説明

ミシンシステム及びミシン

【課題】ミシンとコンピュータとを通信可能に接続し、必要に応じて、コンピュータが記憶している縫製に関する縫製関連情報をミシン側で確認するとともに、ミシンの動作状態などのミシン関連情報をコンピュータ側で確認する。
【解決手段】ミシンシステム10は、縫製に関する縫製関連情報に基づいて加工布に縫製模様を形成するミシン14と、縫製関連情報を記憶するコンピュータ12とを接続して構成されるミシンシステムであって、ミシン14は、コンピュータ12に接続する接続手段と、ユーザが操作を入力する入力手段と、入力手段に入力された操作に応じて、コンピュータ12に記憶されている縫製関連情報に接続手段を介してアクセスするアクセス手段と、ミシン14に関するミシン関連情報を接続手段を介してコンピュータ12に開示する開示手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンとコンピュータとを通信可能に接続したミシンシステム及びそのミシンシステムを構成するミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミシンとコンピュータとを通信可能に接続して、これらの間で情報通信を行う構成のミシンシステム及びそのミシンシステムを構成するミシンが公知である。例えば特許文献1には、ミシンとコンピュータとが無線により通信可能に接続されたミシンシステムが開示されている。このミシンシステムは、コンピュータから受信したデータに従って、ミシンが加工布に縫製模様を形成する。また、ミシン内部の縫製機構にエラーが生じた場合にはそのエラー情報をコンピュータに送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−10455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来構成のミシンシステムでは、コンピュータに記憶されている縫製に関する縫製関連情報、例えば模様データや制御プログラムなどの内容をミシン側から確認できなかった。このため、コンピュータに記憶されている縫製関連情報を、ユーザが使用するミシン側から確認できる構成が望まれている。
【0005】
また、従来構成のミシンシステムでは、ミシン内部の縫製機構にエラーが生じた場合にのみ、そのエラー情報をコンピュータに送信する構成であった。しかし、エラーが発生した場合のみならず、必要に応じて、ミシンの動作状態などのミシン関連情報をコンピュータ側から確認したいという要望もあった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ミシンとコンピュータとを通信可能に接続し、必要に応じて、コンピュータが記憶している縫製に関する縫製関連情報をミシン側で確認することができ、また、ミシンの動作状態などのミシン関連情報をコンピュータ側で確認することができるミシンシステム及びミシンシステムを構成するミシンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、請求項1記載のミシンシステムは、縫製に関する縫製関連情報に基づいて加工布に縫製模様を形成するミシンと、前記縫製関連情報を記憶するコンピュータとを接続して構成されるミシンシステムであって、前記ミシンは、前記コンピュータに接続する接続手段と、ユーザが操作を入力する入力手段と、前記入力手段に入力された操作に応じて、前記コンピュータに記憶されている前記縫製関連情報に前記接続手段を介してアクセスするアクセス手段と、前記ミシンに関するミシン関連情報を前記接続手段を介して前記コンピュータに開示する開示手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載のミシンシステムは、前記アクセス手段及び前記開示手段は、プロトコルに基づいて動作することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載のミシンシステムは、前記ミシンは、前記コンピュータから電子メールによって送信される前記縫製関連情報を受信するとともに、前記ミシン関連情報を電子メールによって前記コンピュータに送信する電子メール送受信手段をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載のミシンシステムは、前記コンピュータは、前記ミシンが開示した前記ミシン関連情報を受け付ける受付手段と、前記受付手段が受け付けた前記ミシン関連情報を報知する報知手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5記載のミシンは、縫製に関する縫製関連情報を記憶するコンピュータと接続されることでミシンシステムを構成するミシンであって、前記コンピュータに接続する接続手段と、ユーザが操作を入力する入力手段と、前記入力手段に入力された操作に応じて、前記コンピュータに記憶されている前記縫製関連情報に前記接続手段を介してアクセスするアクセス手段と、前記ミシンに関するミシン関連情報を前記接続手段を介して前記コンピュータに開示する開示手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載のミシンは、前記アクセス手段及び前記開示手段は、プロトコルに基づいて動作することを特徴とする。
【0013】
請求項7記載のミシンは、前記コンピュータから電子メールによって送信される前記縫製関連情報を受信するとともに、前記ミシン関連情報を電子メールによって前記コンピュータに送信する電子メール送受信手段をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載のミシンシステムによれば、ミシンとコンピュータとは接続手段によって接続されている。そして、ミシンはアクセス手段を備えており、このアクセス手段は、ユーザが入力手段へ入力操作することに応じて、コンピュータに記憶されている縫製関連情報に接続手段を介してアクセスする。また、ミシンは開示手段を備えており、開示手段は、該ミシンに関するミシン関連情報を接続手段を介してコンピュータに開示する。これにより、ユーザは、必要に応じてコンピュータに記憶されている縫製関連情報をミシン側から確認することができ、また、ミシンの動作状態などのミシン関連情報をコンピュータ側で確認することができる。
【0015】
請求項2記載のミシンシステムによれば、アクセス手段及び開示手段はプロトコルに基づいて動作することから、これらアクセス手段や開示手段を動作させるための専用の制御プログラムが不要である。よって請求項1記載の発明の効果に加え、ミシンとコンピュータとの間の情報通信を容易にすることができる。
【0016】
請求項3記載のミシンシステムによれば、ミシンは、アクセス手段及び開示手段に加えてさらに電子メール送受信手段を備え、コンピュータから電子メールによって縫製関連情報を受信するとともに、コンピュータへ電子メールによってミシン関連情報を送信する。これにより、請求項1又は2記載の発明の効果に加え、さらに容易にミシンとコンピュータとの間で情報通信をすることができる。
【0017】
請求項4記載のミシンシステムによれば、コンピュータは、ミシンが開示したミシン関連情報を受付手段により受け付けて報知手段により報知する。これにより、請求項1から3いずれか一項記載の発明の効果に加え、ユーザは、コンピュータ側でより確実にミシン関連情報を確認することができる。
【0018】
また、請求項5記載のミシンによれば、縫製関連情報を記憶するコンピュータと接続してミシンシステムを構成することで、請求項1記載の発明と同様の効果が得られる。さらに、このミシンを複数台用いれば、コンピュータを介して複数台のミシンが接続されるため、より利便性が向上する。
【0019】
請求項6記載のミシンによれば、請求項5記載の発明と同様の効果を得ることができる。さらに、縫製関連情報を記憶するコンピュータと接続してミシンシステムを構成することで、請求項2記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【0020】
請求項7記載のミシンによれば、請求項5又は6記載の発明と同様の効果を得ることができる。さらに、縫製関連情報を記憶するコンピュータと接続してミシンシステムを構成することで、請求項3記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであり、ミシンとコンピュータとが相互に通信可能に接続されたミシンシステムを示す図
【図2】ミシンの外観を示す図
【図3】ミシンの電気的構成を示すブロック図
【図4】コンピュータの液晶ディスプレイに表示されるファイル管理画面を示す図
【図5】ミシンの液晶ディスプレイに表示されるアクセス実行画面を示す図
【図6】コンピュータの液晶ディスプレイに表示されるウェブブラウザを示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、インターネット環境に接続されたミシンシステム10の構成を概略的に示している。図1に示すように、ミシンシステム10は、アクセスポイント11を介して、パソコン12と、携帯端末13と、複数台この場合2台の多針刺繍ミシン14とを相互に通信可能に接続して構成されている。
【0023】
具体的には、アクセスポイント11は、無線及び有線LAN機能を搭載し、無線及び有線LAN端末であるパソコン12と携帯端末13とミシン14とを相互に通信可能に接続している。また、アクセスポイント11は、内蔵するインターネット接続機能、例えばルータ機能などによりプロバイダ15を介してインターネット16に接続されている。インターネット16は、通信キャリア17に接続され、また、プロバイダ18を介して例えばミシンメーカなどの企業のサーバ19にも接続されている。この場合、サーバ19は、縫製に関する縫製関連情報として例えば刺繍模様データや最新の制御プログラムなどを有しており、ユーザに対してこれら縫製関連情報を提供する。
【0024】
パソコン12は、例えば一般的な汎用パソコンで構成されている。パソコン12は、液晶ディスプレイ121や、キーボード122などを有し、この場合、有線LANによってアクセスポイント11に接続されている。ここで、液晶ディスプレイ121は特許請求の範囲の「報知手段」に相当する。ユーザは、パソコン12を用いて、サーバ19から提供される刺繍模様データや制御プログラムをインターネット16を介して取得したり、ユーザ自身が刺繍模様データを作成したりすることができる。なお、パソコン12とアクセスポイント11とは無線LANによって接続されていても良い。
【0025】
携帯端末13は、無線LAN機能を有した一般的な小型の情報端末であり、例えば携帯電話、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)などで構成されている。携帯端末13は、液晶ディスプレイ131や操作ボタン132などを有している。ここで、液晶ディスプレイ131は特許請求の範囲の「報知手段」に相当する。携帯端末13は、無線LANによってアクセスポイント11に接続されるとともに、通信キャリア17を介してインターネット16にも接続されている。
【0026】
そして、2台のミシン14は、この場合、無線LANによってアクセスポイント11に通信可能に接続されている。なお、無線LANの代わりに有線LANによってアクセスポイント11に接続されていても良い。ここで、パソコン12、携帯端末13、及びサーバ19は、いずれも特許請求の範囲の「コンピュータ」に相当するが、本実施形態においては、説明の便宜上、主にパソコン12について説明する。
【0027】
次に、ミシン14の機械的構成について図2を参照して説明する。
図2に示すように、ミシン14は、複数の針棒を有する多針刺繍ミシンであって、ミシン14全体を支持する左右一対の脚部20と、脚部20の後端部から立設された脚柱部21と、脚柱部21の上部から前方に延びるアーム部22と、脚柱部21の下端部から前方に延びるシリンダヘッド23と、アーム部22の前端部に装着された針棒ケース24とを有している。また、ミシン14は操作パネル25やミシン14の制御全般を司る制御装置26(図3参照)を有して構成されている。
【0028】
脚部20の上側には、左右方向へ延びるキャリッジ27が設けられている。キャリッジ27の前側には図示しない枠取付台が設けられている。枠取付台は、キャリッジ27の内部に設けられた図示しないX軸方向駆動機構によってX軸方向(左右方向)へ移動される。X軸方向駆動機構は、図3に示すX軸モータ28によって駆動される。また、キャリッジ27は、左右の脚部20の内部に設けられた図示しないY軸方向駆動機構によってY軸方向(前後方向)へ移動される。Y軸方向駆動機構は、図3に示すY軸モータ29によって駆動される。そして、刺繍縫製に供される図示しない加工布は、図示しない矩形枠状の刺繍枠に保持されて前記枠取付台に取付けられる。こうして加工布は、刺繍枠に保持された状態でX軸方向駆動機構の駆動によって枠取付台とともにX軸方向へ移動し、Y軸方向駆動機構の駆動によってキャリッジ27とともにY軸方向へ移動して布送りされる。
【0029】
針棒ケース24は、左右に配列されて上下方向に延びる10本の針棒(図示せず)を上下動可能に支持している。各針棒の下端部には、縫針(図示せず)がそれぞれ装着されている。また、針棒ケース24には、各針棒に対応する10個の天秤32が上下動可能に設けられている。針棒ケース24の上端部には、糸張力を調整するための10個の糸調子器33が固定されている。糸調子器33の後方には、アーム部22上面の背面側に位置して、左右一対の糸駒台34、及び糸駒36から延びる上糸37を案内する糸案内機構35が設けられている。左右の糸駒台34には、それぞれ5個ずつ合計10個の糸駒36を載置することができる。糸駒36から延びる上糸37は、糸案内機構35、糸調子器33、天秤32を経由して、対応する縫針の図示しない目孔に供給される。
【0030】
シリンダヘッド23の上面には針板38が設けられている。針板38には、針落ち位置に対応して図示しない針孔が形成されている。針板38の針孔には、縫針が挿通する。シリンダヘッド23の内部で針板38の下方には、回転釜(図示せず)が設けられている。また、アーム部22の内部には図示しない針棒選択機構が設けられている。針棒選択機構は、針棒ケース24をX軸方向へ移動させて、何れか1組の針棒及び天秤32を針板38の針落ち位置の上方へ移動させる。これにより、10組の針棒及び天秤32のうち、所望の糸色が供給される1組の針棒及び天秤32が択一的に選択される。針板38の針落ち位置の上方へ移動された針棒及び天秤32は、脚柱部21に設けられたミシンモータ39(図3参照)の駆動によって上下動する。そして、針棒、天秤32、及び回転釜の協働によって、刺繍枠に保持された加工布に、上糸37及び図示しない下糸からなる縫目が形成される。
【0031】
このとき、ミシン14は、詳しくは後述するが、コンピュータ12が記憶する縫製関連情報としての刺繍模様データにアクセスし、刺繍模様データに基づいて刺繍枠をX軸及びY軸方向へ移送させながら加工布に縫製模様を形成する。即ち、ミシン14は、自身が有する縫製関連情報ではなく、コンピュータ12が記憶する縫製関連情報に基づいて縫製動作を実行する構成である。
【0032】
また、操作パネル25は、アーム部22の右側面に折り畳み可能に設けられている。操作パネル25は、液晶ディスプレイ40とタッチパネル41、及び起動停止スイッチ251や図示しないブザー、そしてUSBメモリなどの外部記憶媒体が接続されるコネクタ252などから構成されている。液晶ディスプレイ40には、種々の刺繍模様、針棒に対応して設定されている上糸37の糸情報、糸調子や縫製速度などの縫製条件、縫製作業に必要な各種の機能名、各種の縫製関連情報などが表示される。タッチパネル41は、液晶ディスプレイ40の前面に設けられた透明電極から構成され、複数のタッチキーを有する。そして、ユーザはタッチキーを操作することで、各種機能の指示、各種縫製パラメータの設定、糸替えの設定などが可能となっている。この場合、タッチパネル41は特許請求の範囲の「入力手段」に相当する。
【0033】
続いて、ミシン14の制御系の構成について図3を参照して説明する。制御装置26はCPU42を中心として、ROM43、RAM44、記憶装置45、アクセス処理部46、開示処理部47、メール処理部48、入出力インターフェース49(I/O)、及び通信処理部50などから構成されている。そして、入出力インターフェース49には、操作パネル25の液晶ディスプレイ40及びタッチパネル41、モータ制御用の駆動回路511、512、513などが接続されている。駆動回路511、512、513は、それぞれX軸モータ28、Y軸モータ29、ミシンモータ39に接続されてこれらモータを駆動制御する。
【0034】
ROM43及びRAM44は、主に縫製制御プログラムや通信制御プログラム、液晶ディスプレイ40の表示制御プログラムやタッチパネル41の入力制御プログラムなどの各種制御プログラム、さらに刺繍に用いられる複数種の糸に関する情報を含む糸情報テーブルなどが記憶されている。記憶装置45は、例えばフラッシュメモリで構成され、初期状態においてメーカから提供される刺繍模様データなどが記憶されている。通信処理部50は、無線LANなどの通信制御機器を有して構成されている。この場合、通信処理部50は、特許請求の範囲の「接続手段」に相当する。この構成により、ミシン14は、通信処理部50を介して、アクセスポイント11に通信可能に接続される。つまり、ミシン14は、アクセスポイント11を介して、パソコン12や携帯端末13などに間接的に接続された構成である。なお、ミシン14は、アクセスポイント11を介することなく、パソコン12や携帯端末13などに直接的に接続されていても良い。
【0035】
アクセス処理部46、開示処理部47、及びメール処理部48は、制御装置26が制御プログラムを実行することによりソフトウェアによって仮想的に実現したものである。この場合、アクセス処理部46は特許請求の範囲の「アクセス手段」に相当し、開示処理部47は特許請求の範囲の「開示手段」に相当し、メール処理部48は特許請求の範囲の「電子メール送受信手段」に相当する。具体的には、アクセス処理部46は、通信プロトコルであるNetBIOS(Network Basic Input Output System)及び/又はNetBEUI(NetBIOS Extended User Interface)に基づいて動作する。アクセス処理部46は、通信処理部50を介してパソコン12やサーバ19に記憶されている縫製関連情報にアクセスする。
【0036】
開示処理部47は、通信プロトコルであるHTTP(Hypertext Transfer Protocol)に基づいて動作する。開示処理部47は、ミシン14に関するミシン関連情報、例えばミシン14で発生したエラー情報や動作履歴、メンテナンス情報などを、HTTP形式による例えばウェブページの形態で外部へ開示する。そして、メール処理部48は、通信プロトコルであるSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)及びPOP3(Post Office Protocol Version3)に基づいて動作する。メール処理部48は、通信処理部50を介して外部と電子メールの送受信を行う。
【0037】
ミシンシステム10の通信処理について、図4から図6を参照して説明する。
まず、アクセス処理部46を主体とした縫製関連情報の処理について説明する。
ミシン14は、アクセス処理部46を介して、パソコン12に記憶されている縫製に関する縫製関連情報にアクセスすることができる。ここで、本実施形態の場合、縫製に関する縫製関連情報とは、例えば刺繍模様データやミシンの制御プログラムである。これら縫製関連情報は、パソコン12が備える図示しない記憶装置内のフォルダ内に格納されている。パソコン12は、ファイル管理プログラムを内蔵しており、ファイル管理プログラムにより複数のフォルダを階層構造で管理している。
【0038】
具体的には、パソコン12は、ファイル管理プログラムを実行することにより液晶ディスプレイ121に図4に示すファイル管理画面52を表示する。ファイル管理画面52は、フォルダ表示部521、データ表示部522などから構成されている。フォルダ表示部521には、各フォルダが階層構造に基づいてツリー状に表示される。ユーザは、キーボード122や図示しないマウスを操作することによって、フォルダ表示部521に表示されたフォルダの中から任意のフォルダを選択する。ここで、ユーザは、選択したフォルダに対してミシン14からのアクセスを許可するか否かの設定を行うことができる。この場合、複数台のミシン14に対して、個別の異なるフォルダを設定することもできるし、共通するフォルダを共有フォルダとして設定することもできる。
【0039】
フォルダ表示部521においてフォルダが選択されると、データ表示部522には、選択されたフォルダ内に格納されている刺繍模様データ53が、縮小画像に変換されたサムネイルの形態で表示される。この状態でユーザは、データ表示部522に表示されている任意の刺繍模様データ53を選択して編集したり削除したりすることができる。また、ユーザは、パソコン12で作成した刺繍模様データをパソコン12のフォルダ内に新たに追加して格納することができる。
【0040】
また、ミシン14側では、図5に示すように、制御装置26のアクセス処理部46は、ユーザが操作パネル25のタッチパネル41に入力した操作に応じて、パソコン12へのアクセス処理を実行する。すると、操作パネル25の液晶ディスプレイ40には、アクセス実行画面54が表示される。アクセス実行画面54は、一覧表示部541、選択データ表示部542、及び各種ボタン543などから構成されている。ここで、アクセス処理部46は、アクセス実行画面54の表示とほぼ同時に、パソコン12内においてミシン14からのアクセスが許可されたフォルダ内における刺繍模様データ53のサムネイルデータを通信処理部50を介して受信する。そして、アクセス処理部46は、受信した刺繍模様データ53のサムネイルデータを模様画像55として一覧表示部541に表示する。
【0041】
その後、ユーザは、タッチパネル41を用いて一覧表示部541に表示された模様画像55のうち所望の模様画像55をタッチ操作により選択する。すると、選択データ表示部542には、選択された模様画像55の拡大画像や使用する糸色など、その模様についての詳細情報が表示される。そして、ユーザが実行を許可するボタン543をタッチ操作すると、ミシン14の制御装置26は、アクセス処理部46により、パソコン12に記憶されている刺繍模様データ53のうち選択された模様画像55の元となる刺繍模様データ53に通信処理部50を介してアクセスする。
【0042】
ここで、このアクセス処理部46による「アクセス」とは、刺繍模様データ53そのものをパソコン12から取得つまりダウンロードすることではなく、刺繍模様データ53を所定のデータ形式に変換しつつ読み取ることをいう。即ち、ミシン14の制御装置26は、選択された模様画像55に対応する刺繍模様データ53をパソコン12から所定のデータ形式に変換しつつ読み取る。そして、ミシン14の制御装置26は、アクセス処理部46によってパソコン12から読み取った刺繍模様データ53に基づいて、X軸モータ28、Y軸モータ29、ミシンモータ39などを駆動させて、図示しない加工布に縫製模様を形成する。このようにして、ミシン14は、パソコン12に記憶されている縫製関連情報に通信処理部50を介してアクセスする。
【0043】
なお、ミシン14の制御装置26は、パソコン12に記憶されている刺繍模様データ53を所定のデータ形式に変換しつつ逐次読み込みながら縫製を実行しても良いし、刺繍模様データ53を所定のデータ形式に変換しつつ全体を読み込んだ後に縫製を実行しても良い。また、縫製関連情報を携帯端末13やサーバ19に保存しておき、アクセス処理部46は、パソコン12からではなく、携帯端末13やサーバ19に記憶されている縫製関連情報にアクセスする構成としても良い。この場合、携帯端末13やサーバ19は特許請求の範囲の「コンピュータ」に相当する。
【0044】
次に、開示処理部47を主体としたミシン関連情報の処理について説明する。
本実施形態の場合、ミシンに関するミシン関連情報とは、例えばミシン14のステータス(動作状態)やエラー状態、動作履歴やメンテナンス情報などである。ミシン関連情報は、例えばミシン14の制御装置26を構成する記憶装置45やRAM44などに、最新の状態に随時更新されて保存されている。開示処理部47は、ミシン関連情報を、HTTPプロトコルに基づいてHTTP形式の情報として例えばウェブページの形態で外部に開示する。パソコン12や携帯端末13は、ミシン14が開示しているHTTP形式の情報にアクセスする。そして、パソコン12や携帯端末13は、これらパソコン12や携帯端末13が標準で備えているウェブブラウザによってミシン14が開示するミシン関連情報を表示する。
【0045】
具体的には、図6に示すように、パソコン12は、液晶ディスプレイ121にウェブブラウザ56を表示する。ウェブブラウザ56は、例えば、アドレスバー561、メッセージ表示部562、タブ563などから構成されている。ユーザは、ウェブブラウザ56のアドレスバー561に、ミシン14のミシンシステム10上での名前、IPアドレス、URLなどを入力してミシン14を指定する。すると、パソコン12は、アクセスポイント11及び指定されたミシン14の通信処理部50を介して、該ミシン14が開示しているHTTP形式の情報にアクセスする。
【0046】
ここで、パソコン12による「アクセス」とは、ミシン14が開示するHTTP形式の情報そのものを取得すること、及びミシン14が開示するHTTP形式の情報そのものをミシン14に保持したまま外部から読み取ることを含む。パソコン12は、ミシン14が開示するHTTP形式の情報に基づいてウェブブラウザ56にウェブページを表示する。このとき、ウェブブラウザ56には、ミシン14に関するミシン関連情報として、例えば図6に示すようにエラーメッセージ57が表示される。この場合、ウェブブラウザ56は、特許請求の範囲の「受付手段」に相当する。
【0047】
また、携帯端末13及びサーバ19は、パソコン12と同様にアクセスポイント11を介してミシン14が開示するHTTP形式の情報であるウェブページにアクセスすることができる。さらに、携帯端末13は、通信キャリア17を介しインターネット16を経由して、ミシン14が開示するHTTP形式の情報であるウェブページにアクセスすることもできる。
【0048】
次に、メール処理部48を主体とした電子メールの送受信処理について説明する。
メール処理部48は、通信処理部50及びアクセスポイント11を介してパソコン12と電子メールの送受信を行う。この場合、メール処理部48は、パソコン12に対してミシン14のミシン関連情報、例えばエラー情報や縫製完了などのステータス情報を付加した電子メールを送信する。さらに、メール処理部48は、パソコン12及び携帯端末13から刺繍模様データや制御プログラムが付加された電子メールを受信する。また、メール処理部48は、携帯端末13に対し、インターネット16を経由して電子メールの送受信をすることができる。さらに、メール処理部48は、サーバ19に対し、インターネット16を経由して電子メールの送受信もすることができる。
【0049】
以上説明したように本実施形態によれば、ミシンシステム10を構成するミシン14は、アクセス処理部46及び開示処理部47を備えている。アクセス処理部46は、ユーザが操作パネル25のタッチパネル41へ入力操作することに応じて、パソコン12、携帯端末13、サーバ19などに記憶されている縫製関連情報に通信処理部50を介してアクセスする。また、開示処理部47は、ミシン14に関するミシン関連情報を通信処理部50を介してパソコン12、携帯端末13、サーバ19などに開示している。これにより、ユーザは必要に応じて、パソコン12や携帯端末13やサーバ19に記憶されている縫製関連情報をミシン14側から確認することができ、さらにミシン14の動作状態などのミシン関連情報を、パソコン12や携帯端末13やサーバ19側で確認することができる。
【0050】
また、ミシンシステム10を構成するミシン14において、制御装置26のアクセス処理部46は、NetBIOS又はNetBEUIに基づいて動作し、開示処理部47は、HTTPに基づいて動作する。これにより、ミシン14は、専用の制御プログラムを必要とせずにパソコン12に記憶されている縫製関連情報へアクセスすることができる。さらに、パソコン12は、標準で搭載されているウェブブラウザを用いてミシン14が開示するミシン関連情報へアクセスすることができる。
【0051】
そして、ミシン14は、さらにメール処理部48を有している。メール処理部48は、パソコン12、携帯端末13、サーバ19などから縫製関連情報が付加された電子メールを受信するとともに、パソコン12、携帯端末13、サーバ19などへミシン関連情報を付加した電子メールを送信する。これにより、容易にミシン14と、パソコン12、携帯端末13、及びサーバ19との間で情報通信を行うことができる。
【0052】
また、パソコン12及び携帯端末13は、ウェブブラウザ56によって、ミシン14が開示したミシン関連情報を受け付け、受け付けたミシン関連情報を液晶ディスプレイ121、131に表示する。これにより、ユーザはパソコン12側や携帯端末13側でより確実にミシン関連情報を確認することができる。
【0053】
さらに、携帯端末13は、無線LANだけでなく、インターネット16を介して、ミシン14のミシン関連情報へアクセスしたり、ミシン14と電子メールを送受信したりすることができる。これにより、ユーザは、例えば、ミシン14から離れた場所にいたとしても、携帯端末13を用いてミシン14のミシン関連情報を確認することができ、ユーザの利便性が向上する。
【0054】
また、ミシンシステム10は、複数台のミシン14でパソコン12内のフォルダを共有することができる。これによれば、例えば、特定のミシンで使用するように作成した刺繍模様データを、パソコン12内の共有フォルダに保存することで、他のミシンからもその刺繍模様データにアクセスすることができる。そのため、ユーザの利便性がさらに向上する。
【0055】
そして、ミシン14は、パソコン12に記憶されている刺繍模様データ53にアクセスして加工布に縫製模様を形成する。これにより、ミシン14の記憶装置45の記憶容量を必要以上に大きくしなくてもよい。
【0056】
(その他の実施形態)
本発明は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な拡張、変更が可能である。
ミシンシステム10を構成するミシン14は、1台であっても良いし、3台以上であっても良い。また、ミシン14は、複数の針棒を有する多針刺繍ミシンに限らず、1本の針棒を有する刺繍ミシンであっても良いし、刺繍機能を有していないミシンであっても良い。また、ミシンシステム10は、多針刺繍ミシン、1本の針棒を有する刺繍ミシン、刺繍機能を有していないミシンを適宜組み合せた構成としても良い。
【0057】
また、複数のミシンシステム10を、インターネット16を介して相互に通信可能に接続することもできる。
また、制御装置26の記憶装置45は、コネクタ252に接続されるUSBメモリなどの外部記憶媒体で構成しても良い。
また、アクセス処理部46や開示処理部47を動作させるためのプロトコルは、NetBIOS、NetBEUI、HTTPに限られるものではない。
また、メール処理部48を動作させるためのプロトコルは、SMTPやPOP3に限られるものではない。
【符号の説明】
【0058】
10 ミシンシステム
12 パソコン(コンピュータ)
121 液晶ディスプレイ(報知手段)
13 携帯端末(コンピュータ)
131 液晶ディスプレイ(報知手段)
14 ミシン
19 サーバ(コンピュータ)
41 タッチパネル(入力手段)
46 アクセス処理部(アクセス手段)
47 開示処理部(開示手段)
48 メール処理部(電子メール送受信手段)
50 通信処理部(接続手段)
53 刺繍模様データ(縫製関連情報)
56 ウェブブラウザ(受付手段)
57 エラーメッセージ(ミシン関連情報)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫製に関する縫製関連情報に基づいて加工布に縫製模様を形成するミシンと、前記縫製関連情報を記憶するコンピュータとを接続して構成されるミシンシステムであって、
前記ミシンは、
前記コンピュータに接続する接続手段と、
ユーザが操作を入力する入力手段と、
前記入力手段に入力された操作に応じて、前記コンピュータに記憶されている前記縫製関連情報に前記接続手段を介してアクセスするアクセス手段と、
前記ミシンに関するミシン関連情報を前記接続手段を介して前記コンピュータに開示する開示手段と、
を備えることを特徴とするミシンシステム。
【請求項2】
前記アクセス手段及び前記開示手段は、プロトコルに基づいて動作することを特徴とする請求項1記載のミシンシステム。
【請求項3】
前記ミシンは、
前記コンピュータから電子メールによって送信される前記縫製関連情報を受信するとともに、前記ミシン関連情報を電子メールによって前記コンピュータに送信する電子メール送受信手段をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2記載のミシンシステム。
【請求項4】
前記コンピュータは、
前記ミシンが開示した前記ミシン関連情報を受け付ける受付手段と、
前記受付手段が受け付けた前記ミシン関連情報を報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする請求項1から3いずれか一項記載のミシンシステム。
【請求項5】
縫製に関する縫製関連情報を記憶するコンピュータと接続されることでミシンシステムを構成するミシンであって、
前記コンピュータに接続する接続手段と、
ユーザが操作を入力する入力手段と、
前記入力手段に入力された操作に応じて、前記コンピュータに記憶されている前記縫製関連情報に前記接続手段を介してアクセスするアクセス手段と、
前記ミシンに関するミシン関連情報を前記接続手段を介して前記コンピュータに開示する開示手段と、
を備えることを特徴とするミシン。
【請求項6】
前記アクセス手段及び前記開示手段は、プロトコルに基づいて動作することを特徴とする請求項5記載のミシン。
【請求項7】
前記コンピュータから電子メールによって送信される前記縫製関連情報を受信するとともに、前記ミシン関連情報を電子メールによって前記コンピュータに送信する電子メール送受信手段をさらに備えることを特徴とする請求項5又は6記載のミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−200265(P2012−200265A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64349(P2011−64349)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】