、疎水性膜貫通ドメインを欠失させる、カルボキシ末端切り詰めの方法を提供する。カルボキシ末端はまた、例えば分子内にシステインおよび/またはリジン残基を導入することによって、リガンドまたは標識の結合を容易にするように、任意に選択され得る。合成遺伝子には、典型的には、発現ベクターへの挿入および遺伝子配列の操作を補助する、制限部位が含まれるであろう。次いで、適切なモノマーをコードする遺伝子を発現ベクターに挿入して、適切な宿主、例えば大腸菌、酵母、昆虫、または他の適切な細胞で発現させ、かつ組換えタンパク質を得る。
【0079】
遺伝子が入手可能であれば、配列の容易な操作が可能になるため、構築の第二世代には、キメラ構築物が含まれる。例えば、クラスI重鎖のα1、α2、α3ドメインを、典型的には、クラスIのα3ドメインによって、β-2ミクログロブリンと連結して、かつ同時発現させて複合体を安定化させてもよい。任意で、クラスIまたはクラスII遺伝子の膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインもまた含まれてもよい。
【0080】
当技術分野に公知の方法によって、適切なDNA配列由来の発現ベクターの構築および組換え体産生を行う。DNAおよびRNA単離、増幅、およびクローニングに、標準的技術を用いる。一般的に、製造者の仕様書にしたがって、DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼ等を伴う酵素反応を行う。一般的に、Sambrook et al., Molecular Cloning--A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N. Y., 1989にしたがって、これらの技術および多様な他の技術を実行する。この文献の手法は、当技術分野に周知であると考えられる。
【0081】
発現は原核系または真核系におけるものであってもよい。適切な真核系には、酵母、植物、および昆虫系、例えば誘導性プロモーター下のショウジョウバエ(Drosophila)発現ベクターが含まれる。原核生物は、最も頻繁には、大腸菌の多様な株に代表される。しかし、他の微生物株、例えばバチルス、例えば枯草菌(Bacillus subtilis)、シュードモナス属(Pseudomonas)の多様な種、または他の細菌株もまた、使用可能である。こうした原核系において、宿主と適合する種に由来する複製部位および制御配列を含有するプラスミドベクターを用いる。例えば、大腸菌は、典型的には、Bolivar et al., Gene (1977) 2:95による大腸菌種に由来するプラスミドであるpBR322の誘導体を用いて形質転換される。一般的に用いられる原核制御配列は、本明細書において、転写開始のためのプロモーターを、任意でオペレーターと共に、リボソーム結合部位配列を伴って含むと定義され、β-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトース(lac)プロモーター系(Change et al., Nature (1977) 198:1056)およびトリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel et al., Nucleic Acids Res. (1980) 8:4057)およびλ由来PLプロモーターおよびN-遺伝子リボソーム結合部位(Shimatake et al., Nature (1981) 292:128)のような一般的に用いられるプロモーター系が含まれる。原核生物と適合する任意の入手可能なプロモーター系が使用可能である。
【0082】
真核宿主に有用な発現系は、適切な真核遺伝子に由来するプロモーターを含む。酵母に有用なプロモーターの種類には、例えば、解糖酵素の合成のためのプロモーターが含まれ、3-ホスホグリセリン酸キナーゼのものが含まれる(Hitzeman, et al., J. Biol. Chem. (1980) 255:2073)。他のプロモーターには、例えば、エノラーゼ遺伝子由来のもの(Holland, M. J., et al. J. Biol. Chem. (1981) 256:1385)またはYEp 13から得られるLeu2遺伝子由来のもの(Broach, J., et al., Gene (1978) 8:121)が含まれる。誘導性プロモーター下のショウジョウバエ発現系(Invitrogen, San Diego, CA)もまた、使用可能である。
【0083】
適切な哺乳動物プロモーターには、SV40由来の初期および後期プロモーター(Fiers, et al., Nature (1978) 273:113)、またはポリオーマ、アデノウイルスII、ウシ・パピローマウイルスもしくは鳥類肉腫ウイルスに由来するものなどの他のウイルス・プロモーターが含まれる。適切なウイルスおよび哺乳動物エンハンサーを上に引用する。
【0084】
当技術分野によく理解される標準的連結および制限技術を使用して、標準法を用い、MHC配列に機能可能であるように連結した前述の制御エレメントから、発現系を構築する。単離プラスミド、DNA配列、または合成オリゴヌクレオチドを切断し、最適化して、かつ所望の形に再連結する。
【0085】
当技術分野に一般的に理解され、かつこれらの市販されている制限酵素の製造者がその詳細を明記する条件下で、適切な単数の制限酵素(または複数の酵素)で処理することによって、部位特異的DNA切断を行う。一般的に、約1μgのプラスミドまたはDNA配列を、約20μlの緩衝溶液中、1単位の酵素によって切断する;過剰な制限酵素を用いて、DNA基質の完全な消化を確実にしてもよい。各インキュベーション後、フェノール/クロロホルムでの抽出によってタンパク質を取り除き、かつその後、エーテル抽出してもよく、かつエタノールでの沈殿後、Sephadex G-50スピンカラム上に流すことによって、水性画分から核酸を回収してもよい。望ましい場合、切断断片のサイズ分離を行ってもよい。
【0086】
4つのデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)の存在下で、大腸菌DNAポリメラーゼI(Klenow)の大断片で処理することによって、制限切断断片を平滑化してもよい。Klenowで処理した後、混合物をフェノール/クロロホルムで抽出し、かつエタノール沈殿した後、Sephadex G-50スピンカラム上に流す。
【0087】
市販されている自動化オリゴヌクレオチド合成装置を用いて、合成オリゴヌクレオチドを調製する。しかし、本発明のタンパク質において、合成遺伝子が好適に使用される。遺伝子設計には、コード配列部分をこれらのコード類似体で置換するため、遺伝子の容易な操作を可能にする、制限部位が含まれてもよい。
【0088】
E. coli Genetic Stock Center、CGSC #6135から得た大腸菌株MM294、または他の適切な宿主を、連結混合物で、まず形質転換することによって、プラスミド構築物の正しい連結を確認してもよい。アンピシリン、テトラサイクリン、もしくは他の抗生物質耐性によって、または当技術分野で理解されるように、プラスミド構築の様式に応じた他のマーカーを用いることによって、成功した形質転換体を選択してもよい。次いで、任意でクロラムフェニコール増幅後、形質転換体からプラスミドを調製する。単離したDNAを制限によって分析し、および/またはMessing, et al., Nucleic Acids Res. (1981) 9:309にさらに記載されるような、Sanger, F., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1977) 74:5463のダイデオキシ法によって、またはMaxam, et al., Methods in Enzymology (1980) 65:499の方法によって、配列決定する。
【0089】
次いで、構築したベクターをタンパク質の産生に適した宿主に形質転換する。用いる宿主細胞に応じて、こうした細胞に適した標準的技術を用いて、形質転換を行う。実質的な細胞壁バリアを含有する原核生物または他の細胞には、Cohen, S. N., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1972) 69:2110に記載されるような、塩化カルシウムを使用したカルシウム処理、またはManiatis, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (1982) Cold Spring Harbor Press, p. 254に記載されるようなRbCl法を用いる。こうした細胞壁を持たない哺乳動物細胞には、Graham and van der Eb, Virology (1978) 52:546のリン酸カルシウム沈殿法またはエレクトロポレーションが好ましい。Van Solingen, P., et al., J. Bacter. (1977) 130:946およびHsiao, C. L., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1979) 76:3829の方法にしたがって、酵母への形質転換を行う。
【0090】
次いで、MHC配列の発現を支持する条件下で形質転換細胞を培養し、かつ組換えにより産生されたタンパク質を培養から回収する。
【0091】
MHC結合性ペプチド
抗原提示細胞(APC)の表面上のMHC糖タンパク質による抗原の提示は、抗原性タンパク質がより小さいペプチド単位に加水分解されるのに続いて起こると考えられる。抗原性タンパク質内のこれらのより小さいセグメントの位置は、実験的に決定可能である。これらのMHC結合性ペプチドは、長さ約8〜約10、おそらく約8〜約11、または約8〜約12残基であると考えられ、かつアグリトープ(MHC分子に認識される)およびエピトープ(T細胞上のT細胞受容体によって認識される)両方を含有する。エピトープは、長さ約8〜約10、おそらく約8〜約11、または約8〜約12残基の直鎖配列であり、抗原特異的T細胞受容体に認識される。アグリトープは、MHC糖タンパク質とペプチドの結合の原因となる、連続性または不連続性配列である。本発明は、推定上のMHC結合性ペプチドを評価して、こうした断片をMHCモノマーまたは修飾MHCモノマーとの三元複合体に取り込み可能であるかどうかを決定するための、系、キット、およびアッセイを提供する。
【0092】
テトラマーまたは他のマルチマーの形成を容易にするため、モノマーがビオチン化されていることが、現在好ましい。好ましくは、タグ付けしたモノマーを多価コア実体に付着させるのに使用可能な部分で、交換モノマーのマルチマーにタグ付けする。例えば、アッセイに用いるモノマーにビオチンをタグ付け可能である場合、細胞表面、リポソーム等のアビジン化多価実体に、モノマーを結合することによって、マルチマーを形成することも可能である。好ましくは、ビオチン化した交換モノマーをストレプトアビジンまたはアビジンに結合して、PEで検出可能に標識されている、テトラマーを形成することによって、マルチマーを形成する。次いで、TCR所持細胞のテトラマー「染色」の決定は、本明細書の実施例に例示されるように、フローサイトメトリーを用いて、容易に決定される。
【0093】
主要なIFN-γ産生体である、拡大Vβファミリーによって特徴付けられるCD4+ GALおよびCD8+ GAL
CD4+およびCD8+ GAL集団内のVβファミリーの拡大が、実際に疾患との戦いにおける大きな機能的役割の指標であるのかどうかを調べるため、拡大されたVβファミリーにしたがってGALを選別し、かつサイトカイン放出アッセイにおいて分析した。上に詳述するように、CDR3スペクトラタイピングをフローサイトメトリーと組み合わせると、CD4+ GAL集団における主要な提示Vβファミリーとして、患者#1ではVβ9およびVβ14、患者#2ではVβ8およびVβ9、かつ患者#5ではVβ7が認識可能になり、ならびにCD8+ GALにおいては、患者#1でVβ3が認識可能になった。これらの患者は、TBに関して陽性の病的診断を有した。本発明者らは、適切なVβファミリーを発現するT細胞を選別し、かつ上述のように、MTB感染マクロファージに48時間曝露した。これらのT細胞によるIFN-γの産生は、匹敵する細胞数のGAL全集団によって産生されるより、はるかにより高い濃度を生じた(CD4+ GALに関しては、1300〜9955pg/ml、CD8+ GALに関しては、1185pg/ml;図5A〜C)。予期されるように、MHCクラスIに対して向けられるmAbは、Vβ3+CD8+ GALのサイトカイン産生を阻害した。CD4+、Vβ選別GALでは、DR、DP、またはDQ mAbのいずれかによって、IFN-γ産生が遮断され、選別されたT細胞が単一のMHCクラスIIアレルに拘束されていることが示唆された。
【0094】
ESAT-61-20を認識する、特定の拡大Vβファミリーに属するCD4+ GAL
選別したCD4+ GALの抗原特異性を決定するため、Vβ選別したT細胞がMTB由来DR結合性ペプチドESAT-61-20およびESAT-672-95を認識する能力の分析を行った。これらの研究において、Vβ選別したGALは、患者#1、#2、および#5において、ESAT-61-20を認識し、かつIFN-γを産生し;一方、ESAT-672-95は、患者#5のVβ7+ GALにおいてのみ、バックグラウンドレベルを超えたIFN-γ産生上昇を誘導した(図6E)。ペプチド濃度の増加は、図6B、D、およびFに示すように、より強いサイトカイン応答を誘発したが、試験した最高ペプチド濃度では、結果は多様であり、患者#2におけるさらなる増加から、患者#5におけるIFN-γ抑制までの範囲があった。同一の実験設定で、対応するVβが枯渇したGAL集団を分析すると、バックグラウンドレベルを超えて測定可能なIFN-γ産生がないように、これらのGALがESAT-61-20ペプチドを認識しないことが観察された(患者#1ではVβ9陰性GAL:4pg/ml;患者#2ではVβ9陰性GAL:検出レベル未満;患者#5ではVβ7陰性GAL:45pg/ml;図6A中、データ示さず)。したがって、ESAT-61-20の認識は、これらの3人の患者において、単一Vβファミリーに拘束され、または患者#5では、単一のVβ7+ T細胞クローンにさえ拘束された。
【0095】
さらに、生検において、TBに特異的な病理学的病変がない患者において、ESAT-6特異的免疫応答を調べた。どちらの患者のESAT-61-20の認識も、実質量のIFN-γおよびGM-CSFの産生を導き、これはHLA-DRに対して向けられるmAbによって遮断可能であった(図8A〜C)。IL-4産生は検出不能であった(データ示さず)。他の患者で見られるように、ESAT-672-95は、測定可能なサイトカイン産生を誘導せず、IL-4さえ誘導しなかった。
【0096】
CD8+ GALにおいてTc1サイトカイン応答を誘発するMTB由来HLA A2結合性ペプチド
HLA A2+患者のCD8+ GAL集団において、抗原性ペプチドの認識を調べた(表1、図8A〜C)。MTB由来HLA A2結合性ペプチド、Ag85A48-56、Ag85A242-250、Ag85B143-152、Ag85B199-207、および19kDa Ag88-97を、それぞれ、T2細胞に負荷し、CD8+ GALを添加し、かつインキュベーション48時間後、インビトロ・サイトカイン産生を測定した。黒色腫由来Gp100ペプチドを陰性対照として用いた。
【0097】
19kDa Ag88-97は中程度の免疫応答を誘発したが、IFN-γおよびGM-CSF産生によって決定されるように、最も免疫原性であるペプチドは、Ag85A242-250およびAg85B199-207であることがわかった。試験した他のペプチドは、いずれの患者でも、対照ペプチドgp100よりはるかに高いサイトカイン産生を誘発しなかった。IL-4は、いずれの場合でも検出不能であった(データ示さず)。さらに、ESAT-6より提供される3つの候補A2結合性ターゲット・ペプチドに対する反応性に関して、患者#3由来のGALを分析した。これらのGALは、MHCクラスI拘束性方式で、優先的にESAT-628-36を認識し、かつ実質量のIFN-γおよびGM-CSFを産生し(図9A〜B)、ESAT-617-25およびESAT-662-70は少量のサイトカイン産生を誘発した。
【0098】
GALおよびPBLのVβレパートリー間で相違が検出されたため、フローサイトメトリー分析において、Tet-Ag85B+ GALの規模を測定し、かつPBLで見られる頻度と比較した(患者#7において例示するようなもの)。潜伏性CMV感染が大部分の患者に存在すると期待され、したがって、HLA-A2結合性pp65ペプチドを陽性対照および参照点として用いた。Tet-Ag85B+およびTet-CMVpp65+ T細胞両方の頻度は、GAL集団において、かつPBLにおいて、類似であり、急性ウイルス感染で見られるテトラマー陽性T細胞の高頻度、および多くの悪性腫瘍で見られる低頻度の間の範囲であった。これらの2つの区画で見られる類似の量は、TCRランドスケープを比較した際に見られた明確な量的相違とはいくぶん一致しないと解釈可能であった。しかし、CDR3スペクトラタイピングによって、Tet-Ag85B+ GAL集団が、広い範囲の異なるVβファミリーに属するT細胞からなり、かつしたがって多様なT細胞クローンからなることが明らかになった(データ示さず)。PBLの入手可能性が限定されているため、GALにおける分子TCR組成を、PBLにおけるものと比較しなかった。これらのデータによって、テトラマー染色が、異なる解剖学的区画のMHC拘束性および抗原特異的T細胞の列挙に関する情報を提供するが、例えばTCR-CDR3分析を用いて、クローンレベルでPBLおよび組織由来リンパ球を定性的に比較することによって、これを補足可能であることが示される。
【0099】
インサイチューのCD8+ GALの新たな観点を提供する共焦点レーザー走査型顕微鏡(CLSM)
TB特異的病変を提示する患者#3および#4において、Ag85b199-207および19kDa Ag88-97のHLA A2テトラマーで、肺切片を染色することによって、抗原特異的CD8+ GALをインサイチューで視覚化した。TCR結合テトラマーは、CLSMでは赤色に見え、一方、CD8αに対して向けられるmAbは、FITC標識され、緑色に見える。ネズミ・リンパ系組織で先に観察されたように、テトラマー染色は、T細胞の1つ(またはいくつか)の極でクラスター形成するようであるTCRを視覚化し、球状の細胞上、単数または複数の鮮赤色の点の印象を与えたが、一方、CD8は、より一様に分布しているようであり、細胞に均質な環状の外見を与えた。二重発現に際して、赤色および緑色は、細胞の橙色〜黄色の着色を生じた。陰性対照としてgp100-MHCテトラマーで染色すると、単なるバックグラウンド染色が導かれた。テトラマー陽性細胞は、肺切片内のいくつかの異なる場所に集中した。
【0100】
潜伏性結核の免疫学的状況は、疾患のこの状態に関して適切な動物モデルがないため、理解および研究が困難であった。さらに、ヒトにおけるPBLの分析から得られる結果は、感染部位自体での免疫応答を必ずしも反映しない可能性がある。いくつかの研究は、PBLにおいて、IL-10などのTh2型サイトカインが顕著であることを報告する。他方、活性TB患者の他の区画、例えば胸水由来のT細胞、または気管支肺胞洗浄液によって単離されたT細胞は、顕著なIFN-γおよび/または増殖性応答を示し、これは、分析した同じ患者のPBLにおいては、低いかまたは存在さえしなかった。この現象は、おそらくCCR2またはCCR5などの特定のケモカイン受容体のため、特殊なMTB反応性T細胞が感染部位に隔離されてしまうためである可能性がある。したがって、肺組織自体における免疫学的事象をより詳細に見ると、MTBに対する防御免疫のよりよい理解につながる可能性がある。
【0101】
TCR抗原認識の細かい特異性は、大部分、TCR VαおよびVβ鎖の相補性決定領域3に存する。抗原に応答した抗原特異的T細胞のクローン性拡大は、CDR3スペクトラタイピングにおいて、Vβファミリー内の単数またはいくつかの過剰提示された(overrepresented)CDR3ピークとして反映される。最終的には、T細胞のこのクローン性拡大は、ウイルスおよび細菌感染両方に関して、ヒト肺組織から単離されたものが、個々のVβファミリーのオリゴクローン性またはモノクローン性拡大によって特徴付けられると記載されたように、Vβレパートリー内の適切なVβファミリーの増大を生じることになり得る。GALにおけるこれらのVβ拡大は、試験中の患者のPBLでは観察不能であり、MTB反応性T細胞が、実際に肺に隔離されていたことを示した。活性ヒトTBに関する研究において、匹敵する区画化が報告されており、この場合、胸水由来のリンパ球のVβレパートリーは、PBLで見られるものとは異なっていた。
【0102】
拡大されたGALは、MTB感染自己マクロファージを容易に認識し、かつMTBに対する免疫に寄与することがよく確立されているサイトカインであるIFN-γを産生した。潜伏性TB患者における、測定可能なIL-4の非存在下での、CD4+ GALおよびCD8+ GALによるIFN-γのこの強い産生は、ヒトにおいて、肺組織に存するリンパ球による細胞仲介性免疫応答が、実際に、MTB封じ込めに関与していることを示す。
【0103】
拡大されたMTB特異的T細胞クローンの頻度は、活性TB患者のPBLにおけるCD8+ Tet-19kD Ag+反応性T細胞に関する先に公表された知見(CD8+ PBLのおよそ2%)、またはMelan-A/MART127-35特異的腫瘍浸潤T細胞に関して見られるような(TILの5.68%)、組織に存するリンパ球に関して比較した際、予想外に、肺組織で高かった(単一の患者において、CD4+ GALの最大27%に達する)。これらの研究で用いたテトラマー分析または限界希釈アッセイが、図9A〜Bに示すように、多様なクローンの抗原特異的T細胞の頻度を反映している可能性があり、一方、GALでは単一クローンの拡大が見られることを考慮すると、潜伏性TBに関するこの頻度増加は、より顕著でさえあるようである。他方、急性ネズミ・リステリア症における臓器特異的テトラマー反応性T細胞応答を分析した際、他者によって、GALにおけるものと類似の頻度が検出された。リステリア症において、これらの頻度は、疾患回復に成功した後、8%未満に下落した。潜伏性TBでは、生存MTBがマクロファージ内部に長年存在し続けるために、疾患が本質的に排除されないことから、頻度は上昇したままであると予期することが可能である。興味深いことに、MTB反応性GALはまた、患者#6および#7に見られるように、明確なTB特異的病変がない肺組織にも存在した。
【0104】
潜伏性TBと診断された3人の患者に関して、主要な拡大Vβファミリーを含むCD4+ GAL集団における細胞の抗原特異性を定義した:患者#1および#2ではVβ9、ならびに患者#5ではVβ7。これらのGALは、全CD4+ GAL集団に比較した際、MTBに反応して、増加した量のIFN-γを産生し、かつすべてESAT-6特異的であった。患者#5において、例えば、単一のVβ7陽性T細胞クローン(表2)が、ESAT-6エピトープの認識専門の、肺に存するリンパ球の19%を構成した。初期分泌抗原性ターゲット6(ESAT-6)は、BCGおよび大部分の環境由来ミコバクテリウム種では発現が存在しないため、ヒトにおける活性または潜伏性MTB感染の検出に感受性かつ特異的であると暗に示されている。さらに、これらの拡大されたリンパ球は、全GAL集団において、ESAT-61-20由来のペプチドを認識する単独のCD4+ T細胞であった。この知見は、肺におけるMTB抗原を選択する非常に集中的な免疫応答を示す。これらのデータは、MTB封じ込めの成功が、いくつかのTCRクローン型に非常に集中し、かつ限定される可能性があることを示す。すべての拡大されたVβファミリーを、MTB関連エピトープの認識に結びつけることは不可能であった。CMVなどの肺の他の再発性または慢性感染の免疫学的制御もまた、適切に拡大されたT細胞の存在を必要とする可能性があり得る。
【0105】
これらのデータの臨床的暗示は重要である。各臓器が、質または量の点で、同じ病原体に対して、異なる免疫応答を装備し得るという観察を考慮すると、ヒトTBにおける肺の免疫学的状況を理解することは、有効なMTBワクチン戦略の開発に必須である。理想的なワクチンは、広く適用可能であり、かつ有効でなければならない。この例では、調べたTB患者において、感染の原発部位で潜伏性を維持する際の主な機能因子の中に、ESAT-61-20ペプチド特異的CD4+リンパ球があったように、有効性は、ESAT-6 Agを含むことによって、強く増強されうる。
【0106】
ESAT-6は、MTBに対する免疫応答において、確かに重要な抗原である可能性があり、研究は、ネズミ・モデルにおけるワクチン接種にこの抗原を推奨するか、または既に使用に成功している。
【0107】
しかし、免疫優性エピトープ(有効性および適用可能性の両方に潜在的に重要である)に関するデータは、世界的に異なる。結果は、抗原のアミノ末端(N末端)およびカルボキシ末端(C末端)部分をカバーするペプチドESAT-61-20およびESAT-672-95を含み、かつコーカサス・ドイツ人患者のGALに対して行った、本明細書に提示する例で得た。この集団に基づくと、結果は、免疫優性エピトープがESAT-6のN末端部分に存し、かつ多様なHLA DR分子上に提示可能であることを示し、そのため、ドイツ人患者を伴うUlrichらによるPBLに関する研究、ならびにBoston, Massachusettsの最近のPPD陽転者に関する同じグループの報告と一致する。他方、世界の他の地域の研究では、他のESAT-6エピトープが推奨される:エチオピア人患者は、抗原の中央部分(アミノ酸42〜75位)を優先的に認識し、一方、クウェート人およびデンマーク人患者は、最も頻繁には、C末端領域(アミノ酸72〜95位)を認識する。MustafaらおよびRavnらの両者に論じられるように、この現象は、異なる民族群の遺伝子HLA構成の多様性から生じ得る。遺伝的に異なるマウスのESAT-6リコール応答に関して類似の観察が行われており、かつこの遺伝要因はまた、新規TBワクチン接種および/または検出系の開発において、考慮に入れるべきである。
【0108】
結核におけるCD8+リンパ球の重要な役割に関して、実質的な証拠が存在する。本明細書の実施例に含まれる研究において、肺組織で、MTB特異的CD8+ GALのクローン性拡大もまた観察され、例えば、患者#1におけるCD8+ GAL集団の17%を構成するVβ3陽性T細胞クローンがある。したがって、重要なターゲットとして文献に報告されている分泌Ag、85A、85B、およびESAT-6、ならびに19kDaリポタンパク質に由来するHLA-A2提示ペプチド・パネルをスクリーニングすることによって、CD8+ GALの主な抗原性ターゲットを決定する研究を行った。潜伏性TBのこれらの研究において、Ag85A242-250およびAg85B199-207、ならびにESAT-628-36の優先的な認識、かつ19kDa Ag88-97への中程度の反応が観察された。対照的に、Ag85A48-56およびAg85B143-152は、あるとしてもわずかな応答しか誘発しなかった。この観察が、肺由来CD8+ T細胞の一般的な傾向であるか、または個々の患者に特異な特徴であるかどうかは、より大きいコホートにおいて、さらに研究する必要があり得る。しかし、これらのデータの主な重要性は、Ag85Aおよび85B特異的、ならびにESAT-6および19kDa Ag特異的CD8+ T細胞が、ヒト肺において、機能する免疫細胞として実際に存在し(かつ末梢血におけるだけでなく)、これらの抗原が、潜伏性の維持に関与することである。これらの細胞をエクスビボで視覚化するため、インサイチュー・テトラマー染色後、CLSMを行った。この手法は、ヒト肺組織において、Ag85b特異的および19kDa Ag特異的CD8+ T細胞両方の、前例がない提示を達成した。
【0109】
まとめると、本発明者らは、ヒト潜伏性TBにおいて、CD4+およびCD8+ MTB反応性リンパ球が存在し、非常に拡大され、かつ肺組織で機能性であることを立証する。CD8+テトラマー・インサイチュー染色に加えて、CD4+およびESAT-6反応性T細胞もまた、テトラマー・インサイチュー染色を使用して、肉芽腫組織において、直接視覚化可能であった。CDR3スペクトラタイピングとフローサイトメトリーVβ分析を組み合わせると、これらの同定の強力なツールとなり、これにより、PBLとは異なる集中したリンパ球集団が潜伏性を支配していることを理解することが可能になった。重要なターゲットは、ESAT-6、ならびにAg 85Aおよび85Bのような分泌抗原の特定のペプチドである。将来、これらの抗原をワクチンに統合すると、MTBに対する防御免疫を確立するのに重要であることが立証され得る。
【0110】
したがって、新規ワクチンの有効性を評価するために、潜伏性MTB感染を試験するために、既に確立された治療戦略および新規治療戦略の経過においてMTB根絶に関して試験するために、および潜在的に「防御免疫」を維持するのに必要な閾値を定義するために、生物学的に意味がある代理マーカーを提供するためには、抗MTB反応性CD4+またはCD8+ T細胞のエクスビボ同定が望ましい。本発明者らは、本明細書において、MTBおよびツベルクローシス以外のミコバクテリウム(MOTT)間で共有される抗原、すなわち19kDaリポタンパク質、AG85b、またはMTBのみに存在するESAT-6タンパク質に対して向けられる、HLA-DR4拘束性抗原特異的CD4+ T細胞の同定を報告する。
【0111】
本発明を以下の限定されない実施例によって、さらに例示する。
【0112】
実施例1. 材料および方法
肺結核と診断された患者(7人のうち5人)を、Heidelberg大学病院から採用した。典型的な病巣y X線およびPCRに基づくMTB同定によって、結核を診断した。悪性病巣を排除するため、手術によって肺組織を得た。HE染色によって肉芽腫組織が同定されたならば、新鮮に単離された肺組織を、10% FCSおよび抗生物質を補ったRPMI培地中に入れ、かつ結腸直腸癌組織からT細胞を得るために先に記載されたように処理した。肺肉芽腫肺組織由来のT細胞を肉芽腫関連リンパ球(GAL)と名づけた。7人の患者のうち2人が、それぞれ、リウマチ様関節炎またはサルコイドーシスと診断された(表2に列挙)。すべての患者はPPD反応性に関して陽性と判定された。地元の倫理委員会によって認可された研究に登録した個人のインフォームドコンセントを得た後、血液を抜き取った。
【0113】
フローサイトメトリー
肺結核診断時、および標準的三重療法(リファンピシン、エタンブトール、およびイソニジド)の開始後の異なる時点で、ヘパリン処理した血液を患者から抜き取った。これらの研究に用いたすべての患者は、治療に適合し、かつ肺病巣の排除を示した。Ficoll勾配上の分離によって末梢血単核細胞(PBMC)を得て、かつ90%ウシ胎児血清(FCS)および10% DMSO中、1〜5x107細胞/バイアルで液体窒素中に保存した。凍結末梢血白血球(PBL)を融解し、かつ20% FCSを補ったRPMI-1640中で洗浄し、1% FCSを補ったRPMI中に細胞ペレットを再懸濁し、かつ1μgフィコエリトリン(PE)標識テトラマー試薬と室温で30分間インキュベーションし(MHCクラスIテトラマーの場合)、その後、直接、エネルギー・カップリング色素(ECD)標識抗CD45RA(クローン2H4LDH11LDB9、ネズミIgGl)またはフィコエリトリン-シアニン(PC5)標識抗CD8αmAbクローンB9.11(ネズミIgGl)および抗CD28 mAb(FITC、クローンCD28.2)とインキュベーションした。以下に記載するように、PBLを2時間インキュベーションすることによって、抗原特異的HLA-DR4拘束性CD4+ T細胞の染色を達成した。BD/Pharmingen(San Diego, CA)から購入したCCR5特異的mAb(CD 195)を除いて、すべてのmAbは、Beckman/Coulter, Krefeld, Germanyから得た。
【0114】
フローサイトメトリー分析
Coulter Epics XLおよびXLシステム・ソフトウェア2.1(Beckman-Coulter, Fullerton, CA)を用いて、細胞を分析した。CD8+ CD45RA+またはCD8+ CD45RA-細胞に対して細胞を別個にゲーティングし、その後、CD28+/-細胞に関してゲーティングして、かつ最後にテトラマー結合を評価した。T細胞分化、ホーミングおよびエフェクター機能を反映する、前駆体(CD45RA+、CD28+)、活性化(CD45RA-、CD28+)、記憶(CD45RA-、CD28-)またはエフェクター(CD45RA+、CD28-)Tリンパ球を含む、異なるT細胞亜集団における抗原反応性リンパ球の存在を、記載するように行った。結腸直腸癌患者由来のTILに関して記載されるように、肺結核またはサルコイドーシスを患う患者由来のGAL(肉芽腫関連リンパ球)を調製した(Maeurer et al., J. Exp. Med., 1996)。National Center for Clinical Laboratory Standardsガイドラインにしたがって、尖叉試験を適用し、かつこの実験は地元の倫理委員会によって認可された。公知の方法を用いたゲノム型決定によって、各個体由来のMHCクラスIおよびIIアレルを決定した。
【0115】
テトラマー試薬の調製
HLA-A2野生型(wt)またはHLA-A2突然変異体(HLA-A2m、MHCクラスI-α3ドメインの245位のアラニン→バリン、MHCクラスI重鎖とCD8の相互作用がより有効でないため、減少したバックグラウンド染色を生じる)からテトラマー複合体を調製した。19kDa抗原(VLTDGNPPEV)(アミノ酸88〜97位)(SEQ ID NO:1)、Ag85b(KLVANNTRL)(SEQ ID NO:2)またはESAT-6(アミノ酸28〜36位)(LLDEGKQSL)(SEQ ID NO:3)由来の、HLA-A2に提示されるMTBエピトープのいずれかを、HLAモノマーに負荷した。CMVpp65抗原エピトープ(NLVPMVATV)(SEQ ID NO:4)または黒色腫関連抗原gplOO(YLEPGPVTV)(SEQ ID NO:5)を対照として用いた。 HLA-DR4テトラマー複合体に、(QMPYQPVQSPTQVEA)(19kDA Ag)(SEQ ID NO:6)、(PVEYLQYPSPSMGRD)(Ag85b)(SEQ ID NO:7)または(FAGIEAAASAIQGNV)(ESAT-8-22)(SEQ ID NO:8)のいずれかを負荷した。テトラマー複合体をPEに直接カップリングし、かつPBLと2時間、室温(Ag85bおよび19kDa Ag由来ペプチド)または4℃(ESAT-6)のいずれかでインキュベーションし、その後、本明細書に記載するようなT細胞マーカーで染色した。
【0116】
MTB Ag85複合体由来のペプチド:Ag85a、アミノ酸48〜56位:GLPVEYLQV(SEQ ID NO:21)、Ag85a、アミノ酸242〜250位:KLIANNTRV(SEQ ID NO:22)、Ag85b アミノ酸143〜152位:FIYAGSLSAL(SEQ ID NO:23)、Ag85b アミノ酸199〜207位、KLVANNTRL(SEQ ID NO:2)、19kDa抗原ペプチドVLTDGNPPEV(SEQ ID NO:1)(アミノ酸88〜97位)、ならびに候補ターゲットESAT-6由来ペプチドAIQGNVTSI(SEQ ID NO:24)(アミノ酸17〜25位)、LLDEGKQSL(SEQ ID NO:3)(アミノ酸28〜36位)およびATAELNNA(SEQ ID NO:25)(アミノ酸62〜70位)を用いて、MHCクラスI(HLA-A2)拘束性T細胞応答を試験した。
【0117】
免疫磁気細胞選別および機能アッセイ
抗CD8コーティング免疫磁気ビーズ(Miltenyi, Bergisch Gladbach, Germany)を用いて、3〜5x107 PMBCからCD4+ T細胞を分離した。CD8+ T細胞が枯渇したPBMC集団を、示すように、それぞれのPE標識テトラマー試薬(1μgテトラマー/2xl07細胞)と2時間インキュベーションし、1回洗浄し、かつ免疫磁気ビーズ(Miltenyi, Bergisch Gladbach, Germany)に付着した抗PE指向(directed)mAbと15分間インキュベーションした。10% FCSおよび50 ng/mlヒト組換えIL-7(Dr. Natalio Vita, Sanofi, Franceによって提供された)を補ったGibco(Eggenstein, Germany)から得られる50% AIM-V培地、50% DMEM(高グルコース)を含有する96ウェルプレート中、陽性選択細胞を、24時間休止させた。
【0118】
先に詳細に記載するような、M.ツベルクローシスまたはM.アビウム・イントラセルラレのいずれかに感染させた自己マクロファージに、テトラマー選別細胞を72時間曝露した。天然にプロセシングされかつ提示された抗原のMHCクラスII拘束性T細胞認識を遮断するため、抗DR指向mAb L243を用い、かつ抗MHCクラスI指向mAb w6/32を陰性対照として用いた。上清を採取し、かつELISA系(Diaclone, Besancon, France)を用いて、IFNγまたはGM-CSFに関して試験した。ペプチド再刺激のため、10 ng/ml IL-7および1 IU IL-2 /mlを補った50% AIM-Vおよび50% DMEM(高グルコース)を含有する血清不含培地中、1μg/mlの適切なペプチドとPBL(5xlO6細胞/ml)を7日間インキュベーションした。
【0119】
テトラマー・インサイチュー染色
臨床的結核の徴候がない尖叉+個体(これらの個体は肺癌を排除する診断目的で開胸術を受けた)由来の肺肉芽腫組織由来の新鮮凍結5μm厚切片を、適切なペプチド(最終濃度1μg/ml)を負荷したHLA-A2またはDR4テトラマー複合体、およびDAKO抗体希釈剤ChemMate希釈緩衝液(DAKO, Hamburg, Germany)中で希釈したヒトCD8α鎖のカルボキシ末端のペプチド・マッピングに対して向けられるヤギ抗CD8 Ab(最終濃度0.002μg/ml、Santa Cruz、sc-1141)と、振盪装置上、4℃で一晩インキュベーションした。抗CD4抗体(ヤギ)もまた、DAKOから得た。以下の工程を室温(RT)で行った: PBSで2分間の洗浄を3回、PBS中で緩衝された2%ホルムアルデヒド溶液中で5分間の固定、およびPBSで2分間を3回、その後、希釈緩衝液中のマウス抗PE(最終濃度0.001μg/ml;Miltenyi, Germany)を30分間、その後、PBSで5分間を3回。希釈緩衝液中のビオチン化F(ab)2断片(最終濃度3.25μg/ml、Dianova, Hamburg, Germany)を30分間添加した。Alexa Fluor 594結合ストレプトアビジン(最終濃度1.25μg/ml、Molecular Probes, Mobitec, Gottingen, Germany)およびAlexa Fluor 488ロバ抗ヤギ(最終濃度5 μg/ml)を、希釈緩衝液中で30分間添加し、その後、PBSで5分間3回の洗浄工程および蒸留水で3回の洗浄工程を行った。試料を風乾し、かつVectaShield封入剤(Vector Laboratories, Burlinghame, CA, USA)中で封入した。Zeiss Axioskop 2(Zeiss, Oberkochen, Germany)を用いてスライドを分析し、かつColorview-XS DIGITAL カメラ(Olympus, Hamburg, Germany)で記録した。
【0120】
実施例2. 天然にプロセシングされかつ提示されたミコバクテリウム抗原を認識し、かつ肺肉芽腫病巣に存在する、HLA-DR4拘束性ESAT-6またはAG85bテトラマー選別CD4+ T細胞
Ag85b、19kDAg、およびM.ツベルクローシス特異的抗原ESAT-6から提供されるペプチドを負荷したHLA-DR4テトラマーとの反応性に関して、健康なHLA-DR4+血液ドナー由来のPBLを試験した。尖叉試験陽性個体では、CD4+ T細胞集団において、上に列挙する抗原のいずれに対しても、反応性がもっぱら陽性と判定された。わずかな(nominal)T細胞エピトープの存在下で、CD4+ PBLをインビトロ拡大すると、尖叉試験陽性および陰性個体において、CD4+テトラマー反応性T細胞の拡大を生じた。インビトロ刺激の前および後の両方で、これらのT細胞は、前駆体CD4+CD45RA+CD28+ T細胞サブセットのメンバーであった。Ag85bまたはESAT-6エピトープいずれかを用いたテトラマー選別CD4+ T細胞のエクスビボ分析によって、CD4+、HLA-DR4拘束性、およびAg85b反応性T細胞が、M.ツベルクローシスおよびM.アビウム・イントラセルラレから提供される、天然にプロセシングされかつ提示されたエピトープを認識することが明らかに示された(図11A〜D)。対照的に、DR-4拘束性およびESAT-6特異的T細胞は、M.ツベルクローシスに感染した自己マクロファージのみを認識し、M.アビウム・イントラセルラレに感染したものは認識しなかった。DR4拘束性およびミコバクテリウム種特異的CD4+ T細胞が、尖叉陽性個体の肺由来の肉芽腫病巣にもまた存在するかどうかを調べるため、テトラマー・インサイチュー染色、およびフローサイトメトリーによる肉芽腫関連リンパ球(GAL)のエクスビボ分析を用いて、CD4+およびミコバクテリウム種抗原特異的T細胞を検出した。肺組織におけるテトラマー反応性およびCD4+ T細胞の共染色は、フローサイトメトリーによって、同じ検体由来のGALの染色によって統合された、HLA-DR4拘束性および19kDA抗原特異的またはESAT-6特異的T細胞の存在を示した: CD4+ GALの0.1%がESAT-6エピトープに関して陽性に染色され;19kDa抗原では0.3%;およびAg85b抗原では0.2%であった。HLA-A2に提示されるESAT-6エピトープに関して、類似のエクスビボ状況が当てはまることが見出された: ESAT-6または19kDaテトラマー複合体およびCD8での共染色は、肉芽腫病巣内に、抗原特異的およびHLA-A2拘束性T細胞を検出した。無関係な対照(黒色腫gp100抗原)テトラマー試薬では、テトラマー染色はまったく検出不能であった。
【0121】
エクスビボ単離されたGALのより詳細な分析によって、19kDa抗原、抗原85bまたはESAT-6に対して向けられる、HLA-A2拘束性またはDR4拘束性T細胞の大部分が、主にCD45RA+、CD28+ T細胞集団内に見られることが明らかになった。
【0122】
実施例3. CD45RA+CD28+およびCD45RA-CD28- T細胞集団に存し、かつ抗原特異性に関連する異なる動態を示す、HLA-DR4拘束性およびミコバクテリウム特異的T細胞
長期分析のため、診断時、ならびに診断/療法開始の2週間後および16週間後、5人の肺結核患者からPBLを採取し、かつHLA-DR4拘束性CD4+ T細胞における19kDA抗原、Ag85b、およびESAT-6に対する反応性に関して試験した(図11A)。対応するCD8+およびHLA-A2拘束性T細胞応答を3人の患者で評価した。5人の患者のうち3人は、経時的に、ESAT-6反応性に関してDR4拘束性T細胞の増加を示した(患者MZTB1、-3および-4)。患者MZTBC-3および-4はまた、ESAT-6に対するHLA-A2拘束性エピトープの対応する増加も示し、患者MZTBC-1におけるCD8+ T細胞応答は試験しなかった。5人の患者のうち4人(患者MZTBC-4を除く)は、経時的にAg85bエピトープに関するDR4拘束性T細胞の減少を示した。MHCクラスII拘束性およびAg85反応性T細胞のパターンは、HLA-A2拘束性CD8+免疫応答に類似であることが見出された:DR4拘束性およびA2拘束性両方のAg85b特異的T細胞応答において、患者MZTBC-3は減少を示し、かつ患者MZTBC-4は増加を示した。
【0123】
19kDaリポタンパク質に対するDR4拘束性CD4+ T細胞応答は、より複雑なパターンを示した。患者MZTBC1における治療開始2週間後のAg特異的T細胞の増加を除いて、5人の患者のうち4人が、経時的に、DR4/19kDa Ag反応性T細胞の減少を示し、患者MZTBC4は、療法開始後16週間の期間に渡って、これらのT細胞の増加を示した。HLA-A2に提示される19kDa Agに対して向けられるCD8+ T細胞応答は、患者MZTBC-3および-5において、類似のパターン、すなわち減少した数のAg反応性T細胞を示したが、患者MZTBC-4では異なる動態が明らかになった:19kDa抗原反応性DR4拘束性T細胞は経時的に増加したが、19kDa抗原応答をHLA-A2拘束性CD8+ T細胞集団で測定した場合、減少した。
【0124】
より詳細な分析では、CD45RAおよびCD28での差次染色に基づいて、異なるT細胞サブセットにおいて、ミコバクテリウム抗原反応性T細胞の存在に関して、図11に取りまとめたすべての血液試料を試験した。結果の典型的な例を図13A〜F.7に提供する:ESAT-6、AG85b、および19kDa抗原反応性は、CD8+ T細胞プールの4つの異なるT細胞サブセットすべてで見られ、一方、MHCクラスII(DR4)拘束性T細胞抗原反応性CD4+ T細胞は、主に、前駆体(CD45RA+、CD28+)または活性化(CD45RA-、CD28+)T細胞サブセットのいずれかで見られた。CCR5+ T細胞は、気管支肺胞系へのホーミングに関連すると報告されているため、CCR5陰性およびCCR5陽性T細胞サブセットにおける、ミコバクテリウム反応性およびHLA-A2拘束性またはHLA-DR4拘束性T細胞の存在もまたアッセイした。末梢血中にCCR5+ T細胞が少数であるにもかかわらず、療法開始後の時点とは無関係に、ESAT-6、19kDa Ag、またはAg85bに対して向けられるCD4+ T細胞が、CCR5-染色細胞に比較した際、CCR5+ T細胞集団に、少なくとも同数存在し、または上昇さえしていた。
【0125】
実施例4. T細胞分化表現型に影響を与えないミコバクテリウム特異的およびHLA-DR4拘束性T細胞のインビトロ拡大
健康な尖叉試験陽性個体における状況と同様、結核患者において、DR4の脈絡において、AG85b、19kDa、またはESAT-6抗原のいずれかを認識する少数または検出不能なCD4+ T細胞(例えば患者MZTBC5由来のPBL)が、インビトロで、適切なペプチドで7日間刺激する間に拡大可能であった:主なCD4+ T細胞応答は、やはり前駆体(CD45RA+CD28+)または活性化(CD45RA-CD28+)T細胞サブセット内で検出される(図13AおよびB)。しかし、注目すべきことに、療法開始後の血液採取時点にかかわりなく、わずかなペプチド・エピトープの存在下で抗原反応性CD4+ T細胞のインビトロ拡大が、劇的に、CD45RA-CD28-およびCD45RA+CD28- T細胞サブセットを減少させ、かつCD45RA+CD28+およびCD45RA-CD28+ T細胞集団を増加させた。HLA-A2提示ミコバクテリウム・ペプチドでのインビトロ拡大に供されたCD8+ T細胞に関しても、同じパターンが当てはまることが見出された(データ示さず)。
【0126】
注目すべきことに、個々の患者(例えばMZTBC4およびMZTBC5、図5)は、同じ抗原に対して反応性であるCD4+ T細胞が少数であったにもかかわらず、強いCD8+ミコバクテリウム反応性Ag85b特異的T細胞応答を示した。最近の報告によって、機能するCD8+ T細胞記憶が、CD4 T細胞の補助に依存することが示唆されているが、肺MTB感染のネズミ・モデルからのデータは、拡大およびCD8+ T細胞からのIFN産生が、細胞溶解活性の獲得以外、CD4+ T細胞の補助に依存しないことを示唆した。一般的に、CD4+ T細胞応答のPBLにおける動態パターンは、抗原の性質に依存することが判明し、かつまたELISPOTアッセイにおいて、異なるESAT-6ペプチドの混合物を用いた他の研究で観察されるように、患者間で異なる可能性もある。マクロファージにおいて、MTB関連19kDAリポタンパク質は、有効なMHCクラスIおよびクラスII抗原プロセシングおよび提示に干渉可能であり、かつしたがってT細胞記憶に影響を及ぼし得るため、こうした相違は、末梢循環におけるT細胞のホーミング・シナリオが異なるためである可能性もあり、また再刺激およびT細胞維持に必要な抗原の入手可能性が異なるためである可能性もある。
【0127】
現在まで、抗TBC特異的T細胞反応性を判断するアッセイは、T細胞応答を測定するための供給源として、PBLを用いるという事実によって制限されてきた。末梢T細胞レパートリーは、全リンパ球プールのわずか2%にしか相当せず、かつアッセイ系は、このプールが組織に存在するT細胞の他の98%と平衡状態であるという仮定に基づいている。しかし、ケモカイン受容体5(CCR5)陽性T細胞は、血液、脾臓およびリンパ節でまれであるが、腸の粘膜表面、ならびに呼吸管および生殖器官を含む組織に存在する、記憶T細胞サブセットに相当する。本明細書の実施例で調べたすべての患者において、末梢リンパ球のわずかな部分(最大3%)のみが、CCR5に関して陽性に染色された。末梢循環中のCCR5+ T細胞が少数であるにもかかわらず、HLA-DR4拘束性CD4+ T細胞は、CCR5陰性T細胞集団にのみ存するのではなく、かつHLA-A2拘束性およびテトラマー反応性T細胞は、CCR5+ T細胞において、等しいかまたはより多数であるかいずれかのテトラマー反応性T細胞を示すことが見出されている。この観察は、MTBから提供される抗原に限定されず、HLA-A2拘束性CMVpp65特異的T細胞でもまた同定可能であった。CCR5+細胞は、T細胞活性化のマーカーであるCD25に関して陰性に染色された(データ示さず)。したがって、CCR5がT細胞ホーミングに関連するならば、PBL中のMTB MHCクラスI拘束性およびクラスII拘束性T細胞すべての少なくとも50%は、呼吸管へのホーミングが可能なリンパ球に存する。
【0128】
本発明の基礎を形成する重要な発見の1つは、感染を封じ込め可能である患者由来の肺肉芽腫関連リンパ球においても、インビボ拡大後、診断および治療開始後の異なる時間間隔の肺結核患者においても、またはTST+の健康な個体由来のエクスビボのPBLにおいても、HLA-DR4拘束性応答の大部分が、「前駆体」CD45RA+CD28+および活性化CD45RA-CD28+ CD4+ T細胞集団で見られることである:これらのデータは、適応CD4+ T細胞トランスファー実験が、記憶エフェクターT細胞が実際に「未刺激」表現型を復帰可能であり、この能力が長期免疫監視および保護に重要な「前駆体」T細胞プールに貢献しうることを示唆する、MTB感染のネズミ・モデルと一致する。この現象はまた、肉芽腫病変におけるバチルスのインサイチュー封じ込めにも重要である(図3を参照されたい)。この知見は、生涯に渡る感染、例えばEBV感染患者におけるCD4+ T細胞表現型由来の、より最近のデータにおいて立証されている。EBV潜伏性および溶菌サイクル・タンパク質に対して向けられる、個々のCD4+ T細胞集団は、CD27およびCD28およびCD45RAを発現する。したがって、MHCクラスIIテトラマー複合体をT細胞マーカー分析と組み合わせて用いたエクスビボ分析のみが、潜伏性MTB感染における防御性およびペプチド抗原特異的免疫応答の決定を提供する。
【0129】
実施例5. 潜伏性ヒト肺M.ツベルクローシス感染における非常に集中的なT細胞応答
TBにおける疾患封じ込めは、異なるT細胞サブセットの複雑なネットワーク、および有効な免疫応答を開始し、かつ維持する能力を伴う。関与する免疫事象すべての知識はいまだに完全ではない。MHCクラスII拘束性CD4+およびMHCクラスI拘束性CD8+ T細胞の必須の役割がよく確立されている。その主な武器の1つは、マクロファージを活性化し、かつ殺細菌分子の産生を誘導可能なサイトカイン、例えばIFN-γおよびTNF-αの産生である。非古典的な拘束性CD8+リンパ球、CD4- CD8-およびCD1拘束性T細胞、γδ+ T細胞およびNK細胞もまた、MTB関連抗原を認識し、かつ疾患制御に関与することが報告されている。
【0130】
この知見は、主に、マウスにおける研究に由来する。活性または潜伏性ヒトTBに関する大部分の研究は、現在まで、末梢血リンパ球(PBL)の分析に限定され、かつMTB感染の主な部位である、肺の免疫学的状況には取り組んでいない。本発明者らの目的は、どの因子が、ヒト肺においてMTBを封じ込めかつ潜伏性を維持する原因となるのかを決定することであった。潜伏性MTB感染を持つ5人の患者において、本発明者らは、肺生検由来のGALを培養し、かつその分子組成、表現型、頻度、抗原特異性、および機能に関して、これらの細胞を分析した。さらに、我々は、テトラマー技術を利用して、CLSMによる肺組織のインビボ免疫学的状況の直接の外観を得た。
【0131】
患者
肺の悪性病巣を排除するため、試験的手術を受けた5人の患者を、Heidelberg大学病院から採用した。HE染色によって、手術検体(およそ10mmx8mm)を分析し、かつ癌の徴候がないが、強いT細胞浸潤と関連する肉芽腫形成があることが明らかになった。石灰化または乾酪性改変の大きな領域は同定されなかった。NCCLS基準にしたがって、痰(手術後に得られたもの)ならびに手術検体由来のアリコットを、液体(BACTEC MGlT 960、Becton Dickinson, Heidelberg, Germany)培地中で、および固形(Lowenstein-Jenssen、Becton Dickinson, Heidelberg, Germany)培地を用いて、6週間培養した。生存ミコバクテリウムは同定不能であった。手術検体由来のアリコットは、MTBに関するPCR(Cobas Amplicor(商標)ミコバクテリウム・ツベルクローシス試験、Roche, Diisseldorf, Germany)によって、陽性と判定された。したがって、i) X線による典型的な肺病巣、ii) PCRに基づくMTB検出、およびiii) HE染色によって定義される典型的な肉芽腫形成に基づいて、潜伏性MTB感染に関して患者を診断した。このパターン(培養可能な細菌が存在しない)は、MTBの臨床的徴候を伴わない個体から得られたヒト肺組織(剖検時)のインサイチューPCR分析と一致して最近概説されたような「潜伏性MTB感染」と一致する。各手術検体のアリコットを、結腸直腸癌患者由来の検体に関して先に記載されたように、小片(1 mm x 1 mm)に切り刻んだ。簡潔には、組織切片を、RPMI、10% FCSおよび抗生物質に加えて、Dr. Adrian Minty, Sanofi, France から厚意で提供された50 ng組換えヒトIL-7/mlを補った48ウェルプレートに入れた。
【0132】
肺肉芽腫性肺組織由来のT細胞を48時間以内増殖させ、かつ肉芽腫関連リンパ球(GAL)と名づけ、さらなる分析に供した。何人かの患者では、限定された数のTリンパ球しか得られず、これは、各症例の総合的なCD4+またはCD8+ T細胞分析を可能にしなかった。注目すべきことに、T細胞をペプチドまたは自己マクロファージで再刺激しなかった。すべての患者は、NCCLSガイドラインにしたがって、PPD反応性に関して陽性と判定された。地元の倫理委員会によって認可された研究に登録した個人のインフォームドコンセントを得た後、血液を抜き取った(1999年11月15日からの参照番号837.327.99(2272)のファイル上)。
【0133】
フローサイトメトリーおよびテトラマー分析
患者からヘパリン処理した血液を抜き取り、かつFicoll勾配上の分離によってPBMCを得て、かつ90%ウシ胎児血清および10% DMSO中、1〜5x107細胞/バイアルで液体窒素中に保存した。Immunomics Corporation(Beckman Coulter, San Diego, USA)から、HLA-A2結合性M.ツベルクローシス19kDaペプチドVLTDGNPPEV(SEQ ID NO:1)、M.ツベルクローシス・ペプチドMTB Ag85b、KLVANNTRL(SEQ ID NO:2)、ESAT-6ペプチドLLDEGKQSL(SEQ ID NO:3)を負荷したテトラマー試薬、またはESAT-6ペプチドFAGIEAAASAIQGNV(SEQ ID NO:8)を負荷したHLA-DR4テトラマー複合体が調製され、かつ得られた。CMVpp65エピトープNLVPMVATV(SEQ ID NO:4)または黒色腫関連gplOOペプチドYLEPGPVTV(SEQ ID NO:5)を負荷したHLA-A2テトラマー複合体(Beckman/Coulter)が対照として働いた。凍結PBLを融解し、洗浄し、かつ先に詳細に記載されるように、テトラマー分析またはTCR VB頻度を行った。
【0134】
テトラマー・インサイチュー染色
TCR-CDR3分析に供したものと同一の肉芽腫病変を用いて、テトラマー・インサイチュー染色を行った。本発明者らには、T細胞インサイチュー検出を行うのに利用可能な患者#3および#4由来の十分な量の組織しかなかった。肺組織由来の10μm厚の10〜20の凍結切片を得て、かつ上に列挙するような、M.ツベルクローシス19kDaまたはAg85bエピトープを負荷したPE標識HLA-A2テトラマーのいずれかと、4℃で一晩インキュベーションした(PBS中の2%正常ヤギ血清中で希釈した、最終濃度1μg/ml)。以下の工程をすべて、室温で行い、かつ抗体希釈緩衝液(DAKO, Hamburg, Germany)中で、一次および二次抗血清を希釈した。PBS中で切片を3回洗浄し、PBS中で緩衝した2%ホルムアルデヒド溶液中で5分間固定し、その後、PBSを用いた3回の洗浄工程を行った。マウス抗PE(Sigma, Deisenhofen, Germany)を1:100で2時間インキュベーションし、その後、PBSで3回洗浄した。Cy3標識ロバ抗マウス(Dianova, Hamburg, Germany)を1:800希釈で1時間用いた。1:50希釈のマウス抗ヒトCD8α(DAKO、クローンC8/144B)を用いた二重染色を1時間行った。このインキュベーション前に、交差認識を回避するため、製造者の指示にしたがって、ARK(商標)キット(DAKO)でのビオチン化工程を適用した。FITC標識ストレプトアビジン(DAKO)を1:50で適用して、CD8+ T細胞を検出した。テトラマー陽性細胞は赤色に見え、CD8+ T細胞は緑色に見える。Zeiss Axioskop顕微鏡(Zeiss, Oberkochen, Germany)に取り付けたColorView-XS(Olympus, Hamburg, Germany)を用いて、検体の写真を撮影した。
【0135】
免疫磁気細胞選別および機能アッセイ
抗CD4またはCD8コーティング免疫磁気ビーズ(Miltenyi, Bergisch Gladbach, Germany)を用いて、3〜5x106 PMBCまたはGALからCD4+またはCD8+ T細胞を分離した。PEで直接標識したVB特異的mAb(Beckman Coulter, Krefeld, Germany)を用い、その後、抗PE特異的免疫磁気ビーズ選別を用いて、TCR VB選別T細胞を得た。10% FCSおよび50 ng/mlヒト組換えIL-7を補った、Gibco(Eggenstein, Germany)から得られる50% AIM-V培地、50% DMEM(高グルコース)を含有する96ウェルプレート中、T細胞を48時間培養した。HLA-A2+患者に関して、MHCクラスI拘束性サイトカイン産生を決定するため、適切なペプチド・エピトープでパルス処理したT2細胞と、CD4+、CD8+またはTCR-VB選別細胞を混合した。希釈剤のみ(10% DMSO、90% RPMI)または示すような1μgペプチドのいずれかを負荷し、SIGMA(Deisenhofen, Germany)から得られるヒトβ-2ミクログロブリン(20μg/106細胞/ml)を補ったT2細胞が、ターゲット細胞集団として働いた。ウェル当たり50μlのこのターゲット細胞懸濁物を用い、エフェクター・ターゲット比は1:1であった。自己の放射線照射PBMCを用いて、MHCクラスII応答を検出した。個々の患者由来のPBMCをESAT-6由来ペプチド(アミノ酸1〜20位 MTEQQWNFAGIEAAASAIQG(SEQ ID NO:26)およびアミノ酸72〜95位 LARTISEAGQAMASTEGNVT-GMFA)(SEQ ID NO:27)で、示すように、37℃で2時間パルス処理し、その後、CD4+応答性T細胞と48時間インキュベーションした。これらのESAT-6由来ペプチドは、結核患者由来の大部分のT細胞によって認識されることが記載されており、かつ大部分のHLA-DRアレルに無差別に結合するようである。M.ツベルクローシス感染自己マクロファージを試験するため、プラスチックに2時間PBMCを接着させ、その後、FCSを補った培地で2回注意深く洗浄する工程を行うことによって、マクロファージを選択した。先に記載するように、アッセイ24時間前に、肺結核を患う患者の痰由来のM.ツベルクローシスMZ#610と名づけた新鮮単離M.ツベルクローシス株に、マクロファージを感染させた。エフェクターT細胞をターゲットと48時間インキュベーションし(E:T比=1:1)、上清を採取し、かつDiaclone, Besancon, France から得たELISA系を用いて、IFNγ、IL-4またはGM-CSFに関して試験した。異なるエフェクター集団(例えばCD4+またはCD8+ GAL対TCR-VB選別GAL)を用いた結果を比較するため、本発明者らは、すべての実験において、同じバッチのAPCを使用し、MHCクラスI拘束性T細胞応答は、10μg/ウェルの抗MHCクラスI特異的mAb W6/32で遮断され、抗DR特異的mAb L243を用いて、MHCクラスII拘束性(HLA-DR)T細胞応答を遮断した。クローンH143は、DPに対して向けられ、かつクローンTU169はDQクラスIIアレルに対して向けられた。どちらもBD/Pharmingen, Hamburg, Germanyから得られた。
【0136】
先に記載するように、MTB Ag85複合体由来のペプチド:Ag85a、アミノ酸48〜56位:GLPVEYLQV(SEQ ID NO:21)、Ag85a、アミノ酸242〜250位:KLIANNTRV(SEQ ID NO:22)、Ag85b アミノ酸143〜152位:FIYAGSLSAL(SEQ ID NO:23)、Ag85b アミノ酸199〜207位、KLVANNTRL(SEQ ID NO:2)、19kDa抗原ペプチドVLTDGNPPEV(SEQ ID NO:1)(アミノ酸88〜97位)、ならびに候補ターゲットESAT-6由来ペプチドAIQGNVTSI(SEQ ID NO:24)(アミノ酸17〜25位)、LLDEGKQSL(SEQ ID NO:3)(アミノ酸28〜36位)およびATAELNNA(SEQ ID NO:25)(アミノ酸62〜70位)を用いて、MHCクラスI(HLA-A2)拘束性T細胞応答を試験した。
【0137】
TCR-CDR3スペクトラタイピング
CD4もしくはCD8いずれかの陽性選別T細胞(免疫磁気ビーズを用いる)、またはHLA-A2/Ag85bもしくはHLA-DR4/ESAT-6複合体いずれかを用いたテトラマー選別T細胞の分子TCR組成を、記載するように完成させた。これらのT細胞は、インビトロで再刺激されず、IL-7の存在下で48時間の培養期間の後に得られた。注目すべきことに、IL-7は、TCRレパートリーを歪めないと報告されている。簡潔には、2x105細胞からRNAを抽出し、かつcDNAに逆転写し、個々のTCR VB特異的プライマー対によって増幅し、かつフルオロフォア標識TCR-CB特異的プライマーを用いたランオフ反応を行った(PCR条件:94℃、1分間/60℃、1分間/72℃、1分間、40サイクル)。適切なサイズ標準および310配列決定装置およびGenescanソフトウェア(ABI, Weiterstadt, Germany)を用いたDNA断片分析によって、標識単位複製配列を分析した。CD4+またはCD8+選別T細胞集団いずれかの連続希釈(10x105m 5x105、2x105、1x105、0.5x105)は、このアッセイ系において、少なくとも1x105 T細胞を用いると、アッセイ内変動およびアッセイ間変動に関連して、非常に再現性があるTCRパターンが生じ、かつ「偽陽性」モノクローン性TCR-CDR3パターンにつながらないことを示した。モノクローン性/オリゴクローン性TCR転写物を同定するため、単位複製配列をTA配列決定ベクター(Invitrogen, Groningen, The Netherlands)にサブクローニングした。TCR VA/VBは、PCR単位複製配列またはすべてのサブクローニングPCR転写物の直接配列決定のいずれかが、同一のTCR配列を生じる場合のみ、モノクローン性として報告された。TCR VA/VBファミリーがオリゴクローン性またはポリクローン性である場合、CDR3長のガウス分布が生じる。各ピークは、所与のCDR3長を持つインフレーム転写物に相当する。曲線下の領域は、個々のTCR VA/VBファミリーにおける別個のCDR3長の頻度に相当する。単一試料分析からの情報を凝縮するため、個々のTCR VAまたはVBファミリーを、アミノ酸数として表したCDR3長と共にVB1〜VB24の単一の合計数にグループ分けした。このTCR-CDR3ランドスケープは、T細胞亜集団における各TCRファミリーのTCR-CDR3長によって定義されるような「構造的解剖学」を提供する。各CDR3ピークの曲線下の領域は、全CDR3の領域(100%)の割合として表される。見やすくするため、スケール間隔上に示すように、相違を異なる色で表す。肉芽腫病巣から得られたCD8+またはCD4+ T細胞(GAL)から得られたCDR3パターンを、同時に、すなわち手術中に得られた、CD4+またはCD8+選別PBLと比較してもよい。各試料におけるCDR3分布および対照分布間の領域によって、各CDR3長内のこのTCR「摂動」を計算する。陽性または陰性摂動が各TCR VA/VB CDR3ピークで起こり得るし、かつこれを対照試料に比較した際の相違として表す。10%の相違を生じる各摂動を異なる色で表す。この分析において、「フラットな」TCRランドスケープは、摂動が存在しない、すなわちTCR-VA/VBランドスケープが、対照試料と比較した際に同一の図を生じることを暗示することに注目されたい。2人の患者から得られた対応する新鮮に採取された肺組織を用いて、CD8+、CD4+(未選別)GALにおいてTCR CDR3長測定の比較分析を行った。
【0138】
CDR3分析およびTCR-VB染色:定量的TCR分析
TCRスペクトラタイピングは、T細胞集団の定性的評価のみを生じ、定量的評価は生じない。TCR VB鎖に対して向けられる24の個々のmAbのパネル(Beckman Coulter, Krefeld, Germany)を、FITC、PEで標識されたか、またはFITC/PEで二重標識されたかいずれかの3つの個々の抗VB mAbにグループ分けし、これらは、ECD-CD4またはPC5-CD8+ T細胞いずれかに関してゲーティング可能である。したがって、CD4+またはCD8+ T細胞集団いずれかの24の個々のTCR VBファミリーの頻度を、8つの異なる試験管で分析可能であり、これによって、CD3+ CD8+ T細胞における割合が得られる(VBファミリーのX%)。ここで、この因子を用いて、CDR3-VBランドスケープ分析を補正してもよい。TCR VB鎖に対して向けられるmAbパネルのみが入手可能であり、TCR-VA鎖に対して向けられるパネルは入手可能でない。
【0139】
結果
未知の病因の肺病変を提示する5人の患者の肺生検から、肉芽腫関連リンパ球を培養した。病理学的診断(典型的肉芽腫形成)およびMTBのPCR補助増幅によって、5/5の患者で、潜伏性結核感染が明らかになった。生存ミコバクテリウムは、痰、気管支洗浄液、または生検自体からは単離不能であった。したがって、本発明者らは、PCR陽性、培養陰性のヒト肺肉芽腫組織を、MTB関連抗原に対するT細胞反応性に関して分析する可能性を有した。
【0140】
この研究の目的は、a)T細胞受容体(TCR)CDR3スペクトラタイピングによって決定されるようなT細胞応答の質、b)フローサイトメトリー分析において決定されるような、各TCR VBファミリーにおけるT細胞の量、およびc)サイトカイン産生によって定義されるようなGALの機能を分析することによって、ヒト肺におけるMTB潜伏を維持するのに関与する局面を確かめることであった。
【0141】
実施例6. オリゴクローン性であり、非常に拡大されたVβファミリーで構成され、かつPBLに比較した際、特質な集団を構成する、CD4+ GALおよびCD8+ GAL
磁気ビーズ選別後、フローサイトメトリーによって測定されるTCRレパートリーの定量的評価によって補完される、TCR CDR3スペクトラタイピングによって定義される、TCRレパートリーの「客観的」構造組成に関して、CD4+およびCD8+ GAL集団を、別個に分析した。図1および図2においては、x軸上に24のVBファミリーを、z軸上にアミノ酸数としてのファミリー内のCDR3長を、かつy軸上に、フローサイトメトリー列挙およびCDR3分析によって決定されるような曲線下の領域の組み合わせとして、リンパ球集団内のCDR3長の割合を示す、「TCRランドスケープ」をプロットした。
【0142】
VBファミリー内の単一のCDR3長の増大は、特異的免疫応答に関与し得るTリンパ球の拡大のためであると見なされる。各患者は、主にオリゴクローン性であるCD4+(図1)およびCD8+ GAL集団(図2)両方に関して、個々の、特定のTCR VBプロファイルを示した。何人かの患者において、別個のオリゴクローン性またはモノクローン性VBファミリーに属するT細胞が、リンパ球集団の主要な画分を構成した。例えば、患者#1では、VB14陽性CD4+リンパ球が、かつ患者#5では、VB7陽性T細胞が、すべてのCD4+ GALのうち、それぞれ27%および19%を占めた。TCR CDR3スペクトラタイピングによって、これらのVBファミリーが、単一T細胞クローンで構成されることが示唆された。本発明者らは、個々のTCR(表2)を配列決定し、かつ潜伏性TBにおけるこれらの機能の分析を進めた。
【0143】
主なT細胞拡大はまた、CD8+ GALにおいても見られ得る:患者#1におけるモノクローン性VB3陽性T細胞(TCR配列に関しては表2を参照されたい)および患者#3におけるオリゴクローン性VB17陽性リンパ球は、それぞれ、CD8+ GALの最大17%および9%を構成した。個々の患者またはHLA型を比較した際、TCR VBファミリーの共通の拡大は同定不能であり、これは、ヒトMTB封じ込めにおいて、優先的なVB使用があることを示す可能性もある。
【0144】
市販されている24のVB特異的抗体のパネルは、80%より多くをカバーするが、完全なVBレパートリーではないため、本発明者らは、MTBを制御する際に関与し得る、すべてのT細胞を(定量的方式で)同定することは、いままでのところ、不可能であった。例えば、患者#1において、CD4+ GALの20%およびCD8+ GALの55%は、フローサイトメトリーにおいて、VB発現に関して定量的に評価不能であった。VB頻度が測定不能なこれらのT細胞は、分子評価によれば、数個のさらなるVBファミリーしか含まず、したがってまたクローン性に拡大されていた可能性もある(データ示さず)。
【0145】
肺のTCRレパートリーが末梢血の単なる鏡像なのか、または肺が別個のレパートリーを獲得するのかを決定するため、本発明者らは、患者の両方の区画(GAL対PBL)を分析し(材料が制限されていたため、患者#1のPBLを除く)、かつ患者#2に関して(CD4+およびCD8+ T細胞両方に関して)、および患者#5に関して(総/未選別PBLおよびGALに関して)得られたデータを、図3および4に原理の証明として提示する。PBLに関して得られた「TCRランドスケープ」からGAL「TCRランドスケープ」を引くことによって、本発明者らは、図3A〜B(分子TCR-CDR3分析)および図4A〜B(TCR VB頻度の分析によって補正した分子TCR-CDR3分析)に示すように、相違パーセントを視覚化した。乱れたランドスケープは、各区画が似ていないTCRレパートリーで実際に構成され、かつ肉芽腫組織内で、個々のTCRファミリーが優先的に拡大されていることを示す。レパートリーが同一であれば、フラットなランドスケープが生じたはずである。未選別(48時間、IL-7拡大)GALは、対応する新鮮に単離した肉芽腫組織切片に比較して、類似のTCR組成を示した。
【0146】
実施例7. 自己マクロファージに提示されるMTBエピトープに反応してTh1サイトカイン分泌パターンを示すCD4+ GAL
VBファミリー拡大によって特徴付けられるGALの機能に取り組む前に、本発明者らは、より一般的なアプローチで、生存MTBバチルスにインビトロで一晩感染させておいた自己マクロファージを抗原提示細胞(APC)として用いる、サイトカイン放出アッセイにおいて、不均質なCD4+およびCD8+ GAL集団の機能を決定した。3/5の患者由来のCD4+ GALは十分に拡大可能であった。これらは、110から>1000pg/mlレベルでIFN-γを産生し(図1)、一方、GM-CSFは患者#3由来のCD4+ GALのみで測定可能であった(データ示さず)。CD8+ TCR+ GALに関しては、分析した患者の0/3がIFN-γを産生し、患者#3由来のCD8+ GALのみがGM-CSF産生に関して免疫応答を示し、一方、IL-4はどの患者でも測定不能であった(データ示さず)。注目すべきことに、分析したリンパ球を、MTB抗原を用いてあらかじめインビトロ刺激はしていなかった。
【0147】
患者#3において、自己APC上の、天然にプロセシングされかつ提示されたMTBエピトープに対する反応としては、IFN-γまたはIL-4は測定不能であった。しかし、この患者のGALは、異なる実験設定において、MTB由来ペプチドに反応して実質量のIFN-γを産生可能であり(図8および9)、これらの細胞が、機能的にサイトカイン分泌可能であることが示唆された。
【0148】
MHC拘束を確認するため、本発明者らは、MHCクラスIまたはクラスII抗原に対して向けられる遮断モノクローナル抗体(mAb)を用いて、さらなる実験を行った。サイトカイン産生は、CD4+ GAL集団において、DR、DP、およびDQに対して向けられるmAbによって部分的または完全のいずれかで阻害され(図1)、MHCクラスII分子上にMTBペプチドが提示されることが示された。
【0149】
実施例8. 主要なIFN-γ産生体である、拡大VBファミリーによって特徴付けられるCD4+ GALおよびCD8+ GAL
CD4+およびCD8+ GAL集団内のVBファミリーの拡大が、実際に疾患との戦いにおける大きな機能的役割の指標であるのかどうかを調べるため、本発明者らは、拡大されたVBファミリーにしたがってGALを選別し、かつサイトカイン放出アッセイにおいて分析した。上に詳述するように、TCR-CDR3スペクトラタイピングをフローサイトメトリーと組み合わせると、CD4+ GAL集団における主要な提示VBファミリーとして、患者#1ではVB9および14、患者#2ではVB8およびVB9、かつ患者#5ではVB7が認識可能になり、ならびにCD8+ GALにおいては、患者#1でVB3が認識可能になった。本発明者らは、適切なVBファミリーを発現するT細胞を選別し、かつ上述のように、MTB感染自己マクロファージに48時間曝露した。これらのT細胞によるIFN-γの産生は、匹敵する細胞数のGAL全集団によって産生されるより、はるかにより高い濃度を生じた(CD4+ GALに関しては、1300〜9955pg/mlの範囲、CD8+ GALに関しては、1185pg/mlの範囲;図5)。予期されるように、MHCクラスIに対して向けられるmAbは、VB3+CD8+ GALのサイトカイン産生を阻害した。CD4+、VB選別GALではDR、DP、またはDQ mAbのいずれかによって、IFN-γ産生が遮断され、選別されたT細胞が単一のMHCクラスIIアレルに拘束されていることが示唆された。
【0150】
実施例9. ESAT-61-20を認識する、特定の拡大TCR VBファミリーに属するCD4+ GAL
選別したCD4+ GALの抗原特異性を決定するため、本発明者らは、個々のTCR VB選別したT細胞がMTB由来DR結合性ペプチドESAT-61-20およびESAT-672-95を認識する能力を分析した。VB選別したGALは、患者#1、#2、および#5において、ESAT-61-20を認識し、かつIFN-γを産生し、一方、ESAT-672-95は、患者#5のVB7+ GALにおいてのみ、バックグラウンドレベルを超えたIFN-γ産生上昇を誘導した(図6)。
【0151】
ペプチド濃度の増加は、図4A〜Eに示すように、より強いサイトカイン応答を誘発したが、試験した最高ペプチド濃度では、結果は多様であり、患者#2におけるさらなる増加から、患者#5におけるIFN-γ抑制までの範囲があった。同一の実験設定で、対応するTCR VBが枯渇したGAL集団を分析した場合に、発明者らは、バックグラウンドレベルを超えて測定可能なIFN-γ産生がないように、これらのGALがESAT-61-20ペプチドを認識しないことを観察した(患者#1ではVB9陰性GAL:4pg/ml;患者#2ではVB9陰性GAL:検出レベル未満;患者#5ではVB7陰性GAL:45pg/ml;図6中、データ示さず)。したがって、ESAT-61-20の認識は、これらの3人の患者において、単一VBファミリーに拘束され、または患者#5では、単一のVB7+ T細胞クローンにさえ拘束された。
【0152】
実施例10. CD8+ GALにおいてTelサイトカイン応答を誘発するMTB由来HLA A2結合性ペプチド
HLA A2+患者のCD8+ GAL集団において、MTB関連抗原ESAT-6、19kDa AgまたはAg85a/bによって提供されるペプチドの認識を調べた(表1、図8A〜B)。MTB由来HLA A2結合性ペプチド、Ag85a48-56、Ag85a242-250、Ag85b143-152、Ag85b199-207、および19kDa Ag88-97を、それぞれ、T2細胞に負荷し、CD8+ GALを添加し、かつインキュベーション48時間後、インビトロ・サイトカイン産生を測定した。黒色腫由来HLA-A2結合性gp100由来ペプチドを陰性対照として用いた。
【0153】
19kDa Ag88-97は中程度のサイトカイン産生を誘発したが、IFN-γおよびGM-CSF産生によって決定されるように、ペプチドAg85a242-250およびAg85b199-207が認識された。他のペプチドは、いずれの患者でも、対照ペプチドgp100よりはるかに高いサイトカイン産生を誘発しなかった。IL-4は、いずれの場合でも検出不能であった(データ示さず)。さらに、ESAT-6から提供される3つのA2結合性ターゲット・ペプチドに対する反応性に関して、患者#3由来のGALを分析した。これらのGALは、MHCクラスI拘束性方式で、ESAT-628-36を認識し、かつ実質量のIFN-γおよびGM-CSFを産生した(図9A〜B)。ESAT-617-25およびESAT-662-70は少量のサイトカイン産生を誘発した。ペプチド反応性GALの存在は、GALにおけるHLA-A2テトラマー染色によって立証された:患者#3由来のCD8+ GALは、ESAT-6ペプチドLLDEGKQSL(SEQ ID NO:3)に関して陽性に染色され(2.4%)、19kDaおよびAg85bテトラマーに関して、それぞれ、1.1%および1.6%染色された(データ示さず)。
【0154】
実施例11. テトラマー分析によってインサイチューで定義されるMTB反応性GAL
本発明者らは、Ag85b199-207および19kDa Ag88-97のHLA A2テトラマーで染色することによって、抗原特異的CD8+ GALをインサイチューで視覚化するのを可能にする、十分な連続切片を、患者#3および#4由来の肉芽腫病変から得ることが可能であった。TCR結合テトラマーは、CLSMでは赤色に見え、一方、CD8αに対して向けられるmAbは、FITC標識され、緑色に見えた(図20)。しかし、テトラマー・インサイチュー染色によって、MHCクラス1/ペプチド特異的T細胞の空間的配置がインサイチューで視覚化可能になるが、この染色は、抗原特異的T細胞集団の分子組成には対処しない。MHC/ペプチド特異的T細胞におけるTCR使用を評価するため、本発明者らは、患者#3由来のHLA-2/Ag85b結合性CD8+ GALを選別し、かつTCR-CDR3分析を行った(図21)。テトラマー選別およびCD8+ GALにおけるTCR使用を比較すると、定義されるT細胞エピトープに対して向けられる、いくつかのクローン型の存在が示される。T細胞は、顕著なリンパ球浸潤(図20a)を伴って、肉芽腫病巣(HE、平行切片)から採取されている。潜伏性ヒト肺結核の異なる患者から単離されたHLA-DR4拘束性ESAT-6特異的CD4+ T細胞集団もまた、いくつかのT細胞クローン型が構成する(図21)。テトラマー・インサイチュー染色(図20b)は、Ag85b反応性T細胞が、肉芽腫組織のいくつかの場所に集中することを示唆する。ネズミ・リンパ系組織で先に観察されたように、テトラマー染色は、T細胞の1つ(またはいくつか)の極でクラスター形成するようであるTCRを視覚化し、球状の細胞上、単数または複数の鮮赤色の点の印象を与えたが、一方、CD8は、より一様に分布しているようであり、細胞に均質な環状の外見を与えた。二重発現に際して、赤色および緑色は、細胞の橙色〜黄色の着色を生じた。陰性対照としてgp100-MHCテトラマーで染色すると、単なるバックグラウンド染色が導かれる。テトラマー陽性細胞は、肉芽腫切片内のいくつかの異なる場所に集中した。患者#3に関して、平行組織切片のHE染色を示す。
【0155】
実施例12. まとめ
潜伏性結核の免疫学的状況は、理解および研究が困難であった。ヒトにおけるPBLの分析から得られる結果は、感染部位自体での免疫応答を必ずしも反映しない可能性がある。いくつかの研究は、PBLにおいて、Th2型サイトカイン、例えばIL-10が顕著であることを報告する。他方、活性TB患者の他の区画、例えば胸水由来のT細胞、または気管支肺胞洗浄液によって単離されたT細胞は、顕著なIFN-γおよび/または増殖性応答を示し、これは、分析した同じ患者のPBLにおいては、低いかまたは存在さえしなかった。この現象は、おそらくCCR2またはCCR5などの特定のケモカイン受容体のため、特殊なMTB反応性T細胞が感染部位に隔離されてしまうためである可能性がある。したがって、肺組織自体における免疫学的事象をより詳細に見ることが、MTBに対する防御免疫のよりよい理解に必須である。
【0156】
TCR抗原認識の細かい特異性は、TCR VAおよびVB鎖の相補性決定領域3に存する。抗原に応答した抗原特異的T細胞のクローン性拡大は、CDR3スペクトラタイピングにおいて、VBファミリー内の単数またはいくつかの過剰提示されたCDR3ピークとして反映される。最終的には、T細胞のこのクローン性拡大は、ウイルスおよび細菌感染両方に関して記載されたように、VBレパートリー内の適切なVBファミリーの増大を生じることになり得る。本発明者らは、ヒト肺組織から単離されたGALが、個々のVBファミリーのオリゴクローン性またはモノクローン性拡大によって特徴付けられることを示した。GALにおけるこれらのTCR VB拡大は、対応するPBLでは観察不能であり、MTB反応性T細胞が、実際に肺に隔離されていたことを示唆した。活性ヒトTBに関する研究において、匹敵する区画化が報告されており、この場合、胸水由来のリンパ球のTCR VBレパートリーは、PBLで見られるものとは異なっていた。新鮮に得られた肉芽腫組織におけるTCRレパートリー分析が、(未選別で)48時間拡大したGALに比較して類似のパターンを示し(図3および4を参照されたい)、かつT細胞培養に用いたIL-7がTCRレパートリーを歪めないようであるという事実は、機能上のTCR組成データが、実際にインサイチューの状況を反映していることを示唆する。
【0157】
CD4+ GALは、MTB感染自己マクロファージを容易に認識し、かつMTBに対する免疫に寄与することがよく確立されている重要なサイトカインであるIFN-γを産生した。対照的に、CD8+ GALは、CD8+ TCR VB3選別T細胞が、同じMTB感染抗原提示細胞を認識するという事実にもかかわらず(図6A〜F)、自己MTB感染ターゲットに応答して、INFを産生できなかった(データ示さず)。2つの互いに排他的でない機構が、この現象を説明しうる:第一に、(クローン性、表2を参照されたい)TCR VB3選別T細胞のエフェクター:ターゲット比が、未選別CD8+ GAL集団に比較して優れていた可能性があり、ここでVB3+細胞は最大17%を構成する(図1および2)。第二に、MTBでのインビトロの自己マクロファージ感染が、MHCクラスII提示エピトープの提示をかなり促進する可能性がある(図1および2を参照されたい)。
【0158】
拡大されたMTB特異的T細胞クローンの頻度は、活性TB患者のPBLにおけるCD8+ MTB Tet-19kD Ag+反応性T細胞に関する、本発明者らの先に公表した知見(CD8+ PBLのおよそ2%)、またはMelan-A/MART127-35特異的腫瘍浸潤T細胞に関して見られるような(TILの5.68%)、組織に存するリンパ球に関して比較した際、予想外に、肺組織で高かった(単一の患者において、CD4+ GALの最大27%に達する)。これらの研究で用いたテトラマー分析または限界希釈アッセイが、多様なT細胞クローンの抗原特異的T細胞の頻度を反映している可能性があり、一方、本発明者らが、GALにおいて単一T細胞クローン拡大を観察したことを考慮すると、頻度の相違は、より顕著でさえあるようである。他方、Masopustおよび共同研究者らは、急性ネズミ・リステリア症における臓器特異的テトラマー反応性T細胞応答を分析した際、GALにおけるものと類似の頻度を検出した。これらの頻度は、疾患回復に成功した後、下落した。潜伏性MTB感染では、バチルスがマクロファージ内部に長年存在し続けるために、感染が本質的に排除されないことから、T細胞頻度は上昇したままであり得る。
【0159】
潜伏性TB感染と診断された3人の患者に関して、本発明者らは、主要な拡大VBファミリーの抗原特異性を定義可能であった(患者#1および#2ではVB9、ならびに患者#5ではVB7)。これらのGALは、全CD4+ GAL集団に比較した際、天然にプロセシングされかつ提示されたMTBエピトープに反応して、増加した量のIFN-γを産生した。患者#5において、例えば、単一のVB7陽性T細胞クローン(表2)が、ESAT-6エピトープの認識専門の、肺に存するリンパ球の19%を構成した。注目すべきことに、同じTCR VB7クローンが、対応する新鮮に採取された肺病変のTCR-CDR3型決定によって同定されており、VB7ファミリーがインサイチューでクローン性に拡大していたことが示唆される(データ示さず)。初期分泌抗原性ターゲット6(ESAT-6)は、BCGおよび大部分の環境由来ミコバクテリウム種では発現が存在しないため、ヒトにおける活性または潜伏性MTB感染の検出に感受性かつ特異的であると暗に示されている。さらに、これらの拡大されたリンパ球は、全GAL集団において、ESAT-61-20を認識する単独のCD4+ T細胞であった。これは、肺におけるMTB抗原を選択する非常に集中的な免疫応答を示す。これらのデータは、MTB封じ込めの成功が、少なくとも何人かの患者では、いくつかのTCRクローン型に非常に集中し、かつ限定される可能性があることを示唆する:この状況は、HIVの封じ込め成功に、またはより最近、癌患者における臨床的に有効なT細胞応答に当てはまることが見出された。
【0160】
本発明者らは、本報告において、すべての拡大されたTCR VBファミリーを、天然にプロセシングされかつ提示されたMTBエピトープの認識に結び付けることはできなかった。細胞内生存に必要な遺伝子のMTB転写機構を指示する環境条件に関連して、MTBエピトープの異なるレパートリーが生成される可能性がある。本研究でAPCとして用いた、MTBでの自己マクロファージのON感染が、肉芽腫病巣における抗原プロセシングを反映しない可能性が最も高い。加えて、本発明者らは、定義されるT細胞エピトープのHLA-A2拘束性およびHLA-DR4拘束性提示しか取り扱えなかった;他のMHCクラスIまたはクラスIIアレルが、集中的なMTB特異的T細胞応答を形作るのにより有効である可能性もある。最終的に、潜在的な「免疫優性」T細胞応答の存在に取り組むためには、異なるMHCアレルによって提示される、より広い抗原ペプチドセットを使用する、さらなる研究が必要である。CMV、または非複製持続性バチルスに関連する他の重要なMTB関連ターゲット・エピトープなどの、肺の他の再発性または慢性感染の免疫学的制御もまた、適切に拡大されたT細胞の存在を必要とする可能性があり得る。
【0161】
これらのデータは、ワクチン設計に対して、ならびに免疫防御に関連する新規代理マーカーの定義に対して含意をもつ。各臓器が、質または量の点で、同じ病原体に対して、異なる免疫応答を装備し得るという観察を考慮すると、ヒトTBにおける肺の免疫学的状況を理解することは、MTBワクチン設計に必須である。IFN-γ産生によって定義されるような主な機能因子の中に、ESAT-61-20ペプチド特異的CD4+リンパ球があったように、ワクチン有効性は、ESAT-6 Agを含むことによって、強く増強されうる。
【0162】
ESAT-6は、MTBに対する免疫応答において、確かに重要な抗原である可能性があり、かつ研究は、ネズミ・モデルにおけるワクチン接種にこの抗原を推奨するか、または既に使用に成功している。しかし、免疫優性エピトープ(有効性および適用可能性の両方に潜在的に重要である)に関するデータは、異なる。本発明者らの実験は、抗原のアミノ末端(N末端)およびカルボキシ末端(C末端)部分をカバーするペプチドESAT-61-20およびESAT-672-95を含み、かつコーカサス人患者のGALに対して行った。本報告のデータは、エピトープがESAT-6のN末端部分に存し、かつ優先的に認識されることを示す。これらは、ドイツ人患者を伴うUlrichらによるPBLに関する研究、ならびにBoston, Massachusettsの最近のPPD陽転者に関する同じグループの報告と一致して、多様なHLA DR分子上に提示可能である。他方、世界の他の地域の研究では、他のESAT-6エピトープが推奨される:エチオピア人患者のT細胞は、抗原の中央部分を優先的に認識し、一方、クウェート人およびデンマーク人患者は、最も頻繁には、C末端領域(アミノ酸72〜95位)を認識する。MustafaらおよびRavnらの両者に論じられるように、この現象は、異なる民族群の遺伝子HLA構成の多様性から生じ得る。遺伝的に異なるマウスのESAT-6リコール応答に関して類似の観察が行われている。
【0163】
結核におけるCD8+リンパ球の重要な役割に関して、かなりの証拠が存在する。本発明者らはまた、肺組織で、MTB特異的CD8+ GALのクローン性拡大も観察しており、例えば、患者#1におけるCD8+ GAL集団の17%を構成するTCR VB3陽性T細胞クローンがある。本発明者らの目的は、したがって、MTB関連ターゲットとして報告されている、分泌Ag、85a、85b、ESAT-6、および19kDaリポタンパク質に由来するHLA-A2提示ペプチドのパネルをスクリーニングすることによって、CD8+ GALの主な抗原性ターゲットを決定することであった。本発明者らは、Ag85a242-250およびAg85b199-207、ならびにESAT-628-36の優先的な認識、かつ19kDaAg88-97への中程度の反応を観察し、一方、Ag85a48-56およびAg85b143-152は、あるとしてもわずかな応答しか誘発しなかった。この観察が、肺由来CD8+ T細胞の一般的な傾向であるか、または個々の患者に特異な特徴であるかどうかは、より大きいコホートにおいて、さらに研究する必要があり得る。しかし、これらのデータの主な重要性は、Ag85aおよびAg85b特異的、ならびにESAT-6および19kDa Ag特異的CD8+ T細胞が、肺において実際に存在し(抗原刺激に際するIFN-γ産生に定義されるように)、かつ末梢血におけるだけでなく、かつこれらの抗原が、おそらく潜伏性の維持に関与することである。これらの細胞をエクスビボで視覚化するため、インサイチュー・テトラマー染色後、CLSMを行い、かつそれによって、T細胞のインビトロ培養のバイアスを伴わず、ヒト肺組織において、Ag85bおよび19kDaAg特異的CD8+ T細胞両方の、前例がない提示を達成した。単一の患者由来のHLA-A2/Ag85bまたはHLA-DR4/ESAT-6選別GALにおけるTCR分析もまた、拘束されたTCR使用を示唆する(図21)。
【0164】
まとめると、本発明者らは、ヒト潜伏性TBにおいて、CD4+およびCD8+ MTB反応性リンパ球が存在し、非常に拡大され、かつ肺組織で機能性であることを立証する。CDR3スペクトラタイピングとフローサイトメトリーTCR VB分析を組み合わせると、これらの同定の強力なツールとなり、かつPBLとは異なる、集中したリンパ球集団が潜伏性を支配していることを理解することが可能になった。重要なターゲットは、ESAT-6およびAg 85a/85bのようなMTB分泌抗原のペプチドである。これらの抗原をワクチンに統合すると、MTBに対する防御免疫に重要となるはずである。
【0165】
本発明は、上記実施例に関連して記載しているが、本発明の精神および範囲内に、修飾および変動が含まれることが理解されるであろう。したがって、本発明は特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】図1A〜C。疾患を封じ込めることが可能であった、すなわち臨床的に明らかな結核を持たない、MTB感染患者の肺病巣から、肉芽腫関連リンパ球(GAL)が得られている。GALをCD4(図1A〜C)およびCD8(図2A〜C)に分離し、かつ分子組成(TCRランドスケープ)、およびMTBに感染した自己マクロファージに反応したサイトカイン放出に関して評価した。図1A、患者#1および#2;DR、DP、DQは拘束性エレメントとして働く。図1B、患者#3および#5;IFN放出なし。図1C、患者#6:DR拘束性応答;患者#7:mAbでの遮断によって定義されるように、DRおよびDQ拘束性応答。
【図2】図2A〜Cは、試験した患者のCD8+αβTCR+GALに関してプロットした一連の「TCRランドスケープ」、およびサイトカイン産生がMHCクラスI拘束性であり、かつCD8+GAL集団において、DR、DP、およびDQに対して向けられるmAbによって阻害されないことを示す、対応するグラフである。図2A、患者#1および患者#3:サイトカイン応答なし。図2B、患者#5および患者#6:抗MHCクラスI w6/32 mAbでの遮断によって定義される、MHCクラスI拘束性CD8+応答。図2C、患者#7:抗MHC指向遮断mAbで部分的にしか遮断されない。
【図3】図3Aおよび3Bは、患者2に関するスペクトラタイプ分析を示す。図3Aは、GALにおける患者#2のCDR3分析(CD4+およびCD8+ T細胞両方)の結果を示す。図3Bは、異なる解剖学的区画(GAL対PBS)におけるCD4+またはCD8+ T細胞の分子組成の相違パーセントを視覚化するため、PBLに関して得られた「TCRランドスケープ」から、GALにおいて得られた結果を引くことによって得られる「TCRランドスケープ」を示す。
【図4】図4Aおよび4Bは、患者#5に関して得られたデータのスペクトラタイプ分析の結果を示す。図4Aは、相違パーセント(総/未選別PBLおよびGALに関するもの)を視覚化するため、PBLに関して得られた「TCRランドスケープ」から、(CD4+、CD8+、未選別)GAL「TCRランドスケープ」における結果を引くことによって得られる「TCRランドスケープ」を示す。分子組成のみを示す。図4Bは、フローサイトメトリーによって定義されるTCR VB頻度によって、値を補正した以外、同一のデータである:GAL対PBLの個々のVBファミリーの増幅。
【図5】図5A〜Cは、患者T細胞によるIFN-γの産生が、匹敵する細胞数で、GALの全集団によって産生されたものより高濃度であったことを表す一連のグラフおよび表を示す。特異的TCR-VB mAbを用いて、T細胞エフェクター集団を選別した、すなわちCD4+におけるVB9+もしくはVB14+ T細胞、またはCD8+ T細胞集団におけるVB3+ T細胞由来のデータ。図5A=患者#1;図5B=患者#2;図5C=患者#5。
【図6】図6A〜Fは、ESAT-6においてGALによって認識されるエピトープを狭めるための、Vβ選別T細胞がMTB由来ペプチドESAT-61-20およびESAT-672-95を認識する能力の分析を示す。これらの結果の後、本発明者らは、DR4/ESAT-6テトラマー複合体を生成した。したがって、本発明者らは、DCに対して、2つのペプチド、ESAT1-20およびESAT72-95でパルス処理し、かつテトラマー化したそれぞれのDR4結合性ペプチドESAT68-22(FAGIEAAASAIQGNV(SEQ ID NO:8))でパルス処理した。図6A〜B、患者#1、図6C〜D、患者#2;図6E〜F、患者#5。ペプチドESAT1-20は、ESAT72-95と比較した際、より頻繁に認識される。さらに、抗DR mAb L243がT細胞認識を有意に無効にするため、ESAT1-20応答は、DR拘束性であるようである。
【図7】図7Aおよび7Bは、生検中、TBに特徴的な病理学的病変を持たない両方の患者において、ESAT-61-20に対するESAT-6特異的免疫応答が、実質量のIFN-γおよびGM-CSFの産生を導き、これがHLA-DRに対して向けられるmAbによって遮断可能であったことを示すグラフである。図7A、患者#6、図7B、患者#7。
【図8】図8A〜Cは、患者#3、#4、および#7における19kDa Ag、Ag85a、またはAg85bターゲット・ペプチド由来のHLA-A2結合性ペプチドに対して向けられるCD8+ T細胞によるIFN-γおよびGM-CSF産生を示すグラフである。図8A、患者#3;図8B、患者#4;および図8C、患者#7。これらのデータによって、GALにおけるCD8+ T細胞応答は、IFNγ産生によって定義されるように、AG85a242-250およびAg85b199-207に集中していることが示される。
【図9】図9Aおよび9Bは、MTB関連タンパク質ESAT-6由来の3つの異なる候補ペプチドに応答した、結核患者(患者#3)のCD8+ GALによるサイトカインの産生を示す。ESAT-628-36が認識される。この応答は、抗MHCクラスI特異的mAb w6/32によって遮断可能である。
【図10】図10A〜Dは、Ag85bまたはESAT-6エピトープのいずれかを用いた、テトラマー選別CD4+ T細胞のエクスビボ分析の結果を示す一連の4つのグラフであり、CD4+、HLA-DR4拘束性、およびAg85b反応性T細胞が、M.ツベルクローシスおよびM.アビウム・イントラセルラレから提供される、天然にプロセシングされかつ提示されたエピトープを認識したことを明らかに示す。Ag85b選別T細胞が、MTBおよびM.アビウム・イントラセルラレを認識することに注目されたい。対照的に、DR4/ESAT-6選別T細胞は、MTBバチルスのみを認識する。
【図11】図11Aは、診断時、ならびにまた、診断およびそれと同時の療法開始の2週間後および16週間後の時点(水平軸)での、5人の肺結核患者のHLA-DR4拘束性CD4+ T細胞における19kDa抗原、Ag85b、およびESAT-6に対するPBL反応性を示す一連のグラフである。 図11Bは、診断時、ならびにまた、診断およびそれと同時の療法開始の2週間後および16週間後の時点(水平軸)での、5人の肺結核患者のうちの3人のHLA-DR4拘束性CD8+ T細胞における19kDa抗原、Ag85b、およびESAT-6に対するPBL反応性を示す一連のグラフである。PATMZTBx=患者MZTBx。
【図12】図12Aおよび12Bは、CD45RAおよびCD28での差次染色に基づいて、異なるT細胞サブセットにおけるミコバクテリウム抗原反応性T細胞の存在に関して、図11A〜Bに取りまとめた患者MZTB4の血液試料の反応性を示す一連のグラフである。(3つのバーの各セットにおいて、バー1=ESAT-6;バー2=19DaAg;バー3=Ag85b。)
【図13】図13Aおよび13Bは、DR4の脈絡において、AG85b、19kDa、またはESAT-6抗原のいずれかを認識する、結核患者中の低いまたは検出不能なCD4+ T細胞(例えば患者MZTBC5由来のPBL)が(図13A)、インビトロで、適切なペプチドで7日間刺激中に拡大可能であったことを示すグラフである:やはり、主なCD4+ T細胞応答(図13B)は、前駆体(CD45RA+、CD28+)内で、または活性化された(CD45RA-CD28+)T細胞サブセット中で検出される。(3つのバーの各セットにおいて、バー1=ESAT-6;バー2=19DaAg;バー3=Ag85b。)
【図14】図14Aおよび14Bは、インサイチュー・テトラマー染色を通じて、テトラマー反応性GALの分散した局在を示す。図14Aは、患者#3から得られた組織検体由来の平行切片に関するHE染色が、肉芽腫形成を示すことを示す(倍率x200)。図14Bは、肺組織由来の10μm厚の10〜20個の凍結切片が、Ag85b199-207および19kDa Ag88-97のHLA A2テトラマー、または陰性対照としてのgp100で染色され、CD8 mAbで共染色され、かつCLSMによって視覚化されたものを示す。テトラマー結合性GALは、肉芽腫内で分散して見られ、一方、GALにおいて、CD8の均質な分布が明らかであり、テトラマーで染色されたTCRは、細胞の1つまたはいくつかの極に局在して見られた。データは、患者#3および#4を示す。無関係な対照(gp100)テトラマーに関するバックグラウンド染色(倍率x400)。患者#3由来のGALにおいて、HLA-A2拘束性/Ag85b反応性T細胞のテトラマーガイド分析(tetramer-guided analysis)を行ったことに注目されたい(図15を参照されたい)。
【図15】図15A〜Cは、定義されたMHC/ペプチド複合体に対して集中的なT細胞応答を示す。図15Aは、患者#3由来のCD8+ GALにおけるHLA-A2拘束性/Ag85b特異的T細胞(左)のテトラマーガイド選別を示す(図1および2を参照されたい)。表1に列挙しない、潜伏性にMTB感染した、異なる(HLA-DR4+)患者から、十分なCD4+ GALを採取するのに成功し、かつHLA-DR4/ESAT-6テトラマー複合体を用いて選別した(右)。図15Bは、肉芽腫組織から単離したCD8+、HLA-A2/Ag85b特異的(左)またはCD4+、HLA-DR4/ESAT-6特異的T細胞いずれかのTCRレパートリー分析を示す。データをそれぞれ、CD8+ GAL、またはCD4+ GALに比較した際のテトラマー選別T細胞におけるTCR VBファミリーの過剰提示%として表す。図15Cは、CD4+ GALにおいて、TCR-VB特異的mAbパネルを用いて、個々のVBファミリーを定量的に評価可能であることを例示する。TCR VB4およびVB7は、HLA-DR4/ESAT-6反応性CD4 +GAL中、モノクローン性である。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:3に示すようなアミノ酸配列を含む、ミコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)(MTB)由来の単離ヒトHLA-A2拘束性T細胞エピトープ。
【請求項2】
ヒトにおけるMTBまたはMTB以外のミコバクテリウムの感染またはこれらに対する曝露に関連する、請求項1記載のエピトープ。
【請求項3】
SEQ ID NO:3に示すようなアミノ酸配列を含む、ミコバクテリウム・ツベルクローシス(MTB)由来の単離ヒトHLA-A2拘束性T細胞エピトープ、およびその保存的バリエーション。
【請求項4】
SEQ ID NO:6、7、または8に示すようなアミノ酸配列を含む、ミコバクテリウム・ツベルクローシス(MTB)由来の単離ヒトHLA-DR4拘束性T細胞エピトープ。
【請求項5】
SEQ ID NO:6、7、または8に示すようなアミノ酸配列を含む、ミコバクテリウム・ツベルクローシス(MTB)由来の単離ヒトHLA-A2拘束性T細胞エピトープ、およびその保存的バリエーション。
【請求項6】
SEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む、請求項5記載のエピトープ。
【請求項7】
SEQ ID NO:7に示すようなアミノ酸配列を含む、請求項5記載のエピトープ。
【請求項8】
SEQ ID NO:8に示すようなアミノ酸配列を含む、請求項5記載のエピトープ。
【請求項9】
請求項1、3、4、または5に示すようなポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド。
【請求項10】
DNAまたはcDNAである、請求項9記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項11】
RNAである、請求項9記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項12】
遺伝コードの結果として、請求項9記載のポリヌクレオチド配列に縮重している、単離ポリヌクレオチド。
【請求項13】
T細胞エピトープが組換えにより産生される、請求項9記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項9記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項15】
ウイルスである、請求項14記載のベクター。
【請求項16】
請求項14記載のベクターで安定に形質転換された、宿主細胞。
【請求項17】
a)SEQ ID NO:8に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-DR4モノマーまたは修飾モノマーのマルチマーまたはオリゴマーと、被験体から得られたPBLを接触させる工程;
b)被験体におけるMTB感染または曝露の存在の指標となる、PBLへのマルチマーまたはオリゴマーの結合を、検出する工程
を含む、ヒト被験体において、MTBによる感染またはMTBに対する曝露の存在を診断するための方法。
【請求項18】
SEQ ID NO:6または7に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-DR4モノマーまたは修飾モノマーのさらなるマルチマーと、PBLを接触させる工程、およびPBLへのさらなるテトラマーの少なくとも1つの結合を検出する工程をさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
検出する工程がハイスループット・スクリーニングを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
フルオロフォアでテトラマーを標識する工程をさらに含む方法であって、検出する工程が、フルオロフォアによって産生されるシグナルを測定する工程を含む、請求項18記載の方法。
【請求項21】
オリゴマーが、ストレプトアビジンまたは別の多価実体を含むテトラマーであり、かつフルオロフォアがストレプトアビジンに付着している、請求項20記載の方法。
【請求項22】
モノマーをビオチン化する工程、およびビオチンを介してストレプトアビジンにモノマーを結合させる工程をさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
SEQ ID NO:6または7に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-DR4モノマーまたは修飾モノマーのさらなるテトラマーと、PBLを接触させる工程、およびPBLへのさらなるテトラマーの少なくとも1つの結合を検出する工程をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項24】
a)SEQ ID NO:3に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマーのテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーと、被験体から得られたPBLを接触させる工程;および
b)被験体におけるMTB感染または曝露の存在の指標となる、PBLへのテトラマーの結合を、検出する工程
を含む、ヒト被験体において、MTBによる感染またはMTBに対する曝露の存在を診断するための方法。
【請求項25】
SEQ ID NO:1または2に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマーのさらなるテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーと、PBLを接触させる工程、およびPBLへのさらなるテトラマーの少なくとも1つの結合を検出する工程をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
検出する工程がハイスループット・スクリーニングを含む、請求項24記載の方法。
【請求項27】
フルオロフォアでテトラマーを標識する工程をさらに含む方法であって、検出する工程が、フルオロフォアによって産生されるシグナルを測定する工程を含む、請求項24記載の方法。
【請求項28】
テトラマーがストレプトアビジンを含み、かつフルオロフォアがストレプトアビジンに付着している、請求項27記載の方法。
【請求項29】
モノマーをビオチン化する工程、およびビオチンを介してストレプトアビジンにモノマーを結合させる工程をさらに含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
a)潜伏性MTBのため薬剤を用いた治療を受けている、DR4アレルを持つ患者から、PBLを含む試料を得る工程;
b)適切な結合条件下で、以下の少なくとも1つから選択されるHLAモノマーまたは修飾モノマーの結合したテトラマーを有する固体支持体と、試料を接触させる工程:
1)SEQ ID NO:6、7、8に示すアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-DR4モノマーまたは修飾モノマー;および
2)SEQ ID NO:1、2、または3に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマー;および
c)PBLへのテトラマーの結合量を検出する工程;および
d)治療期間の適切な間隔後に、a)、b)、およびc)を反復する工程
を含み、
治療期間の適切な間隔後の結合量の減少が、薬剤の有効性を示し、かつ減少の欠如が、ヒトにおけるMTBの感染または潜伏の治療または予防のための薬剤の有効性の欠如を示す、
ヒト被験体におけるMTB感染の感染または潜伏の治療または予防のための薬剤の有効性を決定するための方法。
【請求項31】
薬剤が抗TBワクチンである、請求項30記載の方法。
【請求項32】
薬剤が、任意のミコバクテリウムのインビトロ増殖を減少させるかまたは抑止する、任意の化学的化合物である、請求項30記載の方法。
【請求項33】
被験体がHLA-DR4アレルを有し、かつ結合性ペプチドがSEQ ID NO:8に示すようなアミノ酸配列を含む、または被験体がHLA-A2アレルを有し、かつ結合性ペプチドがSEQ ID NO:3に示すようなアミノ酸配列を含み、
a)結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLAモノマーまたは修飾モノマーのテトラマーと、被験体から得られたPBLを接触させる工程;および
b)PBLへのテトラマーの結合を検出して、被験体における、M.レプレ(M. leprae)またはM.ツベルクローシス感染または曝露の存在を同定する工程
を含む方法。
【請求項34】
SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、およびその保存的バリエーションからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、ミコバクテリウム・ツベルクローシス(MTB)由来の単離ヒトHLA-A2拘束性T細胞エピトープ。
【請求項35】
a)SEQ ID NO:21〜25のいずれかに示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマーのテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーと、被験体から得られたPBLを接触させる工程;および
b)被験体におけるMTB感染または曝露の存在の指標となる、PBLへのテトラマーの結合を、検出する工程
を含む、ヒト被験体において、MTBによる感染またはMTBに対する曝露の存在を診断するための方法。
【請求項36】
a)潜伏性MTBのため薬剤を用いた治療を受けている、DR4アレルを持つ患者から、PBLを含む試料を得る工程;
b)適切な結合条件下で、以下の少なくとも1つから選択されるHLAモノマーまたは修飾モノマーの結合したテトラマーを有する固体支持体と、試料を接触させる工程:
1)SEQ ID NO:6、7、8に示すアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-DR4モノマーまたは修飾モノマー;および
2)SEQ ID NO:1、2、3、21、22、23、24、または25に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマー;および
c)PBLへのテトラマーの結合量を検出する工程;および
d)治療期間の適切な間隔後に、a)、b)、およびc)を反復する工程
を含み、
治療期間の適切な間隔後の結合量の減少が、薬剤の有効性を示し、かつ減少の欠如が、ヒトにおけるMTBの感染または潜伏の治療または予防のための薬剤の有効性の欠如を示す、
ヒト被験体におけるMTB感染の感染または潜伏の治療または予防のための薬剤の有効性を決定するための方法。
【請求項1】
SEQ ID NO:3に示すようなアミノ酸配列を含む、ミコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)(MTB)由来の単離ヒトHLA-A2拘束性T細胞エピトープ。
【請求項2】
ヒトにおけるMTBまたはMTB以外のミコバクテリウムの感染またはこれらに対する曝露に関連する、請求項1記載のエピトープ。
【請求項3】
SEQ ID NO:3に示すようなアミノ酸配列を含む、ミコバクテリウム・ツベルクローシス(MTB)由来の単離ヒトHLA-A2拘束性T細胞エピトープ、およびその保存的バリエーション。
【請求項4】
SEQ ID NO:6、7、または8に示すようなアミノ酸配列を含む、ミコバクテリウム・ツベルクローシス(MTB)由来の単離ヒトHLA-DR4拘束性T細胞エピトープ。
【請求項5】
SEQ ID NO:6、7、または8に示すようなアミノ酸配列を含む、ミコバクテリウム・ツベルクローシス(MTB)由来の単離ヒトHLA-A2拘束性T細胞エピトープ、およびその保存的バリエーション。
【請求項6】
SEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む、請求項5記載のエピトープ。
【請求項7】
SEQ ID NO:7に示すようなアミノ酸配列を含む、請求項5記載のエピトープ。
【請求項8】
SEQ ID NO:8に示すようなアミノ酸配列を含む、請求項5記載のエピトープ。
【請求項9】
請求項1、3、4、または5に示すようなポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド。
【請求項10】
DNAまたはcDNAである、請求項9記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項11】
RNAである、請求項9記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項12】
遺伝コードの結果として、請求項9記載のポリヌクレオチド配列に縮重している、単離ポリヌクレオチド。
【請求項13】
T細胞エピトープが組換えにより産生される、請求項9記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項9記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項15】
ウイルスである、請求項14記載のベクター。
【請求項16】
請求項14記載のベクターで安定に形質転換された、宿主細胞。
【請求項17】
a)SEQ ID NO:8に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-DR4モノマーまたは修飾モノマーのマルチマーまたはオリゴマーと、被験体から得られたPBLを接触させる工程;
b)被験体におけるMTB感染または曝露の存在の指標となる、PBLへのマルチマーまたはオリゴマーの結合を、検出する工程
を含む、ヒト被験体において、MTBによる感染またはMTBに対する曝露の存在を診断するための方法。
【請求項18】
SEQ ID NO:6または7に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-DR4モノマーまたは修飾モノマーのさらなるマルチマーと、PBLを接触させる工程、およびPBLへのさらなるテトラマーの少なくとも1つの結合を検出する工程をさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
検出する工程がハイスループット・スクリーニングを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
フルオロフォアでテトラマーを標識する工程をさらに含む方法であって、検出する工程が、フルオロフォアによって産生されるシグナルを測定する工程を含む、請求項18記載の方法。
【請求項21】
オリゴマーが、ストレプトアビジンまたは別の多価実体を含むテトラマーであり、かつフルオロフォアがストレプトアビジンに付着している、請求項20記載の方法。
【請求項22】
モノマーをビオチン化する工程、およびビオチンを介してストレプトアビジンにモノマーを結合させる工程をさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
SEQ ID NO:6または7に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-DR4モノマーまたは修飾モノマーのさらなるテトラマーと、PBLを接触させる工程、およびPBLへのさらなるテトラマーの少なくとも1つの結合を検出する工程をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項24】
a)SEQ ID NO:3に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマーのテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーと、被験体から得られたPBLを接触させる工程;および
b)被験体におけるMTB感染または曝露の存在の指標となる、PBLへのテトラマーの結合を、検出する工程
を含む、ヒト被験体において、MTBによる感染またはMTBに対する曝露の存在を診断するための方法。
【請求項25】
SEQ ID NO:1または2に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマーのさらなるテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーと、PBLを接触させる工程、およびPBLへのさらなるテトラマーの少なくとも1つの結合を検出する工程をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
検出する工程がハイスループット・スクリーニングを含む、請求項24記載の方法。
【請求項27】
フルオロフォアでテトラマーを標識する工程をさらに含む方法であって、検出する工程が、フルオロフォアによって産生されるシグナルを測定する工程を含む、請求項24記載の方法。
【請求項28】
テトラマーがストレプトアビジンを含み、かつフルオロフォアがストレプトアビジンに付着している、請求項27記載の方法。
【請求項29】
モノマーをビオチン化する工程、およびビオチンを介してストレプトアビジンにモノマーを結合させる工程をさらに含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
a)潜伏性MTBのため薬剤を用いた治療を受けている、DR4アレルを持つ患者から、PBLを含む試料を得る工程;
b)適切な結合条件下で、以下の少なくとも1つから選択されるHLAモノマーまたは修飾モノマーの結合したテトラマーを有する固体支持体と、試料を接触させる工程:
1)SEQ ID NO:6、7、8に示すアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-DR4モノマーまたは修飾モノマー;および
2)SEQ ID NO:1、2、または3に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマー;および
c)PBLへのテトラマーの結合量を検出する工程;および
d)治療期間の適切な間隔後に、a)、b)、およびc)を反復する工程
を含み、
治療期間の適切な間隔後の結合量の減少が、薬剤の有効性を示し、かつ減少の欠如が、ヒトにおけるMTBの感染または潜伏の治療または予防のための薬剤の有効性の欠如を示す、
ヒト被験体におけるMTB感染の感染または潜伏の治療または予防のための薬剤の有効性を決定するための方法。
【請求項31】
薬剤が抗TBワクチンである、請求項30記載の方法。
【請求項32】
薬剤が、任意のミコバクテリウムのインビトロ増殖を減少させるかまたは抑止する、任意の化学的化合物である、請求項30記載の方法。
【請求項33】
被験体がHLA-DR4アレルを有し、かつ結合性ペプチドがSEQ ID NO:8に示すようなアミノ酸配列を含む、または被験体がHLA-A2アレルを有し、かつ結合性ペプチドがSEQ ID NO:3に示すようなアミノ酸配列を含み、
a)結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLAモノマーまたは修飾モノマーのテトラマーと、被験体から得られたPBLを接触させる工程;および
b)PBLへのテトラマーの結合を検出して、被験体における、M.レプレ(M. leprae)またはM.ツベルクローシス感染または曝露の存在を同定する工程
を含む方法。
【請求項34】
SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、およびその保存的バリエーションからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、ミコバクテリウム・ツベルクローシス(MTB)由来の単離ヒトHLA-A2拘束性T細胞エピトープ。
【請求項35】
a)SEQ ID NO:21〜25のいずれかに示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマーのテトラマー、オリゴマー、またはマルチマーと、被験体から得られたPBLを接触させる工程;および
b)被験体におけるMTB感染または曝露の存在の指標となる、PBLへのテトラマーの結合を、検出する工程
を含む、ヒト被験体において、MTBによる感染またはMTBに対する曝露の存在を診断するための方法。
【請求項36】
a)潜伏性MTBのため薬剤を用いた治療を受けている、DR4アレルを持つ患者から、PBLを含む試料を得る工程;
b)適切な結合条件下で、以下の少なくとも1つから選択されるHLAモノマーまたは修飾モノマーの結合したテトラマーを有する固体支持体と、試料を接触させる工程:
1)SEQ ID NO:6、7、8に示すアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-DR4モノマーまたは修飾モノマー;および
2)SEQ ID NO:1、2、3、21、22、23、24、または25に示すようなアミノ酸配列を含む、結合したHLA結合性ペプチドを有する、HLA-A2モノマーまたは修飾モノマー;および
c)PBLへのテトラマーの結合量を検出する工程;および
d)治療期間の適切な間隔後に、a)、b)、およびc)を反復する工程
を含み、
治療期間の適切な間隔後の結合量の減少が、薬剤の有効性を示し、かつ減少の欠如が、ヒトにおけるMTBの感染または潜伏の治療または予防のための薬剤の有効性の欠如を示す、
ヒト被験体におけるMTB感染の感染または潜伏の治療または予防のための薬剤の有効性を決定するための方法。
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2008−503214(P2008−503214A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516775(P2007−516775)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/021451
【国際公開番号】WO2006/009838
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(504346307)ベックマン コールター インコーポレーティッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/021451
【国際公開番号】WO2006/009838
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(504346307)ベックマン コールター インコーポレーティッド (5)
【Fターム(参考)】
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