ミスフィット転位を有する部分的または完全に弛緩したAlInGaN層による半極性窒化物量子井戸の異方性ひずみ制御
下側にある層上に異方性歪みを有する活性層を備え、該下側にある層内の格子定数および歪みが、該活性層内の異方性歪みが下側にある層によって調節されるように、ミスフィット転位の存在によって少なくとも1つの方向に部分的または完全に緩和される、III族窒化物ベースの光学素子のためのエピタキシャル構造。一実施形態では、基板は、半極性GaN基板であり、下層は、半極性平面であるGaN基板の上面上に蒸着されるか、または成長させられ、下層は、下層の面内c投影に平行である方向に沿って緩和され、下層は、下層のm軸方向に沿って緩和されず、活性層は、半極性平面である下層の上面上に蒸着または成長させられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、次の同時継続の同一人に譲渡された米国仮特許出願の米国特許法第119条第(e)項の利益を主張し、これらの出願は、本明細書に参照により援用される:Hiroaki Ohta、Feng Wu、Anurag Tyagi、Arpan Chakraborty、James S.Speck、Steven P.DenBaars、およびShuji Nakamuraによる米国仮特許出願第61/236,059号(名称「ANISOTROPIC STRAIN CONTROL IN SEMIPOLAR NITRIDE QUANTUM WELLS BY PARTIALLY OR FULLY RELAXED ALUMINUM INDIUM GALLIUM NITRIDE LAYERS WITH MISFIT DISLOCATIONS」、2009年8月21日出願、代理人整理番号30794.318−US−P1(2009−743−1))、ならびにHiroaki Ohta、Feng Wu、Anurag Tyagi、Arpan Chakraborty、James S.Speck、Steven P.DenBaars、およびShuji Nakamuraによる米国仮特許出願第61/236,058号(名称「SEMIPOLAR NITRIDE−BASED DEVICES ON PARTIALLY OR FULLY RELAXED ALLOYS WITH MISFIT DISLOCATIONS AT THE HETEROINTERFACE」、2009年8月21日出願、代理人整理番号30794.317−US−P1 (2009−742−1))。
【0002】
本願は、次の同時係属の同一人に譲渡された米国実用特許出願に関連し、この出願は、本明細書に参照により援用される:Hiroaki Ohta、Feng Wu、Anurag Tyagi、Arpan Chakraborty、James S.Speck、Steven P.DenBaars、およびShuji Nakamuraによる米国仮特許出願第xx/xxx,xxx号(名称「SEMIPOLAR NITRIDE−BASED DEVICES ON PARTIALLY OR FULLY RELAXED ALLOYS WITH MISFIT DISLOCATIONS AT THE HETEROINTERFACE」、本願と同日の出願、代理人整理番号30794.317−US−U1(2009−742−2))であって、この出願は、Hiroaki Ohta、Feng Wu、Anurag Tyagi、Arpan Chakraborty、James S.Speck、Steven P.DenBaars、およびShuji Nakamuraによる米国仮特許出願第61/236,058号(名称「SEMIPOLAR NITRIDE−BASED DEVICES ON PARTIALLY OR FULLY RELAXED ALLOYS WITH MISFIT DISLOCATIONS AT THE HETEROINTERFACE」、2009年8月21日出願、代理人整理番号30794.317−US−P1(2009−742−1))の米国特許法第119条第(e)項の利益を主張する、出願。
【0003】
(1.発明の分野)
本発明は、発光ダイオード(LED)およびレーザダイオード(LD)等の、光学素子に関し、活性層内の歪みを調節するテンプレート上に成長させ、それによって、活性層のバンド構造および発せられた光の分極を調節する。
【背景技術】
【0004】
(2.関連技術の記述)
(注:本願は、明細書の全体を通して示されるように、角括弧内の1つ以上の参照番号、例えば[x]によって多数の異なる刊行物を参照する。これらの参照番号による順序で示されるこれらの異なる刊行物の一覧は、以下の「参考文献」という表題の項に見出すことができる。これらの刊行物のそれぞれは、参照することにより本明細書に組み込まれる。)
参照[1−3(非特許文献1−3)]では、量子井戸(QW)内の歪みの存在が、QWのバンド構造(自発的発光の分極および利得)を調節可能であることが示された。これは、既知の現象である(例えば、[4(非特許文献4)]を参照)。一般に、六方晶ウルツ鉱型結晶構造を有する半極性の窒素物エピタキシャル層の歪みは、異なる格子パラメータのaおよびcによる異方性(格子異方性)である。参照[5(非特許文献5)]は、以下の格子定数の値を報告する:a(AlN)=3.112オングストローム、a(GaN)=3.189オングストローム、a(InN)=3.54オングストローム、c(AlN)=4.982オングストローム、c(GaN)=5.185オングストローム、およびc(InN)=5.705オングストローム。
【0005】
しかしながら、この格子異方性は、考慮されるエピタキシャル層と考慮される層をコヒーレントに成長させる基板との間の格子定数の差異によって、自動的に決定される。したがって、本発明より前には、QW内の歪み異方性を制御する方法がなかった。
【0006】
図1は、山口氏の研究[1(非特許文献1)]において使用された座標系を図示し、X2は、c軸投影であり、θは、基板の配向を示す(例えば、θ=0は、c平面基板に対応する)。図2(a)〜(c)は、歪んでいないQW、歪んだ厚いGaN膜、および面内等方二軸性歪みを有する圧縮歪みQWの面内発光の分極度の基板配向依存性を示す。薄いQWによる量子閉じ込め効果は、図2(a)に示されるように、X2に平行な発光の分極度を生じる。一方で、圧縮歪みは、図2(b)に示されるように、X1に平行な発光の分極を生じる。図3は、GaN基板上にコヒーレントに成長させたIn0.3GaNのQWの面内発光の分極度の基板配向依存性を示す。したがって、図2および3は、異なる歪み(例えば、異方性歪み)の状態によって生じる異なる発光の分極またはバンド構造を示す。図2および3に示されるこれらの計算において、格子定数の差異は、それぞれ、aおよびc格子パラメータに対して、3.3%および3.0%であると仮定される。
【0007】
したがって、歪み異方性が調節され得る場合、本発明に示されるように、LED/LDにおける光学的特性は、高い自由度で変更させることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】A.A.Yamaguchi,Phys.Stat.Sol (c)5,2329(2008)
【非特許文献2】A.A.Yamaguchi,Appl.Phys.Lett.94,201104(2009)
【非特許文献3】A.A.Yamaguchi,Jpn.J.Appl.Phys.46,L789(2007)
【非特許文献4】S.L.Chuang,Physics of Optical Devices,P149
【非特許文献5】I.Vurgaftman and J.Meyer,J.Appl.Phys.94,3675(2003)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光学/電子素子の半極性窒化物ベースの活性層内の異方性を制御する方法を提供する。従来、全ての窒化物ベースの素子は、素子層を通過する転位が、不十分な素子性能を引き起こすので、一般的に、コヒーレントに成長させられている。本発明の発見に基づいて、ミスフィット転位(MD)は、素子層から離れて位置する領域/界面に制限され得る。したがって、本発明は、素子層内の歪み制御を可能にする一方で、高度の素子性能/効率を維持する。
【0010】
先行技術における制限を克服するために、および本明細書の熟読および理解に応じて明白となるであろう他の制限を克服するために、III族窒化物ベースの光学素子のためのエピタキシャル構造は、III族窒化物の下側にある層(本開示を通して下層とも呼ばれる)上に形成された異方性歪みを有するIII族窒化物活性層を備え、下側にある層の格子定数および歪みは、活性層の異方性歪みが、下側にある層によって調節されるように、下層下のヘテロ界面におけるミスフィット転位の存在により、少なくとも1つの方向において基板に対して部分的または完全に緩和される。
【0011】
下層は、一般的に、第1の方向に沿って緩和され、下層は、第1の方向に直角である第2の方向に沿っては緩和されない。
【0012】
一実施形態では、基板は、半極性GaN基板であり、下層は、半極性平面であるGaN基板の上面上に蒸着されるか、または成長させられ、下層は、下層の面内c投影に平行である方向に沿って緩和され、下層は、下層のm軸方向に沿って緩和されず、活性層は、半極性平面である下層の上面上に蒸着または成長させられる。
【0013】
基板は、無極性または半極性であってもよく、例えば、無極性または半極性素子を生じる。
【0014】
MDは、活性層内の歪みが、活性層の第1の方向に第1の歪みを有し、活性層の第2の方向に第2の歪みを有するように、異方性歪みを調節するように配置され得る。
【0015】
第1の方向は、面内c投影(X2)に平行であってもよく、第2の方向は、第1の方向(例えば、m軸方向)に直角であってもよく、MDは、第1の方向に沿っていてもよい。
【0016】
下層が、基板上に成長させられ、下層の格子定数および歪みが、基板に対して部分的または完全に緩和され得、その結果、下層の格子定数が、基板の格子定数と同じ値に拘束されるのではなく、むしろその自然値になり、下層の歪みがなくなる。
【0017】
活性層は、AlInGaNのQWまたは多重量子井戸(MQW)(例えば、無極性または半極性QW)であってもよい。例えば、下側にある層は、0を超えるIn組成を有するInAlGaNであってもよく、活性層は、20%を超えるIn組成を有するInGaNを備え得る。QWは、QWが、緑色スペクトル領域においてピーク波長を有する光を放出するようなIn組成および厚さを有し得る。
【0018】
活性層は、3ナノメートルを超える厚さを有する1つ以上のQWを備えることができ、MDは、QWによって発せられる光が、正味のX2分極を有するように、異方性歪みを調節するように配置され得る。
【0019】
本発明は、III族窒化物ベースの光学素子のためのエピタキシャル構造を製造する方法をさらに開示し、本方法は、基板上にIII族窒化物下層を形成するステップであって、下側にある層の格子定数および歪みが、下層下のヘテロ界面でのMDの存在により、少なくとも1つの方向で基板に対して部分的および完全に緩和されるようになる、ステップと、下側にある層上にIII族窒化物活性層を形成するステップであって、活性層内の異方性歪みが、下側にある層によって調節または制御されるようになる、ステップとを備える。
【0020】
本方法は、下層と基板または下層下の層との間のヘテロ界面を形成することによって、MDを形成するステップをさらに備え得、下層および基板、または下層および層は、それぞれ、異なるIII族窒化物合金組成を有し、ミスフィット転位は、ヘテロ界面周辺に局所化され、それによって、活性層周辺の層内のミスフィット転位を排除する。
【0021】
本方法は、下層を非コヒーレントに基板上に成長させることによって、下層を形成するステップと、活性層をコヒーレントに下層上に成長させることによって、活性層を形成するステップと、をさらに備え得る。下層下のさらなる層は、コヒーレントに基板上に成長させる別の下層であり得る。
【0022】
異方性歪みは、例えば、下層のバンド構造が制御され、活性層のバンド構造が制御されるように、下層内の方向の関数として、下層の種々の程度の緩和によって調節され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
全体を通して類似参照数字が対応する部品を表す図面を参照する。
【図1】図1は、山口氏の研究[1]に使用された座標系を図示する。
【図2】図2は、(a)歪んでいないQW、(b)歪んだ厚いGaN膜、および(c)面内等方二軸性歪みを有する圧縮歪みQWの面内発光の分極度の基板配向依存性を示し、ゼロ度は、極性c平面(0001)配向に対応する一方で、90度は、無極性a(11−20)およびm(10−10)平面配向に対応し、中間の角度は、半極性配向に対応する。
【図3】図3は、コヒーレントにGaN基板上に成長させたInGaN QWの面内発光の分極度の基板配向依存性を示す。
【図4】図4は、(11−22)GaN上に成長させたGaN/AlGaN超格子(SL)の下方部分の界面の周辺でg=01−10の回折条件で撮影した、ヘテロ界面のMDを示す、透過型電子顕微鏡(TEM)の明視野画像であり、目盛りは100ナノメートル(nm)である。
【図5】図5(a)は、[1−100]晶帯軸周辺のTEM画像であり、SLを含む全ての半極性(11−22)LD素子エピタキシャル層(上から下まで)を見ることができ、目盛りは0.2マイクロメートル(μm)であり、図5(b)は、対応する電子ビーム回折パターン(DP)を表す[6]。
【図6】図6(a)〜(c)は、前述の素子(図4、および図5(a))の異なるエピタキシャル層のTEM画像を示し、(a)は、100周期のp−AlGaN/GaNの超格子および厚さ100nmのp−GaNも示し、超格子の中のp−AlGaNは厚さ3nmであり、超格子の中のGaNは厚さ2nmであり、(b)は、2周期のInGaNのQWを有する活性領域であり、(c)は、QWの下側のn−AlGaN/GaNのSLであり、目盛りは100nmである。
【図7】図7は、黒色矢印が付されたヘテロ界面で主に生成され、破線矢印が付された層の中にわずかに見出される、MDを示すTEM画像であり、目盛りは50nmである。
【図8】図8(a)は、晶帯軸[2−1−10]から撮影したTEM画像であり、目盛りは0.2μmであり、図8(b)は、対応する電子ビームDPを表す。
【図9】図9(a)は、g=01−10で撮影したTEM明視野画像であり、MDは、[1−100]から[2−1−10]への試料の傾斜に起因するセグメントとみなされ、目盛りは50nmであり、図9(b)は、対応する電子ビームDPを表す。
【図10】図10は、本発明の実施形態に対応する(11−22)GaN上に成長させたエピタキシャル構造の概略断面図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態による、(11−22)GaN上に成長させた光学素子構造の概略断面図である。
【図12】図12は、図11の光学素子における層の上面図である。
【図13】図13は、本発明による、(11−22)GaN上に成長させた素子の(10−10)平面に沿う概略断面図である。
【図14】図14は、図13の素子の(11−23)平面に沿う概略断面図である。
【図15】図15は、本発明の方法を示す、フローチャートである。
【図16】図16は、山口氏による、AlInGaNの四元合金基板に配向された(11−22)上で(a)2nm、(b)3nm、および(c)10nmの厚さIn0.3GaN QWにおける最大光学マトリクス要素をもたらす、分極の合金組成依存性を示す[1]。
【図17】図17は、コヒーレントに成長させたエピタキシャル層を用いる素子を示す。
【図18】図18は、本発明に記載されるように、非コヒーレントに成長させたテンプレートを用いて成長させた素子を示す。
【図19】図19(a)は、m平面のLDを図示し、m軸方向、11−22軸方向、および発光の方向を示し、図19(b)は、半極性(11−23)のLDを図示し、11−23軸(c投影)、11−22軸方向、および発光の方向を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の発明を実施するための形態において、本明細書の一部を形成し、および本発明が実践され得る特定の実施形態を例示目的で示す添付図面を参照する。本開示の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が用いられてもよく、また、構造的な変更が行われてもよいことを理解されたい。
【0025】
(概要)
別の層(Y)(層Yは、それ自体がエピタキシャル、または基板であり得る)上に成長させたエピタキシャル層(X)は、Yに対してコヒーレントであること、部分的に緩和、または完全に緩和されることができる。コヒーレントな成長の場合、Xの面内格子定数は、下側にある層Yと同一に拘束される。Xが完全に緩和された場合、Xの格子定数は、それらの自然の(すなわち、いかなる歪みもない)値であると仮定する。XがYに対してコヒーレントでもなく、完全に緩和されない場合、部分的に緩和されたと考えられる。一部の場合、基板は、いくらかの残存歪みを有し得る。
【0026】
したがって、部分的に緩和された場合、下層の格子定数は、その自然の値と完全に同じではない。さらに、時には、基板は微小歪みを有することもあるが、この歪みは極めて小さい。
【0027】
ヘテロ界面での格子定数不整合によって生じるMDは、異なる合金組成を有するAlInGaN膜を用いて製造され得る。その効果は、MDが、空間的にヘテロ界面の近辺に制限され、それによって、QW周辺の素子層内のMDを排除し、高度な素子性能を維持することができることである。
【0028】
(技術的説明)
(命名法)
(Al、Ga、In)N、III族窒化物、またはAlInGaNという用語は、本明細書で使用される場合、単一の種、Al、Ga、およびInのそれぞれの窒化物、ならびにそのようなIII族金属種の二元、三元、および四元組成を含むと広義に解釈される。したがって、(Al、Ga、In)N、AlInGaN、またはIII族窒化物という用語は、そのような命名法に含まれる種として、化合物AlN、GaN、およびInN、ならびに三元化合物AlGaN、GaInN、およびAlInN、および四元化合物AlGaInNを包含する。(Ga、Al、In)構成種のうちの2つ以上が存在するとき、(組成に存在する(Ga、Al、In)構成種のそれぞれを表す相対モル分率に関して)化学量論的割合ならびに「化学量論外」割合を含む、全ての可能な組成を、本発明の広義の範囲内で採用することができる。したがって、主にGaN材料に関する、以降の本発明の論議は、種々の他の(Al、Ga、In)N材料種の形成に適用可能であることが理解されるであろう。さらに、本発明の範囲内の(Al、Ga、In)N材料は、軽微な数量のドーパントおよび/または他の不純物あるいは包含物質をさらに含んでもよい。
【0029】
同様な様式において、AlGaInBNは、本発明にも使用され得る。
【0030】
(素子構造)
図4、5(a)、6(a)〜(c)、7、8(a)、および9(a)は、MD400が、半極性(11−22)窒化物ベースのエピタキシャル層404、406中のヘテロ界面402に存在するという発見を示すTEM画像である。この新発見において、MD400の存在は、格子定数不整合を有する(異なる合金および/または合金組成を有する)層404、406の間のヘテロ界面周辺だけに制限された。言い換えれば、ヘテロ界面402に制限されたMD400を有するエピタキシャル層は、層404を通る、および成長方向に向かう(ヘテロ界面402に直角である)明らかな転位も有しなかった。これは、本発明が、元の基板406上に、緩和された格子定数を有する、転位のない合金テンプレートを得るための方法を提供することを示す。
【0031】
MDによって、面内方向(転位の線の方向に直角である)に沿った格子定数が緩和される。緩和は、直角な面内方向において生じなかった(すなわち、コヒーレンスが維持された)。
【0032】
図4は、(11−22)GaN406上に成長させられたGaN/AlGaN SL404の下方部分の界面402の周辺でg=01−10の回折条件で撮影した、ヘテロ界面402のMD400を示す、TEMの明視野画像である。
【0033】
図5(a)は、[1−100]晶帯軸周辺のTEM画像であり、SLを含む全ての半極性(11−22)LD素子エピタキシャル層(上から下まで)を見ることができ、図5(b)は、対応する電子ビーム回折パターン(DP)を表す[6]。
【0034】
図6(a)〜(c)は、前述の素子の異なるエピタキシャル層のTEM画像を示し、(a)は、100周期のp−AlGaN/GaNの超格子600および厚さ100nmのp−GaN602を示し、超格子600の中のp−AlGaNは厚さ3nmであり、超格子600の中のGaNは厚さ2nmであり、(b)は、2周期のInGaNのQWを有する活性領域604であり、(c)は、QW604の下側のn−AlGaN/GaNのSL606である。
【0035】
図7は、n−AlGaN/GaNのSL700と、SL700上のn−GaN層702と、n−GaN層702上のn−InGaN層704と、n−InGaN層704上のInGaNのQW706と、QW706上のp−AlGaN電子ブロッキング層(EBL)708と、EBL708上のp−InGaN層710と、p−InGaN層710上のp−GaN層712と、p−GaN層712上のp−AlGaN/GaNのSL714とを備える、エピタキシャル構造を示すTEM画像である。TEM画像は、黒色矢印718a〜dが付されたヘテロ界面で主に生成され、破線矢印720が付された層の中にわずかに見出される、MD716をさらに示す。
【0036】
図8(a)は、晶帯軸[2−1−10]から撮影したTEM画像であり、図8(b)は、対応する電子ビームDPを表す。
【0037】
図9(a)は、g=01−10で撮影したTEM明視野画像であり、MD900は、[1−100]から[2−1−10]への試料の傾斜に起因するセグメントとみなされ、図9(b)は、対応する電子ビームDPを表す。
【0038】
図10は、III族窒化物ベースの光学素子1000のエピタキシャル構造を図示し、下側にある層1006(層IIまたはBとも呼ばれる、例えば、5〜10%のInを有するInGaN層)上に異方性歪みを有する1つ以上の活性層1002、1004(層Iまたは層Aとも呼ばれる、例えば、30%のInを有するInGaN層)を備え、下側にある層1006内の格子定数および歪みは、MD1008の存在によって、少なくとも1つの方向に部分的または完全に緩和される。図10において、下層1006は、[11−23]方向に沿って緩和されるが、m方向[10−10]に沿っては緩和されない。下層1006は、下層1006下のヘテロ界面1010でのMD1008によって緩和され得る。この効果は、活性層1002、1004の歪み(特に、歪み異方性)が、下側にある層1006によって調節されることである。このような様式において、バンド構造、光学マトリクス要素、自発的発光の分極、および利得を、調節することができる。層I 1002、1004の歪みは、部分的に放出することができ、全歪みは、層II 1006を伴わない場合と比較して、層I1002、1004においてより小さくなり得る。歪みの量は、使用された実際の組成および緩和の程度に依存してもよい。一実施形態では、それは、歪みの約50%まで可能であり得る。図10の例では、層1006は、標準的な再成長GaNである層1012(または層IIIもしくはC)上に成長させられる。層IIIは、(11−22)GaN基板1014上に成長させられ、5〜10%のInを有するInGaN層1016、1018は、層1002のいずれかの側面上に成長させられる。層1016は、QW間の障壁であり、層1018は、p型層であり、層1006は、n型層である。
【0039】
さらに具体的には、QW1002、1004(例えば、層A)の歪み異方性は、QW1002、1004のバンド構造を任意に調節することができるように、局所化されたMD1008(図4、5(a)−(b)、6(a)−(c)、7、8(a)−(b)、および9(a)−(b)も参照)を有する部分的または完全に緩和された下側にある層1006(層B)によって制御され得る。ε11−23(面内c投影に沿った歪み)は、層Aと層Bとの間の格子定数の差によって決定される。ε10−10(m軸に沿った歪み)は、層Aと層Cとの間の格子定数差によって決定される。[11−22]方向および[11−23]方向(面内c投影に平行(||))は、図10の矢印によって示し、[10−10]方向(図の平面と直角であり、黒丸によって示される)も図10に示す。
【0040】
活性層Aは、例えば、AlInGaNのQWまたはMQWであってもよい。効果は、高放射再結合速度、高利得、およびQW閉じ込め効果によるさらなるバンド構造調節である[1−3]。
【0041】
別例では、層IIは、InAlGaN(0を超えるIn組成)であり、層Iは、InGaN(20%を超えるIn組成)である。この効果は、発光分極比が、青色、緑色、琥珀色LED/LDにおいて制御することができるというものである。本発明は、このスペクトル領域の光学マトリクス要素および利得を修正することができる。
【0042】
図11は、In0.1GaN下層1104に配向された(11−22)上で、活性層としてIn0.3GaNのQW1102を備える光学素子1100(例えば、LEDまたはLD)の例を示す。In0.1GaN下層1104は、「緩和される」と付された矢印の方向に緩和されるが、m軸方向に沿って緩和されない(したがって、緩和は、1つの方向に生じる)。また、MD1106、[11−22]方向([11−22]と付された矢印によって示される)、および[11−23]方向(面内c投影方向に平行(||)であり、[11−23]{|| 面内c投影}と付された矢印によって示される)も示す。
【0043】
図12は、図11の下層1104(例えば、In0.1GaN、または10%〜30%の範囲内にIn組成を有するInGaN)の上面図である。m軸方向、[11−23]方向、InGaNのm軸方向に沿った格子不整合(Δm)、InGaNの面内c軸投影方向に沿った不整合(Δc)を全て、図12の矢印によって示す。m軸に沿った歪みεmは、InGaN下層のバンド構造の制御を可能にし、活性層のバンド構造([1]、[2]、および[4])に影響を及ぼす、面内c軸投影に沿った歪みεcよりも大きい。
【0044】
図13は、構造1300のm平面(10−10)の断面であり、In0.1GaN層1304上に、活性層としてIn0.3GaNのQW1302を備える。In0.1GaN層1304は、(11−22)GaN基板1312の上面(上面は、(11−22)半極性平面である)上にエプタキシャルに成長させたIn0.3GaN下層1306上に成長させ、それによって、GaN基板1308とIn0.3GaN下層1306との間に、MD1312を有するヘテロ界面1310を形成する。In0.3GaN下層1306は、面内c投影[11−23]の方向に([11−23]{|| 面内c投影}と付された矢印によって示される)緩和される(歪みがない)。In0.1GaN/In0.3GaN界面1314も、MDを有する可能性がある。[11−22]方向も、[11−22]と付された矢印によって示される。
【0045】
図14は、図13の構造の断面であるが、(11−23)平面に沿って、III族窒化物のm軸の方向([10−10]と付された矢印)を示す。In0.3GaNを含むInGaN下層1306は、m軸に沿って緩和されず、これは、MDがないことによって証明された。この場合、歪みεmは、In0.3GaN1306とGaN1308との間の格子定数の差異によって生じ、ε11−23(またはεc)=0およびεm<0(すなわち、圧縮歪み)をもたらす。[11−22]方向も、[11−22]と付された矢印によって示される。
【0046】
(プロセスステップ)
図15は、本発明のエピタキシャル構造(例えば、III族窒化物ベースの光学素子構造)を製造する方法を示すフローチャートである。方法は、以下のステップを含む。
【0047】
ブロック1500は、後に成長させたテンプレート層を有するヘテロ界面を形成する高品質半極性GaN基板(ブロック1502)を提供することを表す。基板は、(11−22)、(10−1−1)、または(10−1−3)平面等であるが、それらに限定されない他の配向も可能であるが、例えば、(11−22)基板等の半極性GaN基板であってもよい。バルクAlInGaN、高品質GaN基板、m−サファイヤ、またはスピネル基板等であるが、それらに限定されない他の基板が、使用され得る。無極性基板も使用され得る。
【0048】
ブロック1504は、基板上、例えば、基板の上面上(上面は、例えば、半極性平面であり得る)の1つ以上の層、下層、またはテンプレート層を形成する(例えば、成長または蒸着させる)ステップを表す。形成するステップは、基板上のテンプレートまたは下側にある層を非コヒーレントに成長させ、それによって、緩和された格子定数を有するテンプレート層を結果として生じるステップを備え得る。例えば、下層は、下側にある層の格子定数および歪みが、下層下のヘテロ界面1502でのMDの存在により、少なくとも1つの方向に基板に対して部分的または完全に緩和されるように、基板上に形成され得る。このようにして、下層の格子定数は、少なくとも1つの方向に、基板の格子定数と同じ値に拘束されるのではなく、むしろその自然値になり、下層は、少なくとも1つの方向に歪みがなくなる。
【0049】
MDは、下層と基板または下層下の層との間のヘテロ界面によって生じ得、下層および基板、または下層および下層下の層は、それぞれ、異なるIII族窒化物合金組成を有し、MDは、ヘテロ界面周辺に局所化され、それによって、活性層周辺の層内のMDを排除する。
【0050】
下層は、一般的に、第1の方向に沿って緩和されるが、第2の方向に沿って緩和されない。第1の方向は、下層の面内c投影(X2)に平行であってもよいが、第2の方向は、第1の方向(例えば、m軸方向)に直角であってもよい。
【0051】
MDは、緩和される第1の方向に沿っている。MDは、活性層内の歪みが、第1の方向に第1の歪みを有し、第2の方向に第2の歪みを有するように、異方性歪みを調整するように配置され得る。面内c投影(X2)に平行である第1の方向に沿った、下層の第1の歪みは、第2の方向に沿っている下層の第2の歪みよりも、小さくてもよい。
【0052】
したがって、異方性歪みは、下層内の方向の関数としての種々の程度の下層の緩和によって調節され得る。このようにして、下層および活性層のバンド構造(ならびに本開示を通して論じられるような他のパラメータ)はともに、例えば、制御され得る。
【0053】
一般的に、c投影に平行な面内格子定数は緩和されるが、緩和される方向および緩和されない方向は、下層および/または基板の半極性配向および/または合金組成に依存する。一般に使用される半極性平面について、コヒーレントでない格子定数は、一般的に、c軸の投影(a、cのどちらとも異なる)に平行な面内格子定数である。
【0054】
このように、緩和される方向は、常時c投影に沿っているとは限らず、また、緩和されない方向は、常時c投影に対して直角であるとは限らない。しかしながら、基底面スリップは、半極性ウルツ鉱型III族窒化物の結晶構造のため、支配的な歪み緩和機構であるので、おそらくは、c投影に対して直角である線方向を有するMDが最初に形成される。結果的に、初期の緩和は、c投影に沿ったものである(緩和方向は、MD方向に対して直角である)。膜の歪みエネルギーが十分に大きい場合、c軸に直角な面内方向も、緩和を受けることができる。一実施形態では、本発明は、両方向についてMDの形成のための臨界膜厚を計算してもよい。次いで、層厚さが対応する臨界膜厚に到達したときにMDが生じる。したがって、ある方向について層厚さが臨界膜厚に到達すると、層は、対応する方向に緩和される。
【0055】
緩和の程度は、格子定数および配向および格子の方向による機械的性質に依存してもよい[6]。
【0056】
下層下のさらなる層は、コヒーレントに基板上に成長させる他の下層を含み得る。上記の層「下層」は、「下層」が格子定数の緩和を生じるため、基板とは異なる格子定数を有する「下層」上にコヒーレントに成長させられる。層の厚さが臨界厚さよりも小さい限り、この材料は、コヒーレントに成長させられる。
【0057】
ブロック1506は、下側にある層またはテンプレート層上に素子構造(例えば、活性層)を成長させることを示す。活性層は、下層の上面上に蒸着させ得、下層の上面は、半極性平面である。素子構造は、テンプレート層上に転位を伴わずに成長させてもよい。活性層は、活性層内の異方性歪みが、下側にある層によって調節または制御されるように、下側にある層上に形成され得る。
【0058】
下側にある層は、0を超えるIn組成を有するInAlGaNであり得、活性層は、20%を超えるIn組成を有するInGaNを備え得る。活性層は、3ナノメートルを超える厚さを有する1つ以上のQWを備え得、MDは、QWによって発せられる光が、正味X2分極を有するように、異方性歪みを調節するように配置され得る。
【0059】
QWは、QWが、緑色スペクトル領域においてピーク波長を有する光を放出するように、In組成および厚さを有し得る。QWは、半極性または無極性QWであってもよい。
【0060】
活性層を形成するステップは、活性層を下層上にコヒーレントに成長させるステップを含み得る。
【0061】
ブロック1508は、方法の最終結果を表し、光学素子等の素子のためのエピタキシャル構造には、MDを有するヘテロ界面上、または部分的に緩和された、もしくは完全に緩和されたテンプレート層上に活性層を備える。III族窒化物ベースの光学素子のためのエピタキシャル構造は、下側にある層上に形成された異方性歪みを有する活性層を備え得、下側にある層の格子定数および歪みは、活性層の異方性歪みが、下側にある層によって調節されるように、下層下のヘテロ界面でのMDの存在により、少なくとも1つの方向で基板に対して部分的または完全に緩和される。
【0062】
構造は、例えば、一般的に、従来の分子ビームエピタキシ(MBE)または有機金属蒸着(MOCVD)を用いて成長させるが、他の蒸着方法も可能である。
【0063】
素子構造は、例えば、光学素子または電子素子(例えば、トランジスタ)であってもよい。光電子/電子素子を製造するために、当技術分野におおいて周知であるような、他の層、接点、または要素を加えてもよい。
【0064】
また、無極性基板上に無極性素子を製造してもよい。
【0065】
(利点および改良点)
山口氏の論文[1]では、X1、X2、およびX3の中で最強の要素は、InGaNまたは図16に示されるように、別の四元基板([1]から得られた)を用いることによって変更する。この場合、基板上でのコヒーレント成長が仮定された。
【0066】
本発明は、QWの歪みを調節し、バンド構造(すなわち、発光の分極、利得等)をさらに調節するために、1つの方向にコヒーレンスを切断することができる。別の観点から、本発明は、緩和された格子定数の合金ベースのテンプレート(基板)を達成する。
【0067】
半極性(11−22)QWのための歪みの緩和により、本発明は、(1)厚いQWを有するX2分極を容易に得ること(劈開されたm平面の面を有するm軸空洞LDを製造することが可能である)、および(2)同じIn組成を有するLDまたはLEDからより長い波長の放出を得ること(すなわち、所与のIn組成について、本発明は、本発明によって製造されない素子よりも光学素子からより長い波長の放出を得ることができる)が可能になる。本発明は、例えば、緑色光に対応する波長を放出するLDまたはLEDを実現するためにはかなり有効である。
【0068】
先行の技術[5]は、図17に示されるように、GaN1700およびGaN1700上に素子層1702(InGaNのQW1704を含む)をコヒーレント1706に成長させる。コヒーレント成長において、(格子定数の)格子不整合Δは、歪み(例えば、InGaNの場合、圧縮歪み)を生じる。これは、InGaN活性層(例えば、1704)内の大きな圧縮歪みεを生じる。言い換えれば、格子不整合Δ(Δは、GaN基板1700の格子定数−InGaNのQW1704の格子定数である)は、負であり、InGaN層1704内の圧縮または圧縮歪みεに対応する)。上記の計算において、GaNの格子定数a=3.189Å、およびGaNの格子定数c=5.185Åが、使用され得る[5]。
【0069】
本発明は、図18に示されるように、先行の技術と比較して、より小さな圧縮歪みを達成し得る。図18において、GaN基板1800またはテンプレートは、コヒーレント1802に成長させ、テンプレートA(InGaN1804等)は、GaN基板1800またはテンプレート上に非コヒーレント1806に成長させる。素子層1808(InGaNのQW1810を含む)は、次いで、テンプレートA 1804上にコヒーレント1812に成長させ得る。圧縮歪みは、図17に示される場合よりも小さい。具体的には、MD1814を有する界面上の層A1804において、MD線の方向と直角である方向1816に沿って格子定数が緩和される。格子不整合Δ’(Δ’は、テンプレート層1804の格子定数−InGaNのQW1810の格子定数である)は、図17のΔよりも小さい。加えて、InGaNのQW1810内の歪みε’は、活性層1704内の歪みεよりも小さい。
【0070】
上記の計算において、GaNの格子定数a=3.189Å、GaNの格子定数c=5.185Å、InNの格子定数a=3.54Å、およびInNの格子定数c=5.705Åが使用され得る[5]。
【0071】
Δ’、Δε’、およびεは、緩和された方向1816に沿って計算される。
【0072】
GaN光電子素子の中の分極効果を低減または可能な限り除去するアプローチは、結晶の半極性平面上で素子を成長させるものである。「半極性平面」という用語は、非ゼロh、i、またはkミラー指数および非ゼロlミラー指数の2つをどちらも有する、あらゆる平面を指すために使用することができる。したがって、半極性平面は、(hkil)ミラー−ブラベ指数定義則において、非ゼロのh、k、またはi指数および非ゼロのl指数を有する結晶平面として定義される。c平面GaNヘテロエピタキシにおける半極性平面のいくつかの一般的に観察される例は、(11−22)、(10−11)、および(10−13)平面を含み、これらは、ピットの面の中に見出される。これらの平面はまた、偶然に発明者らが平面膜の形態で成長させた平面と同じものである。ウルツ鉱型結晶構造の半極性平面の他の例は、(10−12)、(20−21)、および(10−14)であるが、それらに限定されない。窒化物結晶の分極ベクトルは、そのような平面内にも、そのような平面に対する法線にもなく、むしろ平面の表面垂線に対してある角度傾いている。例えば、(10−11)および(10−13)平面は、それぞれ、c平面に対して62.98°および32.06°である。
【0073】
図18は、基板1800の上面1806上に成長させたテンプレート層1804(上面1808は、半極性平面であってもよい)、およびテンプレートまたは下層1804の上面1810上に成長させた活性層1810(上面1808も半極性平面であってもよい)を示す。
【0074】
本発明は、紫外線(UV)(例えば、緩和されたAlGaN半極性テンプレートを使用することによって)、緑色、琥珀色、または赤色光を放出するLEDまたはLDを製造するために使用され得る。本発明は、緑色または紫外線光を放出するLDには特に有用である。LEDまたはLDは、一般的に、素子が、活性層に放出する光の量子閉じ込めシュタルク効果を軽減する半極性配向で成長させられるような、(11−22)半極性平面(または他の半極性平面)、例えば、半極性GaNに基づく。
【0075】
さらに、通常、圧縮歪みは、高度な遷移エネルギーを引き起こし得る。したがって、本発明が本発明のテンプレートまたは下層上に成長させた高In組成のInGaN活性層に対して圧縮歪みを低減させる場合、同じ組成を有するより長い波長の放出を得られ得る。
【0076】
図19(a)は、m平面鏡面を有する(11−22)の平面LDを図示し、m軸および11−22方向および発せられた光の方向1900を示す。図19(b)は、(11−23)平面鏡面を有する半極性(11−22)のLDを図示し、11−23軸(c投影)、11−22軸方向、および発せられた光の方向1902を示す。m平面の面を有するLDにおいて、放出が、X2分極を伴う場合、(11−23)に沿った分極はさらに強力である。(11−23)の鏡面を有するLDにおいて、放出が、X1分極を伴う場合、(1−100)に沿った分極はさらに強力である。
【0077】
(11−22)平面のLDについては、劈開された面から発せられた光1902は、分極したX2であり、いくつかの光子(全てではない)は、X2分極を有する。高い分極比(X2を有する光子のX1を有する光子に対する比)が好ましい。本発明は、このような(11−22)平面のLDを製造することができる。
【0078】
しかしながら、光電子素子(LED、LDを含むこと)、太陽電池、および電子素子(例えば、高電子移動度トランジスタ等のトランジスタ)を、本発明のテンプレート層上に成長させてもよい。
【0079】
本発明についてさらなる情報を[6−8]で見出し得る。
【0080】
(参考文献)
以下の参考文献は、参照することにより本明細書にその全体が組み込まれる。
【0081】
【表1】
(結論)
これは、本発明の好適な実施形態の説明を締めくくるものである。本発明の1つ以上の実施形態の上述の説明は、図解および説明のために示したものである。この記述は、網羅的であること、または本発明を開示された形態に限定することを意図したものではない。さらに、本発明が本明細書に記載される科学法則または理論のうちのいずれかに束縛されることを意図したものではない。上述の教示に照らして、多数の修正および変形が可能である。本発明の範囲は、この詳細な説明によって限定されるのではなく、むしろ本明細書に添付された請求項によって限定されることを意図する。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、次の同時継続の同一人に譲渡された米国仮特許出願の米国特許法第119条第(e)項の利益を主張し、これらの出願は、本明細書に参照により援用される:Hiroaki Ohta、Feng Wu、Anurag Tyagi、Arpan Chakraborty、James S.Speck、Steven P.DenBaars、およびShuji Nakamuraによる米国仮特許出願第61/236,059号(名称「ANISOTROPIC STRAIN CONTROL IN SEMIPOLAR NITRIDE QUANTUM WELLS BY PARTIALLY OR FULLY RELAXED ALUMINUM INDIUM GALLIUM NITRIDE LAYERS WITH MISFIT DISLOCATIONS」、2009年8月21日出願、代理人整理番号30794.318−US−P1(2009−743−1))、ならびにHiroaki Ohta、Feng Wu、Anurag Tyagi、Arpan Chakraborty、James S.Speck、Steven P.DenBaars、およびShuji Nakamuraによる米国仮特許出願第61/236,058号(名称「SEMIPOLAR NITRIDE−BASED DEVICES ON PARTIALLY OR FULLY RELAXED ALLOYS WITH MISFIT DISLOCATIONS AT THE HETEROINTERFACE」、2009年8月21日出願、代理人整理番号30794.317−US−P1 (2009−742−1))。
【0002】
本願は、次の同時係属の同一人に譲渡された米国実用特許出願に関連し、この出願は、本明細書に参照により援用される:Hiroaki Ohta、Feng Wu、Anurag Tyagi、Arpan Chakraborty、James S.Speck、Steven P.DenBaars、およびShuji Nakamuraによる米国仮特許出願第xx/xxx,xxx号(名称「SEMIPOLAR NITRIDE−BASED DEVICES ON PARTIALLY OR FULLY RELAXED ALLOYS WITH MISFIT DISLOCATIONS AT THE HETEROINTERFACE」、本願と同日の出願、代理人整理番号30794.317−US−U1(2009−742−2))であって、この出願は、Hiroaki Ohta、Feng Wu、Anurag Tyagi、Arpan Chakraborty、James S.Speck、Steven P.DenBaars、およびShuji Nakamuraによる米国仮特許出願第61/236,058号(名称「SEMIPOLAR NITRIDE−BASED DEVICES ON PARTIALLY OR FULLY RELAXED ALLOYS WITH MISFIT DISLOCATIONS AT THE HETEROINTERFACE」、2009年8月21日出願、代理人整理番号30794.317−US−P1(2009−742−1))の米国特許法第119条第(e)項の利益を主張する、出願。
【0003】
(1.発明の分野)
本発明は、発光ダイオード(LED)およびレーザダイオード(LD)等の、光学素子に関し、活性層内の歪みを調節するテンプレート上に成長させ、それによって、活性層のバンド構造および発せられた光の分極を調節する。
【背景技術】
【0004】
(2.関連技術の記述)
(注:本願は、明細書の全体を通して示されるように、角括弧内の1つ以上の参照番号、例えば[x]によって多数の異なる刊行物を参照する。これらの参照番号による順序で示されるこれらの異なる刊行物の一覧は、以下の「参考文献」という表題の項に見出すことができる。これらの刊行物のそれぞれは、参照することにより本明細書に組み込まれる。)
参照[1−3(非特許文献1−3)]では、量子井戸(QW)内の歪みの存在が、QWのバンド構造(自発的発光の分極および利得)を調節可能であることが示された。これは、既知の現象である(例えば、[4(非特許文献4)]を参照)。一般に、六方晶ウルツ鉱型結晶構造を有する半極性の窒素物エピタキシャル層の歪みは、異なる格子パラメータのaおよびcによる異方性(格子異方性)である。参照[5(非特許文献5)]は、以下の格子定数の値を報告する:a(AlN)=3.112オングストローム、a(GaN)=3.189オングストローム、a(InN)=3.54オングストローム、c(AlN)=4.982オングストローム、c(GaN)=5.185オングストローム、およびc(InN)=5.705オングストローム。
【0005】
しかしながら、この格子異方性は、考慮されるエピタキシャル層と考慮される層をコヒーレントに成長させる基板との間の格子定数の差異によって、自動的に決定される。したがって、本発明より前には、QW内の歪み異方性を制御する方法がなかった。
【0006】
図1は、山口氏の研究[1(非特許文献1)]において使用された座標系を図示し、X2は、c軸投影であり、θは、基板の配向を示す(例えば、θ=0は、c平面基板に対応する)。図2(a)〜(c)は、歪んでいないQW、歪んだ厚いGaN膜、および面内等方二軸性歪みを有する圧縮歪みQWの面内発光の分極度の基板配向依存性を示す。薄いQWによる量子閉じ込め効果は、図2(a)に示されるように、X2に平行な発光の分極度を生じる。一方で、圧縮歪みは、図2(b)に示されるように、X1に平行な発光の分極を生じる。図3は、GaN基板上にコヒーレントに成長させたIn0.3GaNのQWの面内発光の分極度の基板配向依存性を示す。したがって、図2および3は、異なる歪み(例えば、異方性歪み)の状態によって生じる異なる発光の分極またはバンド構造を示す。図2および3に示されるこれらの計算において、格子定数の差異は、それぞれ、aおよびc格子パラメータに対して、3.3%および3.0%であると仮定される。
【0007】
したがって、歪み異方性が調節され得る場合、本発明に示されるように、LED/LDにおける光学的特性は、高い自由度で変更させることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】A.A.Yamaguchi,Phys.Stat.Sol (c)5,2329(2008)
【非特許文献2】A.A.Yamaguchi,Appl.Phys.Lett.94,201104(2009)
【非特許文献3】A.A.Yamaguchi,Jpn.J.Appl.Phys.46,L789(2007)
【非特許文献4】S.L.Chuang,Physics of Optical Devices,P149
【非特許文献5】I.Vurgaftman and J.Meyer,J.Appl.Phys.94,3675(2003)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光学/電子素子の半極性窒化物ベースの活性層内の異方性を制御する方法を提供する。従来、全ての窒化物ベースの素子は、素子層を通過する転位が、不十分な素子性能を引き起こすので、一般的に、コヒーレントに成長させられている。本発明の発見に基づいて、ミスフィット転位(MD)は、素子層から離れて位置する領域/界面に制限され得る。したがって、本発明は、素子層内の歪み制御を可能にする一方で、高度の素子性能/効率を維持する。
【0010】
先行技術における制限を克服するために、および本明細書の熟読および理解に応じて明白となるであろう他の制限を克服するために、III族窒化物ベースの光学素子のためのエピタキシャル構造は、III族窒化物の下側にある層(本開示を通して下層とも呼ばれる)上に形成された異方性歪みを有するIII族窒化物活性層を備え、下側にある層の格子定数および歪みは、活性層の異方性歪みが、下側にある層によって調節されるように、下層下のヘテロ界面におけるミスフィット転位の存在により、少なくとも1つの方向において基板に対して部分的または完全に緩和される。
【0011】
下層は、一般的に、第1の方向に沿って緩和され、下層は、第1の方向に直角である第2の方向に沿っては緩和されない。
【0012】
一実施形態では、基板は、半極性GaN基板であり、下層は、半極性平面であるGaN基板の上面上に蒸着されるか、または成長させられ、下層は、下層の面内c投影に平行である方向に沿って緩和され、下層は、下層のm軸方向に沿って緩和されず、活性層は、半極性平面である下層の上面上に蒸着または成長させられる。
【0013】
基板は、無極性または半極性であってもよく、例えば、無極性または半極性素子を生じる。
【0014】
MDは、活性層内の歪みが、活性層の第1の方向に第1の歪みを有し、活性層の第2の方向に第2の歪みを有するように、異方性歪みを調節するように配置され得る。
【0015】
第1の方向は、面内c投影(X2)に平行であってもよく、第2の方向は、第1の方向(例えば、m軸方向)に直角であってもよく、MDは、第1の方向に沿っていてもよい。
【0016】
下層が、基板上に成長させられ、下層の格子定数および歪みが、基板に対して部分的または完全に緩和され得、その結果、下層の格子定数が、基板の格子定数と同じ値に拘束されるのではなく、むしろその自然値になり、下層の歪みがなくなる。
【0017】
活性層は、AlInGaNのQWまたは多重量子井戸(MQW)(例えば、無極性または半極性QW)であってもよい。例えば、下側にある層は、0を超えるIn組成を有するInAlGaNであってもよく、活性層は、20%を超えるIn組成を有するInGaNを備え得る。QWは、QWが、緑色スペクトル領域においてピーク波長を有する光を放出するようなIn組成および厚さを有し得る。
【0018】
活性層は、3ナノメートルを超える厚さを有する1つ以上のQWを備えることができ、MDは、QWによって発せられる光が、正味のX2分極を有するように、異方性歪みを調節するように配置され得る。
【0019】
本発明は、III族窒化物ベースの光学素子のためのエピタキシャル構造を製造する方法をさらに開示し、本方法は、基板上にIII族窒化物下層を形成するステップであって、下側にある層の格子定数および歪みが、下層下のヘテロ界面でのMDの存在により、少なくとも1つの方向で基板に対して部分的および完全に緩和されるようになる、ステップと、下側にある層上にIII族窒化物活性層を形成するステップであって、活性層内の異方性歪みが、下側にある層によって調節または制御されるようになる、ステップとを備える。
【0020】
本方法は、下層と基板または下層下の層との間のヘテロ界面を形成することによって、MDを形成するステップをさらに備え得、下層および基板、または下層および層は、それぞれ、異なるIII族窒化物合金組成を有し、ミスフィット転位は、ヘテロ界面周辺に局所化され、それによって、活性層周辺の層内のミスフィット転位を排除する。
【0021】
本方法は、下層を非コヒーレントに基板上に成長させることによって、下層を形成するステップと、活性層をコヒーレントに下層上に成長させることによって、活性層を形成するステップと、をさらに備え得る。下層下のさらなる層は、コヒーレントに基板上に成長させる別の下層であり得る。
【0022】
異方性歪みは、例えば、下層のバンド構造が制御され、活性層のバンド構造が制御されるように、下層内の方向の関数として、下層の種々の程度の緩和によって調節され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
全体を通して類似参照数字が対応する部品を表す図面を参照する。
【図1】図1は、山口氏の研究[1]に使用された座標系を図示する。
【図2】図2は、(a)歪んでいないQW、(b)歪んだ厚いGaN膜、および(c)面内等方二軸性歪みを有する圧縮歪みQWの面内発光の分極度の基板配向依存性を示し、ゼロ度は、極性c平面(0001)配向に対応する一方で、90度は、無極性a(11−20)およびm(10−10)平面配向に対応し、中間の角度は、半極性配向に対応する。
【図3】図3は、コヒーレントにGaN基板上に成長させたInGaN QWの面内発光の分極度の基板配向依存性を示す。
【図4】図4は、(11−22)GaN上に成長させたGaN/AlGaN超格子(SL)の下方部分の界面の周辺でg=01−10の回折条件で撮影した、ヘテロ界面のMDを示す、透過型電子顕微鏡(TEM)の明視野画像であり、目盛りは100ナノメートル(nm)である。
【図5】図5(a)は、[1−100]晶帯軸周辺のTEM画像であり、SLを含む全ての半極性(11−22)LD素子エピタキシャル層(上から下まで)を見ることができ、目盛りは0.2マイクロメートル(μm)であり、図5(b)は、対応する電子ビーム回折パターン(DP)を表す[6]。
【図6】図6(a)〜(c)は、前述の素子(図4、および図5(a))の異なるエピタキシャル層のTEM画像を示し、(a)は、100周期のp−AlGaN/GaNの超格子および厚さ100nmのp−GaNも示し、超格子の中のp−AlGaNは厚さ3nmであり、超格子の中のGaNは厚さ2nmであり、(b)は、2周期のInGaNのQWを有する活性領域であり、(c)は、QWの下側のn−AlGaN/GaNのSLであり、目盛りは100nmである。
【図7】図7は、黒色矢印が付されたヘテロ界面で主に生成され、破線矢印が付された層の中にわずかに見出される、MDを示すTEM画像であり、目盛りは50nmである。
【図8】図8(a)は、晶帯軸[2−1−10]から撮影したTEM画像であり、目盛りは0.2μmであり、図8(b)は、対応する電子ビームDPを表す。
【図9】図9(a)は、g=01−10で撮影したTEM明視野画像であり、MDは、[1−100]から[2−1−10]への試料の傾斜に起因するセグメントとみなされ、目盛りは50nmであり、図9(b)は、対応する電子ビームDPを表す。
【図10】図10は、本発明の実施形態に対応する(11−22)GaN上に成長させたエピタキシャル構造の概略断面図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態による、(11−22)GaN上に成長させた光学素子構造の概略断面図である。
【図12】図12は、図11の光学素子における層の上面図である。
【図13】図13は、本発明による、(11−22)GaN上に成長させた素子の(10−10)平面に沿う概略断面図である。
【図14】図14は、図13の素子の(11−23)平面に沿う概略断面図である。
【図15】図15は、本発明の方法を示す、フローチャートである。
【図16】図16は、山口氏による、AlInGaNの四元合金基板に配向された(11−22)上で(a)2nm、(b)3nm、および(c)10nmの厚さIn0.3GaN QWにおける最大光学マトリクス要素をもたらす、分極の合金組成依存性を示す[1]。
【図17】図17は、コヒーレントに成長させたエピタキシャル層を用いる素子を示す。
【図18】図18は、本発明に記載されるように、非コヒーレントに成長させたテンプレートを用いて成長させた素子を示す。
【図19】図19(a)は、m平面のLDを図示し、m軸方向、11−22軸方向、および発光の方向を示し、図19(b)は、半極性(11−23)のLDを図示し、11−23軸(c投影)、11−22軸方向、および発光の方向を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の発明を実施するための形態において、本明細書の一部を形成し、および本発明が実践され得る特定の実施形態を例示目的で示す添付図面を参照する。本開示の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が用いられてもよく、また、構造的な変更が行われてもよいことを理解されたい。
【0025】
(概要)
別の層(Y)(層Yは、それ自体がエピタキシャル、または基板であり得る)上に成長させたエピタキシャル層(X)は、Yに対してコヒーレントであること、部分的に緩和、または完全に緩和されることができる。コヒーレントな成長の場合、Xの面内格子定数は、下側にある層Yと同一に拘束される。Xが完全に緩和された場合、Xの格子定数は、それらの自然の(すなわち、いかなる歪みもない)値であると仮定する。XがYに対してコヒーレントでもなく、完全に緩和されない場合、部分的に緩和されたと考えられる。一部の場合、基板は、いくらかの残存歪みを有し得る。
【0026】
したがって、部分的に緩和された場合、下層の格子定数は、その自然の値と完全に同じではない。さらに、時には、基板は微小歪みを有することもあるが、この歪みは極めて小さい。
【0027】
ヘテロ界面での格子定数不整合によって生じるMDは、異なる合金組成を有するAlInGaN膜を用いて製造され得る。その効果は、MDが、空間的にヘテロ界面の近辺に制限され、それによって、QW周辺の素子層内のMDを排除し、高度な素子性能を維持することができることである。
【0028】
(技術的説明)
(命名法)
(Al、Ga、In)N、III族窒化物、またはAlInGaNという用語は、本明細書で使用される場合、単一の種、Al、Ga、およびInのそれぞれの窒化物、ならびにそのようなIII族金属種の二元、三元、および四元組成を含むと広義に解釈される。したがって、(Al、Ga、In)N、AlInGaN、またはIII族窒化物という用語は、そのような命名法に含まれる種として、化合物AlN、GaN、およびInN、ならびに三元化合物AlGaN、GaInN、およびAlInN、および四元化合物AlGaInNを包含する。(Ga、Al、In)構成種のうちの2つ以上が存在するとき、(組成に存在する(Ga、Al、In)構成種のそれぞれを表す相対モル分率に関して)化学量論的割合ならびに「化学量論外」割合を含む、全ての可能な組成を、本発明の広義の範囲内で採用することができる。したがって、主にGaN材料に関する、以降の本発明の論議は、種々の他の(Al、Ga、In)N材料種の形成に適用可能であることが理解されるであろう。さらに、本発明の範囲内の(Al、Ga、In)N材料は、軽微な数量のドーパントおよび/または他の不純物あるいは包含物質をさらに含んでもよい。
【0029】
同様な様式において、AlGaInBNは、本発明にも使用され得る。
【0030】
(素子構造)
図4、5(a)、6(a)〜(c)、7、8(a)、および9(a)は、MD400が、半極性(11−22)窒化物ベースのエピタキシャル層404、406中のヘテロ界面402に存在するという発見を示すTEM画像である。この新発見において、MD400の存在は、格子定数不整合を有する(異なる合金および/または合金組成を有する)層404、406の間のヘテロ界面周辺だけに制限された。言い換えれば、ヘテロ界面402に制限されたMD400を有するエピタキシャル層は、層404を通る、および成長方向に向かう(ヘテロ界面402に直角である)明らかな転位も有しなかった。これは、本発明が、元の基板406上に、緩和された格子定数を有する、転位のない合金テンプレートを得るための方法を提供することを示す。
【0031】
MDによって、面内方向(転位の線の方向に直角である)に沿った格子定数が緩和される。緩和は、直角な面内方向において生じなかった(すなわち、コヒーレンスが維持された)。
【0032】
図4は、(11−22)GaN406上に成長させられたGaN/AlGaN SL404の下方部分の界面402の周辺でg=01−10の回折条件で撮影した、ヘテロ界面402のMD400を示す、TEMの明視野画像である。
【0033】
図5(a)は、[1−100]晶帯軸周辺のTEM画像であり、SLを含む全ての半極性(11−22)LD素子エピタキシャル層(上から下まで)を見ることができ、図5(b)は、対応する電子ビーム回折パターン(DP)を表す[6]。
【0034】
図6(a)〜(c)は、前述の素子の異なるエピタキシャル層のTEM画像を示し、(a)は、100周期のp−AlGaN/GaNの超格子600および厚さ100nmのp−GaN602を示し、超格子600の中のp−AlGaNは厚さ3nmであり、超格子600の中のGaNは厚さ2nmであり、(b)は、2周期のInGaNのQWを有する活性領域604であり、(c)は、QW604の下側のn−AlGaN/GaNのSL606である。
【0035】
図7は、n−AlGaN/GaNのSL700と、SL700上のn−GaN層702と、n−GaN層702上のn−InGaN層704と、n−InGaN層704上のInGaNのQW706と、QW706上のp−AlGaN電子ブロッキング層(EBL)708と、EBL708上のp−InGaN層710と、p−InGaN層710上のp−GaN層712と、p−GaN層712上のp−AlGaN/GaNのSL714とを備える、エピタキシャル構造を示すTEM画像である。TEM画像は、黒色矢印718a〜dが付されたヘテロ界面で主に生成され、破線矢印720が付された層の中にわずかに見出される、MD716をさらに示す。
【0036】
図8(a)は、晶帯軸[2−1−10]から撮影したTEM画像であり、図8(b)は、対応する電子ビームDPを表す。
【0037】
図9(a)は、g=01−10で撮影したTEM明視野画像であり、MD900は、[1−100]から[2−1−10]への試料の傾斜に起因するセグメントとみなされ、図9(b)は、対応する電子ビームDPを表す。
【0038】
図10は、III族窒化物ベースの光学素子1000のエピタキシャル構造を図示し、下側にある層1006(層IIまたはBとも呼ばれる、例えば、5〜10%のInを有するInGaN層)上に異方性歪みを有する1つ以上の活性層1002、1004(層Iまたは層Aとも呼ばれる、例えば、30%のInを有するInGaN層)を備え、下側にある層1006内の格子定数および歪みは、MD1008の存在によって、少なくとも1つの方向に部分的または完全に緩和される。図10において、下層1006は、[11−23]方向に沿って緩和されるが、m方向[10−10]に沿っては緩和されない。下層1006は、下層1006下のヘテロ界面1010でのMD1008によって緩和され得る。この効果は、活性層1002、1004の歪み(特に、歪み異方性)が、下側にある層1006によって調節されることである。このような様式において、バンド構造、光学マトリクス要素、自発的発光の分極、および利得を、調節することができる。層I 1002、1004の歪みは、部分的に放出することができ、全歪みは、層II 1006を伴わない場合と比較して、層I1002、1004においてより小さくなり得る。歪みの量は、使用された実際の組成および緩和の程度に依存してもよい。一実施形態では、それは、歪みの約50%まで可能であり得る。図10の例では、層1006は、標準的な再成長GaNである層1012(または層IIIもしくはC)上に成長させられる。層IIIは、(11−22)GaN基板1014上に成長させられ、5〜10%のInを有するInGaN層1016、1018は、層1002のいずれかの側面上に成長させられる。層1016は、QW間の障壁であり、層1018は、p型層であり、層1006は、n型層である。
【0039】
さらに具体的には、QW1002、1004(例えば、層A)の歪み異方性は、QW1002、1004のバンド構造を任意に調節することができるように、局所化されたMD1008(図4、5(a)−(b)、6(a)−(c)、7、8(a)−(b)、および9(a)−(b)も参照)を有する部分的または完全に緩和された下側にある層1006(層B)によって制御され得る。ε11−23(面内c投影に沿った歪み)は、層Aと層Bとの間の格子定数の差によって決定される。ε10−10(m軸に沿った歪み)は、層Aと層Cとの間の格子定数差によって決定される。[11−22]方向および[11−23]方向(面内c投影に平行(||))は、図10の矢印によって示し、[10−10]方向(図の平面と直角であり、黒丸によって示される)も図10に示す。
【0040】
活性層Aは、例えば、AlInGaNのQWまたはMQWであってもよい。効果は、高放射再結合速度、高利得、およびQW閉じ込め効果によるさらなるバンド構造調節である[1−3]。
【0041】
別例では、層IIは、InAlGaN(0を超えるIn組成)であり、層Iは、InGaN(20%を超えるIn組成)である。この効果は、発光分極比が、青色、緑色、琥珀色LED/LDにおいて制御することができるというものである。本発明は、このスペクトル領域の光学マトリクス要素および利得を修正することができる。
【0042】
図11は、In0.1GaN下層1104に配向された(11−22)上で、活性層としてIn0.3GaNのQW1102を備える光学素子1100(例えば、LEDまたはLD)の例を示す。In0.1GaN下層1104は、「緩和される」と付された矢印の方向に緩和されるが、m軸方向に沿って緩和されない(したがって、緩和は、1つの方向に生じる)。また、MD1106、[11−22]方向([11−22]と付された矢印によって示される)、および[11−23]方向(面内c投影方向に平行(||)であり、[11−23]{|| 面内c投影}と付された矢印によって示される)も示す。
【0043】
図12は、図11の下層1104(例えば、In0.1GaN、または10%〜30%の範囲内にIn組成を有するInGaN)の上面図である。m軸方向、[11−23]方向、InGaNのm軸方向に沿った格子不整合(Δm)、InGaNの面内c軸投影方向に沿った不整合(Δc)を全て、図12の矢印によって示す。m軸に沿った歪みεmは、InGaN下層のバンド構造の制御を可能にし、活性層のバンド構造([1]、[2]、および[4])に影響を及ぼす、面内c軸投影に沿った歪みεcよりも大きい。
【0044】
図13は、構造1300のm平面(10−10)の断面であり、In0.1GaN層1304上に、活性層としてIn0.3GaNのQW1302を備える。In0.1GaN層1304は、(11−22)GaN基板1312の上面(上面は、(11−22)半極性平面である)上にエプタキシャルに成長させたIn0.3GaN下層1306上に成長させ、それによって、GaN基板1308とIn0.3GaN下層1306との間に、MD1312を有するヘテロ界面1310を形成する。In0.3GaN下層1306は、面内c投影[11−23]の方向に([11−23]{|| 面内c投影}と付された矢印によって示される)緩和される(歪みがない)。In0.1GaN/In0.3GaN界面1314も、MDを有する可能性がある。[11−22]方向も、[11−22]と付された矢印によって示される。
【0045】
図14は、図13の構造の断面であるが、(11−23)平面に沿って、III族窒化物のm軸の方向([10−10]と付された矢印)を示す。In0.3GaNを含むInGaN下層1306は、m軸に沿って緩和されず、これは、MDがないことによって証明された。この場合、歪みεmは、In0.3GaN1306とGaN1308との間の格子定数の差異によって生じ、ε11−23(またはεc)=0およびεm<0(すなわち、圧縮歪み)をもたらす。[11−22]方向も、[11−22]と付された矢印によって示される。
【0046】
(プロセスステップ)
図15は、本発明のエピタキシャル構造(例えば、III族窒化物ベースの光学素子構造)を製造する方法を示すフローチャートである。方法は、以下のステップを含む。
【0047】
ブロック1500は、後に成長させたテンプレート層を有するヘテロ界面を形成する高品質半極性GaN基板(ブロック1502)を提供することを表す。基板は、(11−22)、(10−1−1)、または(10−1−3)平面等であるが、それらに限定されない他の配向も可能であるが、例えば、(11−22)基板等の半極性GaN基板であってもよい。バルクAlInGaN、高品質GaN基板、m−サファイヤ、またはスピネル基板等であるが、それらに限定されない他の基板が、使用され得る。無極性基板も使用され得る。
【0048】
ブロック1504は、基板上、例えば、基板の上面上(上面は、例えば、半極性平面であり得る)の1つ以上の層、下層、またはテンプレート層を形成する(例えば、成長または蒸着させる)ステップを表す。形成するステップは、基板上のテンプレートまたは下側にある層を非コヒーレントに成長させ、それによって、緩和された格子定数を有するテンプレート層を結果として生じるステップを備え得る。例えば、下層は、下側にある層の格子定数および歪みが、下層下のヘテロ界面1502でのMDの存在により、少なくとも1つの方向に基板に対して部分的または完全に緩和されるように、基板上に形成され得る。このようにして、下層の格子定数は、少なくとも1つの方向に、基板の格子定数と同じ値に拘束されるのではなく、むしろその自然値になり、下層は、少なくとも1つの方向に歪みがなくなる。
【0049】
MDは、下層と基板または下層下の層との間のヘテロ界面によって生じ得、下層および基板、または下層および下層下の層は、それぞれ、異なるIII族窒化物合金組成を有し、MDは、ヘテロ界面周辺に局所化され、それによって、活性層周辺の層内のMDを排除する。
【0050】
下層は、一般的に、第1の方向に沿って緩和されるが、第2の方向に沿って緩和されない。第1の方向は、下層の面内c投影(X2)に平行であってもよいが、第2の方向は、第1の方向(例えば、m軸方向)に直角であってもよい。
【0051】
MDは、緩和される第1の方向に沿っている。MDは、活性層内の歪みが、第1の方向に第1の歪みを有し、第2の方向に第2の歪みを有するように、異方性歪みを調整するように配置され得る。面内c投影(X2)に平行である第1の方向に沿った、下層の第1の歪みは、第2の方向に沿っている下層の第2の歪みよりも、小さくてもよい。
【0052】
したがって、異方性歪みは、下層内の方向の関数としての種々の程度の下層の緩和によって調節され得る。このようにして、下層および活性層のバンド構造(ならびに本開示を通して論じられるような他のパラメータ)はともに、例えば、制御され得る。
【0053】
一般的に、c投影に平行な面内格子定数は緩和されるが、緩和される方向および緩和されない方向は、下層および/または基板の半極性配向および/または合金組成に依存する。一般に使用される半極性平面について、コヒーレントでない格子定数は、一般的に、c軸の投影(a、cのどちらとも異なる)に平行な面内格子定数である。
【0054】
このように、緩和される方向は、常時c投影に沿っているとは限らず、また、緩和されない方向は、常時c投影に対して直角であるとは限らない。しかしながら、基底面スリップは、半極性ウルツ鉱型III族窒化物の結晶構造のため、支配的な歪み緩和機構であるので、おそらくは、c投影に対して直角である線方向を有するMDが最初に形成される。結果的に、初期の緩和は、c投影に沿ったものである(緩和方向は、MD方向に対して直角である)。膜の歪みエネルギーが十分に大きい場合、c軸に直角な面内方向も、緩和を受けることができる。一実施形態では、本発明は、両方向についてMDの形成のための臨界膜厚を計算してもよい。次いで、層厚さが対応する臨界膜厚に到達したときにMDが生じる。したがって、ある方向について層厚さが臨界膜厚に到達すると、層は、対応する方向に緩和される。
【0055】
緩和の程度は、格子定数および配向および格子の方向による機械的性質に依存してもよい[6]。
【0056】
下層下のさらなる層は、コヒーレントに基板上に成長させる他の下層を含み得る。上記の層「下層」は、「下層」が格子定数の緩和を生じるため、基板とは異なる格子定数を有する「下層」上にコヒーレントに成長させられる。層の厚さが臨界厚さよりも小さい限り、この材料は、コヒーレントに成長させられる。
【0057】
ブロック1506は、下側にある層またはテンプレート層上に素子構造(例えば、活性層)を成長させることを示す。活性層は、下層の上面上に蒸着させ得、下層の上面は、半極性平面である。素子構造は、テンプレート層上に転位を伴わずに成長させてもよい。活性層は、活性層内の異方性歪みが、下側にある層によって調節または制御されるように、下側にある層上に形成され得る。
【0058】
下側にある層は、0を超えるIn組成を有するInAlGaNであり得、活性層は、20%を超えるIn組成を有するInGaNを備え得る。活性層は、3ナノメートルを超える厚さを有する1つ以上のQWを備え得、MDは、QWによって発せられる光が、正味X2分極を有するように、異方性歪みを調節するように配置され得る。
【0059】
QWは、QWが、緑色スペクトル領域においてピーク波長を有する光を放出するように、In組成および厚さを有し得る。QWは、半極性または無極性QWであってもよい。
【0060】
活性層を形成するステップは、活性層を下層上にコヒーレントに成長させるステップを含み得る。
【0061】
ブロック1508は、方法の最終結果を表し、光学素子等の素子のためのエピタキシャル構造には、MDを有するヘテロ界面上、または部分的に緩和された、もしくは完全に緩和されたテンプレート層上に活性層を備える。III族窒化物ベースの光学素子のためのエピタキシャル構造は、下側にある層上に形成された異方性歪みを有する活性層を備え得、下側にある層の格子定数および歪みは、活性層の異方性歪みが、下側にある層によって調節されるように、下層下のヘテロ界面でのMDの存在により、少なくとも1つの方向で基板に対して部分的または完全に緩和される。
【0062】
構造は、例えば、一般的に、従来の分子ビームエピタキシ(MBE)または有機金属蒸着(MOCVD)を用いて成長させるが、他の蒸着方法も可能である。
【0063】
素子構造は、例えば、光学素子または電子素子(例えば、トランジスタ)であってもよい。光電子/電子素子を製造するために、当技術分野におおいて周知であるような、他の層、接点、または要素を加えてもよい。
【0064】
また、無極性基板上に無極性素子を製造してもよい。
【0065】
(利点および改良点)
山口氏の論文[1]では、X1、X2、およびX3の中で最強の要素は、InGaNまたは図16に示されるように、別の四元基板([1]から得られた)を用いることによって変更する。この場合、基板上でのコヒーレント成長が仮定された。
【0066】
本発明は、QWの歪みを調節し、バンド構造(すなわち、発光の分極、利得等)をさらに調節するために、1つの方向にコヒーレンスを切断することができる。別の観点から、本発明は、緩和された格子定数の合金ベースのテンプレート(基板)を達成する。
【0067】
半極性(11−22)QWのための歪みの緩和により、本発明は、(1)厚いQWを有するX2分極を容易に得ること(劈開されたm平面の面を有するm軸空洞LDを製造することが可能である)、および(2)同じIn組成を有するLDまたはLEDからより長い波長の放出を得ること(すなわち、所与のIn組成について、本発明は、本発明によって製造されない素子よりも光学素子からより長い波長の放出を得ることができる)が可能になる。本発明は、例えば、緑色光に対応する波長を放出するLDまたはLEDを実現するためにはかなり有効である。
【0068】
先行の技術[5]は、図17に示されるように、GaN1700およびGaN1700上に素子層1702(InGaNのQW1704を含む)をコヒーレント1706に成長させる。コヒーレント成長において、(格子定数の)格子不整合Δは、歪み(例えば、InGaNの場合、圧縮歪み)を生じる。これは、InGaN活性層(例えば、1704)内の大きな圧縮歪みεを生じる。言い換えれば、格子不整合Δ(Δは、GaN基板1700の格子定数−InGaNのQW1704の格子定数である)は、負であり、InGaN層1704内の圧縮または圧縮歪みεに対応する)。上記の計算において、GaNの格子定数a=3.189Å、およびGaNの格子定数c=5.185Åが、使用され得る[5]。
【0069】
本発明は、図18に示されるように、先行の技術と比較して、より小さな圧縮歪みを達成し得る。図18において、GaN基板1800またはテンプレートは、コヒーレント1802に成長させ、テンプレートA(InGaN1804等)は、GaN基板1800またはテンプレート上に非コヒーレント1806に成長させる。素子層1808(InGaNのQW1810を含む)は、次いで、テンプレートA 1804上にコヒーレント1812に成長させ得る。圧縮歪みは、図17に示される場合よりも小さい。具体的には、MD1814を有する界面上の層A1804において、MD線の方向と直角である方向1816に沿って格子定数が緩和される。格子不整合Δ’(Δ’は、テンプレート層1804の格子定数−InGaNのQW1810の格子定数である)は、図17のΔよりも小さい。加えて、InGaNのQW1810内の歪みε’は、活性層1704内の歪みεよりも小さい。
【0070】
上記の計算において、GaNの格子定数a=3.189Å、GaNの格子定数c=5.185Å、InNの格子定数a=3.54Å、およびInNの格子定数c=5.705Åが使用され得る[5]。
【0071】
Δ’、Δε’、およびεは、緩和された方向1816に沿って計算される。
【0072】
GaN光電子素子の中の分極効果を低減または可能な限り除去するアプローチは、結晶の半極性平面上で素子を成長させるものである。「半極性平面」という用語は、非ゼロh、i、またはkミラー指数および非ゼロlミラー指数の2つをどちらも有する、あらゆる平面を指すために使用することができる。したがって、半極性平面は、(hkil)ミラー−ブラベ指数定義則において、非ゼロのh、k、またはi指数および非ゼロのl指数を有する結晶平面として定義される。c平面GaNヘテロエピタキシにおける半極性平面のいくつかの一般的に観察される例は、(11−22)、(10−11)、および(10−13)平面を含み、これらは、ピットの面の中に見出される。これらの平面はまた、偶然に発明者らが平面膜の形態で成長させた平面と同じものである。ウルツ鉱型結晶構造の半極性平面の他の例は、(10−12)、(20−21)、および(10−14)であるが、それらに限定されない。窒化物結晶の分極ベクトルは、そのような平面内にも、そのような平面に対する法線にもなく、むしろ平面の表面垂線に対してある角度傾いている。例えば、(10−11)および(10−13)平面は、それぞれ、c平面に対して62.98°および32.06°である。
【0073】
図18は、基板1800の上面1806上に成長させたテンプレート層1804(上面1808は、半極性平面であってもよい)、およびテンプレートまたは下層1804の上面1810上に成長させた活性層1810(上面1808も半極性平面であってもよい)を示す。
【0074】
本発明は、紫外線(UV)(例えば、緩和されたAlGaN半極性テンプレートを使用することによって)、緑色、琥珀色、または赤色光を放出するLEDまたはLDを製造するために使用され得る。本発明は、緑色または紫外線光を放出するLDには特に有用である。LEDまたはLDは、一般的に、素子が、活性層に放出する光の量子閉じ込めシュタルク効果を軽減する半極性配向で成長させられるような、(11−22)半極性平面(または他の半極性平面)、例えば、半極性GaNに基づく。
【0075】
さらに、通常、圧縮歪みは、高度な遷移エネルギーを引き起こし得る。したがって、本発明が本発明のテンプレートまたは下層上に成長させた高In組成のInGaN活性層に対して圧縮歪みを低減させる場合、同じ組成を有するより長い波長の放出を得られ得る。
【0076】
図19(a)は、m平面鏡面を有する(11−22)の平面LDを図示し、m軸および11−22方向および発せられた光の方向1900を示す。図19(b)は、(11−23)平面鏡面を有する半極性(11−22)のLDを図示し、11−23軸(c投影)、11−22軸方向、および発せられた光の方向1902を示す。m平面の面を有するLDにおいて、放出が、X2分極を伴う場合、(11−23)に沿った分極はさらに強力である。(11−23)の鏡面を有するLDにおいて、放出が、X1分極を伴う場合、(1−100)に沿った分極はさらに強力である。
【0077】
(11−22)平面のLDについては、劈開された面から発せられた光1902は、分極したX2であり、いくつかの光子(全てではない)は、X2分極を有する。高い分極比(X2を有する光子のX1を有する光子に対する比)が好ましい。本発明は、このような(11−22)平面のLDを製造することができる。
【0078】
しかしながら、光電子素子(LED、LDを含むこと)、太陽電池、および電子素子(例えば、高電子移動度トランジスタ等のトランジスタ)を、本発明のテンプレート層上に成長させてもよい。
【0079】
本発明についてさらなる情報を[6−8]で見出し得る。
【0080】
(参考文献)
以下の参考文献は、参照することにより本明細書にその全体が組み込まれる。
【0081】
【表1】
(結論)
これは、本発明の好適な実施形態の説明を締めくくるものである。本発明の1つ以上の実施形態の上述の説明は、図解および説明のために示したものである。この記述は、網羅的であること、または本発明を開示された形態に限定することを意図したものではない。さらに、本発明が本明細書に記載される科学法則または理論のうちのいずれかに束縛されることを意図したものではない。上述の教示に照らして、多数の修正および変形が可能である。本発明の範囲は、この詳細な説明によって限定されるのではなく、むしろ本明細書に添付された請求項によって限定されることを意図する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族窒化物ベースの光学素子のためのエピタキシャル構造であって、
III族窒化物下層上に形成された異方性歪みを有するIII族窒化物活性層を備え、該下層の格子定数および歪みは、該下層下のヘテロ界面におけるミスフィット転位の存在に起因して、少なくとも1つの方向に基板に対して部分的または完全に緩和され、それにより、該活性層の該異方性歪みが、該下層によって調節される、エピタキシャル構造。
【請求項2】
前記基板は、半極性GaN基板であり、前記下層は、半極性平面である該GaN基板の上面上に蒸着され、該下層は、該下層の面内c投影に平行である方向に沿って緩和され、該下層は、該下層のm軸方向に沿っては緩和されず、前記活性層は、半極性平面である該下層の上面上に蒸着される、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項3】
前記ミスフィット転位は、前記異方性歪みを調節するように配置され、それにより、前記活性層内の歪みが、該活性層の第1の方向に第1の歪みを有し、該活性層の第2の方向に第2の歪みを有する、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項4】
前記下層は、前記第1の方向に沿って緩和され、該下層は、前記第2の方向に沿っては緩和されない、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項5】
前記第1の方向は、面内c投影(X2)に平行であり、前記第2の方向は、該第1の方向に直角であり、前記ミスフィット転位は、該第1の方向に沿っている、請求項4に記載のエピタキシャル構造。
【請求項6】
前記下層は、前記基板上に成長させられ、該下層の前記格子定数および歪みは、該基板に対して部分的または完全に緩和され、それにより、該下層の該格子定数は、該基板の格子定数と同じ値に拘束されるのではなく、むしろそれの自然の値になり、該下層は歪みがなくなる、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項7】
前記活性層は、AlInGaN量子井戸または多重量子井戸である、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項8】
前記下層は、0を超えるIn組成を有するInAlGaNであり、前記活性層は、20%を超えるIn組成を有するInGaNを備える、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項9】
活性層は、3ナノメートルを超える厚さを有する1つ以上の量子井戸を備え、前記ミスフィット転位が、前記異方性歪みを調節するように配置されることにより、該量子井戸によって発せられる光が、正味のX2分極を有する、請求項8に記載のエピタキシャル構造。
【請求項10】
前記量子井戸は、前記量子井戸が、緑色スペクトル領域においてピーク波長を有する光を放出するようなIn組成および厚さを有する、請求項9に記載のエピタキシャル構造。
【請求項11】
前記量子井戸は、半極性または無極性量子井戸である、請求項9に記載のエピタキシャル構造。
【請求項12】
前記下層は、基板上にコヒーレントに成長させられない、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項13】
前記ミスフィット転位が、前記下層と前記基板または該下層下の層との間のヘテロ界面によって生じさせられ、各々は異なるIII族窒化物合金組成を有しており、該ミスフィット転位は、ヘテロ界面周辺に局所化され、それにより、前記活性層周辺の層内の前記ミスフィット転位を排除する、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項14】
前記下層下の前記層は、前記基板上にコヒーレントに成長させられる別の下層である、請求項13に記載のエピタキシャル構造。
【請求項15】
前記基板は、無極性または半極性である、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項16】
III族窒化物ベースの光学素子のためのエピタキシャル構造を製造する方法であって、
基板上にIII族窒化物下層を形成することであって、それにより、該下層内の格子定数および歪みが、該下層下のヘテロ界面でのミスフィット転位の存在に起因して、少なくとも1つの方向において該基板に対して部分的または完全に緩和される、ことと、
該下層上にIII族窒化物活性層を形成することであって、それにより、該活性層の異方性歪みが、該下層によって調節または制御される、ことと
を含む、方法。
【請求項17】
前記下層と前記基板または該下層下の層との間のヘテロ界面を形成することによって、前記ミスフィット転位を形成することをさらに含み、該下層および該基板または該下層および該層は、各々異なるIII族窒化物合金組成を有しており、該ミスフィット転位は、該ヘテロ界面周辺に局所化され、それにより、前記活性層周辺の層内の前記ミスフィット転位を排除する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記下層を形成する前記ことは、該下層を非コヒーレントに前記基板上に成長させることによるものである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記活性層を形成する前記ことは、該活性層をコヒーレントに該下層上に成長させることによるものである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記下層は、該下層が第1の方向に沿って緩和され、該下層が第2の方向に沿って緩和されないように、前記基板上に形成される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記異方性歪みが、前記下層内の方向の関数としての該下層の種々の程度の緩和によって調節され、それにより、該下層のバンド構造が制御され、前記活性層のバンド構造が制御される、請求項16に記載の方法。
【請求項1】
III族窒化物ベースの光学素子のためのエピタキシャル構造であって、
III族窒化物下層上に形成された異方性歪みを有するIII族窒化物活性層を備え、該下層の格子定数および歪みは、該下層下のヘテロ界面におけるミスフィット転位の存在に起因して、少なくとも1つの方向に基板に対して部分的または完全に緩和され、それにより、該活性層の該異方性歪みが、該下層によって調節される、エピタキシャル構造。
【請求項2】
前記基板は、半極性GaN基板であり、前記下層は、半極性平面である該GaN基板の上面上に蒸着され、該下層は、該下層の面内c投影に平行である方向に沿って緩和され、該下層は、該下層のm軸方向に沿っては緩和されず、前記活性層は、半極性平面である該下層の上面上に蒸着される、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項3】
前記ミスフィット転位は、前記異方性歪みを調節するように配置され、それにより、前記活性層内の歪みが、該活性層の第1の方向に第1の歪みを有し、該活性層の第2の方向に第2の歪みを有する、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項4】
前記下層は、前記第1の方向に沿って緩和され、該下層は、前記第2の方向に沿っては緩和されない、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項5】
前記第1の方向は、面内c投影(X2)に平行であり、前記第2の方向は、該第1の方向に直角であり、前記ミスフィット転位は、該第1の方向に沿っている、請求項4に記載のエピタキシャル構造。
【請求項6】
前記下層は、前記基板上に成長させられ、該下層の前記格子定数および歪みは、該基板に対して部分的または完全に緩和され、それにより、該下層の該格子定数は、該基板の格子定数と同じ値に拘束されるのではなく、むしろそれの自然の値になり、該下層は歪みがなくなる、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項7】
前記活性層は、AlInGaN量子井戸または多重量子井戸である、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項8】
前記下層は、0を超えるIn組成を有するInAlGaNであり、前記活性層は、20%を超えるIn組成を有するInGaNを備える、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項9】
活性層は、3ナノメートルを超える厚さを有する1つ以上の量子井戸を備え、前記ミスフィット転位が、前記異方性歪みを調節するように配置されることにより、該量子井戸によって発せられる光が、正味のX2分極を有する、請求項8に記載のエピタキシャル構造。
【請求項10】
前記量子井戸は、前記量子井戸が、緑色スペクトル領域においてピーク波長を有する光を放出するようなIn組成および厚さを有する、請求項9に記載のエピタキシャル構造。
【請求項11】
前記量子井戸は、半極性または無極性量子井戸である、請求項9に記載のエピタキシャル構造。
【請求項12】
前記下層は、基板上にコヒーレントに成長させられない、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項13】
前記ミスフィット転位が、前記下層と前記基板または該下層下の層との間のヘテロ界面によって生じさせられ、各々は異なるIII族窒化物合金組成を有しており、該ミスフィット転位は、ヘテロ界面周辺に局所化され、それにより、前記活性層周辺の層内の前記ミスフィット転位を排除する、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項14】
前記下層下の前記層は、前記基板上にコヒーレントに成長させられる別の下層である、請求項13に記載のエピタキシャル構造。
【請求項15】
前記基板は、無極性または半極性である、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項16】
III族窒化物ベースの光学素子のためのエピタキシャル構造を製造する方法であって、
基板上にIII族窒化物下層を形成することであって、それにより、該下層内の格子定数および歪みが、該下層下のヘテロ界面でのミスフィット転位の存在に起因して、少なくとも1つの方向において該基板に対して部分的または完全に緩和される、ことと、
該下層上にIII族窒化物活性層を形成することであって、それにより、該活性層の異方性歪みが、該下層によって調節または制御される、ことと
を含む、方法。
【請求項17】
前記下層と前記基板または該下層下の層との間のヘテロ界面を形成することによって、前記ミスフィット転位を形成することをさらに含み、該下層および該基板または該下層および該層は、各々異なるIII族窒化物合金組成を有しており、該ミスフィット転位は、該ヘテロ界面周辺に局所化され、それにより、前記活性層周辺の層内の前記ミスフィット転位を排除する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記下層を形成する前記ことは、該下層を非コヒーレントに前記基板上に成長させることによるものである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記活性層を形成する前記ことは、該活性層をコヒーレントに該下層上に成長させることによるものである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記下層は、該下層が第1の方向に沿って緩和され、該下層が第2の方向に沿って緩和されないように、前記基板上に形成される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記異方性歪みが、前記下層内の方向の関数としての該下層の種々の程度の緩和によって調節され、それにより、該下層のバンド構造が制御され、前記活性層のバンド構造が制御される、請求項16に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6a−6c】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6a−6c】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2013−502731(P2013−502731A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525757(P2012−525757)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/046376
【国際公開番号】WO2011/022730
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(506115514)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (87)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/046376
【国際公開番号】WO2011/022730
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(506115514)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (87)
【Fターム(参考)】
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