説明

ミトコンドリアアコニターゼを刺激する美容ケアの方法

【課題】新規な美容剤素材の提供。
【解決手段】美容剤としての、植物抽出物の使用に関する。この抽出物は、美容活性剤として、シトラス属に属する植物から、又は、シトラス属にそれらの少なくとも1種が属する植物種の交雑により得られる雑種から得られる。抽出物が、×シトロフォーチュネラ属に属する植物から得られる、特に、カラモンディン(×シトロフォーチュネラミクロカルパ)の抽出物が好適であり、皮膚の加齢の徴候の現れを防ぐ若しくは遅らせること、又は、その影響を弱めること、及び/又は、皮膚の色つやの明るい輝きを向上させる若しくは取り戻すことを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容剤としての、より詳細には、皮膚に抗加齢作用を生じるための、シトラス(Citrus)属、又はシトラス属にそれらの少なくとも1種が属する植物種の交雑により得られる雑種に属する少なくとも1種の植物から得られる植物抽出物の新規使用に関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、美容活性剤としての、×シトロフォーチュネラ(Citrofortunella)属の植物の抽出物、例えば、カラモンディン(calamondin)(×シトロフォーチュネラ ミクロカルパ(microcarpa))の抽出物を、さらにまた、該抽出物を含む抗加齢美容組成物、並びに、ミトコンドリアアコニターゼの活性を刺激するために、また皮膚に抗加齢作用を得るために、該組成物を用いる美容方法も対象とする。
【背景技術】
【0003】
加齢は多因子現象である。いくつかの理論が加齢に関して存在し、それらの中には、フリーラジカルの化学的特質及び遍在に基づくフリーラジカル理論がある(Harman D.、J.Gerontol.、1956年;11、298〜300頁)。
【0004】
これらのフリーラジカル(活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)としても知られている)は、外因起源のものであるか、又は、様々な細胞過程を通じて、特にミトコンドリア呼吸の間に、生成され得る(Cadenas E.等、Free Radic.Biol.Med.、2000年;29、222〜230頁)。
【0005】
呼吸の間に、呼吸鎖によって消費される全酸素の、少ないがかなりの量が、超酸化物ラジカルであるO2−に変換され、これは、他の一層活性な酸素種、例えば、過酸化水素H、並びにヒドロキシル及びペルオキシナイトライトラジカルの生成を招き得る(上で引用された、Cadenas等を参照)。
【0006】
酸化ストレス条件下に、これらの活性種の生成は、タンパク質、DNA及び脂質に酸素障害を、またミトコンドリアタンパク質の発現における変化を生じ、皮膚の加齢の進行に寄与する(Bulteau等、Exp.Gerontol.、2006年、41;653〜657頁)。
【0007】
加齢の間に、細胞高分子の維持のためのシステムの有効性の低下、及び、ミトコンドリアにおけるROSの生成の一定の増加が認められる(Humphries等、Free Radic.Res.、2006年;40、1239〜1243頁)。
【0008】
ところで、ミトコンドリアは、呼吸鎖によって確立されるプロトン勾配の生成、及びクレブス回路によるATPの生成を含めて、多くの細胞機能において重要な役割を演じている(Liu等、J.Neurochem.、2002年;80、780〜787頁)。
【0009】
酸素障害の蓄積及び構造異常は、ミトコンドリアに、細胞の機能及び保全(integrity)に必要なATPを産出するその能力の漸進的な低下を引き起こす(Frenzel等、1984年)。
【0010】
アコニターゼは、クレブス回路の必須のミトコンドリア酵素であり、クエン酸をイソクエン酸に変換する。それはまた、ミトコンドリアDNAの保存にも役割を果たす。このように、アコニターゼによって、このDNAの安定性及び遺伝は、細胞の代謝状態に密接に結び付けられる(Chen等、Proc.Natl Acad.Sci.USA、2007年;104、13738〜13743頁)。
【0011】
アコニターゼの活性は、その鉄−硫黄中心[4Fe−4S]2+の保全に依存する(Beiner等、Faseb J、1993年;7、1442〜1449頁)。酸化剤による、その鉄−硫黄中心[4Fe−4S]2+の攻撃は、アコニターゼを不活性化する鉄−硫黄中心[3Fe−4S]の生成を引き起こす。
【0012】
ミトコンドリアアコニターゼの活性の低下は、酸素障害及び細胞加齢の細胞内指標である。多くの変性障害もまた、酸化促進剤(pro−oxidative agent)のレベルの増加、及びミトコンドリアにおけるアコニターゼの活性の低下に関連している(Bulteau等、Biochemistry、2003年、42、14846〜14855頁)。
【0013】
アコニターゼの不活性化は、特に、NADH/NADの比の変化を引き起こす。具体的には、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ及びイソクエン酸デヒドロゲナーゼによるNADHの産生は、アコニターゼの活性の低下のせいで、クレブス回路において低下するであろう(上で引用されたHumphries等を参照;Nulton−Persson等、J.Biol.Chem.、2001年、276、23357〜23361頁)。これらのNAD蓄積条件下に、ROSの増加が、還元された代謝物の自動酸化のために、観察される。このような不活性化はまた、損傷を受けたタンパク質の蓄積に寄与する、酸化反応のカスケードも開始させ得る(上で引用されたHumphries等、2006年を参照)。
【0014】
このように、加齢の間、このような細胞損傷の蓄積を防ぎ、またこれらのROSによって損傷を受けたアコニターゼの修復及び再活性化の過程を促進するためには、皮膚細胞におけるミトコンドリアアコニターゼの十分な度合いの活性を保つことが不可欠である。
【発明の概要】
【0015】
本発明の発明者等は、70歳のドナーから得た、培養ヒト皮膚線維芽細胞では、20歳のドナーから得たものに比べて、ミトコンドリアアコニターゼの活性が約85%だけ低化しており、年齢によるタンパク質の発現には如何なる変化もないことを実証していた。この発見から出発して、本発明者等は、ミトコンドリアアコニターゼを全て保護すること、及び、これらの老齢の培養線維芽細胞のミトコンドリアアコニターゼの活性を取り戻すことが、シトラス属、又はシトラス属にそれらの少なくとも1種が属する植物種の交雑により得られる雑種に属する少なくとも1種の植物から得られる植物抽出物、より特定するとカラモンディンの抽出物により、該線維芽細胞を処理することによって可能であること、他方、若年のドナーの線維芽細胞に、この同じ処理を適用しても、ミトコンドリアアコニターゼの活性を修飾しないことを実証した。
【0016】
ミトコンドリアアコニターゼの活性を刺激するこのような効果は、この酵素が、クレブス回路及びミトコンドリアDNAの保存におけるその中心的な役割を維持すること、並びに、皮膚細胞の機能、特に代謝機能を保つことを可能にする。
【0017】
これは、年輩の個人の皮膚細胞のミトコンドリアアコニターゼの活性の回復の結果であり、皮膚細胞の加齢を遅らせる効果が、抗加齢美容作用によって引き起こされる。
【0018】
さらに、本発明者等は、前記抽出物により、細胞内の酸化されたタンパク質のレベル(これはドナーの年齢と共に増加する)がかなり低下すること、その結果、すでに定義された植物抽出物によりこれらの細胞を処理することによって、この増加が完全に逆転されることもまた実証した。
【0019】
本発明の抽出物のこの抗酸化活性(これについて、ミトコンドリアアコニターゼの活性との結び付きは確立されていない)は、本発明の抽出物に、皮膚の色つやの明るい輝きを向上させる若しくは取り戻すための美容活性剤として、美容分野において特に利点のあるさらなる特性を与える。
【0020】
具体的に言うと、酸化されたタンパク質は、正常なタンパク質とは異なる光学的性質を有する。円2色性の技法により、酸化されたタンパク質によって透過される光は、正常なタンパク質によって透過されるものとは異なることが示された(Friguet等、FEBS Lett、1997年、405(1):21〜5頁)。結果的に、酸化されたタンパク質の蓄積は、皮膚細胞サイクルの調節異常を引き起こし、結果的に皮膚の遺伝的に決められた自然の色を損なうことによって、皮膚に、特に皮膚の色つやに、また見る者による皮膚の目による知覚に影響を及ぼす。
【0021】
皮膚での光の反射及び光の反射への酸化の影響を調べるための研究(今日までに公開されていない)が、再構成皮膚モデルで、グロスメーター(サンバ(Samba)装置、ボサノヴァテクノロジーズ(Bossa Nova technologies)社によって供給される)を用いて、出願人によって実施された。こうして、処理されていない皮膚が、酸化された皮膚より大きな全光線反射を有することが示された(グロスメーターによる測定)。
【0022】
×シトロフォーチュネラ属は、シトラス属の植物とフォーチュネラ(Fortunella)属の植物の交雑により得られる植物種を含む。
【0023】
シトロフォーチュネラ属に属する植物種の中で、非限定的に、又は例として、×シトロフォーチュネラ フロリダーナ(floridana)、×シトロフォーチュネラ ミクロカルパ、又は×シトロフォーチュネラ ミティス(mitis)を挙げることができる。
【0024】
これらの植物種の中で、カラモンディン(×シトロフォーチュネラ ミクロカルパ)(好ましくないが、カラマンシー(kalamansi)又はシトラス マデュレンシス(madurensis)とも呼ばれる)が、有利には、選択される。
【0025】
日本国特開2003−199527は、血糖又は血圧の増加を抑制する食物を開示し、該食物は、それが、柑橘類(citrus)とフォーチュネラ属のキンカン(kumquat)との雑種の果実全体の抽出物を含むことに特徴がある。
【0026】
また、日本国特開2005−029491は、シトロフォーチュネラ ミティスの果皮の分別蒸留によるリモネンの抽出方法を開示する。
【0027】
今日まで、皮膚細胞の酸化されたタンパク質及びミトコンドリアアコニターゼに関して、シトラス属、又はシトラス属にそれらの少なくとも1種が属する植物種の交雑により得られる雑種(例えば、×シトロフォーチュネラ属)に属する少なくとも1種の植物から得られる植物抽出物、特にカラモンディン(×シトロフォーチュネラ ミクロカルパ)の抽出物の注目に値する活性について、如何なる開示もなされていない。
【0028】
それゆえに、カラモンディン抽出物は、特に皮膚に酸化ストレスを受けた後で、特に、皮膚の加齢の影響を防ぐ、遅らせる又は弱めるための美容組成物における美容活性剤として、美容の分野における新規活性剤をなす。
【発明の目的】
【0029】
本発明の目的は、特に、美容上許容される活性剤としての、より詳細には、皮膚に抗加齢作用を生じるための、及び/又は損傷を受けた皮膚、特に紫外線によって損傷を受けた皮膚をケアするための、及び/又は皮膚の色つやの明るい輝きを向上させる若しくは取り戻すための、シトラス属、又はシトラス属にそれらの少なくとも1種が属する植物種の交雑により得られる雑種に属する少なくとも1種の植物から得られる植物抽出物の新規な使用を提供することである。
【0030】
より詳細には、本発明は、新規美容活性剤としての、×シトロフォーチュネラ属に属する植物の抽出物、特にカラモンディン(シトロフォーチュネラ ミクロカルパ)の抽出物の新規使用、美容組成物における活性剤としてのその使用、及び該組成物を用いる美容ケア方法を対象とする。
【0031】
本発明の主な目的は、また、少なくとも1種の美容上許容される賦形剤を含む美容組成物における活性剤としての、カラモンディン(×シトロフォーチュネラ ミクロカルパ)の抽出物の新規使用である。
【0032】
この新規使用は、皮膚の加齢の徴候の現れを防ぐこと若しくは遅らせること、又は、特に過剰のROSによって引き起こされる損傷に付随する、これらの徴候を治療すること、又は皮膚に抗加齢作用を生じることを特に対象とする。
【0033】
この新規使用は、また、皮膚の色つやの明るい輝きを向上させること又は取り戻すことも対象とする。
【0034】
本発明の主な目的は、また、本発明による抽出物を含む組成物を身体又は顔の少なくとも1つの心配な部分に付けることによって、皮膚の加齢の影響を防ぐ若しくは遅らせる目的で、及び/又は皮膚の色つやの明るい輝きを向上させる若しくは取り戻すために、美容組成物における前記抽出物を用いる美容方法である。
【0035】
本発明の主な目的は、また、抗加齢美容組成物における活性剤、及び/又は皮膚の色つやの明るい輝きを向上させる若しくは取り戻すための組成物における活性剤としての、カラモンディンの抽出物の使用を提示することである。
【0036】
本発明の目的は、また、美容組成物における活性剤としての前記抽出物の使用、並びに皮膚の加齢の徴候の現れを防ぐ若しくは遅らせるために、又はその影響を弱めるために、及び/又は皮膚の色つやの明るい輝きを向上させる若しくは取り戻すために、該組成物を用いる美容ケア方法である。
【0037】
本発明の主な目的は、また、特に上で示された美容ケアを実施するために前記抽出物を用いる、美容ケア方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】年齢によるミトコンドリアアコニターゼ活性の変動に関し、実施例2により、20歳及び70歳のドナーから得られたヒト線維芽細胞を培養し処理した後で測定されたものである:(A)ミトコンドリアアコニターゼ活性の測定(実施例2、3節参照);(B)ウェスタンブロット法(WB)によるミトコンドリアアコニターゼアッセイ(実施例2、4節参照)。
【図2】年齢によるミトコンドリアアコニターゼの活性部位の修飾に関し、実施例2により、20歳及び70歳のドナーから得られたヒト線維芽細胞を培養し処理した後で測定されたものである;免疫等電点電気泳動(immunoelectrofocusing、IEF)、次いでウェスタンブロット法による、ミトコンドリアアコニターゼの形態の分離及び測定(実施例2、5節)。
【図3】ミトコンドリアアコニターゼの活性の測定に関し、実施例2に従って培養し、次いで、2.5%のカラモンディン抽出物により48時間処理した、20歳及び70歳のドナーから得られたヒト線維芽細胞を培養した後で測定したものである(実施例2、3節参照)。
【図4】分離されたミトコンドリアでの、オキシブロット法による、酸化されたタンパク質の検出に関し(実施例3)、培養し、次いで、2.5%のカラモンディン抽出物(美容活性剤)により48時間処理した、20歳及び70歳のドナーから得られたヒト線維芽細胞を用いる(実施例2参照)。
【発明を実施するための形態】
【0039】
すなわち、本発明の第1の主題は、美容上許容される活性剤としての、より詳細には、皮膚に抗加齢作用を生じるための、及び/又は損傷を受けた皮膚、特に紫外線によって損傷を受けた皮膚をケアするための、及び/又は皮膚の色つやの明るい輝きを向上させる若しくは取り戻すための、シトラス属、又はシトラス属にそれらの少なくとも1種が属する植物種の交雑により得られる雑種に属する少なくとも1種の植物から得られる植物抽出物の新規使用を対象とする。
【0040】
特に好ましい雑種の中には、シトラス属の植物種とフォーチュネラ属に属する植物種との交雑による得られる、×シトロフォーチュネラ属に属するもの、より詳細には、カラモンディン(×シトロフォーチュネラ ミクロカルパ)がある。
【0041】
本発明の別の主題は、また、美容活性剤としての、より詳細には、皮膚に抗加齢作用を生じるための、及び/又は皮膚の色つやの明るい輝きを向上させる若しくは取り戻すための、カラモンディン抽出物の新規使用を対象とする。
【0042】
抽出物の調製に用いられる植物原料は、その植物の全部、或いはその植物の一部(例えば、根、根茎又は地上部分、特に、茎、葉、花、種子、果実若しくは花芽)であり得る。
【0043】
それは、有利には、前記の種の1つの果実の全部又は果実の一部からなり得る。
【0044】
好ましい抽出物はカラモンディンの果実から得られる。
【0045】
抽出ステップ自体の前に、植物原料は、乾燥及び/又は粉砕されていてもよい、又は、代わりに、新たに収穫された状態であってもよい。
【0046】
抽出物は、当業者に知られている様々な抽出方法により調製され得る。
【0047】
抽出は、溶媒なしに、例えば、特に果実の全部又は果実の一部を圧搾することによって実施され得る。
【0048】
しかし、有利には、抽出は、選ばれた植物原料を極性溶媒又は極性溶媒の混合物に接触させることによって、特に、適切な溶媒又は溶媒混合物による前記植物原料の浸漬、柔化(maceration)、煎出によって実施される。
【0049】
特に利点のある一変形形態によれば、抽出物はこれらの植物の果汁から得られ、特に、圧搾によって、極性溶媒又は極性溶媒混合物、好ましくは水性媒体と接触させることによって得られる。
【0050】
抽出に用いられる極性溶媒又は極性溶媒混合物は、有利には、水、C1〜C4アルコール(特に、エタノール及びブタノールから選択される)、グリコール(グリセロール、ブチレングリコール及びプロピレングリコールから優先的に選択される)、及びポリグリセロール−3、並びにこれらの混合物から選択される。
【0051】
好ましい混合物は、少なくとも10v/v%のアルコール又はグリコールを含み、残りの部分は水からなる、少なくとも1種のアルコールと水、又は少なくとも1種のグリコールと水の混合物である。
【0052】
本発明の別の特定の変形形態によれば、溶媒混合物には、50/50v/vの比の、水とエタノールの混合物、又は50/50v/vの比の、水とブチレングリコールの混合物が含まれる。
【0053】
好ましい一実施形態によれば、抽出は、有利には、水性媒体、又は水−グリコール媒体で実施される。
【0054】
抽出はまた、植物原料若しくは植物抽出物を部分的に若しくは完全に脱色する又はそれを精製することを目的とした、例えば、非極性溶媒又は溶媒混合物の溶液による植物原料又は抽出物の処理による、或いは、抽出物を活性炭粒子と接触させることからなる処理による、或いは、代わりに、超臨界COによる処理による、植物原料若しくは植物抽出物の処理からなる追加のステップを任意選択で含んでいてもよい。
【0055】
抽出は、抽出溶媒の部分的又は完全な除去ステップによって完了され得る。第1の場合には、抽出物は通常、かなりの量の有機溶媒が取り除かれた水性濃縮液が得られるまで濃縮され、第2の場合には、乾燥残留物が得られる。代わりに、抽出ステップからの生成物は、粉末状に、凍結乾燥されても、噴霧乾燥されてもよい。
【0056】
粉末は、本発明による美容組成物に、得られたままの形態で使用されても、又は極性溶媒若しくは極性溶媒の混合物に分散又は溶解されてもよく、或いは、代わりに、固体担体に吸着させてもよい。
【0057】
本発明の一実施変形形態によれば、前記活性剤は、美容組成物に組み入れられた局所送達され、該活性剤は、皮膚の加齢の徴候を防ぐ若しくは遅らせるのに、又はその影響を弱めるのに;及び/又は損傷を受けた皮膚、特に紫外線により損傷を受けた皮膚をケアするのに、及び/又は皮膚の色つやの明るい輝きを向上させる若しくは取り戻すのに、有効な量で存在する。
【0058】
前記活性剤は、また、美容上許容される少なくとも1種の賦形剤と混合されてもよく、この組成物を身体又は顔の皮膚に付けることによって用いられ得る。
【0059】
このように、本発明はまた、美容上許容される少なくとも1種の活性剤、及び美容上許容される少なくとも1種の賦形剤を含み、該活性剤が、シトラス属、又はシトラス属にそれらの少なくとも1種が属する植物種の交雑により得られる雑種に属する少なくとも1種の植物、特に、×シトロフォーチュネラ属に属する植物から得られる植物抽出物であることを特徴とする、美容組成物を対象とする。
【0060】
本発明による美容組成物は、所望の効果を得るのに有効な量の本発明の抽出物を含む。
【0061】
本発明のいずれの態様でも、用語「有効量」は、皮膚の加齢の徴候の現れを防ぐ若しくは遅らせるのに、又はその影響を弱めるのに;及び/又は損傷を受けた皮膚、特に紫外線により損傷を受けた皮膚をケアするのに、及び/又は皮膚の色つやの明るい輝きを向上させる若しくは取り戻すのに、必要とされる量に少なくとも等しい量を意味する。
【0062】
有利には、本発明による美容組成物は、活性剤としての組成物を0.001質量%から5質量%、好ましくは0.01質量%から3質量%の間含む。
【0063】
有利には、本発明の組成物は、また、本発明のものに類似の、及び/又は本発明のものを補足する美容効果を有する他の活性成分、特に、皮膚の構造の維持及び/又は保全に関与する少なくとも1種の他の活性剤、並びに、顔料、染料、ポリマー、界面活性剤、レオロジー作用剤、芳香剤、電解質、pH調整剤、酸化防止剤、保存剤、及びこれらの混合物から特に選択され得る少なくとも1種の美容上許容される賦形剤も含み得る。
【0064】
本発明による美容組成物は、セラム(serum)、ローション、エマルジョン、例えばクリーム、又は、代わりに、ヒドロゲル、好ましくは美顔用パック(mask)の形態で配合されても、或いはスティック若しくはパッチの形態であってもよい。
【0065】
最後に、本発明は、皮膚の加齢の徴候の現れを防ぐ若しくは遅らせるための、又はそれらを処置するための美容活性剤としての、上で定義された活性剤の使用に関し、該美容剤は皮膚細胞のミトコンドリアアコニターゼの活性を刺激する。
【0066】
本発明はまた、皮膚の加齢の徴候の現れを防ぐ若しくは遅らせるための、又はその影響を弱めるための、及び/又は皮膚の色つやの明るい輝きを向上させる若しくは取り戻すための美容組成物の製造のための、本発明の美容活性剤の使用に関する。
【0067】
最後に、本発明は、皮膚の加齢の徴候の現れを防ぐ若しくは遅らせるための、又はその影響を弱めるための、及び/又は損傷を受けた皮膚、特に紫外線により損層を受けた皮膚をケアするための、及び/又は皮膚の色つやの明るい輝きを向上させる若しくは取り戻すための美容ケア方法を対象とし、この方法は、身体若しくは顔の皮膚の少なくとも1つの心配な部分への、有効量の美容上許容される少なくとも1種の活性剤の送達を含み、該活性剤が、シトラス属、又はシトラス属にそれらの少なくとも1種が属する植物種の交雑により得られる雑種に属する植物、特に、×シトロフォーチュネラ属に属する植物、殊に、植物種の×シトロフォーチュネラ ミクロカルパの植物から得られる植物抽出物であることに特徴がある。
【0068】
好ましくは、前記方法は、美容上許容される少なくとも1種の賦形剤もまた含む美容組成物に組み入れられる活性剤が、該組成物を身体若しくは顔の皮膚の少なくとも1つの心配な部分に付けることによって、局所送達されることに特徴がある。
【0069】
本発明によるケア方法は、また、活性剤の濃度が、美容組成物の0.001質量%と5質量%の間であることにも特徴がある。
【0070】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の説明的記述から明瞭に分かってくるであろう、この説明は、本発明のいくつかの実施例(これらは、純粋に例示の目的で記載され、本発明の範囲の限定を決して生じない)に関連させて記載されている。
【0071】
記述において、特に以下の実施例において、特に断わらなければ、全てのパーセンテージは、質量基準で記載されており、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧である。
【実施例】
【0072】
実施例1−試験を実施するために用いられるカラモンディン抽出物の調製
カラモンディン(×シトロフォーチュネラ ミクロカルパ)の抽出物を、植物の果実全体を圧搾することによって調製する。
濾過し、次いで、遠心した後、果肉を、水とポリグリセロールの混合物により抽出する。
得られた抽出物は、35〜45質量%の固形分を含む。実施例2及び3の試験を実施し、また美容組成物、特に実施例4のものを調製するために、この抽出物を、得られたままの形態で用いる。
【0073】
実施例2−ヒト線維芽細胞におけるミトコンドリアアコニターゼ活性の測定
材料及び方法
【0074】
1.ヒト線維芽細胞の培養及び処理
培地及び試薬
線維芽細胞培養培地
DMEM 1/mlのグルコース(ギブコ(Gibco))
+10%のSVF
+1%のピルビン酸ナトリウム、100mM(ギブコ)
【0075】
活性剤の保存溶液
保存溶液は、DMEM培地で抽出物溶液を希釈することによって調製する(質量%)。
−培地中6%のカラモンディン抽出物、すなわち、約2.4質量%の固形分。
【0076】
a−細胞培養及び処理
20歳のドナー及び70歳のドナーの形成外科から得られた初代培養のヒト線維芽細胞、12次継代。
【0077】
0日での継代培養
15×10線維芽細胞/(75cmのディッシュ)、n=3、DMEM培地(10ml/ディッシュ)
【0078】
5日目の処理
保存溶液を、DMEM培地で希釈して、下記の濃度とする:
−培地中2.5質量%のカラモンディン抽出物、すなわち、約1質量%の固形分。
【0079】
7日目の細胞の回収
ミトコンドリアの調製
PBSにより2回すすぎ
氷ベッド上;2mlのホモジェネート化緩衝液中に回収。
【0080】
b−ミトコンドリアの分離
32個のT75ディッシュを各ドナーに用いる。集密した細胞を、2回、pH7.2のPBS緩衝液(リン酸ナトリウム緩衝液、pH7.2−0.13MのNaCl、3mMのKCl、8mMのNaPO及び1.4MのKHPO)により洗い、擦り取ることによって引き離し、次いで、4℃、1500×gで5分間遠心する。細胞ペレットをPBS緩衝液により洗い、再遠心し、次いで氷の中に置く。ペレットを冷ホモジェネート化緩衝液(0.3Mのマンニトール、0.1%のBSA、0.2mMのEDTA、10mMのHEPES、KOHによりpH7.4に調整、ペレット容積の5倍量)に分散させ、2mlのガラスホモジェナイザーにより氷上でホモジェネートにする。細胞懸濁液を、4℃、1000×gで10分間遠心する。上澄みを、4℃、10000×gで15分間再遠心する。上澄みは、細胞質画分を含み、ペレットはミトコンドリア画分に相当する。ミトコンドリア画分を、冷ホモジェネート化緩衝液により2回洗う。タンパク質濃度は、ブラッドフォード(Bradford)法に従って測定する。
【0081】
2.タンパク質アッセイ(ブラッドフォード法)
a−検量範囲の製剤
BSA保存溶液:50μg/ml(バイオラッド(BIORAD);標準タンパク質)
【0082】
【表1】

【0083】
200μlのクーマシー(Coomassie)ブルーG250を各チューブに加える。このブルーは、保存溶液の5倍希釈によって、用時調製する。
【0084】
b−試料の調製
− タンパク質濃度>3mg/mlの場合、細胞抽出物は、100倍に希釈し、次いで、100mlの希釈液を取る。
+700μlのミリQ(milliQ)水
+200μlのブルー
【0085】
− タンパク質濃度<3mg/ml場合、10μlの細胞抽出物を取る。
+790μlのミリQ水
+200μlのブルー
【0086】
c−試料アッセイ
試料は、渦流撹拌(vortexing)によってホモジェネートにし、5分間放置した後、次に、595nmの波長の光学濃度を、分光光度計で読み取る。
【0087】
3.ミトコンドリアアコニターゼ活性のアッセイ
a−試薬
− 25mM、pH7.5のトリス緩衝液(シグマ(Sigma))
− クエン酸ナトリウム(シグマ)
− イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(シグマ)
− MnCl(シグマ)
【0088】
b−ミトコンドリアアコニターゼ活性のアッセイの原理
ミトコンドリアアコニターゼ活性を、25mMのトリス−HCl+0.6mMのMnCl及び0.05%のトリトン(Triton)X−100中、0.2mMのNADP、5mMのクエン酸ナトリウム及び1単位/mlのイソクエン酸デヒドロゲナーゼを含む反応媒体中、340nmでの吸光度を測定することによって定量する。
【0089】
アッセイのために、50μgのミトコンドリアタンパク質を、25℃で、1.0mlの反応媒体に加える。340nmでの測定を、1cmのセルで、5分間隔で記録し、ミトコンドリアアコニターゼ活性は、約5分間に渡る340nmでの吸光度の直線的増加により計算する。活性は、6.22×10−1cm−1のNADPHの対するモル吸光係数を用いること、及びイソクエン酸デヒドロゲナーゼによる、1分子のクエン酸の1分子のNADPHへの変換を仮定することによって得る。
【0090】
4.ウェスタンブロット法(WB)によるミトコンドリアアコニターゼアッセイ
a−アッセイの原理
タンパク質電気泳動を、レムリ(Laemmli)の方法(Nature,1970年;277、680頁)に従って、不連続緩衝液で、変性及び還元条件下に、1mmから1.5mmの厚さのポリアクリルアミドミニゲルで実施する。12%のT及び2.7%のCを含むゲルにより、低分子量タンパク質(20から120kDa)のタンパク質が分離される。8%のT及び2.7%のCを含むゲルにより、高分子量タンパク質(35から250kDa)が分離される。
ゲルの製造に必要な溶液は、付録Aに記載されている。
【0091】
分離ゲル
ゲルは、泳動の少なくとも2時間前に注ぐ。
ゲルの注入は、濃縮ゲルのために用意されたコームの最下部から約0.5mmまで、ピペットを用いて実施する。無水エタノールを表面に加えて、均一なベースラインを得る(±1ml/ゲル)。
【0092】
濃縮ゲル
エタノールを取り除く。2.5mlのゲルを、ポリエチレン製のパスツール全容(transfer)ピペット(バイオラッド)を用いて注ぎ、次いで、コームを挿入する。ゲルは1時間後に重合している。
【0093】
b−試料の調製
ミトコンドリアタンパク質を、還元レムリ条件下に、12%のTを含むポリアクリルアミドゲルで電気泳動にかける。試料(25〜40μgのタンパク質)を、付着物緩衝液中、100℃で5分間、還元する。試料及びマーカーを付着させた後、50mMのトリス−HCl、100mMのグリシン、2mMのEDTAのpH8.4の緩衝液(0.1%のSDSを含む)中、200Vで1時間、泳動を実施する。
【0094】
c−電気泳動
付着
試料は95℃で5分間加熱する。
付着させる容積は、所望の量のタンパク質に応じて決まる(1mmのゲルで、最大容積=25μl、1.5mmのゲルで40μl)。基準量は10μgのタンパク質であり、10μlに相当する;次いで、それは、標的タンパク質の発現に合わせて変える。
【0095】
コームは取り除く。200mlの1×泳動緩衝液を、ゲル上に、2つのゲルの間の中央コンパートメントに、次いで、4分の1のレベルまでタンクに注ぐ。
【0096】
試料、及び10μlのプレステインド低分子量コントロール(バイオラッド、プレステインド SDS−PAGE標準ローレインジ(Low Range))又は高分子量コントロール(アマシャム(Amersham)、フルレインジレインボー(Full Range Rainbow))は、マイクロピペットに取り付けた、しだいに細くなる先端部を用いて付着させる。
【0097】
泳動
電気泳動は、室温で、200Vで実施する。この電気泳動は、泳動の先端がゲルを出た時に停止する(約40分間の泳動)。
【0098】
膜へのタンパク質のセミ−ドライ転写
2枚の厚い濾紙(バイオラッド)及びセルロース膜(バイオラッド)を、トービン(Towbin)転写緩衝液(PNAS、1979年、76(9)4350〜4頁)(付録Bを参照)に浸す。
【0099】
セミ−ドライ転写装置(ビイオラッド)で、湿った厚い1枚の濾紙をアノードに置く。
【0100】
一旦、泳動が完了すると、濃縮ゲルを取り除き、分離ゲルをセルロース膜に合わせる。ゲルを含む膜を、1枚の前記濾紙の上に置く。2枚目の濾紙をゲル上に置く。
【0101】
「サンドイッチ」の作製中、転写を妨げないように、ガラス棒を用いて空気の泡を全て取り除くように注意する。装置を、カソードをなす蓋により閉じる。タンパク質の転写は、10V、90分間で実施する。
【0102】
ポンソーレッド(Ponceau Red)による染色
転写の良否を調べるために、タンパク質をポンソーレッド(シグマ)により染色する。セルロース膜をミリQ水によりすすぎ、次いで、ポンソーレッドの浴に、撹拌しながら10分間一度浸す。次に、タンパク質のバンドにだけ着色が残るまで、ミリQ水のいくつかの浴で洗う。膜をプラスチックの袋に入れ、スキャンする。タンパク質のバンドは、転写されたタンパク質の全量を求めるために定量され得る。
【0103】
非特異的結合部位のブロッキング
膜は、PBS−T緩衝液(付録B参照)中5%のスキムミルク(Regilait)からなる、非特異的結合部位をブロッキングするための溶液(20ml/膜)中、4℃で一夜、又は室温で90分間、撹拌する。
【0104】
免疫検出
抗体の参照事項及び最適希釈は付録Cに記載する。
【0105】
非特異的部位をブロッキングした後、膜はPBS−T中で素早くすすぐ。この膜を、抗体に応じて5%(m/v)のミルクを含む又は含まないPBS−Tで最適濃度に希釈した一次抗体に、撹拌しながら、室温で60分間、又は4℃で一夜接触させる。
【0106】
次いで、結合していない過剰の遊離抗体を除去するために、それを、PBS−T中で3回、各10分間、素早くすすぐ。次に、それを、室温で撹拌しながら、PBS−T又は5%ミルク(5ml)で希釈した、ペルオキシダーゼに結合した適切な2次抗体に接触させる。45分間のインキュベーションの後、それを、2回素早くすすぎ、次いで、PBS−T緩衝液により5回、各5分間洗い、最後に、1×PBSにより洗う。水気を切った後、それを、タンパク質側を上にして、台所用ラップフィルム(サラン(SARAN))の上に置く。
【0107】
膜を、ペルオキシダーゼの基質としてルミノールを用いる高感度化学発光検出キット(アマシャム;ECLウェスタンブロッティング)を用いて可視化する。ペルオキシダーゼ及び増幅剤の作用の下で、ルミノールは酸化され、過渡励起状態に移る。基底状態への復帰は、光子の放出によって起こり、これらの光子が、膜上に置かれたオートラジオグラフィーフィルムに当たる。
【0108】
検出キットの2つの溶液の各々の1ml(すなわち2ml、膜を覆うのに必要とされる最小容積)を一緒に混合する。混合物を直ちに膜の上に均一に注ぎ、室温で正確に1分間、接触させておく。水気を切った膜を、サランラップフィルムで包み、光から保護されたカセットに入れ、次いで、プレフラッシュしたオートラジオグラフィーフィルム(アマシャム、ハイパーフィルム(Hyperfilm)ECL)により覆う。5分間の露光の後、オートラジオグラフィーフィルムは可視化される。所望のシグナルを最適にするために、必要であれば、新しいフィルムが露光されてもよい(1時間の露光時間まで)。バンドは、ゲルズアナリスツ(Gels Analysts)3.01ソフトウェアにより定量する。
【0109】
5.IEFによるミトコンドリアアコニターゼアッセイ
この技法により、ミトコンドリアアコニターゼの3つの形態、活性形態[4Fe−4S]2+、不活性形態[3Fe−4S]、及びアポ酵素形態が、それらの等電点に従って分離される。
【0110】
50μgのミトコンドリアタンパク質を、pH3〜10のIEFゲル(バイオラッド)上に付着させる。泳動は、100Vで1時間;250Vで1時間及び500Vで30分間、クライテリオン(criterion)システム(バイオラッド)で実施する。泳動の後、ゲルをニトロセルロース膜に転写し、抗−ミトコンドリアアコニターゼウェスタンブロット法を、4節に記載のプロトコールに従って実施する。
【0111】
結果
ミトコンドリアアコニターゼ活性を、これらの培養細胞からミトコンドリアを分離後、評価した。加齢と共にミトコンドリアアコニターゼ活性が低下することが実証される。
【0112】
これらの測定は、20歳のドナーと比較して、70歳のドナーのミトコンドリアでは、ミトコンドリアアコニターゼの活性が約85%低下していることを示す(図1参照)。
【0113】
しかし、この酵素の発現、すなわち、若年及び老年の線維芽細胞に存在する酵素の量には有意な相違はない(図1参照)。
【0114】
老齢の線維芽細胞で示されるミトコンドリアアコニターゼ活性の低下が、この酵素のFe−S中心の酸素障害に帰因しなかったかどうかを調べるために、酵素の3つの構造形態(アポ酵素、活性形態及び不活性形態)を、等電点電気泳動(isoelectric focusing、IEF)によって、それらの等電点に従って分離した。この方法を用いて、アポ酵素に年齢による違いが示されるが、他の形態には違いがない(図2参照)。
【0115】
本発明者等は、ミトコンドリアアコニターゼの活性が、培養したヒト皮膚線維芽細胞で、年齢と共に低下することを示した。この活性の低下は、年齢によるこのタンパク質の発現の変化を伴わない。
【0116】
この結果から出発して、本発明者等は、異なる年齢のこれらのドナーから得られる皮膚線維芽細胞におけるミトコンドリアアコニターゼの活性への、試験された活性剤の効果を評価した(図3及び表1参照)。
【0117】
結果は、若年ドナー(20歳)からの未処理線維芽細胞におけるミトコンドリアアコニターゼの活性(これが100%のレベルをなす)に対するパーセンテージとして表される。
【0118】
【表2】


表1:20及び70歳のドナーからの線維芽細胞のミトコンドリアアコニターゼ活性
【0119】
これらの結果は、これらの抽出物による処理が、酸化剤の作用に対してミトコンドリアアコニターゼを保護することを可能にすることを示す。しかし、これらの抽出物により、20歳のドナーからの線維芽細胞を処理した後48時間で、ミトコンドリアアコニターゼの有意の活性化は認められない。他方、70歳のドナーからの線維芽細胞への同じ処理により、酵素は完全に保護されるという結果が得られる。
【0120】
実施例3−オキシブロット法による、酸化されたタンパク質の可視化
a−原理
ROS又は他の酸化機構(例えば、糖化/糖酸化又は脂質過酸化)によってタンパク質鎖に導入されたカルボニル基(酸化マーカー)が、部位−特異的機構により可視化される。
【0121】
鎖中のカルボニル基は、2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)と反応して、ヒドラゾン誘導体を与える。このDNP誘導試料を、電気泳動によってポリアクリルアミドゲルで分離する。分離の後、ウェスタンブロット法のために、ニトロセルロース膜への転写を行う。次いで、膜は、カルボニル基を有するタンパク質に結合したDNP分子に特異的な、1次抗体の存在下にインキュベートする。次のステップは、ペルオキシダーゼに結合した、抗1次抗体(抗ウサギ)2次抗体によるインキュベーションである。可視化は、ウェルタンブロット法において用いられるものと同じ試薬を用いて実施する。
【0122】
b−プロトコール
使用された全ての試薬は、オキシブロット(Oxyblot)キット(Appligene−Oncor、フランス)による。
【0123】
試料の変性
実施例2(材料及び方法、1節)により得られる5μlの細胞抽出物に含まれるミトコンドリア溶解物に由来する2μgの付着物に対応して、15〜20μgの間の量のタンパク質を用いる。10μlの1×DNPHを、その後、5μlの12%SDS加える;混合物を室温で15分間撹拌する。7.5μlの中和液及び1×試料緩衝液を加える。試料は付着させる準備が整う。
【0124】
タンパク質は、12%SDSアクリルアミドでの電気泳動によって最終的に分離され、ニトロセルロース膜に転写される。
【0125】
抗原−抗体反応
カルボニル誘導体は、150倍に希釈した抗DNPウサギ1次抗体、及び抗ウサギ2次抗体により可視化される。ECLキット(アマシャム)を用いて、ペルオキシダーゼを、その基質の助けで可視化する。
【0126】
結果
酸化されたタンパク質が年齢と共に増加することが認められる(図4)しかし、カラモンディン抽出物による老齢の線維芽細胞の処理は、若年の線維芽細胞のレベルに相当する、酸化されたタンパク質のレベルに戻ることを可能にする。これらの結果は、皮膚の酸化されるタンパク質に、前記抽出物が抗酸化活性を有することを示す。
【0127】
美容配合物の例
実施例4:カラモンディン果実抽出物を含む美容組成物
実施例1で得られた抽出物を、得られたままの形態で、下の美容組成物に用いる。
【0128】
− カラモンディン又はカラマンシス(Calamansis)の植物抽出物(実施例1)0.1%
− 界面活性剤(アルラセル(Arlacel)(登録商標)165VP) 5%
− 95%セチルアルコール 1%
− ステアリルアルコール 1%
− 蜜蝋 1.5%
− オイル(パールリーム(Perleam)(登録商標)) 8.5%
− グリセリドトリカプラート/カプリラート 3%
− シリコーンオイル(ジメチコン100CS) 1%
− ポリマー(ケルトロール(Keltrol)(登録商標)) 0.35%
− 水酸化ナトリウム 0.04%
− EDTA四ナトリウム粉末 0.1%
− 保存剤 0.5%
− 水 100となる量
【0129】
美容組成物は、様々な成分を1ステップ又は複数ステップで一緒に混合することによって、当業者に知られている通常の仕方で調製する。
【0130】
この組成物は、先に示された抗加齢美容効果を得るために、また色つやの明るい輝きを取り戻すために、数週間、毎日、顔の皮膚に付けられ得る。
【0131】
付録A
I−不連続緩衝液法において、変性及び還元条件下に、電気泳動ゲルのために用いられた緩衝液及び溶液
【0132】
モノマー溶液:
アクリルアミド/ビスアクリルアミド、30%T、2.67%C(バイオラッド)
【0133】
分離ゲル緩衝液:トリス−HCl、1.5M、pH8.8
【表3】

【0134】
濃縮ゲル緩衝液:0.5Mのトリス−HCl、pH6.8
【表4】

【0135】
10×泳動緩衝液:0.25Mのトリス pH8.3、1.92Mのグリシン;1%のSDS
【表5】

【0136】
過硫酸アンモニウム:(NH:(シグマ) 10%(w/v)、すなわち、100mg/ml
【0137】
2×レムリ還元性試料緩衝液:0.06Mのトリス−HCl、pH6.8;2.3%のSDS;10%のグリセロール;0.02%のブロモフェノールブルー
【表6】

【0138】
10×ブロモフェノールブルー(飽和溶液):
スパチュラ先端量のブロモフェノールブルーを、5mlの2×レムリ緩衝液に分散させる。撹拌、超音波処理、次いで遠心後、上澄みを回収する。
【0139】
II−電気泳動ゲル
−12%T分離ゲルの調製
【表7】

【0140】
−8%T濃縮ゲルの調製
【表8】

【0141】
付録B
転写及び免疫検出のための溶液
【0142】
トービン転写緩衝液
25mMのトリス−HCl、pH8.3;192mMのグリシン;20%のメタノール
【表9】

【0143】
PBS−T緩衝液
10×PBS(インビトロジェン(Invitrogen))の10倍希釈
+0.1%のトゥイーン(Tween)20(シグマ)
【0144】
ポンソーレッド(シグマ)
0.1%(w/v)溶液、5%の酢酸溶液中
【0145】
付録C
1次及び2次抗体のリスト
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
美容上許容される活性剤としての、より詳細には、皮膚に抗加齢作用を生じるための、及び/又は損傷を受けた皮膚、特に紫外線によって損傷を受けた皮膚をケアするための、及び/又は皮膚の色つやの明るい輝きを向上させる若しくは取り戻すための、シトラス属、又はシトラス属にそれらの少なくとも1種が属する植物種の交雑により得られる雑種に属する少なくとも1種の植物から得られる植物抽出物の使用。
【請求項2】
抽出物が、×シトロフォーチュネラ属に属する植物から得られる、特に、カラモンディン(×シトロフォーチュネラ ミクロカルパ)の抽出物であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
抽出物が、植物の全部、或いは該植物の一部、例えば、根、根茎、又は地上部分、特に、茎、葉、花、種子、果実若しくは花芽、果実の全部若しくは果実の一部の抽出物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
抽出物が、乾燥及び/又は粉砕された植物原料から得られる;或いは新たに収穫された植物原料から得られることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
抽出物が、カラモンディンの果実から、圧搾により得られることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
抽出物が、前記植物の1種の果汁から得られ、特に圧搾によって、極性溶媒若しくは極性溶媒の混合物に接触させることによって得られることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
抽出に用いられる極性溶媒若しくは極性溶媒の混合物が、水、C〜Cアルコール(エタノール及びブタノールから優先的に選択される)、グリコール(グリセロール、ブチレングリコール及びプロピレングリコールから優先的に選択される)、及びポリグリセロール−3、並びにこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
好ましい混合物が、少なくとも10v/v%のアルコール又はグリコールを含み、残りの部分は水からなる、少なくとも1種のアルコールと水、又は少なくとも1種のグリコールと水の混合物であることを特徴とする、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
溶媒混合物が、50/50v/vの比の水とエタノールの混合物、又は50/50v/vの比の水とブチレングリコールの混合物を含むことを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
抽出が水性媒体又は水−グリコール媒体で実施されることを特徴とする、請求項7に記載の使用。
【請求項11】
抽出物が、抽出ステップからの生成物を凍結乾燥又は噴霧乾燥した後の粉末の形態であることを特徴とする、請求項6〜9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
美容組成物に組み入れられた局所送達される活性剤(この活性剤は、皮膚の加齢の徴候を防ぐ若しくは遅らせるのに、又はその影響を弱めるのに;及び/又は損傷を受けた皮膚、特に紫外線により損傷を受けた皮膚をケアするのに、及び/又は皮膚の色つやの明るい輝きを向上させる若しくは取り戻すのに、有効な量で存在する)としての、請求項1〜11のいずれか一項に記載の抽出物の使用。
【請求項13】
少なくとも1種の美容上許容される活性剤、及び少なくとも1種の美容上許容される賦形剤を含む美容組成物において、該活性剤が、シトラス属、又はシトラス属にそれらの少なくとも1種が属する植物種の交雑により得られる雑種に属する少なくとも1種の植物、特に、×シトロフォーチュネラ属に属する植物から得られる植物抽出物であることを特徴とする美容組成物。
【請求項14】
植物抽出物が、カラモンディン(×シトロフォーチュネラ ミクロカルパ)の抽出物(任意選択で、皮膚の構造の維持及び/若しくは保全に関与する少なくとも1種の他の活性剤と組み合わせて用いられる)であることを特徴とする、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
活性剤が、請求項3〜12のいずれか一項に記載の植物抽出物であることを特徴とする、請求項13又は14に記載の組成物。
【請求項16】
前記抽出物が、前記組成物に、組成物に対する抽出物の乾燥重量として、0.001%から5%の間の濃度で含まれることを特徴とする、請求項13〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
顔料、染料、ポリマー、界面活性剤、レオロジー作用剤、芳香剤、電解質、pH調整剤、酸化防止剤及び保存剤、並びにこれらの混合物から選択される、美容上許容される少なくとも1種の賦形剤を含むことを特徴とする、請求項13〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
セラム、ローション、エマルジョン、例えばクリーム、又は、代わりに、ヒドロゲル、好ましくは美顔用パックの形態に配合される、或いはスティック若しくはパッチの形態であることを特徴とする、請求項13〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
皮膚の加齢の徴候の現れを防ぐ若しくは遅らせるための、又はその影響を弱めるための;及び/又は損傷を受けた皮膚、特に紫外線により損傷を受けた皮膚をケアするための、及び/又は皮膚の色つやの明るい輝きを向上させる若しくは取り戻すための美容組成物において、少なくとも1種の美容上許容される活性剤の有効量を含み、該活性剤が、シトラス属、又はシトラス属にそれらの少なくとも1種が属する植物種の交雑により得られる雑種に属する植物、特に、×シトロフォーチュネラ属に属する植物、殊に、植物種の×シトロフォーチュネラ ミクロカルパの植物から得られる植物抽出物であることを特徴とする美容組成物。
【請求項20】
少なくとも1種の美容上許容される賦形剤も含む美容組成物に組み入れられる活性剤が、身体又は顔の皮膚の少なくとも1つの心配な部分に前記組成物を付けることによって局所送達されることを特徴とする、請求項19に記載の美容組成物。
【請求項21】
活性剤の濃度が、美容組成物の0.001質量%から5質量%の間であることを特徴とする、請求項19又は20に記載の美容組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−241802(P2010−241802A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−60720(P2010−60720)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.サランラップ
【出願人】(502189579)エルブイエムエイチ レシェルシェ (68)
【Fターム(参考)】